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特許7191340反射防止フィルム、偏光板およびディスプレイ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】反射防止フィルム、偏光板およびディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/111 20150101AFI20221212BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20221212BHJP
   B32B 27/16 20060101ALI20221212BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20221212BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20221212BHJP
   G02B 1/14 20150101ALI20221212BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20221212BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
G02B1/111
B32B7/023
B32B27/16 101
B32B27/18 Z
B32B27/30 D
G02B1/14
G02B5/30
G02F1/1335
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020519766
(86)(22)【出願日】2019-01-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-10
(86)【国際出願番号】 KR2019000602
(87)【国際公開番号】W WO2019146949
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2020-04-06
【審判番号】
【審判請求日】2021-12-24
(31)【優先権主張番号】10-2018-0009002
(32)【優先日】2018-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジンソク・ビョン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ヒョン・ソ
(72)【発明者】
【氏名】クワンソク・ソ
(72)【発明者】
【氏名】ヨンレ・チャン
【合議体】
【審判長】松波 由美子
【審判官】井口 猶二
【審判官】清水 康司
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-59368(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/10-1/18
G02B 5/30
G02F 1/1335
G02F 1/13363
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハードコート層;および
バインダー樹脂、および異なる粒径を有する2種以上の中空状無機粒子を含む低屈折層を含み、
動的光散乱法(Dynamic Light Scattering、DLS)で測定された前記異なる粒径を有する2種以上の中空状無機粒子は、少なくとも42nm~60nmの粒径を有する中空状無機粒子1種と、65nm~100nmの粒径を有する中空状無機粒子1種とを含み、
前記42nm~60nmの粒径を有する中空状無機粒子1種と、前記65nm~100nmの粒径を有する中空状無機粒子1種との間の重量比は、7:3~3:7であり、
前記バインダー樹脂は、光重合性化合物;および光反応性官能基を含むフッ素系化合物間の架橋重合体を含み、
前記異なる粒径を有する2種以上の中空状無機粒子は、含有量が、前記バインダー樹脂100重量部に対して、127.7~500重量部であり、
前記低屈折層は、屈折率が1.2~1.55であり、
前記ハードコート層は、光硬化性樹脂を含むバインダー樹脂;および前記バインダー樹脂に分散した有機微粒子を含む、反射防止フィルム。
【請求項2】
前記42nm~60nmの粒径を有する中空状無機粒子1種の平均粒径と、前記65nm~100nmの粒径を有する中空状無機粒子1種の平均粒径との間の平均粒径の差は、5~58nmである、請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項3】
前記反射防止フィルムは、380nm~780nm波長領域での平均反射率が3%未満である、請求項1または2に記載の反射防止フィルム。
【請求項4】
波長400nm~800nmで測定される厚さ方向のレターデーション(Rth)が3,000nm以上の光透過性基材をさらに含む、請求項1からのいずれか一項に記載の反射防止フィルム。
【請求項5】
請求項1からのいずれか一項に記載の反射防止フィルムを含む偏光板。
【請求項6】
請求項1からのいずれか一項に記載の反射防止フィルムを含むディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、2018年1月24日付の韓国特許出願第10-2018-0009002号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、反射防止フィルム、偏光板およびディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0003】
