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  • 特許-熱可塑性ポリウレタン及び複合物品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】熱可塑性ポリウレタン及び複合物品
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/40 20060101AFI20221212BHJP
   C08G 18/76 20060101ALI20221212BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20221212BHJP
   B32B 25/08 20060101ALI20221212BHJP
   B29C 48/21 20190101ALI20221212BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
C08G18/40 009
C08G18/76 057
B32B27/40
B32B25/08
B29C48/21
B60C1/00 Z
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2019556171
(86)(22)【出願日】2018-04-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-11
(86)【国際出願番号】 US2018027242
(87)【国際公開番号】W WO2018191459
(87)【国際公開日】2018-10-18
【審査請求日】2021-04-12
(31)【優先権主張番号】62/484,581
(32)【優先日】2017-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】ネフ,レイモンド,エー.
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-108510(JP,A)
【文献】特開2006-160921(JP,A)
【文献】特表2001-520251(JP,A)
【文献】特開2008-179688(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00-18/87
B32B 27/40
B32B 25/08
B29C 48/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
A. 200~20,000g/モルの質量平均分子量(Mw)を有するポリブタジエンジオール、
B. 40~90℃の融点を有するポリエステルジオール、及び
C. イソシアナート成分、
の反応生成物であり、
ASTM1238に従って120℃及び22.6kgで測定して、10分あたり0.1~200グラムのメルトフローインデックスを有し、50~120℃の融点を有する、熱可塑性ポリウレタンであって、
前記熱可塑性ポリウレタン100質量部あたり1~5質量部の量で加硫添加剤を含む、熱可塑性ポリウレタン
【請求項2】
ASTM1238に従って120℃及び22.6kgで測定して、10分あたり0.5~50グラムのメルトフローインデックスを有する、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項3】
ASTM1238に従って120℃及び22.6kgで測定して、10分あたり3~5グラムのメルトフローインデックスを有し、90~100℃の融点を有する、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項4】
前記ポリブタジエンジオールが、1,000~5,000g/モルの質量平均分子量(Mw)を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項5】
前記ポリブタジエンジオールが、1,500~3,500g/モルの質量平均分子量(Mw)を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項6】
前記ポリエステルジオールがポリ1,6-ヘキサンジオールアジペートである、請求項1から5のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項7】
前記ポリエステルジオールが、2,000~5,000g/モルの質量平均分子量(Mw)を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項8】
前記イソシアナート成分が4,4’-メチレンジフェニルイソシアナートである、請求項1から7のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項9】
10個以下の炭素原子を有する1種以上のジオールとイソシアナートとの反応生成物を含まない、請求項1から8のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項10】
前記加硫添加剤が硫黄を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項11】
前記熱可塑性ポリウレタンではないポリマーを含まない、請求項1から10のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項12】
(1)第一の熱可塑性ポリウレタンを含む第一の層、
(2)ゴムを含む第二の層、及び
(3)前記第一及び第二の層の両方の間に挟まれ且つこれらに直接接触して配置され、第二の熱可塑性ポリウレタンを含む結合層、
を含む複合物品であって、
前記第二の熱可塑性ポリウレタンが、
A. 200~20,000g/モルの質量平均分子量(Mw)を有するポリブタジエンジオール、
B. 40~90℃の融点を有するポリエステルジオール、及び
