(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】ゴム組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 23/34 20060101AFI20221213BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20221213BHJP
C08K 3/06 20060101ALI20221213BHJP
C08K 3/011 20180101ALI20221213BHJP
C08K 5/31 20060101ALI20221213BHJP
C08K 5/40 20060101ALI20221213BHJP
C08K 5/103 20060101ALI20221213BHJP
C08K 5/053 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
C08L23/34
C08L9/00
C08K3/06
C08K3/011
C08K5/31
C08K5/40
C08K5/103
C08K5/053
(21)【出願番号】P 2018206443
(22)【出願日】2018-11-01
【審査請求日】2021-10-13
(31)【優先権主張番号】P 2017233562
(32)【優先日】2017-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小川 貴大
【審査官】中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】特開昭51-114451(JP,A)
【文献】特開2017-110048(JP,A)
【文献】特開2013-012326(JP,A)
【文献】特開昭62-277445(JP,A)
【文献】特開2009-221366(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105331000(CN,A)
【文献】特開2017-088872(JP,A)
【文献】国際公開第2014/129662(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/059502(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともクロロスルホン化ポリオレフィン及びブタジエンゴムを含有
し、クロロスルホン化ポリオレフィンとブタジエンゴムの2成分の比率が、クロロスルホン化ポリオレフィン30~93重量部及びブタジエンゴム7~70重量部(2成分の合計は100重量部)であるゴム成分と、当該ゴム成分100重量部に対して、少なくとも、硫黄0.5~5重量部及びグアニジン化合物0.1~2重量部を含有することを特徴とするゴム組成物。
【請求項2】
グアニジン化合物が、ジ―o―トルイルグアニジン、ジフェニルグアニジン、及びジカテコールボレートのジ―o―トルイルグアニジン塩からなる群から選ばれる少なくとも1種のグアニジン化合物である請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
さらにチウラム化合物0.5~5重量部を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
チウラム化合物が
ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、及びテトラブチルチウラムジスルフィドからなる群から選ばれる少なくとも1種のチウラム化合物である請求項3に記載のゴム組成物。
【請求項5】
さらに多価アルコール0.5~10重量部を含有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項6】
多価アルコールがジエチレングリコール及び/又はペンタエリスリトールである請求項5に記載のゴム組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゴム組成物に関するものであり、より詳しくは、耐摩耗性とグリップ性を両立するゴム組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
クロロスルホン化ポリオレフィンは、優れた耐熱性、耐侯性、耐オゾン性、耐薬品性及び明色性を有することから、各種ホースのカバー材、電線被覆材、パッキン、ガスケット、ロール、エスカレーターの手摺等の各種用途に使用されている。
【0003】
クロロスルホン化ポリオレフィンは耐摩耗性及びグリップ性が良好なゴムの一つであるが、特に高度な耐摩耗性が求められる用途においては、その耐摩耗性は不十分である。クロロスルホン化ポリオレフィンの耐摩耗性を改良する従来技術としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を配合する方法が提案されている(例えば特許文献1)。
