(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】検体搬送装置、システム、及び方法
(51)【国際特許分類】
G01N 35/04 20060101AFI20221212BHJP
【FI】
G01N35/04 Z
(21)【出願番号】P 2020549187
(86)(22)【出願日】2019-09-24
(86)【国際出願番号】 JP2019037176
(87)【国際公開番号】W WO2020066965
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-03-17
(31)【優先権主張番号】P 2018181723
(32)【優先日】2018-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】志賀 雄一朗
(72)【発明者】
【氏名】鬼澤 邦昭
【審査官】佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-519544(JP,A)
【文献】特開平06-308134(JP,A)
【文献】特開2013-190388(JP,A)
【文献】特開2006-300847(JP,A)
【文献】特開2015-075343(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105217271(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0063037(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N35/00 -37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体搬送装置であって、
検体を所定の位置へと搬送する、長さの異なる複数の搬送ラインを含む搬送部と、
前記搬送部の前記搬送ラインを駆動する駆動部と、
駆動周波数、電流により前記駆動部の前記搬送ラインを制御する駆動制御部と、
前記搬送部上の検体を検出する検出部と、
前記検出部の検体検出信号を処理する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記検体検出信号を処理した結果に基づき選定した前記駆動周波数、電流の値を前記駆動
制御部へ出力し、当該駆動周波数、電流により前記駆動部を駆動するよう制御し、静音化
を実現する、
ことを特徴とする検体搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の検体搬送装置であって、
前記制御部は、
前記検体検出信号を処理して、前記搬送部上の検体数を算出し、前記検体数に基づき、前
記駆動周波数、電流を選定する、
ことを特徴とする検体搬送装置。
【請求項3】
請求項1に記載の検体搬送装置であって、
前記検体の量を測定する検体量測定部を備え、
前記制御部は、
前記検体検出信号を処理して算出した前記搬送部上の検体数、あるいは前記検体量測定部
で測定した検体量、あるいは前記検体数及び前記検体量に基づき、前記駆動周波数、電流
の値を選定する、
ことを特徴とする検体搬送装置。
【請求項4】
請求項3に記載の検体搬送装置であって、
前記制御部は、
複数の前記駆動周波数、電流の値を格納する記憶部を有する、
ことを特徴とする検体搬送装置。
【請求項5】
請求項4に記載の検体搬送装置であって、
前記制御部は、
格納した複数の前記駆動周波数、電流を用い、前記検体数あるいは前記検体量、あるいは
前記検体数及び前記検体量に応じて、前記駆動周波数、電流の値を多段的に変更して前記
駆動部を駆動する、
ことを特徴とする検体搬送装置。
【請求項6】
請求項4に記載の検体搬送装置であって、
前記制御部は、
前記検体量が規定値より大きいか小さいかに基づき、格納した複数の前記駆動周波数の一
つを選定する、
ことを特徴とする検体搬送装置。
【請求項7】
請求項4に記載の検体搬送装置であって、
前記制御部は、
前記検体量が規定値より大きいか小さいかに基づき、格納した複数の前記電流の値の一つ
を選定する、
ことを特徴とする検体搬送装置。
【請求項8】
検体搬送システムであって、
前記検体を前処理する前処理部と、前処理が実施された前記検体に分析処理を実施する分
析処理部と、前記前処理部と前記分析処理部の間で前記検体を搬送する請求項1乃至7の
いずれか1項に記載の検体搬送装置と、
を備える、
ことを特徴とする検体搬送システム。
【請求項9】
検体搬送方法であって、
駆動周波数、電流により制御される駆動部により駆動される、長さの異なる複数の搬送ラ
インを含む搬送部を用いて検体を所定の位置へと搬送し、
検出部により前記搬送部上の前記検体を検出し、
