(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】接眼レンズ、観察光学系、および光学装置
(51)【国際特許分類】
G02B 25/00 20060101AFI20221209BHJP
G02B 13/18 20060101ALI20221209BHJP
【FI】
G02B25/00 A
G02B13/18
(21)【出願番号】P 2019235158
(22)【出願日】2019-12-25
【審査請求日】2022-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 広樹
【審査官】殿岡 雅仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-081640(JP,A)
【文献】特開平07-152068(JP,A)
【文献】特開平05-313073(JP,A)
【文献】特開2017-219742(JP,A)
【文献】国際公開第2018/105710(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00 - 17/08
G02B 21/02 - 21/04
G02B 25/00 - 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
観察物体側からアイポイント側へ順に、正の屈折力を有する第1レンズと、負の屈折力を有する第2レンズと、正の屈折力を有する第3レンズと、正の屈折力を有する第4レンズとからなり、
前記第1レンズと前記第2レンズと前記第3レンズと前記第4レンズとは全て単レンズであり、
前記第2レンズは両凹形状であり、
前記第4レンズの観察物体側の面は凸形状であり、
前記第3レンズのd線における屈折率をN3
、
前記第2レンズの焦点距離をf2、
前記第4レンズの焦点距離をf4とした場合、
1.76<N3<2 (1)
-0.35<f2/f4<-0.21 (2-1)
で表される条件式(1)
および(2-1)を満足する接眼レンズ。
【請求項2】
前記接眼レンズの焦点距離をf、
前記第1レンズの焦点距離をf1とした場合、
1.2<f/f1<3.5 (3)
で表される条件式(3)を満足する請求項
1に記載の接眼レンズ。
【請求項3】
前記第1レンズの焦点距離をf1、
前記第4レンズの焦点距離をf4とした場合、
2.7<f4/f1<8 (4)
で表される条件式(4)を満足する請求項1
又は2に記載の接眼レンズ。
【請求項4】
前記第2レンズのアイポイント側の面の曲率半径をR2r、
前記第3レンズの観察物体側の面の曲率半径をR3fとした場合、
-2.1<(R2r+R3f)/(R2r-R3f)<-0.2 (5)
で表される条件式(5)を満足する請求項1から
3のいずれか1項に記載の接眼レンズ。
【請求項5】
前記第1レンズは両凸形状である請求項1から
4のいずれか1項に記載の接眼レンズ。
【請求項6】
前記第3レンズのアイポイント側の面は凸形状である請求項1から
5のいずれか1項に記載の接眼レンズ。
【請求項7】
前記第4レンズの観察物体側の面は非球面を有する請求項1から
6のいずれか1項に記載の接眼レンズ。
【請求項8】
前記第2レンズのアイポイント側の面は非球面を有する請求項1から
7のいずれか1項に記載の接眼レンズ。
【請求項9】
観察物体と前記接眼レンズとの光軸方向の間隔が変化することによって視度調整が行われる請求項1から
8のいずれか1項に記載の接眼レンズ。
【請求項10】
1.8<N3<1.9 (1-1)
で表される条件式(1-1)を満足する請求項1に記載の接眼レンズ。
【請求項11】
1.4<f/f1<2.5 (3-1)
で表される条件式(3-1)を満足する請求項
2に記載の接眼レンズ。
【請求項12】
3<f4/f1<5 (4-1)
で表される条件式(4-1)を満足する請求項
3に記載の接眼レンズ。
【請求項13】
-1.75<(R2r+R3f)/(R2r-R3f)<-0.6 (5-1)
で表される条件式(5-1)を満足する請求項
4に記載の接眼レンズ。
【請求項14】
表示素子と、
請求項1から
13のいずれか1項に記載の接眼レンズとを備え、
前記表示素子の画像を前記接眼レンズを介して観察する観察光学系であって、
視度調整の際に、前記接眼レンズは固定され、前記表示素子と前記接眼レンズとの光軸方向の間隔を変化させて前記表示素子が移動する観察光学系。
【請求項15】
請求項1から
13のいずれか1項に記載の接眼レンズを備えた光学装置。
【請求項16】
請求項
14に記載の観察光学系を備えた光学装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、接眼レンズ、観察光学系、および光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、接眼レンズ又はルーペとして、特許文献1~4に記載のレンズ系が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-88632号公報
