(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】増幅装置
(51)【国際特許分類】
H03F 1/34 20060101AFI20221212BHJP
H03F 3/185 20060101ALI20221212BHJP
H04R 3/00 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
H03F1/34
H03F3/185
H04R3/00 320
(21)【出願番号】P 2018167243
(22)【出願日】2018-09-06
【審査請求日】2021-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099818
【氏名又は名称】安孫子 勉
(72)【発明者】
【氏名】根本 竜平
【審査官】及川 尚人
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-067166(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0147060(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0090928(US,A1)
【文献】実開昭55-121516(JP,U)
【文献】特開2006-041441(JP,A)
【文献】特表2015-507877(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 1/00-3/72
H04R 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号が一方の差動入力端子に印加される差動アンプと、当該差動アンプの出力信号が制御端子に印加される出力トランジスタとを有して構成されてなる増幅装置であって、
前記一方の差動入力端子には、第2のコンデンサを介して入力信号が印加可能とされる一方、前記差動アンプの他方の差動入力端子は、第3のコンデンサを介してグランドに接続され,
前記差動アンプの前記一方の差動入力端子は第1の抵抗器を介して基準電圧が印加されると共に、第1のコンデンサを介して前記出力トランジスタの第1の端子に接続される一方、前記出力トランジスタの第2の端子は第2の抵抗器を介して前記差動アンプの他方の差動入力端子に接続され
、
前記出力トランジスタの第1の端子は、電源端子に接続される一方、前記出力トランジスタの第2の端子は、第3の抵抗器を介してグランド端子に接続され、
前記電源端子には、外部に設けられた負荷抵抗器を介して電源電圧が印加され、
前記負荷抵抗器と前記電源端子との接続点には、出力端子が接続され、増幅された音声信号が出力可能とされてなることを特徴とする増幅装置。
【請求項2】
入力信号が
一つの差動入力端子に印加される差動アンプと、当該差動アンプの出力信号が制御端子に印加される出力トランジスタとを有して構成されてなる増幅装置であって、
前記差動アンプの一方の差動入力端子は、第4のコンデンサを介してグランドに接続される一方、前記差動アンプの他方の差動入力端子は、第5のコンデンサを介して前記入力信号が印加可能とされ、
前記差動アンプの前記一方の差動入力端子は第1の抵抗器を介して基準電圧が印加されると共に、第1のコンデンサを介して前記出力トランジスタの第1の端子に接続される一方、前記出力トランジスタの第2の端子は第2の抵抗器を介して前記差動アンプの他方の差動入力端子に接続され
、
前記出力トランジスタの第1の端子は、電源端子に接続される一方、前記出力トランジスタの第2の端子は、第3の抵抗器を介してグランド端子に接続され、
前記電源端子には、外部に設けられた負荷抵抗器を介して電源電圧が印加され、
前記負荷抵抗器と前記電源端子との接続点には、出力端子が接続され、増幅された音声信号が出力可能とされてなることを特徴とする増幅装置。
【請求項3】
前記第1及び第2の抵抗器を、それぞれ逆並列接続されたダイオードに代えてなることを特徴とする請求項
1又は請求項
2記載の増幅装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増幅装置に係り、特に、2線式のマイクアンプとしての増幅装置におけるノイズ特性の向上等を図ったものに関する。
【背景技術】
【0002】
電子回路においては、電源とグランドに対して入出力端子が別個に備えられるのが一般的な構成である。
