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特許7192374樹脂組成物及び該樹脂組成物から形成される物品
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  • 特許-樹脂組成物及び該樹脂組成物から形成される物品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】樹脂組成物及び該樹脂組成物から形成される物品
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/28 20060101AFI20221213BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
C08G18/28 005
C08L75/04
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018190898
(22)【出願日】2018-10-09
(65)【公開番号】P2020059789
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】小田 善之
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-089582(JP,A)
【文献】特表2015-518501(JP,A)
【文献】特開2019-019258(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00- 18/87
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
末端に式(1)で表される基を有するウレタン樹脂(a1)を含み、さらに、前記ウレタン樹脂(a1)とは異なるウレタン樹脂(a2)を含むものである改質剤。
【化1】
[式(1)中、
Ar1は、芳香族炭化水素基を表す。
1は、単結合、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基又はこれらの2種以上を組み合わせた基を表す。
1は、ウレタン結合基、ウレア結合基及びチオウレタン結合基からなる群より選ばれる1種を表す。
2は、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基又はこれらの2種以上を組み合わせた基を表す。]
【請求項2】
前記ウレタン樹脂(a1)のイソシアネート基当量が、200以上、3000以下である請求項1記載の改質剤。
【請求項3】
前記ウレタン樹脂(a1)の数平均分子量が、250以上、10,000以下である請求項1記載の改質剤。
【請求項4】
前記ウレタン樹脂(a1)に含まれる前記式(1)で表される基の量が、0.01mol/kg以上、10mol/kg以下である請求項1記載の改質剤。
【請求項5】
前記式(1)で表される基の量が、0.001mol/kg以上、10mol/kg以下である請求項1記載の改質剤。
【請求項6】
靱性改良剤又は耐衝撃性改良剤である請求項1記載の改質剤。
【請求項7】
請求項1記載の改質剤と、有機重合体とを含む樹脂組成物。
【請求項8】
請求項記載の樹脂組成物から形成される物品組成物から形成される物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物及び該樹脂組成物から形成される物品に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂は、その構造により多様な物理的・化学的特性を示すものであり、工業用品や日用品等様々な分野で活用されている。樹脂の特性を調整する主な手段としては、分子鎖の構造を制御する方法が代表的であるが、樹脂の機械的強度を向上しようとして分子鎖を剛直にすると靱性や耐衝撃性が低下してしまい、他方、靱性や耐衝撃性を向上しようとして分子鎖を柔軟なものにすると、機械的強度が低下してしまうとの問題があった。
【0003】
このような問題に対処するため、改質剤が用いられている。例えば、引用文献1には、脂肪族アミド及非晶質の部分芳香族のポリアミドからなる熱可塑性物質と、衝撃改良剤等を含む熱可塑性成形組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-120909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来から知られる組成物では、衝撃吸収性が十分に満足できるものではない場合があった。本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、衝撃吸収性に優れる樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の改質剤(A)は、末端に式(1)で表される基を有するウレタン樹脂(a1)を含むものである。
【0007】
【化1】
【0008】
[式(1)中、
Ar1は、芳香族炭化水素基を表す。
1は、単結合、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基又はこれらの2種以上を組み合わせた基を表す。
1は、ウレタン結合基、ウレア結合基及びチオウレタン結合基からなる群より選ばれる1種を表す。
2は、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基又はこれらの2種以上を組み合わせた基を表す。]
【発明の効果】
【0009】
