(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】超音波診断装置、及び超音波診断装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
A61B 8/14 20060101AFI20221212BHJP
【FI】
A61B8/14 ZDM
(21)【出願番号】P 2021540659
(86)(22)【出願日】2020-07-08
(86)【国際出願番号】 JP2020026705
(87)【国際公開番号】W WO2021033446
(87)【国際公開日】2021-02-25
【審査請求日】2022-02-15
(31)【優先権主張番号】P 2019149751
(32)【優先日】2019-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】松本 剛
【審査官】最首 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-524455(JP,A)
【文献】特開2017-086561(JP,A)
【文献】特開2002-085354(JP,A)
【文献】国際公開第2011/013346(WO,A1)
【文献】特開2014-054398(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00-8/15
A61B 5/055
A61B 6/00-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の血管を超音波画像中に表示する超音波診断装置であって、
振動子アレイと、
前記振動子アレイから前記被検体に向けて超音波ビームの送信を行わせ且つ前記被検体による超音波エコーを受信して超音波画像を取得する画像取得部と、
前記画像取得部により取得された前記超音波画像を表示する表示装置と、
前記画像取得部によって取得された前記超音波画像を解析することにより、前記超音波画像中の対象血管を検出し、検出された前記対象血管の直径及び深度の少なくとも一方を含む血管情報を取得する血管情報取得部と、
前記血管情報取得部によって取得された前記血管情報を、前記表示装置における前記超音波画像の表示範囲内で表示する血管情報表示部と、
前記画像取得部によって取得された前記超音波画像を解析することにより、前記対象血管以外に注目すべき前記超音波画像中の注目領域を検出する注目領域検出部と、
前記注目領域検出部によって前記注目領域が検出された場合に、前記注目領域の位置に基づいて前記表示範囲における前記血管情報の表示領域を決め、決められた前記表示領域に前記血管情報が表示されるように前記血管情報表示部を制御する装置制御部と、
を備え
、
前記注目領域は、前記被検体内に存在する部分、及び、前記被検体内に穿刺された挿入物のうちの少なくとも一つである、超音波診断装置。
【請求項2】
前記装置制御部は、前記対象血管及び前記注目領域を避けた表示候補領域を前記表示範囲内で抽出し、抽出された前記表示候補領域から前記表示領域を決める、請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記装置制御部は、前記表示候補領域が前記表示範囲内で抽出されない場合には、前記血管情報の少なくとも一部が前記注目領域と重なるように前記表示領域を決める、請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記注目領域検出部が複数の前記注目領域を検出した場合、前記装置制御部は、複数の前記注目領域のそれぞれに対して優先度を設定し、前記表示候補領域が前記表示範囲内で抽出されない場合には、前記血管情報の少なくとも一部がより低い前記優先度の前記注目領域と重なるように前記表示領域を決める、請求項3に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記装置制御部は、前記表示範囲における複数の前記注目領域のそれぞれの位置に基づいて、複数の前記注目領域のそれぞれの前記優先度を設定する、請求項4に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記画像取得部によって取得された前記超音波画像を解析することにより、前記超音波画像が取得された際の場面を判定する場面判定部を有し、
前記注目領域検出部は、前記場面判定部によって判定された前記場面と対応する前記注目領域を検出する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記場面判定部によって判定された前記場面が、前記対象血管が探索されている探索場面である場合、前記注目領域検出部は、前記被検体内の病変部分又は前記対象血管以外の血管を前記注目領域として検出する、請求項6に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記被検体の血管のうち、前記被検体に穿刺された挿入物が挿入される血管は、前記対象血管に該当し、
前記場面判定部は、前記画像取得部によって取得された前記超音波画像を解析することにより、前記超音波画像内において前記被検体の血管が検出される一方で前記挿入物が検出されない場合には、前記場面が前記探索場面であると判定する、請求項7に記載の超音波診断装置。
【請求項9】
前記画像取得部は、一定のフレームレートで連続的に前記超音波画像を取得し、
前記場面判定部は、前記画像取得部によって連続的に取得された複数フレームの前記超音波画像を解析し、複数フレームの前記超音波画像において血管の出現及び消失が繰り返される場合、及び、複数フレームの前記超音波画像において血管の位置が変化する場合には、前記場面が前記探索場面であると判定する、請求項7に記載の超音波診断装置。
【請求項10】
前記被検体の血管のうち、前記被検体に穿刺された挿入物が挿入される血管は、前記対象血管に該当し、
前記場面判定部によって判定された前記場面が、前記挿入物が穿刺されて前記対象血管に向かっている挿入場面である場合、前記注目領域検出部は、前記挿入物の先端、及び前記被検体内において前記挿入物の先端付近に位置する組織のうちの少なくとも一つを前記注目領域として検出する、請求項6に記載の超音波診断装置。
【請求項11】
前記挿入物は、穿刺針付きのカテーテルであり、
前記場面判定部は、前記画像取得部によって取得された前記超音波画像を解析することにより、前記超音波画像内において前記被検体の血管及び前記穿刺針の先端を検出した場合には、前記場面が前記挿入場面であると判定する、請求項10に記載の超音波診断装置。
【請求項12】
前記画像取得部は、一定のフレームレートで連続的に前記超音波画像を取得し、
前記場面判定部は、前記画像取得部によって連続的に取得された複数フレームの前記超音波画像を解析し、複数フレームの前記超音波画像において前記挿入物の位置が前記対象血管に近づくように変化する場合、及び、複数フレームの前記超音波画像において前記血管及び前記挿入物の観察方向が切り替わる場合には、前記場面が前記挿入場面であると判定する、請求項10に記載の超音波診断装置。
【請求項13】
前記被検体の血管のうち、前記被検体に穿刺された挿入物が挿入される血管は、前記対象血管に該当し、
前記場面判定部によって判定された前記場面が、前記挿入物の先端部分が前記対象血管内に留置されている留置場面である場合、前記注目領域検出部は、前記挿入物の先端部分又は前記被検体内の病変部分を前記注目領域として検出する、請求項6に記載の超音波診断装置。
【請求項14】
前記挿入物は、穿刺針付きのカテーテルであり、
前記場面判定部は、前記画像取得部によって取得された前記超音波画像を解析することにより、前記穿刺針が抜かれた状態で血管内に在る前記カテーテルの先端部分を前記超音波画像内で検出した場合には、前記場面が前記留置場面であると判定する、請求項13に記載の超音波診断装置。
【請求項15】
前記画像取得部は、一定のフレームレートで連続的に前記超音波画像を取得し、
前記場面判定部は、前記画像取得部によって連続的に取得された複数フレームの前記超音波画像を解析し、複数フレームの前記超音波画像において前記挿入物の先端部分の出現及び消失が繰り返される場合、及び、複数フレームの前記超音波画像において前記被検体内の病変部分の出現及び消失が繰り返される場合には、前記場面が前記留置場面であると判定する、請求項13に記載の超音波診断装置。
【請求項16】
前記血管情報取得部は、前記超音波画像中の複数の前記対象血管を検出した場合には、検出された複数の前記対象血管のそれぞれについて、前記血管情報を取得し、
前記血管情報表示部は、前記血管情報取得部によって取得された複数の前記対象血管のそれぞれの前記血管情報を、前記表示範囲内で同時に表示し、
前記装置制御部は、前記注目領域検出部によって前記注目領域が検出された場合に、前記注目領域の位置に基づき、複数の前記対象血管のそれぞれの前記血管情報が互いに離れて表示されるように前記表示領域を前記対象血管毎に決める、請求項1乃至15のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項17】
前記画像取得部によって取得された前記超音波画像を解析することにより、前記超音波画像中の前記対象血管を検出し、検出された前記対象血管をハイライト色にて塗り潰して強調表示する強調表示部をさらに有し、
前記装置制御部は、前記血管情報の前記表示領域の色が前記対象血管を強調表示する際の前記ハイライト色と同一色となるように前記強調表示部及び前記血管情報表示部を制御する、請求項1乃至16のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項18】
前記振動子アレイを有する超音波プローブと、前記超音波プローブが接続されるプロセッサを有し、
前記画像取得部は、前記振動子アレイから前記被検体に向けて超音波ビームの送信を行わせる送信回路と、前記被検体内で生じた超音波エコーを受信した前記振動子アレイから出力される信号を処理して音線信号を生成する受信回路と、前記受信回路によって生成された前記音線信号に基づいて前記超音波画像を生成する画像生成部とによって構成され、
