IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士フイルム株式会社の特許一覧

特許7190989導電膜、フィルムセンサー、タッチパネル、液晶表示装置、導電膜の製造方法、及び組成物
<>
  • 特許-導電膜、フィルムセンサー、タッチパネル、液晶表示装置、導電膜の製造方法、及び組成物 図1
  • 特許-導電膜、フィルムセンサー、タッチパネル、液晶表示装置、導電膜の製造方法、及び組成物 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】導電膜、フィルムセンサー、タッチパネル、液晶表示装置、導電膜の製造方法、及び組成物
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20221209BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20221209BHJP
   H01B 5/14 20060101ALI20221209BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20221209BHJP
   B32B 7/025 20190101ALI20221209BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20221209BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20221209BHJP
   B05D 3/10 20060101ALI20221209BHJP
   B05D 5/12 20060101ALI20221209BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20221209BHJP
   H05K 1/09 20060101ALI20221209BHJP
   H05K 3/12 20060101ALI20221209BHJP
【FI】
G06F3/041 490
G06F3/041 660
G06F3/044 122
H01B5/14 Z
H01B13/00 503Z
B32B7/025
B32B7/023
B32B27/18 J
B05D3/10 K
B05D5/12 B
B05D7/24 303C
H05K1/09 A
H05K3/12 610B
H05K3/12 610D
G06F3/041 495
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019168334
(22)【出願日】2019-09-17
(65)【公開番号】P2021047509
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2021-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 秀之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 守正
【審査官】木内 康裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-195739(JP,A)
【文献】特開2015-005495(JP,A)
【文献】特開2019-106305(JP,A)
【文献】特開2011-171273(JP,A)
【文献】特開2014-212211(JP,A)
【文献】特開2012-089782(JP,A)
【文献】特開2016-099861(JP,A)
【文献】特開2008-144045(JP,A)
【文献】特開2014-067492(JP,A)
【文献】特開2015-132002(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/03
G06F 3/041 - 3/047
H01B 5/14
H01B 13/00
B32B 7/025
B32B 7/023
B32B 27/18
B05D 3/10
B05D 5/12
B05D 7/24
H05K 1/09
H05K 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、銀配線層と、を有し、
前記銀配線層の表面が、銀を含む島部を有し、
波長550nmにおける前記銀配線層の反射率が、20%以下であり、
前記銀配線層の接触抵抗が、1kΩ以下であり、
前記銀配線層のうち前記島部が配置されていない領域における銀の含有率に対する、前記島部における前記銀の含有率の比が、1.1以上、2.5以下である、
導電膜。
【請求項2】
前記銀配線層における前記銀の含有率が、前記銀配線層の全質量に対して、70質量%~98質量%である請求項1に記載の導電膜。
【請求項3】
前記銀配線層の平均厚さが、0.2μm~10μmである請求項1又は請求項2に記載の導電膜。
【請求項4】
前記島部の平均高さが、20nm~1,000nmである請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の導電膜。
【請求項5】
前記銀配線層の表面粗さRaが、5nm~100nmである請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の導電膜。
【請求項6】
前記島部の面積割合が、前記銀配線層の面積に対して、20%~80%である請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の導電膜。
【請求項7】
前記島部における前記銀の含有率が、前記銀配線層のうち前記島部が配置されていない領域における銀の含有率とは異なる請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の導電膜。
【請求項8】
請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の導電膜を含むフィルムセンサー。
【請求項9】
請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の導電膜を含むタッチパネル。
【請求項10】
請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の導電膜を含む液晶表示装置。
【請求項11】
基材上に、銀と、バインダーと、を含む組成物を用いて銀配線層を形成する工程と、
前記銀配線層の表面の少なくとも一部を、酸化剤を含むアルカリ水溶液で処理して、銀を含む島部を形成する工程と、
を含み、
前記銀配線層のうち前記島部が配置されていない領域における銀の含有率に対する、前記島部における銀の含有率の比が、1.1以上、2.5以下である、導電膜の製造方法。
【請求項12】
銀粒子と、バインダーと、を含み、
前記銀粒子の含有率が、組成物の全固形分質量に対して、70質量%~98質量%であり、
前記バインダーの含有率が、組成物の全固形分質量に対して、1質量%~30質量%である、
請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の導電膜が有する銀配線層の製造に用いられる、組成物。
【請求項13】
前記銀粒子の平均粒子径が、5nm~100nmである請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記バインダーが、水溶性バインダーである請求項12又は請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記水溶性バインダーが、セルロース、及びポリビニルピロリドンからなる群より選択される少なくとも1種の水溶性バインダーである請求項14に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、導電膜、フィルムセンサー、タッチパネル、液晶表示装置、導電膜の製造方法、及び組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ITO(Indium Tin Oxide)に代表される導電膜は、例えば、タッチパネル、及び表示装置(例えば、液晶表示装置)において広く利用される。上記のような用途に適用される導電膜においては、通常、導電性材料を含むパターン(以下、「導電性パターン」という。)が形成されている。また、近年では、ITOに替わる材料として、例えば、銀配線を有する導電膜が検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ポリマーフィルムを含む基材と、上記基材上に形成された導電層を備える透明導電性フィルムであって、上記導電層は、互いに表面抵抗値が異なる低抵抗部と高抵抗部とを有し、上記高抵抗部は上記低抵抗部よりも表面抵抗値が高く、上記低抵抗部の表面抵抗値が15Ω/□以下であり、上記透明導電性フィルムの全光線透過率が70%以上であることを特徴とする透明導電性フィルムが開示されている。
