(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】情報処理装置及び方法並びに誘導システム及び方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 90/00 20060101AFI20221212BHJP
【FI】
G06Q90/00 310
(21)【出願番号】P 2021561337
(86)(22)【出願日】2020-11-18
(86)【国際出願番号】 JP2020042896
(87)【国際公開番号】W WO2021106696
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-05-30
(31)【優先権主張番号】P 2019213252
(32)【優先日】2019-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】江郷 俊太
(72)【発明者】
【氏名】寺田 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】林 大輔
(72)【発明者】
【氏名】牧野 研司
【審査官】田川 泰宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-142681(JP,A)
【文献】国際公開第2016/157279(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサと、
前記プロセッサに接続されたメモリと、
を備え、
前記プロセッサは、
入力画像から人物を検出し、
検出された前記人物の状態を数値化して推定し、
前記人物の状態を前記入力画像内での前記人物の位置に応じてマップ上で表わしたマップデータを作成し、
前記マップデータに基づいて、第1エリアを推定し、
前記第1エリアの人物及び/又は前記第1エリア以外の第2エリアの人物の移動経路を設定する、
ように構成される、
情報処理装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、
前記設定された前記移動経路の情報を送信する、
ように更に構成される、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、
前記推定において、
前記検出された前記人物の画像から前記人物の顔の表情及び身体の動きの少なくとも一方を認識し、前記認識の結果に基づいて、前記人物の状態を数値化して推定する、
ように更に構成される、
請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、
前記推定において、
前記認識の結果に対し、あらかじめ定められた基準に従って点数を付与し、前記人物の状態を数値化する、
ように更に構成される、
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、
前記認識において、
前記検出された前記人物の画像から前記人物の顔の表情、顔の向き及び身体の動きを認識し、
前記推定において、
前記認識による前記人物の顔の表情、顔の向き及び身体の動きの認識の結果に対し、あらかじめ定められた基準に従って点数を付与し、前記点数の合計を求めて前記人物の状態を数値化する、
ように更に構成される、
請求項3又は4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、
前記第1エリアの推定において、
前記入力画像を複数の部分エリアに分割し、前記部分エリアごとに状態が第1閾値以上の前記人物の数をカウントし、
状態が前記第1閾値以上の前記人物の数が第2閾値以上の前記部分エリアを抽出し、
前記抽出された前記部分エリアを前記第1エリアと推定する、
ように更に構成される、
請求項1から5のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、
前記推定された前記人物の状態を経時的に記録し、
前記経時的に記録された前記人物の状態の最大値を検出し、
前記マップデータの作成において、前記最大値を用いて前記マップデータを作成する、
ように更に構成される、
請求項1から6のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記入力画像は、複数の座席が配置された座席エリアを有する会場を撮影した画像であり、
前記座席エリア内に前記第1エリア及び前記第2エリアが設定される、
請求項1から7のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記プロセッサは、
前記マップデータを可視化したデータ及び/又は前記移動経路の情報を出力する、
ように更に構成される、
請求項1から8のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記マップデータを可視化したデータ及び/又は前記移動経路の情報を表示するように構成されるディスプレイを更に備えた、
請求項1から9のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項11】
請求項2に記載の情報処理装置と、
前記情報処理装置に入力する画像を撮影するカメラと、
前記情報処理装置から送信された前記移動経路の情報を受信し、受信した前記移動経路の情報及び/又は前記移動経路の情報に基づく経路の案内情報を提示する提示装置と、
を備えた誘導システム。
【請求項12】
コンピュータによる情報処理方法であって、
前記コンピュータは、
入力画像から人物を検出し、
検出された前記人物の状態を数値化して推定し、
前記人物の状態を前記入力画像内での前記人物の位置に応じてマップ上で表わしたマップデータを作成し、
前記マップデータに基づいて、第1エリアを推定し、
前記第1エリアの人物及び/又は前記第1エリア以外の第2エリアの人物の移動経路を設定する、
情報処理方法。
【請求項13】
前記コンピュータは、設定
した移動経路の情報を送信する、
請求項12に記載の情報処理方法。
【請求項14】
カメラ、コンピュータ及び提示装置を用いた誘導方法であって、
前記カメラで画像を撮影し、
前記コンピュータによって、前記カメラによる撮影画像から人物を検出し、検出された前記人物の状態を数値化して推定し、前記人物の状態を前記撮影画像内での前記人物の位置に応じてマップ上で表わしたマップデータを作成し、前記マップデータに基づいて、第1エリアを推定し、前記第1エリアの人物及び/又は前記第1エリア以外の第2エリアの人物の移動経路を設定し、設定
した前記移動経路の情報を
前記提示装置に送信し、
前記提示装置において、受信した前記移動経路の情報及び/又は前記移動経路の情報に基づく経路の案内情報を提示する、
