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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】撮像レンズおよび撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 13/00 20060101AFI20221212BHJP
【FI】
G02B13/00
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020047018
(22)【出願日】2020-03-17
(65)【公開番号】P2021148887
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 雅人
【審査官】森内 正明
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-199066(JP,A)
【文献】特開2016-212346(JP,A)
【文献】特開平7-218836(JP,A)
【文献】特開平11-183801(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00 - 17/08
G02B 21/02 - 21/04
G02B 25/00 - 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から像側へ順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群と、第3レンズ群とからなり、
無限遠物体から最至近物体への合焦の際に、前記第2レンズ群のみが移動し、
前記第2レンズ群は、少なくとも4枚のレンズと、絞りとを含み、
前記第1レンズ群の最も物体側のレンズ面から前記第3レンズ群の最も像側のレンズ面までの光軸上の距離と空気換算距離での全系のバックフォーカスとの和をTL、
最大像高をY、
無限遠物体に合焦した状態における全系の焦点距離をf
前記第1レンズ群の焦点距離をf1とした場合、
4<TL/(Y×f)<7.5 (1)
0.02<f/f1<0.3 (5)
で表される条件式(1)および(5)を満足する撮像レンズ。
【請求項2】
物体側から像側へ順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群と、第3レンズ群とからなり、
無限遠物体から最至近物体への合焦の際に、前記第2レンズ群のみが移動し、
前記第2レンズ群は、少なくとも4枚のレンズと、絞りとを含み、
前記第2レンズ群の前記少なくとも4枚のレンズのうちの少なくとも1枚のレンズは前記絞りの物体側に配置され、
前記第1レンズ群の最も物体側のレンズ面から前記第3レンズ群の最も像側のレンズ面までの光軸上の距離と空気換算距離での全系のバックフォーカスとの和をTL、
最大像高をY、
無限遠物体に合焦した状態における全系の焦点距離をf
前記絞りより物体側の前記第2レンズ群内の全てのレンズの合成焦点距離をf21とした場合、
4<TL/(Y×f)<7.5 (1)
0.2<f/f21<1 (6)
で表される条件式(1)および(6)を満足する撮像レンズ。
【請求項3】
物体側から像側へ順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群と、第3レンズ群とからなり、
無限遠物体から最至近物体への合焦の際に、前記第2レンズ群のみが移動し、
前記第2レンズ群は、少なくとも4枚のレンズと、絞りとを含み、
前記第2レンズ群の前記少なくとも4枚のレンズのうちの少なくとも1枚のレンズは正レンズであり、
前記第2レンズ群の正レンズのd線基準のアッベ数をν2pとした場合、
70<ν2p (9)
で表される条件式(9)を満足する正レンズを少なくとも1枚含み、
前記第1レンズ群の最も物体側のレンズ面から前記第3レンズ群の最も像側のレンズ面までの光軸上の距離と空気換算距離での全系のバックフォーカスとの和をTL、
最大像高をY、
無限遠物体に合焦した状態における全系の焦点距離をfとした場合、
4<TL/(Y×f)<7.5 (1)
で表される条件式(1)を満足する撮像レンズ。
【請求項4】
物体側から像側へ順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群と、第3レンズ群とからなり、
無限遠物体から最至近物体への合焦の際に、前記第2レンズ群のみが移動し、
前記第2レンズ群は、少なくとも4枚のレンズと、絞りとを含み、
前記第2レンズ群の前記少なくとも4枚のレンズのうちの1枚のレンズは、前記絞りの物体側に隣接して配置され、かつ、像側の面が凹面であり、
前記第2レンズ群の前記少なくとも4枚のレンズのうちの1枚のレンズは、前記絞りの像側に隣接して配置され、
前記第1レンズ群の最も物体側のレンズ面から前記第3レンズ群の最も像側のレンズ面までの光軸上の距離と空気換算距離での全系のバックフォーカスとの和をTL、
最大像高をY、
無限遠物体に合焦した状態における全系の焦点距離をf
前記絞りの像側に隣接するレンズの物体側の面の曲率半径をRc、
前記絞りより像側の前記第2レンズ群内の全てのレンズの合成焦点距離をf22とした場合、
4<TL/(Y×f)<7.5 (1)
-0.56≦Rc/f22<-0.1 (4a)
で表される条件式(1)および(4a)を満足する撮像レンズ。
【請求項5】
前記第1レンズ群は、少なくとも1枚の正レンズと、少なくとも1枚の負レンズとを含む請求項1から4のいずれか1項に記載の撮像レンズ。
【請求項6】
前記第3レンズ群は、少なくとも3枚のレンズを含む請求項1からのいずれか1項に記載の撮像レンズ。
【請求項7】
前記第3レンズ群の最も像側のレンズの物体側の面は凹面である請求項1からのいずれか1項に記載の撮像レンズ。
【請求項8】
前記第3レンズ群の最も像側のレンズは負レンズである請求項に記載の撮像レンズ。
【請求項9】
前記第2レンズ群の最も物体側のレンズは正レンズである請求項1からのいずれか1項に記載の撮像レンズ。
【請求項10】
前記第2レンズ群の最も物体側の前記正レンズのd線に対する屈折率をN2とした場合、
1.6<N2<2.2 (3)
で表される条件式(3)を満足する請求項に記載の撮像レンズ。
【請求項11】
