(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】ポリシリコン膜の形成方法及び成膜装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/205 20060101AFI20221209BHJP
H01L 21/20 20060101ALI20221209BHJP
C23C 16/24 20060101ALI20221209BHJP
C23C 16/56 20060101ALI20221209BHJP
【FI】
H01L21/205
H01L21/20
C23C16/24
C23C16/56
(21)【出願番号】P 2018215345
(22)【出願日】2018-11-16
【審査請求日】2021-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】本山 豊
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 篤史
【審査官】高柳 匡克
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-345767(JP,A)
【文献】特開平09-186086(JP,A)
【文献】特開平08-088172(JP,A)
【文献】特開2011-249764(JP,A)
【文献】特開2010-192757(JP,A)
【文献】特開平11-204434(JP,A)
【文献】特開2015-045082(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205
H01L 21/20
C23C 16/24
C23C 16/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上にアモルファスシリコン膜を形成する工程と、
前記アモルファスシリコン膜上にアモルファスゲルマニウム膜又はアモルファスシリコンゲルマニウム膜により形成されたキャップ層を形成する工程と、
前記基板を第1の温度で熱処理して前記アモルファスシリコン膜中にシリコンの結晶核を形成する工程と、
前記結晶核を形成した後、前記キャップ層を除去する工程と、
前記キャップ層が除去された前記基板を前記第1の温度以上の第2の温度で熱処理して前記結晶核を成長させる工程と、
を有
し、
前記結晶核を形成する工程において、前記アモルファスシリコン膜の大部分はアモルファス(非晶質)の状態を維持したまま前記アモルファスシリコン膜の一部を結晶化して結晶核を形成し、
前記結晶核を成長させる工程において、前記結晶核を起点として前記アモルファスシリコン膜の大部分を結晶化する、
ポリシリコン膜の形成方法。
【請求項2】
前記キャップ層を形成する工程は、前記アモルファスシリコン膜を形成する工程の後、前記基板を大気に曝露することなく連続して行われる、
請求項1に記載のポリシリコン膜の形成方法。
【請求項3】
前記第2の温度は、前記第1の温度よりも高い、
請求項1又は2に記載のポリシリコン膜の形成方法。
【請求項4】
前記第1の温度は、450℃~550℃である、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のポリシリコン膜の形成方法。
【請求項5】
前記キャップ層を除去する工程は、前記キャップ層を希フッ酸でエッチングした後、前記キャップ層を過酸化水素水でエッチングする工程である、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のポリシリコン膜の形成方法。
【請求項6】
前記アモルファスシリコン膜を形成する工程の前に、前記基板の上にシード層を形成する工程を有する、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のポリシリコン膜の形成方法。
【請求項7】
基板を収容する処理容器と、
前記処理容器内にシリコン原料ガス、ゲルマニウム原料ガス及びエッチングガスを供給する供給部と、
前記処理容器内を排気する排気部と、
前記基板を加熱する加熱部と、
制御部と、
を有し、
前記制御部は、
前記処理容器内に前記シリコン原料ガスを供給して前記基板の上にアモルファスシリコン膜を形成する工程と、
前記処理容器内に前記ゲルマニウム原料ガスを供給して前記アモルファスシリコン膜上にアモルファスゲルマニウム膜を形成する、又は前記処理容器内に前記シリコン原料ガス及び前記ゲルマニウム原料ガスを供給して前記アモルファスシリコン膜上にアモルファスシリコンゲルマニウム膜を形成することによりキャップ層を形成する工程と、
前記アモルファスシリコン膜を第1の温度で熱処理して前記アモルファスシリコン膜中にシリコンの結晶核を形成する工程と、
