(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】歯間清掃具
(51)【国際特許分類】
A61C 15/02 20060101AFI20221212BHJP
A46B 9/04 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
A61C15/02 502
A46B9/04
(21)【出願番号】P 2018087033
(22)【出願日】2018-04-27
【審査請求日】2021-03-02
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100157808
【氏名又は名称】渡邉 耕平
(72)【発明者】
【氏名】吉川 侑
【審査官】佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/062135(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0123126(KR,A)
【文献】特表2016-521159(JP,A)
【文献】国際公開第2010/105390(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第107184288(CN,A)
【文献】国際公開第2008/022480(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 15/02
A46B 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯間に挿通されることが可能な形状を有する軸部を含む基部と、
前記軸部の少なくとも一部を被覆するとともに歯間を清掃可能な清掃部と、を備え、
前記清掃部は、
前記軸部の前記少なくとも一部を被覆する清掃部本体と、
それぞれが前記清掃部本体の外周面から外向きに突出する形状を有する複数のブラシと、を有し、
前記複数のブラシは、前記清掃部本体の外周面から離間するにしたがって次第に前記軸部の先端側に向かうように傾斜する形状を有する先端向き傾斜ブラシと、前記清掃部本体の外周面から離間するにしたがって次第に前記軸部の基端側に向かうように傾斜する形状を有する基端向き傾斜ブラシと、を含み、
前記先端向き傾斜ブラシ及び前記基端向き傾斜ブラシは、前記軸部の軸方向について当該軸部の先端側から基端側に向かって交互に並ぶように配置されている、歯間清掃具。
【請求項2】
請求項
1に記載の歯間清掃具において、
前記清掃部は、エラストマーと強化材とを含む複合材料からなる、歯間清掃具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯間清掃具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歯間を清掃するための歯間清掃具が知られている。例えば、特許文献1には、合成樹脂からなる基材部と、エラストマーからなる軟質部と、を備える歯間清掃具が開示されている。基材部は、歯間に挿通されることが可能な形状を有する芯基材部と、指で把持されることが可能な形状を有するハンドル基材部と、を有している。軟質部は、芯基材部の外周面を被覆する被覆部と、それぞれが被覆部の外周面に設けられた複数の突起部と、を有している。各突起部は、被覆部の外周面から芯基材部の軸方向と直交する方向の外向きに突出する形状を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されるような歯間清掃具では、歯間の汚れの掻き取り性を高めたいというニーズがある。そこで、各突起部の形状を大きくすることや、各突起部の剛性を高くすることが考えられる。しかしながら、そのようにすると、歯間へ挿入する際の抵抗や歯間からの抜き取る際の抵抗が増大する。
【0005】
本発明の目的は、歯間への挿入抵抗及び歯間からの抜き取り抵抗の少なくとも一方を低減しつつ、歯間の汚れの掻き取り性を高めることが可能な歯間清掃具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一局面に係る歯間清掃具は、歯間に挿通されることが可能な形状を有する軸部を含む基部と、前記軸部の少なくとも一部を被覆するとともに歯間を清掃可能な清掃部と、を備えている。前記清掃部は、前記軸部の前記少なくとも一部を被覆する清掃部本体と、それぞれが前記清掃部本体の外周面から外向きに突出する形状を有する複数のブラシと、を有している。前記複数のブラシは、前記清掃部本体の外周面から離間するにしたがって次第に前記軸部の先端側に向かうように傾斜する形状を有する先端向き傾斜ブラシと前記清掃部本体の外周面から離間するにしたがって次第に前記軸部の基端側に向かうように傾斜する形状を有する基端向き傾斜ブラシとを含み、前記先端向き傾斜ブラシ及び前記基端向き傾斜ブラシは、前記軸部の軸方向について当該軸部の先端側から基端側に向かって交互に並ぶように配置されている。
【0011】
また、前記歯間清掃具において、前記清掃部は、エラストマーと強化材とを含む複合材料からなることが好ましい。
【0012】
このようにすれば、清掃部がエラストマーのみからなる場合に比べて各ブラシの剛性が高まるので、歯の側面が有効に清掃される。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によれば、歯間への挿入抵抗及び歯間からの抜き取り抵抗の少なくとも一方を低減しつつ、歯間の汚れの掻き取り性を高めることが可能な歯間清掃具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態の歯間清掃具の正面図である。
【
図2】
図1に示される歯間清掃具の清掃部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態の歯間清掃具1について、
図1~
図3を参照しながら説明する。
図1に示されるように、歯間清掃具1は、基部10と、清掃部40と、を備えている。
