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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】熱伝導材料形成用組成物、熱伝導材料
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/32 20060101AFI20221212BHJP
   C08G 59/62 20060101ALI20221212BHJP
   C09K 5/14 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
C08G59/32
C08G59/62
C09K5/14 E
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020569449
(86)(22)【出願日】2019-12-24
(86)【国際出願番号】 JP2019050619
(87)【国際公開番号】W WO2020158259
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-07-08
(31)【優先権主張番号】P 2019017067
(32)【優先日】2019-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】林 大介
(72)【発明者】
【氏名】人見 誠一
(72)【発明者】
【氏名】新居 輝樹
(72)【発明者】
【氏名】高橋 慶太
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-535308(JP,A)
【文献】特開2014-094937(JP,A)
【文献】特開2015-007214(JP,A)
【文献】国際公開第2016/104136(WO,A1)
【文献】特開2014-177581(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G59
C09J
C09D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表される化合物、フェノール化合物、及び、無機物を含む熱伝導材料形成用組成物であって、
前記一般式(1)で表される化合物の含有量が、全有機固形分に対して、30.0質量%以上であり、
前記無機物が、無機窒化物を含む、熱伝導材料形成用組成物。
(X-Z-)-A-(-Z-Y) (1)
一般式(1)中、mは、3以上の整数を表す。
nは、0以上の整数を表す。
Xは、エポキシ基を表す。
Yは、水酸基を表す。
m個の は、いずれも、炭素数1~7のアルキレン基を表す。
は、単結合又は炭素数1~7のアルキレン基を表す。
前記アルキレン基を構成する-CH-の1個以上は、-O-で置き換えられていてもよい。
Aは、m+n価の脂肪族飽和炭化水素基を表す。
前記脂肪族飽和炭化水素基を構成する-CH-の1個以上は、-O-で置き換えられていてもよい。
前記脂肪族飽和炭化水素基を構成する-CH<の1個以上は、-N<で置き換えられていてもよい。
Xが複数存在する場合、複数存在するXは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
Yが複数存在する場合、複数存在するYは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
が複数存在する場合、複数存在するZは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
が複数存在する場合、複数存在するZは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【請求項2】
前記一般式(1)で表される化合物の含有量が、全有機固形分に対して、40.0質量%以上である、請求項1に記載の熱伝導材料形成用組成物。
【請求項3】
前記一般式(1)で表される化合物以外には、エポキシ基を有する化合物を実質的に含まない、請求項1又は2に記載の熱伝導材料形成用組成物。
【請求項4】
前記フェノール化合物の水酸基含有量が、7.0mmol/g以上である、請求項1~のいずれか1項に記載の熱伝導材料形成用組成物。
【請求項5】
前記無機窒化物が、窒化ホウ素を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の熱伝導材料形成用組成物。
【請求項6】
前記無機窒化物の含有量が、前記無機物の全質量に対して、50質量%以上である、請求項1~5のいずれか1項に記載の熱伝導材料形成用組成物。
【請求項7】
更に、硬化促進剤を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の熱伝導材料形成用組成物。
【請求項8】
更に、前記無機窒化物の表面修飾剤を含む、請求項のいずれか1項に記載の熱伝導材料形成用組成物。
【請求項9】
請求項1~のいずれか1項に記載の熱伝導材料形成用組成物を硬化して得られる、熱伝導材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】

本発明は、熱伝導材料形成用組成物、及び、熱伝導材料に関する。
【背景技術】
【0002】

パーソナルコンピュータ、一般家電、及び自動車等の様々な電気機器に用いられているパワー半導体デバイスは、近年、小型化が急速に進んでいる。小型化に伴い高密度化されたパワー半導体デバイスから発生する熱の制御が困難になっている。

このような問題に対応するため、パワー半導体デバイスからの放熱を促進する熱伝導材料が用いられている。

例えば、特許文献1では、「熱発生装置を熱放散部品に固定するために伝熱面に配置可能な熱界面材料を含むフィルムで、さらに流動可能、架橋可能であり、熱発生装置から熱放散部品への熱エネルギーの伝達が可能なことを特徴とするフィルム。(請求項1)」が公開されている。上記フィルムの成分としては、例えば、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルが提案されている(請求項6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】

【文献】特表2008-545869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】

本発明者らは、特許文献1に記載されたフィルムについて検討したところ、熱伝導性について改善の余地があることを知見した。
【0005】

そこで、本発明は、熱伝導性に優れた熱伝導材料を与え得る熱伝導材料形成用組成物を提供することを課題とする。

また、本発明は、上記組成物により形成される、熱伝導材料を提供することをも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】

本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
【0007】

〔1〕

一般式(1)で表される化合物、フェノール化合物、及び、無機物を含む熱伝導材料形成用組成物であって、

上記一般式(1)で表される化合物の含有量が、全有機固形分に対して、30.0質量%以上である、熱伝導材料形成用組成物。

(X-Z-)-A-(-Z-Y) (1)

一般式(1)中、mは、3以上の整数を表す。

nは、0以上の整数を表す。

Xは、エポキシ基を表す。

Yは、水酸基を表す。

及びZは、それぞれ独立に、単結合又は炭素数1~7のアルキレン基を表す。

上記アルキレン基を構成する-CH-の1個以上は、-O-で置き換えられていてもよい。

Aは、m+n価の脂肪族飽和炭化水素基を表す。

上記脂肪族飽和炭化水素基を構成する-CH-の1個以上は、-O-で置き換えられていてもよい。

上記脂肪族飽和炭化水素基を構成する-CH<の1個以上は、-N<で置き換えられていてもよい。

Xが複数存在する場合、複数存在するXは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。

Yが複数存在する場合、複数存在するYは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。

が複数存在する場合、複数存在するZは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。

が複数存在する場合、複数存在するZは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。

〔2〕

が、上記アルキレン基である、〔1〕に記載の熱伝導材料形成用組成物。

〔3〕

上記一般式(1)で表される化合物の含有量が、全有機固形分に対して、40.0質量%以上である、〔1〕又は〔2〕に記載の熱伝導材料形成用組成物。

〔4〕

上記一般式(1)で表される化合物以外には、エポキシ基を有する化合物を実質的に含まない、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の熱伝導材料形成用組成物。

〔5〕

上記フェノール化合物の水酸基含有量が、7.0mmol/g以上である、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の熱伝導材料形成用組成物。

〔6〕

上記無機物が、無機窒化物を含む、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の熱伝導材料形成用組成物。

〔7〕

上記無機窒化物が、窒化ホウ素を含む、〔6〕に記載の熱伝導材料形成用組成物。

〔8〕

上記無機窒化物の含有量が、上記無機物の全質量に対して、50質量%以上である、〔6〕又は〔7〕に記載の熱伝導材料形成用組成物。

〔9〕

更に、硬化促進剤を含む、〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の熱伝導材料形成用組成物。

〔10〕

更に、上記無機窒化物の表面修飾剤を含む、〔6〕~〔8〕のいずれかに記載の熱伝導材料形成用組成物。

〔11〕

〔1〕~〔10〕のいずれかに記載の熱伝導材料形成用組成物を硬化して得られる、熱伝導材料。
【発明の効果】
【0008】

本発明によれば、熱伝導性に優れた熱伝導材料を与え得る熱伝導材料形成用組成物を提供できる。

また、本発明によれば、上記組成物により形成される熱伝導材料を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】

以下、本発明の組成物、熱伝導材料形成用組成物、及び、熱伝導材料について詳細に説明する。

以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされる場合があるが、本発明はそのような実施態様に制限されない。

なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。

また、本明細書において、エポキシ基は、オキシラニル基とも呼ばれる官能基であり、例えば、飽和炭化水素環基の隣接する炭素原子2個がオキソ基(-O-)により結合してオキシラン環を形成している基等もエポキシ基に含む。エポキシ基は、可能な場合、置換基(メチル基等)を有していてもよいし有していなくてもよい。
【0010】

また、本明細書において、「(メタ)アクリロイル基」との記載は、「アクリロイル基及びメタクリロイル基のいずれか一方又は双方」の意味を表す。また、「(メタ)アクリルアミド基」との記載は、「アクリルアミド基及びメタクリルアミド基のいずれか一方又は双方」の意味を表す。
【0011】

本明細書において、酸無水物基は、特段の記載が無い場合、1価の基であってもよく、2価の基であってもよい。なお、酸無水物基が1価の基を表す場合、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水ピロメリット酸、及び、無水トリメリット酸等の酸無水物から任意の水素原子を除いて得られる置換基が挙げられる。また、酸無水物基が2価の基を表す場合、*-CO-O-CO-*で表される基を意図する(*は結合位置を表す)。
【0012】

なお、本明細書において、置換又は無置換を明記していない置換基等については、可能な場合、目的とする効果を損なわない範囲で、その基に更に置換基(例えば、後述する置換基群Y)を有していてもよい。例えば、「アルキル基」という表記は、目的とする効果を損なわない範囲で、置換又は無置換のアルキル基を意味する。

なお、本明細書において「してもよい」又は「でもよい」等の表現は、「してもよい」又は「でもよい」等とされた条件を満たしてもよく、満たさなくてもよいことを意図する。例えば、「置換基を有していてもよい」とは、「置換基を有さなくてもよい」ことをも含む。

また、本明細書において、「置換基を有していてもよい」という場合の置換基の種類、置換基の位置、及び置換基の数は特に制限されない。置換基の数は例えば、1個、又は、2個以上が挙げられる。置換基の例としては水素原子を除く1価の非金属原子団が挙げられ、例えば、以下の置換基群Yから選択できる。

本明細書において、ハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、フッ素原子、臭素原子、及び、ヨウ素原子が挙げられる。
【0013】

置換基群Y:

ハロゲン原子(-F、-Br、-Cl、-I等)、水酸基、アミノ基、カルボン酸基及びその共役塩基基、無水カルボン酸基、シアネートエステル基、不飽和重合性基、エポキシ基、オキセタニル基、アジリジニル基、チオール基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、アルデヒド基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、N-アルキルアミノ基、N,N-ジアルキルアミノ基、N-アリールアミノ基、N,N-ジアリールアミノ基、N-アルキル-N-アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、N-アルキルカルバモイルオキシ基、N-アリールカルバモイルオキシ基、N,N-ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N-ジアリールカルバモイルオキシ基、N-アルキル-N-アリールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N-アルキルアシルアミノ基、N-アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N’-アルキルウレイド基、N’,N’-ジアルキルウレイド基、N’-アリールウレイド基、N’,N’-ジアリールウレイド基、N’-アルキル-N’-アリールウレイド基、N-アルキルウレイド基、N-アリールウレイド基、N’-アルキル-N-アルキルウレイド基、N’-アルキル-N-アリールウレイド基、N’,N’-ジアルキル-N-アルキルウレイド基、N’,N’-ジアルキル-N-アリールウレイド基、N’-アリール-N-アルキルウレイド基、N’-アリール-N-アリールウレイド基、N’,N’-ジアリール-N-アルキルウレイド基、N’,N’-ジアリール-N-アリールウレイド基、N’-アルキル-N’-アリール-N-アルキルウレイド基、N’-アルキル-N’-アリール-N-アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N-アルキル-N-アルコキシカルボニルアミノ基、N-アルキル-N-アリーロキシカルボニルアミノ基、N-アリール-N-アルコキシカルボニルアミノ基、N-アリール-N-アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N-アルキルカルバモイル基、N,N-ジアルキルカルバモイル基、N-アリールカルバモイル基、N,N-ジアリールカルバモイル基、N-アルキル-N-アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(-SOH)及びその共役塩基基、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N-アルキルスルフィナモイル基、N,N-ジアルキルスルフィナモイル基、N-アリールスルフィナモイル基、N,N-ジアリールスルフィナモイル基、N-アルキル-N-アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N-アルキルスルファモイル基、N,N-ジアルキルスルファモイル基、N-アリールスルファモイル基、N,N-ジアリールスルファモイル基、N-アルキル-N-アリールスルファモイル基、N-アシルスルファモイル基及びその共役塩基基、N-アルキルスルホニルスルファモイル基(-SONHSO(alkyl))及びその共役塩基基、N-アリールスルホニルスルファモイル基(-SONHSO(aryl))及びその共役塩基基、N-アルキルスルホニルカルバモイル基(-CONHSO(alkyl))及びその共役塩基基、N-アリールスルホニルカルバモイル基(-CONHSO(aryl))及びその共役塩基基、アルコキシシリル基(-Si(Oalkyl))、アリーロキシシリル基(-Si(Oaryl))、ヒドロキシシリル基(-Si(OH))及びその共役塩基基、ホスホノ基(-PO)及びその共役塩基基、ジアルキルホスホノ基(-PO(alkyl))、ジアリールホスホノ基(-PO(aryl))、アルキルアリールホスホノ基(-PO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスホノ基(-POH(alkyl))及びその共役塩基基、モノアリールホスホノ基(-POH(aryl))及びその共役塩基基、ホスホノオキシ基(-OPO)及びその共役塩基基、ジアルキルホスホノオキシ基(-OPO(alkyl))、ジアリールホスホノオキシ基(-OPO(aryl))、アルキルアリールホスホノオキシ基(-OPO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスホノオキシ基(-OPOH(alkyl))及びその共役塩基基、モノアリールホスホノオキシ基(-OPOH(aryl))及びその共役塩基基、シアノ基、ニトロ基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、及びアルキル基。

また、これらの置換基は、可能であるならば置換基同士、又は置換している基と結合して環を形成してもよいし、していなくてもよい。
【0014】

[組成物]

本発明の熱伝導材料形成用組成物(以下「組成物」とも言う)は、後述する一般式(1)で表される化合物、フェノール化合物、及び、無機物を含む熱伝導材料形成用組成物であって、一般式(1)で表される化合物の含有量が、全有機固形分に対して、30質量%以上である。

本発明の組成物が、上記のような構成で本発明の課題が解決されるメカニズムは必ずしも明らかではないが、本発明者らは以下のように推測している。

すなわち、一般式(1)で表される化合物は、脂肪族飽和炭化水素基を有する放射状形態の化合物である。このような一般式(1)で表される化合物は、熱伝導材料の熱伝導性を向上させるための、フェノール化合物、及び、無機物との共存下においても、組成物全体の粘度を比較的低くしやすく、組成物からの泡抜けも良好となる。そのため、一般式(1)で表される化合物の含有量が、全有機固形分に対して30質量%以上である場合、組成物を硬化した際に硬化物(熱伝導材料)中に、熱伝導性に悪影響を与えるマイクロバブルが残りにくく、得られる熱伝導材料の熱伝導性が改善する。更に、一般式(1)で表される化合物は、エポキシ基を3個以上有しており、熱伝導材料の架橋密度を高めることができる点も、得られる熱伝導材料の熱伝導性に寄与している、と推測している。

また、本発明の組成物を用いて得られる熱伝導材料は、絶縁性及び接着性も良好である。

以下、組成物に含まれる成分について詳述する。
【0015】

〔一般式(1)で表される化合物〕

一般式(1)を下記に示す。

(X-Z-)-A-(-Z-Y) (1)
【0016】

一般式(1)中、mは3以上の整数を表す。

中でも、mは、3~20が好ましく、3~10がより好ましく、3~6が更に好ましい。
【0017】

一般式(1)中、nは、0以上の整数を表す。

中でも、nは、0~5が好ましく、0~1がより好ましく、0が更に好ましい。
【0018】

一般式(1)中、Xは、エポキシ基を表す。

エポキシ基は、可能な場合、1個以上の置換基を有していてもよく、置換基としてはアルキル基が好ましく、炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましく、メチル基が更に好ましい。