前記送信回路、前記受信回路及び前記画像生成部の各々は、前記超音波プローブ又は前記プロセッサに設けられている、請求項1乃至17のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項19】
被検体の血管を超音波画像中に表示する超音波診断装置の制御方法であって、
振動子アレイから前記被検体に向けて超音波ビームの送信を行わせ且つ前記被検体による超音波エコーを受信して超音波画像を取得し、
取得された前記超音波画像を表示装置に表示し、
取得された前記超音波画像を解析することにより、前記超音波画像中の対象血管を検出し、検出された前記対象血管の直径及び深度の少なくとも一方を含む血管情報を取得し、
取得された前記血管情報を、前記表示装置における前記超音波画像の表示範囲内で表示し、
取得された前記超音波画像を解析することにより、前記対象血管以外に注目すべき前記超音波画像中の注目領域を検出し、
前記注目領域が検出された場合に、前記注目領域の位置に基づいて前記表示範囲における前記血管情報の表示領域を決め、決められた前記表示領域に前記血管情報を表示
し、
前記注目領域は、前記被検体内に存在する部分、及び、前記被検体内に穿刺された挿入物のうちの少なくとも一つである、超音波診断装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体の血管を超音波画像中に表示する超音波診断装置、及び超音波診断装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、被検体の内部の画像を得るものとして、超音波診断装置が知られている。超音波診断装置は、一般的に、複数の超音波振動子が配列された振動子アレイが備えられた超音波プローブを有する。超音波プローブは、被検体の体表面に接触させた状態において、振動子アレイから被検体内に向けて超音波ビームを送信し、被検体からの超音波エコーを振動子アレイにて受信する。これにより、超音波エコーに対応する電気信号が取得される。さらに、超音波診断装置は、取得された電気信号を処理して、被検体の対象部位に対する超音波画像を生成する。
【0003】
ところで、上記の超音波診断装置を用いて被検体内を観察しながら、穿刺針及びカテーテル等の挿入物を被検体の血管内に挿入する手技、具体的にはエコーガイド下穿刺法等が知られている。エコーガイド下穿刺法において、操作者は、通常、超音波画像を確認して超音波画像中の血管の位置及び形状等を把握し、その上で、挿入物を挿入する血管を決定する。このとき、血管の位置及び形状等を正確に把握するには一定以上の熟練度を要する。また、動画モードで超音波画像を撮影しながら、適当な血管を探索し、その血管が超音波画像中に描出された時点で動画モードでの撮影を中断して静止画像に切り替えて、その静止画像を解析することで血管の直径及び面積等を計測しようとすると、操作が煩雑となる。
【0004】
上記の問題を解決するために、これまでに、超音波画像に含まれる血管を自動的に検出し、検出された血管の直径及び面積を計測し、その計測結果を表示画面に表示する超音波診断装置が開発されてきている。そのような装置の一例としては、例えば、特許文献1に記載の超音波診断装置が挙げられ、この装置によれば、超音波画像を一定のフレームレートで連続的に取得する間に、超音波画像中の血管の特徴量(例えば、直径等)を計測し、その計測結果をリアルタイムで超音波画像の表示範囲内で表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の超音波診断装置のように、直径等が計測された対象血管の計測結果に関する情報を超音波画像の表示範囲内で表示する場合に、その情報が対象血管付近で表示されると、その情報が注目すべき対象(例えば、対象血管付近に存在する別の血管)と重なってしまう可能性がある。その場合には、対象血管以外に注目すべき領域を超音波画像内で確認することができず、超音波画像を見ながら行う操作に支障をきたす虞がある。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、以下に示す目的を解決することを課題とする。
本発明は、上記従来技術の問題点を解決し、超音波画像中の対象血管に関する計測結果を超音波画像の表示範囲内で適切に表示することが可能な超音波診断装置及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の超音波診断装置は、被検体の血管を超音波画像中に表示する超音波診断装置であって、振動子アレイと、振動子アレイから被検体に向けて超音波ビームの送信を行わせ且つ被検体による超音波エコーを受信して超音波画像を取得する画像取得部と、画像取得部により取得された超音波画像を表示する表示装置と、画像取得部によって取得された超音波画像を解析することにより、超音波画像中の対象血管を検出し、検出された対象血管の直径及び深度の少なくとも一方を含む血管情報を取得する血管情報取得部と、血管情報取得部によって取得された血管情報を、表示装置における超音波画像の表示範囲内で表示する血管情報表示部と、画像取得部によって取得された超音波画像を解析することにより、対象血管以外に注目すべき超音波画像中の注目領域を検出する注目領域検出部と、注目領域検出部によって注目領域が検出された場合に、注目領域の位置に基づいて表示範囲における血管情報の表示領域を決め、決められた表示領域に血管情報が表示されるように血管情報表示部を制御する装置制御部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
上述した本発明の超音波診断装置において、装置制御部は、対象血管及び注目領域を避けた表示候補領域を表示範囲内で抽出し、抽出された表示候補領域から表示領域を決めるとよい。
この場合、装置制御部は、表示候補領域が表示範囲内で抽出されない場合には、血管情報の少なくとも一部が注目領域と重なるように表示領域を決めると、より好適である。
また、注目領域検出部が複数の注目領域を検出した場合、装置制御部は、複数の注目領域のそれぞれに対して優先度を設定し、表示候補領域が表示範囲内で抽出されない場合には、血管情報の少なくとも一部がより低い優先度の注目領域と重なるように表示領域を決めると、より一層好適である。
さらに、装置制御部は、表示範囲における複数の注目領域のそれぞれの位置に基づいて、複数の注目領域のそれぞれの優先度を設定すると、尚一層好適である。
【0010】
また、上述した本発明の超音波診断装置は、画像取得部によって取得された超音波画像を解析することにより、超音波画像が取得された際の場面を判定する場面判定部を有してもよい。この場合、注目領域検出部は、場面判定部によって判定された場面と対応する注目領域を検出すると、より好適である。
【0011】
また、上記の構成では、場面判定部によって判定された場面が、対象血管が探索されている探索場面である場合、注目領域検出部は、被検体内の病変部分又は対象血管以外の血管を注目領域として検出するとよい。
このとき、被検体の血管のうち、被検体に穿刺された挿入物が挿入される血管が、対象血管に該当することとし、場面判定部は、画像取得部によって取得された超音波画像を解析することにより、超音波画像内において被検体の血管が検出される一方で挿入物が検出されない場合には、場面が探索場面であると判定してもよい。
あるいは、画像取得部が、一定のフレームレートで連続的に超音波画像を取得することとし、場面判定部は、画像取得部によって連続的に取得された複数フレームの超音波画像を解析し、複数フレームの超音波画像において血管の出現及び消失が繰り返される場合、及び、複数フレームの超音波画像において血管の位置が変化する場合には、場面が探索場面であると判定してもよい。
【0012】
また、上記の構成では、被検体の血管のうち、被検体に穿刺された挿入物が挿入される血管が、対象血管に該当することとし、場面判定部によって判定された場面が、挿入物が穿刺されて対象血管に向かっている挿入場面である場合、注目領域検出部は、挿入物の先端、及び被検体内において挿入物の先端付近に位置する組織のうちの少なくとも一つを注目領域として検出するとよい。
このとき、挿入物が穿刺針付きのカテーテルであることとし、場面判定部は、画像取得部によって取得された超音波画像を解析することにより、超音波画像内において被検体の血管及び穿刺針の先端を検出した場合には、場面が挿入場面であると判定してもよい。
あるいは、画像取得部が、一定のフレームレートで連続的に超音波画像を取得することとし、場面判定部は、画像取得部によって連続的に取得された複数フレームの超音波画像を解析し、複数フレームの超音波画像において挿入物の位置が対象血管に近づくように変化する場合、及び、複数フレームの超音波画像において血管及び挿入物の観察方向が切り替わる場合には、場面が挿入場面であると判定してもよい。
【0013】
また、上記の構成では、被検体の血管のうち、被検体に穿刺された挿入物が挿入される血管が、対象血管に該当することとし、場面判定部によって判定された場面が、挿入物の先端部分が対象血管内に留置されている留置場面である場合、注目領域検出部は、挿入物の先端部分又は被検体内の病変部分を注目領域として検出するとよい。
このとき、挿入物が穿刺針付きのカテーテルであることとし、場面判定部は、画像取得部によって取得された超音波画像を解析することにより、穿刺針が抜かれた状態で血管内に在るカテーテルの先端部分を超音波画像内で検出した場合には、場面が留置場面であると判定してもよい。
あるいは、画像取得部が、一定のフレームレートで連続的に超音波画像を取得することとし、場面判定部は、画像取得部によって連続的に取得された複数フレームの超音波画像を解析し、複数フレームの超音波画像において挿入物の先端部分の出現及び消失が繰り返される場合、及び、複数フレームの超音波画像において被検体内の病変部分の出現及び消失が繰り返される場合には、場面が留置場面であると判定してもよい。
【0014】
また、上述した本発明の超音波診断装置において、血管情報取得部は、超音波画像中の複数の対象血管を検出した場合には、検出された複数の対象血管のそれぞれについて、血管情報を取得し、血管情報表示部は、血管情報取得部によって取得された複数の対象血管のそれぞれの血管情報を、表示範囲内で同時に表示することができる。そして、装置制御部は、注目領域検出部によって注目領域が検出された場合に、注目領域の位置に基づき、複数の対象血管のそれぞれの血管情報が互いに離れて表示されるように表示領域を対象血管毎に決めると、好適である。