C. イソシアナート成分、
の反応生成物であり、
前記第二の熱可塑性ポリウレタン100質量部あたり1~5質量部の量で加硫添加剤を含み、及び
前記第二の熱可塑性ポリウレタンが、ASTM1238に従って120℃及び22.6kgで測定して、10分あたり0.1~200グラムのメルトフローインデックスを有し、50~120℃の融点を有する、複合物品。
【請求項13】
前記第一の層が、前記複合物品の第一の最外層としてさらに規定される、請求項12に記載の複合物品。
【請求項14】
前記第二の層が、前記複合物品の第二の最外層としてさらに規定される、請求項12又は13に記載の複合物品。
【請求項15】
タイヤとしてさらに規定される、請求項12から14のいずれか一項に記載の複合物品。
【請求項16】
靴底としてさらに規定される、請求項12から14のいずれか一項に記載の複合物品。
【請求項17】
以下の工程:
(I)前記第一の熱可塑性ポリウレタン、前記第二の熱可塑性ポリウレタン、及び前記ゴムを提供する工程、
(II)130℃未満の温度で前記第二の熱可塑性ポリウレタンを押出し、前記結合層を形成する工程、
(III)前記第一の熱可塑性ポリウレタンを前記結合層の上に直接接触させて配置する工程、
(IV)前記ゴムを前記結合層の上に直接接触させて配置する工程、及び
(V)前記第一の熱可塑性ポリウレタン、前記結合層、前記ゴムの組み合わせを130℃以上の温度で加熱して、前記第一の熱可塑性ポリウレタン及び前記第二の熱可塑性ポリウレタンを硬化させ、前記ゴムを加硫し、前記複合物品を形成する工程、
を含む、請求項12から14のいずれか一項に記載の複合物品を形成する方法。
【請求項18】
前記第二の熱可塑性ポリウレタンが、前記第一の熱可塑性ポリウレタン及び/又は前記ゴムと同時に押出される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
加熱の工程が、前記第二の熱可塑性ポリウレタン及び前記ゴムの交差加硫を含む、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、熱可塑性ポリウレタン及びそれから形成された複合物品に関する。より具体的には、本開示は、特定のメルトフローインデックスを有する熱可塑性ポリウレタンに関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性ポリウレタン(TPU)は、通常、融点及び加工点が高いので、所定の用途での作業が困難になる可能性があることは、当技術分野でよく知られている。さらに、TPUは一般に、靴底や自動車のタイヤに使用されるゴムなどのゴムに接着しないことも知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この問題を解決するための1つの解決策は、TPUをゴムに接着するために結合層を使用することである。例えば、結合層は、未加硫ゴム及びTPUの交差加硫後、多くのTPU及びゴムにも接着するように形成することができよう。しかしながら、このような方法は、硫黄及び他の加硫添加剤をTPUに事前に配合する必要がある。これは、加硫反応は130℃で開始する傾向がある一方、通常のTPUは150℃を超えて押出を必要とするので、問題である。この理由から、加硫反応は押出中に時期尚早に発生する傾向があり、これによって最終製品が損なわれる。その結果、加硫添加剤は通常、望ましくない加硫を開始させずにTPUと事前に配合することができない。この理由から、改善の余地が残る。
【0004】
図面の簡単な説明
本開示の他の利点は、以下の詳細な説明を参照することによって同利点がよりよく理解されるように、添付の図面に関して考慮することで、容易に理解されるであろう。添付の図面図1は、本開示の複合物品の一実施形態の断面図である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、ポリブタジエンジオール、ポリエステルジオール、及びイソシアナート成分の反応生成物である熱可塑性ポリウレタンを提供する。ポリブタジエンジオールは、200~20,000g/モルの質量平均分子量(M)を有する。ポリエステルジオールは、40~90℃の融点を有する。反応物により、熱可塑性ポリウレタン自体が、ASTM1238に従って120℃及び22.6kgで測定して、10分あたり0.1~200グラムのメルトフローインデックスを有することができる。熱可塑性ポリウレタンはまた、50~300℃の融点を有する。
【0006】
本開示は、複合物品をさらに提供する。複合物品は、第一の熱可塑性ポリウレタンを含む第一の層、ゴムを含む第二の層、及び第一及び第二の層の両方の間に挟まれ且つこれらに直接接触して配置され、第二の熱可塑性ポリウレタンを含む結合層を含む。第二の熱可塑性ポリウレタンは、ポリブタジエンジオール、ポリエステルジオール、及びイソシアナート成分の反応生成物である。第二の熱可塑性ポリウレタンはまた、第二の熱可塑性ポリウレタン100質量部あたり1~5質量部の量の加硫添加剤を含む。第二の熱可塑性ポリウレタンは、ASTM1238に従って120℃及び22.6kgで測定して、10分あたり0.1~200グラムのメルトフローインデックスを有し、50~300℃の融点を有する。
【0007】