前記第2レンズ群は、前記絞りの像側に配置された少なくとも1枚のレンズを含み、
無限遠物体に合焦した状態における全系の焦点距離をf、
前記絞りより像側の前記第2レンズ群内の全てのレンズの合成焦点距離をf22とした場合、
0.4<f/f22<1.5 (7)
で表される条件式(7)を満足する請求項1から10のいずれか1項に記載の撮像レンズ。
【請求項12】
無限遠物体に合焦した状態における全系の焦点距離をf、
前記第3レンズ群の焦点距離をf3とした場合、
0<|f/f3|<0.3 (8)
で表される条件式(8)を満足する請求項1から11のいずれか1項に記載の撮像レンズ。
【請求項13】
前記第2レンズ群は、1枚の正レンズと1枚の負レンズとからなる接合レンズを少なくとも2組含み、
前記第2レンズ群の正レンズのd線基準のアッベ数をν2pとした場合、
前記第2レンズ群の少なくとも2組の前記接合レンズの前記正レンズが
70<ν2p (9)
で表される条件式(9)を満足する請求項1から12のいずれか1項に記載の撮像レンズ。
【請求項14】
前記第2レンズ群の前記接合レンズの互いに接合された前記正レンズおよび前記負レンズそれぞれのd線基準のアッベ数をνpおよびνn、
νpからνnを引いた差の最大値をmax(νp-νn)とした場合、
30<max(νp-νn)<75 (10)
で表される条件式(10)を満足する請求項13に記載の撮像レンズ。
【請求項15】
前記第2レンズ群の最も物体側のレンズの物体側の面は凸面である請求項1から14のいずれか1項に記載の撮像レンズ。
【請求項16】
空気換算距離での全系のバックフォーカスをBf、
無限遠物体に合焦した状態における全系の焦点距離をfとした場合、
0.1<Bf/f<0.5 (11)
で表される条件式(11)を満足する請求項1から15のいずれか1項に記載の撮像レンズ。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか1項に記載の撮像レンズを備えた撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、撮像レンズ、および撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、デジタルカメラ等に用いられる撮像レンズとして、下記特許文献1、下記特許文献2、および下記特許文献3に記載のレンズ系が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許06546752号明細書
【文献】特開2019-090919号公報
【文献】特開2019-152773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、小型に構成され、良好な光学性能を有する、インナーフォーカス方式の撮像レンズが要望されている。
【0005】
本開示は、上記事情を鑑みてなされたものであり、小型に構成され、良好な光学性能を有する、インナーフォーカス方式の撮像レンズ、およびこの撮像レンズを備えた撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の撮像レンズは、物体側から像側へ順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群と、第3レンズ群とからなり、無限遠物体から最至近物体への合焦の際に、第2レンズ群のみが移動し、第2レンズ群は、少なくとも4枚のレンズと、絞りとを含み、第1レンズ群の最も物体側のレンズ面から第3レンズ群の最も像側のレンズ面までの光軸上の距離と空気換算距離での全系のバックフォーカスとの和をTL、最大像高をY、無限遠物体に合焦した状態における全系の焦点距離をf、第1レンズ群の焦点距離をf1とした場合、
4<TL/(Y×f)<7.5 (1)
0.02<f/f1<0.3 (5)
で表される条件式(1)および(5)を満足する。
本開示の第2の撮像レンズは、物体側から像側へ順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群と、第3レンズ群とからなり、無限遠物体から最至近物体への合焦の際に、第2レンズ群のみが移動し、第2レンズ群は、少なくとも4枚のレンズと、絞りとを含み、第2レンズ群の少なくとも4枚のレンズのうちの少なくとも1枚のレンズは絞りの物体側に配置され、第1レンズ群の最も物体側のレンズ面から第3レンズ群の最も像側のレンズ面までの光軸上の距離と空気換算距離での全系のバックフォーカスとの和をTL、最大像高をY、無限遠物体に合焦した状態における全系の焦点距離をf、絞りより物体側の第2レンズ群内の全てのレンズの合成焦点距離をf21とした場合、
4<TL /(Y×f)<7.5 (1)
0.2<f/f21<1 (6)
で表される条件式(1)および(6)を満足する。
本開示の第3の撮像レンズは、物体側から像側へ順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群と、第3レンズ群とからなり、無限遠物体から最至近物体への合焦の際に、第2レンズ群のみが移動し、第2レンズ群は、少なくとも4枚のレンズと、絞りとを含み、第2レンズ群の少なくとも4枚のレンズのうちの少なくとも1枚のレンズは正レンズであり、第2レンズ群の正レンズのd線基準のアッベ数をν2pとした場合、
70<ν2p (9)
で表される条件式(9)を満足する正レンズを少なくとも1枚含み、
第1レンズ群の最も物体側のレンズ面から第3レンズ群の最も像側のレンズ面までの光軸上の距離と空気換算距離での全系のバックフォーカスとの和をTL、最大像高をY、無限遠物体に合焦した状態における全系の焦点距離をfとした場合、
4<TL /(Y×f)<7.5 (1)
で表される条件式(1)を満足する。
本開示の第4の撮像レンズは、物体側から像側へ順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群と、第3レンズ群とからなり、無限遠物体から最至近物体への合焦の際に、第2レンズ群のみが移動し、第2レンズ群は、少なくとも4枚のレンズと、絞りとを含み、第2レンズ群の少なくとも4枚のレンズのうちの1枚のレンズは、絞りの物体側に隣接して配置され、かつ、像側の面が凹面であり、