【0015】
また、上述した本発明の超音波診断装置は、画像取得部によって取得された超音波画像を解析することにより、超音波画像中の対象血管を検出し、検出された超音波画像内の対象血管をハイライト色にて塗り潰して強調表示する強調表示部をさらに有してもよい。このとき、装置制御部は、血管情報の表示領域の色が対象血管を強調表示する際のハイライト色と同一色となるように強調表示部及び血管情報表示部を制御すると、より好適である。
【0016】
また、本発明の超音波診断装置は、振動子アレイを有する超音波プローブと、超音波プローブが接続されるプロセッサを有してもよい。この場合、画像取得部は、振動子アレイから被検体に向けて超音波ビームの送信を行わせる送信回路と、被検体内で生じた超音波エコーを受信した振動子アレイから出力される信号を処理して音線信号を生成する受信回路と、受信回路によって生成された音線信号に基づいて超音波画像を生成する画像生成部とによって構成され、送信回路、受信回路及び画像生成部の各々は、超音波プローブ又はプロセッサに設けられてもよい。
【0017】
また、前述の目的を達成するために、本発明の超音波診断装置の制御方法は、被検体の血管を超音波画像中に表示する超音波診断装置の制御方法であって、振動子アレイから被検体に向けて超音波ビームの送信を行わせ且つ被検体による超音波エコーを受信して超音波画像を取得し、取得された超音波画像を表示装置に表示し、取得された超音波画像を解析することにより、超音波画像中の対象血管を検出し、検出された対象血管の直径及び深度の少なくとも一方を含む血管情報を取得し、取得された血管情報を、表示装置における超音波画像の表示範囲内で表示し、取得された超音波画像を解析することにより、対象血管以外に注目すべき超音波画像中の注目領域を検出し、注目領域が検出された場合に、注目領域の位置に基づいて表示範囲における血管情報の表示領域を決め、決められた表示領域に血管情報を表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、対象血管を含む超音波画像を解析することで、対象血管の直径及び深度の少なくとも一方を含む血管情報を取得することができる。また、血管情報を超音波画像の表示範囲内に表示する際には、超音波画像中の注目領域の位置に基づいて決められた表示範囲に表示する。これにより、超音波画像の表示範囲における注目領域の存在に配慮しながら、血管情報を適切な領域に表示することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る超音波診断装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る受信回路の内部構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る画像生成部の内部構成を示すブロック図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る超音波診断装置によって表示装置に表示される超音波画像の模式図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係る超音波診断装置の動作を示すフローチャートである。
【
図6】静止画像に基づく場面判定の流れを示す図である。
【
図7】動画に基づく場面判定の流れを示す図である。
【
図8】血管内にカテーテルの先端部が留置されている状況を表す超音波画像の図である。
【
図9】超音波画像の動画において血管の出現及び消滅が繰り返されている様子を示す図である。
【
図10】超音波画像の動画において挿入物の先端が血管に近付いている様子を示す図である。
【
図11】超音波画像の動画において血管及び挿入物の観察方向が切り替わっている様子を示す図である。
【
図12】超音波画像の動画においてカテーテルの先端部分の出現及び消滅が繰り返されている様子を示す図である。
【
図13】超音波画像の動画において被検体内の病変部分の出現及び消滅が繰り返されている様子を示す図である。
【
図14】探索場面中に取得される超音波画像内の注目領域についての説明図である(その1)。
【
図15】探索場面中に取得される超音波画像内の注目領域についての説明図である(その2)。
【
図16】挿入場面中に取得される超音波画像内の注目領域についての説明図である(その1)。
【
図17】挿入場面中に取得される超音波画像内の注目領域についての説明図である(その2)。
【
図18】留置場面中に取得される超音波画像内の注目領域についての説明図である(その1)。
【
図19】留置場面中に取得される超音波画像内の注目領域についての説明図である(その2)。
【
図20】血管情報の表示領域を決定する流れを示す図である。
【
図21A】超音波プローブ、プロセッサ、表示装置、及び入力装置がネットワークを介して接続された超音波診断装置の構成を示す図である。
【
図21B】超音波プローブがネットワークを介して超音波診断装置本体と接続された構成を示す図である。
【
図22】第2実施形態に係る超音波診断装置によって表示される超音波画像を示す図である。
【
図23】第3実施形態に係る超音波診断装置の構成を示すブロック図である。
【
図24】第3実施形態に係る超音波診断装置によって表示される超音波画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の具体的な複数の実施形態(第1実施形態~第3実施形態)について、添付の図面を参照しながら説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするために挙げた一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、以下に説明する実施形態から変更又は改良され得る。また、当然ながら、本発明には、その等価物が含まれる。
【0021】
また、以下の説明において、超音波画像の上下及び左右は、操作者が超音波画像を正面視で見るときの上下及び左右であることとする。例えば、
図4に示す超音波画像Uでは、血管Bの上方に挿入物Cが位置していることになる。
【0022】
<<本発明の超音波診断装置の用途>>
本発明の各実施形態について説明するにあたり、本発明の超音波診断装置の用途について説明しておく。
本発明の超音波診断装置は、被検体内を観察しながら穿刺針及びカテーテル等の挿入物を被検体の血管内に挿入する手技、例えば、エコーガイド下穿刺法において用いられる。
つまり、本発明の超音波診断装置は、被検体の血管と血管に挿入される挿入物とを超音波画像中に表示する装置であり、挿入物の操作者は、挿入物の挿入操作中、超音波診断装置によって表示された超音波画像を適宜観察する。
【0023】
以降の説明では、特記する場合を除いて、超音波画像は、被検体内の組織に関するBモード画像(断層画像)であることとする。
また、以下では、挿入物が穿刺針付きのカテーテルである場合を例に挙げて説明するが、本発明の超音波診断装置は、穿刺針付きのカテーテル以外の挿入物を血管に挿入する場合にも適用可能である。ここで、挿入物は、直線状に延出したものであり、被検体の体表面及び血管壁に穿刺可能なものである。
【0024】
また、以下では、被検体内に存在する血管のうち、予め設定された条件を満たす血管を「対象血管」と呼ぶこととし、対象血管には、被検体に穿刺された挿入物が挿入される血管が含まれることとする。
【0025】
<<第1実施形態>>
本発明の第1実施形態に係る超音波診断装置(以下、超音波診断装置1)は、
図1に示すように、振動子アレイ2を備える超音波プローブ21と、超音波プローブ21と接続されるプロセッサ22とを有する。振動子アレイ2には、送信回路3及び受信回路4が、それぞれ接続されている。送信回路3及び受信回路4は、送受信回路5を構成しており、
図1に示す構成では、超音波プローブ21に含まれている。受信回路4には画像生成部6が接続され、画像生成部6には表示制御部7が接続され、表示制御部7には表示装置8が接続されている。
【0026】
また、画像生成部6には場面判定部12、血管情報取得部16、及び注目領域検出部18が接続されており、注目領域検出部18には場面判定部12が接続されている。また、血管情報取得部16には血管情報表示部17が接続されており、血管情報表示部17には表示制御部7が接続されている。さらに、送受信回路5、画像生成部6、表示制御部7、場面判定部12、血管情報取得部16、血管情報表示部17及び注目領域検出部18の各々には装置制御部13が接続されており、装置制御部13には、注目領域検出部18、入力装置14及び格納部15が接続されている。装置制御部13と格納部15とは、双方の間で互いに情報の受け渡しが可能な状態で接続されている。
【0027】
なお、
図1の構成では、画像生成部6、表示制御部7、場面判定部12、装置制御部13、血管情報取得部16、血管情報表示部17及び注目領域検出部18がプロセッサ22に設けられている。また、超音波プローブ21の送受信回路5(つまり、送信回路3及び受信回路4)と、プロセッサ22の画像生成部6とは、互いに協働して、超音波画像を取得する画像取得部11を構成している。
【0028】
振動子アレイ2は、1次元又は2次元に配列された複数の振動子を有する。複数の振動子は、リニア型の超音波プローブのように直線状に配列されていてもよく、コンベックス型又はセクタ型の超音波プローブのように湾曲して配列されてもよい。複数の振動子の各々は、送信回路3から供給される駆動信号に従って超音波を送信するとともに、被検体内で生じた超音波エコーを受信して、超音波エコーに基づく電気信号を出力する。それぞれの振動子は、例えば、PZT(Lead Zirconate Titanate:チタン酸ジルコン酸鉛)に代表される圧電セラミック、PVDF(Poly Vinylidene Di Fluoride:ポリフッ化ビニリデン)に代表される高分子圧電素子、及び、PMN-PT(Lead Magnesium Niobate-Lead Titanate:マグネシウムニオブ酸鉛-チタン酸鉛固溶体)に代表される圧電単結晶等からなる圧電体の両端に電極を形成することによって構成される。
