(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】シロキサンタイプの添加剤を含む組成物を50nm以下のライン間寸法を有するパターン化材料を処理する際のパターン崩壊を回避するために使用する方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/38 20060101AFI20221212BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20221212BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
G03F7/38 511
G03F7/20 521
G03F7/20 501
H01L21/304 647A
(21)【出願番号】P 2020524741
(86)(22)【出願日】2018-10-29
(86)【国際出願番号】 EP2018079555
(87)【国際公開番号】W WO2019086374
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-10-25
(32)【優先日】2017-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】レッフラー,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】シェン, メイ チン
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ,ション ソワン
(72)【発明者】
【氏名】ピルンク,フランク
(72)【発明者】
【氏名】エンゲルブレヒト,ロター
(72)【発明者】
【氏名】ブルク,イェニ
(72)【発明者】
【氏名】クリップ,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ブリル,マルセル
(72)【発明者】
【氏名】シオニー,シジラード
【審査官】倉本 勝利
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-257379(JP,A)
【文献】国際公開第2017/002497(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0255534(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0092191(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0318183(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0325458(US,A1)
【文献】国際公開第2012/027667(WO,A2)
【文献】国際公開第2014/091363(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0299487(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/38
G03F 7/20
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶媒、および式I~IV
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
(式中、
R
1、R
2は独立してHまたはC
1~C
10アルキル基から選択され、
nは0、1または2であり、
e、u、vは独立して0~5から選択される整数であり、
b、d、wは独立して0~6の整数であり、
a、c、xは独立して1~22から選択される整数であり、
yは1~5の整数であり、
R
10、R
12は独立してHまたはC
1~C
10アルキル基から選択され、
R
11は、各a、cおよびxに対して独立してH、メチルおよびエチルから選択される)
の少なくとも1種の添加剤を含む非水性組成物を、50nm以下のライン間寸法および4以上のアスペクト比を有するパターンを含む基板を処理するために使用する方法であって、
前記式I、II、IIIまたはIVの少なくとも1種の添加剤が、前記組成物の全質量に対して約0.00005~約1.0質量%の濃度で存在する、方法。
【請求項2】
有機溶媒が極性プロトン性有機溶媒である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
