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特許7191981感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、レジスト膜、パターン形成方法、及び電子デバイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、レジスト膜、パターン形成方法、及び電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/039 20060101AFI20221212BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
G03F7/039 601
G03F7/004 503A
G03F7/004 501
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020561217
(86)(22)【出願日】2019-11-13
(86)【国際出願番号】 JP2019044524
(87)【国際公開番号】W WO2020129476
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】P 2018239959
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅川 大輔
(72)【発明者】
【氏名】川島 敬史
(72)【発明者】
【氏名】後藤 研由
(72)【発明者】
【氏名】山本 慶
(72)【発明者】
【氏名】白川 三千紘
【審査官】倉本 勝利
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-087644(JP,A)
【文献】特開2009-192784(JP,A)
【文献】特開2000-267287(JP,A)
【文献】特開2004-280049(JP,A)
【文献】特開2016-206459(JP,A)
【文献】特開2016-218202(JP,A)
【文献】特開2017-119678(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/039
G03F 7/004
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(P1)で表される繰り返し単位を有する樹脂Pを、全固形分に対して30質量%以上含有し、架橋剤を、全固形分に対して10質量%以下含有する、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物であって、
前記樹脂Pが、極性基を有する繰り返し単位K2を更に含み、前記繰り返し単位K2は、前記一般式(P1)で表される繰り返し単位とは異なる繰り返し単位であり、
前記繰り返し単位K2に含まれる極性基が、ラクトン基、スルトン基、スルタム基、カルボン酸基、及び環状カーボネート基からなる群より選択される少なくとも1つの基であり、
光酸発生剤Aを更に含み、
前記光酸発生剤Aが、発生する酸のpKaが-1.40以上である光酸発生剤Awであり、
前記光酸発生剤Awの含有量が、前記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の全固形分に対して、16~35質量%であり、
塩基性化合物(DA)、活性光線又は放射線の照射により塩基性が低下又は消失する塩基性化合物(DB)、前記光酸発生剤Awから発生する酸よりもpKaが1.00以上大きい酸を発生する化合物(DC)、窒素原子を有し、酸の作用により脱離する基を有する化合物(DD)、及びカチオン部に窒素原子を有するオニウム塩化合物(DE)の少なくとも1つを更に含む、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化1】

一般式(P1)中、
は、水素原子、ハロゲン原子、又は1価の有機基を表す。
は、単結合、又は多価の連結基を表す。
とLは結合して環構造を形成していてもよい。
は、O、S、又はNRN1を表す。RN1は、水素原子又は1価の有機基を表す。
は、O、S、又はNRN2を表す。RN2は、水素原子又は1価の有機基を表す。
は、水素原子を表す。
p1及びRp2は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、又はアリール基を表し、前記アルキル基、前記シクロアルキル基、前記アルケニル基、前記シクロアルケニル基、前記アルキニル基、及び前記シクロアルキニル基は、炭素-炭素結合の間にヘテロ原子を有してもよい。ただし、Rp1はパーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基を表すことはない。Rp2はパーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基を表すことはない。
p3及びRp4は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、又はアリール基を表し、前記アルキル基、前記シクロアルキル基、前記アルケニル基、前記シクロアルケニル基、前記アルキニル基、及び前記シクロアルキニル基は、炭素-炭素結合の間にヘテロ原子を有してもよい。ただし、Rp3がパーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基を表し、かつRp4がパーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基を表すことはない。
p1~Rp4のいずれか2つが結合して環構造を形成していてもよい。
【請求項2】
前記一般式(P1)で表される繰り返し単位が、下記一般式(P2)で表される繰り返し単位である、請求項1に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化2】

一般式(P2)中、
は、水素原子、ハロゲン原子、又は1価の有機基を表す。
は、単結合、又は多価の連結基を表す。
とLは結合して環構造を形成していてもよい。
は、O、S、又はNRN2を表す。RN2は、水素原子又は1価の有機基を表す。
p1及びRp2は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、又はアリール基を表し、前記アルキル基、前記シクロアルキル基、前記アルケニル基、前記シクロアルケニル基、前記アルキニル基、及び前記シクロアルキニル基は、炭素-炭素結合の間にヘテロ原子を有してもよい。ただし、Rp1はパーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基を表すことはない。Rp2はパーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基を表すことはない。
p3及びRp4は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、又はアリール基を表し、前記アルキル基、前記シクロアルキル基、前記アルケニル基、前記シクロアルケニル基、前記アルキニル基、及び前記シクロアルキニル基は、炭素-炭素結合の間にヘテロ原子を有してもよい。ただし、Rp3がパーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基を表し、かつRp4がパーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基を表すことはない。
p1~Rp4のいずれか2つが結合して環構造を形成していてもよい。
【請求項3】
前記一般式(P1)で表される繰り返し単位が、下記一般式(P3)で表される繰り返し単位である、請求項1又は2に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化3】

一般式(P3)中、
は、水素原子、ハロゲン原子、又は1価の有機基を表す。
p1及びRp2は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、又はアリール基を表し、前記アルキル基、前記シクロアルキル基、前記アルケニル基、前記シクロアルケニル基、前記アルキニル基、及び前記シクロアルキニル基は、炭素-炭素結合の間にヘテロ原子を有してもよい。ただし、Rp1はパーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基を表すことはない。Rp2はパーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基を表すことはない。
p3及びRp4は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、又はアリール基を表し、前記アルキル基、前記シクロアルキル基、前記アルケニル基、前記シクロアルケニル基、前記アルキニル基、及び前記シクロアルキニル基は、炭素-炭素結合の間にヘテロ原子を有してもよい。ただし、Rp3がパーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基を表し、かつRp4がパーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基を表すことはない。
p1~Rp4のいずれか2つが結合して環構造を形成していてもよい。
【請求項4】
前記樹脂Pが、酸分解性基を有する繰り返し単位K1を更に含み、前記繰り返し単位K1は、前記一般式(P1)で表される繰り返し単位とは異なる繰り返し単位である、請求項1~3のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項5】
前記一般式(P1)において、下記一般式(P1-D)で表される部位の原子量の総和が300以下である請求項1に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化4】

一般式(P1-D)中、
は、O、S、又はNRN1を表す。RN1は、水素原子又は1価の有機基を表す。
は、水素原子を表す。
p1及びRp2は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、又はアリール基を表し、前記アルキル基、前記シクロアルキル基、前記アルケニル基、前記シクロアルケニル基、前記アルキニル基、及び前記シクロアルキニル基は、炭素-炭素結合の間にヘテロ原子を有してもよい。ただし、Rp1はパーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基を表すことはない。Rp2はパーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基を表すことはない。
p3及びRp4は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、又はアリール基を表し、前記アルキル基、前記シクロアルキル基、前記アルケニル基、前記シクロアルケニル基、前記アルキニル基、及び前記シクロアルキニル基は、炭素-炭素結合の間にヘテロ原子を有してもよい。ただし、Rp3がパーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基を表し、かつRp4がパーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基を表すことはない。
p1~Rp4のいずれか2つが結合して環構造を形成していてもよい。
*はYとの結合位置を示す。
【請求項6】
前記樹脂Pに含まれる繰り返し単位は、(メタ)アクリレート系繰り返し単位又はフェノール性水酸基を含む繰り返し単位である、請求項1~5のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて形成されたレジスト膜。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いたパターン形成方法。
【請求項9】
請求項8に記載のパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、レジスト膜、パターン形成方法、及び電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、IC(Integrated Circuit、集積回路)及びLSI(Large Scale Integrated circuit、大規模集積回路)等の半導体デバイスの製造プロセスにおいては、化学増幅型レジスト組成物を用いたリソグラフィーによる微細加工が行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、水酸基含有する繰り返し単位を含むアルカリ可溶性樹脂と、光酸発生剤と、架橋剤とを含むネガ型レジスト組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-215067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、リソグラフィーによって得られるパターンのより一層の微細化が求められており、それに伴い、パターンの線幅、ホール径等に代表されるパターンサイズが、例えば45nm以下である超微細パターンの形成においても、LWR(Line Width Roughness)及びLER(Line Edge Roughness)が小さく、CDU(Critical Demension Uniformity)に優れたパターンを形成することが求められている。また、露光ラティチュード(EL)、及び感度の向上も求められている。
【0006】
本発明は、超微細なパターン(例えば、線幅45nmラインアンドスペースパターン又はホールサイズが45nm以下のホールパターンなど)を形成する際の感度及びELに優れ、LWR及びLERが小さく、CDUに優れる感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、並びに上記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いたレジスト膜、パターン形成方法、及び電子デバイスの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、下記構成により上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は以下のとおりである。[1]
下記一般式(P1)で表される繰り返し単位を有する樹脂Pを、全固形分に対して30質量%以上含有し、架橋剤を、全固形分に対して10質量%以下含有する、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物であって、
上記樹脂Pが、極性基を有する繰り返し単位K2を更に含み、上記繰り返し単位K2は、上記一般式(P1)で表される繰り返し単位とは異なる繰り返し単位であり、
上記繰り返し単位K2に含まれる極性基が、ラクトン基、スルトン基、スルタム基、カルボン酸基、及び環状カーボネート基からなる群より選択される少なくとも1つの基であり、
光酸発生剤Aを更に含み、
上記光酸発生剤Aが、発生する酸のpKaが-1.40以上である光酸発生剤Awであり、
上記光酸発生剤Awの含有量が、上記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の全固形分に対して、16~35質量%であり、
塩基性化合物(DA)、活性光線又は放射線の照射により塩基性が低下又は消失する塩基性化合物(DB)、上記光酸発生剤Awから発生する酸よりもpKaが1.00以上大きい酸を発生する化合物(DC)、窒素原子を有し、酸の作用により脱離する基を有する化合物(DD)、及びカチオン部に窒素原子を有するオニウム塩化合物(DE)の少なくとも1つを更に含む、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化101】

一般式(P1)中、
は、水素原子、ハロゲン原子、又は1価の有機基を表す。
は、単結合、又は多価の連結基を表す。
とLは結合して環構造を形成していてもよい。
は、O、S、又はNRN1を表す。RN1は、水素原子又は1価の有機基を表す。
は、O、S、又はNRN2を表す。RN2は、水素原子又は1価の有機基を表す。
は、水素原子を表す。
p1及びRp2は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、又はアリール基を表し、上記アルキル基、上記シクロアルキル基、上記アルケニル基、上記シクロアルケニル基、上記アルキニル基、及び上記シクロアルキニル基は、炭素-炭素結合の間にヘテロ原子を有してもよい。ただし、Rp1はパーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基を表すことはない。Rp2はパーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基を表すことはない。
p3及びRp4は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、又はアリール基を表し、上記アルキル基、上記シクロアルキル基、上記アルケニル基、上記シクロアルケニル基、上記アルキニル基、及び上記シクロアルキニル基は、炭素-炭素結合の間にヘテロ原子を有してもよい。ただし、Rp3がパーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基を表し、かつRp4がパーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基を表すことはない。
p1~Rp4のいずれか2つが結合して環構造を形成していてもよい。
[2]
上記一般式(P1)で表される繰り返し単位が、下記一般式(P2)で表される繰り返し単位である、[1]に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化102】

一般式(P2)中、
は、水素原子、ハロゲン原子、又は1価の有機基を表す。
は、単結合、又は多価の連結基を表す。
とLは結合して環構造を形成していてもよい。
は、O、S、又はNRN2を表す。RN2は、水素原子又は1価の有機基を表す。
p1及びRp2は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、又はアリール基を表し、上記アルキル基、上記シクロアルキル基、上記アルケニル基、上記シクロアルケニル基、上記アルキニル基、及び上記シクロアルキニル基は、炭素-炭素結合の間にヘテロ原子を有してもよい。ただし、Rp1はパーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基を表すことはない。Rp2はパーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基を表すことはない。
p3及びRp4は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、又はアリール基を表し、上記アルキル基、上記シクロアルキル基、上記アルケニル基、上記シクロアルケニル基、上記アルキニル基、及び上記シクロアルキニル基は、炭素-炭素結合の間にヘテロ原子を有してもよい。ただし、Rp3がパーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基を表し、かつRp4がパーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基を表すことはない。
p1~Rp4のいずれか2つが結合して環構造を形成していてもよい。
[3]
上記一般式(P1)で表される繰り返し単位が、下記一般式(P3)で表される繰り返し単位である、[1]又は[2]に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化103】

一般式(P3)中、
は、水素原子、ハロゲン原子、又は1価の有機基を表す。
p1及びRp2は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、又はアリール基を表し、上記アルキル基、上記シクロアルキル基、上記アルケニル基、上記シクロアルケニル基、上記アルキニル基、及び上記シクロアルキニル基は、炭素-炭素結合の間にヘテロ原子を有してもよい。ただし、Rp1はパーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基を表すことはない。Rp2はパーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基を表すことはない。
p3及びRp4は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、又はアリール基を表し、上記アルキル基、上記シクロアルキル基、上記アルケニル基、上記シクロアルケニル基、上記アルキニル基、及び上記シクロアルキニル基は、炭素-炭素結合の間にヘテロ原子を有してもよい。ただし、Rp3がパーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基を表し、かつRp4がパーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基を表すことはない。
p1~Rp4のいずれか2つが結合して環構造を形成していてもよい。
[4]
上記樹脂Pが、酸分解性基を有する繰り返し単位K1を更に含み、上記繰り返し単位K1は、上記一般式(P1)で表される繰り返し単位とは異なる繰り返し単位である、[1]~[3]のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
[5]
上記一般式(P1)において、下記一般式(P1-D)で表される部位の原子量の総和が300以下である[1]に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化104】

一般式(P1-D)中、
は、O、S、又はNRN1を表す。RN1は、水素原子又は1価の有機基を表す。
は、水素原子を表す。
p1及びRp2は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、又はアリール基を表し、上記アルキル基、上記シクロアルキル基、上記アルケニル基、上記シクロアルケニル基、上記アルキニル基、及び上記シクロアルキニル基は、炭素-炭素結合の間にヘテロ原子を有してもよい。ただし、Rp1はパーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基を表すことはない。Rp2はパーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基を表すことはない。
p3及びRp4は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、又はアリール基を表し、上記アルキル基、上記シクロアルキル基、上記アルケニル基、上記シクロアルケニル基、上記アルキニル基、及び上記シクロアルキニル基は、炭素-炭素結合の間にヘテロ原子を有してもよい。ただし、Rp3がパーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基を表し、かつRp4がパーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基を表すことはない。
p1~Rp4のいずれか2つが結合して環構造を形成していてもよい。
*はYとの結合位置を示す。
[6]
上記樹脂Pに含まれる繰り返し単位は、(メタ)アクリレート系繰り返し単位又はフェノール性水酸基を含む繰り返し単位である、[1]~[5]のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
[7]
[1]~[6]のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて形成されたレジスト膜。
[8]
[1]~[6]のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いたパターン形成方法。
[9]
[8]に記載のパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法。
本発明は、上記[1]~[9]に関するものであるが、本明細書には参考のためその他の事項についても記載した。
【0008】
<1>
下記一般式(P1)で表される繰り返し単位を有する樹脂Pを、全固形分に対して30質量%以上含有し、架橋剤を、全固形分に対して10質量%以下含有する、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【0009】
【化1】
【0010】
一般式(P1)中、
は、水素原子、ハロゲン原子、又は1価の有機基を表す。
は、単結合、又は多価の連結基を表す。
とLは結合して環構造を形成していてもよい。
は、O、S、又はNRN1を表す。RN1は、水素原子又は1価の有機基を表す。
は、O、S、又はNRN2を表す。RN2は、水素原子又は1価の有機基を表す。
は、水素原子又は1価の有機基を表す。
p1及びRp2は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、又はアリール基を表し、上記アルキル基、上記シクロアルキル基、上記アルケニル基、上記シクロアルケニル基、上記アルキニル基、及び上記シクロアルキニル基は、炭素-炭素結合の間にヘテロ原子を有してもよい。ただし、Rp1はパーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基を表すことはない。Rp2はパーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基を表すことはない。
p3及びRp4は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、又はアリール基を表し、上記アルキル基、上記シクロアルキル基、上記アルケニル基、上記シクロアルケニル基、上記アルキニル基、及び上記シクロアルキニル基は、炭素-炭素結合の間にヘテロ原子を有してもよい。ただし、Rp3がパーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基を表し、かつRp4がパーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基を表すことはない。