誘導方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置及び方法並びに誘導システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、イベント会場で災害が発生した場合に、各座席の観客に最適な避難経路の情報を提供するシステムが記載されている。特許文献1では、あらかじめ各座席からの避難経路を求めておくことで、各座席の観客に最適な避難経路の提供を可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本開示の技術に係る1つの実施形態は、状況に応じて移動経路を設定できる情報処理装置及び方法並びに誘導システム及び方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)入力画像から人物を検出する人物検出部と、人物検出部で検出された人物の状態を数値化して推定する推定部と、人物の状態を入力画像内での人物の位置に応じてマップ上で表わしたマップデータを作成するマップデータ作成部と、マップデータに基づいて、第1エリアを推定する第1エリア推定部と、第1エリアの人物及び/又は第1エリア以外の第2エリアの人物の移動経路を設定する移動経路設定部と、を備えた情報処理装置。
【0006】
(2)移動経路設定部で設定された移動経路の情報を送信する送信部を更に備えた、(1)の情報処理装置。
【0007】
(3)推定部は、人物検出部で検出された人物の画像から人物の顔の表情及び身体の動きの少なくとも一方を認識する認識部を備え、認識部の認識結果に基づいて、人物の状態を数値化して推定する、(1)又は(2)の情報処理装置。
【0008】
(4)推定部は、認識部の認識結果に対し、あらかじめ定められた基準に従って点数を付与し、人物の状態を数値化する、(3)の情報処理装置。
【0009】
(5)認識部は、人物検出部で検出された人物の画像から人物の顔の表情、顔の向き及び身体の動きを認識し、推定部は、認識部による人物の顔の表情、顔の向き及び身体の動きの認識結果に対し、あらかじめ定められた基準に従って点数を付与し、点数の合計を求めて人物の状態を数値化する、(3)又は(4)の情報処理装置。
【0010】
(6)第1エリア推定部は、入力画像を複数の部分エリアに分割し、部分エリアごとに状態が第1閾値以上の人物の数をカウントするカウント部と、状態が第1閾値以上の人物の数が第2閾値以上の部分エリアを抽出する抽出部と、を備え、抽出部で抽出された部分エリアを第1エリアと推定する、(1)から(5)のいずれか一の情報処理装置。
【0011】
(7)推定部で推定された人物の状態を経時的に記録する記録部と、記録部に経時的に記録された人物の状態の最大値を検出する最大値検出部と、を更に備え、マップデータ作成部は、最大値を用いてマップデータを作成する、(1)から(6)のいずれか一の情報処理装置。
【0012】
(8)入力画像は、複数の座席が配置された座席エリアを有する会場を撮影した画像であり、座席エリア内に第1エリア及び第2エリアが設定される、(1)から(7)のいずれか一の情報処理装置。
【0013】
(9)マップデータを可視化したデータ及び/又は移動経路の情報を出力する出力部を更に備えた、(1)から(8)のいずれか一の情報処理装置。
【0014】
(10)マップデータを可視化したデータ及び/又は移動経路の情報を表示する表示部を更に備えた、(1)から(9)のいずれか一の情報処理装置。
【0015】
(11)(2)の情報処理装置と、情報処理装置に入力する画像を撮影する撮影装置と、情報処理装置から送信された移動経路の情報を受信し、受信した移動経路の情報及び/又は移動経路の情報に基づく経路の案内情報を提示する提示装置と、を備えた誘導システム。
【0016】
(12)入力画像から人物を検出するステップと、検出された人物の状態を数値化して推定するステップと、人物の状態を入力画像内での人物の位置に応じてマップ上で表わしたマップデータを作成するステップと、マップデータに基づいて、第1エリアを推定する第1エリア推定ステップと、第1エリアの人物及び/又は第1エリア以外の第2エリアの人物の移動経路を設定するステップと、を含む情報処理方法。
【0017】
(13)設定された移動経路の情報を送信するステップを更に含む、(12)の情報処理方法。
【0018】
(14)画像を撮影するステップと、撮影画像から人物を検出するステップと、検出された人物の状態を数値化して推定するステップと、人物の状態を撮影画像内での人物の位置に応じてマップ上で表わしたマップデータを作成するステップと、マップデータに基づいて、第1エリアを推定する第1エリア推定ステップと、第1エリアの人物及び/又は第1エリア以外の第2エリアの人物の移動経路を設定するステップと、設定された移動経路の情報を送信するステップと、送信された移動経路の情報を受信し、受信した移動経路の情報及び/又は移動経路の情報に基づく経路の案内情報を提示するステップと、を含む誘導方法。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図5】情報処理装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図
【
図8】人物の検出から表情、顔の向き、及び、身体の動きの認識までの処理の概念図
【
図13】危険エリア推定部が有する機能のブロック図
【
図14】ある部分エリアにおける各観客の興奮度の一例を示す図
【
図15】カウント部によるカウント結果の一例を示す図
【
図16】観客エリア内に危険エリアがない場合の移動経路の設定の一例を示す図
【
図17】観客エリア内に危険エリアがある場合の移動経路の設定の一例を示す図
【
図20】表示制御ユニットが有する機能のブロック図
【
図21】ディスプレイに表示する案内情報の一例を示す図
【
図22】誘導システムの処理の流れを示すフローチャート
【
図24】情報処理装置で行われる処理の手順を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
【0021】
[第1の実施の形態]
イベント会場で観客を誘導する場合、目的地への最短経路を選択して誘導するのが一般的である。しかしながら、すべての観客を一律に最短経路で誘導するのは、必ずしも適切ではない。たとえば、会場内に興奮した観客のグループがいる場合、これらの観客と同じ経路で他の観客を誘導すると、他の観客が思わぬトラブルに巻き込まれるおそれがある。本実施の形態では、状況に応じて観客など人の移動経路を設定できる誘導システムを提供する。
【0022】
[誘導システムの構成]
ここでは、座席(観客席)を有するイベント会場で場内の観客を誘導する場合を例に説明する。
【0023】
図1は、本実施の形態の誘導システムの概略構成を示す図である。
【0024】
同図に示すように、本実施の形態の誘導システム1は、会場内を撮影する撮影装置10、撮影装置10で撮影された画像を処理して会場内の観客の移動経路を設定する情報処理装置100、及び、情報処理装置100で設定された移動経路の情報に基づいて経路の案内情報を表示する案内表示装置200を備える。
【0025】
[撮影装置]
撮影装置10は、イベント会場において、観客のいるエリア(以下、観客エリアと称する)を撮影する。座席(観客席)を有するイベント会場では、座席が配置されたエリア(座席エリア)が観客エリアに相当する。したがって、座席を有するイベント会場では、座席エリアを観客エリアとして撮影する。
