(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】加熱放熱システム
(51)【国際特許分類】
H05B 3/14 20060101AFI20221212BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20221212BHJP
H01M 10/615 20140101ALI20221212BHJP
H01M 10/651 20140101ALI20221212BHJP
H01M 10/6555 20140101ALI20221212BHJP
H01M 10/6563 20140101ALI20221212BHJP
H01M 10/6551 20140101ALI20221212BHJP
H01M 10/6569 20140101ALI20221212BHJP
H01M 10/6571 20140101ALI20221212BHJP
H01M 10/653 20140101ALI20221212BHJP
【FI】
H05B3/14 F
H01M10/613
H01M10/615
H01M10/651
H01M10/6555
H01M10/6563
H01M10/6551
H01M10/6569
H01M10/6571
H01M10/653
(21)【出願番号】P 2020200951
(22)【出願日】2020-12-03
(62)【分割の表示】P 2016050138の分割
【原出願日】2016-03-14
【審査請求日】2020-12-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】藤田 志朗
【審査官】高橋 武大
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-507861(JP,A)
【文献】登録実用新案第3122382(JP,U)
【文献】特表2012-531008(JP,A)
【文献】特開2010-073606(JP,A)
【文献】特表2014-531111(JP,A)
【文献】特開2007-261087(JP,A)
【文献】特開2004-090445(JP,A)
【文献】特開2012-158009(JP,A)
【文献】特開2011-174602(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/00
H01M 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラファイトシートを有する放熱層と、前記放熱層上に形成された電極と、前記放熱層に積層された粘着剤層とを有する加熱放熱シートが、前記粘着剤層により、
扁平の発熱体
の両面のうち1つの面に貼着された加熱放熱システムであって、
前記電極が、前記放熱層を通電により加熱することが可能であり、前記発熱体の前記加熱放熱シートが貼着された
面とは
反対側の面に、電極を有しな
いグラファイトシートを有する第2の放熱層が、第2の粘着剤層を介して貼着されており、
前記グラファイトシートはシート全体が層状構造を有する結晶質であり、厚さ方向に単原子層が積層された結晶軸(c軸)を有し、
前記第2の放熱層の外側には、冷却装置に熱を伝導するための連絡部が設けられ、前記連絡部が、
前記加熱放熱シートの前記放熱層から前記第2の放熱層
を経て前記連絡部まで連続したグラファイトシートを含み、
前記グラファイトシートには、前記加熱放熱シートの前記粘着剤層から前記第2の粘着剤層にまたがって一体に形成された粘着剤層が積層され、
前記発熱体が電池であり、少なくとも樹脂基材層とバリア層とシーラント層とを含む積層体からなる外装体により包装されていることを特徴とする加熱放熱システム。
【請求項2】
前記粘着剤層の厚さが1~15μmであることを特徴とする請求項1に記載の加熱放熱システム。
【請求項3】
前記粘着剤層がシリコーン粘着剤からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の加熱放熱システム。
【請求項4】
前記加熱放熱システムが、前記発熱体の発熱を、前記加熱放熱シートの前記放熱層から放熱することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の加熱放熱システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱放熱シート及び加熱放熱システムに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池、モーター等の電気装置は、ジュール熱により発熱するが、氷点下等の寒冷地では電池反応性の低下や凍結等により、動作に支障が出るおそれがある。このため、電池に加熱用のヒーターを設けることが提案されている(特許文献1~5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-165390号公報
