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特許7191350接合体、基板、接合体の製造方法、及び、基板の製造方法
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  • 特許-接合体、基板、接合体の製造方法、及び、基板の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】接合体、基板、接合体の製造方法、及び、基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/08 20060101AFI20221212BHJP
   B32B 15/082 20060101ALI20221212BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
B32B15/08 A
B32B15/082 B
H05K1/03 610H
H05K1/03 630H
H05K1/03 610M
H05K1/03 610N
H05K1/03 610L
【請求項の数】 34
(21)【出願番号】P 2022054169
(22)【出願日】2022-03-29
(65)【公開番号】P2022169444
(43)【公開日】2022-11-09
【審査請求日】2022-03-29
(31)【優先権主張番号】P 2021074939
(32)【優先日】2021-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】長藤 圭介
(72)【発明者】
【氏名】青野 航大
(72)【発明者】
【氏名】蛯原 悠介
(72)【発明者】
【氏名】中尾 政之
(72)【発明者】
【氏名】上田 有希
(72)【発明者】
【氏名】奥野 晋吾
(72)【発明者】
【氏名】小森 洋和
(72)【発明者】
【氏名】山内 昭佳
(72)【発明者】
【氏名】岸川 洋介
【審査官】増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/230568(WO,A1)
【文献】特開2010-125653(JP,A)
【文献】特開2008-207547(JP,A)
【文献】特開昭63-063773(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
30~200℃における線膨張係数50ppm/℃以上、かつ厚み5~100μmの樹脂(1)の一つの面に、厚み5~50μmの金属が接合されており、
曲率が-40~40/mであり、
前記金属の厚み/前記樹脂(1)の厚みが0.1~1である接合体。
【請求項2】
前記樹脂(1)が、フッ素樹脂を含む請求項1記載の接合体。
【請求項3】
前記樹脂(1)が、実質的に前記フッ素樹脂のみで構成されている請求項2記載の接合体。
【請求項4】
前記フッ素樹脂の融点が、320℃以下である請求項2又は3記載の接合体。
【請求項5】
前記金属が、銅である請求項1~4のいずれかに記載の接合体。
【請求項6】
前記銅が、圧延銅又は電解銅である請求項5記載の接合体。
【請求項7】
前記樹脂(1)の前記金属側の熱影響層が前記樹脂(1)の厚みに対して80%以下である請求項1~のいずれかに記載の接合体。
【請求項8】
前記樹脂(1)と前記金属との接合面は、90度剥離試験で測定される剥離強度が3N/cm以上、又は、90度剥離試験時に母材破壊となる請求項1~のいずれかに記載の接合体。
【請求項9】
前記金属は、前記樹脂(1)と接合される側の表面粗度Rzが2μm以下である請求項1~のいずれかに記載の接合体。
【請求項10】
基板用誘電材料である請求項1~のいずれかに記載の接合体。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載の接合体に、更に樹脂(2)が積層された基板。
【請求項12】
前記樹脂(2)が、熱硬化性樹脂である請求項11記載の基板。
【請求項13】
前記熱硬化性樹脂が、ポリイミド、変性ポリイミド、エポキシ樹脂、熱硬化性変性ポリフェニレンエーテルからなる群より選択される少なくとも1種である請求項12記載の基板。
【請求項14】
前記樹脂(2)が、液晶ポリマー、ポリフェニレンエーテル、熱可塑性変性ポリフェニレンエーテル、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレンからなる群より選択される少なくとも1種である請求項11記載の基板。
【請求項15】
プリント基板、積層回路基板又は高周波基板である請求項1114のいずれかに記載の基板。
【請求項16】
厚み5~100μm、30~200℃における線膨張係数50ppm/℃以上の樹脂(1)と、厚み5~50μmの金属とを積層し、前記金属を介して前記樹脂(1)を加熱する加熱処理により、前記樹脂(1)と前記金属とを接合させ、曲率が-40~40/mである接合体を得る工程を含む接合体の製造方法。
【請求項17】
前記加熱処理が、前記金属への波長200~10000nmの光の照射である請求項16記載の接合体の製造方法。
【請求項18】
前記光が、前記金属における吸収率が5%以上、前記樹脂(1)における吸収率が30%以下であり、かつ前記金属における吸収率>前記樹脂(1)における吸収率である請求項17記載の接合体の製造方法。
【請求項19】
前記樹脂(1)の前記金属と接合される側に接着性表面処理を施す工程を含む請求項16~18のいずれかに記載の接合体の製造方法。
【請求項20】
前記接合体が、基板用誘電材料である請求項1619のいずれかに記載の接合体の製造方法。
【請求項21】
請求項1620のいずれかに記載の製造方法により得られた接合体と、樹脂(2)とを接合する工程を含む基板の製造方法。
【請求項22】
前記樹脂(2)が、熱硬化性樹脂である請求項21記載の基板の製造方法。
【請求項23】
前記熱硬化性樹脂が、ポリイミド、変性ポリイミド、エポキシ樹脂、熱硬化性変性ポリフェニレンエーテルからなる群より選択される少なくとも1種である請求項22記載の基板の製造方法。
【請求項24】
前記樹脂(2)が、液晶ポリマー、ポリフェニレンエーテル、熱可塑性変性ポリフェニレンエーテル、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレンからなる群より選択される少なくとも1種である請求項21記載の基板の製造方法。
【請求項25】
前記基板が、プリント基板、積層回路基板又は高周波基板である請求項2124のいずれかに記載の基板の製造方法。
【請求項26】
30~200℃における線膨張係数50ppm/℃以上、かつ厚み5~100μmの樹脂(1)の一つの面に、厚み5~50μmの金属が接合されており、
前記樹脂(1)の前記金属側の熱影響層が前記樹脂(1)の厚みに対して80%以下である接合体。
【請求項27】
曲率が-40~40/mである請求項26記載の接合体。
【請求項28】
前記樹脂(1)が、フッ素樹脂を含む請求項26又は27記載の接合体。
【請求項29】
前記樹脂(1)が、実質的に前記フッ素樹脂のみで構成されている請求項28記載の接合体。
【請求項30】
前記金属が、銅である請求項2629のいずれかに記載の接合体。
【請求項31】