p1~Rp4のいずれか2つが結合して環構造を形成していてもよい。
<2>
上記一般式(P1)で表される繰り返し単位が、下記一般式(P2)で表される繰り返し単位である、<1>に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【0011】
【化2】
【0012】
一般式(P2)中、
は、水素原子、ハロゲン原子、又は1価の有機基を表す。
は、単結合、又は多価の連結基を表す。
とLは結合して環構造を形成していてもよい。
は、O、S、又はNRN2を表す。RN2は、水素原子又は1価の有機基を表す。
p1及びRp2は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、又はアリール基を表し、上記アルキル基、上記シクロアルキル基、上記アルケニル基、上記シクロアルケニル基、上記アルキニル基、及び上記シクロアルキニル基は、炭素-炭素結合の間にヘテロ原子を有してもよい。ただし、Rp1はパーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基を表すことはない。Rp2はパーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基を表すことはない。
p3及びRp4は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、又はアリール基を表し、上記アルキル基、上記シクロアルキル基、上記アルケニル基、上記シクロアルケニル基、上記アルキニル基、及び上記シクロアルキニル基は、炭素-炭素結合の間にヘテロ原子を有してもよい。ただし、Rp3がパーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基を表し、かつRp4がパーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基を表すことはない。
p1~Rp4のいずれか2つが結合して環構造を形成していてもよい。
<3>
上記一般式(P1)で表される繰り返し単位が、下記一般式(P3)で表される繰り返し単位である、<1>又は<2>に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【0013】
【化3】
【0014】
一般式(P3)中、
は、水素原子、ハロゲン原子、又は1価の有機基を表す。
p1及びRp2は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、又はアリール基を表し、上記アルキル基、上記シクロアルキル基、上記アルケニル基、上記シクロアルケニル基、上記アルキニル基、及び上記シクロアルキニル基は、炭素-炭素結合の間にヘテロ原子を有してもよい。ただし、Rp1はパーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基を表すことはない。Rp2はパーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基を表すことはない。
p3及びRp4は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、又はアリール基を表し、上記アルキル基、上記シクロアルキル基、上記アルケニル基、上記シクロアルケニル基、上記アルキニル基、及び上記シクロアルキニル基は、炭素-炭素結合の間にヘテロ原子を有してもよい。ただし、Rp3がパーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基を表し、かつRp4がパーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基を表すことはない。
p1~Rp4のいずれか2つが結合して環構造を形成していてもよい。
<4>
上記樹脂Pが、酸分解性基を有する繰り返し単位K1を更に含み、前記繰り返し単位K1は、上記一般式(P1)で表される繰り返し単位とは異なる繰り返し単位である、<1>~<3>のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
<5>
上記樹脂Pが、極性基を有する繰り返し単位K2を更に含み、前記繰り返し単位K2は、上記一般式(P1)で表される繰り返し単位とは異なる繰り返し単位である、<1>~<4>のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
<6>
上記繰り返し単位K2に含まれる極性基が、エステル基、スルホネート基、スルホンアミド基、カルボン酸基、スルホン酸基、カーボネート基、カーバメート基、アルコール性水酸基、スルホキシド基、スルホニル基、ケトン基、イミド基、アミド基、スルホンイミド基、シアノ基、ニトロ基、及びエーテル基からなる群より選択される少なくとも1つの基である、<5>に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
<7>
上記繰り返し単位K2に含まれる極性基が、ラクトン基、スルトン基、スルタム基、カルボン酸基、アルコール性水酸基、及び環状カーボネート基からなる群より選択される少なくとも1つの基である、<5>又は<6>に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
<8>
光酸発生剤Aを更に含む、<1>~<7>のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
<9>
上記光酸発生剤Aが、発生する酸のpKaが-1.40以上である光酸発生剤Awである、<8>に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
<10>
塩基性化合物(DA)、活性光線又は放射線の照射により塩基性が低下又は消失する塩基性化合物(DB)、上記光酸発生剤Awから発生する酸よりもpKaが1.00以上大きい酸を発生する化合物(DC)、窒素原子を有し、酸の作用により脱離する基を有する化合物(DD)、及びカチオン部に窒素原子を有するオニウム塩化合物(DE)の少なくとも1つを更に含む、<9>に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
<11>
上記一般式(P1)において、下記一般式(P1-D)で表される部位の原子量の総和が300以下である<1>~<10>のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【0015】
【化4】
【0016】
一般式(P1-D)中、
は、O、S、又はNRN1を表す。RN1は、水素原子又は1価の有機基を表す。
は、水素原子又は1価の有機基を表す。
p1及びRp2は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、又はアリール基を表し、上記アルキル基、上記シクロアルキル基、上記アルケニル基、上記シクロアルケニル基、上記アルキニル基、及び上記シクロアルキニル基は、炭素-炭素結合の間にヘテロ原子を有してもよい。ただし、Rp1はパーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基を表すことはない。Rp2はパーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基を表すことはない。
p3及びRp4は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、又はアリール基を表し、上記アルキル基、上記シクロアルキル基、上記アルケニル基、上記シクロアルケニル基、上記アルキニル基、及び上記シクロアルキニル基は、炭素-炭素結合の間にヘテロ原子を有してもよい。ただし、Rp3がパーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基を表し、かつRp4がパーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基を表すことはない。
p1~Rp4のいずれか2つが結合して環構造を形成していてもよい。
*はYとの結合位置を示す。
<12>
<1>~<11>のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて形成されたレジスト膜。
<13>
<1>~<11>のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いたパターン形成方法。
<14>
<13>に記載のパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法。
【0017】
上記一般式(P1)で表される繰り返し単位は、Y(又は、Y及びL)で表される極性基が酸の作用により分解し脱離する基(脱離基)で保護された構造を有している。つまり、一般式(P1)で表される繰り返し単位は、酸の作用により分解して極性が増大する基(以下、「酸分解性基」とも言う)を含む繰り返し単位である。
したがって、本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いたパターン形成方法において、典型的には、現像液としてアルカリ現像液を採用した場合、ポジ型パターンが好適に形成され、現像液として有機系現像液を採用した場合、ネガ型パターンが好適に形成される。
一般式(P1)が-X-Zで表される極性基を有することにより、光酸発生剤から発生した酸の拡散を適度に抑制することが可能となり、EL性能が向上するものと本発明者らは推察している。
また、-X-Zで表される基が、レジスト組成物中に典型的に含有される光酸発生剤中のアニオン性基と相互作用をすることで、樹脂Pと光酸発生剤との相溶性が向上し、これによりレジスト膜内での光酸発生剤の分布均一性が向上するため、局所的な感度のバラツキが小さくなり、LWR及びLERが小さく、CDUが向上すると考えられる。
さらに、一般式(P1)で表される繰り返し単位は、YとXが2個の炭素原子を介して結合した構造を有しており、転位反応が起こりやすいため、反応性が高い(感度が高い)と考えられる。この転位反応は、YとXが2個の炭素原子を介して結合した構造に特異的なものであり、YとXが3個や4個の炭素原子を介して結合した構造では通常起こりにくい。
また、脱離基が-X-Zで表される極性基を有することにより、ネガ型パターンの形成ではレジスト膜の未露光部の有機溶剤現像液に対する溶解性が適度に下がること、ポジ型パターンの形成では未露光部のアルカリ現像液に対する溶解性が適度に向上することで感度が向上するものと考えられる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、超微細なパターン(例えば、線幅45nmラインアンドスペースパターン又はホールサイズが45nm以下のホールパターンなど)を形成する際の感度及びELに優れ、LWR及びLERが小さく、CDUに優れる感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、並びに上記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いたレジスト膜、パターン形成方法、及び電子デバイスの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に制限されない。
本明細書中における「活性光線」又は「放射線」とは、例えば、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV:Extreme Ultraviolet)、X線、及び電子線(EB:Electron Beam)等を意味する。本明細書中における「光」とは、活性光線又は放射線を意味する。
本明細書中における「露光」とは、特に断らない限り、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線、X線、及びEUV等による露光のみならず、電子線、及びイオンビーム等の粒子線による描画も含む。
本明細書において、「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0020】
本明細書において、(メタ)アクリレートはアクリレート及びメタクリレートを表す。
本明細書において、樹脂の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及び分散度(分子量分布ともいう。)(Mw/Mn)は、GPC(Gel Permeation Chromatography)装置(東ソー社製HLC-8120GPC)によるGPC測定(溶媒:テトラヒドロフラン、流量(サンプル注入量):10μL、カラム:東ソー社製TSK gel Multipore HXL-M、カラム温度:40℃、流速:1.0mL/分、検出器:示差屈折率検出器(Refractive Index Detector))によるポリスチレン換算値として定義される。
【0021】
本明細書においてpKa(酸解離定数pKa)とは、水溶液中での酸解離定数pKaを表し、例えば、化学便覧(II)(改訂4版、1993年、日本化学会編、丸善株式会社)に定義される。酸解離定数pKaの値が低いほど酸強度が大きい。pKaの値は、下記ソフトウェアパッケージ1を用いて、ハメットの置換基定数及び公知文献値のデータベースに基づいた値を、計算により求められる。本明細書中に記載したpKaの値は、全て、このソフトウェアパッケージを用いて計算により求めた値を示す。
【0022】
ソフトウェアパッケージ1: Advanced Chemistry Development (ACD/Labs) Software V8.14 for Solaris (1994-2007 ACD/Labs)。
【0023】
本明細書中における基(原子団)の表記について、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さない基と共に置換基を有する基をも包含する。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含する。また、本明細書中における「有機基」とは、少なくとも1個の炭素原子を含む基をいう。
【0024】
また、本明細書において、「置換基を有していてもよい」というときの置換基の種類、置換基の位置、及び置換基の数は特に制限されない。置換基の数は例えば、1つ、2つ、3つ、又はそれ以上であってもよい。置換基の例としては水素原子を除く1価の非金属原子団を挙げることができ、例えば、以下の置換基Tから選択できる。
【0025】
(置換基T)
置換基Tとしては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基及びtert-ブトキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基及びp-トリルオキシ基等のアリールオキシ基;メトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基及びフェノキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;アセトキシ基、プロピオニルオキシ基及びベンゾイルオキシ基等のアシルオキシ基;アセチル基、ベンゾイル基、イソブチリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基及びメトキサリル基等のアシル基;メチルスルファニル基及びtert-ブチルスルファニル基等のアルキルスルファニル基;フェニルスルファニル基及びp-トリルスルファニル基等のアリールスルファニル基;アルキル基;シクロアルキル基;アリール基;ヘテロアリール基;水酸基;カルボキシ基;ホルミル基;スルホ基;シアノ基;アルキルアミノカルボニル基;アリールアミノカルボニル基;スルホンアミド基;シリル基;アミノ基;モノアルキルアミノ基;ジアルキルアミノ基;アリールアミノ基;並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0026】
[感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物]
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物(以下、「本発明の組成物」ともいう。)は、一般式(P1)で表される繰り返し単位を有する樹脂を、全固形分に対して30質量%以上含有し、架橋剤を、全固形分に対して10質量%以下含有する、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物である。
【0027】
本発明の組成物は、いわゆるレジスト組成物であり、ポジ型のレジスト組成物であっても、ネガ型のレジスト組成物であってもよい。また、アルカリ現像用のレジスト組成物であっても、有機溶剤現像用のレジスト組成物であってもよい。
本発明の組成物は、典型的には、化学増幅型のレジスト組成物である。
以下、本発明の組成物に含まれる成分について詳述する。
【0028】
〔一般式(P1)で表される繰り返し単位を有する樹脂(樹脂P)〕
本発明の組成物は、下記一般式(P1)で表される繰り返し単位を有する樹脂(以下、「樹脂P」ともいう)を含む。下記一般式(P1)で表される繰り返し単位は酸分解性基を含む繰り返し単位であり、樹脂Pは酸分解性樹脂である。
【0029】
【化5】
【0030】
一般式(P1)中、
は、水素原子、ハロゲン原子、又は1価の有機基を表す。
は、単結合、又は多価の連結基を表す。
とLは結合して環構造を形成していてもよい。
は、O、S、又はNRN1を表す。RN1は、水素原子又は1価の有機基を表す。
は、O、S、又はNRN2を表す。RN2は、水素原子又は1価の有機基を表す。
は、水素原子又は1価の有機基を表す。
p1及びRp2は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、又はアリール基を表し、上記アルキル基、上記シクロアルキル基、上記アルケニル基、上記シクロアルケニル基、上記アルキニル基、及び上記シクロアルキニル基は、炭素-炭素結合の間にヘテロ原子を有してもよい。ただし、Rp1はパーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基を表すことはない。Rp2はパーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基を表すことはない。
p3及びRp4は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、又はアリール基を表し、上記アルキル基、上記シクロアルキル基、上記アルケニル基、上記シクロアルケニル基、上記アルキニル基、及び上記シクロアルキニル基は、炭素-炭素結合の間にヘテロ原子を有してもよい。ただし、Rp3がパーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基を表し、かつRp4がパーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基を表すことはない。
p1~Rp4のいずれか2つが結合して環構造を形成していてもよい。
【0031】
一般式(P1)中、Rp1及びRp2がそれぞれパーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基を表す場合がなく、また、Rp3とRp4とが共にパーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基を表すことがないことで、樹脂Pは十分な酸分解反応性を発現する。
【0032】
一般式(P1)中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、又は1価の有機基を表す。
が表すハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等が挙げられる。
が表す1価の有機基としては、特に限定されないが、アルキル基が好ましく挙げられる。
がアルキル基を表す場合、上記アルキル基は、炭素数1~10のアルキル基であることが好ましく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられる。上記アルキル基は、置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、水酸基及びハロゲン原子(好ましくは、フッ素原子)が挙げられる。
は、水素原子又はアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがより好ましく、メチル基であることがさらに好ましい。
【0033】
一般式(P1)中、Lは、単結合、又は多価の連結基を表す。
が表す多価の連結基としては、特に限定されないが、例えば、-C(=O)-、-O-、-S(=O)-、アルキレン基(好ましくは炭素数1~10のアルキレン基)、シクロアルキレン基(好ましくは炭素数3~20のシクロアルキレン基)、2価のヘテロ環基、及びこれらを組み合わせてできる連結基が挙げられる。
は、2価又は3価の連結基であることが好ましく、2価の連結基であることがより好ましく、-C(=O)-、-O-、-S(=O)-、アルキレン基(好ましくは炭素数1~10のアルキレン基)、及びこれらを組み合わせてできる2価の連結基であることがより好ましく、-C(=O)-又は-S(=O)-であることがさらに好ましく、-C(=O)-であることが特に好ましい。
なお、RとLは結合して環構造を形成していてもよい。
【0034】
一般式(P1)中、Xは、O、S、又はNRN1を表す。RN1は、水素原子又は1価の有機基を表す。
N1が1価の有機基を表す場合の1価の有機基としては、アルキル基(好ましくは炭素数1~10のアルキル基)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3~20のシクロアルキル基)、アリール基(好ましくは炭素数6~20のアリール基)等が挙げられる。RN1は、水素原子であることが好ましい。
は、Oを表すことが好ましい。
【0035】
一般式(P1)中、Yは、O、S、又はNRN2を表す。RN2は、水素原子又は1価の有機基を表す。
N2が1価の有機基を表す場合の1価の有機基としては、RN1が1価の有機基を表す場合の1価の有機基が挙げられる。RN2は、水素原子であることが好ましい。
は、O又はNHを表すことが好ましく、Oを表すことがより好ましい。
【0036】
一般式(P1)中、Zは、水素原子又は1価の有機基を表す。
が1価の有機基を表す場合の1価の有機基としては、アルキルスルホニル基(好ましくは炭素数1~6のアルキルスルホニル基)等が挙げられる。これらの基は置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)等が挙げられる。
がO又はSのとき、Zは、水素原子であることが好ましい。
がNRN1のとき、Zは、アルキルスルホニル基であることが好ましい。
【0037】
一般式(P1)中、Rp1及びRp2は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、又はアリール基を表し、上記アルキル基、上記シクロアルキル基、上記アルケニル基、上記シクロアルケニル基、上記アルキニル基、及び上記シクロアルキニル基は、炭素-炭素結合の間にヘテロ原子を有してもよい。ただし、Rp1はパーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基を表すことはない。Rp2はパーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基を表すことはない。
【0038】
p1、Rp2が表すアルキル基としては、特に限定されないが、炭素数1~10のアルキル基が好ましく、炭素数1~8のアルキル基がより好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、へキシル基、及びオクチル基等が挙げられ、メチル基、エチル基が更に好ましく、メチル基が特に好ましい。Rp1、Rp2が表すアルキル基は置換基を有していてもよい。
【0039】
p1、Rp2が表すシクロアルキル基としては、特に限定されず、単環のシクロアルキル基でも、多環のシクロアルキル基でもよい。単環のシクロアルキル基としては、炭素数3~20のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、及びシクロオクチル基等が挙げられる。多環のシクロアルキル基としては、炭素数6~20のシクロアルキル基が好ましく、例えば、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、カンファニル基、ジシクロペンチル基、α-ピネン基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデシル基、及びアンドロスタニル基等が挙げられる。
シクロアルキル基としては、炭素数4~10のシクロアルキル基がより好ましく、シクロヘキシル基が更に好ましい。Rp1、Rp2が表すシクロアルキル基は置換基を有していてもよい。
【0040】
p1、Rp2が表すアルケニル基としては、特に限定されないが、炭素数2~10のアルケニル基が好ましく、炭素数2~6のアルケニル基がより好ましく、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基等が挙げられる。Rp1、Rp2が表すアルケニル基は置換基を有していてもよい。
【0041】
p1、Rp2が表すシクロアルケニル基としては、特に限定されず、単環のシクロアルケニル基でも、多環のシクロアルケニル基でもよい。単環のシクロアルケニル基としては、炭素数3~20のシクロアルケニル基が好ましく、多環のシクロアルケニル基としては、炭素数6~20のシクロアルケニル基が好ましい。
シクロアルケニル基としては、炭素数4~10のシクロアルケニル基がより好ましい。Rp1、Rp2が表すシクロアルケニル基は置換基を有していてもよい。
【0042】
p1、Rp2が表すアルキニル基としては、特に限定されないが、炭素数2~10のアルキニル基が好ましく、炭素数2~6のアルキニル基がより好ましい。Rp1、Rp2が表すアルキニル基は置換基を有していてもよい。
【0043】
