(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】合わせガラス用中間膜および合わせガラス
(51)【国際特許分類】
C03C 27/12 20060101AFI20221213BHJP
【FI】
C03C27/12 F
(21)【出願番号】P 2018225827
(22)【出願日】2018-11-30
【審査請求日】2021-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(74)【代理人】
【識別番号】100136858
【氏名又は名称】池田 浩
(72)【発明者】
【氏名】栗原 竜太
【審査官】山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-000821(JP,A)
【文献】特開2015-078090(JP,A)
【文献】国際公開第2016/076337(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/00
B32B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハードセグメント部とソフトセグメント部とを有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂層を1層以上有する合わせガラス用中間膜であって、
前記熱可塑性樹脂は、芳香族ビニル単量体単位と鎖状共役ジエン単量体単位とを含む共重合体の水素化物にアルコキシシリル基を導入してなる変性共重合体水素化物であり、
前記変性共重合体水素化物の重量平均分子量が7000以上55000以下であり、
前記樹脂層の厚さ方向中央領域を前記樹脂層の表面と略平行な平面に沿ってスライスして得られたスライス面上の一辺200nmの正方形領域の任意の5箇所のうちの少なくとも1箇所において、絶対最大長が60nm以上であるハードセグメント部が存在し、
前記絶対最大長が60nm以上であるハードセグメント部についての包絡周囲長に対する周囲長の比(周囲長/包絡周囲長)の最大値が1.2以上である、合わせガラス用中間膜。
【請求項2】
前記樹脂層についての小角X線散乱測定により得られる、最小強度値に対する最大強度値の比(最大強度値/最小強度値)が5.0以下である、請求項1に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項3】
前記正方形領域の任意の5箇所についての、前記正方形領域全体に対する前記正方形領域における前記ハードセグメント部の面積比率(ハードセグメント部の面積/正方形領域全体の面積)の平均値が15%以上60%以下である、請求項1または2に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項4】
前記共重合体の水素化物を含有する試料のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した溶出曲線が、少なくとも2つの共重合体水素化物由来ピークを有し、
前記少なくとも2つの共重合体水素化物由来ピークのうち、最も検出感度の高いピークトップを示す共重合体水素化物由来ピークを第1ピークとし、前記第1ピークのピークトップの溶出時間の次に溶出時間の早いピークトップを示す共重合体水素化物由来ピークを第2ピークとしたときに、前記第2ピークの溶出時間に基づく標準ポリスチレン換算分子量(第2ピーク分子量)に対する前記第1ピークの溶出時間に基づく標準ポリスチレン換算分子量(第1ピーク分子量)の比(前記第1ピーク分子量/前記第2ピーク分子量)が1.50以上であり、前記第2ピーク分子量が1000以上である、請求項1から3のいずれかに記載の合わせガラス中間膜。
【請求項5】