前記結晶核を形成した後、前記キャップ層を除去する工程と、
前記キャップ層が除去された前記基板を前記第1の温度以上の第2の温度で熱処理して前記結晶核を成長させる工程と、
を実行するように前記供給部、前記排気部及び前記加熱部を制御する
よう構成され、
前記結晶核を形成する工程において、前記アモルファスシリコン膜の大部分はアモルファス(非晶質)の状態を維持したまま前記アモルファスシリコン膜の一部を結晶化して結晶核を形成し、
前記結晶核を成長させる工程において、前記結晶核を起点として前記アモルファスシリコン膜の大部分を結晶化する、
成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリシリコン膜の形成方法及び成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
結晶成長が遅い第1のアモルファスシリコン膜の上に結晶成長が第1のアモルファスシリコン膜よりも速い第2のアモルファスシリコン膜を積層し、結晶化処理を行うことにより、大粒径のポリシリコン膜を形成する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、ポリシリコン膜のグレインサイズを拡大できる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によるポリシリコン膜の形成方法は、基板の上にアモルファスシリコン膜を形成する工程と、前記アモルファスシリコン膜上にアモルファスゲルマニウム膜又はアモルファスシリコンゲルマニウム膜により形成されたキャップ層を形成する工程と、前記基板を第1の温度で熱処理して前記アモルファスシリコン膜中にシリコンの結晶核を形成する工程と、前記結晶核を形成した後、前記キャップ層を除去する工程と、前記キャップ層が除去された前記基板を前記第1の温度以上の第2の温度で熱処理して前記結晶核を成長させる工程と、を有し、前記結晶核を形成する工程において、前記アモルファスシリコン膜の大部分はアモルファス(非晶質)の状態を維持したまま前記アモルファスシリコン膜の一部を結晶化して結晶核を形成し、前記結晶核を成長させる工程において、前記結晶核を起点として前記アモルファスシリコン膜の大部分を結晶化する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、ポリシリコン膜のグレインサイズを拡大できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】ポリシリコン膜の形成方法の一例を示す工程断面図
【
図3】
図2の縦型熱処理装置の反応管を説明するための図
【
図4】実施例1の試料の結晶状態の一例を示す図(1)
【
図5】実施例1の試料の結晶状態の一例を示す図(2)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付の図面を参照しながら、本開示の限定的でない例示の実施形態について説明する。添付の全図面中、同一又は対応する部材又は部品については、同一又は対応する参照符号を付し、重複する説明を省略する。
【0009】
(ポリシリコン膜の形成方法)
一実施形態のポリシリコン膜の形成方法について説明する。
図1は、ポリシリコン膜の形成方法の一例を示す工程断面図である。
【0010】
最初に、表面に絶縁膜102が形成された基板101を準備する(
図1(a)参照)。基板101は、例えばシリコン基板等の半導体基板であってよい。絶縁膜102は、例えばシリコン酸化膜(SiO
2膜)、シリコン窒化膜(SiN膜)であってよい。
【0011】
続いて、基板101にシード層用のシリコン原料ガスを供給して絶縁膜102の上にシード層103を形成するシード層形成工程を行う(
図1(b)参照)。一実施形態では、シード層103は、シード層用のシリコン原料ガスとしてアミノシラン系ガスを用いて形成される。アミノシラン系ガスとしては、例えばDIPAS(ジイソプロピルアミノシラン)、3DMAS(トリスジメチルアミノシラン)、BTBAS(ビスターシャルブチルアミノシラン)が挙げられる。また、シード層103は、シード層用のシリコン原料ガスとして一分子中に2つ以上のシリコン(Si)を含む高次シラン系ガスを用いて形成されてもよい。高次シラン系ガスとしては、例えばSi
2H
6、Si
3H
8、Si
4H
10が挙げられる。また、シード層103は、シード層用のシリコン原料ガスとして水素化シランガス及びハロゲン含有シリコンガスを用いて形成されてもよい。水素化シランガスとしては、例えばSiH
4、Si
2H
6、Si
3H
8が挙げられる。ハロゲン含有シリコンガスとしては、例えばSiF
4、SiHF
3、SiH
2F
2、SiH