前記樹脂(1)と前記金属との接合面は、90度剥離試験で測定される剥離強度が3N/cm以上、又は、90度剥離試験時に母材破壊となる請求項2630のいずれかに記載の接合体。
【請求項32】
基板用誘電材料である請求項2631のいずれかに記載の接合体。
【請求項33】
請求項2632のいずれかに記載の接合体に、更に樹脂(2)が積層された基板。
【請求項34】
前記樹脂(2)が、熱硬化性樹脂である請求項33記載の基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、接合体、基板、接合体の製造方法、及び、基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気機器、電子機器、通信機器等の様々な分野で、樹脂と金属との接合体が使用されている。
【0003】
特許文献1~4には、レーザの照射によって樹脂と金属とが接合された接合体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-207540号公報
【文献】国際公開第2020/067022号
【文献】特開2019-123153号公報
【文献】特開2011-235570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、形状安定性に優れた新規な接合体、基板、接合体の製造方法、及び基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、30~200℃における線膨張係数17ppm/℃以上、かつ厚み5~100μmの樹脂(1)の一つの面に、厚み5~50μmの金属が接合されており、曲率が-40~40/mである接合体(以下、「本開示の第一の接合体」ともいう。)に関する。
【0007】
上記樹脂(1)が、フッ素樹脂を含むことが好ましい。
【0008】
上記樹脂(1)が、実質的にフッ素樹脂のみで構成されていることが好ましい。
【0009】
上記フッ素樹脂の融点が、320℃以下であることが好ましい。
【0010】
上記金属が、銅であることが好ましい。
【0011】
上記銅が、圧延銅又は電解銅であることが好ましい。
【0012】
上記金属の厚み/上記樹脂(1)の厚みが、0.1~1であることが好ましい。
【0013】
本開示の第一の接合体は、上記金属における吸収率が5%以上、上記樹脂(1)における吸収率が30%以下であり、かつ上記金属における吸収率>上記樹脂(1)における吸収率である光を用いて接合されたものであることが好ましい。
【0014】
上記樹脂(1)と上記金属との接合面は、90度剥離試験で測定される剥離強度が3N/cm以上、又は、90度剥離試験時に母材破壊となることが好ましい。
【0015】
上記金属は、上記樹脂(1)と接合される側の表面粗度Rzが2μm以下であることが好ましい。
【0016】
上記樹脂(1)は、上記金属と接合される側に接着性表面処理が施されていることが好ましい。
【0017】
本開示の第一の接合体が、基板用誘電材料であることが好ましい。
【0018】
本開示は、本開示の第一の接合体に、更に樹脂(2)が積層された基板。(以下、「本開示の第一の基板」ともいう。)にも関する。
【0019】
上記樹脂(2)が、熱硬化性樹脂であることが好ましい。
【0020】
熱硬化性樹脂が、ポリイミド、変性ポリイミド、エポキシ樹脂、熱硬化性変性ポリフェニレンエーテルからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0021】
上記樹脂(2)が、液晶ポリマー、ポリフェニレンエーテル、熱可塑性変性ポリフェニレンエーテル、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレンからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0022】
本開示の第一の基板が、プリント基板、積層回路基板又は高周波基板であることが好ましい。
【0023】
本開示は、厚み5~100μm、30~200℃における線膨張係数17ppm/℃以上の樹脂(1)と、厚み5~50μmの金属とを積層し、上記金属を介して上記樹脂(1)を加熱する加熱処理により、上記樹脂(1)と上記金属とを接合させ、曲率が-40~40/mである接合体を得る工程を含む接合体の製造方法にも関する。
【0024】
上記加熱処理が、上記金属への光の照射であることが好ましい。
【0025】
上記光が、上記金属における吸収率が5%以上、上記樹脂(1)における吸収率が30%以下であり、かつ上記金属における吸収率>上記樹脂(1)における吸収率であることが好ましい。
【0026】
上記接合体が、基板用誘電材料であることが好ましい。
【0027】
本開示は、本開示の接合体の製造方法により得られた接合体と、樹脂(2)とを接合する工程を含む基板の製造方法にも関する。
【0028】
上記樹脂(2)が、熱硬化性樹脂であることが好ましい。
【0029】
上記熱硬化性樹脂が、ポリイミド、変性ポリイミド、エポキシ樹脂、熱硬化性変性ポリフェニレンエーテルからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0030】
上記樹脂(2)が、液晶ポリマー、ポリフェニレンエーテル、熱可塑性変性ポリフェニレンエーテル、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレンからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0031】
上記基板が、プリント基板、積層回路基板又は高周波基板であることが好ましい。
【0032】
本開示は、30~200℃における線膨張係数17ppm/℃以上、かつ厚み5~100μmの樹脂(1)の一つの面に、厚み5~50μmの金属が接合されており、上記樹脂(1)の上記金属側の熱影響層が上記樹脂(1)の厚みに対して80%以下である接合体(以下、「本開示の第二の接合体」ともいう。)にも関する。
【0033】
本開示の第二の接合体は、曲率が-40~40/mであることが好ましい。
【0034】
上記樹脂(1)が、フッ素樹脂を含むことが好ましい。
【0035】
上記樹脂(1)が、実質的に上記フッ素樹脂のみで構成されていることが好ましい。
【0036】
上記金属が、銅であることが好ましい。
【0037】
上記樹脂(1)と金属との接合面は、90度剥離試験で測定される剥離強度が3N/cm以上、又は、90度剥離試験時に母材破壊となることが好ましい。
【0038】
本開示の第二の接合体が、基板用誘電材料であることが好ましい。
【0039】
本開示は、本開示の第二の接合体に、更に樹脂(2)が積層された基板(以下、「本開示の第二の基板」ともいう。)にも関する。
【0040】
上記樹脂(2)が、熱硬化性樹脂であることが好ましい。
【発明の効果】
【0041】
本開示によれば、形状安定性に優れた新規な接合体、基板、接合体の製造方法、及び基板の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】基板用積層体の一例を示す断面図である。
図2図1の基板用積層体の製造方法の変形例を示す模式図である。