p1、Rp2が表すシクロアルキニル基としては、特に限定されず、単環のシクロアルキニル基でも、多環のシクロアルキニル基でもよい。単環のシクロアルキニル基としては、炭素数3~20のシクロアルキニル基が好ましく、多環のシクロアルキニル基としては、炭素数6~20のシクロアルキニル基が好ましい。
シクロアルキニル基としては、炭素数4~10のシクロアルキニル基がより好ましい。Rp1、Rp2が表すシクロアルキニル基は置換基を有していてもよい。
【0044】
p1、Rp2が表すアリール基としては、特に限定されないが、炭素数6~20のアリール基が好ましく、炭素数6~15のアリール基がより好ましく、具体的には、フェニル基、ナフチル基、及びアントリル基等が挙げられ、フェニル基、ナフチル基が更に好ましく、フェニル基が特に好ましい。Rp1、Rp2が表すアリール基は置換基を有していてもよい。
【0045】
上記アルキル基、上記シクロアルキル基、上記アルケニル基、上記シクロアルケニル基、上記アルキニル基、及び上記シクロアルキニル基は、炭素-炭素結合の間にヘテロ原子を有してもよい。ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、硫黄原子、窒素原子が挙げられる。
【0046】
p1とRp2は、互いに結合して環構造を形成していてもよい。形成される環構造としては、炭素数3~20の環構造であることが好ましく、炭素数4~10の環構造であることがより好ましく、炭素数4~8の環構造であることが更に好ましい。
【0047】
p1及びRp2は各々独立にメチル基又はエチル基を表すか、Rp1とRp2が結合して炭素数4~8の環構造を形成していることが好ましく、メチル基又はエチル基であることがより好ましく、メチル基であることがさらに好ましい。
【0048】
一般式(P1)中、Rp3及びRp4は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、又はアリール基を表し、上記アルキル基、上記シクロアルキル基、上記アルケニル基、上記シクロアルケニル基、上記アルキニル基、及び上記シクロアルキニル基は、炭素-炭素結合の間にヘテロ原子を有してもよい。ただし、Rp3がパーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基を表し、かつRp4がパーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基を表すことはない。
【0049】
p3、Rp4が表すアルキル基としては、特に限定されないが、炭素数1~10のアルキル基が好ましく、炭素数1~8のアルキル基がより好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、へキシル基、及びオクチル基等が挙げられ、メチル基、エチル基が更に好ましく、メチル基が特に好ましい。Rp3、Rp4が表すアルキル基は置換基を有していてもよい。
【0050】
p3、Rp4が表すシクロアルキル基としては、特に限定されず、単環のシクロアルキル基でも、多環のシクロアルキル基でもよい。単環のシクロアルキル基としては、炭素数3~20のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、及びシクロオクチル基等が挙げられる。多環のシクロアルキル基としては、炭素数6~20のシクロアルキル基が好ましく、例えば、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、カンファニル基、ジシクロペンチル基、α-ピネン基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデシル基、及びアンドロスタニル基等が挙げられる。
シクロアルキル基としては、炭素数4~10のシクロアルキル基がより好ましく、シクロヘキシル基が更に好ましい。Rp3、Rp4が表すシクロアルキル基は置換基を有していてもよい。
【0051】
p3、Rp4が表すアルケニル基としては、特に限定されないが、炭素数2~10のアルケニル基が好ましく、炭素数2~6のアルケニル基がより好ましく、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基等が挙げられる。Rp3、Rp4が表すアルケニル基は置換基を有していてもよい。
【0052】
p3、Rp4が表すシクロアルケニル基としては、特に限定されず、単環のシクロアルケニル基でも、多環のシクロアルケニル基でもよい。単環のシクロアルケニル基としては、炭素数3~20のシクロアルケニル基が好ましく、多環のシクロアルケニル基としては、炭素数6~20のシクロアルケニル基が好ましい。
シクロアルケニル基としては、炭素数4~10のシクロアルケニル基がより好ましい。Rp3、Rp4が表すシクロアルケニル基は置換基を有していてもよい。
【0053】
p3、Rp4が表すアルキニル基としては、特に限定されないが、炭素数2~10のアルキニル基が好ましく、炭素数2~6のアルキニル基がより好ましい。Rp3、Rp4が表すアルキニル基は置換基を有していてもよい。
【0054】
p3、Rp4が表すシクロアルキニル基としては、特に限定されず、単環のシクロアルキニル基でも、多環のシクロアルキニル基でもよい。単環のシクロアルキニル基としては、炭素数3~20のシクロアルキニル基が好ましく、多環のシクロアルキニル基としては、炭素数6~20のシクロアルキニル基が好ましい。
シクロアルキニル基としては、炭素数4~10のシクロアルキニル基がより好ましい。Rp3、Rp4が表すシクロアルキニル基は置換基を有していてもよい。
【0055】
p3、Rp4が表すアリール基としては、特に限定されないが、炭素数6~20のアリール基が好ましく、炭素数6~15のアリール基がより好ましく、具体的には、フェニル基、ナフチル基、及びアントリル基等が挙げられ、フェニル基、ナフチル基が更に好ましく、フェニル基が特に好ましい。Rp3、Rp4が表すアリール基は置換基を有していてもよい。
【0056】
上記アルキル基、上記シクロアルキル基、上記アルケニル基、上記シクロアルケニル基、上記アルキニル基、及び上記シクロアルキニル基は、炭素-炭素結合の間にヘテロ原子を有してもよい。ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、硫黄原子、窒素原子が挙げられる。
【0057】
p3とRp4は、互いに結合して環構造を形成していてもよい。形成される環構造としては、炭素数3~20の環構造であることが好ましく、炭素数4~10の環構造であることがより好ましく、炭素数4~8の環構造であることが更に好ましい。
【0058】
p3及びRp4は各々独立にメチル基又はエチル基を表すか、Rp3とRp4が結合して炭素数4~8の環構造を形成していることが好ましく、メチル基又はエチル基であることがより好ましく、メチル基であることがさらに好ましい。
【0059】
一般式(P1)で表される繰り返し単位が、酸の作用により分解する際に生じる分解物の大きさが小さい方が、分解物のレジスト膜中の残存性が下がり、現像バラツキを減少させることができる。したがって、分解物の大きさが小さい方が、LWR、LER、CDUの観点から好ましい。分解物の大きさは、酸分解反応で脱離する部位(分解部位)の原子量の総和と相関があると考えられる。本発明では、一般式(P1)における分解部位に相当する、下記一般式(P1-D)で表される部位(基)の式量(原子量の総和)が300以下であることが好ましく、250以下であることがより好ましく、200以下であることが更に好ましく、150以下であることが一層好ましく、120以下であることが特に好ましく、110以下であることが最も好ましい。
【0060】
【化6】
【0061】
一般式(P1-D)中、
は、O、S、又はNRN1を表す。RN1は、水素原子又は1価の有機基を表す。
は、水素原子又は1価の有機基を表す。
p1及びRp2は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、又はアリール基を表し、上記アルキル基、上記シクロアルキル基、上記アルケニル基、上記シクロアルケニル基、上記アルキニル基、及び上記シクロアルキニル基は、炭素-炭素結合の間にヘテロ原子を有してもよい。ただし、Rp1はパーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基を表すことはない。Rp2はパーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基を表すことはない。
p3及びRp4は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、又はアリール基を表し、上記アルキル基、上記シクロアルキル基、上記アルケニル基、上記シクロアルケニル基、上記アルキニル基、及び上記シクロアルキニル基は、炭素-炭素結合の間にヘテロ原子を有してもよい。ただし、Rp3がパーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基を表し、かつRp4がパーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基を表すことはない。
p1~Rp4のいずれか2つが結合して環構造を形成していてもよい。
*はYとの結合位置を示す。
【0062】
一般式(P1-D)中、X、Z、Rp1~Rp4は、一般式(P1)中のX、Z、Rp1~Rp4と同義であり、好ましい例も同様である。
【0063】
一般式(P1)で表される繰り返し単位は、-X-Zで表される極性基がヒドロキシ基であることが好ましい。すなわち、一般式(P1)で表される繰り返し単位は、下記一般式(P2)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【0064】
【化7】
【0065】
一般式(P2)中、
は、水素原子、ハロゲン原子、又は1価の有機基を表す。
は、単結合、又は多価の連結基を表す。
とLは結合して環構造を形成していてもよい。
は、O、S、又はNRN2を表す。RN2は、水素原子又は1価の有機基を表す。
p1及びRp2は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、又はアリール基を表し、上記アルキル基、上記シクロアルキル基、上記アルケニル基、上記シクロアルケニル基、上記アルキニル基、及び上記シクロアルキニル基は、炭素-炭素結合の間にヘテロ原子を有してもよい。ただし、Rp1はパーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基を表すことはない。Rp2はパーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基を表すことはない。
p3及びRp4は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、又はアリール基を表し、上記アルキル基、上記シクロアルキル基、上記アルケニル基、上記シクロアルケニル基、上記アルキニル基、及び上記シクロアルキニル基は、炭素-炭素結合の間にヘテロ原子を有してもよい。ただし、Rp3がパーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基を表し、かつRp4がパーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基を表すことはない。
p1~Rp4のいずれか2つが結合して環構造を形成していてもよい。
【0066】
一般式(P2)中、R、L、Y、及びRp1~Rp4は、一般式(P1)中のR、L、Y、及びRp1~Rp4と同義であり、好ましい例も同様である。
【0067】
さらに、一般式(P1)で表される繰り返し単位は、現像液への適度な溶解性を有することや、原料入手の容易性の観点から、下記一般式(P3)で表される繰り返し単位であることがより好ましい。
【0068】
【化8】
【0069】
一般式(P3)中、
は、水素原子、ハロゲン原子、又は1価の有機基を表す。
p1及びRp2は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、又はアリール基を表し、上記アルキル基、上記シクロアルキル基、上記アルケニル基、上記シクロアルケニル基、上記アルキニル基、及び上記シクロアルキニル基は、炭素-炭素結合の間にヘテロ原子を有してもよい。ただし、Rp1はパーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基を表すことはない。Rp2はパーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基を表すことはない。
p3及びRp4は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、又はアリール基を表し、上記アルキル基、上記シクロアルキル基、上記アルケニル基、上記シクロアルケニル基、上記アルキニル基、及び上記シクロアルキニル基は、炭素-炭素結合の間にヘテロ原子を有してもよい。ただし、Rp3がパーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基を表し、かつRp4がパーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基を表すことはない。
p1~Rp4のいずれか2つが結合して環構造を形成していてもよい。
【0070】
一般式(P3)中、R及びRp1~Rp4は、一般式(P1)中のR及びRp1~Rp4と同義であり、好ましい例も同様である。
【0071】
以下に一般式(P1)で表される繰り返し単位の具体例を挙げる。
【0072】
【化9】
【0073】
【化10】
【0074】
【化11】
【0075】
樹脂Pは一般式(P1)で表される繰り返し単位を、1種単独で含んでもよく、2種以上を併用して含んでもよい。
【0076】
樹脂Pに含まれる一般式(P1)で表される繰り返し単位の含有量(一般式(P1)で表される繰り返し単位が複数存在する場合はその合計の含有量)は、樹脂Pの全繰り返し単位に対して、5~80モル%が好ましく、10~70モル%がより好ましく、15~60モル%が更に好ましい。
【0077】
<酸分解性基を有する繰り返し単位K1>
樹脂Pは、一般式(P1)で表される繰り返し単位に加えて、一般式(P1)で表される繰り返し単位とは異なる酸分解性基を有する繰り返し単位(「繰り返し単位K1」ともいう。)を更に含むことが好ましい。
酸分解性基は、極性基が酸の作用により分解し脱離する基(脱離基)で保護された構造を含むことが好ましい。
極性基としては、カルボキシ基、フェノール性水酸基、フッ素化アルコール基、スルホン酸基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、及びトリス(アルキルスルホニル)メチレン基等の酸性基(2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液中で解離する基)、並びに、アルコール性水酸基等が挙げられる。
【0078】
なお、アルコール性水酸基とは、炭化水素基に結合した水酸基であって、芳香環上に直接結合した水酸基(フェノール性水酸基)以外の水酸基をいい、水酸基としてα位がフッ素原子等の電子求引性基で置換された脂肪族アルコール基(例えば、ヘキサフルオロイソプロパノール基等)は除く。アルコール性水酸基としては、pKa(酸解離定数)が12~20の水酸基が好ましい。
【0079】
極性基としては、カルボキシ基、フェノール性水酸基、フッ素化アルコール基(好ましくはヘキサフルオロイソプロパノール基)、又はスルホン酸基が好ましい。
【0080】
酸分解性基として好ましい基は、これらの基の水素原子を酸の作用により脱離する基(脱離基)で置換した基である。
酸の作用により脱離する基(脱離基)としては、例えば、-C(R36)(R37)(R38)、-C(R36)(R37)(OR39)、及び-C(R01)(R02)(OR39)等が挙げられる。
式中、R36~R39は、それぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、又はアルケニル基を表す。R36とR37とは、互いに結合して環を形成してもよい。
01及びR02は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、又はアルケニル基を表す。
【0081】
36~R39、R01及びR02のアルキル基は、炭素数1~8のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、へキシル基、及びオクチル基等が挙げられる。
36~R39、R01、及びR02のシクロアルキル基は、単環でも、多環でもよい。単環としては、炭素数3~8のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、及びシクロオクチル基等が挙げられる。多環としては、炭素数6~20のシクロアルキル基が好ましく、例えば、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、カンファニル基、ジシクロペンチル基、α-ピネン基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデシル基、及びアンドロスタニル基等が挙げられる。なお、シクロアルキル基中の1つ以上の炭素原子が酸素原子等のヘテロ原子によって置換されていてもよい。
36~R39、R01、及びR02のアリール基は、炭素数6~10のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基、及びアントリル基等が挙げられる。
36~R39、R01、及びR02のアラルキル基は、炭素数7~12のアラルキル基が好ましく、例えば、ベンジル基、フェネチル基、及びナフチルメチル基等が挙げられる。
36~R39、R01、及びR02のアルケニル基は、炭素数2~8のアルケニル基が好ましく、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、及びシクロへキセニル基等が挙げられる。
36とR37とが互いに結合して形成される環としては、シクロアルキル基(単環又は多環)が好ましい。単環のシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、又はシクロヘキシル基等が好ましく、多環のシクロアルキル基としては、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、又はアダマンチル基等が好ましい。
【0082】
酸分解性基としては、第3級のアルキルエステル基、アセタール基、クミルエステル基、エノールエステル基、又はアセタールエステル基が好ましく、アセタール基又は第3級アルキルエステル基がより好ましい。
【0083】
樹脂Pは、繰り返し単位K1として、下記一般式(AI)で表される繰り返し単位を含むことが好ましい。
【0084】
【化12】
【0085】
一般式(AI)中、Tは、単結合又は2価の連結基を表す。
Tの2価の連結基としては、アルキレン基、アリーレン基、-COO-Rt-、及び-O-Rt-等が挙げられる。式中、Rtは、アルキレン基、シクロアルキレン基、又はアリーレン基を表す。
Tは、単結合又は-COO-Rt-が好ましい。Rtは、炭素数1~5の鎖状アルキレン基が好ましく、-CH-、-(CH-、又は-(CH-がより好ましい。
Tは、単結合であることがより好ましい。
【0086】
一般式(AI)中、Xaは、水素原子、ハロゲン原子、又は1価の有機基を表す。
Xaは、水素原子又はアルキル基であることが好ましい。
Xaのアルキル基は、置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、水酸基及びハロゲン原子(好ましくは、フッ素原子)が挙げられる。
Xaのアルキル基は、炭素数1~4が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ヒドロキシメチル基、及びトリフルオロメチル基等が挙げられる。Xaのアルキル基は、メチル基であることが好ましい。
【0087】
一般式(AI)中、Rx~Rxは、それぞれ独立に、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
Rx~Rxのいずれか2つが結合して環構造を形成してもよく、形成しなくてもよい。
Rx、Rx、及びRxのアルキル基としては、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、及びt-ブチル基等が好ましい。アルキル基の炭素数としては、1~10が好ましく、1~5がより好ましく、1~3が更に好ましい。Rx、Rx、及びRxのアルキル基は、炭素間結合の一部が二重結合であってもよい。
Rx、Rx、及びRxのシクロアルキル基は、単環でも多環でもよい。単環のシクロアルキル基としては、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基等が挙げられる。多環のシクロアルキル基としては、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及びアダマンチル基等が挙げられる。
【0088】
Rx、Rx、及びRxの2つが結合して形成する環は単環でも多環でもよい。単環の例としては、シクロペンチル環、シクロヘキシル環、シクロヘプチル環、及びシクロオクタン環等の単環のシクロアルカン環が挙げられる。多環の例としては、ノルボルナン環、テトラシクロデカン環、テトラシクロドデカン環、及びアダマンタン環等の多環のシクロアルキル環が挙げられる。なかでも、シクロペンチル環、シクロヘキシル環、又はアダマンタン環が好ましい。
また、Rx、Rx、及びRxの2つが結合して形成する環としては、下記に示す環も好ましい。
【0089】
【化13】
【0090】
以下に一般式(AI)で表される繰り返し単位に相当するモノマーの具体例を挙げる。
下記の具体例は、一般式(AI)におけるXaがメチル基である場合に相当するが、Xaは、水素原子、ハロゲン原子、又は1価の有機基に任意に置換できる。
【0091】
【化14】
【0092】
樹脂Pは、繰り返し単位K1として、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落<0336>~<0369>に記載の繰り返し単位を有するのも好ましい。
【0093】
また、樹脂Pは、繰り返し単位K1として、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落<0363>~<0364>に記載された酸の作用により分解してアルコール性水酸基を生じる基を含む繰り返し単位を有していてもよい。
【0094】
樹脂Pが繰り返し単位K1を含む場合、樹脂Pに含まれる繰り返し単位K1の種類は1種でもよく、2種以上でもよい。
【0095】
樹脂Pに含まれる繰り返し単位K1の含有量(繰り返し単位K1が複数存在する場合はその合計の含有量)は、樹脂Pの全繰り返し単位に対して、10~90モル%が好ましく、20~80モル%がより好ましく、30~70モル%が更に好ましい。
【0096】
<極性基を有する繰り返し単位K2>
樹脂Pは、一般式(P1)で表される繰り返し単位に加えて、一般式(P1)で表される繰り返し単位とは異なる極性基を有する繰り返し単位(「繰り返し単位K2」ともいう。
)を更に含むことが好ましい。
【0097】
繰り返し単位K2が有する極性基としては、エステル基、スルホネート基、スルホンアミド基、カルボン酸基、スルホン酸基、カーボネート基、カーバメート基、アルコール性水酸基、スルホキシド基、スルホニル基、ケトン基、イミド基、アミド基、スルホンイミド基、シアノ基、ニトロ基、及びエーテル基からなる群より選択される少なくとも1つの基であることが好ましく、ラクトン基、スルトン基、スルタム基、カルボン酸基、アルコール性水酸基、及び環状カーボネート基からなる群より選択される少なくとも1つの基であることがより好ましく、ラクトン基又はスルトン基であることが更に好ましく、ラクトン基であることが特に好ましい。
すなわち、繰り返し単位K2は、ラクトン構造又はスルトン構造を有することが好ましく、ラクトン構造を有することが特に好ましい。
【0098】
ラクトン構造又はスルトン構造としては、ラクトン環又はスルトン環を有していればよく、5~7員環のラクトン環を有するラクトン構造又は5~7員環のスルトン環を有するスルトン構造が好ましい。
ビシクロ構造又はスピロ構造を形成する形で5~7員環ラクトン環に他の環が縮環しているラクトン構造も好ましい。ビシクロ構造又はスピロ構造を形成する形で5~7員環スルトン環に他の環が縮環しているスルトン構造も好ましい。
【0099】
なかでも、樹脂Pは、下記一般式(LC1-1)~(LC1-22)のいずれかで表されるラクトン構造、又は下記一般式(SL1-1)~(SL1-3)のいずれかで表されるスルトン構造を有する繰り返し単位を含むことが好ましい。また、ラクトン構造又はスルトン構造が主鎖に直接結合していてもよい。
なかでも、一般式(LC1-1)、一般式(LC1-4)、一般式(LC1-5)、一般式(LC1-8)、一般式(LC1-16)、一般式(LC1-21)、若しくは、一般式(LC1-22)で表されるラクトン構造、又は一般式(SL1-1)で表されるスルトン構造が好ましい。
【0100】
【化15】
【0101】
ラクトン構造又はスルトン構造は、置換基(Rb)を有していても、有していなくてもよい。置換基(Rb)としては、炭素数1~8のアルキル基、炭素数4~7のシクロアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、炭素数2~8のアルコキシカルボニル基、カルボキシ基、ハロゲン原子、水酸基、又はシアノ基等が好ましく、炭素数1~4のアルキル基、又はシアノ基がより好ましい。nは、0~4の整数を表す。nが2以上の場合、複数存在する置換基(Rb)は、同一でも異なっていてもよい。また、複数存在する置換基(Rb)同士が結合して環を形成してもよい。
【0102】
ラクトン構造又はスルトン構造を有する繰り返し単位としては、下記一般式(LS1)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0103】
【化16】
【0104】
上記一般式(LS1)中、
LSは、エステル結合(-COO-で表される基)又はアミド結合(-CONH-で表される基)を表す。
【0105】
tは、-RLS2-RLS3-で表される構造の繰り返し数であり、0~5の整数を表し、0又は1であることが好ましく、0であることがより好ましい。tが0である場合、(-RLS2-RLS3-)tは、単結合となる。
【0106】
