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特許7190915基板処理装置の洗浄方法、および基板処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】基板処理装置の洗浄方法、および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/205 20060101AFI20221209BHJP
   C23C 16/44 20060101ALI20221209BHJP
   C30B 29/06 20060101ALI20221209BHJP
   C30B 25/14 20060101ALI20221209BHJP
【FI】
H01L21/205
C23C16/44 J
C30B29/06 504L
C30B29/06 504Z
C30B25/14
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019007270
(22)【出願日】2019-01-18
(65)【公開番号】P2020119920
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】竹澤 由裕
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】林 寛之
(72)【発明者】
【氏名】藤田 成樹
(72)【発明者】
【氏名】宮原 達也
(72)【発明者】
【氏名】有賀 純史
(72)【発明者】
【氏名】菊地 晋哉
【審査官】鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-289098(JP,A)
【文献】特開2012-039084(JP,A)
【文献】特開平02-085358(JP,A)
【文献】特開2013-153159(JP,A)
【文献】特開2002-334869(JP,A)
【文献】特開2011-208193(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205
C23C 16/44
C30B 29/06
C30B 25/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理容器の内部を排気する排気管の内部を洗浄する工程を有し、
前記排気管の内部を洗浄する工程は、
前記排気管の途中に設けられる開閉弁を閉じた状態で、フッ素を含む第1の排気管洗浄ガスを前記排気管の前記開閉弁よりも下流側に供給することにより、前記排気管の前記開閉弁よりも下流側の堆積物を前記第1の排気管洗浄ガスで除去する工程と、
前記開閉弁を開けた状態で、ガス構成元素としてハロゲン元素を含まない第2の排気管洗浄ガスを前記処理容器の内部に供給することにより、前記排気管の前記開閉弁よりも上流側の堆積物を前記第2の排気管洗浄ガスで除去する工程とを有する、基板処理装置の洗浄方法。
【請求項2】
ガス構成元素としてフッ素を除くハロゲンを含有する処理容器洗浄ガスを前記処理容器の内部に供給することにより、前記処理容器の内部を洗浄する工程を有し、
前記排気管の内部を洗浄する工程は、前記処理容器の内部を洗浄する工程で前記排気管の内部に堆積する堆積物を除去する工程である、請求項1に記載の基板処理装置の洗浄方法。
【請求項3】
前記処理容器の内部を洗浄する工程の後に、前記排気管の前記開閉弁よりも下流側の堆積物を前記第1の排気管洗浄ガスで除去する工程を実施し、その後、前記排気管の前記開閉弁よりも上流側の堆積物を前記第2の排気管洗浄ガスで除去する工程を実施する、請求項2に記載の基板処理装置の洗浄方法。
【請求項4】
前記排気管の前記開閉弁よりも下流側の堆積物を前記第1の排気管洗浄ガスで除去する工程における、前記排気管の温度は、前記排気管の前記開閉弁よりも上流側の堆積物を前記第2の排気管洗浄ガスで除去する工程における、前記排気管の温度よりも低い、請求項3に記載の基板処理装置の洗浄方法。
【請求項5】
前記排気管の前記開閉弁よりも下流側の堆積物を前記第1の排気管洗浄ガスで除去する工程における、前記処理容器の温度は、前記排気管の前記開閉弁よりも上流側の堆積物を前記第2の排気管洗浄ガスで除去する工程における、前記処理容器の温度よりも低い、請求項3または4に記載の基板処理装置の洗浄方法。
【請求項6】
前記排気管の洗浄で除去される堆積物は、シリコンおよびゲルマニウムの少なくとも1つと、フッ素を除くハロゲンとを含む化合物である、請求項1~5のいずれか1項に記載の基板処理装置の洗浄方法。
【請求項7】
前記第2の排気管洗浄ガスは、水素ガスと酸素ガスの混合ガス、アンモニアガス、および酸素ガスから選ばれる1つ以上である、請求項1~6のいずれか1項に記載の基板処理装置の洗浄方法。
【請求項8】
処理容器と、
前記処理容器の内部を排気する排気管と、
前記排気管の途中に設けられる開閉弁と、
前記排気管の前記開閉弁よりも下流側に、フッ素を含む第1の排気管洗浄ガスを供給する第1の排気管洗浄ガス供給機構と、
前記処理容器に、ガス構成元素としてハロゲン元素を含まない第2の排気管洗浄ガスを供給する第2の排気管洗浄ガス供給機構と、
前記開閉弁と、前記第1の排気管洗浄ガス供給機構と、前記第2の排気管洗浄ガス供給機構とを制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記開閉弁を閉じた状態で、前記排気管の下流側に前記第1の排気管洗浄ガスを供給することにより、前記排気管の前記開閉弁よりも下流側の堆積物を前記第1の排気管洗浄ガスで除去し、