有機溶媒が直鎖または分岐C
1~C
10アルカノールである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
有機溶媒がイソプロパノールである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
非水性組成物中の含水量が0.1質量%未満である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
非水性組成物が有機溶媒および式I、II、IIIまたはIVの少なくとも1種の添加剤から本質的になる、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
式I、II、IIIまたはIVの少なくとも1種の添加剤が、0.001~0.1質量%の濃度で存在する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1種の添加剤が、
R
1、R
2が独立してH、メチルまたはエチルから選択され、
eが0、1または2であり、
b、dが0、1または2であり、
a、cが独立して1~22から選択される整数であり、
R
10、R
12が独立してH、メチルまたはエチルから選択され、
R
11がメチルまたはエチル、好ましくはメチルから選択される、
式Iの化合物である、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1種の添加剤が、
R
1、R
2がメチルであり、
eが0、1または2であり、
R
10、R
12が独立してメチルまたはエチルから選択される、
式IIの化合物である、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1種の添加剤が、
R
1、R
2がメチルまたはエチルであり、
u、vが0または1であり、
wが0または3であり、
xが2~25の整数であり、
yが1または2であり、
R
10、R
12が独立してメチルまたはエチルから選択され、
R
11がHまたはメチルから選択される、
式IIIの化合物である、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1種の添加剤が、
nが1であり、
R
1、R
2が同一または異なり、メチル、エチル、プロピルおよびブチルから選択される、
式IVの化合物である、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
集積回路装置、光学装置、マイクロマシンおよび精密機械装置を製造する方法であって、
(1)50nm以下のライン間寸法、4以上のアスペクト比またはこれらの組み合わせを有するパターン化材料層を有する基板を提供する工程と、
(2)前記基板を非水性組成物と少なくとも1回接触させる工程と、
(3)前記非水性組成物を前記基板との接触から除去する工程と
を含み、
前記非水性組成物が、有機溶媒、および式I~IV
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
(式中、
R
1、R
2は独立してHまたはC
1~C
10アルキル基から選択され、
nは0、1または2であり、
e、u、vは独立して0~5から選択される整数であり、
b、d、wは独立して0~6の整数であり、
a、c、xは独立して1~22から選択される整数であり、
yは1~5の整数であり、
R
10、R
12は独立してHまたはC
1~C
10アルキル基から選択され、
R
11は、各a、cおよびxに対して独立してH、メチルおよびエチルから選択される)
の少なくとも1種の添加剤を含み、
前記式I、II、IIIまたはIVの少なくとも1種の添加剤が、前記組成物の全質量に対して約0.00005~約1.0質量%の濃度で存在する、
方法。
【請求項13】
パターン化材料層が32nm以下のライン間寸法および10以上のアスペクト比を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
パターン化材料層が、パターン化現像フォトレジスト層、パターン化バリア材料層、パターン化マルチスタック材料層およびパターン化誘電材料層からなる群から選択される、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
基板が、
(i)浸漬フォトレジスト層、EUVフォトレジスト層、またはeBeamフォトレジスト層を前記基板に設ける工程と、
(ii)前記フォトレジスト層を、浸漬液を用いてまたは用いずにマスクを介して化学線に露光する工程と、
