(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット、液体を吐出する装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20221213BHJP
【FI】
B41J2/14 607
B41J2/14 301
B41J2/14 307
(21)【出願番号】P 2018172182
(22)【出願日】2018-09-14
【審査請求日】2021-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】230100631
【氏名又は名称】稲元 富保
(72)【発明者】
【氏名】吉田 崇裕
(72)【発明者】
【氏名】中井 貴之
(72)【発明者】
【氏名】中野 孝一
(72)【発明者】
【氏名】乙▲め▼ 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】小▲高▼ 俊道
(72)【発明者】
【氏名】村上 友章
(72)【発明者】
【氏名】畠山 拓
【審査官】小野 郁磨
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-154439(JP,A)
【文献】特開2003-127372(JP,A)
【文献】特開2002-160373(JP,A)
【文献】特開2010-162862(JP,A)
【文献】特開2006-256317(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するノズルに通じる圧力室の
変位可能な壁面を形成する
振動領域を有する振動板部材を備え、
前記
振動板部材は、少なくとも、
前記振動領域を形成し前記圧力室に面する薄肉部と、前記薄肉部の前記圧力室とは反対側に設けられた厚肉部とを含み、
前記
振動板部材には、前記圧力室側に開口する凹部又は貫通穴が設けられ、
前記凹部又は前記貫通穴は、
前記圧力室の長手方向において、一部が前記圧力室の外側まで臨むように開口しており、
前記凹部又は前記貫通穴の内部には、前記圧力室の変位可能な壁面を形成する充填材が充填され、
前記厚肉部は、
前記圧力室の長手方向に沿う断面形状において、段差部が設けられて、相対的に厚さが薄い部分と厚さが厚い部分とが形成され、
前記凹部又は前記貫通穴は、前記薄肉部、及び、前記厚肉部の前記厚さが薄い部分に設けられ、前記厚肉部の前記厚さが厚い部分には設けられていない
ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記圧力室側に開口する凹部又は前記貫通穴は、前記圧力室の長手方向端部付近側に配置されている
ことを特徴とする請求項
1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記充填材は樹脂である
ことを特徴とする請求項1
又は2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記樹脂は、紫外線硬化型樹脂である
ことを特徴とする請求項
3に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
複数の前記圧力室を有し、
少なくとも2つの前記圧力室において前記樹脂の充填量が異なる
ことを特徴とする請求項
3又は4に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
請求項1ないし
5のいずれかに記載の液体吐出ヘッドを含むことを特徴とする液体吐出ユニット。
【請求項7】
前記液体吐出ヘッドに供給する液体を貯留するヘッドタンク、前記液体吐出ヘッドを搭載するキャリッジ、前記液体吐出ヘッドに液体を供給する供給機構、前記液体吐出ヘッドの維持回復を行う維持回復機構、前記液体吐出ヘッドを主走査方向に移動させる主走査移動機構の少なくともいずれか一つと前記液体吐出ヘッドとを一体化した
ことを特徴とする請求項
6に記載の液体吐出ユニット。
【請求項8】
請求項1ないし
5のいずれかに記載の液体吐出ヘッド、又は、請求項
6若しくは
7に記載の液体吐出ユニットを備えていることを特徴とする液体を吐出する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット、液体を吐出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を吐出する液体吐出ヘッドにおいては、液体の吐出に伴って生じる残留振動によって吐出特性が変動する。
【0003】
