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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】電流検出アンプ
(51)【国際特許分類】
   H03F 3/45 20060101AFI20221212BHJP
【FI】
H03F3/45 220
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021174500
(22)【出願日】2021-10-26
(62)【分割の表示】P 2017073521の分割
【原出願日】2017-04-03
(65)【公開番号】P2022009496
(43)【公開日】2022-01-14
【審査請求日】2021-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099818
【弁理士】
【氏名又は名称】安孫子 勉
(72)【発明者】
【氏名】宮島 一之
【審査官】及川 尚人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0261884(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0219690(US,A1)
【文献】特開平09-311147(JP,A)
【文献】特開平07-035833(JP,A)
【文献】特開2014-049975(JP,A)
【文献】特開昭57-193109(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0180489(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 1/00-3/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同相入力電圧の非反転入力端子となる第1の入力端子と、反転入力端子となる第2の入力端子と、前記第1の入力端子に一端を接続し、他端を前記第2の入力端子に接続する電流検出用抵抗器を備え、前記電流検出用抵抗器を流れる検出電流により当該電流検出用抵抗器に生ずる電位差を差動増幅して、前記検出電流に対応した電圧出力を可能に構成されてなる電流検出アンプであって、
前記差動増幅を行う第1の演算増幅器が設けられ、その出力端子には、第1及び第2のN型MOSトランジスタの各々のゲートが接続され、当該第1及び第2のN型MOSトランジスタのソースは、共に電圧生成用抵抗器を介してグランドに接続される一方、
前記第2のN型MOSトランジスタのドレインは、第1のカレントミラー回路の入力段に接続され、
前記第1のカレントミラー回路の出力段は、第1のダイオード及び第2の入力抵抗器を介して、前記電流検出用抵抗器の前記他端に接続されると共に、分流用P型MOSトランジスタを介して第2の演算増幅器の反転入力端子に接続され、
前記第2の演算増幅器は、出力端子と反転入力端子との間に、第1の非反転増幅用抵抗器が、反転入力端子とグランドとの間に、第2の非反転増幅用抵抗器が、それぞれ接続される一方、前記第2の演算増幅器の非反転入力端子は、前記第1及び第2のN型MOSトランジスタのソースに接続され、
前記第1のN型MOSトランジスタのドレインは、第2のダイオード及び第1の入力抵抗器を介して前記電流検出用抵抗器の前記一端に接続され、
前記第1のダイオード及び前記第2の入力抵抗器は、前記第1のダイオードのカソードが前記第2の入力抵抗器に接続され、その相互の接続点は、前記第1の演算増幅器の反転入力端子に接続され、
前記第2のダイオード及び前記第1の入力抵抗器は、前記第2のダイオードのアノードが前記第1の入力抵抗器に接続され、その相互の接続点は、前記第1の演算増幅器の非反転入力端子に接続され、
前記第1の入力抵抗器と前記第2の入力抵抗器は、抵抗値が同一に設定され、
前記電圧生成用抵抗器の抵抗値をR3、前記第1の非反転増幅用抵抗器の抵抗値をR4、前記第2の非反転増幅用抵抗器の抵抗値をR5とした場合、各々の抵抗値は、R3=(R4×R5)/(R4+R5)を満たすよう設定され、
前記電流検出用抵抗器に生ずる電位差によって前記第2のダイオードが導通状態となる一方、前記第1のダイオードが非導通となり、前記第1のカレントミラー回路の出力段からの前記第1のダイオードへの電流の流入が阻止される状態となる場合に、前記第1のカレントミラー回路の出力段の電流を、前記分流用P型MOSトランジスタ、及び、前記第2の非反転増幅用抵抗器を介してグランドへバイパスせしめ、前記第2のN型MOSトランジスタのソース電流が前記電圧生成用抵抗器に流入することにより生ずるゲインエラーの相殺を可能に構成されてなることを特徴とする電流検出アンプ。
