(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】光学装置
(51)【国際特許分類】
H01J 65/04 20060101AFI20221212BHJP
H01J 61/35 20060101ALI20221212BHJP
H05H 1/24 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
H01J65/04 Z
H01J61/35 Z
H05H1/24
(21)【出願番号】P 2021119800
(22)【出願日】2021-07-20
(62)【分割の表示】P 2018529104の分割
【原出願日】2016-12-05
【審査請求日】2021-07-20
(32)【優先日】2015-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500049141
【氏名又は名称】ケーエルエー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベゼル イリヤ
(72)【発明者】
【氏名】シュメリニン アナトリー
(72)【発明者】
【氏名】グロス ケネス ピー
(72)【発明者】
【氏名】パンザー マシュー
(72)【発明者】
【氏名】チーマルギ アナント
(72)【発明者】
【氏名】ウィルソン ローレン
(72)【発明者】
【氏名】ウィッテンバーグ ジョシュア
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-034672(JP,A)
【文献】特開2001-196304(JP,A)
【文献】実開平04-124230(JP,U)
【文献】特表2016-513351(JP,A)
【文献】特表2013-539592(JP,A)
【文献】特表2015-505419(JP,A)
【文献】特開2007-121505(JP,A)
【文献】特開2002-107632(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 65/04
H01J 61/35
H05H 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射性素子及び透過素子のうち少なくとも一方を有する光学部材と、
上記反射性素子及び上記透過素子のうち少なくとも1個の一表面又は複数表面上に配された1個又は複数個の傾斜吸収層であり、プラズマにより放射された広帯域輻射により引き起こされる当該反射性素子及び当該透過素子のうち少なくとも1個の
熱勾配を低減する、1個又は複数個の傾斜吸収層と、
を備え
、前記プラズマはレーザ維持プラズマ広帯域照明源で生成され、
前記傾斜吸収層が、前記レーザ維持プラズマ広帯域照明源の使用可能スペクトル帯から離れた広帯域輻射を吸収する吸収性素材を含む光学装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光学装置であって、その傾斜吸収プロファイルが、上記反射性素子及び上記透過素子のうち少なくとも1個の上に射突する広帯域輻射の強度プロファイルに対応している光学装置。
【請求項3】
請求項1に記載の光学装置であって、その傾斜吸収プロファイルが、上記反射性素子及び上記透過素子のうち少なくとも1個の、最高強度の広帯域輻射を受光している部分にて、その広帯域輻射のうち少なくとも一部分につき最低吸収率を呈する光学装置。
【請求項4】
請求項1に記載の光学装置であって、その傾斜吸収プロファイルが、上記反射性素子及び上記透過素子のうち少なくとも1個の、最低強度の広帯域輻射を受光している部分にて、その広帯域輻射のうち少なくとも一部分につき最高吸収率を呈する光学装置。
【請求項5】
請求項1に記載の光学装置であって、その傾斜吸収プロファイルが、上記反射性素子及び上記透過素子のうち少なくとも1個の一方向又は複数方向に沿い連続的な吸収率変化を呈する光学装置。
【請求項6】
請求項5に記載の光学装置であって、上記1個又は複数個の透過素子の上記一表面又は複数表面が、
内表面及び外表面のうち少なくとも一方を含む光学装置。
【請求項7】
請求項1に記載の光学装置であって、上記1個又は複数個の傾斜吸収層が、アルミニウム、炭素及びハフニウムのうち少なくとも一種類で形成されている光学装置。
【請求項8】
請求項1に記載の光学装置であって、上記透過素子が、プラズマバルブ、プラズマセル、プラズマチャンバの窓、レンズ及びビームスプリッタのうち少なくとも1個を備える光学装置。
【請求項9】
請求項1に記載の光学装置であって、上記反射性素子が、鏡及びビームスプリッタのうち少なくとも1個を備える光学装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概してプラズマ式光源に関し、より具体的には1個又は複数個の透明部分を有しその部分が傾斜吸収フィーチャを有するプラズマ式光源に関する。
【背景技術】
【0002】
(関連出願への相互参照)
本願は、「バルブ及びVUV光学系の温度制御用傾斜被覆」(GRADED COATINGS FOR TEMPERATURE CONTROL OF BULBS AND VUV OPTICAL)と題しIlya Bezel、Anatoly Shchemelinin、Ken Gross、Matthew Panzer、Anant Chimmalgi、Lauren Wilson及びJoshua Wittenbergを発明者とする2015年12月6日付米国暫定特許出願第62/263663号に基づき米国特許法第119条(e)の規定による利益を主張し、且つ当該暫定特許出願の通常(非暫定)特許出願を構成する出願であるので、この参照を以て当該暫定特許出願の全容を本願に繰り入れることにする。
【0003】
かつてなく小さなデバイスフィーチャを有する集積回路への需要が増し続けており、ひいてはそれら小型化進行中のデバイスの検査用に秀逸な照明源を求む需要が成長し続けている。そうした照明源の一つにレーザ維持プラズマ光源がある。レーザ維持プラズマ光源はハイパワー広帯域光を発生させうる光源である。レーザ維持光源を動作させる際には、レーザ輻射をガス塊内に集束させることでそのガス例えばアルゴン又はキセノンをプラズマ状態、即ち光を放射可能な状態まで励起する。この現象は、通常、プラズマの「ポンピング」と呼ばれている。従来のプラズマランプはプラズマ生成用ガスが収容されるプラズマバルブ又はセルを有するものであり、通常はそれがガラス又は結晶質素材で形成されている。動作中には、プラズマにより放射された広帯域輻射によるプラズマランプの不均一加熱によって引き起こされた温度勾配が、プラズマランプに現れることがある。熱勾配が強いとプラズマランプ内に応力が発生しかねず、場合によってはそれにより機械的故障が引き起こされる。例えば、強力な広帯域輻射がプラズマランプの窓を通り抜けると、その窓の中央部が優先的に加熱されることで熱応力が発生し、それによりその窓にクラックが入る可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第7435982号明細書