【文献】特開昭60-57315号公報
【文献】特開平7-234357号公報
【文献】特開平8-254660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、良好な性能を有しながら、より広い視野角で観察可能な接眼レンズが求められている。
【0005】
本開示は、上記事情を鑑みてなされたものであり、良好な性能を有しながら、より広い視野角で観察可能な接眼レンズ、観察光学系、および光学装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の接眼レンズは、観察物体側からアイポイント側へ順に、正の屈折力を有する第1レンズと、負の屈折力を有する第2レンズと、正の屈折力を有する第3レンズと、正の屈折力を有する第4レンズとからなり、第1レンズと第2レンズと第3レンズと第4レンズとは全て単レンズであり、第2レンズは両凹形状であり、第4レンズの観察物体側の面は凸形状であり、第3レンズのd線における屈折率をN3とした場合、下記条件式(1)を満足する。
1.76<N3<2 (1)
【0007】
本開示の接眼レンズは、さらに下記条件式(1-1)を満足することが好ましい。
1.8<N3<1.9 (1-1)
【0008】
本開示の接眼レンズは、第2レンズの焦点距離をf2、第4レンズの焦点距離をf4とした場合、下記条件式(2)を満足することが好ましく、下記条件式(2-1)を満足することがより好ましい。
-0.42<f2/f4<-0.2 (2)
-0.35<f2/f4<-0.21 (2-1)
【0009】
本開示の接眼レンズは、接眼レンズの焦点距離をf、第1レンズの焦点距離をf1とした場合、下記条件式(3)を満足することが好ましく、下記条件式(3-1)を満足することがより好ましい。
1.2<f/f1<3.5 (3)
1.4<f/f1<2.5 (3-1)
【0010】
本開示の接眼レンズは、第1レンズの焦点距離をf1、第4レンズの焦点距離をf4とした場合、下記条件式(4)を満足することが好ましく、下記条件式(4-1)を満足することがより好ましい。
2.7<f4/f1<8 (4)
3<f4/f1<5 (4-1)
【0011】
本開示の接眼レンズは、第2レンズのアイポイント側の面の曲率半径をR2r、第3レンズの観察物体側の面の曲率半径をR3fとした場合、下記条件式(5)を満足することが好ましく、下記条件式(5-1)を満足することがより好ましい。
-2.1<(R2r+R3f)/(R2r-R3f)<-0.2 (5)
-1.75<(R2r+R3f)/(R2r-R3f)<-0.6 (5-1)
【0012】
本開示の接眼レンズにおいては、第1レンズは両凸形状であることが好ましい。本開示の接眼レンズにおいては、第3レンズのアイポイント側の面は凸形状であることが好ましい。本開示の接眼レンズにおいては、第4レンズの観察物体側の面は非球面を有することが好ましい。本開示の接眼レンズにおいては、第2レンズのアイポイント側の面は非球面を有することが好ましい。
【0013】
本開示の接眼レンズは、観察物体と接眼レンズとの光軸方向の間隔が変化することによって視度調整が行われることが好ましい。
【0014】
本開示の一態様に係る観察光学系は、表示素子と、本開示の接眼レンズとを備え、表示素子の画像を接眼レンズを介して観察する観察光学系であって、視度調整の際に、接眼レンズは固定され、表示素子と接眼レンズとの光軸方向の間隔を変化させて表示素子が移動する。
【0015】
本開示の別の態様に係る観察光学系は、表示素子と、複数枚のレンズからなるレンズ群とを備え、表示素子の画像をレンズ群を介して観察する観察光学系であって、視度調整の際に、レンズ群は固定され、表示素子とレンズ群との光軸方向の間隔を変化させて表示素子が移動し、レンズ群のうちの少なくとも1枚のレンズのd線における屈折率をNxとした場合、下記条件式(6)を満足する。
1.76<Nx<2 (6)
【0016】
上記の別の態様に係る観察光学系は、さらに下記条件式(6-1)を満足することが好ましい。
1.8<Nx<1.9 (6-1)
【0017】
上記の別の態様に係る観察光学系においては、レンズ群は4枚のレンズからなり、条件式(6)を満足するレンズは、4枚のレンズのうち表示素子の側から3番目のレンズであることが好ましい。
【0018】
本開示の一態様に係る光学装置は、本開示の接眼レンズを備えている。本開示の別の態様に係る光学装置は、本開示の観察光学系を備えている。
【0019】
なお、本明細書の「~からなり」、「~からなる」は、挙げられた構成要素以外に、実質的に屈折力を有さないレンズ、並びに、絞り、フィルタ、およびカバーガラス等のレンズ以外の光学要素、並びに、レンズフランジ、レンズバレル等が含まれていてもよいことを意図する。
【0020】
