(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】光学異方性膜、積層体、円偏光板、表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20221212BHJP
G02B 5/22 20060101ALI20221212BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20221212BHJP
G02F 1/13363 20060101ALI20221212BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20221212BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20221212BHJP
H01L 27/32 20060101ALI20221212BHJP
H05B 33/02 20060101ALI20221212BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
G02B5/30
G02B5/22
G02F1/1335 510
G02F1/13363
G09F9/00 313
G09F9/30 349E
H01L27/32
H05B33/02
H05B33/14 A
(21)【出願番号】P 2021502252
(86)(22)【出願日】2020-02-25
(86)【国際出願番号】 JP2020007388
(87)【国際公開番号】W WO2020175448
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-08-18
(31)【優先権主張番号】P 2019033932
(32)【優先日】2019-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】後藤 亮司
(72)【発明者】
【氏名】藤野 雄太
【審査官】中村 説志
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-520239(JP,A)
【文献】特開2009-108267(JP,A)
【文献】特開2009-210929(JP,A)
【文献】特開2001-208913(JP,A)
【文献】特開2009-025671(JP,A)
【文献】特開2009-244493(JP,A)
【文献】特開2015-036732(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0233247(US,A1)
【文献】国際公開第2019/044859(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長700nmより長波長側にJバンドの吸収ピークを有するJ会合体を含む光学異方性膜であって、
前記光学異方性膜の進相軸の方向での波長700~900nmにおける吸収が、前記光学異方性膜の遅相軸の方向での波長700~900nmにおける吸収よりも大き
く、
前記光学異方性膜は式(A)および式(B)の関係を満たし、
前記光学異方性膜は逆波長分散性液晶化合物および色素を含む組成物を用いて形成され、
前記J会合体が前記色素から構成される、光学異方性膜。
式(A) Re(450)/Re(550)<1.00
式(B) Re(650)/Re(550)>1.00
式中、Re(450)は波長450nmにおける前記光学異方性膜の面内レタデーションを表し、Re(550)は波長550nmにおける前記光学異方性膜の面内レタデーションを表し、Re(650)は波長650nmにおける前記光学異方性膜の面内レタデーションを表す。
【請求項2】
前記吸収ピークが波長700~900nmの範囲に位置する、請求項1に記載の光学異方性膜。
【請求項3】
前記色素が近赤外線吸収色素である、請求項
1または2に記載の光学異方性膜。
【請求項4】
前記光学異方性膜の進相軸の方向での波長700~900nmにおいて最大吸光度を示す波長を波長Xとした場合、
前記光学異方性膜の進相軸の方向での波長Xにおける吸光度に対する、前記光学異方性膜の遅相軸の方向での波長Xにおける吸光度の比Dが、式(C)の関係を満たす、請求項1~
3のいずれか1項に記載の光学異方性膜。
式(C) 0.01<D<0.61
【請求項5】
波長550nmにおける面内レタデーションが110~160nmである、請求項1~
4のいずれか1項に記載の光学異方性膜。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか1項に記載の光学異方性膜と、
前記光学異方性膜上に配置されたガスバリア層とを有する、積層体。
【請求項7】
請求項1~
5のいずれか1項に記載の光学異方性膜または請求項
6に記載の積層体と、
偏光子とを有する、円偏光板。
【請求項8】
表示素子と、前記表示素子上に配置された請求項
7に記載の円偏光板とを有する、表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学異方性膜、積層体、円偏光板、および、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
屈折率異方性を持つ位相差膜(光学異方性膜)は、表示装置の反射防止膜、および、液晶表示装置の光学補償フィルムなどの種々の用途に適用されている。
近年、逆波長分散性を示す光学異方性膜の検討がなされている(特許文献1)。なお、逆波長分散性とは、可視光線領域の少なくとも一部の波長領域において、測定波長が長いほど複屈折が大きくなる「負の分散」特性を意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、従来の光学異方性膜が示す逆波長分散性は必ずしも十分ではなく、更なる改良が必要であった。
より具体的には、例えば、光学異方性膜としてλ/4板(1/4波長板)を例にとると、可視光線領域において位相差が測定波長の1/4波長となることが理想となる。しかし、従来の光学異方性膜においては、可視光線領域の長波長側において、理想曲線から外れる傾向にあった。なお、本明細書では、光学特性が理想曲線に近づくことを、逆波長分散性が優れるという。
本発明は、上記実情に鑑みて、優れた逆波長分散性を示す光学異方性膜を提供することを目的とする。
また、本発明は、積層体、円偏光板および表示装置を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、従来技術の問題点について鋭意検討した結果以下の構成により上記目的を達成できることを見出した。
【0006】
(1) 波長700nmより長波長側にJバンドの吸収ピークを有するJ会合体を含む光学異方性膜であって、
光学異方性膜の進相軸の方向での波長700~900nmにおける吸収が、光学異方性膜の遅相軸の方向での波長700~900nmにおける吸収よりも大きい、光学異方性膜。
(2) 吸収ピークが波長700~900nmの範囲に位置する、(1)に記載の光学異方性膜。
(3) 光学異方性膜は後述する式(A)および後述する式(B)の関係を満たす、(1)または(2)に記載の光学異方性膜。
(4) 液晶化合物またはポリマーと、色素とを含む組成物を用いて形成され、
J会合体が色素から構成される、(1)~(3)のいずれかに記載の光学異方性膜。
(5) 色素が近赤外線吸収色素である、(4)に記載の光学異方性膜。
(6) 光学異方性膜の進相軸の方向での波長700~900nmにおいて最大吸光度を示す波長を波長Xとした場合、光学異方性膜の進相軸の方向での波長Xにおける吸光度に対する、光学異方性膜の遅相軸の方向での波長Xにおける吸光度の比Dが、後述する式(C)の関係を満たす、(1)~(5)のいずれかに記載の光学異方性膜。
(7) 波長550nmにおける面内レタデーションが110~160nmである、(1)~(6)のいずれかに記載の光学異方性膜。
(8) (1)~(7)のいずれかに記載の光学異方性膜と、
光学異方性膜上に配置されたガスバリア層とを有する、積層体。
(9) (1)~(7)のいずれかに記載の光学異方性膜または(8)に記載の積層体と、
偏光子とを有する、円偏光板。
(10) 表示素子と、表示素子上に配置された(9)に記載の円偏光板とを有する、表示装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、優れた逆波長分散性を示す光学異方性膜を提供できる。
また、本発明によれば、積層体、円偏光板および表示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】従来の逆波長分散性を示す光学異方性膜の波長分散と理想の位相差の波長分散との比較を示す図である。
【
図2】有機分子の屈折率と吸収係数との波長分散特性を示す図である。
【
図3】所定の吸収特性の有無による異常光線屈折率neと常光線屈折率noとの波長分散との比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。まず、本明細書で用いられる用語について説明する。また、進相軸および遅相軸は、特別な断りがなければ、550nmにおける定義である。
【0010】
本発明において、Re(λ)およびRth(λ)は各々、波長λにおける面内のレタデーションおよび厚み方向のレタデーションを表す。特に記載がないときは、波長λは、550nmとする。
本発明において、Re(λ)およびRth(λ)はAxoScan OPMF-1(オプトサイエンス社製)において、波長λで測定した値である。AxoScanにて平均屈折率((nx+ny+nz)/3)と膜厚(d(μm))を入力することにより、
遅相軸方向(°)
Re(λ)=R0(λ)
Rth(λ)=((nx+ny)/2-nz)×d
が算出される。
なお、R0(λ)は、AxoScan OPMF-1で算出される数値として表示されるものであるが、Re(λ)を意味している。
【0011】
本明細書において、屈折率nx、ny、および、nzは、アッベ屈折計(NAR-4T、アタゴ(株)製)を使用し、光源にナトリウムランプ(λ=589nm)を用いて測定する。また、波長依存性を測定する場合は、多波長アッベ屈折計DR-M2(アタゴ(株)製)にて、干渉フィルタとの組み合わせで測定できる。
また、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、および、各種光学フィルムのカタログの値を使用できる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、および、ポリスチレン(1.59)。
【0012】
なお、本明細書では、「可視光線」とは、波長400nm以上700nm未満の光を意図する。また、「近赤外線」とは、波長700nm以上2000nm以下の光を意図する。また、「紫外線」とは、波長10nm以上400nm未満の光を意図する。
