(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】キャパシタおよびキャパシタの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 11/56 20130101AFI20221212BHJP
H01G 11/86 20130101ALI20221212BHJP
C08F 28/02 20060101ALI20221212BHJP
H01G 4/14 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
H01G11/56
H01G11/86
C08F28/02
H01G4/14
(21)【出願番号】P 2019002060
(22)【出願日】2019-01-09
【審査請求日】2021-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000173809
【氏名又は名称】一般財団法人電力中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000002200
【氏名又は名称】セントラル硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】小野 新平
(72)【発明者】
【氏名】名倉 裕力
(72)【発明者】
【氏名】松崎 寛樹
(72)【発明者】
【氏名】山本 純基
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 真太朗
【審査官】小林 大介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/114361(WO,A1)
【文献】特開2020-111648(JP,A)
【文献】国際公開第2020/031836(WO,A1)
【文献】特開2009-295882(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 11/56
H01G 11/86
C08F 28/02
H01G 4/14
H01G 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、第2電極と、前記第1電極及び前記第2電極の間に配置された容量膜と、を備えるキャパシタであって、
前記容量膜が、重合性イオン液体を含有する硬化性組成物の硬化物で構成されており、
前記重合性イオン液体が、
下記一般式(A1)もしくは一般式(A2)で表される少なくとも一方の重合性基含有アニオンと、
下記一般式(B1)で表されるアンモニウムカチオン、下記一般式(B2)で表されるホスホニウムカチオン、下記一般式(B3)で表されるイミダゾリウムカチオンおよび下記一般式(B4)で表されるピリジニウムカチオンからなる群から選択される一種以上のカチオンと、を含む、
キャパシタ。
【化1】
[一般式(A1)中、R
fはそれぞれ独立に、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖のパーフルオロアルキル基を表し、R
1は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12の置換アルキル基、炭素数6~18の芳香環基もしくは置換芳香環基、またはヒドロキシカルボニルメチル基(-CH
2-C(=O)OH)を表す。また、nは0~6の任意の整数を表す。]
【化2】
[一般式(A2)中、R
fはそれぞれ独立に、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖のパーフルオロアルキル基を表し、R
2は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12の置換アルキル基、炭素数6~18の芳香環基もしくは置換芳香環基、またはヒドロキシカルボニルメチル基(-CH
2-C(=O)OH)を表す。また、mは0~6の任意の整数を表す。]
【化3】
[上記一般式(B1)中、R
3、R
4、R
5、R
6はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12の置換アルキル基、炭素数6~18の芳香環基もしくは置換芳香環基、または重合性基を表す。また、R
3、R
4、R
5、またはR
6のうち二つ以上が結合し、環状構造を形成していてもよい。]
【化4】
[上記一般式(B2)中、R
7、R
8、R
9、R
10はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12の置換アルキル基、炭素数6~18の芳香環基もしくは置換芳香環基、または重合性基を表す。]
【化5】
[上記一般式(B3)中、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12の置換アルキル基、炭素数6~18の芳香環基もしくは置換芳香環基、または重合性基を表す。]
【化6】
[上記一般式(B4)中、R
16、R
17、R
18、R
19、R
20、R
21はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12の置換アルキル基、炭素数6~18の芳香環基もしくは置換芳香環基、または重合性基を表す。]
【請求項2】
請求項1に記載のキャパシタであって、
前記重合性基が、下記一般式(B5)で表される基を備える、キャパシタ。
【化7】
[上記一般式(B5)中、R
22は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12の置換アルキル基、炭素数6~18の芳香環基もしくは置換芳香環基、またはヒドロキシカルボニルメチル基(-CH
2-C(=O)OH)を表す。Wは単結合、炭素数1~6の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキレン基、炭素数6~12のアリーレン基またはカルボニル基(-C(=O)-)を表し、pは0もしくは1の整数を表す。]
【請求項3】
請求項1または2に記載のキャパシタであって、
前記容量膜が、前記硬化物からなるエレクトレットで構成される、キャパシタ。
【請求項4】
一対の対向電極の間に重合性イオン液体を含有する硬化性組成物を挟み込む工程と、
前記対向電極に電圧を印加した状態で、前記硬化性組成物に硬化処理を実施する硬化工程と、
得られた前記硬化性組成物の硬化物を容量膜として、第1電極と、第2電極との間に配置して、キャパシタを得る工程を含む、キャパシタの製造方法であって、
前記重合性イオン液体が、
下記一般式(A1)もしくは一般式(A2)で表される少なくとも一方の重合性基含有アニオンと、
下記一般式(B1)で表されるアンモニウムカチオン、下記一般式(B2)で表されるホスホニウムカチオン、下記一般式(B3)で表されるイミダゾリウムカチオンおよび下記一般式(B4)で表されるピリジニウムカチオンからなる群から選択される一種以上のカチオンと、を含む、
キャパシタの製造方法。
【化8】
[一般式(A1)中、R
fはそれぞれ独立に、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖のパーフルオロアルキル基を表し、R
1は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12の置換アルキル基、炭素数6~18の芳香環基もしくは置換芳香環基、またはヒドロキシカルボニルメチル基(-CH
2-C(=O)OH)を表す。また、nは0~6の任意の整数を表す。]
【化9】
[一般式(A2)中、R
fはそれぞれ独立に、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖のパーフルオロアルキル基を表し、R
2は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12の置換アルキル基、炭素数6~18の芳香環基もしくは置換芳香環基、またはヒドロキシカルボニルメチル基(-CH
2-C(=O)OH)を表す。また、mは0~6の任意の整数を表す。]
【化10】
[上記一般式(B1)中、R
3、R
4、R
5、R
6はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12の置換アルキル基、炭素数6~18の芳香環基もしくは置換芳香環基、または重合性基を表す。また、R
3、R
4、R
5、またはR
6のうち二つ以上が結合し、環状構造を形成していてもよい。]
【化11】
[上記一般式(B2)中、R
7、R
8、R
9、R
10はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12の置換アルキル基、炭素数6~18の芳香環基もしくは置換芳香環基、または重合性基を表す。]
【化12】
[上記一般式(B3)中、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12の置換アルキル基、炭素数6~18の芳香環基もしくは置換芳香環基、または重合性基を表す。]
【化13】
[上記一般式(B4)中、R
16、R
17、R
18、R
19、R
20、R
21はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12の置換アルキル基、炭素数6~18の芳香環基もしくは置換芳香環基、または重合性基を表す。]
【請求項5】
請求項4に記載のキャパシタの製造方法であって、
前記硬化工程において、前記対向電極の間の電流を検知し、当該電流が所定値以下となった後に、前記硬化性組成物に硬化処理を実施する、キャパシタの製造方法。
【請求項6】
請求項4または5に記載のキャパシタの製造方法であって、
前記硬化処理は、光照射または加熱処理の少なくとも一方の手段を含む、キャパシタの製造方法。
【請求項7】
請求項4から6のいずれか1項に記載のキャパシタの製造方法であって、
前記対向電極のうち一方の電極は、光を透過する透明電極である、キャパシタの製造方法。
【請求項8】
請求項4から7のいずれか1項に記載のキャパシタの製造方法であって、
前記挟み込む工程において、前記対向電極の間にスペーサーを配置した状態で、前記硬化性組成物を挟み込む、キャパシタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャパシタおよびキャパシタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気二重層を用いたキャパシタは最も古くから研究されている。一般的には、表面積を大面積化できる多孔質炭素表面に、誘電体有機物を付着・含浸して用いる。含浸物質としてイオン液体や電解液を用いた物は大容量キャパシタに適しており、自動車のスタータ用途などで知られている。キャパシタは高速で充電及び放電ができる。