(iii)前記露光されたフォトレジスト層を現像液で現像して、50nm以下のライン間寸法および4以上のアスペクト比を有するパターンを得る工程と、
(iv)前記現像されたパターン化フォトレジスト層に前記非水性組成物を適用する工程と、
(v)前記非水性組成物の適用後に前記半導体基板をスピン乾燥する工程と
を含むフォトリソグラフィ法により提供される、請求項12から14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集積回路装置、光学装置、マイクロマシンおよび精密機械装置を製造するために、特にパターン崩壊を回避するために、組成物を使用する方法を対象とする。
【背景技術】
【0002】
LSI、VLSIおよびULSIを備えたICを製造する方法において、パターン化フォトレジスト層、窒化チタン、タンタルまたは窒化タンタルを含有するか、またはこれらからなるパターン化バリア材料層、例えば、交互のポリシリコンおよび二酸化ケイ素または窒化ケイ素の層のスタックを含有するか、またはこれらからなるパターン化マルチスタック材料層、ならびに二酸化ケイ素または低kまたは超低k誘電材料を含有するか、またはこれらからなるパターン化誘電材料層のようなパターン化材料層が、フォトリソグラフィ技術により製造される。最近では、このようなパターン化材料層は、22nmよりさらに小さい寸法で高アスペクト比を有する構造を含む。
【0003】
しかし、露光技術に関係なく、小さいパターンの湿式化学処理は、複数の問題を抱えている。技術が進歩し、寸法要求が厳密になればなるほど、パターンは、比較的細く背の高い構造、または装置構造の特徴部、すなわち、高アスペクト比を有する特徴部を基板上に含むことが必要とされる。これらの構造は、化学リンスおよびスピン乾燥工程後に残り、隣接するパターン化構造間に配置されるリンス液の脱イオン水の液体または溶液の過剰な毛細管力により、特に、スピン乾燥工程中、屈曲および/または崩壊を受ける場合がある。
【0004】
これまで、これらの問題は、Namatsuら、Appl.Phys.Lett.66(20)、1995に従って毛細管力により生じる小さな特徴部間の最大応力σを減少させることにより対処されていた:
【数1】
(式中、γは、流体の表面張力であり、θは、特徴部の材料表面の流体の接触角であり、Dは特徴部間の距離であり、Hは特徴部の高さであり、Wは特徴部の幅である)。
したがって、最大応力を減少させるために、これまでの方法では、流体の表面張力γを低下させるか、もしくは特徴部の材料表面の流体の接触角を増加させるか、またはこれらの両方に重点が置かれた。
【0005】
寸法の縮小により、欠陥のないパターン化構造を得るためには、粒子およびプラズマエッチング残留物の除去も決定的な要因となる。これは、フォトレジストパターンだけでなく、光学装置、マイクロマシンおよび精密機械装置の製造中に生じる他のパターン化材料層にも適用される。
【0006】
国際公開第2012/027667号は、高アスペクト比の特徴部の表面と添加剤組成物とを接触させることにより高アスペクト比の特徴部の表面を修飾して、修飾された表面を製造する方法であって、リンス溶液が修飾された表面と接触すると高アスペクト比の特徴部に作用する力は十分に最小化されて、少なくともリンス溶液の除去中、または少なくとも高アスペクト比の特徴部の乾燥中の高アスペクト比の特徴部の屈曲または崩壊を防止する、前記方法を開示している。修飾された表面は、約70°~約110°の範囲の接触角を有する必要がある。多くの他の種類の酸以外に、塩基、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤および両性イオン界面活性剤、いくつかのシロキサンタイプの界面活性剤が開示されている。水を含む様々な溶媒が記載されている。
【0007】
国際公開第2014/091363号は、他のタイプの界面活性剤以外に、シロキサンタイプの界面活性剤であり得る、10mN/m~35mN/mの表面張力を有する界面活性剤と組み合わせて疎水剤を含む水性組成物を開示している。水性組成物は好ましくは有機溶媒を含まない。
【0008】
