(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/511 20060101AFI20221209BHJP
A61F 13/536 20060101ALI20221209BHJP
A61F 13/537 20060101ALI20221209BHJP
【FI】
A61F13/511 400
A61F13/511 110
A61F13/536 100
A61F13/537 210
A61F13/511 300
(21)【出願番号】P 2018224095
(22)【出願日】2018-11-29
(62)【分割の表示】P 2018169139の分割
【原出願日】2018-09-10
【審査請求日】2021-09-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100139022
【氏名又は名称】小野田 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100192463
【氏名又は名称】奥野 剛規
(74)【代理人】
【識別番号】100169328
【氏名又は名称】藤本 健治
(72)【発明者】
【氏名】曽我部 瑶介
(72)【発明者】
【氏名】大村 夏美
(72)【発明者】
【氏名】黒田 賢一郎
(72)【発明者】
【氏名】野田 祐樹
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-324038(JP,A)
【文献】特表2001-521590(JP,A)
【文献】特開2016-120072(JP,A)
【文献】特開2017-099562(JP,A)
【文献】特開2016-220986(JP,A)
【文献】特開2017-086170(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
A61L15/16-15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面シートと、裏面シートと、前記表面シートと前記裏面シートとの間に位置する吸収体とを備え
、長手方向、幅方向、及び厚さ方向を有する吸収性物品であって、
前記表面シートは、
保水性繊維を含む第1繊維層と、
前記第1繊維層の非肌側に隣接し、疎水性繊維と保水性繊維とを含む第2繊維層と、
を備え、
前記第1繊維層の肌側の表面は、前記表面シートの肌側の表面を構成し、
前記第2繊維層の非肌側の表面は、前記表面シートの非肌側の表面を構成し、
前記第1繊維層を構成する繊維のうちの前記保水性繊維の割合は、前記第2繊維層を構成する繊維のうちの前記保水性繊維の割合よりも多く、
前記第2繊維層に含まれる前記疎水性繊維は、互いに熱融着している熱融着性繊維を含み、
前記第2繊維層の前記熱融着性繊維の少なくとも一部は、前記第1繊維層の肌側の表面に露出
し、
前記表面シートを構成する繊維は、前記表面シートの前記幅方向の両端部の方が、前記表面シートの前記幅方向の中央部よりも、前記表面シートの前記長手方向に配向している、
吸収性物品。
【請求項2】
前記表面シートと前記吸収体との間に、前記第2繊維層の繊維密度よりも高い繊維密度を有する補助シートを更に備える、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記吸収性物品の
前記厚さ方向に、前記表面シートと前記吸収体とが圧縮された圧搾部を有し、
前記第2繊維層の前記熱融着性繊維の少なくとも一部は、前記圧搾部の内側の表面に露出している、
請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記圧搾部は、
前記吸収性物品の
前記厚さ方向の深さが浅い低密度部と、
前記吸収性物品の
前記厚さ方向の深さが深い高密度部と、
を含み、
前記第2繊維層の前記熱融着性繊維の少なくとも一部は、前記低密度部の表面に露出している、
請求項3に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記表面シートは、
前記吸収性物品の
前記長手方向に沿って延び、前記吸収性物品の
前記幅方向に間隔を空けて位置する複数の凸部と、
前記吸収性物品の
前記長手方向に沿って延び、互いに隣接する凸部間に位置する複数の凹部と、
を有し、
前記表面シートにおいて、前記凸部の頂部の繊維密度をS1、前記凹部の底部の繊維密度をS2、及び、前記凸部の頂部と前記凹部の底部との間の領域の繊維密度をS3、としたとき、S1<S3<S2、である、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記表面シートは、前記複数の凹部の各々において、前記吸収性物品の
前記厚さ方向に、前記第1繊維層から前記第2繊維層に向かって圧縮された複数の窪み部を有する、
請求項5に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記第2繊維層の前記疎水性繊維の平均繊維長は、前記第1繊維層及び第2繊維層の前記保水性繊維の平均繊維長よりも長い、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記表面シートに含まれる前記保水性繊維はセルロース系繊維であり、
前記吸収体はセルロース系繊維を含み、
前記表面シートに含まれる前記セルロース系繊維の一部は、前記吸収体に含まれる前記セルロース
系繊維と接触している、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記表面シートに含まれる前記保水性繊維はコットンである、
請求項1乃至
8のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項10】
前記表面シートと前記吸収体との間に位置する補助シートを更に備え、
前記表面シートの前記幅方向の寸法は、前記補助シートの前記幅方向の寸法よりも小さい、
請求項1乃至
9のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
吸収性物品の表面シートとして、コットン繊維のような水分を吸収し、保持する保水性繊維を含むシートが知られている。例えば特許文献1には、表面シートとして用いられる、コットン繊維を含む繊維シートが開示されている。この繊維シートは、コットン繊維層と合成繊維の不織布とを含み、コットン繊維層が不織布に一部入り込んだ状態で形成されている。
【0003】
一般に、コットン繊維のような保水性繊維は、良好な肌触りを有するため、肌に接する下着などに好適に用いられている。しかし、コットン繊維は高い保水性を有するため、コットン繊維を含むシートを吸収性物品の表面シートとして使用する場合、その表面シートは着用者から排泄される液状の排泄物(液状排泄物)を吸収し、保持して、湿った状態を維持してしまう可能性がある。そうなると、着用者は、濡れて湿った表面シートに接触し続けることになるため、不快感を覚えるおそれがある。すなわち、コットン繊維を含むシートを表面シートに用いる場合、ドライ性が低いという課題が存在している。
【0004】
特許文献1の記載によれば、特許文献1に開示されたコットン繊維を含む繊維シートは以下の特性を有するとされている。繊維シートでは、コットン繊維層が厚さ方向に不織布の内部に入り込んでいるので、コットン繊維層から繊維シートの厚さ方向の中央部に向かって繊維量が漸次多くなり、すなわち繊維間距離が漸次小さくなる。その結果、コットン繊維層から繊維シートの厚さ方向の中央部に向かって毛管力が漸次高くなり、コットン繊維層からシート内部への液の引き込み性が高くなる。したがって、繊維シートの表面のドライ性を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のコットン繊維を含む繊維シートは以下の課題を有している。繊維シートにおける厚さ方向の中央部を挟んでコットン繊維層と反対側に位置する合成繊維の層は、合成繊維のみの層である。したがって、繊維シートの厚さ方向の中央部から合成繊維の層に向かって繊維量が漸次少なくなる、すなわち繊維間距離が漸次大きくなる。その結果、繊維シートの厚さ方向の中央部から合成繊維の層に向かって毛管力が漸次低くなる。そうなると、繊維シートは、コットン繊維層側から吸収した液体を、繊維シートの厚さ方向の中央部まで引き込むことはできるが、合成繊維の層側へ移行させ難くなる。そのため、繊維シートを吸収性物品の表面シートとして使用する場合、表面シートは着用者から排泄される液状排泄物をコットン繊維層から厚さ方向の中央部まで引き込むことはできるが、厚さ方向の中央部から合成繊維の層へ移行させ難くなる。すなわち、液状排泄物が表面シートから吸収体へ移行し難くなり、吸収性物品の吸収性能が低下する、例えば吸収速度が低下したり、吸収量が低下したりするおそれがある。
【0007】
本発明の目的は、表面シートの肌触りを良好にしつつ、吸収性能を向上させることが可能な吸収性物品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の吸収性物品は次のとおりである。(1)表面シートと、裏面シートと、前記表面シートと前記裏面シートとの間に位置する吸収体とを備える吸収性物品であって、前記表面シートは、保水性繊維を含む第1繊維層と、前記第1繊維層の非肌側に隣接し、疎水性繊維と保水性繊維とを含む第2繊維層と、を備え、前記第1繊維層の肌側の表面は、前記表面シートの肌側の表面を構成し、前記第2繊維層の非肌側の表面は、前記表面シートの非肌側の表面を構成し、前記第1繊維層を構成する繊維のうちの前記保水性繊維の割合は、前記第2繊維層を構成する繊維のうちの前記保水性繊維の割合よりも多く、前記第2繊維層の前記保水性繊維の平均繊維長は、前記第1繊維層の前記保水性繊維の平均繊維長よりも短い、吸収性物品。