【0003】
キャパシタやコンデンサには誘電体材料に加えて、電解液やイオン液体を用いた電気二重層が応用されている。しかし、液状の電解液やイオン液体ではイオンの拡散が起こりやすく、誘電体材料と同様に自然放電するため、電源を長期に保持するといったことについては使いにくいといった問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者が検討した結果、上記特許文献1に記載のキャパシタにおいて、電気的特性の点で改善の余地があることが判明した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者はさらに検討したところ、重合性イオン液体を含有する硬化性組成物を適切に硬化させた硬化物を、キャパシタの容量膜として利用することにより、キャパシタの電気的特性が改善されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明によれば、
第1電極と、第2電極と、前記第1電極及び前記第2電極の間に配置された容量膜と、を備えるキャパシタであって、
前記容量膜が、重合性イオン液体を含有する硬化性組成物の硬化物で構成されており、
前記重合性イオン液体が、
下記一般式(A1)もしくは一般式(A2)で表される少なくとも一方の重合性基含有アニオンと、
下記一般式(B1)で表されるアンモニウムカチオン、下記一般式(B2)で表されるホスホニウムカチオン、下記一般式(B3)で表されるイミダゾリウムカチオンおよび下記一般式(B4)で表されるピリジニウムカチオンからなる群から選択される一種以上のカチオンと、を含む、
キャパシタが提供される。
【化1】
[一般式(A1)中、R
fはそれぞれ独立に、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖のパーフルオロアルキル基を表し、R
1は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12の置換アルキル基、炭素数6~18の芳香環基もしくは置換芳香環基、またはヒドロキシカルボニルメチル基(-CH
2-C(=O)OH)を表す。また、nは0~6の任意の整数を表す。]
【化2】
[一般式(A2)中、R
fはそれぞれ独立に、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖のパーフルオロアルキル基を表し、R
2は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12の置換アルキル基、炭素数6~18の芳香環基もしくは置換芳香環基、またはヒドロキシカルボニルメチル基(-CH
2-C(=O)OH)を表す。また、mは0~6の任意の整数を表す。]
【化3】
[上記一般式(B1)中、R
3、R
4、R
5、R
6はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12の置換アルキル基、炭素数6~18の芳香環基もしくは置換芳香環基、または重合性基を表す。また、R
3、R
4、R
5、またはR
6のうち二つ以上が結合し、環状構造を形成していてもよい。]
【化4】
[上記一般式(B2)中、R
7、R
8、R
9、R
10はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12の置換アルキル基、炭素数6~18の芳香環基もしくは置換芳香環基、または重合性基を表す。]
【化5】
[上記一般式(B3)中、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12の置換アルキル基、炭素数6~18の芳香環基もしくは置換芳香環基、または重合性基を表す。]
【化6】
[上記一般式(B4)中、R
16、R
17、R
18、R
19、R
20、R
21はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12の置換アルキル基、炭素数6~18の芳香環基もしくは置換芳香環基、または重合性基を表す。]
【0008】
また本発明によれば、
一対の対向電極の間に重合性イオン液体を含有する硬化性組成物を挟み込む工程と、
前記対向電極に電圧を印加した状態で、前記硬化性組成物に硬化処理を実施する硬化工程と、
得られた前記硬化性組成物の硬化物を容量膜として、第1電極と、第2電極との間に配置して、キャパシタを得る工程を含む、キャパシタの製造方法であって、
前記重合性イオン液体が、
下記一般式(A1)もしくは一般式(A2)で表される少なくとも一方の重合性基含有アニオンと、
下記一般式(B1)で表されるアンモニウムカチオン、下記一般式(B2)で表されるホスホニウムカチオン、下記一般式(B3)で表されるイミダゾリウムカチオンおよび下記一般式(B4)で表されるピリジニウムカチオンからなる群から選択される一種以上のカチオンと、を含む、
キャパシタの製造方法が提供される。
【化7】
[一般式(A1)中、R
fはそれぞれ独立に、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖のパーフルオロアルキル基を表し、R
1は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12の置換アルキル基、炭素数6~18の芳香環基もしくは置換芳香環基、またはヒドロキシカルボニルメチル基(-CH
2-C(=O)OH)を表す。また、nは0~6の任意の整数を表す。]
【化8】
[一般式(A2)中、R
fはそれぞれ独立に、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖のパーフルオロアルキル基を表し、R
2は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12の置換アルキル基、炭素数6~18の芳香環基もしくは置換芳香環基、またはヒドロキシカルボニルメチル基(-CH
2-C(=O)OH)を表す。また、mは0~6の任意の整数を表す。]
【化9】
[上記一般式(B1)中、R
3、R
4、R
5、R
6はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12の置換アルキル基、炭素数6~18の芳香環基もしくは置換芳香環基、または重合性基を表す。また、R
3、R
4、R
5、またはR
6のうち二つ以上が結合し、環状構造を形成していてもよい。]
【化10】
[上記一般式(B2)中、R
7、R
8、R
9、R
10はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12の置換アルキル基、炭素数6~18の芳香環基もしくは置換芳香環基、または重合性基を表す。]
【化11】
[上記一般式(B3)中、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12の置換アルキル基、炭素数6~18の芳香環基もしくは置換芳香環基、または重合性基を表す。]
【化12】
[上記一般式(B4)中、R
16、R
17、R
18、R
19、R
20、R
21はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12の置換アルキル基、炭素数6~18の芳香環基もしくは置換芳香環基、または重合性基を表す。]
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電気的特性に優れたキャパシタおよびその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態に係るキャパシタの構成の一例を模式的に示す図である。
【
図2】本実施形態に係る振動発電素子の構成の一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施態様について説明するが、本発明は以下の実施の態様に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜実施することができる。
【0012】
本実施形態のキャパシタの概要を説明する。
図1は、キャパシタの構成の一例を模式的に示す断面図である。
本実施形態のキャパシタ100は、
図1に示すように、第1電極20と、第2電極30と、第1電極20及び第2電極30の間に配置された容量膜50と、を備える。キャパシタ100中の容量膜50は、重合性イオン液体を含有する硬化性組成物の硬化物で構成される。
【0013】
本発明者の知見によれば、重合性イオン液体を含有する硬化性組成物の硬化物を、容量膜に利用したときに、その電流密度や電流値保持率を高められることが分かった。このような硬化物で構成された容量膜を用いることで、キャパシタの電気的特性を向上させることが可能である。
【0014】
本実施形態によれば、電気的特性に優れたキャパシタを提供できる。また、保管時の自然放電が抑制され、高出力に応じた大面積化が抑制されたキャパシタを実現できる。
【0015】
以下、本実施形態の重合性イオン液体および硬化性樹脂組成物について詳述する。
【0016】
[重合性イオン液体]
本実施形態の重合性イオン液体は、重合性基含有アニオンと1価のカチオンとを含む。
上記重合性基含有アニオンは、下記一般式(A1)もしくは一般式(A2)で表される少なくとも一方の重合性基含有アニオンが用いられる。
上記1価のカチオンは、下記一般式(B1)で表されるアンモニウムカチオン、下記一般式(B2)で表されるホスホニウムカチオン、下記一般式(B3)で表されるイミダゾリウムカチオンおよび下記一般式(B4)で表されるピリジニウムカチオンからなる群から選択される一種以上のカチオンが用いられる。
これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
【0018】
上記一般式(A1)中、Rfはそれぞれ独立に炭素数1~10の直鎖または分岐鎖のパーフルオロアルキル基であり、炭素数1~4のものが好ましく、炭素数1のもの(トリフルオロメチル基)が特に好ましい。
上記一般式(A1)中、R1は水素原子、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12の置換アルキル基、炭素数6~18の芳香環基もしくは置換芳香環基、またはヒドロキシカルボニルメチル基(-CH2-C(=O)OH)を表す。
【0019】
上記アルキル基としては、炭素数1~12の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、炭素数3~12の環状アルキル基を表す。炭素数6~18の芳香環基もしくは置換芳香環基はフェニル基、ナフチル基、アントラニル基等を表す。