なお、本明細書において「正の屈折力を有するレンズ」と「正レンズ」とは同義である。「負の屈折力を有するレンズ」と「負レンズ」とは同義である。「単レンズ」は、接合されていない1枚のレンズを意味する。ただし、複合非球面レンズ(球面レンズと、その球面レンズ上に形成された非球面形状の膜とが一体的に構成されて、全体として1つの非球面レンズとして機能するレンズ)は、接合レンズとは見なさず、1枚のレンズとして扱う。非球面を含むレンズに関する、屈折力の符号、曲率半径および面形状は、特に断りが無い限り、近軸領域で考えることにする。曲率半径の符号については、観察物体側に凸面を向けた形状の面の曲率半径の符号を正、アイポイント側に凸面を向けた形状の面の曲率半径の符号を負とする。
【0021】
条件式で用いている「焦点距離」は、近軸焦点距離である。条件式で用いている値は、d線を基準とした場合の値である。本明細書に記載の「d線」、「C線」、および「F線」は輝線であり、d線の波長は587.56nm(ナノメートル)、C線の波長は656.27nm(ナノメートル)、F線の波長は486.13nm(ナノメートル)である。
【発明の効果】
【0022】
本開示によれば、良好な性能を有しながら、より広い視野角で観察可能な接眼レンズ、観察光学系、および光学装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】実施例1の接眼レンズに対応し、一実施形態に係る接眼レンズの構成と光束を示す断面図である。
【
図2】実施例1の接眼レンズの球面収差図、非点収差図、歪曲収差図、倍率色収差図である。
【
図4】実施例2の接眼レンズの構成と光束を示す断面図である。
【
図5】実施例2の接眼レンズの球面収差図、非点収差図、歪曲収差図、倍率色収差図である。
【
図7】実施例3の接眼レンズの構成と光束を示す断面図である。
【
図8】実施例3の接眼レンズの球面収差図、非点収差図、歪曲収差図、倍率色収差図である。
【
図10】実施例4の接眼レンズの構成と光束を示す断面図である。
【
図11】実施例4の接眼レンズの球面収差図、非点収差図、歪曲収差図、倍率色収差図である。
【
図13】実施例5の接眼レンズの構成と光束を示す断面図である。
【
図14】実施例5の接眼レンズの球面収差図、非点収差図、歪曲収差図、倍率色収差図である。
【
図16】一実施形態に係る光学装置の概略的な構成図である。
【
図17】表示素子の移動を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。
図1に、本開示の一実施形態に係る観察光学系5の構成を示す。
図1に示す例は、後述の実施例1に対応しており、以下に述べる本開示の第1の実施形態および第2の実施形態に対応している。
図1では一例として表示素子1を観察物体としている。
図1では左側が観察物体側、右側がアイポイント側として図示している。
図1のアイポイントEPは形状を示しているのではなく光軸方向の位置を示している。
図1では、表示素子1からアイポイントEPまでの範囲における軸上光束および最大視野角の光束も図示している。
【0025】
まず、本開示の第1の実施形態に係る観察光学系5について説明する。観察光学系5は、表示素子1と、接眼レンズ3とを備える。表示素子1は画像を表示する素子である。表示素子1は例えば、液晶表示素子、又は有機EL(organic electroluminescence)表示素子等を用いることができる。実際には表示素子は厚みを有するが、
図1では便宜上、表示素子1の表示面を表示素子1として図示している。
【0026】
観察光学系5は、表示素子1に表示された画像を接眼レンズ3を介して観察するように構成されている。
図1には、表示素子1と接眼レンズ3との間に平行平板状の屈折力を有しない光学部材2が配置された例を示す。光学部材2は保護用のカバーガラス又は各種フィルタ等を想定したものであり、光学部材2を除いた構成も可能である。
【0027】
接眼レンズ3は、複数枚のレンズからなる。
図1の接眼レンズ3は、観察物体側からアイポイント側へ順に、正の屈折力を有する第1レンズL1と、負の屈折力を有する第2レンズL2と、正の屈折力を有する第3レンズL3と、正の屈折力を有する第4レンズL4とからなる。上記4枚のレンズは全て、接合されていない単レンズであり、光軸上で隣接するレンズと空気間隔を隔てて配置されている。接眼レンズ3は上記構成を有することによって、より広い視野角を得ることに有利となる。
【0028】
接眼レンズ3は、第3レンズL3のd線における屈折率をN3とした場合、下記条件式(1)を満足するように構成される。条件式(1)の下限以下とならないようにすることによって、像面湾曲の補正が容易になる。条件式(1)の上限以上とならないようにすることによって、低アッベ数以外の材料も第3レンズL3に使用可能となるため色収差の補正が容易になる。さらに下記条件式(1-1)を満足する構成とすれば、より良好な特性とすることができる。
1.76<N3<2 (1)
1.8<N3<1.9 (1-1)
【0029】
