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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】粘着層付き透明面材および表示装置
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/00 20060101AFI20221213BHJP
   C09J 7/20 20180101ALI20221213BHJP
【FI】
G09F9/00 313
G09F9/00 342
C09J7/20
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018177605
(22)【出願日】2018-09-21
(65)【公開番号】P2019112609
(43)【公開日】2019-07-11
【審査請求日】2021-08-17
(31)【優先権主張番号】P 2017244240
(32)【優先日】2017-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀 雄貴
(72)【発明者】
【氏名】小林 勝弘
(72)【発明者】
【氏名】馬場 建郎
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/072380(WO,A1)
【文献】特開2008-081190(JP,A)
【文献】実開昭55-130660(JP,U)
【文献】特開2003-079301(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 7/00-7/50
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と第2面とを有する透明面材と、
前記第1面に設けられた第1粘着層と、
前記第2面に設けられた第2粘着層と、を備え、
前記透明面材は、前記第1面の周縁部において前記第1粘着層から前記第1面が露出した露出部、および前記第2面の周縁部において前記第2粘着層から前記第2面が露出した露出部のうちの少なくとも一方を備え
前記第1面は、前記透明面材の中央部に位置する第1平坦面と、前記透明面材の周縁部において前記第1平坦面に対して傾斜するとともに前記第1平坦面に垂直な端面に接する第1傾斜面と、を有し、
前記第2面は、前記透明面材の中央部に位置する第2平坦面と、前記透明面材の周縁部において前記第2平坦面に対して傾斜するとともに前記第2平坦面に垂直な端面に接する第2傾斜面と、を有し、
前記露出部は、前記第1傾斜面および前記第2傾斜面に設けられた、粘着層付き透明面材。
【請求項2】
前記第1面の法線方向から見た前記透明面材の平面形状は矩形であり、
前記露出部は、前記矩形の4辺のうちの少なくとも2辺に沿った領域であって、該2辺上それぞれの一部に設けられた、請求項1に記載の粘着層付き透明面材。
【請求項3】
前記露出部は、前記矩形の互いに対向する2辺に沿った領域であって、該2辺上それぞれの一部に設けられた、請求項2に記載の粘着層付き透明面材。
【請求項4】
前記第1面の法線方向から見た前記透明面材の平面形状は長方形であり、
前記露出部は、前記長方形の互いに対向する2つの長辺に沿った領域であって、該2辺上それぞれの一部に設けられた、請求項3に記載の粘着層付き透明面材。
【請求項5】
前記露出部は、前記矩形の4辺に沿った領域であって、該4辺上それぞれの一部に設けられた、請求項2に記載の粘着層付き透明面材。
【請求項6】
前記第1面の法線方向から見た前記透明面材の平面形状は矩形であり、
前記露出部は、前記矩形の角部に設けられた、請求項1に記載の粘着層付き透明面材。
【請求項7】
前記第1面の周縁部および前記第2面の周縁部のうちのいずれか一方に遮光部が設けられた、請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の粘着層付き透明面材。
【請求項8】
請求項に記載の粘着層付き透明面材と、
前記粘着層付き透明面材の前記第1面に貼合された透明支持体と、
前記粘着層付き透明面材の前記第2面に貼合された表示装置本体と、を備えた、表示装置。
【請求項9】
前記露出部は、少なくとも前記第1面に設けられた、請求項に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着層付き透明面材および表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表示装置の一つの利用形態として、表示装置を表示面が外側を向くように店舗のショーウインドウ、オフィスの壁面ガラス等に貼合する形態が検討されている。この形態によれば、通行人は店舗やオフィスの外部からガラスを通して表示を視認できるため、表示装置を看板、広告等に利用できる。例えば、下記の特許文献1には、粘着層が両面にそれぞれ設けられた粘着層付き透明面材を介して、液晶パネル等の表示装置本体をウインドウガラスに貼合した構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2015/072380号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の粘着層付き透明面材を用いて表示装置の貼合作業を行う場合、例えば作業者が粘着層付き透明面材の端部を手で持った際に、粘着材が手に付着し、貼合作業の作業性が低下する、という問題があった。あるいは、作業者が貼合作業を行う際に、粘着層付き透明面材を保持するための保持具等の治具を用いた場合にも、粘着材が治具に付着し、貼合作業の作業性が低下する、という問題があった。
【0005】
また、表示装置を例えば店舗の看板、広告等に利用した後、場合によっては表示装置をウインドウガラスから撤去し、店舗内の原状回復が必要になる場合がある。その場合、作業者が粘着層付き透明面材をウインドウガラスから剥離しにくい、という問題があった。
【0006】
本発明の一つの態様は、表示装置をガラス等の透明支持体に貼合する際の貼合作業、もしくは透明支持体から剥離する際の剥離作業を容易に行うことができる粘着層付き透明面材を提供する。また、本発明の一つの態様は、粘着層付き透明面材を備え、表示品位に優れた表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの態様の粘着層付き透明面材は、第1面と第2面とを有する透明面材と、前記第1面に設けられた第1粘着層と、前記第2面に設けられた第2粘着層と、を備え、前記透明面材は、前記第1面の周縁部において前記第1粘着層から前記第1面が露出した露出部、および前記第2面の周縁部において前記第2粘着層から前記第2面が露出した露出部のうちの少なくとも一方を備える。