本発明の樹脂組成物によれば、衝撃吸収性に優れた成形体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、標準例1と実施例1のtanδスペクトルを表す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の改質剤(A)は、末端に式(1)で表される基を有するウレタン樹脂(a1)を含む。
【0012】
【化2】
[式(1)中、
Ar1は、芳香族炭化水素基を表す。
1は、単結合、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基又はこれらの2種以上を組み合わせた基を表す。
1は、ウレタン結合基、ウレア結合基及びチオウレタン結合基からなる群より選ばれる1種を表す。
2は、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基又はこれらの2種以上を組み合わせた基を表す。]
【0013】
前記式(1)で表される基は、前記ウレタン樹脂(a1)の末端に結合していてもよく、前記ウレタン樹脂(a1)の側鎖として結合していてもよい。
【0014】
1で表される脂肪族炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンタンジイル基、ヘキサンジイル基、ヘプタンジイル基、オクタンジイル基、ノナンジイル基、デカンジイル基等のアルキレン基が好ましい。R1で表される脂肪族炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~8、さらに好ましくは1~6である。
【0015】
1で表される脂環式炭化水素基としては、シクロヘキサンジイル基、トリメチルシクロヘキサンジイル基、テトラメチルシクロヘキサンジイル基等が挙げられる。R1で表される脂環式炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは3~12、より好ましくは6~10である。
【0016】
Ar1、R1で表される芳香族炭化水素基としては、フェニレン基、トリレン基、キシリレン基、ナフチレン基等が挙げられる。Ar1、R1で表される芳香族炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは6~12、より好ましくは6~10である。
【0017】
1で表される脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基の2種以上を組み合わせた基としては、ジシクロヘキシルメタンジイル基、ジフェニルメタンジイル基、キシレンジイル基、テトラメチルキシレンジイル基等が挙げられる。前記組み合わせた基の炭素原子数は、好ましくは4~30、より好ましくは10~20である。
【0018】
2で表される脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、sec-ペンチル基、3-ペンチル基、tert-ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。R2で表される脂肪族炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~8、さらに好ましくは1~6である。
【0019】
2で表される脂環式炭化水素基としては、シクロヘキシル基、トリメチルシクロヘキシル基、テトラメチルシクロヘキシル基等が挙げられる。R2で表される脂環式炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは3~12、より好ましくは6~10である。
【0020】
2で表される芳香族炭化水素基としては、フェニル基、トルイル基、キシリル基、ナフチル基等が挙げられる。R2で表される芳香族炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは6~12、より好ましくは6~10である。
【0021】
2で表される脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基の2種以上を組み合わせた基としては、シクロヘキシルメチルシクロヘキシル基、フェニルメチルフェニル基、メチルシクロヘキシルメチル基等が挙げられる。前記組み合わせた基の炭素原子数は、好ましくは4~30、より好ましくは10~20である。
【0022】
1としては、単結合又は脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とを組み合わせた基が好ましい。
【0023】
2としては、脂肪族炭化水素基が好ましい。
【0024】
1としては、ウレタン結合基又はウレア結合基が好ましい。
【0025】
前記ウレタン樹脂(a1)に含まれる式(1)で表される基の量は、好ましくは0.01mol/kg以上、より好ましくは0.05mol/kg以上、さらに好ましくは、0.1mol/kg以上、よりいっそう好ましくは0.2mol/kg以上であり、好ましくは10mol/kg以下、より好ましくは5mol/kg以下、さらに好ましくは2mol/kg以下、よりいっそう好ましくは1.5mol/kg以下である。
【0026】
前記ウレタン樹脂(a1)は、イソシアネート基を有するものであることが好ましい。前記ウレタン樹脂(a1)のイソシアネート基当量は、好ましくは200以上、より好ましくは300以上であり、好ましくは3000以下、より好ましくは2000以下である。
【0027】
なお本明細書において、官能基当量は、官能基1子あたりの分子量を表すものとする。
【0028】
前記ウレタン樹脂(a1)に含まれるイソシアネート基は、改質される樹脂と反応していなくともよく、改質される樹脂と反応して、ウレタン結合、ウレア結合を形成することが好ましい。
【0029】
