IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人東京農工大学の特許一覧

<>
  • 特許-プラズマアクチュエータ 図1
  • 特許-プラズマアクチュエータ 図2
  • 特許-プラズマアクチュエータ 図3
  • 特許-プラズマアクチュエータ 図4
  • 特許-プラズマアクチュエータ 図5
  • 特許-プラズマアクチュエータ 図6
  • 特許-プラズマアクチュエータ 図7
  • 特許-プラズマアクチュエータ 図8
  • 特許-プラズマアクチュエータ 図9
  • 特許-プラズマアクチュエータ 図10
  • 特許-プラズマアクチュエータ 図11
  • 特許-プラズマアクチュエータ 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】プラズマアクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/24 20060101AFI20221213BHJP
   F15D 1/12 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
H05H1/24
F15D1/12
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019113636
(22)【出願日】2019-06-19
(65)【公開番号】P2020205215
(43)【公開日】2020-12-24
【審査請求日】2022-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】504132881
【氏名又は名称】国立大学法人東京農工大学
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】西田 浩之
(72)【発明者】
【氏名】中野 朝
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-49428(JP,A)
【文献】特開2008-270110(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/24
F15D 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略板状に形成された誘電体と、
前記誘電体の上面側かつ面内方向の一端部側に当該面内方向に沿って接触配置されると共に略板状に形成された露出電極と、
前記誘電体の下面側かつ面内方向の前記一端部側とは反対側の他端部側に当該面内方向に沿って接触配置されると共に略板状に形成され、前記誘電体との接触部分以外の部分が被覆された被覆電極と、
前記露出電極の面内方向の前記他端部側の端部に厚さ方向に貫通形成されると共に、前記露出電極と前記被覆電極とに接続された交流電源から前記露出電極に交流電圧が印加されることによりプラズマを発生可能な貫通孔と、
を備えたプラズマアクチュエータ。
【請求項2】
前記貫通孔は、前記露出電極の下面側から厚さ方向に沿って上面側へ向かうに従って前記誘電体の面内方向の前記他端部側へ向けて傾斜された請求項1に記載のプラズマアクチュエータ。
【請求項3】
前記貫通孔は、内周形状が略円筒状に形成された請求項1又は請求項2に記載のプラズマアクチュエータ。
【請求項4】
前記貫通孔は、内周形状が略三角柱状に形成された請求項1又は請求項2に記載のプラズマアクチュエータ。
【請求項5】
前記貫通孔は、前記誘電体の面内方向に沿って平面視でスリット状に形成された請求項1又は請求項2に記載のプラズマアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、表面側電極板のプラズマを発生させる側の端部に沿って山形状の頂部が規則的に形成されたプラズマアクチュエータが開示されている。これにより、発生させたプラズマから空気に与える運動エネルギを大きくすることができるためプラズマアクチュエータにより誘起される空気の流れを高速にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-9796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたプラズマアクチュエータを、例えば、高速で運行する鉄道や自動車の車両外側に設けた場合、プラズマアクチュエータが誘起できる空気の流速は、これらの車両が走行することにより生じる空気の流速に比べて遅くなる。ここで、プラズマアクチュエータにより誘起できる空気の流れを高速にするためには、プラズマアクチュエータへの印加電圧を高電圧化することが考えられるが、アクチュエータ自身の破損や設置対象である鉄道や自動車等を破損させる可能性がある。