(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】可燃物処理装置及び可燃物処理方法
(51)【国際特許分類】
B09B 3/40 20220101AFI20221212BHJP
C08J 11/12 20060101ALI20221212BHJP
B09B 101/25 20220101ALN20221212BHJP
【FI】
B09B3/40
C08J11/12 ZAB
B09B101:25
(21)【出願番号】P 2018241383
(22)【出願日】2018-12-25
【審査請求日】2021-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】521297587
【氏名又は名称】UBE三菱セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091904
【氏名又は名称】成瀬 重雄
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 憲史
(72)【発明者】
【氏名】村岡 秀
(72)【発明者】
【氏名】林 浩志
【審査官】柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-051280(JP,A)
【文献】特開昭56-122984(JP,A)
【文献】特開2000-296378(JP,A)
【文献】特開2004-059754(JP,A)
【文献】特開平09-227882(JP,A)
【文献】特開2003-243021(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 3/00-5/00
C08J 11/00
C10B 53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩素分又は/及び硫黄分を含む可燃物を非酸化性雰囲気で加熱する加熱装置と、
前記加熱装置から排出される可燃性ガスを回収するガス回収装置と、
前記加熱装置において前記加熱後に残留する固形物を回収する固形物回収装置とを備え、
前記加熱装置は、
前記可燃物とアルカリ金属又は/及びアルカリ土類金属を含む固定化材
との混合物を500℃以上900℃以下で加熱する
加熱部と、この加熱部に非酸化性ガスを供給することにより前記加熱部内を「前記加熱部の内部容積」に対する「前記加熱部の内部を占める酸素の体積」の割合が1%以下である前記非酸化性雰囲気に維持する非酸化性ガス供給装置とを有し、前記加熱部内において前記可燃性ガスを発生させるとともに、前記可燃物に含まれる前記塩素分又は/及び硫黄分と前記固定化材に含まれる前記アルカリ金属又は/及びアルカリ土類金属とを反応させ
て前記アルカリ金属又は/及びアルカリ土類金属の塩化物又は/及び硫化物を含む固形物を生成させるものであり、
前記固形物回収装置には、前記固形物を脱塩・脱硫する脱塩・脱硫装置が設けられていることを特徴とする可燃物処理装置。
【請求項2】
前記ガス回収装置は、
前記加熱装置から排出された前記可燃性ガスを1000℃以上に加熱して改質するガス改質装置を備え、かつ、前記ガス改質装置から排出された可燃性ガスを回収することを特徴とする請求項
1に記載の可燃物処理装置。
【請求項3】
前記加熱装置に水又は/及び水蒸気を供給する水分供給装置をさらに備え、
前記加熱装置は、前記水又は/及び水蒸気を前記可燃物と共に加熱することを特徴とする請求項1
又は2に記載の可燃物処理装置。
【請求項4】
前記固定化材は、前記アルカリ金属又は/及びアルカリ土類金属を含む廃棄物又は副産物であることを特徴とする請求項1乃至
3のいずれか1項に記載の可燃物処理装置。
【請求項5】
加熱部内に供給された塩素分又は/及び硫黄分を含む可燃物と、アルカリ金属又は/及びアルカリ土類金属を含む固定化材と
の混合物を