【0026】
撮影装置10は、画像をデジタルデータとして記録するカメラ(デジタルビデオカメラを含む、いわゆるデジタルカメラ)で構成される。会場内のすべての観客エリアを1台のカメラで撮影できない場合、撮影装置10は、複数台のカメラを組み合わせて構成される。この場合、観客エリアを複数のエリアに分割して、各エリアを分担して撮影する。なお、すべての観客エリアを1台のカメラで撮影できない場合とは、撮影した画像から観客エリアにいる各観客の状態を判別できない場合、特に、顔の表情を判別できない場合をいう。したがって、画角内にすべての観客エリアが収まっていても、撮影された画像から観客の状態を判別できない場合は、1台のカメラで撮影できない場合に該当する。
【0027】
図2は、イベント会場の一例を示す図である。同図は、イベント会場の平面図を示している。
【0028】
図2に示すイベント会場300は、いわゆる競技場(スタジアム)である。このイベント会場300は、競技者が競技を行うグラウンド310、及び、観客が競技を観戦する観客エリア320を有する。グラウンド310は、矩形状を有し、その周囲を取り囲む形で観客エリア320が備えられる。観客エリア320は、すり鉢状(角錐形に窪んだ形状)の構造を有し、座席(観客席)が階段状に配置される。また、観客エリア320は、2層構造を有し、1階席エリア322及び2階席エリア324を有する。1階席エリア322及び2階席エリア324の間には、踊り場を構成する環状の通路326(以下、環状通路326と称する)が備えられる。1階席エリア322及び2階席エリア324は、それぞれ周方向に複数のブロックに区画される。1階席エリア322及び2階席エリア324は、ブロックごとに座席が配置される。座席は、各ブロックにおいて、規則的に配置される。各ブロックの間には、通路328(以下、ブロック間通路328と称する)が備えられる。ブロック間
通路328は、環状通路326に繋がる。ブロック間通路328には、幅方向の中央部分に手摺り328Aが備えられる(
図4参照)。手摺り328Aは、ブロック間
通路328を左右に分離する。手摺り328Aは、ブロック間
通路328に沿って一定の間隔で配置される。環状通路326には、外周エリア330に繋がる通路332(以下、連絡通路332と称する)の出入口332Xが、複数個所に備えられる。
【0029】
【0030】
外周エリア330は、環状のエリアとして、観客エリア320の外周に備えられる。外周エリア330には、その周囲4箇所にゲート334A~334Dが備えられる。観客は、いずれかのゲート334A~334Dを利用して、イベント会場300に入場する。イベント会場300に入場した観客は、外周エリア330から、いずれかの連絡通路332を通って観客エリア320に入る。また、観客エリア320では、環状通路326及びブロック間通路328を通って、各自の座席に着く。
【0031】
図2に示すように、本実施の形態の撮影装置10は、複数台のカメラ12を組み合わせて構成される。各カメラ12は、定位置で対象とする領域を撮影する。
図4は、各カメラの撮影範囲の設定の一例を示す図である。同図に示すように、隣接する領域を撮影するカメラ同士、その撮影範囲Wの一部が重複して設定される。これにより、観客エリア320を漏れなく撮影できる。
【0032】
各カメラ12は、撮影対象とするエリア内の観客の顔を撮影できる位置に設置される。また、各カメラ12は、撮影した画像から観客の表情を認識できる性能をもって構成される。すなわち、撮影した画像から観客の表情を認識するのに必要かつ十分な解像性能が備えられる。
【0033】
撮影装置10は、各カメラ12で撮影された画像を合成して、情報処理装置100に出力(送信を含む)する。すなわち、すべての観客エリア320が写された1枚の画像を生成して、情報処理装置100に出力する。なお、このように、画像を合成処理して出力する場合、撮影装置10には、合成処理部が備えられる。この場合、撮影装置10は、複数の撮影部(カメラ)、及び、各撮影部で撮影された画像を合成処理する合成処理部を備えて構成される。なお、合成処理は、撮影装置10とは別の装置で行う構成とすることもできる。たとえば、情報処理装置100で行う構成とすることもできる。
【0034】
[情報処理装置]
情報処理装置100は、撮影装置10で撮影された画像を処理して会場内の観客の移動経路を設定し、案内表示装置200に送信する。
【0035】
図5は、情報処理装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0036】
情報処理装置100は、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103、HDD(Hard Disk Drive)104、操作部(たとえば、キーボード、マウス、タッチパネル等)105、表示部(たとえば、液晶ディスプレイ(liquid crystal display;LCD)、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ(organic electro-luminescence display;OELD)等)106、画像入力部107及び通信部108等を備えたコンピュータで構成される。撮影装置10で撮影された画像は、画像入力部107を介して情報処理装置100に入力(受信を含む)される。情報処理装置100で移動経路の情報は、通信部108を介して案内表示装置200に送信される。
【0037】
図6は、情報処理装置が実現する機能のブロック図である。
【0038】
同図に示すように、情報処理装置100は、撮影装置10で撮影された画像を取得する画像取得部110、画像取得部110で取得された画像から人物を検出する人物検出部112、人物検出部112で検出された人物の状態を推定する推定部114、推定部114の推定結果に基づいて、会場内の各観客の状態を各観客の位置に応じてマップ上で表わしたマップデータを作成するマップデータ作成部116、マップデータに基づいて会場内の危険エリアを推定する危険エリア推定部118、危険エリア推定部118で推定された危険エリアの情報に基づいて、観客の移動経路を設定する移動経路設定部120、設定された移動経路の情報を案内表示装置200に送信する送信部122の機能を実現する。各機能は、プロセッサであるCPU101が、所定のプログラムを実行することにより実現される。
【0039】
画像取得部110は、画像入力部107を介して、撮影装置10から出力される画像(撮影画像)を情報処理装置100に取り込む。取り込まれた画像(撮影装置10による撮影画像)が、入力画像を構成する。
【0040】