従来、ノズル開口側とインク供給口側とにコンプライアンスを確保するための薄肉部が形成され、また中央部にアイランド部が形成された振動板を備え、アイランド部を介して圧電振動子により圧力発生室を圧縮してノズル開口からインク滴を吐出させる記録ヘッドであって、振動板全体のコンプライアンスをノズル開口側とインク供給口側とで実質的に同一となるように按分するため、ノズル開口側の薄肉部、又はインク供給口側の薄肉部に質量体を付加した記録ヘッドが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示の構成にあっては、ノズル開口側とインク供給口側とでコンプライアンが異なることによる残留振動の発生を抑制することがはできるが、液体吐出に伴う残留振動を抑制することはできないという課題がある。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、液体吐出特性の変動を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明に係る液体吐出ヘッドは、
液体を吐出するノズルに通じる圧力室の変位可能な壁面を形成する振動領域を有する振動板部材を備え、
前記振動板部材は、少なくとも、前記振動領域を形成し前記圧力室に面する薄肉部と、前記薄肉部の前記圧力室とは反対側に設けられた厚肉部とを含み、
前記振動板部材には、前記圧力室側に開口する凹部又は貫通穴が設けられ、
前記凹部又は前記貫通穴は、前記圧力室の長手方向において、一部が前記圧力室の外側まで臨むように開口しており、
前記凹部又は前記貫通穴の内部には、前記圧力室の変位可能な壁面を形成する充填材が充填され、
前記厚肉部は、前記圧力室の長手方向に沿う断面形状において、段差部が設けられて、相対的に厚さが薄い部分と厚さが厚い部分とが形成され、
前記凹部又は前記貫通穴は、前記薄肉部、及び、前記厚肉部の前記厚さが薄い部分に設けられ、前記厚肉部の前記厚さが厚い部分には設けられていない
構成とした。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、液体吐出特性の変動を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る液体吐出ヘッドのノズル配列方向と直交する方向に沿う断面説明図である。
【
図2】同じく
図1のA-A線に沿うノズル配列方向に沿う断面説明図である。
【
図4】
図1のB-B線に沿うノズル配列方向に沿う断面説明図である。
【
図5】ダンパ領域の他の平面形状の異なる例の説明に供する振動板部材の平面説明図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る液体吐出ヘッドのノズル配列方向に沿う断面説明図である。
【
図7】本発明の第3実施形態に係る液体吐出ヘッドのノズル配列方向と直交する方向に沿う断面説明図である。
【
図8】本発明の第4実施形態に係る液体吐出ヘッドのノズル配列方向と直交する方向に沿う断面説明図である。
【
図9】本発明の第5実施形態に係る液体吐出ヘッドのノズル配列方向と直交する方向に沿う断面説明図である。
【
図11】同じく
図9のC-C線に沿うノズル配列方向に沿う断面説明図である。
【
図12】本発明の第6実施形態に係る液体吐出ヘッドの外観斜視説明図である。
【
図13】同じく
図1と同様なノズル配列方向と直交する方向に沿う断面説明図である。
【
図14】本発明に係る液体を吐出する装置の一例の概略説明図である。
【
図15】同装置のヘッドユニットの一例の平面説明図である。
【
図16】液体循環装置の一例のブロック説明図である。
【
図17】本発明に係る液体を吐出する装置の他の例の要部平面説明図である。
【
図19】本発明に係る液体吐出ユニットの他の例の要部平面説明図である。
【
図20】本発明に係る液体吐出ユニットの更に他の例の正面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。本発明の第1実施形態について
図1ないし
図4を参照して説明する。
図1は同実施形態に係る液体吐出ヘッドのノズル配列方向と直交する方向に沿う断面説明図、
図2は同じく
図1のA-A線に沿うノズル配列方向に沿う断面説明図、
図3は同じく各部材の平面説明図である。
【0011】
この液体吐出ヘッド100は、ノズル板1と、流路板2と、壁面部材としての振動板部材3とを積層接合している。そして、振動板部材3の振動領域(振動板)30を変位させる圧電アクチュエータ11と、ヘッドのフレーム部材を兼ねている共通流路部材20とを備えている。
【0012】
ノズル板1は、液体を吐出する複数のノズル4を配列したノズル列を有している。
【0013】
流路板2は、複数のノズル4に通じる複数の圧力室である圧力室6、各圧力室6にそれぞれ通じる流体抵抗部7、1又は複数の流体抵抗部7に通じる1又は複数の液導入部8を形成している。
【0014】
本実施形態では、流路板2は、板状部材2A及び2Bを積層して構成している。板状部材2Aには、各圧力室6、流体抵抗部7、及び液導入部8を形成する貫通溝6A、7A、8Aを形成し、板状部材2Bには、各圧力室6を形成する貫通溝6B及び液導入部8を形成する貫通溝8Bをそれぞれ形成している。
【0015】