、「前記加熱部の内部容積」に対する「前記加熱部の内部を占める酸素の体積」の割合が1%以下に維持された非酸化性雰囲気
において500℃以上900℃以下で加熱することで、前記可燃物に含まれる前記塩素分又は/及び硫黄分と、前記固定化材に含まれる前記アルカリ金属又は/及びアルカリ土類金属とを反応させ
て前記アルカリ金属又は/及びアルカリ土類金属の塩化物又は/及び硫化物を含む固形物を生成させるとともに、
前記加熱により発生した可燃性ガスを回収
し、
さらに、前記加熱後に残留する前記固形物を回収しかつ前記固形物を脱塩・脱硫することを特徴とする可燃物処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩素分又は/及び硫黄分を含む可燃物を加熱して処理する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
可燃物とは、継続して燃焼可能な物質(燃焼が遅い難燃性の物質を含む)をいう。可燃物を非酸化性雰囲気で加熱処理(熱分解)すると、可燃性ガス(一酸化炭素ガス、炭化水素ガス、水素ガスなど)が発生する。発生した可燃性ガスはカロリーを有するため、化石燃料の代替(燃料代替)として利用することが好ましい。
【0003】
しかし、塩素分を含む可燃物を熱分解する場合には、この熱分解により発生した可燃性ガスを燃焼設備において化石燃料の代替として有効に利用することが難しい。すなわち、塩素分を含む可燃物を熱分解すると、この熱分解により酸性で腐食性の高い塩化水素が遊離して可燃性ガスに混入する。これにより、この可燃性ガスと接触する反応装置や配管が劣化しやすく、また、この塩化水素が燃焼設備から大気中に放出されることで大気汚染を招くおそれもあるため、適正な排ガス処理が必要になる。
【0004】
そこで、下記特許文献1には、可燃性廃棄物を炭化炉で加熱し、炭化炉から排出された可燃性ガスをアルカリ水で洗浄し、この洗浄により塩素分が除去された可燃性ガスを燃焼設備に供給して化石燃料の代替として使用することが記載されている。
【0005】
しかし、下記特許文献1に記載の技術では、可燃性ガスから塩素分を除去する処理(アルカリ水による洗浄)に多大なコストを要するという問題がある。すなわち、下記特許文献1に記載の技術では、塩素分を含む可燃物から、化石燃料の代替として有効利用することが容易な可燃性ガス(塩素分がほとんど含まれない可燃性ガス)を回収する処理に、多大なコストを要してしまう。
【0006】
一方、硫黄分を含む可燃物を非酸化性雰囲気で加熱処理(熱分解)する場合にも、化石燃料の代替として有効利用することが容易な可燃性ガス(硫黄分がほとんど含まれない可燃性ガス)を低コストで回収することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、塩素分又は/及び硫黄分を含む可燃物から、化石燃料の代替として有効利用することが容易な可燃性ガスを低コストで回収することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係る可燃物処理装置は、塩素分又は/及び硫黄分を含む可燃物を非酸化性雰囲気で加熱する加熱装置と、前記加熱装置から排出される可燃性ガスを回収するガス回収装置とを備え、前記加熱装置は、アルカリ金属又は/及びアルカリ土類金属を含む固定化材を前記可燃物と共に加熱することで、前記可燃物に含まれる前記塩素分又は/及び硫黄分と前記固定化材に含まれる前記アルカリ金属又は/及びアルカリ土類金属とを反応させることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、可燃物に含まれる塩素分又は/及び硫黄分(以下「塩素分等」という。)と、固定化材に含まれるアルカリ金属又は/及びアルカリ土類金属(以下「アルカリ金属等」という。)とを加熱装置で反応させることができる。これにより、加熱装置に供給される可燃物に含まれる塩素分等をアルカリ金属等と反応させて無機固形物とすることができ、加熱装置から排出される可燃性ガスに塩素分等が含まれることを防止することができる。このため、加熱装置から排出される可燃性ガスを脱塩処理又は/及び脱硫処理する工程を設けなくても、燃料代替として有効利用することが容易な可燃性ガスを回収することができる。よって、塩素分等を含む可燃物から、燃料代替として有効利用することが容易な可燃性ガスを低コストで回収することができる。