第2レンズ群の少なくとも4枚のレンズのうちの1枚のレンズは、絞りの像側に隣接して配置され、第1レンズ群の最も物体側のレンズ面から第3レンズ群の最も像側のレンズ面までの光軸上の距離と空気換算距離での全系のバックフォーカスとの和をTL、最大像高をY、無限遠物体に合焦した状態における全系の焦点距離をf、絞りの像側に隣接するレンズの物体側の面の曲率半径をRc、絞りより像側の第2レンズ群内の全てのレンズの合成焦点距離をf22とした場合、
4<TL /(Y×f)<7.5 (1)
-0.56≦Rc/f22<-0.1 (4a)
で表される条件式(1)および(4a)を満足する。
【0007】
下では本開示の第1、第2、第3および第4の撮像レンズをまとめて本開示の撮像レンズという。
【0008】
第1レンズ群は、少なくとも1枚の正レンズと、少なくとも1枚の負レンズとを含むことが好ましい。
【0009】
第3レンズ群は、少なくとも3枚のレンズを含むことが好ましい。
【0010】
第3レンズ群の最も像側のレンズの物体側の面は凹面であることが好ましい。また、第3レンズ群の最も像側のレンズは、物体側の面が凹面の負レンズであることが好ましい。
【0011】
第2レンズ群の最も物体側のレンズは正レンズであることが好ましい。第2レンズ群の最も物体側のレンズが正レンズである場合に、第2レンズ群の最も物体側の正レンズのd線に対する屈折率をN2とした場合、本開示の撮像レンズは、
1.6<N2<2.2 (3)
で表される条件式(3)を満足することが好ましい。
【0016】
第2レンズ群は、絞りの像側に配置された少なくとも1枚のレンズを含み、無限遠物体に合焦した状態における全系の焦点距離をf、絞りより像側の第2レンズ群内の全てのレンズの合成焦点距離をf22とした場合、本開示の撮像レンズは、
0.4<f/f22<1.5 (7)
で表される条件式(7)を満足することが好ましい。
【0017】
無限遠物体に合焦した状態における全系の焦点距離をf、第3レンズ群の焦点距離をf3とした場合、本開示の撮像レンズは、
0<|f/f3|<0.3 (8)
で表される条件式(8)を満足することが好ましい。
【0019】
第2レンズ群は、1枚の正レンズと1枚の負レンズとからなる接合レンズを少なくとも2組含み、第2レンズ群の正レンズのd線基準のアッベ数をν2pとした場合、第2レンズ群の少なくとも2組の上記接合レンズの正レンズが
70<ν2p (9)
で表される条件式(9)を満足することが好ましい。
【0020】
第2レンズ群の上記接合レンズの互いに接合された正レンズおよび負レンズそれぞれのd線基準のアッベ数をνpおよびνnとし、νpからνnを引いた差の最大値をmax(νp-νn)とした場合、本開示の撮像レンズは、
30<max(νp-νn)<75 (10)
で表される条件式(10)を満足することが好ましい。
【0021】
第2レンズ群の最も物体側のレンズの物体側の面は凸面であることが好ましい。
【0022】
空気換算距離での全系のバックフォーカスをBf、無限遠物体に合焦した状態における全系の焦点距離をfとした場合、本開示の撮像レンズは、
0.1<Bf/f<0.5 (11)
で表される条件式(11)を満足することが好ましい。
【0023】
本開示の撮像装置は、本開示の撮像レンズを備えている。
【0024】
なお、本明細書の「~からなり」、「~からなる」は、挙げられた構成要素以外に、実質的に屈折力を有さないレンズ、並びに、絞り、フィルタ、およびカバーガラス等のレンズ以外の光学要素、並びに、レンズフランジ、レンズバレル、撮像素子、および手振れ補正機構等の機構部分、等が含まれていてもよいことを意図する。
【0025】
なお、本明細書において、「正の屈折力を有する~群」は、群全体として正の屈折力を有することを意味する。同様に「負の屈折力を有する~群」は、群全体として負の屈折力を有することを意味する。「正の屈折力を有するレンズ」、「正レンズ」、および「正のレンズ」は同義である。「負の屈折力を有するレンズ」、「負レンズ」、および「負のレンズ」は同義である。「~レンズ群」は、複数のレンズからなる構成に限らず、1枚のみのレンズからなる構成としてもよい。「全系」は撮像レンズを意味する。「バックフォーカス」は全系の最も像側のレンズ面から全系の像側焦点位置までの光軸上の距離である。
【0026】
「単レンズ」は接合されていない1枚のレンズを意味する。ただし、複合非球面レンズ(球面レンズと、その球面レンズ上に形成された非球面形状の膜とが一体的に構成されて、全体として1つの非球面レンズとして機能するレンズ)は、接合レンズとは見なさず、1枚のレンズとして扱う。非球面を含むレンズに関する、屈折力の符号、面形状、および曲率半径は、特に断りが無い限り、近軸領域で考えることにする。曲率半径の符号については、物体側に凸面を向けた形状の面の曲率半径の符号を正、像側に凸面を向けた形状の面の曲率半径の符号を負とする。
【0027】
条件式で用いている「焦点距離」は、近軸焦点距離である。条件式で用いている値は、無限遠物体に合焦した状態においてd線を基準とした場合の値である。本明細書に記載の「d線」、「C線」、および「g線」は輝線である。本明細書においては、d線の波長は587.56nm(ナノメートル)、C線の波長は656.27nm(ナノメートル)、g線の波長は435.84nm(ナノメートル)として扱う。
【発明の効果】
【0028】
本開示によれば、小型に構成され、良好な光学性能を有する、インナーフォーカス方式の撮像レンズ、およびこの撮像レンズを備えた撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】一実施形態に係る撮像レンズの構成と光束を示す断面図である。
図2】実施例1の撮像レンズの構成を示す断面図である。
図3】実施例1の撮像レンズの各収差図である。
図4】実施例2の撮像レンズの構成を示す断面図である。
図5】実施例2の撮像レンズの各収差図である。
図6】実施例3の撮像レンズの構成を示す断面図である。
図7】実施例3の撮像レンズの各収差図である。
図8】実施例4の撮像レンズの構成を示す断面図である。
図9】実施例4の撮像レンズの各収差図である。
図10】本開示の一実施形態に係る撮像装置の正面側の斜視図である。
