(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】制電性を有する衣服
(51)【国際特許分類】
A41D 31/26 20190101AFI20221209BHJP
A41D 31/00 20190101ALI20221209BHJP
A41D 31/04 20190101ALI20221209BHJP
D02G 3/02 20060101ALI20221209BHJP
D04B 1/16 20060101ALI20221209BHJP
A41D 13/008 20060101ALN20221209BHJP
【FI】
A41D31/26 100
A41D31/00 502C
A41D31/00 503M
A41D31/04 C
D02G3/02
D04B1/16
A41D13/008
(21)【出願番号】P 2019503762
(86)(22)【出願日】2019-01-17
(86)【国際出願番号】 JP2019001289
(87)【国際公開番号】W WO2019150976
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2019-01-24
【審判番号】
【審判請求日】2020-12-01
(31)【優先権主張番号】P 2018013600
(32)【優先日】2018-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】中橋 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】御宮知 直樹
(72)【発明者】
【氏名】久保田 裕之
(72)【発明者】
【氏名】金丸 晃章
【合議体】
【審判長】一ノ瀬 覚
【審判官】内田 博之
【審判官】八木 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-250007(JP,A)
【文献】国際公開第2017/069100(WO,A1)
【文献】実開昭59-17714(JP,U)
【文献】特開平5-51802(JP,A)
【文献】特開平3-64503(JP,A)
【文献】特開昭57-35004(JP,A)
【文献】特開昭57-193503(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電糸が特定の部分だけに使用された衣服であって、
前記特定の部分が裾口、袖口、襟口及び肩口であり、裾口、袖口、襟口及び肩口からなる群より選択される少なくとも1か所に、導電糸を含有し、
前記衣服に含有されている前記導電糸の幅が、連続した3~30コースであり、
前記導電糸は紡績糸であり、前記紡績糸に含有される導電繊維の含有量が50質量%以上であり、
前記導電糸が、前記衣服の表と裏の両面に現れており、
前記衣服が、セーター、ニットワンピース、カーデガン及びベストからなる群より選択される少なくとも1種であり、前記特定の部分に前記導電糸が編み込まれた編物である衣服。
【請求項2】
袖口及び肩口からなる群より選択される少なくとも1か所、並びに、裾口及び襟口に前記導電糸を含有する、請求項
1に記載の衣服。
【請求項3】
前記導電糸の太さが、単糸番手換算のメートル番手で1/10~1/35である、請求項1
又は2に記載の衣服。
【請求項4】
前記導電繊維の衣服に対する含有率が1~20質量%である、請求項
1~3のいずれか一項に記載の衣服。
【請求項5】
裾口部分に含有される導電繊維の含有量が2~25gである、請求項
1~4のいずれか一項に記載の衣服。
【請求項6】
襟口部分に含有される導電繊維の含有量が0.5~5gである、請求項
1~
5のいずれか一項に記載の衣服。
【請求項7】
袖口部分に含有される導電繊維の含有量が1~20gである、請求項
1~
6のいずれか一項に記載の衣服。
【請求項8】
前記導電繊維が芯部に導電性物質を含有する芯鞘構造である、請求項
1~
7のいずれか一項に記載の衣服。
【請求項9】
前記衣服の摩擦帯電電荷量が、アクリル及びナイロンに対し、それぞれ独立に0.8μC/着以下である、請求項1~
8のいずれか一項に記載の衣服。
【請求項10】
前記衣服の身頃に導電糸を含有しない、請求項1~
9のいずれか一項に記載の衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定部分に導電糸を含有し、制電性を有する衣服に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、空調設備が整備されたことにより、室内の温度は、一年を通し快適に保たれている。一方、室内の湿度は、夏季、冬季ともに低くなっていることが多い。