【0016】
基部10は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ABS、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリアセタール等の合成樹脂により形成される。本実施形態では、基部10は、ガラス繊維を30重量%含有するポリプロピレンにより形成されている。この基部10は、軸部20と、把持部30と、を有する。
【0017】
軸部20は、特定方向(
図1の上下方向)に沿って直線状に延びるとともに歯間に挿通されることが可能な形状を有する。軸部20は、当該軸部20の先端側から基端側(先端側とは反対側)に向かうにしたがって軸部20の軸方向(
図1の上下方向)と直交する平面での当該軸部20の断面の外形が次第に大きくなる形状を有する。本実施形態では、軸部20の前記平面での断面は、円形である。すなわち、本実施形態では、軸部20は、当該軸部20の基端部から先端部に向かうにしたがって次第にその外径が小さくなる円柱状に形成されている。なお、軸部20の前記断面は、楕円形や多角形等であってもよい。
【0018】
把持部30は、軸部20の軸方向に沿って軸部20の基端部から離間するように延びており、指で把持されることが可能な形状を有する。把持部30は、扁平に形成されている。
【0019】
清掃部40は、歯間や歯の側面を清掃するための部位である。清掃部40は、基部10の硬度よりも低い硬度を有する樹脂材料により形成されている。具体的に、前記樹脂材料として、スチレン系エラストマーが用いられている。ただし、前記樹脂材料として、シリコン、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー等が用いられてもよい。この清掃部40は、清掃部本体50と、複数のブラシ60と、を有する。
【0020】
清掃部本体50は、軸部20の少なくとも一部(軸部20の先端部を含む部位)を被覆する。清掃部本体50は、軸部20の先端側から基端側に向かうにしたがって次第にその外形が大きくなる形状を有する。
【0021】
各ブラシ60は、清掃部本体50の外周面に設けられている。各ブラシ60は、前記軸方向と交差する方向である交差方向について清掃部本体50の外周面から外向きに突出する形状を有している。本実施形態では、各ブラシ60は、円錐状に形成されている。各ブラシ60は、清掃部本体50の外周面から離間するにしたがって次第に軸部20の基端側(
図2における下側)に向かうように傾斜する形状を有する基端向き傾斜ブラシで構成されている。
図2に示されるように、各基端向き傾斜ブラシの傾斜角度θ(軸部20の軸方向と直交する平面と清掃部本体50からの基端向き傾斜ブラシの突出方向とのなす角)は、1度以上70度以下に設定されることが好ましく、5度以上45度以下に設定されることがより好ましく、10度以上30度以下に設定されることがさらに好ましく、15度以上20度以下に設定されることが特に好ましい。なお、清掃部本体50からの基端向き傾斜ブラシの突出方向は、基端向き傾斜ブラシの中心軸に沿った方向を意味する。
【0022】
各ブラシ60は、軸部20の先端側から基端側に向かうにしたがって次第に清掃部本体50からの突出寸法が大きくなる形状を有する。また、
図3に示されるように、平面視において、各ブラシ60は、清掃部本体50の周方向について互いに離間した位置に設けられている。具体的に、各ブラシ60は、前記周方向について45度間隔で配置されている。
【0023】
以上に説明したように、本実施形態の歯間清掃具1では、複数のブラシ60が基端向き傾斜ブラシで構成されているので、清掃部40の歯間への挿入抵抗を低減しつつ、清掃部40の抜き取り時における歯間の汚れの掻き取り性を高めることが可能となる。具体的に、基端向き傾斜ブラシは、従来のように清掃部本体の外周面から軸部の軸方向と直交する方向に突出する形状を有するブラシ(以下、「非傾斜ブラシ」という。)に比べて歯間からの抜取抵抗は大きくなるものの、歯間への挿入抵抗が低減されるとともに、歯間からの抜き取り時における汚れの掻き取り性が高まる。
【0024】
なお、今回開示された上記実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0025】
例えば、複数のブラシ60は、清掃部本体50の外周面から離間するにしたがって次第に軸部20の先端側に向かうように傾斜する形状を有する先端向き傾斜ブラシで構成されてもよい。この態様では、清掃部40の歯間からの抜き取り抵抗を低減しつつ、清掃部40の挿入時における歯間の汚れの掻き取り性を高めることが可能となる。具体的に、先端向き傾斜ブラシは、前記非傾斜ブラシに比べて歯間への挿入抵抗は大きくなるものの、歯間への挿入時における汚れの掻き取り性が高まるとともに、歯間からの抜取抵抗が低減される。
【0026】
また、複数のブラシ60は、先端向き傾斜ブラシ及び基端向き傾斜ブラシの双方を含んでいてもよい。この場合、先端向き傾斜ブラシ及び基端向き傾斜ブラシは、前記軸方向について軸部20の先端側から基端側に向かって交互に並ぶように配置されていてもよい。
【0027】
また、各ブラシ60の傾斜角度θは、全て同じに設定されなくてもよい。例えば、傾斜角度θは、清掃部本体50の先端側から基端側に向かうにしたがって次第に小さくなるように設定されてもよい。
【0028】
また、各ブラシ60は、多角錐状に形成されてもよく、あるいは、板状(ヘラ状)に形成されてもよい。
【0029】
また、清掃部40は、前記樹脂材料と強化材(ガラス繊維やタルク等)とを含む複合材料により形成されてもよい。このようにすれば、清掃部40がエラストマーのみからなる場合に比べて各ブラシ60の剛性が高まるので、歯の側面が有効に清掃される。この場合、前記複合材料における前記強化材の含有量は、3重量%以上50重量%以下であることが好ましく、5重量%以上35重量%以下であることがより好ましい。
【符号の説明】
【0030】
1 歯間清掃具
10 基部
20 軸部
30 把持部
40 清掃部
50 清掃部本体
60 ブラシ