本開示はまた、複合物品を形成する方法を提供する。この方法は、第一の熱可塑性ポリウレタン、第二の熱可塑性ポリウレタン、及びゴムを提供する工程、130℃未満の温度で第二の熱可塑性ポリウレタンを押出す工程、第一の熱可塑性ポリウレタンを第二の熱可塑性ポリウレタンの上に直接接触させて配置する工程、ゴムを第二の熱可塑性ポリウレタンの上に直接接触させて配置する工程、及び第一の熱可塑性ポリウレタン、第二の熱可塑性ポリウレタン、及びゴムの組み合わせを130℃以上の温度で加熱して、第一及び第二の熱可塑性ポリウレタンを硬化させ、ゴムを加硫させて、複合物品を形成する工程、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示の複合物品の一実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示は、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、TPUを含む複合物品(10)、及び複合物品(10)を形成する方法を提供する。TPU及び複合物品(10)は、任意の産業で使用することができる。例えば、TPU及び/又は複合物品(10)は、靴底、タイヤ、ホースの外被、ワイヤー及びケーブルの外被、ホイール及びキャスタータイヤ、コンベアベルト、機械製品、スポーツ用品、電化製品及び家具、動物タグ、ゴルフボール、及びディスクカバーにおいて使用することができる。複合物品(10)の非限定的な一実施形態を、図1に示す。
【0010】
熱可塑性ポリウレタン(TPU):
熱可塑性ポリウレタン(TPU)は通常、硬質セグメント及び軟質セグメントを有するマルチブロックコポリマーである。硬質セグメントは、本開示のイソシアナート成分とポリブタジエンジオール及びポリエステルジオールとの重付加反応により生成することができる。通常、軟質セグメントは、TPUに弾性特性をもたらすエラストマーマトリックスを形成する。硬質セグメントは通常、物理的な架橋及び補強充填剤の両方として機能する多機能の結合点として機能する。
【0011】
本開示において、TPUは、200~20,000g/モルの質量平均分子量(M)を有するポリブタジエンジオール、40~90℃の融点を有するポリエステルジオール、及びイソシアナート成分の反応生成物である。TPUの物理的特性は、それぞれ以下にさらに詳細に説明する、イソシアナート、ポリブタジエンジオール、及びポリエステルジオールの性質及び量を調整することにより、異なる最終用途に合わせて調整することができる。
【0012】
TPUは通常、20,000~1,000,000、g/モルの質量平均分子量を有する。様々な実施形態において、質量平均分子量は、25,000~500,000、40,000~300,000、50,000~275,000、75,000~250,000、100,000~225,000、125,000~200,000、又は150,000~175,000g/モルである。TPUはまた、通常、ASTM D1525-09に従って決定して、30~100℃のビカット軟化点を有する。様々な実施形態において、ビカット軟化点は、50~100、45~95、55~95、60~90、65~85、70~80、70~75、75~80、又は50~80℃である。通常、ビカット軟化点は融点よりも低い。他の実施形態では、TPUは50~300℃の融点を有する。様々な実施形態において、融点は、50~120、55~115、60~110、65~105、70~100、75~95、80~90、又は85~95℃である。さらなる実施形態では、TPUは、ASTM D2240に従って決定して、50A~90AのショアA硬度を有する。様々な実施形態において、ショアA硬度は60A~85Aである。他の実施形態では、TPUは、0.8~1.2g/cmの比重を有する。様々な実施形態において、比重は0.9~1.1g/cmである。本開示のTPUはまた、ASTM1238に従って120℃及び22.6kgで測定して、10分あたり0.1~200グラムのメルトフローインデックスを有する。他の実施形態では、メルトフローインデックスは、ASTM1238に従って120℃及び22.6kgで測定され、10分あたり0.2~50、0.5~50、5~50、10~45、15~40、20~35、25~30、1~10、1~5、5~10、又は3~5グラムである。さらなる実施形態では、TPUは、ASTM D412に従って決定して、23℃で0.01~10MPaの引張強度を有する。様々な実施形態において、引張強度は0.05~5MPAである。さらなる実施形態では、TPUは、ASTM D412に従って決定して、23℃で0.01~1MPaの弾性率を有する。さらなる実施形態では、弾性率は、例えば当技術分野で既知の標準的な方法に従って決定して、0.05~0.5MPaである。他の実施形態では、伸び(ピーク応力又は破断時のいずれか)は、例えば当技術分野で既知の標準的な方法に従って決定して、100%を超える、300%を超える、500%を超える、又は500~1500%の、又は前述の値を含む又は前述の値の間の任意の範囲であり得る。一実施形態では、TPUは、ASTM1238に従って120℃及び22.6kgで測定して、10分あたり0.5~50グラムのメルトフローインデックスを有する。別の実施形態では、TPUは、ASTM1238に従って120℃及び22.6kgで測定して、10分あたり3~5グラムのメルトフローインデックスを有し、90~100℃の融点を有する。様々な非限定的な実施形態において、上記に説明したもののそれぞれを含む及びそれらの間のすべての値及び値の範囲は、使用するためこれにより明確に企図される。言い換えれば、前述の物理的特性の任意の1つ以上の任意の値又は値の範囲は、1つ以上の非限定的な実施形態を説明し得る。前述の物理的特性のあらゆる組み合わせは、様々な非限定的な実施形態においてこれにより明確に企図される。
【0013】
ポリブタジエンジオール:
前記参照すると、ポリブタジエンジオールは、200~20,000g/モルの質量平均分子量(M)を有する。様々な実施形態において、質量平均分子量は、1,000~10,000、2,000~9,000、3,000~8,000、4,000~7,000、5,000~6,000、1,000~5,000、1,500~3,500、2,000~3,000、2,000~2,500、又は2,500~3,000g/モルである。様々な実施形態において、上記に説明したものを含む及びそれらの間のすべての値及び値の範囲は、本明細書での使用のためこれにより明確に企図される。単一のポリブタジエンジオール又はそれぞれ200~20,000g/モルの質量平均分子量(M)を有する2つ以上のポリブタジエンジオールの組み合わせを使用し得る。