前記開閉弁を開けた状態で、前記処理容器の内部に前記第2の排気管洗浄ガスを供給することにより、前記排気管の前記開閉弁よりも上流側の堆積物を前記第2の排気管洗浄ガスで除去する、基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置の洗浄方法、および基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、処理容器の内部にシリコン単結晶基板を配置し、塩化シランガスと水素ガスとの混合ガスを処理容器の内部に供給することにより、シリコン単結晶基板上にシリコン膜を形成する技術が開示されている。処理容器には、処理容器の内部を排気する排気管が接続される。排気管には、シリコン膜の形成時に、塩化シランガスの残留成分が堆積する。例えば、ポリ塩化シラン、およびポリ塩化シロキサンなどが堆積する。上記特許文献1では、排気管の堆積物を除去すべく、三フッ化塩素ガスと窒素ガスの混合ガスを排気管に供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-284264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の一態様は、大気開放時に排気管が腐食されるのを抑制でき、且つ、処理容器の内部にフッ素が残留するのを抑制できる、技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る基板処理装置の洗浄方法は、
処理容器の内部を排気する排気管の内部を洗浄する工程を有し、
前記排気管の内部を洗浄する工程は、
前記排気管の途中に設けられる開閉弁を閉じた状態で、フッ素を含む第1の排気管洗浄ガスを前記排気管の前記開閉弁よりも下流側に供給することにより、前記排気管の前記開閉弁よりも下流側の堆積物を前記第1の排気管洗浄ガスで除去する工程と、
前記開閉弁を開けた状態で、ガス構成元素としてハロゲン元素を含まない第2の排気管洗浄ガスを前記処理容器の内部に供給することにより、前記排気管の前記開閉弁よりも上流側の堆積物を前記第2の排気管洗浄ガスで除去する工程とを有する。

【発明の効果】
【0006】
本開示の一態様によれば、大気開放時に排気管が腐食されるのを抑制でき、且つ、処理容器の内部にフッ素が残留するのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、一実施形態に係る基板処理装置を示す図である。
図2図2は、一実施形態に係る処理ユニットを示す図である。
図3図3は、一実施形態に係る基板処理装置の動作を示すフローチャートである。
図4図4は、一実施形態に係る排気管洗浄工程を示すフローチャートである。
図5図5は、一実施形態に係る基板処理装置の洗浄条件を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図面において同一の又は対応する構成には同一の又は対応する符号を付し、説明を省略することがある。
【0009】
(基板処理装置)
図1は、一実施形態に係る基板処理装置を示す図である。基板処理装置1は、基板に膜を形成する成膜装置である。基板処理装置1は、例えば、処理ユニット10と、除害装置50と、排気源51と、制御部100とを備える。
【0010】
図2は、一実施形態に係る処理ユニットを示す図である。図2に示す処理ユニット10は、多数枚の基板に対して一括で熱処理を行うバッチ式の縦型熱処理装置である。但し、処理ユニット10は、縦型熱処理装置には限定されない。例えば、処理ユニット10は、基板2を1枚ずつ処理する枚葉式の装置であってもよい。また、処理ユニット10は、セミバッチ式の装置であってもよい。セミバッチ式の装置は、回転テーブルの回転中心線の周りに配置した複数枚の基板2を、回転テーブルと共に回転させ、原料ガス供給領域と反応ガス供給領域とに順番に送る。原料供給領域では、原料ガスが基板2に供給される。反応ガス供給領域では、反応ガスが基板2に供給され、反応ガスと原料ガスとの反応生成物が基板2に形成される。
【0011】
図2に示されるように、処理ユニット10は、基板2が処理される空間を内部に形成する処理容器11と、処理容器11の下端の開口を気密に塞ぐ蓋体20と、基板2を保持する基板保持具30とを有する。基板2は、例えば半導体基板であって、より詳細には例えばシリコンウエハーである。基板保持具30は、ウエハーボートとも呼ばれる。
【0012】
処理容器11は、下端が開放された有天井の円筒形状の内管12と、下端が開放されて内管12の外側を覆う有天井の円筒形状の外管13とを有する。内管12及び外管13は、同軸的に配置され、二重管を形成する。
【0013】
処理容器11は、例えばステンレス鋼により形成される円筒形状のマニホールド14を有する。マニホールド14の上端には、フランジ部15が形成される。フランジ部15には、外管13の下端が設置される。フランジ部15と外管13との下端との間にはOリング等のシール部材16が配置される。
【0014】
マニホールド14の上部の内壁には、円環状の支持部17が設けられる。支持部17には、内管12の下端が設置される。マニホールド14の下端の開口には、蓋体20がOリング等のシール部材21を介して気密に取り付けられる。蓋体20は、例えばステンレス鋼により形成される。
【0015】
蓋体20の中央部には、蓋体20を鉛直方向に貫通する貫通穴が形成される。その貫通穴には、回転軸24が配置される。蓋体20と回転軸24の隙間は、磁性流体シール部23によってシールされる。回転軸24の下端部は、昇降部25のアーム26に回転自在に支持される。回転軸24の上端部には、回転プレート27が設けられる。回転プレート27上には、保温台28を介して基板保持具30が設置される。