【請求項2】
前記第1のカレントミラー回路に代えて、演算増幅器とP型MOSトランジスタを有してなる代替回路である等価カレントミラー回路を設け、当該等価カレントミラー回路において、前記演算増幅器の非反転入力端子は、前記等価カレントミラー回路の第1の抵抗器を介して電源電圧が印加されると共に、入力段を形成する一方、
前記演算増幅器の反転入力端子は、前記等価カレントミラー回路の第2の抵抗器を介して、前記電源電圧が印加されると共に、前記P型MOSトランジスタのソースに接続され、
前記P型MOSトランジスタのゲートは、前記演算増幅器の出力端子に接続される一方、前記P型MOSトランジスタのドレインは、出力段を形成するよう構成されてなることを特徴とする請求項1記載の電流検出アンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流検出用抵抗器に流れる電流を検出、増幅する電流検出アンプに係り、特に、構成の簡素化等を図ったものに関する。
【背景技術】
【0002】
電子回路において、電流検出が必要とされる場合、例えば、電流検出用抵抗器を電流経路に設け、その抵抗器において発生する電位差を、電流検出アンプによって検出、増幅し電圧出力として得る方策があることは良く知られている通りである。
【0003】
このような回路においては、電流検出用抵抗器の両端に接続された電流検出アンプの入力端子における同相入力電圧が、グランド電位以下から電流検出アンプに供給される電源電圧以上まで変動しても、予め設定された所望の増幅度で増幅動作がなされる必要がある。
【0004】
従来、上述のような電圧変動の如何に関わらず安定した増幅動作を確保、実現する手段としては、例えば、特許文献1等に開示されたような技術がある。
図4には、特許文献1に開示された回路構成例が示されており、以下、同図を参照しつつ、この従来回路について説明する。
【0005】
この従来回路は、第1及び第2のオペアンプ51A,51Bと、バッファアンプ52と、オフセット調整用増幅器53と、を主たる構成要素として構成されたものとなっている。
しかして、この従来回路は、まず、同相入力電圧Vin+が、回路の電源電圧であるV+よりも高い場合、第1のオペアンプ51Aが、電流制限素子であるトランジスタQ1のベース電圧を制御して、そのコレクタ電流を制御し、入力端子65に接続された入力抵抗器61に流れる電流を制御する。
【0006】
その結果、この電流検出アンプの出力電圧であるVoutは、下記する式1により求められるように電流検出用抵抗器63に流れる電流に比例した電圧値となる。
【0007】
Vout=(RL/Rin)×Rs×Is・・・式1
【0008】
なお、ここで、RLは、バッファアンプ52の入力段とグランドとの間に設けられた抵抗器64の抵抗値、Rinは、入力抵抗器61の抵抗値、Rsは電流検出用抵抗器63の抵抗値、Isは、負荷(LOAD)60に流れる電流値である。
【0009】
また、同相入力電圧Vin+が、グランド電位よりも低い場合、第2のオペアンプ51Bが、第2及び第3のトランジスタQ2,Q3のベース電圧を制御することで、第2のトランジスタQ2により入力抵抗器62に電流が流され、第3のトランジスタQ3により抵抗器64に電流が流される。
【0010】
第2及び第3のトランジスタQ2,Q3は、カレントミラー回路を構成しており、そのため、それぞれのコレクタ電流は相等しく、入力抵抗器61,62の抵抗値が等しい場合、出力電圧Voutは、先の式1に求められる電圧値と同じとなる。
【0011】
このように、第1のオペアンプ51Aと第2のオペアンプ51Bの制御動作は、同相入力電圧Vin+の電圧レベルに従って切り替わるが、停止状態にあった第1のオペアンプ51Aが動作を開始するまでには遅れが生じ、制御動作の切換時に出力電圧の一時的な低下が発生する。
【0012】
図4に示された従来回路においては、上述の回路動作の遅延による出力電圧の一時的な低下を緩和するため、オフセット調整用増幅器53が設けられている。
すなわち、オフセット調整用増幅器53は、第1及び第2のオペアンプ51A,51Bのオフセット電圧を制御して、第1及び第2のオペアンプ51A,51Bの動作の切り替わり時に、第1のトランジスタQ1と第3のトランジスタQ3の各々の電流が近い値となるようにしている。