人物検出部112は、入力画像から人物を検出する。具体的には、画像から人物の顔を検出して、人物を検出する。この種の技術は、公知の技術であるので、その具体的な手法についての説明は省略する。たとえば、機械学習、深層学習等により生成した画像認識モデルを用いて、画像から人物を検出する手法等を採用できる。人物は、位置(入力画像内での位置)が特定されて検出される。入力画像内での位置は、たとえば、入力画像に対して設定した座標で特定される。なお、本実施の形態の情報処理装置100において、入力画像は観客エリアを撮影した画像である。したがって、人物検出部112では、観客エリアにいる観客(人物)が検出される。
【0041】
推定部114は、人物検出部112で検出された人物(観客)の状態を当該人物の画像から推定する。本実施の形態では、人物の状態として、興奮の度合いを画像から推定する。興奮の度合いは、数値化されて推定される。興奮の度合いを数値化したものを興奮度と定義する。本実施の形態では、興奮度を次の手法で算出する。まず、人物の画像から当該人物の表情、顔の向き、及び、身体の動きの各項目を認識する。次に、あらかじめ定められた判定基準に従って認識された各事項に点数を付与する。判定基準は、各項目に関して、より興奮していると考えられる事項ほど高い点数が付与される構成を有する。最後に、付与された点数の合計を求める。求めた点数の合計が、当該人物の興奮度の推定結果となる。
【0042】
【0043】
同図に示すように、推定部114は、人物の画像から人物の顔の表情を認識する表情認識部114A、人物の画像から顔の向きを認識する向き認識部114B、人物の画像から身体の動きを認識する動き認識部114C、各認識部で認識された事項を採点する採点部114D、及び、採点結果を合計して興奮度を算出する興奮度算出部114Eの機能を有する。
【0044】
表情認識部114Aは、人物検出部112で検出された人物(観客)の画像、特に顔の部分の画像から当該人物の表情を認識する。本実施の形態では、あらかじめ定められた複数種類の表情の中から、もっともらしい1つを特定して、対象の表情を認識する。表情の種類は、感情を示す語によって表現できる。本実施形態では、表情を「喜び」、「怒り」、「嫌悪」、「驚き」、「恐れ」、「悲しみ」及び「真顔(無表情)」の7種類に分類し、もっともらしい1つを特定して、表情を認識する。画像から人物の表情を認識する技術は、公知の技術である。本実施の形態においても、公知の手法を採用して、画像から人物の表情を認識する。たとえば、機械学習、深層学習等により生成した画像認識モデルを用いて、画像から人物の表情を認識する手法等を採用できる。なお、上記のように、表情の種類は、感情を示す語によって表現できる。したがって、表情を認識することは、感情を認識することと同義である。
【0045】
向き認識部114Bは、人物検出部112で検出された人物(観客)の画像、特に顔の部分の画像から当該人物の顔の向きを認識する。すなわち、顔が向いている方向(正面、上、下、横、斜め上、斜め下)を認識する。本処理についても、公知の技術を採用できる。
【0046】
動き認識部114Cは、人物検出部112で検出された人物(観客)の画像から当該人物の身体の動きを認識する。本実施の形態では、あらかじめ定められた動きをしているか否かを認識する。たとえば、起立している、着席している、飛び跳ねている、手を上げている、手を叩いている等を認識する。本処理についても、公知の技術を採用できる。
【0047】
図8は、人物の検出から表情、顔の向き、及び、身体の動きの認識までの処理の概念図である。
【0048】
同図に示すように、撮影画像から人物(観客)が検出され、検出された人物の画像IPから当該人物の表情、顔の向き、及び、身体の動きが認識される。なお、同図において、符号IS1で示す画像は、撮影画像の一部を示す画像であり、符号IS2で示す画像は、画像IS1の一部(矩形の枠で囲んだ領域)を拡大した画像である。
【0049】
採点部114Dは、各認識部(表情認識部114A、向き認識部114B及び動き認識部114C)で認識された事項に対し、あらかじめ定められた判定基準に従って点数を付与して採点する。
【0050】
【0051】
同図に示すように、各認識部で認識される事項に対し、付与する点数が定められる。点数は、より興奮していると考えられる事項ほど高い点数が割り当てられる。判定基準の情報は、たとえば、ROM103、HDD104に格納される。採点部114Dは、この判定基準に従って、各認識部で認識された事項に対し、点数を付与する。たとえば、ある人物(観客)の「表情」の認識結果が「怒り」、「顔の向き」の認識結果が「正面」、「身体の動き」の認識結果が「飛び跳ねている」の場合、「表情」の項目に付与する点数が5点(怒り)、「顔の向き」の項目に付与する点数が5点(正面)、「身体の動き」の項目に付与する点数が5点(飛び跳ねている)となる。また、たとえば、ある人物(観客)の「表情」の認識結果が「悲しみ」、「顔の向き」の認識結果が「下」、「身体の動き」の認識結果が「着席」の場合、「表情」の項目に付与する点数が1点(悲しみ)、「顔の向き」の項目に付与する点数が1点(下)、「身体の動き」の項目に付与する点数が1点(着席)となる。
【0052】
興奮度算出部114Eは、採点部114Dで付与された点数を合計して、興奮度を算出する。たとえば、ある人物(観客)に対し、「表情」の項目に5点、「顔の向き」の項目に5点、及び、「身体の動き」の項目に5点が付与されている場合、当該人物の興奮度は15(=5+5+5)と算出される。
【0053】
興奮度算出部114Eで算出された興奮度が、人物の状態の推定結果として、マップデータ作成部116に加えられる。各観客の興奮度の情報は、各観客の位置の情報に関連付けられて、マップデータ作成部116に加えられる。
【0054】
マップデータ作成部116は、推定部114の推定結果に基づいて、会場内の各観客の興奮度(観客の状態)を各観客の位置に応じてマップ上で表わしたマップデータを作成する。マップは、イベント会場のマップである。上記のように、各観客は、撮影画像内での位置が特定された状態で興奮度が求められる。マップデータ作成部116は、各観客の撮影画像内での位置をマップ上での位置に変換して、各観客のマップ上での位置を特定する。位置の変換は、たとえば、変換式等を利用して行う。変換式等は、あらかじめ撮影画像とマップとの関係を求めて生成する。生成した変換式等は、HDD104に格納される。マップ上での位置は、たとえば、マップ上に設定した座標で特定される。この場合、撮影画像内での各観客の座標位置が、マップ上での座標位置に変換される。
【0055】
マップデータについては、各観客の興奮度を色又は濃淡で表現することにより可視化できる。すなわち、マップの画像上で、各観客の興奮度を、興奮度の数値に応じて色又は濃淡で表現することにより可視化できる(いわゆるヒートマップ)。
【0056】
図10は、可視化したマップデータの一例を示す図である。なお、同図は、可視化したマップデータ(マップの画像)の一部を表わす図である。
【0057】
同図に示す例では、観客の位置をマップの画像MI上にドット(円形の点)dpで示している。ドットdpの位置は、撮影画像内での観客の位置に対応している。観客の位置は、おおよそ座席の位置に一致する。また、観客の位置を示すドットdpは、観客の興奮度に応じた濃度で表示される。