【0016】
基板保持具30は、複数枚の基板2を鉛直方向に間隔をおいて保持する。複数枚の基板2は、それぞれ、水平に保持される。基板保持具30は、複数枚の基板2で構成される基板群の上下両側に、ダミー基板3を保持する。昇降部25を上昇させると、蓋体20および基板保持具30が上昇し、基板保持具30が処理容器11の内部に搬入され、処理容器11の下端の開口が蓋体20で密閉される。また、昇降部25を下降させると、蓋体20および基板保持具30が下降し、基板保持具30が処理容器11の外部に搬出される。また、回転軸24を回転させると、回転プレート27と共に基板保持具30が回転する。
【0017】
処理ユニット10は、ガス供給管40を有する。ガス供給管40は、処理容器11の内部にガスを供給する。複数種類のガスに対応して複数本のガス供給管40が設けられる。ガスの種類については後述する。なお、1本のガス供給管40が複数種類のガスを順番に吐出してもよい。また、複数本のガス供給管40が同じ種類のガスを同時に吐出してもよい。
【0018】
ガス供給管40は、例えば、内管12の内部に鉛直に配置される鉛直管41と、鉛直管41の下端部から水平に延びてマニホールド14を貫通する水平管(不図示)とを有する。ガス供給管40の鉛直管41は、鉛直方向に間隔をおいて複数の給気口42を有する。複数の給気口42は、ガスを水平に吐出する。
【0019】
処理ユニット10は、排気管45を有する。排気管45は、処理容器11の内部を排気する。内管12の内部を排気すべく、内管12には排気口18が形成される。その排気口18は、給気口42と対向するように配置される。給気口42から水平に吐出されたガスは、排気口18を通った後、外管13の内壁に沿って下降し、排気管45から排気される。
【0020】
排気管45は、図1に示すように、処理容器11と除害装置50とを接続し、処理容器11から排気されるガスを除害装置50に送る。除害装置50は、排気ガスの有害成分を除去したうえで排気ガスを大気に放出する。排気管45の途中には、上流側から下流側に向けて、開閉弁47と排気源51とがこの順で設けられる。開閉弁47は、排気管45の内部を開閉する。開閉弁47は、処理容器11の内部の気圧を制御する圧力制御弁を兼ねる。排気源51は、真空ポンプを含み、処理容器11の内部のガスを、吸引して、除害装置50に送る。
【0021】
処理ユニット10は、図2に示すように、処理容器加熱部60を有する。処理容器加熱部60は、処理容器11の内部を加熱することにより、処理容器11の内部に供給されるガスの処理能力を向上する。処理容器加熱部60は、処理容器11の外部に配置され、処理容器11の外側から処理容器11の内部を加熱する。例えば、処理容器加熱部60は、外管13を取り囲むように円筒形状に形成される。処理容器加熱部60は、例えば電気ヒータで構成される。
【0022】
処理ユニット10は、図1に示すように、排気管加熱部62を有する。排気管加熱部62は、排気管45を外側から加熱することにより、排気管45の内部で排気ガスが液化または固化するのを抑制する。排気管加熱部62は、排気管45に沿って配置され、排気管上流部48と排気管下流部49との両方を加熱する。排気管上流部48は、排気管45のうち、開閉弁47よりも上流側の部分である。排気管下流部49は、排気管45のうち、開閉弁47よりも下流側の部分である。
【0023】
処理ユニット10は、図1に示すように、成膜ガス供給機構70と、処理容器洗浄ガス供給機構75と、パージガス供給機構80とを有する。成膜ガス供給機構70は、処理容器11の内部に成膜ガスを供給することにより、処理容器11の内部で基板2に成膜する。例えば、成膜ガス供給機構70は、処理容器11の内部に成膜ガスを供給することにより、シリコン(Si)膜を成膜する。Si膜は、アモルファスシリコン膜、ポリシリコン膜のいずれでもよい。Si膜を成膜する場合、成膜ガスとしては、例えば、モノシラン(SiH)ガス、ジシラン(Si)ガス等のシラン系ガスが用いられる。
【0024】
成膜ガス供給機構70は、成膜ガス供給源71と、成膜ガス配管72と、成膜ガス流量制御弁73とを有する。成膜ガス配管72は、成膜ガス供給源71とガス供給管40とを接続し、成膜ガス供給源71からガス供給管40に成膜ガスを送る。成膜ガス流量制御弁73は、成膜ガス配管72の途中に設けられ、成膜ガスの流量を制御する。
【0025】
処理容器洗浄ガス供給機構75は、処理容器11の内部に処理容器洗浄ガスを供給することにより、処理容器11の内部で堆積した堆積物を除去する。この処理は、処理容器11の開口を蓋体20で密閉した状態で行われ、処理容器11の内部に基板保持具30を搬入した状態で行われる。処理容器洗浄ガスは、処理容器11、ガス供給管40、および基板保持具30に堆積した堆積物を除去する。除去する堆積物は、例えば基板2の成膜時に堆積したものであり、具体的にはSi膜である。
【0026】
処理容器洗浄ガスとしては、フッ素を除くハロゲンを含有するハロゲン含有ガスが用いられる。フッ素を除くハロゲンは、例えば、塩素(Cl)、臭素(Br)、およびヨウ素(I)から選ばれる1つ以上である。処理容器11の洗浄後に、処理容器11の内部にフッ素が残留するのを防止できる。それゆえ、処理容器11の洗浄後に、処理容器11の内部で基板2の成膜処理を再び行うときに、成膜処理の下地表面(例えば基板2の表面、または基板2上に成膜された膜の表面)へのフッ素の吸着、および成膜処理によって形成される膜中へのフッ素の混入を防止できる。
【0027】