【0011】
また、上記可燃物処理装置において、前記加熱装置は、前記可燃物及び前記固定化材を900℃以下で加熱することが好ましい。これにより、加熱装置から排出される可燃性ガスに塩素分等が含まれることをより効果的に防止することができる。すなわち、加熱装置における加熱温度が900℃を超えると、塩素分等とアルカリ金属等とが反応して無機固形物が生成しても、この無機固形物が分解して塩化水素が再度生成して可燃性ガスに混入する。しかし、加熱装置において可燃物及び固定化材を900℃以下で加熱することで、塩素分等とアルカリ金属等との反応により生成した無機固形物が分解することを回避し、この分解により塩化水素が再度生成することを防止することができる。よって、上述した分解により塩化水素が可燃性ガスに混入することを防止し、加熱装置から排出される可燃性ガスに塩素分等が含まれることをより効果的に防止することができる。
【0012】
さらに、上記可燃物処理装置において、前記ガス回収装置は、前記加熱装置から排出された可燃性ガスを1000℃以上に加熱して改質するガス改質装置を備え、かつ、前記ガス改質装置から排出された可燃性ガスを回収することが好ましい。
【0013】
これにより、タール生成による配管閉塞等のトラブルを防止することができ、ガス回収装置で回収する可燃性ガスの燃料代替としての利用価値を高めることができる。これは、加熱装置から排出された可燃性ガスには塩素分等がほとんど含まれていないため、ガス改質装置において余分なガス(塩化水素ガス)を加熱せずに可燃性ガスを効率よく加熱し、可燃性ガスを効率よく改質(軽質化)することができることによる。なお、ガス改質装置における加熱温度が1000℃未満であると、可燃性ガスに含まれるタール等の重質成分を十分に分解(軽質化)することができない。
【0014】
また、上記可燃物処理装置において、前記加熱装置に水又は/及び水蒸気を供給する水分供給装置をさらに備え、前記加熱装置は、前記水又は/及び水蒸気を前記可燃物と共に加熱することが好ましい。これにより、可燃物に含まれる固体炭素分を水分と反応させることができ、可燃性ガスである一酸化炭素ガスの生成量を増大させることができる。このため、可燃物に含まれる炭素分の多くを可燃性ガスに含めることができる。さらに、可燃物に含まれる固体炭素分を水分と反応させることで、可燃性ガスである水素ガスを生成することができる。このため、加熱装置において可燃性ガスの発生量をさらに高めることができ、ガス回収装置において回収可能な可燃性ガスの量を増加させることができる。
【0015】
さらに、上記可燃物処理装置において、前記固定化材は、前記アルカリ金属又は/及びアルカリ土類金属を豊富に含む廃棄物又は副産物であってもよい。これにより、一般的に利用価値が低い廃棄物又は副産物を固定化材として利用するため、固定化材の確保に要するコスト(固定化材の原料コスト)を低く抑えることができる。
【0016】
また、上記可燃物処理装置は、前記加熱装置において前記加熱後に残留する固形物を回収する固形物回収装置をさらに備え、前記加熱装置は、前記可燃物及び前記固定化材を500℃以上900℃以下で加熱することができる。
【0017】