【0008】
本発明の一つの態様の粘着層付き透明面材において、前記第1面の法線方向から見た前記透明面材の平面形状は、矩形であってもよく、前記露出部は、前記矩形の4辺のうちの少なくとも2辺に沿った領域であって、該2辺上それぞれの一部に設けられていてもよい。
【0009】
本発明の一つの態様の粘着層付き透明面材において、前記露出部は、前記矩形の互いに対向する2辺に沿った領域であって、該2辺上それぞれの一部に設けられていてもよい。
【0010】
本発明の一つの態様の粘着層付き透明面材において、前記第1面の法線方向から見た前記透明面材の平面形状は、長方形であってもよく、前記露出部は、前記長方形の互いに対向する2つの長辺に沿った領域であって、該2辺上それぞれの一部に設けられていてもよい。
【0011】
本発明の一つの態様の粘着層付き透明面材において、前記露出部は、前記矩形の4辺に沿った領域であって、該4辺上それぞれの一部に設けられていてもよい。
【0012】
本発明の一つの態様の粘着層付き透明面材において、前記第1面の法線方向から見た前記透明面材の平面形状は、矩形であってもよく、前記露出部は、前記矩形の角部に設けられていてもよい。
【0013】
本発明の一つの態様の粘着層付き透明面材において、前記第1面は、前記透明面材の中央部に位置する第1平坦面と、前記透明面材の周縁部において前記第1平坦面に対して傾斜するとともに前記第1平坦面に垂直な端面に接する第1傾斜面と、を有し、前記第2面は、前記透明面材の中央部に位置する第2平坦面と、前記透明面材の周縁部において前記第2平坦面に対して傾斜するとともに前記第2平坦面に垂直な端面に接する第2傾斜面と、を有していてもよく、前記露出部は、前記第1傾斜面および前記第2傾斜面に設けられていてもよい。
【0014】
本発明の一つの態様の粘着層付き透明面材において、前記第1面の周縁部および前記第2面の周縁部のうちのいずれか一方に遮光部が設けられていてもよい。
【0015】
本発明の一つの態様の表示装置は、本発明の一つの態様の粘着層付き透明面材と、前記粘着層付き透明面材の前記第1面に貼合された透明支持体と、前記粘着層付き透明面材の前記第2面に貼合された表示装置本体と、を備える。
【0016】
本発明の一つの態様の表示装置において、前記露出部は、少なくとも前記第1面に設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一つの態様によれば、表示装置をガラス板等の透明支持体に貼合する際の貼合作業、もしくは透明支持体から剥離する際の剥離作業を容易に行うことができる粘着層付き透明面材を提供できる。また、本発明の一つの態様によれば、粘着層付き透明面材を備え、表示品位に優れた表示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態の粘着層付き透明面材の平面図である。
図2図1のA-A’線に沿う断面図である。
図3】粘着層付き透明面材を第1面の側から見た平面図である。
図4】第1実施形態の粘着層付き透明面材を含む表示装置の断面図である。
図5図4のB部分の拡大断面図である。
図6】第2実施形態の粘着層付き透明面材を第1面の側から見た平面図である。
図7】粘着層付き透明面材を透明支持体に貼合する方法の一例を示す図である。
図8】粘着層付き透明面材を透明支持体に貼合する方法の他の例を示す図である。
図9】第3実施形態の粘着層付き透明面材を第1面の側から見た平面図である。
図10】第4実施形態の粘着層付き透明面材を第1面の側から見た平面図である。
図11】従来の粘着層付き透明面材の製造時の問題点を示す図である。
図12】第5実施形態の粘着層付き透明面材の断面図である。
図13】従来の粘着層付き透明面材の使用時の問題点を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、図1図5を用いて説明する。
以下の各図面においては各構成要素を見やすくするため、構成要素によって寸法の縮尺を異ならせて示すことがある。
【0020】
本明細書における「透明」とは、面材と表示装置本体の表示面とを粘着層を介して空隙なく貼合した後に、表示装置本体の表示画像の全体または一部が光学的な歪をほとんど受けることなく面材を通して視認できる態様を意味する。したがって、表示装置本体から面材に入射する光の一部が面材により吸収、反射するもの、または光学的な位相の変化等により面材の可視光線透過率が低いものであっても、面材を通して光学的な歪がほとんどなく表示装置本体の画像を視認できるものであれば、「透明」であると言える。
【0021】
〈粘着層付き透明面材〉
図1は、第1実施形態の粘着層付き透明面材の平面図である。図2は、図1のA-A’線に沿う断面図である。図3は、粘着層付き透明面材を第1面の側から見た平面図である。なお、図3は、図1および図2に示す粘着層付き透明面材から第1保護フィルムおよび第2保護フィルムを剥離した状態を示している。
【0022】
図1および図2に示すように、第1実施形態の粘着層付き透明面材1は、透明面材2と、遮光部3と、第1粘着層4と、第2粘着層5と、第1保護フィルム6と、第2保護フィルム7と、を備えている。遮光部3は、透明面材2の第2面2bの周縁部に設けられている。第1粘着層4は、透明面材2の第1面2aに設けられている。第2粘着層5は、透明面材2の第2面2bに設けられている。第2粘着層5の面積は、第1粘着層4の面積よりも小さい。
【0023】
(透明面材)
透明面材2は、粘着層付き透明面材1の芯材となる部材であって、後述する表示装置本体を透明支持体に貼合する際に表示装置と透明支持体との間に介在させる板状の部材である。透明面材2の例として、ガラス板、樹脂板等が挙げられる。表示装置本体からの射出光や反射光に対して透明性が高い点はもちろん、耐光性、低複屈折性、高い平面精度、耐表面擦傷性、高い機械的強度を有する点から、透明面材2としてガラス板を用いることが最も好ましい。透明面材2として、第1粘着層4および第2粘着層5を構成する光硬化性樹脂組成物を硬化させる光に対して高い透過率を有する点でも、ガラス板の使用が好ましい。
【0024】