以下に、接眼レンズ3の好ましい構成について説明する。第1レンズL1は両凸形状であることが好ましい。このようにした場合は、観察物体である表示素子1と接眼レンズ3との間隔を広くすることに有利となる。視度調整の際に表示素子1と第1レンズL1との間隔が変化する構成では、表示素子1と接眼レンズ3との間隔は広いほうが視度調整用のスペースを確保しやすくなる。また、表示素子1と接眼レンズ3との間隔が広いほど、表示素子1の面上のゴミおよびキズが見えにくいという長所も得られる。第1レンズL1は、より広い視野角で良好に観察するために、少なくとも1面の非球面を有するように構成してもよい。
【0030】
第2レンズL2は両凹形状であることが好ましい。このようにした場合は、視野角を維持しつつ像面湾曲を抑えながらアイレリーフを長くすることに有利となる。第2レンズL2のアイポイント側の面は非球面を有することが好ましい。このようにした場合は、軸上色収差を補正しながら、倍率色収差の発生を抑えることに有利となる。より良好な特性を得るために、第2レンズL2の観察物体側の面およびアイポイント側の面が非球面を有するように構成してもよい。
【0031】
第3レンズL3のアイポイント側の面は凸形状であることが好ましい。このようにした場合は、球面収差の補正に有利になる。また、第3レンズL3のアイポイント側の面を凸形状にし、かつ、条件式(1)を満足する構成にした場合は、球面収差の補正効果を強めることができる。第3レンズL3は、両凸形状でもよく、あるいはアイポイント側に凸面を向けたメニスカス形状でもよい。
【0032】
第4レンズL4の観察物体側の面は凸形状であることが好ましい。このようにした場合は、非点収差を抑えながら広い視野角を得ることに有利となる。例えば、第4レンズL4は、両凸形状であるように構成することができる。第4レンズL4の観察物体側の面は非球面を有することが好ましい。このようにした場合は、広い視野角を確保しながら、レンズ周辺部で発生するコマ収差の補正に有利となる。より良好な特性を得るためには、第4レンズL4の観察物体側の面およびアイポイント側の面が非球面を有するように構成してもよい。
【0033】
接眼レンズ3は、第2レンズL2の焦点距離をf2、第4レンズL4の焦点距離をf4とした場合、下記条件式(2)を満足することが好ましい。条件式(2)は、第2レンズL2の屈折力と第4レンズL4の屈折力との比の好適な範囲に関する式である。条件式(2)の下限以下とならないようにすることによって、第2レンズL2の屈折力に対して第4レンズL4の屈折力が過剰にならないため、非点収差の発生を抑えることができる。条件式(2)の上限以上とならないようにすることによって、第2レンズL2の屈折力に対して第4レンズL4の屈折力が不足しないため、第4レンズL4よりアイポイント側の軸外光線が径方向外側に広がるのを抑えることができ、視野周辺部でのコマ収差の発生を抑制することができる。さらに下記条件式(2-1)を満足する構成とすれば、より良好な特性とすることができる。
-0.42<f2/f4<-0.2 (2)
-0.35<f2/f4<-0.21 (2-1)
【0034】
接眼レンズ3は、接眼レンズ3の焦点距離をf、第1レンズL1の焦点距離をf1とした場合、下記条件式(3)を満足することが好ましい。条件式(3)の下限以下とならないようにすることによって、第1レンズL1の屈折力が不足しないため、歪曲収差の補正が容易になる。条件式(3)の上限以上とならないようにすることによって、第1レンズL1の屈折力が過剰にならないため、第1レンズL1からアイポイント側へ射出される最大視野角の主光線の光軸Z1に対する角度が大きくならないように抑制することが容易になり、倍率色収差の補正に有利となる。さらに下記条件式(3-1)を満足する構成とすれば、より良好な特性とすることができる。
1.2<f/f1<3.5 (3)
1.4<f/f1<2.5 (3-1)
【0035】
接眼レンズ3は、第1レンズL1の焦点距離をf1、第4レンズL4の焦点距離をf4とした場合、下記条件式(4)を満足することが好ましい。接眼レンズ3は観察物体側から順に、正、負、正、正の屈折力配置になっている。これによって、表示素子1からアイポイント側へ向かう視野周辺側の光線は、第1レンズL1から第2レンズL2までの間で光線高が下がり、第2レンズL2および第3レンズL3を通過する際に光線高が上がる様相を概略的に示す。一方、広い視野角を得るためには第4レンズL4において、ある程度の高さの光線高を確保しておくことが好ましい。条件式(4)の下限以下とならないようにすることによって、第4レンズL4の屈折力に対して第1レンズL1の屈折力が不足しないため、第1レンズL1からアイポイント側へ射出される視野周辺側の光線の光軸Z1に対する角度が小さくなり過ぎることがない。上述した光線高の上下および第4レンズL4での光線高の確保を考慮すると、第2レンズL2および第3レンズL3を通過する視野周辺側の光線の光軸Z1に対する角度も小さくなり過ぎないため、倍率色収差が補正不足になるのを抑制できる。条件式(4)の上限以上とならないようにすることによって、第4レンズL4の屈折力に対して第1レンズL1の屈折力が過剰にならないため、第1レンズL1からアイポイント側へ射出される軸外の主光線の光軸Z1に対する角度が大きくなり過ぎることがない。上述した光線高の上下および第4レンズL4での光線高の確保を考慮すると、第2レンズL2および第3レンズL3を通過する視野周辺側の光線の光軸Z1に対する角度も大きくなり過ぎないため、倍率色収差が補正過剰になるのを抑制できる。すなわち、条件式(4)を満足することによって、倍率色収差の補正に有利となる。さらに下記条件式(4-1)を満足する構成とすれば、より良好な特性とすることができる。