これにより、固形物回収装置で回収した固形物の利用容易性を高めることができる。すなわち、加熱装置における加熱温度が500℃未満である場合、可燃物に含まれる固体有機分の一部がタール状に変化する。このため、可燃物の加熱時においてタール状の有機分が密集し、密集したタール状の有機分が加熱終了後に塊状固形物となるおそれがある。この場合、この塊状固形物を固形物回収装置で回収しても有効に利用することが難しい。その一方で、加熱装置における加熱温度が900℃を超える場合、可燃物に含まれる固体無機分の一部が液状に変化する。このため、可燃物の加熱時において液状の無機分が密集し、密集した液状の無機分が加熱終了後に塊状固形物となるおそれがある。この場合、この塊状固形物を固形物回収装置で回収しても有効に利用することが難しい。そこで、可燃物及び固定化材を500℃以上900℃以下で加熱して生成した固形物を回収することで、加熱装置において有機分が塊状固形物になることを防止し、かつ、無機分が塊状固形物になることを防止する。これにより、固形物回収装置で回収した固形物の利用容易性を高めることができる。
【0018】
また、本発明に係る可燃物処理方法は、塩素分又は/及び硫黄分を含む可燃物と、アルカリ金属又は/及びアルカリ土類金属を含む固定化材とを共に加熱することで、前記可燃物に含まれる前記塩素分又は/及び硫黄分と、前記固定化材に含まれる前記アルカリ金属又は/及びアルカリ土類金属とを反応させ、前記加熱により発生した可燃性ガスを回収することを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、可燃物に含まれる塩素分等と、固定化材に含まれるアルカリ金属等とを、可燃物及び固定化材の加熱により反応させることができる。これにより、可燃物に含まれる塩素分等をアルカリ金属等と反応させて無機固形物とすることができ、上記加熱により発生する可燃性ガスに塩素分等が含まれることを防止することができる。このため、上記加熱により発生する可燃性ガスを脱塩処理又は/及び脱硫処理する工程を設けなくても、燃料代替として有効利用することが容易な可燃性ガスを回収することができる。よって、塩素分等を含む可燃物から、燃料代替として有効利用することが容易な可燃性ガスを低コストで回収することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明によれば、塩素分又は/及び硫黄分を含む可燃物から、化石燃料の代替として有効利用することが容易な可燃性ガスを低コストで回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に係る可燃物処理装置を適用した可燃性廃棄物処理装置を示す全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明に係る可燃物処理装置を適用した可燃性廃棄物処理装置を示す全体構成図である。同図に示すように、可燃性廃棄物処理装置1は、加熱前処理装置11と、加熱処理装置21と、ガス回収装置31と、固形物回収装置41と、燃料代替利用設備51とを備える。
【0024】
加熱前処理装置11は、廃棄物供給装置12と、廃棄物供給装置12から供給された可燃性の廃棄物W1(可燃物)を破砕する廃棄物破砕装置13と、固定化材供給装置14と、固定化材供給装置14から供給された固定化材F1を破砕する固定化材破砕装置15とを備える。
【0025】
ここで、廃棄物W1には、有機分(炭素分)、塩素分、硫黄分及び重金属分が含まれている。また、廃棄物W1は、例えば、ポリ塩化ビニルなどを含む廃プラスチックとすることができる。
【0026】
さらに、固定化材F1は、アルカリ金属又は/及びアルカリ土類金属を含む材料である。固定化材F1には、Na分、Mg分又はCa分などを含む材料を使用することができる。ただし、固定化材F1には、固定化材F1の確保に要するコストを低く抑えるために、原料コストが低いCa分(特に水酸化カルシウム)を含む材料を使用するのが好ましい。なお、水酸化カルシウム以外のCa分を含む材料を使用してもよく、例えば、酸化カルシウムや炭酸カルシウムを含む材料を使用してもよい。
【0027】