また、本明細書において、角度(例えば「90°」などの角度)、および、その関係(例えば「直交」および「平行」など)については、本発明が属する技術分野において許容される誤差の範囲を含むものとする。例えば、厳密な角度±10°の範囲内であることなどを意味し、厳密な角度との誤差は、5°以下であることが好ましく、3°以下であることがより好ましい。
【0013】
本明細書において表記される2価の基(例えば、-O-CO-)の結合方向は特に制限されず、例えば、後述する式(I)中のD1が-O-CO-である場合、Ar側に結合している位置を*1、G1側に結合している位置を*2とすると、D1は*1-O-CO-*2であってもよく、*1-CO-O-*2であってもよい。
【0014】
本発明の光学異方性膜の特徴点の一つとしては、J会合体を用いて、かつ、光学異方性膜の波長700~900nmにおける吸収特性を制御している点が挙げられる。
以下、本発明の特徴について詳述する。
まず、
図1に、測定波長550nmでの位相差(Re(550nm))を1として規格化した可視光線領域での各波長における位相差(Re(λ))の波長分散特性を示す。例えば、上述した理想的なλ/4板は、
図1の点線に示すように、位相差が測定波長に対し比例関係にあるため、測定波長が長いほど位相差が大きくなる「負の分散」特性を有する。それに対して、従来の逆波長分散性を示す光学異方性膜は、
図1の実線に示すように、短波長領域においては点線で示す理想曲線と重なる位置にもあるが、長波長領域においては理想曲線から外れる傾向を示す。
本発明の光学異方性膜においては、J会合体を用いて、かつ、光学異方性膜の波長700~900nmにおける吸収特性を制御することにより、白抜き矢印で示すように、長波長領域における光学特性を理想曲線に近づけることができる。
【0015】
上記特性が得られる理由としては、まず、一般的な有機分子の屈折率波長分散特性について
図2を参照しながら説明する。
図2中、上側は波長に対する屈折率の挙動を示し、下側では波長に対する吸収特性の挙動(吸収スペクトル)を示す。
有機分子は、固有吸収波長から離れた領域(
図2のaの領域)における屈折率nは波長が増すと共に単調に減少する。このような分散は「正常分散」と言われる。これに対して、固有吸収を含む波長域(
図2のbの領域)における屈折率nは、波長が増すと共に急激に増加する。このような分散は「異常分散」と言われる。
つまり、
図2に示すように、吸収がある波長領域の直前においては屈折率の増減が観察される。
【0016】
本発明の光学異方性膜においては、J会合体の影響を受けて、進相軸の方向での波長700~900nmにおける吸収が、遅相軸の方向での波長700~900nmにおける吸収よりも大きくなる。以後、このような吸収特性を、吸収特性Xともいう。後段で詳述するように、上記吸収特性Xは、光学異方性膜中においてJ会合体の吸光度の高い軸方向を進相軸の方向と平行になるように配置することにより達成される。
吸収特性Xを示す光学異方性膜においては、吸収特性Xを有さない光学異方性膜よりも、常光線屈折率がより低下する。
具体的には、
図3において、上記吸収特性Xの有無による異常光線屈折率neと常光線屈折率noとの波長分散の比較を示す図である。
図3中、太線は吸収特性Xがない場合の異常光線屈折率neのカーブを示し、実線は吸収特性Xがない場合の常光線屈折率noのカーブを示す。それに対して、吸収特性Xを有する本発明の光学異方性膜においては、上記
図2で示したような波長700~900nmの吸収に由来する影響を受けて、破線で示すように可視光線領域の長波長領域において常光線屈折率noの値がより低下する。結果として、可視光線領域の長波長領域において、異常光線屈折率neと常光線屈折率noとの差である複屈折Δnがより大きくなり、
図1に示す矢印の挙動が達成される。
以下、光学異方性膜の構成について詳述する。
【0017】
<J会合体>
光学異方性膜は、波長700nmより長波長側にJバンドの吸収ピークを有するJ会合体を含む。
J会合体とは、色素の集合体である。より具体的には、J会合体とは、色素分子同士が一定のずれ角(スリップアングル)をもって互いに会合した状態のことを指す。J会合体は、溶液状態の色素一分子の時と比較して、長波長側に、半値幅が狭く、吸光係数の高い吸収帯を有する。この先鋭化した吸収帯を、Jバンドという。Jバンドについては、文献(例えば、Photographic Science and Engineering Vol 18,No 323-335(1974))に詳細な記載がある。J会合体であるか否かは、その吸収極大波長を測定することで容易に判断できる。
【0018】
Jバンドの吸収ピークは、色素一分子の吸収ピークに対して、長波長側にシフトしており、Jバンドの吸収ピークの波長と色素一分子の吸収ピークの波長との差は10~200nmが好ましく、30~150nmがより好ましく、50~100nmがさらに好ましい。
【0019】
光学異方性膜中のJ化合物は、波長700nmより長波長側にJバンドの吸収ピークを有する。なかでも、近赤外線領域において吸収ピークを有するのが好ましい。
光学異方性膜の長波長側の波長分散性を調整すると共に、着色のない光学異方性膜を作製できる点から、J会合体のJバンドのピーク波長(極大吸収波長)は、700~1300nmの範囲に位置するのが好ましく、750~1200nmの範囲に位置するのがより好ましく、800~1000nmの範囲に位置するのがさらに好ましい。
【0020】
J会合体を構成し得る色素は、後段で詳述する。
【0021】
光学異方性膜においては、光学異方性膜の進相軸の方向での波長700~900nmにおける吸収(以下、「吸収F」ともいう)が、光学異方性膜の遅相軸の方向での波長700~900nmにおける吸収(以下、「吸収S」ともいう)よりも大きい。
上記「吸収Fが吸収Sよりも大きい」とは、光学異方性膜の進相軸に平行な偏光を光学異方性膜に照射した際に得られる吸収スペクトルの波長700~900nmにおける最大吸光度が、光学異方性膜の遅相軸に平行な偏光を光学異方性膜に照射した際に得られる吸収スペクトルの波長700~900nmにおける最大吸光度よりも大きいことを意図する。
なお、上記測定は、赤外線用偏光子を備えた分光光度計(MPC-3100(SHIMADZU製))を用いて実施できる。
【0022】
なお、上記のような吸収の異方性は、上述したJ会合体を用いることにより実現できる。特に、二色性のJ会合体を用いて、このJ会合体の吸光度のより高い軸方向を光学異方性膜の進相軸方向と平行とすることにより、吸収Fを吸収Sよりも大きくできる。
【0023】
光学異方性膜の進相軸の方向での波長700~900nmにおいて最大吸光度を示す波長を波長Xとした場合、光学異方性膜の進相軸の方向での波長Xにおける吸光度に対する、光学異方性膜の遅相軸の方向での波長Xにおける吸光度の比Dは特に制限されず、0.01超0.80以下の場合が多い。比Dが大きいと、近赤外線吸収色素の使用量を減らしても、光学異方性膜の逆波長分散性を向上させることができる。そのため、光学異方性膜を有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置の反射防止膜として適用した際に、有機EL表示装置の輝度がより優れる点で、式(C)の関係を満たすことが好ましい。
式(C) 0.01<D<0.61
なかでも、比Dは0.03~0.50であることがより好ましく、0.05~0.30であることがさらに好ましい。
【0024】
上記比Dを算出する際には、まず、光学異方性膜の進相軸に平行な偏光を光学異方性膜に照射した際に得られる吸収スペクトルの波長700~900nmにおける最大吸光度を示す波長である波長X(nm)を求める。次に、光学異方性膜の進相軸に平行な偏光を光学異方性膜に照射した際に得られる吸収スペクトルの波長Xnmにおける吸光度Aに対する、光学異方性膜の遅相軸に平行な偏光を光学異方性膜に照射した際に得られる吸収スペクトルの波長Xにおける吸光度Bの比(吸光度B/吸光度A)を算出する。
なお、上記測定は、赤外線用偏光子を備えた分光光度計(MPC-3100(SHIMADZU製))を用いて実施できる。
【0025】
光学異方性膜は、式(A)の関係を満たすことが好ましい。
式(A) Re(450)/Re(550)<1.00
Re(450)は波長450nmにおける光学異方性膜の面内レタデーションを表し、Re(550)は波長550nmにおける光学異方性膜の面内レタデーションを表す。
なかでも、Re(450)/Re(550)は、0.97以下が好ましく、0.92以下がより好ましく、0.87以下がさらに好ましい。下限は特に制限されないが、0.75以上の場合が多い。
【0026】
光学異方性膜は、式(B)の関係を満たすことが好ましい。
式(B) Re(650)/Re(550)>1.00
Re(650)は波長650nmにおける光学異方性膜の面内レタデーションを表す。
なかでも、Re(650)/Re(550)は、1.05以上が好ましく、1.08以上がより好ましく、1.10以上がさらに好ましい。上限は特に制限されないが、1.25以下が好ましく、1.20以下がより好ましい。
【0027】
光学異方性膜のRe(550)は特に制限されないが、λ/4板として有用である点で、110~160nmが好ましく、120~150nmがより好ましい。
【0028】
光学異方性膜の厚みは特に制限されず、薄型化の点から、10μm以下が好ましく、0.5~8.0μmがより好ましく、0.5~6.0μmがさらに好ましい。
なお、本明細書において、光学異方性膜の厚みとは、光学異方性膜の平均厚みを意図する。上記平均厚みは、光学異方性膜の任意の5箇所以上の厚みを測定して、それらを算術平均して求める。
【0029】
光学異方性膜中のJ会合体は、上記特性を満たすJ会合体であれば、その種類は特に制限されない。J会合体を形成可能な色素の種類も特に制限されず、可視光線吸収色素であっても、近赤外線吸収色素であってもよく、近赤外線吸収色素が好ましい。
可視光線吸収色素としては、例えば、メチン系色素(例えば、シアニン系色素、メロシアニン系色素、アリーリデン系色素、オキソノール系色素、スチリル系色素)が挙げられる。
近赤外線吸収色素としては、例えば、ジケトピロロピロール系色素、ジインモニウム系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、アゾ系色素、ポリメチン系色素、アントラキノン系色素、ピリリウム系色素、スクアリリウム系色素、トリフェニルメタン系色素、シアニン系色素、および、アミニウム系色素などが挙げられる。
可視光線吸収色素とは、可視光線領域に極大吸収波長を有する色素である。近赤外線吸収色素とは、近赤外線領域に極大吸収波長を有する色素である。
色素は1種単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
近赤外線吸収色素の極大吸収波長は、本発明の効果がより優れる点で、波長700~1200nmの範囲に位置することが好ましく、波長700~900nmの範囲に位置することがより好ましい。