しかしながら、例えば、携帯電話の送話用のマイクロフォンとして使用されるエレクトレットコンデンサマイクロフォン(ECM:Electret Condenser Microphones)用の増幅装置にあっては、従来からトランジスタ1個で入力信号を電流変換し、電源に出力信号を重畳させて伝送するという構成が採られている。
【0003】
図5には、このようなECMアンプの構成例が示されている。
ECMマイクアンプ61は、マイクロフォントランスデューサTRの出力信号を増幅するMOSトランジスタM5-1を中心に構成されている。
ECMマイクアンプ61の外部に設けられた機器62は、安定した電源から負荷抵抗器RLを介して電源供給可能に構成されると共に、出力端子OUTは、負荷抵抗器RLの一端とECMマイクアンプ61の電源印加端子61aとの接続点とされる構成が採られている。
【0004】
このような使用形態においては、ECMマイクアンプ61から見れば電源と出力が共通になり、電源とグランドの2本の配線で信号伝送が可能(2線式)となる利点がある。
なお、同様の技術は、例えば、特許文献1等に開示されている。
【0005】
近年、小型マイクロフォンは、ECMに比べて耐熱性に優れ、リフロー実装が可能なMEMS(Micro-Electrical-Mechanical Systems)マイクロフォンがECMに取って代わりつつある。
一般的なMEMSマイクロフォンの場合、電源、グランド、及び、出力に、それぞれ配線が用いられて(3線式)、信号伝送が行われる構成が殆どである。
【0006】
ところが、イヤフォンとマイクが融合したイヤセットなどは、配線数が少なくできる2線式が好まれる。
ECMは2線式で用いることができるが、そのサイズは比較的大きく、装置の小型化の要請にそぐわないため、3線式のMEMSマイクロフォンを、
図6に示された構成を採ることで2線式の動作に変換して使用されることもある。
すなわち、
図6において、イヤセット63は、増幅器A6-1を中心に構成された3線式のマイクロフォンモジュール64と、その出力側に設けられた抵抗器R6-1,R6-2及びコンデンサC6-1を有して構成されている。
【0007】
イヤセット63の外部に設けられた機器62は、安定した電源から負荷抵抗器RLを介して電源供給可能に構成されている。そして、マイクロフォンモジュール64の電源端子64aが負荷抵抗器RLの一端に接続されると共に、この接続点が出力端子OUTとされている。さらに、マイクロフォンモジュール64の出力端子64b側に抵抗器R6-1,R6-2及びコンデンサC6-1を設けることで、2線式の動作に変換してイヤセット63として使用されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、3線式MEMSマイクを用いて2線式出力に変換した場合、ノイズが増大する傾向にあるという問題がある。
このノイズ増大は、次述するような原因によるものである。
すなわち、先ず、
図6の構成においては、定常的に抵抗器R6-1に流れる電流で動作点が決定される一方、音声信号に追従して抵抗器R6-1及びR6-2の並列接続部分に流れる電流が消費電流として増減される動作となる。
【0010】
この動作で増減する電流については、低ノイズである出力信号から生成されるため、比較的低ノイズとなる。
しかし、全体の出力電流には、通常の消費電流も含まれるため、消費電流に含まれる電流ノイズも加算される結果となる。通常、MEMSマイクは、マイクアンプ部の他に、MEMSトランスデューサに対する電圧供給を担うBIAS電圧発生部も備える構成となっており、出力ノイズと比較しても大きなノイズが生ずる。
【0011】
そのため、先の2線式構成で得られるSNR(Signal-to-Noise Ratio)は、3線式から数dB低下したレベルとなる。
また、上述のように、別途、BIAS電圧発生部等の外付け部品、回路が必要となることによるコストや基板面積の増加という問題もある。
このような問題に対する方策の一つとして、例えば、
図7に示されたような構成を採ることが考えられる。
【0012】
この
図7に示された回路は、先に
図5に示された回路構成を基本として、MOSトランジスタM7-1の前段に差動増幅器A7-1を、いわゆるボルテージフォロアとして動作するよう設けたものである。
かかる構成によって、上述した外付け回路を設ける構成と等価な動作を確保することは可能であるが、ノイズの改善には至らない。
【0013】
これらの問題を簡単に解決する方策としては、例えば、
図8に示された回路構成を採ることが考えられる。
図8に示された回路は、
図7に示された回路構成同様、終段のMOSトランジスタM8-1の前段に差動増幅器A8-1が設けられた構成を有し、電源端子から帰還を掛けて差動増幅器A8-1のゲインによりノイズ圧縮を可能としたものである。