【0029】
送信回路3は、振動子アレイ2から被検体に向けて超音波ビームの送信を行わせる。具体的に説明すると、送信回路3は、例えば、複数のパルス発生器を含んでおり、装置制御部13からの制御信号に応じて選択された送信遅延パターンに基づき、振動子アレイ2が有する複数の振動子に対する駆動信号を、それぞれの遅延量を調整して供給する。それぞれの駆動信号は、パルス状又は連続波状の電圧信号であり、振動子アレイ2の振動子の電極が印加されると、圧電体が伸縮する。以上の結果、それぞれの振動子からパルス状又は連続波状の超音波が発生し、それらの超音波の合成波から超音波ビームが形成される。
【0030】
送信された超音波ビームは、例えば、被検体内の各部位(例えば、臓器及び血管等)及び被検体内に配置された器具等にて反射される。これにより、超音波エコーが発生し、振動子アレイ2に向かって被検体内で伝搬し、最終的には、振動子アレイ2が有する複数の振動子によって受信される。この際、それぞれの振動子は、超音波エコーを受信することにより伸縮して電気信号を発生させ、その電気信号を受信回路4に出力する。
【0031】
受信回路4は、装置制御部13からの制御信号に従い、振動子アレイ2から出力される信号(厳密には、アナログの電気信号)に対する処理を行って、音線信号を生成する。受信回路4は、例えば、
図2に示すように増幅部23、AD(Analog Digital)変換部24、及びビームフォーマ25が直列に接続された構成を有する。
【0032】
増幅部23は、振動子アレイ2が有する複数の振動子のそれぞれから出力された信号を増幅し、増幅後の信号をAD変換部24に送信する。AD変換部24は、増幅後の信号をデジタルの受信データに変換し、変換された各受信データをビームフォーマ25に送信する。ビームフォーマ25は、装置制御部13からの制御信号に応じて選択された受信遅延パターンに基づいて設定される音速又は音速の分布に従い、AD変換部24によって変換された各受信データに対してそれぞれの遅延を与えて加算して受信フォーカス処理を行う。受信フォーカス処理により、AD変換部24で変換された各受信データが整相加算され、且つ、超音波エコーの焦点が絞り込まれた音線信号が取得される。
【0033】
画像生成部6は、受信回路4によって生成された音線信号に基づいて超音波画像を生成し、
図3に示されるように信号処理部26、DSC(Digital Scan Converter)27、及び画像処理部28が直列に接続された構成を有する。
信号処理部26は、受信回路4によって生成された音線信号に対し、超音波の反射位置の深度に応じて距離による減衰の補正を施した後、包絡線検波処理を施すことにより、超音波画像を示すBモード画像信号を生成する。
DSC27は、信号処理部26で生成されたBモード画像信号を通常のテレビジョン信号の走査方式に従う画像信号に変換(ラスター変換)する。
画像処理部28は、DSC27から入力されるBモード画像信号に階調処理等の各種の必要な画像処理を施した後、Bモード画像信号を表示制御部7及び画像解析部9に出力する。画像処理部28によって画像処理が施されたBモード画像信号が、超音波画像に相当する。
【0034】
そして、送受信回路5及び画像生成部6(換言すると、画像取得部11)は、超音波画像の取得期間中、超音波画像が一定のフレームレートにて連続して複数回取得されるように装置制御部13によって制御される。
【0035】
表示制御部7は、装置制御部13の制御の下、画像生成部6によって生成された超音波画像(換言すると、画像取得部11によって取得された超音波画像)に所定の処理を施して、超音波画像を表示装置8に表示する。表示装置8に表示される超音波画像(以下、超音波画像U)は、
図4に示すように、深度方向及び幅方向に展開する。ここで、超音波画像Uの幅方向とは、超音波画像Uを構成する複数の走査線が並ぶ方向である。超音波画像Uの深度方向とは、走査線が延びる方向である。超音波画像U中の各部分は、深度方向において、超音波プローブ21が接触した被検体の体表面からの距離(深度)に応じた位置に表示される。
【0036】
なお、超音波プローブ21を被検体に接触させた状態で移動させることで、超音波画像Uによって断層が観察される部位が変化し、また、超音波プローブ21を被検体に接触させる際の向きを変えることで、被検体内の血管及び挿入物の観察方向を切り替えることができる。例えば、振動子アレイ2において複数の振動子が配列された方向(すなわち、走査方向)を血管及び挿入物の延出方向と沿う向きで超音波プローブ21が被検体に接触する場合、すなわち長軸法(平行法)を採用する場合には、超音波画像Uにおいて血管及び挿入物の縦断面が観察される。ここで、血管及び挿入物のそれぞれの縦断面とは、血管及び挿入物のそれぞれの延出方向に沿った切断面を意味する。
他方、振動子アレイ2における振動子の配列方向(走査方向)が血管及び挿入物の延出方向と交差する向きで超音波プローブ21が被検体に接触する場合、すなわち短軸法(交差法)を採用する場合には、
図4に示すように、超音波画像Uにおいて血管B及び挿入物Cの横断面が観察される。ここで、血管及び挿入物のそれぞれの横断面とは、血管及び挿入物のそれぞれの延出方向と直交する切断面を意味する。
【0037】
表示装置8は、表示制御部7による制御の下、超音波画像U等を表示するものであり、例えば、LCD(Liquid Crystal Display:液晶ディスプレイ)又は有機ELディスプレイ(Organic Electroluminescence Display)等のディスプレイ装置を含む。
また、
図4等に示すように、表示装置8には、超音波画像Uとともに血管情報Jが表示される。血管情報Jは、
図4に示すように、例えばダイアログボックス型の表示オブジェクトに記載され、超音波画像U上に重畳して表示されてもよく、若しくは超音波画像Uの一部として埋め込まれて表示されてもよい。
【0038】
場面判定部12は、画像生成部6によって生成された超音波画像U(換言すると、画像取得部11によって取得された超音波画像)を公知の画像処理技術によって解析することにより、超音波画像Uが取得された際の場面(シーン)を判定する。場面判定部12が判定可能な場面としては、例えば、対象血管Bxが探索されている探索場面、挿入物Cである穿刺針付きのカテーテルが穿刺されて対象血管Bxに向かって挿入されている挿入場面、及び、挿入物Cの先端部分が対象血管Bx内に留置されている留置場面等が挙げられる。
【0039】
探索場面は、挿入物Cが挿入される前段階の場面であり、このとき、操作者は、被検体の体表面上で超音波プローブ21を動かして、超音波画像Uにおいて対象血管Bxを探索している状況にある。
挿入場面は、挿入物Cの先端が被検体の体表面に穿刺されてから対象血管Bxに到達するまでの場面であり、このとき、操作者は、挿入物Cを挿入しながら超音波画像Uを確認し、また、必要に応じて超音波プローブ21の向きを切り替えて血管B及び挿入物Cの観察方向を変更する。これに伴う形で、超音波画像Uに描出される血管B及び挿入物Cの断面が、縦断面(長軸法での断面)と横断面(短軸法での断面)との間で切り替わる。
留置場面は、挿入物Cである穿刺針付きのカテーテルの先端、すなわち、穿刺針の先端が対象血管Bxの血管壁を突き破ってカテーテルの先端部とともに対象血管Bx内に進入し、その後に穿刺針が抜かれてカテーテルの先端部が対象血管Bx内に留置している段階の場面である。このとき、挿入物Cの先端部分は、カテーテル内から穿刺針が抜かれてカテーテルの先端部のみとなるので、それまでは穿刺針が存在して円状に見えていた挿入物Cの先端部分の横断面(例えば、
図4参照)が、唇状に分離した一対の断片像によって構成されるようになる(例えば、
図8参照)。
【0040】
また、場面判定部12は、場面を判定するにあたり、画像生成部6が一定のフレームレートで取得した超音波画像Uの動画(換言すると、画像取得部11によって連続的に取得された複数フレームの超音波画像U)を解析してもよく、超音波画像Uの静止画像(つまり、1フレームの超音波画像U)を解析してもよい。すなわち、第1実施形態において、場面判定部12は、動画である超音波画像Uを解析して場面を判定することができ、また、静止画像である超音波画像Uを解析して場面を判定することもできる。
なお、場面判定部12による場面判定については、後の項で詳述する。
【0041】
血管情報取得部16は、解析することにより、超音波画像U中の対象血管Bxを検出し、検出された対象血管Bxの直径及び深度の少なくとも一方を含む血管情報を取得する。
血管情報取得部16は、画像生成部6によって生成された超音波画像U(換言すると、画像取得部11によって取得された超音波画像U)を、公知のアルゴリズムに従って解析することで、超音波画像U内の血管Bを検出する。例えば、血管情報取得部16は、血管領域の典型的なパターンデータをテンプレートとして予め記憶しておき、超音波画像U内をテンプレートでサーチしながらパターンデータに対する類似度を算出し、類似度が基準値以上且つ最大となった場所に血管Bが存在するとみなすことができる。
【0042】
また、類似度の算出には、単純なテンプレートマッチングの他に、例えば、Csurka et al.: Visual Categorization with Bags of Keypoints, Proc. of ECCV Workshop on Statistical Learning in Computer Vision, pp.59-74 (2004)に記載されている機械学習手法、あるいは、Krizhevsk et al.: ImageNet Classification with Deep Convolutional Neural Networks, Advances in Neural Information Processing Systems 25, pp.1106-1114 (2012)に記載されているディープラーニングを用いた一般画像認識手法等を用いることができる。
【0043】