処理容器洗浄ガスとしては、例えば塩素(Cl)ガスが用いられる。Clガスは、処理容器11、ガス供給管40、および基板保持具30に堆積した堆積物を除去する。除去する堆積物は、例えばSi膜である。一方、処理容器11、ガス供給管40、および基板保持具30は、例えば石英(SiO)または炭化珪素(SiC)で形成される。
【0028】
Clガスは、SiOおよびSiCに比べてSiを選択的にエッチングする。従って、Clガスは、処理容器11、ガス供給管40、および基板保持具30の損傷を抑制しつつ、堆積物であるSi膜を除去できる。
【0029】
従来、処理容器洗浄ガスとしては、フッ素系ガスが用いられていた。この場合、処理容器11の内部にフッ素が残留する問題の他に、基板保持具30をSiCで形成するのが困難という問題があった。SiCは、フッ素系ガスによってエッチングされやすいからである。
【0030】
本実施形態の処理容器洗浄ガスは、フッ素を除くハロゲンを含有するハロゲン含有ガスであり、ガス構成元素としてフッ素を含まない。「ガス構成元素としてフッ素を含まない」とは、不純物としてフッ素を含むことを含む。つまり、処理容器洗浄ガスは、不純物としてフッ素を含んでもよい。処理容器洗浄ガスがガス構成元素としてフッ素を含まないので、SiOの代わりにSiCで基板保持具30を形成しても、基板保持具30のエッチングを抑制できる。
【0031】
SiOの代わりにSiCで基板保持具30を形成すると、基板保持具30とシリコンウエハーである基板2との熱膨張差を小さくでき、パーティクルの発生を抑制できる。
【0032】
SiOの代わりにSiCで基板保持具30を形成する場合、ダミー基板3としてSiCウエハーを用いても良い。ダミー基板3と基板保持具30との熱膨張差を無くすことができ、パーティクルの発生を抑制できる。またダミー基板3を再利用することが可能となるので、例えばダミー基板3としてシリコンウエハーを用いる場合に比べて、コストを削減できる。
【0033】
処理容器洗浄ガス供給機構75は、処理容器洗浄ガス供給源76と、処理容器洗浄ガス配管77と、処理容器洗浄ガス流量制御弁78とを有する。処理容器洗浄ガス配管77は、処理容器洗浄ガス供給源76とガス供給管40とを接続し、処理容器洗浄ガス供給源76からガス供給管40に処理容器洗浄ガスを送る。処理容器洗浄ガス流量制御弁78は、処理容器洗浄ガス配管77の途中に設けられ、処理容器洗浄ガスの流量を制御する。
【0034】
パージガス供給機構80は、処理容器11の内部にパージガスを供給することにより、処理容器11の内部に残留する処理容器洗浄ガスを除去する。この処理は、処理容器11の開口を蓋体20で密閉した状態で行われ、処理容器11の内部に基板保持具30を搬入した状態で行われる。パージガスとしては、例えば不活性ガスが用いられる。不活性ガスとしては、Arガス等の希ガス、Nガス等を用いることができる。
【0035】
パージガス供給機構80は、パージガス供給源81と、パージガス配管82と、パージガス流量制御弁83とを有する。パージガス配管82は、パージガス供給源81とガス供給管40とを接続し、パージガス供給源81からガス供給管40にパージガスを送る。パージガス流量制御弁83は、パージガス配管82の途中に設けられ、パージガスの流量を制御する。
【0036】
ところで、処理容器洗浄ガスとしてのClガスは、処理容器11の内部に堆積したSi膜をエッチングすることにより、SiClガスを生成する。SiClガスは、Clガスと共に、処理容器11から排出され、排気管45の内部を通る。Clガスによる腐食を抑制するために排気管45の温度は比較的低く設定されるので、SiClが排気管45の内面に吸着してしまう。SiCl吸着物と排気管45内に持ち込まれたHOガスとが反応し、固相のSiOClが堆積する。
【0037】
固相のSiOClが排気管45の内部で堆積した状態で、排気管45を大気開放すると、下記式(1)に示すように、固相のSiOClと大気中のHOガスとが反応して、HClガスが発生する。
SiOCl+HO→SiO+HCl↑・・・(1)
発生したHClガスは、HOガスの存在下で、排気管45を腐食してしまう。例えば、排気管45がステンレス鋼で形成される場合、排気管45にサビが生じてしまう。また、発生したHClガスは、除害装置50を通ることなく、大気に放出されてしまう。
【0038】
そこで、本実施形態の処理ユニット10は、第1の排気管洗浄ガス供給機構85と、第2の排気管洗浄ガス供給機構90とを有する。これにより、詳しくは後述するが、排気管45の内部の堆積物を除去できる。除去する堆積物は、例えば、処理容器11の内部を洗浄する工程で生成したSiOClを含む堆積物である。
【0039】
第1の排気管洗浄ガス供給機構85は、開閉弁47を閉じた状態で、開閉弁47よりも下流側の排気管下流部49に第1の排気管洗浄ガスを供給することにより、排気管下流部49の内部に堆積した堆積物を除去する。第1の排気管洗浄ガスとしては、フッ素を含むガスが用いられ、例えばフッ素(F)ガスが用いられる。Fガスは、下記式(2)に示すように固相のSiOClを分解する。
SiOCl+F→SiF↑+O↑+Cl↑・・・(2)
固相のSiOClがFガスによって分解されると、SiFガスと、Oガスと、Clガスとが発生する。これらのガスは、排気源51によって除害装置50に送られる。除害装置50は、排気ガスの有害成分を除去したうえで、排気ガスを大気に放出する。
【0040】
第1の排気管洗浄ガスは、フッ素を含むので、開閉弁47を閉じた状態で、開閉弁47よりも下流側の排気管下流部49に供給される。第1の排気管洗浄ガスが処理容器11の内部に混入するのを防止でき、処理容器11の内部にフッ素が残留するのを防止できる。それゆえ、処理容器11の内部で基板2の成膜処理を再び行うときに、成膜処理が施される下地表面へのフッ素の吸着、および成膜処理によって形成される膜中へのフッ素の混入を防止できる。なお、フッ素による腐食を抑制するため排気管45は比較的低い温度に設定されている。排気管45の加熱は、排気管上流部48と排気管下流部49を独立に制御可能である。従って、排気管下流部49側のみ比較的低い温度に設定しておいても良いが、伝熱による温度上昇を防ぐために、排気管上流部48側も比較的低い温度に設定しておくのが望ましい。