【0009】
本吸収性物品では、表面シートの肌側に位置する第1繊維層における保水性繊維の割合が相対的に高いため、表面シートの肌触りを良好にすることができる。また、第1繊維層に含まれる保水性繊維の平均繊維長が相対的に長いため、平均繊維長が短過ぎて繊維同士の交絡が不足してしまい毛羽が発生するという事態を抑制でき、表面シートの肌触りの低下を抑制できる。
そのとき、第1繊維層に含まれる保水性繊維の平均繊維長よりも、第2繊維層に含まれる保水性繊維の平均繊維長が短いため、第2繊維層を構成する繊維を互いにより接近させることができる。よって、第2繊維層の繊維間の平均距離を第1繊維層の繊維間の平均距離と比較して短くできるので、第2繊維層において毛細管現象をより強く生じさせることができ、第1繊維層の肌側の表面に排泄された液状排泄物を第2繊維層へ素早く引き込むことができる。そして、第2繊維層に引き込まれた液状排泄物を、疎水性繊維により第2繊維層を介して吸収体へ迅速に移行させることができる。
その際、第1繊維層において、平均繊維長が相対的に長い保水性繊維により液状排泄物を平面方向に広く拡散させつつ、第2繊維層へ引き込むことができる。それにより、表面シートで平面方向に広く拡散された液状排泄物を、吸収体における平面方向に広い領域で吸収することができるので、吸収性能を高めることができる。
これにより表面シートの肌触りを良好にしつつ、吸収性能を向上させることができる。
【0010】
本発明の吸収性物品では、(2)表面シートと、裏面シートと、前記表面シートと前記裏面シートとの間に位置する吸収体とを備える吸収性物品であって、前記表面シートは、保水性繊維を含む第1繊維層と、前記第1繊維層の非肌側に隣接し、疎水性繊維と保水性繊維とを含む第2繊維層と、を備え、前記第1繊維層の肌側の表面は、前記表面シートの肌側の表面を構成し、前記第2繊維層の非肌側の表面は、前記表面シートの非肌側の表面を構成し、前記第1繊維層を構成する繊維のうちの前記保水性繊維の割合は、前記第2繊維層を構成する繊維のうちの前記保水性繊維の割合よりも多く、前記第1繊維層の繊維密度は、前記第2繊維層の繊維密度よりも小さい、吸収性物品、であってもよい。ここで、繊維密度は、繊維本数の密度とする。
【0011】
本吸収性物品では、表面シートの肌側に位置する第1繊維層における保水性繊維の割合が相対的に高いため、表面シートの肌触りを良好にすることができる。
そのとき、前記第2繊維層の繊維密度が第1繊維層の繊維密度よりも高いので、第2繊維層を構成する繊維を互いにより接近させることができる。よって、第2繊維層の繊維間の平均距離を第1繊維層の繊維間の平均距離と比較して短くできるので、第2繊維層において毛細管現象をより強く生じさせることができ、第1繊維層の肌側の表面に排泄された液状排泄物を第2繊維層へ素早く引き込むことができる。そして、第2繊維層に引き込まれた液状排泄物を、疎水性繊維により第2繊維層を介して吸収体へ迅速に移行させることができる。
その際、第1繊維層において、保水性繊維により液状排泄物を平面方向に広く拡散させつつ、第2繊維層へ引き込むことができる。それにより、表面シートで平面方向に広く拡散された液状排泄物を、吸収体における平面方向に広い領域で吸収することができるので、吸収性能を高めることができる。
これにより表面シートの肌触りを良好にしつつ、吸収性能を向上させることができる。
【0012】
本発明の吸収性物品は、(3)前記表面シートと前記吸収体との間に、前記第2繊維層の繊維密度よりも高い繊維密度を有する補助シートを更に備える、上記(2)に記載の吸収性物品、であってもよい。
本吸収性物品では、第2繊維層の繊維密度よりも高い繊維密度を有する補助シートを更に備えているので、第2繊維層に引き込まれた液状排泄物を、毛細管現象により、補助シートに安定的に移行させることができる。それにより、表面シートから補助シートを介して吸収体へ液状排泄物をより安定的に移行させることができ、よって表面シートの肌触りを良好にしつつ、吸収性能を向上させることができる。
【0013】
本発明の吸収性物品は、(4)前記第2繊維層に含まれる前記疎水性繊維は、互いに熱融着している熱融着性繊維を含む、上記(1)乃至(3)のいずれか一項に記載の吸収性物品、であってもよい。
本吸収性物品では、第2繊維層において、熱融着性繊維同士が互いに熱融着していることで、第2繊維層の形状を安定的に保持することができる。それゆえ、第2繊維層に含まれる保水性繊維の平均繊維長が相対的に短くても、保水性繊維を疎水性繊維間に偏りなく安定的に保持することができる。それにより、第2繊維層に引き込まれた液状排泄物を偏りなく安定的に吸収体へ移行させることができ、吸収性能を向上させることができる。
【0014】
本発明の吸収性物品は、(5)前記第2繊維層の前記熱融着性繊維の少なくとも一部は、前記第1繊維層の肌側の表面に露出している、上記(4)に記載の吸収性物品、であってもよい。
本吸収性物品では、第2繊維層の熱融着性繊維の一部が第1繊維層の表面に露出するように第1繊維層内に存在することにより、第1繊維層の保水性繊維を熱融着性繊維間に安定的に保持することができる。それにより、第1繊維層の繊維間の平均距離が相対的に長く、第1繊維層の強度が相対的に弱くてもへたることを抑制することができる。また、第1繊維層の保水性繊維を熱融着性繊維間に保持することにより、毛羽立ちを抑制することも可能となる。それらにより、第1繊維層の肌触りをよりよくすることができる。また、第2繊維層における保水性を有さない熱融着性繊維の一部が第1繊維層内に存在することにより、熱融着性繊維を介した第1繊維層から第2繊維層への液状排泄物の移行を促進することができる。それにより、液状排泄物を吸収体へ安定的に移行させることができる。
【0015】
本発明の吸収性物品は、(6)前記吸収性物品の厚さ方向に、前記表面シートと前記吸収体とが圧縮された圧搾部を有し、前記第2繊維層の前記熱融着性繊維の少なくとも一部は、前記圧搾部の内側の表面に露出している、上記(4)又は(5)に記載の吸収性物品、であってもよい。
本吸収性物品では、第2繊維層の熱融着性繊維の一部が圧搾部の内側の表面に露出するように第1繊維層内に存在することにより、圧搾部内の第1繊維層の保水性繊維を熱融着性繊維間に安定的に保持することができる。それにより、圧搾部内の第1繊維層の強度が相対的に弱くてもへたることや毛羽立つことを抑制することができ、圧搾部内の第1繊維層の肌触りをよりよくすることができる。また、第2繊維層における保水性を有さない熱融着性繊維の一部が圧搾部内の第1繊維層内に存在することにより、熱融着性繊維を介した圧搾部内の第1繊維層から第2繊維層への液状排泄物の移行を促進することができる。それにより、液状排泄物を吸収体へより安定的に移行させることができる。
【0016】
本発明の吸収性物品は、(7)前記圧搾部は、前記吸収性物品の厚さ方向の深さが浅い低密度部と、前記吸収性物品の厚さ方向の深さが深い高密度部と、を含み、前記第2繊維層の前記熱融着性繊維の少なくとも一部は、前記低密度部の表面に露出している、上記(6)に記載の吸収性物品、であってもよい。
本吸収性物品では、第2繊維層の熱融着性繊維の一部が低密度部の表面に露出するように第1繊維層内に存在することにより、低密度部内の第1繊維層の保水性繊維を熱融着性繊維間に安定的に保持することができる。それにより、低密度部内の第1繊維層の強度が相対的に弱くてもへたることや毛羽立つことを抑制することができ、低密度部内の第1繊維層の肌触りをよりよくすることができる。また、第2繊維層における保水性を有さない熱融着性繊維の一部が低密度部内の第1繊維層内に存在することにより、熱融着性繊維を介した低密度部内の第1繊維層から第2繊維層への液状排泄物の移行を促進することができる。それにより液状排泄物を最終的に吸収体へより安定的に移行させることができる。
【0017】
本発明の吸収性物品は、(8)前記表面シートは、前記吸収性物品の長手方向に沿って延び、前記吸収性物品の幅方向に間隔を空けて位置する複数の凸部と、前記吸収性物品の長手方向に沿って延び、互いに隣接する凸部間に位置する複数の凹部と、を有し、前記表面シートにおいて、前記凸部の頂部の繊維密度をS1、前記凹部の底部の繊維密度をS2、及び、前記凸部の頂部と前記凹部の底部との間の領域の繊維密度をS3、としたとき、S1<S3<S2、である、上記(1)乃至(7)のいずれか一項に記載の吸収性物品、であってもよい。
本請求項8に係る吸収性物品では、表面シートにおいて、繊維密度が疎な凸部の頂部から、繊維密度が中位の凸部の頂部と凹部の底部との間の領域を介し、繊維密度が密な凹部の底部に向けて毛細管現象が働く。そのため、表面シートにおける最も肌側の表面(凸部の頂部又はその近傍)に排泄された液状排泄物を、表面シートにおける非肌側の表面の近傍に位置する凹部の底部へより引き込み易くできる。それにより、表面シートの肌側の表面から表面シートの非肌側の表面を介して吸収体へ液状排泄物をより安定的に移行させることができる。また、上記の繊維密度の勾配により、一旦吸収した液状排泄物をリウェットバックし難くすることができる。更に、凸部の繊維密度が低いので着用者は柔らかさを感じることができる。よって、表面シートの肌触りを良好にしつつ、吸収性能を向上させることができる。
【0018】
本発明の吸収性物品は、(9)前記表面シートは、前記複数の凹部の各々において、前記吸収性物品の厚さ方向に、前記第1繊維層と前記第2繊維層とが圧縮された複数の窪み部を有する、上記(8)に記載の吸収性物品、であってもよい。