ガラス板の例として、ソーダライムガラス等のガラス材料が挙げられる。さらにガラス板として、鉄分がより低く、青みの少ない高透過ガラス(白板ガラス)がより好ましい。安全性を高めるために、表面材として強化ガラスを用いてもよい。特に薄いガラス板を用いる場合には、化学強化を施したガラス板を用いることが好ましい。第1粘着層4を介して透明面材2を透明支持体に貼合する際に、後述するように、透明面材2の全体またはその一部を湾曲させることがある。その場合、透明面材2の破損を防止する点から、化学強化が施されたガラス板を用いることが好ましい。樹脂板の例としては、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等の透明性の高い樹脂材料が挙げられる。
【0025】
透明面材2には、第1粘着層4および第2粘着層5との界面接着力を向上させるための表面処理を施してもよい。表面処理の方法として、例えば透明面材2の表面をシランカップリング剤で処理する方法、フレームバーナーによる酸化炎により酸化ケイ素薄膜を形成する方法等が挙げられる。
【0026】
透明面材2の形状は、貼合しようとする表示装置本体の平面形状に合わせて決定すればよく、図1に示すように、一例として矩形であり、さらには長方形である。透明面材2の厚さは、機械的強度、透明性等の点から、ガラス板であれば、0.1~30mm程度が好ましく、0.1~20mmがより好ましく、0.2~2.0mm程度がさらに好ましい。観察者に表示が奥に引っ込んで見える感覚(奥行き感)を強く感じさせないためには、透明面材2の厚さは0.2~0.7mm程度がより好ましい。樹脂板であれば、透明面材2の厚さは0.1~1.0mm程度が好ましい。観察者に表示の奥行き感を強く感じさせないためには、透明面材2の厚さは0.1~0.3mm程度がより好ましい。
【0027】
(遮光部)
遮光部3は、本実施形態の粘着層付き透明面材を表示装置本体と透明面材との貼合に用いる場合に、表示装置本体の画像表示領域以外の領域(画像表示領域の外側の領域)が見えないように、表示装置本体に接続されたフレキシブルプリント配線板等の付属部品を隠す機能を有する。
本実施形態の場合、遮光部3は、透明面材2の2つの面2a,2bのうち、表示装置本体を貼合する側の面である第2面2bに設けられている。図1に示すように、透明面材2の第1面2aの法線方向から見て、遮光部3は、矩形の透明面材2の4辺に沿う周縁部に枠状に形成されている。遮光部3の内側の開口領域3hは、表示装置本体を貼合した際に表示装置本体の画像表示領域とほぼ一致する。本実施形態の場合、透明面材2の第1面および/または第2面の周縁部が露出した露出部2cを通して外光が入射するおそれがあるが、図1に示すように、遮光部3が露出部2cを完全に覆うように設けられているので、外光が観察者に見えてしまうことを防止できる。
【0028】
透明面材2がガラス板の場合、黒色顔料を含むセラミック印刷等の印刷法を用いて遮光部3を形成すると、遮光性が高い点で好ましい。透明面材2として化学強化ガラス板を用いる場合には、遮光インクとして有機系材料を用いることで印刷時の透明面材2の焼成温度を低下させることができる。ただし、遮光部3は、必ずしも印刷法により形成されたものでなくてもよい。例えば、別途作製した遮光部3と透明面材2とを貼合させてもよい。その他、種々の薄膜形成法を用いて遮光部3を形成できる。
【0029】
(第1粘着層)
第1粘着層4は、粘着層付き透明面材1を例えばウインドウガラス等の透明支持体と貼合する。図2に示すように、第1粘着層4は、透明面材2の2つの面2a,2bのうち、透明支持体と貼合する側の面である第1面2aに設けられている。第1粘着層4は、後述する液状の光硬化性樹脂組成物等を硬化させた透明樹脂シートから構成されている。なお、透明面材1と第1粘着層4との間にタッチセンサ(図示せず)が設けられていてもよい。
【0030】
図3に示すように、第1粘着層4は、透明面材2の第1面2aの全域を覆っておらず、第1面2aの一部の領域には設けられていない。具体的には、第1面2aの平面形状をなす長方形の互いに対向する2つの長辺の各々に沿った領域の一部に、第1粘着層4が存在しない2つの部分2cが設けられている。したがって、透明面材2は、第1面2aの周縁部において第1粘着層4から第1面2aが露出した4つの部分2cを有している。本明細書においては、第1粘着層4が存在しない領域であって第1粘着層4から第1面2aが露出した部分2c、および後述する第2粘着層5が存在しない領域であって第2粘着層5から第2面2bが露出した部分2cを露出部2cと称する。図3においては、第1面2aの上側の長辺に沿って2つの露出部2cが互いに離間して設けられている。同様に、第1面2aの下側の長辺に沿って2つの露出部2cが互いに離間して設けられている。
【0031】
露出部2cの幅W(第1面の短辺方向の寸法)は、例えば1~5mm程度である。また、露出部2cの長さL(第1面の長辺方向の寸法)は、例えば10~30mm程度である。露出部2cの大きさは、粘着層付き透明面材1を取り扱う作業者が粘着層付き透明面材2の端面2fに手を掛けた際に、指が第1粘着層4に多く触れない程度の寸法とすることが望ましい。また、本実施形態では、露出部2cの形状を矩形状とするが、例えば多角形状、半円形状などの他の形状であってもよいし、不定形であってもよい。
【0032】
第1粘着層4は、光硬化性樹脂組成物、熱硬化性樹脂組成物、光および熱硬化性樹脂組成物等が硬化することで得られる。「光硬化性樹脂組成物」とは、露光によって硬化し得る樹脂組成物を意味する。「熱硬化性樹脂組成物」とは、加熱によって硬化し得る樹脂組成物を意味する。「光および熱硬化性樹脂組成物」とは、露光および加熱によって硬化し得る樹脂組成物を意味する。「露光」は、紫外線等の光を照射することを意味する。硬化性組成物としては、低温で硬化でき、硬化速度が速い点から、光硬化性樹脂組成物が好ましい。
【0033】
第1粘着層4の25℃、周波数1Hzでの貯蔵せん断弾性率は、5×10~1×10Paの範囲にあることが好ましく、1×10~1×10Paの範囲にあることがより好ましい。第1粘着層4の貯蔵せん断弾性率が5×10Pa以上であれば、第1粘着層4の形状を維持しやすい。また、第1粘着層4の貯蔵せん断弾性率が5×10Pa以上であれば、透明面材2、および透明面材2の第2粘着層5に貼合された部材を透明支持体に充分に固定することができ、粘着層付き透明面材1と透明支持体とを貼合する際に、第1粘着層4が貼合時の圧力などで変形しにくい点で好ましい。一方、第1粘着層4の貯蔵せん断弾性率が1×10Pa以下であれば、粘着層付き透明面材1と透明支持体との貼合時に気泡が発生したとしても、その気泡が短時間で消失し、残存しにくい点で好ましい。
【0034】