厚さが1.2mm以下である平板ガラス2枚と、前記平板ガラス2枚の間に介装した合わせガラス用中間膜とを備える積層体を、真空バッグ内で、5000Pa以下の真空度で真空引きすることにより作製した合わせガラスにおける中間膜の厚みの変動率が5%以下である、請求項1から4のいずれかに記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の合わせガラス用中間膜を備える、合わせガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合わせガラス用中間膜および合わせガラスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、芳香族ビニル単量体単位と共役ジエン単量体単位とからなる共重合体の水素化物が、合わせガラス用中間膜に用いられている(例えば、特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-821号公報
【文献】国際公開第2018/043182号
【文献】国際公開第2016/076337号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の合わせガラス用中間膜は、これを用いて製造した合わせガラスの面精度において改善の余地があった。
【0005】
そこで、本発明は、上述した改善点を有利に解決する手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決することを目的として鋭意検討を行った。そして、本発明者は、所定のスライス面上の所定領域の任意の5箇所のうちの少なくとも1箇所において、絶対最大長が所定値以上であるハードセグメント部が存在し、絶対最大長が所定値以上であるハードセグメント部についての包絡周囲長に対する周囲長の比(周囲長/包絡周囲長)の最大値が所定値以上である所定の樹脂層を1層以上有する合わせガラス用中間膜を用いることで、面精度が優れた合わせガラスを製造可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の合わせガラス用中間膜は、ハードセグメント部とソフトセグメント部とを有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂層を1層以上有する合わせガラス用中間膜であって、前記樹脂層の厚さ方向中央領域を前記樹脂層の表面と略平行な平面に沿ってスライスして得られたスライス面上の一辺200nmの正方形領域の任意の5箇所のうちの少なくとも1箇所において、絶対最大長が60nm以上であるハードセグメント部が存在し、前記絶対最大長が60nm以上であるハードセグメント部についての包絡周囲長に対する周囲長の比(周囲長/包絡周囲長)の最大値が1.2以上である、ことを特徴とする。このように、所定のスライス面上の所定領域の任意の5箇所のうちの少なくとも1箇所において、絶対最大長が所定値以上であるハードセグメント部が存在し、絶対最大長が所定値以上であるハードセグメント部についての包絡周囲長に対する周囲長の比(周囲長/包絡周囲長)の最大値が1.2以上である樹脂層を1層以上有する合わせガラス用中間膜を用いることで、面精度が優れた合わせガラスを製造可能である。
【0008】
なお、本明細書において、「任意の5箇所」は、領域を選択する際の恣意性を排除する観点からは、例えば、1000nm×1000nmの範囲をまず測定し、その中から改めて200nm×200nmの範囲の領域を5箇所再測定することが好ましい。また、200nm×200nmの範囲の領域を、1000nm×1000nmの範囲の領域の中から再測定するよりも、より狭い範囲の領域、例えば、800nm×800nmの範囲の領域を測定し、その中から、200nm×200nmの範囲の領域を再度測定することがより好ましい。
【0009】
ここで、本発明の合わせガラス用中間膜において、前記樹脂層についての小角X線散乱測定により得られる、最小強度値に対する最大強度値の比(最大強度値/最小強度値)が5.0以下である、ことが好ましい。最小強度値に対する最大強度値の比が5.0以下である合わせガラス用中間膜を用いれば、面精度がより優れた合わせガラスを製造可能である。
【0010】
そして、本発明の合わせガラス用中間膜において、前記正方形領域の任意の5箇所についての、前記正方形領域全体に対する前記正方形領域における前記ハードセグメント部の面積比率(ハードセグメント部の面積/正方形領域全体の面積)の平均値が15%以上60%以下である、ことが好ましい。正方形領域全体に対するハードセグメント部の面積比率の平均値が15%以上60%以下である合わせガラス用中間膜を用いれば、面精度がより優れた合わせガラスを製造可能である。
【0011】