このため、冬季に使用される保温衣料は、着用者の活動によって衣服内に静電気を蓄積し易くなり、脱衣時の静電気放電による不快感に繋がっている。
【0003】
静電気放電による不快感を低減する方法として、衣料製品に静電気を蓄積し難くする制電後加工や、衣料製品の全体に導電繊維や金属繊維を含有させる方法が知られている。
しかしながら、衣料製品への制電後加工は、洗濯を繰り返すことでその機能が低下していく。
衣料製品の全体に導電繊維や金属繊維を含有させる方法においては、導電繊維としてカーボンブラックなどが使用されるためグレーや黒色をしており、また、金属繊維の場合は金属色を発することや、金属光沢がある。このため、衣料製品の色が淡色の場合、導電繊維や金属繊維の色の影響が衣料製品に現れてしまい、好ましくない。
特許文献1には、導電糸が形成する網目数を全網目数の70%以下にすることにより、導電性伸縮編地の面方向に導通性が生じることが記載されている。しかし、導電糸を衣料品全体に使用しているため、淡色の色にすると導電繊維の色が目立ってしまう。このため、衣料は濃色しか採用できず、衣料製品としての魅力に欠けるものとなってしまう。
特許文献2には、めっき、金属蒸着、スパッタリング、導電塗料のいずれか一つの方法で導電性を持たせた合成繊維でカバーリングした複合糸を全部、または一部に用いて制編された編物が記載されている。しかし、導電繊維の色が衣料製品に大きく影響するため、セーター等の一般冬物衣料には使用困難である。
そこで、導電糸を縫い糸に使用することで、衣料製品に対する導電繊維の色の影響を低減する方法が提案されている(特許文献3)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-197521号公報
【文献】特開2007-191811号公報
【文献】WO2017/069100
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献3の発明では、身頃に導電繊維がないため、導電繊維の色の影響はないものの、身頃と襟を縫製した部分である襟部では導電繊維色の影響が出てしまい、衣料製品の品質を低下させてしまっていた。
【0006】
本発明の目的は、色がついている導電性繊維を用いても、特定部分にデザインの一部として使用することで、身頃の大部分は淡色も使用でき、制電性能を持ちかつ洗濯耐久性がある衣服を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下に示すものである。
1.裾口、袖口、襟口及び肩口からなる群より選択される少なくとも1か所に、導電糸を含有する衣服。
2.袖口及び肩口からなる群より選択される少なくとも1か所、並びに、裾口及び襟口に前記導電糸を含有する、1に記載の衣服。
3.前記導電糸を含有する位置が、裾口、袖口、襟口及び肩口からなる群より選択される少なくとも1か所の衣服の開口部から、それぞれ独立に100mm以内である、1または2に記載の衣服。
4.前記衣服に含有されている前記導電糸の幅が、連続した3~30コースである、1~3のいずれかに記載の衣服。
5.前記導電糸が、前記衣服の表と裏の両面に現れている、1~4のいずれかに記載の衣服。
6.前記導電糸の太さが、単糸番手換算のメートル番手で1/10~1/35である、1~5のいずれかに記載の衣服。
7.前記導電糸は紡績糸であり、前記紡績糸に含有される導電繊維の含有量が50質量%以上である、1~6のいずれかに記載の衣服。
8.前記導電繊維の衣服に対する含有率が1~20質量%である、7に記載の衣服。
9.裾口部分に含有される導電繊維の含有量が2~25gである、7又は8に記載の衣服。
10.襟口部分に含有される導電繊維の含有量が0.5~5gである、7~9のいずれかに記載の衣服。
11.袖口部分に含有される導電繊維の含有量が1~20g含である、7~10のいずれかに記載の衣服。
12.前記導電繊維が芯部に導電性物質を含有する芯鞘構造である、7~11のいずれかに記載の衣服。
13.衣服が編物である、1~12のいずれかに記載の衣服。
14.前記衣服が、セーター、ニットワンピース、カーデガン及びベストからなる群より選択される少なくとも1種である、1~13のいずれかに記載の衣服。