エポキシ基は、置換基を有さないのが好ましい。

中でも、Xで表されるエポキシ基は、下記一般式で表されるエポキシ基が好ましい。
【0019】

【化1】
【0020】

上記一般式中、RLH、RLH、及び、RLHは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、水素原子が好ましい。

上記置換基としてはアルキル基が好ましく、炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましく、メチル基が更に好ましい。

上記式中、*は結合位置を表す。
【0021】

一般式(1)中、Z及びZは、それぞれ独立に、単結合又は炭素数1~7のアルキレン基を表す。

上記アルキレン基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、直鎖状が好ましい。

上記アルキレン基は、置換基を有さないのが好ましい。

上記アルキレン基の炭素数は、1~7であり、1~4が好ましく、1~2がより好ましい。

なお、ここで言う炭素数は、上記アルキレン基を構成する-CH-が、次に説明するように、-O-で置き換えられる前の状態における炭素数である。
【0022】

上記アルキレン基を構成する-CH-の1個以上(好ましくは1~4個、より好ましくは1個)は、-O-で置き換えられていてもよい。ただし、-CH-に対して置き換わった-O-が隣接する原子は、炭素原子又は窒素原子であるのが好ましく、炭素原子であるのがより好ましい。

中でも、Zは、上記アルキレン基(-CH-の1個以上が-O-で置き換えられていてもよい上記アルキレン基)であるのが好ましく、「-(CHZN-O-」がより好ましい。「-(CHZN-O-」におけるZNは、1~6の整数を表し、1~3が好ましく、1がより好ましい。「-(CHZN-O-」において、「-(CHZN-」がX側(エポキシ基側)に存在するのが好ましい。

は、単結合が好ましい。
【0023】

Aは、m+n価の脂肪族飽和炭化水素基を表す。

上記脂肪族飽和炭化水素基は、直鎖状でもよく、分岐鎖状でもよく、環状構造を有してもよい。上記脂肪族飽和炭化水素基は、分岐鎖状の環状構造を有さない基であるのが好ましい。

上記脂肪族飽和炭化水素基は、「X-Z-」及び「-Z-Y」以外の置換基を有さないのが好ましい。

上記脂肪族飽和炭化水素基の炭素数は、1~30が好ましく、3~20がより好ましく、2~15が更に好ましい。

なお、ここで言う好ましい炭素数は、上記脂肪族飽和炭化水素基を構成する-CH-及び/又は-CH<が、次に説明するように、-O-及び/又は-N<で置き換えられる前の状態における炭素数である。
【0024】

上記脂肪族飽和炭化水素基を構成する-CH-の1個以上(好ましくは1~10個、より好ましくは1個)は、-O-で置き換えられていてもよい。ただし、-CH-に対して置き換わった-O-が隣接する原子は、炭素原子又は窒素原子であるのが好ましく、炭素原子であるのがより好ましい。

また、脂肪族飽和炭化水素基を構成する-CH<の1個以上(好ましくは1~5個、より好ましくは1個)は、-N<で置き換えられていてもよい。ただし、-CH<に対して置き換わった-N<が隣接する原子は、炭素原子、酸素原子、又は、窒素原子であるのが好ましく、炭素原子であるのがより好ましい。

中でも、Aは、下記一般式で表されるいずれかの基であるのが好ましい。

なお、下記一般式中、*は結合位置を表す。
【0025】

【化2】
【0026】

一般式(1)中、Xが複数存在する場合、複数存在するXは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。Yが複数存在する場合、複数存在するYは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。Zが複数存在する場合、複数存在するZは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。Zが複数存在する場合、複数存在するZは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0027】

一般式(1)で表される化合物のエポキシ基含有量の下限値は、4.0mmol/g以上が好ましく、7.0mmol/g以上がより好ましい。上限値としては、20.0mmol/g以下が好ましく、15.0mmol/g以下がより好ましい。

なお、上記エポキシ基含有量は、エポキシ基を有する化合物1gが有する、エポキシ基の数を意図する。

一般式(1)で表される化合物は、常温(23℃)で、液状であるのが好ましい。
【0028】

本発明の組成物中、一般式(1)で表される化合物の含有量は、全固形分に対して、3.0~30.0質量%が好ましく、6.0~20.0質量%がより好ましく、9.0~17.0質量%が更に好ましい。

本明細書で組成物の固形分とは、組成物が溶媒を含有する場合に、溶媒を除いたすべての成分を意図し、溶媒以外の成分であれば液状成分であっても固形分とみなす。
【0029】

本発明の組成物中、一般式(1)で表される化合物の含有量は、全有機固形分に対して、30.0質量%以上であり、40.0質量%以上がより好ましく、40.0質量%超が更に好ましい。上限としては、70.0質量%以下が好ましく、60.0質量%以下がより好ましい。

なお、本明細書で組成物の有機固形分とは、無機物と溶媒(任意成分)を除いたすべての成分を意図し、無機物及び溶媒以外の成分であれば液状成分であっても有機固形分とみなす。
【0030】

〔無機物〕

組成物は、無機物を含む。

無機物としては、従来から熱伝導材料の無機フィラーに用いられているいずれの無機物を用いてもよい。無機物としては、熱伝導材料の熱伝導性及び絶縁性がより優れる点から、無機窒化物又は無機酸化物を含むのが好ましく、無機窒化物を含むのがより好ましい。
【0031】

無機物の形状は特に制限されず、粒子状であってもよく、フィルム状であってもよく、又は板状であってもよい。粒子状無機物の形状は、米粒状、球形状、立方体状、紡錘形状、鱗片状、凝集状、及び、不定形状が挙げられる。
【0032】

無機酸化物としては、例えば、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化チタン(TiO)、酸化ケイ素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化鉄(Fe、FeO、Fe)、酸化銅(CuO、CuO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化イットリウム(Y)、酸化ニオブ(Nb)、酸化モリブデン(MoO)、酸化インジウム(In、InO)、酸化スズ(SnO)、酸化タンタル(Ta)、酸化タングステン(WO、W)、酸化鉛(PbO、PbO)、酸化ビスマス(Bi)、酸化セリウム(CeO、Ce)、酸化アンチモン(Sb、Sb)、酸化ゲルマニウム(GeO、GeO)、酸化ランタン(La)、及び、酸化ルテニウム(RuO)等が挙げられる。

上記の無機酸化物は、1種のみを使用していてもよいし、2種以上を使用していてもよい。

無機酸化物は、酸化チタン、酸化アルミニウム、又は酸化亜鉛が好ましく、酸化アルミニウムがより好ましい。

無機酸化物は、非酸化物として用意された金属が、環境下等で酸化して生じている酸化物であってもよい。
【0033】

無機窒化物としては、例えば、窒化ホウ素(BN)、窒化炭素(C)、窒化ケイ素(Si)、窒化ガリウム(GaN)、窒化インジウム(InN)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化クロム(CrN)、窒化銅(CuN)、窒化鉄(FeN)、窒化鉄(FeN)、窒化ランタン(LaN)、窒化リチウム(LiN)、窒化マグネシウム(Mg)、窒化モリブデン(MoN)、窒化ニオブ(NbN)、窒化タンタル(TaN)、窒化チタン(TiN)、窒化タングステン(WN)、窒化タングステン(WN)、窒化イットリウム(YN)、及び、窒化ジルコニウム(ZrN)等が挙げられる。

無機窒化物は、アルミニウム原子、ホウ素原子、又は、珪素原子を含むのが好ましく、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、又は、窒化珪素を含むのがより好ましく、窒化アルミニウム又は窒化ホウ素を含むのが更に好ましく、窒化ホウ素を含むのが特に好ましい。

上記の無機窒化物は、1種のみを使用していてもよいし、2種以上を使用していてもよい。
【0034】

無機物の大きさは特に制限されないが、無機物の分散性がより優れる点で、無機物の平均粒径は500μm以下が好ましく、300μm以下がより好ましく、200μm以下が更に好ましい。下限は特に制限されないが、取り扱い性の点で、10nm以上が好ましく、100nm以上がより好ましい。

無機物の平均粒径としては、市販品を用いる場合、カタログ値を採用する。カタログ値が無い場合、上記平均粒径の測定方法としては、電子顕微鏡を用いて、100個の無機物を無作為に選択して、それぞれの無機物の粒径(長径)を測定し、それらを算術平均して求める。
【0035】

無機物は、1種のみを使用していてもよいし、2種以上を使用してもよい。

無機物は、無機窒化物及び無機酸化物の少なくとも一方を含むのが好ましく、無機窒化物を少なくとも含むのがより好ましい。

上記無機窒化物としては、窒化ホウ素及び窒化アルミニウムの少なくとも一方を含むのが好ましく、窒化ホウ素を少なくとも含むのがより好ましい。

無機物中における無機窒化物(好ましくは窒化ホウ素)の含有量は、無機物の全質量に対して10質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましい。上限は、100質量%以下である。

上記無機酸化物としては、酸化アルミニウムが好ましい。

熱伝導材料の熱伝導性がより優れる点で、組成物は、平均粒径が20μm以上(好ましくは、40μm以上)の無機物を少なくとも含むのがより好ましい。
【0036】

組成物中における無機物の含有量は、組成物の全固形分に対して、40~95質量%が好ましく、50~95質量%がより好ましく、60~95質量%が更に好ましい。
【0037】

〔フェノール化合物〕

本発明の組成物は、フェノール化合物を含む。

フェノール化合物は、フェノール性水酸基を1個以上(好ましくは2個以上、より好ましくは3個以上)有する化合物である。

本発明の効果がより優れる点から、フェノール化合物としては、一般式(P1)で表される化合物、及び、一般式(P2)で表される化合物からなる群から選択される1種以上であるのが好ましい。
【0038】

<一般式(P1)で表される化合物>

一般式(P1)を以下に示す。
【0039】

【化3】
【0040】

一般式(P1)中、m1は0以上の整数を表す。

m1は、0~10が好ましく、0~3がより好ましく、0又は1が更に好ましく、1が特に好ましい。
【0041】

一般式(P1)中、na及びncは、それぞれ独立に、1以上の整数を表す。

na及びncは、それぞれ独立に、1~4が好ましい。
【0042】

一般式(P1)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、カルボン酸基、ボロン酸基、アルデヒド基、アルキル基、アルコキシ基、又は、アルコキシカルボニル基を表す。

上記アルキル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。上記アルキル基の炭素数は、1~10が好ましい。上記アルキル基は、置換基を有していても有していなくてもよい。

上記アルコキシ基におけるアルキル基部分、及び、上記アルコキシカルボニル基におけるアルキル基部分は、上記アルキル基と同様である。

及びRは、それぞれ独立に、水素原子又はハロゲン原子が好ましく、水素原子又は塩素原子がより好ましく、水素原子が更に好ましい。
【0043】

一般式(P1)中、Rは、水素原子又は水酸基を表す。

が複数存在する場合、複数存在するRは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。

が複数存在する場合、複数存在するRのうち、少なくとも1個のRが水酸基を表すのも好ましい。
【0044】

一般式(P1)中、Lx1は、単結合、-C(R)(R)-、又は、-CO-を表し、-C(R)(R)-又は-CO-が好ましい。

x2は、単結合、-C(R)(R)-、又は、-CO-を表し、-C(R)(R)-、又は、-CO-が好ましい。

~Rは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。

上記置換基は、それぞれ独立に、水酸基、フェニル基、ハロゲン原子、カルボン酸基、ボロン酸基、アルデヒド基、アルキル基、アルコキシ基、又は、アルコキシカルボニル基が好ましく、水酸基、ハロゲン原子、カルボン酸基、ボロン酸基、アルデヒド基、アルキル基、アルコキシ基、又は、アルコキシカルボニル基がより好ましい。

上記アルキル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。上記アルキル基の炭素数は、1~10が好ましい。上記アルキル基は、置換基を有していても有していなくてもよい。

上記アルコキシ基におけるアルキル基部分、及び、上記アルコキシカルボニル基におけるアルキル基部分は、上記アルキル基と同様である。

上記フェニル基は、置換基を有していても有していなくてもよく、置換基を有する場合は1~3個の水酸基を有するのがより好ましい。

~Rは、それぞれ独立に、水素原子又は水酸基が好ましく、水素原子がより好ましい。

x1及びLx2は、それぞれ独立に、-CH-、-CH(OH)-、-CO-、又は、-CH(Ph)-が好ましい。

上記Phは置換基を有していてもよいフェニル基を表す。

なお、一般式(P1)中に、Rが複数存在する場合、複数存在するRは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。Rが複数存在する場合、複数存在するRは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0045】

一般式(P1)中、Ar及びArは、それぞれ独立に、ベンゼン環基又はナフタレン環基を表す。

Ar及びArは、それぞれ独立に、ベンゼン環基が好ましい。
【0046】

一般式(P1)中、Qは、水素原子、アルキル基、フェニル基、ハロゲン原子、カルボン酸基、ボロン酸基、アルデヒド基、アルコキシ基、又は、アルコキシカルボニル基を表す。

上記アルキル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。上記アルキル基の炭素数は、1~10が好ましい。上記アルキル基は、置換基を有していても有していなくてもよい。

上記アルコキシ基におけるアルキル基部分、及び、上記アルコキシカルボニル基におけるアルキル基部分は、上記アルキル基と同様である。

上記フェニル基は、置換基を有していても有していなくてもよい。

は、Qが結合するベンゼン環基が有してもよい水酸基に対して、パラ位に結合するのが好ましい。

は、水素原子又はアルキル基が好ましい。上記アルキル基はメチル基が好ましい。
【0047】

なお、一般式(P1)中にR、Lx2、及び/又は、Qが複数存在する場合、複数存在するR、Lx2、及び/又は、Qは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0048】

<一般式(P2)で表される化合物>

一般式(P2)を以下に示す。
【0049】

【化4】
【0050】

一般式(P2)中、Cはスピロ原子である炭素原子を表す。

一般式(P2)中、X及びYは、それぞれ独立に、フェノール性水酸基を1個以上有する2価の連結基を表す。

の両末端では、それぞれ同一の炭素原子Cと結合している。Yの両末端では、それぞれ同一の炭素原子Cと結合している。また、Xが両末端で結合する炭素原子Cと、Yが両末端で結合する炭素原子Cとは同一であり、一般式(P2)で表される化合物は、上記炭素原子Cをスピロ原子とするスピロ化合物である。
【0051】

及びYは、それぞれ独立に、一般式(P2L)で表される基であるのが好ましい。

-CRS1S2-LS1-LS2-LS3- (P2L)

なお、Xにおける一般式(P2L)で表される基と、Yにおける一般式(P2L)で表される基とは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0052】

一般式(P2L)中、RS1及びRS2は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。

中でも、RS1及びRS2は、水素原子が好ましい。
【0053】

一般式(P2L)中、LS1は、-CRS3S4-、-O-、又は、-S-を表す。

S3及びRS4は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。

S3及びRS4の置換基としては、それぞれ独立に、アルキル基又はアリール基が好ましい。

上記アルキル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよい。上記アルキル基の炭素数は1~6が好ましい。