図11は、興奮度とドットの表示濃度の関係を示す図である。ドットdpは、興奮度の数値が高いほど濃い濃度で表示される。したがって、濃い濃度のドットdpで表示されている観客ほど興奮度が高い観客である。
図10に示す例からは、図中左斜め上のブロックに興奮度の高い観客が集中していることが分かる。
【0058】
危険エリア推定部118は、マップデータ作成部116で作成されたマップデータに基づいて、会場内の危険エリアを推定する。危険エリアとは、観客エリア320において、危険と推定されるエリアである。本実施の形態では、興奮度が高い観客が一定数以上いるエリアが危険エリアとされる。危険エリアは、第1エリアの一例である。また、危険エリア推定部118は、第1エリア推定部の一例である。
【0059】
危険エリアの推定は、たとえば、次のように行われる。観客エリア320を複数の部分エリアに分割する。分割した部分エリアごとに興奮度が第1閾値以上の観客の数をカウントする。すべての部分エリアについて、興奮度が第1閾値以上の観客の数をカウントしたのち、興奮度が第1閾値以上の観客の数が第2閾値以上の部分エリアを抽出する。抽出した部分エリアを危険エリアと推定する。
【0060】
図12は、観客エリアの分割の一例を示す図である。同図に示す例では、おおよそすべての座席のブロックを周方向(座席の横の並びの方向)に二等分割して、観客エリア320を複数の部分エリアBAに分割している。
【0061】
図13は、危険エリア推定部が有する機能のブロック図である。
【0062】
同図に示すように、危険エリア推定部118は、部分エリアごとに興奮度が第1閾値以上の人物(観客)の数をカウントするカウント部118A、及び、興奮度が第1閾値以上の人物(観客)の数が第2閾値以上の部分エリアを危険エリアとして抽出する危険エリア抽出部118Bを有する。
【0063】
カウント部118Aは、観客エリア320の分割情報に基づいて、部分エリアごとに興奮度が第1閾値以上の人物(観客)の数をカウントする。分割情報は、観客エリア320の分割の仕方を示す情報である。観客エリア320の分割情報及び第1閾値は、たとえば、ROM103、HDD104に格納される。
【0064】
図14は、ある部分エリアにおける各観客の興奮度の一例を示す図である。この例では第1閾値
を11としている。この場合、興奮度が11以上の観客の数がカウントされる。
図14に示す例では15人である。
【0065】
危険エリア抽出部118Bは、カウント部118Aによるカウント結果に基づいて、興奮度が第1閾値以上の人物(観客)の数が第2閾値以上の部分エリアを抽出する。危険エリア抽出部118Bは、抽出部の一例である。第2閾値については、各部分エリアについて共通の値とすることもできるし、部分エリアごとに定めることもできる。たとえば、部分エリアごとに構成人数(座席がある場合は座席の数)が異なる場合は、部分エリアごとに第2閾値を設定できる。この場合、たとえば、構成人数に対して、あらかじめ定めた比率の人数を第2閾値とすることができる。第2閾値は、たとえば、ROM103、HDD104に格納される。
【0066】
図15は、カウント部によるカウント結果の一例を示す図である。同図において、各部分エリア内の数値は、各部分エリアにおいて、興奮度が第1閾値以上の人物(観客)の数である。各部分エリアにおいて、第2閾値を一律に20人とする。
図15に示す例では、白抜きの数字で示された3つの部分エリアが、危険エリアとして抽出される。
【0067】
移動経路設定部120は、危険エリア推定部118で推定された危険エリアの情報に基づいて、観客の移動経路を設定する。本実施の形態の情報処理装置100では、移動経路として、観客エリア320内の観客を外周エリア330に誘導する経路を設定する。移動経路設定部120は、危険エリアの観客と、危険エリア以外のエリア(非危険エリア)の観客を分けて移動経路を設定する。非危険エリアは、観客エリア320において、危険エリアを除いたエリアである。非危険エリアは、第2エリアの一例である。
【0068】
上記のように、観客は、連絡通路332を通って観客エリア320と外周エリア330との間を行き来する。したがって、移動経路設定部120は、危険エリア及び非危険エリアの観客を連絡通路332に導く経路(移動経路)を設定する。経路を設定する際、移動経路設定部120は、危険エリアの観客の経路と非危険エリアの観客の経路とが、交わらないように設定する。本実施の形態では、次のように、各エリアの経路を設定して、危険エリアの観客の経路と非危険エリアの観客の経路とが交わらないように設定する。
【0069】
まず、観客エリア320内に危険エリアがない場合の移動経路の設定方法について説明する。
【0070】
図16は、観客エリア内に危険エリアがない場合の移動経路の設定の一例を示す図である。
【0071】
同図において、矢印で示す経路R1が、各部分エリアBA1~BA12に設定される移動経路である。この場合、各部分エリアBA1~BA12から最寄りの連絡通路332への最短経路が、各部分エリアBA1~B
A12の移動経路に設定される。たとえば、
図16において、第1の部分エリアBA1については、第1の連絡通路332Aが最寄りの連絡通路となるので、第1の連絡通路332Aへの最短経路が、移動経路として設定される。
【0072】
次に、観客エリア320内に危険エリアがある場合の移動経路の設定方法について説明する。
【0073】
図17は、観客エリア内に危険エリアがある場合の移動経路の設定の一例を示す図である。同図は、第4の部分エリアBA4が危険エリアと推定された場合の例を示している。
【0074】
まず、各部分エリアBA1~BA12から最寄りの連絡通路を特定する。特定した連絡通路への最短経路を各部分エリアBA1~B
A12の移動経路に設定(仮設定)する。次に、危険エリア以外の部分エリア(非危険エリア)であって、危険エリアと同じ連絡通路を使用する部分エリアを抽出する。
図17に示す例では、図中の第3の部分エリアBA3、第9の部分エリアBA9及び第10の部分エリアBA10が、危険エリアである第4の部分エリアBA4と同じ連絡通路(第2の連絡通路332B)を使用する部分エリアとなる。次に、危険エリアと同じ連絡通路を使用する部分エリアの移動経路を再設定する。この際、危険エリアと異なる連絡通路に導く経路を設定する。具体的には、次に最寄りの連絡通路を検索し、検索された連絡通路への最短経路を移動経路に設定する。たとえば、
図17に示す例において、第3の部分エリアBA3は、第1の連絡通路332Aが、次に最寄りの連絡通路となるので、第1の連絡通路332Aへの最短経路が、第3の部分エリアBA3の移動経路に設定される。同様に、第9の部分エリアBA9は、第1の連絡通路332Aが、次に最寄りの連絡通路となるので、第1の連絡通路332Aへの最短経路が、第9の部分エリアBA9の移動経路に設定される。また、第10の部分エリアBA10は、第3の連絡通路332Cが、次に最寄りの連絡通路となるので、第3の連絡通路332Cへの最短経路が、第10の部分エリアBA10の移動経路に設定される。このように設定することにより、危険エリアを避けて、非危険エリアの観客の移動経路を設定できる。すなわち、非危険エリアの観客に対して、安全性の高い移動経路を設定できる。