そして、本発明の合わせガラス用中間膜において、前記熱可塑性樹脂は、芳香族ビニル単量体単位と鎖状共役ジエン(直鎖共役ジエン、分岐鎖状共役ジエン)単量体単位とを含む共重合体の水素化物、または、前記共重合体の水素化物を変性した変性共重合体水素化物を主成分とし、前記共重合体の水素化物を含有する試料のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した溶出曲線が、少なくとも2つの共重合体水素化物由来ピークを有し、前記少なくとも2つの共重合体水素化物由来ピークのうち、最も検出感度の高いピークトップを示す共重合体水素化物由来ピークを第1ピークとし、前記第1ピークのピークトップの溶出時間の次に溶出時間の早いピークトップを示す共重合体水素化物由来ピークを第2ピークとしたときに、前記第2ピークの溶出時間に基づく標準ポリスチレン換算分子量(第2ピーク分子量)に対する前記第1ピークの溶出時間に基づく標準ポリスチレン換算分子量(第1ピーク分子量)の比(前記第1ピーク分子量/前記第2ピーク分子量)が1.50以上であり、前記第2ピーク分子量が1000以上である、ことが好ましい。熱可塑性樹脂は、芳香族ビニル単量体単位と鎖状共役ジエン単量体単位とを含む共重合体の水素化物、または、共重合体の水素化物を変性した変性共重合体水素化物を主成分とし、共重合体水素化物を含有する試料のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した溶出曲線が、少なくとも2つの共重合体水素化物由来ピークを有し、少なくとも2つの共重合体水素化物由来ピークのうち、最も検出感度の高いピークトップを示す共重合体水素化物由来ピークを第1ピークとし、第1ピークのピークトップの溶出時間の次に溶出時間の早いピークトップを示す共重合体水素化物由来ピークを第2ピークとしたときに、第2ピークの溶出時間に基づく標準ポリスチレン換算分子量(第2ピーク分子量)に対する第1ピークの溶出時間に基づく標準ポリスチレン換算分子量(第1ピーク分子量)の比(第1ピーク分子量/第2ピーク分子量)が所定範囲内であり、第2ピークの溶出時間に基づく標準ポリスチレン換算分子量(第2ピーク分子量)が所定範囲内であることで、面精度がさらにより優れた合わせガラスを製造可能である。
なお、本明細書において、「芳香族ビニル単量体単位」は、「芳香族ビニル単量体(芳香族ビニル化合物)に由来する構造単位」を意味し、「鎖状共役ジエン単量体単位」は、「鎖状共役ジエン単量体(鎖状共役ジエン化合物)に由来する構造単位」を意味し、「共重合体の水素化物、または、前記共重合体の水素化物を変性した変性共重合体水素化物を主成分」は、「共重合体の水素化物、または、前記共重合体の水素化物を変性した変性共重合体水素化物を50質量%超含有する」ことを意味する。
また、共重合体が「単量体単位を含む」とは、「その単量体を用いて得た共重合体中に単量体由来の構造単位が含まれている」ことを意味する。
【0012】
そして、本発明の合わせガラス用中間膜において、厚さが1.2mm以下である平板ガラス2枚と、前記平板ガラス2枚の間に介装した合わせガラス用中間膜とを備える積層体を、真空バッグ内で、5000Pa以下の真空度で真空引きすることにより作製した合わせガラスにおける中間膜の厚みの変動率が5%以下である、ことが好ましい。厚さが1.2mm以下である平板ガラス2枚と、前記平板ガラス2枚の間に介装した合わせガラス用中間膜とを備える積層体を、真空バッグ内で、5000Pa以下の真空度で真空引きすることにより作製した合わせガラスにおける中間膜の厚みの変動率が5%以下であることで、面精度がさらにより優れた合わせガラスを製造可能である。
【0013】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の合わせガラス用中間膜は、上述した合わせガラス用中間膜のいずれかを備える、ことを特徴とする。このように、上述した合わせガラス用中間膜のいずれかを備えることで、面精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、面精度が優れた合わせガラスを製造可能な合わせガラス用中間膜を提供することができる。
本発明によれば、面精度が優れた合わせガラスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の合わせガラス用中間膜における樹脂層のスライス面の一例を説明するための断面図である。