制御部より、前記検出部の検体検出信号を処理した結果に基づき選定した駆動周波数、電
流の値により前記駆動部の前記搬送ラインを駆動するよう制御し、静音化を実現する、
ことを特徴とする検体搬送方法。
【請求項10】
請求項9に記載の検体搬送方法であって、
前記制御部は、
前記検体検出信号を処理して前記搬送部上の検体数を算出し、当該検体数に基づき、前記
駆動周波数、電流を選定する、
ことを特徴とする検体搬送方法。
【請求項11】
請求項9に記載の検体搬送方法であって、
前記制御部は、
内部に格納した複数の前記駆動周波数、電流の値の中から、前記駆動部を駆動する前記駆
動周波数、電流の値を選定する、
ことを特徴とする検体搬送方法。
【請求項12】
請求項11に記載の検体搬送方法であって、
前記検体の量を測定し、
前記制御部は、
測定した検体量に基づき、前記駆動部を駆動する前記駆動周波数、電流の値を選定する、
ことを特徴とする検体搬送方法。
【請求項13】
請求項9に記載の検体搬送方法であって、
前記検体の量を測定し、
前記制御部は、
前記検体検出信号を処理して算出した前記搬送部上の検体数、あるいは測定した検体量、
あるいは前記検体数及び前記検体量に応じて、前記駆動周波数、電流の値を多段的に変え
て前記駆動部を駆動する、
ことを特徴とする検体搬送方法。
【請求項14】
請求項13に記載の検体搬送方法であって、
前記制御部は、
前記検体量が規定値より大きいか小さいかに基づき、格納した複数の前記駆動周波数の一
つを選定する、
ことを特徴とする検体搬送方法。
【請求項15】
請求項13に記載の検体搬送方法であって、
前記制御部は、
前記検体量が規定値より大きいか小さいかに基づき、格納した複数の前記電流の値の一つ
を選定する、
ことを特徴とする検体搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は検体搬送装置に係り、特に検体前処理システムおよび自動分析システムを含めた検体搬送技術に関する。
【背景技術】
【0002】
血液、尿などの生体サンプルである検体の分析を自動で行うための検体処理システムとして、検体の投入や遠心分離、分注処理、ラベリング処理などを行う検体前処理システム、検体前処理システムで処理された検体を分析する自動分析システムがある。
【0003】
これらの検体前処理システムおよび自動分析システムは、所定の処理や分析を行う機構まで検体を搬送するために、ベルトコンベヤなどを用いた方式の検体の搬送ラインを備えている。この搬送ラインを検体搬送装置上に複数搭載することにより、所定の機構まで検体を搬送している。このような検体搬送装置に関する先行技術文献としては例えば、高さが異なる複数の搬送ラインを接続する検体搬送システムを開示した特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の検体搬送装置に用いられるベルトコンベヤ方式による搬送ラインは、ベルトコンベヤが動作する際、回転するベルトコンベヤの動作音や、ベルトコンベヤを駆動するモータの駆動音が発生する。そのため、接続された複数の搬送ラインを同時に動作することにより、発生する駆動音や動作音が重複することになる。また実際に複数の搬送ライン上を搬送される検体の数や重量によっては、発生し、重複する駆動音や動作音の大きさも変化する。このため、自動分析システムなどが設置される室内で駆動音や動作音を低減し、システムを使用する際の環境の改善が可能な検体搬送技術が求められている。
【0006】
本発明の目的は、上記の課題を解決するため、騒音や動作音を低減することが可能な検体搬送装置、検体搬送システム、及び検体搬送方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明においては、検体を所定の位置へ搬送する搬送部と、搬送部を駆動する駆動部と、駆動周波数、電流により駆動部を制御する駆動制御部と、搬送部上の検体を検出する検出部と、検出部の検体検出信号を処理する制御部と、を備え、制御部は、検体検出信号を処理した結果に基づき選定した駆動周波数、電流の値を駆動制御部へ出力し、選定した駆動周波数、電流により駆動部を駆動するよう制御する検体搬送装置、更に当該検体搬送装置を用いた検体搬送システムを提供する。
【0008】
また、上記の目的を達成するため、本発明においては、駆動周波数、電流により制御される駆動部により駆動される搬送部を用いて検体を所定の位置へと搬送し、検出部により搬送部上の検体を検出し、制御部より、検出部の検体検出信号を処理した結果に基づき選定した駆動周波数、電流の値により駆動部を駆動するよう制御する検体搬送方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、搬送する検体数、検体量に応じて適切な条件で駆動部を駆動し、検体搬送装置、システムの静音化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例1に係る検体搬送システム全体の一構成例を示す図である。