LS2は、アルキレン基、シクロアルキレン基、又はその組み合わせを表す。RLS2が複数存在する場合、複数存在するRLS2は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
LS2のアルキレン基又はシクロアルキレン基は置換基を有してもよい。
【0107】
LS3は、単結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、又はウレア結合を表す。RLS3が複数存在する場合、複数存在するRLS3は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
中でもRLS3は、エーテル結合又はエステル結合が好ましく、エステル結合がより好ましい。
【0108】
LS4は、ラクトン構造又はスルトン構造を有する1価の有機基を表す。
なかでも、前述の一般式(LC1-1)~(LC1-22)で表される構造、及び一般式(SL1-1)~(SL1-3)で表される構造のいずれかにおいて、ラクトン構造又はスルトン構造を構成する炭素原子1つから、水素原子を1つ除いてなる基であることが好ましい。なお、上記水素原子を1つ除かれる炭素原子は、置換基(Rb)を構成する炭素原子ではないことが好ましい。
【0109】
LS1は、水素原子、ハロゲン原子、又は1価の有機基(好ましくはメチル基)を表す。
【0110】
以下にラクトン構造、及びスルトン構造からなる群から選択される少なくとも1種を有する繰り返し単位に相当するモノマーを例示する。
下記の例示において、ビニル基に結合するメチル基は、水素原子、ハロゲン原子、又は1価の有機基に置き換えられてもよい。
【0111】
【化17】
【0112】
【化18】
【0113】
樹脂Pは、カーボネート構造を有する繰り返し単位を有していてもよい。カーボネート構造としては、環状炭酸エステル(環状カーボネート)構造が好ましい。
環状炭酸エステル構造を有する繰り返し単位としては、下記一般式(A-1)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0114】
【化19】
【0115】
一般式(A-1)中、R は、水素原子、ハロゲン原子、又は1価の有機基(好ましくはメチル基)を表す。
nは0以上の整数を表す。
は、置換基を表す。nが2以上の場合、複数存在するR は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
Aは、単結合又は2価の連結基を表す。
Zは、式中の-O-CO-O-で表される基と共に単環又は多環を形成する原子団を表す。
【0116】
樹脂Pは、水酸基、シアノ基、カルボキシ基、及びフッ素化アルコール基(例えば、ヘキサフルオロイソプロパノール基)等の極性基を有する繰り返し単位を有していてもよい。上記の極性基を有する繰り返し単位としては、上記極性基で置換された脂環炭化水素構造を有する繰り返し単位が好ましい。極性基で置換された脂環炭化水素構造における、脂環炭化水素構造としては、シクロヘキシル基、アダマンチル基、又はノルボルナン基が好ましい。
【0117】
以下に、上記の極性基を有する繰り返し単位に相当するモノマーの具体例を挙げるが、本発明は、これらの具体例に制限されない。
【0118】
【化20】
【0119】
【化21】
【0120】
樹脂Pは、繰り返し単位K2として、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落<0370>~<0433>に記載の繰り返し単位を有するのも好ましい。
【0121】
樹脂Pが繰り返し単位K2を含む場合、樹脂Pに含まれる繰り返し単位K2の種類は、1種でも、2種以上でもよい。
【0122】
樹脂Pが繰り返し単位K2を含む場合、樹脂Pに含まれる繰り返し単位K2の含有量(繰り返し単位K2が複数存在する場合はその合計の含有量)は、樹脂P中の全繰り返し単位に対して、5~70モル%が好ましく、10~65モル%がより好ましく、20~60モル%が更に好ましい。
【0123】
<酸分解性基及び極性基のいずれも有さない繰り返し単位K3>
樹脂Pは、更に、酸分解性基及び極性基のいずれも有さない繰り返し単位(「繰り返し単位K3」ともいう。)を含んでいてもよい。
繰り返し単位K3は、脂環炭化水素構造を有することが好ましい。繰り返し単位K3としては、例えば、米国特許出願公開2016/0026083A1号明細書の段落[0236]~<0237>に記載された繰り返し単位が挙げられる。
以下に、繰り返し単位K3に相当するモノマーの好ましい例を以下に示す。
【0124】
【化22】
【0125】
この他にも、繰り返し単位K3の具体例としては、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落<0433>に開示された繰り返し単位が挙げられる。
樹脂Pが繰り返し単位K3を含む場合、樹脂Pに含まれる繰り返し単位K3の種類は1種でもよく、2種以上でもよい。
樹脂Pが繰り返し単位K3を含む場合、繰り返し単位K3の含有量(繰り返し単位K3が複数存在する場合はその合計の含有量)は、樹脂P中の全繰り返し単位に対して、5~40モル%が好ましく、5~30モル%がより好ましく、5~25モル%が更に好ましい。
【0126】
なお、樹脂Pは、その他の繰り返し単位として、上記の繰り返し構造単位以外に、ドライエッチング耐性、標準現像液適性、基板密着性、レジストプロファイル、又は更にレジストの一般的な必要な特性である解像力、耐熱性、及び感度等を調節する目的で様々な繰り返し単位を有していてもよい。
このような繰り返し単位としては、所定の単量体に相当する繰り返し単位が挙げられるが、これらに制限されない。
【0127】
所定の単量体としては、例えばアクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、及びビニルエステル類等から選ばれる付加重合性不飽和結合を1個有する化合物等が挙げられる。
その他にも、上記種々の繰り返し構造単位に相当する単量体と共重合可能である付加重合性の不飽和化合物を用いてもよい。
樹脂Pにおいて、各繰り返し構造単位の含有モル比は、種々の性能を調節するために適宜設定される。
【0128】
本発明の組成物がArF露光用であるとき、ArF光の透過性の観点から、樹脂P中の全繰り返し単位に対して、芳香族基を有する繰り返し単位が15モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましい。
【0129】
本発明の組成物がArF露光用であるとき、樹脂Pは、繰り返し単位の全てが(メタ)
アクリレート系繰り返し単位で構成されることが好ましい。この場合、繰り返し単位の全てがメタクリレート系繰り返し単位であるもの、繰り返し単位の全てがアクリレート系繰り返し単位であるもの、繰り返し単位の全てがメタクリレート系繰り返し単位とアクリレート系繰り返し単位とによるもののいずれのものでも使用できるが、アクリレート系繰り返し単位が樹脂Pの全繰り返し単位に対して50モル%以下であることが好ましい。
【0130】
本発明の組成物がKrF露光用、EB露光用、又はEUV露光用であるとき、樹脂Pは芳香族炭化水素環基を有する繰り返し単位を有することが好ましく、フェノール性水酸基が酸の作用により分解して脱離する脱離基で保護された構造(酸分解性基)を有する繰り返し単位を含むことがより好ましい。フェノール性水酸基を含む繰り返し単位としては、ヒドロキシスチレン繰り返し単位、及びヒドロキシスチレン(メタ)アクリレート繰り返し単位等が挙げられる。
本発明の組成物がKrF露光用、EB露光用、又はEUV露光用であるとき、樹脂Pに含まれる芳香族炭化水素環基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂P中の全繰り返し単位に対して、30モル%以上が好ましい。なお、上限は特に制限されないが、例えば100モル%以下である。なかでも、30~100モル%が好ましく、40~100モル%がより好ましく、50~100モル%が更に好ましい。
【0131】
樹脂Pの重量平均分子量(Mw)は、1,000~200,000が好ましく、2,000~20,000がより好ましく、3,000~20,000が更に好ましい。分散度(Mw/Mn)は、通常1.0~3.0であり、1.0~2.6が好ましく、1.0~2.0がより好ましく、1.1~2.0が更に好ましい。
【0132】
本発明の組成物において、樹脂Pは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の組成物中、樹脂Pの含有量は、全固形分に対して、30質量%以上含有する。
樹脂Pの含有量は、全固形分に対して、40質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、60質量%以上が更に好ましい。本発明の組成物中の樹脂Pの含有量の上限は特に制限されないが、98質量%以下が好ましく、95質量%以下がより好ましく、92質量%以下が更に好ましい。
なお、固形分とは、組成物中の溶剤を除いた成分を意図し、溶剤以外の成分であれば液状成分であっても固形分とみなす。
【0133】
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、架橋剤を、組成物の全固形分に対して、10質量%以下含む。架橋剤の含有量は、5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。
【0134】
〔光酸発生剤A〕
本発明の組成物は、典型的には、光酸発生剤(「光酸発生剤A」ともいう。)を含有することが好ましい。
光酸発生剤Aは、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物である。
光酸発生剤Aとしては、活性光線又は放射線の照射により有機酸を発生する化合物が好ましい。例えば、スルホニウム塩化合物、ヨードニウム塩化合物、ジアゾニウム塩化合物、ホスホニウム塩化合物、イミドスルホネート化合物、オキシムスルホネート化合物、ジアゾジスルホン化合物、ジスルホン化合物、及びo-ニトロベンジルスルホネート化合物が挙げられる。
【0135】
光酸発生剤Aとしては、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する公知の化合物を、単独又はそれらの混合物として適宜選択して使用できる。光酸発生剤Aとしては、酸分解性樹脂の脱保護反応を起こすために通常用いられる光酸発生剤を使用することができ、例えば、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落<0125>~
<0319>、米国特許出願公開2015/0004544A1号明細書の段落[0086]~<0094>、及び、米国特許出願公開2016/0237190A1号明細書の段落<0323>~<0402>に開示された公知の化合物を好適に使用できる。
【0136】
光酸発生剤Aとしては、例えば、下記一般式(ZI)、一般式(ZII)又は一般式(ZIII)で表される化合物が好ましい。
【0137】
【化23】
【0138】
上記一般式(ZI)において、
201、R202及びR203は、各々独立に、有機基を表す。
201、R202及びR203としての有機基の炭素数は、一般的に1~30であり、好ましくは1~20である。
また、R201~R203のうち2つが結合して環構造を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、又はカルボニル基を含んでいてもよい。R201~R203の内の2つが結合して形成する基としては、アルキレン基(例えば、ブチレン基、ペンチレン基)及び-CH-CH-O-CH-CH-が挙げられる。
は、アニオン(非求核性アニオンが好ましい。)を表す。
【0139】
一般式(ZI)におけるカチオンの好適な態様としては、後述する化合物(ZI-1)、化合物(ZI-2)、一般式(ZI-3)で表される化合物(化合物(ZI-3))及び一般式(ZI-4)で表される化合物(化合物(ZI-4))における対応する基が挙げられる。
なお、光酸発生剤Aは、一般式(ZI)で表される構造を複数有する化合物であってもよい。例えば、一般式(ZI)で表される化合物のR201~R203の少なくとも1つと、一般式(ZI)で表されるもうひとつの化合物のR201~R203の少なくとも一つとが、単結合又は連結基を介して結合した構造を有する化合物であってもよい。
【0140】
まず、化合物(ZI-1)について説明する。
化合物(ZI-1)は、上記一般式(ZI)のR201~R203の少なくとも1つがアリール基である、アリールスルホニウム化合物、すなわち、アリールスルホニウムをカチオンとする化合物である。
アリールスルホニウム化合物は、R201~R203の全てがアリール基でもよいし、R201~R203の一部がアリール基であり、残りがアルキル基又はシクロアルキル基であってもよい。
また、R201~R203のうちの1つがアリール基であり、R201~R203のうちの残りの2つが結合して環構造を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル基、アミド基、又はカルボニル基を含んでいてもよい。R201~R203のうちの2つが結合して形成する基としては、例えば、1つ以上のメチレン基が酸素原子、硫黄原子、エステル基、アミド基、及び/又はカルボニル基で置換されていてもよいアルキレン基(例えば、ブチレン基、ペンチレン基、又は-CH-CH-O-CH-CH-)が挙げられる。
アリールスルホニウム化合物としては、例えば、トリアリールスルホニウム化合物、ジアリールアルキルスルホニウム化合物、アリールジアルキルスルホニウム化合物、ジアリールシクロアルキルスルホニウム化合物、及びアリールジシクロアルキルスルホニウム化合物が挙げられる。
【0141】
アリールスルホニウム化合物に含まれるアリール基としては、フェニル基、又はナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。アリール基は、酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子等を有する複素環構造を有するアリール基であってもよい。複素環構造としては、ピロール残基、フラン残基、チオフェン残基、インドール残基、ベンゾフラン残基、及びベンゾチオフェン残基等が挙げられる。アリールスルホニウム化合物が2つ以上のアリール基を有する場合に、2つ以上あるアリール基は同一であっても異なっていてもよい。
アリールスルホニウム化合物が必要に応じて有しているアルキル基又はシクロアルキル基は、炭素数1~15の直鎖状アルキル基、炭素数3~15の分岐鎖状アルキル基、又は炭素数3~15のシクロアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、及びシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0142】
201~R203のアリール基、アルキル基、及びシクロアルキル基は、各々独立に、アルキル基(例えば炭素数1~15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3~15)、アリール基(例えば炭素数6~14)、アルコキシ基(例えば炭素数1~15)、ハロゲン原子、水酸基、又はフェニルチオ基を置換基として有してもよい。
【0143】
次に、化合物(ZI-2)について説明する。
化合物(ZI-2)は、式(ZI)におけるR201~R203が、各々独立に、芳香環を有さない有機基を表す化合物である。ここで芳香環とは、ヘテロ原子を含む芳香族環も包含する。
201~R203としての芳香環を有さない有機基は、一般的に炭素数1~30であり、炭素数1~20が好ましい。
201~R203は、各々独立に、好ましくはアルキル基、シクロアルキル基、アリル基、又はビニル基であり、より好ましくは直鎖状又は分岐鎖状の2-オキソアルキル基、2-オキソシクロアルキル基、又はアルコキシカルボニルメチル基、更に好ましくは直鎖状又は分岐鎖状の2-オキソアルキル基である。
【0144】
201~R203のアルキル基及びシクロアルキル基としては、好ましくは、炭素数1~10の直鎖状アルキル基又は炭素数3~10の分岐鎖状アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、及びペンチル基)、及び、炭素数3~10のシクロアルキル基(例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びノルボルニル基)が挙げられる。
201~R203は、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えば炭素数1~5)、水酸基、シアノ基、又はニトロ基によって更に置換されていてもよい。
【0145】
次に、化合物(ZI-3)について説明する。
【0146】
【化24】
【0147】
一般式(ZI-3)中、Mは、アルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基を表し、環構造を有するとき、上記環構造は、酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、及び炭素-炭素二重結合の少なくとも1種を含んでいてもよい。R6c及びR7cは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアリール基を表す。R6cとR7cとが結合して環を形成してもよい。R及びRは、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、又はアルケニル基を表す。R及びRが結合して環を形成してもよい。また、M、R6c及びR7cから選ばれる少なくとも2つが結合して環構造を形成してもよく、上記環構造に炭素-炭素二重結合を含んでいてもよい。Zは、アニオンを表す。
【0148】
一般式(ZI-3)中、Mで表されるアルキル基及びシクロアルキル基としては、炭素数1~15(好ましくは炭素数1~10)の直鎖状アルキル基、炭素数3~15(好ましくは炭素数3~10)の分岐鎖状アルキル基、又は炭素数3~15(好ましくは炭素数1~10)のシクロアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、及びシクロヘキシル基、及びノルボルニル基等が挙げられる。
Mで表されるアリール基としては、フェニル基、又はナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。アリール基は、酸素原子又は硫黄原子等を有する複素環構造を有するアリール基であってもよい。複素環構造としては、フラン環、チオフェン環、ベンゾフラン環、及びベンゾチオフェン環等が挙げられる。
【0149】
上記Mは、更に置換基(例えば、置換基T)を有していてもよい。この態様として、例えば、Mとしてベンジル基などが挙げられる。
なお、Mが環構造を有する場合、上記環構造は、酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、及び、炭素-炭素二重結合の少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0150】
6c及びR7cで表されるアルキル基、シクロアルキル基、及びアリール基としては、上述したMと同様のものが挙げられ、その好ましい態様も同じである。また、R6cとR7cは、結合して環を形成してもよい。
6c及びR7cで表されるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。
【0151】
及びRで表されるアルキル基、及びシクロアルキル基としては、上述したMと同様のものが挙げられ、その好ましい態様も同じである。
及びRで表されるアルケニル基としては、アリル基又はビニル基が好ましい。
上記R及びRは、更に置換基(例えば、置換基T)を有していてもよい。この態様として、例えば、R及びRとして2-オキソアルキル基又はアルコキシカルボニルアルキル基などが挙げられる。
及びRで表される2-オキソアルキル基としては、例えば、炭素数1~15(好ましくは炭素数1~10)のものが挙げられ、具体的には、2-オキソプロピル基、及び2-オキソブチル基等が挙げられる。
及びRで表されるアルコキシカルボニルアルキル基としては、例えば、炭素数1~15(好ましくは炭素数1~10)のものが挙げられる。また、RとRは、結合して環を形成してもよい。
とRとが互いに連結して形成される環構造は、酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、又は、炭素-炭素二重結合を含んでいてもよい。
【0152】
一般式(ZI-3)中、MとR6cとが結合して環構造を形成してもよく、形成される環構造は、炭素-炭素二重結合を含んでいてもよい。
【0153】
上記化合物(ZI-3)は、なかでも、化合物(ZI-3A)であることが好ましい。
化合物(ZI-3A)は、下記一般式(ZI-3A)で表され、フェナシルスルフォニウム塩構造を有する化合物である。
【0154】
【化25】
【0155】
一般式(ZI-3A)中、
1c~R5cは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、シクロアルキルカルボニルオキシ基、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アルキルチオ基又はアリールチオ基を表す。
6c及びR7cとしては、上述した一般式(ZI-3)中のR6c及びR7cと同義であり、その好ましい態様も同じである。
及びRとしては、上述した上述した一般式(ZI-3)中のR及びRと同義であり、その好ましい態様も同じである。
【0156】
1c~R5c中のいずれか2つ以上、RとRは、各々結合して環構造を形成してもよく、この環構造は、各々独立に酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、又は、炭素-炭素二重結合を含んでいてもよい。また、R5c及びR6c、R5c及びRは、各々結合して環構造を形成してもよく、この環構造は、各々独立に炭素-炭素二重結合を含んでいてもよい。また、R6cとR7cは、各々結合して環構造を形成してもよい。
上記環構造としては、芳香族又は非芳香族の炭化水素環、芳香族又は非芳香族の複素環、及びこれらの環が2つ以上組み合わされてなる多環縮合環が挙げられる。環構造としては、3~10員環が挙げられ、4~8員環が好ましく、5又は6員環がより好ましい。
【0157】
1c~R5c中のいずれか2つ以上、R6cとR7c、及びRとRが結合して形成する基としては、ブチレン基、及びペンチレン基等が挙げられる。
5cとR6c、及びR5cとRが結合して形成する基としては、単結合又はアルキレン基が好ましい。アルキレン基としては、メチレン基、及びエチレン基等が挙げられる。
Zcは、アニオンを表す。
【0158】
次に、化合物(ZI-4)について説明する。
化合物(ZI-4)は、下記一般式(ZI-4)で表される。
【0159】
【化26】
【0160】
一般式(ZI-4)中、
lは0~2の整数を表す。lは0であることが特に好ましい。
rは0~8の整数を表す。
13は、水素原子、フッ素原子、水酸基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、又は単環若しくは多環のシクロアルキル骨格を有する基を表す。これらの基は置換基を有してもよい。
14は、複数存在する場合は各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルキルスルホニル基、シクロアルキルスルホニル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、又は単環若しくは多環のシクロアルキル骨格を有するアルコキシ基を表す。これらの基は置換基を有してもよい。
15は、各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基、又はナフチル基を表す。これらの基は置換基を有してもよい。2つのR15が互いに結合して環を形成してもよい。2つのR15が互いに結合して環を形成するとき、環骨格内に、酸素原子、又は窒素原子等のヘテロ原子を含んでもよい。一態様において、2つのR15がアルキレン基であり、互いに結合して環構造を形成することが好ましい。
は、アニオンを表す。
【0161】
一般式(ZI-4)において、R13、R14及びR15のアルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状である。アルキル基の炭素数は、1~10が好ましい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-ブチル基、又はt-ブチル基等がより好ましい。2つのR15は互いに結合して環を形成しても良く、環を形成する場合の環員数は5~6が好ましい。
2つのR15が互い結合して環を形成する場合の環は置換基を有していてもよい。上記置換基としては特に限定されないが、例えば、水酸基、ハロゲン原子、アルキル基、又はアルコキシ基が挙げられる。上記ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であることが好ましく、フッ素原子であることがより好ましい。上記アルキル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。上記アルキル基の炭素数は1~10が好ましく、1~6がより好ましい。上記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基等が挙げられる。上記アルキル基は置換基を有していてもよく、置換基としては特に限定されないが、例えばハロゲン原子が挙げられる。上記アルコキシ基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。上記アルコキシ基の炭素数は1~10が好ましく、1~6がより好ましい。上記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基及びtert-ブトキシ基等が挙げられる。上記アルコキシ基は置換基を有していてもよく、置換基としては特に限定されないが、例えば、アルコキシ基(例えば炭素数1~6のアルコキシ基)又はシクロアルキル基(例えば炭素数5~10のシクロアルキル基)が挙げられる。
【0162】
次に、一般式(ZII)、及び(ZIII)について説明する。
一般式(ZII)、及び(ZIII)中、R204~R207は、各々独立に、アリール基、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