【文献】特開2011-165391号公報
【文献】特許第4925680号公報
【文献】特許第5105809号公報
【文献】特許第4948187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えばリチウムイオン電池は、10~45℃の温度領域で充放電が効率的になされ、それより低温でも高温でも性能が悪化する。電気装置自体が発熱体であるため、従来、高温での動作を改善するためには、送風ファンなどの大きい設備が必要とされている。しかし、低温で電気装置を使用する場合、動作中は電気装置自体の発熱により温度が維持されても、動作を開始する際には、電気装置を加熱して、効率よく動作を開始させる必要がある。そのため、低温から高温まで広範囲の温度で電気装置を使用するためには、小型で、加熱(発熱)と放熱(放冷)という、相反する機能を併せ持つ材料の開発が望まれる。
【0005】
なお、特許文献3の段落0035には、ダイオード等の発熱部品を、アウターケースの内面に設けられた金属シャーシーに固定して、発熱部品の放熱板に併用することが記載されている。しかし、特許文献3の一実施例として記載された発明では、シートヒーターはインナーケースの上下面(リード板設置面)に配設されており、インナーケースの両側面に配設される金属シャーシーとは位置が異なっている。
【0006】
また、特許文献3には、他の実施例として、金属シャーシーがインナーケースの側面及び上下面を覆う構成も開示されている。その場合、ヒーターから金属シャーシーへの熱伝導を防ぐため、ヒーターが直接に金属シャーシーに接触しないように構成することが記載されている(特許文献3の段落0048~0049)。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、加熱と放熱の機能を併せ持ち、発熱体の温度を所定の範囲内に維持するために好適に利用することが可能な加熱放熱シート及び加熱放熱システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、グラファイトシートを有する放熱層と、前記放熱層上に形成された電極と、前記放熱層に積層された粘着剤層とを有する加熱放熱シートが、前記粘着剤層により、発熱体に貼着された加熱放熱システムであって、前記電極が、前記放熱層を通電により加熱することが可能であり、前記発熱体の前記加熱放熱シートが貼着された部分とは異なる部分に、電極を有しない第2のグラファイトシートを有する第2の放熱層が、第2の粘着剤層を介して貼着されており、前記発熱体が電池であり、少なくとも樹脂基材層とバリア層とシーラント層とを含む積層体からなる外装体により包装されていることを特徴とする加熱放熱システムを提供する。
前記粘着剤層の厚さが1~15μmであることが好ましい。
前記粘着剤層がシリコーン粘着剤からなることが好ましい。
【0009】
前記加熱放熱システムが、前記発熱体の発熱を、前記加熱放熱シートの前記放熱層から放熱することが好ましい。
前記発熱体が扁平であり、その両面のうち少なくとも1つの面に前記加熱放熱シートが貼着されていることが好ましい。
前記発熱体が円柱形であり、その曲面部分を覆うように前記加熱放熱シートが貼着されていることが好ましい。
【0010】
前記発熱体が電池であることが好ましい。
前記電池が、少なくとも樹脂基材層とバリア層とシーラント層とを含む積層体からなる外装体により包装されていることが好ましい。
前記発熱体がモーターであることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、適度な熱伝導性と電気伝導性を有するグラファイトシートを放熱材として使用することにより、外部からグラファイトシートに通電することで加熱体としても機能させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の加熱放熱シートの実施例1を示す斜視図である。
【
図2】本発明の加熱放熱シートの実施例2を示す断面図である。
【
図3】本発明の加熱放熱システムの実施例1を示す断面図である。
【
図4】本発明の加熱放熱システムの実施例2を示す断面図である。
【
図5】本発明の加熱放熱システムの実施例3を示す断面図である。
【
図6】本発明の加熱放熱シートの実施例3を示す断面図である。
【
図7】本発明の加熱放熱システムの実施例4を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、好適な実施形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。
【0014】
図1に、本発明の加熱放熱シートの実施例1を示す。この加熱放熱シート10は、グラファイトシートを有する放熱層11と、この放熱層11上に形成された電極12と、放熱層11に積層された粘着剤層13とを有する。