【0004】
一方、ブタジエンゴムは優れた耐摩耗性、低温特性を有するゴムで、履物、タイヤ、防振ゴム等の各種用途に使用されている。
【0005】
ブタジエンゴムは優れた耐摩耗性を有する一方、グリップ性が劣る。ブタジエンゴムのグリップ性を改良する従来技術としては、イソブチレンとパラメチルスチレンとの共重合体の臭素化物を使用する方法が提案されている(例えば特許文献2)。
【0006】
クロロスルホン化ポリオレフィンとブタジエンゴムのブレンド組成物についてはいくつかの文献で紹介されている(たとえば非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2011-74118号公報
【文献】特開2002-282006号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】「ゴム配合データハンドブック」初版、日刊工業新聞社、昭和62年4月、p.481~p.482
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のようにクロロスルホン化ポリオレフィンの耐摩耗性を改良する提案があるが、その効果は限定的であり、高度な耐摩耗性が求められる用途においては不十分であった。本発明は、上記した課題に鑑みてなされたものであり、従来公知技術(例えば、特許文献1)よりさらに耐摩耗性に優れるゴム組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記した課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、本発明のゴム組成物が上記課題を解決することを見出した。
【0011】
即ち、本発明は以下の[1]~[7]に存する。
【0012】
[1] 少なくともクロロスルホン化ポリオレフィン及びブタジエンゴムを含有するゴム成分と、当該ゴム成分100重量部に対して、少なくとも、硫黄0.5~5重量部及びグアニジン化合物0.1~2重量部を含有することを特徴とするゴム組成物。
【0013】
[2] グアニジン化合物が、ジ―o―トルイルグアニジン、ジフェニルグアニジン、及びジカテコールボレートのジ―o―トルイルグアニジン塩からなる群から選ばれる少なくとも1種のグアニジン化合物である[1]に記載のゴム組成物。
【0014】
[3] さらにチウラム化合物0.5~5重量部を含有することを特徴とする[1]又は[2]に記載のゴム組成物。
【0015】
[4] チウラム化合物がペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、及びテトラブチルチウラムジスルフィドからなる群から選ばれる少なくとも1種のチウラム化合物である[3]に記載のゴム組成物。
【0016】
[5] さらに多価アルコール0.5~10重量部を含有することを特徴とする[1]乃至[4]のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【0017】
[6] 多価アルコールがジエチレングリコール及び/又はペンタエリスリトールである[5]に記載のゴム組成物。
【0018】
[7] ゴム成分におけるクロロスルホン化ポリオレフィンとブタジエンゴムの2成分の比率が、クロロスルホン化ポリオレフィン20~93重量部及びブタジエンゴム7~80重量部(2成分の合計は100重量部)である[1]乃至[6]のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【発明の効果】
【0019】
本発明のゴム組成物の耐摩耗性は、クロロスルホン化オレフィンあるいはブタジエンゴムを各々単独で用いた時よりも優れており、さらに通常平均的物性を示すことが当業者常識である本技術分野において、相乗的に耐摩耗性が向上するという予想外の顕著な効果を奏する。
【0020】
加えて、本発明のゴム組成物のグリップ性は、ブタジエンゴムの物性に基づく悪影響をほとんど受けずに、クロロスルホン化ポリオレフィンが有する高いグリップ性を維持するという顕著異質な効果を奏する。
【0021】
つまり、本発明のゴム組成物は、従来公知のクロロスルホン化ポリオレフィン組成物またはブタジエンゴム組成物に比べて、優れた耐摩耗性有し、更に優れたグリップ性を示すという、一般的にトレードオフの関係にある物性を両立することができる。そのため、本発明の組成物を用いたゴム製品は、高グリップ性が求められるゴム製品の耐久寿命を大幅に向上させることが可能であり、さらには耐摩耗性とグリップ性の両立が求められる用途において従来に無い性能を発揮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明について詳細に説明する。