このように従来回路は、結局、バッファアンプ52も含めると4個のオペアンプを必要とする構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】米国特許第7196581号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、このような電流検出アンプを用いて、他のゲートドライバやスイッチング電源などと共に半導体製品を製造する場合、電流検出アンプだけで4個のオペアンプを必要とするため、半導体製品全体のチップ面積の増大に伴うパッケージの大型化を招くだけでなく、コスト上昇を招く等の問題がある。
【0015】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、従来回路に比して簡素な回路構成で、かつ、従来回路と同等以上の動作特性を実現可能な電流検出アンプを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記本発明の目的を達成するため、本発明に係る電流検出アンプは、
同相入力電圧の非反転入力端子となる第1の入力端子と、反転入力端子となる第2の入力端子と、前記第1の入力端子に一端を接続し、他端を前記第2の入力端子に接続する電流検出用抵抗器を備え、前記電流検出用抵抗器を流れる検出電流により当該電流検出用抵抗器に生ずる電位差を差動増幅して、前記検出電流に対応した電圧出力を可能に構成されてなる電流検出アンプであって、
前記差動増幅を行う第1の演算増幅器が設けられ、その出力端子には、第1及び第2のN型MOSトランジスタの各々のゲートが接続され、当該第1及び第2のN型MOSトランジスタのソースは、共に電圧生成用抵抗器を介してグランドに接続される一方、
前記第2のN型MOSトランジスタのドレインは、第1のカレントミラー回路の入力段に接続され、
前記第1のカレントミラー回路の出力段は、第1のダイオード及び第2の入力抵抗器を介して、前記電流検出用抵抗器の前記他端に接続されると共に、分流用P型MOSトランジスタを介して第2の演算増幅器の反転入力端子に接続され、
前記第2の演算増幅器は、出力端子と反転入力端子との間に、第1の非反転増幅用抵抗器が、反転入力端子とグランドとの間に、第2の非反転増幅用抵抗器が、それぞれ接続される一方、前記第2の演算増幅器の非反転入力端子は、前記第1及び第2のN型MOSトランジスタのソースに接続され、
前記第1のN型MOSトランジスタのドレインは、第2のダイオード及び第1の入力抵抗器を介して前記電流検出用抵抗器の前記一端に接続され、
前記第1のダイオード及び前記第2の入力抵抗器は、前記第1のダイオードのカソードが前記第2の入力抵抗器に接続され、その相互の接続点は、前記第1の演算増幅器の反転入力端子に接続され、
前記第2のダイオード及び前記第1の入力抵抗器は、前記第2のダイオードのアノードが前記第1の入力抵抗器に接続され、その相互の接続点は、前記第1の演算増幅器の非反転入力端子に接続され、
前記第1の入力抵抗器と前記第2の入力抵抗器は、抵抗値が同一に設定され、
前記電圧生成用抵抗器の抵抗値をR3、前記第1の非反転増幅用抵抗器の抵抗値をR4、前記第2の非反転増幅用抵抗器の抵抗値をR5とした場合、各々の抵抗値は、R3=(R4×R5)/(R4+R5)を満たすよう設定され、
前記電流検出用抵抗器に生ずる電位差によって前記第2のダイオードが導通状態となる一方、前記第1のダイオードが非導通となり、前記第1のカレントミラー回路の出力段からの前記第1のダイオードへの電流の流入が阻止される状態となる場合に、前記第1のカレントミラー回路の出力段の電流を、前記分流用P型MOSトランジスタ、及び、前記第2の非反転増幅用抵抗器を介してグランドへバイパスせしめ、前記第2のN型MOSトランジスタのソース電流が前記電圧生成用抵抗器に流入することにより生ずるゲインエラーの相殺を可能に構成されてなるものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、従来と異なり、同相入力電圧に応じてフィードバックの経路を切り替えるようにして、入力電圧を増幅する演算増幅器を一つとして回路構成の簡素化を図りつつ、従来回路と同等の回路動作を確保することができ、さらに、製造コストの低減を図ることができるという効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態における電流検出アンプの第1の実施例における回路図である。
図2】本発明の実施の形態における電流検出アンプの第2の実施例における回路図である。