図3図2の片面接合体の製造方法の一例を示す模式図である。
図4】反りが発生した片面接合体の写真である。
図5】樹脂(1)側から光を照射する態様の一例を示す模式図である。
図6図5中の光の照射部分(点線部分)の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1は、基板用積層体の一例を示す模式図である。
図1に示すように、基板用積層体10は、エポキシ樹脂等で構成されたコア層11の上下に、フッ素樹脂12、金属13がこの順に配置された構造を有する。コア層11及びフッ素樹脂12は、基板の絶縁層である。
【0044】
このような基板用積層体10を製造する場合、コア層11、フッ素樹脂12及び金属13を積層した後、プレス機等で加熱及び加圧して、これらを接合(接着)させる方法が考えられる。しかしながら、コア層11を構成する樹脂と、フッ素樹脂12とは、接合に必要な加熱温度が異なることがある。例えば、エポキシ樹脂の加熱温度は180℃程度であるのに対し、フッ素樹脂の加熱温度は320℃程度である。この場合、コア層11、フッ素樹脂12及び金属13を一工程で接合させ、基板用積層体10を得ることは困難である。
【0045】
このような問題を解消する方法について、本発明者らが検討したところ、以下の製造方法に想到した。図2は、図1の基板用積層体の製造方法の変形例を示す模式図である。
図2の製造方法では、フッ素樹脂12の片面に金属13が接合された片面接合体14の一対でコア層11を挟持し、プレス機等で加熱及び加圧する。これにより、フッ素樹脂12とコア層11とを接合させることで、基板用積層体10を得る。フッ素樹脂12と金属13とは既に接合しているため、この場合の加熱は、コア層11の樹脂の加熱温度で実施すればよい。よって、片面接合体14があれば、図2の製造方法により、基板用積層体10を一工程で得ることが可能となる。
【0046】
図2の製造方法では、片面接合体14を予め準備することが必要である。図3は、図2の片面接合体の製造方法の一例を示す模式図である。
片面接合体14を製造する場合、図3に示すように、フッ素樹脂12及び金属13を積層した後、プレス機等で加熱及び加圧する方法が考えられる。このとき、加熱による熱膨張や熱収縮でフッ素樹脂12が変形するが、基板用途において、金属13には、通常、薄い金属箔が使用されるため、フッ素樹脂12の変形に金属13が追随し、片面接合体14に反りが発生する。
【0047】
図4は、反りが発生した片面接合体の写真である。このような状態では、片面接合体14をコア層11に積層することは困難である。そのため、図2の製造方法を実際に行うことは容易ではない。
【0048】
本発明者らが上記問題について検討した結果、樹脂の厚み及び線膨張係数と、金属の厚みと、これらが接合した状態での曲率とが特定の範囲内である場合に、上記問題が解消することを見出し、本開示の接合体に到達した。
【0049】
以下、本開示を具体的に説明する。
【0050】
(第一の接合体)
本開示の第一の接合体は、30~200℃における線膨張係数17ppm/℃以上、かつ厚み5~100μmの樹脂(1)の一つの面に、厚み5~50μmの金属が接合されており、曲率が-40~40/mである。
【0051】
本開示の第一の接合体は、樹脂(1)及び金属が接合された状態でも、曲率が-40~40/mであるため、他の層への積層が容易である。そのため、本開示の第一の接合体を用いることで、基板用積層体を一工程で得られる図2の製造方法を容易に実現できる。
【0052】
樹脂(1)の厚みは、5~100μmであればよいが、好ましくは10μm以上、より好ましくは12μm以上であり、また、好ましくは90μm以下、より好ましくは80μm以下である。
なお、樹脂(1)は、厚みが略一定のシート状であることが好ましいが、樹脂(1)に厚みが異なる部分が存在する場合、上記厚みは、樹脂(1)を長手方向に等間隔に10分割した地点の厚みを測定し、それらを平均したものとする。
【0053】
樹脂(1)の線膨張係数は、30~200℃において、17ppm/℃以上であればよいが、好ましくは50ppm/℃以上、より好ましくは100ppm/℃以上であり、また、好ましくは500ppm/℃以下、より好ましくは300ppm/℃以下である。
なお、樹脂(1)の線膨張係数は、熱機械分析(TMA:Thermomechanical Analysis)により測定した値である。
【0054】
樹脂(1)の比誘電率と誘電正接は特に限定されないが、25℃、周波数10GHzにおいて、比誘電率が4.5以下であることが好ましく、より好ましくは4.0以下であり、更に好ましくは3.5以下であり、特に好ましくは2.5以下である。また誘電正接が0.01以下であることが好ましく、より好ましくは0.008以下であり、更に好ましくは0.005以下である。
なお、樹脂(1)の比誘電率及び誘電正接は、スプリットシリンダ共振器法により求めた値である。
【0055】
樹脂(1)としては、フッ素樹脂、液晶ポリマー、ポリイミド、モディファイドポリイミド、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン等を使用することができる。絶縁性等の電気特性の観点から、フッ素樹脂が好ましく、溶融成形可能なフッ素樹脂がより好ましい。
【0056】
フッ素樹脂としては、テトラフルオロエチレン[TFE]の重合体や、TFEと共重合可能な共重合モノマーとの共重合体等を用いることができる。
【0057】
共重合モノマーとしては、TFEとの共重合が可能なものであれば特に限定されず、例えば、ヘキサフルオロプロピレン[HFP]、フルオロアルキルビニルエーテル、フルオロアルキルエチレン、一般式(100):CH=CFRf101(式中、Rf101は炭素数1~12の直鎖又は分岐したフルオロアルキル基)で表されるフルオロモノマー、フルオロアルキルアリルエーテル等が挙げられる。
【0058】
フルオロアルキルビニルエーテルとしては、例えば、
一般式(110):CF=CF-ORf111
(式中、Rf111は、パーフルオロ有機基を表す。)で表されるフルオロモノマー、
一般式(120):CF=CF-OCH-Rf121
(式中、Rf121は、炭素数1~5のパーフルオロアルキル基)で表されるフルオロモノマー、
一般式(130):CF=CFOCFORf131
(式中、Rf131は炭素数1~6の直鎖又は分岐状パーフルオロアルキル基、炭素数5~6の環式パーフルオロアルキル基、1~3個の酸素原子を含む炭素数2~6の直鎖又は分岐状パーフルオロオキシアルキル基である。)で表されるフルオロモノマー、
一般式(140):CF=CFO(CFCF(Y141)O)(CF
(式中、Y141はフッ素原子又はトリフルオロメチル基を表す。mは1~4の整数である。nは1~4の整数である。)で表されるフルオロモノマー、及び、
一般式(150):CF=CF-O-(CFCFY151-O)-(CFY152-A151
