(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】半導体膜の形成方法及び成膜装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/205 20060101AFI20221209BHJP
H01L 21/20 20060101ALI20221209BHJP
【FI】
H01L21/205
H01L21/20
(21)【出願番号】P 2018220608
(22)【出願日】2018-11-26
【審査請求日】2021-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】兼村 瑠威
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 圭太
(72)【発明者】
【氏名】藤田 圭介
【審査官】高柳 匡克
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-171424(JP,A)
【文献】特開平08-264440(JP,A)
【文献】特開2014-127524(JP,A)
【文献】特開2013-082986(JP,A)
【文献】特開2012-004542(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0089429(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205
H01L 21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上に所望のグレインサイズを有する結晶化された半導体膜を形成する方法であって、
処理容器内に収容された前記基板の上にシード層を形成する工程と、
前記シード層が形成された前記基板を収容した状態で前記処理容器内の圧力を中真空以下に真空引きする工程と、
前記処理容器内を真空引きした後、前記シード層の上にアモルファス半導体膜を形成する工程と、
前記アモルファス半導体膜を熱処理により結晶化させる工程と、
を有
し、
前記真空引きする工程は、前記所望のグレインサイズに応じた時間、前記処理容器内を排気する、
半導体膜の形成方法。
【請求項2】
前記シード層を形成する工程の後に行われ、水素雰囲気で前記基板を第1の温度から前記第1の温度よりも高い第2の温度に昇温する工程と、
前記基板が前記第2の温度に昇温した後、水素雰囲気で温度を安定化させる工程と、
を有し、
前記真空引きする工程は、前記温度を安定化させる工程の後に行われる、
請求項
1に記載の半導体膜の形成方法。
【請求項3】
前記真空引きする工程は、前記処理容器内にガスを供給することなく行われる、
請求項1
又は2に記載の半導体膜の形成方法。
【請求項4】
前記シード層を形成する工程は、前記基板に一分子中に2つ以上のSiを含む高次シラン系ガス、アミノシラン系ガス、水素化シランガスとハロゲン含有シリコンガスの混合ガスの少なくともいずれかを含むガスを供給する工程を含み、
前記アモルファス半導体膜を形成する工程は、前記基板にシリコン原料ガスを供給する工程を含む、
請求項1乃至
3のいずれか一項に記載の半導体膜の形成方法。
【請求項5】
前記アモルファス半導体膜は、アモルファスシリコン膜である、
請求項1乃至
4のいずれか一項に記載の半導体膜の形成方法。
【請求項6】
基板の上に所望のグレインサイズを有する結晶化された半導体膜を形成する成膜装置であって、
前記基板を収容する処理容器と、
前記処理容器内にガスを供給する供給部と、
前記処理容器内を排気する排気部と、
前記基板を加熱する加熱部と、
制御部と、
を有し、
前記制御部は、
前記処理容器内に収容された前記基板の上にシード層を形成する工程と、
前記シード層が形成された前記基板を収容した状態で前記処理容器内の圧力を中真空以下に真空引きする工程と、
前記処理容器内を真空引きした後、前記シード層の上にアモルファス半導体膜を形成する工程と、
前記アモルファス半導体膜を熱処理により結晶化させる工程と、
を実行するように前記供給部、前記排気部及び前記加熱部を制御する