204~R207のアリール基としてはフェニル基、又はナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。R204~R207のアリール基は、酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子等を有する複素環構造を有するアリール基であってもよい。複素環構造を有するアリール基の骨格としては、例えば、ピロール、フラン、チオフェン、インドール、ベンゾフラン、及びベンゾチオフェン等が挙げられる。
204~R207のアルキル基及びシクロアルキル基としては、炭素数1~10の直鎖状アルキル基又は炭素数3~10の分岐鎖状アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、及びペンチル基)、又は、炭素数3~10のシクロアルキル基(例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びノルボルニル基)が好ましい。
【0163】
204~R207のアリール基、アルキル基、及びシクロアルキル基は、各々独立に、置換基を有していてもよい。R204~R207のアリール基、アルキル基、及びシクロアルキル基が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基(例えば炭素数1~15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3~15)、アリール基(例えば炭素数6~15)、アルコキシ基(例えば炭素数1~15)、ハロゲン原子、水酸基、及びフェニルチオ基等が挙げられる。
は、アニオンを表す。
【0164】
一般式(ZI)におけるスルホニウムカチオン、及び一般式(ZII)におけるヨードニウムカチオンの好ましい例を以下に示す。
【0165】
【化27】
【0166】
【化28】
【0167】
一般式(ZI)におけるZ、一般式(ZII)におけるZ、一般式(ZI-3)におけるZ、一般式(ZI-3A)におけるZc、及び一般式(ZI-4)におけるZの好ましい一態様は、下記一般式(3)で表されるアニオンである。
【0168】
【化29】
【0169】
一般式(3)中、oは、1~3の整数を表す。pは、0~10の整数を表す。qは、0~10の整数を表す。
【0170】
Xfは、フッ素原子、又は少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。このアルキル基の炭素数は、1~10が好ましく、1~4がより好ましい。また、少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基としては、パーフルオロアルキル基が好ましい。
Xfは、フッ素原子又は炭素数1~4のパーフルオロアルキル基であることが好ましく、フッ素原子又はCFであることがより好ましい。特に、双方のXfがフッ素原子であることが更に好ましい。
【0171】
及びRは、各々独立に、水素原子、フッ素原子、アルキル基、又は少なくとも一つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。R及びRが複数存在する場合、R及びRは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
及びRで表されるアルキル基は、置換基を有していてもよく、炭素数1~4が好ましい。R及びRは、好ましくは水素原子である。
少なくとも一つのフッ素原子で置換されたアルキル基の具体例及び好適な態様は一般式(3)中のXfの具体例及び好適な態様と同じである。
【0172】
Lは、2価の連結基を表す。Lが複数存在する場合、Lは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
2価の連結基としては、例えば、-COO-(-C(=O)-O-)、-OCO-、-CONH-、-NHCO-、-CO-、-O-、-S-、-SO-、-SO-、アルキレン基(好ましくは炭素数1~6)、シクロアルキレン基(好ましくは炭素数3~15)
、アルケニレン基(好ましくは炭素数2~6)及びこれらの複数を組み合わせた2価の連結基等が挙げられる。これらの中でも、-COO-、-OCO-、-CONH-、-NHCO-、-CO-、-O-、-SO-、-COO-アルキレン基-、-OCO-アルキレン基-、-CONH-アルキレン基-又は-NHCO-アルキレン基-が好ましく、-COO-、-OCO-、-CONH-、-SO-、-COO-アルキレン基-又は-OCO-アルキレン基-がより好ましい。
【0173】
Wは、環状構造を含む有機基を表す。これらの中でも、環状の有機基であることが好ましい。
環状の有機基としては、例えば、脂環基、アリール基、及び複素環基が挙げられる。
脂環基は、単環式であってもよく、多環式であってもよい。単環式の脂環基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びシクロオクチル基等の単環のシクロアルキル基が挙げられる。多環式の脂環基としては、例えば、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及びアダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が挙げられる。中でも、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及びアダマンチル基等の炭素数7以上の嵩高い構造を有する脂環基が好ましい。
【0174】
アリール基は、単環式であってもよく、多環式であってもよい。このアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基及びアントリル基が挙げられる。
複素環基は、単環式であってもよく、多環式であってもよい。多環式の方がより酸の拡散を抑制可能である。また、複素環基は、芳香族性を有していてもよいし、芳香族性を有していなくてもよい。芳香族性を有している複素環としては、例えば、フラン環、チオフェン環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、及びピリジン環が挙げられる。芳香族性を有していない複素環としては、例えば、テトラヒドロピラン環、ラクトン環、スルトン環及びデカヒドロイソキノリン環が挙げられる。ラクトン環及びスルトン環の例としては、前述の樹脂において例示したラクトン構造及びスルトン構造が挙げられる。複素環基における複素環としては、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、又はデカヒドロイソキノリン環が特に好ましい。
【0175】
上記環状の有機基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、アルキル基(直鎖状及び分岐鎖状のいずれであってもよく、炭素数1~12が好ましい)、シクロアルキル基(単環、多環、及び、スピロ環のいずれであってもよく、炭素数3~20が好ましい)、アリール基(炭素数6~14が好ましい)、水酸基、アルコキシ基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレイド基、チオエーテル基、スルホンアミド基、及びスルホン酸エステル基が挙げられる。なお、環状の有機基を構成する炭素(環形成に寄与する炭素)はカルボニル炭素であってもよい。
【0176】
一般式(3)で表されるアニオンとしては、SO -CF-CH-OCO-(L)q’-W、SO -CF-CHF-CH-OCO-(L)q’-W、SO -CF-COO-(L)q’-W、SO -CF-CF-CH-CH-(L)q-W、SO -CF-CH(CF)-OCO-(L)q’-Wが好ましい。ここで、L、q及びWは、一般式(3)と同様である。q’は、0~10の整数を表す。
【0177】
一態様において、一般式(ZI)におけるZ-、一般式(ZII)におけるZ-、一般式(ZI-3)におけるZ、一般式(ZI-3A)におけるZc、及び一般式(ZI-4)におけるZ-としては、下記の一般式(4)で表されるアニオンも好ましい。
【0178】
【化30】
【0179】
一般式(4)中、
B1及びXB2は、各々独立に、水素原子、又はフッ素原子を有さない1価の有機基を表す。XB1及びXB2は、水素原子であることが好ましい。
B3及びXB4は、各々独立に、水素原子、又は1価の有機基を表す。XB3及びXB4の少なくとも一方がフッ素原子又はフッ素原子を有する1価の有機基であることが好ましく、XB3及びXB4の両方がフッ素原子又はフッ素原子を有する1価の有機基であることがより好ましい。XB3及びXB4の両方が、フッ素原子で置換されたアルキル基であることが更に好ましい。
L、q及びWは、一般式(3)と同様である。
【0180】
一般式(ZI)におけるZ-、一般式(ZII)におけるZ-、一般式(ZI-3)におけるZ、一般式(ZI-3A)におけるZc、及び一般式(ZI-4)におけるZ-は、ベンゼンスルホン酸アニオンであってもよく、分岐鎖状アルキル基又はシクロアルキル基によって置換されたベンゼンスルホン酸アニオンであることが好ましい。
【0181】
一般式(ZI)におけるZ-、一般式(ZII)におけるZ-、一般式(ZI-3)におけるZ、一般式(ZI-3A)におけるZc、及び一般式(ZI-4)におけるZ-としては、下記の一般式(SA1)で表される芳香族スルホン酸アニオンも好ましい。
【0182】
【化31】
【0183】
式(SA1)中、
Arは、アリール基を表し、スルホン酸アニオン及び-(D-B)基以外の置換基を更に有していてもよい。更に有してもよい置換基としては、フッ素原子及び水酸基等が挙げられる。
【0184】
nは、0以上の整数を表す。nとしては、1~4が好ましく、2~3がより好ましく、3が更に好ましい。
【0185】
Dは、単結合又は2価の連結基を表す。2価の連結基としては、エーテル基、チオエーテル基、カルボニル基、スルホキシド基、スルホン基、スルホン酸エステル基、エステル基、及び、これらの2種以上の組み合わせからなる基等が挙げられる。
【0186】
Bは、炭化水素基を表す。
【0187】
好ましくは、Dは単結合であり、Bは脂肪族炭化水素構造である。Bは、イソプロピル基又はシクロヘキシル基がより好ましい。
【0188】
一般式(ZI)におけるZ、一般式(ZII)におけるアニオンZ-、一般式(ZI-3)におけるZ、一般式(ZI-3A)におけるZc、及び一般式(ZI-4)におけるZ-の好ましい例を以下に示すが、これらに限定されない。
【0189】
【化32】
【0190】
【化33】
【0191】
本発明においては、上記のカチオン及びアニオンを任意に組みわせて光酸発生剤Aとして使用できる。
【0192】
<光酸発生剤Aw>
本発明において、光酸発生剤Aが発生する酸の強さは特に限定されないが、pKaが-1.40以上であることがEL性能の向上等の観点から特に好ましい。すなわち、本発明の組成物は、光酸発生剤Aとして、発生する酸のpKaが-1.40以上である光酸発生剤(「光酸発生剤Aw」ともいう。)を用いることが好ましい。光酸発生剤Awから発生する酸のpKaの上限値は特に制限されず、例えば、5.00以下である。
光酸発生剤Awから発生する酸のpKaとしては、形成されるパターンのLWR、LER、CDUがより優れる点、及び/又は膜の膜面均一性がより優れる点で、-1.38以上が好ましい。また、その上限値は、形成されるパターンのLWR、LER、CDUがより優れる点で、2.00以下が好ましく、1.30以下がより好ましい。
光酸発生剤Awから発生する酸としては、上述したpKaを満たせば特に制限されないが、スルホン酸であることが好ましい。
【0193】
光酸発生剤Awとしては、前述の一般式(ZI)におけるZ、一般式(ZII)におけるZ、一般式(ZI-3)におけるZ、一般式(ZI-3A)におけるZc、及び一般式(ZI-4)におけるZが、下記一般式(1-1)又は(1-2)で表されることが好ましい。
すなわち、前述の一般式(ZI)におけるZ、一般式(ZII)におけるZ、一般式(ZI-3)におけるZ、一般式(ZI-3A)におけるZc、及び一般式(ZI-4)におけるZの特に好ましい態様は、下記一般式(1-1)又は(1-2)で表されるアニオンである。
【0194】
【化34】
【0195】
一般式(1-1)中、R11は、水素原子又は1価の有機基を表し、R12は、1価の有機基を表し、Rf11は、水素原子、フッ素原子、又は1価の有機基を表す。
一般式(1-2)中、R21、R22、及びR23は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、又は1価の有機基を表し、R24は、1価の有機基を表し、Rf21は、フッ素原子、又はフッ素原子を含む1価の有機基を表す。
【0196】
一般式(1-1)中、R11は、水素原子又は1価の有機基を表す。
11で表される1価の有機基としては特に制限されず、炭素数1~20の1価の有機基であることが好ましく、例えば、アルキル基又はシクロアルキル基が挙げられ、上記アルキル基は直鎖状及び分岐鎖状のいずれであってもよい。上記アルキル基の炭素数は、1~20が好ましく、1~10がより好ましく、炭素数1~6が更に好ましい。上記シクロアルキル基の炭素数は3~20が好ましく、6~20がより好ましい。なお、上記アルキル基又はシクロアルキル基は、更に置換基を有していてもよい。R11で表される1価の有機基はフッ素原子を有さないことが好ましい。
11としては、なかでも水素原子が好ましい。
【0197】
12は、1価の有機基を表す。R12で表される1価の有機基としては特に制限されず、炭素数1~20の1価の有機基であることが好ましく、例えば、*-L11-W11で表される基が挙げられる。ここで、L11は、2価の連結基を表し、W11は、環状構造を含む有機基を表し、*は結合位置を表す。
【0198】
11で表される2価の連結基としては、例えば、-COO-(-C(=O)-O-)
、-OCO-、-CONH-、-NHCO-、-CO-、-O-、-S-、-SO-、-SO-、直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基(好ましくは炭素数1~6)、シクロアルキレン基(好ましくは炭素数3~15)、アルケニレン基(好ましくは炭素数2~6)、及びこれらの複数を組み合わせた2価の連結基等が挙げられる。具体的には、-COO-、-OCO-、-CONH-、-NHCO-、-CO-、-O-、-SO-、-AL-、-COO-AL-、-OCO-AL-、-CONH-AL-、-NHCO-AL-、-AL-OCO-、-AL-COO-、-CO-AL-、-AL-CO-、-O-AL-、-AL-O-、及び、-AL-O-CO-O-AL-等が挙げられる。なお、上記ALは、直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基(好ましくは炭素数1~6)を表す。
【0199】
11は、環状構造を含む有機基を表す。これらのなかでも、環状の有機基であることが好ましい。
環状の有機基としては、例えば、脂環基、アリール基、及び複素環基が挙げられる。
脂環基は、単環式であってもよく、多環式であってもよい。単環式の脂環基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びシクロオクチル基等の単環のシクロアルキル基が挙げられる。多環式の脂環基としては、例えば、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及びアダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が挙げられる。なかでも、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及びアダマンチル基等の炭素数7以上の嵩高い構造を有する脂環基が好ましい。
【0200】
アリール基は、単環式であってもよく、多環式であってもよい。このアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、及びアントリル基が挙げられる。
複素環基は、単環式であってもよく、多環式であってもよい。また、複素環基は、芳香族性を有していてもよいし、芳香族性を有していなくてもよい。芳香族性を有している複素環としては、例えば、フラン環、チオフェン環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、及びピリジン環が挙げられる。芳香族性を有していない複素環としては、例えば、テトラヒドロピラン環、ラクトン環、スルトン環、及びデカヒドロイソキノリン環が挙げられる。ラクトン環及びスルトン環の例としては、前述の樹脂において例示したラクトン構造及びスルトン構造が挙げられる。複素環基における複素環としては、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、又はデカヒドロイソキノリン環が特に好ましい。
【0201】
上記環状の有機基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、アルキル基(直鎖状及び分岐鎖状のいずれであってもよく、炭素数1~12が好ましい。)、シクロアルキル基(単環、多環、及びスピロ環のいずれであってもよく、炭素数3~20が好ましい。)、アリール基(炭素数6~14が好ましい。)、水酸基、アルコキシ基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレイド基、チオエーテル基、スルホンアミド基、及びスルホン酸エステル基が挙げられる。なお、環状の有機基を構成する炭素(環形成に寄与する炭素)はカルボニル炭素であってもよい。
【0202】
Rf11は、水素原子、フッ素原子、又は1価の有機基を表す。
Rf11で表される1価の有機基としては特に制限されないが、フッ素原子を含む1価の有機基が好ましく、例えば、少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基(直鎖状及び分岐鎖状のいずれであってもよい。)又はシクロアルキル基が挙げられる。上記アルキル基の炭素数は、1~10が好ましく、1~4がより好ましい。上記シクロアルキル基の炭素数は3~20が好ましく、6~15がより好ましい。また、少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基としては、パーフルオロアルキル基が好ましい。少なくとも1つのフッ素原子で置換されたシクロアルキル基としては、パーフルオロシクロアルキル基が好ましい。
Rf11としては、フッ素原子又はフッ素原子を含む1価の有機基が好ましく、フッ素原子又は炭素数1~4のパーフルオロアルキル基がより好ましく、フッ素原子又はCFが更に好ましい。
【0203】
光酸発生剤Awのアニオンが一般式(1-1)で表されるアニオンである場合に、発生する酸(pKaが-1.40以上である酸)の好ましい具体例を以下に示すが、これらに限定されない。
【0204】
【化35】
【0205】
上記一般式(1-2)中、R21、R22、及びR23は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、又は1価の有機基を表す。R21、R22、及びR23で表される1価の有機基としては特に制限されず、例えば、上述した置換基Tに例示する基が挙げられ、なかでも、フッ素原子、アルキル基(直鎖状及び分岐鎖状のいずれであってもよく、炭素数は1~20が好ましく、1~10がより好ましく、1~6が更に好ましい)、又はシクロアルキル基(炭素数は3~20が好ましく、6~15がより好ましい)が好ましい。なお、R21、R22、及びR23で表されるアルキル基又はシクロアルキル基は、更に置換基を有していてもよく、例えば、フッ素原子で置換されていてもよい。
21、R22、及びR23としては、なかでも、水素原子又はフッ素原子が好ましい。
なお、R21とR22は、少なくとも一方はフッ素原子以外の基を表すことが好ましく、いずれもが水素原子であることがより好ましい。
【0206】
24は、1価の有機基を表す。
24で表される1価の有機基としては、炭素数1~20の1価の有機基が好ましく、例えば、フッ素原子を有さない炭素数1~20の1価の有機基が挙げられ、具体的には、一般式(1-1)中のR12で表される1価の有機基と同様のものが挙げられる。
【0207】
Rf21は、フッ素原子、又はフッ素原子を含む1価の有機基を表す。
Rf21で表されるフッ素原子を含む1価の有機基としては、一般式(1-1)中のRf11で表されるフッ素原子を含む1価の有機基で例示したものが挙げられる。
【0208】
光酸発生剤Awのアニオンが一般式(1-2)で表されるアニオンである場合に、発生する酸(pKaが-1.40以上である酸)の好ましい具体例を以下に示すが、これらに限定されない。
【0209】
【化36】
【0210】
以下に、光酸発生剤Awの具体例を例示するが、これらに限定されない。
【0211】
【化37】
【0212】
光酸発生剤Aは、低分子化合物の形態であってもよく、重合体の一部に組み込まれた形態であってもよい。また、低分子化合物の形態と重合体の一部に組み込まれた形態を併用してもよい。
光酸発生剤Aは、低分子化合物の形態であることが好ましい。
光酸発生剤Aが、低分子化合物の形態である場合、分子量は3,000以下が好ましく、2,000以下がより好ましく、1,000以下が更に好ましい。
光酸発生剤Aが、重合体の一部に組み込まれた形態である場合、前述した樹脂Pの一部に組み込まれてもよく、樹脂Pとは異なる樹脂に組み込まれてもよい。
光酸発生剤Aは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の組成物中、光酸発生剤Aの含有量(複数種存在する場合はその合計の含有量)は、本発明の組成物の全固形分に対して、0.1~35質量%が好ましく、0.5~25質量%がより好ましく、1~20質量%が更に好ましい。
【0213】
<酸拡散制御剤>
本発明の組成物は、酸拡散制御剤を含有することが好ましい。酸拡散制御剤は、露光時に光酸発生剤A等から発生する酸をトラップし、余分な発生酸による、未露光部における酸分解性樹脂の反応を抑制するクエンチャーとして作用する。例えば、塩基性化合物(DA)、活性光線又は放射線の照射により塩基性が低下又は消失する塩基性化合物(DB)
(「化合物(DB)」ともいう。)、光酸発生剤Aに対して相対的に弱酸となる酸を発生する化合物(DC)(「化合物(DC)」ともいう。)、窒素原子を有し、酸の作用により脱離する基を有する化合物(DD)(「化合物(DD)」ともいう。)、又はカチオン部に窒素原子を有するオニウム塩化合物(DE)(「化合物(DE)」ともいう。)等を酸拡散制御剤として使用できる。本発明の組成物においては、公知の酸拡散制御剤を適宜使用できる。例えば、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落<0627>~<0664>、米国特許出願公開2015/0004544A1号明細書の段落<0095>~<0187>、米国特許出願公開2016/0237190A1号明細書の段落<0403>~<0423>、及び、米国特許出願公開2016/0274458A1号明細書の段落<0259>~<0328>に開示された公知の化合物を酸拡散制御剤として好適に使用できる。
【0214】
(塩基性化合物(DA))
塩基性化合物(DA)としては、下記式(A)~(E)で示される構造を有する化合物が好ましい。
【0215】
【化38】
【0216】
一般式(A)及び(E)中、
200、R201及びR202は、同一でも異なってもよく、各々独立に、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1~20)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3~20)又はアリール基(炭素数6~20)を表す。R201とR202は、互いに結合して環を形成してもよい。
203、R204、R205及びR206は、同一でも異なってもよく、各々独立に、炭素数1~20のアルキル基を表す。
【0217】
一般式(A)及び(E)中のアルキル基は、置換基を有していても無置換であってもよい。
上記アルキル基について、置換基を有するアルキル基としては、炭素数1~20のアミノアルキル基、炭素数1~20のヒドロキシアルキル基、又は炭素数1~20のシアノアルキル基が好ましい。
一般式(A)及び(E)中のアルキル基は、無置換であることがより好ましい。
【0218】
塩基性化合物(DA)としては、グアニジン、アミノピロリジン、ピラゾール、ピラゾリン、ピペラジン、アミノモルホリン、アミノアルキルモルフォリン、又はピペリジン等が好ましく、イミダゾール構造、ジアザビシクロ構造、オニウムヒドロキシド構造、オニウムカルボキシレート構造、トリアルキルアミン構造、アニリン構造若しくはピリジン構造を有する化合物、水酸基及び/若しくはエーテル結合を有するアルキルアミン誘導体、又は、水酸基及び/若しくはエーテル結合を有するアニリン誘導体等がより好ましい。
【0219】
塩基性化合物(DA)の共役酸のpKaと、光酸発生剤A(好ましくは光酸発生剤Aw)から発生する酸のpKaとの差(塩基性化合物(DA)の共役酸のpKaから光酸発生剤A(好ましくは光酸発生剤Aw)から発生する酸のpKaを引いた値)は、1.00以上が好ましく、1.00~14.00がより好ましく、2.00~13.00が更に好ましい。
また、塩基性化合物(DA)の共役酸のpKaは、使用する光酸発生剤A(好ましくは光酸発生剤Aw)の種類によっても異なるが、例えば、0.00~14.00が好ましく、3.00~13.00がより好ましく、3.50~12.50が更に好ましい。
【0220】
(活性光線又は放射線の照射により塩基性が低下又は消失する塩基性化合物(DB))
塩基性化合物(DB)は、プロトンアクセプター性官能基を有し、かつ、活性光線又は放射線の照射により分解して、プロトンアクセプター性が低下、消失、又はプロトンアクセプター性から酸性に変化する化合物である。
【0221】
プロトンアクセプター性官能基とは、プロトンと静電的に相互作用し得る基又は電子を有する官能基であって、例えば、環状ポリエーテル等のマクロサイクリック構造を有する官能基、又は、π共役に寄与しない非共有電子対をもった窒素原子を有する官能基を意味する。π共役に寄与しない非共有電子対を有する窒素原子とは、例えば、下記式に示す部分構造を有する窒素原子である。
【0222】
【化39】
【0223】