3F等のフッ素含有シリコンガス、SiCl
4、SiHCl
3、SiH
2Cl
2(DCS)、SiH
3Cl等の塩素含有シリコンガス、SiBr
4、SiHBr
3、SiH
2Br
2、SiH
3Br等の臭素含有ガスが挙げられる。さらに、シード層103は、上記のいずれかの単層膜に限定されず、上記の組合せにより形成される積層膜であってもよい。シード層103の形成方法は、例えば化学気相堆積(CVD:Chemical Vapor Deposition)法を利用できる。また、シード層用のシリコン原料ガスとしてアミノシラン系ガスを用いる場合には、熱分解が起こらない温度とすることが好ましい。このように絶縁膜102に上にシード層103を形成することにより、シード層103の上に形成されるシリコン膜のラフネスを低減できる。なお、絶縁膜102上にシード層103を形成することなく後述のアモルファスシリコン膜104を形成してもよい。
【0012】
続いて、基板101にシリコン原料ガスを供給してシード層103の上にアモルファスシリコン膜104を形成するシリコン膜形成工程を行う(
図1(b)参照)。一実施形態では、例えばCVD法により、基板101を加熱した状態でシリコン原料ガスを供給してシード層103の上にアモルファスシリコン膜104を形成する。アモルファスシリコン膜104は、ノンドープシリコン膜であってもよく、不純物をドープしたシリコン膜であってもよい。不純物としては、例えばボロン(B)、リン(P)、ヒ素(As)、酸素(O)、炭素(C)が挙げられる。シリコン原料ガスとしては、CVD法に適用可能であればよく、例えば水素化シランガス、ハロゲン含有シリコンガス、アミノシラン系ガスのうちの1つ又は複数を組み合わせて利用できる。水素化シランガスとしては、例えばSiH
4、Si
2H
6、Si
3H
8が挙げられる。ハロゲン含有シリコンガスとしては、例えばSiF
4、SiHF
3、SiH
2F
2、SiH
3F等のフッ素含有シリコンガス、SiCl
4、SiHCl
3、SiH
2Cl
2(DCS)、SiH
3Cl等の塩素含有シリコンガス、SiBr
4、SiHBr
3、SiH
2Br
2、SiH
3Br等の臭素含有ガスが挙げられる。アミノシラン系ガスとしては、例えばDIPAS(ジイソプロピルアミノシラン)、3DMAS(トリスジメチルアミノシラン)、BTBAS(ビスターシャルブチルアミノシラン)が挙げられる。また、不純物をドープする場合の不純物含有ガスとしては、例えばB
2H
6、BCl
3、PH
3、AsH
3が挙げられる。
【0013】
続いて、基板101にゲルマニウム原料ガスを供給してアモルファスシリコン膜104上にアモルファスゲルマニウム膜により形成されたキャップ層105を形成するキャップ層形成工程を行う(
図1(c)参照)。キャップ層形成工程は、アモルファスシリコン膜104を形成する工程の後、基板101を大気に曝露することなく連続して行うことが好ましい。また、ゲルマニウム原料ガスに代えて、シリコン原料ガスとゲルマニウム原料ガスとの混合ガスを供給することにより、アモルファスシリコンゲルマニウム膜により形成されたキャップ層105を形成してもよい。ゲルマニウム原料ガスとしては、水素化ゲルマンガス、ハロゲン含有ゲルマニウムガス、アミノゲルマン系ガスを利用できる。水素化ゲルマンガスとしては、例えばGeH
4、Ge
2H
6、Ge
3H
8が挙げられる。ハロゲン含有ゲルマニウムガスとしては、例えばGeF
4、GeHF
3、GeH
2F
2、GeH
3F等のフッ素含有ゲルマニウムガス、GeCl
4、GeHCl
3、GeH
2Cl
2、GeH
3Cl等の塩素含有ゲルマニウムガス、GeBr
4、GeHBr
3、GeH
2Br
2、GeH
3Br等の臭素含有ガスが挙げられる。アミノゲルマン系ガスとしては、例えばDMAG(ジメチルアミノゲルマン)、DEAG(ジエチルアミノゲルマン)、BDMAG(ビスジメチルアミノゲルマン)、BDEAG(ビスジエチルアミノゲルマン)、3DMAG(トリスジメチルアミノゲルマン)が挙げられる。
【0014】
続いて、基板101を第1の温度で熱処理してアモルファスシリコン膜104中にシリコンの結晶核104nを形成する第1の熱処理工程を行う(
図1(d)参照)。一実施形態では、第1の温度はゲルマニウム膜又はシリコンゲルマニウム膜の結晶化温度以上の温度であり、例えば450℃~550℃であってよい。これにより、シリコンよりも結晶化温度が低いゲルマニウム膜又はシリコンゲルマニウム膜により形成されたキャップ層105が結晶化されて結晶化膜105pを形成する。また、キャップ層105の結晶化に誘発されてアモルファスシリコン膜104の結晶化膜105pの側に僅かな結晶核104nが形成される。
【0015】
続いて、キャップ層105(結晶化膜105p)を除去する除去工程を行う(