さらに、血管情報取得部16は、検出された超音波画像U中の血管Bに対して公知の画像解析処理を適用することにより、その血管Bの直径及び深度を計測する。ここで、血管Bの直径とは、超音波画像Uの深度方向における血管Bの幅(
図4中、記号d1にて示す長さ)を意味する。血管Bの深度とは、深度方向における、超音波画像Uにおいて被検体の体表面に相当する位置から血管Bまでの最短距離(
図4中、記号d2にて示す距離)を意味する。
なお、第1実施形態において、血管情報取得部16は、血管Bの直径及び深度の両方を計測するが、直径及び深度のうちの一方のみを計測してもよい。また、血管Bの直径及び深さ以外の特徴量(例えば、面積等)をさらに計測してもよい。
【0044】
さらにまた、血管情報取得部16は、直径及び深度が計測された血管Bのうち、直径及び深度のそれぞれの計測値が所定範囲にある血管Bを特定し、その血管Bを対象血管Bxとして、その対象血管Bxの直径及び深度の計測値を示す血管情報Jを取得する。
第1実施形態において、血管情報取得部16は、検出された血管Bのうち、深度が比較的浅く且つ直径が挿入物Cを挿入するのに十分な大きさとなった血管Bを対象血管Bxとし、その対象血管Bxの血管情報Jを取得する。ここで、対象血管Bxについて補足しておくと、超音波画像Uに描出される血管Bのうち、被検体に穿刺された挿入物Cが実際に挿入される血管Bは、対象血管Bxに該当する。この際、挿入物Cのサイズが予め決まっており、そのサイズに応じた直径を有する血管Bを選んでもよい。反対に、狙いとする血管Bが決まっており、その血管Bの直径に応じて挿入物Cのサイズを設定してもよい。
なお、血管情報Jは、対象血管Bxの直径及び深度のうちの少なくとも一方を示すものであればよく、直径及び深度のうち、いずれか一方を示すものであってもよい。
【0045】
血管情報表示部17は、血管情報取得部16によって取得された血管情報Jを、表示制御部7による制御の下、表示装置8における超音波画像Uの表示範囲内で表示する。超音波画像Uの表示範囲とは、表示装置8の画像表示画面において超音波画像Uが実際に表示される範囲であり、例えば、超音波画像Uの表示枠内の範囲、又は表示ウィンドウが描画される範囲である。
【0046】
注目領域検出部18は、画像生成部6によって生成された超音波画像U(換言すると、画像取得部11によって取得された超音波画像U)を解析することにより、超音波画像U中の注目領域を検出する。注目領域とは、超音波画像Uにおいて対象血管Bx以外に注目すべき領域であり、上述した場面(シーン)毎に異なっている。
注目領域検出部18による注目領域の検出手順については、後に詳しく説明するが、注目領域を検出する際のアルゴリズムとしては、テンプレートマッチング、機械学習手法、及びディープラーニング等を用いた一般画像認識手法等の公知のアルゴリズムを用いることができる。
【0047】
装置制御部13は、格納部15等に予め格納されたプログラム、及び、入力装置14を介して操作者が入力した情報等に基づいて、超音波診断装置1の各部の制御を行う。
また、装置制御部13は、注目領域検出部18によって超音波画像U中に注目領域が検出された場合に、注目領域の位置に基づいて、超音波画像Uの表示範囲内における血管情報Jの表示領域を決める。そして、装置制御部13は、決められた表示領域に血管情報Jが表示されるように血管情報表示部17を制御する。
【0048】
詳しく説明すると、装置制御部13は、対象血管Bx及び注目領域を避けた表示候補領域を超音波画像Uの表示範囲内で抽出する。ここで、対象血管Bx及び注目領域を避けた表示候補領域とは、血管情報Jを対象血管Bx及び注目領域と重ならない(被らない)ように表示することが可能な領域を意味し、以下では、単に「表示候補領域」と呼ぶこととする。
そして、装置制御部13は、抽出された表示候補領域の中から表示領域を決め、表示候補領域が一つのみ抽出される場合には、その表示候補領域を表示領域として決め、表示候補領域が複数抽出される場合には、例えば、対象血管Bxに最も近い領域を表示領域として決める。
【0049】
一方、表示候補領域が超音波画像Uの表示範囲内で抽出されない場合、装置制御部13は、血管情報Jの少なくとも一部が注目領域と重なるように表示領域を決める。より具体的に説明すると、例えば、注目領域検出部18が超音波画像Uにおいて複数の注目領域を検出した場合、装置制御部13は、複数の注目領域のそれぞれに対して優先度を設定する。このとき、装置制御部13は、超音波画像Uの表示範囲における複数の注目領域のそれぞれの位置に基づいて、複数の注目領域のそれぞれの優先度を設定し、例えば、下、右下、左下、右、左、右上、左上、上の順で高くなるように各注目領域の優先度を設定する。
なお、各注目領域の位置に基づいて各注目領域の優先度を設定する際のルールは、格納部15に格納されており、装置制御部13は、各注目領域の優先度を設定するに際して、上記ルールを格納部15から読み出す。
そして、装置制御部13は、表示候補領域が超音波画像Uの表示範囲内で抽出されない場合には、血管情報Jの少なくとも一部がより低い優先度の注目領域(例えば、最も優先度の低い注目領域)と重なるように表示領域を決める。
【0050】
入力装置14は、操作者が入力操作を行うためのものであり、例えば、キーボード、マウス、トラックボール、タッチパッド及びタッチパネル等によって構成される。
なお、注目領域検出部18が超音波画像Uにおいて複数の注目領域を検出した場合に各注目領域に対して設定される優先度は、入力装置14を通じて操作者に入力されてもよい。この場合、装置制御部13が入力装置14への入力内容に基づいて各注目領域の優先度を設定することになるので、ユーザの意思等を反映させて各注目領域の優先度を自由に設定することが可能になる。
【0051】
格納部15は、超音波診断装置1の制御プログラム、及び、各種情報を格納するものであり、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disc Drive:ハードディスクドライブ)、SSD(Solid State Drive:ソリッドステートドライブ)、FD(Flexible Disc:フレキシブルディスク)、MOディスク(Magneto-Optical disc:光磁気ディスク)、MT(Magnetic Tape:磁気テープ)、RAM(Random Access Memory:ランダムアクセスメモリ)、CD(Compact Disc:コンパクトディスク)、DVD(Digital Versatile Disc:デジタルバーサタイルディスク)、SDカード(Secure Digital card:セキュアデジタルカード)、USBメモリ(Universal Serial Bus memory:ユニバーサルシリアルバスメモリ)等の記録メディア、若しくはサーバコンピュータ等を用いることができる。
格納部15には、前述したように、注目領域検出部18が超音波画像U内で複数の注目領域を検出した場合に各注目領域に対して優先度を設定する際のルールが記憶されている。
なお、格納部15は、不図示のシネメモリを含んでおり、シネメモリは、1フレーム分、又は連続した数フレーム分の超音波画像(Bモード画像信号)を蓄積するための容量を有する。装置制御部13は、フリーズモード時には、シネメモリに格納された1フレームの超音波画像を読み出して表示制御部7に受け渡す。これにより、表示装置8には、1フレームの超音波画像U(すなわち、静止画像)が表示されるようになる。
【0052】
上述した画像生成部6、表示制御部7、場面判定部12、血管情報取得部16、装置制御部13、血管情報表示部17、及び注目領域検出部18が設けられたプロセッサ22は、例えば、CPU(Central Processing Unit:中央処理装置)、及び、CPUに各種の処理を実行させるための制御プログラムから構成される。ただし、これに限定されるものではなく、プロセッサ22は、FPGA(Field Programmable Gate Array:フィードプログラマブルゲートアレイ)、DSP(Digital Signal Processor:デジタルシグナルプロセッサ)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit:アプリケーションスペシフィックインテグレイテッドサーキット)、GPU(Graphics Processing Unit:グラフィックスプロセッシングユニット)、若しくは、その他のIC(Integrated Circuit:集積回路)を用いて構成されてもよく、あるいは、それらを組み合わせて構成されてもよい。
また、プロセッサ22に設けられた画像生成部6、表示制御部7、場面判定部12、装置制御部13、血管情報取得部16、血管情報表示部17、及び注目領域検出部18は、部分的に、あるいは全体的に1つのCPU等に統合させて構成することもできる。
また、プロセッサ22は、例えば、据え置き型の装置に搭載されてもよく、あるいは、ラップトップ型のPC(Personal Computer)、スマートフォン及びタブレット端末のような持ち運び可能な装置に搭載されてもよい。
【0053】
次に、
図5に示すフローチャートを参照しながら、第1実施形態に係る超音波診断装置1の動作について詳細に説明する。
【0054】
超音波診断装置1による超音波画像の表示フローでは、ステップS1が実施され、本ステップS1では、超音波画像Uが生成される。具体的には、先ず、被検体の体表面上に超音波プローブ21が接触し、送信回路3からの駆動信号に従って振動子アレイ2の複数の振動子から被検体内に超音波ビームが送信され、被検体からの超音波エコーを受信した各振動子から受信信号が受信回路4に出力される。次に、受信回路4によって受け取られた受信信号が増幅部23によって増幅され、AD変換部24によってAD変換された後、ビームフォーマ25によって整相加算され、この結果、音線信号が生成される。この音線信号は、画像生成部6において、信号処理部26で包絡線検波処理が施されることでBモード画像信号となり、DSC27及び画像処理部28を経て表示制御部7に出力される。これにより、超音波画像Uが生成される(換言すると、超音波画像Uが取得される)。
【0055】