よう構成され、
前記制御部は、前記真空引きする工程において、前記所望のグレインサイズに応じた時間、前記処理容器内を排気するように前記排気部を制御するよう構成される、
成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体膜の形成方法及び成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アモルファスシリコン膜を熱処理により結晶化してポリシリコン膜を形成する際、アモルファスシリコン膜に炭素等の不純物を添加し、その添加量を調整することにより、ポリシリコン膜のグレインサイズを制御する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、不純物をドープすることなく、グレインサイズが制御された結晶化半導体膜を形成できる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様による半導体膜の形成方法は、基板の上に所望のグレインサイズを有する結晶化された半導体膜を形成する方法であって、処理容器内に収容された前記基板の上にシード層を形成する工程と、前記シード層が形成された前記基板を収容した状態で前記処理容器内の圧力を中真空以下に真空引きする工程と、前記処理容器内を真空引きした後、前記シード層の上にアモルファス半導体膜を形成する工程と、前記アモルファス半導体膜を熱処理により結晶化させる工程と、を有し、前記真空引きする工程は、前記所望のグレインサイズに応じた時間、前記処理容器内を排気する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、不純物をドープすることなく、グレインサイズが制御された結晶化半導体膜を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1の実施形態のポリシリコン膜の形成方法の一例を示すフローチャート
【
図2】
図1の各工程における温度とガス供給状態の一例を示す図
【
図3】第1の実施形態のポリシリコン膜の形成方法の変形例を説明するための図
【
図4】第2の実施形態のポリシリコン膜の形成方法の一例を示すフローチャート
【
図5】
図4の各工程における温度とガス供給状態の一例を示す図
【
図6】第2の実施形態のポリシリコン膜の形成方法の変形例を説明するための図
【
図8】
図7の縦型熱処理装置の反応管を説明するための図
【
図9】シード層形成工程の時間とポリシリコン膜のグレインサイズとの関係を示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付の図面を参照しながら、本開示の限定的でない例示の実施形態について説明する。添付の全図面中、同一又は対応する部材又は部品については、同一又は対応する参照符号を付し、重複する説明を省略する。
【0009】
アモルファスシリコン膜を結晶化させた結晶化シリコン膜(ポリシリコン膜)は、種々の用途に用いられている。種々の用途としては、例えばフラットパネルディスプレイ(FPD)の画素駆動用の薄膜トランジスタ(TFT)、不揮発性半導体記憶装置のメモリセルトランジスタのチャネル、MOSFETのゲート電極が挙げられる。
【0010】
ところで、ポリシリコン膜としては、用途によってグレインサイズの大きいポリシリコン膜が求められる場合やグレインサイズの小さいポリシリコン膜が求められる場合がある。また、ポリシリコン膜に限らず、他の結晶化半導体膜についても同様である。そこで、以下では、グレインサイズが制御された結晶化半導体膜を形成できる半導体膜の形成方法及び成膜装置について説明する。
【0011】
〔半導体膜の形成方法〕
(第1の実施形態)
第1の実施形態の半導体膜の形成方法について、ポリシリコン膜を形成する場合を例に挙げて説明する。
図1は、第1の実施形態のポリシリコン膜の形成方法の一例を示すフローチャートである。
図2は、
図1の各工程における温度とガス供給状態の一例を示す図である。
【0012】