図11】本開示の一実施形態に係る撮像装置の背面側の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1に、本開示の一実施形態に係る撮像レンズの光軸Zを含む断面における構成と光束を示す。図1に示す例は後述の実施例1の撮像レンズに対応している。図1では、左側が物体側、右側が像側であり、無限遠物体に合焦した状態を示す。図1には光束として、軸上光束2および最大像高の光束3も示している。
【0031】
図1では、撮像レンズが撮像装置に適用されることを想定して、撮像レンズと像面Simとの間に平行平板状の光学部材PPが配置された例を示している。光学部材PPは、各種フィルタ、および/又はカバーガラス等を想定した部材である。各種フィルタとは例えば、ローパスフィルタ、赤外線カットフィルタ、および特定の波長域をカットするフィルタ等である。光学部材PPは屈折力を有しない部材であり、光学部材PPを省略した構成も可能である。
【0032】
撮像レンズは、光軸Zに沿って物体側から像側へ順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、第3レンズ群G3とからなる。この撮像レンズは、無限遠物体から最至近物体への合焦の際に、第2レンズ群G2のみが移動し、第1レンズ群G1および第3レンズ群G3は像面Simに対して固定されている、インナーフォーカス方式のレンズ系である。以下では合焦の際に移動するレンズ群をフォーカス群という。図1に示す第2レンズ群G2の下の左方向へ向かう矢印は、第2レンズ群G2がフォーカス群であり、無限遠物体から最至近物体へ合焦する際に物体側へ移動することを意味する。合焦の際に、第2レンズ群G2のみが移動し、第1レンズ群G1および第3レンズ群G3は不動とすることによって、フォーカス群の小型化および軽量化を図ることができる上に、防塵防滴構造に好適なレンズ構成とすることができる。
【0033】
第1レンズ群G1は全体として正の屈折力を有する。最も物体側のレンズ群を正の屈折力を有するレンズ群とすることによって、光学全長の短縮化に有利となる。
【0034】
第1レンズ群G1は、少なくとも1枚の正レンズと、少なくとも1枚の負レンズとを含むことが好ましい。このようにした場合は、色収差の補正に有利となる。
【0035】
一例として、図1の第1レンズ群G1は、物体側から像側へ順に、正のレンズL11、および負のレンズL12の2枚のレンズからなる。図1のレンズL11およびレンズL12は単レンズである。
【0036】
第2レンズ群G2は全体として正の屈折力を有する。また、第2レンズ群G2は、少なくとも4枚のレンズを含む。第2レンズ群G2が4枚以上のレンズを含むことによって、無限遠物体から最至近物体への合焦の際に諸収差の変動の抑制に有利となる。
【0037】
第2レンズ群G2の最も物体側のレンズは正レンズであることが好ましい。このようにした場合は、この正レンズより像側の光束径を小さくしてレンズを小径化することが容易となるため、フォーカス群の小型化および軽量化に有利となる。
【0038】
第2レンズ群G2の最も物体側のレンズの物体側の面は凸面であることが好ましい。このようにした場合は、球面収差の発生を好適に抑制することに有利となり、また、非点収差および像面湾曲を好適に補正することに有利となる。
【0039】
第2レンズ群G2は、開口絞りStを含むことが好ましい。開口絞りStを第2レンズ群G2に配置することによって、開口絞りStに対する光学系の対称性が良くなり、諸収差を好適に補正することが容易となる。また、無限遠物体から最至近物体への合焦の際に、開口絞りStを含めて移動することによって、諸収差の変動の抑制に有利となる。より好ましくは、第2レンズ群G2が、物体側から像側へ順に、少なくとも1枚のレンズと、開口絞りStと、少なくとも1枚のレンズとを含むことである。このようにした場合は、開口絞りStに対する光学系の対称性がより良くなり、諸収差を好適に補正することがより容易となる。
【0040】
第2レンズ群G2が開口絞りStを含む場合、第2レンズ群G2は開口絞りStの物体側に配置された少なくとも1枚のレンズを含み、開口絞りStの物体側に隣接するレンズの像側の面は凹面であることが好ましい。このようにした場合は、球面収差の発生を好適に抑制することに有利となり、また、非点収差および像面湾曲を好適に補正することに有利となる。
【0041】
第2レンズ群G2は、1枚の正レンズと1枚の負レンズとからなる接合レンズを少なくとも2組含むことが好ましい。このようにした場合は、色収差の補正に有利となる。
【0042】
一例として、図1の第2レンズ群G2は、物体側から像側へ順に、正のレンズL21、正のレンズL22、負のレンズL23、開口絞りSt、正のレンズL24、負のレンズL25、および正のレンズL26からなる。図1の第2レンズ群G2は、開口絞りStの物体側および像側にそれぞれ3枚のレンズを含む。レンズL22とレンズL23とは互いに接合され、レンズL24とレンズL25とは互いに接合されている。なお、図1の開口絞りStは大きさおよび形状を示しているのではなく光軸方向の位置を示している。
【0043】
第3レンズ群G3は、全体として正の屈折力を有していてもよく、全体として負の屈折力を有していてもよい。第3レンズ群G3は、少なくとも3枚のレンズを含むことが好ましい。このようにした場合は、無限遠物体から最至近物体への合焦の際に諸収差の変動の抑制に有利となる。
【0044】
第3レンズ群G3の最も像側のレンズの物体側の面は凹面であることが好ましい。このようにした場合は、非点収差の補正に有利となる。
【0045】
第3レンズ群G3の最も像側のレンズは、物体側に凹面を向けた負レンズであることが好ましい。このようにした場合は、ペッツバール和の改善、光学全長の短縮化、および歪曲収差の補正に有利となる。
【0046】
一例として、図1の第3レンズ群G3は、物体側から像側へ順に、正のレンズL31、負のレンズL32、負のレンズL33、および負のレンズL34の4枚のレンズからなり、レンズL31とレンズL32とは互いに接合されている。
【0047】
次に、条件式に関する好ましい構成について述べる。ただし、撮像レンズが満足することが好ましい条件式は、式の形式で記載された条件式に限定されず、好ましい、およびより好ましいとされた条件式の中から下限と上限とを任意に組み合わせて得られる全ての条件式を含む。
【0048】