【
図2】実施例1に係る検体搬送システムで使用する検体容器の一構成例を示す断面図である。
【
図3】実施例1に係る検体搬送装置の一構成例を示すブロック図である。
【
図4】実施例1に係るベルト駆動モータの電流制御タイミング示す波形図である。
【
図5】実施例1に係る搬送ラインのベルト駆動モータの周波数制御を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。本明細書において、「駆動周波数、電流」とは、駆動周波数あるいは電流、駆動周波数及び電流の両方を意味することとする。
【実施例1】
【0012】
実施例1は、搬送ラインを備えた検体搬送装置、システム、及び方法の実施例である。すなわち、本実施例は、検体を所定の位置へ搬送する搬送部と、搬送部を駆動する駆動部と、駆動周波数、電流により駆動部を制御する駆動制御部と、搬送部上の検体を検出する検出部と、検出部の検体検出信号を処理する制御部とを備え、制御部は、検体検出信号を処理した結果に基づき選定した駆動周波数、電流の値を駆動制御部へ出力し、選定した駆動周波数、電流により駆動部を駆動するよう制御する検体搬送装置、当該検体搬送装置を用いた検体搬送システム、及び検体搬送方法の実施例である。
【0013】
まず、
図1および
図2により、実施例1の検体搬送装置が適用される検体搬送システムを説明する。
図1は実施例1に係る検体搬送システム全体の一構成例を示す図、
図2は実施例1の検体搬送システムで使用する検体容器の一構成例を示す図である。
【0014】
図1において、検体搬送システム100は、血液、尿などの検体の成分を自動で分析する自動分析システムを構成する。検体搬送システム100は、検体投入部101、検体収納部102、遠心処理部103、液量測定処理部104、開栓処理部105、子検体容器生成処理部106、分注処理部107、閉栓処理部108などの機構を備える前処理部と、前処理が実施された検体容器201の検体に分析処理を実施する複数の分析処理部109、前処理部の各機構と分析処理部109の間で検体容器201を搭載したホルダを搬送する検体搬送装置である検体搬送部110と、検体搬送システム全体の動作を制御する制御部111と、から構成される。
【0015】
前処理部の検体投入部101は
図2に示す検体が収容された検体容器201を検体搬送システム100内に投入するためのユニットである。また検体投入部101内には、図示しない検体認識部、栓体検知部、および検体ホルダ認識部が設置されており、搬送される
図2の検体容器201の容器種別、容器の栓体202の形状、および検体容器201が架設されたホルダ203に付与されている識別子(ID)情報を認識し、搬送される検体容器201を特定する情報を得る。なお図示しない検体ホルダ認識部は、検体搬送システム100内の各所に設けられており、各所の検体ホルダ認識部で検体容器201の所在を確認することが可能となる。
【0016】
遠心処理部103は、投入された検体容器201に対して遠心分離を行うためのユニットである。液量測定処理部104は、搬送された検体容器201内に充填されている検体の量や色について、図示しないレーザ光源部や画像認識部によって測定や判別を行うためのユニットである。開栓処理部105は、投入された検体容器201から栓体202を開栓処理するためのユニットである。子検体容器生成処理部106は、投入された検体容器201に収容された検体を次の分注処理部107にて分注するために必要な別の検体容器201の準備し、バーコード等を貼り付けるためのユニットである。
【0017】
分注処理部107は、未遠心もしくは遠心処理部103にて遠心分離された検体を、分析処理部109などで分析するために、子検体容器生成処理部106で準備した別の検体容器201に検体を小分けするためのユニットである。閉栓処理部108は、栓体202を開栓された検体容器201や小分けされた検体容器201に栓体202を閉栓処理するためのユニットである。なお検体容器201の閉栓に用いる栓体の種類に応じて、閉栓処理部108が2つ以上備わる検体搬送システム100の構成も可能である。
【0018】
分析処理部109は、検体搬送システム100内の各処理部で処理された検体を移送し、検体の成分の定性・定量分析を行うためのユニットである。検体収納部102は、閉栓処理部108で閉栓された検体容器201を収納するユニットである。
【0019】