上記置換アルキル基における置換基は、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、アミノ基、炭素数1~10のアルキル基(環状アルキル基に置換する場合)、炭素数1~10のハロアルキル基(環状アルキル基に置換する場合)、ニトロ基、アセチル基、シアノ基、芳香環基またはヒドロキシル基であり、上記置換芳香環基における置換基はハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、アミノ基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のハロアルキル基、ニトロ基、アセチル基、シアノ基、芳香環基またはヒドロキシル基である。
上記R1としては水素原子、フッ素原子、メチル基、トリフルオロメチル基等が好ましく、水素原子が特に好ましい。
上記一般式(A1)中、nは0~6の任意の整数を表す。nは1または2が好ましい。
【0020】
上記一般式(A1)で表される化合物の重合性基含有アニオンとして、例えば、以下のものを例示することができる。すなわち、上記重合性基含有アニオンとして、ビス(パーフルオロアルカンスルホニル)メチル基および重合性二重結合含有基を備えるアニオンを用いることができる。
【0021】
【0022】
【0023】
上記一般式(A2)中、RfやR2は、一般式(A1)におけるRfやR2と同義であり、具体例、および好ましい種類についても同じものを挙げることができる。また、一般式(A2)中、mは0~6の任意の整数を表す。mは0~2が好ましい。
【0024】
上記一般式(A2)で表される化合物の重合性基含有アニオンとして、例えば、以下のものを例示することができる。すなわち、上記重合性基含有アニオンとして、パーフルオロアルカンスルホニル基および重合性二重結合含有基を備えるイミドアニオンを用いることができる。
【0025】
【0026】
上記1価のカチオンは、例えば、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、イミダゾリウムイオンおよびピリジニウムイオンのカチオンからなる群から選択される一種以上を含むことができる。
【0027】
また、上記1価のカチオンは、重合性基含有カチオンを含むことができる。すなわち、上記1価のカチオンとして、重合性基を有する1価のカチオンを用いることができる。
【0028】
上記1価のカチオンは、下記一般式(B1)で表されるアンモニウムカチオン、下記一般式(B2)で表されるホスホニウムカチオン、下記一般式(B3)で表されるイミダゾリウムカチオンおよび下記一般式(B4)で表されるピリジニウムカチオンからなる群から選択される一種以上の重合性基含有カチオンを含むことができる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
【0030】
上記一般式(B1)中、R3、R4、R5およびR6は各々独立に、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12の置換アルキル基、炭素数6~18の芳香環基もしくは置換芳香環基、または重合性基を表す。また、R3、R4、R5、またはR6のうち二つ以上が結合し、環状構造を形成していてもよく、環状構造として、アジリジニウム、ピロリジニウム、モルホリニウム、ピペラジニウム、ピペリジニウムなど窒素原子を含む非芳香族複素環を形成することができる。
該アルキル基、置換アルキル基、芳香環基および置換芳香環基は、それぞれ、一般式(A1)に表される化合物の、R1におけるアルキル基、置換アルキル基、芳香環基および置換芳香環基と同じである。
重合性基は重合性部位(二重結合部位)を含有するアルキル基、置換アルキル基、芳香環基または置換芳香環基のことを示し、該重合性部位は任意の炭素上に任意の数、任意の組み合わせで、それぞれの基に有する。また、重合性基は、重合性部位の他、重合性部位以外の基を任意の数、任意の組み合わせで有してもよい。重合性基としてはラジカル重合性基、カチオン重合性基が挙げられ、該ラジカル重合性基は(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、ビニル基、アリル基、メタアリル基、エチニル基、イソプロペニル基、ビニルオキシ基、アリルオキシ基、メタアリルオキシ基、ビニルチオ基、アリルチオ基、メタアリルチオ基、ビニルカルボニル基、アリルカルボニル基、メタアリルカルボニル基、ビニルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、メタアリルオキシカルボニル基、ビニルオキシカルボニルオキシ基、アリルオキシカルボニルオキシ基、メタアリルオキシカルボニルオキシ基、ビニルアミノ基、アリルアミノ基、メタアリルアミノ基などである。カチオン重合性基は、脂環式エーテル基、環状アセタール基、環状ラクトン基、環状チオエーテル基、スピロオルソエステル基、ビニルオキシ基などである。
アルキル基、置換アルキル基、芳香環基および置換芳香環基は、一般式(A1)に表される化合物においてR1で表したアルキル基、置換アルキル基、芳香環基および置換芳香環基と同じであるが、その中でも、炭素数1~8のアルキル基およびアリル基が好ましく、メチル基、ブチル基およびアリル基が特に好ましい。
上記一般式(B1)で表されるアンモニウムカチオンの具体例として、例えば、モノビニルアンモニウムイオン、ジビニルアンモニウムイオン、トリビニルアンモニウムイオン、モノアリルアンモニウムイオン、ジアリルアンモニウムイオン、トリアリルアンモニウムイオン、モノプロペニルアンモニウムイオン、ジプロペニルアンモニウムイオン、トリプロペニルアンモニウムイオン、モノブテニルアンモニウムイオン、ジブテニルアンモニウムイオン、トリブテニルアンモニウムイオン、モノペンテニルアンモニウムイオン、ジペンテニルアンモニウムイオン、トリペンテニルアンモニウムイオン、モノヘキセニルアンモニウムイオン、ジヘキセニルアンモニウムイオン、モノヘプテニルアンモニウムイオン、ジヘプテニルアンモニウムイオン、モノオクテニルアンモニウムイオン、ジオクテニルアンモニウムイオン、モノノネニルアンモニウムイオン、モノデセニルアンモニウムイオン、モノウンデセニルアンモニウムイオン、モノドデセニルアンモニウムイオン、モノトリデセニルアンモニウムイオン、モノテトラデセニルアンモニウムイオン、モノペンタデセニルアンモニウムイオン、モノヘキサデセニルアンモニウムイオン、モノヘプタデセニルアンモニウムイオン、モノオクタデセニルアンモニウムイオン、モノノナデセニルアンモニウムイオン、モノイコセニルアンモニウムイオン、モノヘンイコセニルアンモニウムイオン、モノドコセニルアンモニウムイオン、モノトリコセニルアンモニウムイオン、ジメチル(ビニル)アンモニウムイオン、ジメチル(プロペニル)アンモニウムイオン、ジメチル(ブテニル)アンモニウムイオン、ジメチル(ペンテニル)アンモニウムイオン、ジメチル(ヘキセニル)アンモニウムイオン、ジメチル(ヘプテニル)アンモニウムイオン、ジメチル(オクテニル)アンモニウムイオン、ジメチル(ノネニル)アンモニウムイオン、ジメチル(デセニル)アンモニウムイオン、ジメチル(ウンデセニル)アンモニウムイオン、ジメチル(ドデセニル)アンモニウムイオン、ジメチル(トリデセニル)アンモニウムイオン、ジメチル(テトラデセニル)アンモニウムイオン、ジメチル(ペンタデセニル)アンモニウムイオン、ジメチル(ヘキサデセニル)アンモニウムイオン、ジメチル(ヘプタデセニル)アンモニウムイオン、ジメチル(オクタデセニル)アンモニウムイオン、ジメチル(ノナデセニル)アンモニウムイオン、ジメチル(イコセニル)アンモニウムイオン、ジメチル(ヘンイコセニル)アンモニウムイオン、ジメチル(トリコセニル)アンモニウムイオン、ジメチルモノアクリル酸エチルアンモニウムイオン、ジメチルモノメタクリル酸エチルアンモニウムイオン、ジエチルモノアクリル酸エチルアンモニウムイオン、ジエチルモノメタクリル酸エチルアンモニウムイオン、N-アリルピロリジニウムイオン、N-アリル-N-アルキルピロリジニウムイオン、N-アリルピペリジニウムイオン、N-アリル-N-アルキルピペリジニウムイオン、N-(2-アクリロイロキシエチル)ピロリジニウムイオン、N-アルキル-N-(2-アクリロイロキシエチル)ピロリジニウムイオン、N-(2-メタクリロイロキシエチル)ピロリジニウムイオン、N-アルキル-N-(2-メタクリロイロキシエチル)ピロリジニウムイオン、N-(2-アクリロイロキシエチル)ピぺリジニウムイオン、N-アルキル-N-(2-アクリロイロキシエチル)ピぺリジニウムイオン、N-(2-メタクリロイロキシエチル)ピぺリジニウムイオン、N-アルキル-N-(2-メタクリロイロキシエチル)ピぺリジニウムイオン等が挙げられる。
【0031】
【0032】
上記一般式(B2)中、R7、R8、R9、R10はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12の置換アルキル基、炭素数6~18の芳香環基もしくは置換芳香環基、または重合性基を表す。該アルキル基、置換アルキル基、芳香環基および置換芳香環基は、一般式(A1)に表される化合物においてR1で表したアルキル基、置換アルキル基、芳香環基および置換芳香環基と同じである。
重合性基は、一般式(B1)に表される化合物においてR3、R4、R5およびR6で表した重合性基と同じである。その中でも炭素数1~8のアルキル基およびアリル基が好ましく、メチル基、ブチル基およびアリル基が特に好ましい。
上記一般式(B2)で表されるホスホニウムカチオンとして、例えば、モノビニルホスホニウムイオン、ジビニルホスホニウムイオン、トリビニルホスホニウムイオン、モノアリルホスホニウムイオン、ジアリルホスホニウムイオン、トリアリルホスホニウムイオン、モノプロペニルホスホニウムイオン、ジプロペニルホスホニウムイオン、トリプロペニルホスホニウムイオン、モノブテニルホスホニウムイオン、ジブテニルホスホニウムイオン、トリブテニルホスホニウムイオン、モノペンテニルホスホニウムイオン、ジペンテニルホスホニウムイオン、トリペンテニルホスホニウムイオン、モノヘキセニルホスホニウムイオン、ジヘキセニルホスホニウムイオン、モノヘプテニルホスホニウムイオン、ジヘプテニルホスホニウムイオン、モノオクテニルホスホニウムイオン、ジオクテニルホスホニウムイオン、モノノネニルホスホニウムイオン、モノデセニルホスホニウムイオン、モノウンデセニルホスホニウムイオン、モノドデセニルホスホニウムイオン、モノトリデセニルホスホニウムイオン、モノテトラデセニルホスホニウムイオン、モノペンタデセニルホスホニウムイオン、モノヘキサデセニルホスホニウムイオン、モノヘプタデセニルホスホニウムイオン、モノオクタデセニルホスホニウムイオン、モノノナデセニルホスホニウムイオン、モノイコセニルホスホニウムイオン、モノヘンイコセニルホスホニウムイオン、モノドコセニルホスホニウムイオン、モノトリコセニルホスホニウムイオン、ジメチル(ビニル)ホスホニウムイオン、ジメチル(プロペニル)ホスホニウムイオン、ジメチル(ブテニル)ホスホニウムイオン、ジメチル(ペンテニル)ホスホニウムイオン、ジメチル(ヘキセニル)ホスホニウムイオン、ジメチル(ヘプテニル)ホスホニウムイオン、ジメチル(オクテニル)ホスホニウムイオン、ジメチル(ノネニル)ホスホニウムイオン、ジメチル(デセニル)ホスホニウムイオン、ジメチル(ウンデセニル)ホスホニウムイオン、ジメチル(ドデセニル)ホスホニウムイオン、ジメチル(トリデセニル)ホスホニウムイオン、ジメチル(テトラデセニル)ホスホニウムイオン、ジメチル(ペンタデセニル)ホスホニウムイオン、ジメチル(ヘキサデセニル)ホスホニウムイオン、ジメチル(ヘプタデセニル)ホスホニウムイオン、ジメチル(オクタデセニル)ホスホニウムイオン、ジメチル(ノナデセニル)ホスホニウムイオン、ジメチル(イコセニル)ホスホニウムイオン、ジメチル(ヘンイコセニル)ホスホニウムイオン、ジメチル(トリコセニル)ホスホニウムイオン、ジメチルモノアクリル酸エチルホスホニウムイオン、ジメチルモノメタクリル酸エチルホスホニウムイオン、ジエチルモノアクリル酸エチルホスホニウムイオン、ジエチルモノメタクリル酸エチルホスホニウムイオンが挙げられる。
