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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】塗布、現像装置及び塗布、現像方法。
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20221213BHJP
   G03F 7/30 20060101ALI20221213BHJP
   G03F 7/16 20060101ALI20221213BHJP
   H01L 21/677 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
H01L21/30 562
G03F7/30
G03F7/16
H01L21/68 A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018191170
(22)【出願日】2018-10-09
(65)【公開番号】P2020061443
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002756
【氏名又は名称】弁理士法人弥生特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 圭悟
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼▲柳▼ 康治
(72)【発明者】
【氏名】土山 正志
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-099018(JP,A)
【文献】特開平11-150176(JP,A)
【文献】特開平11-169774(JP,A)
【文献】特開2001-203153(JP,A)
【文献】特開2010-034214(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
H01L 21/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に処理を行う処理モジュールとして、前記基板にレジスト膜を形成するレジスト膜形成モジュール及び露光済みの前記レジスト膜を現像する現像モジュールを含む塗布、現像装置において、
上下に積層されると共に互いに区画される複数の基板搬送領域を備える処理ブロックと、
前記基板を格納する搬送容器と前記各基板搬送領域との間で当該基板を搬送するための搬送ブロックと、
前記複数の基板搬送領域に各々設けられる前記処理モジュールと、
前記複数の基板搬送領域に各々設けられ、前記搬送ブロックと前記処理モジュールとの間で前記基板を搬送する搬送機構と、
複数の前記処理モジュールのうちの少なくとも一の処理モジュールにおける前記基板の温度を調整するために当該一の処理モジュールへ搬送される前の当該基板の温度を調整し、前記搬送機構によって温度が調整された当該基板の搬出が行われる温度調整モジュールと、
複数の前記基板搬送領域のうちの少なくとも一の基板搬送領域の雰囲気温度を検出する温度センサと、
前記温度センサにより検出される前記雰囲気温度に基づいて、前記温度調整モジュールにおける前記基板の温度を変更する温度変更機構と、
備え
前記搬送ブロックは、前記搬送容器が載置されると共に前記各基板搬送領域の前方側に設けられる前方ブロックと、前記各処理ブロックの後方側に設けられ、前記レジスト膜を露光する露光機に接続される後方ブロックと、を備え
前記温度調整モジュールは、前記前方ブロック及び前記後方ブロックのうちの少なくともいずれかにおいて、前記一の処理モジュールが設けられる前記基板搬送領域に対応する高さに設けられる塗布、現像装置。
【請求項2】
前記複数の基板搬送領域は、第1の基板搬送領域及び第2の基板搬送領域を含み、
前記一の処理モジュールは、前記第1の基板搬送領域、第2の基板搬送領域の各々に設けられ、
前記温度調整モジュールは、前記第1の基板搬送領域に搬出される基板の温度を調整する第1の温度調整モジュール及び第2の基板搬送領域に搬出される基板の温度を調整する第2の温度調整モジュールを含む請求項1記載の塗布、現像装置。
【請求項3】
前記第1の基板搬送領域の一の処理モジュール、前記第2の基板搬送領域の一の処理モジュールは互いに前記基板に同種の処理を行う請求項2記載の塗布、現像装置。
【請求項4】
前記複数の基板搬送領域毎に、前記一の処理モジュール及び前記温度調整モジュールが設けられる請求項1ないし3のいずれか一つに記載の塗布、現像装置。
【請求項5】
前記温度センサは、複数の前記基板搬送領域のうち少なくとも前記一の処理モジュールが設けられる基板搬送領域に設けられる請求項1ないし4のいずれか一つに記載の塗布、現像装置。
【請求項6】
前記一の処理モジュールは、前記基板に薬液を供給して成膜する処理モジュールである請求項1ないし5のいずれか一つに記載の塗布、現像装置。
【請求項7】
前記薬液はレジストであり、前記処理モジュールは前記基板にレジスト膜を形成する請求項6記載の塗布、現像装置。
【請求項8】
前記基板搬送領域は、前記前方ブロックから後方ブロックへ向かって前後方向に伸びる前記基板の搬送路を備え、
当該搬送路に対して左右方向から面するように前記一の処理モジュールを含む前記複数の処理モジュールが設けられる請求項1ないし7のいずれか一つに記載の塗布、現像装置。
【請求項9】
前記温度センサは、前記搬送路に設けられる請求項8記載の塗布、現像装置。
【請求項10】
先発の基板、後続の基板を順に前記一の処理モジュールに搬送するにあたり、
後続の基板を支持した搬送機構が前記一の処理モジュールに対して当該基板を受け渡す位置に到達するタイミングは、前記一の処理モジュールにおいて先発の基板の搬出が可能になるタイミングと同時か当該タイミングよりも後となるように前記搬送機構の動作が制御される請求項1ないし9記載の塗布、現像装置。
【請求項11】
先発の基板、後続の基板を順に前記一の処理モジュールに搬送するにあたり、
前記一の処理モジュールにおいて前記先発の基板が搬出可能となるタイミングよりも前に、前記搬送機構が前記温度調整モジュールから後続の基板を受け取り、当該一の処理モジュールへ向けて搬出するように当該搬送機構の動作が制御される請求項10記載の塗布、現像装置。
【請求項12】
基板に処理を行う処理モジュールとして、前記基板にレジスト膜を形成するレジスト膜形成モジュール及び露光済みの前記レジスト膜を現像する現像モジュールを含む塗布、現像装置を用いた塗布、現像方法において、
処理ブロックにおいて上下に積層されると共に互いに区画される複数の基板搬送領域にて基板を搬送する工程と、
搬送ブロックにおいて、前記基板を格納する搬送容器と前記各基板搬送領域との間で当該基板を搬送する工程と、
前記複数の基板搬送領域に各々設けられる前記処理モジュールにおいて前記基板を処理する工程と、
前記複数の基板搬送領域に各々設けられる搬送機構により、前記搬送ブロックと前記処理モジュールとの間で前記基板を搬送する工程と、
複数の前記処理モジュールのうちの少なくとも一の処理モジュールにおける前記基板の温度を調整するために当該一の処理モジュールへ搬送される前の当該基板の温度を温度調整モジュールにて調整する工程と、
前記温度調整モジュールにて温度が調整された当該基板の搬出を前記搬送機構によって行う工程と、
温度センサにより、複数の前記基板搬送領域のうちの少なくとも一の基板搬送領域の雰囲気温度を検出する工程と、
温度変更機構により、前記温度センサにより検出される前記雰囲気温度に基づいて、前記温度調整モジュールにおける前記基板の温度を変更する工程と、を備え、
前記搬送ブロックは、前記搬送容器が載置されると共に前記各基板搬送領域の前方側に設けられる前方ブロックと、前記各処理ブロックの後方側に設けられ、前記レジスト膜を露光する露光機に接続される後方ブロックと、を備え