【0023】
本発明のゴム組成物は、少なくともクロロスルホン化ポリオレフィン及びブタジエンゴムを含有するゴム成分と、当該ゴム成分100重量部に対して、少なくとも、硫黄0.5~5重量部、及びグアニジン化合物0.1~2重量部を含有するものである。
【0024】
好ましくは、当該ゴム成分100重量部に対して、さらにチウラム化合物0.5~5重量部を含有するものである。更に好ましくは、当該ゴム成分100重量部に対して、さらに脂肪族多価アルコール0.5~10重量部を含有するものである。
【0025】
本発明のゴム組成物が含有するクロロスルホン化ポリオレフィンとしては、ポリオレフィン主鎖に塩素及びクロロスルホン基が結合したものが該当し、特に限定するものではないが、例えば、塩素量が10~60重量%及び硫黄量が0.3~3.0重量%を含むものが挙げられる。クロロスルホン化ポリオレフィンの塩素量は、特に優れた柔軟性と力学物性を発揮させるために、15~50重量%であることが好ましく、20~45重量%であることがより好ましい。また、クロロスルホン化ポリオレフィンの硫黄量は、適度な加硫密度の加硫物が得られることから、0.4~2.5重量%であることが好ましく、0.5~2重量%であることがより好ましい。また、クロロスルホン化ポリオレフィンのムーニー粘度(ML(1+4)100℃)は、特に優れた力学物性と加工性を両立することから、20~150であることが好ましく、30~120であることがより好ましい。クロロスルホン化ポリオレフィンに含まれるポリオレフィン主鎖の構造としては、特に限定するものではないが、例えば、ポリエチレン、エチレン-α-オレフィン共重合体、α-オレフィン重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。クロロスルホン化ポリオレフィンは、特に優れた力学物性と加工性の両立という観点から、ポリオレフィン主鎖の構造がポリエチレンであるクロロスルホン化ポリエチレンが好ましく、ポリエチレンとしては、特に限定するものではないが、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン等が挙げられる。また、これらのクロロスルホン化ポリオレフィンは単独又は2種以上のブレンド体であってもよい。
【0026】
本発明のゴム組成物が含有するブタジエンゴムとしては、1,3-ブタジエンの重合体で液状でないものが該当し、特に限定するものではないが、例えば、分子構造中の結合様式が主にトランス―1,4結合からなる低シス―ブタジエンゴムやシス―1,4結合が主な結合様式である高シス―ブタジエンゴム等が挙げられる。また、これらのブタジエンゴムは単独又は2種以上のブレンド体であってもよい。
【0027】
本発明のゴム組成物におけるゴム成分は、耐摩耗性とグリップ性の両立の点で、クロロスルホン化ポリオレフィン及びブタジエンゴムを含むものである。特に優れた耐摩耗性を発現させるためには、当該ゴム成分におけるクロロスルホン化ポリオレフィン及びブタジエンゴムの比率が、クロロスルホン化ポリオレフィン20~93重量部及びブタジエンゴム7~80重量部(2成分の合計は100重量部)であることが好ましい。さらに、特に優れた耐摩耗性及びウェットグリップ性を両立させるためには、前記比率が、クロロスルホン化ポリオレフィン30~93重量部及びブタジエンゴム7~70重量部(2成分の合計は100重量部)であることがより好ましい。
【0028】
本発明のゴム成分は、前記の通り、少なくともクロロスルホン化ポリオレフィン及びブタジエンゴムを含むものであるが、当該ゴム成分については、クロロスルホン化ポリオレフィン及びブタジエンゴム以外のゴムを含んでいてもよい。なお、当該ゴム成分については、耐摩耗性とグリップ性の両立の点で、クロロスルホン化ポリオレフィン及びブタジエンゴムが全体のゴム成分の30~100重量%であることが好ましく、50~100重量%であることがより好ましい。
【0029】
本発明のゴム組成物が含有する硫黄としては、例えば、粉末硫黄、表面処理硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄等が挙げられる。
【0030】
本発明のゴム組成物が含有するグアニジン化合物としては、例えば、ジフェニルグアニジン、ジ―o―トルイルグアニジン、o―トルイルビグアニド、又はジカテコールボレートのジ―o―トルイルグアニジン塩等が挙げられる。
【0031】
チウラム化合物としては、例えば、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、又はテトラベンジルチウラムジスルフィド等が挙げられる。
【0032】
脂肪族多価アルコールについては、混合または成型時に揮発しないようにするために、分子量が100以上であることが好ましく、また、ゴム成分との分散性が優れる点で、分子量が500以下であることが好ましく、またアルコールの価数が2~6価であることが好ましい。