最初に、処理容器内に収容された基板にシード層用のシリコン(Si)原料ガスを供給して基板の上にシード層を形成するシード層形成工程を行う(ステップS11)。一実施形態では、例えば化学気相堆積(CVD:Chemical Vapor Deposition)法により、基板を第1の温度T1に加熱した状態でシード層用のシリコン原料ガスを供給して基板の上にシード層を形成する。基板としては、例えばシリコン基板等の半導体基板を利用できる。
【0013】
シード層用のシリコン原料ガスとしては、一分子中に2つ以上のSiを含む高次シラン系ガス、アミノシラン系ガス、水素化シランガスとハロゲン含有シリコンガスとの混合ガスの少なくともいずれかを含むガスを好適に利用できる。シード層を形成することにより、シード層の上に形成されるシリコン膜のラフネスを低減できる。なお、シード層は、上記のいずれかのガスを用いて形成される単層膜であってもよく、上記のガスを組み合わせて形成される積層膜であってもよい。また、シード層用のシリコン原料ガスとしてアミノシラン系化合物を用いる場合には、熱分解が起こらない温度とすることが好ましい。
【0014】
高次シラン系ガスとしては、例えばSi2H6、Si3H8、Si4H10が挙げられる。アミノシラン系ガスとしては、例えばDIPAS(ジイソプロピルアミノシラン)、3DMAS(トリスジメチルアミノシラン)、BTBAS(ビスターシャルブチルアミノシラン)が挙げられる。水素化シランガスとしては、例えばSiH4、Si2H6、Si3H8が挙げられる。ハロゲン含有シリコンガスとしては、例えばSiF4、SiHF3、SiH2F2、SiH3F等のフッ素含有シリコンガス、SiCl4、SiHCl3、SiH2Cl2(DCS)、SiH3Cl等の塩素含有シリコンガス、SiBr4、SiHBr3、SiH2Br2、SiH3Br等の臭素含有ガスが挙げられる。
【0015】
一実施形態では、
図2に示されるように、シード層用のシリコン原料ガスとしてSi
2H
6が利用される。シード層の厚さは、例えば1~2nmであってよい。シード層形成工程におけるプロセス条件としては、例えば処理温度が350~430℃、圧力が6.5~667Paの範囲を利用できる。
【0016】
続いて、水素雰囲気でシード層形成工程における温度(第1の温度T1)から後述のシリコン膜形成工程における温度(第2の温度T2)に基板を昇温する昇温工程を行う(ステップS12)。昇温工程では、例えば基板が収容された処理容器内に水素(H2)ガスを供給して処理容器内の圧力を低真空、例えば90Torr(1.2×104Pa)程度に維持する。なお、「低真空」とは、105Pa~102Paの圧力の状態をいう。
【0017】
続いて、水素雰囲気で基板の温度を第2の温度T2で安定化させる安定化工程を行う(ステップS13)。安定化工程では、例えば基板が収容された処理容器内に水素を供給して処理容器内の圧力を低真空、例えば90Torr(1.2×104Pa)程度に維持する。
【0018】
続いて、シード層が形成された基板を収容した状態で処理容器内の圧力を中真空以下に真空引きする真空引き工程を行う(ステップS14)。なお、「中真空」とは、102Pa~10-1Paの圧力の状態をいう。真空引き工程では、処理容器内の温度を第2の温度T2に維持した状態で、所望のグレインサイズに応じた時間、処理容器内を排気する。所望のグレインサイズに応じた時間は、例えば真空引き時間とグレインサイズとの関係を示すテーブル、数式等の関係情報に基づいて選択される。関係情報は、予備実験等により求められる。真空引き工程は、例えば処理容器内にガスを供給することなく行ってもよく、処理容器内に微量のガス、例えば窒素、アルゴン等の不活性ガスや水素を供給しながら行ってもよい。また、真空引き工程は、昇温工程と後述のシリコン膜形成工程との間に行えばよく、例えば昇温工程と安定化工程との間に行ってもよく、安定化工程の途中で行ってもよい。ただし、ガスの切り替え時間や真空引き時間を短縮して生産性を向上させるという観点から、安定化工程の後に行うことが好ましい。
【0019】