以上から、印加電圧に超高電圧を使用することなくプラズマアクチュエータにより誘起できる空気流の流速を高速にする上で改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮し、印加電圧に超高電圧を使用することなくより高速の空気流を誘起することができるプラズマアクチュエータを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載のプラズマアクチュエータは、略板状に形成された誘電体と、前記誘電体の上面側かつ面内方向の一端部側に当該面内方向に沿って接触配置されると共に略板状に形成された露出電極と、前記誘電体の下面側かつ面内方向の前記一端部側とは反対側の他端部側に当該面内方向に沿って接触配置されると共に略板状に形成され、前記誘電体との接触部分以外の部分が被覆された被覆電極と、前記露出電極の面内方向の前記他端部側の端部に厚さ方向に貫通形成されると共に、前記露出電極と前記被覆電極とに接続された交流電源から前記露出電極に交流電圧が印加されることによりプラズマを発生可能な貫通孔と、を備える。
【0007】
請求項1に記載のプラズマアクチュエータによれば、誘電体の上面側に接触配置された露出電極と誘電体の下面側に接触配置された被覆電極とに接続された交流電源から露出電極に電圧が印加されることにより放電を生じさせることができる。放電が生じることにより、露出電極近傍の気体が電離してプラズマが発生する。プラズマは、電子、正イオン及び負イオンの荷電粒子により構成される。ここで、交流電圧が印加された露出電極が正極として作用する場合は、電子と負イオンは印加された電場から受ける静電気力により露出電極へ向けて引き寄せられる。引き寄せられた電子と負イオンは、露出電極と衝突することで消失する。正イオンは、静電気力を受けて気体中に拡がりながら被覆電極が配置されている誘電体の面内方向に沿ってその他端部側へ向けて移動するため、気体中には正イオンが過剰な状態が作り出される。これらの正イオンは、誘電体の面内方向の他端部側へ向けて移動する過程で粒子同士の衝突により正イオンが保持する運動量を電気的に中性な空気分子へ伝達する。このように運動量が伝達されることは、気体に対して体積力が作用することと同じ作用効果となる。これにより、空気が誘電体の面内方向の一端部側から面内方向の他端部側へ向けて加速される。また、交流電圧が印加された露出電極が負極として作用する場合は、正イオンと負イオンの挙動が逆転し、負イオンが保持する運動量を電気的に中性な空気分子へ伝達する。このため、交流電圧が印加された露出電極が負極として作用する場合においても、空気が誘電体の面内方向の一端部側から面内方向他端部側へ向けて加速される。
【0008】
さらに、請求項1に記載のプラズマアクチュエータによれば、誘電体の上面側に接触配置された露出電極の面内方向の他端部側における端部には、露出電極の厚さ方向に貫通形成された貫通孔が備えられている。貫通孔においても、露出電極に交流電圧が印加されることにより貫通孔の内周部近傍の気体が電離してプラズマが発生する。交流電圧が印加された露出電極が正極として作用する場合は、露出電極へ引き寄せられない正イオンは、貫通孔の軸中心へ向けて移動すると共に、貫通孔の軸方向に沿って露出電極の上方側へ移動する。また、この場合における電場は、プラズマアクチュエータの側面視で露出電極から被覆電極へ向けて露出電極の上方側に凸の放物線状に形成される。このため、貫通孔の軸方向に沿って露出電極の上方側へ移動した正イオンにより電場の露出電極の上方側の領域が拡大される。これにより、正イオンから空気に与えられる体積力が増加すると共に、露出電極が配置された誘電体の面内方向の一端部側から面内方向の他端部側へ向けて高速の空気流を誘起することができる。
【0009】
請求項2に記載のプラズマアクチュエータは、請求項1に記載のプラズマアクチュエータにおいて、前記貫通孔は、前記露出電極の下面側から厚さ方向に沿って上面側へ向かうに従って前記誘電体の面内方向の前記他端部側へ向けて傾斜されている。
【0010】
請求項2に記載のプラズマアクチュエータによれば、交流電圧が印加された露出電極が正極として作用する場合は、露出電極へ引き寄せられない正イオンは、貫通孔の軸中心へ向けて移動すると共に、貫通孔の軸方向に沿って露出電極の上方側かつ誘電体の面内方向の他端部側へ向けて移動する。これにより、正イオンから空気に与えられる体積力のうち誘電体の面内方向成分を増加させることができるため、誘起される空気流の流速のうち誘電体の面内方向成分を増加させることができる。
【0011】
請求項3に記載のプラズマアクチュエータは、請求項1又は請求項2に記載のプラズマアクチュエータにおいて、前記貫通孔は、内周形状が略円筒状に形成されている。
【0012】
請求項3に記載のプラズマアクチュエータによれば、貫通孔は、内周形状が略円筒状に形成されている。このため、交流電圧が印加された露出電極が正極として作用する場合は、正イオンを略円筒状に形成された貫通孔の軸中心へ集中させやすくなると共に、貫通孔の軸方向に沿って露出電極の上方側へ向けて効率的に移動させることができる。これにより、電場の露出電極の上方側の領域を拡大することができるため、誘電体の面内方向の一端部側から面内方向の他端部側へ向けて高速の空気流を効果的に誘起することができる。