前記温度調整モジュールは、前記前方ブロック及び前記後方ブロックのうちの少なくともいずれかにおいて、前記一の処理モジュールが設けられる前記基板搬送領域に対応する高さに設けられる塗布、現像方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、塗布、現像装置及び塗布、現像方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程においては基板である半導体ウエハ(以下、ウエハと記載する)に様々な処理が行われる。処理としては例えばフォトリソグラフィ工程におけるレジストの塗布及び現像によるレジストパターンの形成が挙げられる。例えば特許文献1には、このレジスト塗布及び現像を行う基板処理装置について記載されている。この基板処理装置においては、各処理部に対して基板を搬入出する基板搬送機構と、基板搬送機構の搬送領域に温湿度が調整された空気を供給してダウンフローを形成する空気調整ユニットと、が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-164670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、基板を処理するにあたり、複数の基板の間で均一性高い処理を行うことができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の塗布、現像装置は、基板に処理を行う処理モジュールとして、前記基板にレジスト膜を形成するレジスト膜形成モジュール及び露光済みの前記レジスト膜を現像する現像モジュールを含む塗布、現像装置において、
上下に積層されると共に互いに区画される複数の基板搬送領域を備える処理ブロックと、
前記基板を格納する搬送容器と前記各基板搬送領域との間で当該基板を搬送するための搬送ブロックと、
前記複数の基板搬送領域に各々設けられる前記処理モジュールと、
前記複数の基板搬送領域に各々設けられ、前記搬送ブロックと前記処理モジュールとの間で前記基板を搬送する搬送機構と、
複数の前記処理モジュールのうちの少なくとも一の処理モジュールにおける前記基板の温度を調整するために当該一の処理モジュールへ搬送される前の当該基板の温度を調整し、前記搬送機構によって温度が調整された当該基板の搬出が行われる温度調整モジュールと、
複数の前記基板搬送領域のうちの少なくとも一の基板搬送領域の雰囲気温度を検出する温度センサと、
前記温度センサにより検出される前記雰囲気温度に基づいて、前記温度調整モジュールにおける前記基板の温度を変更する温度変更機構と、
備え
前記搬送ブロックは、前記搬送容器が載置されると共に前記各基板搬送領域の前方側に設けられる前方ブロックと、前記各処理ブロックの後方側に設けられ、前記レジスト膜を露光する露光機に接続される後方ブロックと、を備え
前記温度調整モジュールは、前記前方ブロック及び前記後方ブロックのうちの少なくともいずれかにおいて、前記一の処理モジュールが設けられる前記基板搬送領域に対応する高さに設けられる。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、基板を処理するにあたり、複数の基板の間で均一性高い処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の一実施形態である塗布、現像装置の平面図である。
図2】前記塗布、現像装置の斜視図である。
図3】前記塗布、現像装置の縦断側面図である。
図4】前記塗布、現像装置を構成する単位ブロックの縦断正面図である。
図5】前記塗布、現像装置を構成する受け渡しモジュール及び温度調整モジュールの側面図である。
図6】前記単位ブロックにおけるウエハの搬送経路を示す説明図である。
図7】前記単位ブロックを搬送されるウエハの温度の経時変化を示すグラフ図である。
図8】前記単位ブロックを搬送されるウエハの温度の経時変化を示すグラフ図である。
図9】ウエハの搬送制御を示すためのチャート図である。
図10】ウエハの搬送状態を示す説明図である。
図11】ウエハの搬送状態を示す説明図である。
図12】塗布、現像装置の他の構成例を示す縦断側面図である。
図13】評価試験の結果を示すグラフ図である。
図14】評価試験の結果を示すグラフ図である。
図15】評価試験の結果を示すグラフ図である。
図16】評価試験の結果を示すグラフ図である。
図17】評価試験の結果を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の一実施形態であり、基板処理装置の一つである塗布、現像装置1について、図1図3を用いて説明する。図1図2図3は夫々塗布、現像装置1の平面図、概略斜視図、縦断側面図である。塗布、現像装置1は大気雰囲気のクリーンルームに設置されており、キャリアブロックD1と、上下搬送ブロックD2と、処理ブロックD3と、インターフェイスブロックD4と、をこの順に直線状に接続して構成されている。キャリアブロックD1側を前方側、インターフェイスブロックD4側を後方側とする。また、以降の説明で左側、右側とは、特に記載が無い場合、前方から後方に向かって見たときの左側、右側である。インターフェイスブロックD4の後方に、露光機D5が接続されている。キャリアブロックD1及び上下搬送ブロックD2は前方ブロックであり、インターフェイスブロックD4は後方ブロックである。そして、これらキャリアブロックD1、上下搬送ブロックD2及びインターフェイスブロックD4は、後述の各単位ブロックに共通して設けられた、キャリアCと各単位ブロックとの間でウエハWを受け渡すための搬送ブロックとして構成される。
【0009】
キャリアブロックD1には、塗布、現像装置1の外部からウエハWを格納するキャリアCが搬送され、当該キャリアブロックD1は、キャリアCの載置台11と、開閉部12と、開閉部12を介してキャリアCからウエハWを搬送するための搬送機構13とを備えている。
【0010】
上下搬送ブロックD2を説明する前に、処理ブロックD3について説明する。図2図3に示すように処理ブロックD3は、ウエハWに液処理及び加熱処理を行う単位ブロックE1~E6が下から順に積層されて構成されており、単位ブロックE1~E6は互いに区画されている。単位ブロックE1~E3は互いに同様に構成されており、液処理としてレジストの塗布処理によるレジスト膜の形成を行う。単位ブロックE4~E6は互いに同様に構成されており、液処理として現像処理によるレジストパターンの形成を行う。各単位ブロックE(E1~E6)において、互いに並行してウエハWの搬送及び処理が行われる。
【0011】
単位ブロックE1~E6のうち代表して単位ブロックE3について、縦断正面図である図4も参照して説明する。単位ブロックE3は内部に基板搬送領域をなす空間を備えた扁平な矩形体であり、左右の中央部に前後に直線状に伸びるウエハWの搬送路21が当該基板搬送領域として形成されている。図中22は搬送路21の天井部であり、中空に形成されると共にその下面はULPAフィルタにより構成されている。この天井部22は図示しないダクトを介して処理ブロックD3の上部に設けられるファンフィルタユニット(FFU)23に接続されている(図2図3参照)。FFU23は、塗布、現像装置1が設置されるクリーンルーム内のエアを取り込んで天井部22に供給し、当該エアが天井部22の下面から吐出されてダウンフローを形成すると共に、搬送路21に面する後述の各処理モジュールに供給される。図中24は、搬送路21の底部を形成する底壁である。
【0012】
単位ブロックE3の右側にはレジスト膜形成モジュール3が設けられており、単位ブロックE3の左側には加熱モジュール4及び搬送路21の雰囲気を排気する排気部40が設けられている。レジスト膜形成モジュール3及び加熱モジュール4は、ウエハWを処理する処理モジュールである。レジスト膜形成モジュール3は例えば前後に2つ設けられる。加熱モジュール4は上下に2つ積層されて積層体をなし、この加熱モジュール4の積層体が前後に6つ配列されている。この前後に並んだ積層体の下方に前後に細長の排気部40が設けられている。
【0013】