続いて、処理容器内に収容された基板にシリコン原料ガスを供給してシード層の上にアモルファス半導体膜であるアモルファスシリコン膜を形成するシリコン膜形成工程を行う(ステップS15)。一実施形態では、例えばCVD法により、基板を第2の温度T2に加熱した状態でシリコン原料ガスを供給してシード層の上にアモルファスシリコン膜を形成する。アモルファスシリコン膜は、ノンドープシリコン膜であってもよく、不純物をドープしたシリコン膜であってもよい。不純物としては、例えばボロン(B)、リン(P)、ヒ素(As)、酸素(O)、炭素(C)が挙げられる。
【0020】
シリコン原料ガスとしては、CVD法に適用可能であればよく、例えば水素化シランガス、ハロゲン含有シリコンガス、アミノシラン系ガスの少なくともいずれかを含むガスを好適に利用できる。
【0021】
水素化シランガスとしては、例えばSiH4、Si2H6、Si3H8が挙げられる。ハロゲン含有シリコンガスとしては、例えばSiF4、SiHF3、SiH2F2、SiH3F等のフッ素含有シリコンガス、SiCl4、SiHCl3、SiH2Cl2(DCS)、SiH3Cl等の塩素含有シリコンガス、SiBr4、SiHBr3、SiH2Br2、SiH3Br等の臭素含有ガスが挙げられる。アミノシラン系ガスとしては、例えばDIPAS(ジイソプロピルアミノシラン)、3DMAS(トリスジメチルアミノシラン)、BTBAS(ビスターシャルブチルアミノシラン)が挙げられる。また、不純物をドープする場合の不純物含有ガスとしては、例えばB2H6、BCl3、PH3、AsH3が挙げられる。
【0022】
シリコン膜形成工程におけるプロセス条件の一例としては、例えば処理温度が430~550℃、圧力が6.5~667Paの範囲を利用できる。
【0023】
続いて、アモルファスシリコン膜を熱処理により結晶化してポリシリコン膜を形成する結晶化工程を行う(ステップS16)。結晶化工程におけるプロセス条件の一例としては、例えば処理温度が550~900℃、圧力が6.5~105Paの範囲を利用できる。
【0024】
以上の工程(ステップS11~S16)により、基板の上にグレインサイズが制御されたポリシリコン膜を形成できる。
【0025】
なお、上記の例では、シード層形成工程とシリコン膜形成工程とが異なる温度で実行される場合を説明したが、これに限定されない。例えば、
図3に示されるように、シード層形成工程とシリコン膜形成工程とは同じ温度(例えば、第2の温度T2)で実行されてもよい。この場合、昇温工程を省略できる。また、昇温工程に加えて安定化工程を省略してもよい。なお、
図3は、第1の実施形態のポリシリコン膜の形成方法の変形例を説明するための図である。
【0026】
次に、上記のポリシリコン膜の形成方法により、ポリシリコン膜のグレインサイズを制御できる理由を説明する。
【0027】
まず、シード層形成工程では、水素を含むシード層が形成される。昇温工程及び温度安定化工程では、水素雰囲気で基板を加熱して基板の温度を安定化させるため、シード層の温度が、膜中から水素が脱離する温度以上になった場合でも水素の脱離が抑制される。真空引き工程では、処理容器内の圧力を中真空以下に真空引きするため、シード層のシリコン-水素(Si-H)結合が切断されてシード層にSiの結晶核が形成される。このとき、真空引き工程の時間が長いほどSi-H結合が多く切断されるため、結晶核の密度が高くなる。シリコン膜形成工程では、Siの結晶核が形成されたシード層の上にアモルファスシリコン膜が形成される。結晶化工程では、アモルファスシリコン膜が熱処理されることにより、シード層に形成された結晶核を起点としてグレインが成長する。このため、結晶核の密度が高いほどグレインサイズが小さくなる。すなわち、真空引き工程の時間を長くするとグレインサイズが小さくなり、真空引き工程の時間を短くするとグレインサイズが大きくなる。
【0028】
このように、一実施形態の半導体膜の形成方法は、シード層形成工程とシリコン膜形成工程との間に真空引き工程を有する。これにより、真空引き工程の時間を制御することで、ポリシリコン膜のグレインサイズを制御できる。
【0029】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態の半導体膜の形成方法について、ポリシリコン膜を形成する場合を例に挙げて説明する。