【0075】
なお、次に最寄りの連絡通路も危険エリアの観客と同じ連絡通路になる事態も想定される。この場合、その次に最寄りの連絡通路への最短経路が移動経路として設定される。しかし、このように設定すると、極端に離れた連絡通路に導く移動経路が設定される場合がある。あらかじめ定めた距離の範囲内(閾値以内)で適切な連絡通路(危険エリアの観客と同じにならない連絡通路)を発見(検索)できない場合は、最寄りの連絡通路への最短経路を移動経路として設定する。
【0076】
図6に示すように、送信部122は、通信部108を介して移動経路の情報を案内表示装置200に送信する。なお、後述するように、案内表示装置200は、部分エリアごとに備えられる。したがって、対応する部分エリアの移動経路の情報のみを各案内表示装置200に個別に送信する構成とすることもできる。あるいは、全観客エリアの移動経路の情報を一律に各案内表示装置200に送信する構成とすることもできる。
【0077】
[案内表示装置]
図1に示すように、案内表示装置200は、情報処理装置100から送信される移動経路の情報を受信し、受信した移動経路の情報に基づいて、経路の案内情報を生成し、かつ、表示する。案内表示装置200は、提示
装置の一例である。案内表示装置200は、会場内の複数個所に設置される。
【0078】
図18は、案内表示装置の設置位置の一例を示す図である。
【0079】
同図に示すように、本実施の形態の誘導システム1では、環状通路326とブロック間通路328とが交差する地点に案内表示装置200が設置される。案内表示装置200は、部分エリアごとに備えられる。
図18に示す例では、環状通路326を挟んで向かい側に配置される案内表示装置200が、各部分エリアの案内表示装置200となる。たとえば、
図18において、符号BAiで示す部分エリアは、符号200iで示す案内表示装置が、対応する案内表示装置となる。
【0080】
図19は、案内表示装置の構成を示すブロック図である。
【0081】
案内表示装置200は、ディスプレイ210、及び、そのディスプレイ210の表示を制御する表示制御ユニット220を備える。
【0082】
ディスプレイ210は、案内情報の表示部である。ディスプレイ210は、たとえば、LCD、OELD等で構成される。
【0083】
表示制御ユニット220は、情報処理装置100から送信される移動経路の情報を受信する。また、受信した移動経路の情報に基づいて、案内情報を生成し、ディスプレイ210に表示させる。表示制御ユニット220は、情報処理装置100との間で通信する機能を備えたコンピュータで構成される。
【0084】
図20は、表示制御ユニットが有する機能のブロック図である。
【0085】
同図に示すように、表示制御ユニット220は、移動経路情報受信部220A、案内情報生成部220B及び表示制御部220Cの機能を有する。これらの機能は、コンピュータを構成するCPUが、所定のプログラムを実行することにより実現される。
【0086】
移動経路情報受信部220Aは、情報処理装置100から送信される移動経路の情報を受信する。なお、情報処理装置100と案内表示装置200との間の通信の形式は、特に限定されない。
【0087】
案内情報生成部220Bは、受信した移動経路の情報に基づいて、案内情報を生成する。案内情報は、少なくとも対応する部分エリアの案内情報を生成する。
【0088】
表示制御部220Cは、生成された案内情報をディスプレイ210に表示させる。
【0089】
図21は、ディスプレイに表示する案内情報の一例を示す図である。
【0090】
同図に示す例では、現在地(案内表示装置200が設置された地点)の周辺地
図In1、及び、進行方向を示す矢印In2を表示した画像Inを案内情報として表示している。周辺地
図In1には、設定された移動経路が矢印で表示される。
【0091】
[誘導システムの動作]
図22は、本実施の形態の誘導システムの処理の流れを示すフローチャートである。
【0092】
[撮影装置での処理]
まず、イベント会場に設置された撮影装置10で撮影が行われる(ステップS11)。撮影装置10で撮影された画像(撮影画像)は、情報処理装置100に出力される(ステップS12)。この画像は、観客エリアが写された画像である。
【0093】
[情報処理装置での処理]
情報処理装置100は、撮影装置10から出力される画像(撮影画像)を入力する(ステップS21)。情報処理装置100は、入力した撮影画像(入力画像)に基づいて、観客の移動経路を設定する。移動経路の設定は次の手順で行われる。
【0094】
まず、撮影画像から観客エリア内の人物(観客)が検出される(ステップS22)。人物は画像内での位置が特定されて検出される。
【0095】
次に、検出された人物の興奮度(人物の状態)が推定される(ステップS23)。興奮度は画像から推定される。具体的には、画像から顔の表情、顔の向き及び身体の動きが認識され、その認識結果に基づいて推定される。興奮度は、数値化されて推定される。
【0096】
すべての人物(観客)の興奮度が推定(算出)されると、次に、興奮度のマップデータが作成される(ステップS24)。マップデータは、各観客の興奮度を撮影画像内での各観客の位置に応じて会場のマップ上で表わしたデータである。
【0097】
マップデータが作成されると、次に、作成されたマップデータに基づいて、危険エリアが推定される(ステップS25)。危険エリアは、次の手順で推定される。まず、部分エリアごとに興奮度が第1閾値以上の観客の数をカウントする。部分エリアは、観客エリアを複数に分割して設定される。次に、興奮度が第1閾値以上の観客の数が第2閾値以上の部分エリアを抽出する。抽出した部分エリアが危険エリアとされる。
【0098】
危険エリアの推定処理が完了すると、その推定結果に基づいて、観客の移動経路が設定される(ステップS26)。移動経路は、部分エリアごとに設定される。移動経路は、危険エリアがある場合と、ない場合とで異なる経路が設定される。観客エリア内に危険エリアがない場合、各部分エリアから最寄りの連絡通路への最短経路が、各部分エリアの移動経路として設定される。一方、観客エリア内に危険エリアがある場合、危険エリアを避けて、非危険エリア(危険エリア以外の部分エリア)の移動経路が設定される。具体的には、次のように設定される。すなわち、まず、各部分エリアBA1~BA12から最寄りの連絡通路を特定する。特定した連絡通路への最短経路を各部分エリアBA1~BA12の移動経路に設定(仮設定)する。次に、危険エリアと同じ連絡通路を使用する部分エリア(非危険エリア)を抽出する。次に、危険エリア以外の部分エリア(非危険エリア)であって、危険エリアと同じ連絡通路を使用する部分エリアの移動経路を変更(再設定)する。すなわち、危険エリアの観客と異なる連絡通路を使用する経路を設定する。具体的には、次に最寄りの連絡通路を検索し、検索された連絡通路への最短経路を移動経路に設定する。ただし、あらかじめ定めた距離の範囲内で適切な連絡通路を検索できない場合は、最寄りの連絡通路への最短経路を移動経路として設定してもよい。
【0099】