第1粘着層4の厚さは、0.1~2.0mm程度が好ましく、0.2~1.0mm程度がより好ましい。第1粘着層4の厚さが0.1mm以上であれば、透明支持体側からの外力による衝撃等を第1粘着層4が効果的に緩衝し、表示装置本体を保護できる。また、透明支持体と粘着層付き透明面材1との間に第1粘着層4の厚さを超えない異物が混入しても、第1粘着層4の厚さが大きく変化することがなく、光透過性能への影響が少ない。第1粘着層4の厚さが2.0mm以下であれば、第1粘着層4を介して透明面材2を透明支持体に貼合しやすく、表示装置の全体の厚さが不要に厚くならない。
【0035】
光硬化性樹脂組成物は、溶剤を除去するための加熱を行う必要がない点で、無溶剤型であることが好ましい。「無溶剤型」とは、溶剤を含まない、または溶剤の含有割合が、光硬化性樹脂組成物の総質量(100質量%)のうち、5質量%以下であることを意味する。「溶剤」とは、沸点が150℃以下の液体(揮発性希釈剤)を意味する。
光硬化性樹脂組成物は、乾燥工程が省ける点、時間とエネルギーを省くことができる点で、溶剤を含まないことが最も好ましい。
硬化性組成物は、典型的には、硬化性基を有する硬化性化合物(A)と、光重合開始剤(B)とを含む。必要に応じて、光重合開始剤(B)以外の他の非硬化性成分が含まれてもよい。非硬化性成分としては、非硬化性ポリマー(C)、連鎖移動剤(D)、他の添加剤等が挙げられる。
硬化性化合物(A)としては、アクリル系、シリコーン系、ウレタンアクリレート系、エポキシ系等の化合物が挙げられる。中でも、粘着層30の貯蔵弾性率G’を5×10~1×10Paに調整しやすい点で、硬化性化合物(A)は、シリコーン系またはウレタンアクリレート系が好ましい。さらに、粘着層30のゲル分率を1~50%に調整しやすい点で、硬化性化合物(A)は、ウレタンアクリレート系がより好ましい。
【0036】
(第2粘着層)
第2粘着層5は、粘着層付き透明面材1を表示装置本体と貼合する。第2粘着層5は、透明面材2の2つの面2a,2bのうち、表示装置本体と貼合する側の面である第2面2bに設けられている。上述したように、第2粘着層5の面積は、第1粘着層4の面積よりも小さい。具体的には、第1粘着層4が4つの露出部2cを除く第1面2aの全域に設けられているのに対し、第2粘着層5は、第2面2bの平面形状をなす矩形の中央部に設けられ、矩形の4辺に沿った周縁部には設けられていない。
【0037】
第2粘着層5の構成材料は、第1粘着層4の構成材料と同じであってもよいし、第1粘着層4の構成材料と異なっていてもよい。第2粘着層5は、表示装置の表示パネルと貼合されるため、表示パネルに悪影響を及ぼさないように、より軽微な貼合圧力において空隙を残さずに貼合できることが好ましい。そのために、硬化性化合物中の非硬化成分の含有量を増やす、連鎖移動剤の含有量を調整するなどの方法を採用する。また、第2粘着層5には、第1粘着層4および透明面材2を透過した外光が入射するため、第1粘着層4よりも少ない紫外線吸収剤を含有してもよい。
【0038】
第2粘着層5の厚さは、第1粘着層4の厚さと同じであってもよいし、第1粘着層4の厚さと異なっていてもよい。具体的には、第2粘着層5は、第1粘着層4よりも薄くてもよく、例えば第2粘着層5の厚さは、第1粘着層4の厚さの1/2程度であってもよい。その理由は、表示装置本体と透明面材との間に介在する第2粘着層5は、例えばウインドウガラス等の透明支持体と透明面材との間に介在する第1粘着層4ほどの緩衝性は要求されないからである。
【0039】
第2粘着層5の貯蔵せん断弾性率は、第1粘着層4の貯蔵せん断弾性率と同じであってもよいし、第1粘着層4の貯蔵せん断弾性率と異なっていてもよい。第2粘着層5は表示装置に直接接触するため、例えばIPSモードの液晶表示装置のように、表示面への透明面材の貼合に際して表示画像の均一性が損なわれるおそれがある場合には、より弾性率の小さい粘着層を形成できる構成材料を用いる、第2粘着層5の厚みを大きくする等の対策を施すことが好ましい。
【0040】
図2に示すように、第2粘着層5は、透明面材2の第2面2bのうち、枠状の遮光部3に囲まれた領域と、遮光部3の一部と平面的に重なる領域と、にわたって設けられている。第2粘着層5は、表示装置本体の画像表示領域に対応する部分と貼合されるため、遮光部3に囲まれた領域、すなわち遮光部3よりも内側の領域にのみ設けられていてもよい。しかし、本実施形態のように、第2粘着層5が遮光部3の一部と平面的に重なる場合、第2粘着層5が遮光部3の一部と平面的に重なる領域は、第2粘着層5と遮光部3とを位置合わせする際のアライメントマージンとして機能する。そのため、第2粘着層5と遮光部3との位置合わせが多少ずれたとしても、第2粘着層5は遮光部3に囲まれた領域内に容易に形成される。これにより、表示装置本体が透明面材2に充分高い強度で固定されるとともに、第2粘着層5の縁が遮光部3に隠れ、第2粘着層5の縁が見えることによる表示品位の低下が生じることがない。
【0041】
(第1保護フィルムおよび第2保護フィルム)
第1保護フィルム6は、粘着層付き透明面材1の未使用時に第1粘着層4を保護し、使用時には第1粘着層4から剥離される。同様に、第2保護フィルム7は、粘着層付き透明面材1の未使用時に第2粘着層5を保護し、使用時には第2粘着層5から剥離される。そのため、第1保護フィルム6および第2保護フィルム7は、第1粘着層4または第2粘着層5から容易に剥離できる程度に密着していることが求められる。この点から、第1保護フィルム6および第2保護フィルム7として、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素系樹脂等からなる密着性の比較的低い基材フィルムが第1粘着層4または第2粘着層5に接触する保護フィルムを用いることが好ましい。
【0042】
第1保護フィルム6および第2保護フィルム7の粘着面の粘着力は、アクリル板に対する剥離速度300mm/分での180度剥離試験における50mm幅の試験体にて0.01~1Nが好ましく、0.02~0.6Nがさらに好ましい。第1保護フィルム6または第2保護フィルム7の好適な厚さは、用いる樹脂により異なるが、ポリエチレン、ポリプロピレン等の比較的柔軟なフィルムを用いる場合には0.03~0.2mmが好ましく、0.06~0.1mmがさらに好ましい。厚さが0.04mm以上であると、粘着層から保護フィルムを剥離する際に保護フィルムの変形を抑えることができる。厚さが0.2mm以下であると、剥離時に保護フィルムが撓みやすく、剥離させやすい。
【0043】
第1粘着層4および第2粘着層5からの剥離をさらに容易にするため、第1保護フィルム6および第2保護フィルム7に、第1粘着層4および第2粘着層5に悪影響を与えない範囲において、シリコーン等の離型剤を塗布してもよい。第1粘着層4および第2粘着層5からの剥離時に第1保護フィルム6および第2保護フィルム7の端部を保持しやすいように、透明面材2よりも大きな寸法の第1保護フィルム6および第2保護フィルム7を用いることが好ましい。