一般に、PDP、LCDなどの平板ディスプレイ装置には外部から入射する光の反射を最小化するための反射防止フィルムが装着される。光の反射を最小化するための方法には、樹脂に無機微粒子などのフィラーを分散させて基材フィルム上にコーティングし凹凸を付与する方法(anti-glare:AGコーティング);基材フィルム上に屈折率の異なる複数の層を形成させて光の干渉を利用する方法(anti-reflection:ARコーティング)、またはこれらを混用する方法などがある。
【0004】
そのうち、前記AGコーティングの場合、反射する光の絶対量は一般的なハードコートと同等の水準であるが、凹凸を通した光の散乱を利用して目に入る光の量を低減することによって低反射効果を得ることができる。しかし、前記AGコーティングは、表面の凹凸によって画面の鮮明度が低下するため、最近はARコーティングに関する多くの研究が行われている。
【0005】
前記ARコーティングを用いたフィルムとしては、基材フィルム上にハードコート層(高屈折率層)、低反射コーティング層などが積層された多層構造のものが商用化されている。しかし、既存のARコーティングを用いたフィルムは、外部からの擦りや摩擦などによって損傷した部分で反射率が上昇するという欠点がある。これにより、外部の影響によって損傷しても反射率が上昇しない反射防止フィルムを得るために多くの研究が行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、高い耐摩耗性および耐スクラッチ性などの機械的物性と優れた光学特性を有しながらも、外部の擦りや摩擦などによる反射率の上昇を効果的に抑制する反射防止フィルムを提供する。
【0007】
また、本発明は、前記反射防止フィルムを含み、高い画面の鮮明度を提供するディスプレイ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書では、ハードコート層;およびバインダー樹脂、および動的光散乱法(Dynamic Light Scattering、DLS)で測定された異なる粒径を有する2種以上の中空状無機粒子を含む低屈折層を含み、前記異なる粒径を有する2種以上の中空状無機粒子は、少なくとも40nm~60nmの粒径を有する中空状無機粒子1種と、65nm~100nmの粒径を有する中空状無機粒子1種とを含む、反射防止フィルムが提供される。
【0009】
また、本明細書では、前記反射防止フィルムを含む偏光板が提供される。
【0010】
さらに、本明細書では、前記反射防止フィルムを含むディスプレイ装置が提供される。
【0011】
以下、発明の具体的な実施形態による反射防止フィルムおよびこれを含むディスプレイ装置に関してより詳しく説明する。
【0012】
本明細書において、(メタ)アクリレート[(Meth)acrylate]は、アクリレート(acrylate)およびメタクリレート(Methacrylate)両方ともを含む意味である。
【0013】
また、光硬化性樹脂は、光の照射によって、例えば、可視光線または紫外線の照射によって重合される高分子樹脂を通称する。
【0014】
さらに、フッ素系化合物は、化合物のうちの少なくとも1つ以上のフッ素元素が含まれている化合物を意味する。
【0015】
前記一実施形態によれば、ハードコート層;およびバインダー樹脂、および動的光散乱法で測定された異なる粒径を有する2種以上の中空状無機粒子を含む低屈折層を含み、前記異なる粒径を有する2種以上の中空状無機粒子は、少なくとも40nm~60nmの粒径を有する中空状無機粒子1種と、65nm~100nmの粒径を有する中空状無機粒子1種とを含む、反射防止フィルムが提供される。
【0016】
本発明者らの研究の結果、動的光散乱法で測定された粒径が異なる2種以上の中空状無機粒子を低屈折層のバインダー樹脂に含む反射防止フィルムの場合、相対的に粒径が大きい中空状無機粒子の間に相対的に粒径が小さい中空状無機粒子が配置されて前記低屈折層に含まれている中空状無機粒子の配列が理想的になり、外部からの擦りや摩擦による反射率の上昇を防止できると同時に、耐摩耗性、耐スクラッチ性などの物性を確保することができ、さらに、前記反射防止フィルムがディスプレイ装置の画面の鮮明度を高めながらも優れた機械的物性を示し得るという点を、実験を通して確認して、発明を完成した。
【0017】
また、前記低屈折層に含まれる中空状無機粒子は、内部に中空部を有する微粒子で、このような中空部に屈折率が1.0の空気を含有しているため、約1.20~1.40の低い屈折率を有し得て、これを低屈折層に含む場合、低屈折層に含まれる中空状無機粒子の密度が高くても低屈折層の屈折率を低く制御することができ、これによる低反射率を図ることができる。
【0018】
さらに、前記40nm~60nmの粒径を有する中空状無機粒子1種と、65nm~100nmの粒径を有する中空状無機粒子1種との間の重量比は、7:3~3:7、6:4~4:6、または6.5:4.5~5:5であってもよい。前記重量比範囲を満足しなければ、中空状無機粒子の配列が乱れて外部の擦りや摩擦によるコーティング層の損傷で反射率が上昇する。
【0019】
前記一実施形態による反射防止フィルムの特性は、前記40nm~60nmの粒径を有する中空状無機粒子1種と、65nm~100nmの粒径を有する中空状無機粒子1種とを7:3~3:7の重量比で含む低屈折層の特性などによるもので、前記低屈折層に含まれている中空状無機粒子の配列が理想的になり、摩擦が作用する時、ストレスを最小化できて、外部からの擦りや摩擦が加えられて損傷しても損傷した部分の反射率が高くなることを抑制することができる。
【0020】