図3】本発明の実施の形態における電流検出アンプに設けられたカレントミラー回路の代替回路例を示す回路図である。
図4】従来の電流検出アンプの回路構成例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図1乃至図3を参照しつつ説明する。
なお、以下に説明する部材、配置等は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
最初に、本発明の実施の形態における電流検出アンプの第1の実施例について、図1を参照しつつ説明する。
【0020】
この第1の実施例における電流検出アンプは、第1及び第2の演算増幅器(図1においては、それぞれ「OP1」、「OP2」と表記)11,12と、第1及び第2のカレントミラー回路41,42とを主たる構成要素として構成されたものとなっている。
【0021】
電流検出アンプは、電流検出用抵抗器(図1においては「Rs」と表記)20により検出された負荷(図1においては「LOAD」と表記)26に流れる電流を、検出電流の大きさに対応した電圧出力VOUTとして得られるよう構成されてなるもので、かかる基本的な動作は従来回路と同様のものであるが、以下に説明するように、従来回路に比して回路構成の簡素化が図られたものとなっている。
【0022】
まず、同相入力電圧の非反転入力端子となる第1の入力端子(図1においては「INP」と表記)35、及び、同相入力電圧の反転入力端子となる第2の入力端子(図1においては「INM」と表記)36の間には、電流検出用抵抗器20が接続されており、第1の入力端子35と電流検出用抵抗器20との接続点には、第1の電源31から第1の電源電圧V1が印加される一方、第2の入力端子36と電流検出用抵抗器20との接続点とグランドとの間には、負荷26が接続されている。
【0023】
第1の演算増幅器11の非反転入力端子と第1の入力端子35との間には、第1の入力抵抗器(図1においては「R1」と表記)21が、反転入力端子と第2の入力端子36との間には、第2の入力抵抗器(図1においては「R2」と表記)22が、それぞれ接続されている。換言すれば、第2の入力抵抗器22の一端は、電流検出用抵抗器20の他端(第2の入力端子36が接続された一端)に接続される一方、第1の入力端子21の一端は、電流検出用抵抗器20の一端に接続されている。
【0024】
第1の演算増幅器11の出力端子には、第1及び第2のN型MOSトランジスタ(図1においては、それぞれ「MN1」、「MN2」と表記)1,2のゲートが接続されている。
なお、以下、説明の便宜上、N型MOSトランジスタを「NMOS」と、P型MOSトランジスタを「PMOS」と、それぞれ称することとする。
【0025】
第1及び第2のNMOS1,2のソースは、共に電圧生成用抵抗器である第3の抵抗器(図1においては「R3」と表記)23を介してグランドに接続されると共に、第2の演算増幅器12の非反転入力端子に接続されている。
第2の演算増幅器12は、出力端子と反転入力端子とが相互に接続されて、ボルテージフォロアとして動作するものとなっている。
【0026】
また、第1のNMOS1のドレインは、第2のダイオード(図1においては「D2」と表記)16のアノード及び第4のNMOS(図1においては「MN4」と表記)4のドレインに接続されている。第2のダイオード16のアノードは、第1の演算増幅器11の非反転入力端子に接続されている。
さらに、第2のNMOS2のドレインは、第1のPMOS5のドレインに接続されている。
【0027】
第1のカレントミラー回路41は、第1及び第2のPMOS(図1においては、それぞれ「MP1」、「MP2」と表記)5,6を有して構成されている。
すなわち、第1及び第2のPMOS5,6のゲートは、相互に接続されると共に、入力段をなす第1のPMOS5のドレインに接続されている。
また、第1及び第2のPMOS5,6のソースには、第2の電源32からの電源電圧V2が印加されるようになっている。
【0028】
さらに、出力段をなす第2のPMOS6のドレインには、第3のPMOS(図1においては「MP3」と表記)7のソース及び第1のダイオード(図1においては「D1」と表記)15のアノード接続されている。そして、第1のダイオード15のカソードは、第1の演算増幅器11の反転入力端子に接続されている。
【0029】
また、第3のPMOS(分流用P型MOSトランジスタ)7のゲートには、第3の電源33からの電源電圧V3が印加されるようになっている一方、ドレインは、第3のNMOS(図1においては「MN3」と表記)3のドレインに接続されている。