【0014】
かかる構成においては、ノイズ圧縮が可能であるという利点がある反面、電源電圧の変化に追従して消費電流が増減してしまい、アプリケーションによっては動作電圧範囲が狭い特性となってしまうという欠点がある。
【0015】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、電源電圧の大小に関わらず安定した出力電流の確保を可能とすると共に良好なノイズ特性の増幅装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記本発明の目的を達成するため、本発明に係る増幅装置は、
入力信号が一方の差動入力端子に印加される差動アンプと、当該差動アンプの出力信号が制御端子に印加される出力トランジスタとを有して構成されてなる増幅装置であって、
前記一方の差動入力端子には、第2のコンデンサを介して入力信号が印加可能とされる一方、前記差動アンプの他方の差動入力端子は、第3のコンデンサを介してグランドに接続され,
前記差動アンプの前記一方の差動入力端子は第1の抵抗器を介して基準電圧が印加されると共に、第1のコンデンサを介して前記出力トランジスタの第1の端子に接続される一方、前記出力トランジスタの第2の端子は第2の抵抗器を介して前記差動アンプの他方の差動入力端子に接続され、
前記出力トランジスタの第1の端子は、電源端子に接続される一方、前記出力トランジスタの第2の端子は、第3の抵抗器を介してグランド端子に接続され、
前記電源端子には、外部に設けられた負荷抵抗器を介して電源電圧が印加され、
前記負荷抵抗器と前記電源端子との接続点には、出力端子が接続され、増幅された音声信号が出力可能とされてなるものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、入力信号が印加される差動アンプの一方の差動入力端子に出力トランジスタからの帰還を施すようにしたので、消費電流によるノイズも帰還されることで、差動アンプのゲインによるノイズ圧縮が行われ、ノイズ特性が向上されるという効果を奏するものである。
さらに、差動アンプの一方の差動入力端子は基準電圧に固定されるため、差動アンプの他方の差動入力端子も同一の電圧となるように出力トランジスタの電流を流すことで動作点が決定する帰還回路を設けたので、電源電圧によらず出力電流の安定化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施の形態における増幅装置の第1の回路構成例を示す回路図である。
【
図2】本発明の実施の形態における増幅装置の第2の回路構成例を示す回路図である。
【
図3】本発明の実施の形態における増幅装置の第3の回路構成例を示す回路図である。
【
図4】本発明の実施の形態における増幅装置の第3の回路構成例を示す回路図である。
【
図5】従来回路の第1の回路構成例を示す回路図である。
【
図6】従来回路の第2の回路構成例を示す回路図である。
【
図7】従来回路の第3の回路構成例を示す回路図である。
【
図8】従来回路の第4の回路構成例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、
図1乃至
図4を参照しつつ説明する。
なお、以下に説明する部材、配置等は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
最初に、第1の回路構成例について、
図1を参照しつつ説明する。
増幅装置としてのマイクロフォンモジュール51は、差動アンプ(
図1においては「A1」と表記)1と、出力NMOSトランジスタ(
図1においては「M1」と表記)2を主たる構成要素として構成されている。
【0020】
差動アンプ1は、一方の差動入力端子(例えば、非反転入力端子)が、第1のコンデンサ(
図1においては「C1」と表記)15を介して電源端子31に接続されており、後述するように外部からの電源電圧が印加されるようになっている。
さらに、差動アンプ1の一方の入力端子には、第2のコンデンサ(
図1においては「C2」と表記)16を介して図示されないマイクロフォントランスデューサにより得られた音声信号が入力されるものとなっている。
【0021】
またさらに、差動アンプ1の一方の入力端子には、第1の抵抗器(
図1においては「R1」と表記)11を介して基準電圧VREFが印加される。
一方、差動アンプ1の他方の入力端子(例えば、反転入力端子)は、第3のコンデンサ(
図1においては「C3」と表記)17を介してグランド端子32に接続されている。
【0022】
また、差動アンプ1の他方の入力端子は、第2の抵抗器(