【0014】
様々な実施形態において、ポリブタジエンジオールは、参照によりその全体が本明細書に明示的に組み込まれる米国特許第7,405,259号に記載の通りであり、様々な非限定的な実施形態におけるポリブタジエンジオールに関連する。言い換えれば、本開示は、そこに記載されているポリブタジエンジオールを利用してよい。
【0015】
ポリエステルジオール:
ポリエステルジオールは、40~90℃の融点を有する。様々な実施形態において、融点は45~85、50~80、55~75、60~70、又は65~70℃である。ポリエステルジオールは、この融点を有する当技術分野の任意であってよい。様々な実施形態において、ポリエステルジオールはポリ1,6-ヘキサンジオールアジペートである。ポリエステルジオールは、2,000~5,000、2,500~4,500、3,000~4,000、又は3,000~3,500、g/モルの質量平均分子量を有し得る。単一のポリエステルジオールを利用してよく、又はそれぞれが40~90℃の融点を有する2つ以上のポリエステルジオールの組み合わせを使用してもよい。上記に説明したものを含む及びそれらの間のすべての値及び値の範囲は、様々な非限定的な実施形態での使用のためこれにより明確に企図される。
【0016】
他の実施形態では、ポリエステルジオールは以下の構造を有する:
【0017】
【化1】
【0018】
式中、nは15~25、例えば約18~20である。
【0019】
イソシアナート成分:
イソシアナート成分は、単一のイソシアナート又は2つ以上のイソシアナートの組み合わせであり得る、又はそれらを含み得る。例えば、イソシアナート成分は、それ自体が単一のジイソシアナートであり得る、又は2つ以上のジイソシアナートの組み合わせを含み得るジイソシアナートであり得る、又はそれらを含み得る。
【0020】
一実施形態では、イソシアナート成分は、n-官能性イソシアナートを含む。この実施形態では、nは、通常2~5、あるいは2~4、及び最も通常は2~3の数である。nは整数であり得、又は2~5の中間値を有し得ることを理解されたい。イソシアナート成分は、芳香族イソシアナート、脂肪族イソシアナート、及びそれらの組み合わせの群から選択されるイソシアナートを含み得る。別の実施形態では、イソシアナート成分は、ヘキサメチレンジイソシアナート、H12MDI、及びそれらの組み合わせなどの脂肪族イソシアナートであるか、それらを含む。
【0021】
イソシアナート成分が脂肪族イソシアナートを含む場合、イソシアナート成分は、変性多価脂肪族イソシアナート、すなわち脂肪族ジイソシアナート及び/又は脂肪族ポリイソシアナートの化学反応により得られる生成物も含み得る。例として、尿素、ビウレット、アロファネート、カルボジイミド、ウレトンイミン、イソシアヌレート、ウレタン基、二量体、三量体、及びそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0022】
イソシアナート成分はまた、変性ジイソシアナートを個々に含んでもよく、又は変性ジイソシアナートとポリオキシアルキレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレングリコール、ポリエステロール、ポリカプロラクトン及びこれらの組み合わせとの反応生成物として含んでもよいが、これらに限定されない。
【0023】
あるいは、イソシアナート成分は、芳香族イソシアナートであり得る、又は芳香族イソシアナートを含み得る。イソシアナート成分が芳香族イソシアナートを含む場合、芳香族イソシアナートは、式R’(NCO)zに対応し、式中、R’は芳香族であり、zはR’の原子価に対応する整数である。通常、zは少なくとも2である。芳香族イソシアナートの適した例には、テトラメチルキシリレンジイソシアナート(TMXDI)、1,4-ジイソシアナトベンゼン、1,3-ジイソシアナト-o-キシレン、1,3-ジイソシアナト-p-キシレン、1,3-ジイソシアナト-m-キシレン、2,4-ジイソシアナト-1-クロロベンゼン、2,4-ジイソシアナト-1-ニトロベンゼン、2,5-ジイソシアナト-1-ニトロベンゼン、m-フェニレンジイソシアナート、p-フェニレンジイソシアナート、2,4-トルエンジイソシアナート、2,6-トルエンジイソシアナート、2,4-及び2,6-トルエンジイソシアナートの混合物、1,5-ナフタレンジイソシアナート、1-メトキシ-2,4-フェニレンジイソシアナート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアナート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアナート、4,4’-ビフェニレンジイソシアナート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジフェニルメタンジイソシアナート、3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアナート、4,4’,4”-トリフェニルメタントリイソシアナートポリメチレンポリフェニレンポリイソシアナート及び2,4,6-トルエントリイソシアナートなどのトリイソシアナート、4,4’-ジメチル-2,2’-5,5’-ジフェニルメタンテトライソシアナートなどのテトライソシアナート、トルエンジイソシアナート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアナート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアナート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアナート(4,4’-メチレンジフェニルイソシアナート)、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアナート、それらの対応する異性体混合物、及びそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。あるいは、芳香族イソシアナートは、m-TMXDI及び1,1,1-トリメチロールプロパンのトリイソシアナート生成物、トルエンジイソシアナート及び1,1,1-トリメチロールプロパンの反応生成物、及びそれらの組み合わせであってよく、又はそれらを含んでよい。一実施形態では、イソシアナート成分は、メチレンジフェニルジイソシアナート、トルエンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、H12MDI、及びそれらの組み合わせの群から選択されるジイソシアナートであるか、又はそれらを含む。