図4は、第2の実施形態のポリシリコン膜の形成方法の一例を示すフローチャートである。
図5は、
図4の各工程における温度とガス供給状態の一例を示す図である。
【0030】
最初に、所望のグレインサイズに応じた時間、処理容器内に収容された基板にシード層用のシリコン原料ガスを供給して基板の上にシード層を形成するシード層形成工程を行う(ステップS21)。所望のグレインサイズに応じた時間は、例えばシード層形成工程の時間とグレインサイズとの関係を示すテーブル、数式等の関係情報に基づいて選択される。関係情報は、予備実験等により求められる。基板及びシード層用のシリコン原料ガスとしては、それぞれ前述のシード層形成工程(ステップS11)における基板及びシード層用のシリコン原料ガスを利用できる。一実施形態では、
図5に示されるように、シード層用のシリコン原料ガスとしてSi
2H
6が利用される。シード層の厚さは、例えば2nm以下であってよい。シード層形成工程におけるプロセス条件としては、例えば処理温度が350~430℃、圧力が6.5~667Pa、処理時間が5~360分の範囲を利用できる。シード層用のシリコン原料ガスとしてアミノシラン系化合物を用いる場合には、熱分解が起こらない温度とすることが好ましい。
【0031】
続いて、水素雰囲気でシード層形成工程における温度(第1の温度T1)から後述のシリコン膜形成工程における温度(第2の温度T2)に基板を昇温する昇温工程を行う(ステップS22)。昇温工程(ステップS22)は、前述の昇温工程(ステップS12)と同様であってよい。
【0032】
続いて、水素雰囲気で基板の温度を第2の温度T2で安定化させる安定化工程を行う(ステップS23)。安定化工程(ステップS23)は、前述の安定化工程(ステップS13)と同様であってよい。
【0033】
続いて、処理容器内に収容された基板にシリコン原料ガスを供給してシード層の上にアモルファスシリコン膜を形成するシリコン膜形成工程を行う(ステップS25)。シリコン膜形成工程(ステップS25)は、前述のシリコン膜形成工程(ステップS15)と同様であってよい。
【0034】
続いて、アモルファスシリコン膜を熱処理により結晶化してポリシリコン膜を形成する結晶化工程を行う(ステップS26)。結晶化工程(ステップS26)は、前述の結晶化工程(ステップS16)と同様であってよい。
【0035】
以上の工程(ステップS21,S22,S23,S25,S26)により、基板の上にグレインサイズが制御されたポリシリコン膜を形成できる。
【0036】
なお、上記の例では、シード層形成工程とシリコン膜形成工程とが異なる温度で実行される場合を説明したが、これに限定されない。例えば、
図6に示されるように、シード層形成工程とシリコン膜形成工程とは同じ温度(例えば、第2の温度T2)で実行されてもよい。この場合、昇温工程を省略できる。なお、
図6は、第2の実施形態のポリシリコン膜の形成方法の変形例を説明するための図である。
【0037】
次に、上記のポリシリコン膜の形成方法により、ポリシリコン膜のグレインサイズを制御できる理由を説明する。
【0038】
まず、シード層形成工程では、所望のグレインサイズに応じた時間、処理容器内に収容された基板にシード層用のシリコン原料ガスを供給して基板の上にシード層が形成される。シード層形成工程では、処理時間を長くしてシード層が下地全面を覆うような完全な膜になると結晶核の形成が抑制されるが、処理時間を短くしてシード層が不完全な膜になると結晶核が形成されやすくなる。昇温工程及び温度安定化工程では、水素雰囲気で基板を加熱して基板の温度を安定化させるため、シード層の温度が、膜中から水素が脱離する温度以上になった場合でも水素の脱離が抑制される。シリコン膜形成工程では、Siの結晶核が形成されたシード層の上にアモルファスシリコン膜が形成される。結晶化工程では、アモルファスシリコン膜が熱処理されることにより、シード層に形成された結晶核を起点としてグレインが成長する。このため、結晶核の密度が高いほどグレインサイズが小さくなる。すなわち、シード層形成工程の時間を短くすると結晶核の密度が高くなることでグレインサイズが小さくなり、シード層形成工程の時間を長くすると結晶核の密度が低くなることでグレインサイズが大きくなる。