本発明の効果がより優れる点で、近赤外線吸収色素の波長700~900nmの吸光度の積算値は、近赤外線吸収色素の波長400~700nmの吸光度の積算値よりも大きいことが好ましい。
上記吸光度の積算値とは、X~Ynmにおけるそれぞれの波長における吸光度を合計した値である。
上記測定は、分光光度計(MPC-3100(SHIMADZU製))を用いて実施できる。
【0031】
なお、色素(可視光線吸収色素および近赤外線吸収色素)は、二色性色素であることが好ましい。なお、二色性色素とは、分子の長軸方向における吸光度と、短軸方向における吸光度とが異なる性質を有する色素をいう。
【0032】
本発明の効果がより優れる点で、色素はメソゲン基を有することが好ましい。色素がメソゲン基を有することにより、後述する液晶化合物と共に配向しやすく、所定の吸収特性の制御がしやすい。
メソゲン基とは、剛直かつ配向性を有する官能基である。メソゲン基の構造としては、例えば、芳香環基(芳香族炭化水素環基および芳香族複素環基)および脂環基からなる群から選択される基が、複数個、直接または連結基(例えば、-O-、-CO-、-C(R0)2-、-CH=CH-、-CH=N-、-N=N-、-C≡C-、-NR0-、または、これらの組み合わせ(例えば、-COO-、-CONR0-、-COOCH2CH2-、-CONRCH2CH2-、-OCOCH=CH-、および、-C≡C-C≡C-)を表す。なお、R0は、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表す。)を介して連なった構造が挙げられる。
【0033】
光学異方性膜は、J会合体以外の他の成分を含んでいてもよく、例えば、後述する液晶化合物またはポリマーが挙げられる。
なお、後述するように重合性液晶化合物を含む組成物を用いて光学異方性膜を形成した際には、光学異方性膜には重合性液晶化合物の重合体が含まれる。
【0034】
光学異方性膜の好適態様の一つとしては、液晶化合物またはポリマーと、色素とを含む組成物を用いて形成された光学異方性膜であることが好ましい。この場合、上記J会合体は、組成物に含まれる色素によって構成される。つまり、組成物に含まれる色素が会合して、J会合体が形成される。
色素としては、上述したように、可視光線吸収色素および近赤外線吸収色素が挙げられ、近赤外線吸収色素が好ましい。
【0035】
近赤外線吸収色素の好適態様としては、式(1)で表される化合物が挙げられる。
式(1)で表される化合物は、可視光線領域の吸収が少なく、得られる光学異方性膜の着色がより抑制される。また、この化合物はメソゲン基を有する基を含むことから、液晶化合物と共に配向しやすい。その際、化合物の中心にある窒素原子を含む縮合環部分から横方向に延びる形でメソゲン基を有する基が配置されているため、形成される光学異方性膜の遅相軸に対して、上記縮合環部分が直交する方向に配列しやすい。つまり、光学異方性膜の遅相軸に直交する方向に、縮合環部分に由来する近赤外線領域(特に、波長700~900nm)における吸収が得られやすく、所望の特性を示す光学異方性膜が得られやすい。
【0036】
【0037】
R11およびR12は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表し、少なくとも一方は電子吸引性基であり、R11およびR12は結合して環を形成してもよい。
置換基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、芳香族ヘテロ環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、芳香族ヘテロ環チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、リン酸アミド基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(例えば、ヘテロアリール基)、シリル基、および、これらを組み合わせた基などが挙げられる。なお、上記置換基は、さらに置換基で置換されていてもよい。
【0038】
電子吸引性基としては、Hammettのσp値(シグマパラ値)が正の置換基を表し、例えば、シアノ基、アシル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルファモイル基、スルフィニル基、および、ヘテロ環基が挙げられる。
これら電子吸引性基はさらに置換されていてもよい。
ハメットの置換基定数σ値について説明する。ハメット則は、ベンゼン誘導体の反応または平衡に及ぼす置換基の影響を定量的に論ずるために1935年L.P.Hammettにより提唱された経験則であるが、これは今日広く妥当性が認められている。ハメット則に求められた置換基定数にはσp値とσm値があり、これらの値は多くの一般的な成書に見出すことができる。例えば、J.A.Dean編、「Lange’s Handbook of Chemistry」第12版,1979年(Mc Graw-Hill)や「化学の領域」増刊,122号,96~103頁,1979年(南光堂)、Chem.Rev.,1991年,91巻,165~195ページなどに詳しい。本発明において電子吸引性基としては、ハメットの置換基定数σp値が0.20以上の置換基が好ましい。σp値としては、0.25以上が好ましく、0.30以上がより好ましく、0.35以上がさらに好ましい。上限は特に制限はないが、0.80以下が好ましい。
具体例としては、シアノ基(0.66)、カルボキシル基(-COOH:0.45)、アルコキシカルボニル基(-COOMe:0.45)、アリールオキシカルボニル基(-COOPh:0.44)、カルバモイル基(-CONH2:0.36)、アルキルカルボニル基(-COMe:0.50)、アリールカルボニル基(-COPh:0.43)、アルキルスルホニル基(-SO2Me:0.72)、および、アリールスルホニル基(-SO2Ph:0.68)が挙げられる。
本明細書において、Meはメチル基を、Phはフェニル基を表す。なお、括弧内の値は代表的な置換基のσp値をChem.Rev.,1991年,91巻,165~195ページから抜粋したものである。
【0039】
R11およびR12が結合して環を形成する場合は、5~7員環(好ましくは5~6員環)の環を形成し、形成される環としては通常メロシアニン色素で酸性核として用いられるものが好ましい。
R11およびR12が結合して形成される環としては、1,3-ジカルボニル核、ピラゾリノン核、2,4,6-トリケトヘキサヒドロピリミジン核(チオケトン体も含む)、2-チオ-2,4-チアゾリジンジオン核、2-チオ-2,4-オキサゾリジンジオン核、2-チオ-2,5-チアゾリジンジオン核、2,4-チアゾリジンジオン核、2,4-イミダゾリジンジオン核、2-チオ-2,4-イミダゾリジンジオン核、2-イミダゾリン-5-オン核、3,5-ピラゾリジンジオン核、ベンゾチオフェン-3-オン核、またはインダノン核が好ましい。
【0040】
R11は、ヘテロ環基であることが好ましく、芳香族ヘテロ環基であることがより好ましい。ヘテロ環基は、単環であっても、多環であってもよい。ヘテロ環基としては、ピラゾール環基、チアゾール環基、オキサゾール環基、イミダゾール環基、オキサジアゾール環基、チアジアゾール環基、トリアゾール環基、ピリジン環基、ピリダジン環基、ピリミジン環基、ピラジン環基、これらのベンゾ縮環基(例えば、ベンゾチアゾール環基、ベンゾピラジン環基)もしくはナフト縮環基、または、これら縮環の複合体が好ましい。
上記ヘテロ環基には、置換基が置換していてもよい。置換基としては、R11およびR12で表される置換基で例示した基が挙げられる。
【0041】
R13は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、置換ホウ素(-B(Ra)2、Raは置換基を表す)または金属原子を表し、R11と共有結合または配位結合していてもよい。
R13で表される置換ホウ素の置換基は、R11およびR12について上述した置換基と同義であり、アルキル基、アリール基、または、ヘテロアリール基が好ましい。置換ホウ素の置換基(例えば、上述した、アルキル基、アリール基、または、ヘテロアリール基)は、さらに置換基で置換されていてもよい。置換基としては、R11およびR12で表される置換基で例示した基が挙げられる。
また、R13で表される金属原子は、遷移金属原子、マグネシウム原子、アルミニウム原子、カルシウム原子、バリウム原子、亜鉛原子、または、スズ原子が好ましく、アルミニウム原子、亜鉛原子、スズ原子、バナジウム原子、鉄原子、コバルト原子、ニッケル原子、銅原子、パラジウム原子、イリジウム原子、または、白金原子がより好ましい。
【0042】
R14は、それぞれ独立に、メソゲン基を有する基を表す。メソゲン基の定義は、上述した通りである。
R14は、式(2)で表される基であることが好ましい。*は、結合位置を表す。
式(2) *-M1-(X1-M2)n-X2-P
M1は、置換もしくは無置換のアリーレン基、または、置換もしくは無置換のヘテロアリーレン基を表す。アリーレン基としては、フェニレン基が挙げられる。ヘテロアリーレン基としては、ピラゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、これらのベンゾ縮環(例えば、ベンゾチアゾール環、ベンゾピラジン環)もしくはナフト縮環、または、これら縮環の複合体から任意の2つの水素原子を除いた2価の基が挙げられる。上記アリーレン基および上記ヘテロアリーレン基が置換基を有する場合、置換基としては、R11およびR12で表される置換基で例示した基が挙げられる。
X1は、単結合、-O-、-CO-、-C(R0)2-、-CH=CH-、-CH=N-、-N=N-、-C≡C-、-NR0-、または、これらの組み合わせ(例えば、-COO-、-CONR0-、-COOCH2CH2-、-CONRCH2CH2-、-OCOCH=CH-、および、-C≡C-C≡C-)を表す。R0は、水素原子または炭素数1~5のアルキル基を表す。
M2は、置換もしくは無置換のアリーレン基、置換もしくは無置換のヘテロアリーレン基、または、置換もしくは無置換のシクロアルキレン基を表す。アリーレン基としては、フェニレン基が挙げられる。ヘテロアリーレン基としては、ピラゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、これらのベンゾ縮環(例えば、ベンゾチアゾール環、ベンゾピラジン環)もしくはナフト縮環、または、これら縮環の複合体から任意の2つの水素原子を除いた2価の基が挙げられる。シクロアルキレン基に含まれる炭素数は、5~7が好ましい。上記アリーレン基、上記ヘテロアリーレン基、および、上記シクロアルキレン基が置換基を有する場合、置換基としては、R11およびR12で表される置換基で例示した基が挙げられる。