【0004】
例えば、特許文献2には、基材の片面又は両面に、透明導電性薄膜層及び透明金属酸化物層をこの順で積層した透明導電性基材であって、上記透明金属酸化物層を、粒子を点在させることで形成したことを特徴とする透明導電性基材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-206698号公報
【文献】国際公開第2015/037182号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
導電膜においては、導電性パターンが肉眼で見えるという現象が生じることがある。例えば、タッチパネルにおいて導電性パターンが肉眼で見えると、タッチパネルの視認性を損なう可能性がある。上記のような現象は、ITOよりも透明性の低い材料(例えば、銀)によって形成される導電性パターンにおいて発生する傾向にある。例えば特許文献1では、透明導電性フィルムの視認性を向上するために、導電層の表面を黒化するための処理(以下、「黒化処理」という。)を行っている。しかしながら、黒化処理を行うと、導電性パターンの接触抵抗が高くなる可能性がある。導電性パターンの接触抵抗の増大は、例えば、タッチパネルの正常な動作を妨げる可能性がある。
【0007】
本開示は、上記の事情に鑑みてなされたものである。
本開示の一態様は、銀配線層の視認性及び接触抵抗が低減された導電膜を提供することを目的とする。
本開示の他の一態様は、銀配線層の視認性及び接触抵抗が低減されたフィルムセンサーを提供することを目的とする。
本開示の他の一態様は、銀配線層の視認性及び接触抵抗が低減されたタッチパネルを提供することを目的とする。
本開示の他の一態様は、銀配線層の視認性及び接触抵抗が低減された液晶表示装置を提供することを目的とする。
本開示の他の一態様は、銀配線層の視認性及び接触抵抗が低減された導電膜の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、以下の態様を含む。
<1> 基材と、銀配線層と、を有し、上記銀配線層の表面が、銀を含む島部を有し、波長550nmにおける上記銀配線層の反射率が、20%以下であり、上記銀配線層の接触抵抗が、1kΩ以下である導電膜。
<2> 上記銀配線層における上記銀の含有率が、上記銀配線層の全質量に対して、70質量%~98質量%である<1>に記載の導電膜。
<3> 上記銀配線層の平均厚さが、0.2μm~10μmである<1>又は<2>に記載の導電膜。
<4> 上記島部の平均高さが、20nm~1,000nmである<1>~<3>のいずれか1つに記載の導電膜。
<5> 上記銀配線層の表面粗さRaが、5nm~100nmである<1>~<4>のいずれか1つに記載の導電膜。
<6> 上記島部の面積割合が、上記銀配線層の面積に対して、20%~80%である<1>~<5>のいずれか1つに記載の導電膜。
<7> 上記島部における上記銀の含有率が、上記銀配線層のうち上記島部が配置されていない領域における銀の含有率とは異なる<1>~<6>のいずれか1つに記載の導電膜。
<8> 上記銀配線層のうち上記島部が配置されていない領域における銀の含有率に対する、上記島部における上記銀の含有率の比が、1.1以上である<7>に記載の導電膜。
<9> <1>~<8>のいずれか1つに記載の導電膜を含むフィルムセンサー。
<10> <1>~<8>のいずれか1つに記載の導電膜を含むタッチパネル。
<11> <1>~<8>のいずれか1つに記載の導電膜を含む液晶表示装置。
<12> 基材上に、銀と、バインダーと、を含む組成物を用いて銀配線層を形成する工程と、上記銀配線層の表面の少なくとも一部を、酸化剤を含むアルカリ水溶液で処理して、銀を含む島部を形成する工程と、を含む導電膜の製造方法。
<13> 銀粒子と、バインダーと、を含み、上記銀粒子の含有率が、組成物の全固形分質量に対して、70質量%~98質量%であり、上記バインダーの含有率が、組成物の全固形分質量に対して、1質量%~30質量%である組成物。
<14> 上記銀粒子の平均粒子径が、5nm~100nmである<13>に記載の組成物。
<15> 上記バインダーが、水溶性バインダーである<13>又は<14>に記載の組成物。
<16> 上記水溶性バインダーが、セルロース、及びポリビニルピロリドンからなる群より選択される少なくとも1種の水溶性バインダーである<15>に記載の組成物。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様によれば、銀配線層の視認性及び接触抵抗が低減された導電膜を提供することができる。
本開示の他の一態様によれば、銀配線層の視認性及び接触抵抗が低減されたフィルムセンサーを提供することができる。
本開示の他の一態様によれば、銀配線層の視認性及び接触抵抗が低減されたタッチパネルを提供することができる。
本開示の他の一態様によれば、銀配線層の視認性及び接触抵抗が低減された液晶表示装置を提供することができる。
本開示の他の一態様によれば、銀配線層の視認性及び接触抵抗が低減された導電膜の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示に係る導電膜の一例を示す概略拡大断面図である。
図2】本開示における島部の一例を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態について詳細に説明する。なお、本開示は、以下の実施形態に何ら制限されず、本開示の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0012】
本開示において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する複数の物質の合計量を意味する。
本開示において、「工程」との用語には、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本開示における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有しないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本開示において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示において、分子量分布がある場合の分子量は、特に断りのない限り、重量平均分
子量(Mw)を表す。
【0013】
<導電膜>
本開示に係る導電膜は、基材と、銀配線層と、を有し、上記銀配線層の表面が、銀を含む島部を有し、波長550nmにおける上記銀配線層の反射率が、20%以下であり、上記銀配線層の接触抵抗が、1kΩ以下である。
【0014】
本開示に係る導電膜は、上記構成を有することで、銀配線層の視認性及び接触抵抗を低減することができる。本開示に係る導電膜が上記効果を奏する理由は明らかではないが、以下のように推察される。本開示に係る導電膜においては、銀配線層の表面が、銀を含む島部を有し、波長550nmにおける銀配線層の反射率が20%以下であり、銀配線層の接触抵抗が1kΩ以下であることで、銀配線層の抵抗値の増大を抑制しつつ、銀配線層での光の反射を低減することができる。よって、本開示に係る導電膜によれば、銀配線層の視認性及び接触抵抗を低減することができる。
【0015】
<<基材>>
本開示に係る導電膜は、基材を有する。基材としては、制限されず、公知の基材を利用することができる。
【0016】
基材としては、例えば、ガラス、シリコン、及び樹脂が挙げられる。基材は、ガラス、又は樹脂であることが好ましく、樹脂フィルムであることがより好ましい。
【0017】
ガラスとしては、例えば、コーニング社のゴリラガラスに代表される強化ガラスが挙げられる。
【0018】
樹脂としては、光学的に歪みが小さい樹脂、又は透明度が高い樹脂が好ましい。樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、及びシクロオレフィンポリマーが挙げられる。上記の中でも、ポリエチレンテレフタレート(PET)であることが好ましい。
【0019】