本吸収性物品では、複数の窪み部において、第1繊維層と第2繊維層とが圧搾されて互いに固定され、したがって、第1繊維層の保水性繊維が圧縮されている。それにより、保水性繊維の毛羽立ちを抑制でき、表面シートの肌触りを良好に維持することができる。
【0019】
本発明の吸収性物品は、(10)前記第2繊維層の前記疎水性繊維の平均繊維長は、前記第1繊維層及び第2繊維層の前記保水性繊維の平均繊維長よりも長い、上記(1)乃至(9)のいずれか一項に記載の吸収性物品、であってもよい。
本吸収性物品では、第2繊維層の疎水性繊維の平均繊維長が第1繊維層及び第2繊維層の保水性繊維の平均繊維長よりも長い。そのため、第2繊維層の疎水性繊維の少なくとも一部を第1繊維層内部に到達させることができる。それにより、第1繊維層の液状排泄物を、第2繊維層へより移行し易くすることができ、かつ、第2繊維層に移行した液状排泄物を吸収体へより移行し易くさせることができる。
【0020】
本発明の吸収性物品は、(11)前記表面シートに含まれる前記保水性繊維はセルロース系繊維であり、前記吸収体はセルロース系繊維(パルプ繊維を除く)を含み、前記表面シートに含まれる前記セルロース系繊維の一部は、前記吸収体に含まれる前記セルロース系繊維と接触している、上記(1)乃至(10)のいずれか一項に記載の吸収性物品、であってもよい。
本吸収性物品では、液拡散性の高いセルロース系繊維が表面シートの第1繊維層から第2繊維層を介して吸収体まで連通している。そのため、セルロース系繊維による液状排泄物の液拡散を利用することで、表面シートから吸収体へ液状排泄物を直接拡散させることができる。それにより、吸収性能を高めることができる。
【0021】
本発明の吸収性物品は、(12)前記表面シートを構成する繊維は、前記表面シートの幅方向の両端部の方が、前記表面シートの幅方向の中央部よりも、前記表面シートの長手方向に配向している、上記(1)乃至(11)のいずれか一項に記載の吸収性物品、であってもよい。
本吸収性物品では、表面シートの繊維配向が中央部の方がランダムであることで、液状排泄物を同心円上に満遍なく拡散させることができるとともに、繊維配向が両端部の方が長手方向に配向していることで、両端部に達した液状排泄物を長手方向に拡散させることができる。すなわち、吸収性物品を全体的に使用することができ、吸収性能を高められる。また、表面シートの両端部では、端縁から露出する繊維本数が少なくなるため、肌への摩擦が低減され、肌触りの低下を抑制できる。
【0022】
本発明の吸収性物品は、(13)前記表面シートに含まれる前記保水性繊維はコットンである、上記(1)乃至(12)のいずれか一項に記載の吸収性物品、であってもよい。
本吸収性物品では、保水性繊維はコットンであるため、表面シートの肌触りをより良好にしつつ、吸収性能をより維持又は向上することができる。
【0023】
本発明の吸収性物品は、(14)前記表面シートと前記吸収体との間に位置する補助シートを更に備え、前記表面シートの前記幅方向の寸法は、前記補助シートの前記幅方向の寸法よりも小さい、上記(1)乃至(13)のいずれか一項に記載の吸収性物品、であってもよい。
保水性繊維を多く含む表面シートの端縁が擦れると、その端縁から保水性繊維が解れて脱落し易い。そこで、本吸収性物品では、補助シートの幅方向の寸法が、保水性繊維を多く含む表面シートの幅方向の寸法よりも大きい。すなわち、平面視で、補助シートにおける、表面シートの幅方向の両端縁よりも外側に一対の延出部が形成されている。したがって、吸収性物品が着用者の大腿部から受ける力を、補助シートの幅方向の両端部の一対の延出部で受け止めることができ、表面シートの幅方向の両端縁と大腿部とを擦れ難くすることができる。それにより、表面シートの幅方向の両端縁が擦れて保水性繊維が表面シートの幅方向の両端縁から解れて脱落することを抑制でき、肌触りの低下を抑制できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、表面シートの肌触りを良好にしつつ、吸収性能を向上させることが可能な吸収性物品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】実施形態に係る吸収性物品の構成例を示す平面図である。
【
図3】実施形態に係る表面シートの構成例を示す平面図及び断面図である。
【
図4】実施形態に係る吸収性物品の製造装置の構成例を示す模式図である。
【
図5】実施形態に係る吸収性物品の製造方法を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
実施形態に係る吸収性物品について生理用ナプキンを例に説明する。ただし本発明の吸収性物品の種類及び用途はその例に限定されるものではなく、本発明の主題の範囲を逸脱しない限り、他の吸収性物品に対しても適用可能である。他の吸収性物品としては、例えばパンティライナー、軽失禁パッド、使い捨ておむつが挙げられる。
【0027】
(第1実施形態)
図1~
図2は実施形態に係る生理用ナプキン1の構成例を示す図である。
図1は生理用ナプキン1を展開した状態を示す平面図であり、
図2(a)は
図1のII-II線に沿った断面図であり、
図2(b)は
図2(a)の部分拡大断面図である。本実施形態の生理用ナプキン1は、互いに直交する長手方向L、幅方向W及び厚さ方向Tを有する。
図1に描かれた生理用ナプキン1では、図の上側及び下側をそれぞれ長手方向Lの前側及び後側とし、左側及び右側をそれぞれ幅方向Wの左側及び右側とし、紙面に対して手前側及び奥側をそれぞれ厚さ方向Tの上側及び下側とする。生理用ナプキン1は、幅方向Wの中心を通り長手方向Lに延びる長手方向中心線C
L(仮想線)と、長手方向Lの中心を通り幅方向Wに延びる幅方向中心線C
W(仮想線)とを有する。長手方向中心線C
Lに向かう向き及び側をそれぞれ幅方向Wの内向き及び内側とし、遠ざかる向き及び側をそれぞれ幅方向Wの外向き及び外側とする。一方、幅方向中心線C
Wに向かう向き及び側をそれぞれ長手方向Lの内向き及び内側とし、遠ざかる向き及び側をそれぞれ長手方向Lの外向き及び外側とする。長手方向L及び幅方向Wを含む平面上に置いた生理用ナプキン1を厚さ方向Tの上側から見ることを「平面視」といい、平面視で把握される形状を「平面形状」という。長手方向L及び幅方向Wを含む平面内の任意の方向を「平面方向」という。上に置いた装着者が生理用ナプキン1を装着したとき、厚さ方向Tにて相対的に装着者の肌面に近い側及び遠い側となる側を「肌側」及び「非肌側」という。これら定義は、生理用ナプキン1の各資材にも共通に用いられる。
【0028】
本実施形態において、生理用ナプキン1(ウイング部を除く)は、平面視にて、長手方向Lに長く幅方向Wに短い略矩形で、長手方向Lの両端縁が略半円形の形状を有する。ただし、その形状は、長手方向Lに長く幅方向Wに短ければ特に制限されず、例えば角丸長方形、楕円形、砂時計型又はそれらに類似の形状が挙げられる。生理用ナプキン1は略矩形の部分から幅方向Wの外側に延出するウイング部9を備えており、ウイング部9は略台形の形状を有する。ただし、ウイング部9の形状は、例えば半円形や半楕円形でもよい。
【0029】
本実施形態において、生理用ナプキン1は、生理用ナプキン1の肌側の表面を構成する表面シート2と、生理用ナプキン1の非肌側の表面を構成する裏面シート3と、表面シート2と裏面シート3との間に配置された吸収体4と、を備えている。また、本実施形態では、生理用ナプキン1は、更に、補助シート5と、一対のサイドシート6、6と、を備えている。補助シート5は、表面シート2の非肌側に重なるように配置されている。一対のサイドシート6、6の各々は、補助シート5における非肌側の幅方向Wの両端部の各々に、幅方向Wの内側の端部が重なるように接合され、幅方向Wの外側に延出している。したがって、本実施形態では、表面シート2、補助シート5及び一対のサイドシート6、6と裏面シート3との間に吸収体4が位置している。ただし、裏面シート3の非肌側に外装シートを備えてもよい。
【0030】
表面シート2は、液透過性のシートであり、第1繊維層2aと第2繊維層2bとを備える。第1繊維層2aの肌側の表面は、表面シート2の肌側の表面を構成している。第2繊維層2bは、第1繊維層2aの非肌側に隣接している。本実施形態では、第2繊維層2bの非肌側の表面は、表面シート2の非肌側の表面を構成しており、したがって表面シート2は二層構造を有する。ただし、第2繊維層2bは、非肌側に、一又は複数の繊維層を含んでいてもよく、したがって表面シート2は全体として三層又は多層構造でもよい。
【0031】
第1繊維層2aは、保水性繊維を含んでいる。
保水性繊維は、水分を吸収し、保持する性質(保水性)を有する繊維であれば、特に制限されない。保水性繊維としては、例えば、セルロース系繊維が挙げられる。セルロース系繊維としては、セルロースを含む繊維であれば、特に制限はなく、例えば、天然セルロース繊維、再生セルロース繊維、精製セルロース繊維及び半合成セルロース繊維が挙げられる。天然セルロース繊維としては、植物繊維、例えば、種子毛繊維(例示:コットン)、じん皮繊維(例示:麻)、葉脈繊維(例示:マニラ麻)、果実繊維(例示:やし)が挙げられる。コットンとしては、例えば、ヒルスツム種コットン(例示:アップランドコットン)、バルバデンセ種コットン、アルボレウム種コットン及びヘルバケウム種コットンが挙げられる。また、コットンとしては、オーガニックコットン、プレオーガニックコットン(商標)でもよい。ただし、オーガニックコットンは、GOTS(Global Organic Textile Standard)の認証を受けたコットンを意味する。再生セルロース繊維としては、レーヨン、例えば、ビスコースから得られるビスコースレーヨン、ポリノジック及びモダール、セルロースの銅アンモニア塩溶液から得られる銅アンモニアレーヨン(「キュプラ」とも称される)等の繊維が挙げられる。精製セルロース繊維としては、リヨセル、具体的には、パルプを、N-メチルモルホリンN-オキシドの水溶液に溶解させて紡糸原液(ドープ)とし、N-メチルモルホリンN-オキシドの希薄溶液中に押出して繊維としたものが挙げられる。精製セルロースは、例えば、テンセル(商標)として市販されている。半合成セルロース繊維としては、半合成セルロース、例えば、アセテート繊維、例えば、トリアセテート及びジアセテート等の繊維が挙げられる。中でも、保水性及び肌触りの観点から、天然セルロース繊維が好ましく、コットンがより好ましく、ヒルスツム種コットンが更に好ましい。本実施形態では、保水性繊維としてはヒルスツム種コットンである(以下、単に「コットン」ともいう。)。