X2は、単結合または2価の連結基を表す。2価の連結基としては、例えば、2価の炭化水素基(例えば、炭素数1~10のアルキレン基、炭素数1~10のアルケニレン基、および、炭素数1~10のアルキニレン基などの2価の脂肪族炭化水素基、アリーレン基などの2価の芳香族炭化水素基)、2価の複素環基、-O-、-S-、-NH-、-N(Q)-、-CO-、または、これらを組み合わせた基(例えば、-O-2価の炭化水素基-、-(O-2価の炭化水素基)m-O-(mは、1以上の整数を表す)、および、-2価の炭化水素基-O-CO-など)が挙げられる。Qは、水素原子またはアルキル基を表す。
nは1~10を表す。なかでも、1~5が好ましく、2~4がより好ましい。
Pは、水素原子、または、重合性基を表す。重合性基の定義は、上述した液晶化合物が有していてもよい重合性基の定義と同義である。
【0043】
近赤外線吸収色素は、式(3)で表される化合物であることがより好ましい。
【0044】
【0045】
R14の定義は、上述した通りである。
R22は、それぞれ独立に、シアノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、または、含窒素ヘテロアリール基を表す。
R15およびR16は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、または、ヘテロアリール基を表し、R15およびR16は結合して環を形成してよい。形成される環としては、炭素数5~10の脂環、炭素数6~10の芳香族炭化水素環、または、炭素数3~10の芳香族複素環が挙げられる。R15およびR16が結合して形成される環には、さらに置換基が置換していてもよい。置換基としては、R11およびR12で表される置換基の説明で例示した基が挙げられる。
R17およびR18は、それぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、または、ヘテロアリール基を表す。R17およびR18で表される基には、さらに置換基が置換してもよい。置換基としては、R11およびR12で表される置換基の説明で例示した基が挙げられる。
Xは、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、-NR-、-CRR’-、-CH=CH-、または、-N=CH-を表し、RおよびR’は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、または、アリール基を表す。
【0046】
組成物中における色素の含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、液晶化合物全質量に対して、5~70質量%が好ましく、10~50質量%がより好ましい。
【0047】
<液晶化合物>
液晶化合物の種類は特に制限されないが、その形状から、棒状タイプ(棒状液晶化合物)と円盤状タイプ(円盤状液晶化合物。ディスコティック液晶化合物)とに分類できる。さらにそれぞれ低分子タイプと高分子タイプとがある。高分子とは一般に重合度が100以上のものを指す(高分子物理・相転移ダイナミクス,土井 正男 著,2頁,岩波書店,1992)。なお、2種以上の棒状液晶化合物、2種以上の円盤状液晶化合物、または、棒状液晶化合物と円盤状液晶化合物との混合物を用いてもよい。
【0048】
液晶化合物の極大吸収波長の位置は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、紫外線領域に位置することが好ましい。
【0049】
液晶化合物は、逆波長分散性液晶化合物であることが好ましい。逆波長分散性液晶化合物とは、その化合物を用いて形成される光学異方性膜が逆波長分散性を示す化合物を意味する。つまり、逆波長分散性液晶化合物とは、その化合物を用いて形成される光学異方性膜の面内レタデーションが、測定波長が大きくなるにつれて大きくなり、理想曲線に近づくような化合物を意味する。
【0050】
光学特性の温度変化および湿度変化を小さくできることから、液晶化合物としては、重合性基を有する液晶化合物(以下、「重合性液晶化合物」ともいう。)が好ましい。液晶化合物は2種類以上の混合物でもよく、その場合、少なくとも1つが2以上の重合性基を有していることが好ましい。
つまり、光学異方性膜は、重合性液晶化合物を含む組成物が重合などによって固定されて形成された層であることが好ましく、この場合、層となった後はもはや液晶性を示す必要はない。
上記重合性基の種類は特に制限されず、ラジカル重合またはカチオン重合が可能な重合性基が好ましい。
ラジカル重合性基としては、公知のラジカル重合性基を用いることができ、アクリロイル基またはメタアクリロイル基が好ましい。
カチオン重合性基としては、公知のカチオン重合性基を用いることができ、具体的には、脂環式エーテル基、環状アセタール基、環状ラクトン基、環状チオエーテル基、スピロオルソエステル基、および、ビニルオキシ基などが挙げられる。なかでも、脂環式エーテル基またはビニルオキシ基が好ましく、エポキシ基、オキセタニル基、または、ビニルオキシ基がより好ましい。
特に、好ましい重合性基の例としては下記が挙げられる。
【0051】
【0052】
なかでも、液晶化合物としては、式(I)で表される化合物が好ましい。
式(I) L1-SP1-A1-D3-G1-D1-Ar-D2-G2-D4-A2-SP2-L2
上記式(I)中、D1、D2、D3およびD4は、それぞれ独立に、単結合、-O-CO-、-C(=S)O-、-CR1R2-、-CR1R2-CR3R4-、-O-CR1R2-、-CR1R2-O-CR3R4-、-CO-O-CR1R2-、-O-CO-CR1R2-、-CR1R2-O-CO-CR3R4-、-CR1R2-CO-O-CR3R4-、-NR1-CR2R3-、または、-CO-NR1-を表す。
【0053】
R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、または、炭素数1~4のアルキル基を表す。
また、上記式(I)中、G1およびG2は、それぞれ独立に、炭素数5~8の2価の脂環式炭化水素基を表し、脂環式炭化水素基を構成する-CH2-の1個以上が-O-、-S-または-NH-で置換されていてもよい。
また、上記式(I)中、A1およびA2は、それぞれ独立に、単結合、炭素数6以上の芳香環、または、炭素数6以上のシクロアルキレン環を表す。
また、上記式(I)中、SP1およびSP2は、それぞれ独立に、単結合、炭素数1~14の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキレン基、または、炭素数1~14の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキレン基を構成する-CH2-の1個以上が-O-、-S-、-NH-、-N(Q)-、もしくは、-CO-に置換された2価の連結基を表し、Qは、重合性基を表す。
また、上記式(I)中、L1およびL2は、それぞれ独立に1価の有機基(例えば、アルキル基、または、重合性基)を表す。
なお、Arが後述する式(Ar-1)、式(Ar-2)、式(Ar-4)、または、式(Ar-5)で表される基である場合、L1およびL2の少なくとも一方は重合性基を表す。また、Arが、後述する式(Ar-3)で表される基である場合は、L1およびL2ならびに下記式(Ar-3)中のL3およびL4の少なくとも1つが重合性基を表す。
【0054】
上記式(I)中、G1およびG2が示す炭素数5~8の2価の脂環式炭化水素基としては、5員環または6員環が好ましい。また、脂環式炭化水素基は、飽和脂環式炭化水素基でも不飽和脂環式炭化水素基でもよいが、飽和脂環式炭化水素基が好ましい。G1およびG2で表される2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、特開2012-21068号公報の段落0078の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0055】
上記式(I)中、A1およびA2が示す炭素数6以上の芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、および、フェナンスロリン環などの芳香族炭化水素環;フラン環、ピロール環、チオフェン環、ピリジン環、チアゾール環、および、ベンゾチアゾール環などの芳香族複素環;が挙げられる。なかでも、ベンゼン環(例えば、1,4-フェニル基など)が好ましい。
また、上記式(I)中、A1およびA2が示す炭素数6以上のシクロアルキレン環としては、例えば、シクロヘキサン環、および、シクロヘキセン環などが挙げられ、なかでも、シクロヘキサン環(例えば、シクロヘキサン-1,4-ジイル基など)が好ましい。
【0056】
上記式(I)中、SP1およびSP2が示す炭素数1~14の直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、または、ブチレン基が好ましい。
【0057】
上記式(I)中、L1およびL2で表される重合性基は、特に制限されないが、ラジカル重合性基(ラジカル重合可能な基)またはカチオン重合性基(カチオン重合可能な基)が好ましい。
ラジカル重合性基の好適範囲は、上述の通りである。
【0058】
一方、上記式(I)中、Arは、下記式(Ar-1)~(Ar-7)で表される基からなる群から選択されるいずれかの芳香環を表す。なお、下記式(Ar-1)~(Ar-7)中、*1はD1との結合位置を表し、*2はD2との結合位置を表す。
【0059】
【0060】
【0061】
ここで、上記式(Ar-1)中、Q1は、NまたはCHを表し、Q2は、-S-、-O-、または、-N(R5)-を表し、R5は、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表し、Y1は、置換基を有してもよい、炭素数6~12の芳香族炭化水素環基、または、炭素数3~12の芳香族複素環基を表す。
R5が示す炭素数1~6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、および、n-ヘキシル基などが挙げられる。
Y1が示す炭素数6~12の芳香族炭化水素環基としては、例えば、フェニル基、2,6-ジエチルフェニル基、および、ナフチル基などのアリール基が挙げられる。
Y1が示す炭素数3~12の芳香族複素環基としては、例えば、チエニル基、チアゾリル基、フリル基、ピリジル基、および、ベンゾフリル基などのヘテロアリール基が挙げられる。なお、芳香族複素環基には、ベンゼン環と芳香族複素環とが縮合した基も含まれる。
また、Y1が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、アルキルスルホニル基、アルキルオキシカルボニル基、シアノ基、および、ハロゲン原子などが挙げられる。