【0033】
脂肪族多価アルコールとしては、脂肪族化合物に2つ以上の水酸基が結合したものが該当し、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、又はジペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0034】
本発明のゴム組成物の硫黄及びグアニジン化合物の含有量は、ゴム物性及び加工性の点で、ゴム成分100重量部に対して、少なくとも、硫黄0.5~5重量部、グアニジン化合物0.1~2重量部である。なお、耐摩耗性とグリップ性の両立の点で、好ましくは、ゴム成分100重量部に対して、少なくとも、硫黄0.5~5重量部、チウラム化合物0.5~5重量部、グアニジン化合物0.1~2重量部である。特に優れた耐摩耗性を得るために、好ましくは、ゴム成分100重量部に対して、少なくとも、硫黄0.5~5重量部、チウラム化合物0.5~5重量部、グアニジン化合物0.1~2重量部である。また、加硫速度を速めるために、より好ましくは、ゴム成分100重量部に対して、少なくとも、硫黄0.5~5重量部、チウラム化合物0.5~5重量部、グアニジン化合物0.1~5重量部、脂肪族多価アルコール0.5~10重量部である。
【0035】
硫黄の含有量が0.5重量部以上の場合、加硫不足による物性の低下が少なく、5重量部以下の場合、過加硫によりゴム弾性が失われにくい。グアニジン化合物の含有量が0.1重量部以上の場合、耐摩耗性が優れ、2重量部以下の場合、未加硫ゴムの焼けを抑制しやすい。チウラム化合物の含有量が0.5重量部以上の場合、加硫不足による物性の低下が少なく、5重量部以下の場合、未加硫ゴムの焼けを抑制しやすい。脂肪族多価アルコールの含有量が0.5重量部以上の場合、加硫不足による物性の低下が少なく、10重量部以下の場合、脂肪族多価アルコールのブリードまたはブルームが発生しにくい。
【0036】
ゴム成分、及び硫黄、グアニジン化合物、必要に応じてチウラム化合物、脂肪族多価アルコール(以下、これらを加硫剤及び加硫促進剤という。)を含有するゴム組成物を製造する方法としては特に限定するものではなく、例えば、ゴム成分が溶解する溶剤の溶液に対して加硫剤及び加硫促進剤を添加する方法や混練機を使用してゴム成分と加硫剤及び加硫促進剤を混練する方法、複数の工程で分割して添加する等が挙げられる。
【0037】
本発明のクロロスルホン化ポリオレフィン組成物は、従来のゴム又は樹脂に使用される可塑剤、充填剤、補強剤、老化防止剤、滑剤、加工助剤、前記以外の加硫剤及び加硫促進剤等の配合剤を含んでいても良い。未配合又は配合して得られたクロロスルホン化ポリオレフィン組成物は加硫物又は未加硫物として、一般的に使用される。使用される配合剤としては、ビス(2-エチルヘキシル)フタレート、ビス(2-エチルヘキシル)アジペート、ビス(2-エチルヘキシル)アゼレート、ビス(2-エチルヘキシル)セバケート、トリス(2-エチルヘキシル)トリメリテート、菜種油、亜麻仁油、パラフィンオイル、ナフテンオイル、アロマオイル、塩素化パラフィン、カオリンクレー、焼成クレー、タルク、ケイ酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、硫酸バリウム、カーボンブラック、シリカ、アミン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤、ヒドロキノン系老化防止剤、ニッケル系老化防止剤、脂肪酸エステル、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、クマロン―インデン樹脂、ハイスチレン樹脂、チアゾール化合物、スルフェンアミド化合物、ジチオカルバミン酸塩化合物等が挙げられる。
【0038】
本発明のゴム組成物は、ニーダー式混練機、バンバリーミキサーまたはオープンロール混練機等の混練機によって混合し、目的に応じた形状に成形加工し成形加硫物を得ることが出来る。具体的には各成分を加硫温度以下の温度で混練し、次いでその混合物を各種形状に成形して加硫して加硫物を得る。加硫時の温度や加硫時間は適宜設定することができる。加硫温度は130~200℃が好ましく、140~190℃が更に好ましい。
【0039】
本発明のクロロスルホン化ポリオレフィン組成物の最終用途については、特に限定するものではないが、例えば、靴底、タイヤ等が挙げられる。
【実施例】
【0040】
次に実施例にもとづき本発明を具体的に説明するが、本発明は本実施例に限定して解釈されるものではない。
【0041】
なお、これらの実施例で用いた値は以下の測定方法に準拠して得られたものである。
【0042】
<塩素含有量及び硫黄含有量>