【0033】
【0034】
上記一般式(B3)中、R11、R12、R13、R14、R15はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12の置換アルキル基、炭素数6~18の芳香環基もしくは置換芳香環基、または重合性基を表す。該アルキル基、置換アルキル基、芳香環基および置換芳香環基は、一般式(A1)に表される化合物においてR1で表したアルキル基、置換アルキル基、芳香環基および置換芳香環基と同じである。重合性基は、一般式(B1)に表される化合物においてR3、R4、R5およびR6で表した重合性官能基含有基と同じである。その中でも炭素数1~8のアルキル基およびアリル基が好ましく、メチル基、ブチル基およびアリル基が特に好ましい。
上記一般式(B2)で表されるイミダゾリウムカチオンとして、例えば、モノビニルイミダゾリウムイオン、ジビニルイミダゾリウムイオン、モノアリルイミダゾリウムイオン、ジアリルイミダゾリウムイオン、モノプロペニルイミダゾリウムイオン、ジプロペニルイミダゾリウムイオン、モノブテニルイミダゾリウムイオン、ジブテニルイミダゾリウムイオン、モノペンテニルイミダゾリウムイオン、ジペンテニルイミダゾリウムイオン、モノヘキセニルイミダゾリウムイオン、ジヘキセニルイミダゾリウムイオン、モノヘプテニルイミダゾリウムイオン、ジヘプテニルイミダゾリウムイオン、モノオクテニルイミダゾリウムイオン、ジオクテニルイミダゾリウムイオン、モノノネニルイミダゾリウムイオン、モノデセニルイミダゾリウムイオン、モノウンデセニルイミダゾリウムイオン、モノドデセニルイミダゾリウムイオン、モノトリデセニルイミダゾリウムイオン、モノテトラデセニルイミダゾリウムイオン、モノペンタデセニルイミダゾリウムイオン、モノヘキサデセニルイミダゾリウムイオン、モノヘプタデセニルイミダゾリウムイオン、モノオクタデセニルイミダゾリウムイオン、モノノナデセニルイミダゾリウムイオン、モノイコセニルイミダゾリウムイオン、モノヘンイコセニルイミダゾリウムイオン、モノドコセニルイミダゾリウムイオン、モノトリコセニルイミダゾリウムイオン、メチル(ビニル)イミダゾリウムイオン、メチル(プロペニル)イミダゾリウムイオン、メチル(ブテニル)イミダゾリウムイオン、メチル(ペンテニル)イミダゾリウムイオン、メチル(ヘキセニル)イミダゾリウムイオン、メチル(ヘプテニル)イミダゾリウムイオン、メチル(オクテニル)イミダゾリウムイオン、メチル(ノネニル)イミダゾリウムイオン、メチル(デセニル)イミダゾリウムイオン、メチル(ウンデセニルイミダゾリウムイオン、メチル(ドデセニル)イミダゾリウムイオン、メチル(トリデセニル)イミダゾリウムイオン、メチル(テトラデセニル)イミダゾリウムイオン、メチル(ペンタデセニル)イミダゾリウムイオン、メチル(ヘキサデセニル)イミダゾリウムイオン、メチル(ヘプタデセニル)イミダゾリウムイオン、メチル(オクタデセニル)イミダゾリウムイオン、メチル(ノナデセニル)イミダゾリウムイオン、メチル(イコセニル)イミダゾリウムイオン、メチル(ヘンイコセニル)イミダゾリウムイオン、メチル(トリコセニル)イミダゾリウムイオン、1-メチル-3-アクリル酸エチルイミダゾリウムイオン、1-メチル-3-メタクリル酸エチルイミダゾリウムイオン、1-エチル-3-アクリル酸エチルイミダゾリウムイオン、1-エチル-3-メタクリル酸エチルイミダゾリウムイオンが挙げられる。
【0035】
【0036】
上記一般式(B4)中、R16、R17、R18、R19、R20、R21はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12の置換アルキル基、炭素数6~18の芳香環基もしくは置換芳香環基、または重合性基を表す。該アルキル基、置換アルキル基、芳香環基および置換芳香環基は、一般式(A1)に表される化合物においてR1で表したアルキル基、置換アルキル基、芳香環基および置換芳香環基と同じである。重合性基は、一般式(B1)に表される化合物においてR3、R4、R5およびR6で表した重合性基と同じである。その中でも炭素数1~8のアルキル基およびアリル基が好ましく、メチル基、ブチル基およびアリル基が特に好ましい。
上記一般式(B2)で表されるピリジニウムカチオンとして、例えば、ビニルピリジニウムイオン、アリルピリジニウムイオン、プロペニルピリジニウムイオン、ブテニルピリジニウムイオン、ペンテニルピリジニウムイオン、ヘキセニルピリジニウムイオン、ヘプテニルピリジニウムイオン、オクテニルピリジニウムイオン、ノネニルピリジニウムイオン、デセニルピリジニウムイオン、ウンデセニルピリジニウムイオン、ドデセニルピリジニウムイオン、トリデセニルピリジニウムイオン、テトラデセニルピリジニウムイオン、ペンタデセニルピリジニウムイオン、ヘキサデセニルピリジニウムイオン、ヘプタデセニルピリジニウムイオン、オクタデセニルピリジニウムイオン、ノナデセニルピリジニウムイオン、イコセニルピリジニウムイオン、ヘンイコセニルピリジニウムイオン、ドコセニルピリジニウムイオン、トリコセニルピリジニウムイオン、アクリル酸エチルピリジニウムイオン、メタクリル酸エチルピリジニウムイオンが挙げられる。
【0037】
上記重合性基は、下記の一般式(B5)で表される基を備えることができる。すなわち、一般式(B1)で表されるアンモニウムカチオン、一般式(B2)で表されるホスホニウムカチオン、一般式(B3)で表されるイミダゾリウムカチオンおよび一般式(B4)で表されるピリジニウムカチオンからなる群から選択される1価のカチオンは、下記の一般式(B5)で表される重合性基を有することが好ましい。
【0038】
【0039】
上記一般式(B5)中、R22は水素原子、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12の置換アルキル基、炭素数6~18の芳香環基もしくは置換芳香環基、またはヒドロキシカルボニルメチル基を表す。また、pは0もしくは1を表す。
【0040】
R22におけるアルキル基、置換アルキル基、芳香環基もしくは置換芳香環基、または重合性官能基含有基は、一般式(A1)中のR1におけるアルキル基、置換アルキル基、芳香環基および置換芳香環基と、それぞれ同じである。その中でも水素原子、フッ素、メチル基、トリフルオロメチル基等が好ましく、水素原子とメチル基が特に好ましい。
【0041】
上記一般式(B5)中、上記Wは、単結合、炭素数1~6の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキレン基、炭素数6~12のアリーレン基、またはカルボニル基(-C(=O)-)を表す。
上記炭素数1~6の直鎖状のアルキレン基としては、具体的には、メチレン基[-CH2-]、エチレン基[-(CH2)2-]、トリメチレン基[-(CH2)3-]、テトラメチレン基[-(CH2)4-]、ペンタメチレン基[-(CH2)5-]等が挙げられる。
上記分岐鎖状のアルキレン基としては、具体的には、-CH(CH3)-、-CH(CH2CH3)-、-C(CH3)2-、-C(CH3)(CH2CH3)-、-C(CH3)(CH2CH2CH3)-、-C(CH2CH3)2-等のアルキルメチレン基;-CH(CH3)CH2-、-CH(CH3)CH(CH3)-、-C(CH3)2CH2-、-CH(CH2CH3)CH2-、-C(CH2CH3)2-CH2-等のアルキルエチレン基;-CH(CH3)CH2CH2-、-CH2CH(CH3)CH2-等のアルキルトリメチレン基;-CH(CH3)CH2CH2CH2-、-CH2CH(CH3)CH2CH2-等のアルキルテトラメチレン基などのアルキルアルキレン基等が挙げられる。
上記アルキルアルキレン基におけるアルキル基としては、炭素数1~5の直鎖状のアルキル基が好ましい。
上記アリーレン基としては、具体的には、フェニレン基、ナフチレン基が挙げられ、中でも、フェニレン基が好ましい。
上記Wとしては、この中でも特に、単結合もしくはカルボニル基が好ましい。
【0042】
[重合性イオン液体の製造方法]
本実施形態の重合性イオン液体の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン化アルキル法、炭酸ジアルキル法、酸中和法、直接アルキル化法等の公知の手法を利用することができる。
【0043】
上記重合性イオン液体の製造方法の一例としては、例えば、下記の一般式(a1)で表されるビス(パーフルオロアルカンスルホニル)アルケンまたは一般式(a2)で表される(アルケンスルホニル)パーフルオロアルカンスルホニルイミドと、下記の有機塩基もしくはハロゲン化アンモニウム塩、ハロゲン化ホスホニウム塩、ハロゲン化イミダゾリウム塩、ハロゲン化ピリジニウム塩と、を混合する方法が挙げられる。これにより、重合性イオン液体を容易に得ることが出来る。
【0044】
下記の一般式(a1)で表されるビス(パーフルオロアルカンスルホニル)アルケンは、以下の反応式に基づいて合成できることが知られている。
【0045】
【0046】
上記の一般式(a1)中、RfおよびR1は、それぞれ、上記の一般式(A1)中のRfおよびR1と同様のものが用いられる。
【0047】
また、下記の一般式(a2)で表される(アルケンスルホニル)パーフルオロアルカンスルホニルイミドは、下反応式に基づいて合成できることが知られている。
【0048】
【0049】
上記の一般式(a2)中、RfおよびR2は、それぞれ、上記の一般式(A2)中のRfおよびR2と同様のものが用いられる。
【0050】