【0015】
放熱層11は、電気伝導性を有するとともに、適度な熱伝導性を有する材料として、グラファイトシートまたはこれを含む材料(積層体等)から構成されている。グラファイトシートとしては、天然グラファイトまたは合成グラファイトのいずれも使用できる。グラファイトシートの厚さは、例えば単層当たり10~1000μm程度が好ましい。2層以上又は2種以上のグラファイトシートを接着剤等によりラミネートしてもよい。天然グラファイトは安価であり、合成グラファイトは不純物が少なく物性に優れるので、それぞれ用途や性能等を考慮して選択することが好ましい。
【0016】
グラファイトシートの特性としては、例えば、平面方向の電気伝導度が5000~25000S/cm(比抵抗が4×10-5~2×10-4Ω・cm)、平面方向の熱伝導率が100~3000W/(m・K)、厚さ方向の熱伝導率が1~30W/(m・K)等が挙げられる。グラファイトシートはシート全体が層状構造を有する結晶質であり、厚さ方向に単原子層が積層された結晶軸(c軸)を有するため、その物性は、厚さ方向と平面方向に対して大きな異方性を示す。
【0017】
電極12は、外部から給電を受けることにより、放熱層11に通電して放熱層11を発熱させ、加熱することができる。電極12の設置箇所は特に限定されないが、放熱層11の面上の複数箇所であればよい。例えば対向する各辺に対をなして電極12を設けることが好ましい。電極12の形成材料及び方法は特に限定されないが、金属箔片の接着、導電ペーストの印刷等が挙げられる。
【0018】
粘着剤層13は、加熱放熱シート10を発熱体等の被着体に貼着するために用いられる。粘着剤層13を構成する粘着剤としては、シリコーン粘着剤、アクリル粘着剤、ゴム系粘着剤、ウレタン粘着剤等が挙げられるが、使用可能温度の広さ(耐寒性及び耐熱性)、耐薬品性、耐水性等の観点から、シリコーン粘着剤が好ましい。粘着剤層の厚さとしては、例えば1~15μmが挙げられる。粘着剤層13が薄すぎると接着力が低くなり、粘着剤層13が厚すぎると熱伝導性が低下するおそれがある。
【0019】
グラファイトシートは、適度な熱伝導性と電気伝導性を有することから、放熱層と電気抵抗による発熱層を兼ねることができる。平面方向に比べて厚さ方向の熱伝導性が低いことから、通電による発熱時においても、外側に漏れる熱量が少なく、効率的な加熱が可能である。放熱が必要な場合は、平面方向の熱伝導性に優れることから、発熱体の熱を面内に分散させ、効率的に放熱(放冷)することが可能である。
【0020】
図2に、本発明の加熱放熱シートの実施例2を示す。本実施例では、実施例1の加熱放熱シート10上に、放熱層11及び電極12を保護するための保護シート16が積層されている。保護シート16としては、接着層14を介して保護層15を放熱層11及び電極12上に貼着可能な積層体が挙げられる。加熱放熱シート10の放熱層11及び電極12上に保護シート16を積層することにより、グラファイトシート及び電極の破損や、グラファイトの破片、粉末等による汚れを抑制することができる。
【0021】
接着層14としては、シリコーン粘着剤等の粘着剤のほか、フェノール樹脂等の硬化型接着剤が挙げられる。保護層15としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ナイロン(ポリアミド樹脂)、ポリイミド等の樹脂フィルムが挙げられる。
【0022】
加熱放熱シート10の粘着剤層13の粘着面には、剥離シート17を設けることができる。剥離シート17を粘着面に貼着した状態では、加熱放熱シート10の運搬、保管等の間、粘着剤層13を保護することができる。加熱放熱シート10を発熱体に貼着する際は、粘着剤層13から剥離シート17を軽い力で容易に剥離することができる。剥離シート17の構成は特に限定されないが、樹脂フィルム、紙等の基材の表面に、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等の剥離剤を有する積層体が挙げられる。
【0023】
粘着剤層13を用いて加熱放熱シート10を発熱体に貼着することにより加熱放熱システムを構成することができる。発熱体としては、リチウムイオン電池、燃料電池、二次電池、モーター、表示装置等の電気装置が挙げられる。発熱体が扁平である場合、発熱体の両面のうち少なくとも1つの面に加熱放熱シート10が貼着することが可能である。
【0024】
発熱体が、リチウムイオン電池等の電池である場合には、少なくとも樹脂基材層とバリア層とシーラント層とを含む積層体からなる外装体により包装されていることが好ましい。これにより、軽量で、広い温度にわたり耐久性を確保し、かつ粘着剤層13による貼着が容易になる。
【0025】