第1レンズ群G1の最も物体側のレンズ面から第3レンズ群G3の最も像側のレンズ面までの光軸上の距離と空気換算距離での全系のバックフォーカスとの和をTL、最大像高をY、無限遠物体に合焦した状態における全系の焦点距離をfとした場合、撮像レンズは下記条件式(1)を満足することが好ましい。TLは光学全長である。条件式(1)の対応値が下限以下とならないようにすることによって、良好な光学性能の確保に有利となり、また、フォーカス群の可動領域の確保が容易となるため合焦の際の収差変動の抑制に有利となる。条件式(1)の対応値が上限以上とならないようにすることによって、レンズ系の小型化に有利となる。特に、イメージサイズに対して光学全長が短いレンズ系を構成することに有利となる。撮像レンズは、より良好な特性を得るためには、下記条件式(1-1)および(1-2)の少なくとも一方を満足することがより好ましい。
4<TL/(Y×f)<7.5 (1)
4.5<TL/(Y×f)<7.2 (1-1)
4.5<TL/(Y×f)<6 (1-2)
【0049】
第1レンズ群G1の最も物体側のレンズ面から第1レンズ群G1の最も像側のレンズ面までの光軸上の距離をG1TL、第1レンズ群G1の最も物体側のレンズ面から第3レンズ群G3の最も像側のレンズ面までの光軸上の距離をGsumとした場合、撮像レンズは下記条件式(2)を満足することが好ましい。条件式(2)の対応値が下限以下とならないようにすることによって、良好な収差補正に要する枚数のレンズを配置することが容易になる。条件式(2)の対応値が上限以上とならないようにすることによって、第1レンズ群G1のレンズの大径化を抑制することができ、また、フォーカス群の可動領域の確保が容易となるため合焦の際の収差変動の抑制に有利となる。撮像レンズは、より良好な特性を得るためには、下記条件式(2-1)を満足することがより好ましい。
0.04<G1TL/Gsum<0.14 (2)
0.05<G1TL/Gsum<0.12 (2-1)
【0050】
第2レンズ群G2の最も物体側のレンズが正レンズである構成において、第2レンズ群G2の最も物体側の正レンズのd線に対する屈折率をN2とした場合、撮像レンズは下記条件式(3)を満足することが好ましい。条件式(3)の対応値が下限以下とならないようにすることによって、第2レンズ群G2の最も物体側の正レンズより像側の光束径を小さくしてレンズを小径化することが容易となるため、フォーカス群の小型化および軽量化に有利となる。条件式(3)の対応値が上限以上とならないようにすることによって、合焦の際の諸収差の変動の抑制に有利となる。撮像レンズは、より良好な特性を得るためには、下記条件式(3-1)を満足することがより好ましい。
1.6<N2<2.2 (3)
1.7<N2<2.1 (3-1)
【0051】
第2レンズ群G2が、開口絞りStと、開口絞りStの像側に配置された少なくとも1枚のレンズとを含む構成において、開口絞りStの像側に隣接するレンズの物体側の面の曲率半径をRc、開口絞りStより像側の第2レンズ群内の全てのレンズの合成焦点距離をf22とした場合、撮像レンズは下記条件式(4)を満足することが好ましい。条件式(4)の対応値が下限以下とならないようにすることによって、球面収差の補正が過剰になるのを抑制することに有利となる。条件式(4)の対応値が上限以上とならないようにすることによって、球面収差の補正が不足するのを抑制することに有利となる。撮像レンズは、より良好な特性を得るためには、下記条件式(4-1)を満足することがより好ましい。
-0.7<Rc/f22<-0.1 (4)
-0.6<Rc/f22<-0.2 (4-1)
【0052】
無限遠物体に合焦した状態における全系の焦点距離をf、第1レンズ群G1の焦点距離をf1とした場合、撮像レンズは下記条件式(5)を満足することが好ましい。条件式(5)の対応値が下限以下とならないようにすることによって、第1レンズ群G1の正の屈折力を確保することができるため光学全長の短縮化に有利となる。条件式(5)の対応値が上限以上とならないようにすることによって、第1レンズ群G1における色収差の発生の抑制に有利となり、また、合焦の際の球面収差の変動の抑制に有利となる。撮像レンズは、より良好な特性を得るためには、下記条件式(5-1)を満足することがより好ましい。
0.02<f/f1<0.3 (5)
0.03<f/f1<0.25 (5-1)
【0053】
第2レンズ群G2が、開口絞りStと、開口絞りStの物体側に配置された少なくとも1枚のレンズとを含む構成において、無限遠物体に合焦した状態における全系の焦点距離をf、開口絞りStより物体側の第2レンズ群内の全てのレンズの合成焦点距離をf21とした場合、撮像レンズは下記条件式(6)を満足することが好ましい。条件式(6)の対応値が下限以下とならないようにすることによって、開口絞りStより物体側の第2レンズ群内の全てのレンズからなる物体側サブレンズ群の正の屈折力を確保することができるため、光学全長の短縮化に有利となる。条件式(6)の対応値が上限以上とならないようにすることによって、上記物体側サブレンズ群の正の屈折力が強くなり過ぎないため、球面収差および非点収差の抑制に有利となる。撮像レンズは、より良好な特性を得るためには、下記条件式(6-1)を満足することがより好ましい。
0.2<f/f21<1 (6)
0.3<f/f21<0.7 (6-1)
【0054】
第2レンズ群G2が、開口絞りStと、開口絞りStの像側に配置された少なくとも1枚のレンズとを含む構成において、無限遠物体に合焦した状態における全系の焦点距離をf、開口絞りStより像側の第2レンズ群内の全てのレンズの合成焦点距離をf22とした場合、撮像レンズは下記条件式(7)を満足することが好ましい。条件式(7)の対応値が下限以下とならないようにすることによって、開口絞りStより像側の第2レンズ群内の全てのレンズからなる像側サブレンズ群の正の屈折力を確保することができるため、光学全長の短縮化に有利となる。条件式(7)の対応値が上限以上とならないようにすることによって、上記像側サブレンズ群の正の屈折力が強くなり過ぎないため、球面収差および非点収差の抑制に有利となる。撮像レンズは、より良好な特性を得るためには、下記条件式(7-1)を満足することがより好ましい。
0.4<f/f22<1.5 (7)
0.5<f/f22<1.2 (7-1)
【0055】