【0032】
第2繊維層2bは、疎水性繊維と保水性繊維とを含んでいる。
疎水性繊維は、疎水性を有する繊維であれば、特に制限されない。疎水性繊維としては、例えば、熱可塑性樹脂繊維が挙げられる。熱可塑性樹脂繊維は、熱可塑性樹脂を含む繊維であれば、特に制限されない。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポチエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等のオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ乳酸(PLA)等のポリエステル系樹脂、6-ナイロン等のポリアミド系樹脂などの公知の樹脂が挙げられ、これらの樹脂は単独で使用しても、二種類以上の樹脂を併用してもよい。また、このような熱可塑性樹脂からなる繊維の構造は、特に制限されず、例えば、芯鞘型繊維、サイド・バイ・サイド型繊維、島/海型繊維等の複合繊維;中空タイプの繊維;扁平、Y字形、C字形等の異形断面型繊維;潜在捲縮又は顕在捲縮の立体捲縮繊維;水流、熱、エンボス加工等の物理的負荷により分割する分割繊維などが挙げられ、これらの構造を有する繊維は単独で使用しても、二種類以上の繊維を併用してもよい。本実施形態では、疎水性繊維としては、PET/PE芯鞘型複合繊維である。保水性繊維については第1繊維層2aの保水性繊維と同様である。なお、「疎水性」とは、水と馴染み難い、又は、水分を保持し難い性質をいい、例えば、イオン交換水(例示:比抵抗値10MΩ・cm)との接触角が80°~100°程度となるものをいう。
【0033】
第1繊維層2a及び第2繊維層2bでは、第1繊維層2aを構成する繊維のうちの保水性繊維の割合が、第2繊維層2bを構成する繊維のうちの保水性繊維の割合よりも多い。それにより、少なくとも表面シート2の肌触りを良好にすることができる。更に、第1繊維層2a及び第2繊維層2bでは、第1繊維層2aの保水性繊維の平均繊維長よりも、第2繊維層2bの保水性繊維の平均繊維長は短い。それにより、少なくとも第2繊維層2bを構成する繊維を互いにより接近させ、すなわち繊維間距離を短くして、毛細管現象をより強く生じさせて液状排泄物を強く引き込むことができる。具体的には、例えば以下に示すとおりである。
【0034】
第1繊維層2aを構成する繊維のうちの保水性繊維の割合は、表面シート2の肌触りを高める観点から、70~100質量%が好ましく、80~100質量%がより好ましく、90~100質量%が更に好ましい。70質量%以上にすることで、着用者が第1繊維層2aを保水性繊維として認識し易くなるので、触り心地の良さを担保できる。第1繊維層2aを構成する繊維のうちの保水性繊維以外の繊維は、液透過性を有する層を形成可能な繊維であれば特に制限されず、例えば熱可塑性樹脂繊維が挙げられる。本実施形態では保水性繊維の割合が100質量%である。
【0035】
第1繊維層2aの保水性繊維の繊度は、特に制限されず、例えば0.8~15dtexが挙げられる。第1繊維層2aの保水性繊維の繊維長は、例えば10~80mmが挙げられる。10mm未満の場合、繊維長が短過ぎて繊維同士が交絡し難くなり、十分な強度が得られないおそれがある。80mmを超える場合、そのような繊維のいく本かが幅方向Wに延出して、着用者の大腿部の縁から他方の大腿部の縁まで繊維の架け渡しが生じる可能性があり、その場合、保水性繊維の液体の拡散効果により、生理用ナプキン1の幅方向Wの中央部に付着した液状排泄物が、両大腿部まで拡散し、着用者に不快感を与えるおそれがある。繊維長は、15~60mmが好ましく、20~40mmがより好ましい。それに対応して、第1繊維層2aの保水性繊維の平均繊維長は、例えば15~50mmが挙げられ、20~45mmが好ましく、25~40mmがより好ましい。
【0036】
なお、第1繊維層2aにおける保水性繊維以外の繊維における緯度、繊維長、平均繊維長も、保水性繊維の肌触りに悪影響を与えない観点から、保水性繊維と同程度(0.5~2倍の範囲内)が好ましい。ただし、本実施形態では保水性繊維以外の繊維は用いない。
【0037】
第2繊維層2bを構成する繊維のうちの保水性繊維の割合は、第1繊維層2aの保水性繊維の割合よりも少なければ、特に制限されない。保水性繊維の割合としては、例えば50~90質量%が挙げられる。50質量%未満の場合、厚さ方向に圧力がかかった状態での触り心地が低下するおそれがある。90質量%を超える場合、疎水性繊維による毛羽を防止する効果が低下するおそれがある。保水性繊維の割合は、60~85質量%が好ましく、70~80質量%がより好ましい。それに対応して、第2繊維層2bにおける疎水性繊維の割合は、例えば10~50質量%が挙げられ、15~40質量%が好ましく、20~30質量%がより好ましい。なお第2繊維層2bは保水性繊維及び疎水性繊維の他、第3の繊維を含んでもよい。
【0038】
第2繊維層2bの保水性繊維の繊度は、特に制限されず、例えば0.8~15dtexが挙げられる。第2繊維層2bの保水性繊維の繊維長は、その平均繊維長が第1繊維層2aの保水性繊維の平均繊維長よりも短ければ、特に制限されず、例えば3~40mmが挙げられる。3mm未満の場合、繊維長が短過ぎて繊維同士が交絡し難くなり、十分な強度が得られない。40mmを超える場合、第2繊維層2b製造中のウェブ状態における繊維の動的自由度が低く、保水性繊維が疎水性繊維の間の隙間に入り込むことができなくなり、その結果、第2繊維層2bでの繊維間距離を短くし難くなり、延いては繊維密度を高くし難くなる。第2繊維層2bの保水性繊維の繊維長としては、5~35mmが好ましく、10~35mmがより好ましい。第2繊維層2bの保水性繊維の平均繊維長は、それに対応して、例えば5~30mmが挙げられ、10~25mmが好ましく、15~20mmがより好ましい。
更に、繊維長が上記の範囲に入る保水性繊維であって、繊維長が長い保水性繊維及び繊維長が短い保水性繊維の少なくとも二種類を混合した混合保水性繊維を用いることもできる。その一例としては、繊維長が長い保水性繊維を例えば15~40mm(好ましくは20~35mm)の繊維長とし、繊維長が短い保水性繊維を例えば3~25mm(好ましくは5~20mm)の繊維長とすることができる。その場合、繊維長が長い保水性繊維で第2繊維層2bでの保水性や肌触りを高めつつ、繊維長が短い保水性繊維で第2繊維層2bの繊維間距離を高めることができる。
【0039】
第2繊維層2bの疎水性繊維の緯度は、特に制限されず、例えば1.1~8.8dtexが挙げられる。ただし、第2繊維層2bの疎水性繊維と第1繊維層2aの主要な繊維である保水性繊維との絡み合いの容易性、すなわち第1繊維層2aからの液状排泄物の移行の容易性や、第1繊維層2aと第2繊維層2bとの間での剥離防止性の観点から、第2繊維層2bの疎水性繊維の緯度は、第1繊維層2aの保水性繊維の繊度よりも小さい(細い繊維径である)ことが好ましい。
また、第2繊維層2bの疎水性繊維の繊維長は、特に制限されず、例えば10~80mmが挙げられる。ただし、第2繊維層2bの疎水性繊維と第1繊維層2aの主要な繊維である保水性繊維との絡み合いの容易性、すなわち第1繊維層2aからの液状排泄物の移行の容易性や、第1繊維層2aと第2繊維層2bとの間の剥離防止性の観点から、第2繊維層2bの疎水性繊維の繊維長は、第1繊維層2a及び第2繊維層2bの保水性繊維の繊維長と比較して長いことが好ましい。第2繊維層2bの疎水性繊維の平均繊維長は、それに対応して、例えば、15~50mmが挙げられる。
【0040】
第1繊維層2a及び第2繊維層2bの各々の厚さは、特に制限されず、例えば0.05~4mmが挙げられ、0.1~3mmが好ましく、0.2~2mmがより好ましい。ただし、第1繊維層2aの肌触りを良好にする観点、及び着用者の肌へのリウェットバックを抑制する観点から、第1繊維層2aの厚さが相対的に厚く、第2繊維層2bの厚さが相対的に薄いことが好ましい。また、表面シート2の厚みは、特に制限されず、例えば0.1~5mmが挙げられ、0.4~4mmが好ましく、0.8~3mmがより好ましい。
【0041】
ただし、繊維層のようなシートでの繊維の種類の割合は以下のようにして測定される。
すなわち、保水性繊維及び疎水性繊維をそれぞれ別の色で着色することで、繊維の種類の割合を測定する。(1)表面シート2を70mm×70mmの大きさに切り出して試料とする。(2)試薬カヤステインQ(KayastainQ)(株式会社色染社)にて着色処理を行うことにより、保水性繊維のみ青色に染め、疎水性繊維のみ黄色に着色する。(3)株式会社キーエンス製のデジタルマイクロスコープVHX-100にて、試料の肌側面(第1繊維層2a)から見たときの青色と黄色の割合を50mm×50mmの範囲で測定することで、第1繊維層2aにおける繊維の種類の割合とする。一方、非肌面(第2繊維層2b)から見たときの青色と黄色の割合を50mm×50mmの範囲で測定することで、第2繊維層2bにおける繊維の種類の割合とする。