2.7<f4/f1<8 (4)
3<f4/f1<5 (4-1)
【0036】
接眼レンズ3は、第2レンズL2のアイポイント側の面の曲率半径をR2r、第3レンズL3の観察物体側の面の曲率半径をR3fとした場合、下記条件式(5)を満足することが好ましい。条件式(5)は、第2レンズL2と第3レンズL3との間に形成される空気レンズのシェイプファクターを規定した式である。条件式(5)の下限以下とならないようにすることによって、この空気レンズにおいて球面収差が補正過剰となるのを抑制できる。条件式(5)の上限以上とならないようにすることによって、上記空気レンズにおいて球面収差が補正不足となるのを抑制できる。仮に、上記空気レンズにおいて球面収差が補正不足となった場合に他のレンズ面で球面収差を補正しようとすると倍率色収差が発生してしまうが、条件式(5)の上限以上とならないようにすることによって、このような不具合を防ぐことができる。さらに下記条件式(5-1)を満足する構成とすれば、より良好な特性とすることができる。
-2.1<(R2r+R3f)/(R2r-R3f)<-0.2 (5)
-1.75<(R2r+R3f)/(R2r-R3f)<-0.6 (5-1)
【0037】
上述した好ましい構成および可能な構成は任意の組合せが可能である。例えば、上述した構成を組み合わせた好ましい一態様の接眼レンズ3は、観察物体側からアイポイント側へ順に、正の屈折力を有する第1レンズL1と、負の屈折力を有する第2レンズL2と、正の屈折力を有する第3レンズL3と、正の屈折力を有する第4レンズL4とからなり、全てのレンズは単レンズであり、第2レンズL2は両凹形状であり、第4レンズL4の観察物体側の面は凸形状であり、条件式(1)を満足する。
【0038】
デジタルカメラ等のビューファインダ用の接眼レンズにおいて、最近では液晶表示素子の高画素化が進んだことから、より広い視野角と高い解像性能が求められている。しかし、より広い視野角を得ようとすると、視野周辺部で非点収差および色収差等の諸収差が大きく発生し、高い解像性能と両立することが難しい。そこで、上記の好ましい一態様を採ることによって、非点収差および色収差等の諸収差を抑えつつ、より広い視野角で観察可能な接眼レンズを実現することができる。
【0039】
接眼レンズ3は、視度調整可能に構成されていることが好ましい。接眼レンズ3は、表示素子1と接眼レンズ3との光軸方向の間隔が変化することによって視度調整が行われるように構成することができる。このようにした場合は、視度調整の際の空気間隔の変化量を少なくすることができる。
【0040】
図1の例では、視度調整の際に、接眼レンズ3は固定され、表示素子1と接眼レンズ3との光軸方向の間隔を変化させて表示素子1が移動する。
図1の表示素子1の下の両矢印は視度調整の際に表示素子1が接眼レンズ3の光軸Z1に沿って移動することを示す。このように構成した場合は、視度調整の際にアイレリーフが減少することを抑制できる。なお、ここでいう「接眼レンズ3は固定され」とは、観察光学系が装置に搭載された際に、接眼レンズ3が装置に対して固定されていることを意味する。このようにした場合は、視度調整の際に、表示素子1と接眼レンズ3との光軸方向の間隔は変化するが、接眼レンズ3とアイポイントEPとの間隔はほぼ一定にすることが可能となり、視度調整を行ってもアイレリーフの減少量が小さいので、良好に観察することができる。
【0041】
次に、本開示の第2の実施形態に係る観察光学系5について説明する。以下の第2の実施形態に係る説明では第1の実施形態と同様の構成については一部説明を省略する。第2の実施形態に係る観察光学系5は、表示素子1と、複数枚のレンズからなるレンズ群とを備え、表示素子1に表示された画像をレンズ群を介して観察するように構成されている。
図1では、レンズ群の一例として接眼レンズ3を示す。
【0042】
第2の実施形態に係る観察光学系5では、視度調整の際に、レンズ群は固定され、表示素子1とレンズ群との光軸方向の間隔を変化させて表示素子1が移動する。さらに、レンズ群のうちの少なくとも1枚のレンズのd線における屈折率をNxとした場合、下記条件式(6)を満足するように構成される。なお、「レンズ群は固定され」の意味と効果は、第1の実施形態で説明した「接眼レンズ3は固定され」と同様である。条件式(6)の下限以下とならないようにすることによって、像面湾曲の補正が容易になる。条件式(6)の上限以上とならないようにすることによって、低アッベ数以外の材料もレンズに使用可能となるため色収差の補正が容易になる。さらに下記条件式(6-1)を満足する構成とすれば、より良好な特性とすることができる。