基材は、透明であることが好ましい。透明の基材としては、特開2010-86684号公報、特開2010-152809号公報、及び特開2010-257492号公報に用いられている材料を好ましく用いることができる。また、基材の屈折率は、1.50~1.52であることが好ましい。
【0020】
基材の厚さは、制限されない。基材の平均厚さは、曲げ性の観点から、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましく、20μm以下であることが特に好ましい。基材の平均厚さは、取扱性、及び耐久性の観点から、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、12μm以上であることが特に好ましい。基材の平均厚さは、断面視において測定される3か所の厚さを算術平均することによって測定する。
【0021】
<<銀配線層>>
本開示に係る導電膜は、銀配線層を有する。銀配線層は、銀を含む配線層である。ここで、「配線層」とは、配線として機能し得る層(例えば、導電性パターン)を意味する。
【0022】
銀配線層は、基材上に配置されていることが好ましい。銀配線層は、基材の片面に銀配線層が配置されていてもよい。銀配線層は、基材の両面にそれぞれ配置されていてもよい。
【0023】
銀配線層の表面は、銀を含む島部(以下、単に「島部」という場合がある。)を有する。銀配線層の表面が島部を有することで、銀配線層の反射率及び接触抵抗を低減することができる。
【0024】
島部は、平面視において、周囲を海で囲まれた島のように孤立した領域として存在する。平面視において島部の周りを囲む領域(海部)は、銀配線層の表面のうち島部が配置されていない部分である。すなわち、銀配線層の表面は、いわゆる海島構造を有する。
【0025】
平面視における島部の形状は、制限されない。平面視における島部の形状としては、例えば、円形(楕円形を含む)、多角形、及び不定形が挙げられる。
【0026】
島部は、断面視において、銀配線層の内側から外側に向かって突出していることが好ましい。言い換えると、銀配線層の表面は、凸状の島部を有することが好ましい。島部が銀配線層の内側から外側に向かって突出していることで、銀配線層の反射率を低減することができる。また、島部が突出していることで島部の表面積が増大し、多重散乱及び吸収により反射が抑えられるため、銀配線層の黒色度も増大する。
【0027】
島部について、図面を参照して説明する。図1は、本開示に係る導電膜の一例を示す概略拡大断面図である。図2は、本開示における島部の一例を示す概略平面図である。なお、図面における寸法の比率は、必ずしも実際の寸法の比率を表すものではない。
【0028】
図1に示す導電膜100は、基材10と、銀配線層20と、を有する。銀配線層20は、基部21と、島部22と、を含む。基部21は、銀配線層20の基礎となる部分である。島部22は、銀配線層20の内側から外側に向かって(図1では上方向)に突出している。島部22は、銀配線層20の側面に配置されていてもよい。図1に示すTは、銀配線層の厚さである。図1に示すHは、島部の高さである。
【0029】
図2に示すように、島部30は、銀配線層の表面において海部40に囲まれている。海部40は、銀配線層の表面のうち島部が配置されていない部分である。
【0030】
島部における銀は、銀の単体に限られず、化合物に含まれる銀であってもよい。銀を含む化合物としては、例えば、酸化銀、及び塩化銀が挙げられる。島部は、酸化銀、及び塩化銀からなる群より選択される少なくとも1種の銀含有化合物を含むことが好ましい。
【0031】
島部の平均高さは、20nm~1,000nmであることが好ましい。島部の平均高さが上記範囲であることで、銀配線層の反射率及び接触抵抗を低減することができる。島部の平均高さは、銀配線層の反射率を低減するという観点から、50nm以上であることが好ましく、100nm以上であることがより好ましく、150nm以上であることが特に好ましい。島部の平均高さは、銀配線層の接触抵抗を低減するという観点から、500nm以下であることが好ましく、300nm以下であることがより好ましく、200nm以下であることが特に好ましい。
【0032】
島部の平均高さは、以下の方法によって測定する。導電膜を厚さ方向に切断して、導電膜の断面を電子顕微鏡(例えば、走査型電子顕微鏡)で観察する。観察像から、50個の島部の高さを測定する。島部の高さは、島部の頂点から、銀配線層内に観察される島部の界面までの距離(例えば、図1に示す島部の高さH)とする。測定値を算術平均して得られる値を、島部の平均高さとする。
【0033】
島部は、銀配線層の表面の少なくとも一部に配置されていればよい。島部の面積割合は、銀配線層の面積に対して、20%~80%であることが好ましく、30%~70%であることがより好ましく、40%~60%であることが特に好ましい。島部の面積割合が上記範囲であることで、銀配線層の反射率及び接触抵抗を低減することができる。
【0034】
島部の面積割合は、以下の方法によって測定する。銀配線層の表面を電子顕微鏡(例えば、走査型電子顕微鏡)で観察する。観察範囲は、10μm×10μmとする。観察像を二値化処理し、島部の面積、及び銀配線層の面積をそれぞれ求める。島部の面積を銀配線層の面積で除することによって島部の面積割合(%)を求める。
【0035】
島部における銀の含有率(M1)は、銀配線層のうち島部が配置されていない領域における銀の含有率(M2)とは異なることが好ましい。島部における銀の含有率(M1)が、銀配線層のうち島部が配置されていない領域における銀の含有率(M2)とは異なることで、銀配線層の表面での光の吸収性を向上させることができるため、銀配線層の反射率を低減することができる。
【0036】
島部における銀の含有率(M1)、及び銀配線層のうち島部が配置されていない領域における銀の含有率(M2)は、それぞれ、ESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)によって測定する。ESCAにおいては、X線光電子分光分析装置(例えば、AXIS-Hsi型ESCA、株式会社島津製作所)を用いる。島部における銀の含有率(M1)の測定箇所は、島部の表面とする。銀配線層のうち島部が配置されていない領域における銀の含有率(M2)の測定箇所は、銀配線層の表面のうち島部が配置されていない部分とする。
【0037】
島部における銀の含有率(M1)は、銀配線層のうち島部が配置されていない領域における銀の含有率(M2)よりも大きいことが好ましい。島部における銀の含有率(M1)が、銀配線層のうち島部が配置されていない領域における銀の含有率(M2)よりも大きいことで、銀配線層の反射率及び接触抵抗を低減することができる。具体的に、銀配線層のうち島部が配置されていない領域における銀の含有率(M2)に対する、島部における銀の含有率(M1)の比(M1/M2)は、1.1以上であることが好ましく、1.2以上であることがより好ましく、1.4以上であることが特に好ましい。M1/M2の上限は、制限されない。M1/M2は、例えば、2.5以下(好ましくは2.0以下)の範囲で決定すればよい。
【0038】
島部の色は、黒色であることが好ましい。島部の色が黒色であることで、銀配線層の表面での光の吸収性を向上させることができるため、銀配線層の反射率を低減することができる。具体的に、銀配線層のL表色系におけるLの値(以下、「L値」という場合がある。)は、20以下であることが好ましく、15以下であることがより好ましく、10以下であることが特に好ましい。L値は、測色計(例えば、オリンパス株式会社、USPM-RU-W)を用いて測定する。L値の下限は、制限されない。L値は、例えば、0以上の範囲で決定すればよい。銀配線層の表面に黒色の島部を形成する方法としては、例えば、下記「導電膜の製造方法」の項において説明するように銀配線層をアルカリ水溶液で処理する方法が挙げられる。また、島部の表面積が増大することで、多重散乱及び吸収により反射が抑えられ黒色度が増大するものと考えられる。
【0039】
波長550nmにおける銀配線層の反射率は、20%以下である。波長550nmにおける銀配線層の反射率が20%以下であることで、銀配線層での光の反射を抑制することができるため、銀配線層の視認性を低減することができる。波長550nmにおける銀配線層の反射率は、銀配線層の視認性の低減という観点から、15%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。波長550nmにおける銀配線層の反射率の下限は、制限されない。反射率の下限を設ける場合、波長550nmにおける銀配線層の反射率は、0%以上の範囲で決定すればよい。波長550nmにおける銀配線層の反射率は、反射率測定装置(例えば、株式会社渋谷光学製のMSP-100、又はオリンパス株式会社製のUSPM-RU-W)を用いて測定する。