【0013】
請求項4に記載のプラズマアクチュエータは、請求項1又は請求項2に記載のプラズマアクチュエータにおいて、前記貫通孔は、内周形状が略三角柱状に形成されている。
【0014】
請求項4に記載のプラズマアクチュエータによれば、貫通孔の略三角柱形状の各角部において電界集中により強電界が形成されるため、プラズマの発生を増加させることができる。これにより、空気分子に効率的に体積力を与えることができると共に、誘電体の面内方向の一端部側から面内方向の他端部側へ向けて高速の空気流を効果的に誘起することができる。
【0015】
請求項5に記載のプラズマアクチュエータは、請求項1又は請求項2に記載のプラズマアクチュエータにおいて、前記貫通孔は、前記誘電体の面内方向に沿って平面視でスリット状に形成されている。
【0016】
請求項5に記載のプラズマアクチュエータによれば、貫通孔は、誘電体の面内方向に沿って平面視でスリット状に形成されている。このため、貫通孔の内周部の面積を大きく形成することができ、より効率的にプラズマを発生させることができる。これにより、正イオンから空気に与えられる体積力が増加すると共に、露出電極が配置された誘電体の面内方向の一端部側から面内方向の他端部側へ向けて高速の空気流を誘起することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明に係るプラズマアクチュエータは、印加電圧に超高電圧を使用することなくより高速の空気流を誘起することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態に係るプラズマアクチュエータを側方から見た構成図である。
図2】第1実施形態に係るプラズマアクチュエータの平面図である。
図3】第1実施形態に係るプラズマアクチュエータからプラズマが発生した状態を示す説明図である。
図4】第1実施形態に係るプラズマアクチュエータ発生したプラズマにより空気流が誘起される状態を示す説明図である。
図5】第1変形例に係るプラズマアクチュエータの平面図である。
図6】第2変形例に係るプラズマアクチュエータの平面図である。
図7】第3変形例に係るプラズマアクチュエータの平面図である。
図8】第4変形例に係るプラズマアクチュエータの平面図である。
図9】第5変形例に係るプラズマアクチュエータの平面図である。
図10】第6変形例に係るプラズマアクチュエータの平面図である。
図11】第7変形例に係るプラズマアクチュエータの平面図である。
図12】第2実施形態に係るプラズマアクチュエータを側方から見た構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1実施形態)
以下、図1図11を用いて、本発明に係るプラズマアクチュエータ10の第1実施形態について説明する。以下の図において、矢印Lは長手方向を示し、矢印UPは上方側を示し、矢印Wは誘導体の短手方向(幅方向)を示している。
【0020】
図1には、プラズマアクチュエータ10の構成図が示されている。プラズマアクチュエータ10は、誘電体12が、誘電体12の上面に接触配置された露出電極14と誘電体12の下面に接触配置された被覆電極16とに挟まれて構成されている。
【0021】
誘電体12は、略矩形平板状に形成されている。誘電体12は、平面視で露出電極14及び被覆電極16よりも大きく設定されている。また、誘電体12は、ポリイミド、テフロン(登録商標)、カプトン(登録商標)などの高分子材料により構成されると共に、その厚さ寸法は、例えば、約1mm以下に設定されている。
【0022】
なお、ここでは、誘電体12は、高分子材料により構成されているとして説明したが、これに限らず、例えば、ガラス繊維強化エポキシ樹脂等の他の材料が用いられてもよい。また、ここでは、誘電体12の厚さ寸法は、約1mm以下に設定されているとして説明したが、これに限らず、例えば、1mm以上の厚さ寸法に設定されてもよい。
【0023】
誘電体12の上面側かつ長手方向(面内方向)の一端部側には、露出電極14が接触配置されている。露出電極14は、略板状に形成され、誘電体12の長手方向に沿って配置されている。なお、誘電体12の長手方向の一端部側はプラズマアクチュエータ10により誘起される空気流FAの上流側となることから、以下の説明では、誘電体12の長手方向の一端部側を上流側と称する。
【0024】
露出電極14は、銅箔等の金属材料により構成されると共に、その厚さ寸法は誘電体12の厚さ寸法よりも薄く設定されている。なお、ここでは、露出電極14は、銅箔により構成されているとして説明したが、これに限らず、他の金属材料を用いて構成されてもよい。
【0025】