【文献】米国特許第7786455号明細書
【文献】米国特許第7989786号明細書
【文献】米国特許第8182127号明細書
【文献】米国特許第8309943号明細書
【文献】米国特許第8525138号明細書
【文献】米国特許第8921814号明細書
【文献】米国特許第9318311号明細書
【文献】米国特許出願公開第2014/029154号明細書
【文献】米国特許第7705331号明細書
【非特許文献】
【0005】
【文献】A.Schreiber et al., Radiation Resistance of Quartz Glass for VUV Discharge Lamps, J.Phys.D: Appi.Phys.38(2005), 3242-3250
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、欠点例えば上掲のそれを癒やせる装置、システム及び方法を提供することが望ましいと言えよう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の1個又は複数個の実施形態に係り傾斜吸収特性を有する光学装置が開示される。ある実施形態に係る光学装置は、反射性素子及び透過素子のうち少なくとも一方を有する光学部材を備える。また、ある実施形態では、その光学装置が、上記反射性素子及び透過素子のうち少なくとも1個の一表面又は複数表面上に配された1個又は複数個の傾斜吸収層を有する。また、ある実施形態では、上記1個又は複数個の傾斜吸収層によって、プラズマにより放射された広帯域輻射により引き起こされる、上記反射性素子及び透過素子のうち少なくとも1個の加熱を制御する。
【0008】
本開示の1個又は複数個の実施形態に係り傾斜吸収特性を有するレーザ維持プラズマ(LSP)ランプが開示される。ある実施形態に係るLSPランプは、ガス塊を収容しうるよう構成されたガス収容構造を備える。また、ある実施形態では、そのガス収容構造が、そのガス塊内にプラズマを発生させるためポンプレーザからポンプ照明を受光するよう構成される。また、ある実施形態ではそのプラズマにより広帯域輻射が放射される。また、ある実施形態では、そのガス収容構造が、ポンプレーザからのポンプ照明のうち少なくとも一部分と、プラズマにより放射された広帯域輻射のうち少なくとも一部分と、に対し少なくとも部分的に透明な透過性構造を、1個又は複数個備える。また、ある実施形態では、上記1個又は複数個の透過性構造が、プラズマにより放射された広帯域輻射により引き起こされる当該1個又は複数個の透過性構造の加熱を制御しうるよう、傾斜吸収プロファイルを有するものとされる。
【0009】
本開示の1個又は複数個の実施形態に係る広帯域レーザ維持プラズマ光システムが開示される。ある実施形態に係るシステムは、照明を生成するよう構成された1個又は複数個のポンプレーザを備える。また、ある実施形態では、そのシステムがプラズマランプを備える。また、ある実施形態では、そのプラズマランプが、ガス塊を収容しうるよう構成されたガス収容構造を備え、そのガス収容構造が、そのガス塊内にプラズマを発生させるためポンプレーザからポンプ照明を受光するよう構成され、そのプラズマから広帯域輻射が放射される。また、ある実施形態では、そのガス収容構造が、ポンプレーザからのポンプ照明のうち少なくとも一部分と、プラズマにより放射された広帯域輻射のうち少なくとも一部分と、に対し少なくとも部分的に透明な透過性構造を、1個又は複数個備える。また、ある実施形態では、上記1個又は複数個の透過性構造が、プラズマにより放射された広帯域輻射により引き起こされる当該1個又は複数個の透過性構造の加熱を制御しうるよう、傾斜吸収プロファイルを有するものとされる。また、ある実施形態に係るシステムは、上記1個又は複数個のポンプレーザからの照明をそのガス塊内に集束させることで、プラズマランプ内に収容されているガス塊内にプラズマを発生させるよう構成された、1個又は複数個のランプ光学系を備える。
【0010】
ご理解頂けるように、上掲の概略記述及び後掲の詳細記述は共に専ら例示的且つ説明的なものであり、特許請求の範囲に記載されている発明を必ずしも限定するものではない。添付図面は、本件開示に組み込まれると共に明細書の一部を構成し、本件開示の諸実施形態を描出するものであり、概略記述と相俟ち本発明の諸原理を説明する役を負っている。
【0011】
本件技術分野に習熟した者(いわゆる当業者)であれば、以下の如き添付図面を参照することで、本件開示の数多い長所をより良好に理解できよう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】本開示の1個又は複数個の実施形態に係り、プラズマにより放射された輻射の強度差を原因とする温度勾配が現れるプラズマランプの、ガス収容構造の断面図である。
【
図1B】本開示の1個又は複数個の実施形態に係り、プラズマにより放射された輻射の強度差を原因とする温度勾配が現れるプラズマランプの、ガス収容構造の熱画像である。
【
図1C】本開示の1個又は複数個の実施形態に係り、プラズマにより放射された輻射の強度差を原因とする温度勾配が現れるプラズマランプの、ガス収容構造の赤道からの高さに対する温度のグラフである。
【
図1D】本開示の1個又は複数個の実施形態に係り、同システムのプラズマランプの透過素子上に位置する1個又は複数個の傾斜吸収層が設けられたプラズマ依拠広帯域輻射生成システムの上位模式図である。
【
図1E】本開示の1個又は複数個の実施形態に係り、ガス収容構造沿い均一加熱を成すべく傾斜吸収層が設けられたプラズマランプのガス収容構造の断面図である。
【
図1F】本開示の1個又は複数個の実施形態に係り、プラズマにより放射された輻射の強度差を原因とする温度勾配が現れるプラズマランプの、ガス収容構造の赤道からの高さに対するプラズマ照射量のグラフである。
【
図1G】本開示の1個又は複数個の実施形態に係り、プラズマにより放射された輻射の強度差を原因とする温度勾配が現れるプラズマランプの、ガス収容構造の赤道からの高さに対する、ガス収容構造による吸熱量のグラフである。
【
図1H】本開示の1個又は複数個の実施形態に係り、プラズマにより放射された輻射の強度差を原因とする透過内熱勾配をオフセットするため透過素子に求められる被覆吸収率を、赤道上方高の関数として表したグラフである。
【
図2A】本開示の1個又は複数個の実施形態に係り、傾斜吸収層を有していないプラズマランプの透過素子による表面吸収を示す概念図である。
【
図2B】本開示の1個又は複数個の実施形態に係り、傾斜吸収層を有しているプラズマランプの透過素子による表面吸収を示す概念図である。
【
図3A】本開示の1個又は複数個の実施形態に係り、方向性冷却が生じるプラズマバルブ上に配された傾斜吸収層の簡略模式図である。
【
図3B】本開示の1個又は複数個の実施形態に係り、横向きのプラズマバルブ上に配された傾斜吸収層の簡略模式図である。
【