また、固定化材F1には、アルカリ金属又は/及びアルカリ土類金属を含む廃棄物や工場副産物を使用することができ、例えば、焼却処理から発生する飛灰やばいじん、セメント焼成工程で発生する塩素バイパスダストなどを使用することができる。このように、一般的に利用価値が低い廃棄物や工場副産物を固定化材F1として利用することで、固定化材F1の確保に要するコスト(固定化材F1の原料コスト)を低く抑えることができる。
【0028】
廃棄物破砕装置13は、廃棄物供給装置12から供給された廃棄物W1を破砕することで、破砕廃棄物W2を排出するために備えられる。廃棄物破砕装置13としては、例えば二軸破砕機のようなせん断式破砕機を使用することができる。また、固定化材破砕装置15は、固定化材供給装置14から供給された固定化材F1を破砕することで、破砕固定化材F2を排出するために備えられる。固定化材破砕装置15としては、例えばハンマークラッシャーのような衝撃式破砕機を使用することができる。また、破砕廃棄物W2と破砕固定化材F2とは、混合されて混合物Mとなる。
【0029】
加熱処理装置21は、加熱装置22と、加熱装置22に水Lを供給する水分供給装置23と、加熱装置22に非酸化性ガスIを供給する非酸化性ガス供給装置24とを備える。
【0030】
加熱装置22は、破砕固定化材F2を破砕廃棄物W2と共に加熱する(混合物Mを加熱する)ために備えられる。また、加熱装置22は、混合物Mが供給される供給部22aと、供給部22aに供給された混合物Mを加熱する加熱部22bと、この加熱により発生した可燃性ガスG1及び固形物S1を排出する排出部22cとを有している。加熱装置22としては、例えばロータリーキルン、流動床炉を使用することができる。
【0031】
加熱部22bの内部において、混合物Mは500℃以上900℃以下で加熱される。ここで、加熱部22bの内部は、非酸化性ガス供給装置24から供給された非酸化性ガスIにより、酸素濃度(「加熱部22bの内部容積」に対する「加熱部22bの内部を占める酸素の体積」の割合)が1%以下の非酸化性雰囲気に維持されている。
【0032】
これにより、加熱部22bの内部において、混合物Mに含まれる有機分が燃焼せずに熱分解する。また、非酸化性雰囲気で混合物Mを加熱するため、毒性の極めて高いダイオキシンの生成を抑制することができる。さらに、加熱部22bの内部においては、混合物Mに含まれる塩素分や硫黄分と、同じく混合物Mに含まれるアルカリ金属やアルカリ土類金属とが反応することで、アルカリ金属やアルカリ土類金属の塩化物や硫化物が生成する。また、混合物Mに含まれる重金属分と硫黄分とが反応することで、重金属の硫化物も生成する。
【0033】
また、加熱部22bの内部において、水分供給装置23から水Lが供給されることにより、混合物Mに含まれる炭素分と水Lとが反応して一酸化炭素ガスと水素ガスとが生成する。
【0034】
非酸化性ガス供給装置24は、非酸化性ガスIとして水蒸気、窒素ガス、二酸化炭素ガス、アルゴンガスなどを加熱部22bの内部に供給する。
【0035】
ガス回収装置31は、加熱装置22から排出された可燃性ガスG1をさらに加熱して改質(軽質化)するガス改質装置32と、ガス改質装置32に酸素含有ガスOを供給する酸素含有ガス供給装置33と、ガス改質装置32から排出された可燃性ガスG2を集塵する集塵装置34と、集塵装置34から排出された可燃性ガスG3を誘引する誘引ファン35とを備える。
【0036】
ガス改質装置32は、可燃性ガスG1を1000℃以上1200℃以下(好ましくは1100℃以下)で完全燃焼に必要な理論酸素必要量以下の酸素量で加熱することで、可燃性ガスG1に含まれる炭素分(有機分)を部分燃焼させる。これにより、ガス改質装置32において、可燃性ガスG1より高いカロリー(熱量)を有する可燃性ガスG2が生成する。この可燃性ガスG2には、可燃性ガスG1に含まれる重質の炭化水素が分解して発生した軽質成分(一酸化炭素ガスやメタンガスなど)が含まれる。
【0037】
酸素含有ガス供給装置33は、可燃性ガスG1を部分燃焼させるための酸素含有ガスOをガス改質装置32に供給するために備えられる。酸素含有ガスOには、純酸素や空気などを使用することができる。