【0044】
(表示装置)
図4は、第1実施形態の粘着層付き透明面材1を含む表示装置の断面図である。図5は、図4のB部分の拡大断面図である。
【0045】
図4および図5に示すように、第1実施形態の表示装置10は、表示装置本体11と、粘着層付き透明面材1と、透明支持体12と、を備えている。透明支持体12は、第1粘着層4が設けられた粘着層付き透明面材1の第1面1aに貼合されている。表示装置本体11は、粘着層付き透明面材1の第2面1bに貼合されている。
第1実施形態において、透明支持体12は、一定の支持力を有するものであれば特に限定されず、例えば店舗やオフィス等に用いられるウインドウガラスが用いられる。表示装置本体11は、例えば液晶表示装置である。粘着層付き透明面材1は、図2に示す粘着層付き透明面材1から第1保護フィルム6と第2保護フィルム7とが剥離されている。透明面材2は、第1粘着層4を介して透明支持体12に貼合されている。表示装置本体11は、第2粘着層5を介して透明面材2に貼合されている。なお、透明面材2の透明支持体12側にタッチセンサ(図示せず)を設けた粘着層付き透明面材1を用いても構わない。その場合は、透明支持体12の外側から触れることで、表示装置10を操作することができる。
このとき、透明支持体12として、レンチキュラーシートを用いてもよい。レンチキュラーシートは、光が入射する側(第1粘着層4側)の面にレンチキュラーレンズを有し、光を射出する側(観察者側)の面に垂直方向に表示光を広げるための拡散シートが積層された構成が一般的である。透明支持体12としてレンチキュラーシートを用いることで、表示画像の広がりを制御でき、さらには表示画像に立体感を付与することも可能となる。
【0046】
図5に示すように、表示装置本体11は、液晶パネル14と、一対の偏光板15,16と、バックライト17(照明装置)と、フレーム18と、ケース19と、を備える。液晶パネル14は、一対のガラス基板21,22と、これらガラス基板21,22の間に封入された液晶(図示略)と、を備える。液晶パネル14の駆動方式は特に限定されないが、例えばインプレイン・スイッチング(In-Plane Switching)等の横電界方式の液晶パネルが挙げられる。一対のガラス基板21,22は、薄膜トランジスタ(TFT)を備えたTFT素子基板と、カラーフィルターを備えたカラーフィルター基板と、から構成されている。
【0047】
一対の偏光板15,16は、液晶パネル14の両面に液晶パネル14を挟持するように貼合されている。その他、各偏光板15,16と液晶パネル14との間に、位相差板等の光学フィルムが配置されることもある。一対の偏光板15,16のうち、バックライト17と反対側に位置する偏光板16が第2粘着層5を介して透明面材2に貼合されることにより、液晶パネル14は透明支持体12に固定されている。
【0048】
バックライト17は、発光ダイオード(LED)等の発光素子23と、導光板24と、プリズムシート、光拡散シート等の複数の光学フィルム25と、ミラー26と、を備える。発光素子23から射出された光は、導光板24に入射して内部を導光する間にミラー26で反射し、複数の光学フィルム25を介して液晶パネル14に向けて射出される。複数の光学フィルム25は、導光板24から射出された光の強度を均一化する機能を有する。そのため、複数の光学フィルム25と液晶パネル14とは、間隔をおいて配置されている。
【0049】
液晶パネル14は、比較的軽量であるため、粘着層付き透明面材1を介して液晶パネル14の画像表示領域の部分を透明支持体12に貼合することによって、透明支持体12に支持される。しかし、バックライト17の重量が大きいため、たとえ液晶パネル14とバックライト17とが固定されていたとしても、液晶パネル14を透明支持体12に貼合しただけで表示装置本体11の全体を透明支持体12に支持させることは難しい。そのため、表示装置本体11の構成要素のうち、バックライト17は、液晶パネル14とは別に透明支持体12に支持させる必要がある。
【0050】
バックライト17を透明支持体12に支持させる構成として、第1実施形態の場合、バックライト17は、断面がL字状のアングル28(支持部材)により粘着層付き透明面材1に固定されている。詳細には、バックライト17を固定するためのアングル28は、透明面材2の第2面2b上の遮光部3に両面粘着テープ29により固定されている。バックライト17はフレーム18に固定され、フレーム18はケース19に固定されている。ケース19は、ボルト30によりアングル28に固定されている。以上の構成により、バックライト17は、粘着層付き透明面材1を介して透明支持体12に固定されている。このように、遮光部3の一部を露出させた上でアングル28を両面粘着テープ29によって遮光部3に固定する構成を採用したことにより、バックライト17を含む表示装置本体11を強固に固定できる。
【0051】
表示装置本体11を透明支持体12に貼合する手順としては、粘着層付き透明面材1から第1保護フィルム6を剥離し、粘着層付き透明面材1を透明支持体12に貼合した後、第2保護フィルム7を剥離し、透明支持体12に貼合された粘着層付き透明面材1の上に表示装置本体11を貼合すればよい。または、粘着層付き透明面材1から第2保護フィルム7を剥離し、粘着層付き透明面材1を表示装置本体11に貼合した後、第1保護フィルム6を剥離し、粘着層付き透明面材1が貼合された表示装置本体11を透明支持体12に貼合してもよい。
【0052】
透明支持体12へ貼合に際して、粘着層付き透明面材1、あるいは表示装置本体11が貼合された粘着層付き透明面材1を、全体にまたは局所的に湾曲させながら貼合させることがある。その場合には、湾曲の容易さから、粘着層付き透明面材1のみを先に透明支持体12に貼合する方が好ましい。
【0053】
一方、透明支持体12に貼合された表示装置本体11を透明支持体12から剥離したい場合もある。その場合にも、湾曲させながら貼合物を剥離することがあり、最初に表示装置本体11を粘着層付き透明面材1から剥離し、その後に粘着層付き透明面材1を透明支持体12から剥離してもよい。そのために、第1粘着層4と透明支持体12、および第1粘着層4と透明面材2の界面密着力は、第2粘着層と表示装置本体11、および第2粘着層と透明面材2の界面密着力より大きくすることが好ましい。もしくは、最初に表示装置本体11が貼合された粘着層付き透明面材1を透明支持体12から剥離し、その後に粘着層付き透明面材1を表示装置本体11から剥離してもよい。
【0054】