誘電体12の下面側かつ長手方向(面内方向)の他端部側(上流側とは長手方向に反対側)には、被覆電極16が接触配置されている。被覆電極16は、略板状に形成され、誘電体12の長手方向に沿って配置されている。以下においては、誘電体12の長手方向の他端部側は、プラズマアクチュエータ10により誘起される空気流FAの下流側となることから、誘電体12の長手方向の他端部側を下流側と称する。
【0026】
被覆電極16は、銅箔等の金属材料により構成されると共に、その厚さ寸法は誘電体12の厚さ寸法よりも薄く設定されている。なお、ここでは、被覆電極16は、銅箔により構成されているとして説明したが、これに限らず、他の金属材料を用いて構成されてもよい。
【0027】
露出電極14と被覆電極16は、誘電体12の厚さ方向(上下方向)に沿って重なるように配置されている。具体的には、露出電極14の下流側端部となる第1重合部24と被覆電極16の上流側端部となる第2重合部26とが、誘電体12の厚さ方向に沿って重なるように配置されている。
【0028】
被覆電極16の誘電体12との接触面以外の部分は、絶縁部18により被覆されている。絶縁部18は、ポリイミド、テフロン(登録商標)、カプトン(登録商標)などの高分子材料により構成されている。これにより、被覆電極16の誘電体12との接触面以外の部分は電気的に絶縁され、誘電体12の下面側からの放電が抑制される。
【0029】
なお、ここでは、絶縁部18は、誘電体12と同様に高分子材料によって構成されているとして説明したが、これに限らず、誘電体12と別の材料が用いられてもよく、例えば、ガラス繊維強化エポキシ樹脂等の他の材料が用いられてもよい。
【0030】
露出電極14と被覆電極16には、交流電源ACの端子が各々電気的に接続されている。ここで用いられる交流電源ACは、例えば、1~10kHzの範囲の周波数で1~20kV程度の高電圧を発生できるものが用いられる。
【0031】
図1及び図2に示されるように、露出電極14の第1重合部24の下流側端部には、露出電極14の厚さ方向(誘電体12の上下方向)に沿って複数の略円筒状の貫通孔30が貫通形成されている。複数の貫通孔30は、第1重合部24の短手方向(幅方向)に沿って形成されている。
【0032】
(作用並びに効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0033】
本実施形態に係るプラズマアクチュエータ10によれば、図3に示されるように、露出電極14と被覆電極16とに接続された交流電源ACから高電圧が印加され、電場の強度が閾値を超えると放電が生じる。具体的には、露出電極14と被覆電極16との間に存在する空気(気体)に絶縁破壊が生じることにより電子が放出され、電流が流れるといったいわゆるバリア放電が生じる。これにより、図4に示されるように、露出電極近傍の気体が電離してプラズマPZが発生する。プラズマPZは、電子EL、正イオンPI及び負イオンNIの荷電粒子により構成される。
【0034】
図4に示されるように、交流電圧が印加された露出電極14が正極として作用する場合は、電子ELと負イオンNIは印加された電場から受ける静電気力により露出電極14へ向けて引き寄せられる。引き寄せられた電子ELと負イオンNIは、露出電極14と衝突することで消失する。
【0035】
正イオンPIは、静電気力を受けて気体中に拡がりながら被覆電極16が配置されている下流側へ向けて誘電体12の長手方向に沿って移動するため、気体中には正イオンPIが過剰な状態が作り出される。これらの正イオンPIは、誘電体12の下流側へ向けて移動する過程で粒子同士の衝突により正イオンPIが保持する運動量を電気的に中性な空気分子AMへ伝達する。このように運動量が伝達されることは、空気(気体)に対して体積力が作用していることと同じ作用効果を生じさせる。これにより、空気が誘電体12の上流側から下流側へ向けて加速されるため空気流FAが発生する。なお、交流電圧が印加された露出電極14が負極として作用する場合は、正イオンPIと負イオンNIの挙動が逆転し、負イオンNIが保持する運動量を電気的に中性な空気分子AMへ伝達する。
【0036】
さらに、本実施形態に係るプラズマアクチュエータ10によれば、誘電体12の上面側に接触配置された露出電極14の第1重合部24側の端部には、露出電極14の厚さ方向(誘電体12上下方向)に貫通形成された貫通孔30が形成されている。露出電極14に形成された貫通孔30の内周部分においても、露出電極14に交流電圧が印加されることにより貫通孔30の内周部近傍の空気(気体)が電離してプラズマPZが発生する。
【0037】
交流電圧が印加された露出電極14が正極として作用する場合は、露出電極14へ引き寄せられない正イオンPIは、貫通孔30の軸中心へ向けて移動すると共に、貫通孔30の軸方向に沿って露出電極14の上方側へ移動する。ここで、電場EFは、プラズマアクチュエータ10の側面視で露出電極14から被覆電極16へ向けて露出電極14の上方側に凸の放物線状に形成される。このため、貫通孔30の軸方向に沿って露出電極14の上方側へ移動した正イオンPIにより電場EFの露出電極14の上方側の領域が拡大される。これにより、正イオンPIから空気分子AMに与えられる体積力が増加すると共に、露出電極14が配置された誘電体12の上流側から下流側へ向けて高速の空気流FAを誘起することができる。