【
図2A】本発明の合わせガラス用中間膜における樹脂層のスライス面の位相像に示された網目構造の一例を示す図である(一辺200nmの正方形領域)。
【
図2B】合わせガラス用中間膜における樹脂層のスライス面の位相像に示された海島構造の一例を示す図である(一辺200nmの正方形領域)。
【
図3】本発明の合わせガラス用中間膜における樹脂層のスライス面の位相像におけるハードセグメント部の周囲長および包絡周囲長を説明するための図である。
【
図4】本発明の合わせガラス用中間膜における樹脂層のスライス面の位相像に示された絶対最大長が60nm以上であるハードセグメント部の一例を示す図である。
【
図5】共重合体水素化物を含有する試料のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した溶出曲線の一例を説明するための図である。なお、
図5の縦軸は、ポリスチレン換算分子量(左縦軸)または感度(mV)(右縦軸)を示し、
図5の横軸は、溶出時間(分)を示す。
【
図6】本願実施例における合わせガラスの面精度の評価を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0017】
(合わせガラス用中間膜)
本発明の合わせガラス用中間膜は、樹脂層を1層以上有し、更に必要に応じて、任意のその他の層を有する。
これにより、厚さが1.2mm以下である平板ガラス2枚と、該平板ガラス2枚の間に介装された本発明の合わせガラス用中間膜とを備える積層体を真空バッグ内で5000Pa以下の真空度で真空引きすることにより作製した合わせガラスにおける合わせガラス用中間膜の厚みの変動率が、5%以下、好ましくは4%以下、より好ましくは2%以下となり、面精度が優れた合わせガラスを製造することができる。
【0018】
<樹脂層>
樹脂層は、ハードセグメント部とソフトセグメント部とを有する熱可塑性樹脂を含有し、所定のスライス面上の一辺200nmの正方形領域の任意の5箇所のうちの少なくとも1箇所において、絶対最大長が60nm以上であるハードセグメント部が存在し、且つ、絶対最大長が60nm以上であるハードセグメント部の包絡周囲長に対する周囲長の比(周囲長/包絡周囲長)の最大値が1.2以上であることが必要である。
【0019】
また、樹脂層は、下記で定義する配向度Bが所定範囲内であることが好ましい。本明細書において、配向度Bは、樹脂層について小角X線散乱測定で得られるハードセグメント部またはソフトセグメント部による周期性散乱または干渉性散乱の方位角強度分布において、最大強度となる方位角を含む任意の方位角180度の範囲における最大強度値および最小強度値に基づいて、下記式(i):
配向度B=最大強度値/最小強度値・・・(i)
で定義される。
【0020】
最大強度値は、ハードセグメント部が一方向に配向している場合に高くなる傾向にある。また、最大強度値は、ハードセグメント部の配向性が低い場合に低くなる傾向にある。そのため、シュリンク性の低い合わせガラス用中間膜を得る観点からは、最大強度値が低い樹脂層を用いることが好ましい。
【0021】
最小強度値は、ハードセグメント部が比較的小さく、ハードセグメント部の形状が球形状に近い場合に高くなる傾向にある。また、最小強度値は、ハードセグメント部が比較的大きい場合や、ハードセグメント部の形状が細長い場合に低くなる傾向にある。そのため、シュリンク性の低い合わせガラス用中間膜を得る観点からは、最小強度値が高い樹脂層を用いることが好ましい。
【0022】
最大強度値および最小強度値は、例えば、樹脂層による周期性(干渉性)散乱の方位角強度分布を、小角X線散乱測定を用いて取得することにより測定することができる。また、周期性(干渉性)散乱は、樹脂層中の熱可塑性エラストマーにおけるハードセグメント部とソフトセグメント部からなる相分離構造に基づいて観測される。
【0023】
なお、樹脂層における周期性(干渉性)散乱の散乱強度は、180度の方位角範囲を最大として強度分布を示し、180度ごとに周期的な分布を示すため、任意の180度の範囲における方位角についての散乱強度を取得すれば、任意の方位角の範囲における散乱強度についての最大強度値および最小強度値を取得することができる。また、測定誤差等の原因で、樹脂層における周期性(干渉性)散乱の散乱強度が、180度ごとに周期的な分布を示さない場合は、散乱強度が最大となる方位角を含む任意の180度の範囲における方位角についての散乱強度を取得することによって、散乱強度についての最大強度値および最小強度値を取得することができる。