【0030】
第2のカレントミラー回路42は、第3及び第4のNMOS3,4を有して構成されている。
すなわち、第3及び第4のNMOS3,4のゲートは、相互に接続されると共に、入力段をなす第3のNMOS3のドレインに接続されている一方、ソースは、共にグランドに接続されている。
そして、出力段をなす第4のNMOS4のドレインには、先に述べたように、第1のNMOS1のドレイン及び第2のダイオード16のカソードが接続されている。
【0031】
次に、かかる構成における動作について説明する。
この電流検出アンプは、同相入力電圧であるV1とV2の相互の大小関係により以下に説明するように3つの電圧条件に応じた3つの動作状態を有している。
(1)第1の電圧条件
最初に、V1>V2-(VF1+V3-Vthp)の場合の動作について説明する。
ここで、VF1は、第1のダイオード15の順方向電圧、V3は、第3の電源33により供給される電源電圧、Vthpは、PMOSの閾値電圧である。
【0032】
負荷26に流れる負荷電流ILによって電流検出用抵抗器20に発生する電位差VINは、第1及び第2の入力抵抗器21,22を介して差動増幅を行う第1の演算増幅器11に入力される。
これにより、第1及び第2のNMOS1,2は、そのゲート電圧が、第1の演算増幅器11の出力により制御される。第1のNMOS1のドレイン電流の増加により、第1の入力抵抗器21における電位差が増加し、オン状態(導通状態)の第2のダイオード16を介して第1の演算増幅器11はフィードバック制御を受ける。
第1の入力抵抗器21を流れる電流は、第3の抵抗器23に流入し、そこでの電圧降下分が第2の演算増幅器12を介して出力電圧VOUTとして出力されることとなる。
【0033】
一方、この場合、第1のNMOS1同様、第2のNMOS2のドレイン電流も増加するが、このドレイン電流は、第1のカレントミラー回路41を介して、第1のダイオード15のアノードと第3のPMOS7のソースとの接続点にミラーされる。
しかしながら、第1のダイオード15は、V1>V2-Vbeであるためにオフ状態(非導通状態)となる。ここで、Vbeは、第1のダイオード15のアノードと第2の電源32との間の第1のカレントミラー回路41における電位差である。
【0034】
そのため、第1のカレントミラー回路41によりミラーされた電流は、第3のPMOS7に流れ、さらに、第2のカレントミラー回路42によりミラーされて、第3の抵抗器23を介することなく、第1の入力抵抗器21から流れてきた電流をグランドへ流すこととなる。すなわち、第1の入力抵抗器21から流れてきた電流は、第4のNMOS4を介してグランドにバイパスされることとなる。
結局、第2のNMOS2のソース電流により発生する第3の抵抗器23に生ずる電圧は相殺されて、出力電圧VOUTは、下記する式2により表される電圧となる。
【0035】
VOUT=VR3=(R3/R1)×VIN・・・式2
【0036】
ここで、VR3は、第3の抵抗器23の電圧、R3は、第3の抵抗器23の抵抗値、R1は、第1の入力抵抗器21の抵抗値である。
【0037】
(2)第2の電圧条件
次に、V1<VOUT+VF2の場合の動作について説明する。
ここで、VF2は、第2のダイオード16の順方向電圧である。
この場合、第2のダイオード16はオフ状態となり、第1のNMOS1からの電流は流れるなくなるが、その分、第2のNMOS2の電流が増加する。
第2のNMOS2のドレイン電流は、第1のカレントミラー回路41を介して第1のダイオード15のアノード側へミラーされる。
【0038】
第1のダイオード15のアノード側へミラーされた電流は、第1のダイオード15を介して第2の入力抵抗器22へソースされることとなる。
その結果、出力電圧VOUTは、下記する式3により表される電圧となる。
この場合、第1及び第2の入力抵抗器21,22の抵抗値が同一であれば、出力電圧VOUTは、先の式2で求められる電圧値と同一となる。
【0039】
VOUT=(R3/R2)×VIN・・・式3
【0040】
なお、R2は、第2の入力抵抗器22の抵抗値である。
【0041】
(3)第3の電圧条件
次に、V2-(VF1+V3-Vthp)>V1>VOUT+VF2の場合の動作について説明する。
この場合、第1及び第2のダイオード15,16共に、オン状態となる一方、第3のPMOS7は、オフ状態となる。
【0042】
かかる状態において、電流検出用抵抗器20に発生する電位差VINは、下記する式4により、出力電圧VOUTは、下記する式5により表されるものとなる。