アルキル基としては、例えば、炭素数1~18の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基が好ましく、炭素数1~8のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、および、シクロヘキシル基)がより好ましく、炭素数1~4のアルキル基がさらに好ましく、メチル基またはエチル基が特に好ましい。
アルコキシ基としては、例えば、炭素数1~18のアルコキシ基が好ましく、炭素数1~8のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-ブトキシ基、および、メトキシエトキシ基)がより好ましく、炭素数1~4のアルコキシ基がさらに好ましく、メトキシ基またはエトキシ基が特に好ましい。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、および、ヨウ素原子などが挙げられ、フッ素原子、または、塩素原子が好ましい。
【0062】
また、上記式(Ar-1)~(Ar-7)中、Z1、Z2およびZ3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20の1価の脂肪族炭化水素基、炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基、炭素数6~20の1価の芳香族炭化水素環基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、-NR6R7、または、-SR8を表し、R6~R8は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表し、Z1およびZ2は、互いに結合して環を形成してもよい。環は、脂環式、複素環、および、芳香環のいずれであってもよく、芳香環であることが好ましい。なお、形成される環には、置換基が置換していてもよい。
炭素数1~20の1価の脂肪族炭化水素基としては、炭素数1~15のアルキル基が好ましく、炭素数1~8のアルキル基がより好ましく、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert-ペンチル基(1,1-ジメチルプロピル基)、tert-ブチル基、または、1,1-ジメチル-3,3-ジメチル-ブチル基がさらに好ましく、メチル基、エチル基、または、tert-ブチル基が特に好ましい。
炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基、メチルシクロヘキシル基、および、エチルシクロヘキシル基などの単環式飽和炭化水素基;シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基、シクロオクテニル基、シクロデセニル基、シクロペンタジエニル基、シクロヘキサジエニル基、シクロオクタジエニル基、および、シクロデカジエン基などの単環式不飽和炭化水素基;ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、ビシクロ[2.2.2]オクチル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシル基、トリシクロ[3.3.1.13,7]デシル基、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデシル基、および、アダマンチル基などの多環式飽和炭化水素基;が挙げられる。
炭素数6~20の1価の芳香族炭化水素環基としては、例えば、フェニル基、2,6-ジエチルフェニル基、ナフチル基、および、ビフェニル基などが挙げられ、炭素数6~12のアリール基(特にフェニル基)が好ましい。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、および、ヨウ素原子などが挙げられ、フッ素原子、塩素原子、または、臭素原子が好ましい。
一方、R6~R8が示す炭素数1~6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、および、n-ヘキシル基などが挙げられる。
【0063】
また、上記式(Ar-2)および(Ar-3)中、A3およびA4は、それぞれ独立に、-O-、-N(R9)-、-S-、および、-CO-からなる群から選択される基を表し、R9は、水素原子または置換基を表す。
R9が示す置換基としては、上記式(Ar-1)中のY1が有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0064】
また、上記式(Ar-2)中、Xは、水素原子または置換基が結合していてもよい第14族~第16族の非金属原子を表す。
また、Xが示す第14族~第16族の非金属原子としては、例えば、酸素原子、硫黄原子、置換基を有する窒素原子、および、置換基を有する炭素原子が挙げられ、置換基としては、上記式(Ar-1)中のY1が有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0065】
また、上記式(Ar-3)中、D5およびD6は、それぞれ独立に、単結合、-O-CO-、-C(=S)O-、-CR1R2-、-CR1R2-CR3R4-、-O-CR1R2-、-CR1R2-O-CR3R4-、-CO-O-CR1R2-、-O-CO-CR1R2-、-CR1R2-O-CO-CR3R4-、-CR1R2-CO-O-CR3R4-、-NR1-CR2R3-、または、-CO-NR1-を表す。R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、または、炭素数1~4のアルキル基を表す。
【0066】
また、上記式(Ar-3)中、SP3およびSP4は、それぞれ独立に、単結合、炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキレン基、または、炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキレン基を構成する-CH2-の1個以上が-O-、-S-、-NH-、-N(Q)-、もしくは、-CO-に置換された2価の連結基を表し、Qは、重合性基を表す。
【0067】
また、上記式(Ar-3)中、L3およびL4は、それぞれ独立に1価の有機基(例えば、アルキル基、または、重合性基)を表し、上述したように、L3およびL4ならびに上記式(I)中のL1およびL2の少なくとも1つが重合性基を表す。
【0068】
また、上記式(Ar-4)~(Ar-7)中、Axは、芳香族炭化水素環および芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも1つの芳香環を有する、炭素数2~30の有機基を表す。
また、上記式(Ar-4)~(Ar-7)中、Ayは、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基、または、芳香族炭化水素環および芳香族複素環からなる群から選択される少なくとも1つの芳香環を有する、炭素数2~30の有機基を表す。
ここで、AxおよびAyにおける芳香環は、置換基を有していてもよく、AxとAyとが結合して環を形成していてもよい。
また、Q3は、水素原子、または、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基を表す。
AxおよびAyとしては、WO2014/010325号の段落0039~0095に記載されたものが挙げられる。
また、Q3が示す炭素数1~6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、および、n-ヘキシル基などが挙げられ、置換基としては、上記式(Ar-1)中のY1が有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0069】
なかでも、本発明の効果がより優れる点で、A1およびA2の少なくとも一方が、炭素数6以上のシクロアルキレン環であることが好ましく、A1およびA2の一方が、炭素数6以上のシクロアルキレン環であることがより好ましい。
【0070】
組成物中における液晶化合物の含有量は特に制限されないが、組成物中の全固形分に対して、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましい。上限は特に制限されないが、90質量%以下の場合が多い。
なお、組成物中の全固形分には、溶媒は含まれない。つまり、固形分とは、組成物から溶媒を除いた成分を意味する。
【0071】
なお、組成物は、さらに順波長分散性液晶化合物を含んでいてもよい。順波長分散性液晶化合物とは、その化合物を用いて形成される光学異方性膜が順波長分散性を示す化合物を意味する。つまり、順波長分散性液晶化合物とは、その化合物を用いて形成される光学異方性膜の面内レタデーションが、測定波長が大きくなるにつれて小さくなるような化合物を意味する。
順波長分散性液晶化合物を加えることで、組成物の波長分散を調節し、より理想波長分散に近い波長分散性を付与することが可能となる。
【0072】
<ポリマー>
ポリマーの種類は特に制限されないが、逆波長分散性ポリマーであることが好ましい。逆波長分散性ポリマーとは、そのポリマーを用いて形成される光学異方性膜が逆波長分散性を示すポリマーを意味する。
ポリマーの好適態様の1つとしては、式(7)で表される繰り返し単位および式(8)で表される繰り返し単位からなる群から選択される1種以上の繰り返し単位を含むポリマーが挙げられる。
【0073】
【0074】
式(7)および式(8)中、R31~R33は、それぞれ独立に、単結合、または、置換基を有していてもよい炭素数1~4のアルキレン基を表す。
R34~R39は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数4~10のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数4~10のヘテロアリール基、置換基を有していてもよい炭素数1~10のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1~10のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1~10のアシルオキシ基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数1~10のビニル基、置換基を有していてもよい炭素数1~10のエチニル基、置換基を有する硫黄原子、置換基を有するケイ素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、または、シアノ基を表す。但し、R34~R39のうち隣接する少なくとも2つの基が互いに結合して環を形成していてもよい。
また、式(7)に含まれる2つのR34、R35、R36、R37、R38およびR39は、互いに同一であっても、異なっていてもよい。同様に、式(8)に含まれる2つのR34、R35、R36、R37、R38およびR39は、互いに同一であっても、異なっていてもよい。