図1(e)参照)。一実施形態では、結晶化膜105pを希フッ酸(dHF)でエッチングすることにより、結晶化膜105pの表面に生じ得る自然酸化膜を除去した後、結晶化膜105pを過酸化水素水(H
2O
2)でエッチングすることにより、結晶化膜105pを除去する。なお、結晶化膜105pを除去する方法は上記のウエットエッチングに限定されず、例えばエッチングガスを用いたドライエッチングであってもよい。エッチングガスとしては、Cl
2を用いることが好ましいが、例えばHCl、HBr、HI、Br
2、I
2を用いてもよい。ただし、3D NAND向けのチャネル層として用いられるポリシリコン膜を形成する場合、除去対象の結晶化膜105pはアスペクト比の高い凹部の内壁に形成されているため、ドライエッチングで除去することが困難である。そのため、3D NAND向けのチャネル層として用いられるポリシリコン膜を形成する場合には、ウエットエッチングにより結晶化膜105pを除去することが好ましい。
【0016】
続いて、結晶化膜105pが除去された基板101を第1の温度以上の第2の温度で熱処理して結晶核104nを成長させることにより、アモルファスシリコン膜104からポリシリコン膜104pを形成する第2の熱処理工程を行う(
図1(f))。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも高く、例えば550℃~900℃であってよい。
【0017】
以上の工程により、基板101の上にグレインサイズが拡大されたポリシリコン膜104pを形成できる。
【0018】
以上に説明したように、一実施形態のポリシリコン膜の形成方法によれば、アモルファスシリコン膜104の上にキャップ層105を形成した後に、熱処理によりシリコンの結晶核104nを形成する。その後、キャップ層105を除去した後、熱処理により結晶核104nを成長させて結晶化を行う。これにより、結晶核104nを形成する際、シリコンよりも結晶化温度が低いゲルマニウム又はシリコンゲルマニウムにより形成されたキャップ層105が先に結晶化される。また、キャップ層105の結晶化に誘発されてアモルファスシリコン膜104のキャップ層105の側に僅かな結晶核104nが形成される。そして、キャップ層105を除去した後の熱処理では、アモルファスシリコン膜104のキャップ層105の側に形成された僅かな結晶核104nを起点としてグレインが成長するため、グレインサイズが大きくなる。その結果、例えば、ポリシリコン膜104pをトランジスタのチャネル層に利用する場合、グレインサイズが拡大されたことにより移動度が高くなり、トランジスタの性能が向上する。
【0019】
(成膜装置)
上記のポリシリコン膜の形成方法を実施することができる成膜装置について、多数枚の基板に対して一括で熱処理を行うバッチ式の縦型熱処理装置を例に挙げて説明する。但し、成膜装置は、バッチ式の装置に限定されるものではなく、例えば基板を1枚ずつ処理する枚葉式の装置であってもよい。
【0020】
図2は、縦型熱処理装置の構成例を示す縦断面図である。
図3は、
図2の縦型熱処理装置の反応管を説明するための図である。
【0021】
図2に示されるように、縦型熱処理装置1は、反応管34と、蓋体36と、ウエハボート38と、ガス供給手段40と、排気手段41と、加熱手段42とを有する。ガス供給手段40、排気手段41及び加熱手段42は、それぞれ供給部、排気部及び加熱部の一例である。
【0022】
反応管34は、ウエハボート38を収容する処理容器である。ウエハボート38は、多数枚の半導体ウエハ(以下「ウエハW」という。)を所定の間隔で保持する基板保持具である。反応管34は、下端が開放された有天井の円筒形状の内管44と、下端が開放されて内管44の外側を覆う有天井の円筒形状の外管46とを有する。内管44及び外管46は、石英等の耐熱性材料により形成されており、同軸状に配置されて二重管構造となっている。
【0023】
内管44の天井部44Aは、例えば平坦になっている。内管44の一側には、その長手方向(上下方向)に沿ってガス供給管を収容するノズル収容部48が形成されている。例えば
図3に示されるように、内管44の側壁の一部を外側へ向けて突出させて凸部50を形成し、凸部50内をノズル収容部48として形成している。ノズル収容部48に対向させて内管44の反対側の側壁には、その長手方向(上下方向)に沿って幅L1の矩形状の開口52が形成されている。
【0024】
開口52は、内管44内のガスを排気できるように形成されたガス排気口である。開口52の長さは、ウエハボート38の長さと同じであるか、又は、ウエハボート38の長さよりも長く上下方向へそれぞれ延びるようにして形成されている。即ち、開口52の上端は、ウエハボート38の上端に対応する位置以上の高さに延びて位置され、開口52の下端は、ウエハボート38の下端に対応する位置以下の高さに延びて位置されている。具体的には、