【0041】
第1の排気管洗浄ガス供給機構85は、第1の排気管洗浄ガス供給源86と、第1の排気管洗浄ガス配管87と、第1の排気管洗浄ガス流量制御弁88とを有する。第1の排気管洗浄ガス配管87は、第1の排気管洗浄ガス供給源86と排気管下流部49とを接続し、第1の排気管洗浄ガス供給源86から排気管下流部49に第1の排気管洗浄ガスを送る。第1の排気管洗浄ガス流量制御弁88は、第1の排気管洗浄ガス配管87の途中に設けられ、第1の排気管洗浄ガスの流量を制御する。
【0042】
第2の排気管洗浄ガス供給機構90は、処理容器11の内部に第2の排気管洗浄ガスを供給することにより、排気管上流部48の内部に堆積した堆積物を除去する。この処理は、処理容器11の開口を蓋体20で密閉した状態で行われ、処理容器11の内部に基板保持具30を搬入した状態で行われる。
【0043】
第2の排気管洗浄ガスとしては、ガス構成元素としてフッ素を含まないものが用いられる。「ガス構成元素としてフッ素を含まない」とは、不純物としてフッ素を含むことを含む。つまり、第2の排気管洗浄ガスは、不純物としてフッ素を含んでもよい。
【0044】
第2の排気管洗浄ガスは、ガス構成元素としてフッ素を含まないので、処理容器11の内部にフッ素が残留するのを防止できる。第2の排気管洗浄ガスとしては、例えば水素(H)ガスと酸素(O)ガスとの混合ガスが用いられる。この混合ガスは、処理容器11の内部で熱励起され、HラジカルとOHラジカルとを生成し、下記式(3)に示すように固相のSiOClを分解する。
SiOCl+H+O→HCl↑+SiO・・・(3)
固相のSiOClが分解され、HClガスと固相のSiOとが発生する。上記式(3)で発生するHClガスは、排気源51によって除害装置50に送られるので問題ない。除害装置50は、排気ガスの有害成分を除去したうえで、排気ガスを大気に放出する。また、上記式(3)で発生する固相のSiOは、固相のSiOClとは異なり、排気管45の大気開放時にHClガスを発生しないので問題ない。
【0045】
第2の排気管洗浄ガス供給機構90は、第2の排気管洗浄ガス供給源91と、第2の排気管洗浄ガス配管92と、第2の排気管洗浄ガス流量制御弁93とを有する。第2の排気管洗浄ガス配管92は、第2の排気管洗浄ガス供給源91とガス供給管40とを接続し、第2の排気管洗浄ガス供給源91からガス供給管40に第2の排気管洗浄ガスを送る。第2の排気管洗浄ガス流量制御弁93は、第2の排気管洗浄ガス配管92の途中に設けられ、第2の排気管洗浄ガスの流量を制御する。
【0046】
図1に示すように、基板処理装置1は、制御部100を備える。制御部100は、例えばコンピュータで構成され、CPU(Central Processing Unit)101と、メモリなどの記憶媒体102とを備える。記憶媒体102には、基板処理装置1において実行される各種の処理を制御するプログラムが格納される。制御部100は、記憶媒体102に記憶されたプログラムをCPU101に実行させることにより、基板処理装置1の動作を制御する。また、制御部100は、入力インターフェース103と、出力インターフェース104とを備える。制御部100は、入力インターフェース103で外部からの信号を受信し、出力インターフェース104で外部に信号を送信する。
【0047】
かかるプログラムは、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体に記憶されていたものであって、その記憶媒体から制御部100の記憶媒体102にインストールされたものであってもよい。コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体としては、例えば、ハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルデスク(MO)、メモリーカードなどが挙げられる。なお、プログラムは、インターネットを介してサーバからダウンロードされ、制御部100の記憶媒体102にインストールされてもよい。
【0048】
(基板処理装置の動作)
図3は、一実施形態に係る基板処理装置の動作を示すフローチャートである。図3には、基板処理装置1の洗浄処理(処理容器洗浄工程S14、排気管洗浄工程S15)に先立って行われる、基板2の成膜処理(搬入工程S11、成膜工程S12、搬出工程S13)についても図示してある。図3に示す工程は、制御部100による制御下で、基板2を替えて繰り返し実施される。なお、図3では、基板2の成膜処理が一回行われる度に、基板処理装置1の洗浄処理が一回行われるが、本開示の技術はこれに限定されない。基板2の成膜処理が複数回行われる度に、基板処理装置1の洗浄処理が行われてもよい。
【0049】
基板処理方法は、基板2を処理容器11の内部に搬入する搬入工程S11を有する。搬入工程S11では、先ず、処理容器11の外部で、搬送装置が複数の基板2を基板保持具30に載せる。基板保持具30は、複数の基板2を鉛直方向に間隔をおいて水平に保持する。次いで、昇降部25を上昇させ、蓋体20および基板保持具30を上昇させる。基板保持具30と共に基板2が処理容器11の内部に搬入され、処理容器11の下端の開口が蓋体20で密閉される。
【0050】