図1においては「R2」と表記)12を介して出力NMOSトランジスタ2のソースに接続されている。
出力NMOSトランジスタ2のゲート(制御端子)には、差動アンプ1の出力端子が接続されている。
【0023】
出力NMOSトランジスタ2のドレイン(第1の端子)は、電源端子31に接続される一方、ソース(第2の端子)は第3の抵抗器(
図1においては「R3」と表記)13を介してグランド端子32に接続されている。
なお、差動アンプ1の電源端子(図示せず)は電源端子31に、また、差動アンプ1のグランド端子(図示せず)は、グランド端子32に、それぞれ接続されている。
【0024】
マイクロフォンモジュール51の電源端子31には、外部に設けられた負荷抵抗器(
図1においては「RL」と表記)14を介して電源電圧VDDが印加されるようになっている。
また、負荷抵抗器14と電源端子31との接続点には、出力端子33が接続されて、増幅された音声信号が出力可能とされている。
【0025】
上述の構成において、通過周波数は1/(2π×R2×C3)以上で、1/{2π×R1×(C1+C2)}となる。
なお、ここで、R1は第1の抵抗器11の抵抗値、R2は第2の抵抗器12の抵抗値、C1は第1のコンデンサ15の容量、C2は第2のコンデンサ16の容量、C3は第3のコンデンサ17の容量である。
【0026】
かかる構成においては、入力信号が第2のコンデンサ16を介して差動アンプ1の一方の入力端子に印加される一方、出力NMOSトランジスタ2と接続された第1のコンデンサ15を介した帰還回路によって消費電流によるノイズも一方の入力端子に帰還され、差動アンプ1のゲインにより入力信号からのノイズと共に圧縮されるため、従来に比してSNRの向上がなされることとなる。
【0027】
また、差動アンプ1の一方の入力端子は、基準電圧に固定されるため、他方の入力端子も同じ電圧になるよう出力NMOSトランジスタ2に電流を流すことで動作点が定まるように第2及び第3の抵抗器12,13を用いてなる帰還回路により、電源電圧の大小に関わらず出力電流が安定した動作が確保されることとなる。
なお、より詳細な動作について、後述する第3の回路構成例において説明する。
【0028】
次に、第2の回路構成例について、
図2を参照しつつ説明する。
なお、
図1に示された第1の回路構成例における構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明することとする。
先の
図1に示された第1の回路構成は、差動アンプ1が反転増幅を行う構成となっているのに対して、第2の回路構成例は、非反転増幅を行う構成とした点が異なる。
【0029】
まず、差動アンプ1の一方の入力端子は、第1の回路構成例における第2のコンデンサ16(
図1参照)に代えて、第4のコンデンサ(
図2においては「C4」と表記)18の一端が接続され、この第4のコンデンサ18の他端は、グランド端子32に接続されたものとなっている。
【0030】
また、差動アンプ1の他方の入力端子は、第1の回路構成例における第3のコンデンサ17(
図1参照)に代えて、第5のコンデンサ(
図2においては「C5」と表記)19を介して図示されないマイクロフォントランスデューサにより得られた音声信号が入力されるものとなっている。
なお、基本的な動作は、非反転増幅が行われる点を除けば、第1の回路構成例と同様であるので、ここでの再度の詳細な説明を省略することとする。
【0031】
次に、第3の回路構成例について、
図3を参照しつつ説明する。
なお、
図1、
図2に示された構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明することとする。
まず、先に
図1に示された第1の回路構成においては、第1乃至第3のコンデンサ15~17を集積回路内に実装する場合、これらの容量は数pFに設定されるため、第1及び第2の抵抗器11,12は、周波数帯域に見合った高抵抗を選択しなければならない。
【0032】
この第3の回路構成例は、上述の高抵抗を得るために、第1及び第2の抵抗器11,12に代えてダイオードを用いた構成を有するものである。
以下、具体的に説明する。
まず、第1の抵抗器11(
図1参照)に代えて、逆並列接続された第1及び第2のダイオード(
図3においては、それぞれ「D1」、「D2」と表記)3,4が、また、第2の抵抗器12(
図1参照)に代えて、逆並列接続された第3及び第4のダイオード(
図3においては、それぞれ「D3」、「D4」と表記)5,6が、それぞれ次述するように設けられている。
【0033】