前記異なる粒径を有する2種以上の中空状無機粒子は、少なくとも40nm~60nm、42~60nm、または45~60nmの粒径を有する中空状無機粒子1種と、65nm~100nm、65nm~95nm、または65nm~90nmの粒径を有する中空状無機粒子1種を含むことができる。
【0021】
前記40nm~60nm、42nm~60nm、または45nm~60nmの粒径を有する中空状無機粒子1種の粒径が40nm未満であれば、前記低屈折層の屈折率が高くなって反射率が高くなりうる。
【0022】
前記65nm~100nm、65nm~95nm、または65nm~90nmの粒径を有する中空状無機粒子1種の粒径が100nmを超えると、低屈折層の強度が弱くなって耐スクラッチ性が低下する。
【0023】
前記中空状無機粒子の粒径は、通常知られた方法により確認可能であり、例えば、動的光散乱(Dynamic Light Scattering、DLS)などにより確認可能である。
【0024】
前記40nm~60nmの粒径を有する中空状無機粒子1種の平均粒径と、前記65nm~100nmの粒径を有する中空状無機粒子1種の平均粒径との間の平均粒径の差は、5nm~60nm、7nm~40nm、または8nm~30nmであってもよい。前記粒径の差が過度に小さいか、大きければ、前記低屈折層が外部の擦りや摩擦などによって損傷した部分の反射率が上昇しうる。
【0025】
前記バインダー樹脂100重量部に対して、前記2種以上の中空状無機粒子の含有量は、30~500重量部、50~450重量部、または60~400重量部であってもよい。前記含有量が30重量部未満であれば、前記低屈折層の反射率が高くなり、500重量部を超えると、バインダー樹脂の含有量の低下によって耐スクラッチ性が低下したり、外部の擦りや摩擦などによって損傷した部分の反射率が上昇しうる。
【0026】
一方、前記中空状無機粒子それぞれは、表面に(メタ)アクリレート基、エポキシド基、ビニル基(Vinyl)、およびチオール基(Thiol)からなる群より選択された1種以上の反応性官能基を含有することができる。前記中空状無機粒子それぞれが表面に上述した反応性官能基を含有することによって、前記低屈折層はより高い架橋度を有することができ、これにより、外部の擦りや摩擦などによって損傷した部分の反射率の上昇を効果的に抑制することができ、さらに、より向上した耐スクラッチ性および防汚性を確保することができる。
【0027】
また、前記中空状無機粒子は、その表面がフッ素系化合物でコーティングされる。前記中空状無機粒子の表面をフッ素系化合物でコーティングすれば、表面エネルギーをより低くし、これにより、前記低屈折層の耐久性や耐スクラッチ性をより高めることができる。
【0028】
前記中空状無機粒子の表面にフッ素系化合物をコーティングする方法として、通常知られた粒子コーティング方法や重合方法などを大きな制限なく使用可能であり、例えば、前記中空状無機粒子およびフッ素系化合物を水と触媒の存在下でゾル-ゲル反応させて、加水分解および縮合反応により前記中空状無機粒子の表面にフッ素系化合物を結合させることができる。
【0029】
前記中空状無機粒子の具体例としては、中空シリカ粒子が挙げられる。前記中空シリカは、有機溶媒により容易に分散するために、表面に置換された所定の官能基を含むことができる。前記中空シリカ粒子の表面に置換可能な有機官能基の例は大きく限定されるものではなく、例えば、(メタ)アクリレート基、ビニル基、ヒドロキシ基、アミン基、アリル基(allyl)、エポキシ基、ヒドロキシ基、イソシアネート基、アミン基、またはフッ素などが前記中空シリカの表面に置換されてもよい。
【0030】
前記バインダー樹脂は、光重合性化合物;および光反応性官能基を含むフッ素系化合物間の架橋重合体を含むことができる。前記低屈折層のバインダー樹脂に前記架橋重合体が含まれることによって、より低い反射率および向上した透光率を有することができ、同時に、外部の擦りや摩擦などによって損傷した部分の反射率の上昇を効果的に抑制することができる。
【0031】
前記光重合性化合物は、光が照射されると、例えば、可視光線または紫外線が照射されると、重合反応を起こす化合物であり、前記光重合性化合物は、(メタ)アクリレートまたはビニル基を含む単量体またはオリゴマーを含むことができる。具体的には、前記光重合性化合物は、(メタ)アクリレートまたはビニル基を1以上、または2以上、または3以上含む単量体またはオリゴマーを含むことができる。
【0032】
前記(メタ)アクリレートを含む単量体またはオリゴマーの具体例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサエチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、またはこれらの2種以上の混合物や、またはウレタン変性アクリレートオリゴマー、エポキシドアクリレートオリゴマー、エーテルアクリレートオリゴマー、デンドリティックアクリレートオリゴマー、またはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。この時、前記オリゴマーの分子量は、1,000~10,000のものが好ましい。
【0033】
前記ビニル基を含む単量体またはオリゴマーの具体例としては、ジビニルベンゼン、スチレン、またはパラメチルスチレンが挙げられる。
【0034】
前記フッ素系化合物には1以上の光反応性官能基が含まれるか、置換されてもよいし、前記光反応性官能基は、光の照射によって、例えば、可視光線または紫外線の照射によって重合反応に参加できる官能基を意味する。前記光反応性官能基は、光の照射によって重合反応に参加できると知られた多様な官能基を含むことができ、その具体例としては、(メタ)アクリレート基、エポキシド基、ビニル基(Vinyl)、またはチオール基(Thiol)が挙げられる。