これらレジスト膜形成モジュール3、加熱モジュール4及び排気部40により搬送路21の左右の側部が画成されている。従って、レジスト膜形成モジュール3及び加熱モジュール4は、搬送路21に対して左右方向から面するように設けられている。また、このように各処理モジュール、排気部40、天井部22及び底壁24が配置されることで、単位ブロックF3の雰囲気は他の単位ブロックの雰囲気から区画されている。単位ブロックF3の雰囲気とは、より具体的には単位ブロックF3の搬送路21及び単位ブロックF3に設けられる各処理モジュールにおける雰囲気である。
【0014】
液処理モジュールであるレジスト膜形成モジュール3について簡単に説明すると、図中31は筐体であり、搬送路21に開口する搬送口32を備える。筐体31内には、ウエハWを各々処理する2つの処理部33と、各処理部33に共有されるノズル34とが設けられている。処理部33は、ウエハWの中央部を吸着保持するスピンチャック35、スピンチャック35に保持されたウエハWの側周を囲むカップ36、スピンチャック35を回転させる回転機構37と、を備える。カップ36内に設けられる図示しない昇降ピンにより、後述の搬送機構F3とスピンチャック35との間でウエハWが受け渡される。上記のノズル34は、各処理部33で回転するウエハWの中心部へ薬液としてレジストを吐出することができるように移動自在に構成され、各処理部33においてスピンコーティングによるレジスト膜の形成が行われる。
【0015】
加熱モジュール4について簡単に説明すると、図中41は筐体であり、搬送路21に開口する搬送口42を備える。筐体41内には、冷媒が供給される流路を備えると共に載置されたウエハWを当該冷媒の作用で冷却する冷却プレート43と、熱板44とが設けられている。冷却プレート43には、搬送機構F3の昇降動作によりウエハWの受け渡しが行われる。図中45は冷却プレート43の移動機構であり、筐体41内の手前側(搬送口42側)と、筐体41内の奥側に配置される上記の熱板44の上方領域との間で冷却プレート43を移動させる。熱板44は、その上方領域に移動した冷却プレート43との間でウエハWを受け渡すための図示しない昇降ピンを備えると共に、載置されたウエハWを加熱する。従って、加熱モジュール4内では、冷却プレート43、熱板44、冷却プレート43の順でウエハWが受け渡され、熱処理の前後でウエハWの温度が調整される。この単位ブロックE3に設けられる加熱モジュール4は、レジスト膜についてPAB(Pre Applied Bake)を行うためのモジュールである。
【0016】
単位ブロックE3の上記の搬送路21には、搬送機構F3が設けられている。この搬送機構F3は、搬送路21を前後移動自在、昇降自在、且つ垂直軸回りに回動自在な基台25と、当該基台25上において互いに独立して進退自在で各々ウエハWを支持可能な2つの基板支持部20と、を備えている。単位ブロックF3に設けられるモジュールと、後述のタワーT1、T2において単位ブロックF3に設けられるモジュールとの間で、この2つの基板支持部20を利用して順番にウエハWの搬送が行われる。具体的に、一のモジュールに対してウエハWを保持していない一の基板支持部20によりウエハWを受け取る。そして、ウエハWが受け取られてウエハWを搬送可能になった一のモジュールに他の基板支持部20が保持しているウエハWが搬送される。つまり、各モジュールおいてウエハWが入れ替えられるように搬送が行われる。基板支持部20によるこのような入れ替えを行えるように、基台25は各モジュール間、正確には各モジュールの正面におけるウエハWを受け渡すための受け渡し位置間を移動する。
【0017】
また、搬送路21において天井部22の直下でウエハWの搬送を妨げない位置に、当該搬送路21の温度を検出するための温度センサ26が設けられている。この温度センサ26は、例えば搬送路21の前後に間隔をおいて例えば2つ設けられている。温度センサ26は、検出温度に対応する検出信号を後述の制御部50に送信する。
【0018】
以下、E3以外の単位ブロックについて説明する。単位ブロックE1、E2については、この例では温度センサ26については設けられていない。そのような差違を除き、単位ブロックE1、E2は、単位ブロックE3と同様に構成されている。つまり、各単位ブロックE1~E3は一の処理モジュールとしてレジスト膜形成モジュール3を備え、同種の処理としてレジスト膜の形成を行う。また、単位ブロックE1~E3のうちの一つは第1の基板搬送領域、他の一つは第2の基板搬送領域に相当する。
【0019】
また、単位ブロックE4~E6について単位ブロックE3との差異点を中心に説明すると、例えば液処理モジュールとして、レジスト膜形成モジュール3の代わりに現像モジュールが設けられている。この現像モジュールについては、ノズル34から薬液としてレジストの代わりに現像液が供給されることを除いてレジスト膜形成モジュール3と同様の構成である。また、単位ブロックE4~E6の加熱モジュール4は、露光後で現像前のウエハWに加熱(PEB:Post Exposure Bake)を行うためのモジュールである。単位ブロックE4~E6について、この例では温度センサ26は設けられていない。
【0020】
このように各単位ブロックE1、E2、E4~E6は概ね単位ブロックE3と同様の構成であり、従って各単位ブロックEの雰囲気は互いに区画されている。なお、単位ブロックE1、E2、E4、E5、E6に設けられる搬送機構F3に相当する搬送機構を、夫々F1、F2、F4、F5、F6とする(図3参照)。
【0021】
続いて、上下搬送ブロックD2について説明する。この上下搬送ブロックD2は、単位ブロックE1~E6に跨がるように上下に伸びるタワーT1を備えている。タワーT1は、上記の各単位ブロックE(E1~E6)の搬送路21の前方に位置しており、多数のモジュールが積層されることにより構成されている。また、タワーT1の左側には、タワーT1に設けられる各モジュール間でウエハWを受け渡すことができるように昇降自在に構成された搬送機構27が設けられている(図1参照)。
【0022】
上記のタワーT1に設けられるモジュールとしては、受け渡しモジュールTRS及び温度調整モジュールSCPLが含まれる。受け渡しモジュールTRSは、単位ブロックE1~E6に対応する各高さに設けられている。即ち単位ブロックE1~E6に設けられる搬送機構F1~F6が、各々ウエハWの受け渡しを行える高さに受け渡しモジュールTRSが設けられており、このように単位ブロックE1~E6に各々対応する高さの受け渡しモジュールをTRS1~TRS6として示す(図3参照)。また、タワーT1に設けられる受け渡しモジュールTRSとして、キャリアブロックD1に対しての受け渡し用に、当該キャリアブロックD1の搬送機構13がアクセス可能な高さに設けられるものが有り、TRS0として示している。そして上記の温度調整モジュールSCPLは、単位ブロックE1~E3に対応する各高さ、即ち搬送機構F1~F3が各々ウエハWの受け渡しを行える高さに設けられており、これら単位ブロックE1~E3の各々に対応する高さの受け渡しモジュールをSCPL1~SCPL3として示す(図3参照)。互いに対応する高さの受け渡しモジュールと温度調整モジュールと単位ブロックとの間で、ウエハWの搬送が行われる。
【0023】
図5は、単位ブロックE3に対応する受け渡しモジュールTRS3及び温度調整モジュールSCPL3を示している。図3では受け渡しモジュールTRS3は1つのみ表示したが、この図5に示すように上下に複数設けられる。なお、TRS1など他の受け渡しモジュールについてもこのTRS3と同様に複数設けられる。受け渡しモジュールTRS3は水平板51上に横方向に分散して配置された複数の垂直なピン52を備え、このピン52上にウエハWが載置される。
【0024】