【0024】
樹脂層についての小角X線散乱測定により得られる、最小強度値に対する最大強度値の比(最大強度値/最小強度値;配向度B)は、5.0以下であることが好ましく、4.0下であることがより好ましく、3.5以下であることが特に好ましい。
最小強度値に対する最大強度値の比(最大強度値/最小強度値;配向度B)が上記上限以下であることにより、ハードセグメント部分が一方向に配向する度合いが小さくなり、シュリンク性が抑制される。
なお、最小強度値に対する最大強度値の比(最大強度値/最小強度値;配向度B)は、樹脂層の特性値として、測定場所に関係なく、ほぼ同じ値が得られる。
【0025】
配向度Bを5.0以下とする方法としては、例えば、熱可塑性エラストマー中のハードセグメント部の含有量を65質量%未満とする方法などが挙げられる。
【0026】
樹脂層は、下記で定義する配向度Aが所定範囲内であることが好ましい。本明細書において、配向度Aは、樹脂層について小角X線散乱測定で得られるハードセグメント部またはソフトセグメント部による周期性散乱または干渉性散乱の方位角強度分布において、最大強度となる方位角を含む任意の方位角180度の範囲における最大強度値および最小強度値に基づいて、下記式(ii):
配向度A=(最大強度値-最小強度値)/(最大強度値+最小強度値)・・・(ii)
で定義される。
【0027】
樹脂層についての小角X線散乱測定により得られる、最大強度値と最小強度値との和に対する最大強度値と最小強度値との差の比((最大強度値-最小強度値)/(最大強度値+最小強度値);配向度A)は、1.0以下であることが好ましく、0.9以下であることがより好ましく、0.8以下であることが特に好ましい。
最大強度値と最小強度値との和に対する最大強度値と最小強度値との差の比((最大強度値-最小強度値)/(最大強度値+最小強度値);配向度A)が上記上限以下であることにより、ハードセグメント部分が一方向に配向する度合いが小さく、シュリンク性が抑制される。
なお、最大強度値と最小強度値との和に対する最大強度値と最小強度値との差の比((最大強度値-最小強度値)/(最大強度値+最小強度値);配向度A)は、樹脂層の特性値として、測定場所に関係なく、ほぼ同じ値が得られる。
【0028】
配向度Aを1.0以下とする方法としては、例えば、熱可塑性エラストマー中のハードセグメント部の含有量を65質量%未満とする方法や、製膜時に添加剤を加えるなど製膜方法を調整する方法などが挙げられる。
【0029】
<<熱可塑性樹脂>>
熱可塑性樹脂(熱可塑性エラストマー)は、ハードセグメント部とソフトセグメント部とを有する限り、特に制限はなく、例えば、ポリスチレン系樹脂(ソフトセグメント部;ポリブタジエン、ポリイソプレンなど/ハードセグメント;ポリスチレン)、ポリオレフィン系樹脂(ソフトセグメント;エチレンプロピレンゴム/ハードセグメント;ポリプロピレン)、ポリ塩化ビニル系樹脂(ソフトセグメント;ポリ塩化ビニル/ハードセグメント;ポリ塩化ビニル)、ポリウレタン系樹脂(ソフトセグメント;ポリエーテル、ポリエステル/ハードセグメント;ポリウレタン)、ポリエステル系樹脂(ソフトセグメント;ポリエーテル/ハードセグメント;ポリエステル)、ポリアミド系樹脂(ソフトセグメント;ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールもしくはポリエステル系、ポリエーテル系/ハードセグメント;ポリアミド<ナイロン樹脂>)、ポリブタジエン系樹脂(ソフトセグメント;非晶性ブチルゴム/ハードセグメント;シンジオタクチック1、2-ポリブタジエン樹脂)、これらの水素化物、水素化物を変性した変性共重合体水素化物、などが挙げられる。なお、上記熱可塑性樹脂(熱可塑性エラストマー)は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、熱可塑性樹脂は、共重合体の水素化物、該共重合体の水素化物を変性した変性共重合体水素化物を主成分とすることが好ましい。
【0030】