すなわち、第1のダイオード3のアノードと第2のダイオード4のカソードが共に差動アンプ1の一方の入力端子に接続されている。一方、第1のダイオード3のカソードと第2のダイオード4のアノードは、相互に接続されて基準電圧VREFが印加されるようになっている。
【0034】
また、第3のダイオード5のアノードと第4のダイオード6のカソードが共に、差動アンプ1の他方の入力端子に接続されている。一方、第3のダイオード5のカソードと第4のダイオード6のアノードは、共に出力NMOSトランジスタ2のソースに接続されている。
【0035】
かかる構成における回路の動作点は、第1及び第2のダイオード3,4を介して基準電圧VREFに固定された一方の差動入力端子と他方の差動入力端子が同電位に帰還されることで決定される。すなわち、出力NMOSトランジスタ2には、VREF/R3で表される電流が流れる状態となる。なお、ここで、R3は、第3の抵抗器13の抵抗値とする。
【0036】
そして、この出力NMOSトランジスタ2に流れる電流と回路全体の消費電流との和が負荷抵抗器14を流れることで出力端子33の電位が決定する。
入力信号は、第2のコンデンサ16を介して一方の差動入力端子に入力されるが、通過周波数帯の信号が入力される場合、他方の差動入力端子には第3及び第4のダイオード5,6と第3のコンデンサ17で構成されるフィルタの効果により信号が減衰され、電圧が固定された状態と見ることができるので、回路全体として反転アンプとして動作する。
【0037】
すなわち、入力信号により変化した第2のコンデンサ16の電荷量と第1のコンデンサ15の変化する電荷量が等しくなるように動作するため、回路全体としてC2/C1のゲインを有する反転アンプとなる。なお、ここで、C1は第1のコンデンサ15の容量、C2は第2のコンデンサ16の容量である。
【0038】
また、消費電流に含まれるノイズは、出力端子33に出現しようとするが、出力端子33から第1のコンデンサ15を介して帰還されて出力NMOSトランジスタ2の電流で補正されるため、差動アンプ1のゲインが大きければ入力信号のノイズと差動アンプ1のノイズの和程度に抑圧することができる。
【0039】
また、第1乃至第4のダイオード3~6もノイズ源になり得るが、ダイオードのOFF抵抗はGΩオーダーの抵抗となり、第1乃至第3のコンデンサ15~17によりフィルタとして作用するため可聴帯域でのノイズは十分に低減される。
【0040】
この回路構成は、差動アンプ1のそれぞれの差動入力端子に、それぞれ別個の経路で帰還がなされる点に特徴がある。
一般的なシングルエンドのアンプ構成で出力を2つの差動入力端子に帰還する場合、どちらか一方が正帰還となり発散してしまう。
しかし、本発明の実施の形態における回路構成にあっては、出力NMOSトランジスタ2のソースとドレインのそれぞれから帰還しているため、どちらの経路で見ても負帰還として作用するようになっている。
【0041】
さらに、入力信号の周波数帯域によっていずれの経路が作用するかを分離することで、動作点とゲインを分離して決定することができ、それによってノイズ低減と消費電流の安定化が図られるものとなっている。
【0042】
なお、上述した
図3の構成についての動作説明は、
図1、
図2に示された回路構成例についても、第1乃至第4のダイオード3~6に代えて、第1及び第2の抵抗器11,12が用いられる点を除けば、基本的な動作については同様に適用できるものである。
【0043】
次に、第4の回路構成例について、
図4を参照しつつ説明する。
なお、
図1、
図2、又は、
図3に示された構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明することとする。
この第4の回路構成例は、
図2に示された第2の回路構成における第1及び第2の抵抗器11,12を第1乃至第4のダイオード3~6に代えた点が異なるもので、他の構成部分については、第2の回路構成例と同一である。
【0044】
なお、先の
図3に示された第3の回路構成例は、反転増幅回路であるのに対して、この第4の回路構成例は、非反転増幅回路である点で異なるが、第3の回路構成例で説明したように、出力NMOSトランジスタ2のソースとドレインのそれぞれから帰還が施されて、いずれの経路も負帰還として作用する回路動作は、この第4の回路構成例の場合においても基本的に同一であるので、ここでの再度の詳細な説明は省略することとする。
【産業上の利用可能性】
【0045】
電源電圧の大小に関わらず安定した出力電流の確保と良好なノイズ特性が所望される増幅装置に適用できる。
【符号の説明】
【0046】
1…差動アンプ
2…出力NMOSトランジスタ
14…負荷抵抗器
51…マイクロフォンモジュール