しかし、これらの組成物は、サブ22nm構造において高いパターン崩壊を依然として受ける。とりわけ、何らかの理論に拘束されるわけではないが、本発明者らは、Namatsuによる理論的相関が同じ溶媒系でしか有効でないことから、脱イオン水で測定した約70°~約110°の範囲の接触角が、乾燥中、溶媒ベースの系の毛細管力を示すには不十分であることを見出した。さらに、方程式(1)は、乾燥中の毛細管力のみを示しており、乾燥中の崩壊/屈曲構造間の潜在的な化学反応および崩壊した構造の弾性回復力は無視している。したがって、本発明者らは崩壊した構造間の不可逆的接着を防止することにより、パターン崩壊も防止できると考える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第2012/027667号
【文献】国際公開第2014/091363号
【非特許文献】
【0010】
【文献】Namatsuら、Appl.Phys.Lett.66(20)、1995
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、先行技術の製造方法の欠点をもはや示さない、50nm以下のノード、特に32nm以下のノード、とりわけ22nm以下のノードの集積回路を製造する方法を提供することである。
【0012】
特に、本発明による化合物は、高アスペクト比および50nm以下、特に32nm以下、とりわけ22nm以下のライン間寸法を有するパターンを含むパターン化材料層の化学リンスを、パターン崩壊を引き起こさずに可能にするものとする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
いかなる理論にも拘束されることなく、本発明は、特徴部の材料表面の流体の低い表面張力γおよび流体の大きい接触角θに重点を置く方法が、特徴部に面する場合効果がなく、ますます収縮するという発見に基づくものである。
【0014】
先行技術では大きい水中接触角を示す界面活性剤に重点が置かれているが、本発明者らは、水中接触角が、パターン崩壊を減少させる界面活性剤の能力にほとんどまたは全く影響を与えないことを今や見出した。さらにそれとは反対に、本発明者らは、アンチパターン崩壊性能を高めるためには組成物が非水性でなくてはならないことを見出した。
【0015】
本発明は、本明細書に記載されるようにシロキサンタイプの非イオン性添加剤と組み合わせて有機溶媒を含む非水性組成物を使用することにより先行技術の欠点をすべて完全に回避する。
【0016】
本発明の第1の実施形態は、有機溶媒、および式I~IV
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
(式中、
R
1、R
2は独立してHまたはC
1~C
10アルキル基から選択され、
nは0、1または2であり、
e、u、vは独立して0~5から選択される整数であり、
b、d、wは独立して0~6の整数であり、
a、c、xは独立して1~22から選択される整数であり、
yは1~5の整数であり、
R
10、R
12は独立してHまたはC
1~C
10アルキル基から選択され、
R
11はHまたはC
1~C
10アルキル基から選択される)
の少なくとも1種の添加剤を含む非水性組成物を、50nm以下のライン間寸法または4以上のアスペクト比を有するパターンを含む基板を処理するために使用する方法である。
【0017】
本発明の別の実施形態は、集積回路装置、光学装置、マイクロマシンおよび精密機械装置を製造する方法であって、
(1)50nm以下のライン間寸法、4以上のアスペクト比、またはこれらの組み合わせを有するパターン化材料層を有する基板を提供する工程と、
(2)基板を前記請求項のいずれか一項に記載の非水性組成物と少なくとも1回接触させる工程と、
(3)非水性組成物を基板との接触から除去する工程と
を含む、方法である。
【0018】
シロキサンタイプの非イオン性添加剤と組み合わせて有機溶媒、好ましくは極性プロトン性有機溶媒を使用する方法は、50nm以下、特に32nm以下、最も特に22nm以下のライン間寸法を有するパターンを含む、パターン化現像フォトレジスト層に特に有用である。
【0019】
さらに、本発明によるシロキサンタイプの非イオン性添加剤と組み合わせて有機溶媒を含む非水性組成物を使用する方法は、パターン崩壊を引き起こさない4以上のアスペクト比に特に有用である。
【0020】
本発明によるシロキサンタイプの非イオン性添加剤と組み合わせて有機溶媒を含む洗浄溶液は、フォトレジスト構造、ならびに高アスペクト比のスタック(HARS)を有する非フォトレジストパターン、特に、交互のポリシリコンおよび二酸化ケイ素または窒化ケイ素の層を含むスタックを含有するか、またはこれらからなるパターン化マルチスタック材料層のパターン崩壊を回避するのに一般に有用であることに注目すべきである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、集積回路(IC)装置、光学装置、マイクロマシンおよび精密機械装置、特にIC装置のようなサブ50nmサイズの特徴部を含むパターン化材料を製造するのに特に適した組成物を対象とする。