【0024】
一実施形態では、イソシアナート成分は、最大85.7質量%のNCO含量を有する。イソシアナート成分はまた、当業者によって決定されるように、ポリブタジエンジオール及び/又はポリエステルジオールと任意の量で反応し得る。通常、イソシアナート成分及びポリブタジエンジオール及び/又はポリエステルジオールは、90~115、あるいは95~105、あるいは105~110のイソシアナート指数で反応する。
【0025】
TPU自体は通常、発泡体に特徴的な気泡を含まず、通常、発泡剤の作用による気泡形成の非存在下で形成される。他の実施形態では、TPUは、10個以下の炭素原子を有する1種以上のジオール、例えば10、9、8、7、6、5、4、3、又は2個の炭素原子を有する短鎖ジオールの、イソシアナート成分との反応生成物を含まない。例えば、TPUは、ブタンジオール及び/又はヘキサンジオールを使用して形成される反応生成物を含まなくてよい。
【0026】
TPUの形成方法:
TPUは、当技術分野で既知の任意の方法によって形成し得る。例えば、TPUを形成する方法は、ポリブタジエンジオールを提供する工程、ポリエステルジオールを提供する工程、及びイソシアナート成分を提供する工程を含み得る。この方法は、ポリブタジエンジオール、ポリエステルジオール、及びイソシアナート成分を反応させる工程も含み得る。反応時間、添加の順序、及び反応条件は、当業者によって選択され得る。任意の1種以上の通常の触媒を使用してよい。
【0027】
様々な実施形態において、以下の工程のうちの1つ以上を利用し得る。一実施形態では、ポリオールを容器に充填して約80℃に予熱する。次いで、4,4’メチレンジフェニルジイソシアナート(MDI)を、ミキサーを使用してポリオールと組み合わせることができる。次いで混合物を、例えば約100℃よりも高温で約20時間、加熱及び/又は硬化させることができる。材料は次いで、さらなるプロセスに備えて、粉砕機を使用して顆粒化することができる。
【0028】
TPU組成物:
本開示は、TPU組成物も提供する。例えば、TPU組成物は、単一のTPUを含み得る、又は1種以上のTPUが上記のとおりである限り、2種以上のTPUの組み合わせ又は共に混合されたものを含み得る、又はそれらであり得る。さらなるTPUは、ポリエーテルTPU又はポリエステルTPUなど、当技術分野で既知の任意のものでよい。TPU組成物は、当技術分野で既知の他のポリマー(ポリアミド、本開示の範囲外のTPU、発泡ポリウレタン、ありとあらゆるポリマー、ゴムなどを含む)、当技術分野で既知の充填剤(強化充填剤を含む)、及び当技術分野で既知の可塑剤を実質的に含まなくてよい。直前の上記で使用する「実質的に含まない」という用語は、TPU100質量部あたり0.1質量部未満、あるいは0.01質量部未満、及び最も通常は0.001質量部未満の量を指す。TPU組成物は、前述の化合物の1種以上を完全に含まなくてもよい。
【0029】
加硫添加剤:
様々な実施形態において、TPU及び/又はTPU組成物は、加硫添加剤を含み得る。加硫添加剤は特に限定されず、当技術分野で既知の任意のものであってよい。加硫添加剤は硫黄を含み得る。加硫添加剤は、硫黄を含む当技術分野で既知の任意のものでよい。加硫添加剤は任意の量で、例えばTPU100質量部あたり、1~5、1~4.5、2~4、2.5~3.5、又は2.5~3質量部の量で存在してよい。上記に説明したものを含む及びそれらの間のすべての値及び値の範囲は、様々な非限定的な実施形態での使用のためこれにより明確に企図される。
【0030】
複合物品:
本開示はまた、図1に示す複合物品(10)を提供する。複合物品(10)は、第一の熱可塑性ポリウレタン(第一のTPU)を含む第一の層(12)、ゴムを含む第二の層(16)、及び第一及び第二の層(12、16)の両方の間に挟まれ且つこれらに直接接触して配置され、第二の熱可塑性ポリウレタン(第二のTPU、すなわち本開示のTPU)を含む結合層(14)を含み得る。
【0031】
複合物品の第一の熱可塑性ポリウレタン:
第一のTPUは、当技術分野で既知の任意のものでよい。様々な実施形態において、第一のTPUは、ポリオール及びイソシアナートの反応生成物を含むか、又はそれであり、これは、上記のものを含むがそれに限定されない、当技術分野で既知の任意のイソシアナートであり得る。一実施形態では、第一のTPUはポリエステルベースのTPUであり、ポリエステルポリオールとイソシアナートとの反応生成物を含む。適したポリエステルポリオールは、ジカルボン酸と、少なくとも1個の第一級ヒドロキシル基を有するグリコールとの反応から生成され得る。適したジカルボン酸は、アジピン酸、メチルアジピン酸、コハク酸、スベリン酸、セバシン酸、シュウ酸、グルタル酸、ピメリン酸、アゼライン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、及びそれらの組み合わせの群から選択され得るが、これらに限定されない。ポリエステルポリオールの生成に使用するのに適したグリコールは、エチレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ビス(ヒドロキシメチルシクロヘキサン)、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、2,2-ジメチルプロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、及びそれらの組み合わせの群から選択され得るが、これらに限定されない。使用し得る適したポリエステルベースのTPUの具体例には、BASF Corporation社から市販されているElastollan(登録商標)600、800、B、C、及びSシリーズのポリエステルベースのTPUが含まれるが、これらに限定されない。