【0040】
銀配線層の接触抵抗は、1kΩ以下である。銀配線層の接触抵抗が1kΩ以下であることで、例えば、銀配線層と他の部材とを電気的に直接接続することができる。また、本開示に係る導電膜を種々の製品(例えば、フィルムセンサー、タッチパネル、及び液晶表示装置)に適用した場合に、動作不良の発生を抑制することもできる。銀配線層の接触抵抗は、0.1kΩ以下であることが好ましく、0.05kΩ以下であることがより好ましく、0.01kΩ以下であることがさらに好ましく、0.001kΩ以下であることが特に好ましい。銀配線層の接触抵抗の下限は、制限されない。接触抵抗の下限を設ける場合、銀配線層の接触抵抗は、例えば、0.001Ω以上の範囲で決定すればよい。
【0041】
銀配線層の接触抵抗は、以下の方法によって測定する。銀配線層の上に、銀粒子分散液(バンドー化学株式会社製、商品名:SW-1020)を用いて、20μm四方のパッド層(抵抗計の端子を接触させるための層をいう。以下同じ。)をスクリーン印刷により設ける。具体的には、銀配線層の上に、パッド間距離が2mm、4mm、8mm、12mm、14mmとなる位置に複数のパッド層を設ける。各パッド層は、SW-1020をスクリーン印刷した後、120℃で25分間乾燥して、膜厚が1.0μmとなるようにする。パッド層に抵抗計の端子を接触させ、2端子法によって、パッド間距離2mm、4mm、8mm、12mm、14mmでの抵抗値をそれぞれ測定する。横軸(X軸)にパッド間距離(mm)を、縦軸(Y軸)に抵抗値(Ω)をプロットし、各プロットを直線近似する。得られた直線のY軸切片の値を2で割った値を銀配線層の接触抵抗とする。
【0042】
銀配線層における銀の含有率は、銀配線層の全質量に対して、70質量%~98質量%であることが好ましく、80質量%~98質量%であることがより好ましく、90質量%~98質量%であることがさらに好ましく、95質量%~98質量%であることが特に好ましい。銀配線層における銀の含有率が上記範囲であることで、銀配線層の接触抵抗を低減することができる。
【0043】
銀配線層の平均厚さは、0.2μm~20μmであることが好ましい。銀配線層の平均厚さが上記範囲であることで、導電性を向上させることができる。銀配線層の平均厚さは、導電性の向上の観点から、0.1μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましく、2μm以上であることが特に好ましい。銀配線層の平均厚さは、曲げ性の観点から、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましく、3μm以下であることが特に好ましい。銀配線層の平均厚さは、断面視において測定される3か所の厚さを算術平均することによって測定する。
【0044】
銀配線層の表面粗さRa(中心線平均表面粗さ)は、5nm~100nmであることが好ましく、5nm~50nmであることがより好ましく、5nm~20nmであることがさらに好ましく、8nm~15nmであることが特に好ましい。銀配線層の表面粗さRaが上記範囲であることで、銀配線層の反射率を低減することができる。銀配線層の表面粗さRaは、表面粗さ測定機(例えば、サーフコム(登録商標)Nex001、株式会社東京精密製)を用いて、「JIS B 0601(2013年)」に基づき測定する。
【0045】
銀配線層の形状は、制限されない。平面視における銀配線層の形状としては、例えば、直線状、曲線状、及び格子状が挙げられる。
【0046】
銀配線層の幅は、制限されず、例えば、用途に応じて決定すればよい。銀配線層の幅は、例えば、1μm~50μmであることが好ましく、1μm~30μmであることがより好ましい。
【0047】
[他の成分]
銀配線層は、腐食防止剤を含むことが好ましい。銀配線層が腐食防止剤を含むことで、銀の腐食を抑制できるため、耐久性を向上させることができる。
【0048】
腐食防止剤としては、制限されず、公知の腐食防止剤を適用できる。腐食防止剤としては、例えば、窒素原子及び硫黄原子の少なくとも1つを含有する化合物が挙げられる。腐食防止剤は、耐久性の観点から、窒素原子及び硫黄原子の少なくとも1つを含有する複素環式化合物であることが好ましく、1つ以上の窒素原子を含有する5員環構造を含む化合物であることがより好ましく、トリアゾール構造を含む化合物、ベンゾイミダゾール構造を含む化合物、及びチアジアゾール構造を含む化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることが特に好ましい。1つ以上の窒素原子を含有する5員環構造は、単環の構造であってもよく、縮合環を構成する部分構造であってもよい。
【0049】
腐食防止剤の具体例としては、ベンゾイミダゾール、1,2,4-トリアゾール、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ブチルベンジルトリアゾール、アルキルジチオチアジアゾール、アルキルチオール、2-アミノピリミジン、5,6-ジメチルベンゾイミダゾール、2-アミノ-5-メルカプト-1,3,4-チアジアゾール、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール、2-メルカプトピリミジン、2-メルカプトベンゾオキサゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、及び2-メルカプトベンゾイミダゾールが挙げられる。上記の中でも、腐食防止剤は、ベンゾイミダゾール、1,2,4-トリアゾール、及び2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールからなる群より選択される少なくとも1種の腐食防止剤であることが好ましい。
【0050】
銀配線層は、1種の腐食防止剤を含んでいてもよく、2種以上の腐食防止剤を含んでいてもよい。
【0051】
腐食防止剤の含有率は、銀配線層の全質量に対して、0.01質量%~5.0質量%であることが好ましい。
【0052】
銀配線層における不純物の含有率は少ないことが好ましい。不純物としては、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、鉄、マンガン、銅、アルミニウム、チタン、クロム、コバルト、ニッケル、亜鉛、スズ、及びこれらのイオン、並びに、遊離ハロゲン、及びハロゲン化物イオン(例えば、塩化物イオン、臭化物イオン、及びヨウ化物イオン)が挙げられる。
【0053】
銀配線層における不純物の含有率は、銀配線層の全質量に対して、1000ppm以下であることが好ましく、200ppm以下であることがより好ましく、40ppm以下であることが特に好ましい。不純物の含有率の下限は、制限されない。不純物の含有率は、現実的に減らせる限界及び測定限界の観点から、銀配線層の全質量に対して、例えば、10ppb以上とすることができ、100ppb以上とすることもできる。不純物の含有率は、例えば、ICP(Inductively Coupled Plasma)発光分光分析法、原子吸光分光法等の公知の方法で定量することができる。
【0054】
不純物を上記範囲に減らす方法としては、例えば、銀配線層の原料に不純物を含まないものを選択すること、銀配線層の形成時に不純物の混入を防ぐこと、及び銀配線層を洗浄することが挙げられる。上記した方法により、不純物量を上記範囲に減らすことができる。
【0055】
銀配線層において、ベンゼン、ホルムアルデヒド、トリクロロエチレン、1,3-ブタジエン、四塩化炭素、クロロホルム、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ヘキサン等の化合物の含有率は少ないことが好ましい。
【0056】
上記化合物の含有率は、銀配線層の全質量に対して、1000ppm以下であることが好ましく、200ppm以下であることがより好ましく、40ppm以下であることが特に好ましい。上記化合物の含有率の下限は、制限されない。上記化合物の含有率は、現実的に減らせる限界及び測定限界の観点から、銀配線層の全質量に対して、例えば、10ppb以上とすることができ、100ppb以上とすることもできる。
【0057】
上記化合物の含有率は、上記のナトリウム等の不純物と同様の方法によって減らすことができる。また、上記化合物の含有率は、公知の測定法により定量することができる。
【0058】
<<他の層>>