【0038】
集塵装置34は、ガス改質装置32から排出される可燃性ガスG2に含まれるカーボン粒子をダストDとして回収し、可燃性ガスG3を排出する。集塵装置34としては、バグフィルタやサイクロンを使用することができる。
【0039】
固形物回収装置41は、混合物Mを加熱した後の残留物である固形物S1を加熱装置22から取り出す固形物取出装置42と、固形物取出装置42で取り出された固形物S2を一時的に貯留する固形物貯留装置43と、固形物貯留装置43から供給された固形物S3を脱塩・脱硫する脱塩・脱硫装置44とを備える。なお、脱塩・脱硫装置44には、例えば、水洗装置を使用することができる。
【0040】
ここで、固形物S1は、無機固形物と有機固形物とが混合したものである。この無機固形物には、アルカリ金属の塩化物及び硫化物、アルカリ土類金属の塩化物及び硫化物、重金属の硫化物などが含まれる。また、この有機固形物には、混合物Mに含まれる有機分のうち可燃性ガスG1とならなかった炭化物が含まれる。
【0041】
燃料代替利用設備51は、例えば、セメント焼成装置、発電装置などとすることができる。燃料代替利用設備51においては、集塵装置34から排出された可燃性ガスG3、集塵装置34で回収したダストD、脱塩・脱硫装置44から排出された固形物S4が燃料代替として利用される。
【0042】
次に、本発明に係る可燃物処理方法について、
図1に示す可燃性廃棄物処理装置1を使用する場合を例にとって説明する。
【0043】
まず、廃棄物W1を廃棄物供給装置12により廃棄物破砕装置13に供給し、廃棄物W1を廃棄物破砕装置13において破砕する。一方、固定化材F1を固定化材供給装置14により固定化材破砕装置15に供給し、固定化材破砕装置15において固定化材F1を破砕する。
【0044】
次に、廃棄物破砕装置13から排出された破砕廃棄物W2と固定化材破砕装置15から排出された破砕固定化材F2とを混合して混合物Mとする。一方、加熱装置22の加熱部22b内部に非酸化性ガス供給装置24から非酸化性ガスIを供給し、加熱部22bの内部を非酸化性雰囲気に維持する。次に、混合物Mを加熱装置22の供給部22aに供給し、供給部22aに供給した混合物Mを加熱部22bに搬送して加熱部22bで加熱する。この時、水分供給装置23から水Lを加熱部22bの内部に供給する。また、加熱部22bにおける混合物Mの加熱温度は、500℃以上900℃以下とする。これにより、加熱部22bにおいて可燃性ガスG1と固形物S1とが生成し、排出部22cから可燃性ガスG1を排出する
【0045】
さらに、加熱装置22の排出部22cから排出された可燃性ガスG1をガス改質装置32に供給する。その一方で、酸素含有ガス供給装置33から酸素含有ガスOをガス改質装置32に供給する。これにより、ガス改質装置32において、可燃性ガスG1を1000℃以上1200℃以下に加熱して改質(軽質化)する。さらに、ガス改質装置32から排出される可燃性ガスG2から集塵装置34で集塵する。そして、集塵装置34から排出された可燃性ガスG3を燃料代替利用設備51に導入し、可燃性ガスG3を燃料代替利用設備51において燃料代替として利用する。さらに、集塵装置34で回収したダストDも燃料代替利用設備51において燃料代替として利用する。
【0046】
一方、加熱装置22の加熱部22bにおいて残留している固形物S1を排出部22cに搬送し、この固形物S1を固形物取出装置42で加熱装置22の外部へ取り出す。さらに、加熱装置22の外部へ取り出された固形物S2を固形物貯留装置43で貯留する。また、固形物貯留装置43から固形物S3を適宜脱塩・脱硫装置44に供給し、脱塩・脱硫装置44において固形物S3を脱塩・脱硫する。さらに、脱塩・脱硫装置44から排出された固形物S4を燃料代替利用設備51に供給し、固形物S4を燃料代替利用設備51において燃料代替として利用する。
【0047】