15.前記衣服の摩擦帯電電荷量が、アクリル及びナイロンに対し、それぞれ独立に0.8μC/着以下である、1~14のいずれかに記載の衣服。
16.前記衣服の身頃に導電糸を含有しない、1~15のいずれかに記載の衣服。
【発明の効果】
【0008】
本発明は導電糸を衣服の特定の部分だけに使用することで、衣服のデザインの一部として使用でき、導電繊維の色が目立つことなく、衣服に洗濯耐久性のある制電効果を付与することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一つの実施態様にかかる衣服は、衣服の裾口、袖口、襟口及び肩口からなる群より選択される少なくとも1か所に、導電糸を含有する。
衣服の裾口、袖口、襟口及び肩口の少なくとも1か所に導電糸を含有することで、衣服を脱ぐ際の静電気による不快感を軽減しやすくできる。
上記観点から、少なくとも裾口に導電糸を含有することが好ましく、裾口と襟口の2カ所に導電糸を含有することがより好ましい。
【0010】
また、本発明の他の実施態様にかかる衣服は、衣服の裾口、袖口、襟口及び肩口の少なくとも1か所に導電糸を配している一方、身頃には導電糸を配していないため、身頃に淡色が使用できる。
本発明において、導電糸を衣服の裾口、袖口、襟口及び肩口等にデザインの一部として使用することができる。
【0011】
本発明の別の実施態様にかかる衣服は、前記導電糸を、衣服の袖口及び肩口の少なくとも1か所に、並びに、裾口及び襟口に含有することが好ましい。
衣服に袖がある場合は袖口に、袖がないベストなどの場合は肩口に導電繊維を含有させ、さらに裾口及び襟口の衣服の開口部に導電繊維を含有させることで、静電気の発生を防ぎやすくなる。すなわち、本発明の衣服の脱衣時や、本発明の衣服の上に重ねて着ている衣服の脱衣時に、人によって脱衣方法が異なっても、導電糸を含有する部分が、最後に他の衣服と擦れる部分となるので静電気の発生を防ぎやすくなる。
【0012】
本発明において、衣服に含有される前記導電糸の位置は、裾口、袖口、襟口及び肩口等の衣服の開口部から、それぞれ独立に100mm以内であることが好ましい。
衣服に含有される前記導電糸の位置が、裾口、袖口、襟口及び肩口等の衣服の開口部から100mm以内であることで、衣服を脱ぐ最後まで、除電効果を奏しやすくなる。
この観点から、衣服に含有される前記導電糸の位置は、裾口、袖口、襟口及び肩口等の衣服の開口部から90mm以内がより好ましく、80mm以内がさらに好ましい。
【0013】
本発明の一つの実施態様にかかる衣服は、前記導電糸を含有している前記衣服の幅が、連続した3~30コースであることが好ましい。
導電糸が連続して3コース以上まとまって含有することで、除電効果を高くすることができる。また、導電糸が連続して30コース以下であることで、コストが上がり過ぎず、衣服のデザインへの制約を少なくできる。
これらの観点から、衣服に含有されている導電糸の幅が連続して4~12コースであることがより好ましく、4~8コースがより好ましい。
【0014】
本発明の他の実施態様にかかる衣服は、前記導電糸が、衣服の表と裏の両面に現れていることが好ましい。
前記導電糸が、衣服の表と裏の両面に現れていることで、該衣服を脱ぐ際に、該衣服の内側で発生する静電気を、外側へ放電しやすくなる。
【0015】
本発明の別の実施態様にかかる衣服は、前記導電糸が紡績糸であり、前記紡績糸に含有される導電繊維の含有量が50質量%以上であることが好ましい。
前記導電糸が紡績糸であることで、繊維端部からのコロナ放電が多くなり、除電効果を高めることができる。
また、前記紡績糸中に含有される導電繊維が50質量%以上であることで、除電効果を高めることができる。この観点から、前記紡績糸中に含有される導電繊維の含有率は70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましい。
【0016】
本発明で用いられる導電繊維の種類としては特に制限はなく、化学繊維、金属繊維などを挙げることができる。これらの中で、衣服の製造のしやすさ、染色が可能な点から、化学繊維が好ましい。
化学繊維の場合、導電物質を繊維中に含有させたもの、後加工で表面に付着させたものなどを使用することができる。
また、化学繊維の種類としても特に制限はなく、合成繊維、半合成繊維、再生繊維などを挙げることができる。これらの中では、導電物質を含有させやすい点から、合成繊維や半合成繊維が好ましく、より具体的には、アクリル繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリプロピレン繊維がより好ましく、冬物衣料に適している点からアクリル繊維がさらに好ましい。