振動板部材3は、流路板2の圧力室6の壁面を形成する変位可能な複数の振動板(振動領域)30を有する。ここでは、振動板部材3は2層構造(限定されない)とし、流路板2側から薄肉部を形成する第1層3aと、厚肉部を形成する第2層3bで構成され、第1層3aで圧力室6に対応する部分に変形可能な振動領域30を形成している。
【0016】
そして、振動板部材3の圧力室6とは反対側に、振動板部材3の振動領域30を変形させる駆動手段(アクチュエータ手段、圧力発生手段)としての電気機械変換素子を含む圧電アクチュエータ11を配置している。
【0017】
この圧電アクチュエータ11は、ベース部材13上に接合した圧電部材12にハーフカットダイシングによって溝加工をして、ノズル配列方向において、所要数の柱状の圧電素子12A、12Bを所定の間隔で櫛歯状に形成している。
【0018】
そして、圧電素子12Aを振動板部材3の振動領域30に形成した島状の厚肉部である凸部30aに接合している。また、支柱部となる圧電素子12Bを振動板部材3の厚肉部である凸部30bに接合している。圧電素子12Aには凸部30aと接合する部分に凸部12cを形成している。
【0019】
この圧電素子12は、圧電層と内部電極とを交互に積層したものであり、内部電極がそれぞれ端面に引き出されて外部電極(端面電極)に接続され、外部電極にフレキシブル配線部材が接続されている。
【0020】
共通流路部材20は共通流路10を形成している。共通流路10は、振動板部材3に設けたフィルタ部9を介して液導入部8に通じている。
【0021】
この液体吐出ヘッド100においては、例えば圧電素子12Aに与える電圧を基準電位(中間電位)から下げることによって圧電素子12Aが収縮し、振動板部材3の振動領域30が引かれて圧力室6の容積が膨張することで、圧力室6内に液体が流入する。
【0022】
その後、圧電素子12Aに印加する電圧を上げて圧電素子12Aを積層方向に伸長させ、振動板部材3の振動領域30をノズル4に向かう方向に変形させて圧力室6の容積を収縮させることにより、圧力室6内の液体が加圧され、ノズル4から液体が吐出される。
【0023】
なお、ヘッドの駆動方法については上記の例(引き-押し打ち)に限るものではなく、駆動波形の与えた方によって引き打ちや押し打ちなどを行なうこともできる。
【0024】
次に、本実施形態におけるダンパ構成について
図4も参照して説明する。
図4は
図1のB-B線に沿うノズル配列方向に沿う断面説明図である。
【0025】
本実施形態において、振動板部材3には、圧力室6の長手方向において、ノズル4側の端部付近に、第1層3a及び第2層3bを貫通する貫通穴32を設けている。貫通穴32の内部には、圧力室6の変位可能な壁面を形成する充填材33が充填されている。なお、「充填材」と「充填剤」は同義とする。
【0026】
充填材33としては、振動板部材3の剛性よりも剛性が低く、圧力室6内で生じる残留振動を吸収ないし減衰させる材料であればよい。
【0027】
充填材33としては、樹脂が好まく、樹脂としては紫外線硬化型樹脂が好ましい。紫外線硬化型樹脂を使用することにより、貫通穴32内の樹脂を紫外線硬化した後振動板部材3の表面に残存する樹脂を除去することで、局所的に樹脂を容易に充填することができる。
【0028】
充填材33は、耐液性を有する材料であることが好ましい。
【0029】
このように、圧力室6に開口する貫通穴32内部に圧力室6の変位可能(変形可能)な壁面を形成する充填材33を充填しているので、圧電素子12Aを駆動してノズル4から液体を吐出させたときに残留振動が生じると、充填材33が変位するので、残留振動が減衰ないし抑制される。
【0030】
これにより、安定した液体吐出特性を得ることができ、液体吐出特性のばらつきを低減できる。
【0031】
また、貫通穴32内に充填した充填材33によってダンパを構成することで、ダンパとして機能する領域(ダンパ領域、本実施形態では貫通穴32の開口面積に相当する)を大きくしても、経時的な耐久性を確保することができる。
【0032】
これに対して、例えば、ダンパ領域を振動板部材3の第1層3aで構成した場合、振動減衰、抑制機能を高めるためにダンパ領域の面積を大きくしすぎると、ダンパ領域の剛性が小さくなりすぎ、経時的に破損するおそれが生じる。
【0033】
また、貫通穴32内に充填した充填材33によってダンパを構成することで、充填材33の充填量を変えることによって剛性を変更することができ、容易に目標とする剛性を設定することができる。したがってまた、圧力室6の残留振動特性に応じて充填材33の充填量を変更して、振動減衰・吸収特性を変更することも容易である。つまり、少なくとも2つの圧力室6、6において、充填材33の充填量を異ならせたヘッドを容易に構成することができる。
【0034】
これに対し、例えば、ダンパ領域を振動板部材3の第1層3aで構成した場合、圧力室6毎にダンパ領域の厚みや面積を異ならせることは容易でない。
【0035】
また、充填材33は、圧力室6の長手方向端部付近、ここでは、流体抵抗部7から遠く、ノズル4に近い側の端部付近に配置している。
【0036】
次に、ダンパ領域の他の平面形状の異なる例について
図5を参照して説明する。