図2に示されるように、ウエハボート38の上端と開口52の上端との間の高さ方向の距離L2は0mm~5mm程度の範囲内である。また、ウエハボート38の下端と開口52の下端との間の高さ方向の距離L3は0mm~350mm程度の範囲内である。
【0025】
反応管34の下端は、例えばステンレス鋼により形成される円筒形状のマニホールド54によって支持されている。マニホールド54の上端にはフランジ部56が形成されており、フランジ部56上に外管46の下端を設置して支持するようになっている。フランジ部56と外管46との下端との間にはOリング等のシール部材58を介在させて外管46内を気密状態にしている。
【0026】
マニホールド54の上部の内壁には、円環状の支持部60が設けられており、支持部60上に内管44の下端を設置してこれを支持するようになっている。マニホールド54の下端の開口には、蓋体36がOリング等のシール部材62を介して気密に取り付けられており、反応管34の下端の開口、即ち、マニホールド54の開口を気密に塞ぐようになっている。蓋体36は、例えばステンレス鋼により形成される。
【0027】
蓋体36の中央部には、磁性流体シール部64を介して回転軸66が貫通させて設けられている。回転軸66の下部は、ボートエレベータよりなる昇降手段68のアーム68Aに回転自在に支持されている。
【0028】
回転軸66の上端には回転プレート70が設けられており、回転プレート70上に石英製の保温台72を介してウエハWを保持するウエハボート38が載置されるようになっている。従って、昇降手段68を昇降させることによって蓋体36とウエハボート38とは一体として上下動し、ウエハボート38を反応管34内に対して挿脱できるようになっている。
【0029】
ガス供給手段40は、マニホールド54に設けられており、内管44内へ成膜ガス、エッチングガス、パージガス等のガスを導入する。ガス供給手段40は、複数(例えば3本)の石英製のガス供給管76,78,80を有している。各ガス供給管76,78,80は、内管44内にその長手方向に沿って設けられると共に、その基端がL字状に屈曲されてマニホールド54を貫通するようにして支持されている。
【0030】
ガス供給管76,78,80は、
図3に示されるように、内管44のノズル収容部48内に周方向に沿って一列になるように設置されている。各ガス供給管76,78,80には、その長手方向に沿って所定の間隔で複数のガス孔76A,78A,80Aが形成されており、各ガス孔76A,78A,80Aより水平方向に向けて各ガスを放出できるようになっている。所定の間隔は、例えばウエハボート38に支持されるウエハWの間隔と同じになるように設定される。また、高さ方向の位置は、各ガス孔76A,78A,80Aが上下方向に隣り合うウエハW間の中間に位置するように設定されており、各ガスをウエハW間の空間部に効率的に供給できるようになっている。ガスの種類としては、成膜ガス、エッチングガス、及びパージガスが用いられ、各ガスを流量制御しながら必要に応じて各ガス供給管76,78,80を介して供給できるようになっている。
【0031】
マニホールド54の上部の側壁であって、支持部60の上方には、ガス出口82が形成されており、内管44と外管46との間の空間部84を介して開口52より排出される内管44内のガスを排気できるようになっている。ガス出口82には、排気手段41が設けられる。排気手段41は、ガス出口82に接続された排気通路86を有しており、排気通路86には、圧力調整弁88及び真空ポンプ90が順次介設されて、反応管34内を真空引きできるようになっている。
【0032】
外管46の外周側には、外管46を覆うように円筒形状の加熱手段42が設けられている。加熱手段42は、反応管34内に収容されるウエハWを加熱する。
【0033】
縦型熱処理装置1の全体の動作は、制御部である制御手段95により制御される。制御手段95は、例えばコンピュータ等であってよい。また、縦型熱処理装置1の全体の動作を行うコンピュータのプログラムは、記憶媒体96に記憶されている。記憶媒体96は、例えばフレキシブルディスク、コンパクトディスク、ハードディスク、フラッシュメモリ、DVD等であってよい。
【0034】
係る構成を有する縦型熱処理装置1により、ウエハWにポリシリコン膜を形成する方法の一例を説明する。まず、昇降手段68により多数枚のウエハWを保持したウエハボート38を反応管34の内部に搬入し、蓋体36により反応管34の下端の開口部を気密に塞ぎ密閉する。続いて、制御手段95により、ポリシリコン膜の形成方法を実行するように、ガス供給手段40、排気手段41、加熱手段42等の動作が制御される。これにより、ウエハWの上にグレインサイズが拡大されたポリシリコン膜が形成される。