【0035】
前記光反応性官能基を含むフッ素系化合物は、0.1~50重量%、0.3~40重量%、または0.5~30重量%のフッ素を含むことができる。前記フッ素の含有量が0.1重量%未満であれば、前記低屈折層の表面にフッ素成分が十分に配列できず表面スリップ性が低下し、50重量%超過であれば、耐スクラッチ特性が低下したり、外部の擦りや摩擦などによって損傷した部分の反射率が上昇しうる。
【0036】
前記光反応性官能基を含むフッ素系化合物は、ケイ素またはケイ素化合物をさらに含んでもよい。つまり、前記光反応性官能基を含むフッ素系化合物は、選択的に内部にケイ素またはケイ素化合物を含有することができ、具体的には、前記光反応性官能基を含むフッ素系化合物中のケイ素の含有量は、0.1~20重量%、0.5~18重量%、または1~15重量%であってもよい。前記光反応性官能基を含むフッ素系化合物に含まれるケイ素は、前記低屈折層にヘイズ(haze)が発生するのを防止して透明度を高める役割を果たすことができる。一方、前記光反応性官能基を含むフッ素系化合物中のケイ素の含有量が過度に大きくなると、前記低屈折層が有する耐アルカリ性が低下しうる。
【0037】
前記光反応性官能基を含むフッ素系化合物は、2,000~200,000、3,000~180,000、または4,000~170,000の重量平均分子量(GPC法により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量)を有することができる。前記光反応性官能基を含むフッ素系化合物の重量平均分子量が2,000未満であれば、前記低屈折層の表面にフッ素成分が十分に配列できず表面スリップ性が低下し、200,000超過であれば、前記低屈折層の耐スクラッチ特性が低下したり、外部の擦りや摩擦などによって損傷した部分の反射率が上昇し、同時に、前記光反応性官能基を含むフッ素系化合物と他の成分との間の相溶性が低くなって、前記低屈折層の製造時に均一な分散がされず、最終製品の内部構造または表面特性が低下しうる。
【0038】
具体的には、前記光反応性官能基を含むフッ素系化合物は、i)1つ以上の光反応性官能基が置換され、少なくとも1つの炭素に1以上のフッ素が置換された脂肪族化合物または脂肪族環化合物;ii)1以上の光反応性官能基で置換され、少なくとも1つの水素がフッ素に置換され、1つ以上の炭素がケイ素に置換されたヘテロ(hetero)脂肪族化合物またはヘテロ(hetero)脂肪族環化合物;iii)1つ以上の光反応性官能基が置換され、少なくとも1つのケイ素に1以上のフッ素が置換されたポリジアルキルシロキサン系高分子(例えば、ポリジメチルシロキサン系高分子);iv)1以上の光反応性官能基で置換され、少なくとも1つの水素がフッ素に置換されたポリエーテル化合物、または前記i)~iv)のうちの2以上の混合物またはこれらの共重合体が挙げられる。
【0039】
前記低屈折層は、屈折率が1.2~1.55、1.25~1.45、または1.3~1.43であってもよい。
【0040】
一方、前記低屈折層は、粒径が異なる2種以上の中空状無機粒子;光重合性化合物;および光反応性官能基を含むフッ素系化合物を含む光重合性コーティング組成物を所定の基材上に塗布し、塗布された結果物を光重合することによって得られる。前記基材の具体的な種類や厚さは大きく限定されるものではなく、ハードコート層または反射防止フィルムの製造に使用されると知られた基材を大きな制限なく使用可能である。
【0041】
一方、前記光重合性コーティング組成物を塗布するのに通常使用される方法および装置を格別の制限なく使用可能であり、例えば、Meyer barなどのバーコーティング法、グラビアコーティング法、2ロールリバース(2roll reverse)コーティング法、バキュームスロットダイ(vacuum slot die)コーティング法、2ロール(2roll)コーティング法などを使用することができる。
【0042】
前記光重合性コーティング組成物を光重合させる段階では、200~400nm波長の紫外線または可視光線を照射することができ、照射時の露光量は、100~4,000mJ/cmが好ましい。露光時間も特に限定されるものではなく、使用される露光装置、照射光線の波長または露光量に応じて適切に変化させることができる。また、前記光重合性コーティング組成物を光重合させる段階では、窒素大気条件を適用するために、窒素パージングなどを行うことができる。
【0043】
前記反射防止フィルムは、380nm~780nm波長領域での平均反射率が3%未満、2.5%以下、2%以下であってもよい。
【0044】
一方、前記ハードコート層は、通常知られたハードコート層を大きな制限なく使用可能である。前記ハードコート層の一例として、光硬化性樹脂を含むバインダー樹脂;および前記バインダー樹脂に分散した有機または無機微粒子を含むハードコート層であってもよい。
【0045】
上述した低屈折層は、前記ハードコート層の一面に形成され、また、前記低屈折層とハードコート層との間には追加的な機能層がさらに含まれてもよい。
【0046】