温度調整モジュールSCPL3はウエハWを載置するプレート53を備え、当該プレート53は搬送機構F3の昇降動作でウエハWの受け渡しが行われる形状とされている。このプレート53には水などの冷媒が流通する配管54が接続されている。この配管54の一端及び他端は、例えば上下搬送ブロックD2の外側へ引き出されてチラー55に接続されており、このチラー55及び配管54により冷媒の循環路が形成されている。チラー55は、上記の循環路を冷媒が循環するように、配管54の一端側へ当該冷媒を送出するポンプを備えると共に、そのように送出される冷媒の温度を調整可能に構成されている。この送出される冷媒の温度は所望の温度になるように変更可能であり、プレート53及び当該プレート53に載置されるウエハWの温度は、このようにチラー55から送出される冷媒の温度に調整される。この例ではチラー55は温度調整モジュールSCPL1~SCPL3に共通である。従って、温度調整モジュールSCPL1~SCPL3で、ウエハWが同じ温度に調整される。
【0025】
続いて、インターフェイスブロックD4について説明する。このインターフェイスブロックD4は、単位ブロックE1~E6に跨がるように上下に伸びるタワーT2~T4を備えている。タワーT2は、上記の各単位ブロックE(E1~E6)の搬送路21の後方に位置しており、多数のモジュールが積層されて構成されている。このタワーT2を構成するモジュールとしては、タワーT1と同様に単位ブロックE1~E6に対応する高さに受け渡しモジュールTRSが含まれており、TRS11~TRS16として示す。この受け渡しモジュールTRS11~TRS16についても受け渡しモジュールTRS1~TRS6と同様に構成され、複数ずつ設けられているが、図3では受け渡しモジュールTRS1~TRS6と同様に各々1つずつのみ示している。
【0026】
タワーT3、T4は夫々タワーT2の右側、左側に設けられている。タワーT3、T4には、例えば露光後にウエハWを洗浄する洗浄モジュールや、ウエハWを待機させるバッファモジュールなどが含まれるが、図示は省略している。また、インターフェイスブロックD4には、各タワーT2~T4に対してウエハWを搬送する搬送機構14~16と、を備えている。搬送機構14は、タワーT2及びタワーT3に対してウエハWの受け渡しを行うための昇降自在な搬送機構であり、搬送機構15は、タワーT2及びタワーT4に対してウエハWの受け渡しを行うための昇降自在な搬送機構である。搬送機構16は、タワーT2と露光機D5との間でウエハWの受け渡しを行うための搬送機構である。
【0027】
続いて、図1に示す制御部50について説明する。この制御部50はコンピュータであり、コンパクトディスク、ハードディスク、メモリーカード及びDVDなどの記憶媒体に格納されたプログラムがインストールされる。インストールされたプログラムにより、塗布、現像装置1の各部に制御信号が出力されるように、プログラムには命令(各ステップ)が組み込まれている。そして、この制御信号によって、各搬送機構によるウエハWの搬送、各処理モジュールによるウエハWの処理、温度調整モジュールSCPL1~SCPL3によるウエハWの温度が制御される。また、制御部50には後述する温度調整モジュールSCPL1~SCPL3による温度制御に必要なデータを記憶する記憶部が設けられている。
【0028】
図6は、上記の塗布、現像装置1の作用の概略を示す説明図であり、白抜きの矢印により単位ブロックE3へ搬送されるウエハWの搬送経路を示している。キャリアCから搬出されたウエハWは、受け渡しモジュールTRS3に搬送された後、搬送機構F3により温度調整モジュールSCPL3に搬送されて温度調整される。その後、このウエハWは搬送機構F3により、単位ブロックE3の搬送路21を介してレジスト膜形成モジュール3に直接搬送される。つまり、他のモジュールに載置されることなく、レジスト膜形成モジュール3に搬送される。ここでいうモジュールは搬送機構以外のウエハWが載置される場所である。
【0029】
レジスト膜形成モジュール3においては、既述のようにスピンコーティングによってレジスト膜が形成されるが、ウエハWの温度によってレジストの流動性は変動し、形成されるレジスト膜の膜厚も変動する。つまり、上記の温度調整モジュールSCPL3による温度調整は、所望の膜厚のレジスト膜を形成するために行われる。代表して単位ブロックE3について説明したが、単位ブロックE1、E2についても単位ブロックE3と同様に、温度調整モジュールSCPL1、SCPL2で夫々温度調整されたウエハWがレジスト膜形成モジュール3に直接搬送される。
【0030】
しかし、工場用力の変動などの要因で、塗布、現像装置1が設置されるクリーンルームの温度は変動する場合が有る。上記のように各単位ブロックEにはクリーンルームの大気が供給されるため、そのようにクリーンルームの温度が変動することによって、単位ブロックE1~E3における雰囲気温度が変動するおそれが有る。図7のグラフは、そのようにクリーンルームの温度が変動する場合における、温度調整モジュールSCPL3からレジスト膜形成モジュール3に搬送される複数のウエハWについての各々の温度推移の概要を示している。なお、この図7は、後述の温度センサ26による検出温度に基づいた温度調整モジュールSCPL3の温度調整は行わないものとしてのグラフであり、横軸に時間、縦軸にウエハWの温度を夫々設定している。上記のように単位ブロックE3の温度は変動するが、この図7のグラフにおいては実線で、単位ブロックE3の雰囲気温度が設定温度であるときのウエハWの温度推移を示している。そして、一点鎖線で、当該雰囲気温度が設定温度よりも高い場合のウエハWの温度推移を、二点鎖線で、当該雰囲気温度が設定温度よりも低い場合のウエハWの温度推移を夫々示している。
【0031】
グラフ中の時刻t1から時刻t2までの間、ウエハWは温度調整モジュールSCPL3に載置されており、時刻t2より後で時刻t3までは搬送路21を搬送され、時刻t3でレジスト膜形成モジュール3に搬入される。時刻t3より後は、当該レジスト膜形成モジュール3で処理を受ける。時刻t2までは各ウエハWの温度は温度調整モジュールSCPL3の温度に合わせ込まれるので単位ブロックE3の雰囲気温度に関わらず、グラフに示されるように互いに等しい。しかし、時刻t2以降即ちウエハWの搬送中においては、単位ブロックE3の雰囲気の温度の影響を受け、各ウエハWの温度に差が生じ、時間が経過するにつれてウエハW間での温度差が大きくなる。結果として、レジスト膜形成モジュール3へ搬入される時刻t3における温度はウエハW毎にばらつき、この温度のばらつきが解消されないまま各ウエハWに処理が行われることになる。従って、レジスト膜の膜厚がウエハW間でばらついてしまうおそれが有る。
【0032】
なお、単位ブロックE1~E3の温度が変動する要因としては既述したクリーンルームの温度変動に限られない。例えば工場用力の変動による単位ブロックE1~E3内の加熱モジュール4を構成する熱板44の温度変動や、塗布、現像装置1の外部に設けられる装置の発熱の影響なども考えられる。
【0033】
上記の塗布、現像装置1は、このような問題に対処することができるように構成されている。塗布、現像装置1においては上記のように単位ブロックE3に設けた温度センサ26から制御部50に出力される検出信号に基づいて、チラー55から供給される冷媒(図6中に実線の矢印で表示)の冷却温度が制御される。なお、図6中ではこの検出信号を一点鎖線の矢印で、制御部50からチラー55に出力される温度制御のための制御信号を二点鎖線で夫々示している。即ち、塗布、現像装置1では温度センサ26の検出温度に基づいて、温度調整モジュールSCPL1~SCPL3の温度(=温度調整モジュールSCPL1~SCPL3におけるウエハWの温度)がフィードバック制御される。チラー55及び制御部50は温度調整モジュールSCPL1~SCPL3のウエハWの温度を変更する温度変更機構として構成される。
【0034】
具体的に、温度センサ26による検出温度が高いほど温度調整モジュールSCPL1~SCPL3の温度が低く、反対に、温度センサ26による検出温度が低いほど温度調整モジュールSCPL1~SCPL3の温度が高くなるように制御される。このような温度制御を行えるように制御部50の記憶部には、温度センサ26による検出温度と温度調整モジュールSCPLとの対応関係のデータが記憶されており、当該対応関係に基づいて制御が行われる。なお温度センサ26について、上記の例では単位ブロックE3に複数設けているので、例えばこれらの温度センサ26により検出される温度の平均値を、検出温度として取り扱う。
【0035】