無限遠物体に合焦した状態における全系の焦点距離をf、第3レンズ群の焦点距離をf3とした場合、撮像レンズは下記条件式(8)を満足することが好ましい。|f/f3|は絶対値であるからその下限は0となる。撮像レンズが条件式(8)を満足することによって、ペッツバール和を抑えることに有利となるため、像面湾曲の増大を抑制することに有利となる。また、無限遠物体から最至近物体への合焦の際に諸収差の変動の抑制に有利となる。撮像レンズは、より良好な特性を得るためには、下記条件式(8-1)を満足することがより好ましい。
0<|f/f3|<0.3 (8)
0<|f/f3|<0.2 (8-1)
【0056】
第2レンズ群G2が少なくとも1枚の正レンズを含む構成において、第2レンズ群G2の正レンズのd線基準のアッベ数をν2pとした場合、下記条件式(9)を満足する正レンズを第2レンズ群G2は少なくとも1枚含むことが好ましい。このようにした場合は、色収差の補正に有利となる。より良好な特性を得るためには、第2レンズ群G2は下記条件式(9-1)を満足する正レンズを少なくとも1枚含むことがより好ましい。条件式(9-1)の対応値が上限以上とならないようにすることによって、色収差の補正が過剰になるのを抑制することが容易となる。
70<ν2p (9)
80<ν2p<100 (9-1)
【0057】
第2レンズ群G2が1枚の正レンズと1枚の負レンズとからなる接合レンズを少なくとも2組含む構成において、第2レンズ群G2の少なくとも2組の接合レンズの正レンズが条件式(9)を満足することが好ましい。すなわち、第2レンズ群G2に含まれる複数の上記接合レンズの正レンズのうち、少なくとも2枚の正レンズが条件式(9)を満足することが好ましい。負レンズと接合されている少なくとも2枚の正レンズが条件式(9)を満足することによって、色収差の補正により有利となる。さらに好ましくは、第2レンズ群G2が、開口絞りStの物体側および像側の両方に、条件式(9)を満足する上記接合レンズの正レンズを含むことである。より良好な特性を得るためには、第2レンズ群G2の少なくとも2組の接合レンズの正レンズは条件式(9-1)を満足することがより好ましい。
【0058】
第2レンズ群G2が1枚の正レンズと1枚の負レンズとからなる接合レンズを少なくとも2組含む構成において、第2レンズ群G2の上記接合レンズの互いに接合された正レンズおよび負レンズそれぞれのd線基準のアッベ数をνpおよびνnとし、νpからνnを引いた差の最大値をmax(νp-νn)とした場合、撮像レンズは下記条件式(10)を満足することが好ましい。条件式(10)の対応値が下限以下とならないようにすることによって、色収差を好適に補正することに有利となる。条件式(10)の対応値が上限以上とならないようにすることによって、色収差の補正が過剰になるのを抑制することが容易となる。撮像レンズは、より良好な特性を得るためには、下記条件式(10-1)を満足することがより好ましい。
30<max(νp-νn)<75 (10)
35<max(νp-νn)<65 (10-1)
【0059】
空気換算距離での全系のバックフォーカスをBf、無限遠物体に合焦した状態における全系の焦点距離をfとした場合、撮像レンズは下記条件式(11)を満足することが好ましい。条件式(11)の対応値が下限以下とならないようにすることによって、適切な長さのバックフォーカスの確保に有利となる。特に、撮像レンズが交換レンズとして適用される場合のバックフォーカスの確保に有利となる。条件式(11)の対応値が上限以上とならないようにすることによって、光学全長の短縮化に有利となる。撮像レンズは、より良好な特性を得るためには、下記条件式(11-1)を満足することがより好ましい。
0.1<Bf/f<0.5 (11)
0.15<Bf/f<0.45 (11-1)
【0060】
以下に、上述した構成および条件式を考慮した2つの好ましい態様について記す。第1の態様は、物体側から像側へ順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、第3レンズ群とからなり、無限遠物体から最至近物体への合焦の際に第2レンズ群G2のみが移動し、第2レンズ群G2は少なくとも4枚のレンズと開口絞りStとを含み、条件式(1)を満足する撮像レンズである。第1の態様によれば、良好な光学性能を有し、小型に構成され、合焦の際の諸収差の変動が抑えられた撮像レンズを実現することが容易となる。
【0061】
第2の態様は、物体側から像側へ順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、第3レンズ群とからなり、無限遠物体から最至近物体への合焦の際に第2レンズ群G2のみが移動し、第2レンズ群G2は少なくとも4枚のレンズを含み、条件式(2)を満足する撮像レンズである。第2の態様によれば、良好な光学性能を有し、小型に構成され、合焦の際の諸収差の変動が抑えられた撮像レンズを実現することが容易となる。
【0062】
なお、図1に示した例は一例であり、本開示の技術の主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形が可能である。例えば、各レンズ群を構成するレンズの枚数は図1の例と異なる数としてもよい。
【0063】
各レンズ群は、例えば、以下の構成を採ることができる。第1レンズ群G1は、物体側から像側へ順に、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズと、両凹レンズとからなるように構成することができる。あるいは、第1レンズ群G1は、物体側から像側へ順に、両凹レンズと、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズとからなるように構成することができる。
【0064】