(式中、Y151は、フッ素原子、塩素原子、-SOF基又はパーフルオロアルキル基を表す。パーフルオロアルキル基は、エーテル性の酸素及び-SOF基を含んでもよい。nは、0~3の整数を表す。n個のY151は、同一であってもよいし異なっていてもよい。Y152は、フッ素原子、塩素原子又は-SOF基を表す。mは、1~5の整数を表す。m個のY152は、同一であってもよいし異なっていてもよい。A151は、-SO151、-COZ151又は-POZ152153を表す。X151は、F、Cl、Br、I、-OR151又は-NR152153を表す。Z151、Z152及びZ153は、同一又は異なって、-NR154155又は-OR156を表す。R151、R152、R153、R154、R155及びR156は、同一又は異なって、H、アンモニウム、アルカリ金属、フッ素原子を含んでも良いアルキル基、アリール基、若しくはスルホニル含有基を表す。)で表されるフルオロモノマー
からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0059】
本明細書において、「パーフルオロ有機基」とは、炭素原子に結合する水素原子が全てフッ素原子に置換されてなる有機基を意味する。パーフルオロ有機基は、エーテル酸素を有していてもよい。
【0060】
一般式(110)で表されるフルオロモノマーとしては、Rf111が炭素数1~10のパーフルオロアルキル基であるフルオロモノマーが挙げられる。パーフルオロアルキル基の炭素数は、好ましくは1~5である。
【0061】
一般式(110)におけるパーフルオロ有機基としては、例えば、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基等が挙げられる。
一般式(110)で表されるフルオロモノマーとしては、更に、一般式(110)において、Rf111が炭素数4~9のパーフルオロ(アルコキシアルキル)基であるもの、Rf111が下記式:
【0062】
【化1】
【0063】
(式中、mは、0又は1~4の整数を表す。)で表される基であるもの、Rf111が下記式:
【0064】
【化2】
【0065】
(式中、nは、1~4の整数を表す。)で表される基であるもの等が挙げられる。
【0066】
一般式(110)で表されるフルオロモノマーとしては、なかでも、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)[PAVE]が好ましく、
一般式(160):CF=CF-ORf161
(式中、Rf161は、炭素数1~10のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるフルオロモノマーがより好ましい。Rf161は、炭素数が1~5のパーフルオロアルキル基であることが好ましい。
【0067】
フルオロアルキルビニルエーテルとしては、一般式(160)、(130)及び(140)で表されるフルオロモノマーからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0068】
一般式(160)で表されるフルオロモノマー(PAVE)としては、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)[PMVE]、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)[PEVE]、及び、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)[PPVE]からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、及び、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。
【0069】
一般式(130)で表されるフルオロモノマーとしては、CF=CFOCFOCF、CF=CFOCFOCFCF、及び、CF=CFOCFOCFCFOCFからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0070】
一般式(140)で表されるフルオロモノマーとしては、CF=CFOCFCF(CF)O(CFF、CF=CFO(CFCF(CF)O)(CFF、及び、CF=CFO(CFCF(CF)O)(CFFからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0071】
一般式(150)で表されるフルオロモノマーとしては、CF=CFOCFCFSOF、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFSOF、CF=CFOCFCF(CFCFSOF)OCFCFSOF及びCF=CFOCFCF(SOF)からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0072】
一般式(100)で表されるフルオロモノマーとしては、Rf101が直鎖のフルオロアルキル基であるフルオロモノマーが好ましく、Rf101が直鎖のパーフルオロアルキル基であるフルオロモノマーがより好ましい。Rf101の炭素数は1~6であることが好ましい。一般式(100)で表されるフルオロモノマーとしては、CH=CFCF、CH=CFCFCF、CH=CFCFCFCF、CH=CFCFCFCFH、CH=CFCFCFCFCF、CHF=CHCF(E体)、CHF=CHCF(Z体)等が挙げられ、なかでも、CH=CFCFで示される2,3,3,3-テトラフルオロプロピレンが好ましい。
【0073】
フルオロアルキルエチレンとしては、
一般式(170):CH=CH-(CF-X171
(式中、X171はH又はFであり、nは3~10の整数である。)で表されるフルオロアルキルエチレンが好ましく、CH=CH-C、及び、CH=CH-C13からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。
【0074】
フルオロアルキルアリルエーテルとしては、例えば、
一般式(180):CF=CF-CF-ORf111
(式中、Rf111は、パーフルオロ有機基を表す。)で表されるフルオロモノマーが挙げられる。
【0075】
一般式(180)のRf111は、一般式(110)のRf111と同じである。Rf111としては、炭素数1~10のパーフルオロアルキル基または炭素数1~10のパーフルオロアルコキシアルキル基が好ましい。一般式(180)で表されるフルオロアルキルアリルエーテルとしては、CF=CF-CF-O-CF、CF=CF-CF-O-C、CF=CF-CF-O-C、及び、CF=CF-CF-O-Cからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、CF=CF-CF-O-C、CF=CF-CF-O-C、及び、CF=CF-CF-O-Cからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、CF=CF-CF-O-CFCFCFが更に好ましい。
【0076】
共重合モノマーとしては、なかでも、フルオロアルキルアリルエーテル、PAVE、及び、HFPからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、フッ素樹脂材料の半田加工時の変形を抑制できる点で、PAVEがより好ましい。
【0077】