【0042】
また、繊維層のようなシートでの繊維間の距離は以下の測定方法に従って測定される。(1)表面シート2を10mm×10mmの大きさに切り出して試料とする。(2)株式会社キーエンス製のデジタルマイクロスコープVHX-100(レンズVH-Z20R+可変照明アタッチメントVH-K20)を使用して、撮影倍率:200倍、測定面積:縦1300μm×横1735μmにて、表面シート2の表面(第1繊維層2a)、裏面(第2繊維層2b)それぞれから画像を撮影する。そのとき、表面・裏面それぞれにつき、深さ0~100μmの範囲で、深さ20μm毎に合計五回、画像を撮影する。(3)得られた各画像から、繊維の存在しない部位の面積を求める。そのとき、得られた各画像における各画素での輝度が所定の輝度(閾値)よりも低いか高いかにより当該画素での繊維の有無を判定し、各画像での撮影領域内の繊維の有無を判定する。ただし、繊維が存在しない部位のみ光が透過して明るい、すなわち輝度が高くなる。それにより、撮影領域内の繊維の存在しない部位の面積を求める。(4)求めた繊維の存在しない部位の面積を撮影領域の面積(測定面積)から減算し、撮影領域の面積(測定面積)で除算することで、空隙率を算出する。その計算を深さ20μm毎の画像で行い、五つの空隙率を算出する。(5)五つの空隙率の平均を算出することで、表面シート2の表面(第1繊維層2a)、裏面(第2繊維層2b)それぞれの空隙率を決定する。空隙率の大小を比較することで、繊維間距離の大小を判断することができる。すなわち、空隙率が大きい場合、繊維間距離が大きいと見ることができる。例えば、表面シート2の表面、すなわち肌面側(第1繊維層2a:例えばCotton100%の面)では空隙率25.4%であり、裏面、すなわち非肌面側(第2繊維層2b:例えばCotton60%+合繊繊維40%の面)では空隙率24.5%であった。
【0043】
また、繊維層のようなシートの繊維の繊維長及び平均繊維長は、JIS L 1015:2010の附属書Aの「A7.1 繊維長の測定」の「A7.1.1 A法(標準法)目盛りが付いたガラス板上で個々の繊維の長さを測定する方法」に従って測定される。なお、上記方法は、1981年に発行されたISO 6989に相当する試験方法である。
【0044】
また、繊維層のようなシートの坪量は以下の測定方法に従って測定される。一層分の繊維層を作製し、その繊維層を5cm×5cmの大きさに切り出して試料とし、100℃以上の雰囲気での乾燥処理後に質量を測定する。次いで、測定した質量を試料の面積で割り算して試料の坪量を算出する。10個の試料の坪量を平均した値をシートの坪量とする。
【0045】
また、繊維層のようなシートの厚さは以下の測定方法に従って測定される。株式会社キーエンス製のデジタルマイクロスコープVHX-100を使用して、表面シート2の切断面に対して垂直の方向からの拡大画像を撮影する。拡大画像は、表面シート2の厚さ方向Tの全体が撮影可能となるような倍率に拡大された画像であり、拡大倍率は、例えば20~50倍である。得られた3D画像から変換された2D画像において各繊維層の厚さを測定する。別々の3か所の切断面で測定した厚さの平均値を表面シート2の厚さとする。
【0046】
上述されるように生理用ナプキン1では、表面シート2の肌側に位置する第1繊維層2aにおける保水性繊維の割合が相対的に高いため、表面シート2の肌触りを良好にすることができる。また、第1繊維層2aに含まれる保水性繊維の平均繊維長が相対的に長いため、平均繊維長が短過ぎて繊維同士の交絡が不足してしまい毛羽が発生するという事態を抑制でき、表面シート2の肌触りの低下を抑制できる。
そのとき、第1繊維層2aに含まれる保水性繊維の平均繊維長よりも、第2繊維層2bに含まれる保水性繊維の平均繊維長が短いため、第2繊維層2aを構成する繊維を互いにより接近させることができる。よって、第2繊維層2bの繊維間の平均距離を第1繊維層2aの繊維間の平均距離と比較して短くできるので、第2繊維層2bにおいて毛細管現象をより強く生じさせることができ、第1繊維層2aの肌側の表面に排泄された液状排泄物を第2繊維層2bへ素早く引き込むことができる。そして、第2繊維層2bに引き込まれた液状排泄物を、疎水性繊維により第2繊維層2bを介して吸収体4へ迅速に移行させることができる。
その際、第1繊維層2aにおいて、平均繊維長が相対的に長い保水性繊維により液状排泄物を平面方向に広く拡散させつつ、第2繊維層2bへ引き込むことができる。それにより、表面シート2で平面方向に広く拡散された液状排泄物を、吸収体4における平面方向に広い領域で吸収することができるので、吸収性能を高めることができる。
これらにより、表面シート2の肌触りを良好にしつつ、生理用ナプキン1の吸収性能を向上できる。
【0047】
なお、第2繊維層2bが、非肌側に、一又は複数の繊維層を含んでいる場合、すなわち表面シート2が全体として三層又は多層構造の場合、液透過性をより高める観点から、表面シート2の非肌側の表面に近い繊維層ほど、保水性繊維の割合が相対的に低く、かつ保水性繊維の平均繊維長が短いことが好ましい。
【0048】
本実施形態では、第1繊維層2aの繊維密度は、第2繊維層2bの繊維密度よりも小さい。すなわち、第1繊維層2aから第2繊維層2bへ向かって繊維密度が高くなるように繊維密度の勾配が存在する。
そのような構成を有する生理用ナプキン1では、まず、着用時に表面シート2の肌側の表面、すなわち第1繊維層2aの表面に排泄された液状排泄物を、第1繊維層2aに引き込むことができる。その後、繊維密度の勾配により、第1繊維層2aに引き込まれた液状排泄物が、第2繊維層2bに安定的に移行させることができる。それにより、保水性繊維を相対的に多く含む第1繊維層2aから、保水性繊維を相対的に少なく含む第2繊維層2bを介して、第2繊維層2bの非肌側に接する層(例示:補助シート、吸収体4)へ液状排泄物を安定的に移行させることができる。よって、表面シート2の肌触りを良好にしつつ、吸収性能を向上させることができる。なお、生理用ナプキン1の表面シート2は、このような繊維密度の勾配を有さなくてもよい。
ただし、第2繊維層2bの非肌側の表面に、一又は複数の繊維層を更に備える場合、すなわち表面シート2が三層又は多層構造の場合には、表面シート2の非肌側の表面に近い繊維層ほど、繊維密度が相対的に高いことが好ましい。それにより、肌側の繊維層から非肌側の繊維層への液透過性をより高めることができ、補助シートや吸収体4へ液状排泄物をより安定的に移行させることができる。
【0049】
ただし、第2繊維層2bが非肌側に、一又は複数の繊維層を含んでいる場合、すなわち表面シート2が全体として三層又は多層構造の場合には、表面シート2の非肌側の表面に近い繊維層ほど、繊維密度が相対的に高いことが好ましい。それにより、肌側の繊維層から非肌側の繊維層への液透過性をより高めることができ、補助シートや吸収体4へ液状排泄物をより安定的に移行させることができる。
【0050】
なお、繊維層のようなシートの繊維密度は、例えば以下の測定方法で測定される。
(1)表面シート2を10mm×10mmの大きさに切り出して試料とする。(2)試料の厚さ方向Tに平行な切断面を、走査電子顕微鏡(日本電子株式会社製:JCM-5100)を用いて、拡大観察する。倍率は、30~60本の繊維の断面が一画面内に計測できる倍率(例示:150~500倍)とする。(3)観察領域を厚さ方向Tに肌面側の層、中間の層、非肌面側の層に三等分し、肌面側の層を第1繊維層2aとし、非肌面側の層を第2繊維層2bとした上で、各繊維層における繊維の断面の数を測定する。すなわち、所定面積の切断面において、切断されている繊維の断面の数を数える。(4)得られた繊維の断面の数を1mm2当たりの繊維の断面の数に換算し、これを繊維密度(本/mm2)とする。測定は3ヶ所行い、測定値の平均値をその試料の繊維密度とする。すなわち、繊維密度として、繊維本数の密度を用いている。言い換えると、繊維密度として、厚さ方向Tに平行な断面における単位面積当たりの繊維の本数を用いている。なお、繊維密度として、単位体積当たりの繊維の本数を用いてもよい。単位体積当たりの繊維の本数は、例えばX線CTによる解析で求めることができる。単位面積当たりの繊維密度と、単位体積当たりの繊維密度とでは、数値は異なるが、繊維層間での繊維密度の相対的な比較(例示:大小の比較)では同じになる。
【0051】
本実施形態では、第2繊維層2bに含まれる疎水性繊維は、互いに熱融着している熱融着性繊維を含む。すなわち、疎水性繊維に含まれる熱融着性繊維は、熱融着性繊維同士が互いに接する箇所で熱融着により互いに接合した接合点(融着点)を有する。このような、互いに接合した熱融着性繊維は、第2繊維層2b内で一種の熱可塑性樹脂繊維のマトリックスを形成すると見ることができる。
そのような構成を有する生理用ナプキン1では、第2繊維層2bにて、互いに熱融着した熱融着性繊維により、第2繊維層2bの形状を安定的に保持できる。それゆえ、第2繊維層2bに含まれる保水性繊維の平均繊維長が相対的に短くても、保水性繊維を熱融着性繊維間(のマトリックス内)に偏りなく安定的に保持できる。それにより、第2繊維層2bに引き込まれた液状排泄物を偏りなく安定的に吸収体4(及び補助シート5)へ移行させることができ、吸収性能を向上させることができる。なお、生理用ナプキン1の疎水性繊維は、このような互いに熱融着している熱融着性繊維を含まなくてもよい。
【0052】