検体搬送部110は、検体投入部101から投入された検体容器201や分注処理部107において分注された小分けされた検体容器201を、遠心処理部103や分注処理部107、分析処理部109などの検体搬送システム100内の各部へ移送する機構である。また検体搬送部110は、複数の搬送ラインを備え、遠心処理部103や分注処理部107、分析処理部109などの各部内の所定の動作を行う各機構部への搬送にも用いられる。制御部111は、検体搬送システム100内の各部や各部内の各機構の動作を制御、分析処理部109での測定データの解析を行う。制御部111は上述の各部や各機構との通信し、ホルダ203のID情報から検体が検体搬送システム100内での所在を確認することが可能である。
【0020】
図2に示すように、検体容器201はホルダ203によって支持され、検体搬送部110を搬送される。検体容器201は、開栓処理部105での開栓処理される以前、および閉栓処理部108での閉栓処理以降では、栓体202で栓封される。なお栓体202には、図示した検体容器201上部の開口部より検体容器201内部へ挿入する形状の他に、スクリュー形状で検体容器201に固定するものや、シールキャップ状で検体容器201上部の開口部を覆うものなど、検体容器201の種別により異なる形状が存在する。またホルダ203内には図示しないID情報が埋め込まれており、このID情報を検出して上述した検体投入部101内、および検体搬送システム100内各所に設けた検体ホルダ認識部にて、検体搬送システム100内での所在を確認することを可能としている。
【0021】
次に
図3に示した検体搬送部周辺のブロック図により、本実施例の検体搬送装置の一構成例について説明する。
図3において、検体搬送部110の個々の搬送ライン301は、一対の滑車302の間にベルト303を渡し、ベルト303の下部にベルト駆動モータ304を設置し、ベルト駆動モータ304の軸部を回転することによりベルト303を一対の滑車302の間を回転動作させる構造となっている。ベルト303はベルト駆動モータ304により時計および反時計回りに回転し、ベルト303上に検体容器201が搭載されることで、滑車302の間を移動することができる。
【0022】
この搬送ライン301は、上述した検体搬送システム100内の各部や各機構によって異なる長さを有し、複数の長さの異なる搬送ライン301が組み合わさることにより、検体搬送システム100内の各部や各機構へ検体容器201を搬送する
図1の検体搬送部110を形成している。ベルト駆動モータ304には、駆動出力部305および駆動制御部306を介し、制御部111が接続される。制御部111は、ベルト駆動モータ304を駆動するために必要な電流値や駆動周波数値といった駆動パラメータ情報が格納され、所定の駆動パラメータを駆動制御部306へ送信する。制御部111は、駆動モータ304を駆動するための複数の駆動周波数、電流の値を格納する図示を省略した記憶部(メモリ)を有する。
【0023】
駆動制御部306は、内部に電流制御部307と周波数制御部308を備えた構造であり、制御部111から送信された駆動パラメータ情報に従った電流値や駆動周波数値を設定し、駆動出力部305へ送る。なお電流制御部307と周波数制御部308は、図示したような別々の制御部構造ではなく、中央処理部(CPU)や、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積回路を用いて一つの制御部としても良い。
【0024】
駆動出力部305は、駆動制御部306から送られたベルト駆動モータ304を駆動するために設定された電流値や駆動周波数値に対して、電流や駆動周波数へ変換してベルト駆動モータ304へ送り、ベルト駆動モータ304を動作させる。
【0025】
また搬送ライン301には、検知センサ309を搭載し、検体容器201がベルト303に到達されたことを確認する。検知センサ309は、検出部310および検出制御部311を介し、制御部111と接続される。検知センサ309にて、ベルト303上に検体容器201が到達し、センサ検知信号が入力されると、そのセンサ検知信号が検出部310へ送られる。検出部310では、検知センサ309からのセンサ検知信号を入力信号として検出制御部311へ送る。検出制御部311は、検出部310から送られたセンサ検知信号である入力信号により、当該搬送ライン301の当該検知センサが検知、即ち検体容器201が所望の位置に到達したことを制御部111へ情報として入力する。なお駆動制御部306と検出制御部311は、別々の制御部構造ではなく、共通のCPUやマイコンICなどを用いてひとつの制御部構造としても良い。
【0026】