基板処理方法は、基板2に膜を形成する成膜工程S12を有する。成膜工程S12では、処理容器11の内部の気圧が設定値になるように処理容器11の内部を排気しながら、処理容器11の内部に成膜ガスを供給し、基板保持具30と共に回転する基板2に膜を形成する。形成する膜は、例えばSi膜である。成膜工程S12では、処理容器加熱部60が処理容器11の内部を加熱することにより、成膜速度を向上する。成膜工程S12の後、成膜ガスの代わりにパージガスを供給し、続いて処理容器11の内部の排気を止め、処理容器11の内部の気圧を常圧に戻す。
【0051】
基板処理方法は、基板2を処理容器11の外部に搬出する搬出工程S13を有する。搬出工程S13では、昇降部25を下降させ、蓋体20および基板保持具30を下降させる。蓋体20が処理容器11の下端の開口を開放し、基板保持具30と共に基板2が処理容器11の外部に搬出される。その後、搬送装置が、基板2を基板保持具30から取り外す。体20および基板保持具30を上昇させる。基板保持具30が処理容器11の内部に搬入され、処理容器11の下端の開口が蓋体20で密閉される。
【0052】
基板処理方法は、処理容器11の内部を洗浄する処理容器洗浄工程S14を有する。処理容器洗浄工程S14では、処理容器11の内部をドライクリーニングする。処理容器洗浄工程S14では、処理容器11の内部の気圧が設定値になるように処理容器11の内部を排気しながら、処理容器11の内部に処理容器洗浄ガスを供給する。処理容器洗浄ガスは、例えばClガスである。Clガスは、処理容器11、ガス供給管40、および基板保持具30の損傷を抑制しつつ、堆積物であるSi膜を除去できる。従来のフッ素系ガスはSiCをエッチングしやすいので、SiCで基板保持具30が形成される場合に、従来のフッ素系ガスに替えてClガスを用いる意義が大きい。
【0053】
基板処理方法は、排気管45の内部を洗浄する排気管洗浄工程S15を有する。排気管洗浄工程S15では、排気管45の内部をドライクリーニングする。排気管洗浄工程S15は、処理容器洗浄工程S14で排気管45の内部に堆積する堆積物を除去する。除去する堆積物は、例えば固相のSiOClである。なお、固相のSiOClは、処理容器洗浄工程S14以外の工程で、排気管45の内部に堆積するものであってもよい。排気管洗浄工程S15は、処理容器洗浄工程S14で排気管45の内部に堆積する堆積物を除去する場合、処理容器洗浄工程S14の後に行われる。処理容器洗浄工程S14が行われる度に排気管洗浄工程S15を行うことが望ましいが、処理容器洗浄工程S14が複数回行った後に排気管洗浄工程S15を行っても良い。
【0054】
図4は、一実施形態に係る排気管洗浄工程を示すフローチャートである。排気管洗浄工程S15は、排気管下流部49を洗浄する排気管下流部洗浄工程S151を有する。排気管下流部洗浄工程S151では、開閉弁47を閉じた状態で、開閉弁47よりも下流側の排気管下流部49に第1の排気管洗浄ガスを供給する。なお、開閉弁47は、処理容器洗浄工程S14の後、排気管下流部洗浄工程S151の前に、開状態から閉状態に切り替えられる。また、開閉弁47が開状態から閉状態に切り替えられる前に、処理容器11の内部へのClガスの供給が停止され、真空引きやパージが行われる。
【0055】
第1の排気管洗浄ガスは、例えばFガスである。Fガスは、上記式(2)に示すように固相のSiOClを分解する。固相のSiOClがFガスによって分解されると、SiFガスと、Oガスと、Clガスとが発生する。これらのガスは、排気源51によって除害装置50に送られるので問題ない。除害装置50は、排気ガスの有害成分を除去したうえで、排気ガスを大気に放出する。
【0056】
排気管下流部洗浄工程S151では、開閉弁47が閉状態であるので、Fガスが開閉弁47よりも上流側の処理容器11の内部に混入しない。排気管下流部洗浄工程S151によって、処理容器11の内部にフッ素が残留するのを防止できる。それゆえ、処理容器11の内部で基板2の成膜処理を再び行うときに、成膜処理が施される下地表面へのフッ素の吸着、および成膜処理によって形成される膜中へのフッ素の混入を防止できる。
【0057】
排気管下流部洗浄工程S151では、開閉弁47を閉じた状態であるので、処理容器11の内部は、処理容器洗浄工程S14の完了時と同じ状態に維持される。処理容器洗浄工程S14の完了時には、処理容器洗浄工程S14で使用したClガスが、処理容器11の内部表面に吸着しているため、Clガスが残留している。残留するClガスは、下記のパージ工程S152で除去される。
【0058】
排気管洗浄工程S15は、開閉弁47を開けた状態で、処理容器11の内部にパージガスを供給するパージ工程S152を有する。パージガスと共に残留Clガスが処理容器11から排気管45に排出される。なお、排気管下流部洗浄工程S151の後、パージ工程S152の前に、排気管下流部49へのFガスの供給は停止され、次いで、開閉弁47が閉状態から開状態に切り替えられる。
【0059】
パージ工程S152中に、処理容器加熱部60は、処理容器11の温度を設定温度まで上昇させ、設定温度で維持することにより、処理容器11の内部表面に吸着し残留するClガスの排出効率を向上する。また、パージ工程S152中に、排気管加熱部62は、排気管45の温度を設定温度まで上昇させ、設定温度で維持することにより、排気管45の内部表面に吸着した第1の排気管洗浄ガスや堆積物分解物の脱離を促進し、また排気ガスが液化または固化するのを抑制する。
【0060】
なお、処理容器洗浄工程S14および排気管下流部洗浄工程S151では、パージ工程S152および後述の排気管上流部洗浄工程S153とは異なり、ハロゲン元素を含むガスが用いられる。ハロゲン元素による排気管45の腐食を防止すべく、処理容器洗浄工程S14および排気管下流部洗浄工程S151では、排気管45の温度は比較的低く設定される。