前記ウレタン樹脂(a1)は、ポリオール(x1)、ポリイソシアネート(x2)及び活性水素原子を含む化合物(x3)の反応物であることが好ましい。
【0030】
前記ポリオール(x1)としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリラクトンポリオール等のポリマーポリオール;低分子量ポリオール等が挙げられる。
【0031】
前記ポリエーテルポリオールとしては、ポリオキシアルキレンポリオールが好ましく、必要に応じ活性水素原子を2個以上有する化合物の1種又は2種以上を開始剤として用いて、アルキレンオキシド等の環状エーテルを開環重合させたもの等が挙げられる。
【0032】
前記環状エーテルの炭素原子数は、好ましくは2~10、より好ましくは2~6、さらに好ましくは2~4である。前記環状エーテルに含まれる水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。前記環状エーテルとしては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド、2,3-ブチレンオキシド、スチレンオキシド、エピクロロヒドリン、テトラヒドロフラン、アルキル化テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0033】
前記開始剤としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、水等の活性水素原子を2個有する化合物;グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、ペンタエリスリトール、糖類等の活性水素原子を3個以上有する化合物などが挙げられる。
【0034】
前記ポリエステルポリオールとしては、例えば、低分子量ポリオール(例えば、分子量50以上300以下のポリオール)とポリカルボン酸とをエステル化反応して得られるポリエステルポリオール;ε-カプロラクトン等の環状エステル化合物を開環重合反応して得られるポリエステルポリオール;これらの共重合ポリエステルポリオールなどが挙げられる。
【0035】
前記ポリエステルポリオールの製造に用いられる低分子量ポリオールとしては、分子量が50以上300以下程度のポリオールを用いることができ、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-ブタンジオール、トリメチルールプロパン、グリセリン等の炭素原子数2以上6以下の脂肪族ポリオール(ジオール又は3官能以上のポリオール);1,4-シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環式構造含有ポリオール;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール化合物及びそれらのアルキレンオキシド付加物等の芳香族構造含有ポリオールなどが挙げられる。
【0036】
前記ポリエステルポリオールの製造に用いられるポリカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の脂肪族ポリカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ポリカルボン酸;並びに前記脂肪族ポリカルボン酸及び芳香族ポリカルボン酸の無水物又はエステル形成性誘導体などが挙げられる。
【0037】
前記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、炭酸エステルとポリオールとの反応物;ホスゲンとビスフェノールA等との反応物などが挙げられる。
【0038】
前記炭酸エステルとしては、例えば、メチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルカーボネート、ジエチルカーボネート、シクロカーボネート、ジフェニルカーボネート等が挙げられる。
【0039】
前記炭酸エステルと反応しうるポリオールとしては、例えば、上記低分子量ポリオールとして例示したポリオール;ポリエーテルポリオール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)、ポリエステルポリオール(ポリヘキサメチレンアジペート等)等の高分子量ポリオール(重量平均分子量500以上5,000以下)などが挙げられる。
【0040】
前記ポリラクトンポリオールとしては、前記ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールからなる群より選ばれる1種以上及び/又は前記ポリエステルポリオールの製造に用いられる低分子量ポリオールを開始剤として、ラクトン化合物と反応(付加)させたもの等を用いることができる。
【0041】
前記ラクトン化合物としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、δ-バレロラクトン、β-メチル-δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン、α-メチル-ε-カプロラクトン、β-メチル-ε-カプロラクトン、γ-メチル-ε-カプロラクトン、β、δ-ジメチル-ε-カプロラクトン、3,3,5-トリメチル-ε-カプロラクトン、エナントラクトン(7-ヘプタノリド)、ドデカノラクトン(12-ドデカノリド)等を用いることができる。
【0042】
前記ラクトン化合物の付加率は、前記ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールからなる群より選ばれる1種以上及び/又は前記低分子量ポリオールの合計100質量部に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。