【0039】
このように、一実施形態の半導体膜の形成方法は、シード層形成工程の時間を制御することで、ポリシリコン膜のグレインサイズを制御できる。
【0040】
なお、上記の第1の実施形態及び第2の実施形態では、半導体膜の形成方法としてシリコン膜を形成する場合を説明したが、これに限定されない。半導体膜の形成方法は、例えばゲルマニウム膜、シリコンゲルマニウム膜を形成する場合にも適用できる。ゲルマニウム膜及びシリコンゲルマニウム膜は、例えばノンドープ膜であってもよく、ドープ膜であってもよい。
【0041】
ゲルマニウム膜を形成する場合、シリコン原料ガスに代えて、例えばゲルマニウム原料ガスを用いることができる。ゲルマニウム原料ガスとしては、水素化ゲルマンガス、ハロゲン含有ゲルマニウムガス、アミノゲルマン系ガスの少なくともいずれかを含むガスを利用できる。水素化ゲルマンガスとしては、例えばGeH4、Ge2H6、Ge3H8が挙げられる。ハロゲン含有ゲルマニウムガスとしては、例えばGeF4、GeHF3、GeH2F2、GeH3F等のフッ素含有ゲルマニウムガス、GeCl4、GeHCl3、GeH2Cl2、GeH3Cl等の塩素含有ゲルマニウムガス、GeBr4、GeHBr3、GeH2Br2、GeH3Br等の臭素含有ガスが挙げられる。アミノゲルマン系ガスとしては、例えばDMAG(ジメチルアミノゲルマン)、DEAG(ジエチルアミノゲルマン)、BDMAG(ビスジメチルアミノゲルマン)、BDEAG(ビスジエチルアミノゲルマン)、3DMAG(トリスジメチルアミノゲルマン)が挙げられる。
【0042】
シリコンゲルマニウム膜を形成する場合、シリコン原料ガスに代えて、例えばシリコン原料ガスとゲルマニウム原料ガスとの混合ガスを利用できる。
【0043】
〔成膜装置〕
上記の半導体膜の形成方法を実施できる成膜装置について、多数枚の基板に対して一括で熱処理を行うバッチ式の縦型熱処理装置を例に挙げて説明する。但し、成膜装置は、バッチ式の装置に限定されるものではなく、例えば基板を1枚ずつ処理する枚葉式の装置であってもよい。
【0044】
図7は、縦型熱処理装置の構成例を示す縦断面図である。
図8は、
図7の縦型熱処理装置の反応管を説明するための図である。
【0045】
図7に示されるように、縦型熱処理装置1は、反応管34と、蓋体36と、ウエハボート38と、ガス供給手段40と、排気手段41と、加熱手段42とを有する。ガス供給手段40、排気手段41及び加熱手段42は、それぞれ供給部、排気部及び加熱部の一例である。
【0046】
反応管34は、ウエハボート38を収容する処理容器である。ウエハボート38は、多数枚の半導体ウエハ(以下「ウエハW」という。)を所定の間隔で保持する基板保持具である。反応管34は、下端が開放された有天井の円筒形状の内管44と、下端が開放されて内管44の外側を覆う有天井の円筒形状の外管46とを有する。内管44及び外管46は、石英等の耐熱性材料により形成されており、同軸状に配置されて二重管構造となっている。
【0047】
内管44の天井部44Aは、例えば平坦になっている。内管44の一側には、その長手方向(上下方向)に沿ってガス供給管を収容するノズル収容部48が形成されている。例えば
図8に示されるように、内管44の側壁の一部を外側へ向けて突出させて凸部50を形成し、凸部50内をノズル収容部48として形成している。ノズル収容部48に対向させて内管44の反対側の側壁には、その長手方向(上下方向)に沿って幅L1の矩形状の開口52が形成されている。
【0048】
開口52は、内管44内のガスを排気できるように形成されたガス排気口である。開口52の長さは、ウエハボート38の長さと同じであるか、又は、ウエハボート38の長さよりも長く上下方向へそれぞれ延びるようにして形成されている。即ち、開口52の上端は、ウエハボート38の上端に対応する位置以上の高さに延びて位置され、開口52の下端は、ウエハボート38の下端に対応する位置以下の高さに延びて位置されている。具体的には、