【0022】
IC装置、光学装置、マイクロマシンおよび精密機械装置を製造するために用いられる任意の慣用および公知の基板を本発明の方法に使用できる。好ましくは、基板は半導体基板、より好ましくはシリコンウェハであり、このウェハはIC装置、特にLSI、VLSIおよびULSIを有するICを含むIC装置の製造に慣用的に用いられる。
【0023】
組成物は、50nm以下、特に32nm以下、とりわけ22nm以下のライン間寸法を有するパターン化材料層、すなわち、サブ22nm技術ノード用パターン化材料層を有する基板を処理するのに特に適している。パターン化材料層は4超、好ましくは5超、より好ましくは6超、さらにより好ましくは8超、さらにより好ましくは10超、さらにより好ましくは12超、さらにより好ましくは15超、さらにより好ましくは20超のアスペクト比を好ましくは有する。ライン間寸法が小さければ小さいほど、かつアスペクト比が高ければ高いほど、本明細書に記載の組成物を使用する方法はより有利である。
【0024】
本発明による組成物は、構造がその形状により崩壊する傾向がある限り、任意のパターン化材料の基板に適用できる。
【0025】
例として、パターン化材料層は、
(a)パターン化酸化ケイ素または窒化ケイ素でコーティングされたSi層、
(b)ルテニウム、コバルト、窒化チタン、タンタルまたは窒化タンタルを含有するか、またはこれらからなるパターン化バリア材料層、
(c)シリコン、ポリシリコン、二酸化ケイ素、低kおよび超低k材料、高k材料、シリコンおよびポリシリコン以外の半導体、ならびに金属からなる群から選択される少なくとも2種の異なる材料の層を含有するか、またはこれらからなるパターン化マルチスタック材料層、ならびに
(d)二酸化ケイ素または低kもしくは超低k誘電材料を含有するか、またはこれらからなるパターン化誘電材料層
であり得る。
【0026】
有機溶媒
アンチパターン崩壊組成物は、有機溶媒、好ましくは極性プロトン性有機溶媒を含む。
【0027】
驚くべきことに、少量の水でも対象組成物のアンチパターン崩壊能力の性能に影響を与え得ることが判明した。したがって、組成物、とりわけ本発明による組成物中に存在する有機溶媒(複数可)が非水性であることが重要である。IPAは通常、その吸湿性により、乾燥により除去されない限り、かなり大量の残留水を有する。
【0028】
本明細書で使用する「非水性」は、組成物が最大約1質量%の少量の水しか含有できないことを意味する。好ましくは、非水性組成物は、0.5質量%未満、より好ましくは0.2質量%未満、さらにより好ましくは0.1質量%未満、さらにより好ましくは0.05質量%未満、さらにより好ましくは0.02質量%未満、さらにより好ましくは0.01質量%未満、さらにより好ましくは0.001質量%未満の水を含む。最も好ましくは、本質的に水は組成物中に存在しない。ここで「本質的に」は、組成物中に存在する水が、処理される基板のパターン崩壊に関して非水溶液中の添加剤の性能に有意な影響を与えないことを意味する。
【0029】
有機溶媒は、組成物で処理される基板に悪影響を与えずに加熱により除去されるのに十分に低い沸点を有する必要がある。典型的な基板に対して、有機溶媒の沸点は、150℃以下、好ましくは100℃以下でなくてはならない。
【0030】
溶媒は、プロトン性または非プロトン性有機溶媒であり得る1種以上の有機溶媒から本質的になるのが好ましい。1種以上の極性プロトン性有機溶媒が好ましく、単一の極性プロトン性有機溶媒が最も好ましい。
【0031】
本明細書で使用する「極性非プロトン性有機溶媒」は、酸性水素を有さない(すなわち、水素イオンを含有しないか、またはこれを与えることができない)有機溶媒であり、1.7以上の双極子モーメントを有する。
【0032】
典型的な極性非プロトン性有機溶媒としては、(a)それだけに限らないが、ケトン、それだけに限らないが例えば、アセトン、(b)ラクトン、それだけに限らないが例えば、γ-ブチロラクトン、(c)ラクタム、それだけに限らないが例えば、N-メチル-2-ピロリドン、(d)ニトリル、それだけに限らないが例えば、アセトニトリル、(e)ニトロ化合物、それだけに限らないが例えば、ニトロメタン、(f)第3級カルボン酸アミド、それだけに限らないが例えば、ジメチルホルムアミド、(g)尿素誘導体、それだけに限らないが例えば、テトラメチル尿素またはジメチルプロピレン尿素(DMPU)、(h)スルホキシド、それだけに限らないが例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、(i)スルホン、それだけに限らないが例えば、スルホラン、(h)炭酸エステル、それだけに限らないが例えば、炭酸ジメチルまたは炭酸エチレンがある。