次のステップS2では、場面判定部12が、生成(取得)された超音波画像Uを解析することにより、超音波画像Uが生成(取得)されたときの場面を判定する。場面判定部12による場面判定については、1フレームの超音波画像U(すなわち静止画像)に基づいて行われるモードと、連続的に取得された複数フレームの超音波画像U(すなわち動画)に基づいて行われるモードとがあり、これらのモードの一方が選択される。なお、モードの選択は、例えば、操作者が入力装置14を通じて行ってもよく、あるいは、場面判定部12が超音波画像Uの取得開始からの経過時間等に基づいて自動的に行ってもよい。
【0056】
以下、それぞれのモードでの場面判定の流れについて説明する。
[静止画像に基づく場面判定]
場面判定部12は、静止画像に基づいて場面を判定する場合には、
図6に示す流れに沿って判定する。先ず、場面判定部12は、ステップS11を実施し、静止画像である超音波画像Uを解析し、超音波画像U中に血管Bのみが検出されたか、あるいは、血管B及び挿入物Cである穿刺針付きのカテーテルが検出されたかを判定する。ステップS11において超音波画像U中の血管B及び挿入物Cを検出する際には、テンプレートマッチング、機械学習手法、及び、ディープラーニング等を用いた一般画像認識手法等の公知のアルゴリズムを用いることができる。
【0057】
超音波画像U内において血管Bのみが検出される一方で挿入物Cが検出されない場合には、場面判定部12は、ステップS12において、静止画像である超音波画像Uが取得されたときの場面が探索場面であると判定する。
超音波画像U内において血管B及び挿入物Cの双方が検出された場合には、場面判定部12は、ステップS13を実施し、検出された挿入物Cが穿刺針の先端であるか否かを判定する。穿刺針の先端は、短軸法(交差法)で観察される場合には、超音波画像Uにおいて円状(詳しくは、円型の点状)の画像として描出されるため、そのことを踏まえて、場面判定部12は、例えばイメージマッチング等の手法を用いて、検出された挿入物Cが穿刺針の先端であるか否かを判定する。
また、上記の手法以外の手法により、検出された挿入物Cが穿刺針の先端であるかを判定することも可能である。具体的に説明すると、穿刺針付きのカテーテルの先端以外の部分(非先端部)であっても、超音波画像Uにおいて孤立した点状の画像として描出される場合がある。その場合には、その点の後方に音響陰影(シャドー)が現れるか否かに基づいて、その画像が穿刺針の先端を表しているかを判定することができる。すなわち、針のシャフト部分(非先端部)の画像が超音波画像Uに描出される場合には、音波が強く反射してしまうので、その後方に音響陰影が現れる。これに対し、針の先端の画像が超音波画像Uに描出される場合には、音波の反射が若干弱まり、後方の音響陰影が現れない、若しくは弱くなる。これは、針先が斜めにカットされたり、針の先端に向かって針が細くなる等の理由から、針先端での音波の反射面積がシャフト部での反射面積よりも小さいためである。
ちなみに、針先端にエコージェニック加工が施された穿刺針は、挿入し難いい等の理由から実用性に乏しいという理由から、針先端よりも若干手前のシャフト部にエコージェニック加工が施されている場合が多い。このような穿刺針を用いる場合にも、上記の音響陰影に基づく判定であれば、針先端と非先端を見分けることができる。
【0058】
検出された挿入物Cが穿刺針の先端であると判定された場合には、場面判定部12は、ステップS14において、静止画像である超音波画像Uが取得されたときの場面が挿入場面であると判定する。
検出された挿入物Cが穿刺針の先端ではないと判定された場合には、場面判定部12は、ステップS15を実施し、検出された挿入物Cが血管B内に在るかを判定する。より詳しく説明すると、本ステップS15において、格納部15は、穿刺針が抜かれた状態のカテーテルの先端部分が血管B内に在るか否かを判定する。穿刺針が抜かれた状態のカテーテルの先端部分は、短軸法(交差法)で観察される場合には、
図8に示すように、超音波画像Uにおいて唇状に分離した一対の断片像として描出されるため、そのことを踏まえて、場面判定部12は、例えばイメージマッチング等の手法を用いて、検出された血管B内の挿入物Cがカテーテルの先端部分であるか否かを判定する。
【0059】
検出された挿入物Cが、穿刺針が抜かれた状態で血管B内にあるカテーテルの先端部であると判定された場合には、場面判定部12は、ステップS16において、静止画像である超音波画像Uが取得されたときの場面が留置場面であると判定する。
他方、例えば、穿刺針が未だカテーテルから抜かれてない状況等にある場合には、場面判定部12は、穿刺針が抜かれた状態のカテーテルの先端部分が血管B内にはないと判定し、その場合にはステップS15が繰り返される。
【0060】
以上までに説明した手順によれば、1フレームの超音波画像Uの静止画像に基づき、その超音波画像Uが取得されたときの場面を適切に判定することができる。
【0061】
[動画に基づく場面判定]
場面判定部12は、動画に基づいて場面を判定する場合には、
図7に示す流れに沿って判定する。先ず、場面判定部12は、ステップS21を実施し、連続的に取得された複数フレームの超音波画像Uを解析し、複数フレームの超音波画像Uにおいて血管Bの出現及び消失が繰り返されているか否かを判定する。具体的に説明すると、ステップS21において、場面判定部12は、
図9に示すように、複数フレームの超音波画像Uにおいて、血管Bが検出される超音波画像Uと、血管Bが検出されない超音波画像Uとが短時間内に交互に切り替わるか否かを判定する。なお、超音波画像U中の血管B、挿入物C及び病変部分E等の検出には、テンプレートマッチング、機械学習手法、及びディープラーニング等を用いた一般画像認識手法等の公知のアルゴリズムを用いることができる。
【0062】
複数フレームの超音波画像Uにおいて血管Bの出現及び消失が繰り返されているということは、操作者が超音波プローブ21を動かして、挿入物Cが挿入される血管B(つまり、対象血管Bx)を探索している状況にあることを意味する。したがって、複数フレームの超音波画像Uにおいて血管Bの出現及び消失が繰り返されていると判定された場合、場面判定部12は、ステップS22において、複数フレームの超音波画像Uが取得されたときの場面を探索場面と判定する。
【0063】
一方、複数フレームの超音波画像Uのすべてにおいて血管Bが検出された場合、場面判定部12は、ステップS23を実施し、連続的に取得された複数フレームの超音波画像Uを解析し、複数フレームの超音波画像Uにおいて血管Bの位置が変化しているか否かを判定する。
複数フレームの超音波画像Uにおいて血管Bの位置が変化しているということは、超音波画像Uに描出される血管B及びその他の組織の位置が不安定になり、それは、操作者が超音波プローブ21を動かして、挿入物Cが挿入される血管B(対象血管Bx)を探索している状況にあることを意味している。したがって、複数フレームの超音波画像Uにおいて血管Bの位置が変化していると判定された場合、場面判定部12は、ステップS22を実施し、複数フレームの超音波画像Uが取得されたときの場面を探索場面と判定する。
【0064】
複数フレームの超音波画像Uにおいて血管Bの位置が安定している(変化していない)場合、場面判定部12は、ステップS24を実施し、連続的に取得された複数フレームの超音波画像Uを解析し、複数フレームの超音波画像Uにおいて挿入物Cの先端の位置が対象血管Bxに近付くように変化しているか否かを判定する。ここで、対象血管Bxは、超音波画像U中の血管Bのうち、挿入物Cの進路上に位置し、その後に挿入物Cが挿入される血管Bである。なお、対象血管Bxを特定する上で、場面判定部12は、複数フレームの超音波画像Uを解析して挿入物Cの先端の軌跡を検出して、検出された軌跡に基づいて挿入物Cの進路を推定する。
【0065】
複数フレームの超音波画像Uにおいて挿入物Cの先端位置が
図10に示すように徐々に対象血管Bxに近付いていると判定された場合、場面判定部12は、ステップS25において、複数フレームの超音波画像Uが取得されたときの場面を挿入場面と判定する。
【0066】
一方、操作者が、挿入物Cの挿入操作中、血管Bの内壁に沿って挿入物Cが適切に挿入されていることを確認するために超音波プローブ21の向きを変えて(つまり、短軸法と長軸法とを交互に採用し)、
図11に示すように血管B及び挿入物Cの観察方向を切り替える場合がある。その場合には、複数フレームの超音波画像Uにおいて挿入物Cの先端位置が対象血管Bxに向かって近付いているか否かを明瞭には判定できないことがある。そのときには、場面判定部12は、ステップS26を実施し、連続的に取得された複数フレームの超音波画像Uを解析し、複数フレームの超音波画像Uにおいて血管B及び挿入物Cの観察方向が所定回数以上切り替わっているか否かを判定する。
【0067】
複数フレームの超音波画像Uにおいて血管B及び挿入物Cの観察方向が所定回数以上切り替わっていると判定された場合、場面判定部12は、ステップS25を実施し、複数フレームの超音波画像Uが取得されたときの場面を挿入場面と判定する。
【0068】
挿入物Cの操作が安定し、例えば、挿入物Cが対象血管Bx内に挿入された段階では、血管B及び挿入物Cの観察方向が切り替わる回数が所定回数未満となる。このとき、場面判定部12は、次のステップS27を実施し、連続的に取得された複数フレームの超音波画像Uを解析し、複数フレームの超音波画像Uにおいて挿入物Cであるカテーテルの先端部分の出現及び消失が繰り返されているか否かを判定する。
複数フレームの超音波画像Uにおいてカテーテルの先端部分の出現及び消失が繰り返されているということは、
図12に示すようにカテーテルの先端部分が既に対象血管Bx内に留置されており、操作者が超音波プローブ21を動かして(スイープして)カテーテルの先端部分を確認している状況にあることを意味している。したがって、複数フレームの超音波画像Uにおいてカテーテルの先端部分の出現及び消失が繰り返されていると判定された場合、場面判定部12は、ステップS28において、複数フレームの超音波画像Uが取得されたときの場面を留置場面と判定する。
【0069】
一方、複数フレームの超音波画像Uのすべてにおいて、血管B内に在るカテーテルの先端部分が検出された場合、場面判定部12は、ステップS29を実施し、連続的に取得された複数フレームの超音波画像Uを解析し、複数フレームの超音波画像Uにおいて被検体内の病変部分E(例えば、静脈炎等)の出現及び消滅が繰り返されているか否かを判定する。