本実施形態では、第2繊維層2bの熱融着性繊維の少なくとも一部は、第1繊維層2aの肌側の表面に露出している。すなわち、第2繊維層2bの熱融着性繊維は、第2繊維層2bの形状を安定的に保持しつつ、その少なくとも一部が第2繊維層2bから連続的に第1繊維層2aに入り込み、更にそれらが第1繊維層2aの肌側の表面にまで達している。
そのような構成を有する生理用ナプキン1では、第2繊維層2bの熱融着性繊維が第1繊維層2a内にまで連続的に延在することにより、第1繊維層2aの保水性繊維を熱融着性繊維間に安定的に保持することができる。それにより、第1繊維層2aの繊維間の平均距離が相対的に長く、第1繊維層2aの強度が相対的に弱くてもへたることを抑制することができる。また、第1繊維層2aの保水性繊維を熱融着性繊維間に保持することにより、毛羽立ちを抑制することも可能となる。それらにより、第1繊維層2aの肌触りをよりよくすることができる。また、第2繊維層2bにおける保水性を有さない熱融着性繊維の一部が第1繊維層2a内に存在することで、熱融着性繊維を介した第1繊維層2aから第2繊維層2bへの液状排泄物の移行を促進することができる。それにより、液状排泄物を吸収体4(及び補助シート5)へ安定的に移行させることができる。なお、生理用ナプキン1の第2繊維層2bの熱融着性繊維は、第1繊維層2aの表面に露出しなくてもよい。
【0053】
本実施形態では、表面シート2を構成する繊維は、表面シート2の幅方向Wの両端部の方が、表面シート2の幅方向Wの中央部よりも、表面シート2の長手方向Lに配向している。すなわち、幅方向Wにて、表面シート2では、中央部の繊維は長手方向Lの配向が相対的に小さく、両端部の繊維は長手方向Lの配向が相対的に大きい。
そのような構成の生理用ナプキン1では、表面シート2の繊維配向が中央部で比較的ランダムなため、液状排泄物を略同心円状に拡散させることができ、繊維配向が両端部で長手方向Lなため、両端部に達した液状排泄物を長手方向Lに拡散させることができる。すなわち、生理用ナプキン1を全体的に使用でき、吸収性能を高められる。また、表面シート2の幅方向Wの両端部では、端縁から露出する繊維本数が少なくなるため、肌への摩擦が低減され、肌触りの低下を抑制できる。なお、生理用ナプキン1の表面シート2の繊維配向は、幅方向Wの両端部で長手方向Lの配向が相対的に大きくなくてもよい。
【0054】
生理用ナプキン1では、平面視で、長手方向Lの中央やや前方寄りで幅方向Wの中央に排泄口当接域XAが設定される。排泄口当接域XAは、生理用ナプキン1の着用時に、着用者の排泄口に対向又は当接する領域である。排泄口当接域XAは、吸収性物品の種類や用途に応じて設定される。排泄口当接域XAは、例えば長手方向Lにて吸収体4の中央やや前方寄りに、吸収体4の長手方向Lの全長の約1/4~1/2の長さで、幅方向Wにて吸収体4の略中央に、吸収体4の幅方向Wの全長の約1/2~1/3の幅で設定される。
【0055】
本実施形態では、生理用ナプキン1は、排泄口当接域XAの幅方向Wの両外側に連続的又は間欠的に位置する一対の圧搾部(圧搾溝)12、12を備える。本実施の形態では、生理用ナプキン1は、更に、一対の圧搾部12、12の長手方向Lの後方に一対の圧搾部(圧搾溝)13、13を備え、排泄口当接域XAの長手方向Lの前方及び後方にそれぞれ圧搾部(圧搾溝)11、14を備え、排泄口当接域XA内に点状の複数の圧搾部15を備える。それら圧搾部11~15は、表面シート2及び吸収体4が厚さ方向Tに圧縮されて形成される。すなわち、表面シート2と補助シート5と吸収体4(肌側のコアラップ4b及び吸収性コア4a)とが厚さ方向Tに圧搾されて形成される。そのとき、各圧搾部は、弱く圧搾されて、浅い位置に形成され、繊維密度が相対的に低い低密度部LPAと、強く圧搾されて、深い位置に形成され、繊維密度が相対的に高い高密度部HPAとを有する。ただし、「浅い」及び「深い」の基準は、表面シート2の肌側の表面とする。低密度部LPA及び高密度部HPAは、各圧搾部における浅い位置の底部及び深い位置の底部、ということができる。圧搾部11~15の低密度部LPA及び高密度部HPAは、吸収性コア4a内に位置する。ただし、高密度部HPは非肌側のコアラップ4bに達してもよい。なお、圧搾部11~15の形状は任意である。なお、生理用ナプキン1は、圧搾部11~15少なくとも一つを備えていなくてもよい。
【0056】
本実施形態では、第2繊維層2bの熱融着性繊維の少なくとも一部は、圧搾部11~15の少なくとも一つにおいて、その圧搾部の内側の表面に露出している。
そのような構成の生理用ナプキン1では、熱融着性繊維が圧搾部の内側の表面に露出するように第1繊維層2a内に存在することにより、圧搾部内においても第1繊維層2aの保水性繊維を熱融着性繊維間に安定的に保持することができる。それにより、圧搾部内においても第1繊維層2aの強度が相対的に弱くてもへたることや毛羽立つことを抑制することができ、圧搾部内の第1繊維層2aの肌触りをよりよくすることができる。また、第2繊維層2bにおける保水性を有さない熱融着性繊維の一部が圧搾部内の第1繊維層2a内に存在することにより、熱融着性繊維を介した圧搾部内の第1繊維層2aから第2繊維層2bへの液状排泄物の移行を促進することができる。それにより、液状排泄物を吸収体4(及び補助シート5)へより安定的に移行させることができる。なお、生理用ナプキン1は、熱融着性繊維が圧搾部の内側の表面に露出しなくてもよい。
【0057】
本実施形態では、第2繊維層2bの熱融着性繊維の少なくとも一部は、圧搾部11~15の少なくとも一つにおいて、その圧搾部の低密度部LPAの表面に露出している。
そのような構成の生理用ナプキン1では、熱融着性繊維が低密度部LPAの表面に露出するように第1繊維層2a内に存在することで、低密度部LPA内の第1繊維層2aの保水性繊維を熱融着性繊維間に安定的に保持できる。それにより、低密度部LPA内の第1繊維層2aの強度が相対的に弱くてもへたることや毛羽立つことを抑制でき、低密度部LPA内の第1繊維層2aの肌触りをよりよくすることができる。また、第2繊維層2bにおける保水性を有さない熱融着性繊維の一部が低密度部LPA内の第1繊維層2a内に存在することで、熱融着性繊維を介した低密度部LPA内の第1繊維層2aから第2繊維層2bへの液状排泄物の移行を促進できる。それにより、液状排泄物を最終的に吸収体4(及び補助シート5)へより安定的に移行させることができる。なお、生理用ナプキン1は、熱融着性繊維が低密度部LPAの表面に露出しなくてもよい。
【0058】
本実施形態では、表面シート2は凹凸構造を有する。
図3は実施形態に係る表面シート2の構成例を示し、
図3(a)は表面シート2の平面図であり、
図3(b)は
図3(a)のIIb-IIb線に沿う断面図である。第1繊維層2aは厚さ方向Tの上側の第1上面2aEと下側の第1下面2aFとを有し、第2繊維層2bは厚さ方向Tの上側の第2上面2bEと下側の第2下面2bFとを有している。第1下面2aFと第2上面2bEとは両繊維層間の仮想的な境界であるが、両繊維層の繊維の一部は交絡により互いに他の繊維層へ入り込んでいるため厳密な境界ではない。第1繊維層2aは、第1上面2aEに、長手方向Lに沿って連続的に延び、幅方向Wに間隔を空けて位置する複数の凸部21と、長手方向Lに沿って連続的に延び、互いに隣り合う凸部21間に位置する複数の凹部22と、を有する。本実施形態において、複数の凸部21の各々は中実に形成されている。このように複数の凸部21の各々が中実に形成されていることから、各凸部21が潰れ難くなると共に、着用者の身体と接し易い各凸部21から吸収体4への液体の移行性に優れるため、各凸部21の表面のドライ性を高めることが出来る。
【0059】
第2繊維層2bは、圧搾で形成される窪み部23(後述)を除き略平坦な形状である。ただし、第2上面2bEは凸部21に対応する位置において厚さ方向Tの上向きにやや盛り上がっていてもよい。なお、第2繊維層2bは、第1繊維層2aと同様に(ただし厚さ方向T逆向きに)、第2下面2bFに、長手方向Lに沿って連続的に延び、幅方向Wに間隔を空けて位置する複数の凸部と、長手方向Lに沿って連続的に延び、互いに隣り合う凸部間に位置する複数の凹部と、を有してもよい。その場合、平面視で、第1繊維層2aの凸部21及び凹部22の位置と、第2繊維層2bの凸部及び凹部の位置とは同じであることが好ましい。
【0060】
第1繊維層2aと第2繊維層2bとは、交絡により互いに接合されている。交絡方法としては、例えば、スパンレース法又はウォータージェット法が挙げられる。ただし、交絡方法はこの例に制限されず、他の交絡方法、例えばエアスルー法を用いてもよい。
【0061】
本実施の形態では、凸部21の頂部21Tの繊維密度をS1、凹部22の底部22Bの繊維密度をS2、及び、凸部21の頂部21Tと凹部22の底部22Bとの間の領域MPの繊維密度をS3、としたとき、S1<S3<S2、である。
そのような構成の生理用ナプキン1では、表面シートにおいて、疎な繊維密度S1を有する凸部21の頂部21Tから、中位の繊維密度S2を有する領域MPを介し、密な繊維密度S3を有する凹部22の底部22Bに向けて毛細管現象が働く。そのため、表面シート2における最も肌側の表面(凸部21の頂部21T又はその近傍)に排泄された液状排泄物を、表面シート2における非肌側の表面の近傍に位置する凹部22の底部22Bへより引き込み易くできる。それにより、表面シート2の肌側の表面から表面シート2の非肌側の表面を介して吸収体4(及び補助シート5)へ液状排泄物をより安定的に移行させることができる。また、上記の繊維密度の勾配(S1<S3<S2)により、一旦吸収した液状排泄物をリウェットバックし難くすることができる。更に、凸部21の繊維密度が低いので着用者は柔らかさを感じることができる。よって、表面シートの肌触りを良好にしつつ、吸収性能を向上させることができる。なお、生理用ナプキン1は、表面シート2に上記の凹凸構造を有していなくてもよく、上記の繊維密度勾配を有さなくてもよい。