1.76<Nx<2 (6)
1.8<Nx<1.9 (6-1)
【0043】
条件式(6)は比較的高い屈折率の範囲を示している。条件式(6)を満足する高屈折率のレンズは像面湾曲の補正に有利という長所を有する。一般に、レンズの屈折率が高いほどレンズの屈折力は強くなり、レンズの屈折力が強いほどレンズを通過する光線が変動した際の収差変動は大きくなる。そこで、第2の実施形態に係る観察光学系では、視度調整の際に、接眼レンズ3が固定された状態で表示素子が移動するように構成している。この構成によれば、視度調整の際のレンズを通過する光線の高さの変動を少なくすることができる。すなわち、視度調整の際にレンズ群を固定して表示素子1を移動させ、かつ条件式(6)を満足することによって、高屈折率のレンズを使いながら、視度調整の際の収差変動を抑制することができる。
【0044】
図1に示すようにレンズ群は4枚のレンズからなるように構成してもよい。その場合、条件式(6)を満足するレンズは、レンズ群を構成する4枚のレンズのうち、表示素子1の側から3番目のレンズであることが好ましい。レンズ群が4枚のレンズからなり、広い視野角を有する構成とした場合、表示素子1の側から3番目のレンズにおける光線高さが高くなりやすい。従って、表示素子1の側から3番目のレンズが条件式(6)を満足することによって、視度調整の際の収差変動を抑制する効果を顕著なものとすることができる。特に、上記レンズ群が、観察物体側から順に、正レンズと、負レンズと、正レンズと、正レンズとからなる場合は、上記効果をより顕著なものとすることができる。
【0045】
以上述べた各実施形態における好ましい構成および可能な構成は、各実施形態において任意の組合せが可能であり、要求される仕様に応じて適宜選択的に採用されることが好ましい。また、第2の実施形態の観察光学系5のレンズ群が、観察物体側から順に、正レンズと、負レンズと、正レンズと、正レンズとからなる場合、レンズ群は、第1の実施形態で述べた接眼レンズ3の構成、および、接眼レンズ3の好ましい構成を適宜選択的に採用することができる。
【0046】
次に、本開示の接眼レンズの数値実施例について説明する。
[実施例1]
実施例1の接眼レンズ3の構成と光束は
図1に示しており、その図示方法と構成は上述したとおりであるので、ここでは重複説明を一部省略する。実施例1の接眼レンズ3は、観察物体側からアイポイント側へ順に、近軸領域で両凸形状の第1レンズL1と、近軸領域で両凹形状の第2レンズL2と、両凸形状の第3レンズL3と、近軸領域で両凸形状の第4レンズL4とからなる。第1レンズL1~第4レンズL4の4枚全てのレンズが単レンズである。第1レンズL1、第2レンズL2、および第4レンズL4が非球面レンズである。視度調整の際に、接眼レンズ3は固定され、表示素子1が光軸方向に移動する。これによって、表示素子1と接眼レンズ3との光軸方向の間隔が変化する。以上が実施例1の接眼レンズ3の概要である。
【0047】
実施例1の接眼レンズ3の基本レンズデータを表1に示す。表1では表示素子1、光学部材2、およびアイポイントEPも示している。表1において、Snの欄には、表示素子1の面をOBJと示し、光学部材2の観察物体側の面を第1面としアイポイント側に向かうに従い1つずつ番号を増加させた場合の各面の面番号を示し、アイポイントEPに対応する面はEPと示す。Rの欄には各面の曲率半径を示し、Dの欄には各面とそのアイポイント側に隣接する面との光軸上の面間隔を示す。Ndの欄には各構成要素のd線における屈折率を示し、νdの欄には各構成要素のd線基準のアッベ数を示す。
【0048】
表1では、観察物体側に凸面を向けた形状の面の曲率半径の符号を正、アイポイント側に凸面を向けた形状の面の曲率半径の符号を負としている。表1では、視度調整の際の可変面間隔はDD[2]と示す。
【0049】
表2に、接眼レンズ3の焦点距離f、および、半画角での視野角の値を示す。視野角の欄の[°]は単位が度であることを意味する。表2には視度が-1.00diopter(ディオプター)の状態の値を示す。表3に、各視度における可変面間隔の値を示す。
【0050】
表4に、接眼レンズ3に含まれる非球面レンズの非球面係数を示す。基本レンズデータでは、非球面の面番号には*印を付しており、非球面の曲率半径の欄には近軸の曲率半径の数値を記載している。表4では、Snの欄には非球面の面番号を示し、KAおよびAm(m=3、4、5、・・・16)の欄には各非球面についての非球面係数の数値を示す。表4の非球面係数の数値の「E±n」(n:整数)は「×10±n」を意味する。KAおよびAmは下式で表される非球面式における非球面係数である。