上記アリール基としては、単環でも多環でもよい。上記アリール基の炭素数としては、6~15が好ましく、6がより好ましい。上記アリール基が有していてもよい置換基としては、水酸基が挙げられる。

中でも、LS1は、-CRS3S4-が好ましく、-C(CH-がより好ましい。
【0054】

一般式(P2L)中、LS2は、フェノール性水酸基を有する2価の連結基を表す。

S2は、置換基としてフェノール性水酸基を有する芳香環基、又は、-CRS5S6-が好ましい。

上記置換基としてフェノール性水酸基を有する芳香環基における芳香環基は、単環でも多環でもよい。上記芳香環基は、芳香族炭化水素基でも芳香族複素環基でもよい。上記芳香環基の炭素数は、6~15が好ましく、6がより好ましい。

上記芳香環基が置換基として有するフェノール性水酸基の数は、1以上であり、1~5が好ましく、1~2がより好ましい。上記芳香環基は、水酸基(フェノール性水酸基)以外にも置換基(好ましくは炭素数1~3のアルキル基)を有していてもよい。

上記置換基としてフェノール性水酸基を有する芳香環基は、置換基として1個又は2個の水酸基を有するベンゼン環基が好ましく、置換基として1個又は2個の水酸基を有する1,2-ベンゼンジイル基がより好ましい。

-CRS5S6-におけるRS5は、水素原子又は置換基を表す。

-CRS5S6-におけるRS6は、置換基として水酸基を有するアリール基を表す。

上記置換基として水酸基を有するアリール基におけるアリール基としては、単環でも多環でもよい。上記アリール基の炭素数としては、6~15が好ましく、6がより好ましい。

上記置換基として水酸基を有するアリール基における、置換基としての水酸基の数は、1以上であり、1~5が好ましく、1~2がより好ましい。上記置換基として水酸基を有するアリール基におけるアリール基は、水酸基(フェノール性水酸基)以外にも置換基を有していてもよい。

上記置換基として水酸基を有するアリール基は、ヒドロキシフェニル基が好ましく、4-ヒドロキシフェニル基がより好ましい。

中でも、LS2は、置換基としてフェノール性水酸基を有する芳香環基が好ましく、置換基として1個又は2個の水酸基を有するベンゼン環基がより好ましく、置換基として1個又は2個の水酸基を有する1,2-ベンゼンジイル基が更に好ましい。
【0055】

一般式(P2L)中、LS3は、単結合、アルキレン基、-O-、又は、-S-を表す。

上記アルキレン基は直鎖状でも分岐鎖状でもよく、直鎖状が好ましい。

上記アルキレン基の炭素数は1~6が好ましく、1~3がより好ましい。

上記アルキレン基として-C(CH-、又は、-CH-CH-が好ましい。

中でも、LS3は、-O-が好ましい。
【0056】

<フェノール性水酸基を有する一般式(B01)~(B03)のいずれかで表される化合物>

また、フェノール化合物としては、後段で説明する表面修飾剤における一般式(B01)~(B03)のいずれかで表される化合物であって、フェノール性水酸基を1個以上有する化合物(フェノール性水酸基を有する一般式(B01)~(B03)のいずれかで表される化合物)であってもよい。

フェノール化合物として使用される上記化合物は、一般式(B02)又は(B03)で表される化合物であって、特定官能基として水酸基を有する後述する一般式(B2R)で表される基を、2個以上有する化合物であるのが好ましく、3個以上有する化合物であるのがより好ましい。

また、フェノール化合物として使用される上記化合物は、一般式(B02)又は(B03)で表される化合物であって、特定官能基として水酸基のみを有している化合物であるのも好ましい。

一般式(B01)~(B03)の詳細については、後述する。
【0057】

その他にもフェノール化合物としては、例えば、ベンゼントリオールなどのベンゼンポリオール、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂、多価ヒドロキシ化合物とホルムアルデヒドとから合成される多価フェノールノボラック樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトールフェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトールクレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂、ビフェニル変性ナフトール樹脂、アミノトリアジン変性フェノール樹脂、又は、アルコキシ基含有芳香環変性ノボラック樹脂等も好ましい。
【0058】

フェノール化合物の水酸基含有量の下限値は、3.0mmol/g以上が好ましく、7.0mmol/g以上がより好ましい。上限値は、25.0mmol/g以下が好ましく、20.0mmol/g以下がより好ましい。

なお、上記水酸基含有量は、フェノール化合物1gが有する、水酸基(好ましくはフェノール性水酸基)の数を意図する。

また、フェノール化合物は、水酸基以外にも、エポキシ化合物と重合反応できる活性水素含有基(カルボン酸基等)を有していてもよい。フェノール化合物の活性水素の含有量(水酸基及びカルボン酸基等における水素原子の合計含有量)の下限値は、3.0mmol/g以上が好ましく、7.0mmol/g以上がより好ましい。上限値は、25.0mmol/g以下が好ましく、20.0mmol/g以下がより好ましい。

なお、上記活性水素の含有量は、フェノール化合物1gが有する、活性水素原子の数を意図する。
【0059】

フェノール化合物の分子量の上限値は、600以下が好ましく、500以下がより好ましく、450以下が更に好ましく、400以下が特に好ましい。下限値は、110以上が好ましく、300以上がより好ましい。
【0060】

フェノール化合物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を使用してもよい。

本発明の組成物がフェノール化合物を含む場合、フェノール化合物の含有量は、組成物の全固形分に対して、1.0質量%以上が好ましく、3.0~25.0質量%がより好ましく、5.0~20.0質量%が更に好ましい。

なお、本発明の組成物は、フェノール化合物以外の化合物として、エポキシ基と反応可能な基を有する化合物(「その他の活性水素含有化合物」ともいう)を含んでもよい。

本発明の組成物が、フェノール化合物を含み、かつ、その他の活性水素含有化合物を含む場合、本発明の組成物中における、フェノール化合物の含有量に対する、その他の活性水素含有化合物の含有量の質量比(その他の活性水素含有化合物の含有量/フェノール化合物の含有量)は、0~1が好ましく、0~0.1がより好ましく、0~0.05が更に好ましい。
【0061】

〔その他のエポキシ化合物〕

本発明の組成物は、更に、一般式(1)で表される化合物以外のエポキシ化合物(その他のエポキシ化合物)を含んでもよい。

その他のエポキシ化合物は、1分子中に、少なくとも1個のエポキシ基(オキシラニル基)を有する化合物である。エポキシ基は、可能な場合、置換基を有していても有していなくてもよい。

その他のエポキシ化合物が有するエポキシ基の数は、1分子中、2以上が好ましく、2~40がより好ましく、2~10が更に好ましく、2が特に好ましい。

その他のエポキシ化合物の分子量は、150~10000が好ましく、150~2000がより好ましく、250~400が更に好ましい。
【0062】

その他のエポキシ化合物のエポキシ基含有量の下限値は、2.0mmol/g以上が好ましく、4.0mmol/g以上がより好ましく、5.0mmol/g以上が更に好ましい。上限値としては、20.0mmol/g以下が好ましく、15.0mmol/g以下がより好ましく、10.0mmol/g以下が更に好ましい。

なお、上記エポキシ基含有量は、エポキシ化合物1gが有する、エポキシ基の数を意図する。
【0063】

その他のエポキシ化合物は、液晶性を示してもよく示さなくてもよい。

つまり、その他のエポキシ化合物は、液晶化合物であってよい。言い換えれば、エポキシ基を有する液晶化合物もその他のエポキシ化合物として使用できる。

その他のエポキシ化合物(液晶性のその他のエポキシ化合物であってもよい)としては、例えば、少なくとも部分的に棒状構造を含む化合物(棒状化合物)、及び、少なくとも部分的に円盤状構造を含む化合物円盤状化合物が挙げられる。

中でも、得られる熱伝導材料の熱伝導性がより優れる点から棒状化合物が好ましい。

以下、棒状化合物及び円盤状化合物について詳述する。
【0064】

(棒状化合物)

棒状化合物であるその他のエポキシ化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類、及び、アルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が挙げられる。以上のような低分子化合物だけではなく、高分子化合物も使用できる。上記高分子化合物は、低分子の反応性基を有する棒状化合物が重合した高分子化合物である。

好ましい棒状化合物としては、下記一般式(E1)で表される棒状化合物が挙げられる。
【0065】

中でも、棒状化合物は、一般式(E1)で表される化合物であるのが好ましい。
【0066】

【化5】
【0067】

一般式(E1)中、LE1は、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表す。

中でも、LE1は、2価の連結基が好ましい。

2価の連結基は、-O-、-S-、-CO-、-NH-、-CH=CH-、-C≡C-、-CH=N-、-N=CH-、-N=N-、置換意を有していてもよいアルキレン基、又は、これらの2以上の組み合わせからなる基が好ましく、-O-アルキレン基-又は-アルキレン基-O-がより好ましい。

なお上記アルキレン基は、直鎖状、分岐鎖状、及び、環状のいずれでもよいが、炭素数1~2の直鎖状アルキレン基が好ましい。

複数存在するLE1は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0068】

一般式(E1)中、LE2は、それぞれ独立に、単結合、-CH=CH-、-CO-O-、-O-CO-、-C(-CH)=CH-、-CH=C(-CH)-、-CH=N-、-N=CH-、-N=N-、-C≡C-、-N=N(-O)-、-N(-O)=N-、-CH=N(-O)-、-N(-O)=CH-、-CH=CH-CO-、-CO-CH=CH-、-CH=C(-CN)-、又は、-C(-CN)=CH-を表す。

中でも、LE2は、それぞれ独立に、単結合、-CO-O-、又は、-O-CO-が好ましい。

E2が複数存在する場合、複数存在するLE2は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0069】

一般式(E1)中、LE3は、それぞれ独立に、単結合、又は、置換基を有していてもよい、5員環若しくは6員環の芳香族環基又は5員環若しくは6員環の非芳香族環基、又は、これらの環からなる多環基を表す。

E3で表される芳香族環基及び非芳香族環基の例としては、置換基を有していてもよい、1,4-シクロヘキサンジイル基、1,4-シクロヘキセンジイル基、1,4-フェニレン基、ピリミジン-2,5-ジイル基、ピリジン-2,5-ジイル基、1,3,4-チアジアゾール-2,5-ジイル基、1,3,4-オキサジアゾール-2,5-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、ナフタレン-1,5-ジイル基、チオフェン-2,5-ジイル基、及び、ピリダジン-3,6-ジイル基が挙げられる。1,4-シクロヘキサンジイル基の場合、トランス体及びシス体の構造異性体のどちらの異性体であってもよく、任意の割合の混合物でもよい。中でも、トランス体であるのが好ましい。

中でも、LE3は、単結合、1,4-フェニレン基、又は、1,4-シクロヘキセンジイル基が好ましい。

E3で表される基が有する置換基は、それぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、又は、アセチル基が好ましく、アルキル基(好ましくは炭素数1)がより好ましい。

なお、置換基が複数存在する場合、置換基は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。

E3が複数存在する場合、複数存在するLE3は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0070】

一般式(E1)中、peは、0以上の整数を表す。

peが2以上の整数である場合、複数存在する(-LE3-LE2-)は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。

中でも、peは、0~2が好ましく、0又は1がより好ましく、0が更に好ましい。
【0071】

一般式(E1)中、LE4は、それぞれ独立に、置換基を表す。

置換基は、それぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、又は、アセチル基が好ましく、アルキル基(好ましくは炭素数1)がより好ましい。

複数存在するLE4は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。また、次に説明するleが2以上の整数である場合、同一の(LE4le中に複数存在するLE4も、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0072】

一般式(E1)中、leは、それぞれ独立に、0~4の整数を表す。

中でも、leは、それぞれ独立に、0~2が好ましい。

複数存在するleは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0073】

棒状化合物は、ビフェニル骨格を有するのが好ましい。
【0074】

(円盤状化合物)

円盤状化合物であるエポキシ化合物は、少なくとも部分的に円盤状構造を有する。

円盤状構造は、少なくとも、脂環又は芳香族環を有する。特に、円盤状構造が、芳香族環を有する場合、円盤状化合物は、分子間のπ-π相互作用によるスタッキング構造の形成により柱状構造を形成しうる。

円盤状構造として、具体的には、Angew.Chem.Int. Ed. 2012, 51, 7990-7993又は特開平7-306317号公報に記載のトリフェニレン構造、並びに、特開2007-2220号公報及び特開2010-244038号公報に記載の3置換ベンゼン構造等が挙げられる。
【0075】

上記円盤状化合物は、エポキシ基を3個以上有するのが好ましい。3個以上のエポキシ基を有する円盤状化合物を含むエポキシ化合物の硬化物はガラス転移温度が高く、耐熱性が高い傾向がある。

円盤状化合物が有するエポキシ基の数は、8以下が好ましく、6以下より好ましい。
【0076】

円盤状化合物の具体例としては、C. Destrade et al., Mol. Crysr. Liq. Cryst., vol. 71, page 111 (1981) ;日本化学会編、季刊化学総説、No.22、液晶の化学、第5章、第10章第2節(1994);B. Kohne et al., Angew. Chem. Soc. Chem. Comm., page 1794 (1985);J. Zhang et al., J. Am. Chem. Soc., vol. 116, page 2655 (1994)、及び特許第4592225号に記載されている化合物等において末端の少なくとも1個(好ましくは3個以上)をエポキシ基とした化合物が挙げられる。

円盤状化合物としては、Angew.Chem.Int. Ed. 2012, 51, 7990-7993、及び特開平7-306317号公報に記載のトリフェニレン構造、並びに特開2007-2220号公報、及び、特開2010-244038号公報に記載の3置換ベンゼン構造において末端の少なくとも1個(好ましくは3個以上)をエポキシ基とした化合物等が挙げられる。
【0077】

上述のエポキシ化合物以外の、その他のエポキシ化合物としては、例えば、一般式(BN)で表されるエポキシ化合物が挙げられる。
【0078】

【化6】
【0079】

一般式(DN)中、nDNは、0以上の整数を表し、0~5が好ましく、1がより好ましい。

DNは、単結合又は2価の連結基を表す。2価の連結基としては、-O-、-O-CO-、-CO-O-、-S-、アルキレン基(炭素数は、1~10が好ましい。)、アリーレン基(炭素数は、6~20が好ましい。)、又は、これらの組み合わせからなる基が好ましく、アルキレン基がより好ましく、メチレン基がより好ましい。
【0080】

その他のエポキシ化合物としては、他にも、例えば、ビスフェノールA、F、S、AD等のグリシジルエーテルであるビスフェノールA型エポキシ化合物(上述の一般式(E1)において、「pe=0」かつ「LE2を-C(CH-」とした化合物等)、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、ビスフェノールAD型エポキシ化合物等;水素添加したビスフェノールA型エポキシ化合物、水素添加したビスフェノールAD型エポキシ化合物等;フェノールノボラック型のグリシジルエーテル(フェノールノボラック型エポキシ化合物)、クレゾールノボラック型のグリシジルエーテル(クレゾールノボラック型エポキシ化合物)、ビスフェノールAノボラック型のグリシジルエーテル等;ジシクロペンタジエン型のグリシジルエーテル(ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物);ジヒドロキシペンタジエン型のグリシジルエーテル(ジヒドロキシペンタジエン型エポキシ化合物);ポリヒドロキシベンゼン型のグリシジルエーテル(ポリヒドロキシベンゼン型エポキシ化合物);ベンゼンポリカルボン酸型のグリシジルエステル(ベンゼンポリカルボン酸型エポキシ化合物);3,4:8,9-ジエポキシビシクロ[4.3.0]ノナン等の脂環式エポキシ化合物、及び、トリスフェノールメタン型エポキシ化合物が挙げられる。