【0032】
あるいは、第一のTPUは、ポリエーテルベースのTPUであり得、上記のように、ポリエーテルポリオールとイソシアナートとの反応生成物を含み得る。適したポリエーテルポリオールは、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びそれらの組み合わせの群から選択され得るが、これらに限定されない。本発明で使用し得る適したポリエーテルベースのTPUの具体例には、BASF Corporationから市販されているElastollan(登録商標)1100及び1200シリーズのポリエーテルベースのTPUが含まれるが、これらに限定されない。
【0033】
別の実施形態では、第一のTPUは、ポリエステルベース又はポリエーテルベースのそれぞれのTPU中のポリエステルポリオール又はポリエーテルポリオールに加えて、鎖延長剤の反応生成物をさらに含む。さらに別の代替実施形態では、第一のTPUは、ポリエステルポリオール及び/又はポリエーテルポリオールの非存在下で、鎖延長剤及びイソシアナートの反応生成物を含み得る。適した鎖延長剤は、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ブテンジオール、ブチンジオール、キシリレングリコール、アミレングリコール、1,4-フェニレンビス-ベータ-ヒドロキシエチルエーテル、1,3-フェニレン-ビス-ベータ-ヒドロキシエチルエーテル、ビス-(ヒドロキシ-メチル-シクロヘキサン)、ヘキサンジオール、及びチオジグリコールを含むジオール;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、シクロヘキサレンジアミン、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、3,3’-ジクロロベンジジン、及び3,3’-ジニトロベンジジンを含むジアミン;エタノールアミン、アミノプロピルアルコール、2,2-ジメチルプロパノールアミン、3-アミノシクロヘキシルアルコール、及びp-アミノベンジルアルコールを含むアルカノールアミン;上記の鎖延長剤の任意の組み合わせ、の群から選択され得るが、これらに限定されない。
【0034】
通常、第一のTPUを形成するために使用されるポリオールは、600~2,500g/モルの質量平均分子量を有する。複数のポリオールを使用して第一のTPUを形成する場合、各ポリオールは通常、上記範囲内の質量平均分子量を有することを理解されたい。しかしながら、第一のTPUを形成するために使用されるポリオールは、この分子量範囲に限定されない。
【0035】
複合物品の第二の熱可塑性ポリウレタン:
第二のTPUは、ポリブタジエン、ポリエステルジオール、及びイソシアナート成分の反応生成物であり、例えば、上記で詳細に説明したとおりである。複合物品(10)の第二のTPUは、通常、加硫添加剤を含むが、必ずしも含む必要はない。加硫添加剤の代わりに、複合物品(10)の第二のTPUは、前述のゴムによる加硫後に存在する加硫添加剤の反応生成物又は分解生成物を含み得ることが企図される。
【0036】
複合物品のゴム:
複合物品(10)のゴムは、当技術分野の任意のものであってよい。例えば、ゴムは、ニトリル(アクリロニトリル-ブタジエン)ゴム、水素化ニトリル(水素化アクリロニトリル-ブタジエン)ゴム、エチレン-プロピレン(エチレンプロピレンジエン)ゴム、フルオロカーボンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、フルオロシリコーンゴム、ポリアクリレートゴム、エチレンアクリルゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ポリウレタンゴム、天然ゴム、及びそれらの組み合わせであり得る。
【0037】
複合物品の第一の層:
複合物品(10)の第一の層(12)は、上記のように、第一のTPUであり得、又はそれを含み得る。第一の層(12)は、任意の種類の他のポリマーを含まなくてよい、及び/又は任意の無機材料、充填剤、粒子等を含まなくてよい。第一の層(12)のサイズ又は形状は限定されないが、通常、0.02~4mm、0.05~3mm、又は0.2~2mmの厚さを有する。第一の層(12)は、より大きな構造の内層であってもよく、又は最外層、例えば第一の最外層であってもよい。「最外」という用語は、第一の層(12)が複合物品(10)などのより大きな構造の外部層である実施形態を説明している。通常、外部層は環境に面しており、封入されていない、又は任意の他の層で覆われていない。
【0038】
複合物品の第二の層:
複合物品(10)の第二の層(16)は、上記のように、ゴムであり得、又はそれを含み得る。ゴムは硬化又は未硬化(加硫又は未加硫)であってよい。第二の層(16)は、任意の種類の他のポリマーを含まなくてよい、及び/又は任意の無機材料、充填剤、粒子等を含まなくてよい。第二の層(16)のサイズ又は形状は限定されないが、通常、0.05~4mm、0.1~3mm、又は0.2~2mmの厚さを有する。第二の層(16)は、より大きな構造の内層であってもよく、又は、最外層、例えば第二の最外層であってもよい。「最外」という用語は、第二の層(16)が複合物品(10)などのより大きな構造の外部層である実施形態を説明している。通常、外部層は環境に面しており、封入されていない、又は任意の他の層で覆われていない。