上記の有機塩基もしくはハロゲン化アンモニウム塩、ハロゲン化ホスホニウム塩、ハロゲン化イミダゾリウム塩、ハロゲン化ピリジニウム塩として、以下のものが例示される。下記例示中、Xはハロゲン原子を表し、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を表す。その中でも塩素、臭素が好ましく、塩素が特に好ましい。
下記一般式中のR23、R24、R25は、それぞれ独立に上記一般式(B1)中のR3、R4、R5で例示した置換基と同様のものが用いられる。下記一般式中のR26、R27、R28は、それぞれ独立に上記一般式(B2)中のR7、R8、R9で例示した置換基と同様のものが用いられる。下記一般式中のR29、R30、R31、R32は、それぞれ独立に上記一般式(B1)中のR3、R4、R5、R6で例示した置換基と同様のものが用いられる。下記一般式中のR33、R34、R35、R36は、それぞれ独立に上記一般式(B2)中のR7、R8、R9、R10で例示した置換基と同様のものが用いられる。下記一般式中のR37、R38、R39、R40は、それぞれ独立に上記一般式(B3)中のR11、R12、R14、R15で例示した置換基と同様のものが用いられる。下記一般式中のR41、R42、R43、R44、R45は、それぞれ独立に上記一般式(B3)中のR11、R12、R13、R14、R15で例示した置換基と同様のものが用いられる。下記一般式中のR46、R47、R48、R49、R50は、それぞれ独立に上記一般式(B4)中のR17、R18、R19、R20、R21で例示した置換基と同様のものが用いられる。下記一般式中のR51、R52、R53、R54、R55、R56は、それぞれ独立に上記一般式(B4)中のR16、R17、R18、R19、R20、R21で例示した置換基と同様のものが用いられる。
【0051】
【0052】
上記重合性イオン液体の製造方法において、有機塩基もしくはハロゲン化アンモニウム塩、ハロゲン化ホスホニウム塩、ハロゲン化イミダゾリウム塩、ハロゲン化ピリジニウム塩の使用量は、上記のビス(パーフルオロアルカンスルホニル)アルケンもしくは(アルケンスルホニル)パーフルオロアルカンスルホニルイミド1モルに対して、通常0.1~10モルであるが、経済性の面から0.5~1.5モルが好ましい。
【0053】
また、重合性イオン液体は、無溶媒もしくは溶媒の存在下で製造することが出来る。反応溶媒として、有機溶媒又は水を共存させて反応を行うこともできる。なお、本明細書中、有機溶媒とは、本発明の反応に直接関与しない不活性な有機化合物のことを言う。
【0054】
上記有機溶媒としては、具体的に、n-ヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素類、塩化メチレン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、tert-ブチルメチルエーテル等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
この中でも、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類、ジメチルスルホキシドが好ましく、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類がより好ましい。これらの反応溶媒は単独又は組み合わせて使用することができる。
【0055】
上記有機溶媒又は水の使用量としては、特に制限はないが、基質1モルに対して0.1L(リットル)以上を使用すればよく、通常は0.1L~20Lが好ましく、特に0.1L~10Lがより好ましい。
【0056】
上記重合性イオン液体の製造方法において、反応温度、反応に使われる反応容器および反応時間は適宜設定することが可能である。
上記温度条件としては、特に制限はないが、-50℃~200℃の範囲で行えばよい。通常は0℃~100℃が好ましく、特に0℃~70℃がより好ましい。
【0057】
上記反応容器としては、例えば、ステンレス鋼、モネル、ハステロイ、ニッケル、又はこれらの金属やポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロポリエーテル樹脂などのフッ素樹脂でライニングされた耐圧反応容器などが挙げられる。
【0058】
上記反応時間としては、特に制限はないが、0.1時間~240時間の範囲で行えばよく、基質および反応条件により異なるため、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、イオンクロマトグラフィー、NMR等の分析手段により、反応の進行状況を追跡して、アミンもしくは4級アンモニウム塩が殆ど消失した時点を終点とすることが好ましい。
【0059】
[重合性イオン液体を含有する硬化性組成物]
本実施形態の硬化性組成物は、上記重合性イオン液体を含有するものであり、キャパシタの容量膜を形成するために用いるものである。この容量膜は、少なくとも一部が上記硬化性組成物の硬化物で構成されていればよく、全てがその硬化物で構成され得る。容量膜は、上記硬化物以外の膜構造を有していてもよい。
【0060】
上記硬化性組成物中の重合性イオン液体は、上記一般式(A1)もしくは上記一般式(A2)で表される少なくとも一方の重合性基含有アニオンと、上記一般式(B1)で表されるアンモニウムカチオン、上記一般式(B2)で表されるホスホニウムカチオン、上記一般式(B3)で表されるイミダゾリウムカチオンおよび上記一般式(B4)で表されるピリジニウムカチオンからなる群から選択される一種以上のカチオンと、を含むものである。
【0061】
上記硬化性組成物は、重合開始剤を含有することができる。
上記重合開始剤として、ラジカル重合開始剤またはカチオン重合開始剤を用いることができる。それぞれの重合開始剤は単独で用いることもできるし、併用することもできる。これらの重合開始剤を用いることで、特に、ラジカル重合性及びカチオン重合性が向上する。更に、重合開始剤と併せて添加剤を使用することにより、場合によってリビング重合を行うことも可能であり、添加剤として公知ものを使用することができる。
【0062】
上記重合開始剤としては、光照射によってラジカルを発生する光ラジカル重合開始剤(光重合開始剤)または加熱することでラジカルを発生する熱ラジカル重合開始剤(熱重合開始剤)を用いることができる。
【0063】
上記光重合開始剤としては、公知のものを使用できるが、例えば、分子内の結合が高エネルギー線の吸収によって開裂してラジカルを生成する分子内開裂型や、3級アミンやエ-テル等の水素供与体を併用することによってラジカルを生成する水素引き抜き型があり、いずれを使用してもよい。例えば、分子内開裂型である2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロン-1-オン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製、商品名Darocur1173)は、光照射(特に紫外線領域の光)によって、炭素-炭素結合が開裂することでラジカルを生成する。また、水素引き抜き型としては、ベンゾフェノン、オルソベンゾイン安息香酸メチル、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、カンファ-キノン等が、水素供与体との2分子反応によって、ラジカルを生成する。
【0064】
上記熱ラジカル重合開始剤は、分子内の結合が加熱によって開裂してラジカルを生成する化合物であり、公知のものを使用できるが、例えば、アゾ化合物であるアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、または有機過酸化物である過酸化ベンゾイル(BPO)を例示することができる。
【0065】
カチオン重合開始剤としては、紫外線等のエネルギーを照射することにより酸を発生する化合物(光酸発生剤)または加熱により酸を発生する化合物(熱酸発生剤)を用いることができる。
【0066】
紫外線等のエネルギーを照射することにより酸を発生する化合物(光酸発生剤)としては、芳香族スルホン酸、芳香族ヨードニウム、芳香族ジアゾニウム、芳香族アンモニウム、チアンスレニウム、チオキサントニウム、(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)(1-メチルエチルベンゼン)鉄からなる群から選ばれる少なくとも1種のカチオンと、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアンチモネート、ペンタフルオロフェニルボレートからなる群から選ばれる少なくとも1種のアニオンの対からなるオニウム塩である。これらの光酸発生剤は単独でもあるいは2種類以上を混合しても使用できる。
【0067】
光酸発生剤としては、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロホスフェート、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェートが特に好ましい。
【0068】
市販の光酸発生剤としては、例えば、サンアプロ株式会社製の製品名:CPI-100P、CPI-110P、CPI-101A、CPI-200K、CPI-210S、ダウ・ケミカル日本株式会社製の製品名:サイラキュア光硬化開始剤UVI-6990、サイラキュア光硬化開始剤UVI-6992、サイラキュア光硬化開始剤UVI-6976、株式会社ADEKA製の製品名:アデカオプトマーSP-150、アデカオプトマーSP-152、アデカオプトマーSP-170、アデカオプトマーSP-172、アデカオプトマーSP-300、日本曹達株式会社製の製品名:CI-5102、CI-2855、三新化学工業株式会社製の製品名:サンエイドSI-60L、サンエイドSI-80L、サンエイドSI-100L、サンエイドSI-110L、サンエイドSI-180L、サンエイドSI-110、サンエイドSI-180、ランベルティ社製の製品名:エサキュア1064、エサキュア1187、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製の製品名:イルガキュア250などが挙げられる。
【0069】
加熱により酸を発生する化合物(熱酸発生剤)としては、例えば、ベンジルスルホニウム塩、チオフェニウム塩、チオラニウム塩、ベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、ヒドラジニウム塩、カルボン酸エステル、スルホン酸エステル、アミンイミドなどを使用することができる。市販の熱酸発生剤としては、例えば、株式会社ADEKA製の製品名:アデカオプトンCP77、アデカオプトンCP66、日本曹達株式会社製の製品名:CI-2639、CI-2624、三新化学工業株式会社製の製品名:サンエイドSI-60L、サンエイドSI-80L、サンエイドSI-100Lを使用することもできる。
【0070】