なお、その他のエポキシ化合物は、後段で説明する無機窒化物用表面修飾剤における一般式(B01)~(B03)のいずれかで表される化合物であって、エポキシ基を1個以上有する化合物(エポキシ基を有する一般式(B01)~(B03)のいずれかで表される化合物)とは異なるのが好ましい。
【0081】

その他のエポキシ化合物の含有量は、組成物の全固形分に対して、20質量%以下が好ましく、10質量%以下が好ましく、5質量%以下が更に好ましく、実質的に含まないのが特に好ましい。ここで、その他のエポキシ化合物が実質的に含まれないとは、その他のエポキシ化合物の含有量が、組成物の全固形分に対して、0.5質量%以下であることを意味する。

また、その他のエポキシ化合物の含有量は、一般式(1)で表される化合物とその他のエポキシ化合物との合計含有量に対して、0~60質量%が好ましく、0質量%以上5質量%未満がより好ましい。熱伝導材料形成用組成物は、エポキシ化合物を含み、エポキシ化合物は一般式(1)で表される化合物からなることが好ましい。
【0082】

〔表面修飾剤〕

本発明の組成物は、熱伝導材料の熱伝導性がより優れる点から、更に表面修飾剤を含んでいてもよい。

表面修飾剤は、上述の無機物(例えば無機窒化物及び/又は無機酸化物)を表面修飾する成分である。

本明細書において、「表面修飾」とは無機物の表面の少なくとも一部に有機物が吸着している状態を意味する。吸着の形態は特に限定されず、結合している状態であればよい。すなわち、表面修飾は、有機物の一部が脱離して得られる有機基が無機物表面に結合している状態も含む。結合は、共有結合、配位結合、イオン結合、水素結合、ファンデルワールス結合、及び、金属結合等、いずれの結合であってもよい。表面修飾は、表面の少なくとも一部に単分子膜を形成するようになされていてもよい。単分子膜は、有機分子の化学吸着によって形成される単層膜であり、Self-AssembledMonoLayer(SAM)として知られている。なお、本明細書において、表面修飾は、無機物の表面の一部のみであっても、全体であってもよい。本明細書において、「表面修飾無機物」は、表面修飾剤により表面修飾されている無機物、すなわち無機物の表面に有機物が吸着している物質を意味する。

表面修飾剤は、無機窒化物の表面修飾剤(無機窒化物用表面修飾剤)でもよいし、無機酸化物の表面修飾剤(無機酸化物用表面修飾剤)でもよい。

つまり、本発明の組成物において、無機物は、表面修飾剤と共同して、表面修飾無機物(好ましくは表面修飾無機窒化物及び/又は表面修飾無機酸化物)を構成していてもよい。
【0083】

表面修飾剤としては、長鎖アルキル脂肪酸等のカルボン酸、有機ホスホン酸、有機リン酸エステル、有機シラン分子(シランカップリング剤)等従来公知の表面修飾剤を使用できる。その他、例えば、特開2009-502529号公報、特開2001-192500号公報、特許4694929号に記載の表面修飾剤を利用してもよい。
【0084】

また、(好ましくは、無機物が無機窒化物(窒化ホウ素及び/又は窒化アルミニウム等)を含む場合において、)組成物は、表面修飾剤として縮環骨格(好ましくは芳香族環同士が縮環した縮環骨格)を含む化合物又はトリアジン骨格を有する化合物を含むのが好ましい。

つまりこれらの化合物は、無機窒化物用表面修飾剤として使用されるのが好ましい。
【0085】

なお、後述の通り、表面修飾剤はフェノール性水酸基を有する表面修飾剤(例えば、フェノール性水酸基を有する表面修飾剤A、又は、フェノール性水酸基を有する表面修飾剤B(フェノール性水酸基を有する一般式(B01)~(B03)のいずれかで表される化合物))であってもよい。

ただし、上記フェノール性水酸基を有する表面修飾剤は、上述のフェノール化合物とは異なる化合物であるのが好ましい。

また、組成物が上記フェノール性水酸基を有する表面修飾剤を含む場合、上記フェノール性水酸基を有する表面修飾剤の含有量は、組成物の全固形分に対して、1.0質量%未満が好ましく、0.5質量%未満がより好ましい。下限としては、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましい。
【0086】

また、表面修飾剤がフェノール性水酸基を有する表面修飾剤である場合、上記表面修飾剤が有するフェノール性水酸基の数は1~10が好ましく、1~3がより好ましく、1~2が更に好ましい。
【0087】

<表面修飾剤A>

表面修飾剤(好ましくは無機窒化物用表面修飾剤)としては、例えば、以下に説明する表面修飾剤Aが好ましい。なお、表面修飾剤Aは、縮環骨格を有する表面修飾剤である。

表面修飾剤Aは、下記条件1及び条件2を満たす。

・条件1:以下に示す官能基群Pから選ばれる官能基(以下「特定官能基A」ともいう)を有する。
【0088】

(官能基群P)

ボロン酸基(-B(OH))、アルデヒド基(-CHO)、イソシアネート基(-N=C=O)、イソチオシアネート基(-N=C=S)、シアネート基(-O-CN)、アシルアジド基、コハク酸イミド基、スルホニルクロリド基(-SOCl)、カルボン酸クロリド基(-COCl)、オニウム基、カーボネート基(-O-CO-O-)、アリールハライド基、カルボジイミド基(-N=C=N-)、酸無水物基(-CO-O-CO-、又は、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水ピロメリット酸、及び無水トリメリット酸等の1価の酸無水物基)、カルボン酸基(-COOH)、ホスホン酸基(-PO(OH))、ホスフィン酸基(-HPO(OH))、リン酸基(-OP(=O)(OH))、リン酸エステル基(-OP(=O)(OR)、スルホン酸基(-SOH)、ハロゲン化アルキル基、ニトリル基(-CN)、ニトロ基(-NO)、エステル基(-CO-O-又は-O-CO-)、カルボニル基(-CO-)、イミドエステル基(-C(=NR)-O-又は-O-C(=NR)-)、アルコキシシリル基、アクリル基(-OCOCH=CH)、メタクリル基(-OCOCH(CH)=CH)、オキセタニル基、ビニル基(-CH=CH)、アルキニル基(アルキンから水素原子を一つ除いた基。例えば、エチニル基、及びプロパ-2-イン-1-イル基等が含まれる。)、マレイミド基、チオール基(-SH)、水酸基(-OH)、ハロゲン原子(F原子、Cl原子、Br原子、及びI原子)、及びアミノ基からなる群より選ばれる官能基。
【0089】

上記アシルアジド基は、下記構造により表される基を意図する。なお、式中の*は結合位置を表す。アシルアジド基のカウンターアニオン(Z)は特に限定されず、例えばハロゲンイオンが挙げられる。
【0090】

【化7】
【0091】

上記コハク酸イミド基、オキセタニル基、及びマレイミド基は、それぞれ下記式より表される化合物から、任意の位置の水素原子を一つ除いて形成される基を表す。
【0092】

【化8】
【0093】

また、上記オニウム基とは、オニウム塩構造を有する基を意味する。オニウム塩とは、化学結合に関与しない電子対を有する化合物が、その電子対によって、他の陽イオン形の化合物と配位結合して生ずる化合物である。通常、オニウム塩は、カチオンとアニオンとを含む。

オニウム塩構造としては特に限定されないが、例えば、アンモニウム塩構造、ピリジニウム塩構造、イミダゾリウム塩構造、ピロリジニウム塩構造、ピペリジニウム塩構造、トリエチレンジアミン塩構造、ホスホニウム塩構造、スルホニウム塩構造、及びチオピリリウム塩構造等が挙げられる。なお、カウンターとなるアニオンの種類は特に限定されず、公知のアニオンが用いられる。アニオンの価数も特に限定されず、例えば、1~3価が挙げられ、1~2価が好ましい。

オニウム基としては、中でも、下記一般式(A1)で表されるアンモニウム塩構造を有する基が好ましい。
【0094】

【化9】
【0095】

一般式(A1)中、R1A~R3Aは、それぞれ独立して、水素原子又はアルキル基(直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれも含む。)を表す。アルキル基中の炭素数は、例えば1~10であり、1~6が好ましく、1~3がより好ましい。Mは、アニオンを表す。

*は、結合位置を表す。なお、アルキル基は、更に置換基(例えば、置換基群Y)を有していてもよい。
【0096】

上記アリールハライド基としては、芳香環基にハロゲン原子が1個以上置換した基であれば特に限定されない。上記芳香環基としては、単環構造及び多環構造のいずれであってもよいが、フェニル基が好ましい。また、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子が好ましい。なお、アリールハライド基は、更に置換基(例えば、置換基群Y)を有していてもよい。
【0097】

アリールハライド基としては、具体的には、フルオロフェニル基、パーフルオロフェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、及びヨードフェニル基等が挙げられる。
【0098】

上記リン酸エステル基としては、-OP(=O)(ORで表される基であれば特に限定されない。上記Rとしては、水素原子又は1価の有機基が挙げられる。ただし、Rのいずれか1つ以上は1価の有機基を表す。1価の有機基としては、例えば、アルキル基(直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれも含む。)及びアリール基が挙げられる。アルキル基中の炭素数は、例えば1~10であり、1~6が好ましく、1~3がより好ましい。なお、アルキル基は、更に置換基(例えば、置換基群Y)を有していてもよい。また、アリール基としては、特に限定されないが、例えばフェニル基、及びピレニル基等が挙げられる。
【0099】

上記ハロゲン化アルキル基としては特に限定されないが、例えば、炭素数1~10のアルキル基にハロゲン原子が1個以上置換した基が挙げられる。上記アルキル基(直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれも含む。)の炭素数は、1~6が好ましく、1~3がより好ましい。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子、塩素原子、又は臭素原子が好ましい。なお、ハロゲン化アルキル基は、更に置換基(例えば、置換基群Y)を有していてもよい。
【0100】

上記イミドエステル基としては、-C(=NR)-O-又は-O-C(=NR)-で表される基であれば特に限定されない。上記Rとしては、例えば、水素原子及びアルキル基(直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれも含む。)が挙げられる。アルキル基中の炭素数は、例えば1~10であり、1~6が好ましく、1~3がより好ましい。なお、アルキル基は、更に置換基(例えば、置換基群Y)を有していてもよい。

なお、イミドエステル基は、イミン窒素の化学結合に関与しない電子対が他の陽イオン(例えば、水素イオン)と配位結合してオニウム塩構造となっていてもよい。
【0101】

上記アルコキシシリル基としては特に限定されないが、例えば、下記一般式(A2)で表される基が挙げられる。
【0102】

一般式(A2): *-Si(OR

一般式(A2)中、Rは、それぞれ独立して、アルキル基(直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれも含む。)を表す。*は、結合位置を表す。

で表されるアルキル基としては、例えば、炭素数1~10のアルキル基が挙げられ、炭素数1~6が好ましく、炭素数1~3がより好ましい。

具体的には、トリメチトキシシリル基及びトリエトキシシリル基等が挙げられる。

なお、アルキル基は、更に置換基(例えば、置換基群Y)を有していてもよい。
【0103】

上記アミノ基としては特に限定されず、1級、2級、及び3級のいずれであってもよい。具体的には、-N(R(Rは、それぞれ独立して、水素原子、又はアルキル基(直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれも含む。))が挙げられる。アルキル基中の炭素数は、例えば1~10であり、1~6が好ましく、1~3がより好ましい。なお、アルキル基は、更に置換基(例えば、置換基群Y)を有していてもよい。
【0104】

表面修飾剤A中、上記特定官能基Aの数は1以上であれば特に限定されない。また、その上限は特に限定されないが、15以下が好ましい。中でも、表面修飾無機物(好ましくは表面修飾無機窒化物)の分散性により優れる点で、1~8が好ましく、1~3がより好ましく、1又は2が更に好ましい。
【0105】

・条件2:芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群より選ばれる2環以上を含む縮環構造を有する。
【0106】

上記芳香族炭化水素環としては特に限定されないが、例えば、5員以上の単環式芳香族炭化水素環が挙げられる。環員数の上限は特に制限されないが、10員以下の場合が多い。芳香族炭化水素環としては、5員又は6員の単環式芳香族炭化水素環が好ましい。

芳香族炭化水素環としては、例えば、シクロペンタジエニル環及びベンゼン環等が挙げられる。
【0107】

上記芳香族複素環としては特に限定されないが、例えば、5員以上の単環式芳香族炭化水素環が挙げられる。環員数の上限は特に制限されないが、10員以下の場合が多い。芳香族複素環としては、例えば、5員又は6員の単環式芳香族複素環が好ましい。

芳香族複素環としては、例えば、チオフェン環、チアゾール環、イミダゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、及び、トリアジン環が挙げられる。
【0108】

上記縮合構造としては、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群より選ばれる2環以上を含む縮環構造であれば特に限定されないが、本発明の効果により優れる点で、中でも、芳香族炭化水素環を2環以上含む縮環構造が好ましく、ベンゼン環を2環以上含む縮環構造がより好ましく、ベンゼン環を3環以上含む縮環構造が更に好ましい。なお、上記縮合構造中に含まれる芳香族炭化水素環及び芳香族複素環の個数の上限は特に制限されないが、例えば、10個以下の場合が多い。

芳香族炭化水素環を2環以上含む縮環構造としては、具体的に、ビフェニレン、インダセン、アセナフチレン、フルオレン、フェナレン、フェナントレン、アントラセン、フルオランテン、アセフェナンスリレン、アセアンスリレン、ピレン、クリセン、テトラセン、プレイアデン、ピセン、ペリレン、ペンタフェン、ペンタセン、テトラフェニレン、ヘキサフェン、及びトリフェニレンからなる群より選ばれる縮合環からなる縮合構造が好ましく、本発明の効果により優れる点で、上記のうち、ベンゼン環を2環以上含む縮合環からなる縮合構造がより好ましく、ベンゼン環を3環以上含む縮合環からなる縮合構造が更に好ましく、ピレン又はペリレンからなる縮合構造が特に好ましい。
【0109】

上記表面修飾剤Aは、分散性がより向上する点で、一般式(V1)で表される化合物であるのが好ましく、一般式(V2)で表される化合物であるのがより好ましい。

以下、一般式(V1)で表される化合物及び一般式(V2)で表される化合物についてそれぞれ説明する。

(一般式(V1)で表される化合物)
【0110】

【化10】
【0111】

一般式(V1)中、Xは、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群より選ばれる2環以上を含む縮環構造を有するn価の有機基を表す。
【0112】

上記Xは、n価の有機基(nは1以上の整数)を表す。nは、1以上の整数であれば特に限定されない。また、その上限は特に限定されないが、15以下の整数であるのが好ましい。中でも、表面修飾無機物(好ましくは表面修飾無機窒化物)の分散性により優れる点で、1~8が好ましく、1~3がより好ましく、1又は2が更に好ましい。
【0113】