フッ素樹脂の好ましい形態の一つとして、TFE単位及びPAVE単位を含むTFE/PAVE共重合体[PFA]が挙げられる。フッ素樹脂がPFAである場合、フルオロアルキルアリルエーテル単位又はPAVE単位を全重合単位に対して0.1~12質量%含むことが好ましい。フルオロアルキルアリルエーテル単位又はPAVE単位の量は、全重合単位に対して0.3質量%以上であることがより好ましく、0.7質量%以上であることが更に好ましく、1.0質量%以上であることが更により好ましく、1.1質量%以上であることが特に好ましく、また、8.0質量%以下であることがより好ましく、6.5質量%以下であることが更に好ましく、6.0質量%以下であることが特に好ましい。
なお、フルオロアルキルアリルエーテル単位、PAVE単位の量は、19F-NMR法により測定する。後述のTFE単位、HFP単位についても同様である。
【0078】
フッ素樹脂の好ましい形態の一つとして、TFE単位及びHFP単位を含むTFE/HFP共重合体[FEP]が挙げられる。フッ素樹脂がFEPである場合、TFE単位とHFP単位との質量比(TFE/HFP)が70~99/1~30(質量%)であることが好ましい。上記質量比(TFE/HFP)は、85~95/5~15(質量%)であることがより好ましい。
FEPは、HFP単位を全単量体単位の1質量%以上、好ましくは1.1質量%以上含む。
【0079】
FEPは、TFE単位及びHFP単位とともに、フルオロアルキルアリルエーテル単位又はパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)[PAVE]単位を含むことが好ましい。
FEPに含まれるフルオロアルキルアリルエーテル単位、PAVE単位としては、上述したPFAを構成するフルオロアルキルアリルエーテル単位、PAVE単位と同様のものを挙げることができる。なかでも、PPVEが好ましい。
上述したPFAは、HFP単位を含まないので、その点で、PAVE単位を含むFEPとは異なる。
【0080】
FEPが、TFE単位と、HFP単位と、フルオロアルキルアリルエーテル単位又はPAVE単位とを含む場合、質量比(TFE/HFP/フルオロアルキルアリルエーテル又はPAVE)が70~99.8/0.1~25/0.1~25(質量%)であることが好ましい。上記範囲内であると、耐熱性、耐薬品性に優れたフッ素樹脂材料を得ることができる。
上記質量比(TFE/HFP/フルオロアルキルアリルエーテル又はPAVE)は、75~98/1.0~15/1.0~10(質量%)であることがより好ましい。
FEPは、HFP単位及びPAVE単位を合計で全単量体単位の1質量%以上、好ましくは1.1質量%以上含む。
【0081】
TFE単位と、HFP単位と、フルオロアルキルアリルエーテル単位又はPAVE単位とを含むFEPは、HFP単位が全単量体単位の25質量%以下であることが好ましい。
HFP単位の含有量が上述の範囲内であると、耐熱性に優れたフッ素樹脂材料を得ることができる。
HFP単位の含有量は、20質量%以下がより好ましく、18質量%以下が更に好ましい。特に好ましくは15質量%以下である。また、HFP単位の含有量は、0.1質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。特に好ましくは、2質量%以上である。
なお、HFP単位の含有量は、19F-NMR法により測定することができる。
【0082】
フルオロアルキルアリルエーテル単位及又はPAVE単位の含有量は、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましい。特に好ましくは3質量%以下である。また、フルオロアルキルアリルエーテル単位又はPAVE単位の含有量は、0.1質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。なお、フルオロアルキルアリルエーテル単位、PAVE単位の含有量は、19F-NMR法により測定することができる。
【0083】
FEPは、更に、他のエチレン性単量体(α)単位を含んでいてもよい。
他のエチレン性単量体(α)単位としては、TFE、HFP、フルオロアルキルアリルエーテル及びPAVEと共重合可能な単量体単位であれば特に限定されず、例えば、フッ化ビニル[VF]、フッ化ビニリデン[VdF]、クロロトリフルオロエチレン[CTFE]、エチレン[Et]等の含フッ素エチレン性単量体や、エチレン、プロピレン、アルキルビニルエーテル等の非フッ素化エチレン性単量体等が挙げられる。
【0084】
FEPが、TFE単位と、HFP単位と、フルオロアルキルアリルエーテル単位又はPAVE単位と、他のエチレン性単量体(α)単位とを含む場合、質量比(TFE/HFP/フルオロアルキルアリルエーテル又はPAVE/他のエチレン性単量体(α))は、70~98/0.1~25/0.1~25/0.1~25(質量%)であることが好ましい。
FEPは、TFE単位以外の単量体単位を合計で全単量体単位の1質量%以上、好ましくは1.1質量%以上含む。
【0085】
フッ素樹脂は、PFA及びFEPであることも好ましい。言い換えると、PFAとFEPとを混合して使用することも可能である。PFAとFEPとの質量比(PFA/FEP)は、9/1~3/7であることが好ましく、9/1~5/5であることがより好ましい。
【0086】
PFA、FEPは、例えば、その構成単位となるモノマーや、重合開始剤等の添加剤を適宜混合して、乳化重合、懸濁重合を行う等の従来公知の方法により製造することができる。
【0087】
フッ素樹脂は、融点が320℃以下であることが好ましい。これにより、光加熱による溶融接合を容易に行うことができる。
フッ素樹脂の融点は、より好ましくは318℃以下、更に好ましくは315℃以下であり、また、好ましくは250℃以上、更に好ましくは280℃以上である。
なお、フッ素樹脂の融点は、示差走査熱量計〔DSC〕を用いて10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線における極大値に対応する温度である。
【0088】
フッ素樹脂は、372℃におけるメルトフローレート(MFR)が0.1~100g/10分であることが好ましい。これにより、光加熱による溶融接合を容易に行うことができる。
MFRは、0.5g/10分以上がより好ましく、80g/10分以下がより好ましく、40g/10分以下が更に好ましい。
MFRは、ASTM D1238に従って、メルトインデクサー((株)安田精機製作所製)を用いて、372℃、5kg荷重下で内径2mm、長さ8mmのノズルから10分間あたりに流出するポリマーの質量(g/10分)として得られる値である。
【0089】
樹脂(1)中、フッ素樹脂の含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上である。上限は特に限定されず、100質量%であってもよい。電気特性の観点から、樹脂(1)は、実質的にフッ素樹脂のみで構成されている(樹脂(1)中のフッ素樹脂の含有量が99質量%以上である)ことが好ましい。
【0090】
樹脂(1)と金属との接合強度の観点から、樹脂(1)は、金属と接合される側に接着性表面処理が施されていることが好ましい。
接着性表面処理としては、例えば、エッチング処理、プラズマ処理、コロナ処理、光化学的処理等が挙げられ、好ましくはプラズマ処理、コロナ処理である。