図4】本開示の1個又は複数個の実施形態に係り、ガス収容構造沿いに傾斜吸収プロファイルを形成すべく吸収性素材がドーピングされた透過性構造を有するプラズマランプの、ガス収容構造の断面図である。
【
図5A】本開示の1個又は複数個の実施形態に係り、透明光学部材上に配された傾斜吸収層の断面図である。
【
図5B】本開示の1個又は複数個の実施形態に係り、反射性光学部材上に配された傾斜吸収層の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面に示す開示主題を詳細に参照することにする。
【0014】
図1A~
図5B全体を参照し、本開示に係り傾斜吸収フィーチャが設けられたレーザ維持プラズマ(LSP)広帯域照明源について述べる。本開示のある種の実施形態は、光維持プラズマ光源による輻射の生成を指向している。その光維持プラズマ光源は、透過素子(例.プラズマバルブの透明壁、プラズマセルの透明壁、窓等々)が設けられたプラズマランプを有していて、そのプラズマランプ内のプラズマを維持するのに用いられるポンプ光(例.レーザ光源からの光)と、そのプラズマによって放射される広帯域輻射と、の双方に対しその透過素子が少なくとも部分的に透明なものとすることができる。本件開示のある種の実施形態では、そのプラズマランプの1個又は複数個の透明部分上に1個又は複数個の傾斜吸収層が形成される。本開示の他種実施形態では、そのプラズマランプの1個又は複数個の透明部分に傾斜吸収プロファイルが現れるよう、プラズマランプの1個又は複数個の透明部分がバルクドーピングされる。
【0015】
上掲の1個又は複数個の傾斜吸収層及び/又はバルクドーピングは、1個又は複数個の透明、半透明及び/又は反射性界面が必要ないずれの光学システムの文脈でも用いうる。上掲の1個又は複数個の吸収層は任意個数の高温光学環境で用いうる。
【0016】
光学部材内光吸収の制御欠如は、プラズマ至近光学部材内に強い熱勾配を発生させるもとになりうる。LSP容器(例.プラズマバルブ、セル、チャンバ)にて用いられる光学素材の多くは比較的脆く、強い熱勾配には耐えられない。強い熱勾配は応力、特に大きめの光学部材に対するそれを引き起こしかねず、これは最終的にその光学部材の機械的故障につながりうる。
【0017】
窓やその他の透過性光学部材に関しては、不均一加熱により引き起こされる応力を低減する上で熱管理が重要となる。これに限られるものではないが、プラズマセル又はプラズマバルブの透過素子(例.窓)をはじめとする光学部材では、応力の主因の一つが、プラズマにより放射されたVUV光の表面吸収である。高強度アプリケーションでは、熱応力が透過素子の素材強度に打ち克ち、その透過素子のカタストロフィ的故障を引き起こすこととなりかねない。傾斜吸収層の実現及び/又は透過素子のバルクドーピングの実施により傾斜吸収を実現することで、制御されたパターンの応力分布を発生させることができる。
【0018】
光維持プラズマの生成が2008年10月14日発行の特許文献1にも概述されているので、この参照を以てその全容を本願に繰り入れることにする。プラズマの生成が2010年8月31日発行の特許文献2にも概述されているので、この参照を以てその全容を本願に繰り入れることにする。プラズマの生成が2011年8月2日発行の特許文献3にも概述されているので、この参照を以てその全容を本願に繰り入れることにする。プラズマの生成が2012年5月22日発行の特許文献4にも概述されているので、この参照を以てその全容を本願に繰り入れることにする。プラズマの生成が2012年11月13日発行の特許文献5にも概述されているので、この参照を以てその全容を本願に繰り入れることにする。プラズマの生成が2013年2月9日発行の特許文献6にも概述されているので、この参照を以てその全容を本願に繰り入れることにする。プラズマの生成が2014年12月30日発行の特許文献7にも概述されているので、この参照を以てその全容を本願に繰り入れることにする。プラズマの生成が2016年4月19日発行の特許文献8にも概述されているので、この参照を以てその全容を本願に繰り入れることにする。プラズマの生成が2014年3月25日付特許文献9にも概述されているので、この参照を以てその全容を本願に繰り入れることにする。概して、本件開示の諸実施形態は本件技術分野で既知なあらゆるプラズマ式光源に敷衍しうるものと解されるべきである。プラズマ生成の文脈で用いられる光学システムが2010年4月27日発行の特許文献10に概述されているので、この参照を以てその全容を本願に繰り入れることにする。プラズマ光源における別体な照明光学系及び集光光学系の使用が2016年6月20日付米国特許出願第15/187590号に概述されているので、この参照を以てその全容を上述の如く本願に繰り入れることにする。バルブレス光源におけるプラズマの生成が2014年3月25日付米国特許出願第14/224945号に概述されているので、この参照を以てその全容を上述の如く本願に繰り入れることにする。バルブレスレーザ維持プラズマ光源が2010年5月26日付米国特許出願第12/787827号にも概述されているので、この参照を以てその全容を本願に繰り入れることにする。
【0019】
図1A~
図1Cに、本件開示の1個又は複数個の実施形態に従い、プラズマランプにおける不均一加熱の原因及び影響を示す。ここに注記すべきことに、プラズマランプのバルブエンベロープにおける熱分布は、そのバルブの壁への熱供給(主としてプラズマ輻射の吸収及び対流を通じてのそれ)と、主としてそのバルブ及び熱輻射の外側での強制空気対流を通じての除熱・冷却と、のバランスで定まる。同様に、プラズマセル及びチャンバの光学部材における温度分布は、輻射の吸収による加熱と、除熱・冷却(例.対流冷却や水冷)と、のバランスで定まる。
【0020】
図1Aは、本開示の1個又は複数個の実施形態に係り、プラズマ16により放射された輻射10,12の強度差を原因とする温度勾配が現れるプラズマランプ101の、ガス収容構造の断面図である。注記すべきことに、その主たる輻射熱源はLSPであり、ガス収容構造の透過素子14上での発熱を支配しているのは、そのガス収容構造の透過素子14の壁からLSPまでの距離、LSP放射スペクトラム、及び/又は、透過素子14の吸収率である。この状況では、LSPのそばにある光学部材(例.円筒状バルブの赤道部)がより高温になり、プラズマから離れたところにある光学部材がより低温になる。
図1Bは、本開示の1個又は複数個の実施形態に係り、プラズマにより放射された輻射の強度差に少なくとも部分的に起因する温度勾配が現れるプラズマランプの、バルブの熱画像20である。
図1Cは、本開示の1個又は複数個の実施形態に係り、プラズマにより放射された輻射の強度差を原因とする温度勾配が現れるプラズマランプ(高さ=0がプラズマランプの赤道に対応)のバルブにおける、赤道からの高さに対する温度のグラフ30である。
【0021】
図1Dに、本開示の1個又は複数個の実施形態に係り、1個又は複数個の傾斜吸収フィーチャが設けられたプラズマランプ101を備えるレーザ維持プラズマ形成システム100を示す。
【0022】