前記光硬化性樹脂は、先に言及したように、光の照射によって、例えば、可視光線または紫外線の照射によって重合された高分子樹脂であり、例えば、ウレタンアクリレートオリゴマー、エポキシドアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレート、およびポリエーテルアクリレートからなる反応性アクリレートオリゴマーの群;およびジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチレンプロピルトリアクリレート、プロポキシ化グリセロールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチルプロパンエトキシトリアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、プロポキシ化グリセロールトリアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、およびエチレングリコールジアクリレートからなる多官能性アクリレート単量体の群より選択される1種以上を含むことができる。
【0047】
前記有機または無機微粒子は、粒径が具体的に限定されるものではないが、例えば、有機微粒子は、1~10μmの粒径を有することができ、前記無機微粒子は、1nm~500nm、または1nm~300nmの粒径を有することができる。
【0048】
また、前記ハードコート層に含まれる有機または無機微粒子の具体例が限定されるものではないが、例えば、前記有機または無機微粒子は、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、エポキシド樹脂、およびナイロン樹脂からなる有機微粒子であるか、酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化ジルコニウム、および酸化亜鉛からなる無機微粒子であってもよい。
【0049】
一方、前記ハードコート層の他の例として、光硬化性樹脂のバインダー樹脂;および前記バインダー樹脂に分散した帯電防止剤を含むハードコート層が挙げられる。
【0050】
前記帯電防止剤は、4級アンモニウム塩化合物、導電性高分子、またはこれらの混合物であってもよい。ここで、前記4級アンモニウム塩化合物は、分子内に1つ以上の4級アンモニウム塩基を有する化合物であってもよいし、低分子型または高分子型を制限なく使用することができる。また、前記導電性高分子としては、低分子型または高分子型を制限なく使用することができ、その種類は、本発明の属する技術分野における通常のものでもよいので、特に制限されない。
【0051】
前記光重合性樹脂のバインダー樹脂;および前記バインダー樹脂に分散した帯電防止剤を含むハードコート層は、アルコキシシラン系オリゴマーおよび金属アルコキシド系オリゴマーからなる群より選択される1種以上の化合物をさらに含んでもよい。
【0052】
前記アルコキシシラン系化合物は、当業界における通常のものでもよいが、好ましくは、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、およびグリシドキシプロピルトリエトキシシランからなる群より選択される1種以上の化合物であってもよい。
【0053】
また、前記金属アルコキシド系オリゴマーは、金属アルコキシド系化合物および水を含む組成物のゾル-ゲル反応により製造することができる。前記ゾル-ゲル反応は、前述したアルコキシシラン系オリゴマーの製造方法に準ずる方法で行うことができる。ただし、前記金属アルコキシド系化合物は、水と急激に反応可能なため、前記金属アルコキシド系化合物を有機溶媒に希釈した後、水をゆっくりドロッピングする方法で前記ゾル-ゲル反応を行うことができる。この時、反応効率などを勘案して、水に対する金属アルコキシド化合物のモル比(金属イオン基準)は、3~170の範囲内で調節することが好ましい。
【0054】
ここで、前記金属アルコキシド系化合物は、チタニウムテトラ-イソプロポキシド、ジルコニウムイソプロポキシド、およびアルミニウムイソプロポキシドからなる群より選択される1種以上の化合物であってもよい。
【0055】
一方、前記反射防止フィルムは、前記ハードコート層の他の一面に結合された基材をさらに含んでもよい。前記基材は、光透過度が90%以上、ヘイズ1%以下の透明フィルムであってもよい。また、前記基材の素材は、トリアセチルセルロース、シクロオレフィン重合体、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートなどであってもよい。さらに、前記基材フィルムの厚さは、生産性などを考慮して、10~300μmであってもよいが、これに限定するものではない。
【0056】
より具体的には、前記反射防止フィルムは、波長400nm~800nmで測定される厚さ方向のレターデーション(Rth)が3,000nm以上、または5,000nm以上、または5,000nm~20,000nmの光透過性基材をさらに含んでもよい。
【0057】
このような光透過性基材の具体例としては、一軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムまたは二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが挙げられる。
【0058】
前記反射防止フィルムが前記波長400nm~800nmで測定される厚さ方向のレターデーション(Rth)が3,000nm以上、または5,000nm以上、または5,000nm~20,000nmの光透過性基材を含む場合、3000nm以下のレターデーションを使用する場合に比べて可視光線の干渉によるレインボー現象が緩和できる。
【0059】
厚さ方向のレターデーション(Rth)は、通常知られた測定方法および測定装置により確認することができる。例えば、厚さ方向のレターデーション(Rth)の測定装置としては、AXOMETRICS社製の商品名「アクソスキャン(AxoScan)」などが挙げられる。
【0060】