【0043】
前記ポリマーポリオールの官能数は、2以上であり、3以上であってもよく、5以下であることが好ましい。
【0044】
前記ポリマーポリオールの数平均分子量は、好ましくは300以上、より好ましくは500以上であり、好ましくは5,000以下、より好ましくは3,000以下である。
【0045】
前記ポリマーポリオールの含有率は、前記ポリオール(x1)中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上であり、上限は100質量%である。
【0046】
前記ポリオール(x1)としての低分子量ポリオールとしては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール(2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール)、2-イソプロピル-1,4-ブタンジオール、3-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,4-ジメチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-エチル-1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、3,5-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール等の脂肪族ジオール;グリセリン、トリメチロールプロパン等の脂肪族トリオール;シクロヘキサンジメタノール(例えば1,4-シクロヘキサンジメタノール)、シクロヘキサンジオール(例えば1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール)、2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)-プロパン等の脂環式ジオールなどが挙げられる。
【0047】
前記低分子量ポリオールを含む場合、前記低分子量ポリオールの含有量は、前記ポリマーポリオール100質量部に対して、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。
【0048】
前記ポリイソシアネート(x2)としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、シクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環式構造を有するポリイソシアネート;4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート、クルードジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネートが挙げられる。
【0049】
前記活性水素原子を含む化合物(x3)としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、アルコール化合物、アミン化合物等を用いることができる。前記アルコール化合物としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール等のモノアルコール化合物;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル等のジアルキレングリコールモノアルキルエーテル;ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルケニルエーテル;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル;ポリエチレングリコールモノアルキレート(ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレート等)、ポリエチレングリコールモノアルケニレート(ポリエチレングリコールモノオレエート等)、ポリエチレングリコールジアルキレート(ポリエチレングリコールジステアレート等)等のポリアルキレングリコールアルキレート;ポリオキエシエチレン硬化ヒマシ油;ポリオキシエチレンアルキルアミン;アルキルアルカノールアミド;ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル;ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル;ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール;パーム核油脂脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、ヤシ脂肪酸N-メチルエタノールアミド等のアルキルアルカノールアミド;デシルグルコシド、ラウリルグルコシド等のアルキルポリグリコシドなどが挙げられる。
【0050】
前記アミン化合物としては、プロピルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン等の第1級モノアミン化合物;ジメチルアミン、ジプロピルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジオクチルアミン、ジイソプロピルアミン等の第2級モノアミン化合物;N,N-シクロヘキシルメチルアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン等の第3級モノアミン化合物;3-ジメチルアミノプロピル尿素、N,N,N’-トリメチルアミノエチルエタノールアミン等が挙げられる。