[ハードセグメント部、ソフトセグメント部]
ハードセグメント部とソフトセグメント部とは、相溶性が高くないため、混合状態において、ハードセグメント部の相とソフトセグメント部の相とに分離して、相分離構造を形成する。
ハードセグメント部は、原子間力顕微鏡により後述する実施例に記載の条件で観察した位相像における明部であり、ソフトセグメント部は、原子間力顕微鏡により後述する実施例に記載の条件で観察した位相像における暗部である。
【0031】
以下、本発明の合わせガラス用中間膜における樹脂層のスライス面の位相像について説明する。
スライス面は、樹脂層の厚さ方向中央領域を樹脂層表面と略平行な平面に沿ってスライスすることにより得られる。
図1は、本発明の合わせガラス用中間膜における樹脂層のスライス面の一例を説明するための断面図である。
図1において、合わせガラス用中間膜100としての樹脂層200の厚さ方向中央領域Xを樹脂層表面200Aと略平行な平面Yに沿ってスライスすることにより、スライス面が得られる。
【0032】
図2Aは、本発明の合わせガラス用中間膜における樹脂層のスライス面の位相像に示された網目構造の一例を示す図であり、一方、
図2Bは、合わせガラス用中間膜における樹脂層のスライス面の位相像に示された海島構造の一例を示す図である。
図2Aおよび
図2Bにおいて、30Aが明部(ハードセグメント部)であり、30B,30Cが暗部(ソフトセグメント部)である。
なお、本明細書で、「網目構造」は、明部(ハードセグメント部)30Aと暗部(ソフトセグメント部)30Bとを有する点で海島構造(例えば、
図2B参照)と一致するが、島部としての明部(ハードセグメント部)30Aの内部にも暗部(ソフトセグメント部)30Cが存在する点で、海島構造(例えば、
図2B参照)と相違する。
例えば、
図2Aで示される「網目構造」である領域には、90°以上に曲がって延在する明部(ハードセグメント部)30Aが存在する。
【0033】
スライス面上の一辺200nmの正方形領域の任意の5箇所のうちの少なくとも1箇所において、絶対最大長が60nm以上であるハードセグメント部が存在することが必要である。
スライス面上の一辺200nmの正方形領域の任意の5箇所のうちの少なくとも1箇所に存在するハードセグメント部の絶対最大長は、60nm以上であることが必要であり、65nm以上であることが好ましく、70nm以上であることがより好ましく、75nm以上であることが特に好ましく、250nm以下であることが好ましく、230nm以下であることがより好ましく、210nm以下であることが特に好ましい。
絶対最大長が上記下限以上および上記上限以下の中間膜であれば、合わせガラスにした際の面精度がより優れる。
なお、本明細書において、「ハードセグメント部の絶対最大長」とは、「正方形領域におけるハードセグメント部の最大距離(全長)」を意味し、例えば、「ハードセグメント部が楕円である場合」においては「長径の長さ」を意味し、「ハードセグメント部が正方形である場合」においては「対角線の長さ」を意味する。
【0034】
絶対最大長が60nm以上であるハードセグメント部の包絡周囲長に対する周囲長の比(周囲長/包絡周囲長)は、1.2以上であることが必要であり、1.25以上であることが好ましく、1.3以上であることがより好ましい。
絶対最大長が60nm以上であるハードセグメント部の包絡周囲長に対する周囲長の比(周囲長/包絡周囲長)が1.25以上であることにより、面精度がさらにより優れた合わせガラスを製造することが可能となる。
なお、本明細書において、「ハードセグメント部の周囲長」とは、例えば、
図3では、「星型形状ハードセグメント部10の周囲長さ」を意味し、例えば、「ハードセグメント部が円形である場合」においては「円周の長さ」を意味し、「ハードセグメント部が正方形である場合」においては「4辺の合計の長さ」を意味する。
また、本明細書において、「ハードセグメント部の包絡周囲長」とは、例えば、
図3では、「星型形状ハードセグメント部10を囲むように凸部を結んだ図形(包絡点10a,10b,10c,10d,10e,10fで構成される図形)である凸閉包10Aの周囲長さ」を意味する。
ここで、「凸閉包」は、以下のように求める。
(1)左上から右下にスキャンして物体の始点を求め、最初の包絡点P(0)とする。