ある実施形態に係るシステム100は、これに限られるものではないが赤外輻射又は可視輻射をはじめ、指定波長又は波長域の照明109を生成するよう構成された照明源111(例.1個又は複数個のレーザ)を備える。また、ある実施形態に係るシステム100は、プラズマ106を生成又は維持するためのプラズマランプ101を備える。また、ある実施形態では、そのプラズマランプ101が、1個又は複数個の透過素子104(例.透明又は半透明な光学素子)を有する1個又は複数個のガス収容構造103(例.プラズマバルブ、プラズマセル、プラズマチャンバ等々)を備える。当該1個又は複数個の透過素子104の例としては、これに限られるものではないが、透明又は半透明な窓、プラズマバルブ壁、プラズマセル壁等がある。ある実施形態では、プラズマランプ101のガス収容構造103の透過素子104が、照明源111から照明を受光し、そのプラズマランプ101に収容されているガス塊108のプラズマ生成領域内にプラズマ106を発生させるよう構成される。この構成では、プラズマランプ101のガス収容構造103の1個又は複数個の透過素子104を、照明源111により生成される照明に対し少なくとも部分的に透明なものとすることで、照明源111により送給される照明(例.光ファイバ結合を介し送給されたもの又は自由空間結合を介し送給されたもの)を、その透過素子104を介しプラズマランプ101内に送ることができる。また、ある実施形態では、照明源111からの照明の吸収に応じ、プラズマ106が広帯域輻射(例.広帯域赤外、広帯域可視、広帯域UV、広帯域DUV、広帯域VUV及び/又は広帯域EUV輻射)を放射する。また、ある実施形態では、プラズマランプ101のガス収容構造103の1個又は複数個の透過素子104が、プラズマ106により放射された広帯域輻射のうち少なくとも一部分に対し、少なくとも部分的に透明なものとされる。ここに注記すべきことに、プラズマランプ101のガス収容構造103の1個又は複数個の透過素子104が、照明源111からの照明107並びにプラズマ106からの広帯域照明115の双方に対し透明であってもよい。
【0023】
また、ある実施形態では、プラズマランプ101に1個又は複数個の傾斜吸収フィーチャ102が設けられる。
【0024】
図1Eは、本開示の1個又は複数個の実施形態に係るプラズマランプ101のうち、1個又は複数個の傾斜吸収フィーチャ102が設けられている部分を示す図である。ある実施形態では、プラズマランプ101のガス収容構造103が透過性構造107を有する。透過性構造107は、ポンプレーザ111からのポンプ照明109のうち少なくとも一部分と、プラズマ106により放射された広帯域輻射110のうち少なくとも一部分と、に対し少なくとも部分的に透明である。また、ある実施形態では、透過性構造107が、プラズマ106により放射された広帯域輻射により引き起こされる当該1個又は複数個の透過性構造の加熱を制御しうるよう、傾斜吸収プロファイルを有する。
【0025】
ある実施形態では、透過性構造107が、透過素子104(例.バルブの壁、プラズマセルの壁、窓等々)と、その透過素子104の表面上に配された1個又は複数個の傾斜吸収層102とを有する。透過素子104の例としては、これに限られるものではないが、プラズマバルブの壁、プラズマセルの壁、プラズマチャンバの窓等、何らかの全体として非吸収性な透過素子がある。傾斜吸収層102は、透過性構造107の傾斜吸収プロファイルが実現されるよう透過素子104の一表面又は複数表面上に配することができる。
【0026】
注記すべきことに、傾斜吸収層102は、指定された熱分布が実現されるよう形成することができる。
【0027】
ある実施形態によれば、透過素子104上に射突する広帯域輻射110の強度プロファイルに対しほぼ逆マッチするよう、透過素子104の表面上に吸収層102を形成することができる。この構成によれば、吸収層102の吸収率が広帯域輻射110の強度プロファイルとは逆方向に変化するので、ガス収容構造103の透過性構造107の一方向又は複数方向(例.軸方向)沿い熱勾配を小さくすることができる。吸収層102におけるこうした吸収率分布は、透過素子104全体に亘り均一な温度分布を実現するに当たり助けとなりうるものであり、それにより透過素子104内応力が弱まるほか、太陽光アニーリング(solarization annealing)に相応しい温度が実現される。更に注記すべきことに、透過素子104(又はその他の光学部材)の一方向又は複数方向(例.円筒形状なら軸方向)に沿った均一温度化が実現されることは、これに限られるものではないがAl2O3、CaF2、MgF2等をはじめとする素材で脆弱な透過素子104が形成されている場合に、とりわけ望ましいことである。
【0028】
ある実施形態によれば、吸収層102の吸収率を、指定方向(例.円筒形状なら軸方向)に沿い連続的に変化させることができる。例えば、吸収層の吸収率が最高広帯域輻射強度点115にて最低値、最低広帯域輻射強度点113,117にて最高値となるよう、吸収層102を形成することができる。例えば円筒状ガス収容構造103の場合には、
図1Eに示すように、吸収層102の傾斜吸収プロファイルを、その吸収層の吸収率がガス収容構造103の一端又は複数端113,117にて最低値、同ガス収容構造103の赤道部115にて最高値を呈するものにする。この例で、透過素子104の上/下縁113,117(例.窓)付近が中央105よりも高吸収率となるよう吸収層102を付加することで、制御されたパターンの応力分布を実現可能となるのは、帰結たる熱プロファイルが透過素子104内の径方向応力の弱化につながるためである。吸収層102の吸収率は、例えば、その最高吸収率が10~100%で最低吸収率が0%かそれに近いものにすることができる(最高吸収率が20%である場合に係る
図1Hを参照のこと)。
【0029】
吸収層102は、プラズマランプ101の透過素子104の内表面上及び/又は外表面上に配置するとよい。これもまた注記すべきことに、透過素子104の両側(即ち内表面上及び外表面上)に吸収層102を付加することは、透過素子104内長手方向応力分布を管理する上で助力となりうる。
【0030】
ある実施形態では、吸収層102が、透過素子104の一表面又は複数表面上に堆積/形成された吸収性被覆を有する。吸収層102の吸収率が一方向又は複数方向に沿い必要分だけ変化するよう吸収層102を形成することで、さもなければ透過素子104内に現れていたはずの熱勾配を緩和することができる。層102の吸収率は透過素子104沿い位置の関数であり、吸収層形成用素材の密度を制御することで制御することができる。また、ある実施形態によれば、その吸収率が異なる複数種類の素材を用いることで、透過素子104沿い位置の関数たる吸収率を制御することができる。
【0031】
吸収層102は、これに限られるものではないが蒸着、スパッタリング、化学気相成長(CVD)、原子層堆積(ALD)等をはじめ、本件技術分野で既知な任意の薄膜堆積プロセスを利用し堆積させることができる。
【0032】