【0033】
本明細書で使用する「極性プロトン性有機溶媒」は、酸性水素を含む(すなわち、水素イオンを与えることができる)有機溶媒である。
【0034】
典型的な極性プロトン性有機溶媒としては、それだけに限らないが(a)アルコール、それだけに限らないが例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール(イソプロパノール)もしくはブタノール、(b)第1級もしくは第2級アミン、カルボン酸、それだけに限らないが例えば、ギ酸もしくは酢酸、または(c)第1級もしくは第2級アミド、それだけに限らないが例えば、ホルムアミドがある。
【0035】
好ましい有機溶媒は、少なくとも1個の水素基を含む、直鎖、分岐または環状脂肪族アルコール、特に、直鎖または分岐アルカノールである。好ましいアルカノールはメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノールおよびブタノールである。イソプロパノールが最も好ましい。
【0036】
式Iの添加剤
本発明の一実施形態において、本発明による非イオン性添加剤(添加剤またはシロキサンとも称される)は、式I
【化5】
(式中、
R
1、R
2は独立してHまたはC
1~C
10アルキル基、好ましくはH、メチル、プロピルまたはブチル、最も好ましくはメチルから選択され、
eは0~5、好ましくは0、1または2、最も好ましくは0または1から選択される整数であり、
b、dは独立して0~6、好ましくは0または1~3、最も好ましくは0、1または2の整数であり、
a、cは独立して1~22、好ましくは3~20、最も好ましくは5~15から選択される整数であり、
R
10、R
12は独立してHまたはC
1~C
10アルキル基、好ましくはH、メチル、エチル、プロピルまたはブチル、最も好ましくはメチルから選択され、
R
11はHまたはC
1~C
3アルキル基、好ましくはH、メチルまたはエチル、最も好ましくはHまたはメチルから選択される)
から選択され得る。
【0037】
好ましい実施形態において、
R1、R2が独立してH、メチルまたはエチル、好ましくはメチルから選択され、
eが0、1または2、好ましくは1であり、
b、dが0、1または2、好ましくは0または1であり、
a、cが独立して0~10、好ましくは0~4から選択される整数であり、
R10、R12が独立してH、メチルまたはエチル、好ましくはメチルから選択され、
R11がメチルまたはエチル、好ましくはメチルから選択される、
式Iのシロキサンが用いられる。
【0038】
式IIの添加剤
本発明の一実施形態において、本発明による非イオン性添加剤(添加剤またはシロキサンとも称される)は、いわゆるトリシロキサンタイプおよびレーキタイプのシロキサン添加剤を包含する式II
【化6】
(式中、
R
1、R
2は独立してHまたはC
1~C
10アルキル基、好ましくはH、メチル、エチル、プロピルまたはブチル、最も好ましくはメチルまたはエチルから選択され、
eは0~5、好ましくは0、1または2、最も好ましくは1の整数であり、
R
10、R
12は独立してHまたはC
1~C
10アルキル基、好ましくはH、メチル、プロピルまたはブチル、最も好ましくはメチルまたはエチルから選択される)
から選択され得る。
【0039】
好ましい実施形態において、
R1、R2がメチルであり、
eが0、1または2、好ましくは1であり、
R10、R12が独立してメチルまたはエチル、好ましくはメチルから選択される、
式IIのシロキサンが用いられる。
【0040】
式IIIの添加剤
本発明の別の実施形態において、本発明による非イオン性添加剤(添加剤とも称される)は、いわゆるABAタイプのシロキサン添加剤を包含する式III
【化7】
(式中、
R
1、R
2は独立してHまたはC
1~C
10アルキル基、好ましくはH、メチル、エチル、プロピルまたはブチル、最も好ましくはメチルまたはエチルから選択され、
u、vは独立して0~5、好ましくは0、1、2または3、最も好ましくは0または1から選択される整数であり、
wは0~6、好ましくは0または1~3、最も好ましくは0、1または2の整数であり、
xは1~22、好ましくは2~20、最も好ましくは5~15の整数であり、