(2)最初の包絡点P(0)からX軸マイナス方向に延ばした直線を反時計回りに回転させていき、最初に見つかる点を2点目の包絡点P(1)とする。
(3)2点目の包絡点P(1)を原点として、最初の包絡点P(0)から2点目の包絡点P(1)に向かう角度に延ばした直線を、反時計回りに回転させていき、最初に見つかる点を次の包絡点P(2)とする。
(4)上記(3)と同様の処理を、P(n)がP(0)に一致するまで繰り返す。
(5)P(0)、P(1)、…、P(n-1)、P(0)を結んだ図形を凸閉包とする。
【0035】
以下、絶対最大長が60nm以上であるハードセグメント部の周囲長および包絡周囲長の具体的な解析例について説明する。
図4は、本発明の合わせガラス用中間膜における樹脂層のスライス面の位相像に示された絶対最大長が60nm以上であるハードセグメント部の一例を示す図である。
図4において、絶対最大長が60nm以上であるハードセグメント部P(
図4の明部の中で他の明部と色が異なる部分)について、周囲長および包絡周囲長が解析される。
【0036】
正方形領域の任意の5箇所についての、正方形領域全体に対する正方形領域におけるハードセグメント部の面積比率(ハードセグメント部の面積/正方形領域全体の面積)の平均値は、15%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましく、25%以上であることが特に好ましく、また、60%以下であることが好ましく、58%以下であることがより好ましく、55%以下であることが特に好ましい。
正方形領域全体に対する正方形領域におけるハードセグメント部の面積比率(ハードセグメント部の面積/正方形領域全体の面積)の平均値が上記下限以上であることにより、面精度がさらにより優れた合わせガラスを製造することが可能となり、正方形領域全体に対する正方形領域におけるハードセグメント部の面積比率(ハードセグメント部の面積/正方形領域全体の面積)の平均値が上記上限以下であることにより、面精度がさらにより優れた合わせガラスを製造することが可能となる。
【0037】
なお、正方形領域全体に対する正方形領域におけるハードセグメント部の面積比率(ハードセグメント部の面積/正方形領域全体の面積)の平均値が15%以上となる5つの領域の組み合わせが1つでも存在すれば、上記規定は満たされるものとする。
【0038】
〔共重合体の水素化物〕
共重合体の水素化物は、共重合体の水素化物を含有する試料のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した溶出曲線が、少なくとも2つの共重合体水素化物由来ピークを有し、前記少なくとも2つの共重合体水素化物由来ピークのうち、最も検出感度(mV)の高いピークトップを示す共重合体水素化物由来ピークを第1ピークとし、第1ピークのピークトップの溶出時間の次に溶出時間の早いピークトップを示す共重合体水素化物由来ピークを第2ピークとしたときに、前記第2ピークの溶出時間に基づく標準ポリスチレン換算分子量(第2ピーク分子量)に対する前記第1ピークの溶出時間に基づく標準ポリスチレン換算分子量(第1ピーク分子量)の比(前記第1ピーク分子量/前記第2ピーク分子量)が所定範囲内であり、前記第2ピーク分子量が所定範囲内である、ことを特徴とする。
【0039】
〔〔共重合体〕〕
共重合体は、共重合体水素化物の前駆体である。
共重合体は、芳香族ビニル単量体単位および鎖状共役ジエン単量体単位を含む重合体であれば、その構造は特に限定されず、ブロック共重合体、グラフト共重合体、ランダム共重合体、テーパードブロック共重合体、などの何れであってもよい。そして、相分離の観点から、共重合体は、芳香族ビニル単量体単位を主成分とする重合体ブロック[A]と、鎖状共役ジエン単量体単位を主成分とする重合体ブロック[B]とを含有するブロック共重合体であることが好ましい。
なお、テーパードブロック共重合体は、ブロック共重合体部分のみならずランダム共重合部分を含むブロック共重合体、または、ブロック共重合体部分の組成比が連続的に変化するブロック共重合体を意味する。なお、テーパードブロック共重合体は、ブロック共重合体Aとブロック共重合体Bとの結合部分にA,B組成のランダム共重合部分を含むブロック共重合体であってもよく、ブロック共重合体Aとブロック共重合体Bとの結合部分にA,B組成が連続的に組成変化するブロック共重合体であってもよい。