本開示に係る導電膜は、必要に応じて、基材及び銀配線層以外の層(以下、「他の層」という。)を有していてもよい。他の層としては、例えば、接着層が挙げられる。
【0059】
本開示に係る導電膜が接着層を有する場合、上記接着層は、基材と銀配線層との間に配置されることが好ましい。
【0060】
接着層の材料としては、制限されず、接触層に通常用いられる公知の材料を利用することができる。接着層は、密着性の観点から、有機材料(例えば、有機樹脂)を含むことが好ましい。
【0061】
接着層の平均厚さは、密着性の観点から、1nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましく、20nm以上であることが特に好ましい。接着層の平均厚さの上限は、制限されない。接着層の平均厚さは、10μm以下の範囲で決定すればよい。接着層の平均厚さは、断面視において測定される3か所の厚さを算術平均することによって測定する。
【0062】
<<厚さ>>
導電膜の厚さは、制限されない。導電膜の平均厚さは、耐久性の観点から、0.5μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましい。導電膜の平均厚さは、曲げ性の観点から、20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、5μm以下であることが特に好ましい。導電膜の平均厚さは、断面視において測定される3か所の厚さを算術平均することによって測定する。
【0063】
<導電膜の製造方法>
本開示に係る導電膜の製造方法は、基材上に、銀と、バインダーと、を含む組成物を用いて銀配線層を形成する工程(以下、「配線形成工程」という場合がある。)と、上記銀配線層の表面の少なくとも一部を、酸化剤を含むアルカリ水溶液で処理して、銀を含む島部を形成する工程(以下、「島部形成工程」という場合がある。)と、を含む。本開示に係る導電膜の製造方法は、上記各工程を含むことで、銀配線層の視認性及び接触抵抗が低減された導電膜を製造することができる。
【0064】
<<配線形成工程>>
本開示に係る導電膜の製造方法は、基材上に、銀と、バインダーと、を含む組成物(以下、単に「組成物」という場合がある。)を用いて銀配線層を形成する工程を含む。
【0065】
[組成物]
(銀)
組成物は、銀を含む。組成物における銀は、単体の銀である場合に限られず、化合物に含まれる銀であってもよい。銀の形態は、銀配線層の導電性の向上という観点から、銀粒子であることが好ましい。
【0066】
銀粒子の平均粒子径は、5nm~100nmであることが好ましく、5nm~50nmであることがより好ましく、5nm~30nmであることが特に好ましい。銀粒子の平均粒子径が上記範囲内であることで、銀粒子同士が融着しやすくなるため、銀配線層の導電性を向上できる。
【0067】
銀粒子の平均粒子径は、以下の方法により測定する。透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、300個の銀粒子を観察し、次いで、上記各銀粒子の直径を求める。ここで、銀粒子の直径とは、銀粒子の長軸長さを指す。次に、測定値を算術平均することで、銀粒子の平均粒子径を求める。
【0068】
組成物における銀の含有率は、組成物の全固形分質量に対して、70質量%~98質量%であることが好ましく、80質量%~95質量%であることがより好ましく、85質量%~92質量%であることが特に好ましい。組成物における銀の含有率が上記範囲であることで、銀配線層の接触抵抗を低減することができる。
【0069】
(バインダー)
組成物は、バインダーを含む。組成物がバインダーを含むことで、銀配線層の表面での島部の形成を促進することができる。
【0070】
バインダーとしては、例えば、有機高分子化合物が挙げられる。有機高分子化合物としては、例えば、アクリル、ポリスチレン、ポリイミド、及びポリエステルが挙げられる。
【0071】
バインダーは、水溶性バインダーであることが好ましい。バインダーが水溶性バインダーであることで、銀配線層の表面での島部の形成をより促進することができる。
【0072】
水溶性バインダーとしては、制限されず、公知の水溶性バインダーを利用することができる。本開示において、「水溶性」とは、25℃の水100gに対して1g以上溶解する性質を意味する。
【0073】
水溶性バインダーとしては、例えば、セルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン-酢酸ビニル共重合体、ビニルピロリドン-ビニルカプロラクタム-ジメチルアミノエチルアクリレート共重合体、ビニルピロリドン-メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩共重合体、ビニルピロリドン-ジメチルアミノエチルメタクリレート共重合体、ビニルピロリドン-ジメチルアミノエチルアクリレート共重合体、及びビニルピロリドン-ビニルアルコールコポリマーが挙げられる。上記の中でも、水溶性バインダーは、島部の形成性の観点から、セルロース、及びポリビニルピロリドンからなる群より選択される少なくとも1種の水溶性バインダーであることが好ましく、セルロースであることがより好ましい。
【0074】
セルロースとしては、制限されず、公知のセルロースを適用できる。セルロースとしては、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、及びカルボキシメチルセルロースが挙げられる。
【0075】
上記の中でも、セルロースは、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びヒドロキシプロピルセルロースからなる群より選択される少なくとも1種のセルロースであることが好ましく、ヒドロキシプロピルメチルセルロースであることがより好ましい。
【0076】
バインダーの分子量(分子量分布がある場合には、重量平均分子量(Mw)を指す。)は、1,000~100,000であることが好ましい。重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算で求めた重量平均分子量である。
【0077】
組成物は、1種単独のバインダーを含んでいてもよく、2種以上のバインダーを含んでいてもよい。
【0078】
バインダーの含有率は、組成物の全固形分質量に対して、島部の形成性の観点から、1質量%~30質量%であることが好ましく、5質量%~25質量%であることがより好ましく、5質量%~15質量%であることが特に好ましい。
【0079】
(他の成分)
組成物は、上記以外の成分(以下、本段落において「他の成分」という。)を含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、分散剤、界面活性剤、及び溶剤が挙げられる。
【0080】
-分散剤-
分散剤としては、例えば、アミン、カルボン酸、及びイオン性化合物が挙げられる。
【0081】
アミンとしては、例えば、オレイルアミン、ヘキシルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、ドデシルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ピペリジン、ヘキサメチレンイミン、トリプロピルアミン、ジメチルプロパンジアミン、シクロヘキシルジメチルアミン、ピリジン、及びキノリンが挙げられる。
【0082】
カルボン酸としては、例えば、ギ酸、シュウ酸、酢酸、ヘキサン酸、アクリル酸、オクチル酸、及びオレイン酸が挙げられる。
【0083】
イオン性化合物としては、例えば、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、クエン酸三リチウム、りんご酸二ナトリウム、酒石酸二ナトリウム、及びグリコール酸ナトリウムが挙げられる。
【0084】
特に好ましい分散剤として、例えば、グリセリンエステル類、及び多価アルコール化合物が挙げられる。
【0085】
組成物は、1種単独の分散剤を含んでいてもよく、2種以上の分散剤を含んでいてもよい。
【0086】
分散剤の含有率は、組成物の全固形分質量に対して、0.1質量%~5.0質量%であることが好ましい。
【0087】
-界面活性剤-
界面活性剤としては、例えば、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系(非イオン系)界面活性剤、及び両性界面活性剤が挙げられる。上記の中でも、界面活性剤は、ノニオン系界面活性剤であることが好ましい。
【0088】