各部分エリア(危険エリア及び非危険エリア)について、移動経路の設定が完了すると、設定された移動経路の情報が、案内表示装置200に送信される(ステップS27)。
【0100】
なお、情報処理装置100で行う処理、すなわち、画像から移動経路を設定する処理は、連続的に行う構成としてもよいし、また、あらかじめ定めた時間間隔で行う構成(インターバルをもって行う構成)としてもよい。連続的に行う場合、撮影装置10は、たとえば、観客エリアの画像を動画像として撮影する。情報処理装置100は、動画像として入力される画像をフレーム単位で処理して、移動経路を設定する。なお、あらかじめ定めた時間間隔で処理する場合も、動画像を入力して処理する構成とすることができる。この場合、あらかじめ定めたフレーム間隔で動画像を処理して、移動経路を設定する。
【0101】
[案内表示装置での処理]
案内表示装置200は、情報処理装置100から送信される移動経路の情報を受信する(ステップS31)。案内表示装置200は、受信した移動経路の情報に基づいて、案内情報を生成する(ステップS32)。案内表示装置200は、生成した案内情報をディスプレイ210に表示させる(ステップS33)。
【0102】
避難、退出等する場合、観客は、案内表示装置200のディスプレイ210に表示された案内情報に従って会場内を移動する。
【0103】
以上説明したように、本実施の形態の誘導システム1によれば、危険エリアの観客と非危険エリアの観客を分けて誘導できる。これにより、会場の状況に応じて、適切に観客を誘導できる。特に、非危険エリアの観客に対し、安全性の高い経路で誘導できる。また、経路が分けられている理由については秘匿されるので、危険エリアの観客に反発感情が生じる恐れもない。
【0104】
また、本実施の形態の誘導システム1では、各観客の状態(興奮度)を各観客の位置に応じてマップ上で表わしたマップデータを作成するので、会場の状況を的確に把握できる。また、観客の状態は、興奮度として、数値化して表わされるので、危険エリアを自動的に抽出できる。
【0105】
[第2の実施の形態]
本実施の形態の誘導システムでは、情報処理装置において、各人物(観客)の興奮度の情報を経時的に記録する。また、情報処理装置でマップデータを作成する際に、各人物の興奮度の履歴に基づいて、マップデータを作成する。
【0106】
情報処理装置以外の構成は、上記第1の実施の形態の誘導システムと同じである。したがって、以下においては、情報処理装置の構成についてのみ説明する。
【0107】
[情報処理装置の構成]
図23は、本実施の形態の情報処理装置が実現する機能のブロック図である。
【0108】
同図に示すように、本実施の形態の情報処理装置100は、興奮度記録部124及び最大値検出部126を更に有する点で上記第1の実施の形態の情報処理装置と相違する。したがって、以下においては、第1の実施の形態の情報処理装置との相違点についてのみ説明する。
【0109】
興奮度記録部124及び最大値検出部126の機能は、情報処理装置100を構成するコンピュータのCPUが、所定のプログラムを実行することにより実現される。
【0110】
興奮度記録部124は、推定部114で推定された各観客の興奮度を経時的に記録する。本実施の形態では、HDD104に記録する。
【0111】
最大値検出部126は、HDD104に経時的に記録された各観客の興奮度の履歴から各観客の興奮度の最大値(検出時点までの履歴での最大値)を検出する。
【0112】
マップデータ作成部116は、最大値検出部126で検出された興奮度の最大値を用いて、マップデータを作成する。
【0113】
[情報処理装置の動作]
本実施の形態の情報処理装置100は、あらかじめ定められたタイミングで移動経路の設定処理を行う。具体的には、避難誘導する場合、観客が一斉退出する場合等である。
【0114】
図24は、情報処理装置で行われる処理の手順を示すフローチャートである。
【0115】
まず、撮影画像が入力される(ステップS41)。入力される撮影画像は、動画像(一定の時間間隔で連続的に撮影された静止画像を含む)である。次に、入力された画像(1フレームの画像)から人物(観客)が検出される(ステップS42)。次に、検出された各人物(観客)の興奮度が推定される(ステップS43)。次に、推定された各人物(観客)の興奮度がHDD104に記録される(ステップS44)。次に、移動経路の設定の要否が判定される(ステップS45)。すなわち、移動経路を設定するタイミングか否かが判定される。移動経路を設定しない場合は、ステップS41に戻り、次のフレームの画像が処理される。一方、移動経路を設定する場合は、HDD104に記録された各観客の興奮度の履歴から各観客の興奮度の最大値が検出される(ステップS46)。次に、検出された各観客の興奮度の最大値の情報を利用して、マップデータが作成される(ステップS47)。次に、作成されたマップデータに基づいて、危険エリアが推定される(ステップS48)。次に、推定された危険エリアの情報に基づいて、移動経路が設定される(ステップS49)。次に、設定された移動経路の情報が、案内表示装置200に送信される(ステップS50)。
【0116】
このように、本実施の形態の情報処理装置100では、各観客の興奮度の履歴を記録し、記録した履歴に基づいてマップデータを作成する。これにより、過去の履歴から潜在している危険エリアを抽出できる。
【0117】
なお、本実施の形態では、履歴から最大値を求め、マップデータを作成する構成としているが、履歴の利用形態は、これに限定されるものではない。この他、たとえば、各観客の興奮度の履歴から各観客の興奮度の平均値を求め、求めた興奮度の平均値でマップデータを作成する構成としてもよい。また、閾値以上の興奮度となった回数を求め、求めた回数でマップデータを作成する構成としてもよい。
【0118】
[変形例]
[人物の状態を推定する方法の変形例]
上記実施の形態では、人物の状態を興奮の度合いで特定しているが、人物の状態を特定する方法は、これに限定されるものでない。たとえば、特定の感情の度合い(怒りの感情の度合い、喜びの感情の度合い、恐怖の感情の度合い等)で人物の状態を特定することもできる。
【0119】
また、人物の状態を推定する場合、上記実施の形態では、人物の顔の表情、顔の向き及び身体の動きを認識し、その認識結果に基づいて、人物の状態を推定する構成としているが、いずれか一つの情報を利用して、推定する構成としてもよい。たとえば、人物の顔の表情のみを認識し、その表情の認識結果のみを利用して、人物の状態を推定する構成としてもよい。あるいは、人物の身体の動きのみを認識し、その身体の動きの認識結果のみを利用して、人物の状態を推定する構成としてもよい。
【0120】
また、上記実施の形態では、表情を認識する際、あらかじめ定められた複数種類の表情の中から、もっともらしい1つを特定する構成としているが、表情を認識する手法は、これに限定されるものではない。たとえば、表情を複数種類に分類し(たとえば、「喜び」、「怒り」、「嫌悪」、「驚き」、「恐れ」、「悲しみ」及び「真顔(無表情)」等)、各表情の度合い(表情らしさ)を求めて、表情を認識する手法等を採用することができる。