図5は振動板部材の平面説明図である。
【0037】
図5(a)に示す第1例は、貫通穴32の開口の平面形状(充填材33で形成する壁面形状)を略矩形状にした例である。
図5(b)に示す第2例は、貫通穴32の開口の平面形状(充填材33で形成する壁面形状)を長円形状にした例である。
【0038】
貫通穴32の開口の平面形状(充填材33で形成する壁面形状)がこれらの形状であっても、圧力室6内の残留振動を減衰ないし抑制することができる。
【0039】
次に、本発明の第2実施形態について
図6を参照して説明する。
図6は同実施形態に係る液体吐出ヘッドのノズル配列方向に沿う
図4に相当する断面説明図である。
【0040】
本実施形態では、振動板部材3に圧力室6側に開口する凹部34を設け、凹部34内に樹脂などの充填材33を充填している。
【0041】
このように構成すれば、充填材33を構成する樹脂が経年劣化したような場合でも、充填材33の周面と振動板部材3との間を通じて圧力室6と反対側(前記実施形態の圧電アクチュエータ11側)に圧力室6内の液体が漏出することを確実に防止できる。
【0042】
次に、本発明の第3実施形態について
図7を参照して説明する。
図7は同実施形態に係る液体吐出ヘッドのノズル配列方向と直交する方向に沿う断面説明図である。
【0043】
本実施形態では、振動板部材3は、第1層3a、第2層3b、第3層3cの三層構造としている。そして、圧電素子12Aと接合する凸部30aは、第2層3b及び第3層3cの2層で構成している。
【0044】
次に、本発明の第4実施形態について
図8を参照して説明する。
図8は同実施形態に係る液体吐出ヘッドのノズル配列方向と直交する方向に沿う断面説明図である。
【0045】
本実施形態では、振動板部材3は、前記第1実施形態と同様に第1層3a、第2層3bの二層構造とし、圧電素子12Aの凸部30aとの接合面を平坦面としている。
【0046】
本実施形態でも、貫通穴32の内部に充填材33を充填することで、前記各実施形態と同様な作用効果を得ることができる。
【0047】
次に、本発明の第5実施形態について
図9ないし
図11を参照して説明する。
図9は同実施形態に係る液体吐出ヘッドのノズル配列方向と直交する方向に沿う断面説明図、
図10は同じく振動板部材の平面説明図、
図11は同じく
図9のC-C線に沿うノズル配列方向に沿う断面説明図である。
【0048】
本実施形態では、振動板部材3の貫通穴32は、一部が圧力室6の外側まで臨む(対向する)大きさの開口を有するように形成している。この貫通穴32の内部に充填材33を充填することで、充填材33で構成されるダンパは一部が圧力室6の外側まで臨む(対向する)大きさとなる。
【0049】
これにより、振動板部材3と流路板2とを接合するときの位置ずれや部品誤差が生じても、所要範囲のダンパ領域を確保することができる。
【0050】
次に、本発明の第6実施形態について
図12及び
図13を参照して参照して説明する。
図12は同実施形態に係る液体出ヘッドの外観斜視説明図、
図13は同じく
図1と同様なノズル配列方向と直交する方向に沿う断面説明図である。
【0051】
この液体吐出ヘッド100は、循環型液体吐出ヘッドであり、ノズル板1と、流路板2と、壁面部材としての振動板部材3とを積層接合している。そして、振動板部材3の振動領域(振動板)30を変位させる圧電アクチュエータ11と、ヘッドのフレーム部材を兼ねている共通流路部材20とを備えている。
【0052】
ノズル板1は、液体を吐出する複数のノズル4を有している。
【0053】
流路板2は、複数のノズル4に各々ノズル連通路5を介して通じる複数の圧力室6と、複数の圧力室6に各々通じる複数の供給側の流体抵抗部7と、1又は複数の供給側の流体抵抗部7に通じる1又は複数の液導入部8などを形成している。液導入部8は、振動板部材3の供給側の開口部19を介して供給側の共通流路10に通じている。
【0054】
なお、本実施形態では、流路板2は、複数枚の板状部材2A~2Eを積層して構成しているが、これに限るものではない。
【0055】
振動板部材3は、流路板2の圧力室6の壁面を形成する変形可能な振動領域30を有する。ここでは、振動板部材3は3層構造(限定されない)とし、流路板2側から薄肉部を形成する第1層3aと、厚肉部を形成する第2層3b、第3層3cで形成され、第1層3aで圧力室6に対応する部分に変形可能な振動領域30を形成している。
【0056】
そして、振動板部材3の圧力室6とは反対側に、振動板部材3の振動領域30を変形させる圧電アクチュエータ11を配置している。圧電アクチュエータ11の圧電素子12Aを振動板部材3の振動領域(振動板)30の凸部30aに接合している。
【0057】
また、流路板2は、複数の圧力室6にノズル連通路5を介して各々通じる流路板2の面方向に沿う複数の個別回収流路56と、1又は複数の個別回収流路56に通じる1又は複数の液導出部58を形成している。液導出部58は、振動板部材3の回収側の開口部59を介して回収側の共通流路50に通じている。
【0058】