接着性表面処理の条件は、樹脂(1)の組成等に応じて適宜設定可能である。
【0091】
接合強度を向上させるために、樹脂(1)と金属との間に接着層を設けても良い。接着層としては特に限定されず、接着剤を用いて形成された層であってもよい。
接着剤としては特に限定されないが、フロン工業社製のPTFE強力接着剤、セメダイン社製のPPXセット、スリーボンド社製の低温硬化型接着剤等が挙げられ、フッ素材料用の接着剤が好ましい。
また、接着剤としてボンディングシートを用いてもよい。ボンディングシートとしては特に限定されないが、プラズマ処理したシリコーン樹脂(PDMS)等が挙げられ、市販のボンディングシートとしては、東亜合成社製の高耐熱性粘着フィルム、デクセリアルズ社製のD5200シリーズ、有沢製作所製のA23タイプ等が挙げられる。
【0092】
金属の厚みは、5~50μmであればよいが、好ましくは7μm以上、より好ましくは9μm以上であり、また、好ましくは45μm以下、より好ましくは40μm以下である。
なお、金属は、厚みが略一定の金属箔であることが好ましいが、金属に厚みが異なる部分が存在する場合、上記厚みは、金属を長手方向に等間隔に10分割した地点の厚みを測定し、それらを平均したものとする。
【0093】
金属の厚み/樹脂(1)の厚みは、0.1~1であることが好ましい。
下限は、より好ましくは0.15、更に好ましくは0.2であり、上限は、より好ましくは0.95、更に好ましくは0.9である。
【0094】
金属は、銅、ステンレス、アルミニウム、鉄、銀、金、ルテニウム及び、それらの合金からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、銅、銀、金、ステンレス及びアルミニウムからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましく、銅であることが更に好ましい。
【0095】
ステンレスとしては、オーステナイト系ステンレス、マルテンサイト系ステンレス、フェライト系ステンレス等が挙げられる。
【0096】
銅としては、例えば、圧延銅、電解銅等が挙げられる。
【0097】
金属は、樹脂(1)と接合される側の表面粗度Rzが2μm以下であることが好ましい。これにより、樹脂(1)と金属との接合体の伝送損失がより良好となる。
表面粗度Rzは、より好ましくは1.8μm以下、更に好ましくは1.5μm以下であり、また、より好ましくは0.3μm以上、更に好ましくは0.5μm以上である。
なお、表面粗度Rzは、JIS C 6515-1998の方法で算出される値(最大高さ粗さ)である。
【0098】
樹脂(1)と金属との接合面は、90度剥離試験で測定される剥離強度が3N/cm以上、又は、90度剥離試験時に母材破壊となることが好ましい。上記剥離強度は、より好ましくは4N/cm以上、更に好ましくは5N/cm以上である。上限は特に限定されない。
なお、90度剥離試験は、JIS C 6481-1996に記載の方法で実施されるものである。
【0099】
本開示の第一の接合体は、曲率が-40~40/mである。この範囲であれば、他の層への積層が容易である。
曲率は、形状安定性の観点から、好ましくは-35/m以上、より好ましくは-20/m以上、更に好ましくは-10/m以上であり、また、好ましくは35/m以下、より好ましくは20/m以下、更に好ましくは10/m以下である。
【0100】
本開示の第一の接合体は、樹脂(1)及び金属を接合することで得られる。
樹脂(1)及び金属の接合は、プレス機等、公知の方法で実施してもよいが、形状安定性の観点から、後述の本開示の接合体の製造方法で説明する加熱処理で実施することが好ましい。すなわち、本開示の第一の接合体は、後述の本開示の接合体の製造方法によって好適に製造できる。
また、本開示の第一の接合体は、金属における吸収率が5%以上、樹脂(1)における吸収率が30%以下である光を用いて接合されたものであることが好ましい。光は、後述の本開示の接合体の製造方法で使用するものと同様である。
【0101】
樹脂(1)の加熱された部分は配向が変化する。例えば、樹脂(1)が金属側から加熱された場合、金属側の部分とその逆側の部分とで、配向が異なることになる。よって、樹脂の配向から、加熱処理の有無を確認することができる。
樹脂(1)において、加熱され、非加熱の状態から配向が変化した部分を熱影響層とする。樹脂(1)の金属側の熱影響層の厚みは、樹脂(1)の厚みの80%以下が好ましく、70%以下がより好ましく、60%以下が更に好ましい。下限は特に限定されず、金属との接着が確認されれば5%以下であってもよい。
熱影響層は、接合体を幅方向に切断し、得られた切片の断面を観察することで確認できる。切断幅(断面を観察する際の切片の厚み)は20~50μm程度であればよい。観察方法は特に限定されないが、偏光顕微鏡、ラマン分析等が挙げられる。
【0102】
本開示の第一の接合体は、基板用誘電材料として好適に用いられる。
【0103】
本開示の第一の接合体において、樹脂(1)は、少なくとも一つの面に金属が接合されていればよいが、図2の製造方法に使用する場合、樹脂(1)の一つの面のみ(樹脂(1)がシート状である場合、表面、裏面のいずれかのみ)に、金属が接合され、他の面には何も接合されていないことが好ましい。また、金属は、少なくとも一つの面に樹脂(1)が接合されていればよいが、図2の製造方法に使用する場合、金属の一つの面のみ(金属が金属箔である場合、表面、裏面のいずれかのみ)に樹脂(1)が接合され、他の面には何も接合されていないことが好ましい。すなわち、本開示の第一の接合体は、樹脂(1)一つと、金属一つとが接合された片面接合体であることが好ましい。
【0104】
(第一の基板)
本開示の第一の基板は、本開示の第一の接合体に更に樹脂(2)が積層されたものである。
樹脂(1)としてフッ素樹脂を、樹脂(2)としてフッ素樹脂より融点の低い樹脂(例えばエポキシ樹脂)を用いる場合には、接合に必要な加熱温度が異なるが、本開示の第一の基板では、樹脂(2)の加熱温度で実施すればよいため、一工程で基板を得ることができるという効果がある。
【0105】
なお、本開示の第一の基板において、樹脂(2)は、本開示の第一の接合体の樹脂(1)側の面に積層されることが好ましい。すなわち、本開示の第一の基板は、金属、樹脂(1)、樹脂(2)の順に積層されたものであることが好ましい。
また、本開示の第一の基板は、図2で示したような、樹脂(2)の上下に本開示の第一の接合体を積層したものであることが好ましい。すなわち、本開示の第一の基板は、金属、樹脂(1)、樹脂(2)、樹脂(1)、金属の順に積層されたものであることが好ましい。
【0106】
樹脂(2)としては、熱硬化性樹脂を好適に用いることができる。
熱硬化性樹脂は、ポリイミド、変性ポリイミド、エポキシ樹脂、熱硬化性変性ポリフェニレンエーテルからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、エポキシ樹脂、変性ポリイミド、熱硬化性変性ポリフェニレンエーテルであることがより好ましく、エポキシ樹脂、熱硬化性変性ポリフェニレンエーテルであることが更に好ましい。
【0107】
樹脂(2)は、熱硬化性樹脂以外の樹脂であってもよい。