【0061】
排気管洗浄工程S15は、排気管上流部48を洗浄する排気管上流部洗浄工程S153を有する。排気管上流部洗浄工程S153では、開閉弁47を開けた状態で、処理容器11の内部に第2の排気管洗浄ガスを供給する。第2の排気管洗浄ガスとしては、フッ素はもちろんのことハロゲン元素を含まないガスが用いられるので、排気管45の温度は比較的高く設定することができる。
【0062】
第2の排気管洗浄ガスは、例えばHガスとOガスとの混合ガスである。この混合ガスは、処理容器11の内部で熱励起され、HラジカルとOHラジカルとを生成し、上記式(3)に示すように固相のSiOClを分解する。固相のSiOClが分解され、HClガスと固相のSiOとが発生する。上記式(3)で発生するHClガスは、排気源51によって除害装置50に送られるので問題ない。除害装置50は、排気ガスの有害成分を除去したうえで、排気ガスを大気に放出する。また、上記式(3)で発生する固相のSiOは、固相のSiOClとは異なり、排気管45の大気開放時にHClガスを発生しないので問題ない。
【0063】
第2の排気配管ガスとしてHガスとOガスとの混合ガスが用いられる場合の処理条件は、下記の通りである。処理容器11の温度は、例えば300℃以上、900℃以下である。排気管45の温度は、例えば室温以上、300℃以下である。堆積物と洗浄ガスの反応を促進するために、また排気ガスが液化または固化するのを抑制するために、高温に設定するのが望ましい。処理容器11の内部へのHガスの供給流量は、例えば500sccm以上、2000sccm以下である。処理容器11の内部へのOガスの供給流量は、例えば500sccm以上、2000sccm以下である。処理容器11の内部の気圧は、例えば0.1Torr以上、5Torr以下である。
【0064】
ところで、排気管下流部洗浄工程S151と排気管上流部洗浄工程S153との順序は図4に示す順序とは逆でもよいが、本実施形態では図4に示すように排気管下流部洗浄工程S151の後に排気管上流部洗浄工程S153が行われる。これにより、詳しくは後述するが、排気管45の温度変更のための待ち時間を短縮でき、排気管洗浄工程S15の時間を短縮できる。
【0065】
本実施形態によれば、上述の如く、処理容器洗浄工程S14の後で、排気管洗浄工程S15が行われる。その排気管洗浄工程S15では、排気管下流部洗浄工程S151と、パージ工程S152と、排気管上流部洗浄工程S153とが、この順序で行われる。これにより、図5に示すように、排気管45の温度が比較的低い工程を、排気管45の温度が比較的高い工程よりも先にまとめて実施できる。また、処理容器11の温度が比較的低い工程を、処理容器11の温度が比較的高い工程よりも先にまとめて実施できる。図5は、一実施形態に係る基板処理装置のクリーニング条件を示す図である。
【0066】
処理容器洗浄工程S14および排気管下流部洗浄工程S151では、パージ工程S152および排気管上流部洗浄工程S153とは異なり、ハロゲン元素を含むガスが用いられる。そこで、ハロゲン元素による排気管45の腐食を防止すべく、図5に示すように、処理容器洗浄工程S14および排気管下流部洗浄工程S151では、排気管45の温度が比較的低く設定される。排気管45の温度が比較的低い処理容器洗浄工程S14と排気管下流部洗浄工程S151とを続けて行うことにより、これらの工程の間で排気管上流部洗浄工程S153を行う場合に比べて、排気管45の温度変更の回数を低減できる。よって、排気管45の温度変更のための待ち時間を短縮でき、排気管洗浄工程S15の時間を短縮できる。
【0067】
なお、処理容器洗浄工程S14での排気管45の温度と、排気管下流部洗浄工程S151での排気管45の温度とは、図5では同一であるが、異なってもよい。また、パージ工程S152の終了時の排気管45の温度と、排気管上流部洗浄工程S153での排気管45の温度とは、図5では同一であるが、異なってもよい。いずれにしろ、排気管45の温度が比較的低い処理容器洗浄工程S14と排気管下流部洗浄工程S151とを続けて行うことにより、排気管45の温度を同じ温度域で無駄に上げ下げせずに済む。従って、排気管45の温度変更のための待ち時間を短縮でき、排気管洗浄工程S15の時間を短縮できる。
【0068】
また、処理容器洗浄工程S14および排気管下流部洗浄工程S151では、パージ工程S152および排気管上流部洗浄工程S153に比べて、処理容器11の温度は比較的低く設定される。パージ工程S152では、処理容器11の内部に残留するClガスの排出効率を向上すべく、処理容器11の温度は比較的高く設定される。また、排気管上流部洗浄工程S153では、HガスとOガスとの混合ガスを熱励起すべく、処理容器11の温度は比較的高く設定される。本実施形態によれば、処理容器11の温度が比較的低い処理容器洗浄工程S14と排気管下流部洗浄工程S151とを続けて行うことにより、これらの工程の間で排気管上流部洗浄工程S153を行う場合に比べて、処理容器11の温度変更の回数を低減できる。よって、処理容器11の温度変更のための待ち時間を短縮でき、排気管洗浄工程S15の時間を短縮できる。
【0069】
なお、処理容器洗浄工程S14での処理容器11の温度と、排気管下流部洗浄工程S151での処理容器11の温度とは、図5では同一であるが、異なってもよい。また、パージ工程S152の終了時の処理容器11の温度と、排気管上流部洗浄工程S153での処理容器11の温度とは、図5では同一であるが、異なってもよい。いずれにしろ、処理容器11の温度が比較的低い処理容器洗浄工程S14と排気管下流部洗浄工程S151とを続けて行うことにより、処理容器11の温度を同じ温度域で無駄に上げ下げせずに済む。従って、処理容器11の温度変更のための待ち時間を短縮でき、排気管洗浄工程S15の時間を短縮できる。