共通流路部材20は、供給側の共通流路10と回収側の共通流路50を形成する。供給側の共通流路10は供給ポート71に通じ、回収側の共通流路50は回収ポート72に通じている。
【0059】
この液体吐出ヘッド100においては、例えば圧電素子12Aに与える電圧を基準電位(中間電位)から下げることによって圧電素子12Aが収縮し、振動板部材3の振動領域30が引かれて圧力室6の容積が膨張することで、圧力室6内に液体が流入する。
【0060】
その後、圧電素子12Aに印加する電圧を上げて圧電素子12Aを積層方向に伸長させ、振動板部材3の振動領域30をノズル4に向かう方向に変形させて圧力室6の容積を収縮させることにより、圧力室6内の液体が加圧され、ノズル4から液体が吐出される。
【0061】
また、ノズル4から吐出されない液体はノズル4を通過して個別回収流路56から回収側の共通流路50に回収され、回収側の共通流路50から外部の循環経路を通じて供給側の共通流路10に再度供給される。
【0062】
なお、ヘッドの駆動方法については上記の例(引き-押し打ち)に限るものではなく、駆動波形の与えた方によって引き打ちや押し打ちなどを行なうこともできる。
【0063】
そして、本実施形態においても、振動板部材3に圧力室6側に開口する貫通穴32を設け、貫通穴32の内部に、圧力室6の変位可能(変形可能)な壁面を形成する充填材33を充填している。
【0064】
これにより、圧力室6の残留振動を減衰ないし抑制して、安定した液体吐出特性を得ることができ、吐出特性のばらつきを低減できる。
【0065】
次に、本発明に係る液体を吐出する装置の一例について
図14及び
図15を参照して説明する。
図14は同装置の概略説明図、
図15は同装置のヘッドユニットの一例の平面説明図である。
【0066】
この液体を吐出する装置である印刷装置500は、連続体510を搬入する搬入手段501と、搬入手段501から搬入された連続体510を印刷手段505に案内搬送する案内搬送手段503と、連続体510に対して液体を吐出して画像を形成する印刷を行う印刷手段505と、連続体510を乾燥する乾燥手段507と、連続体510を搬出する搬出手段509などを備えている。
【0067】
連続体510は搬入手段501の元巻きローラ511から送り出され、搬入手段501、案内搬送手段503、乾燥手段507、搬出手段509の各ローラによって案内、搬送されて、搬出手段509の巻取りローラ591にて巻き取られる。
【0068】
この連続体510は、印刷手段505において、搬送ガイド部材559上をヘッドユニット550及びヘッドユニット555に対向して搬送され、ヘッドユニット550から吐出される液体によって画像が形成され、ヘッドユニット555から吐出される処理液で後処理が行われる。
【0069】
ここで、ヘッドユニット550には、例えば、搬送方向上流側から、4色分のフルライン型ヘッドアレイ551A、551B、551C、551D(以下、色の区別しないときは「ヘッドアレイ551」という。)が配置されている。
【0070】
各ヘッドアレイ551は、液体吐出手段であり、それぞれ、搬送される連続体510に対してブラックK,シアンC、マゼンタM、イエローYの液体を吐出する。なお、色の種類及び数はこれに限るものではない。
【0071】
ヘッドアレイ551は、例えば、本発明に係る液体吐出ヘッド(これを、単に「ヘッド」ともいう。)100をベース部材552上に千鳥状に並べて配置したものであるが、これに限らない。
【0072】
次に、液体循環装置の一例について
図16を参照して説明する。
図16は同循環装置のブロック説明図である。なお、ここでは1つのヘッドのみ図示しているが、複数のヘッドを配列する場合には、マニホールドなどを介して複数のヘッドの供給側、回収側にそれぞれ供給側液体経路、回収側液体経路を接続することになる。
【0073】
液体循環装置600は、供給タンク601、回収タンク602、メインタンク603、第1送液ポンプ604、第2送液ポンプ605、コンプレッサ611、レギュレータ612、真空ポンプ621、レギュレータ622、供給側圧力センサ631、回収側圧力センサ632などで構成されている。
【0074】
ここで、コンプレッサ611及び真空ポンプ621は、供給タンク601内の圧力と回収タンク602内の圧力とに差圧を生じさせる手段を構成している。
【0075】
供給側圧力センサ631は、供給タンク601とヘッド100との間であって、ヘッド100の供給ポート71に繋がった供給側液体経路に接続されている。回収側圧力センサ632は、ヘッド1と回収タンク602との間であって、ヘッド100の回収ポート72に繋がった回収側液体経路に接続されている。
【0076】
回収タンク602の一方は、第1送液ポンプ604を介して供給タンク601と接続されており、回収タンク602の他方は第2送液ポンプ605を介してメインタンク603と接続されている。
【0077】