yは1~5、好ましくは1または2、最も好ましくは1の整数であり、
R
10、R
12は独立してHまたはC
1~C
10アルキル基、好ましくはH、メチル、エチル、プロピルまたはブチル、最も好ましくはメチルまたはエチルから選択され、
R
11はH、メチルまたはエチル、好ましくはHまたはメチル、最も好ましくはHから選択される)
から選択され得る。
【0041】
好ましい実施形態において、式IIIのシロキサンは、
R1、R2がメチルまたはエチル、好ましくはメチルであり、
u、vが0または1、好ましくは0であり、
wが0または3、好ましくは3であり、
xが2~20、好ましくは5~15の整数であり、
yが1または2、好ましくは1であり、
R10、R12が独立してメチルまたはエチル、好ましくはメチルから選択され、
R11がHまたはメチル、好ましくはHから選択される、
シロキサンである。
【0042】
式IVの添加剤
本発明の別の実施形態において、本発明による非イオン性添加剤(添加剤とも称される)は、式IV
【化8】
(式中、
R
1、R
2は独立してHまたはC
1~C
10アルキル基、好ましくはメチル、エチル、プロピルまたはブチル、最も好ましくはメチルまたはエチルから選択され、
nは0、1または2、好ましくは0または1、最も好ましくは1である)
から選択され得る。
【0043】
好ましい実施形態において、少なくとも1種の添加剤は、
nが1であり、
R1、R2が同一または異なり、メチル、エチル、プロピルまたはブチルから選択される、
式IVの環状シロキサンである。
【0044】
式I~IVのシロキサン化合物は、例えば、商品名Silwet(商標)およびTegopren(商標)で市販されている。
【0045】
非水溶液中の式I、II、IIIおよびIVの添加剤の濃度は一般に約0.00005~約3質量%の範囲であり得る。好ましくは、添加剤の濃度は、約0.00005~約1.0質量%、より好ましくは約0.0005~約0.5質量%、さらにより好ましくは0.0005~0.1質量%、さらにより好ましくは0.001~0.1質量%、最も好ましくは0.002~0.1質量%であり、質量%は組成物の全質量に対するものである。
【0046】
組成物中に1種以上の添加剤が存在し得るが、式I、II、IIIまたはIVの添加剤1種のみを使用することが好ましい。好ましくは、非水性組成物は、超純水および式I、II、IIIまたはIVの添加剤1種のみからなる。
【0047】
最も好ましくは、組成物は、単一の有機溶媒および式I、II、IIIまたはIVの単一の添加剤からなる。
【0048】
それにもかかわらず、さらなる添加剤が本発明による洗浄溶液中に存在し得る。このような添加剤は、
(I)pH調整のための緩衝成分、それだけに限らないが例えば、(NH4)2CO3/NH4OH、Na2CO3/NaHCO3、トリス-ヒドロキシメチル-アミノメタン/HCl、Na2HPO4/NaH2PO4もしくは酢酸など、メタンスルホン酸のような有機酸、
(II)混合物の表面張力および溶解性を改善する1種以上のさらなる添加剤で、非イオン性もしくはアニオン性添加剤のいずれか、または
(III)除去された汚れまたはポリマー粒子の表面再付着を防止する分散剤
であり得る。
【0049】
本発明の方法によれば、2種の異なるタイプの添加剤を含む非水溶液は、異なる目的および目標のために用いられ得る。したがって、これは、マスクを介して化学光を照射する間、フォトレジストを浸漬するための浸漬液として、マスクを介して光学線に露光されたフォトレジスト層の現像液として、およびパターン化材料層をリンスするための化学リンス溶液として用いられ得る。
【0050】
一実施形態において、集積回路装置、光学装置、マイクロマシンおよび精密機械装置を製造する方法であって、
(1)50nm以下のライン間寸法および4以上のアスペクト比を有するパターン化材料層を有する基板を提供する工程と、
(2)基板を本明細書に記載される少なくとも1種のシロキサン添加剤を含有する非水溶液と少なくとも1回接触させる工程と、
(3)水溶液を基板との接触から除去する工程と
を含む、方法が見出された。
【0051】
本発明による方法の第3の工程において、非水溶液は、基板との接触から除去される。固体面から液体を除去するために慣用的に用いられる任意の公知の方法を使用できる。
【0052】
好ましくは、基板は、
(i)浸漬フォトレジスト層、EUVフォトレジスト層、またはeBeamフォトレジスト層を基板に設ける工程と、
(ii)フォトレジスト層を、浸漬液を用いてまたは用いずにマスクを介して化学線に露光する工程と、