【0017】
本発明の一つの実施態様にかかる衣服は、前記導電糸の番手が単糸番手換算のメートル番手で1/10~1/35であることが好ましい。
前記導電糸の太さが単糸番手換算のメートル番手で1/10以上であれば風合いが固くならず、1/35以下であれば除電効果が得られやすい。
これらの観点から、前記導電糸の番手は、単糸番手換算のメートル番手で1/12~1/32がより好ましく、1/15~1/28がさらに好ましい。
導電糸の番手は、単糸でも双糸でもよく、紡績糸の強度、風合いの点から双糸が好ましい。
【0018】
本発明の他の実施態様にかかる衣服は、前記導電繊維の衣服に対する含有率が1~20質量%であることが好ましい。
前記導電繊維の衣服に対する含有率が1質量%以上であれば除電効果が得られやすく、20質量%以下であればコストを抑えることができる。
これらの観点から、前記導電繊維の衣服に対する含有率は2~15質量%がより好ましく、3~12質量%がさらに好ましい。
【0019】
本発明の別の実施態様にかかる衣服は、裾口部分に含有される導電繊維の含有量が2~25gであることが好ましい。
裾口部分に含有される導電繊維の含有量が2g以上であることで、除電効果を高めることができ、25g以下であればデザインの制約を少なくでき、コストも抑えられる。
これらの観点から、裾口部分に含有する導電繊維の含有量が3~21gであることがより好ましい。
【0020】
本発明の一つの実施態様にかかる衣服は、襟口部分に含有される導電繊維の含有量が0.5~5gであることが好ましい。
襟口部分に含有される導電繊維の含有量が0.5g以上であることで除電効果を高めることができ、5g以下であればデザインの制約を少なくでき、コストも抑えられる。
これらの観点から、襟口部分に含有される導電繊維の含有量が1~3gであることがより好ましい。
【0021】
本発明の他の実施態様にかかる衣服は、袖口部分に含有する導電繊維の含有量が1~20gであることが好ましい。
袖口部分に含有する導電繊維の含有量が1g以上であることで、除電効果を高めることができ、20g以下であればデザインの制約を少なくでき、コストも抑えられる。
これらの観点から、袖口部分に含有する導電繊維の含有量が2~12gであることがより好ましい。
【0022】
本発明の別の実施態様にかかる衣服は、前記導電繊維が、芯部に導電性物質を含有する芯鞘構造であることが好ましい。
前記導電繊維が、芯部に導電性物質を含有する芯鞘構造であることで、淡色でも染色可能であり、また、繊維中の導電物質の含有率を高めることができる。
【0023】
本発明の一つの実施態様にかかる衣服は、編物であることが好ましい。編物であれば、紡績糸を使用しやすく、導電繊維によるコロナ放電がしやすくなる。
また、編物は静電気が発生しやすいので、本発明に適している。
【0024】
本発明の他の実施態様にかかる衣服は、セーター、ニットワンピース、カーデガン、ベストのいずれかであることが好ましい。
セーター、ニットワンピース、カーデガン、ベストは冬に着る機会が多く、本発明に適している。
【0025】
本発明の別の実施態様にかかる衣服は、衣服の摩擦帯電電荷量が、アクリル及びナイロンに対し、それぞれ0.8μC/着以下であることが好ましい。
衣服の摩擦帯電電荷量が、アクリル及びナイロンに対し0.8μC/着以下であれば、当該衣服を脱ぐときの静電気による不快感を低減しやすくなる。
この観点からは、アクリルに対し0.54μC/着以下がより好ましく、ナイロンに対しては0.6μC/着以下がより好ましい。
【実施例】
【0026】
以下に、実施例を示して本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(摩擦帯電電荷量の測定方法)
測定する試料を、前処理として、JIS L0217 103法に準拠した洗濯試験を5回繰り返した後、注水すすぎ20分を行い、吊干し乾燥を行う。
前処理を行った試料をJIS T8118静電気帯電防止作業服 測定法に基づき、摩擦装置(家庭用タンブル乾燥機に内張摩擦布として、ナイロン、アクリル其々を準備)内に入れて運転(60℃、15分間)後、ファラデーゲージに投入し、帯電電荷量(μC)を測定する。
【0027】
(実施例1)