上記X中における芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群より選ばれる2環以上を含む縮環構造としては、上述した構造が挙げられ、また好ましい態様も同じである。
【0114】

上記Xで表されるn価の有機基としては、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群より選ばれる2環以上を含む縮環構造を有しさえすれば特に限定されないが、本発明の効果がより優れる点で、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群より選ばれる2環以上を含む縮合環からn個の水素原子を引き抜いて形成される基であるのが好ましい。

なお、上記縮合構造は、特定官能基A以外に、更に置換基(例えば、置換基群Y)を有していてもよい。
【0115】

上記Yは、下記一般式(B1)で表される1価の基、下記一般式(B2)で表される1価の基、若しくは下記一般式(B4)で表される1価の基を表すか、又は、nが2以上の整数を表す場合には、複数のYが結合してなる下記一般式(B3)で表される2価の基を表す。

言い換えると、nが1である場合には、上記Yは、下記一般式(B1)で表される1価の基、下記一般式(B2)で表される1価の基、又は下記一般式(B4)で表される1価の基を表す。

nが2以上の整数を表す場合には、上記Yは、下記一般式(B1)で表される1価の基、下記一般式(B2)で表される1価の基、若しくは下記一般式(B4)で表される1価の基を表すか、又は、複数のYが結合してなる下記一般式(B3)で表される2価の基を表す。なお、nが2以上の場合、複数あるYはそれぞれ同じでも、異なっていてもよい。

なお、Yが、下記一般式(B3)で表される2価の基を表す場合、一般式(V1)で表される化合物は、下記一般式(V3)で表される。
【0116】

【化11】
【0117】

一般式(V3)中、Xは、上述した一般式(V1)中のXと同義である。また、Lは、後述する一般式(B3)中のLと同義である。
【0118】

一般式(B1):*-L-P

一般式(B1)中、Lは、単結合又は2価の連結基を表す。

2価の連結基としては特に限定されないが、例えば、-O-、-S-、-NR-(Rは、水素原子、又はアルキル基を表す。)、2価の炭化水素基(例えば、アルキレン基、アルケニレン基(例:-CH=CH-)、アルキニレン基(例:-C≡C-)、及びアリーレン基)、上述した官能基群P中の2価の有機基(カーボネート基(-O-CO-O-)、カルボジイミド基(-N=C=N-)、酸無水物基(-CO-O-CO-)、エステル基(-CO-O-又は-O-CO-)、カルボニル基(-CO-)、イミドエステル基(-C(=NR)-O-又は-O-C(=NR)-))、又は、これらを組み合わせた基が挙げられる。

上記組み合わせた基としては、例えば、-(2価の炭化水素基)-X111-、-X111-(2価の炭化水素基)-、-(2価の炭化水素基)-X111-(2価の炭化水素基)-、-X111-(2価の炭化水素基)-X111-(2価の炭化水素基)-、又は、-(2価の炭化水素基)-X111-(2価の炭化水素基)-X111-等が挙げられる。なお、-X111-は、-O-、-S-、-NR-、上述した官能基群P中の2価の有機基、又は、これらを組み合わせた基である。上記組み合わせた基の総炭素数は、例えば、1~20であり、1~12が好ましい。
【0119】

上記Pは、上述した官能基群P中の1価の有機基(ボロン酸基(-B(OH))、アルデヒド基(-CHO)、イソシアネート基(-N=C=O)、イソチオシアネート基(-N=C=S)、シアネート基(-O-CN)、アシルアジド基、コハク酸イミド基、スルホニルクロリド基(-SOCl)、カルボン酸クロリド基(-COCl)、オニウム基、アリールハライド基、酸無水物基(無水マレイン酸、無水フタル酸、無水ピロメリット酸、及び、無水トリメリット酸等の1価の酸無水物基が挙げられる。)、カルボン酸基(-COOH)、ホスホン酸基(-PO(OH))、ホスフィン酸基(-HPO(OH))、リン酸基(-OP(=O)(OH))、リン酸エステル基(-OP(=O)(OR)、スルホン酸基(-SOH)、ハロゲン化アルキル基、ニトリル基(-CN)、ニトロ基(-NO)、アルコキシシリル基、アクリル基(-OCOCH=CH)、メタクリル基(-OCOCH(CH)=CH)、オキセタニル基、ビニル基(-CH=CH)、アルキニル基(アルキンから水素原子を一つ除いた基。例えば、エチニル基、及びプロパ-2-イン-1-イル基等が含まれる。)、マレイミド基、チオール基(-SH)、水酸基(-OH)、ハロゲン原子(F原子、Cl原子、Br原子、及びI原子))を表す。

は、上記Xとの結合位置を表す。
【0120】

一般式(B2):*-L-P

一般式(B2)中、Lは、上述した官能基群P中の2価の有機基(カーボネート基(-O-CO-O-)、カルボジイミド基(-N=C=N-)、酸無水物基(-CO-O-CO-)、エステル基(-CO-O-又は-O-CO-)、カルボニル基(-CO-)、又はイミドエステル基(-C(=NR)-O-又は-O-C(=NR)-))を含む2価の連結基を表す。

上記Lとしては、例えば、上述した官能基群P中の2価の有機基、又は、上述した官能基群P中の2価の有機基と、-O-、-S-、-NR-(Rは、水素原子、又はアルキル基を表す。)、及び2価の炭化水素基(例えば、アルキレン基、アルケニレン基(例:-CH=CH-)、アルキニレン基(例:-C≡C-)、及びアリーレン基)からなる群より選ばれる連結基と、を組み合わせた基が挙げられる。

上記組み合わせた基としては、例えば、-(2価の炭化水素基)-X112-等が挙げられる。なお、-X112-は、上述した官能基群P中の2価の有機基、又は、上述した官能基群P中の2価の有機基と、-O-、-S-、及び-NR-から選ばれる2価の基とを組み合わせた基である。上記組み合わせた基の総炭素数は、例えば、1~20であり、1~12が好ましい。
【0121】

上記Pは、1価の有機基を表す。上記Pで表される1価の有機基としては、特に限定されず、例えば、アルキル基が挙げられる。アルキル基中の炭素数は、例えば1~10であり、1~6が好ましく、1~3がより好ましい。

は、上記Xとの結合位置を表す。
【0122】

一般式(B3):*31-L-*32

一般式(B3)中、Lは、上述した官能基群P中の2価の有機基(カーボネート基(-O-CO-O-)、カルボジイミド基(-N=C=N-)、酸無水物基(-CO-O-CO-)、エステル基(-CO-O-又は-O-CO-)、カルボニル基(-CO-)、又はイミドエステル基(-C(=NR)-O-又は-O-C(=NR)-))を含む2価の連結基を表す。

上記Lとしては、例えば、上述した官能基群P中の2価の有機基、又は、上述した官能基群P中の2価の有機基と、-O-、-S-、-NR-(Rは、水素原子、又はアルキル基を表す。)、及び2価の炭化水素基(例えば、アルキレン基、アルケニレン基(例:-CH=CH-)、アルキニレン基(例:-C≡C-)、及びアリーレン基)からなる群より選ばれる連結基と、を組み合わせた基が挙げられる。

上記組み合わせた基としては、例えば、-(2価の炭化水素基)-X113-(2価の炭化水素基)-、-(2価の炭化水素基)-X113-、-X113-(2価の炭化水素基)-、及び-X113-(2価の炭化水素基)-X113-等が挙げられる。なお、-X113-は、上述した官能基群P中の2価の有機基、又は、上述した官能基群P中の2価の有機基と、-O-、-S-、及び-NR-から選ばれる2価の基とを組み合わせた基である。上記組み合わせた基の総炭素数は、例えば、1~20であり、1~12が好ましい。

31及び*32は、上記Xとの結合位置を表す。つまり、上記Lは、上記Xで表される縮環構造上の異なる2つの炭素とともに環を形成する。
【0123】

一般式(B4):

【化12】
【0124】

一般式(B4)中、Lは、m11+1価の連結基を表す。

11は2以上の整数を表す。m11の上限値としては特に制限されないが、例えば、100以下であり、30以下が好ましく、20以下がより好ましく、15以下が更に好ましい。m11の下限値としては特に制限されないが、4以上が好ましい。

で表される連結基としては特に制限されないが、例えば、m11+1価の芳香族炭化水素環又は下記一般式(M1)で表される基が挙げられる。
【0125】

【化13】
【0126】

上記一般式(M1)中、X221及びX222は、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表す。X221及びX222で表される2価の連結基としては、上述した一般式(B1)中のLで表される2価の連結基と同義である。

221は、置換基を表す。E221で表される置換基としては、置換基群Yで例示された基が挙げられる。

221は、2~5の整数を表す。m221としては、中でも2又は3が好ましい。

222は、0~3の整数を表す。

但し、m221+m222は、2~5の整数を表す。

41は、上記Xとの結合位置を表す。

42は、上記Pとの結合位置を表す。
【0127】

上記一般式(M1)で表される基は、中でも、下記一般式(M2)で表される基が好ましい。
【0128】

【化14】
【0129】

上記一般式(M2)中、X223、X224、及びX225は、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表す。X223、X224、及びX225で表される2価の連結基としては、上述した一般式(B1)中のLで表される2価の連結基と同義である。

222及びE223は、それぞれ独立に、置換基を表す。E222及びE223で表される置換基としては、置換基群Yで例示された基が挙げられる。

223は、1~5の整数を表す。m223としては、中でも2又は3が好ましい。

224は、0~3の整数を表す。

225は、0~4整数を表す。

226は、2~5の整数を表す。m226としては、中でも2又は3が好ましい。

但し、m224+m226は、2~5の整数を表す。また、m223+m225は、1~5の整数を表す。

41は、上記Xとの結合位置を表す。

42は、上記Pとの結合位置を表す。
【0130】

上記Pは、上述した一般式(B1)中のPと同義である。

は、上記Xとの結合位置を表す。
【0131】

(一般式(V2)で表される化合物)

【化15】
【0132】

一般式(V2)中、X11は、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群より選ばれる2環以上を含む縮環構造を有するn11+n12価の有機基を表す。

上記X11は、n11+n12価の有機基(n11、n12は、それぞれ独立して1以上の整数)を表す。n11、n12は、それぞれ独立して、1以上の整数であれば特に限定されない。また、n11+n12の上限は特に限定されないが、15以下の整数であるのが好ましい。中でも、表面修飾無機物の分散性により優れる点で、2~8が好ましく、2~3がより好ましく、2が更に好ましい。
【0133】

上記X11中における芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群より選ばれる2環以上を含む縮環構造としては、上述した構造が挙げられ、また好ましい態様も同じである。
【0134】

上記X11で表されるn11+n12価の有機基としては、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群より選ばれる2環以上を含む縮環構造を有しさえすれば特に限定されないが、本発明の効果がより優れる点で、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群より選ばれる2環以上を含む縮合環からn11+n12個の水素原子を引き抜いて形成される基であるのが好ましい。

なお、上記縮合構造は、Y11及びY12以外に、更に置換基(例えば、置換基群Y)を有していてもよい。
【0135】

上記Y11は、下記官能基群Qから選ばれる官能基を含む。下記官能基群Qに挙げられる官能基は、上述した官能基群Pに挙げられる官能基の中でも、特に、無機物(特に無機窒化物)への吸着性に優れる傾向がある基に相当する。

また、上記Y12は、下記官能基群Rから選ばれる官能基を含む。下記官能基群Rに挙げられる官能基は、上述した官能基群Pに挙げられる官能基の中でも、組成物の硬化を促進しやすい機能を有する基に相当する。
【0136】

(官能基群Q)

ボロン酸基(-B(OH))、アルデヒド基(-CHO)、イソシアネート基(-N=C=O)、イソチオシアネート基(-N=C=S)、シアネート基(-O-CN)、アシルアジド基、コハク酸イミド基、スルホニルクロリド基(-SOCl)、カルボン酸クロリド基(-COCl)、オニウム基、カーボネート基(-O-CO-O-)、アリールハライド基、カルボジイミド基(-N=C=N-)、酸無水物基(-CO-O-CO-、又は、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水ピロメリット酸、及び無水トリメリット酸等の1価の酸無水物基)、ホスホン酸基(-PO(OH))、ホスフィン酸基(-HPO(OH))、リン酸基(-OP(=O)(OH))、リン酸エステル基(-OP(=O)(OR)、スルホン酸基(-SOH)、ハロゲン化アルキル基、ニトリル基(-CN)、ニトロ基(-NO)、エステル基(-CO-O-又は-O-CO-)、カルボニル基(-CO-)、イミドエステル基(-C(=NR)-O-又は-O-C(=NR)-)、及びハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及び、ヨウ素原子)からなる群より選ばれる官能基。
【0137】

(官能基群R)

カルボン酸基(-COOH)、アルコキシシリル基、アクリル基(-OCOCH=CH)、メタクリル基(-OCOCH(CH)=CH)、オキセタニル基、ビニル基(-CH=CH)、アルキニル基(アルキンから水素原子を一つ除いた基。例えば、エチニル基、及びプロパ-2-イン-1-イル基等が含まれる。)、マレイミド基、チオール基(-SH)、水酸基(-OH)、及びアミノ基からなる群より選ばれる官能基。
【0138】

一般式(V2)中、上記Y11は、具体的に、下記一般式(C1)で表される1価の基若しくは下記一般式(C2)で表される1価の基を表すか、又は、n11が2以上の整数を表す場合には、複数のY11が結合してなる下記一般式(C3)で表される2価の基を表す。

言い換えると、n11が1である場合には、上記Y11は、下記一般式(C1)で表される1価の基又は下記一般式(C2)で表される1価の基を表す。n11が2以上の整数を表す場合には、上記Y11は、下記一般式(C1)で表される1価の基若しくは下記一般式(C2)で表される1価の基を表すか、又は、複数のY11が結合してなる下記一般式(C3)で表される2価の基を表す。なお、n11が2以上の場合、複数あるY11はそれぞれ同じでも、異なっていてもよい。
【0139】

なお、上記Y11が、下記一般式(C3)で表される2価の基を表す場合、一般式(V2)で表される化合物は、下記一般式(V4)で表される。
【0140】

【化16】
【0141】

一般式(V4)中、X11、Y12、及び、n12は、上述した一般式(V2)中のX11、Y12、及びn12と同義である。また、Mは、後述する一般式(C3)中のMと同義である。
【0142】

一般式(C1):*-M-Q

一般式(C1)中、Mは、単結合又は2価の連結基を表す。Mで表される2価の連結基としては、上述したLと同義であり、また、好ましい態様も同じである。

上記Qは、上述する官能基群Q中の1価の有機基(ボロン酸基(-B(OH))、アルデヒド基(-CHO)、イソシアネート基(-N=C=O)、イソチオシアネート基(-N=C=S)、シアネート基(-O-CN)、アシルアジド基、コハク酸イミド基、スルホニルクロリド基(-SOCl)、カルボン酸クロリド基(-COCl)、オニウム基、アリールハライド基、酸無水物基(無水マレイン酸、無水フタル酸、無水ピロメリット酸、及び、無水トリメリット酸等の1価の酸無水物基が挙げられる。)、ホスホン酸基(-PO(OH))、ホスフィン酸基(-HPO(OH))、リン酸基(-OP(=O)(OH))、リン酸エステル基(-OP(=O)(OR)、スルホン酸基(-SOH)、ハロゲン化アルキル基、ニトリル基(-CN)、ニトロ基(-NO)、又はハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及び、ヨウ素原子))を表す。*は、上記X11との結合位置を表す。
【0143】