Zd=C×h2/{1+(1-KA×C2×h2)1/2}+ΣAm×hm
ただし、
Zd:非球面深さ(高さhの非球面上の点から、非球面頂点が接する光軸に垂直な平面に
下ろした垂線の長さ)
h:高さ(光軸からレンズ面までの距離)
C:近軸曲率半径の逆数
KA、Am:非球面係数
であり、非球面式のΣはmに関する総和を意味する。
【0051】
各表のデータにおいて、角度の単位には度を用い、長さの単位にはmm(ミリメートル)を用い、視度の単位にはdiopter(ディオプター)を用いているが、光学系は比例拡大又は比例縮小しても使用可能なため他の適当な単位を用いることもできる。また、以下に示す各表では所定の桁でまるめた数値を記載している。
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
図2および
図3に、視度が-1.00diopter(ディオプター)の状態の実施例1の接眼レンズ3の各収差図を示す。
図2では左から順に、球面収差、非点収差、歪曲収差、および倍率色収差を示す。球面収差図では、d線、C線、およびF線における収差をそれぞれ実線、長破線、および短破線で示す。非点収差図では、サジタル方向のd線における収差を実線で示し、タンジェンシャル方向のd線における収差を短破線で示す。歪曲収差図ではd線における収差を実線で示す。倍率色収差図では、C線、およびF線における収差をそれぞれ長破線、および短破線で示す。球面収差図および非点収差図の横軸の単位のdptはdiopter(ディオプター)を意味する。球面収差図のΦは単位をmm(ミリメートル)とした場合のアイポイントEPの直径を意味し、その他の収差図のωは半画角での視野角を意味する。
【0057】
図3では各視野角について、左列にタンジェンシャル方向の横収差を、右列にサジタル方向の横収差を示す。
図3では、d線、C線、およびF線における収差をそれぞれ実線、長破線、および短破線で示す。
図3のωは半画角での視野角を意味する。
【0058】
上記の実施例1に関する各データの記号、意味、記載方法、および図示方法は、特に断りが無い限り以下の実施例においても同様であるので、以下では重複説明を省略する。
【0059】
[実施例2]
実施例2の接眼レンズ3の構成と光束を
図4に示す。実施例2の接眼レンズ3は、実施例1の接眼レンズ3の概要と同様の構成を有する。視度調整の際に、接眼レンズ3を固定し、表示素子1を移動させてもよい。実施例2の接眼レンズ3について、基本レンズデータを表5に、諸元を表6に、可変面間隔を表7に、非球面係数を表8に、各収差図を
図5および
図6に示す。
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
[実施例3]
実施例3の接眼レンズ3の構成と光束を
図7に示す。実施例3の接眼レンズ3は、第3レンズL3がアイポイント側に凸面を向けた正メニスカスレンズである点以外は実施例1の接眼レンズ3の概要と同様の構成を有する。視度調整の際に、接眼レンズ3を固定し、表示素子1を移動させてもよい。実施例3の接眼レンズ3について、基本レンズデータを表9に、諸元を表10に、可変面間隔を表11に、非球面係数を表12に、各収差図を
図8および
図9に示す。
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
[実施例4]
実施例4の接眼レンズ3の構成と光束を
図10に示す。実施例4の接眼レンズ3は、実施例1の接眼レンズ3の概要と同様の構成を有する。視度調整の際に、接眼レンズ3を固定し、表示素子1を移動させてもよい。実施例4の接眼レンズ3について、基本レンズデータを表13に、諸元を表14に、可変面間隔を表15に、非球面係数を表16に、各収差図を
図11および
図12に示す。
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
[実施例5]
実施例5の接眼レンズ3の構成と光束を
図13に示す。実施例5の接眼レンズ3は、第3レンズL3がアイポイント側に凸面を向けた正メニスカスレンズである点以外は実施例1の接眼レンズ3の概要と同様の構成を有する。視度調整の際に、接眼レンズ3を固定し、表示素子1を移動させてもよい。実施例5の接眼レンズ3について、基本レンズデータを表17に、諸元を表18に、可変面間隔を表19に、非球面係数を表20に、各収差図を
図14および
図15に示す。
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
表21に、実施例1~5の接眼レンズ3の条件式(1)~(6)の対応値を示す。条件式(6)の欄には、条件式(6)を満足するレンズの符号を対応値の下に括弧書きで示す。
【表21】
【0080】
以上説明したデータからわかるように、実施例1~5の接眼レンズ3は、半画角での視野角が17度以上であり、広い視野角を有しており、諸収差が良好に補正されて高い光学性能を実現している。
【0081】