【0075】
ポリマーの他の好適態様としては、式(9)で表される繰り返し単位および式(11)で表される繰り返し単位を含むポリマーが挙げられる。
【0076】
【0077】
【0078】
式(9)中、R41~R48は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、または、炭素数1~6の炭化水素基を表す。
Xは、式(10)で表される基を表す。式(10)中、*は結合位置を表す。
【0079】
【0080】
式(11)中、R51~R58は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、または、炭素数1~22の炭化水素基を表す。
Yは、-C(R61)(R62)-、式(12)で表される基、-Si(R67)(R68)-、-SO2-、-S-、2価の脂肪族炭化水素基、-C(CH3)2-フェニレン基-C(CH3)2-、-CO-O-L-O-CO-を表す。
式(12)中、*は結合位置を表す。
【0081】
【0082】
R61、R62、R67およびR68は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、または、炭素数1~22の炭化水素基(例えば、炭素数6~10のアリール基)を表す。
R63~R66は、それぞれ独立に、水素原子またはアルキル基を表す。
Lは、2価の脂肪族炭化水素基を表す。
【0083】
ポリマー中における式(9)で表される繰り返し単位の含有量は特に制限されないが、全繰り返し単位に対して、30~90モル%が好ましい。
ポリマー中における式(11)で表される繰り返し単位の含有量は特に制限されないが、全繰り返し単位に対して、10~70モル%が好ましい。
【0084】
ポリマーの他の好適態様としては、セルロースアシレートが挙げられる。
セルロースアシレートとしては、セルロースの低級脂肪酸エステルが好ましい。低級脂肪酸とは、炭素数が6以下の脂肪酸を意味する。脂肪酸の炭素数は、2(セルロースアセテート)、3(セルロースプロピオネート)、または、4(セルロースブチレート)であることが好ましい。なお、セルロースアセテートプロピオネートおよびセルロースアセテートブチレートのような混合脂肪酸エステルを用いてもよい。
セルロースアセテートの酢化度は、55.0~62.5%が好ましく、57.0~62.0%がより好ましく、58.5~61.5%がさらに好ましい。
酢化度は、セルロース単位質量当たりの結合酢酸量を意味する。酢化度は、ASTM:D-817-91(セルロースアセテートなどの試験法)におけるアセチル化度の測定および計算に従う。
【0085】
なお、ポリマーとしてセルロースアシレートを用いる場合、可塑剤、劣化防止剤、レタデーション上昇剤、および、紫外線吸収剤などの添加剤を合わせて用いてもよい。
上記添加剤に関しては、特開2004-050516号公報に例示される添加剤が挙げられる。
【0086】
組成物中におけるポリマーの含有量は特に制限されないが、組成物中の全固形分に対して、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましい。上限は特に制限されないが、90質量%以下の場合が多い。
なお、組成物中の全固形分には、溶媒は含まれない。
【0087】
<他の成分>
上記組成物は、上述した液晶化合物、ポリマー、および、色素以外の成分を含んでいてもよい。
組成物は、重合開始剤を含んでいてもよい。使用される重合開始剤は、重合反応の形式に応じて選択され、例えば、熱重合開始剤、および、光重合開始剤が挙げられる。例えば、光重合開始剤としては、α-カルボニル化合物、アシロインエーテル、α-炭化水素置換芳香族アシロイン化合物、多核キノン化合物、および、トリアリールイミダゾールダイマーとp-アミノフェニルケトンとの組み合わせなどが挙げられる。
組成物中における重合開始剤の含有量は、組成物の全固形分に対して、0.01~20質量%が好ましく、0.5~10質量%がより好ましい。
【0088】
また、組成物は、重合性モノマーを含んでいてもよい。
重合性モノマーとしては、ラジカル重合性またはカチオン重合性の化合物が挙げられる。なかでも、多官能性ラジカル重合性モノマーが好ましい。また、重合性モノマーとしては、上記の重合性基を有する液晶化合物と共重合性のモノマーが好ましい。例えば、特開2002-296423号公報中の段落0018~0020に記載の重合性モノマーが挙げられる。
組成物中における重合性モノマーの含有量は、液晶化合物の全質量に対して、1~50質量%が好ましく、2~30質量%がより好ましい。
【0089】
また、組成物は、界面活性剤を含んでいてもよい。
界面活性剤としては、従来公知の化合物が挙げられるが、フッ素系化合物が好ましい。例えば、特開2001-330725号公報中の段落0028~0056に記載の化合物、および、特願2003-295212号明細書中の段落0069~0126に記載の化合物が挙げられる。
【0090】
また、組成物は、溶媒を含んでいてもよい。溶媒としては、有機溶媒が好ましい。有機溶媒としては、アミド(例:N,N-ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例:ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例:ピリジン)、炭化水素(例:ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例:クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例:酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル)、ケトン(例:アセトン、メチルエチルケトン)、および、エーテル(例:テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン)が挙げられる。なお、2種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
【0091】
また、組成物は、垂直配向剤、および、水平配向剤などの各種配向制御剤を含んでいてもよい。これらの配向制御剤は、界面側において液晶化合物を水平または垂直に配向制御可能な化合物である。
さらに、組成物は、上記成分以外に、密着改良剤、および、可塑剤を含んでいてもよい。
【0092】
<製造方法>
本発明の光学異方性膜の製造方法は特に制限されず、公知の方法が挙げられる。
なかでも、面内レタデーションの制御がしやすい点から、重合性液晶化合物およびJ会合体を形成し得る色素を含む組成物を塗布して塗膜を形成し、塗膜に配向処理を施して重合性液晶化合物を配向させ、得られた塗膜に対して硬化処理(紫外線の照射(光照射処理)または加熱処理)を施して、光学異方性膜を形成する方法が好ましい。
以下、上記方法の手順について詳述する。
【0093】
まず、支持体上に、組成物を塗布して塗膜を形成し、塗膜に配向処理を施して重合性液晶化合物を配向させる。なお、J会合体が形成される条件は、色素構造および組成物組成によって異なることが多い。なかでも、重合性液晶化合物が配向する際または配向した後に、J会合体を形成することが好ましい。例えば、加熱して重合性液晶化合物を配向させた後、冷却した際に、J会合体が形成される場合もある。
使用される組成物は、重合性液晶化合物を含む。重合性液晶化合物の定義は、上述した通りである。
【0094】
使用される支持体は、組成物を塗布するための基材として機能を有する部材である。支持体は、組成物を塗布および硬化させた後に剥離される仮支持体であってもよい。
支持体(仮支持体)としては、プラスチックフィルムの他、ガラス基板を用いてもよい。プラスチックフィルムを構成する材料としては、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、セルロース誘導体、シリコーン樹脂、および、ポリビニルアルコール(PVA)などが挙げられる。
支持体の厚みは、5~1000μm程度であればよく、10~250μmが好ましく、15~90μmがより好ましい。
【0095】
なお、必要に応じて、支持体上には、配向層を配置してもよい。
配向層は、一般的には、ポリマーを主成分とする。配向層用ポリマーとしては、多数の文献に記載があり、多数の市販品を入手できる。配向層用ポリマーとしては、ポリビニルアルコール、ポリイミド、または、その誘導体が好ましい。
なお、配向層には、公知のラビング処理が施されることが好ましい。
配向層の厚みは、0.01~10μmが好ましく、0.01~1μmがより好ましい。
【0096】
組成物の塗布方法としては、カーテンコーティング法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、印刷コーティング法、スプレーコーティング法、スロットコーティング法、ロールコーティング法、スライドコーティング法、ブレードコーティング法、グラビアコーティング法、および、ワイヤーバー法が挙げられる。いずれの方法で塗布する場合においても、単層塗布が好ましい。
【0097】
支持体上に形成された塗膜に、配向処理を施して、塗膜中の重合性液晶化合物を配向させる。
配向処理は、室温により塗膜を乾燥させる、または、塗膜を加熱することにより行うことができる。配向処理で形成される液晶相は、サーモトロピック性液晶化合物の場合、一般に温度または圧力の変化により転移させることができる。リオトロピック性液晶化合物の場合には、溶媒量などの組成比によっても転移させることができる。
なお、塗膜を加熱する場合の条件は特に制限されないが、加熱温度としては50~250℃が好ましく、150~230℃がより好ましく、加熱時間としては10秒間~10分間が好ましい。
また、塗膜を加熱した後、後述する硬化処理(光照射処理)の前に、必要に応じて、塗膜を冷却してもよい。冷却温度としては20~200℃が好ましく、30~150℃がより好ましい。
【0098】
次に、重合性液晶化合物が配向された塗膜に対して硬化処理を施す。
重合性液晶化合物が配向された塗膜に対して実施される硬化処理の方法は特に制限されず、例えば、光照射処理および加熱処理が挙げられる。なかでも、製造適性の点から、光照射処理が好ましく、紫外線照射処理がより好ましい。
光照射処理の照射条件は特に制限されないが、50~1000mJ/cm2の照射量が好ましい。
【0099】
上記製造方法において、各種条件を調整することにより、色素の配置状態などを調整でき、結果として光学異方性膜の光学特性を調整できる。
例えば、支持体上に組成物を塗布して塗膜を形成した後の液晶化合物を配向させる際の加熱温度、および、加熱した後に冷却する際の冷却温度を調整することにより、色素の配置状態などを調整でき、結果として光学異方性膜の光学特性を調整できる。