注記すべきことに、傾斜吸収層102形成用素材には、光学分野で既知なあらゆる吸収性光学部材被覆/層形成素材を含めることができる。ある種の実施形態によれば、広帯域輻射110のスペクトラムの全部又は大部分を吸収する一種類又は複数種類の素材で吸収層102を形成することができる。例えば、これに限られるものではないがアルミニウム、炭素等をはじめとする広域吸収性素材で吸収層102を形成するとよい。他の諸実施形態によれば、広帯域輻射110のスペクトラムの一部分を吸収する一種類又は複数種類の素材で吸収層102を形成することができる。例えば、これに限られるものではないがハフニウム等をはじめとする部分吸収性素材で吸収層102を形成するとよい。
【0033】
更に注記すべきことに、その吸収スペクトラムがLSP光源101の使用可能スペクトル帯から離れたところにある素材で吸収層102を形成することができる。吸収層102による吸収を広帯域輻射110の使用不能スペクトル部分に限ることで、光出力性能が影響されないようにしつつ、熱勾配低減を通じ透過素子104内応力を弱めることができる。例えば可視光がプラズマ106から集光される場合には、プラズマ106の広帯域出力のうち使用不能UV光が吸収されるよう、ハフニウムをベースとする傾斜吸収層102を設けるとよい。
【0034】
図1F~
図1Hに、本開示の1個又は複数個の実施形態に係る光源100の光出力と、その光源100の透過素子104内熱応力を緩和するのに適した傾斜吸収層102と、の関係の一例を示す。この例では、その光源が円筒状のランプ(例.結晶質又はガラス質のガス収容構造を有する円筒状のランプ)を有し、そのランプの直径が30mmであり(R=15mmであり)、P=10kWのパワー出力を有するプラズマの赤道面からz=±30mmに亘りその円筒状ランプに係る均一温度分布を保つことが必要であると、仮定されている。吸収層102の吸収率は、次の式
A[%]={max(Q)-Q}/W*100%
を用い算出することができる;式中、Wはガス収容構造103の透過素子104(例.ガラス壁)上における輻射光束の分布であり
W=P
plasma/{4π(R
2+z
2)}
により与えられるもの、Qはガス収容構造の透過素子104(例.ガス収容構造のガラス壁)により吸収されるパワー密度であり
Q=A
glass・W
により与えられるもの、A
glassはガス収容構造103のガラス製円筒状透過素子104の吸収率である。
【0035】
図1Fは、プラズマ照射量をガス収容構造103の赤道下方高及び上方高の関数として表したグラフ120である。
図1Gは、ガス収容構造103の透明部分104のガラスによる吸熱量130を、ガラスが5%吸収(即ちA
glass=5%)である場合につき示す図である。
図1Hは、本件開示の1個又は複数個の実施形態に係る透過素子104のz方向に沿った温度勾配を緩和し均一温度化するための被覆吸収率(%単位)を示すグラフ140である。この例では、最高吸収率がガス収容構造103の端部での20%吸収であり、赤道では0%吸収である。ここに注記すべきことに、この例は本件開示の技術的範囲についての限定ではなく、単に例証目的で提示されているに過ぎない。
【0036】
図2A,
図2Bは、傾斜吸収層102不具備,具備のプラズマランプ101の透過素子104による表面吸収を示す概念
図200,210である。
図2Aに示すように、傾斜吸収層102がない場合は、ある強度勾配を有する光が透過素子104の壁上に射突する。注記すべきことに、透過素子沿い吸収光量が透過素子104沿い光強度の関数となる。この構成では、ある特定の個所で光が強めになり、そうした個所ではより多くの光が吸収される。曲線204は、吸収光量を透過素子沿い位置の関数として概念的に表したものである。強度勾配を有する光の吸収は、強い温度勾配205を、透過素子104の壁内にその光201の吸収を通じ引き起こす。これに対し、
図2Bに示すように、傾斜吸収層102の付加には、吸収光量を透過素子104に沿い平滑する作用がある。この構成では、光201の強度が低いところでその関数たる吸収率を高めることで、透過素子104沿いの各個所での吸収光量を平滑し一定値に近づけることができる。曲線206は、吸収光量を透過素子104沿い位置の関数として概念的に表したものである。このように、透過素子104に沿い均一な吸収は、傾斜吸収層がない場合に観測されるそれに比べ弱い温度勾配207を発生させる。
【0037】
図3Aは、本開示の1個又は複数個の実施形態に係り、方向性冷却を呈するプラズマバルブ上に配された傾斜吸収層の簡略模式図である。注記すべきことに、この構成によれば、方向性冷却により、プラズマバルブ101の一方の側部304をあまり加熱させず(強めに除熱・冷却し)、そのプラズマバルブ101の逆側の側部302を側部304よりも強い加熱に供することができる。この例では、強めの除熱・冷却に供される側部304上に傾斜吸収層102が配されているので、その側部304上での広帯域輻射110の吸収量を増し、プラズマバルブ101全体に亘りより均一な温度分布を発生させることができる。
【0038】
図3Bは、本開示の1個又は複数個の実施形態に係り、横向きのプラズマバルブ上に配された傾斜吸収層の簡略模式図である。注記すべきことに、この横型構成によれば、対流プルーム301により、プラズマバルブ101の上部302を更に加熱することができる。この例によれば、プラズマランプ101の下部304上に傾斜吸収層102が配されているので、広帯域輻射110の吸収量を増し、プラズマバルブ101全体に亘りより均一な温度分布を発生させることができる。
【0039】
図4は、本開示の1個又は複数個の実施形態に係り、ガス収容構造に沿い傾斜吸収プロファイルを形成すべく吸収性素材がドーピングされた透過性構造を有する、プラズマランプのガス収容構造の断面図である。プラズマバルブ又はプラズマセルの何であれ透明/半透明な透過素子の表面上に傾斜吸収層102を設けることが、本件開示の大部分で焦点とされているが、そうした構成を以て本件開示の技術的範囲に対する限定と解すべきではない。ある代替的及び/又は付加的実施形態によれば、プラズマランプ101の吸収プロファイルを、プラズマランプ101のガス収容構造103の透過素子にバルクドーピングすることで、制御することができる。例えば、
図4に示すように、ガス収容構造103の1個又は複数個の透過性構造を、傾斜吸収プロファイルを呈するようドーピングされた透過素子402(例.プラズマランプの壁、プラズマセルの壁、窓等)を有するものにする。この構成では、所与透過素子の製造中に、透過性素子形成用バルク素材内に吸収性素材をドーピングすることで、その所与透過素子の一方向又は複数方向に沿い傾斜吸収プロファイルを発生させることができる。
【0040】
プラズマランプ101の透過性部分における温度勾配を弱めるべく傾斜吸収層(又はバルクドーピング)を実現・実施することが上掲の開示の大部分で焦点とされているが、それらの例を以て本開示の技術的範囲に対する限定と解すべきではない。寧ろ、ここで注記すべきことに、傾斜吸収層の実現及び/又はバルク透明素材のドーピングの実施は、本願にて上述の如く、光の吸収を通じ所与光学部材内に温度勾配が形成されうるあらゆる種類の光学部材に敷衍することができる。例えば、傾斜吸収層の実現及び/又は吸収性素材によるバルク素材のドーピングの実施を、これに限られるものではないが窓、レンズ、鏡、ビームスプリッタ等をはじめ、本件技術分野で既知なあらゆる透過性及び/又は反射性光学部材に敷衍することができる。