制御部111では、検出部310から入力信号が送られた後、一定の時間、次の検出部310から送られる入力信号、即ち当該搬送ライン301に再度検体容器201が到達したか否かを監視する機能を有する。また制御部111には、前述し図示省略した検体搬送システム100における検体投入部101および液量測定処理部104が接続されている。そのため図示を省略した検体投入部101の検体認識部により、搬送される検体容器201の容器種別情報を制御部111へ送信することができる。また液量測定処理部104により、搬送された検体容器201内に充填されている検体の量を測定し、その結果を検体量情報として制御部111へ送信する。検体投入部101から送信された当該検体容器201の容器種別情報、および液量測定処理部104から送付された当該検体容器201の検体量情報により、制御部111では、当該検体容器201の重量を算出する。
【0027】
次に
図4により、本実施例に係るベルト駆動モータの電流値制御およびその効果について説明する。
図4は本実施例に係る搬送ラインのベルト駆動モータの電流値制御タイミング示す波形図である。各波形は、図示の通りハイローの2レベル信号として表される。検知センサ309により検体容器201を検知すると、検体容器検出信号G101が所定期間ハイになり、制御部111で検体容器201の検知が確認される。
【0028】
その際制御部111では、一定の時間、次の検知センサ309による検体容器201の検知のため、入力信号監視G102を行う。制御部111での監視は、検体容器検出信号G101で示したような、検知センサ309で検体容器201を検知する毎に行われる。
【0029】
検知センサ309による検体容器201の検知後の一定の監視時間内に、検知センサ309が次の検体容器201を検知しない場合は、制御部111から通常ベルト駆動モータ304の駆動時より電流値を低減させた駆動パラメータ情報を駆動制御部306へ送り、駆動制御部306内部の電流制御部307にて通常より低い電流値を設定するためのローレベルの電流値制御信号G103を駆動出力部305へ送る(T1)。通常より低い電流値を設置するための電流値制御信号G103が送られた駆動出力部305は、通常より低い電流へ変換してベルト駆動モータ304へ送り、ベルト駆動モータ304を動作させる。
【0030】
一方、検知センサ309による検体容器201の検知後、一定の制御部111による監視時間内で次の検体容器201を検知センサ309で検知した場合は、制御部111から通常のベルト駆動モータ304駆動時の電流値の駆動パラメータ情報を駆動制御部306へ送り、駆動制御部306内部の電流制御部307にて通常の電流値を設定して駆動出力部305へ送る(T2)。この場合は、駆動出力部305で通常の電流へ変換してベルト駆動モータ304へ送り、ベルト駆動モータ304を動作させる。
【0031】
このようにベルト駆動モータ304を流れる電流値を通常流れる値よりも低くした場合、ベルト駆動モータ304は通常よりも低い駆動力、つまりは駆動トルクが通常より低下して駆動することになる。そして、駆動トルクが低下することにより、ベルト駆動モータ304の駆動音が低減されることが確認されており、搬送ライン301として静音化することが可能となる。
【0032】
なおベルト駆動モータ304などのモータを駆動する駆動制御部306の一例として、モータコントローラなどと呼ばれるマイコンICを使用したモータの駆動制御方法があり、このモータコントローラの中には、パワーセーブと呼ばれる通常モータへ流れる電流を減らす機能があるものがある。しかし、モータコントローラによるパワーセーブは、モータを搭載している装置の状況において、モータコントローラで制御している当該モータが駆動を停止している際に、当該モータへの電流供給を停止、もしくは電流値を低減する機能のことであり、以上説明した本実施例の、駆動中のモータに流れる電流値を状況に応じて低減する機能とは異なる機能である。
【0033】
次に
図5により、本実施例に係る駆動制御部による駆動部であるベルト駆動モータの周波数制御の制御処理フロー、およびその効果について説明する。
図5は本実施例に係るベルト駆動モータの周波数制御を示すフローチャートの一例を示す。
【0034】
検体搬送システム100の検体投入部101に投入された検体容器201は、検体搬送部110の搬送ライン301で搬送が開始される(ステップS101)。遠心処理部103など各部内の各機構での処理を経て、液量測定処理部104により、検体容器201内に充填されている検体の検体量を測定し(ステップS102)、制御部111へ検体量情報が送られ、検体投入部101から送信された当該検体容器201の容器種別情報と合わせ、当該検体容器201の重量を制御部111にて算出する。
【0035】
制御部111内の記憶部には、検体容器201の重量と搬送ライン301の長さに応じて、ベルト駆動モータ304を駆動する駆動周波数の値、電流の値などの駆動パラメータ情報が複数格納されている。ここでは2種類の検体容器201の重量規定値と、それに伴う駆動周波数値により説明する。なお、駆動パラメータ情報は、2種類に限定されず、3種類以上の複数の値を用いることにより、駆動部をより多段的に制御することにより検体搬送システムの静音化を図ることも可能である。すなわち、制御部111は、記憶部に格納した複数の駆動周波数、電流を用い、検体数あるいは検体量、あるいは検体数及び検体量に応じて、駆動周波数、電流の値を多段的に変更して駆動部を駆動する。