また、上記では光学異方性膜の形成時にJ会合体が形成される態様について述べたが、この態様に限定されず、別途、J会合体を合成した後、得られたJ会合体と重合性液晶化合物とを含む組成物を用いて、上記方法により光学異方性膜を形成してもよい。
【0100】
本発明の光学異方性膜の製造方法の他の態様としては、ポリマー、および、J会合体を形成し得る色素を含む組成物を用いて未延伸フィルムを形成し、得られた未延伸フィルムを延伸配向させて、延伸フィルムである光学異方性膜を形成する方法が挙げられる。
未延伸フィルムを形成する方法としては、ポリマー、色素および溶媒を含む組成物を塗布して、その後溶媒を除去して、未延伸フィルムを形成する方法、および、溶媒を用いずにポリマーおよび色素を含む固形分を溶融させて製膜する方法が挙げられる。
延伸方法としては、縦一軸延伸、横一軸延伸、または、それらを組み合わせた同時二軸延伸もしくは逐次二軸延伸などの公知の方法が挙げられる。
J会合体は未延伸フィルム中で形成されてもよいし、延伸時に形成されてもよい。
【0101】
(用途)
上述した光学異方性膜は、種々の用途に適用でき、例えば、光学異方性膜の面内レタデーションを調整して、いわゆるλ/4板またはλ/2板として用いることもできる。
なお、λ/4板とは、ある特定の波長の直線偏光を円偏光に(または、円偏光を直線偏光に)変換する機能を有する板である。より具体的には、所定の波長λnmにおける面内レタデーションReがλ/4(または、この奇数倍)を示す板である。
λ/4板の波長550nmでの面内レタデーション(Re(550))は、理想値(137.5nm)を中心として、25nm程度の誤差があってもよく、例えば、110~160nmであることが好ましく、120~150nmであることがより好ましい。
また、λ/2板とは、特定の波長λnmにおける面内レタデーションRe(λ)がRe(λ)≒λ/2を満たす光学異方性膜のことをいう。この式は、可視光線領域のいずれかの波長(例えば、550nm)において達成されていればよい。なかでも、波長550nmにおける面内レタデーションRe(550)が、以下の関係を満たすことが好ましい。
210nm≦Re(550)≦300nm
【0102】
上記光学異方性膜上には、さらに別の層を配置してもよい。例えば、別の層としては、ガスバリア層が挙げられる。つまり、光学異方性膜と、光学異方性膜上に配置されたガスバリア層とを含む積層体(以後、「特定積層体」ともいう。)として用いてもよい。ガスバリア層が配置されることにより、光学異方性膜の耐光性が向上する。
ガスバリア層は、ガスを通しにくい層を意図し、酸素バリア層が好ましい。なお、酸素バリアとは、酸素透過度が、10mL/m2・day・atm以下である層を意図し、1mL/m2・day・atmが好ましい。下限は特に制限されないが、10-6mL/m2・day・atm以上の場合が多い。
ガスバリア層としては、ポリビニルアルコール層(ポリビニルアルコールから構成される層)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)層(EVOHから構成される層)、および、無機蒸着層が挙げられる。
【0103】
光学異方性膜、および、特定積層体は、表示装置中に含まれていてもよい。つまり、光学異方性膜のより具体的な用途としては、例えば、液晶セルを光学補償するための光学補償フィルム、および、有機エレクトロルミネッセンス表示装置などの表示装置に用いられる反射防止膜が挙げられる。
なかでも、光学フィルムの好ましい態様として、光学異方性膜または特定積層体と偏光子とを含む円偏光板が挙げられる。この円偏光板は、上記反射防止膜として好適に使用できる。つまり、表示素子(例えば、有機エレクトロルミネッセンス表示素子)と、表示素子上に配置された円偏光板とを有する表示装置においては、反射色味がより抑制できる。
また、本発明の光学異方性膜は、IPS(In Plane Switching)型液晶表示装置の光学補償フィルムに好適に用いられ、斜め方向から視認した時の色味変化および黒表示時の光漏れを改善できる。
【0104】
光学異方性膜を含む光学フィルムとしては、上述したように、偏光子と光学異方性膜とを含む円偏光板が挙げられる。
偏光子は、光を特定の直線偏光に変換する機能を有する部材(直線偏光子)であればよく、主に、吸収型偏光子を利用できる。
吸収型偏光子としては、ヨウ素系偏光子、二色性染料を利用した染料系偏光子、およびポリエン系偏光子などが挙げられる。ヨウ素系偏光子および染料系偏光子には、塗布型偏光子と延伸型偏光子とがあり、いずれも適用できるが、ポリビニルアルコールにヨウ素または二色性染料を吸着させ、延伸して作製される偏光子が好ましい。
偏光子の吸収軸と光学異方性膜の遅相軸との関係は特に制限されないが、光学異方性膜がλ/4板であり、光学フィルムが円偏光フィルムとして用いられる場合は、偏光子の吸収軸と光学異方性膜の遅相軸とのなす角は、45°±10°が好ましい。
【実施例】
【0105】
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、および、処理手順などは、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更できる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0106】
<色素の合成>
(色素D-1の合成)
色素D-1を下記スキームに従って合成した。
【0107】
【0108】
(化合物a-1の合成)
4-ブロモフェノール(50.0g、258mmol)、1-ブロモ-2-メチルプロパン(59.4g、433mmol)、炭酸カリウム(104g、751mmol)、および、N,N-ジメチルホルムアミド(250ml)を室温にて混合した。得られた混合物を105℃に昇温し、10時間撹拌した後、室温に降温し、混合液に無機塩を濾過した。得られた混合液に、酢酸エチル(300ml)および1N塩酸水(300ml)を加えて分液抽出を行った。有機層を蒸留水(300ml)および飽和重曹水(300ml)で洗い、得られた有機層を硫酸マグネシウムにて乾燥した。その後、得られた溶液からろ過により硫酸マグネシウムを除去して、溶液から溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物を、酢酸エチル-ヘキサンを溶媒に用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィによる精製を行い、オイル状の化合物a-1(49.5g、216mmol)を得た(収率:74%)。
【0109】
(化合物a-2の合成)
乾燥窒素雰囲気下、マグネシウム(3.75g、154mmol)、塩化リチウム(3.27g、105mmol)、および、テトラヒドロフラン(160ml)を室温にて混合した。得られた混合液を63℃に昇温し、化合物a-1(32.1g、140mmol)およびテトラヒドロフラン(40ml)の混合物を滴下した。得られた混合液を室温に降温した後、トリメトキシボラン(7.28g、70.1mmol)およびテトラヒドロフラン(20ml)の混合物を滴下した。得られた混合液を50℃に昇温し、2時間撹拌した後、室温に降温した。得られた混合液に蒸留水(20ml)を加えた後、酢酸エチル(200ml)および1N塩酸水(200ml)を加え、分液抽出した。有機層を飽和食塩水(200ml)で2回洗い、得られた有機層を硫酸マグネシウムにて乾燥した。その後、得られた溶液からろ過により硫酸マグネシウムを除去して、溶液から溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物を酢酸エチル-ヘキサンを溶媒に用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィによる精製を行った。得られた粗生成物にトルエン(100ml)およびエタノールアミン(6.42g、105mmol)を加え、室温にて10分間撹拌した。溶媒および過剰なエタノールアミンを減圧留去し、白色固体の化合物a-2(6.45g、17.5mmol)を得た(収率:25%)。
【0110】
(化合物a-3の合成)
化合物(ピロロピロール)a-3は、WO2017/146092号の段落0271~0272に記載の化合物A-15-cの合成法に従って合成した。
【0111】
(化合物a-4の合成)
化合物(ピロロピロールホウ素錯体)a-4は、WO2017/146092号の段落0271~0272に記載の化合物A-15の合成法に従って合成した。A-15の合成法におけるジフェニルボリン酸2-アミノエチルエステルに代えて、上記化合物a-2を用いることで合成できる。
【0112】
(化合物a-5の合成)
化合物a-5は、WO2018/124198号の段落0088~0091に記載の化合物P1-1の合成法に従って合成した。
【0113】
(化合物a-6の合成)
化合物a-5(10.0g、30.8mmol)、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン 1-オキシル(12.0mg、0.77mmol)、トルエン(20ml)、および、N,N-ジメチルアセトアミド(5.5ml)を室温にて混合した。得られた混合液を-5℃に降温し、塩化チオニル(3.52g、29.6mmol)を混合液に滴下した。得られた混合液を内温-5~3℃にて1時間撹拌した後、2-(4-ヒドロキシフェニル)エタノール(3.55g、25.7mmol)およびN,N-ジメチルアセトアミド(13.0ml)の混合物を滴下した。得られた混合液を52℃に昇温し、7時間撹拌した後、室温まで降温した。この混合液に、蒸留水およびトルエンを加えて分液抽出を行った。有機層を1N塩酸水で洗い、その後、飽和重曹水で2回洗い、さらに飽和食塩水で洗い、得られた有機層を硫酸マグネシウムにて乾燥した。その後、得られた溶液からろ過により硫酸マグネシウムを除去して、溶液から溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物を、酢酸エチル-ヘキサンを溶媒に用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィによる精製を行い、白色固体の化合物a-6(6.03g、13.6mmol)を得た(収率:53%)。
【0114】
(化合物a-7の合成)
化合物a-6(4.46g、10.0mmol)、シクロヘキサンジカルボン酸ジクロライド(6.29g、30.0mmol)、ジブチルヒドロキシトルエン(66.0mg、0.30mmol)、および、テトラヒドロフラン(67.0ml)を室温にて混合した。得られた混合液を3℃に降温し、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(2.59g、20.0mmol)を滴下した後、得られた混合液を1時間撹拌した。得られた混合液にメタンスルホン酸(130μl)を加え、不溶解物をろ過した後、10%炭酸カリウム水(12.5g)を加えて分液抽出を行った。有機層を17%炭酸カリウム水(20.4g)で洗い、得られた有機層を硫酸マグネシウムにて乾燥した。その後、得られた溶液からろ過により硫酸マグネシウムを除去して、溶液から溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物を、酢酸エチル-ヘキサンを溶媒に用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィによる精製を行い、白色固体の化合物a-7(2.06g、3.43mmol)を得た(収率:34.3%)。