複数フレームの超音波画像Uにおいて、
図13に示すように病変部分Eの出現及び消滅が繰り返されているということは、カテーテルの先端部分を血管B内に留置したことに起因して生じた静脈炎等の病変部分Eを確認するために操作者が超音波プローブ21を動かしていることを意味している。したがって、複数フレームの超音波画像Uにおいて病変部分Eの出現及び消失が繰り返されていると判定された場合、場面判定部12は、ステップS28を実施し、複数フレームの超音波画像Uが取得されたときの場面を留置場面と判定する。
他方、複数フレームの超音波画像Uにおいて病変部分Eの出現及び消滅が繰り返されていないと判定された場合には、ステップS27に戻り、S27以降のステップが繰り返される。
【0070】
以上までに説明した手順によれば、連続的に取得された複数フレームの超音波画像U(すなわち、動画)に基づき、その超音波画像Uが取得されたときの場面を適切に判定することができる。
【0071】
図5のフローチャートについての説明に戻ると、場面判定の実施後にはステップS3が実施され、ステップS3では、血管情報取得部16が、ステップS1で生成(取得)された超音波画像Uを解析し、超音波画像U中の対象血管Bxを検出し、検出された対象血管Bxの血管情報Jを取得する。
【0072】
続くステップS4では、注目領域検出部18が、血管情報取得部16と同様に超音波画像Uを解析し、超音波画像U中の注目領域を検出する。このとき、注目領域検出部18は、ステップS2で場面判定部12によって判定された場面と対応する注目領域を検出する。具体的に説明すると、場面判定部12によって判定された場面が探索場面である場合、注目領域検出部18は、被検体内の病変部分E又は対象血管Bx以外の血管Bを注目領域として検出する。
より詳しく説明すると、場面が探索場面であり、
図14に示すように超音波画像Uに様々な大きさの血管Bが密集して描出されている場合、注目領域検出部18は、その超音波画像U中の病変部分E(例えば、血栓又は浮腫等)を注目領域として検出する。なお、この場合において、超音波画像U中の複数の血管Bのうち、深度が比較的浅く且つ直径が挿入物Cを挿入するのに十分な大きさの血管Bが対象血管Bxに該当する。
また、場面が探索場面であり、
図15に示すように超音波画像U内において血管Bは少ないが周囲に様々な周辺組織F(例えば、神経、臓器及び骨等)が存在している場合、注目領域検出部18は、その超音波画像U中の対象血管Bx以外の血管Bを注目領域として検出する。なお、この場合も、
図14に示す超音波画像Uと同様、深度が比較的浅く且つ直径が挿入物Cを挿入するのに十分な大きさの血管Bが対象血管Bxに該当する。
【0073】
場面判定部12によって判定された場面が挿入場面である場合、注目領域検出部18は、挿入物Cの先端、及び被検体内において挿入物Cの先端付近に位置する組織のうちの少なくとも一つを注目領域として検出する。
より詳しく説明すると、場面が挿入場面であり、
図16に示すように超音波画像U中の挿入物Cである穿刺針付きのカテーテルの先端(針先)が対象血管Bx近傍に位置している場合、注目領域検出部18は、その超音波画像U中の穿刺針の針先、及び、針先付近の周辺組織Fを注目領域として検出する。なお、針先付近の周辺組織Fには、針先付近に位置する対象血管Bx以外の血管が含まれる。
また、場面が挿入場面であり、
図17に示すように超音波画像U中の挿入物Cである穿刺針付きのカテーテルの先端(すなわち、穿刺針の先端)が対象血管Bx内に挿入された場合、注目領域検出部18は、その超音波画像U中の穿刺針の針先を注目領域として検出する。
【0074】
場面判定部12によって判定された場面が留置場面である場合、注目領域検出部18は、挿入物Cの先端部分又は被検体内の病変部分Eを注目領域として検出する。
より詳しく説明すると、場面が留置場面であり、
図18に示すように超音波画像U中の挿入物Cとして穿刺針が抜かれた状態のカテーテルの先端部分が対象血管Bx内に在る場合、注目領域検出部18は、その超音波画像U中のカテーテルの先端部分を注目領域として検出する。
また、場面が留置場面であり、
図19に示すように超音波画像Uにおいてカテーテルの先端部分が留置された対象血管Bx近傍に病変部分Eとしての静脈炎が描出された場合、注目領域検出部18は、その超音波画像U中の静脈炎を注目領域として検出する。
【0075】
上述した要領にて注目領域の検出が行われた後には、ステップS5において、装置制御部13が、注目領域の位置に基づき、超音波画像Uの表示範囲H内における血管情報Jの表示領域を決定する。本ステップS5は、
図20に示す流れに従って進行する。具体的に説明すると、先ず、装置制御部13は、ステップS31を実施し、前のステップS4にて超音波画像U中の注目領域が注目領域検出部18によって検出されたか否かを判定する。
【0076】
注目領域が検出されていないと判定された場合、装置制御部13は、ステップS32を実施し、ステップS32において、超音波画像Uの表示範囲H中、対象血管Bxを避け且つ対象血管Bx付近の領域を選定し、選定された領域を表示領域として決定する。
【0077】
一方、注目領域が検出されたと判定された場合、装置制御部13は、ステップS33において、注目領域検出部18によって検出された注目領域が複数あるかを判定する。検出された注目領域が一つのみであると判定された場合、装置制御部13は、ステップS34を実施し、超音波画像Uの表示範囲H内で、対象血管Bx及び注目領域を避けた表示候補領域を抽出する。
ここで、表示候補領域について具体例を挙げて説明すると、探索場面中に取得され、且つ
図14に示すように様々な大きさの血管Bが密集して描出されている超音波画像Uでは、深度が比較的深い血管Bが描出された領域、あるいは、直径が対象血管Bxに比べて十分に小さい血管Bが描出された領域が表示候補領域(
図14中、点線にて示す領域)として抽出される。
また、探索場面中に取得され、且つ
図15に示すように血管Bは少数であるが周囲に周辺組織Fが存在している超音波画像Uでは、周辺組織Fが描出された領域が表示候補領域(
図15中、点線にて示す領域)として抽出される。
【0078】
また、挿入場面中に取得され、且つ
図16に示すように挿入物Cである穿刺針付きのカテーテルの先端が対象血管Bx近傍に位置した超音波画像Uでは、穿刺針の先端から遠い血管Bが描出された領域が表示候補領域(
図16中、点線にて示す領域)として抽出される。なお、上記の超音波画像Uが長軸法で取得された超音波画像である場合には、穿刺針のシャフト部分(不図示)が描出された領域が表示候補領域として抽出される。
また、挿入場面中に取得され、且つ、
図17に示すように挿入物Cである穿刺針付きのカテーテルの先端が対象血管Bx内に挿入された超音波画像Uでは、穿刺針が入っていない血管B又は周辺組織Fが描出された領域が表示候補領域(
図17中、点線にて示す領域)として抽出される。なお、上記の超音波画像Uが長軸法で取得された超音波画像である場合には、穿刺針のシャフト部分(不図示)が描出された領域が表示候補領域として抽出される。
【0079】
また、留置場面中に取得され、且つ、
図18及び19に示すように穿刺針が抜かれた状態のカテーテルの先端部分が対象血管Bx内に在る超音波画像Uでは、カテーテルが入っていない血管Bが描出された領域が表示候補領域(
図18及び19中、点線にて示す領域)として抽出される。なお、上記の超音波画像Uが長軸法で取得された超音波画像である場合には、カテーテルの軸部分(不図示)が描出された領域が表示候補領域として抽出される。
【0080】
そして、装置制御部13は、ステップS34の実施後にはステップS35を実施し、ステップS34で抽出された表示候補領域の中から血管情報Jの表示領域を決める。このとき、抽出された表示候補領域が一つであれば、その表示候補領域を血管情報Jの表示領域に決めればよく、抽出された表示候補領域が複数であれば、その中で最も対象血管Bxに近い表示候補領域を血管情報Jの表示領域に決めればよい。ただし、表示候補領域の中から表示領域を決める方法については、特に限定されず、例えば表示候補領域の中から任意の方法にて表示領域を決めてもよい。
【0081】
一方、ステップS33で注目領域が複数あると判断された場合には、装置制御部13は、ステップS36を実施し、超音波画像Uの表示範囲H内で表示候補領域があるか(抽出できるか)否かを判定する。表示候補領域があると判定された場合には、装置制御部13は、ステップS37を実施し、その表示候補領域の中から血管情報Jの表示領域を決める。
【0082】
反対に、超音波画像Uの表示範囲H内には表示候補領域がない(抽出できない)と判定された場合には、装置制御部13は、ステップS38を実施する。本ステップS38では、装置制御部13が、格納部15に格納された優先度の設定ルールを参照し、そのルールに則って、検出された複数の注目領域のそれぞれに対して優先度を設定する。このとき、装置制御部13は、超音波画像Uの表示範囲Hにおける複数の注目領域のそれぞれの位置に基づいて、各注目領域のそれぞれの優先度を設定する。
【0083】
優先度の設定後、装置制御部13は、ステップS39を実施し、本ステップS39において、血管情報Jの少なくとも一部がより低い優先度の注目領域(例えば、最も低い優先度の注目領域)と重なるように表示領域を決める。これにより、複数の注目領域が検出されたために表示候補領域を超音波画像Uの表示範囲内で抽出することができなかったとしても、各注目領域の優先度を考慮した上で、血管情報Jの表示領域を適切に決めることができる。
【0084】
図5のフローチャートについての説明に戻ると、血管情報Jの表示領域が決定した後にはステップS6が実施され、ステップS6において、表示制御部7による制御の下、ステップS1で生成(取得)された超音波画像Uが表示装置8に表示される。また、ステップS6では、装置制御部13が、ステップS5で決められた表示領域に血管情報Jを表示するように血管情報表示部17を制御する。これにより、超音波画像Uの表示範囲H内において、血管情報Jが注目領域の位置に基づいて決められた表示領域に表示されるようになる。