熱硬化性樹脂以外の樹脂としては、液晶ポリマー、ポリフェニレンエーテル、熱可塑性変性ポリフェニレンエーテル、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレンからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0108】
樹脂(2)の厚みは、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上であり、また、好ましくは2000μm以下、より好ましくは1500μm以下である。
なお、樹脂(2)は、厚みが略一定のシート状であることが好ましいが、樹脂(2)に厚みが異なる部分が存在する場合、上記厚みは、樹脂(2)を長手方向に等間隔に10分割した地点の厚みを測定し、それらを平均したものとする。
【0109】
本開示の第一の基板の厚みは、好ましくは20μm以上、より好ましくは30μm以上であり、また、好ましくは5000μm以下、より好ましくは3000μm以下である。
なお、本開示の第一の基板の形状は、厚みが略一定のシート状であることが好ましいが、本開示の第一の基板に厚みが異なる部分が存在する場合、上記厚みは、本開示の第一の基板を長手方向に等間隔に10分割した地点の厚みを測定し、それらを平均したものとする。
【0110】
本開示の第一の基板は、プリント基板、積層回路基板(多層基板)、高周波基板として好適に用いられる。
【0111】
高周波回路基板は、高周波帯域でも動作させることが可能な回路基板である。高周波帯域とは、1GHz以上の帯域であってよく、3GHz以上の帯域であることが好ましく、5GHz以上の帯域であることがより好ましい。上限は特に限定されないが、100GHz以下の帯域であってもよい。
【0112】
(接合体の製造方法)
本開示の接合体の製造方法は、30~200℃における線膨張係数17ppm/℃以上、かつ厚み5~100μmの樹脂(1)と、厚み5~50μmの金属とを積層し、金属を介して樹脂(1)を加熱する加熱処理により、樹脂(1)と金属とを接合させ、曲率が-40~40/mである接合体を得る工程を含む。
なお、樹脂(1)、金属は、本開示の第一の接合体で説明したものと同様である。
【0113】
樹脂(1)及び金属をプレス機で加熱した場合、樹脂(1)全体が加熱されることで、樹脂(1)の変形が大きくなり、図3、4で示したように、接合体に反りが発生しやすい傾向がある。
これに対し、本開示の接合体の製造方法では、樹脂(1)全体を加熱するのではなく、金属を介して樹脂(1)を加熱する加熱処理により、樹脂(1)の、金属との接触部分のみを選択的に加熱することができる。これにより、樹脂(1)の変形が抑制されることで、曲率が-40~40/mである接合体を容易に得ることができる。
【0114】
加熱処理としては、電磁波の照射等が挙げられる。電磁波を波長で分類すると、例えば、ガンマ線、X線、紫外線、可視光線、赤外線、電波、マイクロ波、超短波、短波、中波、長波、超長波、極超長波となる。電磁波としては、電波、光(紫外線、可視光線、赤外線等)、X線、ガンマ線が好ましく、電波、光がより好ましく、光が更に好ましい。
また、光等の電磁波は、金属側から照射してもよいし、樹脂(1)側から照射してもよいが、樹脂(1)側から照射することが好ましい。樹脂(1)側から照射することで、金属の加熱量を小さく制御でき、樹脂(1)の変形をより抑制することができる。
【0115】
樹脂(1)側から光を照射する場合、光が樹脂(1)を透過すること、及び、光が金属に吸収されることが必要である。
このような光としては、金属における吸収率が5%以上、樹脂(1)における吸収率が30%以下、かつ金属における吸収率>樹脂(1)における吸収率のものが好適に用いられる。金属における吸収率は、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上であり、上限は特に限定されない。樹脂(1)における吸収率は、好ましくは25%以下、より好ましくは20%以下であり、下限は特に限定されない。金属における吸収率と樹脂(1)における吸収率との差(金属における吸収率-樹脂(1)における吸収率の値)は、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上であり、上限は特に限定されない。
なお、金属、樹脂(1)は、本開示の第一の接合体で説明したものと同様である。
また、上記吸収率は、紫外可視近赤外分光光度計(例えば、日本分光株式会社製「V-770」)を用いて、厚み12μmの金属、厚み25μmの樹脂(1)に対し、金属は表面を反射配置で測定し、樹脂(1)は透過配置で測定した際の値である。
【0116】
光の具体例としては、レーザ;ハロゲンランプ、キセノンランプ、遠赤外線ヒーター、マイクロ波発生器等から照射される光;等が挙げられるが、レーザが好ましい。
【0117】
レーザとしては、ファイバレーザ、YAGレーザ、ディスクレーザ、半導体レーザ、COレーザ、He-Neレーザ、エキシマレーザ、アルゴンレーザ等が挙げられるが、ファイバレーザ、YAGレーザが好ましく、ファイバレーザがより好ましい。
【0118】
光の波長は、好ましくは200nm以上、より好ましくは400nm以上、更に好ましくは500nm以上であり、また、好ましくは10000nm以下、より好ましくは2500nm以下、更に好ましくは2000nm以下である。
【0119】
光を照射する際の、出力/(スポット径×走査速度)の値は、好ましくは0.01J/mm以上、より好ましくは0.03J/mm以上、更に好ましくは0.05J/mm以上であり、また、好ましくは0.20J/mm以下、より好ましくは0.15J/mm以下、更に好ましくは0.10J/mm以下である。
【0120】
樹脂(1)側から光を照射する方法としては特に限定されないが、製造効率の観点から、下記図5で示す方法が好ましい。図5は、樹脂(1)側から光を照射する態様の一例を示す模式図である。
【0121】
図5の例では、樹脂(1)12及び金属13を積層し、ロールtoロール方式のプレス装置100で加圧する。プレス装置100は、図4中の下方に配置される樹脂側ロール101と、図4中の上方に配置される金属側ロール102とを備えており、樹脂側ロール101及び金属側ロール102によって樹脂(1)12及び金属13が加圧される。
【0122】
光200は、樹脂側ロール101側からフッ素樹脂12に向かって照射される。図6は、図5の光の照射部分(点線部分)の拡大図である。
図6に示すように、光200によって金属13が加熱されると、金属13の一部が高温となる。高温となった部分を、高温部13aとして示している。そして、樹脂(1)12は、高温部13aと接する最表面だけが加熱され、溶融する。これにより、樹脂(1)12と金属13とが接合(接着)される。
【0123】
樹脂側ロール101の材質としては、光の吸収率が20%以下のものであれば特に限定されないが、ガラス、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等が挙げられ、ガラス、熱硬化性樹脂が好ましく、ガラスがより好ましい。
なお、上記吸収率は、紫外可視近赤外分光光度計を用いて測定した値である。また、測定に使用する光は、本開示の接合体の製造方法で説明したものである。
【0124】
(基板の製造方法)