図5Aは、本開示の1個又は複数個の実施形態に係り、透明又は半透明光学部材502上に配された傾斜吸収層102の断面
図500である。ある実施形態によれば、光学部材502を、透過素子(例.ガラス又は水晶片)を有するものとすることができる。ある実施形態によれば、透明又は半透明光学部材502を、窓(例.プラズマチャンバの窓)を有するものとすることができる。また、ある実施形態によれば、その透明又は半透明光学部材を、レンズを有するものとすることができる。また、ある実施形態によれば、その透明又は半透明光学部材を、ビームスプリッタを有するものとすることができる(透過性部材及び反射性部材双方を有するビームスプリッタでなくてもよい)。傾斜吸収層102は、その層の吸収率が層102上に入射した不均一光501の強度プロファイルに対応するものとなり、最も強い光がその層102の最低吸収率部分上に射突するよう、形成することができる。
【0041】
図5Bは、本開示の1個又は複数個の実施形態に係り、反射性又は半反射性光学部材510上に配された傾斜吸収層の断面図である。ある実施形態では、光学部材510が反射性素子(例.反射性素材で被覆されたガラス又は水晶片)を有する。ある実施形態によれば、その反射性又は半反射性光学部材を、鏡を有するものとすることができる。例えば、その反射性又は半反射性光学部材を、ダイクロイックミラーを有するものとすることができる。また、ある実施形態によれば、その反射性又は半反射性光学部材を、反射器又は集光器を有するものとすることができる。また、ある実施形態によれば、その反射性又は半反射性光学部材を、ビームスプリッタを有するものとすることができる。傾斜吸収層102は、その層の吸収率が層102上に入射した不均一光501の強度プロファイルに対応するものとなり、最も強い光がその層102の最低吸収率部分上に射突するよう、形成することができる。
【0042】
翻って
図1Dに示すように、ある実施形態によれば、好適な照明を吸収してプラズマを発生させるのに適し本件技術分野で既知な指定ガス(例.アルゴン、キセノン、水銀等)は、いずれもプラズマランプ101に収容させることができる。ある実施形態によれば、照明源111からの照明109をガス塊108内へと集束させることで、プラズマランプ101内(例.プラズマバルブ、プラズマセル又はプラズマチャンバ内)のガス又はプラズマの1本又は複数本の指定吸収線を通じたエネルギ吸収が生じるので、そのガス種を「ポンピング」しプラズマを生成又は維持することができる。また、ある実施形態によれば、図示しないが、プラズマランプ101を、プラズマセル101の内部空間内にプラズマ106を初期発生させるための一組の電極を有するものとすることができ、それら電極による点火の後は、照明源111からの輻射109をポンピングすることでそのプラズマ106を維持することができる。
【0043】
ここで考慮されているように、本システム100は、様々なガス環境でのプラズマ106の初期発生及び/又は維持に利用することができる。ある実施形態によれば、プラズマ106の初期発生及び/又は維持用のガスを、不活性ガス(例.希ガス又は非希ガス)又は非不活性ガス(例.水銀)を含むものとすることができる。また、ある実施形態によれば、プラズマ106の初期発生及び/又は維持用のガスを、ガス同士の混合物(例.不活性ガス同士の混合物、不活性ガスと非不活性ガスの混合物又は非不活性ガス同士の混合物)を含むものとすることができる。
【0044】
更に注記すべきことに、本システム100は様々なガスで以て実現することができる。本件開示のシステム100の実現に適するガスの例としては、これに限られるものではないが、Xe、Ar、Ne、Kr、He、N2、H2O、O2、H2、D2、F2、CH4、一種類又は複数種類の金属ハロゲン化物、ハロゲン、Hg、Cd、Zn、Sn、Ga、Fe、Li、Na、Ar:Xe、ArHg、KrHg、XeHg等がある。本件開示のシステム100は、光維持プラズマ生成に適するあらゆる構成に敷衍しうるものと解されるべきであり、更には、プラズマランプ内プラズマの維持に適するあらゆる種類のガスに敷衍しうるものと解されるべきである。
【0045】
システム100のプラズマランプ101の透過素子104(例.プラズマバルブの壁、プラズマセルの壁、窓等々)は、プラズマ106により生成される輻射に対し少なくとも部分的に透明で本件技術分野で既知なあらゆる素材で形成することができる。ある実施形態によれば、プラズマランプ101の透過素子104を、プラズマ106により生成されるVUV輻射に対し少なくとも部分的に透明であり本件技術分野で既知なあらゆる素材で形成することができる。ある実施形態によれば、プラズマランプ101の透過素子104を、プラズマ106により生成されるDUV輻射に対し少なくとも部分的に透明であり本件技術分野で既知なあらゆる素材で形成することができる。また、ある実施形態によれば、プラズマランプ101の透過素子104を、プラズマ106により生成されるEUV光に対し少なくとも部分的に透明であり本件技術分野で既知なあらゆる素材で形成することができる。また、ある実施形態によれば、プラズマランプ101の透過素子104を、プラズマ106により生成されるUV光に対し少なくとも部分的に透明であり本件技術分野で既知なあらゆる素材で形成することができる。また、ある実施形態によれば、プラズマランプ101の透過素子104を、プラズマ106により生成される可視光に対し少なくとも部分的に透明であり本件技術分野で既知なあらゆる素材で形成することができる。
【0046】
また、ある実施形態によれば、プラズマランプ101の透過素子104を、照明源111からのポンピング照明109(例.IR輻射)に対し少なくとも部分的に透明であり本件技術分野で既知なあらゆる素材で形成することができる。また、ある実施形態によれば、プラズマランプ101の透過素子104を、照明源111(例.IR光源)からの輻射109と、プラズマランプ101の透明部分102からなる空間内に収容されているプラズマ106により放射される広帯域輻射110(例.VUV輻射、DUV輻射、EUV輻射、UV輻射及び/又は可視輻射)と、の双方に対し少なくとも部分的に透明であり本件技術分野で既知なあらゆる素材で形成することができる。ある種の実施形態によれば、プラズマランプ101の透過素子104を、低OH濃度又は高OH濃度融解石英ガラス素材で形成することができる。例えば、プラズマランプ101の透過素子104を、これに限られるものではないがSUPRASIL(登録商標)1、SUPRASIL(登録商標)2、SUPRASIL(登録商標)300、SUPRASIL(登録商標)310、HERALUX(登録商標)PLUS、HERALUX(登録商標)-VUV等を含有するものとすることができる。他の諸実施形態によれば、プラズマランプ101の透過素子104を、これに限られるものではないがフッ化カルシウム(CaF2)、フッ化マグネシウム(MgF2)、フッ化リチウム(LiF2)、結晶石英又はサファイアを含有するものとすることができる。ここに注記すべきことに、これに限られるものではないがCaF2、MgF2、結晶石英及びサファイアをはじめとする素材により、短波長輻射(例.λ<190nm)に対し透明性がもたらされる。本件開示のプラズマセル101の透明部分102での採用に適した様々なガラスが非特許文献1にて詳述されているので、この参照を以てその全容を本願に繰り入れることにする。