以上のように、上記実施の形態によれば、廃棄物W1に含まれる塩素分等と、固定化材F1に含まれるアルカリ金属等とを加熱装置22で反応させることができる。これにより、加熱装置22に供給される混合物Mに含まれる塩素分等をアルカリ金属等と反応させて無機固形物とすることができ、加熱装置22から排出される可燃性ガスG1に塩素分等が含まれることを防止することができる。このため、加熱装置22から排出される可燃性ガスG1を脱塩処理や脱硫処理する工程を設けなくても、燃料代替として有効利用することが容易な可燃性ガスG1を回収することができる。よって、塩素分等を含む廃棄物W1から、燃料代替として有効利用することが容易な可燃性ガスG1を低コストで回収することができる。
【0048】
また、上記実施の形態によれば、加熱装置22から排出される可燃性ガスG1に塩素分等が含まれることをより効果的に防止することができる。すなわち、加熱装置22における加熱温度が900℃を超えると、塩素分等とアルカリ金属等とが反応して無機固形物が生成しても、この無機固形物が分解して塩素分等含有ガスが再度生成する。しかし、加熱装置22において混合物Mを900℃以下で加熱することで、塩素分等とアルカリ金属等との反応により生成した無機固形物が分解することを回避し、この分解により塩素分等含有ガスが再度生成することを防止することができる。よって、上述した分解により塩素分等含有ガスが可燃性ガスG1に混入することを防止し、加熱装置22から排出される可燃性ガスG1に塩素分等が含まれることをより効果的に防止することができる。
【0049】
さらに、上記実施の形態によれば、加熱装置22から排出される可燃性ガスG1をガス改質装置32にて改質(軽質化)することで、タール生成による配管閉塞等のトラブルを防止することができ、ガス回収装置31で回収する可燃性ガスG3の燃料代替としての利用価値を高めることができる。これは、加熱装置22から排出された可燃性ガスG1には塩素分等がほとんど含まれていないため、ガス改質装置32において余分なガス(塩素分等含有ガス)を加熱せずに可燃性ガスG1を効率よく加熱し、可燃性ガスG1を効率よく改質(軽質化)することができることによる。なお、ガス改質装置32における加熱温度が1000℃未満であると、可燃性ガスG1に含まれるタール等の重質成分を十分に分解(軽質化)することができない。
【0050】
また、上記実施の形態によれば、混合物Mに含まれる固体炭素分を水分(水L)と反応させることができ、可燃性ガスである一酸化炭素ガスの生成量を増大させることができる。このため、混合物Mに含まれる炭素分の多くを可燃性ガスG1に含めることができる。さらに、混合物Mに含まれる固体炭素分を水分(水L)と反応させることで、可燃性ガスである水素ガスを生成することができる。このため、加熱装置22において可燃性ガスG1の発生量をさらに高めることができ、ガス回収装置31において回収可能な可燃性ガスG1の量を増加させることができる。
【0051】
また、上記実施の形態によれば、固形物回収装置41で回収した固形物S4の利用容易性を高めることができる。すなわち、加熱装置22における加熱温度が500℃未満である場合、混合物Mに含まれる固体有機分の一部がタール状に変化する。このため、混合物Mの加熱時においてタール状の有機分が密集し、密集したタール状の有機分が加熱終了後に塊状固形物となるおそれがある。この場合、この塊状固形物を固形物回収装置41で回収しても有効に利用することが難しい。その一方で、加熱装置22における加熱温度が900℃を超える場合、混合物Mに含まれる固体無機分の一部が液状に変化する。このため、混合物Mの加熱時において液状の無機分が密集し、密集した液状の無機分が加熱終了後に塊状固形物となるおそれがある。この場合、この塊状固形物を固形物回収装置41で回収しても有効に利用することが難しい。そこで、混合物Mを500℃以上900℃以下で加熱して生成した固形物S1を回収することで、加熱装置22において炭化物が塊状固形物になることを防止し、かつ、無機分が塊状固形物になることを防止する。これにより、固形物回収装置41で回収した固形物S4の利用容易性を高めることができる。