【0051】
前記活性水素原子を含む化合物(x3)は、例えば、モノアルコール化合物等の嵩高くない化合物であっても、衝撃吸収性を高めることができる。
【0052】
前記活性水素原子を含む化合物(x3)の量は、前記ポリオール(x1)100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、さらに好ましくは5重量部以上であり、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、さらに好ましくは10重量部以下である。
【0053】
前記ポリイソシアネート(x2)に含まれるイソシアネート基と、前記ポリオール(x1)及び前記活性水素原子を含む化合物(x3)に含まれる活性水素原子を有する基(ヒドロキシル基、アミノ基等)との当量比(NCO/H)は、好ましくは1.3以上、より好ましくは1.5以上であり、好ましくは6.5以下、より好ましくは4以下、特に好ましくは3以下である。
【0054】
前記ウレタン樹脂(a1)は、前記ポリオール(x1)、ポリイソシアネート(x2)及び前記活性水素原子を含む化合物(x3)の反応物と、さらに、鎖伸長剤(x4)との反応物であってもよい(即ち、ウレタンエラストマー硬化物であってもよい)。前記鎖伸長剤(x4)としては、活性水素原子を含有する基([NH]基及び/又は[OH]基)を有する化合物を用いることができ、具体的には、ポリアミン化合物、ヒドラジン化合物、前記ポリオール(x1)としての低分子量ポリオールとして例示した化合物と同様の化合物が挙げられる。
【0055】
前記ポリオール(x1)としての低分子量ポリオールとして例示した化合物のうち、脂肪族ポリオール(脂肪族ジオール、脂肪族トリオール等)が好ましい。
【0056】
前記ポリアミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2,5-ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン等のジアミン;N-ヒドロキシメチルアミノエチルアミン、N-ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、N-ヒドロキシプロピルアミノプロピルアミン、N-エチルアミノエチルアミン、N-メチルアミノプロピルアミン;ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン等が挙げられる。
【0057】
前記ヒドラジン化合物としては、例えば、ヒドラジン、N,N’-ジメチルヒドラジン、1,6-ヘキサメチレンビスヒドラジン;コハク酸ジヒドラジッド、アジピン酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド;β-セミカルバジドプロピオン酸ヒドラジド等が挙げられる。
【0058】
前記ポリオール(x1)、ポリイソシアネート(x2)及び活性水素原子を含む化合物(x3)の反応物に含まれるイソシアネート基と、前記鎖伸長剤(x4)に含まれる活性水素原子とのモル比([NCO/H])が1.0付近(例えば、0.9~1.1)にある場合、該反応物と前記鎖伸長剤(x4)との反応物は、高分子量化して硬化する傾向がある。
【0059】
前記ウレタン樹脂(a1)の数平均分子量は、好ましくは250以上、より好ましくは500以上、好ましくは10000以下、より好ましくは5000以下である。
【0060】
本発明において、重量平均分子量、数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレンを標準試料として測定した値を表すものとする。
【0061】
前記改質剤(A)中、前記ウレタン樹脂(a1)の含有率は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下である。
【0062】
本発明の改質剤(A)は、前記ウレタン樹脂(a1)以外のウレタン樹脂(a2)を含んでいてもよい。
【0063】
前記ウレタン樹脂(a2)は、前記ポリオール(x1)、ポリイソシアネート(x2)及び必要に応じて用いる鎖伸長剤(x4)の反応物であることが好ましい(即ち、ウレタンエラストマー硬化物であってもよい)。ウレタン樹脂(a2)としては、1種又は2種以上を用いることができる。
【0064】
前記ポリイソシアネート(x2)に含まれるイソシアネート基と、前記ポリオール(x1)に含まれるヒドロキシル基との当量比(NCO/OH)は、好ましくは1.3以上、より好ましくは1.5以上であり、好ましくは6.5以下、より好ましくは4以下、特に好ましくは3以下である。
【0065】
前記ウレタン樹脂(a2)のイソシアネート基当量は、好ましくは200以上、より好ましくは300以上であり、好ましくは3000以下、より好ましくは2000以下である。
【0066】
前記ウレタン樹脂(a2)の含有量は、前記ウレタン樹脂(a1)1質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは2質量部以上であり、好ましくは100質量部以下、より好ましくは50質量部以下、さらに好ましくは30質量部以下である。
【0067】
前記改質剤(A)に含まれる式(1)で表される基の量は、好ましくは0.001mol/kg以上、より好ましくは0.005mol/kg以上、さらに好ましくは、0.01mol/kg以上であり、好ましくは10mol/kg以下、より好ましくは5mol/kg以下、さらに好ましくは0.5mol/kg以下、よりいっそう好ましくは0.2mol/kg以下、特に好ましくは1mol/kg以下である。
【0068】