例えば、厚さ方向のレターデーション(Rth)の測定条件としては、前記光透過性基材フィルムに対して、屈折率(589nm)値を前記測定装置に入力した後、温度:25℃、湿度:40%の条件下、波長590nmの光を用いて、光透過性基材フィルムの厚さ方向のレターデーションを測定し、求められた厚さ方向のレターデーション測定値(測定装置の自動測定(自動計算)による測定値)に基づいて、フィルムの厚さ10μmあたりのレターデーション値に換算することによって求められる。さらに、測定試料の光透過性基材のサイズは、測定装置のステージの測光部(直径:約1cm)よりも大きければよいので、特に制限されないが、縦:76mm、横52mm、厚さ13μmの大きさにすることができる。
【0061】
また、厚さ方向のレターデーション(Rth)の測定に用いる「前記光透過性基材の屈折率(589nm)」の値は、レターデーションの測定対象になるフィルムを形成する光透過性基材と同じ種類の樹脂フィルムを含む未延伸フィルムを形成した後、このような未延伸フィルムを測定試料として用い(また、測定対象となるフィルムが未延伸フィルムの場合には、そのフィルムをそのまま測定試料として使用できる)、測定装置として屈折率測定装置(株式会社アタゴ製の商品名「NAR-1T SOLID」)を用い、589nmの光源を用い、23℃の温度条件で、測定試料の面内方向(厚さ方向とは垂直な方向)の589nmの光に対する屈折率を測定して求められる。
【0062】
発明の他の実施形態によれば、上述した一実施形態の反射防止フィルムを含む偏光板が提供される。
【0063】
前記偏光板は、偏光膜と、前記偏光膜の少なくとも一面に形成された反射防止フィルムとを含むことができる。
【0064】
前記偏光膜の材料および製造方法は特に限定せず、当技術分野で知られている通常の材料および製造方法を使用することができる。例えば、前記偏光膜は、ポリビニルアルコール系偏光膜であってもよい。
【0065】
前記偏光膜と反射防止フィルムとの間には保護フィルムが備えられる。
【0066】
前記保護フィルムの例が限定されるものではなく、例えば、COP(シクロオレフィンポリマー、cycloolefin polymer)系フィルム、アクリル系フィルム、TAC(トリアセチルセルロース、triacetylcellulose)系フィルム、COC(シクロオレフィンコポリマー、cycloolefin copolymer)系フィルム、PNB(ポリノルボルネン、polynorbornene)系フィルム、およびPET(ポリエチレンテレフタレート、polyethylene terephtalate)系フィルムのうちのいずれか1つ以上であってもよい。
【0067】
前記保護フィルムは、前記反射防止フィルムの製造時、単一コーティング層を形成するための基材がそのまま使用されてもよい。
【0068】
前記偏光膜と前記反射防止フィルムとは、水系接着剤または非水系接着剤などの接着剤によって貼り合わされる。
【0069】
発明のさらに他の実施形態によれば、上述した反射防止フィルムを含むディスプレイ装置が提供される。
【0070】
前記ディスプレイ装置の具体例が限定されるものではなく、例えば、液晶表示装置(Liquid Crystal Display)、プラズマディスプレイ装置、有機発光ダイオード装置(Organic Light Emitting Diodes)などの装置であってもよい。
【0071】
一つの例として、前記ディスプレイ装置は、互いに対向する一対の偏光板;前記一対の偏光板の間に順次に積層された薄膜トランジスタ、カラーフィルタおよび液晶セル;およびバックライトユニットを含む液晶ディスプレイ装置であってもよい。
【0072】
前記ディスプレイ装置において、前記反射防止フィルムは、ディスプレイパネルの観測者側またはバックライト側の最外殻の表面に備えられる。
【0073】
前記反射防止フィルムを含むディスプレイ装置は、一対の偏光板のうち相対的にバックライトユニットと距離の遠い偏光板の一面に反射防止フィルムが位置することができる。
【0074】
また、前記ディスプレイ装置は、ディスプレイパネルと、前記パネルの少なくとも一面に備えられた偏光膜と、前記偏光膜のパネルと接する反対側の面に備えられた反射防止フィルムとを含むことができる。
【発明の効果】
【0075】
本発明によれば、高い耐摩耗性および耐スクラッチ性などの機械的物性と優れた光学特性を有しながらも、外部の擦りや摩擦などによって損傷した部分の反射率の上昇を効果的に抑制する反射防止フィルムと、前記反射防止フィルムを含む偏光板と、前記反射防止フィルムを含むディスプレイ装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0076】
発明を下記の実施例でより詳しく説明する。ただし、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容が下記の実施例によって限定されるものではない。
【0077】
<製造例1~3:ハードコート層の製造>
製造例1
ペンタエリスリトールトリアクリレート30g、高分子量共重合体(BEAMSET371、Arakawa社、エポキシアクリレート(分子量40,000)2.5g、メチルエチルケトン20g、およびレベリング剤(Tego wet270)0.5gを均一に混合されるように混合した後に、屈折率が1.525のアクリル-スチレン共重合体樹脂微粒子(体積平均粒径:2μm、製造会社:Sekisui Plastic)2gを添加して、ハードコート組成物を製造した。
【0078】
このように得られたハードコート組成物をトリアセチルセルロースフィルムに#10mayer barでコーティングし、90℃で1分乾燥した。このような乾燥物に150mJ/cmの紫外線を照射して、4μmの厚さを有するハードコート層を製造した。
【0079】
製造例2