【0038】
また、本実施形態に係るプラズマアクチュエータ10によれば、端部に貫通孔30が形成された露出電極14の第1重合部24は、被覆電極16の上流側端部である第2重合部26と誘電体12の厚さ方向(上下方向)に沿って重なるように配置されている。このように、誘電体12の貫通孔30が設けられた位置とは誘電体12の厚さ方向反対側に被覆電極16を配置することにより電場EFを強くすることができると共に、貫通孔30から大量のプラズマPZを発生させることができる。
【0039】
以上説明したように、本実施形態に係るプラズマアクチュエータ10は、印加電圧に超高電圧を使用することなくより高速の空気流FAを誘起することができる。
【0040】
(第1変形例)
次に、図5を用いて、本実施形態に係るプラズマアクチュエータ40の第1変形例について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0041】
第1変形例に係るプラズマアクチュエータ40によれば、図5に示されるように、貫通孔42は、内周形状が略三角柱状に形成されていると共に平面視で誘電体12の下流側へ凸となる略三角形状を有している。このため、貫通孔42の略三角柱形状の各角部において電界集中により強電界が形成されるため、プラズマPZ(図4参照)の発生を増加させることができる。これにより、誘電体12の上流側から下流側へ向けて高速の空気流FAを効果的に誘起することができる。
【0042】
(第2変形例)
次に、図6を用いて、本実施形態に係るプラズマアクチュエータ45の第2変形例について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0043】
第2変形例に係るプラズマアクチュエータ45によれば、図6に示されるように、貫通孔47は、内周形状が略三角柱状に形成されていると共に平面視で誘電体12の上流側へ凸となる略三角形状を有している。このため、貫通孔47の略三角柱形状の各角部において電界集中により強電界が形成されるため、プラズマPZ(図4参照)の発生を増加させることができる。これにより、誘電体12の上流側から下流側へ向けて高速の空気流FAを効果的に誘起することができる。
【0044】
(第3変形例)
次に、図7を用いて、本実施形態に係るプラズマアクチュエータ50の第3変形例について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0045】
第3変形例に係るプラズマアクチュエータ50によれば、貫通孔30は、露出電極14の短手方向両端部に亘って等間隔で複数形成されると共に、このように形成された貫通孔30の列が、誘電体12の長手方向に沿って複数列(例えば、2列)に亘って形成されている。このため、交流電圧が印加された露出電極14が正極として作用する場合は、正イオンPIの誘電体12の長手方向に沿った移動方向を安定させることができると共に空気流の向きも安定させることができる。これにより、正イオンPIにより電場EFの露出電極14の上方側の領域を拡大することができると共に、誘電体12の上流側から下流側へ向けて高速の空気流FAを効率的に誘起することができる。
【0046】
(第4変形例)
次に、図8を用いて、本実施形態に係るプラズマアクチュエータ60の第4変形例について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0047】
第4変形例に係るプラズマアクチュエータ60によれば、図8に示されるように、貫通孔62は、平面視で露出電極14の短手方向(面内方向)に沿ったスリット状に形成されている。このため、貫通孔62の内周部の表面積を大きく形成することができ、より効果的にプラズマPZ(図4参照)を発生させることができる。これにより、正イオンPIから空気に与えられる体積力が増加させることができるため、露出電極14が配置された誘電体12の上流側から下流側へ向けて高速の空気流を誘起することができる。
【0048】
(第5変形例)
次に、図9を用いて、本実施形態に係るプラズマアクチュエータ70の第5変形例について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0049】
図9に示されるように、露出電極14の第1重合部24側の周縁部には、誘電体12の短手方向(面内方向)に沿って鋸歯形状部72が形成されている。鋸歯形状部72は、誘電体12の下流側へ向けて凸とされた三角形状部72Aが誘電体12の短手方向に沿って連続的(規則的)に形成されている。ここでは、三角形状部72Aは、各々平面視で略正三角形状に形成されている。なお、ここでは、三角形状部72Aは平面視で略正三角形状に形成されているとして説明するが、これに限らず、各辺の長さが異なる三角形状に形成されてもよい。
【0050】