【0062】
本実施形態では、表面シート2は、複数の凹部22の各々において、厚さ方向Tに、第1繊維層2aと第2繊維層2bとが圧縮された複数の窪み部23を有する。複数の窪み部23は、各凹部22において長手方向Lに沿って間欠的に、かつ、等間隔、又は、非等間隔に配置される。窪み部23は、幅方向Wに隣り合う凹部22において、長手方向Lに同じ位置でもよいし、同じ位置でなくてもよい。本実施形態では、凹部22に関して市松模様状に配置される。また、窪み部23の平面視の形状は楕円状など任意である。
そのような構成の生理用ナプキン1では、複数の窪み部23において、厚さ方向Tに、第1繊維層2と第2繊維層2bとが圧搾により固定され、したがって、第1繊維層の保水性繊維が圧縮されている。それにより、保水性繊維の毛羽立ちを抑制でき、表面シートの肌触りを良好に維持することができる。なお、生理用ナプキン1は、表面シート2に窪み部23を備えなくてもよい。
【0063】
本実施形態では、補助シート5は、液透過性のシートである。補助シート5としては、例えば、液透過性の不織布や織布、これらの複合シートが挙げられる。補助シート5は、表面シート2と比べて幅方向Wにやや大きい形状を有する。補助シート5は、幅方向Wの両端部に一対のループ部5L、5Lを有する。一対のループ部5L、5Lは、補助シート5における幅方向Wの両側部が、それぞれ補助シート5の幅方向Wの内側かつ非肌側(厚さ方向Tの下側)にループ状に折り返されることで形成される。折り返された補助シート5の両側部の端部は、一対のサイドシート6、6の向かい合う一対の内側端部に、長手方向Lに沿って間欠的又は連続的に延びる一対の接着部(図示されず)で互いに接合される。なお、ループ部5Lは弾性部材を含んでいない。また、折り返された補助シート5の両側部の端部は、補助シート5の非肌側の表面に、長手方向Lに沿って間欠的又は連続的に延びる一対の接着部で互いに接合される。
【0064】
本実施形態の保水性繊維を多く含む表面シート2では、その端縁が擦れると、その端縁から保水性繊維が解れて脱落し易い。ここで、本実施形態では、補助シート5の幅方向Wの寸法が、表面シート2の幅方向Wの寸法よりも大きい。すなわち、平面視で、補助シート5における、表面シート2の幅方向Wの両端縁よりも外側の部分が幅方向Wの外側に延出して、一対の延出部を形成している。本実施形態では、その一対の延出部として、補助シート5の幅方向Wの両端部に一対のループ部5L、5Lが形成されている。それにより、生理用ナプキン1が着用者の大腿部から受ける力を一対のループ部5L、5L(一対の延出部)で受け止めることができ、表面シート2の幅方向Wの両端縁と大腿部とを擦れ難くすることができる。それにより、表面シート2の幅方向Wの両端縁が擦れて保水性繊維が表面シート2の幅方向Wの両端縁から解れて脱落することを抑制でき、肌触りの低下を抑制できる。特に、一対の延出部として一対のループ部5L、5Lを用いる場合には、生理用ナプキン1が着用者の大腿部から受ける力を、一対のループ部5L、5Lのクッション作用で柔らかく受け止めることができ、着用者の感じる肌触りをより良好にすることができる。特に、保水性繊維がコットンの場合、それらの効果は顕著である。
【0065】
本実施形態では、補助シート5は、第2繊維層2bの繊維密度よりも高い繊維密度を有する。そのような構成の生理用ナプキン1では、第2繊維層2bに引き込まれた液状排泄物を、毛細管現象により、補助シート5により安定的に移行させることができる。それにより、表面シート2から補助シート5を介して吸収体4へ液状排泄物をより安定的に移行させることができ、表面シート2の肌触りを良好にしつつ、吸収性能を向上させることができる。また、第1繊維層2aの繊維密度<第2繊維層2bの繊維密度<補助シート5の繊維密度、となっている場合には、毛細管現象により、液状排泄物を補助シート5に更により安定的に移行させることができ、好ましい。なお、生理用ナプキン1は補助シート5又はループ部5Lを備えなくてもよい。
【0066】
本実施形態では、補助シート5は、表面シート2に対応して保水性繊維を含み、表面シート2がセルロース系繊維(好ましくはコットン)を含む場合には、セルロース系繊維(好ましくはコットン)を含むことが好ましい。そのような構成の生理用ナプキン1では、液拡散性の高い保水性繊維、好ましくはセルロース系繊維、更に好ましくはコットンが表面シート2の第1繊維層から第2繊維層を介して補助シート5まで連通している。そのため、それら繊維による液状排泄物の液拡散を利用することで、表面シート2から補助シート5を介して吸収体4へ液状排泄物をより安定的に移行させることができ、表面シート2の肌触りを良好にしつつ、吸収性能を向上させることができる。なお、生理用ナプキン1は、補助シート5が保水性繊維、セルロース系繊維又はコットンを含まなくてもよい。その場合、補助シート5としては、例えば疎水性繊維の不織布が挙げられ、中でも熱可塑性樹脂繊維の不織布が公的に用いられる。
【0067】
吸収体4は、液吸収性能及び液保持性能を有する層であり、本実施形態では、平面視で長手方向Lに長く、長手方向Lの両端部が略半円形の形状を有する。本実施形態では、吸収体4は、吸収性コア4aとそれを被覆するコアラップ4bとを含む。吸収性コア4aとしては、例えば、パルプ繊維のような吸水性繊維を含む液保持性物質、高吸収性ポリマー(SAP)のような吸水材が挙げられる。コアラップ4bとしては、例えば、ティッシュのような親水性不織布を含む液透過性のシートが挙げられる。
【0068】
本実施形態では、表面シート2がセルロース系繊維(好ましくはコットン)を含む場合には、吸収体4は、表面シート2に対応してセルロース系繊維(好ましくはコットン)を含むことが好ましい。その場合、表面シート2に含まれるセルロース系繊維の一部は、吸収体4に含まれるセルロース系繊維と接触していることが好ましい。
そのような構成の生理用ナプキン1では、液拡散性の高いセルロース系繊維が表面シート2の第1繊維層2aから第2繊維層2bを介して(場合によっては、補助シート5を介して)吸収体4まで連通している。そのため、セルロース系繊維による液状排泄物の液拡散を利用することで、表面シート2から吸収体4へ液状排泄物を直接拡散させることができる。それにより、吸収性能を高めることができる。なお、生理用ナプキン1は、吸収体4がセルロース系繊維又はコットンを含まなくてもよい。
【0069】
本実施形態では、サイドシート6は撥水性のシートである。サイドシート6としては、例えば、撥水処理を施した不織布や通気性を有する合成樹脂フィルムが挙げられる。また、本実施形態では、裏面シート3は液不透過性のシートである。裏面シート3としては、例えば、液不透過性の不織布や合成樹脂フィルム、これらの複合シートが挙げられる。本実施形態では、ウイング部9は、サイドシート6及び裏面シート3で形成されている。
【0070】
本実施形態の生理用ナプキン1では、表面シート2は補助シート5に接着剤(例示:ホットメルト接着剤)で接合され、補助シート5及び一対のサイドシート6、6における吸収体4に対向する部分は吸収体4に接着剤で接合される。一対のサイドシート6、6及び吸収体4における裏面シート3に対向する部分は裏面シート3に接着剤等で接合される。
【0071】
本実施形態では、生理用ナプキン1は、更に、複数の粘着部7及び一対の粘着部8、8を備える。複数の粘着部7は、例えば略矩形状を有し、平面視で、吸収体4と重なるように裏面シート4の非肌側の面に配置され、長手方向Lに連続的に延び、幅方向Wに間欠的に並ぶ。一対の粘着部8、8は、例えば略矩形状を有し、平面視で、一対のウイング部9、9と重なるように裏面シート4の非肌側の面に配置され、長手方向Lに連続的に延びている。粘着部7、8としては、例えばホットメルト接着剤が挙げられる。
【0072】
次に、本実施の形態に係る生理用ナプキン1の製造方法の一例につき説明する。
【0073】
図4は生理用ナプキン1の製造装置300の構成例を示す模式図である。また、
図5は生理用ナプキン1の製造方法を模式的に説明する図である。製造装置300は、シート等の資材や半製品の搬送に関し、搬送方向MD、横断方向CD、及び上下方向TDを有する。本実施形態では、資材や半製品の長手方向、幅方向及び厚さ方向はいずれも搬送方向MD、横断方向CD及び上下方向TDと同じである。
【0074】
まず、第1カード機110により、第2繊維層2bに対応する第2繊維ウェブP11が形成される。第1カード機110は、繊維ウェブの形成に一般的に用いられるシングルカード又はダブルカードを使用した乾式のローラーカードである。第2繊維ウェブP11は保水性繊維及び疎水性繊維を含んでいる。第2繊維ウェブP11は搬送装置(図示されず)により搬送方向MDに搬送される。
次に、第2カード機120により、第1繊維層2aに対応する第1繊維ウェブP12が形成される。第2カード機120も第1カード機110と同様の乾式のローラーカードである。第1繊維ウェブP12は保水性繊維を含んでいる。第1繊維ウェブP12は、搬送装置で搬送中の第2繊維ウェブP11上に積層される。それにより、第1繊維ウェブP12と第2繊維ウェブP11とが積層された二層構造の複合繊維ウェブP13が形成され、搬送装置により搬送方向MDに搬送される。なお、各繊維ウェブにおける各繊維の比率は各カード機に供給する原料繊維の比率で制御可能である。
【0075】