前記ウレタン樹脂(a2)は、前記ポリオール(x1)、ポリイソシアネート(x2)及び必要に応じて用いる鎖伸長剤(x4)を反応させることにより製造することができる。また、ウレタン樹脂(a2)を含む場合、ウレタン樹脂(a1)とウレタン樹脂(a2)とを別々に製造した後に混合して改質剤(A)を製造してもよく、前記ポリオール(x1)、ポリイソシアネート(x2)、活性水素原子を含む化合物(x3)及び必要に応じて用いる鎖伸長剤(x4)を反応させて、ウレタン樹脂(a1)とウレタン樹脂(a2)の混合物である改質剤(A)を直接製造してもよい。いずれの場合も、前記改質剤(A)に含まれる式(1)で表される基の量が、前記範囲にあることが好ましい。
【0069】
前記改質剤(A)は、前記ウレタン樹脂(a1)、ウレタン樹脂(a2)以外に、触媒、硬化剤、充填剤、顔料、増粘剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、難燃剤、可塑剤、強化繊維(ガラス(長繊維・短繊維)、炭素繊維等)等の1種又は2種以上を添加剤として含んでいてもよい。
【0070】
前記改質剤(A)と、有機重合体(B)とを含む樹脂組成物も、本発明の技術的範囲に包含される。
【0071】
前記有機重合体(B)は、熱可塑性樹脂であっても、熱硬化性樹脂であってもよく、2種以上の有機重合体を含む混合物であってもよい。前記熱可塑性樹脂としては、ウレタン樹脂(ウレタンプレポリマー)、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、(メタ)アクリレート樹脂、(メタ)アクリルアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアリーレンスルフィド樹脂、ポリアリーレンエーテル樹脂等が挙げられる。また、前記熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂等が挙げられる。
【0072】
前記有機重合体(B)は、活性水素原子を含む有機重合体(b1)を含むものであることが好ましい。活性水素原子を含む有機重合体としては、例えば、ポリアミド樹脂、(メタ)アクリルアミド樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
【0073】
前記有機重合体(B)中、前記有機重合体(b1)の含有率は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上であり、好ましくは100質量%以下である。
【0074】
前記樹脂組成物は、前記改質剤(A)、有機重合体(B)以外に、他の改質剤、触媒、硬化剤、充填剤、顔料、増粘剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、難燃剤、可塑剤、強化繊維(ガラス(長繊維・短繊維)、炭素繊維等)等の1種又は2種以上を添加剤として含んでいてもよい。
【0075】
前記硬化剤としては、例えば、前記鎖伸長剤(x4)として例示した化合物を用いることができる。前記硬化剤を含む場合、前記有機重合体(B)は、活性水素原子を含む有機重合体(b1)を含まないものであってもよい。
【0076】
前記樹脂組成物から形成される物品も、本発明の範囲に包含される。本発明の物品は、例えば、前記改質剤(A)と前記有機重合体(B)と必要に応じて用いる硬化剤等を混合、加熱し、必要に応じて成形(例えば、押出成形、射出成形等)することで、製造することができる。前記有機重合体(B)が、ウレタン樹脂(ウレタンプレポリマー)を含む場合、該ウレタン樹脂(ウレタンプレポリマー)を含む有機重合体と本発明の改質剤(A)と硬化剤とを混合し、熱硬化させることで、ウレタンエラストマーである本発明の物品を製造することができる。また、前記有機重合体(B)が、活性水素原子を含む有機重合体(b1)を含む場合、前記改質剤(A)と前記有機重合体(b1)を含む有機重合体(B)とを混合し、成形(好ましくは押出成形)することで、本発明の物品を製造することができる。
【0077】
本発明の物品は、衝撃吸収性及び靱性に優れ、スポーツ用品、レジャー用品、船舶部材、自動車部材、航空機部材、建材、電子機器部材等に用いることができる。
【実施例
【0078】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0079】
[合成例(a1-1)~(a1-3)]
窒素導入管、還流冷却器、温度計、攪拌機を備えた3リットルの4ツ口丸底フラスコに、表1に示す組成で、必要に応じメチルエチルケトン、ポリイソシアネート(x2)を仕込み、攪拌を開始した。次いで、表1に示すポリオール(x1)を仕込み混合し、窒素雰囲気下70℃で3時間反応を行った。次いで、表1に示す活性水素原子を含む化合物(x3)を発熱に注意しながら70℃で5時間反応させた。表1に示すNCO当量の式(1)で表される基及びイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(a1-1)~(a1-3)を得た。
【0080】
【表1】
【0081】
表1中、ポリオール(x1-1)は、2官能ポリカプロラクトンポリオール(数平均分子量1,000)を表し、ポリオール(x1-2)は、3官能ポリカプロラクトンポリオール(数平均分子量850)を表し、ポリイソシアネート(x2-1)は、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を表し、化合物(x3-1)は、イソプロピルアルコールを表す。
【0082】
[合成例(a2-1)~(a2-2)]