プロトンアクセプター性官能基の好ましい部分構造として、例えば、クラウンエーテル構造、アザクラウンエーテル構造、1~3級アミン構造、ピリジン構造、イミダゾール構造、及びピラジン構造等が挙げられる。
【0224】
化合物(DB)は、活性光線又は放射線の照射により分解してプロトンアクセプター性が低下若しくは消失し、又はプロトンアクセプター性から酸性に変化した化合物を発生する。ここでプロトンアクセプター性の低下若しくは消失、又はプロトンアクセプター性から酸性への変化とは、プロトンアクセプター性官能基にプロトンが付加することに起因するプロトンアクセプター性の変化であり、具体的には、プロトンアクセプター性官能基を有する化合物(DB)とプロトンとからプロトン付加体が生成するとき、その化学平衡における平衡定数が減少することを意味する。
プロトンアクセプター性は、pH測定を行うことによって確認することができる。
【0225】
活性光線又は放射線の照射により化合物(DB)が分解して発生する化合物のpKaは、pKa<-1を満たすことが好ましく、-13<pKa<-1を満たすことがより好ましく、-13<pKa<-3を満たすことが更に好ましい。
【0226】
化合物(DB)は、一般式(bd-1)で表される化合物であることが好ましい。
一般式(bd-1):
b1-Bb1-Xb1-Ab1-W-N-W-Rfb1 [Cb1
【0227】
一般式(bd-1)中、
及びWは、それぞれ独立に、-SO-又は-CO-を表す。
Rfb1は、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。
b1は、単結合又は2価の連結基を表す。
b1は、単結合、-SO-、又は-CO-を表す。
b1は、単結合、酸素原子、又は-N(Rb1x)Rb1y-を表す。
b1xは、水素原子又は有機基を表す。
b1yは、単結合又は2価の有機基を表す。
b1は、プロトンアクセプター性官能基を有する1価の有機基を表す。
b1xは、Rb1yと結合して環を形成していてもよく、Rb1と結合して環を形成していてもよい。
[Cb1 ]は、カウンターカチオンを表す。
【0228】
及びWは、少なくとも一方が-SO-であることが好ましく、双方が-SO-であることがより好ましい。
【0229】
Rfb1は、炭素数1~6のフッ素原子を有してもよいアルキル基であることが好ましく、炭素数1~6のパーフルオロアルキル基であることがより好ましく、炭素数1~3のパーフルオロアルキル基であることが更に好ましい。
【0230】
b1における2価の連結基としては、炭素数2~12の2価の連結基が好ましく、例えば、アルキレン基、及びフェニレン基等が挙げられる。なかでも、少なくとも1つのフッ素原子を有するアルキレン基が好ましく、炭素数は2~6が好ましく、2~4がより好ましい。アルキレン鎖中に酸素原子、又は硫黄原子等の連結基を有していてもよい。アルキレン基は、水素原子の数の30~100%がフッ素原子で置換されたアルキレン基が好ましく、Xb1またはWと結合した炭素原子がフッ素原子を有することがより好ましい。なかでも、Ab1における2価の連結基はパーフルオロアルキレン基が好ましく、パーフルオロエチレン基、パーフルオロプロピレン基、又はパーフルオロブチレン基がより好ましい。
【0231】
b1xにおける1価の有機基としては、炭素数2~30が好ましく、例えば、アルキル基、環内に酸素原子を有していてもよいシクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、及びアルケニル基等が挙げられる。
b1xにおけるアルキル基としては、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数1~20の直鎖及び分岐アルキル基であり、アルキル鎖中に酸素原子、硫黄原子、及び/又は窒素原子を有していてもよい。
なお、置換基を有するアルキル基として、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基にシクロアルキル基が置換した基(例えば、アダマンチルメチル基、アダマンチルエチル基、シクロヘキシルエチル基、及びカンファー残基等)が挙げられる。
b1xにおけるシクロアルキル基としては、置換基を有していてもよく、炭素数3~20のシクロアルキル基が好ましい。また、シクロアルキル基の環内に酸素原子を有していてもよい。
b1xにおけるアリール基としては、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数6~14のアリール基である。
b1xにおけるアラルキル基としては、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数7~20のアラルキル基が挙げられる。
b1xにおけるアルケニル基としては、置換基を有していてもよく、例えば、Rb1xとして挙げたアルキル基の任意の位置に2重結合を有する基が挙げられる。
【0232】
b1が-N(Rb1x)Rb1y-を表す場合、Rb1yにおける2価の有機基としては、アルキレン基が好ましい。また、この場合、Rb1xとRb1yとが互いに結合して形成し得る環としては、例えば、窒素原子を含む5~8員の環、特に好ましくは6員の環が挙げられる。環が含む窒素原子は、-N(Rb1x)Rb1y-においてXb1と直接結合する窒素原子以外の窒素原子であってもよい。
【0233】
b1が-N(Rb1x)Rb1y-を表す場合、Rb1とRb1xとが互いに結合して環を形成していることが好ましい。環を形成すれば、安定性が向上し、これを用いた組成物の保存安定性が向上する。環を形成する炭素数は4~20が好ましく、単環でも多環でもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、及び/又は窒素原子を含んでいてもよい。環が含む窒素原子は、-N(Rb1x)Rb1y-においてXb1と直接結合する窒素原子以外の窒素原子であってもよい。
【0234】
単環としては、窒素原子を含む4員環、5員環、6員環、7員環、及び8員環等が挙げられる。このような環構造としては、例えば、ピペラジン環及びピペリジン環が挙げられる。多環としては、2又は3以上の単環式構造の組み合わせから成る構造が挙げられる。
単環及び多環のそれぞれは、置換基を有していてもよく、例えば、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、カルボキシ基、カルボニル基、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3~10)、アリール基(好ましくは炭素数6~14)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~10)、アシル基(好ましくは炭素数2~15)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2~15)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2~15)、又はアミノアシル基(好ましくは炭素数2~20)等が好ましい。これらの置換基は、可能な場合は更に置換基を有していてもよい。アリール基、及びシクロアルキル基が更に置換基を有する場合の例としては、アルキル基(好ましくは炭素数1~15)が挙げられる。アミノアシル基が更に有する置換基の例としては、アルキル基(好ましくは炭素数1~15)が挙げられる。
【0235】
b1におけるプロトンアクセプター性官能基としては、上記の通りであり、部分構造として、例えば、クラウンエーテル、1~3級アミン、及び含窒素ヘテロ環(ピリジン、イミダゾール、及びピラジン等)の構造を有することが好ましい。
なお、プロトンアクセプター性官能基としては、窒素原子を有する官能基が好ましく、1~3級アミノ基を有する基、又は含窒素ヘテロ環基がより好ましい。これら構造においては、構造中に含まれる窒素原子に隣接する原子の全てが、炭素原子又は水素原子であることが好ましい。また、窒素原子に対して、電子求引性の官能基(カルボニル基、スルホニル基、シアノ基、及びハロゲン原子等)が直結していないことが好ましい。
このようなプロトンアクセプター性官能基を含む1価の有機基(基Rb1)における一価の有機基としては、好ましい炭素数は2~30であり、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、及びアルケニル基等を挙げられ、各基は置換基を有していてもよい。
【0236】
b1におけるプロトンアクセプター性官能基を含む、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、及びアルケニル基における、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、及びアルケニル基は、それぞれ、Rb1xとして挙げたアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、及びアルケニル基と同様の基が挙げられる。
【0237】
上記各基が有してもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシ基、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3~10。一部がヘテロ原子又はヘテロ原子を有する基(エステル基等)で置換されていてもよい)、アリール基(好ましくは炭素数6~14)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~10)、アシル基(好ましくは炭素数2~20)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2~10)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2~20)、及びアミノアシル基(好ましくは炭素数2~20)等が挙げられる。アリール基及びシクロアルキル基等における環状基が有する置換基としては、例えば、アルキル基(好ましくは炭素数1~20)が挙げられる。アミノアシル基が有する置換基としては、例えば、1又は2のアルキル基(好ましくは炭素数1~20)が挙げられる。
【0238】
[Cb1 ]は、カウンターカチオンとしては、スルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンが好ましい。スルホニウムカチオン及びヨードニウムカチオンとしては、例えば、光酸発生剤Aが有してもよいカチオンにおけるスルホニウムカチオン及びヨードニウムカチオン(より具体的には、一般式(ZI)で表される化合物におけるカチオン、及び一般式(ZII)で表される化合物におけるカチオン等)が同様に使用できる。
【0239】
塩基性化合物(DB)の共役酸のpKaと、光酸発生剤A(好ましくは光酸発生剤Aw)から発生する酸のpKaとの差(塩基性化合物(DB)の共役酸のpKaから光酸発生剤A(好ましくは光酸発生剤Aw)から発生する酸のpKaを引いた値)は、1.00以上が好ましく、1.00~14.00がより好ましく、2.00~13.00が更に好ましい。
また、塩基性化合物(DB)の共役酸のpKaは、使用する光酸発生剤A(好ましくは光酸発生剤Aw)の種類によっても異なるが、例えば、0.00~14.00が好ましく、3.00~13.00がより好ましく、3.50~12.50が更に好ましい。
【0240】
(光酸発生剤Aに対して相対的に弱酸となる酸を発生する化合物(DC))
化合物(DC)は好ましくは、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物である。以下、化合物(DC)のうち活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物を、「光酸発生剤B」とも呼ぶ。
光酸発生剤Bは、光酸発生剤A(好ましくは光酸発生剤Aw)から発生する酸よりもpKaが1.00以上大きい酸を発生する化合物であることが好ましい。
光酸発生剤Bから発生する酸のpKaと、光酸発生剤A(好ましくは光酸発生剤Aw)から発生する酸のpKaとの差(光酸発生剤Bから発生する酸のpKaから光酸発生剤A(好ましくは光酸発生剤Aw)から発生する酸のpKaを引いた値)は、1.00以上であり、1.00~10.00が好ましく、1.00~5.00がより好ましく、1.00~3.00が更に好ましい。
また、光酸発生剤Bから発生する酸のpKaは、使用する光酸発生剤A(好ましくは光酸発生剤Aw)の種類によっても異なるが、例えば、0.00~10.00が好ましく、0.50~5.00がより好ましく、1.00~5.00が更に好ましい。
【0241】
光酸発生剤Bは、アニオンとカチオンとからなるオニウム塩化合物が好ましい。このようなオニウム塩化合物としては、一般式(d1-1)~(d1-3)で表される化合物が好ましい。
【0242】
【化40】
【0243】
式中、R51は置換基(例えば、水酸基)を有していてもよい炭化水素基(例えば、フェニル基等のアリール基)を表す。
2cは置換基を有していてもよい炭素数1~30の炭化水素基(ただし、Sに隣接する炭素原子にはフッ素原子が置換されない)を表す。
2cにおける上記炭化水素基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、環状構造を有していてもよい。また、上記炭化水素基における炭素原子(好ましくは、上記炭化水素基が環状構造を有する場合における、環状構造を形成する炭素原子)は、カルボニル炭素(-CO-)であってもよい。上記炭化水素基としては、例えば、置換基を有していてもよいノルボルニル基を有する基が挙げられる。上記ノルボルニル基を形成する炭素原子は、カルボニル炭素であってもよい。
52は有機基を表し、Yは直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基、シクロアルキレン基、又はアリーレン基を表し、Rfはフッ素原子を含む炭化水素基を表す。
また、一般式(d1-2)中の「Z2c-SO 」は、光酸発生剤A(好ましくは光酸発生剤Aw)におけるアニオン(好ましくは前述の一般式(1-1)で表される基又は前述の一般式(1-2)で表される基)とは異なることが好ましい。
は、それぞれ独立に、アンモニウムカチオン、スルホニウムカチオン、又はヨードニウムカチオンである。
スルホニウムカチオン及びヨードニウムカチオンとしては、例えば、光酸発生剤Aが有してもよいカチオンにおけるスルホニウムカチオン及びヨードニウムカチオン(より具体的には、一般式(ZI)で表される化合物、及び一般式(ZII)で表される化合物におけるカチオン)が同様に使用できる。
【0244】
光酸発生剤Bは、カチオン部位とアニオン部位とを同一分子内に有し、かつ、上記カチオン部位と上記アニオン部位とが共有結合により連結している化合物であってもよい。
上記化合物としては、一般式(C-1)で表される化合物又は一般式(C-2)で表される化合物が好ましい。
【0245】
【化41】
【0246】
一般式(C-1)~(C-3)中、
、R、及びRは、それぞれ独立に炭素数1以上の置換基を表す。
は、カチオン性基(S、I、又はN)と-Xとを連結する2価の連結基又は単結合を表す。
-Xは、-COO、-SO 、-SO 、又は-N-Rを表す。
は、隣接するN原子との連結部位に、カルボニル基(-CO-)、スルホニル基(-SO-)、及びスルフィニル基(-S(=O)-)のうち少なくとも1つを有する1価の置換基を表す。
、R、R、R、及びLは、互いに結合して環を形成してもよい。
また、一般式(C-3)において、R~Rのうち2つを合わせて1つの2価の置換基を表し、N原子と2重結合により結合していてもよい。
【0247】
~Rにおける炭素数1以上の置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基(好ましくは炭素数6~15)、アルキルオキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、シクロアルキルアミノカルボニル基、及びアリールアミノカルボニル基等が挙げられる。なかでも、アルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基が好ましい。
【0248】
2価の連結基としてのLは、直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基(好ましくは炭素数6~15)、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、ウレア結合、及びこれらの2種以上を組み合わせてなる基等が挙げられる。なかでも、アルキレン基、アリーレン基、エーテル結合、エステル結合、又はこれらの2種以上を組み合わせてなる基が好ましい。
【0249】
光酸発生剤Bは、光酸発生剤A(好ましくは光酸発生剤Aw)から発生する酸よりもpKaが1.00以上大きい酸を発生する化合物であって、カチオン部に窒素原子を有するオニウム塩化合物でもよい。カチオン部に窒素原子を有するオニウム塩化合物は、カチオン部に窒素原子を含む塩基性部位を有することが好ましい。
塩基性部位は、アミノ基であることが好ましく、脂肪族アミノ基であることがより好ましい。また、塩基性部位中の窒素原子に隣接する原子の全てが、水素原子又は炭素原子であることが好ましい。また、塩基性向上の観点から、窒素原子に対して、電子求引性の官能基(カルボニル基、スルホニル基、シアノ基、及びハロゲン原子等)が直結していないことが好ましい。
【0250】
光酸発生剤Bは、低分子化合物の形態であってもよく、重合体の一部に組み込まれた形態であってもよい。また、低分子化合物の形態と重合体の一部に組み込まれた形態を併用してもよい。
光酸発生剤Bは、低分子化合物の形態であることが好ましい。
光酸発生剤Bが、低分子化合物の形態である場合、分子量は3,000以下が好ましく、2,000以下がより好ましく、1,000以下が更に好ましい。
【0251】
(窒素原子を有し、酸の作用により脱離する基を有する化合物(DD))
化合物(DD)は、酸の作用により脱離する基を窒素原子上に有するアミン誘導体であることが好ましい。
酸の作用により脱離する基としては、アセタール基、カルボネート基、カルバメート基、3級エステル基、3級水酸基、又はヘミアミナールエーテル基が好ましく、カルバメート基、又はヘミアミナールエーテル基がより好ましい。
化合物(DD)は低分子化合物であることが好ましい。
化合物(DD)の分子量は、100~1000が好ましく、100~700がより好ましく、100~500が更に好ましい。
化合物(DD)は、窒素原子上に保護基を有するカルバメート基を有してもよい。カルバメート基を構成する保護基としては、下記一般式(d-1)で表される。
【0252】
【化42】
【0253】
一般式(d-1)において、
Rbは、各々独立に、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1~10)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3~30)、アリール基(好ましくは炭素数3~30)、アラルキル基(好ましくは炭素数1~10)、又はアルコキシアルキル基(好ましくは炭素数1~10)を表す。Rbは相互に結合して環を形成していてもよい。
Rbが示すアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基は、各々独立にヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、ピロリジノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、オキソ基等の官能基、アルコキシ基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい。Rbが示すアルコキシアルキル基についても同様である。
【0254】
Rbとしては、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基が好ましく、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又はシクロアルキル基がより好ましい。
2つのRbが相互に連結して形成する環としては、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、複素環式炭化水素及びその誘導体等が挙げられる。
一般式(d-1)で表される基の具体的な構造としては、米国特許公報US2012/0135348A1号明細書の段落<0466>に開示された構造が挙げられるが、これに限定されない。
【0255】
化合物(DD)は、下記一般式(6)で表される構造を有することが好ましい。
【0256】
【化43】
【0257】
一般式(6)において、
lは0~2の整数を表し、mは1~3の整数を表し、l+m=3を満たす。
Raは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。lが2のとき、2つのRaは同じでも異なっていてもよく、2つのRaは相互に連結して式中の窒素原子と共に複素環を形成していてもよい。この複素環には式中の窒素原子以外のヘテロ原子を含んでいてもよい。
Rbは、上記一般式(d-1)におけるRbと同義であり、好ましい例も同様である。
一般式(6)において、Raとしてのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基は、各々独立にRbとしてのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基が置換されていてもよい基として前述した基と同様な基で置換されていてもよい。
【0258】
上記Raのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基(これらの基は、上記基で置換されていてもよい)の具体例としては、Rbについて前述した具体例と同様な基が挙げられる。
本発明における特に好ましい化合物(DD)の具体例としては、米国特許出願公開2012/0135348A1号明細書の段落<0475>に開示された化合物が挙げられるが、これに限定されない。
【0259】
化合物(DD)の共役酸のpKaと、光酸発生剤A(好ましくは光酸発生剤Aw)から発生する酸のpKaとの差(化合物(DD)の共役酸のpKaから光酸発生剤A(好ましくは光酸発生剤Aw)から発生する酸のpKaを引いた値)は、1.00以上が好ましく、1.00~14.00がより好ましく、2.00~13.00が更に好ましい。
また、化合物(DD)の共役酸のpKaは、使用する光酸発生剤A(好ましくは光酸発生剤Aw)の種類によっても異なるが、例えば、0.00~14.00が好ましく、3.00~13.00がより好ましく、3.50~12.50が更に好ましい。
【0260】
(カチオン部に窒素原子を有するオニウム塩化合物(DE))
化合物(DE)は、カチオン部に窒素原子を含む塩基性部位を有する化合物であることが好ましい。塩基性部位は、アミノ基であることが好ましく、脂肪族アミノ基であることがより好ましい。塩基性部位中の窒素原子に隣接する原子の全てが、水素原子又は炭素原子であることが更に好ましい。また、塩基性向上の観点から、窒素原子に対して、電子求引性の官能基(カルボニル基、スルホニル基、シアノ基、及びハロゲン原子等)が直結していないことが好ましい。
化合物(DE)の好ましい具体例としては、米国特許出願公開2015/0309408A1号明細書の段落<0203>に開示された化合物が挙げられるが、これに限定されない。
【0261】
化合物(DE)の共役酸のpKaと、光酸発生剤A(好ましくは光酸発生剤Aw)から発生する酸のpKaとの差(化合物(DE)の共役酸のpKaから光酸発生剤A(好ましくは光酸発生剤Aw)から発生する酸のpKaを引いた値)は、1.00以上が好ましく、1.00~14.00がより好ましく、2.00~13.00が更に好ましい。
また、化合物(DE)の共役酸のpKaは、使用する光酸発生剤A(好ましくは光酸発生剤Aw)の種類によっても異なるが、例えば、0.00~14.00が好ましく、3.00~13.00がより好ましく、3.50~12.50が更に好ましい。
【0262】
本発明の組成物は、前述の光酸発生剤Awと、塩基性化合物(DA)、活性光線又は放射線の照射により塩基性が低下又は消失する塩基性化合物(DB)、光酸発生剤Awから発生する酸よりもpKaが1.00以上大きい酸を発生する化合物(DC)、窒素原子を有し、酸の作用により脱離する基を有する化合物(DD)、及びカチオン部に窒素原子を有するオニウム塩化合物(DE)の少なくとも1つとを含有することが好ましい。
【0263】
酸拡散制御剤の好ましい例を以下に示すが、これらに限定されない。
【0264】
【化44】
【0265】
【化45】
【0266】
【化46】
【0267】
本発明の組成物において、酸拡散制御剤は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
酸拡散制御剤の本発明の組成物中の含有量(複数種存在する場合はその合計)は、組成物の全固形分を基準として、0.05~10質量%が好ましく、0.05~5質量%がより好ましい。
【0268】
〔疎水性樹脂〕
本発明の組成物は、疎水性樹脂を含んでいてもよい。なお、疎水性樹脂は、樹脂Pとは異なる樹脂であり、膜の膜厚均一性により優れる点で、酸の作用により分解して極性が増大する基(酸分解性基)を有する繰り返し単位を実質的に含まないことが好ましい。なお、「酸分解性基を有する繰り返し単位を実質的に含まない」とは、疎水性樹脂中、上記酸分解性基を含む繰り返し単位の含有量が、疎水性樹脂の全繰り返し単位に対して、0モル%以上5モル%以下を意図し、上限は3モル%以下が好ましく、1モル%以下がより好ましい。
本発明の組成物が疎水性樹脂を含むことで、レジスト膜(感活性光線性又は感放射線性膜)の表面における静的、及び/又は動的な接触角を制御しやすい。これにより、現像特性の改善、アウトガスの抑制、液浸露光における液浸液追随性の向上、及び液浸欠陥の低減等が可能となる。
疎水性樹脂は、レジスト膜の表面に偏在するように設計されることが好ましいが、界面活性剤とは異なり、必ずしも分子内に親水基を有する必要はなく、極性物質及び非極性物質を均一に混合するのに寄与しなくてもよい。
【0269】
疎水性樹脂は、膜表層への偏在化の観点から、フッ素原子、フッ素原子を有する基、ケイ素原子を有する基、炭素数が6以上の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基又はシクロアルキル基、炭素数が9以上のアリール基、炭素数が10以上のアラルキル基、少なくとも1個の炭素数3以上の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基で置換されたアリール基、及び少なくとも1個の炭素数5以上のシクロアルキル基で置換されたアリール基からなる群より選択される1つ以上の基(以下「疎水性基」ともいう。)を有する樹脂であることが好ましい。