これにより、供給タンク601から供給ポート71を通ってヘッド100内に液体が流入し、回収ポート72から回収タンク602へ回収され、第1送液ポンプ604によって回収タンク602から供給タンク601へ液体が送られることによって、液体が循環する循環経路が構成される。
【0078】
ここで、供給タンク601にはコンプレッサ611がつなげられており、供給側圧力センサ631で所定の正圧が検知されるように制御される。一方、回収タンク602には真空ポンプ621がつなげられており、回収側圧力センサ632で所定の負圧が検知されるよう制御される。
【0079】
これにより、ヘッド100内を通って液体を循環させつつ、メニスカスの負圧を一定に保つことができる。
【0080】
また、ヘッド100のノズル4から液体を吐出すると、供給タンク601及び回収タンク602内の液体量が減少していく。そのため、適宜、第2送液ポンプ605を用いて、メインタンク603から回収タンク602に液体を補充する。
【0081】
なお、メインタンク603から回収タンク602への液体補充のタイミングは、回収タンク602内の液体の液面高さが所定高さよりも下がったときに液体補充を行うなど、回収タンク602内に設けた液面センサなどの検知結果によって制御することができる。
【0082】
次に、本発明に係る液体を吐出する装置としての印刷装置の他の例について
図17及び
図18を参照して説明する。
図17は同装置の要部平面説明図、
図18は同装置の要部側面説明図である。
【0083】
この印刷装置500は、シリアル型装置であり、主走査移動機構493によって、キャリッジ403は主走査方向に往復移動する。主走査移動機構493は、ガイド部材401、主走査モータ405、タイミングベルト408等を含む。ガイド部材401は、左右の側板491A、491Bに架け渡されてキャリッジ403を移動可能に保持している。そして、主走査モータ405によって、駆動プーリ406と従動プーリ407間に架け渡したタイミングベルト408を介して、キャリッジ403は主走査方向に往復移動される。
【0084】
このキャリッジ403には、本発明に係る液体吐出ヘッド100及びヘッドタンク441を一体にした液体吐出ユニット440を搭載している。液体吐出ユニット440の液体吐出ヘッド100は、例えば、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色の液体を吐出する。また、液体吐出ヘッド100は、複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配置し、吐出方向を下方に向けて装着している。
【0085】
液体吐出ヘッド100は、前述した液体循環装置600と接続されて、所要の色の液体が循環供給される。
【0086】
この印刷装置500は、用紙410を搬送するための搬送機構495を備えている。搬送機構495は、搬送手段である搬送ベルト412、搬送ベルト412を駆動するための副走査モータ416を含む。
【0087】
搬送ベルト412は用紙410を吸着して液体吐出ヘッド100に対向する位置で搬送する。この搬送ベルト412は、無端状ベルトであり、搬送ローラ413と、テンションローラ414との間に掛け渡されている。吸着は静電吸着、あるいは、エアー吸引などで行うことができる。
【0088】
そして、搬送ベルト412は、副走査モータ416によってタイミングベルト417及びタイミングプーリ418を介して搬送ローラ413が回転駆動されることによって、副走査方向に周回移動する。
【0089】
さらに、キャリッジ403の主走査方向の一方側には搬送ベルト412の側方に液体吐出ヘッド100の維持回復を行う維持回復機構420が配置されている。
【0090】
維持回復機構420は、例えば液体吐出ヘッド100のノズル面(ノズルが形成された面)をキャッピングするキャップ部材421、ノズル面を払拭するワイパ部材422などで構成されている。
【0091】
主走査移動機構493、維持回復機構420、搬送機構495は、側板491A,491B、背板491Cを含む筐体に取り付けられている。
【0092】
このように構成したこの印刷装置500においては、用紙410が搬送ベルト412上に給紙されて吸着され、搬送ベルト412の周回移動によって用紙410が副走査方向に搬送される。
【0093】
そこで、キャリッジ403を主走査方向に移動させながら画像信号に応じて液体吐出ヘッド100を駆動することにより、停止している用紙410に液体を吐出して画像を形成
する。
【0094】
次に、本発明に係る液体吐出ユニットの他の例について
図19を参照して説明する。
図19は同ユニットの要部平面説明図である。
【0095】
この液体吐出ユニット440、前記液体を吐出する装置を構成している部材のうち、側板491A、491B及び背板491Cで構成される筐体部分と、主走査移動機構493と、キャリッジ403と、液体吐出ヘッド100で構成されている。
【0096】
なお、この液体吐出ユニット440の例えば側板491Bに、前述した維持回復機構420を更に取り付けた液体吐出ユニットを構成することもできる。
【0097】