図8のグラフは、そのように検出温度に基づいて温度調整モジュールSCPL3の温度を制御する場合のウエハWの温度の推移を、図7のグラフと同様に示している。従って、グラフ中の実線、一点鎖線、二点鎖線は、単位ブロックE3の雰囲気が設定温度であるとき、設定温度よりも高いとき、設定温度よりも低いときのウエハWの温度推移を夫々示している。上記のように単位ブロックE3の雰囲気温度に応じて温度調整モジュールSCPL3は異なる温度に調整されることで、ウエハW毎に時刻t1から時刻t2までの温度が異なる。従って、温度調整モジュールSCPL3から搬出される時刻t2において、ウエハWの温度は、雰囲気温度が設定温度より低い場合、雰囲気温度が設定温度の場合、雰囲気温度が設定温度より高い場合の順に低くなる。
【0036】
そして、雰囲気温度が設定温度より高い場合は、雰囲気温度が設定温度である場合に比べて上記の時刻t2から時刻t3(レジスト膜形成モジュール3への搬入時)に至るまでのウエハWの温度の上昇量が大きい。一方、雰囲気温度が設定温度より低い場合は、雰囲気温度が設定温度である場合に比べて時刻t2から時刻t3に至るまでのウエハWの温度の上昇量が小さい。従って、時刻t3における各ウエハWの温度のばらつきは抑制され、結果として、各ウエハWに形成されるレジスト膜の膜厚のばらつきを抑制することができる。なお、上記したクリーンルームの温度変動が1日で数℃変動するような短期間における変動であっても、数ヶ月で数℃変動するような長期間における変動であっても、このような制御によって、この時刻t3におけるウエハWの温度のばらつきを抑制することができる。
【0037】
上記のように単位ブロックE1~E3は同様の構成でウエハWに同じ処理を行う。そのため、この例では各単位ブロックE1~E3の各雰囲気温度は同様ないしは略同様であるとみなして、単位ブロックE1~E3のうちE3のみに温度センサ26を設けて、温度調整モジュールSCPL1~SCPL3が同じ温度になるように制御している。
【0038】
さらに塗布、現像装置1においては、ウエハW間で温度調整モジュールSCPL1~SCPL3からレジスト膜形成モジュール3へ搬送される時間が互いに揃うように搬送機構F1~F3の動作が制御される。そのような搬送制御を行うことで、レジスト膜形成モジュール3への搬入時の温度のばらつきがより確実に抑制されるようにしている。搬送機構F1~F3について同様に搬送制御が行われるが、代表して搬送機構F3による搬送制御を、図9を参照して説明する。また、ウエハWの搬送状態を示す図10図11も適宜参照する。
【0039】
この図9のタイミングチャートでは、温度調整モジュールSCPL3、搬送機構F3、レジスト膜形成モジュール3の状態を各々示す。より詳しくは、温度調整モジュールSCPL3についてはウエハWが載置される期間、搬送機構F3においては動作が行われている期間(待機状態ではない期間)、レジスト膜形成モジュール3については処理が行われている期間について各々横長の棒で示している。この搬送制御においては、ウエハWは温度調整の完了後も温度調整モジュールSCPL3に載置される。温度調整モジュールSCPL3の棒について、温度調整が完了してウエハWが載置されている期間に相当する箇所にはハッチングを付し、温度調整が未完了の期間に相当する箇所と区別している。また、搬送機構F3の棒については、当該搬送機構F3を構成する基台25がモジュール間を移動する期間に相当する箇所にハッチングを付し、当該基台25の移動が完了して既述したモジュールに対するウエハWの入れ替えを行う期間に相当する箇所と区別している。また、この搬送制御の説明にあたり、温度調整モジュールSCPL3から単位ブロックE3の2つのレジスト膜形成モジュール3のうちの一つに続けて搬送される3つのウエハWを、先に搬送されるものから順にウエハW1、W2、W3として説明する。
【0040】
チャート中の時刻s1では、レジスト膜形成モジュール3でウエハW1(先発の基板)の処理が行われ、且つ温度調整モジュールSCPL3ではウエハW2(後続の基板)の温度調整が行われている。図8で説明したようにウエハW2は単位ブロックF3の雰囲気温度に対応する温度に調整完了し(時刻s2)、引き続き当該温度調整モジュールSCPL3で待機される。一方、搬送機構F3については、受け渡しモジュールTRS3からウエハW3を受け取り、単位ブロックE3の搬送路21中の所定の位置で待機した状態となる。
【0041】
続いて、レジスト膜形成モジュール3にウエハW1を搬送してから所定の時間が経過すると、搬送機構F3の基台25は温度調整モジュールSCPL3に対する受け渡し位置へ移動開始する(時刻s3)。このとき、当該レジスト膜形成モジュール3にてウエハW1の処理は完了しておらず、ウエハW1は搬出不可である。そして、上記の受け渡し位置への基台25の移動が完了すると(時刻s4、図10)、基台25の昇降動作及び基板支持部20の進退動作の協働で、搬送機構F3は温度調整モジュールSCPL3からウエハW2を受け取り、ウエハW3を温度調整モジュールSCPL3に載置する入れ替えを行う。
【0042】
この入れ替えが完了すると、基台25がレジスト膜形成モジュール3に対する受け渡し位置へ移動開始する(時刻s5)。この受け渡し位置へ基台25が到達すると共に、レジスト膜形成モジュール3におけるウエハW1の処理が完了し、当該ウエハW1が搬出可能になる。このようにウエハW1が搬出可能になると同時に、搬送機構F3によるウエハW1、W2の入れ替えが開始され(時刻s6、図11)、ウエハW1を搬送機構F3が受け取り、ウエハW2がレジスト膜形成モジュール3に搬出される(時刻s7)。そして、レジスト膜形成モジュール3でウエハW2の処理が開始される。ウエハW2以外のウエハWについても、このウエハW2と同様に温度調整モジュールSCPL3からレジスト膜形成モジュール3へ搬送される。
【0043】
このように上記の搬送制御においては、ウエハWが温度調整モジュールSCPL3から搬出されるタイミングが、レジスト膜形成モジュール2におけるウエハWの処理の経過時間に基づいて決定されている。そして、レジスト膜形成モジュール3においてウエハWの処理が終了すると同時に、搬送機構F3によるレジスト膜形成モジュール2に対する受け渡しが行われるようにしている。従って、温度調整モジュールSCPL3で温度調整されたウエハWを保持する搬送機構F3について、レジスト膜形成モジュール3に当該ウエハWを搬入するまでの間、レジスト膜形成モジュール3が他のウエハWを処理中であることに起因して待機させる必要が無い。即ち、図9のチャートにおいて、温度調整モジュールSCPL3に対してウエハWの受け渡しが行われる時刻s4からレジスト膜形成モジュール3に対してウエハWの受け渡しを行う時刻s6までの時間が、各ウエハW間で揃えられる。従って、既述したようにウエハW間で温度調整モジュールSCPL3からレジスト膜形成モジュール3へ搬送される時間が互いに揃う。
【0044】
なお、温度調整モジュールSCPL3からのウエハW2を搬出するタイミングは、この図9で説明した例に限られない。例えば、レジスト膜形成モジュールでウエハW1の処理が完了した後、温度調整モジュールSCPL3からウエハW2を搬出してもよい。そのようにしてもウエハW2をレジスト膜形成モジュール3に搬送するにあたり、レジスト膜形成モジュール3がウエハW1を処理中であることに起因して待機させる必要が無い。従って、ウエハW間で温度調整モジュールSCPL3からレジスト膜形成モジュール3への搬送時間が揃えることができる。ただし、より高いスループットを得るためには図9で説明したように、レジスト膜形成モジュール3でのウエハW1の処理と並行して、温度調整モジュールSCPL3からのウエハWの受け取り及び当該ウエハWのレジスト膜形成モジュール3への搬送を行うことが好ましい。なお、図9の例よりも搬送機構F3が温度調整モジュールSCPL3へアクセスするタイミングを若干遅らせ、ウエハW1の処理完了のタイミングよりも若干後にレジスト膜形成モジュール3に搬送機構F3がウエハW2を搬入するためにアクセスするようにしてもよい。
【0045】