第5変形例に係るプラズマアクチュエータ70によれば、図9に示されるように、露出電極14の第1重合部24側の周縁部には、誘電体12の短手方向に沿って鋸歯形状部72が形成されている。このため、第1重合部24側の周縁部の表面積を大きく形成することができ、より効率的にプラズマPZを発生させることができる。これにより、正イオンPIから空気に与えられる体積力が増加させることができ、露出電極14が配置された誘電体12の上流側から下流側へ向けて高速の空気流FAを誘起することができる。
【0051】
なお、ここでは、貫通孔30の内径は三角形状部72Aの一辺の長さよりも短めに形成されているが、これに限らず、例えば、三角形状部の一辺の長さより長い内径に形成されてもよい。
【0052】
(第6変形例)
次に、図10を用いて、本実施形態に係るプラズマアクチュエータ80の第6変形例について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0053】
第6変形例に係るプラズマアクチュエータ80によれば、図10に示されるように、露出電極14の第1重合部24側の周縁部には、平面視で各々矩形状に形成され、誘電体12の短手方向(面内方向)に沿って並べられた複数の矩形状部82が形成されている。このため、第1重合部24側の周縁部の表面積を大きく形成することができ、より効果的にプラズマPZ(図4参照)を発生させることができる。これにより、正イオンPIから空気に与えられる体積力が増加させることができるため、露出電極14が配置された誘電体12の上流側から下流側へ向けて高速の空気流FAを誘起することができる。
【0054】
(第7変形例)
次に、図11を用いて、本実施形態に係るプラズマアクチュエータ90の第7変形例について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0055】
第7変形例に係るプラズマアクチュエータ90によれば、図11に示されるように、露出電極14の第1重合部24側の周縁部には、誘電体12の短手方向(面内方向)に沿って平面視で正弦波状に形成された波形状部92が形成されている。このため、第1重合部24側の周縁部の表面積を大きく形成することができ、より効果的にプラズマPZ(図4参照)を発生させることができる。これにより、正イオンPIから空気に与えられる体積力が増加させることができるため、露出電極14が配置された誘電体12の上流側から下流側へ向けて高速の空気流FAを誘起することができる。
【0056】
(第2実施形態)
次に、図12を用いて、本発明に係るプラズマアクチュエータ100の第2実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0057】
第2実施形態に係るプラズマアクチュエータ100によれば、図12に示されるように、貫通孔102は、露出電極14の下面側から厚さ方向に沿って上面側へ向かうに従って誘電体12の下流側へ向けて傾斜されている。
【0058】
第2実施形態に係るプラズマアクチュエータ100によれば、貫通孔82は、露出電極14の下面側から厚さ方向に沿って上面側へ向かうに従って誘電体12の下流側へ向けて傾斜されている。このため、交流電圧が印加された露出電極14が正極として作用する場合は、露出電極14へ引き寄せられない正イオンPI(図4参照)は、貫通孔102の軸中心へ向けて移動すると共に、貫通孔102の軸方向に沿って露出電極14の上方側かつ誘電体12の下流側へ向けて移動する。これにより、正イオンPIから空気に与えられる体積力のうち誘電体12の長手方向成分を増加させることができるため、誘起される空気流FAの流速のうち誘電体12の長手方向成分を増加させることができる。
【0059】
なお、ここでは、貫通孔30、42、62、102は、円筒状、三角柱状及び平面視スリット状に形成されているとして説明したが、これに限らず、露出電極に別の形状で貫通形成されてもよい。
【0060】
また、ここでは、露出電極14の第1重合部24側の周縁部には、鋸歯形状部72、矩形状部82及び波形状部92が形成されているとして説明したが、これに限らず、別の形状が周縁部に形成されてもよい。
【0061】
なお、ここでは、鋸歯形状部72、矩形状部82及び波形状部92は、露出電極14の第1重合部24側の短手方向の両端部に亘って形成されているとして説明したが、これに限らず、第1重合部の周縁部の一部にだけ形成されてもよい。
【符号の説明】
【0062】
10 プラズマアクチュエータ
12 誘電体
14 露出電極
16 被覆電極
30 貫通孔
40 プラズマアクチュエータ
42 貫通孔
50 プラズマアクチュエータ
60 プラズマアクチュエータ
62 貫通孔
70 プラズマアクチュエータ
80 プラズマアクチュエータ
90 プラズマアクチュエータ
100 プラズマアクチュエータ
102 貫通孔
AC 交流電源
FA 空気流
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12