最初に導電糸として、芯部に導電性微粒子を含有する導電アクリル繊維(三菱ケミカル社製:ET-10、単繊維繊度3.3dtex)が100質量%からなるメートル番手が2/32の導電紡績糸を作製した。作製した導電紡績糸を糸染めして、染色導電糸を準備した。
次に、ウール100質量%からなるメートル番手が2/48の紡績糸を染色し、15Gの編み機を用い、リブのタートルニットを製造した。
このとき、前記染色導電糸を袖口に8コース、裾口に8コース、襟口に5コース、それぞれ使用し、デザインとしても機能させた。
導電糸の含有状況および摩擦帯電電荷量の測定結果を表1に示す。
【0028】
(実施例2)
ウール100質量%からなるメートル番手が2/48の紡績糸を染色し、12Gの編み機を用い、ベストを製造した。
このとき、実施例1で用いた染色導電糸を裾口に8コース、肩口に8コース、襟口に8コース、それぞれ使用し、デザインとしても機能させた。
導電糸の含有状況および制電性能を表1に示す。
【0029】
(実施例3)
ウール100質量%からなるメートル番手が2/30の紡績糸を染色し、15Gの編み機を用い、プルオーバーニットを製造した。
このとき、実施例1で用いた染色導電糸を袖口に14コース、裾口に16コース、襟口に7コース、それぞれ使用し、デザインとしても機能させた。
導電糸の含有状況および摩擦帯電電荷量の測定結果を表1に示す。
【0030】
(実施例4)
レーヨン50質量%とアンゴラ20質量%、ナイロン20質量%、ウール10質量%からなるメートル番手が1/12の紡績糸を染色し、7Gの編み機を用い、セーターを製造した。
このとき、実施例1で用いた染色導電糸を袖口に27コース、裾口に27コース、襟口に5コース、それぞれ使用し、デザインとしても機能させた。
導電糸の含有状況および摩擦帯電電荷量の測定結果を表1に示す。
【0031】
(実施例5)
ウール100質量%からなる番手が2/14の紡績糸を染色し、7Gの編み機を用い、ワンピースを製造した。
このとき、実施例1で用いた染色導電糸を袖口に9コース、裾口に6コース、襟口4コース、それぞれ使用し、デザインとしても機能させた。 導電糸の含有状況および摩擦帯電電荷量の測定結果を表1に示す。
【0032】
(比較例1)
導電糸を使用しなかった以外は実施例1と同様にしてリブのタートルニットを製造した。
摩擦帯電電荷量の測定結果を表1に示す。
導電糸を含有していないため、摩擦帯電電荷量は大きい値となった。
【0033】
(比較例2)
導電糸を使用しなかった以外は、実施例2と同様にしてベストを製造した。
摩擦帯電電荷量の測定結果を表1に示す。
導電糸を含有していないため、ナイロンに対する摩擦帯電電荷量は大きい値となった。
【0034】
(比較例3)
導電糸を使用しなかった以外は、実施例3と同様にしてプルオーバーニットを製造した。
摩擦帯電電荷量の測定結果を表1に示す。
導電糸を含有していないため、アクリルに対する摩擦帯電電荷量は大きい値となった。
【0035】
(比較例4)
導電糸を使用しなかった以外は、実施例4と同様にしてセーターを製造した。
摩擦帯電電荷量の測定結果を表1に示す。
導電糸を含有していないため、ナイロンに対する摩擦帯電電荷量は大きい値となった。
【0036】
(比較例5)
導電糸を使用しなかった以外は実施例5と同様にしてワンピースを製造した。
摩擦帯電電荷量の測定結果を表1に示す。
導電糸を含有していないため、摩擦帯電電荷量は大きい値となった。
【0037】
(参考例)
参考例として、導電糸を縫い糸に使用した例を紹介する。
導電性芯鞘アクリル繊維(三菱ケミカル社製:ET10、繊度3.3dtex、繊維長38mm)100質量%を綿紡績工程の機台に投入して、メートル番手で2/32の紡績糸を製造した。前記導電性芯鞘アクリル繊維は、導電性酸化チタンを芯部に含み、繊維全体に対する導電性酸化チタンの含有率が12質量%である。
別途、ウール100%であり、糸番手はメートル番手で、2/32の紡績糸を使用し、12Gのゴム編組織の編地を作製した。
前記紡績糸を縫い糸とし、前記編地を使用して、Vネックのセーターを作製した。前記縫い糸を使用した縫製部分は、袖部、脇部、肩部、袖ぐり部及び襟部であった。
前記セーターを、ピンク色で製品染めを行い、該ピンク色のセーターを得た。
該セーターの摩擦帯電電荷量の測定を実施した結果、アクリル繊維の摩擦布では0.56μC/着、ナイロン繊維の摩擦では0.53μC/着であり、脱衣時の静電気放電による不快感は低減されるものであった。
しかし、淡色のピンク色で染色したため、身頃と襟が縫製されている部分である襟部に、導電繊維の色の影響が確認された。
【0038】