次に、本発明に係る液体吐出ユニットの更に他の例について
図20を参照して説明する。
図20は同ユニットの正面説明図である。
【0098】
この液体吐出ユニット440は、流路部品444が取付けられた液体吐出ヘッド100と、流路部品444に接続されたチューブ456で構成されている。
【0099】
なお、流路部品444はカバー442の内部に配置されている。流路部品444に代えてヘッドタンク441を含むこともできる。また、流路部品444の上部には液体吐出ヘッド100と電気的接続を行うコネクタ443が設けられている。
【0100】
本願において、吐出される液体は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0101】
液体を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものが含まれる。
【0102】
「液体吐出ユニット」は、液体吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体が含まれる。例えば、「液体吐出ユニット」は、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構、液体循環装置の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。
【0103】
ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていても良い。
【0104】
例えば、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。また、チューブなどで互いに接続されて、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ユニットのヘッドタンクと液体吐出ヘッドとの間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。
【0105】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジが一体化されているものがある。
【0106】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構が一体化されているものがある。また、液体吐出ヘッドとキャリッジと主走査移動機構が一体化されているものがある。
【0107】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。
【0108】
また、液体吐出ユニットとして、ヘッドタンク若しくは流路部品が取付けられた液体吐出ヘッドにチューブが接続されて、液体吐出ヘッドと供給機構が一体化されているものがある。このチューブを介して、液体貯留源の液体が液体吐出ヘッドに供給される。
【0109】
主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものする。
【0110】
「液体を吐出する装置」には、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて液体を吐出させる装置が含まれる。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を 気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0111】
この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0112】
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0113】
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0114】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0115】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0116】
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0117】
また、「液体を吐出する装置」としては、他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0118】
なお、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【符号の説明】
【0119】
1 ノズル板
4 ノズル
2 流路板
3 振動板部材
6 圧力室
10 共通流路
11 圧電アクチュエータ
20 共通流路部材
32 貫通穴
33 充填材
34 凹部
50 共通流路
100 液体吐出ヘッド
403 キャリッジ
440 液体吐出ユニット
500 印刷装置(液体を吐出する装置)
550 ヘッドユニット
600 液体循環装置