続いて、塗布、現像装置1全体のウエハWの搬送経路について説明する。ウエハWは、キャリアCから搬送機構13により、処理ブロックD3におけるタワーT1の受け渡しモジュールTRS0に搬送される。ウエハWは、この受け渡しモジュールTRS0から搬送機構13により受け渡しモジュールTRS1~TRS3に振り分けられる。そして、当該ウエハWは、受け渡しモジュールTRS1~TRS3から搬送機構F1~F3により、受け渡しモジュールSCPL1~SCPL3に搬送されて温度調整される。その後、ウエハWは図6で説明したように搬送機構F1~F3によりレジスト膜形成モジュール3に搬送されてレジスト膜が形成され、さらに各単位ブロックE1~E3の加熱モジュール4に搬送されて加熱処理(PAB)が行われる。加熱処理後のウエハWは、インターフェイスブロックD4のタワーT2の受け渡しモジュールTRS11~TRS13に搬送される。然る後、これら受け渡しモジュールTRS11~TRS13のウエハWは搬送機構14、16により、タワーT3のモジュールを介して露光機D5へ搬送され、レジスト膜が所定のパターンに沿って露光される。
【0046】
露光後のウエハWは、搬送機構15、16によりタワーT4のモジュールを介してタワーT2の受け渡しモジュールTRS14~TRS16に搬送される。そして、当該ウエハWは受け渡しモジュールTRS14~TRS16から搬送機構F4~F6により、単位ブロックE4~E6の加熱モジュール4に搬送されて加熱処理(PEB)が行われる。その後、当該ウエハWは現像モジュールに搬送され、現像処理を受けてレジストパターンが形成される。レジストパターン形成後のウエハWは、タワーT1の受け渡しモジュールTRS4~TRS6に搬送された後、搬送機構13を介してキャリアCに戻される。
【0047】
この塗布、現像装置1によれば、上記のように単位ブロックE3の雰囲気温度に基づいて、単位ブロックE1~E3に対応して設けられる温度調整モジュールSCPL1~SCPL3の温度が変更される。それにより、レジスト膜形成モジュール3に搬入されるときの各ウエハWの温度が所望の温度から変動することが抑制される。従って、各ウエハWにおいて均一性高い膜厚でレジスト膜を成膜することができる。
【0048】
ところで説明の煩雑化を避けるために、上記の塗布、現像装置1では各単位ブロックE1~E6に設けられる処理モジュールの種類を比較的少なく示しているが、塗布、現像装置1には既述した処理モジュールの他に、様々な処理モジュールを設けることが可能である。例えば、レジスト膜形成後で露光機D5への搬入前のウエハWの周縁部を露光する周縁部露光モジュールや、露光機D5への搬入前にウエハWの裏面への洗浄液の供給とブラシによる擦過とを行い洗浄する裏面洗浄モジュールを設けてもよい。また、薬液をスピンコートすることでレジスト膜の下層あるいは上層に反射防止膜を形成する反射防止膜モジュールを設けてもよいし、レジストパターンが形成されたウエハWの表面の異常判定を行うための画像を取得する検査モジュールを設けてもよい。
【0049】
上記の周縁部露光モジュールについては、例えば既述のように各単位ブロックE1~E3において複数設けられるPAB用の加熱モジュール4の一つの代わりに設けることができる。上記の裏面洗浄モジュール及び反射防止膜形成モジュールについては、例えば各単位ブロックE1~E3において複数設けられるレジスト膜形成モジュール3の一つの代わりに設けることができる。検査モジュールについては、例えば各単位ブロックE4~E6において複数設けられるPEB用の加熱モジュール4の一つの代わりに設けることができる。
【0050】
そして、既述したレジスト膜形成モジュール3以外の各処理モジュールへの搬入時のウエハWの温度について、レジスト膜形成モジュール3へウエハWの搬入する場合と同様に制御することができる。つまり、温度センサ26による検出温度に基づいて温度が制御される温度調整モジュールSCPLにウエハWを載置して温度調整し、当該温度調整モジュールSCPLに対応する単位ブロックの処理モジュールに温度調整済みのウエハWを直接搬送する。それにより、処理モジュールへ搬入時のウエハWの温度を制御することができる。
【0051】
従って、単位ブロックE1~E3の高さに対応する温度調整モジュールSCPLを設けることには限られず、単位ブロックE4~E6の高さに対応する温度調整モジュールSCPLを設けることができる。そして、単位ブロックE4~E6の各処理モジュールへの搬入時のウエハWの温度を制御することができる。図12に示す塗布、現像装置1では、上記の温度調整モジュールSCPL1~SCPL3の他に、タワーT2に単位ブロックE4~E6に各々対応する温度調整モジュールを設けており、これらの温度調整モジュールをSCPL4~SCPL6として示している。従って、この例では単位ブロックE毎に温度調整モジュールが設けられている。単位ブロックE4~E6の一の処理モジュールとしては、後述のように、この単位ブロックE4~E6からウエハWが直接搬送される現像モジュールやPEB用の加熱モジュール4などが相当する。
【0052】
この図12の塗布、現像装置1では、温度調整モジュールSCPL1~SCPL3に接続されるチラー55とは別個に、温度調整モジュールSCPL4~SCPL6に接続されるチラー56を設けている。また、単位ブロックE6に、単位ブロックE3と同様に温度センサ26を設けており、この単位ブロックE6の温度センサ26の検出温度に基づいてチラー56が制御される。従って図12の塗布、現像装置1では、温度調整モジュールSCPL1~SCPL3の温度と、温度調整モジュールSCPL4~SCPL6の温度とが、互いに独立して制御されるように構成されている。
【0053】
ここで温度調整モジュールからレジスト膜形成モジュール3以外の各処理モジュールにウエハWを直接搬送し、当該処理モジュールへの搬入時の温度を制御したときの効果を説明する。先ず、温度調整モジュールSCPL1~SCPL3から単位ブロックE1~E3のPAB用の加熱モジュール4にウエハWを直接搬送する場合について述べる。この場合は、ウエハW間における当該加熱モジュール4に搬入される各ウエハWの温度が揃い、各ウエハWは同様に加熱処理され、各ウエハW間で膜厚の均一性を高くすることができると見込まれる。
【0054】
また、温度調整モジュールSCPL1~SCPL3から単位ブロックE1~E3の周縁露光モジュールにウエハWを直接搬送する場合について述べる。周縁部露光モジュールにてウエハWの周縁部を露光する際に、当該ウエハWの温度が設定値から外れていると、当該周縁露光モジュールにおける露光が正常に行われず、現像時にウエハWにレジストの残渣が付着した状態となるおそれが有る。しかし、各ウエハWが温度制御された状態で周縁露光モジュールへ搬入されることで、各ウエハWにおける当該残渣の付着が抑制されることが見込まれる。
【0055】
また、温度調整モジュールSCPL1~SCPL3から単位ブロックE1~E3の裏面洗浄モジュールにウエハWを直接搬送する場合は、各ウエハWに供給される洗浄液の作用の低下が抑制されることが見込まれる。従って各ウエハWの裏面の異物が確実に除去され、異物に起因する欠陥を低減させることが期待できる。そして、温度調整モジュールSCPL1~SCPL3から単位ブロックE1~E3の反射防止膜形成モジュールにウエハWを直接搬送する場合は、レジスト膜を形成する場合と同様、ウエハW間における膜厚の均一性を高くすることができる。
【0056】
さらに、温度調整モジュールSCPL4~SCPL6から単位ブロックE4~E6の現像モジュールにウエハWを直接搬送する場合は、現像液とレジスト膜との反応がウエハW間で揃うことになる。従って、ウエハW間のレジストパターンのCD(Critical Dimension)の均一性を高くし、且つ現像欠陥の発生を低減させることができる。また、温度調整モジュールSCPL4~SCPL6により温度調整されたウエハWを単位ブロックE4~E6のPEB用の加熱モジュール4に直接搬送する場合は、ウエハW間で均一性高く加熱処理が行われ、加熱によるレジスト膜の反応が揃う。従って、ウエハW間でレジストパターンのCDの均一性を高くすることができる。
【0057】