第2レンズ群G2は、物体側から像側へ順に、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズと、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズと物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズとが物体側から順に接合された接合レンズと、開口絞りStと、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズと物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズとが物体側から順に接合された接合レンズと、像側に凸面を向けた正レンズとからなるように構成することができる。あるいは、第2レンズ群G2は、物体側から像側へ順に、両凸レンズと、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズと物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズとが物体側から順に接合された接合レンズと、開口絞りStと、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズと両凹レンズとが物体側から順に接合された接合レンズと、2枚の両凸レンズとからなるように構成することができる。
【0065】
第3レンズ群G3は、物体側から像側へ順に、両凸レンズと物体側に凹面を向けた負レンズとが物体側から順に接合された接合レンズと、2枚の物体側に凹面を向けた負レンズとからなるように構成することができる。あるいは、第3レンズ群G3は、物体側から像側へ順に、両凸レンズと物体側に凹面を向けた負レンズとが物体側から順に接合された接合レンズと、物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズとからなるように構成することができる。
【0066】
条件式に関する構成も含め上述した好ましい構成および可能な構成は、任意の組合せが可能であり、要求される仕様に応じて適宜選択的に採用されることが好ましい。
【0067】
次に、本開示の撮像レンズの実施例について説明する。
[実施例1]
実施例1の撮像レンズの構成を示す断面図を図2に示す。図2には無限遠物体に合焦した状態を示す。図2は光束が示されていない点が図1と異なるが、その他の点の図示方法は基本的に図1と同様である。
【0068】
実施例1の撮像レンズは、物体側から像側へ順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、正の屈折力を有する第3レンズ群G3とからなる。第1レンズ群G1は、物体側から像側へ順に、レンズL11~レンズL12の2枚のレンズからなる。第2レンズ群G2は、物体側から像側へ順に、レンズL21~レンズL23の3枚のレンズと、開口絞りStと、レンズL24~レンズL26の3枚のレンズとからなる。第3レンズ群G3は、物体側から像側へ順に、レンズL31~レンズL34の4枚のレンズからなる。無限遠物体から最至近物体へ合焦する際に、第2レンズ群G2のみが物体側へ移動し、第1レンズ群G1および第3レンズ群G3は像面Simに対して固定されている。以上が実施例1の撮像レンズの概要である。
【0069】
実施例1の撮像レンズについて、基本レンズデータを表1に、諸元を表2に、可変面間隔を表3に、非球面係数を表4に示す。表1において、Snの欄には最も物体側の面を第1面とし像側に向かうに従い1つずつ番号を増加させた場合の面番号を示し、Rの欄には各面の曲率半径を示し、Dの欄には各面とその像側に隣接する面との光軸上の面間隔を示す。Ndの欄には各構成要素のd線に対する屈折率を示し、νdの欄には各構成要素のd線基準のアッベ数を示す。
【0070】
表1では、物体側に凸面を向けた形状の面の曲率半径の符号を正、像側に凸面を向けた形状の面の曲率半径の符号を負としている。表1には開口絞りStおよび光学部材PPも示している。開口絞りStに対応する面の面番号の欄には面番号と(St)という語句を記載している。表1のDの最下欄の値は表中の最も像側の面と像面Simとの間隔である。表1では合焦の際に間隔が変化する可変面間隔についてはDD[ ]という記号を用い、[ ]の中にこの間隔の物体側の面番号を付してDの欄に記入している。
【0071】
表2に、焦点距離f、空気換算距離でのバックフォーカスBf、FナンバーFNo.、最大全画角2ω、最大像高Y、および光学全長TLの各値を示す。光学全長は、第1レンズ群G1の最も物体側のレンズ面から第3レンズ群の最も像側のレンズ面までの光軸上の距離と、空気換算距離でのバックフォーカスとの和である。2ωの欄の(°)は単位が度であることを意味する。表2に示す値は、無限遠物体に合焦した状態においてd線を基準とした場合の値である。
【0072】
表3に、可変面間隔の値を示す。表3では、物体距離が、無限遠物体および700mm(ミリメートル)の場合の各値をそれぞれ、「無限遠」および「700mm」と表記した欄に示す。ここでいう物体距離は、物体から像面Simまでの光軸上の距離である。
【0073】
表1では、非球面の面番号には*印を付しており、非球面の曲率半径の欄には近軸の曲率半径の数値を記載している。表4において、Snの欄には非球面の面番号を示し、KAおよびAmの欄には各非球面についての非球面係数の数値を示す。なお、mは3以上の整数であり、面により異なり、例えば実施例1の非球面ではm=3、4、5、・・・、20である。表4の非球面係数の数値の「E±n」(n:整数)は「×10±n」を意味する。KAおよびAmは下式で表される非球面式における非球面係数である。
Zd=C×h/{1+(1-KA×C×h1/2}+ΣAm×h
ただし、
Zd:非球面深さ(高さhの非球面上の点から、非球面頂点が接する光軸Zに垂直な平面 に下ろした垂線の長さ)
h:高さ(光軸Zからレンズ面までの距離)
C:近軸曲率半径の逆数
KA、Am:非球面係数
であり、非球面式のΣはmに関する総和を意味する。
【0074】
各表のデータにおいて、角度の単位としては度を用い、長さの単位としてはmm(ミリメートル)を用いているが、光学系は比例拡大又は比例縮小しても使用可能なため他の適当な単位を用いることもできる。また、以下に示す各表では予め定められた桁でまるめた数値を記載している。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
【表3】
【0078】
【表4】
【0079】