一般式(C2):*-M-Q

一般式(B2)中、Mは、上述したLと同義であり、また、好ましい態様も同じである。上記Qは、1価の有機基を表す。Qで表される1価の連結基としては、上述したPと同義であり、また、好ましい態様も同じである。*は、上記X11との結合位置を表す。
【0144】

一般式(C3):*31-M-*32

一般式(B3)中、Mは、上述したLと同義であり、また、好ましい態様も同じである。*31及び*32は、上記X11との結合位置を表す。つまり、上記Mは、上記X11で表される縮環構造上の異なる2つの炭素とともに環を形成する。
【0145】

上記Y12は、下記一般式(D1)で表される1価の基、又は下記一般式(D2)で表される1価の基を表す。

一般式(D1):*-W-R

一般式(D1)中、Wは、単結合又は2価の連結基を表す。Rは、カルボン酸基、アルコキシシリル基、アクリル基、メタクリル基、オキセタニル基、ビニル基、アルキニル基、マレイミド基、チオール基、水酸基、又はアミノ基を表す。*は、上記X11との結合位置を表す。なお、上記Rは、上述した官能基群R中に挙げた官能基を表す。

で表される2価の連結基としては、上述したLと同義であり、また、好ましい態様も同じである。

は、上記X11との結合位置を表す。
【0146】

一般式(D2):

【化17】
【0147】

一般式(D2)中、Wは、m21+1価の連結基を表す。

21は、2以上の整数を表す。m21の上限値としては特に制限されないが、例えば、100以下であり、30以下が好ましく、20以下がより好ましく、15以下が更に好ましい。m21の下限値としては特に制限されないが、4以上が好ましい。

は、カルボン酸基、アルコキシシリル基、アクリル基、メタクリル基、オキセタニル基、ビニル基、アルキニル基、マレイミド基、チオール基、水酸基、又はアミノ基を表す。なお、上記Rは、上述した官能基群R中に挙げた官能基を表す。

で表されるm21+1価の連結基としては、上述したLと同義であり、また、好ましい態様も同じである。

は、上記X11との結合位置を表す。
【0148】

上記表面修飾剤Aの分子量は、例えば、150以上であり、表面修飾無機物(好ましくは表面修飾無機窒化物)の分散性により優れる点で、200以上が好ましく、また、溶解度の観点から、2,000以下が好ましく、1,000以下がより好ましい。
【0149】

<表面修飾剤B>

表面修飾剤(好ましくは無機窒化物用表面修飾剤)としては、例えば、以下に説明する表面修飾剤Bも好ましい。

表面修飾剤Bは、一般式(B01)で表される化合物である。
【0150】

(一般式(B01)で表される化合物)

-[-(L1BmB-ZnB (B01)
【0151】

一般式(B01)中、mBは、0以上の整数(好ましくは0~10)を表し、mBが0の場合、ZはXと直接結合する。

は3~6の整数を表す。

は、置換基を有してもよい、ベンゼン環基又はヘテロ環基(好ましくはトリアジン環基)を表す。

1Bは、置換基を有してもよいアリーレン基、エステル基、エーテル基、チオエステル基、チオエーテル基、カルボニル基、-NR-、アゾ基、又は、置換基を有してもよい不飽和炭化水素基を表す。(Rは、水素原子又は置換基を表す)

は、置換基を有してもよい、芳香環基を表す。

複数存在するmBは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。

1Bが複数存在する場合、複数存在するL1Bは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。

複数存在するZは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0152】

(一般式(B02)で表される化合物)

中でも、表面修飾剤Bは、一般式(B02)で表される化合物であるのが好ましい。
【0153】

【化18】
【0154】

一般式(B02)中、E~Eは、それぞれ独立に、単結合、-NH-、又は、-NR-を表す。

Rは、置換基(好ましくは、炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基)を表す。E~Eのうちに-NR-が複数存在する場合、複数存在するRはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。

中でも、得られる熱伝導材料の熱伝導性がより優れる点から、E~Eは、それぞれ独立に、単結合又は-NH-が好ましい。この理由は、E~Eが上記の基である場合、一般式(B02)で表される化合物と無機物(特に無機窒化物)との相互作用がより高まるためであると考えられている。
【0155】

一般式(B02)中、B~Bは、それぞれ独立に、置換基を有してもよい、環員原子である炭素原子の数が6以上である芳香環基を表す。

なお、B~Bは、E~E及びX~Xに対して、それぞれ、上記芳香環基の環員原子で結合する。

上記芳香環基は、単環式芳香環基でも多環式芳香環基でもよい。

上記単環式芳香環基の員環数は6~10が好ましい。

上記多環式芳香環基を構成する環の数は2~4が好ましく、2がより好ましい。上記多環式芳香環基を構成する環の員環数は、それぞれ独立に、5~10が好ましい。

上記芳香環基は、芳香族炭化水素環基でも芳香族複素環基でもよい。

上記芳香族複素環基が有するヘテロ原子の数は、1~5が好ましい。ヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、テルル原子、リン原子、ケイ素原子、及び、ホウ素原子が挙げられる。中でも、窒素原子、硫黄原子、又は、酸素原子が好ましい。
【0156】

~Bの芳香環基が有してもよい置換基は、後述する一般式(B2R)で表される置換基以外が好ましい。ただし、Eが直接結合するB中の原子に隣接して存在するB中の原子が置換基を有する場合、上記置換基は水酸基でもよい。Eが直接結合するB中の原子に隣接して存在するB中の原子が置換基を有する場合、上記置換基は水酸基でもよい。Eが直接結合するB中の原子に隣接して存在するB中の原子が置換基を有する場合、上記置換基は水酸基でもよい。

~Bの芳香環基が置換基を複数有する場合、上記複数の置換基同士は互いに結合して非芳香環を形成してもよい。
【0157】

~Bで表される芳香環基の、環員原子である炭素原子の数は6以上(好ましくは6~12)である。上記環員原子である炭素原子の数とは、芳香環を構成する環員原子である炭素原子の数を意図する。

なお、芳香環基が、複数の置換基を有し、上記複数の置換基同士が互いに結合して非芳香環を形成した場合において、上記非芳香環にのみ含まれる炭素原子の数は、上記環員原子である炭素原子の数には計上しない。なお、芳香環基中の、芳香環と非芳香環とが共有する炭素原子については、上記環員原子である炭素原子の数として計上する。
【0158】

~Bとしては、例えば、ベンゼン環基、ナフタレン環基、アントラセン環基、ベンゾチアゾール環基、カルバゾール環基、及び、インドール環基等が挙げられる。

中でも、B~Bとしては、それぞれ独立に、ベンゼン環基、又は、ナフタレン環基が好ましい。
【0159】

一般式(B02)中、lb、mb、及び、nbは、それぞれ独立に、0以上の整数を表す。

lb、mb、及び、nbは、それぞれ独立に、0~5が好ましく、1~2がより好ましい。

なお、lbが0の場合、BはXを有さない。mbが0の場合、BはXを有さない。nbが0の場合、BはXを有さない。

例えば、mbが0である場合、一般式(B02)で表される化合物は、下記一般式で表される化合物である。
【0160】

【化19】
【0161】

lbが2以上の場合(つまり、Xが複数存在する場合)、複数(lb個)存在するXは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。mbが2以上の場合(つまり、Xが複数存在する場合)、複数(mb個)存在するXは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。nbが2以上の場合(つまり、Xが複数存在する場合)、複数(nb個)存在するXは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0162】

一般式(B02)中、X~Xは、それぞれ独立に、一般式(B2R)で表される基を表す。
【0163】

【化20】
【0164】

一般式(B2R)中、*は、B~Bのいずれかとの結合位置を表す。
【0165】

一般式(B2R)中、Dは、単結合又は2価の連結基を表す。

上記2価の連結基としては、例えば、-O-、-S-、-CO-、-NR-、-SO-、アルキレン基、又は、これらの組み合わせからなる基が挙げられる。-NR-におけるRは、水素原子又は置換基を表す。上記アルキレン基は、炭素数1~8の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基が好ましい。

中でも、Dは、「単結合」又は「-O-、-CO-、及び、アルキレン基からなる群から選択される組み合わせからなる基」が好ましく、単結合、*-アルキレン基-O-CO-*、*-CO-O-アルキレン基-*、*-O-アルキレン基-O-*、*-CO-O-アルキレン基-O-CO-*、*-CO-O-アルキレン基-O-*、又は、*-O-アルキレン基-O-CO-*がより好ましい。

は、Aとは反対側の結合位置であり、*は、Aとの結合位置である。
【0166】

一般式(B2R)中、Aは、置換基を有してもよい、環員原子である炭素原子の数が6以上である芳香環基、又は、置換基を有してもよい、環員原子である炭素原子の数が6以上であるシクロアルカン環基を表す。

なお、Aは、D、Y、及び、Qに対して、上記芳香環基又は上記シクロアルカン環基の、環員原子で結合する。
【0167】

における、置換基を有してもよい、環員原子である炭素原子の数が6以上である芳香環基は、B~Bにおける、置換基を有してもよい、環員原子である炭素原子の数が6以上である芳香環基と同様である。
【0168】

における、置換基を有してもよい、環員原子である炭素原子の数が6以上のシクロアルカン環基において、シクロアルカン環基は、単環でも多環でもよい。

上記単環のシクロアルカン環基の員環数は6~10が好ましい。

上記多環のシクロアルカン環基を構成する環の数は2~4が好ましく、2がより好ましい。上記多環のシクロアルカン環基を構成する環の員環数は、それぞれ独立に、5~10が好ましい。

上記シクロアルカン環基が置換基を複数有する場合、上記複数の置換基同士は互いに結合してシクロアルカン環以外の環を形成してもよい。

上記シクロアルカン環基の、環員原子である炭素原子の数は6以上(好ましくは6~12)である。上記環員原子である炭素原子の数とは、シクロアルカン環を構成する環員原子である炭素原子の数を意図する。

シクロアルカン環基が、複数の置換基を有し、上記複数の置換基同士が互いに結合してシクロアルカン環以外の環を形成した場合において、上記シクロアルカン環以外の環にのみ含まれる炭素原子の数は、上記環員原子である炭素原子の数には計上しない。なお、シクロアルカン環基中の、シクロアルカン環とシクロアルカン環以外の環とが共有する炭素原子については、上記環員原子である炭素原子の数として計上する。

における、置換基を有してもよい、環員原子である炭素原子の数が6以上のシクロアルカン環基としては、例えば、シクロヘキサン環基、シクロヘプタン環基、ノルボルナン環基、及び、アダマンタン環基が挙げられる。
【0169】

一般式(B2R)中、Q及びYは、それぞれ独立に、アルデヒド基(-CHO)、ボロン酸基(-B(OH))、水酸基(-OH)、エポキシ基を有する1価の基、アミノ基、チオール基(-SH)、カルボン酸基(-COOH)、カルボン酸無水物基を有する1価の基、イソシアネート基(-NCO)、及び、オキセタニル基を有する1価の基からなる群から選択される特定官能基を表す。

つまり、一般式(B2R)で表される基は、少なくとも1個の特定官能基を有する基である。ここで、一般式(B2R)で表される基が「特定官能基を有する基である」とは、一般式(B2R)で表される基が一部分として特定官能基を含む基であってもよく、一般式(B2R)で表される基が特定官能基そのものであってもよい。
【0170】

上記特定官能基としての、エポキシ基を有する1価の基は、例えば、「-Leo-エポキシ基」で表される基が好ましい。Leoは、単結合又は2価の連結基であり、酸素原子、アルキレン基(好ましくは炭素数1~6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基)、又は、これらの組み合わせからなる基が好ましい。

中でも、上記エポキシ基を有する1価の基は、「-O-アルキレン基-エポキシ基」が好ましい。

なお、エポキシ基が有してもよい置換基としては、炭素数1~6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましい。
【0171】

上記特定官能基としての、アミノ基としては特に限定されず、1級、2級、及び、3級のいずれであってもよい。例えば、-N(R(Rは、それぞれ独立して、水素原子又はアルキル基(直鎖状でも分岐鎖状でもよい))が挙げられる。アルキル基中の炭素数は、1~10が好ましく、1~6がより好ましく、1~3が更に好ましい。なお、アルキル基は、更に置換基を有していてもよい。
【0172】

上記特定官能基としての、カルボン酸無水物基を有する1価の基としては、例えば、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水ピロメリット酸、及び、無水トリメリット酸から、任意の水素原子を除いて得られる基が好ましい。
【0173】

上記特定官能基としての、オキセタニル基を有する1価の基は、例えば、「-Leo-オキセタニル基」で表される基が好ましい。Leoは、単結合又は2価の連結基であり、酸素原子、アルキレン基(好ましくは炭素数1~6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基)、又は、これらの組み合わせからなる基が好ましい。

中でも、上記オキセタニル基を有する1価の基は、「-O-アルキレン基-オキセタニル基」が好ましい。

なお、オキセタニル基が有してもよい置換基としては、炭素数1~6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましい。
【0174】

中でも、特定官能基は、アルデヒド基、ボロン酸基、水酸基、又は、エポキシ基を有する1価の基が好ましい。

言い換えると、Q及びYは、それぞれ独立に、アルデヒド基、ボロン酸基、水酸基、又は、エポキシ基を有する1価の基が好ましい。
【0175】

一般式(B2R)中、pは、0以上の整数を表す。

中でも、pは、0~5が好ましく、0~1がより好ましい。

pが0である場合、Yは、B~Bのいずれかと直接結合する。つまり、X~Xは、特定官能基そのものであってもよい。
【0176】

一般式(B2R)中、qは、0~2の整数を表す。

中でも、pは、0~1が好ましい。
【0177】

なお、一般式(B02)で表される化合物中に、一般式(B2R)で表される基が複数存在する場合、複数の一般式(B2R)で表される基は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。

例えば、一般式(B02)中、Dが複数存在する場合、複数存在するDは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。Aが複数存在する場合、複数存在するAは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。Qが複数存在する場合、複数存在するQは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。Yが複数存在する場合、複数存在するYは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。pが複数存在する場合、複数存在するpは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。qが複数存在する場合、複数存在するqは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0178】

一般式(B02)中、lb、mb、及び、nbの合計数は、2以上(好ましくは2~10、より好ましくは3~6)である。

言い換えると、それぞれ複数存在してもよいX1~X3の合計数は2以上(好ましくは2~10、より好ましくは3~6)である。

つまり、一般式(B02)中、複数存在してもよいXの数と、複数存在してもよいXの数と、複数存在してもよいXの数と、の合計数は、2以上であり、2~10が好ましく、3~6がより好ましい。
【0179】

例えば、lbが1以上(より好ましくは1~2)であるのが好ましく、mbが1以上(より好ましくは1~2)であるのが好ましく、nbが1以上(より好ましくは1~2)であるのが好ましい。

つまり、Bが、Xを1個以上(より好ましくは1~2個)有するのが好ましく、Bが、Xを1個以上(好ましくは1~2個)有するのが好ましく、Bが、Xを1個以上(好ましくは1~2個)有するのが好ましい。
【0180】