クロロスルホン化ポリエチレンの塩素含有量及び硫黄含有量は、燃焼フラスコ法にて測定した。塩素含有量の測定は、クロロスルホン化ポリエチレン約30mgを1.7重量%硫酸ヒドラジニウム水溶液15mLを吸収液として用い、酸素フラスコ燃焼法に従い燃焼させて静置した。30分後、吸収液を純水約100mLで洗い出した後、濃度0.5Nの硝酸銀水溶液で電位差滴定法により塩素イオンを定量し、塩素含有量を測定した。
【0043】
クロロスルホン化ポリエチレンの硫黄量含有量の測定は、クロロスルホン化ポリエチレン約10mgを3重量%の過酸化水素水約10mLを吸収液として用い、酸素フラスコ燃焼法に従い燃焼させて静置した。30分後、吸収液を純水約40mLで洗い出した後、酢酸約1mL、2-プロパノール約100mL、アルセナゾIII約0.47mLを加えた。この溶液を濃度0.01Nの酢酸バリウム溶液で光度滴定法により硫酸イオンを定量し、硫黄含有量を測定した。
【0044】
<ムーニー粘度>
JIS K 6300に準拠し、L型ローターで、予熱1分、ローター回転時間4分、100℃で測定した。
【0045】
<加硫ゴムの硬さ>
JIS K 6253に準拠して、デュロメータ硬さ計を用いて硬さ(HS)を測定した。
【0046】
<加硫ゴムの引張試験>
JIS K 6251に準拠して、引張強さ(TB)と切断時伸び(EB)を測定した。
【0047】
<耐摩耗性試験>
JIS K 6264-2に準拠して、試験片の付加力を10N、摩耗距離を40mとして、試験片を回転させながら試験するB法にて減耗量を測定した。
【0048】
<グリップ性試験>
傾斜法の静摩擦係数測定機を用いて、濡れたステンレス板と加硫物の間に生じる静摩擦係数を測定した。本試験の測定限界の静摩擦係数は1.8である。
【0049】
<クロロスルホン化ポリエチレンの合成>
実施例で使用したクロロスルホン化ポリエチレン3及びクロロスルホン化ポリエチレン4は以下に示す方法で合成した。なお、クロロスルホン化ポリエチレンの合成に使用した試薬は以下の通りである。
【0050】
1,1,2-トリクロロエタン:東ソー(株)製
α,α’-アゾビスイソブチロニトリル:富士フイルム和光純薬(株)製
塩化スルフリル:住友精化(株)製
ピリジン:富士フイルム和光純薬(株)製
2,2-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)プロパン:東京化成工業(株)製
[クロロスルホン化ポリエチレン3]
窒素雰囲気下、40Lグラスライニング製オートクレーブにて、密度965kg/m3、メルトマスフローレート5.0g/10分の高密度ポリエチレン(東ソー(株)製、(商品名)ニポロンハード4030)2.4kgを、1,1,2-トリクロロエタン12Lに120℃で溶解した。このポリマー溶液に、110℃条件下、ピリジン0.4gを添加し、1,1,2-トリクロロエタン1.8kgに溶解したα,α’-アゾビスイソブチロニトリル1.6gの溶液と塩化スルフリル6.3kgを120分かけて滴下した。反応中の反応器内の圧力は0.2MPaに保った。滴下終了後、反応溶液の温度を70℃まで低下させ、70℃条件下、2時間窒素ブローした。反応液に2,2-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)プロパン100gを添加し、155℃に加熱したドラムドライヤーにて溶媒を除き、クロロスルホン化ポリエチレン3を得た。
【0051】
得られたクロロスルホン化ポリエチレン3の組成及びムーニー粘度を測定した。結果を表1に示す。表1に示す通り、塩素含有量は39重量%、硫黄含有量は1.3重量%、ムーニー粘度は58であった。
【0052】
[クロロスルホン化ポリエチレン4]
窒素雰囲気下、40Lグラスライニング製オートクレーブにて、密度925kg/m3、メルトマスフローレート8.0g/10分の直鎖状低密度ポリエチレン(東ソー(株)製、(商品名)ニポロン-L M-60)2.9kgを、1,1,2-トリクロロエタン15Lに120℃で溶解した。このポリマー溶液に、110℃条件下、ピリジン0.4gを添加し、1,1,2-トリクロロエタン1.7kgに溶解したα,α’-アゾビスイソブチロニトリル3.1gの溶液と塩化スルフリル6.1kgを120分かけて滴下した。反応中の反応器内の圧力は0.2MPaに保った。滴下終了後、反応溶液の温度を70℃まで低下させ、70℃条件下、2時間窒素ブローした。反応液に2,2-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)プロパン100gを添加し、155℃に加熱したドラムドライヤーにて溶媒を除き、クロロスルホン化ポリエチレン3を得た。
【0053】
得られたクロロスルホン化ポリエチレン4の組成及びムーニー粘度を測定した。結果を表1に示す。表1に示す通り、塩素含有量は34重量%、硫黄含有量は0.8重量%、ムーニー粘度は67であった。
【0054】