【0052】
なお、上記実施の形態においては、廃棄物W1として塩素分、硫黄分及び重金属分が含まれたものを利用したが、塩素分及び硫黄分の少なくともいずれかが含まれていればよい。
【0053】
また、上記実施の形態において、燃料代替利用設備51がセメント焼成装置である場合は、固定化材F1としてCa分を含む材料を使用することが特に好ましい。これにより、固形物S4にCa分(水酸化カルシウム、炭酸カルシウムなど)が含まれることになり、固形物S4に含まれるCa分をセメント焼成装置(燃料代替利用設備51)でセメント原料として利用することができる。このため、固定化材F1として多量のCa分を使用してもCa分の浪費とならず、多量のCa分を混合物Mとして加熱装置22に供給することができる。
【0054】
また、固定化材F1として使用したCa分は加熱装置22において炭素分の熱分解反応における触媒として作用し、混合物Mに含まれる炭素分から多くの可燃性ガスG1を発生させることができる。それゆえ、加熱装置22における可燃性ガスG1の発生率(混合物Mに含まれる炭素分の量に対する可燃性ガスG1の発生量の比率)を高めることができる。
【0055】
また、上記実施の形態においては、廃棄物破砕装置13を設置しているが、廃棄物W1が小さい場合には廃棄物破砕装置13を省略することができる。さらに、上記実施の形態においては、固定化材破砕装置15を設置しているが、固定化材F1が小さい場合には固定化材破砕装置15を省略することができる。この場合、混合物Mは、廃棄物供給装置12から供給された廃棄物W1と固定化材供給装置14から供給された固定化材F1との混合物とする。また、上記実施の形態においては、混合物Mを加熱装置22に供給しているが、破砕廃棄物W2と破砕固定化材F2とを混合せずに別々に加熱装置22に供給してもよい。但し、この場合は、加熱装置22に破砕廃棄物W2と破砕固定化材F2を供給する際、所定の量比となるように供給速度を調整することが好ましい。供給方法は、加熱装置22の形式に合わせて連続式、間欠式、回分式のいずれでもよい。
【0056】
さらに、上記実施の形態においては、非酸化性ガス供給装置24を設置しているが、加熱部22bの内部空気を吸引する吸引装置を非酸化性ガス供給装置24に代えて使用することもできる。また、上記実施の形態においては、加熱装置22に水Lを供給する水分供給装置23を設置しているが、水Lに代えて、あるいは、水Lと共に水蒸気を加熱装置22に供給する装置を使用することもできる。
【0057】
また、上記実施の形態においては、ガス回収装置31はガス改質装置32を備えているが、ガス改質装置32を備えないガス回収装置をガス回収装置31に代えて備えてもよい。
【0058】
また、上記実施の形態においては、脱塩・脱硫装置44を設置したが、固形物S3の塩素分濃度及び硫黄分濃度が低い場合には、脱塩・脱硫装置44を設置しなくてもよい。さらに、脱塩・脱硫装置44に代えて、脱塩装置のみ又は脱硫装置のみを設置することもできる。
【符号の説明】
【0059】
1 可燃性廃棄物処理装置
11 加熱前処理装置
12 廃棄物供給装置
13 廃棄物破砕装置
14 固定化材供給装置
15 固定化材破砕装置
21 加熱処理装置
22 加熱装置
22a 供給部
22b 加熱部
22c 排出部
23 水分供給装置
24 非酸化性ガス供給装置
31 ガス回収装置
32 ガス改質装置
33 酸素含有ガス供給装置
34 集塵装置
35 誘引ファン
41 固形物回収装置
42 固形物取出装置
43 固形物貯留装置
44 脱塩・脱硫装置
51 燃料代替利用設備
D ダスト
F1 固定化材
F2 破砕固定化材
G1 可燃性ガス
G2 可燃性ガス
G3 可燃性ガス
I 非酸化性ガス
L 水
M 混合物
O 酸素含有ガス
S1~S4 固形物
W1 廃棄物
W2 破砕廃棄物