上記重合開始剤の含有量は、上記重合性イオン液体100重量部に対して、例えば、1重量部~25重量部、好ましくは3重量部~20重量部、より好ましくは5重量部~15重量部である。
【0071】
また、上記硬化性組成物は、必要に応じて、上記重合性イオン液体以外の、分子内に重合性基を有する重合性基含有化合物を含むことができる。この重合性基含有化合物として、重合性基を有するモノマー、そのダイマー、オリゴマー、ポリマーまたはこれらの混合物が用いられる。また上記重合性基として、カチオン重合性二重結合含有基またはラジカル重合性二重結合含有基が挙げられる。
【0072】
上記重合性基含有化合物は、互いに自己重合することもできるが、上記重合性イオン液体のアニオンまたは/およびカチオンと反応するものであってもよい。この重合性基含有化合物は、二重結合が開裂して従繰り返し単位を形成する単量体(以下「従単量体」と呼称する)含有してもよい。これにより、硬化処理によって、互いの二重結合を開裂させ、上記イオン液体(重合性基含有アニオンまたは重合性基含有カチオン)と上記従単量体とで構成される共重合体(コポリマー)を得ることが可能になる。
【0073】
上記重合性基含有化合物としては、例えば、オレフィン、含フッ素オレフィン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、含フッ素アクリル酸エステル、含フッ素メタクリル酸エステル、ノルボルネン化合物、スチレン化合物、含フッ素スチレン系化合物、ビニルエーテル、含フッ素ビニルエーテル、エポキシ化合物、エーテル化合物、及びシラン化合物からなる群より選ばれる一種以上の化合物を含むことができる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0074】
上記オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレンなど、フルオロオレフィンとしては、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ヘキサフルオロイソブテンなどが例示できる。
【0075】
上記アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルとしては、エステル側鎖について特に制限なく使用できるが、公知の化合物を例示するならば、メチルアクリレート又はメタクリレート、エチルアクリレート又はメタクリレート、n‐プロピルアクリレート又はメタクリレート、イソプロピルアクリレート又はメタクリレート、n‐ブチルアクリレート又はメタクリレート、イソブチルアクリレート又はメタクリレート、n‐ヘキシルアクリレート又はメタクリレート、n‐オクチルアクリレート又はメタクリレート、2‐エチルヘキシルアクリレート又はメタクリレート、ラウリルアクリレート又はメタクリレート、2‐ヒドロキシエチルアクリレート又はメタクリレート、2‐ヒドロキシプロピルアクリレート又はメタクリレートなどのアクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステル、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール基を含有したアクリレート又はメタクリレート、アルコキシシリル基含有のアクリル酸またはメタクリル酸エステル、t-ブチルアクリレート又はメタクリレート、3‐オキソシクロヘキシルアクリレート又はメタクリレート、アダマンチルアクリレート又はメタクリレート、アルキルアダマンチルアクリレート又はメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート又はメタクリレート、トリシクロデカニルアクリレート又はメタクリレート、ラクトン環やノルボルネン環などの環構造を有したアクリレートまたはメタクリレートなどが挙げられる。
また、アクリルアミド、メタクリルアミド、N‐メチロールアクリルアミド、N‐メチロールメタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドなどの不飽和アミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのアクリロイル基含有化合物も使用することができる。さらに、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸なども使用することができる。
【0076】
上記含フッ素アクリル酸エステルまたは含フッ素メタクリル酸エステルとしては、例えば、フッ素原子を有する基をアクリロイル基のα位またはエステル部位に有するアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルを用いることができる。例えば、α位に含フッ素アルキル基が導入された単量体としては、上述した非フッ素系のアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルにおいて、α位にトリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、ノナフルオロ-n-ブチル基などが置換した単量体が好適に採用される。
一方、そのエステル部位に含フッ素基を有する含フッ素アクリル酸エステルまたは含フッ素メタクリル酸エステルの場合、その含フッ素基はパーフルオロアルキル基またはフルオロアルキル基、また、その環炭素がフッ素原子またはトリフルオロメチル基で置換された含フッ素ベンゼン環、含フッ素シクロペンタン環、含フッ素シクロヘキサン環、含フッ素シクロヘプタン環等の含フッ素環状基である。
上記含フッ素アクリル酸エステルまたは含フッ素メタクリル酸エステル単位のうち特に代表的なものを例示するならば、2,2,2-トリフルオロエチルアクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピルアクリレート、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルアクリレート、ヘプタフルオロイソプロピルアクリレート、1,1-ジヒドロヘプタフルオロ-n-ブチルアクリレート、1,1,5-トリヒドロオクタフルオロ-n-ペンチルアクリレート、1,1,2,2-テトラヒドロトリデカフルオロ-n-オクチルアクリレート、1,1,2,2-テトラヒドロヘプタデカフルオロ-n-デシルアクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピルメタクリレート、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート、ヘプタフルオロイソプロピルメタクリレート、1,1-ジヒドロヘプタフルオロ-n-ブチルメタクリレート、1,1,5-トリヒドロオクタフルオロ-n-ペンチルメタクリレート、1,1,2,2-テトラヒドロトリデカフルオロ-n-オクチルメタクリレート、1,1,2,2-テトラヒドロヘプタデカフルオロ-n-デシルメタクリレート、パーフルオロシクロヘキシルメチルアクリレート、パーフルオロシクロヘキシルメチルメタクリレートなどが挙げられる。またエステル部位の含フッ素基がフッ素原子を有するt-ブチル基であるアクリル酸またはメタクリル酸のエステルなども挙げられる。
また、上記アクリル酸エステルまたは含フッ素アクリル酸エステルにおいて、α位にシアノ基が導入されたアクリル酸エステルまたは含フッ素アクリル酸エステルも使用することができる。
【0077】
上記ノルボルネン化合物または含フッ素ノルボルネン化合物は、一核または複数の核構造を有するノルボルネン単量体であって、これらは特に制限なく使用することが可能である。この際、アリルアルコール、含フッ素アリルアルコール、アクリル酸、α-フルオロアクリル酸、メタクリル酸、本明細書で記載したすべてのアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル、含フッ素アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルなどの不飽和化合物と、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエンとを用いたディールスアルダー(Diels Alder)付加反応により得られるノルボルネン化合物が好ましく使用できる。
【0078】
上記スチレン系化合物または含フッ素スチレン系化合物としてはスチレン、フッ素化スチレン、ヒドロキシスチレンなどの他、ヘキサフルオロアセトンをベンゼン環に付加したスチレン系化合物、トリフルオロメチル基でベンゼン環の水素原子を置換したスチレンまたはヒドロキシスチレン、α位にハロゲン原子、アルキル基、含フッ素アルキル基が結合した上記スチレン系化合物または含フッ素スチレン系化合物などが使用可能である。
【0079】
上記ビニルエーテルまたは含フッ素ビニルエーテルは、例えば、メチル基、エチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシブチル基などのヒドロキシ基を含有することもあるアルキル基を有してもよく、アルキルビニルエーテルであって、その水素原子の一部または全部がフッ素で置換されていてもよい。また、環状構造内に酸素原子やカルボニル結合を有する環状型ビニルエーテル、またそれらの環状型ビニルエーテルの水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換された単量体、例えば、シクロヘキシルビニルエーテルなども使用できる。なお、アリルエーテル、ビニルエステル、ビニルシランについても公知の化合物であれば特に制限なく使用することが可能である。
【0080】