また、疎水性樹脂は、上記疎水性基を含む繰り返し単位を含むことが好ましい。
なお、疎水性樹脂が、フッ素原子及び/又はケイ素原子を含む場合、疎水性樹脂における上記フッ素原子及び/又はケイ素原子は、樹脂の主鎖中に含まれていてもよく、側鎖中に含まれていてもよい。
【0270】
上記フッ素原子を有する基としては、フッ素原子を有する直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、シクロアルキル基、又はフッ素原子を有するアリール基が好ましい。
上記フッ素原子を有する直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基としては、炭素数1~4のパーフルオロアルキル基が好ましく、CFがより好ましい。
上記フッ素原子を有するシクロアルキル基としては、炭素数3~20のパーフルオロシクロアルキル基が好ましい。
フッ素原子を有するアリール基としては、例えば、フッ素原子で置換されたフェニル基が挙げられる。
【0271】
上記ケイ素原子を有する基としては、例えば、アルキルシリル基が挙げられる。
上記アルキルシリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、及びtert-ブチルジメチルシリル基等が挙げられる。
【0272】
上記炭素数が6以上の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又はシクロアルキル基としては、例えば、炭素数6~20の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又はシクロアルキル基が挙げられ、例えば、2-エチルヘキシル基、ノルボルニル基、及びアダマンチル基等が挙げられる。
【0273】
上記炭素数が9以上のアリール基としては、例えば、2個以上の5員又は6員の単環芳香族炭化水素環を組み合わせてなる多環構造のアリール基等が挙げられる。
【0274】
上記炭素数が10以上のアラルキル基としては、例えば、炭素数10~20のアラルキル基が好ましく、具体的には、1-ナフチルメチル基、1-(1-ナフチル)エチル基、トリフェニルメチル基、及びピレニルメチル基等が挙げられる。
【0275】
上記少なくとも1個の炭素数3以上の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基で置換されたアリール基としては、例えば、炭素数3~20(好ましくは炭素数3~10)の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基で置換されたフェニル基が挙げられる。
【0276】
上記少なくとも1個の炭素数5以上のシクロアルキル基で置換されたアリール基としては、例えば、炭素数5~20(好ましくは炭素数5~10)のシクロアルキル基で置換されたフェニル基が挙げられる。
【0277】
疎水性樹脂は、なかでも、フッ素原子又はフッ素原子を有する基を含む繰り返し単位を含むことが好ましい。また、膜厚均一性がより優れる点で、疎水性樹脂中に含まれるフッ素原子の個数が、上述した光酸発生剤A中に含まれるフッ素原子の個数よりも多いことが好ましい。
ここで、疎水性樹脂中に含まれるフッ素原子の個数は、上記疎水性樹脂がフッ素原子を含む繰り返し単位を1種のみ含む場合、下記式(1)により求められる。また、上記疎水性樹脂がフッ素原子を含む繰り返し単位を2種以上含む場合、フッ素原子を含む各繰り返し単位毎の下記式(1)により求められる値の総和として求められる。
式(1):Y=a×b÷100
:疎水性樹脂中に含まれるフッ素原子の個数
a:フッ素原子を含む繰り返し単位中のフッ素原子の個数
b:疎水性樹脂中の全繰り返し単位に対するフッ素原子を含む繰り返し単位の含有量(モル%)
【0278】
疎水性樹脂は、以下に示す(x)及び(y)から選ばれる基を少なくとも1つ含むことが好ましく、(y)から選ばれる基を含む繰り返し単位を含むことがより好ましい。
また、以下に示す(x)及び(y)が、上述した疎水性基を含んでいてもよい。
(x)酸基
(y)アルカリ現像液の作用により分解してアルカリ現像液に対する溶解度が増大する基(以下、極性変換基ともいう)
【0279】
酸基(x)としては、フェノール性水酸基、カルボキシ基、フッ素化アルコール基、スルホン酸基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、及びトリス(アルキルスルホニル)メチレン基等が挙げられる。
酸基としては、フッ素化アルコール基(好ましくはヘキサフルオロイソプロパノール基)
、スルホンイミド基、又はビス(アルキルカルボニル)メチレン基が好ましい。
【0280】
アルカリ現像液の作用により分解してアルカリ現像液に対する溶解度が増大する基(y)としては、例えば、ラクトン基、カルボキシエステル基(-COO-、又は-OCO-)、酸無水物基(-CO-O-CO-)、酸イミド基(-NHCONH-)、カルボキシチオエステル基(-COS-、又は-SCO-)、炭酸エステル基(-O-CO-O-)
、硫酸エステル基(-OSOO-)、及びスルホン酸エステル基(-SOO-、又は-OSO-)等が挙げられ、ラクトン基又はカルボキシエステル基(-COO-、又は-OCO-)が好ましく、カルボキシエステル基(-COO-、又は-OCO-)がより好ましい。
【0281】
上記(y)から選ばれる基を含む繰り返し単位としては、例えば、(1)上記(y)から選ばれる基が樹脂の主鎖に直接結合している繰り返し単位(例えば、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルによる繰り返し単位等)、及び(2)上記(y)から選ばれる基が、連結基を介して樹脂の主鎖に結合している繰り返し単位が挙げられる。
なお、ラクトン基を有する繰り返し単位としては、例えば、先に樹脂Pの項で説明したラクトン構造を有する繰り返し単位と同様の繰り返し単位が挙げられる。
【0282】
上記(y)から選ばれる基を含む繰り返し単位としては、なかでも上述した(2)の形態であることが好ましく、下記一般式(7)で表される繰り返し単位がより好ましい。
【0283】
【化47】
【0284】
一般式(7)中、Zは、ハロゲン原子、水素原子、アルキル基、又はシクロアルキル基を表す。
で表されるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられ、なかでもフッ素原子が好ましい。
で表されるアルキル基としては、炭素数1~12のアルキル基が挙げられる。上記アルキル基は、直鎖状及び分岐鎖状のいずれであってもよい。上記アルキル基の炭素数は、1~6が好ましく、1~3がより好ましい。上記シクロアルキル基の炭素数は3~20が好ましく、5~15がより好ましい。
【0285】
は、(n+1)価の連結基を表す。
で表される(n+1)価の連結基としては特に制限されず、例えば、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20の2価以上の脂肪族炭化水素基が挙げられる。
上記ヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子が挙げられる。
ヘテロ原子は、例えば、-O-、-S-、-SO-、-NR-、-CO-、又はこれらを2種以上組み合わせた連結基の形態で含まれていてもよい。なお、上記Rは、水素原子又は炭素数1~20のアルキル基を表す。
ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20の2価以上の脂肪族炭化水素基としては、例えば、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20の直鎖状、又は分岐鎖状アルキレン基、シクロアルキレン基が挙げられ、炭素数1~10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基が好ましい。
【0286】
は、*-Y-Rで表される基を表す。上記Yは、-CO-O-、又は-O-CO-を表す。上記*は、結合位置を表す。
【0287】
上記Rは、電子求引性基を表す。
電子求引性基としては特に制限されず、例えば、少なくとも1つのフッ素原子で置換された炭素数1~10のアルキル基(直鎖状及び分岐鎖状のいずれであってもよい。)又はシクロアルキル基が挙げられ、具体的には、-CF、-CFCF、-CHCF、-CHFCF、及び-CH(CF等が挙げられる。膜厚均一性がより優れる点で、なかでも、電子求引性基としては、-CH(CFが好ましい。
【0288】
nは、正の整数を表す。
nは、1以上であれば特に制限されず、その上限値は、例えば10である。
なお、nが2以上である場合、複数のXは、互いに同一であっても、異なっていてもよい。
【0289】
疎水性樹脂が上記(y)から選ばれる基を含む繰り返し単位を含む場合、その含有量は、疎水性樹脂中の全繰り返し単位に対して、1~100モル%が好ましく、3~98モル%がより好ましく、5~95モル%が更に好ましい。
【0290】
疎水性樹脂がフッ素原子を含む繰り返し単位を含む場合、その含有量は、疎水性樹脂中の全繰り返し単位に対して、10~100モル%が好ましく、30~100モル%がより好ましく、30~95モル%が更に好ましい。
また、疎水性樹脂がケイ素原子を含む繰り返し単位を含む場合、その含有量は、疎水性樹脂中の全繰り返し単位に対して、10~100モル%が好ましく、20~100モル%がより好ましい。
【0291】
疎水性樹脂は、膜面均一性により優れる点で、上述した一般式(7)で表される繰り返し単位と、一般式(7)で表される繰り返し単位以外のその他の繰り返し単位と、を含むことが好ましい。
上記一般式(7)で表される繰り返し単位以外のその他の繰り返し単位としては、上記(y)から選ばれる基を含み、且つ、上述した疎水性基を含む繰り返し単位(言い換えると、上述したアルカリ現像液の作用により分解してアルカリ現像液に対する溶解度が増大する基を有する繰り返し単位であって、且つ、上述した疎水性基を含む繰り返し単位)が好ましく、上記(y)から選ばれる基を含み、且つ、炭素数が6以上の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又はシクロアルキル基、炭素数が9以上のアリール基、炭素数が10以上のアラルキル基、少なくとも1個の炭素数3以上の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基で置換されたアリール基、及び少なくとも1個の炭素数5以上のシクロアルキル基で置換されたアリール基からなる群より選択される1つ以上の基を含む繰り返し単位であることが好ましい。
なお、上記一般式(7)で表される繰り返し単位以外のその他の繰り返し単位としては、フッ素原子を含まないことが好ましい。
疎水性樹脂が、一般式(7)で表される繰り返し単位と、一般式(7)で表される繰り返し単位以外のその他の繰り返し単位を含む場合、上記一般式(7)で表される繰り返し単位の含有量は、疎水性樹脂の全繰り返し単位に対して、95モル%以下が好ましく、90モル%以下がより好ましく、85モル%以下が更に好ましい。なお、下限は特に制限されず、例えば10モル%以上であり、30モル%以上がより好ましい。
【0292】
疎水性樹脂の標準ポリスチレン換算の重量平均分子量は、1,000~100,000が好ましく、1,000~50,000がより好ましい。
【0293】
疎水性樹脂に含まれる残存モノマー及び/又はオリゴマー成分の合計含有量は、0.01~5質量%が好ましく、0.01~3質量%がより好ましい。また、分散度(Mw/Mn)は、1.0~5.0が好ましく、1.0~3.0がより好ましい。
【0294】
疎水性樹脂としては、公知の樹脂を、単独又はそれらの混合物として適宜に選択して使用できる。例えば、米国特許出願公開2015/0168830A1号明細書の段落[0451]~<0704>、及び米国特許出願公開2016/0274458A1号明細書の段落<0340>~<0356>に開示された公知の樹脂を疎水性樹脂として好適に使用できる。また、米国特許出願公開2016/0237190A1号明細書の段落[0177]~<0258>に開示された繰り返し単位も、疎水性樹脂を構成する繰り返し単位として好ましい。
【0295】
疎水性樹脂を構成する繰り返し単位に相当するモノマーの好ましい例を以下に示す。
【0296】
【化48】
【0297】
【化49】
【0298】
疎水性樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
表面エネルギーが異なる2種以上の疎水性樹脂を混合して使用するのも、液浸露光における液浸液追随性と現像特性の両立の観点から好ましい。
本発明の組成物が疎水性樹脂を含有する場合、本発明の組成物中の疎水性樹脂の含有量(複数含まれる場合、その合計含有量)は、本発明の組成物中の全固形分に対し、0.1~12.0質量%が好ましく、0.2~10.0質量%がより好ましく、0.3~10.0質量%がより好ましい。
【0299】
〔溶剤〕
本発明の組成物は、溶剤を含んでいてもよい。
本発明の組成物においては、公知のレジスト溶剤を適宜使用できる。例えば、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落<0665>~<0670>、米国特許出願公開2015/0004544A1号明細書の段落<0210>~<0235>、米国特許出願公開2016/0237190A1号明細書の段落<0424>~[0426]、及び米国特許出願公開2016/0274458A1号明細書の段落[0357]~<0366>に開示された公知の溶剤を好適に使用できる。
組成物を調製する際に使用できる溶剤としては、例えば、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸アルキルエステル、アルコキシプロピオン酸アルキル、環状ラクトン(好ましくは炭素数4~10)、環を有してもよいモノケトン化合物(好ましくは炭素数4~10)、アルキレンカーボネート、アルコキシ酢酸アルキル、及びピルビン酸アルキル等の有機溶剤が挙げられる。
【0300】
有機溶剤として、構造中に水酸基を有する溶剤と、水酸基を有さない溶剤とを混合した混合溶剤を使用してもよい。
水酸基を有する溶剤、及び水酸基を有さない溶剤としては、前述の例示化合物を適宜選択できるが、水酸基を含む溶剤としては、アルキレングリコールモノアルキルエーテル又は乳酸アルキル等が好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(PGEE)、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、又は乳酸エチルがより好ましい。また、水酸基を有さない溶剤としては、アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、アルキルアルコキシプロピオネート、環を有していてもよいモノケトン化合物、環状ラクトン、又は酢酸アルキル等が好ましく、これらの中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、エチルエトキシプロピオネート、2-ヘプタノン、γ-ブチロラクトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、又は酢酸ブチルがより好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン、エチルエトキシプロピオネート、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、又は2-ヘプタノンが更に好ましい。水酸基を有さない溶剤としては、プロピレンカーボネートも好ましい。
水酸基を有する溶剤と水酸基を有さない溶剤との混合比(質量比)は、1/99~99/1が好ましく、10/90~90/10がより好ましく、20/80~60/40が更に好ましい。水酸基を有さない溶剤を50質量%以上含む混合溶剤が、塗布均一性の点で好ましい。
溶剤は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含むことが好ましい。この場合、溶剤は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート単独溶剤でもよいし、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含む2種類以上の混合溶剤でもよい。
【0301】
本発明の組成物の固形分濃度は、1.0~10質量%が好ましく、2.0~5.7質量%がより好ましく、2.0~5.3質量%が更に好ましい。つまり組成物が溶剤を含む場合における、組成物中の溶剤の含有量は、上記固形分濃度の好適な範囲を満たせるように調整することが好ましい。なお、固形分濃度とは、組成物の総質量に対する、溶剤を除く他のレジスト成分の質量の質量百分率である。
組成物中の固形分濃度を適切な範囲に設定して適度な粘度をもたせ、塗布性又は製膜性を向上させて、本発明の組成物からなるレジスト膜(感活性光線性又は感放射線性膜)の膜厚を調整できる。
【0302】
〔界面活性剤〕
本発明の組成物は、界面活性剤を含んでもよい。
界面活性剤は、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤(具体的には、フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、又はフッ素原子とケイ素原子との両方を有する界面活性剤)が好ましい。
【0303】
本発明の組成物が界面活性剤を含む場合、250nm以下、特に220nm以下の露光光源を使用した場合に、良好な感度及び解像度で、密着性及び現像欠陥の少ないパターンを得やすい。
フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤として、米国特許出願公開第2008/0248425号明細書の段落<0276>に記載の界面活性剤が挙げられる。
また、米国特許出願公開第2008/0248425号明細書の段落<0280>に記載の、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤以外の他の界面活性剤を使用してもよい。
【0304】
界面活性剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を使用してもよい。
本発明の組成物が界面活性剤を含有する場合、界面活性剤の含有量(複数含まれる場合、その合計含有量)は、組成物の全固形分に対して、0.0001~2質量%が好ましく、0.0005~1質量%がより好ましい。
一方、界面活性剤の含有量が、組成物の全固形分に対して10質量ppm(parts per million)以上とすれば、疎水性樹脂の表面偏在性が上がる。それにより、レジスト膜の表面をより疎水的にでき、液浸露光時の水追随性が向上する。
【0305】
〔その他の添加剤〕
本発明の組成物は、更に、上述した以外の樹脂、酸増殖剤、染料、可塑剤、光増感剤、光吸収剤、アルカリ可溶性樹脂、溶解阻止剤、又は溶解促進剤等を含んでいてもよい。
【0306】
<調製方法>
本発明の組成物は、上記の成分を所定の有機溶剤(好ましくは上記混合溶剤)に溶解し、これをフィルター濾過した後、所定の支持体(基板)上に塗布して用いることが好ましい。
フィルター濾過に用いるフィルターのポアサイズは0.1μm以下が好ましく、0.05μm以下がより好ましく、0.03μm以下が更に好ましい。また、組成物の固形分濃度が高い場合(例えば、25質量%以上)は、フィルター濾過に用いるフィルターのポアサイズは3μm以下が好ましく、0.5μm以下がより好ましく、0.3μm以下が更に好ましい。このフィルターは、ポリテトラフルオロエチレン製、ポリエチレン製、又はナイロン製のフィルターが好ましい。フィルター濾過においては、例えば日本国特許出願公開第2002-62667号明細書(特開2002-62667)に開示されるように、循環的な濾過を行ってもよく、複数種類のフィルターを直列又は並列に接続して濾過を行ってもよい。また、組成物を複数回濾過してもよい。更に、フィルター濾過の前後で、組成物に対して脱気処理等を行ってもよい。
【0307】
<用途>
本発明の組成物は、活性光線又は放射線の照射により反応して性質が変化する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物に関する。更に詳しくは、本発明の組成物は、IC(Integrated Circuit)等の半導体製造工程、液晶若しくはサーマルヘッド等の回路基板の製造、インプリント用モールド構造体の作製、その他のフォトファブリケーション工程、又は平版印刷版、若しくは酸硬化性組成物の製造に使用される感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物に関する。本発明において形成されるパターンは、エッチング工程、イオンインプランテーション工程、バンプ電極形成工程、再配線形成工程、及びMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)等において使用できる。
【0308】
[パターン形成方法、レジスト膜]
本発明は上記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いたパターン形成方法にも関する。以下、本発明のパターン形成方法について説明する。また、パターン形成方法の説明と併せて、本発明のレジスト膜(感活性光線性又は感放射線性膜)についても説明する。
【0309】
本発明のパターン形成方法は、
(i)上述した感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いてレジスト膜(感活性光線性又は感放射線性膜)を支持体上に形成する工程(レジスト膜形成工程(成膜工程))

(ii)上記レジスト膜を露光する(活性光線又は放射線を照射する)工程(露光工程)、及び、
(iii)上記露光されたレジスト膜を、現像液を用いて現像する工程(現像工程)、を有する。
【0310】
本発明のパターン形成方法は、上記(i)~(iii)の工程を含んでいれば特に限定されず、更に下記の工程を有していてもよい。
本発明のパターン形成方法は、(ii)露光工程における露光方法が、液浸露光であってもよい。
本発明のパターン形成方法は、(ii)露光工程の前に、(iv)前加熱(PB:PreBake)工程を含むことが好ましい。
本発明のパターン形成方法は、(ii)露光工程の後、かつ、(iii)現像工程の前に、(v)露光後加熱(PEB:Post Exposure Bake)工程を含むことが好ましい。
本発明のパターン形成方法は、(ii)露光工程を、複数回含んでいてもよい。
本発明のパターン形成方法は、(iv)前加熱工程を、複数回含んでいてもよい。
本発明のパターン形成方法は、(v)露光後加熱工程を、複数回含んでいてもよい。
【0311】
本発明のパターン形成方法において、上述した(i)レジスト膜形成工程(成膜工程)
、(ii)露光工程、及び(iii)現像工程は、一般的に知られている方法により行える。
【0312】
レジスト膜の膜厚は、解像力向上の観点から、110nm以下が好ましく、95nm以下がより好ましい。
また、必要に応じて、レジスト膜と支持体との間にレジスト下層膜(例えば、SOG(Spin On Glass)、SOC(Spin On Carbon)、及び、反射防止膜)を形成してもよい。レジスト下層膜を構成する材料としては、公知の有機系又は無機系の材料を適宜使用できる。
レジスト膜の上層に、保護膜(トップコート)を形成してもよい。保護膜としては、公知の材料を適宜使用できる。例えば、米国特許出願公開第2007/0178407号明細書、米国特許出願公開第2008/0085466号明細書、米国特許出願公開第2007/0275326号明細書、米国特許出願公開第2016/0299432号明細書、米国特許出願公開第2013/0244438号明細書、国際特許出願公開第2016/157988A号明細書に開示された保護膜形成用組成物を好適に使用できる。保護膜形成用組成物としては、上述した酸拡散制御剤を含むことが好ましい。
上述した疎水性樹脂を含むレジスト膜の上層に保護膜を形成してもよい。
【0313】
支持体は、特に限定されず、IC等の半導体の製造工程、又は液晶若しくはサーマルヘッド等の回路基板の製造工程のほか、その他のフォトファブリケーションのリソグラフィー工程等で一般的に用いられる基板を使用できる。支持体の具体例としては、シリコン、SiO、及びSiN等の無機基板等が挙げられる。
【0314】
加熱温度は、(iv)前加熱工程及び(v)露光後加熱工程のいずれにおいても、70~130℃が好ましく、80~120℃がより好ましい。
加熱時間は、(iv)前加熱工程及び(v)露光後加熱工程のいずれにおいても、30~300秒が好ましく、30~180秒がより好ましく、30~90秒が更に好ましい。
加熱は、露光装置及び現像装置に備わっている手段で行え、ホットプレート等を用いて行ってもよい。
【0315】
露光工程に用いられる光源波長に制限はないが、例えば、赤外光、可視光、紫外光、遠紫外光、極紫外光(EUV)、X線、及び電子線等が挙げられる。これらの中でも遠紫外光が好ましく、その波長は250nm以下が好ましく、220nm以下がより好ましく、1~200nmが更に好ましい。具体的には、KrFエキシマレーザー(248nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)、Fエキシマレーザー(157nm)、X線、EUV(13nm)、又は電子線等が好ましく、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、EUV、又は電子線がより好ましい。
【0316】
(iii)現像工程においては、アルカリ現像液であっても、有機溶剤を含む現像液(以下、有機系現像液ともいう)であってもよい。
【0317】
アルカリ現像液としては、通常、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドに代表される4級アンモニウム塩が用いられるが、これ以外にも無機アルカリ、1~3級アミン、アルコールアミン、及び環状アミン等のアルカリ水溶液も使用可能である。