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン高級アルキルエーテル系界面活性剤、ポリオキシエチレン高級アルキルフェニルエーテル系界面活性剤、ポリオキシエチレングリコールの高級脂肪酸ジエステル系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、及びフッ素系界面活性剤が挙げられる。
【0089】
ノニオン系界面活性剤の市販品としては、例えば、KP(信越化学工業株式会社製)、ポリフロー(共栄社化学株式会社製)、エフトップ(JEMCO社製)、メガファック(登録商標、DIC株式会社製、例えば、メガファックF551A、及びメガファックF444)、フロラード(住友スリーエム株式会社製)、アサヒガード(登録商標、AGC株式会社製)、サーフロン(登録商標、AGCセイケミカル株式会社製)、PolyFox(OMNOVA社製)、サーフィノール(日信化学工業株式会社製)、及びSH-8400(東レ・ダウコーニング株式会社製)が挙げられる。)
【0090】
組成物は、1種単独の界面活性剤を含んでいてもよく、2種以上の界面活性剤を含んでいてもよい。
【0091】
界面活性剤の含有率は、組成物の全固形分質量に対して、0.05質量%~3.0質量%であることが好ましい。
【0092】
-溶剤-
溶剤としては、例えば、水、及び有機溶剤が挙げられる。有機溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、2-プロピルアルコール、1,3-プロパンジオール、1,2-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2,6-ヘキサントリオール、1-エトキシ-2-プロパノール、2-ブトキシエタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、グリセリン、アセトン、及び乳酸エチルが挙げられる。
【0093】
組成物は、1種の溶剤を含んでいてもよく、2種以上の溶剤を含んでいてもよい。
【0094】
組成物中の固形分濃度は、制限されず、例えば、1質量%~30質量%の範囲で決定すればよい。
【0095】
(組成物の調製方法)
組成物は、例えば、上記各成分を任意の割合で混合することによって調製することができる。組成物中の銀の供給源としては、銀粒子分散液を用いることが好ましい。銀粒子分散液は、少なくとも、銀粒子、及び分散剤を含む。銀の供給源として銀粒子分散液を用いることで、銀粒子を含む組成物を調製することができる。例えば、銀粒子分散液、バインダー、及び必要に応じて他の成分(例えば、界面活性剤)を混合することによって組成物を調製することができる。
【0096】
銀粒子分散液に含まれる銀粒子の平均粒子径の好ましい範囲は、上記「銀」の項において説明した銀粒子の平均粒子径の好ましい範囲と同様である。
【0097】
銀粒子分散液に含まれる分散剤としては、上記他の成分の一例として説明した分散剤が挙げられる。
【0098】
銀粒子分散液としては、例えば、特開2001-325831号公報に記載された金属コロイド液、特開2001-167647号公報に記載された銀コロイド水溶液、国際公開第2013/061527号に記載された接合用組成物、及び特開2016-14111号公報に記載された導電性インク組成物が挙げられる。銀粒子分散液の市販品は、例えば、バンドー化学株式会社製のFlowMetal(登録商標)SW-1000、及びSW-1020として入手可能である。
【0099】
銀粒子分散液の製造方法としては、例えば、化学還元法が挙げられる。化学還元法においては、例えば、分散剤の存在下で、銀化合物を溶剤中で還元する方法が挙げられる。銀化合物としては、例えば、硝酸銀、硫酸銀、塩化銀、酸化銀、酢酸銀、亜硝酸銀、塩素酸銀、及び硫化銀が挙げられる。溶剤としては、上記他の成分の一例として説明した溶剤が挙げられる。また、銀粒子分散液の調製方法は、例えば、特開2001-325831号公報、特開2001-167647号公報、国際公開第2013/061527号、及び特開2016-14111号公報に記載されており、これらの記載は参照により本明細書に組み込まれる。
【0100】
[銀配線層の形成方法]
銀配線層を形成する方法は、銀と、バインダーと、を含む組成物を用いる方法であれば制限されない。例えば、基材上に組成物を選択的に塗布し、必要に応じて組成物を乾燥することによって、銀配線層を形成することができる。
【0101】
基材上に組成物を塗布する方法としては、例えば、インクジェット印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、及びフレキソ印刷が挙げられる。また、フォトリソグラフィによって、基材上に組成物を塗布してもよい。上記の中でも、スクリーン印刷が好ましい。スクリーン印刷は、被塗布物に、開口部を有する版を介して塗布物を塗布する方法である。スクリーン印刷によれば、版の開口部の形状及び寸法に応じて、所望のパターン形状を有する銀配線層を形成することができる。
【0102】
乾燥温度は、溶剤等の揮発性成分の種類に応じて決定すればよい。乾燥温度は、例えば、60℃~120℃の範囲で決定すればよい。
【0103】
乾燥時間は、制限されず、乾燥温度に応じて適宜設定すればよい。乾燥時間は、例えば、0.5分~10分の範囲で決定すればよい。
【0104】
配線形成工程においては、銀配線層を熱処理(ベーキング処理)する工程を含んでいてもよい。銀配線層を熱処理することで、銀配線層に含まれる銀の融着を促進し、銀配線層の導電性を向上させることができる。
【0105】
熱処理の温度は、制限されず、例えば、100℃~180℃の範囲で決定すればよい。
【0106】
<<島部形成工程>>
本開示に係る導電膜の製造方法は、銀配線層の表面の少なくとも一部を、酸化剤を含むアルカリ水溶液で処理して、銀を含む島部を形成する工程を含む。上記配線形成工程において得られた銀配線層を、酸化剤を含むアルカリ水溶液で処理することで、銀配線層からバインダーが部分的に除去される過程、及び銀配線層の表面組成が変化する過程(例えば、酸化銀又は塩化銀が形成される過程)を経て、銀配線層の表面に島部が形成されると推測される。本開示において、「アルカリ水溶液」とは、pHが7を超える水溶液を意味する。
【0107】
アルカリ水溶液は、酸化剤を含む。酸化剤としては、例えば、次亜塩素酸、亜硝酸、及び過酸化水素が挙げられる。酸化剤は、島部の形成性の観点から、次亜塩素酸であることが好ましい。
【0108】
次亜塩素酸塩としては、例えば、次亜塩素酸ナトリウム、及び次亜塩素酸カルシウムが挙げられる。上記の中でも、島部の形成性の観点から、次亜塩素酸ナトリウムが好ましい。
【0109】
アルカリ水溶液は、1種単独の酸化剤を含んでいてもよく、2種以上の酸化剤を含んでいてもよい。
【0110】
酸化剤の含有率は、島部の形成性の観点から、アルカリ水溶液の全質量に対して、0.5質量%~10質量%であることが好ましく、1質量%~5質量%であることがより好ましい。
【0111】
アルカリ水溶液は、水酸化物を含んでいてもよい。水酸化物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び水酸化カルシウムが挙げられる。上記の中でも、水酸化ナトリウムが好ましい。
【0112】
アルカリ水溶液は、1種単独の水酸化物を含んでいてもよく、2種以上の水酸化物を含んでいてもよい。
【0113】
水酸化物の含有率は、アルカリ水溶液の全質量に対して、0.1質量%~5質量%であることが好ましく、0.5質量%~3質量%であることがより好ましい。
【0114】
銀配線層をアルカリ水溶液で処理する方法としては、銀配線層とアルカリ水溶液とを接触させる方法であれば制限されない。銀配線層をアルカリ水溶液で処理する方法としては、例えば、銀配線層をアルカリ水溶液に浸漬する方法が挙げられる。
【0115】
アルカリ水溶液により処理時間は、2秒~50秒であることが好ましく、2秒~20秒であることがより好ましく、2秒~10秒であることが特に好ましい。
【0116】
アルカリ水溶液の温度は、制限されず、例えば、20℃~40℃の範囲で決定すればよい。
【0117】
アルカリ水溶液で銀配線層を処理した後、水洗によってアルカリ水溶液を除去することが好ましい。水洗においては、例えば、イオン交換水を用いることができる。水洗の時間は、制限されず、例えば、5秒~30秒の範囲で決定すればよい。
【0118】
水洗によってアルカリ水溶液を除去した後、得られた導電膜を乾燥することが好ましい。乾燥方法としては、制限されず、公知の乾燥方法を利用することができる。乾燥方法としては、例えば、自然乾燥、加熱乾燥、及び送風乾燥が挙げられる。乾燥時間は、制限されず、乾燥方法、及び残存する水の量に応じて決定すればよい。乾燥時間は、例えば、0.5時間~3時間の範囲で決定すればよい。