【0047】
プラズマランプ101の透過素子104(例.バルブの壁、プラズマセルの壁等々)は、本件技術分野で既知なあらゆる形状にすることができる。そのプラズマランプ101がプラズマセルである場合、透過素子104を円筒形にするとよい。また、ある実施形態によれば、図示しないが、透過素子104を球形又は楕円体形にすることができる。また、ある実施形態によれば、図示しないが、透過素子104を複合形状にすることができる。例えば、透過素子104の形状を、二通り以上の形状の組合せで構成することができる。一例としては、透過素子104の形状を、プラズマ106を収容しうるよう構成された球状又は楕円体状の中心部と、その球状又は楕円体状中心部から上方及び/又は下方へと延びる1個又は複数個の円筒部分とを有し、当該1個又は複数個の円筒部分が1個又は複数個のフランジに連結される形状とすることができる。透過素子104が円筒形である場合、
図1Eに示すように、透過素子104の1個又は複数個の開口が、その円筒形透過素子104の端部に位置することとなりうる。この構成では、透過素子104が、その第1開口(上開口)から第2開口(下開口)へとチャネルが延びる中空円筒の形態となる。また、ある実施形態によれば、透過素子104の各開口に位置するフランジを、その透過素子104の透明/半透明壁と協働させ、その透過素子104のチャネル内にガス塊108を収容することができる。ここでご認識頂けるように、この構成は、本件開示の随所に記述の如く様々な透過素子形状に敷衍することができる。
【0048】
プラズマランプ101がプラズマバルブである構成では、そのプラズマバルブの透過素子104を、本件技術分野で既知なあらゆる形状にすることができる。ある実施形態によれば、そのプラズマバルブを円筒形にすることができる。また、ある実施形態によれば、そのプラズマバルブを球形又は楕円体形にすることができる。また、ある実施形態によれば、そのプラズマバルブを複合形状にすることができる。例えば、そのプラズマバルブの形状を、二通り以上の形状の組合せにより構成することができる。一例としては、そのプラズマバルブの形状を、プラズマ106を収容しうるよう構成された球状又は楕円体状の中心部と、その球状又は楕円体状中心部から上方及び/又は下方へと延びる1個又は複数個の円筒部分とを、有する形状とすることができる。
【0049】
また、ある実施形態によれば、本開示の1個又は複数個の吸収層102を、プラズマランプ101の透過素子104の曲面のうち一面又は複数面上に形成することができる。例えばプラズマバルブ又はプラズマセルの場合、1個又は複数個の吸収層102を内表面及び/又は外表面上、即ち本願にて先に述べたプラズマバルブ形状であればいずれも湾曲している面上に、形成することができる。
【0050】
また、ある実施形態に係るシステムは1個又は複数個のランプ光学系を有する。例えば、
図1Dに示すように、これに限られるものではないが集光器素子105(例.楕円面鏡、放物面鏡又は球面鏡)を当該1個又は複数個のランプ光学系に含め、プラズマランプ101内に収容されているガス塊108内にその集光器素子105によって照明源111からの照明109を差し向け及び/又は集束させ、それによりプラズマ106を点火及び/又は維持するようにすることができる。更に、発生したプラズマ106により放射される広帯域輻射110をその集光器素子105により集光し、その広帯域輻射110を1個又は複数個の付加的光学素子(例.フィルタ123、ホモジナイザ125等)へと差し向けるようにすることができる。
【0051】
例えば、VUV広帯域輻射、DUV輻射、EUV輻射、UV輻射及び/又は可視輻射のうち少なくとも一種類でありプラズマ106により放射されたものを集光器素子105によって集光し、その広帯域照明110を1個又は複数個の下流側光学素子に差し向けるようにすることができる。この構成によれば、プラズマランプ101によりVUV輻射、DUV輻射、EUV輻射、UV輻射及び/又は可視輻射を、これに限られるものではないが検査ツール又は計量ツールをはじめ、本件技術分野で既知なあらゆる光学特性解明システムの下流側光学素子に送給することができる。ここで注記すべきことに、システム100のプラズマランプ101により、これに限られるものではないがVUV輻射、DUV輻射、EUV輻射、UV輻射及び/又は可視輻射をはじめ、種々のスペクトル域に属する有用輻射を放射することができる。
【0052】
ある代替的及び/又は付加的実施形態によれば、上掲の1個又は複数個のランプ光学系に一組の照明光学系を含め、プラズマランプ101内に収容されているガス塊内へとその照明光学系により照明源111からの照明109を差し向け及び/又は集束させ、それによりプラズマ106を点火及び/又は維持するようにすることができる。例えば、その一組の照明光学系に一組の反射器素子(例.鏡)を含め、照明源111からの出力をプラズマランプ101内ガス塊に差し向けることでプラズマ106を点火及び/又は維持するよう、その反射器素子を構成することができる。加えて、当該1個又は複数個のランプ光学系に、これに限られるものではないが一組の集光器素子(例.鏡)を含め、その集光器素子によって、プラズマ106により放射された広帯域輻射110を集めその広帯域輻射110を1個又は複数個の付加的光学素子へと差し向けるようにすることができる。プラズマ光源における別体な照明光学系及び集光光学系の使用が2016年6月20日付米国特許出願第15/187590号に概述されているので、この参照を以てその全容を上述の如く本願に繰り入れることにする。
【0053】
ある実施形態によれば、システム100を、様々な付加的光学素子を有するものとすることができる。ある実施形態によれば、そうした一組の付加的光学系に、プラズマ106に発する広帯域光を集光するよう構成された集光光学系を含めることができる。例えば、反射器素子105からの照明を、これに限られるものではないがホモジナイザ125をはじめとする下流側光学系へと差し向けるよう構成されたダイクロイックミラー121(例.コールドミラー)を、本システム100に具備させることができる。
【0054】
また、ある実施形態によれば、上掲の一組の光学系に、システム100の照明路又は集光路に沿い配置された1個又は複数個のレンズ(例.レンズ117)を含めることができる。当該1個又は複数個のレンズは、照明源111からの照明をプラズマセル101内ガス塊108中に集束させるのに、利用することができる。或いは、1個又は複数個の付加的レンズを、プラズマ106に発する広帯域光を指定ターゲット(図示せず)上へと集束させるのに、利用するようにしてもよい。