また、粘着層付き透明面材1を剥離した後、透明支持体12上に第1粘着層4が残存することがなく、透明支持体12、すなわちウインドウガラスが表示装置本体11を貼合する前の状態に原状回復できることが好ましい。そのためには、第1粘着層4と透明支持体12との界面密着力は、第1粘着層4と透明面材2との界面密着力よりも小さいことが好ましい。このような密着力の大小関係を実現するためには、第1粘着層4、および第2粘着層5の構成材料として、硬化性化合物(A)中のモノマー成分の比率、非硬化成分や連鎖移動剤の含有量により調整することができる。被着体がガラス板の場合には、非硬化成分の含有量を抑えるなどの方法によって界面密着力を大きくできる。また、連鎖移動剤の含有量を高めることによりガラス面への密着力を大きくすることもできる。
【0055】
(作用および効果)
第1実施形態の粘着層付き透明面材1においては、透明面材2の第1面2aの互いに対向する2つの長辺の各々に沿って2つの露出部2cが互いに離間して設けられている。そのため、粘着層付き透明面材1を透明支持体12に貼合する作業を行う際に、従来に比べて作業効率が向上し、貼合作業を容易に行うことができる。例えば大型の粘着層付き透明面材1をウインドウガラスに貼合する際に、2人の作業者が粘着層付き透明面材1の第1面2aを下に向けて手で持つ場合が考えられる。この場合、一人の作業者は、図3に示す右側の2つの露出部2cに指が掛かるように粘着層付き透明面材1を持ち、他の作業者は、図3に示す左側の2つの露出部2cに指が掛かるように粘着層付き透明面材1を持つことにより、作業者の手に粘着剤が付着するおそれが少なく、作業効率を高めることができる。このように、第1実施形態の粘着層付き透明面材1は、従来の粘着層付き透明面材に比べ、運搬時、作業時等のハンドリング性を向上させることができる。
【0056】
また、粘着層付き透明面材1を透明支持体12から剥離する作業を行う際にも、従来に比べて作業効率が向上し、剥離作業を容易に行うことができる。例えば、従来の粘着層付き透明面材においては、透明面材2の第1面2aの全域に第1粘着層4が設けられていたため、透明面材2と透明支持体12との間に作業者が剥離のための治具や指を入れる隙間がなく、剥離作業に手間や時間が掛かっていた。これに対し、第1実施形態の粘着層付き透明面材1によれば、露出部2cにおいては透明面材2と透明支持体12との間に隙間があるため、作業者はこの隙間に治具や指を入れて粘着層付き透明面材1を透明支持体12から剥離することができる。
【0057】
本実施形態の表示装置10は、上述した粘着層付き透明面材1と透明支持体12と表示装置本体11とを備えているため、表示品位に優れる。
【0058】
また、第1実施形態の表示装置10によれば、粘着層付き透明面材1に画像表示領域の周囲を囲む遮光部3が備えられているため、新たに遮光部を設けることなく、液晶パネル14に接続された配線部材等の付属部品を隠すことができる。特に第1実施形態の場合、遮光部3が透明面材2の第2面2bに設けられているため、遮光部3と画像表示面との奥行き方向の距離が近い。そのため、遮光部3からなる額縁部分に対して表示が奥まって見えることがなく、額縁部分と画像表示面との段差により表示の視認性が低下することを防止できる。
【0059】
なお、第1実施形態の構成に代えて、例えば第2粘着層5が透明面材2の第2面2bの全域にわたって設けられていてもよい。この場合でも、上述した第1実施形態と同様に、透明面材2の第1面2aに露出部が設けられていれば、ハンドリング性を向上させることができる。
【0060】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態について、図6図8を用いて説明する。
第2実施形態の粘着層付き透明面材の基本構成は第1実施形態と同様であり、露出部の構成が第1実施形態と異なる。
図6は、第2実施形態の粘着層付き透明面材を第1面側から見た平面図である。また、図6は、粘着層付き透明面材から第1保護フィルムおよび第2保護フィルムを剥離した状態を示している。図7は、粘着層付き透明面材を透明支持体に貼合する方法の一つの例を示す図である。図8は、粘着層付き透明面材を透明支持体に貼合する方法の他の一例を示す図である。
図6図8において、第1実施形態で用いた図面と共通の構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0061】
図6に示すように、第2実施形態の粘着層付き透明面材31においては、透明面材2の第1面2aの2本の長辺の各々に沿って2つの露出部2cが互いに離間して設けられている。また、透明面材2の第1面2aの一方の短辺に沿って2つの露出部2jが互いに離間して設けられている。短辺に沿った露出部2jの形状、寸法等は、長辺に沿った露出部2cの形状、寸法等と同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。粘着層付き透明面材31のその他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0062】
粘着層付き透明面材31を透明支持体12に貼合する一つの方法として、図7に示すように、粘着層付き透明面材31を任意の方法で支持しつつ湾曲させた状態として、透明支持体12に押し付けながら貼合させる方法がある。図7の例では、粘着層付き透明面材31の第1面2aの一端側を透明支持体12に先に貼合し、第1面2aの他端を保持具33によって保持して透明支持体12から浮かしつつ、第1面2aの一端から他端に向けてローラー34を長辺方向に移動させることによって粘着層付き透明面材31を押圧し、透明支持体12に貼合する。
【0063】
このような方法によれば、粘着層付き透明面材31と透明支持体12との界面への気泡の侵入が抑制され、粘着層付き透明面材31を透明支持体12に対して均等に貼合することができる。なお、ローラー34を移動させる方向は、粘着層付き透明面材31の長辺方向および短辺方向のいずれでもよいが、粘着層付き透明面材31を湾曲させやすいという点では、粘着層付き透明面材31の長辺方向とすることが好ましい。
【0064】
第2実施形態の粘着層付き透明面材31においては、第1実施形態と同様、透明面材2の第1面2aの互いに対向する2つの長辺の各々に沿って2つの露出部2cが設けられているため、第1実施形態と同様、粘着層付き透明面材31のハンドリング性を向上させることができる。
【0065】
さらに、透明面材2の第1面2aの一方の短辺に沿って2つの露出部2jが設けられているため、図7に示したように、保持具33を露出部2jに引っ掛ける際に粘着剤が保持具33に付着することを抑制できる。これにより、上記の方法による貼合作業を容易に行うことができる。