【0035】
(実施例1)
実施例1では、基板の上に形成されたアモルファスシリコン膜上にアモルファスゲルマニウム膜を形成し、基板を450℃、550℃で4時間熱処理した試料を作製した。また、比較のために、基板の上に形成されたアモルファスシリコン膜上にアモルファスゲルマニウム膜を形成することなく、基板を450℃、550℃で4時間熱処理した試料を作製した。そして、作製したそれぞれの試料について、斜入射X線回折(GIXRD:Grazing Incident X-ray Diffraction)法により、結晶状態を評価した。評価結果を
図4及び
図5に示す。
【0036】
図4及び
図5は、実施例1の試料の結晶状態の一例を示す図である。
図4は450℃で熱処理したときの試料をGIXRD法により測定した結果を示し、
図5に550℃で熱処理したときの試料をGIXRD法により測定した結果を示す。
図4及び
図5中、回折角度2θ[deg.]を横軸に示し、回折X線強度(Intensity)[arb. unit]を縦軸に示す。また、
図4及び
図5中、アモルファスシリコン膜上にアモルファスゲルマニウム膜を形成した試料を太実線、アモルファスシリコン膜上にアモルファスシリコン膜を形成していない試料を細実線で示す。なお、ゲルマニウム(Ge)及びシリコン(Si)の(111)面のピークは、それぞれ2θ=27.3°付近、2θ=28.5°付近に現れる(図中の破線を参照)。
【0037】
図4に示されるように、アモルファスシリコン膜上にアモルファスゲルマニウム膜を形成した後に450℃で熱処理した試料では、Geの(111)面のピークが現れ、Siの(111)面のピークが僅かに現れた。一方、アモルファスシリコン膜上にアモルファスゲルマニウム膜を形成することなく450℃で熱処理した試料では、Siの(111)面のピークが全く現れなかった。
【0038】
また、
図5に示されるように、アモルファスシリコン膜上にアモルファスゲルマニウム膜を形成した後に550℃で熱処理した試料では、450℃で熱処理した試料よりもSiの(111)面のピークが大きくなった。一方、アモルファスシリコン膜上にアモルファスゲルマニウム膜を形成することなく550℃で熱処理した試料では、Siの(111)面のピークが全く現れなかった。
【0039】
これらのことから、アモルファスシリコン膜上にアモルファスゲルマニウム膜を形成した後に450℃~550℃で熱処理することにより、アモルファスゲルマニウム膜が結晶化すると共に、アモルファスシリコン膜も結晶化することが分かる。すなわち、アモルファスゲルマニウム膜の結晶化によりアモルファスシリコン膜の結晶化が促進されていると推測される。
【0040】
(実施例2)
実施例2では、基板の上にアモルファスシリコン膜を形成し、その上にアモルファスゲルマニウム膜を形成し、525℃で4時間熱処理した後、アモルファスゲルマニウム膜を除去し、750℃で4時間熱処理した試料を作製した。また、比較のために、基板の上にアモルファスシリコン膜を形成した後、アモルファスゲルマニウム膜を形成することなく、750℃で4時間熱処理した試料を作製した。そして、作製したそれぞれの試料について、GIXRD法により、結晶状態を評価した。評価結果を
図6に示す。
【0041】
図6は、実施例2の試料の結晶状態の一例を示す図であり、それぞれの試料をGIXRD法により測定した結果を示す。
図6中、回折角度2θ[deg.]を横軸に示し、回折X線強度(Intensity)[arb. unit]を縦軸に示す。また、
図6中、アモルファスシリコン膜上にアモルファスゲルマニウム膜を形成した試料を太実線で示し、アモルファスシリコン膜上にアモルファスゲルマニウム膜を形成していない試料を細実線で示す。なお、ゲルマニウム(Ge)及びシリコン(Si)の(111)面のピークは、それぞれ2θ=27.3°付近、2θ=28.5°付近に現れる(図中の破線を参照)。
【0042】
図6に示されるように、アモルファスゲルマニウム膜を形成した試料では、アモルファスゲルマニウム膜を形成していない試料と比較して、ピーク半値全幅(FWHM:Full Width at Half Maximum)が小さくなった。
【0043】
このことから、アモルファスシリコン膜上にアモルファスゲルマニウム膜を形成し、525℃で4時間熱処理した後、アモルファスゲルマニウム膜を除去し、750℃で4時間熱処理することで、シリコン膜のグレインサイズが大きくなると推測される。
【0044】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 縦型熱処理装置
34 反応管
40 ガス供給手段
41 排気手段
42 加熱手段
95 制御手段