【0070】
以上、本開示に係る基板処理装置の洗浄方法および基板処理装置の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態などに限定されない。特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、および組合わせが可能である。それらについても当然に本開示の技術的範囲に属する。
【0071】
例えば、成膜ガスによって形成する膜は、Si膜には限定されない。例えば、Si膜の代わりに、ゲルマニウム(Ge)膜、またはシリコンゲルマニウム(SiGe)膜を成膜してもよい。Ge膜を成膜する場合、成膜ガスとしては、例えば、モノゲルマン(GeH)ガス、ジゲルマン(Ge)ガス等のゲルマン系ガスが用いられる。また、SiGe膜を成膜する場合、成膜ガスとしては、例えば、シラン系ガスとゲルマン系ガスとが用いられる。Si膜、Ge膜、およびSiGe膜は、ノンドープの膜でもよいし、カーボン(C)、リン(P)、ボロン(B)等がドーピングされた膜でもよい。
【0072】
処理容器洗浄ガスは、Clガスには限定されない。処理容器洗浄ガスとしては、Clガスの他に、塩化水素(HCl)ガス、臭素(Br)ガス、臭化水素(HBr)ガス、ヨウ化水素(HI)ガス等も使用可能である。これらのガスは、フッ素を含まないので、処理容器11の内部にフッ素が残留するのを防止できる。
【0073】
第1の排気管洗浄ガスは、Fガスには限定されない。第1の排気管洗浄ガスとしては、Fガスの他に、三フッ化塩素(ClF)ガス等のフッ素系ガスも使用可能である。フッ素系ガスは、F2ガスと同様に、固相のSiOClを分解できる。
【0074】
なお、FガスやClFガス等によって分解する堆積物は、成膜ガスに由来するSiとGeの少なくとも1つを含み、且つ、処理容器洗浄ガスに由来するClとBrとIの少なくとも1つを含む化合物であればよい。上記(3)式と同様の反応式で、堆積物を分解できる。
【0075】
第2の排気管洗浄ガスは、HガスとOガスとの混合ガスには限定されない。第2の排気管洗浄ガスとしては、HガスとOガスとの混合ガスの他に、アンモニア(NH)ガス、酸素(O)ガス等も使用可能である。
【0076】
例えば、第2の排気配管ガスとしてのNHガスは、下記式(4)に示すように固相のSiOClを分解する。
SiOCl+NH→NHCl↑+SiON・・・(4)
固相のSiOClが分解され、NHClガスと固相のSiONとが発生する。上記式(4)で発生するNHClガスは、排気源51によって除害装置50に送られるので問題ない。除害装置50は、排気ガスの有害成分を除去したうえで、排気ガスを大気に放出する。上記式(4)で発生する固相のSiONは、固相のSiOClとは異なり、排気管45の大気開放時にHClガスを発生しないので問題ない。
【0077】
なお、第2の排気配管ガスとしてのNHガスによって分解する堆積物は、成膜ガスに由来するSiとGeの少なくとも1つを含み、且つ、処理容器洗浄ガスに由来するClとBrとIの少なくとも1つを含む化合物であればよい。上記(4)式と同様の反応式で、堆積物を分解できる。
【0078】
第2の排気配管ガスとしてNHガスが用いられる場合の処理条件は、下記の通りである。処理容器11の温度は、例えば300℃以上、900℃以下である。排気管45の温度は、例えば室温以上、300℃以下である。処理容器11の内部へのNHガスの供給流量は、例えば500sccm以上、5000sccm以下である。処理容器11の内部の気圧は、例えば0.1Torr以上、300Torr以下である。
【0079】
また、第2の排気配管ガスとしてのOガスは、下記式(5)に示すように固相のSiOClを分解する。
SiOCl+O→Cl↑+SiO・・・(5)
固相のSiOClが分解され、Clガスと固相のSiOとが発生する。上記式(5)で発生するClガスは、排気源51によって除害装置50に送られるので問題ない。除害装置50は、排気ガスの有害成分を除去したうえで、排気ガスを大気に放出する。上記式(5)で発生する固相のSiOは、固相のSiOClとは異なり、排気管45の大気開放時にHClガスを発生しないので問題ない。
【0080】
なお、第2の排気配管ガスとしてのOガスによって分解する堆積物は、成膜ガスに由来するSiとGeの少なくとも1つを含み、且つ、処理容器洗浄ガスに由来するClとBrとIの少なくとも1つを含む化合物であればよい。上記(5)式と同様の反応式で、堆積物を分解できる。
【0081】
第2の排気配管ガスとしてOガスが用いられる場合の処理条件は、下記の通りである。処理容器11の温度は、例えば室温以上、900℃以下である。排気管45の温度は、例えば室温以上、300℃以下である。処理容器11の内部へのOガスの供給流量は、例えば10sccm以上、50000sccm以下である。処理容器11の内部の気圧は、例えば0.1Torr以上、常圧(760Torr)以下である。
【0082】
基板2は、シリコンウエハーなどの半導体基板には限定されず、ガラス基板などであってもよい。
【符号の説明】
【0083】
1 基板処理装置
2 基板
11 処理容器
45 排気管
47 開閉弁
48 排気管上流部
49 排気管下流部
60 処理容器加熱部
62 排気管加熱部
70 成膜ガス供給機構
75 処理容器洗浄ガス供給機構
80 パージガス供給機構
85 第1の排気管洗浄ガス供給機構
90 第2の排気管洗浄ガス供給機構
100 制御部
図1
図2
図3
図4
図5