ただし、lbが1以上であり、少なくとも1個のXが水酸基である場合、上記水酸基であるXが直接結合するB中の原子と、Eが直接結合するB中の原子とは、互いに隣接しないのが好ましい。

mbが1以上であり、少なくとも1個のXが水酸基である場合、上記水酸基であるXが直接結合するB中の原子と、Eが直接結合するB中の原子とは、互いに隣接しないのが好ましい。

nbが1以上であり、少なくとも1個のXが水酸基である場合、上記水酸基であるXが直接結合するB中の原子と、Eが直接結合するB中の原子とは、互いに隣接しないのが好ましい。

例えば、Bがベンゼン環基である場合において、上記ベンゼン環基が、Eのオルト位に水酸基を有する場合、上記水酸基は、Xには該当しないものとして、上述の「複数存在してもよいXの数」には計上しなくてもよい。

本発明者らは、B~B上の、E~Eと隣接する位置に存在する水酸基は、立体障害の影響を大きく受け、無機物(無機窒化物等)同士間での熱伝導のパスを良好に形成しにくく、異なる位置に存在する水酸基の方が熱伝導性の向上効果が優れると考えている。
【0181】

例えば、Eが直接結合するB中の原子と、互いに隣接して存在するB中の原子(好ましくは炭素原子)は、無置換が好ましい。Eが直接結合するB中の原子と、互いに隣接して存在するB中の原子(好ましくは炭素原子)は、無置換であるのが好ましい。Eが直接結合するB中の原子と、互いに隣接して存在するB中の原子(好ましくは炭素原子)は、無置換であるのが好ましい。
【0182】

一般式(B02)で表される化合物は一般式(B2R)で表される基を1種単独で有してもよく、2種以上有してもよい。

中でも、一般式(B02)で表される化合物は、「特定官能基として水酸基のみを有する化合物」、「特定官能基としてエポキシ基を有する1価の基のみを有する化合物」、又は「特定官能基として、アルデヒド基及びボロン酸基のいずれでもない基(好ましくは水酸基)とアルデヒド基及び/又はボロン酸基とを有する化合物」であるのが好ましい。
【0183】

なお、上記「特定官能基として、アルデヒド基及びボロン酸基のいずれでもない基とアルデヒド基及び/又はボロン酸基との両方を有する化合物」としては、例えば、一般式(B02)で表される化合物において、lb個存在するX、mb個存在するX、及び、nb個存在するXのうちの(つまり、lb+mb+nb個存在する一般式(B2R)で表される基のうちの)合計1個以上が、アルデヒド基及びボロン酸基の少なくとも一方の特定官能基を有する基であり、かつ、

lb個存在するX、mb個存在するX、及び、nb個存在するXのうちの(つまり、lb+mb+nb個存在する一般式(B2R)で表される基のうちの)合計1個以上(好ましくは1~4個)が、アルデヒド基及びボロン酸基のいずれでもない特定官能基を有する基である化合物が好ましい。

上記「アルデヒド基及びボロン酸基の少なくとも一方の特定官能基を有する基」と、上記「アルデヒド基及びボロン酸基のいずれでもない特定官能基を有する基」とは、別々の基として存在するのが好ましい。

上記「アルデヒド基及びボロン酸基のいずれでもない特定官能基」としては、水酸基、又は、エポキシ基を有する1価の基が好ましく、水酸基がより好ましい。

上記「アルデヒド基及びボロン酸基の少なくとも一方の特定官能基を有する基」は、「アルデヒド基及びボロン酸基のいずれでもない特定官能基」をいずれも有さないのも好ましい。

また、上記「アルデヒド基及びボロン酸基のいずれでもない特定官能基を有する基」は、アルデヒド基及びボロン酸基のいずれも有さないのも好ましい。

このような条件を満たすことで、得られる熱伝導材料の熱伝導性がより優れる。そのメカニズムとしては、本発明者らは以下のように推測している。

すなわち、一般式(B02)で表される化合物が、特定官能基としてアルデヒド基及び/又は及びボロン酸基を有する場合、上記アルデヒド基及び/又は及びボロン酸基は特に良好に無機物(特に窒化ホウ素のような無機窒化物)と相互作用する。

一般式(B02)で表される化合物が、更に、アルデヒド基及び/又は及びボロン酸基以外のその他の特定官能基を有する場合、アルデヒド基及び/又は及びボロン酸基が主に無機物(特に無機窒化物)と相互作用する一方で、上記その他の特定官能基が無機物以外との間(例えば一般式(B02)で表される化合物同士での間)でも相互作用による熱伝導パスを形成し、得られる熱伝導材料の熱伝導性がより優れる。また、上記その他の特定官能基は、フェノール化合物及び/又はエポキシ化合物(一般式(1)で表される化合物等)からなる樹脂と、化学結合による相互作用を形成する場合もあり、この場合、得られる熱伝導材料の熱伝導性が更に優れる、と推測している。
【0184】

(一般式(B03)で表される化合物)

中でも、一般式(B02)で表される化合物は、一般式(B03)で表される化合物であるのが好ましい。
【0185】

【化21】
【0186】

一般式(B03)中、E~Eは、それぞれ独立に、単結合、-NH-、又は、-NR-を表す。Rは、置換基を表す。

一般式(B03)におけるE~Eは、一般式(B02)におけるE~Eと同様である。

一般式(B03)中、g~gは、それぞれ独立に、0又は1の整数を表す。

一般式(B03)中、Z1a~Z1c、Z2a~Z2c、及び、Z3a~Z3cは、それぞれ独立に、水素原子又は一般式(B2R)で表される基を表す。

ただし、Z1a~Z1c、Z2a~Z2c、及び、Z3a~Z3cのうち、合計2個以上(好ましくは2~9個、より好ましくは3~6個)は、一般式(B2R)で表される基である。

一般式(B2R)で表される基については上述の通りである。
【0187】

1a~Z1cのうちの1個以上(好ましくは1~2個)は一般式(B2R)で表される基であり、Z2a~Z2cのうちの1個以上(好ましくは1~2個)は一般式(B2R)で表される基であり、Z3a~Z3cのうちの1個以上(好ましくは1~2個)は一般式(B2R)で表される基であるのが好ましい。
【0188】

中でも、Z1a~Z1c、Z2a~Z2c、及び、Z3a~Z3cは、それぞれ独立に、「水素原子、及び、特定官能基が水酸基である一般式(B2R)で表される基からなる群から選択される基」であるか、「水素原子、及び、特定官能基がエポキシ基を有する1価の基である一般式(B2R)で表される基からなる群から選択される基」であるのが好ましい。
【0189】

他にも、Z1a~Z1c、Z2a~Z2c、及び、Z3a~Z3cのうち、の1個以上(好ましくは1~2個)は、アルデヒド基及びボロン酸基の少なくとも一方の特定官能基を有する一般式(B2R)で表される基であり、かつ、

1a~Z1c、Z2a~Z2c、及び、Z3a~Z3cのうち、の1個以上(好ましくは1~4個)は、アルデヒド基及びボロン酸基のいずれでもない特定官能基を有する一般式(B2R)で表される基であるのも好ましい。

中でも、Z1a~Z1cのうちの1個以上(好ましくは1~2個)は、アルデヒド基及びボロン酸基の少なくとも一方の特定官能基を有する一般式(B2R)で表される基であり、

2a~Z2cのうちの1個以上(好ましくは1~2個)は、アルデヒド基及びボロン酸基のいずれでもない特定官能基を有する一般式(B2R)で表される基であり、かつ、

3a~Z3cのうちの1個以上(好ましくは1~2個)は、アルデヒド基及びボロン酸基のいずれでもない特定官能基を有する一般式(B2R)で表される基であるのがより好ましい。

上記「アルデヒド基及びボロン酸基のいずれでもない特定官能基」としては、水酸基、又は、エポキシ基を有する1価の基が好ましく、水酸基がより好ましい。

上記「アルデヒド基及びボロン酸基のいずれでもない特定官能基を有する一般式(B2R)で表される基」は、「アルデヒド基及びボロン酸基のいずれでもない特定官能基」をいずれも有さないのも好ましい。

また、上記「アルデヒド基及びボロン酸基のいずれでもない特定官能基を有する一般式(B2R)で表される基」は、アルデヒド基及びボロン酸基のいずれも有さないのも好ましい。
【0190】

<その他の表面修飾剤(無機酸化物用表面修飾剤)>

また、組成物は、(好ましくは、無機物が無機酸化物(酸化アルミニウム等)を含む場合において、)表面修飾剤として有機シラン分子(好ましくはアルコキシシリル基を有する化合物)を含むのも好ましい。上記有機シラン分子としては、表面修飾剤A、表面修飾剤B、及び、これらのいずれにも該当しないその他の表面修飾剤が挙げられる。

このようなその他の表面修飾剤である有機シラン分子は、無機酸化物用表面修飾剤(好ましくは酸化アルミニウム用表面修飾剤)として使用するのが好ましい。

上記その他の表面修飾剤である有機シラン分子としては、例えば、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトトリエトキシシラン、及び、3-ウレイドプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
【0191】

表面修飾剤は、1種単独で使用してもよく2種以上使用してもよい。

組成物が表面修飾剤(好ましくは無機窒化物用表面修飾剤及び/又は無機酸化物用表面修飾剤)を含む場合、表面修飾剤の含有量は、組成物の全固形分に対して、0.01~10質量%が好ましく、0.05~5質量%がより好ましい。

また、無機窒化物用表面修飾剤の含有量(好ましくは表面修飾剤A及び表面修飾剤Bの合計含有量)は、組成物の全固形分に対して、0.01~10質量%が好ましく、0.05~5質量%がより好ましい。

無機酸化物用表面修飾剤(好ましくはその他の表面修飾剤である有機シラン分子)の含有量は、組成物の全固形分に対して、0.01~10質量%が好ましく、0.05~5質量%がより好ましい。
【0192】

組成物が表面修飾剤(好ましくは無機窒化物用表面修飾剤及び/又は無機酸化物用表面修飾剤)を含む場合、表面修飾剤の含有量は、無機物の全質量に対して、0.01~10質量%が好ましく、0.10~5質量%がより好ましい。

また、無機窒化物用表面修飾剤の含有量(好ましくは表面修飾剤A及び表面修飾剤Bの合計含有量)は、無機窒化物(好ましくは窒化ホウ素)の全質量に対して、0.01~10質量%が好ましく、0.10~5質量%がより好ましい。

無機酸化物用表面修飾剤(好ましくはその他の表面修飾剤である有機シラン分子)の含有量は、無機酸化物(好ましくは酸化アルミニウム)の全質量に対して、0.01~10質量%が好ましく、0.10~5質量%がより好ましい。
【0193】

本発明の組成物において、一般式(1)で表される化合物以外のエポキシ基を有する化合物(例えば、上述のその他のエポキシ化合物、及び、エポキシ基を有する表面修飾剤等)の含有量(合計含有量)は、組成物の全固形分に対して、20質量%以下が好ましく、10質量%以下が好ましく、5質量%以下が更に好ましく、実質的に含まれないのが特に好ましい。

ここで、一般式(1)で表される化合物以外のエポキシ基を有する化合物が実質的に含まれないとは、一般式(1)で表される化合物以外のエポキシ基を有する化合物の含有量が、組成物の全固形分に対して、0.5質量%以下であることを意味する。

また、一般式(1)で表される化合物以外のエポキシ基を有する化合物の含有量は、一般式(1)で表される化合物と、一般式(1)で表される化合物以外のエポキシ基を有する化合物との合計含有量に対して、0~60質量%が好ましく、0質量%以上5質量%未満がより好ましい。
【0194】

本発明の組成物において、固形分が有するエポキシ基の数の合計数(例えば、一般式(1)で表される化合物が有するエポキシの数と、その他のエポキシ化合物が有するエポキシの数と、エポキシ基を有する表面修飾剤が有するエポキシ基の数との合計数)に対する、固形分が有するフェノール性水酸基の合計数(例えば、フェノール化合物が有するフェノール性水酸基の数と、フェノール性水酸基を有する表面修飾剤が有するフェノール性水酸基の数との合計数)との比(固形分が有するフェノール性水酸基の合計数/固形分が有するエポキシ基の数の合計数)は、0.50~2.00が好ましく、0.65~1.50がより好ましく、0.90~1.10が更に好ましい。
【0195】

本発明の組成物において、固形分が有するエポキシ基の数の合計数に対する、固形分が有する活性水素原子(フェノール性水酸基の水素原子等)の合計数との比(固形分が有する活性水素原子の合計数/固形分が有するエポキシ基の数の合計数)は、0.50~2.00が好ましく、0.65~1.50がより好ましく、0.90~1.10が更に好ましい。
【0196】

〔硬化促進剤〕

組成物は、更に、硬化促進剤を含んでいてもよい。

硬化促進剤の種類は制限されず、例えば、トリフェニルホスフィン、三フッ化ホウ素アミン錯体、及び、特開2012-67225号公報の段落0052に記載の化合物が挙げられる。その他にも、2-メチルイミダゾール(商品名;2MZ)、2-ウンデシルイミダゾール(商品名;C11-Z)、2-ヘプタデシルイミダゾール(商品名;C17Z)、1,2-ジメチルイミダゾール(商品名;1.2DMZ)、2-エチル-4-メチルイミダゾール(商品名;2E4MZ)、2-フェニルイミダゾール(商品名;2PZ)、2-フェニル-4-メチルイミダゾール(商品名;2P4MZ)、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール(商品名;1B2MZ)、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール(商品名;1B2PZ)、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール(商品名;2MZ-CN)、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール(商品名;C11Z-CN)、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト(商品名;2PZCNS-PW)、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン(商品名;2MZ-A)、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン(商品名;C11Z-A)、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン(商品名;2E4MZ-A)、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物(商品名;2MA-OK)、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール(商品名;2PHZ-PW)、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール(商品名;2P4MHZ-PW)、及び、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール(商品名;2PZ-CN)などのイミダゾール系硬化促進剤等が挙げられる(いずれも四国化成工業(株)製)。

硬化促進剤は、1種単独で使用してもよく2種以上使用してもよい。

組成物が硬化促進剤を含む場合、硬化促進剤の含有量は、一般式(1)で表される化合物及びその他のエポキシ化合物の合計含有量に対して、0.01~10質量%が好ましく、0.1~5質量%がより好ましい。
【0197】

〔分散剤〕

組成物は、更に、分散剤を含んでいてもよい。

組成物が分散剤を含むと、組成物中での無機物の分散性が向上し、より優れた熱伝導率と接着性を実現できる。
【0198】

分散剤としては、通常使用される分散剤から適宜選択できる。例えば、DISPERBYK-106(BYK-Chemie GmbH製)、DISPERBYK-111(BYK-Chemie GmbH製)、ED-113(楠本化成株式会社製)、アジスパーPN-411(味の素ファインテクノ製)、及び、REB122-4(日立化成工業製)等が挙げられる。

分散剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を使用してもよい。

組成物が分散剤を含む場合、分散剤の含有量は、無機物の含有量に対して、0.01~10質量%が好ましく、0.1~5質量%がより好ましい。
【0199】

〔溶媒〕

組成物は、更に、溶媒を含んでいてもよい。

溶媒の種類は特に制限されず、有機溶媒であるのが好ましい。有機溶媒としては、例えば、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、ジクロロメタン、及び、テトラヒドロフラン等が挙げられる。