製造例1のハードコート組成物を厚さ80μm、レターデーション10000nmのPETフィルムに#10mayer barでコーティングし、60℃で1分乾燥した。このような乾燥物に150mJ/cmの紫外線を照射して、4μmの厚さを有するハードコート層を製造した。
【0080】
製造例3
KYOEISHA社の塩タイプの帯電防止ハードコート液(固形分50重量%、製品名:LJD-1000)をトリアセチルセルロースフィルムに#10mayer barでコーティングし、90℃で1分乾燥した後、150mJ/cmの紫外線を照射して、約5μmの厚さを有するハードコート層を製造した。
【0081】
<実施例1~6:反射防止フィルムの製造>
実施例1
ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)100重量部に対して、第1中空状シリカナノ粒子(DLS測定直径:58.4nm)35重量部、第2中空状シリカナノ粒子(DLS測定直径:67.2nm)75重量部、フッ素系化合物(RS-907、DIC)10重量部、開始剤(Irgacure127、Ciba社)12.1重量部を、MIBK(メチルイソブチルケトン、methyl isobutyl ketone)溶媒に固形分濃度2.9重量%となるように希釈して、光硬化性コーティング組成物を製造した。
【0082】
前記製造例1のハードコートフィルム上に、光硬化性コーティング組成物を#4mayer barで厚さが約110~120nmとなるようにコーティングし、60℃で1分間乾燥および硬化した。前記硬化時には、窒素パージング下、前記乾燥したコーティング物に252mJ/cmの紫外線を照射した。
【0083】
実施例2
ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)100重量部に対して、第1中空状シリカナノ粒子(DLS測定直径:55.1nm)47重量部、第2中空状シリカナノ粒子(DLS測定直径:72.3nm)75重量部、ソリッド状シリカナノ粒子(直径:約15nm)61重量部、フッ素系化合物(RS-923、DIC)33重量部、開始剤(Irgacure127、Ciba社)31重量部を、MIBK(メチルイソブチルケトン、methyl isobutyl ketone)溶媒に固形分濃度3.3重量%となるように希釈して、光硬化性コーティング組成物を製造した。
【0084】
実施例1の光硬化性コーティング組成物の代わりに前記光硬化性コーティング組成物を用いたことを除けば、実施例1と同様の方法で反射防止フィルムを製造した。
【0085】
実施例3
トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)100重量部に対して、第1中空状シリカナノ粒子(DLS測定直径:49.3nm)120.4重量部、第2中空状シリカナノ粒子(DLS測定直径:83.3nm)51.6重量部、ソリッド状シリカナノ粒子(直径:約18nm)147重量部、フッ素系化合物(RS-907、DIC)12重量部、開始剤(Irgacure127、Ciba社)13.5重量部を、MIBK(メチルイソブチルケトン、methyl isobutyl ketone)溶媒に固形分濃度2.7重量%となるように希釈して、光硬化性コーティング組成物を製造した。
【0086】
実施例1の光硬化性コーティング組成物の代わりに前記光硬化性コーティング組成物を用いたことを除けば、実施例1と同様の方法で反射防止フィルムを製造した。
【0087】
実施例4
トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)100重量部に対して、第1中空状シリカナノ粒子(DLS測定直径:43.5nm)56.8重量部、第2中空状シリカナノ粒子(DLS測定直径:85.8nm)85.2重量部、ソリッド状シリカナノ粒子(直径:約13nm)109重量部、フッ素系化合物(RS-907、DIC)11.2重量部、開始剤(Irgacure127、Ciba社)9.4重量部を、MIBK(メチルイソブチルケトン、methyl isobutyl ketone)溶媒に固形分濃度3.1重量%となるように希釈して、光硬化性コーティング組成物を製造した。
【0088】
前記製造例2のハードコートフィルム上に、光硬化性コーティング組成物を#4mayer barで厚さが約110~120nmとなるようにコーティングし、60℃で1分間乾燥および硬化した。前記硬化時には、窒素パージング下、前記乾燥したコーティング物に252mJ/cmの紫外線を照射した。
【0089】
実施例5
ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)100重量部に対して、第1中空状シリカナノ粒子(DLS測定直径:51.1nm)110.7重量部、第2中空状シリカナノ粒子(DLS測定直径:91.1nm)258.3重量部、ソリッド状シリカナノ粒子(直径:約12nm)67重量部、フッ素系化合物(RS-923、DIC)120重量部、開始剤(Irgacure907、Ciba社)33重量部を、MIBK(メチルイソブチルケトン、methyl isobutyl ketone)溶媒に固形分濃度2.8重量%となるように希釈して、光硬化性コーティング組成物を製造した。
【0090】
実施例4の光硬化性コーティング組成物の代わりに前記光硬化性コーティング組成物を用いたことを除けば、実施例4と同様の方法で反射防止フィルムを製造した。
【0091】
実施例6
トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)100重量部に対して、第1中空状シリカナノ粒子(DLS測定直径:55.7nm)112.2重量部、第2中空状シリカナノ粒子(DLS測定直径:86.1nm)74.8重量部、ソリッド状シリカナノ粒子(直径:約18nm、C784)53重量部、フッ素系化合物(RS-907、DIC)75重量部、開始剤(Irgacure127、Ciba社)16.9重量部を、MIBK(メチルイソブチルケトン、methyl isobutyl ketone)溶媒に固形分濃度3.0重量%となるように希釈して、光硬化性コーティング組成物を製造した。
【0092】
実施例4の光硬化性コーティング組成物の代わりに前記光硬化性コーティング組成物を用いたことを除けば、実施例4と同様の方法で反射防止フィルムを製造した。
【0093】
<比較例1~5:反射防止フィルムの製造>
比較例1
第1および第2中空状シリカナノ粒子の代わりにDLS測定直径が67.2nmの中空状シリカナノ粒子110重量部のみを用いたことを除けば、実施例1と同様の方法で反射防止フィルムを製造した。
【0094】
比較例2
ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)100重量部に対して、第1中空状シリカナノ粒子(DLS測定直径:55.1nm)12.2重量部、第2中空状シリカナノ粒子(DLS測定直径:72.3nm)109.8重量部、ソリッド状シリカナノ粒子(直径:約15nm)61重量部、フッ素系化合物(RS-923、DIC)33重量部、開始剤(Irgacure127、Ciba社)31重量部を、MIBK(メチルイソブチルケトン、methyl isobutyl ketone)溶媒に固形分濃度3.3重量%となるように希釈して、光硬化性コーティング組成物を製造した。
【0095】
前記製造例1のハードコートフィルム上に、光硬化性コーティング組成物を#4mayer barで厚さが約110~120nmとなるようにコーティングし、60℃で1分間乾燥および硬化した。前記硬化時には、窒素パージング下、前記乾燥したコーティング物に252mJ/cmの紫外線を照射した。
【0096】
比較例3
トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)100重量部に対して、第1中空状シリカナノ粒子(DLS測定直径:49.3nm)137.6重量部、第2中空状シリカナノ粒子(DLS測定直径:83.3nm)34.4重量部、ソリッド状シリカナノ粒子(直径:約18nm)147重量部、フッ素系化合物(RS-907、DIC)12重量部、開始剤(Irgacure127、Ciba社)13.5重量部を、MIBK(メチルイソブチルケトン、methyl isobutyl ketone)溶媒に固形分濃度2.7重量%となるように希釈して、光硬化性コーティング組成物を製造した。
【0097】
比較例2の光硬化性コーティング組成物の代わりに前記光硬化性コーティング組成物を用いたことを除けば、比較例2と同様の方法で反射防止フィルムを製造した。
【0098】
比較例4
第1および第2中空状シリカナノ粒子の代わりにDLS測定直径が58.4nmの中空状シリカナノ粒子142重量部のみを用いたことを除けば、実施例4と同様の方法で反射防止フィルムを製造した。
【0099】
比較例5
第1および第2中空状シリカナノ粒子の代わりにDLS測定直径が83.3nmの中空状シリカナノ粒子142重量部のみを用いたことを除けば、実施例4と同様の方法で反射防止フィルムを製造した。
【0100】
評価
1.動的光散乱法を利用した中空シリカの粒径の測定
中空シリカ粒子がMIBKに0.1wt%の濃度となるように希釈した後、Otsuka Electronics社のELSZ-2000装備を用いて、次の条件で粒径を測定する。希釈条件で希釈溶媒はMIBKに設定する。
【0101】
-測定条件
Upper dust limit(%):100
Dust Limit:10
Optimum Intensity:80000
Maximum Intensity:100000
Minimum Intensity:3000
Pinhole(μm):50
【0102】
2.摩擦による反射率上昇の測定
Briwax社のスチールウール(#0000)に500gの荷重をかけて27rpmの速度で10回往復して、実施例および比較例で得られた反射防止フィルムの表面の摩擦(rubbing)試験を進行させた。摩擦試験前後の平均反射率の測定により反射率上昇量(変化量)を確認した。反射率の測定は次の通りである。前記実施例および比較例で得られた反射防止フィルムの摩擦試験を経た後、フィルムの裏面を暗色処理した後に、Solidspec3700(SHIMADZU)のReflectanceモードを用いて、380nm~780nm波長領域での平均反射率を測定した。変化量測定のために、摩擦試験前の平均反射率も測定し、その結果を下記表1に示した。
【0103】
3.耐スクラッチ性の測定
スチールウール(#0000)に荷重をかけて27rpmの速度で10回往復して、実施例および比較例で得られた反射防止フィルムの表面を擦った。肉眼で観察される1cm以下のスクラッチ1個以下が観察される最大荷重を測定し、その結果を下記表1に示した。
【0104】
4.防汚性の測定
実施例および比較例で得られた反射防止フィルムの表面に黒い油性ペンで5cmの長さの直線を描いて、無塵布を用いて擦った時の消される回数を確認して防汚性を測定し、その結果を下記表1に示した。
【0105】
<測定基準>
O:消される時点が10回以下
△:消される時点が11回~20回
X:消される時点が20回超過
【0106】
【表1】
【0107】
前記表3によれば、実施例1~6の反射防止フィルムは、比較例1~5の反射防止フィルムに比べて摩擦による反射率の上昇を抑制する効果に優れていることを確認した。