次に、二層構造を有する複合繊維ウェブP13は、ウォータージェット処理機130によりウォータージェット処理を施され、繊維どうしを交絡される。それにより、第1連続シート(スパンレース不織布)P14が形成される。ここで、ウォータージェット処理は、複合繊維ウェブP13を連続して移動するメッシュベルト上に載せ、複合繊維ウェブP13の上面側から高圧ジェット水流を噴射させて繊維どうしを交絡させるものである。ウォータージェット処理によって得られる第1連続シートP14の性質は、各繊維ウェブの質量、噴射ノズルの孔径、噴射ノズルの孔数(ピッチ)、繊維ウェッブの通過速度等によって適宜調整、変更することができる。その後、ウォータージェット処理機130を通過した第1連続シートP14は、乾燥機140により乾燥される。乾燥された第1連続シートP15は、搬送装置により搬送方向MDに搬送される。
【0076】
なお、各繊維層に対応する繊維ウェブの形成方法は、上述の方法に限定されず、例えば、湿式法などを採用してもよい。また、ウェブの結合方法は、上述の方法に限定されず、例えば、水流交絡法やニードルパンチ法などを採用してもよい。また、第1連続シートP15は、生理用ナプキン1の製造工場とは別の製造工場で製造されて、ロールに巻き取られた後、ロールの状態で生理用ナプキン1の製造工場に供給されてもよい。
【0077】
次に、搬送装置(図示されず)により搬送された又はロール(図示されず)から巻き戻された第1連続シートP15である第1連続シートP16は、搬送方向MDに搬送されつつ、賦形装置210に供給される。ここで、賦形装置210は、外周面に、周方向に延設され、互いに噛み合う凹凸部を有する賦形ロール210a、210bを備える。そして、第1連続シートP16は、賦形ロール210a、210bの凹凸部に挟持されて、搬送方向MDに延びる凹凸構造を賦形される。その後、第1連続シートP16は搬送方向MDに搬送される。それにより、表面シート2用の連続表面シートP16が形成される。
【0078】
次に、資材ロールWR3から巻き戻された、補助シート5用の連続補助シートASが、搬送方向MDに搬送されつつ、加熱装置220に供給される。次いで、連続補助シートASは、熱処理を施されて嵩回復された後、塗布装置302に供給される。そして、連続補助シートASは、一方の面に接着剤(例示:ホットメルト接着剤)を所定のパターン(例示:スパイラルパターン)で塗布される。その後、連続補助シートASと連続表面シートP16とが、搬送方向MDに搬送されつつ、接合装置230に供給され、接合装置230の一対の接合ロール230a、230b間に狭持され、接合される。それにより、
図5(a)に示すように、連続表面シートP17が形成される。
【0079】
次に、連続表面シートP17は、搬送方向MDに搬送されつつ、塗布装置303に供給される。そして、連続表面シートP17は、連続表面シートP17(の連続補助シートAS)の上下方向TDの下方の面かつ横断方向CDの端部において、搬送方向MDに沿って接着剤(例示:ホットメルト接着剤)を所定のパターンで塗布される。次いで、連続表面シートP17は、搬送方向MDに搬送されつつ、ループ形成装置240に供給される。そして、連続表面シートP17の連続補助シートASにおける横断方向CDの両端部分が、ループ形成装置240のセーラーのような折り畳み治具により中央部分に向かってループ状に折り返される。その結果、連続表面シートP17の横断方向CDの両側に、一対のループ部5L、5Lに対応する一対の側部ASL、ASLが形成される。それにより、
図5(b)に示すように、連続表面シートP18が形成される。
【0080】
次に、資材ロールWR4から巻き戻された、サイドシート6用の連続サイドシートSSが、搬送方向MDに搬送されつつ、切断装置250に供給される。そして、連続サイドシートSSは、横断方向CDの中心の位置で、搬送方向MDに沿って横断方向CDに二等分に切断され、横断方向CDに隣り合う一対の連続サイドシートSSa、SSbが形成される。その後、一対の連続サイドシートSSa、SSbが一対の塗布装置303a、303bに供給される。そして、一対の連続サイドシートSSa、SSbの各々は、横断方向CDの内側の端部に接着剤(例示:ホットメルト接着剤)を所定パターン(例示:ストライプパターン)で塗布される。次いで、一対の連続サイドシートSSa、SSbと連続表面シートP8とが、搬送方向MDに搬送されつつ、接合装置260に供給され、接合装置260の一対の接合ロール260a、260b間に狭持され、接合される。それにより、連続表面シートP18における一対の側部ASL、ASLと一対の連続サイドシートSSa、SSbとがそれぞれ接合される。それにより、
図5(c)に示すように、連続表面シートP2が形成される。
【0081】
次に、連続表面シートP2が、塗布装置305に供給され、一対の連続サイドシートSSa、SSbに近い側の面に、接着剤(例示:ホットメルト接着剤)を所定のパターンで塗布される。次いで、連続表面シートP2と、所定の間隔で搬送方向MDに並んだ吸収体P3とが、搬送方向MDに搬送されつつ、接合装置270に供給される。そして、連続表面シートP2と吸収体P3とが、接合装置270の一対の接合ロール270a、270b間に狭持されて、接合される。それにより、半製品P4が形成される。続いて、半製品P4は、搬送方向MDに搬送されつつ、圧搾装置280に供給される。圧搾装置280では、圧搾用の凸部を外周面に有するエンボスロール280aと、アンビルロール280bとが対面配置されている。そして、半製品P4は、エンボスロール280aとアンビルロール280bとの間に狭持され、圧搾される。その結果、上下方向TDに連続表面シートP2から吸収体P3まで延びる圧搾部11~15が形成され、それにより、半製品P5が形成される。なお、各圧搾部は互い異なる圧搾装置で圧搾されてもよい。次いで、第4の資材ロールWR4から裏面シート3用の連続裏面シートBSが、搬送方向MDに搬送されつつ、接合装置290に供給される。連続裏面シートBSの一方の面には塗布装置306により接着剤(例示:ホットメルト接着剤)が塗布されている。一方、半製品P5が、搬送方向MDに搬送されつつ、接合装置290に供給される。そして、連続裏面シートBSと半製品P5とが、接合装置290の一対の接合ロール290a、290b間に狭持されて、接合される。それにより、
図5(d)に示すように、連続裏面シートBSと半製品P5とが上下方向TDに積層された半製品P6が形成される。その後、半製品P6に粘着剤付きの剥離シートCT(粘着部7、8)が接合され、剥離シートCTが接合された半製品P6の周囲部分が生理用ナプキン1の形状に切断され、生理用ナプキン1が形成される。
【0082】
以上のようにして、生理用ナプキン1が製造される。
【0083】
ただし、二層構造を有する複合繊維ウェブP13を交絡する方法としては、エアスルー方式であってもよい。すなわち、複合繊維ウェブP13を加熱装置に搬送し、加熱装置内で、加熱空気により複合繊維ウェブP13の繊維同士を交絡させる方法である。
【0084】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態の生理用ナプキン1につき、第1実施形態の生理用ナプキン1との相違点につき主に説明する。本実施形態の生理用ナプキン1は、第1繊維層2aの繊維密度が第2繊維層2bの繊維密度よりも小さい点で、第1実施形態の生理用ナプキン1と相違する。すなわち、本実施形態の生理用ナプキン1では、第1繊維層2aから第2繊維層2bへ向かって繊維密度が高くなるように繊維密度の勾配が存在している。ここで、繊維密度は、繊維本数の密度とする。
【0085】
そのような構成を有する生理用ナプキン1では、第2繊維層2bの繊維密度が第1繊維層2aの繊維密度よりも高いので、第2繊維層2bを構成する繊維を互いにより接近させることができる。よって、第2繊維層2bの繊維間の平均距離を第1繊維層2aの繊維間の平均距離と比較して短くできるので、第2繊維層2bにおいて毛細管現象をより強く生じさせることができ、着用時に表面シート2の肌側の表面、すなわち第1繊維層2aの表面に排泄された液状排泄物を、第1繊維層2aに引き込むことができる。そして、第2繊維層2bに引き込まれた液状排泄物を、疎水性繊維により第2繊維層2bを介して吸収体4へ迅速に移行させることができる。それにより、保水性繊維を相対的に多く含む第1繊維層2aから、保水性繊維を相対的に少なく含む第2繊維層2bを介して、第2繊維層2bの非肌側に接する層(例示:補助シート、吸収体4)へ液状排泄物を安定的に移行させることができる。
その際、第1繊維層2aにおいて、保水性繊維により液状排泄物を平面方向に広く拡散させつつ、第2繊維層2bへ引き込むことができる。それにより、表面シート2で平面方向に広く拡散された液状排泄物を、吸収体4における平面方向に広い領域で吸収することができるので、吸収性能を高めることができる。
よって、表面シート2の肌触りを良好にしつつ、吸収性能を向上させることができる。
【0086】
なお、本実施形態では、第1実施形態と同様に第2繊維層2bの保水性繊維の平均繊維長が第1繊維層2aの保水性繊維の平均繊維長よりも短くてもよいが、逆に短くなくてもよい。短い場合には、第1実施形態において第1繊維層2aの繊維密度が第2繊維層2bの繊維密度よりも小さい場合と同様の効果を奏することができる。
【0087】
一方、短くない場合には、第2繊維層2bの保水性繊維の繊維長は、特に制限されず、例えば第1繊維層2aの場合と同様の値を取ることができ、例えば10~80mmが挙げられる。
【0088】
本発明の吸収性物品は、上述した各実施形態に制限されることなく、本発明の目的、趣旨を逸脱しない範囲内において、適宜組合せや変更等が可能である。
【符号の説明】
【0089】
1 生理用ナプキン(吸収性物品)
2 表面シート
2a 第1繊維層
2b 第2繊維層