【0066】
また、粘着層付き透明面材31を透明支持体12から剥離する場合にも露出部2c,2jに治具や指を引っ掛けて力を加え、粘着層付き透明面材31を湾曲させるようにして透明支持体12から剥離することができる。この場合も、粘着剤が治具や指に付着することを抑制でき、剥離作業を容易に行うことができる。
【0067】
粘着層付き透明面材31を透明支持体に貼合する他の一つの方法として、図8に示すように、粘着層付き透明面材31を吸着治具35に吸着させ、粘着層付き透明面材31を吸着治具35ごと透明支持体12に押し付けて貼合させる方法がある。吸着治具35を用いる場合には、粘着層付き透明面材31を吸着治具35に吸着させる方法に応じて、露出部2cが透明面材2の第1面2aに設けられることが好ましい場合と、露出部が透明面材2の第2面2bに設けられることが好ましい場合とがある。
【0068】
粘着層付き透明面材31を吸着治具35に吸着させる際に、作業者が例えば机の上に粘着層付き透明面材31を載置し、粘着層付き透明面材31の上方から吸着治具35を当接させる方法と、作業者が例えば机の上に吸着治具35を載置し、吸着治具35の上に粘着層付き透明面材31を載置する方法と、がある。
【0069】
前者の場合、粘着層付き透明面材31を机上に載置する際に粘着層付き透明面材31の下側となる面に保持具や指等が接触するため、図8に示すように、露出部2cは、粘着層付き透明面材31の吸着治具35に対向する側と反対側の面、すなわち透明面材2の第1面2aに設けられることが好ましい。これに対して、後者の場合、粘着層付き透明面材31を吸着治具35の上に載置する際に粘着層付き透明面材31の下側となる面に保持具や指等が接触するため、露出部は、粘着層付き透明面材31の吸着治具35に対向する側の面、すなわち透明面材2の第2面2bに設けられることが好ましい。
【0070】
いずれの方法を用いる場合も、剥離作業のしやすさを合わせて考えると、露出部2c,2jは、粘着層付き透明面材31の吸着治具35に対向する側と反対側の面(透明支持体12と接触する側の面)、すなわち透明面材2の第1面2aに少なくとも設けられることが好ましい。
【0071】
[第3実施形態]
以下、本発明の第3実施形態について、図9を用いて説明する。
第3実施形態の粘着層付き透明面材の基本構成は第1実施形態と同様であり、露出部の構成が第1実施形態と異なる。
図9は、第3実施形態の粘着層付き透明面材を第1面側から見た平面図である。また、図9は、粘着層付き透明面材から第1保護フィルムおよび第2保護フィルムを剥離した状態を示している。
図9において、第1実施形態で用いた図面と共通の構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0072】
図9に示すように、第3実施形態の粘着層付き透明面材41において、露出部2kは、透明面材2の第1面2aの4つの角部のうち、1本の長辺を挟んで位置する2つの角部の各々に設けられている。露出部2kは、各角部を構成する長辺と短辺とこれらの辺に対して45°の角度をなす直線とで囲まれる3角形状の形状を有している。ただし、露出部2kの形状は、3角形に限らず、例えば矩形状、扇型などの形状であってもよい。また、露出部2kの寸法は、特に限定されない。粘着層付き透明面材41のその他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0073】
第3実施形態の粘着層付き透明面材41においては、透明面材2の第1面2aの1本の長辺を挟んで位置する2つの角部に露出部2kがそれぞれ設けられているため、作業者がこれらの露出部2kに治具や指を引っ掛けて力を加えることができ、特に剥離作業を行う際の作業性を向上させることができる。
【0074】
[第4実施形態]
以下、本発明の第4実施形態について、図10図11を用いて説明する。
第4実施形態の粘着層付き透明面材の基本構成は第1実施形態と同様であり、露出部の構成が第1実施形態と異なる。
図10は、第4実施形態の粘着層付き透明面材を第1面の側から見た平面図である。また、図10は、粘着層付き透明面材から第1保護フィルムおよび第2保護フィルムを剥離した状態を示している。
図10において、第1実施形態で用いた図面と共通の構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0075】
図10に示すように、第4実施形態の粘着層付き透明面材51において、露出部2mは、透明面材2の第1面2aの4辺に沿った領域に設けられている。露出部2mの幅は、長辺側の露出部の幅W1と短辺側の露出部の幅W2が等しくてもよいし、互いに異なっていてもよい。粘着層付き透明面材51のその他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0076】
本実施形態においても、粘着層付き透明面材51のハンドリング性が向上する、粘着層付き透明面材51の貼合作業や剥離作業を容易に行うことができる、といった第1~第3実施形態と同様の効果が得られる。
【0077】
また、第4実施形態の粘着層付き透明面材51は、以下の特有な効果を有する。
粘着層付き透明面材51を製造する際には、第1実施形態で述べたように、透明樹脂シートからなる第1粘着層4を別途作製し、第1粘着層4と透明面材2とを貼合する。ここで、図11に示すように、仮に露出部が設けられていなかったとすると、第1粘着層104と透明面材2とが同じ寸法であるため、第1粘着層104と透明面材2とを貼合する際に第1粘着層104と透明面材2との位置合わせずれが生じた場合、第1粘着層104が透明面材2の外側にはみ出す、という問題が生じる。
【0078】
これに対して、第4実施形態の粘着層付き透明面材51においては、透明面材2の第1面2aの4辺に沿った領域に露出部2mが設けられているため、露出部2mの幅W1,W2が第1粘着層4と透明面材2との位置合わせ誤差以上に設定されていれば、第1粘着層4と透明面材2とを貼合する際に第1粘着層4と透明面材2との位置合わせずれが長辺方向、短辺方向、もしくは回転方向のいずれの方向に生じたとしても、第1粘着層4が透明面材2の外側にはみ出すことがない。また、第1粘着層4と透明面材2との位置合わせ誤差だけでなく、第1粘着層4や透明面材2の寸法誤差が生じたとしても、第1粘着層4が透明面材2の外側にはみ出すことが抑えられる。これらの効果により、粘着層付き透明面材51の生産性が向上する。
【0079】
[第5実施形態]
以下、本発明の第5実施形態について、図12図13を用いて説明する。