窒素導入管、還流冷却器、温度計、攪拌機を備えた5リットルの4ツ口丸底フラスコに、表2に示す、ポリイソシアネート(x2)を仕込み、攪拌を開始した。次いで、表2に示すポリオール(x1)を仕込み混合し、窒素雰囲気下70℃で3時間反応を行った。表2に示すNCO当量のイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー((a2-1)~(a2-2)を得た。
【0083】
【表2】
【0084】
ポリオール(x1-3)は、2官能ポリカプロラクトンポリオール(数平均分子量1,000)を表す。
【0085】
[合成例(A-1)~(A-6)]
窒素導入管、還流冷却器、温度計、攪拌機を備えた3リットル4ツ口丸底フラスコに、表3に示すウレタンプレポリマーを仕込み、攪拌を開始した。その後、(a1-1)、(a1-3)を用いた場合は、80℃×3時間、減圧(-0.1MPa以下)処理を行ない、脱溶剤(脱MEK)した。充分に混合後、NCO当量を測定し、表3に示すNCO当量となるよう計算した量のMDIを添加した。表3に示すウレタンプレポリマー(A-1)~(A-6)を得た。尚、NCO当量は、JIS K 7312に準じて測定した。
【0086】
【表3】
【0087】
[実施例1~4、標準例1~2、比較例1~2]
遠心成形機(ドラム直径:300mm、奥行き:200mm)のドラムに離型剤を塗布し、ドラム温度140℃、ドラム回転速度850rpmにして、遠心成形機をスタンバイさせておく。
【0088】
主剤(i)として、合成例(A-1)~(A-6)、合成例(a2-1)~(a2-2)で得られたウレタンプレポリマーを80℃に、硬化剤(ii)として、1,4-ブタンジオール/トリメチロールプロパンの7/3重量比の混合物を40℃に温調した。
次に、表4に示された部数の主剤(i)を使い捨て反応容器に仕込み80℃に温調後、その後40℃の硬化剤(ii)を表4に示された部数を投入し、直ちに高速ミキサーにて40秒間攪拌した。その後、主剤(i)/硬化剤(ii)を40秒減圧脱泡処理したのち、遠心成形機に投入した。1時間後回転ドラムを停止させ、ドラムに粘着しているウレタンエラストマーシートを取り出した。取り出したシートは110℃で16時間のアフターキュアを行った。シート厚みは、2mmであった。その後、得られたシートを約1週間室内放置後、引張強度、伸度、引裂き強度を測定した。エネルギー吸収性能は、測定周波数を1Hzとする動的粘弾性を測定した。結果を表5、表6に示す。
【0089】
尚、引張強度、伸度は、厚さ2mmのシートを用いて JIS K 7312に準じて測定した。
更に、動的粘弾性(DMA)の測定方法は、以下の通りとした。
厚さ2mmのシートを用いて、下記の手順に従いJIS K 7244に準拠し動的粘弾性を測定した。
前記シートの貯蔵弾性率(E’)及び損失弾性率(E”)を、粘弾性スペクトロメータ(型式:DMS6100、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製)を使用して、温度範囲-100~250℃、昇温速度5℃/分、周波数1Hzの条件下、引張モードで測定した。尚、tanδ=E”/E’である。
測定条件:
(サンプルサイズ) 5×60×2mm
(スパン) 20mm
(ひずみ量) 0.05%
【0090】
評価基準は、以下のとおりとした。
【0091】
<温度範囲>
DMA測定結果で、ゴム弾性領域(Tgピーク温度以上の領域)のtanδを評価した。標準例より実施例又は比較例のtanδが大きい温度範囲を記した。
○:標準例より実施例又は比較例のtanδが大きい温度範囲が200℃以上のもの
△:標準例より実施例又は比較例のtanδが大きい温度範囲が100℃以上200℃未満
×:標準例より実施例又は比較例のtanδが大きい温度範囲が100℃未満のもの
【0092】
<エネルギー吸収能力>
DMA測定結果で、ゴム弾性領域(Tgピーク温度以上の領域で10℃刻み)のtanδを評価した。tanδ(実施例又は比較例)/標準例tanδの最大値を記した。
○:tanδ(実施例又は比較例)/標準例tanδの最大値が4.0以上
△:tanδ(実施例又は比較例)/標準例tanδの最大値が2.0以上4.0未満
×:tanδ(実施例又は比較例)/標準例tanδの最大値が2.0未満
【0093】
<総合評価>:温度範囲×エネルギー吸収能力で判定した。
○:温度範囲×エネルギー吸収能力が「○」×「○」の場合
△:温度範囲×エネルギー吸収能力が「△」×「○」、「○」×「△」または「△」×「△」の場合
×:温度範囲、エネルギー吸収能力のいずれかで「×」がある場合
【0094】
【表4】
【0095】
【表5】
【0096】
【表6】
【0097】
実施例1~4は、本発明の実施例であり、改質剤と、ウレタン樹脂(ウレタンプレポリマー)と硬化剤とを混合し、加熱して成形体であるシートを製造した例である。実施例1~4では、ゴム弾性領域(ウレタン樹脂(ウレタンプレポリマー)と硬化剤とから形成されるウレタンエラストマーのTg以上の領域)において、原料に改質剤を含まない標準例1又は2と比較し、より広い温度領域でtanδ値が大きかった。また、実施例1~4のtanδの最大値は、標準例1又は2のtanδの最大値の2倍以上であった。この結果から、本発明の改質剤を用いることで、エネルギー吸収(衝撃吸収)性能を高め、しかもエネルギー吸収(衝撃吸収)可能な温度領域を広げることが可能であることが明らかになった。なお、tanδ値の値が大きいほど、振動に対する反発が小さくなり、振動を吸収する(エネルギーを吸収する)とされている。図1に示すように、ゴム弾性領域において、実施例のtanδ値は、標準例のtanδ値よりも大きい値を示している。
【0098】
他方、比較例1、2は、式(1)で表される基を有しない改質剤を用いた例であり、エネルギー吸収(衝撃吸収)性能及びエネルギー吸収(衝撃吸収)可能な温度領域ともに十分とはいえないものであった。
図1