【0039】
複合物品の結合層:
複合物品(10)の結合層(14)は、上記のように、第二のTPUであり得、又はそれを含み得る。同様に、複合物品(10)の結合層(14)は、本開示のTPUであり得、又はそれを含み得る。結合層(14)は、任意の種類の他のポリマーを含まなくてよい、及び/又は任意の無機材料、充填剤、粒子等を含まなくてよい。結合層(14)のサイズ又は形状は限定されないが、通常、0.001~1mm、0.01~0.5mm、又は0.02~0.25mmの厚さを有する。結合層(14)は、第一及び第二の層(12、16)の間に挟まれ、結合層(14)が第一及び第二の層(12、16)と直接接触するようになっている。第一の層(12)及び結合層(14)の間、又は第二の層(16)及び結合層(14)の間に、中間層はない。言い換えれば、複合物品(10)は、3つの層、すなわち、結合層(14)の上に直接接触して配置される第一の層(12)、第一及び第二の層(12、16)の間に直接接触して配置される結合層(14)、及び結合層(14)の上に直接接触して配置される第二の層(16)であるか、それらを含む。3つの層の複合物品(10)は、3つ以上の層を含むより大きな構造の一部であり得る。
【0040】
さらなる実施形態では、複合物品(10)は、より大きな構造で使用される。ここで、第一の層(12)の上に直接接触して配置される熱可塑性ポリウレタン層の一連があり、複合物品(10)の第一の層(12)は最外層ではないが、その代わりに、より大きくより複雑な構造の内部層である。ほんの一例として、第一の層(12)上に配置された熱可塑性ポリウレタンのシートは、最大で60、又はそれ以上あり得る。
【0041】
複合物品の形成方法:
本開示は、複合物品(10)を形成する方法も提供する。この方法は、第一の熱可塑性ポリウレタンを提供する工程、第二の熱可塑性ポリウレタンを提供する工程、ゴムを提供する工程、130℃未満の温度で第二の熱可塑性ポリウレタンを押出して結合層(14)を形成する工程、第一の熱可塑性ポリウレタンを結合層(14)の上に直接接触させて配置する工程、ゴムを結合層(14)の上に直接接触させて配置する工程、第一の熱可塑性ポリウレタン、第二の熱可塑性ポリウレタン、及びゴムの組み合わせを130℃以上の温度で加熱して、第一及び第二の熱可塑性ポリウレタンを硬化させ、ゴムを加硫し、複合物品(10)を形成する工程、を含む。
【0042】
第一及び第二の熱可塑性ポリウレタン及びゴムを提供する工程:
提供の工程は、当技術分野で既知の任意のものでよい。第一及び/又は第二のTPUは、ペレット化された形態など、任意の形態又は手段で提供してよい。第一及び/又は第二のTPUは、ペレット化、さいの目切り、又は顆粒化してよい。例えば、第一及び/又は第二のTPUは、水中ペレタイザー又はストランドペレタイザーでペレット化してよい。同様に、ゴムは、当該技術分野で既知の任意の形態又は手段で提供してよい。
【0043】
第二の熱可塑性ポリウレタンを押出して結合層を形成する工程:
第二のTPU(加硫添加剤を含み得る)は、130、125、120、115、110、105、又は100℃未満の温度で押出してよい。あるいは、第二のTPU及び加硫添加剤は、前述の温度の間及びそれを含む任意の温度で押出してもよい。押出は、二軸押出機などの任意の押出機、及び当業者によって選択され得る任意の条件を使用して完了させてよい。通常、第二のTPUを押出す工程は、複合物品(10)の結合層(14)を形成する。
【0044】
第一のTPUを結合層の上に直接接触させて配置する工程:
第一のTPUを配置する工程は、当技術分野で既知の任意のものであってもよい。例えば、第一のTPUは、共(又は同時)押出し、積層などによって、結合層(14)の上に直接接触させて配置してよい。第一のTPUを結合層(14)の上に直接接触させて配置する工程は、第一のTPUを第二のTPUの上に直接接触させて配置する工程として代替的に説明し得る。
【0045】
ゴムを結合層の上に直接接触させて配置する工程:
ゴムを配置する工程は、当技術分野で既知の任意のものであってもよい。例えば、ゴムは、共(又は同時)押出し、積層などによって、結合層(14)の上に直接接触させて配置してよい。ゴムを結合層(14)の上に直接接触させて配置する工程は、ゴムを第二のTPUの上に直接接触させて配置する工程として代替的に説明し得る。
【0046】
第一のTPU、第二のTPU、及びゴムの組み合わせを加熱する工程:
加熱の工程は、当技術分野で既知の任意の方法によって達成してもよい。通常、加熱の工程は、130℃以上の温度、例えば最大220℃で加熱して、第一及び第二の熱可塑性ポリウレタンを硬化させ、ゴムを加硫し、複合物品(10)を形成する工程としてさらに規定される。温度は、上記の温度の間の及び上記の温度を含む任意の温度又は温度範囲でよい。さらなる実施形態では、加熱の工程は、第二の熱可塑性ポリウレタン及びゴムの交差加硫を含む。
【0047】
さらなる実施形態:
一実施形態では、この方法は、(通常は未硬化の)ゴムを配合する工程を含む。別の実施形態では、この方法は、第二のTPUのペレットを押出機(例えば、二軸スクリュー押出機)に加硫添加剤と共に添加する工程を含む。続いて、例えば、第二のTPU及び加硫添加剤は、130℃未満の温度で、例えば上記の温度で押出され得る。他の実施形態では、第一のTPUのペレットも同様に押出され得る。複合物品(10)の2つ又は3つの層を共に押出してもよい。例えば、第一の層(12)及び結合層(14)を共に押出してよい。あるいは、第二の層(16)及び結合層(14)を共に押出してよい。さらに、第一の層(12)、結合層(14)、及び第二の層(16)を共に押出してよい。「共に押出す」という用語は、通常、層のためのTPU及び/又はゴムが押出され、後に層自体に形成されることを示す。一実施形態では、第一の層(12)及び結合層(14)は、第二の層(16)上に積層される。さらなる実施形態では、3つの層すべてが圧力及び/又は熱で共にプレスされる。さらなる実施形態では、第二の熱可塑性ポリウレタンは、第一の熱可塑性ポリウレタン及び/又はゴムと同時に押出される。