図3に、実施例1の撮像レンズの各収差図を示す。図3では左から順に、球面収差、非点収差、歪曲収差、および倍率色収差を示す。図3では「無限遠」と付した上段に無限遠物体に合焦した状態の各収差図を示し、「700mm」と付した下段に物体距離が700mm(ミリメートル)の物体に合焦した状態の各収差図を示す。球面収差図では、d線、C線、およびg線における収差をそれぞれ実線、長破線、および短破線で示す。非点収差図では、サジタル方向のd線における収差を実線で示し、タンジェンシャル方向のd線における収差を短破線で示す。歪曲収差図ではd線における収差を実線で示す。倍率色収差図では、C線、およびg線における収差をそれぞれ長破線、および短破線で示す。球面収差図のFNo.はFナンバーを意味し、その他の収差図のωは半画角を意味する。図3では各図の縦軸上端に対応するFNo.とωの値も示している。
【0080】
上記の実施例1に関する各データの記号、意味、記載方法、および図示方法は、特に断りが無い限り以下の実施例においても同様であるので、以下では重複説明を省略する。
【0081】
[実施例2]
実施例2の撮像レンズの構成を示す断面図を図4に示す。実施例2の撮像レンズは、第3レンズ群G3が物体側から像側へ順にレンズL31~レンズL33の3枚のレンズからなる点以外は、実施例1の撮像レンズの概要と同様の構成を有する。実施例2の撮像レンズについて、基本レンズデータを表5に、諸元を表6に、可変面間隔を表7に、非球面係数を表8に、各収差図を図5に示す。図5では、上段に無限遠物体に合焦した状態の各収差図を示し、下段に物体距離が700mm(ミリメートル)の物体に合焦した状態の各収差図を示す。
【0082】
【表5】
【0083】
【表6】
【0084】
【表7】
【0085】
【表8】
【0086】
[実施例3]
実施例3の撮像レンズの構成を示す断面図を図6に示す。実施例3の撮像レンズは、実施例1の撮像レンズの概要と同様の構成を有する。実施例3の撮像レンズについて、基本レンズデータを表9に、諸元を表10に、可変面間隔を表11に、非球面係数を表12Aおよび表12Bに、各収差図を図7に示す。図7では、上段に無限遠物体に合焦した状態の各収差図を示し、下段に物体距離が700mm(ミリメートル)の物体に合焦した状態の各収差図を示す。
【0087】
【表9】
【0088】
【表10】
【0089】
【表11】
【0090】
【表12A】
【0091】
【表12B】
【0092】
[実施例4]
実施例4の撮像レンズの構成を示す断面図を図8に示す。実施例4の撮像レンズでは、第2レンズ群G2は、物体側から像側へ順に、レンズL21~レンズL23の3枚のレンズと、開口絞りStと、レンズL24~レンズL27の4枚のレンズとからなり、第3レンズ群G3は、物体側から像側へ順に、レンズL31~レンズL33の3枚のレンズからなる。実施例4の撮像レンズは、上記点以外は実施例1の撮像レンズの概要と同様の構成を有する。実施例4の撮像レンズについて、基本レンズデータを表13に、諸元を表14に、可変面間隔を表15に、非球面係数を表16に、各収差図を図9に示す。図9では、上段に無限遠物体に合焦した状態の各収差図を示し、下段に物体距離が700mm(ミリメートル)の物体に合焦した状態の各収差図を示す。
【0093】
【表13】
【0094】
【表14】
【0095】
【表15】
【0096】
【表16】
【0097】
表17に実施例1~4の撮像レンズの条件式(1)~(11)の対応値を示す。実施例1~4はd線を基準波長としている。表17にはd線基準での値を示す。
【0098】
【表17】
【0099】
実施例1~4の撮像レンズは、インナーフォーカス方式であり、イメージサイズに対して光学全長が短く、小型に構成されている。また、実施例1~4の撮像レンズは、諸収差が良好に補正されて、高解像を達成しており、高い光学性能を有している。
【0100】
次に、本開示の実施形態に係る撮像装置について説明する。図10および図11に本開示の一実施形態に係る撮像装置であるカメラ30の外観図を示す。図10はカメラ30を正面側から見た斜視図を示し、図11はカメラ30を背面側から見た斜視図を示す。カメラ30は、いわゆるミラーレスタイプのデジタルカメラであり、交換レンズ20を取り外し自在に装着可能である。交換レンズ20は、鏡筒内に収納された本開示の一実施形態に係る撮像レンズ1を含んで構成されている。
【0101】
カメラ30はカメラボディ31を備え、カメラボディ31の上面にはシャッターボタン32、および電源ボタン33が設けられている。また、カメラボディ31の背面には、操作部34、操作部35、および表示部36が設けられている。表示部36は、撮像された画像および撮像される前の画角内にある画像を表示可能である。
【0102】
カメラボディ31の前面中央部には、撮影対象からの光が入射する撮影開口が設けられ、その撮影開口に対応する位置にマウント37が設けられ、マウント37を介して交換レンズ20がカメラボディ31に装着される。
【0103】
カメラボディ31内には、交換レンズ20によって形成された被写体像に応じた撮像信号を出力するCCD(Charge Coupled Device)又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子、その撮像素子から出力された撮像信号を処理して画像を生成する信号処理回路、およびその生成された画像を記録するための記録媒体等が設けられている。カメラ30では、シャッターボタン32を押すことにより静止画又は動画の撮影が可能であり、この撮影で得られた画像データが上記記録媒体に記録される。
【0104】
以上、実施形態および実施例を挙げて本開示の技術を説明したが、本開示の技術は上記実施形態および実施例に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、各レンズの曲率半径、面間隔、屈折率、アッベ数、および非球面係数等は、上記各実施例で示した値に限定されず、他の値をとり得る。
【0105】
また、本開示の実施形態に係る撮像装置についても、上記例に限定されず、例えば、ミラーレスタイプ以外のカメラ、フィルムカメラ、およびビデオカメラ等、種々の態様とすることができる。
【符号の説明】
【0106】
1 撮像レンズ
2 軸上光束
3 最大像高の光束
20 交換レンズ
30 カメラ
31 カメラボディ
32 シャッターボタン
33 電源ボタン
34、35 操作部
36 表示部
37 マウント
G1 第1レンズ群
G2 第2レンズ群
G3 第3レンズ群
L11~L12、L21~L27、L31~L34 レンズ
PP 光学部材
Sim 像面
St 開口絞り
Z 光軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11