本開示の基板の製造方法は、本開示の接合体の製造方法により得られた接合体と、樹脂(2)とを接合する工程を含む。
なお、樹脂(2)は、本開示の第一の基板で説明したものと同様である。
本開示の基板の製造方法では、樹脂(1)及び金属が既に接合された接合体と、樹脂(2)とを接合するため、樹脂(1)、金属及び樹脂(2)を同時に接合する方法と比較して、接着時の温度条件の設定が容易であり、かつ、処理工程を少なくできるという効果がある。
【0125】
接合体と樹脂(2)との接合は、プレス機等、公知の方法で実施可能である。
【0126】
本開示の基板の製造方法で得られる基板の厚み、好適な用途等は、本開示の第一の基板で説明したものと同様である。
【0127】
(本開示の第二の接合体)
本開示の第二の接合体は、30~200℃における線膨張係数17ppm/℃以上、かつ厚み5~100μmの樹脂(1)の一つの面に、厚み5~50μmの金属が接合されており、樹脂(1)の金属側の熱影響層が樹脂(1)の厚みに対して80%以下である。
【0128】
加熱時の樹脂の変形は、加熱によって樹脂の結晶状態が変化することに起因するものであると考えられる。本開示の第二の接合体は、樹脂(1)の金属側の熱影響層が樹脂(1)の厚みに対して一定以下であることにより、樹脂(1)の変形を抑制しながら、樹脂(1)と金属とが接合された接合体が得られる。
樹脂(1)の金属側の熱影響層は、樹脂(1)の厚みの80%以下であればよいが、70%以下が好ましく、60%以下がより好ましい。下限は特に限定されず、金属との接着が確認されれば5%以下であってもよい。
【0129】
樹脂(1)の一部のみ結晶状態を変化させる方法、すなわち、樹脂(1)の一部のみに熱影響層を形成する方法は特に限定されないが、例えば、本開示の接合体の製造方法のように、樹脂(1)の、金属との接触部分のみを選択的に加熱する方法が挙げられる。本開示の接合体の製造方法によれば、樹脂(1)の金属側のみに熱影響層を形成することができる。
【0130】
本開示の第二の接合体において、曲率は、好ましくは-40/m以上、より好ましくは-35/m以上、更に好ましくは-20/m以上、特に好ましくは-10/m以上であり、また、好ましくは40/m以下、より好ましくは35/m以下、更に好ましくは20/m以下、特に好ましくは10/m以下である。
【0131】
本開示の第二の接合体における樹脂(1)、金属としては、本開示の第一の接合体と同様のものを使用できる。
また、本開示の第一の接合体で説明した形態は、本開示の第二の接合体にも適用可能である。
【0132】
(本開示の第二の基板)
本開示の第二の基板は、本開示の第二の接合体に、更に樹脂(2)が積層されたものである。
本開示の第二の基板は、本開示の第一の基板と同様、製造する際、樹脂(2)の加熱温度で実施すればよいため、一工程で製造可能であるという効果がある。
【0133】
本開示の第二の基板における樹脂(2)としては、本開示の第一の基板と同様のものを使用できる。
また、本開示の第一の基板で説明した形態は、本開示の第二の基板にも適用可能である。
【実施例
【0134】
次に実施例を挙げて本開示を更に詳しく説明するが、本開示はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0135】
実施例で使用する材料は、以下のとおりである。
銅箔(電解銅、厚み:12μm、接合される側の表面粗度Rz:表1、2に記載)
PFAフィルム(厚み:25μm、TFE/PAVE(質量%):96/4、融点:310℃、MFR:14g/10分、表面処理の有無:表1、2に記載(表面処理ありの実施例10、11は、プラズマ処理を実施)、比誘電率:2.1、誘電正接:0.001)
【0136】
(線膨張率)
PFAフィルムの線膨張率(線膨張係数)は、TMA―7100(株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いて以下のモードによるTMA測定を行い求めた。
[引張モード測定]
サンプル片として、長さ20mm、幅4mm、に切出した厚み25μmの押出フィルムを用いて、49mNの荷重で引っ張りながら昇温速度2℃/分で30~200℃でのサンプルの変位量から線膨張率を求めた。結果は213ppm/℃であった。
【0137】
(比誘電率及び誘電正接)
比誘電率及び誘電正接はスプリットシリンダ共振器法で求めた。スプリットシリンダとしてEMラボ株式会社製の各周波数に対応する共振器を使用し、ネットワークスペクトルアナライザーとしてKeysight N5290Aを用いた。測定対象のサンプルとして厚み25μm×幅62mm×長さ75mmのフィルムを使用した。測定周波数は10GHz、測定温度は25℃とした。
【0138】
(実施例1~11)
銅箔及びPFAフィルムを積層した後、フッ素樹脂側に石英ガラスを、銅箔側に銅板、ゴムシートの順に設置しフランジで圧力1(MPa)程度になるよう固定し、PFAフィルム側からレーザ(ファイバレーザ、銅における吸収率:表3に記載、フッ素樹脂における吸収率:5%)をピッチ0.11~0.23mmで2秒毎に照射し、銅箔を加熱した。レーザの出力、走査速度は、表1に記載の条件とした。レーザのスポット径は全て1mmとした。レーザの波長は全て1070nmとした。
そして、加熱された銅箔を介して、PFAフィルムを溶融させることで、銅箔及びPFAフィルムが接合された接合体を得た。
【0139】
(比較例1~3)
銅箔及びPFAフィルムを積層した後、加熱温度:320℃、圧力:3MPaで5分間プレスすることにより銅箔及びPFAフィルムが接合された接合体を得た。
【0140】
(比較例4、5)
レーザを表2の条件とした点を除き、実施例1~11と同様の方法で、銅箔及びPFAフィルムが接合された接合体を得た。
【0141】
(90度剥離試験)
JIS C 6481-1996に準拠した方法で、90度剥離試験を実施した。
上記で得られた接合体の端部の樹脂を1cm程度剥がし、試験機のチャックに挟み、引張速度(移動速度)50mm/分の条件で、剥離強度(単位:N/cm)を測定した。
【0142】
(曲率)
上記で得られた接合体を45×5mmに切り出し、長辺方向のカーブから曲率を算出した。
【0143】
(熱影響層の厚み)
上記で得られた接合体を幅方向に切断し、得られた切片(切断幅:20~50μm)の切断面を偏光顕微鏡で観察し、PFAフィルムの金属側に形成された熱影響層の厚みを測定した。結果は、PFAフィルムの厚み全体に対する割合(%)で示した。
【0144】
上記で得られた接合体の、90度剥離試験の結果、曲率、及び、熱影響層の厚みを表1、2に示す。比較例4は、出力が100Wと高く、走査速度が遅いため、出力/(スポット径×走査速度)の値が大きくなり、曲率が大きくなった。比較例5は、比較例4よりも更に出力/(スポット径×走査速度)の値が大きいため、PFAフィルムが焦げてしまい、剥離強度及び曲率を測定できなかった。
【0145】
【表1】
【0146】
【表2】
【0147】
【表3】
【符号の説明】
【0148】
10:基板用積層体
11:コア層
12:フッ素樹脂、樹脂(1)
13:金属
13a:高温部
14:片面接合体
100:プレス装置
101:樹脂側ロール
102:金属側ロール
200:光

図1
図2
図3
図4
図5
図6