【実施例
【0048】
以下に記載の通り、熱可塑性ポリウレタン(TPU1)及び比較例の熱可塑性ポリウレタン(TPU2)を形成した。
【0049】
TPU1は、ポリブタジエンジオール、ポリエステルジオール、及びイソシアナート成分の反応生成物である。
【0050】
ポリブタジエンジオールは、約2,000g/モルの質量平均分子量及び約56のOH価を有し、米国Cray Valley社から市販されている。
【0051】
ポリエステルジオールは、3740g/モルの質量平均分子量、30のOH#、及び55℃の融点を有し、Polyurethane Specialties Co. Inc.社から市販されている。
【0052】
イソシアナート成分は、4,4’-MDIであり、BASF社からLupranate Mの商品名で市販されている。
【0053】
熱可塑性ポリウレタンは、ASTM1238に従って120℃及び22.6kgで測定して、10分あたり約4グラムのメルトフローインデックスを有し、約100℃の融点を有する。0.2グラムのスタナスオクトエートも添加した。
【0054】
TPU2は、前述のポリブタジエンジオール、短鎖ジオール(2-エチル-1,3-ヘキサンジオール;本開示の前述のポリエステルジオールとは異なる)、及び4,4’-MDIの反応生成物である。0.2グラムのスタナスオクトエートも添加した。
【0055】
【表1】
【0056】
TPU1を約120℃で押出し、約1mmの厚さを有するシートを形成した。より具体的には、押出は、3/4インチの単軸スクリュー押出機と調整可能なシートダイを備えたBrabender Plasticorderを使用して完了した。
【0057】
TPU2は130℃以上で溶解するため、120℃で押出すことはできなかった。
【0058】
以下の押出装置及びパラメータを利用した。L/Dは16で、バレルは3つの加熱ゾーンを備え、それぞれを120℃に設定した。
【0059】
TPU1の以下の近似の物理的特性を、例えばASTM D412又は当技術分野で既知の同様の方法に従って測定した:
引張弾性率:165psi(0.114MPa)
引張強度(ピーク応力):132psi(0.0910MPa)
ピーク応力での伸び:984%
破断時伸び:>1000%
【0060】
TPU1のシートの押出は、熱可塑性ポリウレタンを130℃以上の通常の温度より低い温度で形成することが可能であることを実証する。また、これは、硫黄を含む加硫添加剤がTPUで利用できることを示唆する。なぜなら、時期尚早の加硫のリスク及び反応が通常130℃前後で始まることが既知であるためである。さらに、TPU1は、シートをゴムに共加硫した後、他のTPU及びゴムに接着する。
【0061】
上記の実施形態のあらゆる組み合わせは、そのような開示が上記の単一のパラグラフ又はセクションで逐語的に記載されていない場合でも、1つ以上の非限定的な実施形態でこれにより明確に企図される。言い換えれば、明確に企図される実施形態は、本開示の任意の部分から選択され、組み合わされる上記の任意の1つ又は複数の要素を含み得る。上記に説明したものを含む及びそれらの間のすべての値及び値の範囲は、様々な非限定的な実施形態での使用のためこれにより明確に企図される。
【0062】
上記の値のうちの1つ以上は、±5%、±10%、±15%、±20%、±25%等変化し得る。予想外の結果は、他のあらゆる要素から独立したマーカッシュグループの各要素から得られ得る。各要素は、個別に、又は組み合わせとして、添付の特許請求の範囲内で特定の実施形態の適切なサポートとなる。本明細書では、独立請求項と従属請求項の、これらの組み合わせを含む発明(subject matter)を、単独及び複数従属の形式で、本明細書に明確に含むものである。本開示は、限定するものではなく、説明の言葉を含む例示である。上記の教示に照らして、本開示の多くの修正及び変形が可能であり、本開示は、本明細書で具体的に説明したものとは別の方法で実施し得る。
【0063】
また、本開示の様々な実施形態を独立して且つ集合的に説明する際に依拠する範囲及び下位範囲は、添付の特許請求の範囲内にあり、そのような値が本明細書中に明示的に書かれていない場合でも、本明細書中の値の全体及び/又は小数値を含むすべての範囲を説明及び企図するものと理解される。当業者は、列挙された範囲及び下位範囲が本開示の様々な実施形態を十分に説明し、可能にし、そのような範囲及び下位範囲が関連する半分、3分の1、4分の1、5分の1などさらに描かれ得ることを容易に認識する。ほんの一例として、「0.1~0.9」の範囲は、下3分の1、すなわち0.1~0.3、中3分の1、すなわち0.4~0.6、及び上3分の1、すなわち0.7~0.9にさらに描かれ得、これらは、個別及び集合的に添付の特許請求の範囲内にあり、個別及び/又は集合的に依拠され得、添付の特許請求の範囲内の特定の実施形態に対する適切な支持を提供する。さらに、「少なくとも」、「より大きい」、「未満」、「以下」などの範囲を規定又は変更する言語に関して、そのような言語は理解されるべきである下位範囲及び/又は上限又は下限を含むことを理解されたい。別の例として、「少なくとも10」の範囲には、少なくとも10~35の下位範囲、少なくとも10~25の下位範囲、25~35の下位範囲などが本質的に含まれ、各下位範囲は個別及び/又は集合的に依拠され得、添付の特許請求の範囲内の特定の実施形態に対する適切な支持を提供する。最後に、開示された範囲内の個々の番号は、添付の特許請求の範囲内の特定の実施形態に依拠し得、適切な支持を提供する。たとえば、「1~9」の範囲には、3などのさまざまな個々の整数、及び4.1などの小数点(又は小数)を含む個々の数値が含まれ、添付の特許請求の範囲内の特定の実施形態に依拠し得、それらに対する適切な支持を提供する。
図1