また、温度調整モジュールSCPL4~SCPL6から単位ブロックE4~E6の検査モジュールにウエハWを直接搬送する場合は、各ウエハW間で撮像時の温度を揃えることができる。そのように撮像時のウエハWの温度が揃うことで、当該温度のばらつきに起因して当該検査モジュールで取得される画像の色味が変化することが抑制される。従って、各ウエハWについての異常の検出感度の向上を図ることができる。なお、ウエハWの処理としてはこのようにウエハWに対して検査することも含まれ、当該検査モジュールは、処理モジュールに含まれる。
【0058】
ところで1つの単位ブロックにおいて温度調整モジュールSCPLからウエハWが直接搬送される処理モジュールは1種類であってもよいし、複数種類であってもよい。即ち、単位ブロックE3についてウエハWを温度調整モジュールSCPL3からレジスト膜形成モジュール3へ搬送する例を示したが、レジスト膜形成モジュール3及びPAB用の加熱モジュール4の各々に温度調整モジュールSCPL3からウエハWを搬送してもよい。その場合は、温度調整モジュールSCPL3から搬送機構F3によりレジスト膜形成モジュール3へウエハWを搬送し、このウエハWを搬送機構F3により再度温度調整モジュールSCPL3へ搬送する。その後、当該ウエハWを温度調整モジュールSCPL3から搬送機構F3によりPAB用の加熱モジュール4に搬送すればよい。このように搬送する場合、レジスト膜形成モジュール3へ搬送するウエハWを温度調整する温度調整モジュールSCPL3と、加熱モジュール4へ搬送するウエハWを温度調整する温度調整モジュールSCPL3とは同じであってもよいし、別個に設けられていてもよい。
【0059】
なお、単位ブロックEへ搬送されるウエハWを温度調整することについて説明してきたが、例えば温度調整モジュールSCPL1~SCPL6から露光機D5へ直接、ウエハWを搬送し、各ウエハW間で露光機D5へ搬入時の温度を揃えてもよい。そのように温度を揃えることで、露光によるレジストの反応がウエハW間で揃い、露光精度が高くなることが考えられる。従って、ウエハWにフォトリソグラフィとエッチングを繰り返し行うにあたり、オーバーレイ即ち各露光時における露光領域の重なり具合の精度が向上することが考えられる。
【0060】
ところで、単位ブロックE1~E6においては、例えば各々処理モジュールから放出される熱の影響によって互いに雰囲気の温度が異なる場合が有る。上記のように単位ブロックE1~E3と、単位ブロックE4~E6とはウエハWに対して互いに異なる処理を行う単位ブロックであるため、そのように互いに異なる温度となることが考えられる。そこで、図12の塗布、現像装置1のように単位ブロックE3、E6の各々に温度センサ26を設けて、各温度センサ26による検出温度に基づいて温度調整モジュールSCPL1~SCPL3、SCPL4~SCPL6を夫々独立して制御する。それにより、単位ブロックE1~E3に設けられた所定の処理モジュールへの搬入時のウエハWの温度、単位ブロックE4~E6に設けられた所定の処理モジュールへの搬入時のウエハWの温度について夫々精度高く制御し、ウエハW間での処理状態のばらつきをより確実に抑制することができる。
【0061】
ただし、このように温度調整モジュールSCPL1~SCPL6を設けるにあたり、上記のような処理の種別が異なる単位ブロックに対応するSCPL毎に温度制御を行うことには限られない。つまり、温度調整モジュールSCPL1~SCPL6をチラー55によって一括して温度制御し、温度調整モジュールSCPL1~SCPL6が同じ温度になるように制御してもよい。その場合には、例えば単位ブロックE3、E6の温度センサ26の検出温度の平均値を算出し、その平均値に基づいて温度調整モジュールSCPL1~SCPL6の温度を制御することができる。そのような場合にも雰囲気温度によって処理モジュール搬入時のウエハWの温度が設定温度から大きく変動することが抑制され、ウエハW間での処理状態のばらつきを抑制することができる。
【0062】
また、上記の例で単位ブロックE1~E6の各々に温度センサ26を設けて、各温度センサ26の検出温度に基づいて温度調整モジュールSCPL1~SCPL6の温度を制御してもよい。その場合にも温度調整モジュールSCPL1~SCPL6の各温度は1つのチラーにより同じ温度となるように制御されてもよいし、複数のチラーにより独立して制御されて異なる温度と成り得るように制御してもよい。
【0063】
さらに、上記のようにチラー55、56を設けて温度調整モジュールSCPL1~SCPL3の温度、SCPL4~SCPL6の温度を夫々独立して制御する場合、単位ブロックE1~E6のうちの一つ例えば単位ブロックE3に温度センサ26を配置する。この温度センサ26の検出温度に基づき、温度調整モジュールSCPL1~SCPL3の温度を制御する。そして、温度センサ26の検出温度に基づき、温度調整モジュールSCPL4~SCPL6の温度も例えばSCPL1~SCPL3の温度よりも所定の量ずれた温度となるように制御されてもよい。例えば単位ブロックE1~E3(E4~E6)の雰囲気の温度に応じて単位ブロックE4~E6(E1~E3)の雰囲気の温度も変動するような場合に、このように各温度調整モジュールSCPLの温度を制御することが有効である。
【0064】
温度センサ26を設ける位置については、単位ブロックEの雰囲気温度を検出することができ、ウエハWの搬送を妨げない位置であればよい。ただし、同じ単位ブロック内でも各加熱モジュール4のレイアウトによって、雰囲気の温度がばらつくことが考えられる。そのように温度がばらつくが、上記のようにウエハWは搬送路21を通過して処理モジュールに搬送されるので、当該ウエハWの温度は搬送路21の温度に大きく影響されると考えられる。そのため処理モジュールへの搬入時の各ウエハWの温度をより確実に揃えるためには、既述の各例のように当該搬送路21に温度センサ26を設けることが好ましいと考えられる。ただし、単位ブロックEにおいて搬送路21に沿って各処理モジュールが設けられるため、処理モジュール内においてこの搬送路21の近傍に温度センサ26を設けてもよい。一例としては、加熱モジュール4の筐体41内の搬送口42付近に温度センサ26を設けてもよい。さらに、例えば搬入時のウエハWの温度を制御しようとする処理モジュール内に温度センサ26を設けてもよい。
【0065】
なお、上記した温度調整モジュールSCPL3からレジスト膜形成モジュール4及びPAB用の加熱モジュール4の各々に直接ウエハWを搬送して搬入時の温度を調整する場合、いずれの処理モジュールへの搬送の際にもウエハWは搬送路21を通過する。即ち、複数種の処理モジュールに共通の搬送路21に温度センサ26を配置することで、これら各処理モジュールに搬入されるときのウエハWの温度を精度高く制御できることが見込まれるため有利である。
【0066】
ところで、既述のように温度調整モジュールSCPLから単位ブロックEの搬送機構FがウエハWを搬入時のウエハWの温度を制御しようとする処理モジュールに搬送できればよいため、温度調整モジュールSCPLを既述の位置に設けられることには限られない。例えば単位ブロックEにおいて複数の加熱モジュール4のうちの一つの代わりに温度調整モジュールSCPLを設けてもよい。また、温度調整モジュールSCPL1~SCPL3をタワーT2に設け、温度調整モジュールSCPL4~SCPL6をタワーT1に設けてもよい。
【0067】
単位ブロックとしては、上記のように同じ単位ブロックが3つずつ設けられる構成に限られず、たとえば同じ単位ブロックが2つずつ設けられる構成であってもよい。また、このように温度センサ26の検出温度に基づいた温度調整モジュールSCPL1~SCPL6の温度制御を行い、且つ後述する評価試験で述べるような各単位ブロックE1~E6に供給される気体の温度及び湿度が制御される装置構成としてもよい。
【0068】