【0036】
搬送ライン301の所定位置に搭載された検知センサ309にて検体容器201を検知した際(ステップS103)、搬送ライン301上の検体容器201の重量が制御部111に格納された規定値Aと比較される(ステップS104)。当該検体容器201の重量が規定値A以下である場合(YES)、検体容器201の重量規定値Aに応じて制御部111に格納された駆動周波数値Bの駆動パラメータ情報を駆動制御部306へ送り、駆動制御部306内部の周波数制御部308にて駆動周波数値Bの駆動周波数を設定して駆動出力部305へ送り、駆動出力部305で駆動周波数値Bの駆動周波数へ変換してベルト駆動モータ304へ送り、ベルト駆動モータ304を動作させる(ステップS105)。
【0037】
一方、ステップS104において、検体容器201の重量が規定値A以上である場合(NO)、検体容器201の重量が制御部111に格納された第2の規定値Cと比較される(ステップS106)。検体容器201の重量が規定値C以下である場合(YES)、検体容器201の重量規定値Cに応じて制御部111に格納された駆動周波数値Dの駆動パラメータ情報を駆動制御部306へ送り、ステップS105と同様、駆動周波数値Dの駆動周波数でベルト駆動モータ304を動作させる(ステップS107)。
【0038】
ステップS106において、当該検体容器201の重量が規定値C以上である場合(NO)、制御部111に格納された駆動周波数Eの駆動パラメータ情報を駆動制御部306へ送り、ステップS105と同様、駆動周波数値Eの駆動周波数でベルト駆動モータ304を動作させる(ステップS108)。
【0039】
このようにベルト駆動モータ304を駆動する駆動周波数値を検体容器201の重量や搬送ライン301の長さに基づき変化させることにより、検体搬送システム100に複数設置される長さの異なる搬送ライン301それぞれに異なった駆動周波数値でベルト駆動モータ304を駆動することで、複数の搬送ライン301でベルト駆動モータ304が同時に駆動する場合のベルト駆動モータ304の駆動音、および滑車302やベルト303の回転音の周波数をずらし、検体搬送システム100における相対的な駆動音や回転音を低減することできる。これにより、検体搬送システム100として静音化した動作環境を形成することが可能となる。
【0040】
なお検体容器201の重量により規定値を設ける理由は、搬送ライン301上で搬送される検体容器201の重量により、搬送ライン301としての固有振動数が変化し、駆動周波数値に対する共鳴などにより駆動音や回転音が強めあう可能性もあるため、検体容器201の重量も含めた搬送ライン301の固有振動数に対して駆動周波数値を設定する必要があるためである。そのため検体容器201の重量規定値は、必ずしも単一の検体容器201に限るものでななく、搬送ライン301上に複数の検体容器201が搬送される際は、複数の検体容器201の重量の総和に対して定義されるものである。
【0041】
以上詳述した本発明によれば、搬送する検体数および検体量に基づき、搬送ラインも駆動モータの電流値や駆動周波数を変更し、搬送ラインの駆動トルクと駆動回転数とを変更することによって、搬送する検体数および検体量に応じて適切な条件でモータを駆動し、駆動モータや機構等の動作音を低減することで、静音化を実現することが可能となる。
【0042】
本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、
図5では搬送ラインのベルト駆動モータの周波数制御を行う場合の制御処理フローを説明したが、検体数、検体量、更には搬送ラインの長さなどに基づき、電流制御部により電流制御を実行したり、駆動制御部により駆動周波数制御と電流制御の両方を実行しても良い。また、上記した実施例は本発明のより良い理解のために詳細に説明したのであり、必ずしも説明の全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0043】
100 検体搬送システム
101 検体投入部
102 検体収納部
103 遠心処理部
104 液量測定処理部
105 開栓処理部
106 子検体容器生成処理部
107 分注処理部
108 閉栓処理部
109 分析処理部
110 検体搬送部
111 制御部
201 検体容器
202 栓体
203 ホルダ
301 搬送ライン
302 滑車
303 ベルト
304 ベルト駆動モータ
305 駆動出力部
306 駆動制御部
307 電流制御部
308 周波数制御部
309 検知センサ
310 検出部
311 検出制御部