上記オキシラン類として、具体的には、エチレンオキシド、エピフルオロヒドリン、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、1,2-プロピレンオキシド、1,3-プロピレンオキシド、3,3,3-トリフルオロ-1,2-プロピレンオキシド、1,2-エポキシ-2-メチルプロパン、1,2-エポキシブタン、3,4-エポキシ-1-ブテン、1,2-エポキシペンタン、1,2-エポキシヘキサン、1,2-エポキシ-5-ヘキセン、1,2-エポキシオクタン、1,2-エポキシテトラデカン、1,2-エポキシドデカン、(2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,9-ヘプタデカフルオロノニル)オキシラン、シクロペンテンオキシド、シクロヘキセンオキシド、グリシドール、2,3-ジメチルオキシラン、エチルグリシジルエーテル、グリシジルプロパルギルエーテル、グリシジルイソプロピルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、ジグリシジルエーテル、グリシジルフェニルエーテル、グリシジル(4-メトキシフェニル)エーテル、グリシジル(2-メチルフェニル)エーテル、グリシジル(2,2,3,3-テトラフルオロプロピル)エーテル、グリシジル(2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロペンチル)エーテル、グリシジルオクチルエーテル、グリシジルデシルエーテル、2,3-ジメチル-2,3-エポキシブタン、3,3-ジメチル-1,2-エポキシブタン、グリシドアルデヒドジエチルアセタール、2-(4-フルオロフェニル)オキシラン、2-(4-クロロフェニル)オキシラン、2-(4-ブロモフェニル)オキシラン、1,2-エポキシオクタン、3,4-エポキシ-2-フェニル-1,1,1-トリフルオロ-2-ブタノール、ベンジルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、エポキシノルボルナン、スチレンオキシド、1,2,7,8-ジエポキシオクタン、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ビス[4-(グリシジルオキシ)フェニル]メタン、スルフリルグリシジルエーテル、1,3-ブタンジエンジエポキシド、1,4-ブタンジオールジグリシジエルエーテル、2-メチル-2-ビニルオキシラン、レゾルシノールジグリシジルエーテル、トリメチレンオキシド、3-メチル-3-オキセタンメタノール、3-エチル-3-オキセタンメタノール、3,3-ジメチルオキセタン、3-ブロモメチル-3-メチルオキセタン、3-オキセタノン、3-ブロモオキセタン、3-イオドオキセタンなどが例示できる。
オキシラン類として好ましくは、エチレンオキシド、エピフルオロヒドリン、エピクロロヒドリン、1,2-プロピレンオキシド、1,3-プロピレンオキシド、3,3,3-トリフルオロ-1,2-プロピレンオキシド、トリメチレンオキシドであり、より好ましくは、エチレンオキシド、1,2-プロピレンオキシド、3,3,3-トリフルオロ-1,2-プロピレンオキシド、トリメチレンオキシドであり、特に好ましくはエチレンオキシド、1,2-プロピレンオキシドである。
【0081】
上記シラン類として、三官能シラン類が好適に用いられる。反応性、物質の取り扱い容易性の観点から、好ましくは、フェニルトリメトキシシラン、(4-メチルフェニル)トリメトキシシラン、(4-メトキシフェニル)トリメトキシシラン、(4-メチルベンジル)トリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチル(トリ-n-プロポキシ)シラン、メチル(トリ-iso-プロポキシ)シラン、メチル(トリ-n-ブトキシ)シラン、メチル(トリ-sec-ブトキシ)シラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチル(トリ-n-プロポキシ)シラン、エチル(トリ-iso-プロポキシ)シラン、エチル(トリ-n-ブトキシ)シラン、エチル(トリ-sec-ブトキシ)シラン、(n-プロピル)トリメトキシシラン、(n-プロピル)トリエトキシシラン、(n-プロピル)(トリ-n-プロポキシ)シラン、(n-プロピル)(トリ-iso-プロポキシ)シラン、(n-プロピル)(トリ-n-ブトキシ)シラン、(n-プロピル)(トリ-sec-ブトキシ)シラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシランが挙げられる。
【0082】
また、上記以外のシラン類の具体例として、二官能シラン類である、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチル(ジ-n-プロポキシ)シラン、ジメチル(ジ-iso-プロポキシ)シラン、ジメチル(ジ-n-ブトキシ)シラン、ジメチル(ジ-sec-ブトキシ)シラン、ジメチル(ジ-tert-ブトキシ)シラン、ジメチルジフェノキシシランなどを挙げることができる。中でも、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシランが好ましい。
【0083】
他にシラン類の具体例として、四官能シラン類である、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ-n-プロポキシシラン、テトラ-iso-プロポキシシラン、テトラ-n-ブトキシラン、テトラ-sec-ブトキシシラン、テトラ-tert-ブトキシシラン、テトラフェノキシシラン、テトラクロロシランなどが挙げられる。中でも、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランが好ましい。
なお、シラン類として三官能シラン類または四官能シラン類を用いたときは、重合後得られるポリマーは全体として網目構造の分子となる。
【0084】
ポリマーである上記重合性基含有化合物の重量平均分子量は、例えば、1,000~10,000が好ましく、3,000~100,000より好ましい。重量平均分子量は、ポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定する。
なお本明細書中、「~」は、特に明示しない限り、上限値と下限値を含むことを表す。
【0085】
また、上記重合性基含有化合物は、分子中に重合性基を有するものであればよく、少なくとも末端に重合性基を有するものが好ましい。重量平均分子量を1,000以上とすることにより、ポリマーとしての強度の低下を抑制できる。一方、1,000,000以下とすることにより、ポリマーの構造が原因と推定される静電容量の低下を抑制できる傾向がある。
【0086】
上記重合性基含有化合物の含有量は、上記重合性イオン液体1重量部に対して、例えば、5重量部~500重量部、好ましくは10重量部~300重量部、より好ましくは50重量部~150重量部である。
【0087】
また、本実施形態の硬化性組成物は、上記重合性イオン液体、上記重合開始剤、上記重合性基含有化合物の他に、上記必要に応じて、他の成分を含有し得る。
このような他の成分として、例えば、反応性基含有低分子有機化合物や高分子化合物等が挙げられるが、これに特に限定されるものではない。
【0088】
上記反応性基含有低分子有機化合物としては、接着剤および塗料分野で主剤、硬化剤等として汎用されている化合物が挙げられるが、例えば、α,β-不飽和カルボニル基、α,β-不飽和ニトリル基、共役ジエン、カルボン酸ビニルエステル基、カルボキシル基、カルボニル基、エポキシ基、イソシアネート基、ヒドロキシ基、アミド基、シアノ基、アミノ基、クロロメチル基、グリシジルエーテル基、エステル基、ホルミル基、ニトリル基、ニトロ基、カルボジイミド基、オキサゾリン基、炭素-炭素二重結合含有基、炭素-炭素三重結合含有基等から選ばれる少なくとも1種の基を有する化合物が挙げられる。
【0089】
上記反応性基含有低分子有機化合物の具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、2-ヒドロキシエチルアクリレート、(メタ)アクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸系低分子化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、マレオニトリル、フマロニトリル等のニトリル系低分子化合物;(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、メチロールアクリルアミド等のアミド系低分子化合物;トルエンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート系低分子化合物;スチレン、ブタジエン、塩化ビニル、酢酸ビニル等の炭素-炭素二重結合含有低分子化合物;1-ブチン-1-オール、1、6-ヘプタジイン等の炭素-炭素三重結合含有低分子化合物;等が挙げられる。
【0090】
上記高分子化合物としては、ベースポリマーとして、例えば、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂等から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。これらの高分子化合物は、反応性基を有していても、有していなくてもよい。
【0091】
また、上記高分子化合物として、ポリエーテル系高分子化合物を用いてもよい。ポリエーテル系高分子化合物は、分子末端に、又は側鎖に、又は分子末端及び側鎖に重合反応性官能基を有してもよい。重合反応性官能基の例としては、(メタ)アクリロイル基((メタ)アクリル酸残基)、ビニル基、プロペニル基、(メタ)アリル基等のアルケニル基が挙げられる。
【0092】
上記重合性イオン液体は、各種の有機化合物と相溶性を有することができる。また、上記重合性イオン液体は、各種の無機化合物の溶解能をも有することができる。したがって、上記硬化性組成物は、重合性イオン液体とともに、各種成分を併用可能である。
【0093】
[キャパシタの製造方法]
本実施形態のキャパシタの製造方法は、上記の硬化性組成物に硬化処理を実施する硬化工程を含む。
【0094】
具体的なキャパシタの製造方法の一例は、一対の対向電極の間に、上記重合性イオン液体を含有する硬化性組成物を挟み込む工程と、対向電極に電圧を印加した状態で、硬化性組成物に硬化処理を実施する硬化工程と、得られた硬化性組成物の硬化物を容量膜として、第1電極と、第2電極との間に配置して、キャパシタを得る工程とを含むことができる。
【0095】
上記キャパシタの製造方法により、板状に構成された硬化性組成物の硬化物が得られる。この板状の硬化物は、キャパシタの容量膜として機能する。
【0096】
上記硬化工程において、硬化性組成物は対向電極に挟まれ、電界が印加された状態で硬化される。すなわち、硬化性組成物中のアニオンが対向電極の一方側に、カチオンが対向電極の他方側に偏在した状態で、硬化性組成物の硬化物が形成される。アニオンとして重合性基含有アニオンやカチオンとして重合性基含有カチオンを用いることで、硬化物におけるアニオンやカチオンの偏在状態を安定的に維持できる。また、重合性基含有化合物を用いることで、硬化物中におけるアニオンやカチオンの偏在状態をさらに安定的に維持できる。
【0097】
詳細なメカニズムは定かではないが、少なくとも重合性基含有アニオンが、または重合性基含有アニオンおよび重合性基含有カチオンが、それぞれの対向電極側近傍で、自己同士あるいは、必定に応じて含まれる重合性基含有化合物と反応し、高分子化する。このため、硬化工程の後、電圧を印加しない状態でも、硬化物中において、アニオンやカチオンの偏在状態を維持できると、考えられる。
【0098】
また、上記硬化工程において、硬化性組成物中のアニオンおよびカチオンを十分に偏在させた状態、すなわち、対向電極の間の電流を検知し、その電流が所定値以下、あるいは電流が流れなくなった状態となった後に、上記の硬化処理を実施することができる。