図7に示されるように、ウエハボート38の上端と開口52の上端との間の高さ方向の距離L2は0mm~5mm程度の範囲内である。また、ウエハボート38の下端と開口52の下端との間の高さ方向の距離L3は0mm~350mm程度の範囲内である。
【0049】
反応管34の下端は、例えばステンレス鋼により形成される円筒形状のマニホールド54によって支持されている。マニホールド54の上端にはフランジ部56が形成されており、フランジ部56上に外管46の下端を設置して支持するようになっている。フランジ部56と外管46との下端との間にはOリング等のシール部材58を介在させて外管46内を気密状態にしている。
【0050】
マニホールド54の上部の内壁には、円環状の支持部60が設けられており、支持部60上に内管44の下端を設置してこれを支持するようになっている。マニホールド54の下端の開口には、蓋体36がOリング等のシール部材62を介して気密に取り付けられており、反応管34の下端の開口、即ち、マニホールド54の開口を気密に塞ぐようになっている。蓋体36は、例えばステンレス鋼により形成される。
【0051】
蓋体36の中央部には、磁性流体シール部64を介して回転軸66が貫通させて設けられている。回転軸66の下部は、ボートエレベータよりなる昇降手段68のアーム68Aに回転自在に支持されている。
【0052】
回転軸66の上端には回転プレート70が設けられており、回転プレート70上に石英製の保温台72を介してウエハWを保持するウエハボート38が載置されるようになっている。従って、昇降手段68を昇降させることによって蓋体36とウエハボート38とは一体として上下動し、ウエハボート38を反応管34内に対して挿脱できるようになっている。
【0053】
ガス供給手段40は、マニホールド54に設けられており、内管44内へ成膜ガス、エッチングガス、パージガス等のガスを導入する。ガス供給手段40は、複数(例えば3本)の石英製のガス供給管76,78,80を有している。各ガス供給管76,78,80は、内管44内にその長手方向に沿って設けられると共に、その基端がL字状に屈曲されてマニホールド54を貫通するようにして支持されている。
【0054】
ガス供給管76,78,80は、
図8に示されるように、内管44のノズル収容部48内に周方向に沿って一列になるように設置されている。各ガス供給管76,78,80には、その長手方向に沿って所定の間隔で複数のガス孔76A,78A,80Aが形成されており、各ガス孔76A,78A,80Aより水平方向に向けて各ガスを放出できるようになっている。所定の間隔は、例えばウエハボート38に支持されるウエハWの間隔と同じになるように設定される。また、高さ方向の位置は、各ガス孔76A,78A,80Aが上下方向に隣り合うウエハW間の中間に位置するように設定されており、各ガスをウエハW間の空間部に効率的に供給できるようになっている。ガスの種類としては、成膜ガス、エッチングガス、及びパージガスが用いられ、各ガスを流量制御しながら必要に応じて各ガス供給管76,78,80を介して供給できるようになっている。
【0055】
マニホールド54の上部の側壁であって、支持部60の上方には、ガス出口82が形成されており、内管44と外管46との間の空間部84を介して開口52より排出される内管44内のガスを排気できるようになっている。ガス出口82には、排気手段41が設けられる。排気手段41は、ガス出口82に接続された排気通路86を有しており、排気通路86には、圧力調整弁88及び真空ポンプ90が順次介設されて、反応管34内を真空引きできるようになっている。
【0056】
外管46の外周側には、外管46を覆うように円筒形状の加熱手段42が設けられている。加熱手段42は、反応管34内に収容されるウエハWを加熱する。
【0057】
縦型熱処理装置1の全体の動作は、制御部である制御手段95により制御される。制御手段95は、例えばコンピュータ等であってよい。また、縦型熱処理装置1の全体の動作を行うコンピュータのプログラムは、記憶媒体96に記憶されている。記憶媒体96は、例えばフレキシブルディスク、コンパクトディスク、ハードディスク、フラッシュメモリ、DVD等であってよい。
【0058】