【0115】
(色素D-1の合成)
化合物a-4(1.30g、0.99mmol)、化合物a-7(1.84g、3.08mmol)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(1.14g、5.96mmol)、N,N-ジメチルアミノピリジン(12.1mg、0.10mmol)、ジブチルヒドロキシトルエン(21.9mg、0.10mmol)、および、N,N-ジメチルアセトアミド(15ml)、および、テトラヒドロフラン(15ml)を室温にて混合した。得られた混合液を70℃に昇温し、2時間撹拌した後、室温まで降温した。得られた混合液にメタノール(200ml)を滴下し、析出した結晶をろ過して回収した。得られた粗生成物を、酢酸エチル-クロロホルムを溶媒に用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィによる精製を行い、緑色固体の色素D-1(0.38g、0.15mmol)を得た(収率:16%)。色素D-1の構造は、1H-NMR(Nuclear Magnetic Resonance)により同定した。
1H-NMR(溶媒:CDCl3)δ(ppm):1.02(m,24H),1.61-1.80(m,8H),2.07(m,4H),2.32(m,8H),2.61(m,4H),3.07(t,4H),3.33(s,6H),3.73(m,20H),3.90(m,4H),4.20(m,4H),4.33(m,4H),4.50(t,4H),5.85(dd,2H),6.18(dd,2H),6.45(dd,2H),6.68(m,20H),6.93(m,4H),7.05(m,4H),7.15(m,8H),7.30(m,6H),7.96(m,4H)
【0116】
(色素D-2の合成)
化合物a-4の代わりに、WO2017/146092号の段落0271~0272に記載の化合物A-15を、化合物a-7の代わりに、特開2016-081035号公報の段落0122~0125に記載の化合物I-4Cを用い、上記色素D-1の合成法と同様の方法で色素D-2を合成した。
なお、下記色素D-2の構造式中のアクリロイルオキシ基に隣接する基は、プロピレン基(メチル基がエチレン基に置換した基)を表し、下記色素D-2はメチル基の位置が異なる位置異性体の混合物を表す(収率:96%)。色素D-2の構造は、1H-NMRにより同定した。
1H-NMR(溶媒:CDCl3)δ(ppm):1.29(t,6H),1.69(m,8H),2.30(m,8H),2.61(m,12H),2.95(t,4H),3.29(s,6H),4.10-4.32(m,8H),5.20(m,2H),5.85(dd,2H),6.12(ddd,2H),6.41(dd,2H),6.59(d,6H),6.68(m,6H),7.01(d,4H),7.20(m,16H),7.30(m,12H)
【0117】
【0118】
<実施例1>
下記の組成の光学異方性膜用塗布液1を調製した。
下記液晶化合物L-1 43質量部
下記液晶化合物L-2 43質量部
下記液晶化合物L-3 14質量部
色素D-1 10質量部
下記光重合開始剤PI-1 0.50質量部
下記含フッ素化合物F-1 0.20質量部
クロロホルム 560質量部
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
ラビング処理を施したポリイミド配向層(SE-130、日産化学社製)付ガラス基板上に上記光学異方性膜用塗布液1をスピンコート塗布して塗膜を形成し、210℃で1分間加熱したのちに、100℃まで急冷した。その後に、酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージし、高圧水銀ランプを用い照射量500mJ/cm2の紫外線を塗膜に照射し、光学異方性膜1を作製した。
得られた光学異方性膜1の光学特性をAxoScan OPMF-1(オプトサイエンス社製)を用いて、測定したところ、Re(550)が140nm、Re(450)/Re(550)が0.80、Re(650)/Re(550)が1.21であった。
また、赤外線用偏光子を備えた分光光度計(MPC-3100(SHIMADZU製))を用いて、赤外線領域での吸収を確認したところ、868nmにJ会合体に由来する吸収ピークを発現することを確認した。また、波長700~900nmにおいて、光学異方性膜の進相軸と平行な方向での吸収が、遅相軸と平行な方向での吸収よりも大きいことが確認された。
また、色素D-1の極大吸収波長における光学異方性膜1の吸収二色比Dは、0.21であった。
【0124】
<実施例2>
実施例1で作製した光学異方性膜1に対し、PVA103(クラレ株式会社製)の4wt%水溶液をスピンコート塗布し、100℃で2分加熱することで、光学異方性膜1上に厚さ1.0μmのPVA(ポリビニルアルコール)層を形成し、光学異方性膜とPVA層とを有する積層体を得た。
なお、PVA層の酸素透過度は、10mL/m2・day・atm以下であった。
【0125】
<実施例3>
下記の組成の光学異方性膜用塗布液2を調製した。
上記液晶化合物L-1 50質量部
上記液晶化合物L-2 50質量部
上記色素D-1 5質量部
上記光重合開始剤PI-1 0.50質量部
上記含フッ素化合物F-1 0.20質量部
クロロホルム 560質量部
【0126】
ラビングしたポリイミド配向層(SE-130、日産化学社製)付ガラス基板上に上記光学異方性膜用塗布液2をスピンコート塗布して塗膜を形成し、210℃で1分間加熱したのちに、60℃まで徐冷した。その後に、酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージし、高圧水銀ランプを用い照射量500mJ/cm2の紫外線を塗膜に照射し、光学異方性膜3を作製した。
得られた光学異方性膜3の光学特性をAxoScan OPMF-1(オプトサイエンス社製)を用いて、測定したところ、Re(550)が142nm、Re(450)/Re(550)が0.70、Re(650)/Re(550)が1.17であった。
また、赤外線用偏光子を備えた分光光度計(MPC-3100(SHIMADZU製))を用いて、赤外線領域での吸収を確認したところ、868nmにJ会合体に由来するピークを発現することを確認した。また、波長700~900nmにおいて、光学異方性膜の進相軸と平行な方向での吸収が、遅相軸と平行な方向での吸収よりも大きいことが確認された。
また、色素D-1の極大吸収波長における光学異方性膜3の吸収二色比Dは、0.13であった。
【0127】
<実施例4>
実施例3で作製した光学異方性膜3に対し、PVA103(クラレ株式会社製)の4wt%水溶液をスピンコート塗布し、100℃で2分加熱することで、光学異方性膜3上に厚さ1.0μmのPVA層を形成し、光学異方性膜とPVA層とを有する積層体を得た。
【0128】
<比較例1>
下記の組成の光学異方性膜用塗布液3を調製した。
上記液晶化合物L-1 50質量部
上記液晶化合物L-2 50質量部
上記光重合開始剤PI-1 0.50質量部
上記含フッ素化合物F-1 0.20質量部
クロロホルム 560質量部
【0129】
実施例1と同じ方法で塗膜を形成し、210℃で1分間加熱したのちに、60℃まで徐冷した。その後に、酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージし、高圧水銀ランプを用い照射量500mJ/cm2の紫外線を塗膜に照射し、光学異方性膜C1を作製した。
得られた光学異方性膜C1の光学特性をAxoScan OPMF-1(オプトサイエンス社製)を用いて、測定したところ、Re(550)が145nm、Re(450)/Re(550)が0.68、Re(650)/Re(550)が1.07であった。
【0130】
<比較例2>
下記の組成の光学異方性膜用塗布液4を調製した。
上記液晶化合物L-1 43質量部
上記液晶化合物L-2 43質量部
上記液晶化合物L-3 14質量部
上記色素D-2 10質量部
上記光重合開始剤PI-1 0.50質量部
上記含フッ素化合物F-1 0.20質量部
クロロホルム 560質量部
【0131】
実施例1と同じ方法で塗膜を形成し、240℃で1分間加熱したのちに、120℃まで急冷した。その後に、酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージし、高圧水銀ランプを用い照射量500mJ/cm2の紫外線を塗膜に照射し、光学異方性膜C2を作製した。
得られた光学異方性膜C2の光学特性をAxoScan OPMF-1(オプトサイエンス社製)を用いて、測定したところ、Re(550)が140nm、Re(450)/Re(550)が0.82、Re(650)/Re(550)が1.13であった。
また、赤外線用偏光子を備えた分光光度計(MPC-3100(SHIMADZU製))を用いて、赤外線領域での吸収を確認したところ、810nmに色素D-2吸収に由来するピーク(極大吸収波長:λmax)を発現することを確認した。また、波長700~900nmにおいて、光学異方性膜の進相軸と平行な方向での吸収が、遅相軸と平行な方向での吸収よりも大きいことが確認された。
また、色素D2の極大吸収波長における光学異方性膜C3の吸収二色比Dは、0.33であった。
【0132】
<耐光性試験>
実施例および比較例で作製した光学異方性膜および積層体に対し、TD80UL(富士フイルム社製)を介して、スーパーキセノンウェザーメーター“SX-75”(スガ試験機社製、60℃、50%RH条件)にて、キセノン光を25万Lxで300時間照射した。所定時間の経過後、光学異方性膜および積層体を取出し、吸収スペクトルの変化を測定した。評価結果を下記表1に示す。
A:λmaxにおける吸光度の変化が10%未満
B:λmaxにおける吸光度の変化が10%以上50%未満
C:λmaxにおける吸光度の変化が50%以上
【0133】
表1中、「会合状態」欄は、光学異方性膜中にJ会合体が含まれる場合を「J会合」、J会合体ではなく単分子の状態のままの色素が含まれる場合を「単分子」という。
【0134】
【0135】
上記表に示すように、本発明の光学異方性膜は、Re(450)/Re(550)が低いまま(0.80以下)、Re(650)/Re(550)が大きく(1.15以上)なり、より理想に近い分散特性を示した。
なかでも、ガスバリア層を有する場合、耐光性に優れることが確認された。