【0119】
本開示に係る導電膜の用途としては、例えば、フィルムセンサー、タッチパネル、及び液晶表示装置が挙げられる。
【0120】
<フィルムセンサー>
本開示に係るフィルムセンサーは、本開示に係る導電膜を含む。本開示に係るフィルムセンサーが上記導電膜を含むことで、銀配線層の視認性及び接触抵抗を低減することができる。
【0121】
本開示に係るフィルムセンサーにおける導電膜については、上記「導電膜」の項において説明したとおりであり、好ましい態様も同様である。本開示に係るフィルムセンサーにおいて、導電膜に含まれる銀配線層は、例えば、種々の物理量(例えば、静電容量、及び電圧)の変化を検知するための電極として機能することができる。
【0122】
本開示に係るフィルムセンサーは、導電膜に加えて、例えば、フィルムセンサーを制御するための集積回路(IC)を有していてもよい。集積回路は、例えば、導電膜における銀配線層と電気的に接続した部材(例えば、フレキシブルプリント基板(FPC)、及びフレキシブルフラットケーブル(FFC))を介して設けられていてもよい。
【0123】
本開示に係るフィルムセンサーの用途としては、例えば、タッチパネル、及び液晶表示装置が挙げられる。
【0124】
<タッチパネル>
本開示に係るタッチパネルは、本開示に係る導電膜を含む。本開示に係るタッチパネルが上記導電膜を含むことで、銀配線層の視認性及び接触抵抗を低減することができる。
【0125】
本開示に係るタッチパネルにおける導電膜については、上記「導電膜」の項において説明したとおりであり、好ましい態様も同様である。
【0126】
本開示に係るタッチパネルにおける検出方法としては、例えば、抵抗膜方式、静電容量方式、超音波方式、電磁誘導方式、及び光学方式が挙げられる。上記の中でも、検出方法としては、静電容量方式が好ましい。
【0127】
タッチパネル型としては、例えば、いわゆるインセル型(例えば、特表2012-517051号公報の図5図6図7図8に記載のもの)、いわゆるオンセル型(例えば、特開2013-168125号公報の図19に記載のもの、特開2012-89102号公報の図1及び図5に記載のもの)、OGS(One Glass Solution)型、TOL(Touch-on-Lens)型(例えば、特開2013-54727号公報の図2に記載のもの)、その他の構成(例えば、特開2013-164871号公報の図6に記載のもの)、及び各種アウトセル型(いわゆる、GG、G1・G2、GFF、GF2、GF1、G1Fなど)が挙げられる。
【0128】
本開示に係るタッチパネルとしては、例えば、「“最新タッチパネル技術”(2009年7月6日、株式会社テクノタイムズ社発行)、三谷雄二監修」、「“タッチパネルの技術と開発”、シーエムシー出版(2004,12)」、「FPD International 2009 Forum T-11講演テキストブック」、及び「Cypress Semiconductor Corporation アプリケーションノートAN2292」に開示されている構成を適用することができる。
【0129】
<液晶表示装置>
本開示に係る液晶表示装置は、本開示に係る導電膜を含む。本開示に係る液晶表示装置が上記導電膜を含むことで、銀配線層の視認性及び接触抵抗を低減することができる。
【0130】
本開示に係る液晶表示装置における導電膜については、上記「導電膜」の項において説明したとおりであり、好ましい態様も同様である。導電膜は、液晶表示装置の視認部に配置されていてもよく、視認部以外の領域に配置されていてもよい。導電膜は、液晶表示装置の視認部に配置されていることが好ましい。
【0131】
液晶表示装置については、例えば、「次世代液晶ディスプレイ技術(内田 龍男編集、株式会社工業調査会、1994年発行)」に記載されている。
【0132】
<組成物>
本開示に係る組成物は、銀と、バインダーと、を含む。本開示に係る組成物は、上記構成を有することで、例えば、本開示に係る導電膜(具体的には銀配線層)を製造するための好ましい原材料として利用することができる。
【0133】
銀としては、上記「導電膜の製造方法」の項において説明した組成物に含まれる銀を適用することができる。銀の好ましい態様は、上記「導電膜の製造方法」の項において説明した組成物に含まれる銀と同様である。
【0134】
本開示に係る組成物における銀の含有率は、上記「導電膜の製造方法」の項において説明した組成物に含まれる銀の含有率と同様の範囲に調節することが好ましい。
【0135】
バインダーとしては、上記「導電膜の製造方法」の項において説明した組成物に含まれるバインダーを適用することができる。バインダーの好ましい態様は、上記「導電膜の製造方法」の項において説明した組成物に含まれるバインダーと同様である。
【0136】
本開示に係る組成物におけるバインダーの含有率は、上記「導電膜の製造方法」の項において説明した組成物に含まれるバインダーの含有率と同様の範囲に調節することが好ましい。
【0137】
上記の中でも、本開示に係る組成物は、銀粒子と、バインダーと、を含み、銀粒子の含有率が、組成物の全固形分質量に対して、70質量%~98質量%であり、バインダーの含有率が、組成物の全固形分質量に対して、1質量%~30質量%であることが好ましい。
【0138】
本開示に係る組成物は、銀、及びバインダー以外の成分を含んでいてもよい。本開示に係る組成物は、例えば、上記「導電膜の製造方法」の項において説明した他の成分を含んでいてもよい。他の成分の好ましい態様については、上記「導電膜の製造方法」の項において説明したとおりである。
【0139】
本開示に係る組成物の調製方法としては、上記「導電膜の製造方法」の項において説明した組成物の調製方法を適用することができる。
【実施例
【0140】
以下、実施例により本開示を詳細に説明するが、本開示はこれらに制限されるものではない。すなわち、以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本開示の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。以下の実施例において、酸価は、JIS K0070:1992に記載の方法にしたがって測定した。
【0141】
[実施例1]
(銀配線層用組成物の調製)
以下の成分を撹拌して、銀配線層用組成物を調製した。
・銀粒子分散液(バンドー化学株式会社製、商品名:SW-1020、39.2質量%銀粒子分散液、銀粒子の平均粒子径:10nm):3.0質量部
・ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学工業株式会社製、商品名65SH-5の5質量%水溶液、表1において「HPMC」と表す。):0.5質量部
・メガファックF444(DIC株式会社製):0.0012質量部
【0142】
(導電膜(A)の作製)
上記銀配線層用組成物をPETフィルム(幅:20cm、長さ:30cm、平均厚さ:50μm)上に塗布し、80℃で3分間乾燥した。次に、150℃で30分間のベーク処理を行った。得られた積層体(銀層/PETフィルム)を5cm×5cmの大きさに切り取った後、次亜塩素酸ナトリウム(3.8質量%)、及び水酸化ナトリウム(1.4質量%)を含むアルカリ水溶液に5秒間浸漬した。積層体を、イオン交換水で15秒間水洗処理した後、2時間自然乾燥した。以上の手順によって、導電膜(A)を得た。実施例1の導電膜(A)における銀層の平均厚さは、0.8μmであった。
【0143】
(導電膜(B)の作製)
スクリーン印刷(配線の幅:20μm、配線の間隔:20μm)によって、上記銀配線層用組成物をPETフィルム上に塗布したこと以外は、上記実施例1の導電膜(A)と同様の手順によって、実施例1の導電膜(B)を作製した。実施例1の導電膜(B)における銀配線層の線幅は、20μmである。
【0144】
[実施例2]
実施例1の銀配線層用組成物において、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学工業株式会社製、商品名:65SH-5の5質量%水溶液)の添加量を2.0質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様の手順によって、実施例2の導電膜(A)、及び導電膜(B)をそれぞれ得た。
【0145】
[実施例3]