【0121】
[判定基準の変形例]
上記実施の形態では、人物の状態(興奮度)を推定する際、あらかじめ定められた判定基準に従って点数を付与している。判定基準そのものを相対的に設定する構成とすることもできる。たとえば、顔の表情の判定基準であれば、認識された顔全体の各表情の累計値から判定基準を定めてもよい。これにより、イベントの種類等に応じて能動的に判定基準を設定できる。
【0122】
[観客エリアの分割の変形例]
観客エリアの分割(部分エリアへの分割)は、会場の規模、座席の配列、会場内の通路の配置、出入口の数等を考慮して、適宜設定することが好ましい。
【0123】
[マップデータの出力]
マップデータについては、可視化して出力できる構成としてもよい。この場合、情報処理装置には、マップデータの可視化処理部の機能が更に備えられる。可視化したマップデータ(いわゆるヒートマップ、
図10参照)は、情報処理装置100の表示部106に表示させたり、更に別の表示装置(表示部の他の一例)に表示させたりする構成にできる。更に、プリンタ(出力部の一例)でプリント出力させる構成とすることもできる。
【0124】
マップデータと同様に、移動経路の情報についても、情報処理装置100の表示部106に表示させたり、プリンタからプリント出力させたりする構成にできる。
【0125】
このように、マップデータを可視化したデータ及び移動経路の情報を出力することにより、人(警備員等)が観客を誘導する場合等の便宜を図ることができる。
【0126】
[移動経路の設定方法の変形例]
移動経路を設定する方法は、上記実施の形態で説明した方法に限定されない。たとえば、機械学習、深層学習等により生成した学習済みモデルを用いて、危険エリアの情報から各部分エリアの移動経路を設定する手法等を採用することもできる。
【0127】
[移動経路の情報の提示方法の他の例]
上記実施の形態では、会場内に設置した案内表示装置200を用いて、移動経路の情報及び移動経路の情報に基づく案内情報を提示する構成としているが、移動経路の情報等の提示方法は、これに限定されるものではない。
【0128】
図25は、案内情報の提示方法の他の一例を示す図である。同図に示す例では、プロジェクタ400を用いて、案内情報を観客に提示する構成としている。プロジェクタ400は、通路に進行方向を示す矢印を投影して、案内情報を提示する。
【0129】
図26は、案内情報の提示方法の他の一例を示す図である。同図は、物理的表示により、案内情報を提示する例を示している。同図に示す例では、可動式の看板500を用いて、案内情報を提示している。同図に示す看板500は、キャスターを備えた可動式の看板であり、進行方向を示す矢印を表示して、案内情報を提示している。
【0130】
これらの手法を用いることにより、観客に特別な装置(携帯端末等)を持たせることなく、移動経路の情報を提示できる。
【0131】
なお、観客に特別な装置(たとえば、スマートフォン、タブレット端末等の携帯端末、スマートグラス、スマートウォッチ等のウェアラブルコンピュータ、及び、パーソナルコンピュータ等)を持たせて、移動経路等の情報を提示する構成とすることもできる。たとえば、観客が所有する携帯端末及びウェアラブルコンピュータ等に移動経路の情報を送信し、その画面等に文字、画像として、移動経路の情報を提示できる。この場合、各観客の位置の情報(たとえば、座席位置の情報)を管理し、各観客の位置に応じた移動経路の情報を送信する。すなわち、観客がいる部分エリアの移動経路の情報を送信する。観客の位置の情報は、観客が保有する携帯端末の情報と関連付けて管理する。この関連付けは、たとえば、チケットを購入する際に行う。あるいは、事後的に各観客が自身の携帯端末の情報(電話番号、メールアドレス等)を登録することで行う。管理は、たとえば、サーバで行う。サーバは、情報処理装置から移動経路の情報を受信して、案内情報等を生成し、各観客の携帯端末に送信する。
【0132】
[情報処理装置の構成の変形例]
情報処理装置の一部又は全部の機能は、各種のプロセッサ(processor)で実現できる。各種のプロセッサには、プログラムを実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPU(Central Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などの製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路などが含まれる。プログラムは、ソフトウェアと同義である。
【0133】
1つの処理部は、これら各種のプロセッサのうちの1つで構成されていてもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサで構成されてもよい。たとえば、1つの処理部は、複数のFPGA、或いは、CPUとFPGAの組み合わせによって構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、1つ以上のCPUとソフトウェアの組合せで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)などに代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサを1つ以上用いて構成される。
【符号の説明】
【0134】
1 誘導システム
10 撮影装置
12 カメラ
100 情報処理装置
101 CPU
103 ROM
104 HDD
105 操作部
106 表示部
107 画像入力部
108 通信部
110 画像取得部
112 人物検出部
114 推定部
114A 表情認識部
114B 向き認識部
114C 動き認識部
114D 採点部
114E 興奮度算出部
116 マップデータ作成部
118 危険エリア推定部
118A カウント部
118B 危険エリア抽出部
120 移動経路設定部
122 送信部
124 興奮度記録部
126 最大値検出部
200 案内表示装置
210 ディスプレイ
220 表示制御ユニット
220A 移動経路情報受信部
220B 案内情報生成部
220C 表示制御部
300 イベント会場
310 グラウンド
320 観客エリア
322 1階席エリア
324 2階席エリア
326 通路(環状通路)
328 通路(ブロック間通路)
328A 手摺り
330 外周エリア
332 通路(連絡通路)
332A~332C 連絡通路
332X 連絡通路の出入口
334A ゲート
334B ゲート
334C ゲート
334D ゲート
400 プロジェクタ
500 看板
BA 部分エリア
BA1~BA12 部分エリア
IP 人物の画像
IS1 撮影画像の一部
In 案内情報の画像
In1 周辺地図
In2 進行方向を示す矢印
MI マップの画像
R1 移動経路
W 撮影範囲
dp ドット
S11~S12 撮影装置での処理の手順
S21~S27 情報処理装置での処理の手順
S31~S33 案内表示装置での処理の手順
S41~S50 情報処理装置での処理の手順