【0043】
VIN=R1×I1-R2×I2・・・式4
【0044】
VOUT=R3×(I1+IDN2)・・・式5
【0045】
式4において、R1は、第1の入力抵抗器21の抵抗値、R2は、第2の入力抵抗器22の抵抗値、I1は、第1の入力抵抗器21を流れる電流、I2は、第2の入力抵抗器22を流れる電流である。
また、式5において、IDN2は、第2のNMOS2のドレイン電流である。
【0046】
さらに、この場合、 第1及び第2の入力抵抗器21,22の抵抗値が同一である(R1=R2)で、第3のPMOS7がオフ状態において、第2のNMOS2のドレイン電流IDN2が、IDN2=-I2の条件を満たす際には、出力電圧VOUTは、下記する式6により表されるものとなる。
【0047】
VOUT=R3/R1×VIN・・・式6
【0048】
なお、V1>V2-Vbeの状態において、第2のNMOS2のドレインにスイッチ等を設けて第2のNMOS2を停止させても、電流検出アンプとしての動作は可能であるが、この場合、電源電圧V1が変化して第2のNMOS2の電流を流し始めるタイミングで第1のカレントミラー回路41の動作開始までの遅延が生ずるため、一時的に出力電圧VOUTが上昇してしまうという不都合がある。
本発明の実施の形態における電流検出アンプの場合、第1のカレントミラー回路41の動作が停止しないため、上述のような回路動作の切り替わり時の遅延時間が確実に短縮されるものとなっている。
【0049】
次に、本発明の実施の形態における電流検出アンプの第2の実施例について、図2を参照しつつ説明する。
なお、図1に示された第1の実施例における構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明することとする。
【0050】
第2の実施例における電流検出アンプが第1の実施例における電流検出アンプと異なる主要な点は、カレントミラー回路が第1のカレントミラー回路41のみであることと、第2の演算増幅器12が所定の増幅度で増幅動作を行う構成とした点にある。
【0051】
以下、具体的に説明すれば、まず、第3のPMOS7のドレインは、図1の回路例における第2のカレントミラー回路42に代えて、第2の演算増幅器12の反転入力端子に接続されている。
また、第2の演算増幅器12の出力端子と反転入力端子との間には、第1の非反転増幅用抵抗器としての第4の抵抗器(図2においては「R4」と表記)24が接続される一方、反転入力端子とグランドとの間には、第2の非反転増幅用抵抗器としての第5の抵抗器(図2においては「R5」と表記)25が接続されている。
【0052】
次に、かかる構成における動作について説明する。
この第2の実施例における電流検出アンプも、先の第1の実施例と同様、同相入力電圧であるV1とV2の相互の大小関係により以下に説明するように3つのの電圧条件に応じた3つの動作状態を有している。
(1)第1の電圧条件
最初に、V1>V2-(VF1+V3-Vthp)の場合の動作について説明する。
先の第1の実施例と同様、第1のダイオード16は、オフ状態であるため、第2のPMOS6のドレイン電流は、第1のカレントミラー回路41によりミラーされて第3のPMOS7に同一の電流で流れる。
【0053】
第3のPMOS7は、そのドレインが第2の演算増幅器11の反転入力端子に接続されているため、ドレイン電流は、第5の抵抗器25を介してグランドへ流れることとなる。
この第3のPMOS7のドレイン電流をIPM3とすると、第3の抵抗器23に発生する電圧VR3と出力電圧VOUTとの関係は、下記する式7により表される関係となる。
【0054】
VOUT=-R4×IPM3+(R4+R5)/R5×VR3・・・式7
【0055】
ここで、R4は、第4の抵抗器24の抵抗値、R5は、第5の抵抗器25の抵抗値である。
一方、VR3については、下記する式8A及び式8Bが成立する。
【0056】
VR3=(I1+IPM3)×R3・・・式8A
【0057】
IPM3=VR3/R3-I1・・・式8B
【0058】
これらの式より、VOUTは、下記する式9により表される。
【0059】
VOUT=R4×I1-{(R4+R5)/R5-R4/R3}×VR3・・・式9
【0060】
ここで、R3、R4、及び、R5を以下のように設定する。
【0061】
R3=(R4×R5)/(R4+R5)・・・式10
【0062】
これにより、式9は、下記する式11のように表される。
【0063】
VOUT=R3×(R4×R5)/R5×I1・・・式11
【0064】