更に、上記アルカリ現像液は、アルコール類、及び/又は界面活性剤を適当量含んでいてもよい。アルカリ現像液のアルカリ濃度は、通常0.1~20質量%である。アルカリ現像液のpHは、通常10~15である。
アルカリ現像液を用いて現像を行う時間は、通常10~300秒である。
アルカリ現像液のアルカリ濃度、pH、及び現像時間は、形成するパターンに応じて、適宜調整できる。
【0318】
有機系現像液は、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤、及び炭化水素系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤を含む現像液であることが好ましい。
【0319】
ケトン系溶剤としては、例えば、1-オクタノン、2-オクタノン、1-ノナノン、2-ノナノン、アセトン、2-ヘプタノン(メチルアミルケトン)、4-ヘプタノン、1-ヘキサノン、2-ヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセトニルアセトン、イオノン、ジアセトニルアルコール、アセチルカービノール、アセトフェノン、メチルナフチルケトン、イソホロン、及びプロピレンカーボネート等が挙げられる。
【0320】
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、酢酸アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチル-3-エトキシプロピオネート、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル、ブタン酸ブチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、酢酸イソアミル、イソ酪酸イソブチル、及びプロピオン酸ブチル等が挙げられる。
【0321】
アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤、及び炭化水素系溶剤としては、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落<0715>~<0718>に開示された溶剤を使用できる。
【0322】
上記の溶剤は、複数混合してもよいし、上記以外の溶剤又は水と混合してもよい。現像液全体としての含水率は、50質量%未満が好ましく、20質量%未満がより好ましく、10質量%未満が更に好ましく、実質的に水分を含まないことが特に好ましい。
有機系現像液に対する有機溶剤の含有量は、現像液の全量に対して、50~100質量%が好ましく、80~100質量%がより好ましく、90~100質量%が更に好ましく、95~100質量%が特に好ましい。
【0323】
現像液は、必要に応じて公知の界面活性剤を適当量含んでいてもよい。
【0324】
界面活性剤の含有量は現像液の全量に対して、通常0.001~5質量%であり、0.005~2質量%が好ましく、0.01~0.5質量%がより好ましい。
【0325】
有機系現像液は、酸拡散制御剤を含んでいてもよい。
【0326】
現像方法としては、例えば、現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静置する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、及び一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液吐出ノズルをスキャンしながら現像液を吐出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)等が挙げられる。
【0327】
アルカリ水溶液を用いて現像を行う工程(アルカリ現像工程)、及び有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程(有機溶剤現像工程)を組み合わせてもよい。これにより、中間的な露光強度の領域のみを溶解させずにパターン形成が行えるので、より微細なパターンを形成できる。
【0328】
(iii)現像工程の後に、リンス液を用いて洗浄する工程(リンス工程)を含むことが好ましい。
【0329】
アルカリ現像液を用いた現像工程の後のリンス工程に用いるリンス液は、例えば純水を使用できる。純水は、界面活性剤を適当量含んでいてもよい。また、現像工程又はリンス工程の後に、パターン上に付着している現像液又はリンス液を超臨界流体により除去する処理を追加してもよい。更に、リンス処理又は超臨界流体による処理の後、パターン中に残存する水分を除去するために加熱処理を行ってもよい。
【0330】
有機溶剤を含む現像液を用いた現像工程の後のリンス工程に用いるリンス液は、パターンを溶解しなければ特に制限はなく、一般的な有機溶剤を含む溶液を使用できる。リンス液としては、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、及びエーテル系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤を含むリンス液を使用することが好ましい。
炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、及びエーテル系溶剤の具体例としては、有機溶剤を含む現像液において説明した溶剤と同様の溶剤が挙げられる。
この場合のリンス工程に用いるリンス液としては、1価アルコールを含むリンス液がより好ましい。
【0331】
リンス工程で用いられる1価アルコールとしては、直鎖状、分岐鎖状、又は環状の1価アルコールが挙げられる。具体的には、1-ブタノール、2-ブタノール、3-メチル-1-ブタノール、tert―ブチルアルコール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、1-ヘキサノール、4-メチル-2-ペンタノール、1-ヘプタノール、1-オクタノール、2-ヘキサノール、シクロペンタノール、2-ヘプタノール、2-オクタノール、3-ヘキサノール、3-ヘプタノール、3-オクタノール、4-オクタノール、及びメチルイソブチルカルビノールが挙げられる。
1価アルコールは炭素数5以上であるのも好ましく、このような例としては、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、4-メチル-2-ペンタノール、1-ペンタノール、3-メチル-1-ブタノール、及びメチルイソブチルカルビノール等が挙げられる。
【0332】
各成分は、複数混合してもよいし、上記以外の有機溶剤と混合して使用してもよい。
有機溶剤を含む現像液を用いた現像工程の後のリンス工程に用いるリンス液中の含水率は、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下が更に好ましい。含水率を10質量%以下とすれば、良好な現像特性が得られる。
有機溶剤を含む現像液を用いた現像工程の後のリンス液は、界面活性剤を適当量含んでいてもよい。
【0333】
リンス工程においては、現像を行った基板を、リンス液を用いて洗浄処理する。洗浄処理の方法は特に限定されないが、例えば、一定速度で回転している基板上にリンス液を吐出しつづける方法(回転塗布法)、リンス液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、又は基板表面にリンス液を噴霧する方法(スプレー法)等が挙げられる。中でも、回転塗布法で洗浄処理を行い、洗浄後に基板を2,000~4,000rpmの回転数で回転させ、リンス液を基板上から除去する方法が好ましい。また、リンス工程の後に加熱工程(Post Bake)を含むのも好ましい。この加熱工程によりパターン間及びパターン内部に残留した現像液及びリンス液が除去される。リンス工程の後の加熱工程において、加熱温度は通常40~160℃であり、70~95℃が好ましく、加熱時間は通常10秒~3分であり、30秒~90秒が好ましい。
【0334】
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、及び本発明のパターン形成方法において使用される各種材料(例えば、レジスト溶剤、現像液、リンス液、反射防止膜形成用組成物、又はトップコート形成用組成物等)は、金属成分、異性体、及び残存モノマー等の不純物を含まないことが好ましい。上記の各種材料に含まれるこれらの不純物の含有量としては、1質量ppm以下が好ましく、100質量ppt(parts per trillion)以下がより好ましく、10質量ppt以下が更に好ましく、実質的に含まないこと(測定装置の検出限界以下であること)が特に好ましい。
【0335】
上記各種材料から金属等の不純物を除去する方法としては、例えば、フィルターを用いた濾過が挙げられる。フィルター孔径としては、ポアサイズ10nm以下が好ましく、5nm以下がより好ましく、3nm以下が更に好ましい。フィルターの材質としては、ポリテトラフルオロエチレン製、ポリエチレン製、又はナイロン製のフィルターが好ましい。フィルターは、有機溶剤であらかじめ洗浄したフィルターを用いてもよい。フィルター濾過工程では、複数種類のフィルターを直列又は並列に接続して用いてもよい。複数種類のフィルターを使用する場合は、孔径及び/又は材質が異なるフィルターを組み合わせて使用してもよい。また、各種材料を複数回濾過してもよく、複数回濾過する工程が循環濾過工程であってもよい。フィルターとしては、日本国特許出願公開第2016-201426号明細書(特開2016-201426)に開示されるような溶出物が低減されたフィルターが好ましい。
フィルター濾過のほか、吸着材を用いて不純物の除去を行ってもよく、フィルター濾過と吸着材を組み合わせて使用してもよい。吸着材としては、公知の吸着材を使用でき、例えば、シリカゲル若しくはゼオライト等の無機系吸着材、又は活性炭等の有機系吸着材を使用できる。金属吸着材としては、例えば、日本国特許出願公開第2016-206500号明細書(特開2016-206500)に開示される材料が挙げられる。
また、上記各種材料に含まれる金属等の不純物を低減する方法としては、各種材料を構成する原料として金属含有量が少ない原料を選択する、各種材料を構成する原料に対してフィルター濾過を行う、又は装置内をテフロン(登録商標)でライニングする等してコンタミネーションを可能な限り抑制した条件下で蒸留を行う等の方法が挙げられる。レジスト成分の各種材料(バインダー及び光酸発生剤等)を合成する製造設備の全工程にグラスライニングの処理を施すのも、pptオーダーまでメタルを低減するために好ましい。各種材料を構成する原料に対して行うフィルター濾過における好ましい条件は、上記した条件と同様である。
【0336】
上記の各種材料は、不純物の混入を防止するために、米国特許出願公開第2015/0227049号明細書、日本国特許出願公開第2015-123351号明細書(特開2015-123351)、及び日本国特許出願公開第2017-13804号明細書(特開2017-13804)等に記載された容器に保存されることが好ましい。
【0337】
本発明のパターン形成方法により形成されるパターンに、パターンの表面荒れを改善する方法を適用してもよい。パターンの表面荒れを改善する方法としては、例えば、米国特許出願公開第2015/0104957号明細書に開示された、水素を含むガスのプラズマによってパターンを処理する方法が挙げられる。その他にも、日本国特許出願公開第2004-235468号明細書(特開2004-235468)、米国特許出願公開第2010/0020297号明細書、及びProc. of SPIE Vol.8328 83280N-1“EUV Resist Curing Technique for LWR Reduction and Etch Selectivity Enhancement”に記載されるような公知の方法を適用してもよい。
また、上記の方法によって形成されたパターンは、例えば日本国特許出願公開第1991-270227号明細書(特開平3-270227)、及び米国特許出願公開第2013/0209941号明細書に開示されたスペーサープロセスの芯材(Core)として使用できる。
【0338】
[電子デバイスの製造方法]
また、本発明は、上記したパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法にも関する。本発明の電子デバイスの製造方法により製造された電子デバイスは、電気電子機器(例えば、家電、OA(Office Automation)関連機器、メディア関連機器、光学用機器、及び通信機器等)に、好適に搭載される。
【実施例
【0339】
以下に実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更できる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
実施例1、2、4、8、10~12、14、16、19、22~26、28、29は、「実施例」とあるのを「参考例」に読み替えるものとする。
【0340】
<合成例:モノマーの合成)>
【0341】
【化50】
【0342】
ピナコール(37.8g)、テトラヒドロフラン(400mL)を室温で撹拌し、ピナコールを完全に溶解させた後に、0℃に冷却して撹拌した。そこへ、n-ブチルリチウム(nBuLi)(1.6mol/Lヘキサン溶液)を内温が15℃を維持しながら滴下し、滴下後さらに30分間0℃で撹拌することでピナコールテトラヒドロフラン溶液を調製した。
別にメタクリル酸クロリド(36.8g)、テトラヒドロフラン(400mL)を0℃で撹拌しているところへ、ピナコール―テトラヒドロフラン溶液を内温が15℃以下を維持するように滴下した。滴下終了後、反応液を室温に昇温した後に30分撹拌した。
その後反応液を飽和重曹水溶液400mLに注ぎ、減圧下でテトラヒドロフランを留去した.それにより得られた水溶液を酢酸エチル250mLで3回抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥後、酢酸エチル溶液をろ過し、ろ液を減圧下で濃縮することで、粗生成物を40.2g得た。
この粗生成物をシリカゲル600g、展開液:ヘキサン/酢酸エチル=6/1(Vol)でカラム精製することで、目的のモノマーを33.3g(56%収率)で得た。H-NMR、400MHz、δ((CDCl)ppm:1.24(6H、s)、1.54(6H,s),1.92-1.95(3H,m),3.44(1H,bs),5.52-5.58(1H,m),6.02-6.07(1H,m).
【0343】
<合成例:樹脂の合成)>
シクロヘキサノン80.78質量部を窒素気流下,80℃に加熱した。この液を攪拌しながら、そこに下記構造式D-1で表されるモノマー17.78質量部、下記構造式D-2で表されるモノマー11.18質量部、下記構造式E-1で表わされるモノマー11.78質量部、シクロヘキサノン150.03質量部、及び、2,2’-アゾビスイソ酪酸ジメチル〔V-601、和光純薬工業(株)製〕2.76質量部の混合溶液を6時間かけて滴下した。滴下終了後、80℃で更に2時間攪拌した。反応液を放冷後、多量のメタノール/水(質量比9:1)で再沈殿、ろ過し、得られた固体を真空乾燥することで酸分解性樹脂である樹脂A-1を29.33質量部得た。
【0344】
【化51】
【0345】
得られた樹脂A-1のGPC(展開溶媒:テトラヒドロフラン)から求めた重量平均分子量(Mw:ポリスチレン換算)は,Mw=8000,分散度はMw/Mn=1.67であった。13C-NMR(核磁気共鳴法)により測定した組成比(モル比;左から順に対応)は40/30/30(mol%)であった。
【0346】
なお、上記合成例と同様の操作を行うことで、酸分解性樹脂である後掲の樹脂A-2~A-22を合成した。
【0347】
<酸分解性樹脂>
使用した酸分解性樹脂(A-1~A-22、B-1及びB-2)の構造を以下に示す。
なお、樹脂の重量平均分子量(Mw)、及び分散度(Mw/Mn)は前述のとおりGPC(キャリア:テトラヒドロフラン(THF))により測定した(ポリスチレン換算量である)。また、樹脂の組成比(モル%比)は、13C-NMR(nuclear magnetic resonance)により測定した。
【0348】
【化52】
【0349】
【化53】
【0350】
【化54】
【0351】
【化55】
【0352】
【化56】
【0353】
【化57】
【0354】
なお、上記樹脂の各繰り返し単位の含有比率の単位はモル%である。
【0355】
上記A-1~A-22は、一般式(P1)で表される繰り返し単位を有する。上記A-1~A-22における一般式(P1)で表される繰り返し単位について、酸分解反応によって脱離する部位(分解部位(前述の一般式(P1-D)で表される部位))の原子量の総和を下記表1に示す。
【0356】
【表1】
【0357】
<光酸発生剤>
使用した光酸発生剤(PAG-1~PAG-12)の構造を以下に示す。
【0358】
【化58】
【0359】
【化59】
【0360】
<酸拡散制御剤>
使用した酸拡散制御剤(N-1~N-6)の構造を以下に示す。
【0361】
【化60】
【0362】
上記PAG-1~PAG-12、N-5及びN-6について、これらから発生する酸(発生酸)のpKaを以下に示す。
【表2】
【0363】
また、上記N-1~N-4について、共役酸のpKaを以下に示す。
【表3】
【0364】
<疎水性樹脂>
使用した疎水性樹脂(1b、2b)の構造を以下に示す。
なお、樹脂の重量平均分子量(Mw)、及び分散度(Mw/Mn)は前述のとおりGPC(キャリア:テトラヒドロフラン(THF))により測定した(ポリスチレン換算量である)。また、樹脂の組成比(モル%比)は、13C-NMRにより測定した。
【0365】
【化61】
【0366】
なお、上記樹脂の各繰り返し単位の含有比率の単位はモル%である。
【0367】
<界面活性剤>
使用した界面活性剤を以下に示す。
W-1:PolyFox PF-6320(OMNOVA Solutions Inc.製;フッ素系)
【0368】
<溶剤>
使用した溶剤を以下に示す。
SL-1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
SL-2:プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)
SL-3:シクロヘキサノン
SL-4:γ-ブチロラクトン
【0369】
〔レジスト組成物の調製〕
表4及び5に示した各成分を固形分濃度が3質量%となるように混合した。次いで、得られた混合液を孔径0.03μmのポリエチレン製フィルターで濾過することにより、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物(レジスト組成物)を調製した。なお、固形分とは、溶剤以外の全ての成分を意味する。
【0370】
[パターン形成及び評価]
-ArF液浸露光:ポジ型パターンの形成-
シリコンウエハ上に有機反射防止膜形成用組成物ARC29SR(Brewer Science社製)を塗布し、205℃で60秒間ベークを行い、膜厚95nmの反射防止膜を形成した。得られた反射防止膜上に表4に示すレジスト組成物を塗布し、100℃で60秒間に亘ってベーク(PB:Prebake)を行い、膜厚85nmのレジスト膜を形成した。
得られたウエハをArFエキシマレーザー液浸スキャナー(ASML社製;XT1700i、NA1.20、C-Quad、アウターシグマ0.900、インナーシグマ0.812、XY偏向)を用い、線幅44nmの1:1ラインアンドスペースパターンの6%ハーフトーンマスクを通して露光した。液浸液としては超純水を用いた。その後、100℃で60秒間加熱(PEB:Post Exposure Bake)した。次いで、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で30秒間パドルして現像し、4000rpmの回転数で30秒間ウエハを回転させることにより、線幅44nmの1:1ラインアンドスペースのパターンを形成した。
【0371】
<感度の評価>
線幅が44nmの1:1ラインアンドスペースのマスクパターンを再現する最適露光量を感度(Eopt)(mJ/cm)とした。
【0372】
<露光ラティチュード(EL)の評価>
求めた最適露光量(Eopt)を基準とし、次いでラインの線幅が目的の値である44nmの±10%の幅(すなわち、39.6nm及び48.4nm)となる露光量を求めた。
得られた露光量の値を用いて、次式で定義される露光ラチチュード(EL)を算出した。
EL(%)=[〔(ラインの線幅が48.4nmとなる露光量)-(ラインの線幅が39.6nmとなる露光量)〕/Eopt]×100
ELの値が大きいほど、露光量変化による線幅の変化が小さく、レジスト膜のEL性能が良好であることを示す。
【0373】
<ラフネス性能(ラインウィズスラフネス;LWR)の評価>
得られた線幅44nmの1:1ラインアンドスペースパターンについて、測長走査型電子顕微鏡(SEM(株)日立製作所S-9380II)にてパターン上部から観察し、ラインパターンの長手方向のエッジ2μmの範囲について、線幅を50ポイント測定し、その測定ばらつきについて標準偏差を求め、3σを算出した。値が小さいほど良好な性能であることを示す。
【0374】
【表4】
【0375】
-ArF液浸露光:ネガ型パターンの形成-
シリコンウエハ上に有機反射防止膜ARC29SR(Brewer Science社製)を塗布し、205℃で60秒間ベークを行い膜厚98nmの反射防止膜を形成し、その上に、下記表5に示すレジスト組成物を塗布し、100℃で60秒間に亘ってベークを行い、膜厚90nmのレジスト膜を形成した。
ArFエキシマレーザー液浸スキャナー(ASML社製;XT1700i、NA1.20、C-Quad、アウターシグマ0.98、インナーシグマ0.89、XY偏向)を用い、X方向がマスクサイズ45nm、ピッチ90nm、Y方向がマスクサイズ60nm、ピッチ120nmのパターン形成用のマスクパターン(6%ハーフトーン)を介して露光した。液浸液としては超純水を使用した。100℃で60秒間加熱した後、有機現像液である酢酸ブチルで30秒間現像し、スピン乾燥してレジストパターン(ホールパターン)を得た。
【0376】
<感度の評価>
測長走査型電子顕微鏡(SEM(株)日立製作所S-9380II)によりホールサイズを観察し、X方向のホールサイズが平均45nmのホールパターンを解像する時の最適露光量を感度(Eopt)(mJ/cm)とした。
【0377】
<露光ラチチュード(EL)の評価>
求めた最適露光量(Eopt)を基準とし、次いでホールサイズが目的の値である45nmの±10%(すなわち、40.5nm及び49.5nm)となるときの露光量を求めた。そして、次式で定義される露光ラチチュード(EL)を算出した。ELの値が大きいほど、露光量変化による性能変化が小さく、良好である。
[EL(%)]=[(ホールサイズが40.5nmとなる露光量)-(ホールサイズが49.5nmとなる露光量)]/Eopt×100
【0378】
<パターン寸法の均一性(CDU)の評価>
最適露光量で露光された1ショット内において、互いの間隔が1μmの20箇所の領域において、各領域ごとに任意の25個(すなわち、計500個)のX方向のホールサイズを測定し、これらの標準偏差を求め、3σを算出した。値が小さいほど寸法のばらつきが小さく、良好な性能であることを示す。
【0379】
【表5】
【0380】
〔レジスト組成物の調製〕
表6に示した各成分を溶剤に溶解させ、固形分濃度1.6質量%の溶液を調製した。次いで、得られた溶液を0.03μmのポアサイズを有するポリエチレンフィルターで濾過することで、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物(レジスト組成物)を調製した。
【0381】
[レジストパターンの形成方法]
-EUV露光:ネガ型パターン又はポジ型パターンの形成-
AL412(Brewer Science社製)を下層膜として形成したシリコンウエハ上に表6に示すレジスト組成物を塗布し、100℃で60秒間に亘ってベーク(PB:Prebake)を行い、膜厚30nmのレジスト膜を形成した。
EUV露光装置(Exitech社製、Micro Exposure Tool、NA0.3、Quadrupol、アウターシグマ0.68、インナーシグマ0.36)を用いて、得られたレジスト膜を有するシリコンウエハに対してパターン照射を行った。なお、レクチルとしては、ラインサイズ=20nmであり、且つ、ライン:スペース=1:1であるマスクを用いた。
その後、105℃で60秒間加熱(PEB:Post Exposure Bake)した。次いで、ネガ型現像液(酢酸ブチル)又はポジ型現像液(2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液)で30秒間パドルして現像し、ネガ型リンス液(FIRM Extreme 10(AZEM製))又はポジ型リンス液(純水)でリンスした。その後4000rpmの回転数で30秒間ウエハを回転させることにより、線幅20nmの1:1ラインアンドスペースのパターンを形成した。
【0382】
<感度の評価>
測長走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope(日立ハイテクノロジーズ社製 CG-4100))により線幅が20nmの1:1ラインアンドスペースのマスクパターンを再現する露光量を求め、これを最適露光量Eoptとした。
【0383】
<露光ラティチュード(EL)の評価>
次いでラインの線幅が目的の値である20nmの±10%の幅(つまり、18nmおよび22nm)となる露光量を求めた。
得られた露光量の値を用いて、次式で定義される露光ラチチュード(EL)を算出した。
ELの値が大きいほど、露光量変化による線幅の変化が小さく、レジスト膜のEL性能が良好であることを示す。
EL(%)=[〔(ラインの線幅が22nmとなる露光量)-(ラインの線幅が18nmとなる露光量)〕/Eopt]×100
【0384】
<ラインエッジラフネス(LER)の評価>
感度評価における最適露光量にて解像したラインアンドスペースのレジストパターンの観測において、測長走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope(日立ハイテクノロジーズ社製 CG-4100))にてパターン上部から観察する際、パターンの中心からエッジまでの距離を任意のポイントで観測し、その測定ばらつきを3σで評価した。値が小さいほど良好な性能であることを示す。
【0385】
【表6】
【0386】
表4~6の結果から分かるように、本発明の組成物は、超微細なパターンを形成する際の感度及びELに優れ、LWR及びLERが小さく、CDUに優れていた。