(iii)露光されたフォトレジスト層を現像液で現像して、32nm以下のライン間寸法および10以上のアスペクト比を有するパターンを得る工程と、
(iv)現像されたパターン化フォトレジスト層に本明細書に記載の非水性組成物を適用する工程と、
(v)非水性組成物の適用後に半導体基板をスピン乾燥する工程と
を含むフォトリソグラフィ法により提供される。
【0053】
任意の慣用および公知の浸漬フォトレジスト、EUVフォトレジストまたはeBeamフォトレジストを使用できる。浸漬フォトレジストはシロキサン添加剤の少なくとも1種、またはこれらの組み合わせを既に含有し得る。さらに、浸漬フォトレジストは他の非イオン性添加剤を含有し得る。好適な非イオン性添加剤は、例えば、米国特許第2008/0299487号A1、6頁、段落[0078]に記載されている。最も好ましくは、浸漬フォトレジストはポジレジストである。
【0054】
e-Beam露光または約13.5nmの極紫外線放射以外に、好ましくは、193nmの波長の紫外線放射が光学線として用いられる。
【0055】
浸漬リソグラフィの場合、好ましくは超純水が浸漬液として用いられる。
【0056】
任意の慣用および公知の現像液が、露光されたフォトレジスト層を現像するために用いられ得る。好ましくは、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)を含有する水性現像液が用いられる。
【0057】
好ましくは、化学リンス溶液は、露光および現像されたフォトレジスト層にパドルとして適用される。
【0058】
化学リンス溶液がシロキサン添加剤の少なくとも1種を含有することは、本発明の方法によるフォトリソグラフィ法に必須である。
【0059】
半導体産業において慣用的に用いられる慣用および公知の装置が、本発明の方法に従ってフォトリソグラフィ法を行うために用いられ得る。
【実施例】
【0060】
[実施例1]
円形のナノピラーパターンを有するパターン化シリコンウェハを使用して、乾燥中の配合物のパターン崩壊性能を決定した。試験に使用した(アスペクト比)AR20ピラーは、高さ600nmおよび直径30nmを有する。ピッチサイズは90nmである。1×1cmウェハ片を中間で乾燥せずに以下の順番で処理した。
・ 希フッ酸(DHF)0.5%に30秒浸漬、
・ 超純水(UPW)に60秒浸漬、
・ イソプロパノール(IPA)に60秒浸漬、
・ 室温でイソプロパノール中の各シロキサン添加剤溶液に60秒浸漬、
・ IPAに60秒浸漬、
・ N2による吹込み乾燥。
【0061】
乾燥したシリコンウェハをトップダウンSEMで分析した。例S1~S4について崩壊の統計を表1に示す。
【0062】
以下の添加剤を本実施例で使用した:
【化9】
【化10】
n=13~15
【数2】
【化11】
【数3】
【0063】
乾燥したシリコンウェハをトップダウンSEMで分析した。
【0064】
パターン崩壊クラスターサイズ分布をSEM像から決定した。クラスターサイズは、各クラスターを構成する崩壊しなかったピラーの数に対応している。例として、処理前のウェハが4×4ピラーを含み、8個が崩壊せず残存した場合、4個は、2個のピラーを含む2個のクラスターに崩壊し、4個のピラーは、4個のピラーを含む1個のクラスターに崩壊し、比は8/11の単一クラスター、2/11の二重クラスター、および1/11の4個のピラーを含むクラスターとなる。
【0065】
【0066】
表1は、添加剤1~4が、何らかの添加剤を含まない溶液と比較して、パターン崩壊の程度に有益な影響を与えることを示している。
【0067】
[実施例2]
有機溶媒中の水の影響を決定するために、円形のナノピラーパターンを有するパターン化シリコンウェハを使用して、乾燥中の配合物のパターン崩壊性能を決定した。試験に使用した(アスペクト比)AR20ピラーは、高さ550nmおよび直径25nmを有していた。ピッチサイズは90nmであった。1×1cmウェハ片を中間で乾燥せずに以下の順番で処理した。
・ 希フッ酸(DHF)0.5%に30秒浸漬、
・ 超純水(UPW)に60秒浸漬、
・ イソプロパノール(IPA)に60秒浸漬、
・ 室温でイソプロパノール中の各シロキサン添加剤溶液に60秒浸漬、
・ IPAに60秒浸漬、
・ N2による吹込み乾燥。
【0068】
乾燥したシリコンウェハをトップダウンSEMで分析した。パターン崩壊クラスターサイズ分布を上に記載したようにSEM像から決定した。
【0069】
結果を表2に示す。
【0070】
【0071】
表2は、1%の含水量と比較して、0.01%未満の少量の水では、崩壊したピラーの程度が低くなることを示している。