ここで、VIN=I1×R1であるため、出力電圧VOUTと電流検出用抵抗器20に発生する電位差VINは、下記する式12の関係となる。
【0065】
VOUT=(R3/R1)×(R4×R5)/R5×VIN・・・式12
【0066】
このように、R3、R4、及び、R5の抵抗値を適切に設定することにより、第1の実施例の場合と同様のゲインを得ることができる。
【0067】
(2)第2の電圧条件
次に、V1<VOUT+VF2の場合の動作について説明する。
この場合、第1のダイオード15はオン状態、第2のダイオード16はオフ状態となる。
第2のPMOS6のドレイン電流は、全て第2の入力抵抗器22に流れ、出力電VOUTは、下記する式13により表され、R1=R2であれば、式11と同一となる。
【0068】
VOUT=(R3/R2)×(R4×R5)/R5×VIN・・・式13
【0069】
(3)第3の電圧条件
次に、V2-(VF1+V3-Vthp)>V1>VOUT+VF2の場合の動作について説明する。
この場合、第1及び第2のダイオード15,16は、共にオン状態となる。
このため、第2のPMOS6のドレイン電流は、第2の入力抵抗器22に流れる電流I2と、第3のPMOS7のドレイン電流IPM3とに、それぞれ分流することとなる。その結果、第3の抵抗器23に生ずる電圧VR3と、電流検出用抵抗器20に発生する電位差VINについて、下記する式14及び式15で表される関係が成立する。
【0070】
VR3=(I1-I2+IPM3)×R3・・・式14
【0071】
VIN=(I1-I2)×R1・・・式15
【0072】
これら式14、及び、式15を、先の式6に代入すると、下記する式16を得ることができ、先に説明した第1及び第2の電圧条件における出力電圧VOUTと同一となる。
【0073】
VOUT=(R3/R1)×(R4×R5)/R5×VIN・・・式16
【0074】
このように、この第2の実施例にあっても、図1に示された第1の実施例の回路と同様のゲインが得られる。
但し、図1に示された回路にあっては、第3及び第4のNMOS3,4で構成された第2のカレントミラー回路42を用いており、回路の制御電流としての第3のNMOS3のドレイン電流と、出力電流としての第4のNMOS4のドレイン電流は、双方のトランジスタの特性にばらつきがあると、差異を生じるため、これが、電流検出アンプとしてのゲインエラーとなって表れる。
【0075】
これに対して、図2に示された第2の実施例においては、図1の回路における第2のカレントミラー回路42に相当するものを用いておらず、R3、R4、及び、R5の抵抗値の比によってゲインエラーが定まる。したがって、製造工程において、レーザー照射等によってその抵抗値を調整することで、ゲインエラーの補正が可能であり、第1の実施例の回路に比して、ゲインエラーの補正が容易である。
【0076】
上述した第1及び第2の実施例のいずれにおいても、第1のカレントミラー回路41が用いられているが、これを図3に示された構成に代えても好適である。
以下、図3を参照しつつ、この代替回路(以下、説明の便宜上「等価カレントミラー回路」と称する)について説明する。
この等価カレントミラー回路43は、等価回路用演算増幅器13と等価回路用PMOS8とを有して構成されものとなっている。
【0077】
等価回路用演算増幅器13は、その非反転入力端子に第1の抵抗器(図3においては「R11」と表記)27を介して電源電圧V2が印加されると共に、第2のNMOS2のドレインに接続されるものとなっている(図3においては、その接続部分の図示は省略)。
【0078】
また、等価回路用演算増幅器13の反転入力端子は、第2の抵抗器(図3においては「R12」と表記)28を介して電源電圧V2が印加されると共に、等価回路用PMOS8のソースに接続されている。
【0079】
等価回路用PMOS8は、そのゲートが等価回路用演算増幅器13の出力端子に接続される一方、ドレインは、第3のPMOS7のソース及び第1のダイオード15のアノードに接続されるものとなっている(図3においては、その接続部分の図示は省略)。
なお、かかる構成における回路動作は、第1のカレントミラー回路41と同様であるので、ここでの再度の説明は省略することとする。
【産業上の利用可能性】
【0080】
従来回路と同等以上の動作特性を維持しつつ、回路構成の簡素化が所望される電流検出アンプに適用できる。
【符号の説明】
【0081】
11…第1の演算増幅器
12…第2の演算増幅器
20…電流検出用抵抗器
41…第1のカレントミラー回路
42…第2のカレントミラー回路
図1
図2
図3
図4