【0085】
ステップS6の実施後には、ステップS7に移行し、ステップS7では、超音波診断装置1の動作を終了するか否かが判定される。例えば、操作者が、超音波診断装置1の動作を終了する旨の指示を、入力装置14等を通じて入力した場合に、超音波診断装置1の動作終了と判定され、超音波診断装置1の動作終了の指示が入力されない場合には、超音波診断装置1の動作を終了しないと判定される。超音波診断装置1の動作を終了しないと判定された場合には、ステップS1に戻り、新たに超音波画像Uが生成され、その後にS2以降のステップが繰り返される。
他方、超音波診断装置1の動作を終了すると判定された場合には、超音波診断装置1の動作が終了する。
【0086】
以上までに説明してきたように、第1実施形態に係る超音波診断装置1によれば、超音波画像U中の対象血管Bx(例えば、挿入物Cが挿入される血管B)を検出し、検出された対象血管Bxの直径及び深度を示す血管情報Jを、超音波画像Uの表示範囲H内において注目領域の位置に基づいて決められた表示領域に表示する。
より詳しくは、対象血管Bx及び注目領域と重ならないように血管情報Jを表示する。これにより、超音波画像U中の対象血管Bxとその血管情報Jとをリアルタイムで確認することができ、それと同時に、注目領域(例えば、対象血管Bx付近に存在する別の血管B等)も併せて確認することができる。
【0087】
つまり、第1実施形態に係る超音波診断装置1を用いることで、血管情報Jを超音波画像Uの表示範囲H内で適切な位置に表示させることが可能である。この場合には、例えば表示範囲H内において常に同じ領域に血管情報Jを表示する場合と比べて、操作者にとっての使い勝手(利便性)が向上する。
また、超音波画像Uが取得される際の場面(シーン)に応じて注目領域が変わり得るため、第1実施形態では、そのことを踏まえて、血管情報Jの表示領域を場面毎に決めることとした。これにより、血管情報Jの表示領域が、そのときの場面と対応させて適切に決められるようになる。
【0088】
さらに、第1実施形態では、超音波画像U内で複数の注目領域が検出され、複数の注目領域すべてを避けて血管情報Jを表示することができない場合には、各注目領域に対して優先度を設定し、血管情報Jの少なくとも一部がより優先度の低い注目領域と重なるように表示領域を決める。これにより、上記の状況において最も妥当な表示領域に血管情報Jを表示することができる。
【0089】
なお、上記のケースでは、超音波プローブ21に送信回路3及び受信回路4が設けられ、プロセッサ22に画像生成部6が設けられていることとした。ただし、これに限定されず、超音波プローブ21に送信回路3、受信回路4及び画像生成部6が設けられてもよい。この場合には、超音波プローブ21で超音波画像(Bモード画像信号)が生成され、超音波プローブ21から送られてくる超音波画像をプロセッサ22が受信する。
また、超音波プローブ21に送信回路3が設けられ、プロセッサ22に受信回路4及び画像生成部6が設けられてもよい。あるいは、プロセッサ22側に送信回路3、受信回路4及び送受信回路5が設けられてもよい。この場合には、振動子アレイ2が有する複数の振動子が超音波エコーを受信したときに出力する電気信号(アナログ信号)が超音波プローブ21からプロセッサ22に伝送され、プロセッサ22側で電気信号のAD変換、音線信号の生成、及び超音波画像(Bモード画像信号)の生成が行われる。
【0090】
また、上記のケースでは、表示装置8、入力装置14、超音波プローブ21がプロセッサ22に直接的に接続される構成について説明したが、例えば、表示装置8、入力装置14、超音波プローブ21、及びプロセッサ22が、
図21A及び21Bに示すようにネットワークNWを介して間接的に接続された構成でもよい。この場合、上記の各機器とネットワークNWとの接続は、有線接続であってもよく、無線接続であってもよい。
【0091】
図21Aに示す構成の超音波診断装置1Aでは、表示装置8、入力装置14及び超音波プローブ21がネットワークNWを介して超音波診断装置本体41に接続されている。超音波診断装置本体41は、
図1に示す構成の超音波診断装置1のうち、表示装置8、入力装置14、及び超音波プローブ21を除いたものであり、送受信回路5、格納部15及びプロセッサ22によって構成されている。
なお、
図21Aに示す構成の超音波診断装置1Aにおいて、上述の超音波診断装置本体41を遠隔サーバとして使用してもよい。この場合には、例えば、操作者は、表示装置8、入力装置14、及び超音波プローブ21のみを操作者の手元に用意することにより、被検体の診断を行うことができるため、超音波診断の際の利便性を向上させることができる。
また、
図21Aに示す構成の超音波診断装置1Aにおいて、スマートフォン又はタブレット端末を表示装置8及び入力装置14として使用してもよい。この場合には、操作者は、より容易に被検体の超音波診断を行うことができるので、超音波診断の利便性をさらに向上させることができる。
【0092】
図21Bに示す構成の超音波診断装置1Cでは、表示装置8及び入力装置14が超音波診断装置本体41に搭載されており、超音波プローブ21がネットワークNWを介して超音波診断装置本体41に接続されている。この場合、超音波診断装置本体41を遠隔サーバによって構成してもよく、あるいは、スマートフォン又はタブレット端末によって構成してもよい。
【0093】
<<第2実施形態>>
超音波画像Uにおいて検出される対象血管Bxの数は、一つに限定されず、複数の対象血管Bxが検出される場合も考えられる。この場合、複数の対象血管Bxのそれぞれについて、直径及び深さのうちの少なくとも一方を計測し、その計測結果に関する血管情報Jを取得することができる。そして、
図22に示すように、複数の対象血管Bxのそれぞれの血管情報Jを超音波画像Uの表示範囲H内で同時に表示することができる。かかる実施形態を第2実施形態とし、第2実施形態について詳しく説明する。
なお、第2実施形態に係る超音波診断装置の構成は、上述した第1実施形態に係る超音波診断装置の構成と略同様である。以下では、第2実施形態に関して、第1実施形態と異なる点を主に説明する。
【0094】
第2実施形態では、血管情報取得部16が、超音波画像U中の複数の対象血管Bxを検出した場合には、検出された複数の対象血管Bxのそれぞれについて血管情報Jを取得する。ここで、複数の対象血管Bxのそれぞれは、第1実施形態と同様、深度が比較的浅く且つ挿入物Cを内部に挿入するのに十分な大きさの直径を有する血管Bである。
【0095】
また、第2実施形態では、血管情報表示部17が、血管情報取得部16によって取得された複数の対象血管Bxのそれぞれの血管情報Jを、超音波画像Uの表示範囲H内で同時に表示する。
また、第2実施形態では、装置制御部13が、注目領域検出部18によって超音波画像U内の注目領域が検出された場合には、第1実施形態と同様、注目領域の位置に基づいて血管情報Jの表示領域を決める。注目領域の位置に基づいて血管情報Jの表示領域を決める手順は、概ね第1実施形態と共通するが、装置制御部13は、複数の血管情報Jの表示領域を決める際には、
図22に示すように、複数の対象血管Bxのそれぞれの血管情報Jが互いに極力離れて表示されるように表示領域を対象血管Bx毎に決める。このとき、施設配置問題の解法を適用し、複数の対象血管Bxのそれぞれの血管情報Jが超音波画像Uの表示範囲H内においてバランスよく表示されるように、各血管情報Jの表示領域を決めるとよい。
【0096】
<<第3実施形態>>
超音波画像Uの表示範囲H内で対象血管Bxの血管情報Jを表示する際に、対象血管Bxが視認されやすくなるように対象血管Bxを強調表示することができる。かかる実施形態を第3実施形態とし、第3実施形態について
図23及び24を参照しながら詳しく説明する。
【0097】
第3実施形態に係る超音波診断装置1Bでは、
図23に示すように、強調表示部10がプロセッサ22に追加されている。強調表示部10は、画像生成部6に接続され、強調表示部10に表示制御部7及び装置制御部13が接続されている。
強調表示部10は、画像生成部6によって生成された超音波画像U(換言すると、画像取得部11によって取得された超音波画像U)を解析することにより、超音波画像U中の対象血管Bxを検出し、
図24に示すように、検出された対象血管Bxをハイライト色にて塗り潰して強調表示する。ハイライト色とは、超音波画像Uのうち、血管情報Jを除く、対象血管Bx以外の部分の色とは異なる色であり、イエロー、オレンジ及びライトグリーン等、操作者にとって視認されやすい色であることが好ましい。
このように超音波画像U中の対象血管Bxが強調表示されることにより、操作者は、挿入物Cを対象血管Bxに挿入する際に対象血管Bxの位置を容易に把握することができ、挿入物Cの挿入操作の精度を向上させることができる。
【0098】
また、第3実施形態において、装置制御部13は、血管情報Jの表示領域の色(すなわち、背景色)が対象血管Bxを強調表示する際のハイライト色と同一色となるように強調表示部10及び血管情報表示部17を制御する。これにより、超音波画像Uでは、血管情報Jの背景色と対象血管Bxとが同一色で表示されるので、操作者は、血管情報Jが示す直径及び深度がどの血管Bの情報であるのかを容易に把握することができる。この効果は、例えば、血管情報Jを対象血管Bxから離れた位置で表示するために、血管情報Jが示す直径及び深度がどの血管Bの情報であるのかを把握し難くなる状況では特に有効である。
【符号の説明】
【0099】
1,1A,1B,1C 超音波診断装置
2 振動子アレイ
3 送信回路
4 受信回路
5 送受信回路
6 画像生成部
7 表示制御部
8 表示装置
10 強調表示部
11 画像取得部
12 場面判定部
13 装置制御部
14 入力装置
15 格納部
16 血管情報取得部
17 血管情報表示部
18 注目領域検出部
21 超音波プローブ
22 プロセッサ
23 増幅部
24 AD変換部
25 ビームフォーマ
26 信号処理部
27 DSC
28 画像処理部
41 超音波診断装置本体
B 血管
Bx 対象血管
C 挿入物
d1 直径
d2 深度
E 病変部分
F 周辺組織
H 表示範囲
J 血管情報
NW ネットワーク
U 超音波画像