第5実施形態の粘着層付き透明面材の基本構成は第1実施形態と同様であり、透明面材と露出部との構成が第1実施形態と異なる。
図12は、第5実施形態の粘着層付き透明面材の端部を示す断面図である。
図12において、第1実施形態で用いた図面と共通の構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0080】
図12に示すように、第5実施形態の粘着層付き透明面材61において、透明面材9の第1面9aは、透明面材9の中央部に位置する第1平坦面9a1と、透明面材9の周縁部において第1平坦面9a1に対して傾斜するとともに第1平坦面9a1に垂直な端面9fに接する第1傾斜面9a2と、を有している。同様に、透明面材9の第2面9bは、透明面材9の中央部に位置する第2平坦面9b1と、透明面材9の周縁部において第2平坦面9b1に対して傾斜するとともに第2平坦面9b1に垂直な端面9fに接する第2傾斜面9b2と、を有している。言い換えると、透明面材9の第1面9aおよび第2面9bと端面9fとによって構成される透明面材9の角部は、平面状の面取りが施されている。なお、ここでは、平面状の面取りの例が示されているが、角部が曲面状に丸められた面取りが透明面材9に施されていてもよい。
【0081】
本実施形態において、透明面材9の露出部9cは、第1傾斜面9a2および第2傾斜面9b2に設けられている。すなわち、第1粘着層4は、第1平坦面9a1上に設けられ、第1傾斜面9a2上には設けられていない。また、第2粘着層5は、第2平坦面9b1上に設けられ、第2傾斜面9b2上には設けられていない。したがって、本実施形態では平面図の図示は省略するが、粘着層付き透明面材61を第1平坦面9a1の法線方向から見たとき、露出部9cは、透明面材9の第1面9aの4辺に沿った領域および第2面9bの4辺に沿った領域に設けられている。粘着層付き透明面材61のその他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0082】
第5実施形態においても、粘着層付き透明面材61のハンドリング性が向上する、粘着層付き透明面材61の貼合作業や剥離作業を容易に行うことができる、といった第1~第4実施形態と同様の効果が得られる。
【0083】
また、第5実施形態の粘着層付き透明面材61は、以下の特有な効果を有する。
粘着層付き透明面材61を使用する際には、上述したように、第1保護フィルム6および第2保護フィルム7を透明面材9から剥離する。この際、図13に示すように、比較例の粘着層付き透明面材161では、第1粘着層204および第2粘着層205の端面が透明面材9の端面9fと同一平面をなす位置まで設けられていたとする。この場合、第2保護フィルム7を剥離しようとすると、第2粘着層205が第2保護フィルム7の側に付着したままの状態で透明面材9から剥離し、透明面材9の端部において第2粘着層205が透明面材9から浮き上がるおそれがある。この問題は、第2保護フィルム7の剥離が開始すべき位置(符号Dの位置)において、第2粘着層205が透明面材9に貼合されていないために生じる。その結果、粘着層付き透明面材161の周縁部において貼合強度が低下する、見栄えが悪くなる、などの問題が生じる。
【0084】
これに対して、第5実施形態の粘着層付き透明面材61においては、透明面材9の第1傾斜面9a2および第2傾斜面9b2に露出部9cが設けられているため、第2保護フィルム7の剥離が開始する位置(符号Dの位置)において、第2粘着層5が透明面材9に貼合されている。そのため、第2粘着層5が第2保護フィルム7の側に付着したままの状態で透明面材9から剥離することが抑えられ、第2保護フィルム7のみが第2粘着層5から剥離する。その結果、粘着層付き透明面材61の周縁部において貼合強度が低下する、見栄えが悪くなるなどの問題を改善できる。
【0085】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば上記実施形態では、透明面材の露出部が主に第1面に設けられている例を示したが、同様の露出部が第2面に設けられていてもよく、露出部が第1面と第2面の双方に設けられていてもよい。
【0086】
また、第1実施形態では、図3に示すように、透明面材の対向する2本の長辺に沿った領域に露出部が設けられている例を挙げたが、透明面材の対向する2本の短辺に沿った領域に露出部が設けられていてもよい。さらに、必ずしも対向する2本の辺に沿った領域でなくてもよく、例えば隣り合う2本の辺に沿った領域に露出部が設けられていてもよい。大型の粘着層付き透明面材の場合には対向する2本の辺に沿った領域に露出部が設けられていることが好ましいが、小型の粘着層付き透明面材であれば、隣り合う2本の辺に沿った領域の露出部を用いて粘着層付き透明面材を取り扱うこともできる。
【0087】
また、透明面材の表示装置本体側の面に遮光部が設けられている例を挙げたが、透明面材の透明支持体側の面に遮光部が設けられていてもよい。また、例えば対向する上下または左右の2辺に沿って配置された遮光部が設けられていてもよい。
【0088】
また、表示装置を構成する透明支持体として、店舗やオフィス等に用いられるウインドウガラスの例を挙げたが、ウインドウガラスに代えて、例えば、室内を仕切るガラスパーティション等の可動式部材を透明支持体として、これに表示装置本体を貼合してもよい。さらには、透明支持体として、レンチキュラーシートを用い、これに表示装置本体を貼合して、立体画像表示装置を構成してもよい。
【0089】
また、表示装置本体として、液晶ディスプレイの他、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、電子ペーパーディスプレイ等を用いてもよい。その他、粘着層付き透明面材および表示装置の各構成要素の形状、個数、配置、材料等については、上記実施形態に限ることなく、適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、電子ペーパーディスプレイ等の各種表示装置、およびこれを透明支持体に貼合する際に用いる粘着層付き透明面材に利用が可能である。
【符号の説明】
【0091】
1,31,41,51,61…粘着層付き透明面材、2,9…透明面材、2a,9a…(透明面材の)第1面、2b,9b…(透明面材の)第2面、2c,2j,2k,2m,9c…露出部、3…遮光部、4…第1粘着層、5…第2粘着層、9a1…第1平坦面、9a2…第1傾斜面、9b1…第2平坦面、9b2…第2傾斜面、10…表示装置、11…表示装置本体、12…透明支持体。
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