【0055】
また、実施例で使用した配合剤の内容は以下の通りである。
【0056】
クロロスルホン化ポリエチレン1:TOSO-CSM TS-530(東ソー(株)製)
クロロスルホン化ポリエチレン2:extos ET-8010(東ソー(株)製)
ブタジエンゴム:BR01(JSR(株)製)
酸化マグネシウム:キョーワマグ#150(協和化学工業(株)製)
加工助剤:スプレンダーR-300(脂肪酸エステル)(花王(株)製)
ステアリン酸:ステアリン酸300(新日本理化(株)製)
シリカ:ニップシルVN3(東ソー・シリカ(株)製)
酸化チタン:R-820(石原産業(株)製)
シランカップリング剤:SI-69((株)イムペックス謙信洋行製)
可塑剤:DOZ(大八化学(株)製)
ジエチレングリコール(多価アルコール)(キシダ化学(株)製)
老化防止剤:イルガノックス1076(BASF社製)
酸化亜鉛二種(堺化学工業(株)製)
硫黄:コロイド硫黄(細井化学工業(株)製)
促進剤TRA(チウラム化合物):ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(大内新興化学工業(株)製)
促進剤M:2-メルカプトベンゾチアゾール(大内新興化学工業(株)製)
促進剤DM:ジベンゾチアゾリルジスルフィド(大内新興化学工業(株)製)
促進剤DT(グアニジン化合物):ジ-o-トルイルグアニジン(大内新興化学工業(株)製)
促進剤CZ:N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(大内新興化学工業(株)製)
促進剤TS:テトラメチルチウラムモノスルフィド(大内新興化学工業(株)製)
ペンタエリスリトール(多価アルコール):ノイライザーP(日本合成化学工業(株)製)
実施例及び比較例の配合は耐摩耗性とグリップ性を適正に評価するため、硬さを50~60°にそろえて各物性データを取得した。
【0057】
実施例1
クロロスルホン化ポリエチレン1 90重量部及びブタジエンゴム10重量部に、酸化マグネシウム4重量部、加工助剤2重量部、シリカ9重量部、酸化チタン5重量部、可塑剤5重量部、ジエチレングリコール2重量部、老化防止剤1.6重量部をバンバリーミキサーを用いて添加し、さらにオープンロール混練機を用いて硫黄0.4重量部、促進剤TRA2.6重量部、促進剤M0.1重量部、促進剤DM0.1重量部、促進剤DT0.1重量部、ペンタエリスリトール3重量部を添加し、ゴム組成物を得た。得られたゴム組成物を160℃、5分間プレス加硫し、加硫物を得た。得られた加硫物について、硬さ測定、引張試験、耐摩耗性試験、グリップ性試験を実施した。これらの結果を表1に示す。表1から、耐摩耗性試験における減耗量が22mm3、グリップ性試験における静摩擦係数が1.8以上と良好であった。
【0058】
参考例2、実施例3~17についは表2,3に示す配合に従って、実施例1と同様にして、ゴム組
成物を得た。得られた加硫物について表2,3に示す加硫条件に従ってプレス加硫し、加
硫物を得た。得られた加硫物について、硬さ測定、引張試験、耐摩耗性試験、グリップ性
試験を実施した。これらの結果を表2,3に示す。表2,3から、耐摩耗性試験およびグ
リップ性試験の結果は良好であった。
【0059】
【0060】
【0061】
比較例1
クロロスルホン化ポリエチレン1 100重量部に、酸化マグネシウム4重量部、加工助剤2重量部、シリカ5重量部、酸化チタン5重量部、可塑剤5重量部、ジエチレングリコール2重量部、老化防止剤2重量部をバンバリーミキサーを用いて添加し、さらにオープンロール混練機を用いて促進剤TRA3重量部、ペンタエリスリトール4重量部を添加し、ゴム組成物を得た。得られたゴム組成物を160℃、5分間プレス加硫し、加硫物を得た。得られた加硫物について、硬さ測定、引張試験、耐摩耗性試験、グリップ性試験を実施した。これらの結果を表4に示す。表4から、グリップ性試験における静摩擦係数が1.8以上と良好であったが、耐摩耗性試験における減耗量が70mm3と耐摩耗性が不十分であった。
【0062】
【0063】
比較例2~6についは表4に示す配合に従って、比較例1と同様にして、ゴム組成物を得た。得られた加硫物について表4に示す加硫条件に従ってプレス加硫し、加硫物を得た。得られた加硫物について、硬さ測定、引張試験、耐摩耗性試験、グリップ性試験を実施した。これらの結果を表4に示す。表4から、比較例2では耐摩耗性は良好であったが、グリップ性が不十分であった。比較例3及び比較例4ではグリップ性は良好であったが、耐摩耗性が不十分であった。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明のゴム組成物は、耐摩耗性とグリップ性が両立されていることから、従来のゴムと同様に配合と混練を行い、加硫物又は未加硫物で使用され、広範な領域で使用される。