係る縦型熱処理装置1により、ウエハWにポリシリコン膜を形成する方法の一例を説明する。まず、昇降手段68により多数枚のウエハWを保持したウエハボート38を反応管34の内部に搬入し、蓋体36により反応管34の下端の開口部を気密に塞ぎ密閉する。続いて、制御手段95により、前述のステップS11~S16やステップS21,S22,S23,S25,S26を実行するように、ガス供給手段40、排気手段41、加熱手段42等の動作が制御される。これにより、ウエハWの上にグレインサイズが制御されたポリシリコン膜が形成される。
【0059】
〔実施例1〕
実施例1では、真空引き工程の時間を制御することでポリシリコン膜のグレインサイズを制御できることを確認するために行った実験結果について説明する。実施例1では、上記の縦型熱処理装置1を用いて、前述のポリシリコン膜の形成方法におけるステップS11~S16を行った。シード層形成工程では、処理温度を380℃、圧力を1Torr(133Pa)、シード層用のシリコン原料ガスをSi2H6とするプロセス条件で、厚さが2nmのシード層を形成した。また、シリコン膜形成工程では、処理温度を470℃、圧力を0.4Torr(53Pa)、シリコン原料ガスをSiH4とするプロセス条件で、厚さが28nmのアモルファスシリコン膜を形成した。また、真空引き工程の時間を0分、5分、60分と変化させた。さらに、EBSD(Electron Back Scatter Diffraction Patterns)法により、形成したポリシリコン膜のグレインサイズを評価した。
【0060】
評価の結果、真空引き工程の時間を0分、5分、60分の場合のポリシリコン膜のグレインサイズの平均値は、それぞれ0.35μm、0.31μm、0.29μmであった。この結果から、真空引き工程の時間を変更することで、ポリシリコン膜のグレインサイズが変化することが分かる。より具体的には、真空引き工程の時間を長くすることで、ポリシリコン膜のグレインサイズが小さくなることが分かる。このように真空引き工程の時間を制御することで、ポリシリコン膜のグレインサイズを制御できることが分かる。
【0061】
〔実施例2〕
実施例2では、シード層形成工程の時間を制御することでポリシリコン膜のグレインサイズを制御できることを確認するために行った実験結果について説明する。実施例2では、上記の縦型熱処理装置1を用いて、前述のポリシリコン膜の形成方法におけるステップS21,S22,S23,S25,S26を行った。シード層形成工程では、処理温度を350℃、圧力を1Torr(133Pa)、シード層用のシリコン原料ガスをアミノシラン系ガスとするプロセス条件で、第1のシード層を形成した。また、処理温度を350℃、圧力を4Torr(533Pa)、シード層用のシリコン原料ガスをSi2H6とするプロセス条件で、第1のシード層の上に第2のシード層を形成した。このとき、第2のシード層を形成する際の時間を0分、50分、150分と変化させた。また、シリコン膜形成工程では、処理温度を520℃、圧力を0.3Torr(40Pa)、シリコン原料ガスをSiH4、不純物含有ガスをPH3とするプロセス条件で、リンがドープされたアモルファスシリコン膜を28nmの厚さで形成した。さらに、EBSD法により、形成したポリシリコン膜のグレインサイズを評価した。
【0062】
図9は、シード層形成工程の時間とポリシリコン膜のグレインサイズとの関係を示す図である。
図9に示されるように、シード層形成工程の時間を0分、50分、150分の場合のポリシリコン膜のグレインサイズの平均値は、それぞれ0.26μm、0.31μm、0.42μmであった。この結果から、シード層形成工程の時間を変更することで、ポリシリコン膜のグレインサイズが変化することが分かる。より具体的には、シード層形成工程の時間を長くすることで、ポリシリコン膜のグレインサイズが大きくなることが分かる。このようにシード層形成工程の時間を制御することで、ポリシリコン膜のグレインサイズを制御できることが分かる。
【0063】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 縦型熱処理装置
34 反応管
40 ガス供給手段
41 排気手段
42 加熱手段
95 制御手段