樹脂基材層としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ナイロン(ポリアミド樹脂)、ポリイミド等の樹脂フィルムが挙げられる。ガスバリア層としては、ステンレス、アルミ箔等の金属箔が挙げられる。シーラント層としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、特に無水マレイン酸等の酸変性ポリオレフィン樹脂が挙げられる。
【0026】
図3に、本発明の加熱放熱システムの実施例1を示す。この加熱放熱システムは、電池等の発熱体21の片面に、実施例1の加熱放熱シート10を貼着し、発熱体21の反対側の面に、放熱シート20を貼着した構成である。放熱シート20としては、加熱放熱シート10から電極12を省略して、放熱層11の片面又は両面に粘着剤層13を設けた構成が挙げられる。
【0027】
さらに、加熱放熱シート10が貼着された面とは異なる面に放熱シート20を貼着した場合、グラファイトシートを有する放熱層11が粘着剤層13を介して発熱体21に積層される。これにより、放熱シート20を省略した場合に比べて、放熱量(放熱時の熱移動量)を増大させることができる。
【0028】
図4に、本発明の加熱放熱システムの実施例2を示す。発熱体21の片面に貼着された加熱放熱シート10は、実施例1の加熱放熱システムと同様である。実施例2の加熱放熱システムでは、発熱体21に貼着される放熱シート20が粘着剤層13よりも長い放熱層11を有し、放熱層11のうち粘着剤層13が積層された部分の外側には、冷却装置23に熱を伝導するための連絡部22が設けられている。冷却装置23としては、空冷ボックス、熱交換器、金属製の放熱器等が挙げられる。
【0029】
本実施例によれば、実施例1の加熱放熱システムによる効果に加えて、連絡部22が、放熱層11から連続したグラファイトシートを含むので、平面方向の熱伝導性に優れている。このため、発熱体21からの発熱が多い場合であっても、過剰な熱を冷却装置23に伝導して、放熱能力を向上することができる。
【0030】
図5に、本発明の加熱放熱システムの実施例3を示す。本実施例では、発熱体21の片面に貼着される加熱放熱部31と、発熱体21の反対面に貼着される放熱部32と、冷却装置23に熱を伝導するための連絡部22とが一体の加熱放熱シート30を構成している。
【0031】
加熱放熱部31は、
図4の加熱放熱シート10と同様の構成であり、放熱部32は、
図4の放熱シート20と同様の構成である。粘着剤層13は、加熱放熱部31から放熱部32にまたがって一体に形成することができる。また、放熱層11は、加熱放熱部31から放熱部32を経て連絡部22まで連続したグラファイトシートを含むことができる。
【0032】
本実施例によれば、実施例1及び2の加熱放熱システムによる効果に加えて、加熱放熱シート30が可撓性を有するので、発熱体21の周囲を包むように曲げることができる。加熱放熱シートと放熱シートを1枚にまとめることができるのみにならず、加熱放熱部31により発熱体21を加熱する際には、熱を加熱放熱部31の側から放熱部32の側にも分散させて、発熱体21を両面から加熱することができる。
【0033】
図6に、本発明の加熱放熱シートの実施例3を示す。この加熱放熱シートは、片面に電極12が設けられた放熱層11の片面に、
図2と同様な保護シート16を貼着するとともに、放熱層11の反対面に、両面粘着シート40を貼着した構成である。両面粘着シート40は、基材シート41の両面に粘着剤層42,43を有する。基材シート41としては、樹脂フィルムでもよいが、熱伝導性に優れる金属箔等でもよい。
【0034】
図7に、本発明の加熱放熱システムの実施例4を示す。本実施例は、円柱形の発熱体24の曲面部分(周方向の側面部)を覆うように加熱放熱シート10を貼着し、電極12が円柱の底面の円と垂直になるように位置する構成である。電極12の位置は特に限定されないが、円柱形の発熱体24の周方向に沿った加熱放熱シート10の長さ方向において、一端部、中間部、他端部などから選択される2箇所以上が好ましい。
図7では、電極12を加熱放熱シート10の2箇所(一端部及び中間部)に設けた例を示した。
発熱体24は、形状が異なるほかは、扁平の発熱体21と同様であり、電池、モーター等に適用することができる。発熱体24の形状は、円柱形のほか、多角柱などの柱状体、円筒などの筒状体などであってもよい。
【0035】
以上、本発明を好適な実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【0036】
本発明の加熱放熱システムにおいては、発熱体の温度を測定する温度センサや、測定温度に基づき、加熱放熱シートの電極に対する通電状態と未通電状態とを切り替える制御器を備えてもよい。
【符号の説明】
【0037】
10…加熱放熱シート、11…放熱層、12…電極、13…粘着剤層、20…放熱シート、21,24…発熱体、30…加熱放熱シート、31…加熱放熱部、32…放熱部。