次に、本開示の実施形態に係る観察光学系5を備えた光学装置について説明する。
図16に、本開示の一実施形態に係る光学装置であるカメラ10の概略構成図を示す。カメラ10は、一例としてデジタルカメラである。カメラ10はカメラボディ30を備える。
【0082】
カメラボディ30の前面にはレンズ鏡筒20が着脱自在に装着されている。レンズ鏡筒20は内部に撮像レンズ22を備える。撮像レンズ22は実際には複数のレンズおよび開口絞りを含むが、
図16では概念的に図示されている。撮像レンズ22の光軸Z2の延長上のカメラボディ30の内部には、シャッタ24および撮像素子26が配置されている。
【0083】
また、カメラボディ30の内部には、表示素子1および接眼レンズ3が配置されている。接眼レンズ3は実際には複数のレンズからなるが、
図16では概念的に図示されている。表示素子1は接眼レンズ3と対向する面に、接眼レンズ3の光軸Z1に略垂直な表示面を有する。表示素子1および接眼レンズ3は本開示の観察光学系5を構成する。観察光学系5はカメラボディ30の背面に設けられた覗き窓34とともに電子ビューファインダを構成する。表示素子1および覗き窓34は接眼レンズ3を挟んで光軸Z1の延長上に配置されている。
【0084】
表示素子1は、カメラボディ30の内部に設けられた不図示の駆動手段によって移動可能に構成されている。
図16において、接眼レンズ3の光軸Z1に平行な方向をZ方向とし、
図16の紙面に垂直な方向をX方向とし、Z方向およびX方向に垂直な方向をY方向とする。表示素子1は、
図16に矢印Aで示すように、Z方向に平行な方向に直線移動可能である。また、表示素子1は、
図16に矢印Bで示すように、表示素子1の中心を通りX方向に平行な軸を回転軸として回転移動可能である。理解を容易にするため、
図17の斜視図に表示素子1の直線移動の方向および回転移動の方向をそれぞれ矢印Aおよび矢印Bを付して示す。表示素子1が直線移動する間も、回転移動する間も、接眼レンズ3はカメラボディ30に対して固定されている。表示素子1の直線移動および/又は回転移動によって、表示素子1と接眼レンズ3との相対位置関係が変化し、これによって視度調整を行うことができる。
【0085】
カメラボディ30の背面には、表示素子1を直線移動および/又は回転移動させて視度調整を行うための視度調整ダイヤル36、および画像を表示するための背面液晶パネル32が設けられている。また、カメラボディ30の内部には、画像処理、各種演算処理、および各構成要素の制御等を行うプロセッサ50が設けられている。
【0086】
カメラ10においては、撮像レンズ22によって撮像された被写体像が撮像素子26の撮像面に結像される。撮像素子26は、結像された被写体像を示す画像をプロセッサ50に出力する。プロセッサ50は画像に対して画像処理を施す。画像処理が施された画像が背面液晶パネル32および表示素子1のそれぞれで表示される。
【0087】
観察者60は、覗き窓34を覗いて接眼レンズ3を介して表示素子1に表示された画像を観察する。観察者60は、観察者60の視力に応じて、視度調整ダイヤル36を操作して表示素子1を直線移動および/又は回転移動させることにより視度調整を行う。これにより、観察者60は、表示素子1に表示される画像を好適な状態で観察することができる。
【0088】
カメラ10においては、表示素子1を光軸Z1の方向に直線移動可能なだけではなく、X方向に平行な軸の周りに回転移動可能な構成としている。このため、例えば観察者60が覗き窓34を覗いたときに表示素子1のY方向の一部で焦点が合わなくても、観察者60は表示素子1を回転移動させて調整を行い、より表示素子1を見やすい状態にすることができる。また、遠近両用眼鏡等のレンズの上部と下部で視度が異なる眼鏡を着用している観察者60が観察する場合も、表示素子1を回転移動させて調整を行い、より表示素子1を見やすい状態にすることができる。
【0089】
以上、実施形態および実施例を挙げて本開示の技術を説明したが、本開示の技術は上記実施形態および実施例に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、各レンズの曲率半径、面間隔、屈折率、アッベ数、および非球面係数等は、上記各数値実施例で示した値に限定されず、他の値をとり得る。また、本開示の実施形態に係る光学装置は上記例に限定されず、本開示はフィルムカメラ、ビデオカメラ、およびヘッドマウントディスプレイ等に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0090】
1 表示素子
2 光学部材
3 接眼レンズ
5 観察光学系
10 カメラ
20 レンズ鏡筒
22 撮像レンズ
24 シャッタ
26 撮像素子
30 カメラボディ
32 背面液晶パネル
34 覗き窓
36 視度調整ダイヤル
50 プロセッサ
60 観察者
A、B 矢印
EP アイポイント
L1 第1レンズ
L2 第2レンズ
L3 第3レンズ
L4 第4レンズ
Z1、Z2 光軸