組成物が溶媒を含む場合、溶媒の含有量は、組成物の固形分濃度を、20~90質量%とする量が好ましく、30~85質量%とする量がより好ましく、40~85質量%とする量が更に好ましい。
【0200】

〔組成物の製造方法〕

組成物の製造方法は特に制限されず、公知の方法を採用でき、例えば、上述した各種成分を混合して製造できる。混合する際には、各種成分を一括で混合しても、順次混合してもよい。

成分を混合する方法に特に制限はなく、公知の方法を使用できる。混合に使用する混合装置は、液中分散機が好ましく、例えば、自転公転ミキサー、高速回転せん断型撹拌機等の撹拌機、コロイドミル、ロールミル、高圧噴射式分散機、超音波分散機、ビーズミル、及び、ホモジナイザーが挙げられる。混合装置は1種単独で使用してもよく、2種以上使用してもよい。混合の前後、及び/又は、同時に、脱気処理を行ってもよい。
【0201】

〔組成物の硬化方法〕

本発明の組成物は熱伝導材料形成用組成物である。

本発明の組成物を硬化処理して熱伝導材料が得られる。

組成物の硬化方法は、特に制限されないが、熱硬化反応が好ましい。

熱硬化反応の際の加熱温度は特に制限されない。例えば、50~250℃の範囲で適宜選択すればよい。また、熱硬化反応を行う際には、温度の異なる加熱処理を複数回にわたって実施してもよい。

硬化処理は、フィルム状又はシート状とした組成物について行うのが好ましい。具体的には、例えば、組成物を塗布成膜し硬化反応を行えばよい。

硬化処理を行う際は、基材上に組成物を塗布して塗膜を形成してから硬化させるのが好ましい。この際、基材上に形成した塗膜に、更に異なる基材を接触させてから硬化処理を行ってもよい。硬化後に得られた硬化物(熱伝導材料)は、基材の一方又は両方と分離してもよいし分離しなくてもよい。

また、硬化処理を行う際に、別々の基材上に組成物を塗布して、それぞれ塗膜を形成し、得られた塗膜同士を接触させた状態で硬化処理を行ってもよい。硬化後に得られた硬化物(熱伝導材料)は、基材の一方又は両方と分離してもよいし分離しなくてもよい。

硬化処理の際には、プレス加工を行ってもよい。プレス加工に使用するプレスに制限はなく、例えば、平板プレスを使用してもよいしロールプレスを使用してもよい。

ロールプレスを使用する場合は、例えば、基材上に塗膜を形成して得た塗膜付き基材を、2本のロールが対向する1対のロールに挟持し、上記1対のロールを回転させて上記塗膜付き基材を通過させながら、上記塗膜付き基材の膜厚方向に圧力を付加するのが好ましい。上記塗膜付き基材は、塗膜の片面にのみ基材が存在していてもよいし、塗膜の両面に基材が存在していてもよい。上記塗膜付き基材は、ロールプレスに1回だけ通過させてもよいし複数回通過させてもよい。

平板プレスによる処理とロールプレスによる処理とは一方のみを実施してもよいし両方を実施してもよい。
【0202】

また、硬化処理は、組成物を半硬化状態にした時点で終了してもよい。半硬化状態の本発明の熱伝導材料を、使用されるデバイス等に接触するように配置した後、更に加熱等により硬化を進行させ、本硬化させてもよい。上記本硬化させる際の加熱等によって、デバイスと本発明の熱伝導材料とが接着するのも好ましい。

硬化反応を含む熱伝導材料の作製については、「高熱伝導性コンポジット材料」(シーエムシー出版、竹澤由高著)を参照できる。
【0203】

熱伝導材料の形状に特に制限はなく、用途に応じて様々な形状に成形できる。成形された熱伝導材料の典型的な形状としては、例えば、シート状が挙げられる。

つまり、本発明の組成物を用いて得られる熱伝導材料は、熱伝導シートであるのも好ましい。

また、本発明の組成物を用いて得られる熱伝導材料の熱伝導性は異方的ではなく等方的であるのが好ましい。
【0204】

熱伝導材料は、絶縁性(電気絶縁性)であるのが好ましい。言い換えると、本発明の組成物は、熱伝導性絶縁組成物であるのが好ましい。

例えば、熱伝導材料の23℃相対湿度65%における体積抵抗率は、1010Ω・cm以上が好ましく、1012Ω・cm以上がより好ましく、1014Ω・cm以上が更に好ましい。上限は特に制限されないが、通常1018Ω・cm以下である。
【0205】

[熱伝導材料の用途]

本発明の組成物を用いて得られる熱伝導材料は放熱シート等の放熱材として使用でき、各種デバイスの放熱用途に使用できる。より具体的には、デバイス上に本発明の熱伝導材料を含む熱伝導層を配置して熱伝導層付きデバイスを作製して、デバイスからの発熱を効率的に熱伝導層で放熱できる。

本発明の組成物を用いて得られる熱伝導材料は十分な熱伝導性を有するとともに、高い耐熱性を有しているため、パーソナルコンピュータ、一般家電、及び、自動車等の様々な電気機器に用いられているパワー半導体デバイスの放熱用途に適している。

更に、本発明の組成物を用いて得られる熱伝導材料は、半硬化状態であっても十分な熱伝導性を有するため、各種装置の部材の隙間等の、光硬化のための光を到達させるのが困難な部位に配置する放熱材としても使用できる。また、接着性にも優れるため、熱伝導性を有する接着剤としての使用も可能である。
【0206】

本発明の組成物を用いて得られる熱伝導材料は、本組成物から形成される部材以外の、他の部材と組み合わせて使用されてもよい。

例えば、シート状の熱伝導材料(熱伝導シート)は、本組成物から形成された層の他の、シート状の支持体と組み合わせられていてもよい。

シート状の支持体としては、プラスチックフィルム、金属フィルム、又は、ガラス板が挙げられる。プラスチックフィルムの材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリカーボネート、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリオレフィン、セルロース誘導体、及び、シリコーンが挙げられる。金属フィルムとしては、銅フィルムが挙げられる。

シート状の熱伝導材料(熱伝導シート)の膜厚は、100~300μmが好ましく、150~250μmがより好ましい。
【実施例
【0207】

以下に実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更できる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきではない。
【0208】

〔組成物の調製及び評価〕

[各種成分]

以下に、実施例及び比較例で使用した各種成分を示す。

<フェノール化合物>

以下に、実施例及び比較例で使用したフェノール化合物を示す。

なお、実施例で使用したフェノール化合物A-1、A-5、及び、A-6は、米国特許第4992596号明細書を参考に合成した。

なお、フェノール化合物A-7は、明和化成株式会社製 MEH-7500である。
【0209】

【化22】
【0210】

<エポキシ化合物>

以下に、実施例及び比較例で使用したエポキシ化合物(一般式(1)で表される化合物、又は、その他のエポキシ化合物)を示す。

なお、エポキシ化合物C-1は、三菱ケミカル株式会社製 YX-4000であり、エポキシ化合物C-2は、日本化薬株式会社製 EPPN-201である。
【0211】

【化23】
【0212】

【化24】
【0213】

<無機物(無機窒化物、及び、その他の無機物)>

以下に、実施例及び比較例で使用した無機物を示す。

「AA-3」:酸化アルミニウム(平均粒径:3μm、住友化学製)

「AA-04」:酸化アルミニウム(平均粒径:0.4μm、住友化学製)

「HP40 MF100」:凝集状窒化ホウ素(平均粒径:40μm、水島合金鉄製)
【0214】

<硬化促進剤>

以下に、実施例及び比較例で使用した無機物を示す。

「E-1」:PPh(トリフェニルホスフィン)

「E-2」:1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール(商品名;2PZ-CN、四国化成工業製)

「E-3」:2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール(商品名;2PHZ-PW、四国化成工業製)
【0215】

<分散剤>

分散剤として、DISPERBYK-106(酸性基を有するポリマー塩)を使用した。
【0216】

<表面修飾剤>
【0217】

無機窒化物用表面修飾剤として、下記化合物を使用した。
【0218】

【化25】
【0219】

酸化アルミニウム用表面修飾剤(有機シラン分子)として、下記化合物を使用した。
【0220】

【化26】
【0221】

<溶媒>

溶媒として、シクロペンタノン使用した。
【0222】

[組成物の調製]

下記表1に示す組み合わせのエポキシ化合物とフェノール化合物とを配合した硬化液を調製した。

得られた硬化液の全量、溶媒、分散剤、表面修飾剤(酸化アルミニウム用表面修飾剤、無機窒化物用表面修飾剤)、及び、硬化促進剤の順で混合した後、無機物(無機窒化物、無機酸化物)を添加した。得られた混合物を自転公転ミキサー(THINKY社製、あわとり練太郎ARE-310)で5分間処理して、各実施例又は比較例の組成物(熱伝導材料形成用組成物)を得た。

ここで、溶媒の添加量は、組成物の固形分濃度が50~80質量%になる量とした。

なお、組成物の固形分濃度は、組成物の粘度がそれぞれ同程度になるように、上記範囲内で組成物ごとに調整した。

また、無機物は、各無機物の含有量の比(質量比)が表1に示す関係を満たすように混合して使用した。

各実施例又は比較例の組成物における固形分の配合を表1に示す。
【0223】

[評価]

<熱伝導性>

アプリケーターを用いて、離型処理したポリエステルフィルム(NP-100A パナック社製、膜厚100μm)の離型面上に、調製した組成物を均一に塗布し、120℃で5分間放置して塗膜を得た。

このような塗膜付きポリエステルフィルムを2枚作製し、2枚の塗膜付きポリエステルフィルム同士を塗膜面同士で貼り合せてから、空気下で熱プレス(熱板温度65℃、圧力12MPaで1分間処理)することで半硬化膜を得た。得られた半硬化膜を空気下で熱プレス(熱板温度160℃、圧力12MPaで20分間処理した後、更に、常圧下で180℃90分)で処理して塗膜を硬化し、樹脂シートを得た。樹脂シートの両面にあるポリエステルフィルムを剥がし、平均膜厚200μmの熱伝導シート(シート状の熱伝導材料)を得た。
【0224】

各組成物を用いて得られた、それぞれの熱伝導シートを用いて、熱伝導性評価を実施した。下記の方法で熱伝導率の測定を行い、下記の基準に従って熱伝導性を評価した。
【0225】

(熱伝導率(W/m・k)の測定)

(1)NETZSCH社製の「LFA467」を用いて、レーザーフラッシュ法で熱伝導シートの厚み方向の熱拡散率を測定した。

(2)メトラー・トレド社製の天秤「XS204」を用いて、熱伝導シートの比重をアルキメデス法(「固体比重測定キット」使用)で測定した。

(3)セイコーインスツル社製の「DSC320/6200」を用い、10℃/分の昇温条件の下、25℃における熱伝導シートの比熱を求めた。

(4)得られた熱拡散率に比重及び比熱を乗じて、熱伝導シートの熱伝導率を算出した。
【0226】

(評価基準)

測定された熱伝導率を下記基準に照らして区分し、熱伝導性の評価とした。

「A+」:15W/m・K以上

「A」: 10W/m・K以上15W/m・K未満

「B」: 8W/m・K以上10W/m・K未満

「C」: 5W/m・K以上8W/m・K未満

「D」: 5W/m・K未満

結果を表1に示す。
【0227】

<絶縁性>

上記「熱伝導性」の評価と同様にして作製した熱伝導性シートの、23℃相対湿度65%における体積抵抗値を、ハイレスタMCP-HT450型((株)三菱化学アナリテック製)を用いて測定した。
【0228】

(評価基準)

測定された熱伝導性シート体積抵抗値を下記基準に照らして区分し、絶縁性を評価した。

「A」: 1014Ω・cm以上

「B」: 1012Ω・cm以上1014Ω・cm未満

「C」: 1010Ω・cm以上1012Ω・cm未満

「D」: 1010Ω・cm未満
【0229】

<接着性>

銅板同士を被着体とし、組成物を接着剤として用いて、JIS K 6850に準ずる引張りせん断試験を実施した。

なお、試験体は2枚の銅板(サイズ:100mm×25mm×0.3mm)を、接着面積12.5mm×25mmで貼り合わせて作製した。

組成物の硬化条件は、熱伝導性測定において熱伝導性シートを作製した際と同様にした。

試験には、テンシロン万能材料試験機RTc-1225Aを使用し、引張速度は0.05mm/sとした。
【0230】

(評価基準)

測定された破断応力を下記基準に照らして区分し、接着性を評価した。

「A」: 5MPa以上

「B」: 4MPa以上5MPa未満

「C」: 4MPa未満
【0231】

[結果]

以下、表1を示す。

表1中、「含有量(%)」の欄は、各成分の、全固形分に対する含有量(質量%)を示す。

「水酸基含有量(mmol/g)」の欄は、使用したフェノール化合物における、フェノール性水酸基の含有量(mmol/g)を示す。

「エポキシ基含有量(mmol/g)」の欄は、使用したエポキシ化合物(一般式(1)で表される化合物、又は、その他のエポキシ化合物)における、エポキシ基の含有量(mmol/g)を示す。

「一般式(1)で表わされる化合物の対有機固形分含有量(%)」の欄は、組成物中における一般式(1)で表される化合物の、全有機固形分に対する含有量(質量%)を示す。
【0232】

【表1】
【0233】

【表2】
【0234】

【表3】
【0235】

【表4】
【0236】

【表5】
【0237】

【表6】
【0238】

【表7】
【0239】

表に示す結果より、本発明の組成物によれば、熱伝導性に優れた熱伝導材料を与え得ることが確認された。また、上記熱伝導材料は、絶縁性及び接着性にも優れることが確認された。
【0240】

また、一般式(1)で表される化合物において、Zが、炭素数1~7のアルキレン基(アルキレン基を構成する-CH-の1個以上が、-O-で置き換えられていてもよい)である場合、得られる熱伝導材料の、熱伝導性、絶縁性、及び/又は、接着性がより優れることが確認された。

(一般式(1)で表される化合物としてB-11を使用した実施例と、その他の一般式(1)で表される化合物を使用した実施例との比較等)
【0241】

一般式(1)で表される化合物の含有量が、組成物の全有機固形分に対して、40.0質量%以上である場合、得られる熱伝導材料の、絶縁性、及び/又は、接着性がより優れることが確認された。

(実施例89~99と、実施例1~11との比較等)
【0242】

組成物が、一般式(1)で表される化合物以外には、エポキシ基を有する化合物を実質的に含まない場合、得られる熱伝導材料の、絶縁性、及び/又は、接着性がより優れることが確認された。

(実施例89~99と、実施例1~11との比較等)
【0243】

組成物中、無機窒化物の含有量が、無機物の全質量に対して、50質量%以上である場合、得られる熱伝導材料の、熱伝導性がより優れることが確認された。

(実施例171~181と、実施例12~22との比較等)
【0244】

組成物が、無機窒化物用表面修飾剤を含む場合、得られる熱伝導材料の、熱伝導性及び絶縁性がより優れることが確認された。(実施例22と、実施例143及び154の比較等)