実施例1の銀配線層用組成物において、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学工業株式会社製、商品名65SH-5の5質量%水溶液)の添加量を3.0質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様の手順によって、実施例3の導電膜(A)、及び導電膜(B)をそれぞれ得た。
【0146】
[実施例4]
銀配線層用組成物において、ヒドロキシプロピルメチルセルロースをポリビニルピロリドン(ポリビニルピロリドンの5質量%水溶液、表1において「PVP」と表す。)に変更したこと以外は、実施例3と同様の手順によって、実施例4の導電膜(A)、及び導電膜(B)をそれぞれ得た。
【0147】
[実施例5]
銀配線層用組成物において、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学工業株式会社製、商品名65SH-5の5質量%水溶液)の添加量を6.0質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様の手順によって、実施例5の導電膜(A)、及び導電膜(B)をそれぞれ得た。
【0148】
[実施例6]
銀配線層の平均厚さを1.6μmに変更したこと以外は、実施例1と同様の手順によって、実施例6の導電膜(A)、及び導電膜(B)をそれぞれ得た。
【0149】
[実施例7]
銀配線層の平均厚さを5.0μmに変更したこと以外は、実施例1と同様の手順によって、実施例7の導電膜(A)、及び導電膜(B)をそれぞれ得た。
【0150】
[比較例1]
銀配線層用組成物において、水溶性バインダー(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様の手順によって、比較例1の導電膜(A)、及び導電膜(B)をそれぞれ得た。
【0151】
[比較例2]
銀配線層用組成物において、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学工業株式会社製、商品名65SH-5の5質量%水溶液)の添加量を10.0質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様の手順によって、比較例2の導電膜(A)、及び導電膜(B)をそれぞれ得た。
【0152】
[比較例3]
積層体のアルカリ水溶液への浸漬時間を2秒に変更したこと以外は、実施例1と同様の手順によって、比較例3の導電膜(A)、及び導電膜(B)をそれぞれ得た。
【0153】
[比較例4]
積層体のアルカリ水溶液への浸漬時間を60秒に変更したこと以外は、実施例1と同様の手順によって、比較例4の導電膜(A)、及び導電膜(B)をそれぞれ得た。
【0154】
[測定]
(島部の平均高さ)
以下の方法によって、導電膜(B)における島部の平均高さを測定した。導電膜(B)を厚さ方向に切断して、導電膜(B)の断面を走査型電子顕微鏡で観察した。観察像から、50個の島部の高さを測定した。島部の高さは、島部の頂点から、銀配線層内に観察される島部の界面までの距離とした。測定値を算術平均して得られる値を、島部の平均高さとした。測定結果を表1に示す。
【0155】
(島部の面積割合)
以下の方法によって、導電膜(B)における島部の面積割合を測定した。銀配線層の表面を走査型電子顕微鏡で観察した。観察範囲は、10μm×10μmとした。観察像を二値化処理し、島部の面積、及び銀配線層の面積をそれぞれ求めた。島部の面積を銀配線層の面積で除することによって得られる値を、島部の面積割合とした。測定結果を表1に示す。
【0156】
(島部における銀の含有比(M1/M2))
以下の方法によって、導電膜(B)の島部における銀の含有比を測定した。島部における銀の含有率(M1)、及び銀配線層のうち島部が配置されていない領域における銀の含有率(M2)を、それぞれ、ESCA(装置:株式会社島津製作所、AXIS-Hsi型ESCA)によって測定した。島部における銀の含有率(M1)の測定箇所は、島部の表面とした。銀配線層のうち島部が配置されていない領域における銀の含有率(M2)の測定箇所は、銀配線層の表面のうち島部が配置されていない部分とした。島部における銀の含有率(M1)を銀配線層のうち島部が配置されていない領域における銀の含有率(M2)で除することによって得られる値(M1/M2)を、島部における銀の含有比とした。測定結果を表1に示す。
【0157】
(銀配線層の表面粗さRa)
以下の方法によって、導電膜(B)における銀配線層の表面粗さRa(中心線平均粗さ)を測定した。表面粗さ測定機(サーフコム(登録商標)Nex001、株式会社東京精密製)を用いて、「JIS B 0601(2013年)」に基づき、銀配線層の表面粗さRaを測定した。測定結果を表1に示す。
【0158】
(銀配線層の反射率)
以下の方法によって、導電膜(B)における銀配線層の反射率を測定した。反射率測定装置(オリンパス株式会社製のUSPM-RU-W)を用いて、波長550nmにおける銀配線層の反射率を測定した。測定範囲は、φ20μmとした。測定結果を表1に示す。
【0159】
(銀配線層の接触抵抗)
以下の方法によって、導電膜(B)における銀配線層の接触抵抗を測定した。各実施例、及び各比較例について、幅が20μmであり、長さが14mm以上である銀配線層を準備した。銀配線層の上に、銀粒子分散液(バンドー化学株式会社製、商品名:SW-1020)を用いて、20μm四方のパッド層をスクリーン印刷により設けた。具体的には、銀配線層の上に、パッド間距離が2mm、4mm、8mm、12mm、14mmとなる位置に複数のパッド層を設けた。各パッド層は、SW-1020をスクリーン印刷した後、120℃で25分間乾燥して、膜厚が1.0μmとなるようにした。パッド層に抵抗計の端子を接触させ、2端子法によって、パッド間距離2mm、4mm、8mm、12mm、14mmでの抵抗値をそれぞれ測定した。横軸(X軸)にパッド間距離(mm)を、縦軸(Y軸)に抵抗値(Ω)をプロットし、各プロットを直線近似した。得られた直線のY軸切片の値を2で割った値を銀配線層の接触抵抗とした。測定結果を表1に示す。
【0160】
[評価]
(色味)
オリンパス株式会社製のUSPM-RU-Wを用いて、実施例及び比較例の導電膜(A)における銀層の色味を観察した。評価結果を表1に示す。なお、本評価では、導電膜(A)における銀層の色味を銀配線層の色味とみなした。
【0161】
(L値)
実施例及び比較例の導電膜(A)における銀層のL値(L表色系におけるLの値)を測定した。L値の測定には、測色計(オリンパス株式会社製のUSPM-RU-W)を用いた。測定結果を表1に示す。なお、本評価では、導電膜(A)における銀層のL値を銀配線層のL値とみなした。
【0162】
(視認性)
実施例及び比較例の導電膜(B)を用いて銀配線層の視認性を評価した。具体的な手順を以下に示す。透明接着テープ(スリーエムジャパン株式会社、商品名:OCAテープ8171CL)を導電膜(B)のPETフィルム面に接着させた後、透明接着テープの導電膜が配置された面とは反対側の面に黒色PET材を貼り合わせた。得られた試料の層構成は、銀配線層/PETフィルム/透明接着テープ/黒色PET材である。暗室において、導電膜表面側から蛍光灯の光を当て、目視で観察した。以下の基準に従って、視認性を評価した。以下の基準において、A、B、又はCが実用レベルであり、A、又はBであることが好ましく、Aであることがより好ましい。評価結果を表1に示す。
【0163】
-基準-
A:パターンが全く見えない。
B:パターンがほとんど見えない。
C:パターンが見えにくい。
D:パターンがはっきり見える。
【0164】
(動作性)
実施例及び比較例の導電膜(B)を用いてタッチセンサー(フィルムセンサーの一態様)の動作性を評価した。具体的な手順を以下に示す。特開2009-47936号公報の段落0097~段落0119に記載の方法で製造したカラーフィルタ基板に導電膜(B)を貼り合わせ、次いで、前面ガラス板を貼り合わせることで、公知の方法で静電容量型入力装置を構成要素として備えた画像表示装置を作製した。以下の基準に従って、画像表示装置におけるタッチセンサーの動作性を評価した。
【0165】
-基準-
A:正常に動作した。
B:誤作動が生じた。
C:動作しなかった。
【0166】
【表1】
【0167】
表1より、実施例1~7は、比較例1~4と比較して、銀配線層の視認性及び接触抵抗の両方が低減されていることがわかった。実施例1~7は、比較例1~4と比較して、タッチセンサーの動作性に優れることもわかった。
【符号の説明】
【0168】
10:基材
20:銀配線層
21:基部
22、30:島部
40:海部
100:導電膜
H:島部の高さ
T:銀配線層の厚さ
図1
図2