【0099】
これにより、電圧の印加を停止した後でも、内部に電気分極を有しており、表面に電気二重層が形成された板状の硬化物を形成できる。このような板状の硬化物はエレクトレットとなる。
【0100】
本実施形態において、エレクトレットとは、外部に電界が存在しない状態でも、長期間に亘って電荷を保持する電気的特性を有する部材である。このエレクトレットは、内部に電気分極状態を保持することができる。レクトレットは、キャパシタの容量膜として好適に用いることが可能である。
【0101】
上記硬化工程において、対向電極の間の電流を検知し、当該電流が所定値(閾値未満、具体的には50μA/cm2以下、好ましくは10μA/cm2)以下となった後、または当該電流が流れなくなった後、上記硬化性組成物に対して硬化処理を実施することができる。これにより、電気的特性に優れたエレクトレットを実現できる。
【0102】
上記の硬化処理としては、公知の硬化・重合手段を用いることができるが、例えば、光照射または加熱処理の少なくとも一方の手段を含むことができる。
【0103】
上記の光照射により、紫外光の光エネルギーを利用して重合反応を促進し、硬化性組成物を光硬化することが可能である。光重合開始剤を含有させると効率的に重合反応を進行できる。光照射とともに加熱処理を実施してもよい。また、上記の加熱処理は、例えば、50℃~150℃の加熱により熱硬化を行うことができる。
上記硬化性組成物は、光硬化性または熱硬化性の少なくとも一方を有することができる。硬化性組成物の硬化特性に応じて、硬化処理として適切な手段を選択すればよい。
【0104】
上記対向電極のうち一方の電極は、光を透過する透明電極とすることができる。これにより、上記硬化性組成物を対向電極で挟み込んだ状態で上記硬化工程を行うことができる。これにより、ロット間バラツキを低減することや製造歩留まりを高めることができるため、エレクトレットの製造安定性を高めることができる。
【0105】
また、上記挟み込む工程において、対向電極の間にスペーサーを配置した状態で、硬化性組成物を挟み込む方法を採用してもよい。これにより、電気的特性や物理的特性などの特性バラツキを低減できる。
【0106】
本実施形態によれば、上記硬化性組成物の組成成分の種類が比率、電圧印加条件や硬化条件等を適切に選択することにより、電気的特性とともに機械的特性に優れた容量膜を実現できる。具体的には、一方の表面近傍に負電荷を長期間保持するエレクトレットを実現できる。上記硬化性組成物が重合性基含有アニオンとともに重合性基含有カチオンを含有する場合、一方の表面近傍に負電荷が保持され、他方の表面近傍に正電荷が保持されたキャパシタの容量膜を実現できる。
【0107】
本実施形態のキャパシタは、電気化学デバイスとして、各種の用途に用いることができる。例えば、電気二重層キャパシタ、コンデンサ、電池(バッテリー)、電源、発電素子、容量素子、センサ素子などの電気素子、特にマイクロ素子(半導体素子)等に適用できる。
【0108】
[キャパシタ]
本実施形態のキャパシタ100の一例は、
図1に示すように、第1電極20と、第2電極30と、第1電極20及び第2電極30の間に配置された容量膜50とを備えるものである。
【0109】
キャパシタ100は、単独で使用してもよいが、2以上が互いに電気的に接続した状態で使用されてもよい。キャパシタ100は、必要に応じて、配線、抵抗などの他の電気部材を有してもよい。キャパシタ100は、所定の筐体に収容されてもよい。
【0110】
上記キャパシタ100が備える容量膜50は、重合性イオン液体を含有する硬化性組成物の硬化物で構成される。これにより、電気的特性に優れたキャパシタを実現できる。
【0111】
また、上記容量膜50は、板状の硬化性組成物の硬化物で構成される。
板状の硬化物の厚みや面積は、キャパシタ100の容量やサイズに応じて適切に調整され得る。
この板状の硬化物は、適切な強度や硬度を有する。板状の硬化物の一例は、通常のイオン液体やイオンゲルと比較して、圧縮変形されにくく、表面が硬く構成され得る。適切な硬さや強度を有する板状の硬化物を用いることで、キャパシタ100の繰り返し使用時における安定性を向上させることができる。
【0112】
上記容量膜50は、硬化性組成物の硬化物からなるエレクトレットで構成されてもよい。このようなキャパシタ100は、電気二重層キャパシタとなる。
【0113】
キャパシタ100は、電気的エネルギ-(電荷)を一時的に貯蔵・放出できるデバイスである。キャパシタ100は、
図1(a)から
図1(b)に示す充電時に、電極に電荷を保有できる。このとき、第1電極20、第2電極30と容量膜50との界面近傍において、電気二重層が形成される。その後、キャパシタ100は、
図1(b)から
図1(c)に示す放電時に、電極から電荷を放出できる。キャパシタ100において、このような充放電を繰り返し行うことが可能である。
【0114】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
【実施例】
【0115】
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0116】
[実施例1]
100ml四ツ口フラスコに4,4-ビス(トリフルオロメタンスルホニル)-1-ブテンを10g(0.031mol)とトリエチルアミン3.1g(0.031mol)を仕込み、室温下で1時間攪拌した。反応後、減圧下にて濃縮を行うことで、4,4-ビス(トリフルオロメタンスルホニル)-1-ブテントリエチルアンモニウム12.9g(0.031mol)、収率99%で得た。
次に、得られた4,4-ビス(トリフルオロメタンスルホニル)-1-ブテントリエチルアンモニウム0.1gとトリメチロールプロパンアクリレート1.0g、ベンゾフェノン0.01gを混合し、混合物を得た。得られた混合物を、厚み0.5mmのスペーサーを介し、板状のITO電極と金電極とで挟み込むように配置した。この配置状態のまま、電極間に3Vの電圧を5分間印加し電流値が1μA/cm2以下となったことを確認した後、更に、透明なITO電極を介して248nmの紫外光を10分間照射して、当該混合物を硬化させエレクトレットを得た。その後、得られたエレクトレットから電極を剥離した。
【0117】
[実施例2]
トリエチルアミンの代わりにN,N-ジメチルアリルアミン2.6g(0.031mol)を用いた以外は実施例1と同様の方法にて反応を行うことで、4,4-ビス(トリフルオロメタンスルホニル)-1-ブテン-N,N-ジメチルアリルアンモニウム12.5g(0.031mol)およびエレクトレットを得た。
【0118】
[実施例3]
トリエチルアミンの代わりにトリアリルアミン4.3g(0.031mol)を用いた以外は実施例1と同様の方法にて反応を行うことで、4,4-ビス(トリフルオロメタンスルホニル)-1-ブテントリアリルアンモニウム14.2g(0.031mol)およびエレクトレットを得た。
【0119】
[実施例4]
100ml四ツ口フラスコにトリフルオロメタンスルホニルアミド2.7g(0.018mol)、トリエチルアミン6.1g(0.060mol)とエチルメチルカーボネート25mlを仕込み、0℃に冷却した。その後、2-クロロエタンスルホニルクロリド3.1g(0.019mol)を加え室温下で30分間、攪拌を行った。反応後、反応液を濃縮し、ジイソプロピルエーテルで洗浄しN-(2-エテンスルホニル)-N-トリフルオロメタンスルホニルイミドトリエチルアンモニウムを7.0g(0.021mol)得た。
次に、得られたN-(2-エテンスルホニル)-N-トリフルオロメタンスルホニルイミドトリエチルアンモニウム0.1gとトリメチロールプロパンアクリレート1.0g、ベンゾフェノン0.01gを混合し、混合物を得た。得られた混合物を用いて、実施例1と同様にして、エレクトレットを得た。
【0120】
[実施例5]
トリエチルアミンの代わりにトリアリルアミン8.2g(0.060mol)を用いた以外は実施例4と同様の方法にて反応を行うことで、N-(2-エテンスルホニル)-N-トリフルオロメタンスルホニルイミドトリアリルアンモニウム7.5g(0.020mol)およびエレクトレットを得た。
【0121】
[比較例1]
4,4-ビス(トリフルオロメタンスルホニル)-1-ブテンの代わりにN-(2-エテンスルホニル)-N-メタンスルホニルイミド5.7g(0.031mol)を用いた以外は実施例1と同様の方法にて反応を行うことで、N-(2-エテンスルホニル)-N-メタンスルホニルイミドトリアリルアンモニウム10.0g(0.031mol)およびエレクトレットを得た。
【0122】
[比較例2]
4,4-ビス(トリフルオロメタンスルホニル)-1-ブテンの代わりにビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド8.7g(0.031mol)を用いた以外は実施例1と同様の方法にて反応を行うことで、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドトリアリルアンモニウム13.0g(0.031mol)およびエレクトレットを得た。
【0123】
得られたエレクトレットについて、下記の評価項目に基づいて評価を行った。
【0124】
(電流密度:発電試験)
実施例1~5、比較例1~2で得られたエレクトレット5を、可動基板1の一面に設けられた可動電極3と、固定基板2の一面に設けられた固定電極4との間に配置し、
図2に示したデバイス(振動発電素子10)を作成した。1対の可動電極3と固定電極4との間を配線で接続し、配線中にオシロスコープ(電圧計)を配置した。そして、可動基板1を1Hzにて振幅させることにより発生する電圧の測定を行った。
このような発電試験にて得られた発生電圧は、オシロスコープ(型式:DSOX3052T、KEYSIGHT TECHNOLOGIES社製)を用いて測定した。測定した電圧、抵抗値、サンプル表面積に基づいて、発電試験時の電流密度(μA/cm
2)を算出した。
上記デバイスの作成直後の電流密度、デバイスを作成してから1日経過後の電流密度を算出した。結果を表1に示す。
【0125】
(電流保持率)
上記発電試験の結果から、式:(1日経過後の電流密度/作成直後の電流密度)×100(%)に基づいて、エレクトレットの電流保持率(%)を算出した。結果を表1に示す。
【0126】
【0127】
実施例1~5において、優れた電流密度が示されており、比較例1~2と比べて電流保持率が高い結果から、電流値の減衰が抑制されることが示された。このような実施例1~5のエレクトレットは、有用なキャパシタ材料といえる。このエレクトレットを2つの電極で挟むことで、電気的特性に優れるキャパシタを実現できる。
【符号の説明】
【0128】
1 可動基板
2 固定基板
3 可動電極
4 固定電極
5 エレクトレット
10 振動発電素子
20 第1電極
30 第2電極
50 容量膜
100 キャパシタ