【0055】
また、ある実施形態によれば、上掲の一組の光学系に転向鏡119を含めることができる。ある実施形態によれば、照明源111からポンピング照明107を受光し、プラズマランプ101内に収容されているガス塊108へと反射器素子105経由でその照明を差し向けるよう、その転向鏡119を構成することができる。また、ある実施形態では、鏡119から照明を受光し、集光素子105(例.楕円体形反射器素子)の焦点即ちプラズマランプ101が所在しているところにその照明を集束させるよう、その反射器素子105が構成される。
【0056】
また、ある実施形態によれば、上掲の一組の光学系に、照明路又は集光路沿いに配置されていてプラズマランプ101への光入射に先立ち照明をフィルタリングし又はプラズマ106からの光放射後に照明をフィルタリングすることが可能な1個又は複数個のフィルタ123を、含めることができる。ここに注記すべきことに、システム100に備わる当該一組の光学系を上述し
図1Dに示したが、これは単に例証のため提示されているに過ぎず、本件開示の技術的範囲に対する限定として解されるべきではない。お察し頂けるように、多様な等価的又は付加的光学構成を本件開示の技術的範囲内で利用することができる。
【0057】
また、ある実施形態によれば、システム100の照明源111を、1個又は複数個のレーザを有するものとすることができる。照明源111は、本件技術分野で既知なあらゆるレーザシステムを有するものとすることができる。例えば、照明源111を、電磁スペクトラムの赤外、可視及び/又は紫外部分に属する輻射を放射可能で本件技術分野で既知な任意のレーザシステムを、有するものとすることができる。ある実施形態によれば、照明源111を、連続波(CW)レーザ輻射を放射するよう構成されたレーザシステムを有するものとすることができる。例えば、照明源111を、1個又は複数個のCW赤外レーザ光源を有するものとすることができる。例えば、プラズマバルブ101内ガスがアルゴンであり又はアルゴンを含有している構成では、その照明源111を、1069nmの輻射を放射するよう構成されたCWレーザ(例.ファイバレーザ又はディスクYbレーザ)を有するものにするとよい。注記すべきことに、この波長はアルゴンにおける1068nm吸収線にフィットしているので、アルゴンガスのポンピング向けにひときわ役立つ。ここで注記すべきことに、CWレーザについての上掲の記述は非限定的なものであり、本件技術分野で既知なあらゆるレーザを本発明の文脈で実施することができる。
【0058】
また、ある実施形態によれば、照明源111を、プラズマ106に変調レーザ光を供給するよう構成された1個又は複数個の変調レーザを有するものとすることができる。また、ある実施形態によれば、照明源111を、プラズマにパルスレーザ光を供給するよう構成された1個又は複数個のパルスレーザを有するものとすることができる。
【0059】
また、ある実施形態によれば、照明源111を、1個又は複数個のダイオードレーザを有するものとすることができる。例えば、照明源111を、プラズマバルブ101内に収容されているガス種の任意な1本又は複数本の吸収線に対応する波長にて輻射を放射する、1個又は複数個のダイオードレーザを有するものとすることができる。概して、実施に当たり照明源111のダイオードレーザを選定するに当たっては、そのダイオードレーザの波長を、任意のプラズマの任意の吸収線(例.イオン転移線)又はプラズマ生成ガスの任意の吸収線(例.強励起中性転移線)であり本件技術分野で既知なものにチューニングすることができる。そのため、所与ダイオードレーザ(又はダイオードレーザ群)の選択はそのシステム100のプラズマバルブ101内に収容されているガスの種類に依存することとなろう。
【0060】
また、ある実施形態によれば、照明源111を、イオンレーザを有するものとすることができる。例えば、その照明源111を、本件技術分野で既知な任意の希ガスイオンレーザを有するものとすることができる。例えばアルゴンをベースとするプラズマの場合、アルゴンイオンのポンピングに用いられる照明源111を、Ar+レーザを有するものとすることができる。
【0061】
また、ある実施形態によれば、照明源111を、1個又は複数個の周波数変換レーザシステムを有するものとすることができる。例えば、照明源111を、Nd:YAG又はNd:YLFレーザを有するものとすることができる。
【0062】
また、ある実施形態によれば、照明源111を、1個又は複数個の非レーザ光源を有するものとすることができる。概して、照明源111は、本件技術分野で既知な任意の非レーザ光源を有するものとすることができる。例えば、照明源111を、電磁スペクトラムの赤外、可視又は紫外部分にて離散的又は連続的に輻射を放射することが可能で本件技術分野で既知な、任意の非レーザシステムを有するものとすることができる。
【0063】
また、ある実施形態によれば、照明源111を、2個以上の光源を有するものとすることができる。ある実施形態によれば、照明源111を、1個又は複数個のレーザを有するものとすることができる。例えば、その(又はそれらの)照明源111を、複数個のダイオードレーザを有するものとすることができる。また例えば、照明源111を、複数個のCWレーザ又はパルスレーザを有するものとすることができる。更なる実施形態によれば、当該2個以上のレーザそれぞれを、システム100のプラズマランプ101内にあるガス又はプラズマの別々の吸収線を狙いチューニングされたレーザ輻射を放射するものに、することができる。
【0064】
本願記載の主題は、しばしば、他部材に組み込まれ又は連結された様々な部材なる態を採っている。ご理解頂けるように、そうした図示構成は単なる例であり、実際のところは、同じ機能を達成する他の多くの構成を実現することができる。概念的には、同じ機能が達成されるどの部材配置でも、その所望機能が実現されるよう効果的な「連携」が行われている。従って、特定の機能が達成されるよう本願にて組み合わされている二部材は、いずれも、構成や介在部材に関わりなく、その所望機能が達成されるよう互いに「連携」しているものと見なせる。同様に、然るべく関連付けられた二部材はいずれも、その所望機能を実現すべく互いに「接続」又は「結合」されているものと見なせるし、また然るべく関連付けることが可能な二部材はいずれも、その所望機能を達成すべく互いに「結合可能」なものと見なせる。結合可能の具体例としては、これに限られるものではないが、物理的に相互作用可能な及び/又は物理的に相互作用する部材がある。
【0065】
信ずべきことに、本件開示及びそれに付随する長所の多くは以上の記述により理解されるであろうし、また開示されている主題から離隔することなく又はその主たる長所全てを犠牲にすることなく諸部材の形態、構成及び配置に様々な変更を施しうることも明らかであろう。記述されている形態は単なる例示であり、後掲の特許請求の範囲の意図は、それらの変更を包括及び包含することにある。更に、ご理解頂けるように、本件開示は添付する特許請求の範囲によって定義される。