なお、本開示の基板処理装置としては塗布、現像装置1に限られることは無く、例えばウエハWに洗浄液を供給して洗浄する洗浄装置のような塗布、現像装置以外の基板処理装置にも本開示の技術を適用することができる。また、上記の塗布、現像装置1においてインターフェイスブロックD3が設けられず、且つ現像処理が行われず、各単位ブロックEで塗布膜の形成が行われる構成とした塗布装置に本開示の技術を適用してもよい。さらに、基板処理装置について処理モジュールが設けられる処理ブロックとしては各単位ブロックに分割されていない、即ち上下に分割されていない構成であってもよい。処理モジュールについても既述した処理は一例であり、例えば絶縁膜を形成するための薬液を塗布する処理モジュールやウエハWを貼り合わせる接着剤を塗布する処理モジュールを設けてもよい。また、温度調整モジュールSCPLについてはチラーにより冷却される構成には限られず、例えば当該温度調整モジュールSCPLを構成するプレート53にペルチェ素子が設けられることにより、当該プレート53の温度が制御される構成としてもよい。
【0069】
なお、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0070】
(評価試験)
以下、本開示の技術に関連する評価試験について説明する。この評価試験では互いに異なる構成の塗布、現像装置を用いてウエハWに処理を行っている。その装置の一つは、既述の塗布、現像装置1であり、温度センサ26の検出温度に基づいて温度調整モジュールSCPL1~SCPL6の温度が制御される。また、他の装置として、温度センサ26が設けられず、単位ブロックEの雰囲気温度に基づいた温度調整モジュールSCPLの温度制御が行われないことを除いて、塗布、現像装置1と同様に構成された装置を用いており、当該装置を第1比較例の装置と記載する。さらに他の装置として、単位ブロックE1~E6、上下搬送ブロックD2及びインターフェイスブロックD4が各々ダクトを介してガス供給機構に接続された装置を用いており、当該装置を第2比較例の装置と記載する。この第2比較例の装置も、第1比較例の装置と同様に温度センサ26が設けられず、単位ブロックEの雰囲気温度に基づいた温度調整モジュールSCPLの温度制御が行われない。この第2比較例の装置におけるガス供給機構は、クリーンルームの大気を取り込み、当該大気の温度、湿度を夫々所定の温度、所定の湿度になるように調整し、上記のダクトを介して各ブロックに供給できるように構成されている。
【0071】
評価試験1
評価試験1では既述の各塗布、現像装置内で、温度調整モジュールSCPLから直接ウエハWが搬送される特定の処理モジュールにおいて、当該処理モジュールに搬入時の複数枚のウエハWの温度を測定した。そして、測定された複数枚のウエハWの温度について、最大値-最小値をばらつきとして算出した。また、この温度を測定したウエハWについて、レジストパターンが形成された後、当該レジストパターンのCDの最大値-最小値を、CDのばらつきとして算出した。
【0072】
第1比較例の塗布、現像装置を用い、且つ当該塗布、現像装置が設置されるクリーンルームの温度が一定の環境で行った上記の評価試験1について、評価試験1-1とする。第1比較例の塗布、現像装置を用い、且つ上記のクリーンルームの温度が2℃変動する環境、即ち当該クリーンルームの温度の最大値-最小値=2℃となる環境で行った評価試験1について、評価試験1-2とする。第2の比較例の塗布、現像装置を用い、且つ上記のクリーンルームの温度が2℃変動する環境で行った評価試験1について、評価試験1-3とする。塗布、現像装置1を用い、且つ上記のクリーンルームの温度が2℃変動する環境で行った上記の評価試験1について、評価試験1-4とする。
【0073】
図13図14は評価試験1-1~1-4の結果を示している。図13の棒グラフは上記の処理モジュールへの搬入時のウエハW温度のばらつき(単位:℃)を示しており、図14の棒グラフは上記のCDのばらつき(単位:nm)を示す。ウエハWの温度のばらつきについて評価試験1-1、評価試験1-2、評価試験1-3、評価試験1-4で夫々0.56℃、1.52℃、0.35℃、0.29℃であった。CDのばらつきについて、評価試験1-1、評価試験1-2、評価試験1-3、評価試験1-4で夫々0.800nm、0.8666nm、0.786nm、0.782nmであった。
【0074】
評価試験1-1、1-2の結果から、クリーンルームの温度変動の影響を受けて、処理モジュール搬入時のウエハWの温度の変動が大きくなり、レジストパターンのCDも変動することが分かる。そして、ウエハWの温度のばらつき、CDのばらつき共に評価試験1-1~1-4の中では塗布、現像装置1を用いた評価試験1-4のばらつきが最も小さい。従って、上記の塗布、現像装置1を用いることで、クリーンルームの温度変動の影響をキャンセルし、さらに当該温度が変動しない場合よりもウエハWの温度のばらつき及びCDのばらつきを低減させることができることが確認された。
【0075】
また、評価試験1-3、1-4の結果を比較すると、CDのばらつきについては同等であるが、ウエハWの温度のばらつきについては評価試験1-4の方が大きく抑制されていることが分かる。既述のように様々な要因によって単位ブロックの雰囲気温度は変動し得るが、単位ブロックに供給される大気の温度及び湿度を制御するのみではこのような変動に対処しきれず、本例の構成の方がより確実にこのような変動に対処できると考えられる。従って、この評価試験1からは、既述したウエハW間での処理状態のばらつきを抑制する塗布、現像装置1の効果が確認され、さらにこの効果について、装置に供給される雰囲気の温度及び湿度を調整する手法よりも高い効果が得られることが確認された。
【0076】
評価試験2
評価試験2-1として、クリーンルームの温度が一定の環境で、評価試験1で説明した第1比較例の塗布、現像装置を用いて、レジスト膜の形成、SiARCと呼ばれる反射防止膜の形成、ネガ現像によるレジストパターンの形成を複数のウエハWに夫々行った。そしてレジスト膜、反射防止膜について、各々複数のウエハW間における膜厚の平均値を算出した。また、レジストパターンのCDについて、複数のウエハW間における平均値を算出した。
【0077】
評価試験2-2として、クリーンルームの温度が3℃変動する環境で、第1比較例の塗布、現像装置を用いて評価試験2-1と同様の試験を行った。さらに、評価試験2-3として、クリーンルームの温度が3℃変動する環境で、塗布、現像装置1を用いて評価試験1-1と同様の試験を行った。この塗布、現像装置1では、レジスト膜形成モジュールへの搬入前、反射防止膜形成モジュールへの搬入前に夫々、既述した温度調整モジュールSCPLによる雰囲気温度に基づくウエハWの温度制御が行われている。
【0078】
図15図16図17は夫々、レジスト膜の膜厚の平均値、反射防止膜の膜厚の平均値CDの平均値についての結果を示す棒グラフである。レジスト膜の膜厚の平均値について、評価試験2-1では431.25nm、評価試験2-2では4320.1nm、評価試験2-3では4311.9nmである。反射防止膜の膜厚の平均値について、評価試験2-1では34.18nm、評価試験2-2では34.26nm、評価試験2-3では34.19nmである。CDの平均値について、評価試験2-1では61.73nm、評価試験2-2では61.25nm、評価試験2-3では61.6nmである。
【0079】
このようにレジスト膜の膜厚の平均値、反射防止膜の膜厚の平均値、CDの平均値の各々について、評価試験2-1の結果と、評価試験2-2の結果との差は比較的大きいが、評価試験2-1の結果と、評価試験2-3の結果との差は比較的小さい。従って、この評価試験2の結果からは、塗布、現像装置1を用いることで、クリーンルームの温度の変動による各膜の膜厚の変動及びCDの変動が抑制されることが確認された。従って、この評価試験2からも塗布、現像装置1の効果が確認された。
【符号の説明】
【0080】
D1 キャリアブロック
D2 上下搬送ブロック
D3 インターフェイスブロック
E1~E6 単位ブロック
F1~F6 搬送機構
SCPL1~SCPL6 温度調整モジュール
W ウエハ
1 塗布、現像装置
26 温度センサ
3 レジスト膜形成モジュール
50 制御部
55 チラー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17