以下、共重合体が上述したブロック共重合体である場合の組成および構造について詳述するが、共重合体の構造は、ブロック共重合体に限定されるものではなく、この記載に限定されるものではない。
【0040】
ここで、共重合体の重量平均分子量(Mw)は、7000以上であることが好ましく、10000以上であることがより好ましく、12000以上であることが更により好ましく、35000以上であることが特に好ましく、190000以下であることが好ましく、150000以下であることがより好ましく、100000以下であることが更により好ましく、55000以下であることが特に好ましい。共重合体の重合平均分子量が上記下限以上および上限以下であれば、耐熱性とフィルム成形性が両立した中間膜を得ることができる。
また、共重合体(1)の分子量分布(Mw/Mn)は、6以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましく、4以下であることが特に好ましい。分子量分布が上記上限以下であれば、膜厚ムラを改善することができる。
なお、本明細書において、重合体の「重量平均分子量」および「分子量分布」は、本明細書の実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
【0041】
-芳香族ビニル単量体単位-
芳香族ビニル単量体単位を形成しうる芳香族ビニル単量体としては、スチレンおよびその誘導体が挙げられ、具体的には、スチレン、α-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2,4-ジイソプロピルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、4-t-ブチルスチレン、5-t-ブチル-2-メチルスチレン、4-モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、4-モノフルオロスチレン、および4-フェニルスチレンなどが挙げられる。これらの中でも、吸湿性を低減すべく、極性基を含有しないもの、具体的には、スチレン、α-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2,4-ジイソプロピルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、4-t-ブチルスチレン、5-t-ブチル-2-メチルスチレン、および4-フェニルスチレンが好ましく、工業的な入手の容易さからスチレンが特に好ましい。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0042】
-鎖状共役ジエン単量体単位-
鎖状共役ジエン単量体単位を形成しうる鎖状共役ジエン単量体としては、特に限定されないが、吸湿性を低減すべく、極性基を含有しないものが好ましく、具体的には、1,3-ブタジエン、イソプレン(2-メチル-1,3-ブタジエン)、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエンなどが好ましく挙げられる。これらの中でも、工業的な入手の容易さから1,3-ブタジエン、イソプレンが特に好ましい。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0043】
-重合体ブロック[A]-
重合体ブロック[A]中の芳香族ビニル単量体単位の含有割合は、重合体ブロック[A]中の全繰り返し単位を100質量%とした場合に、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更により好ましくは95質量%以上、特に好ましくは100質量%である。重合体ブロック[A]中の芳香族ビニル単量体単位の含有割合が上記下限以上であれば、共重合体水素化物中の重合体ブロック[A]由来のミクロ相分離ドメインを維持することができ、引張強度および芳香族単量体ブロックの耐熱性を維持することができる。
【0044】
なお、重合体ブロック[A]は、芳香族ビニル単量体単位以外の単量体単位を含んでいてもよく、そのようなその他の単量体単位は、鎖状共役ジエン単量体単位であってもよい。また、その他の単量体単位を形成しうる単量体としては、吸湿性を低減すべく、極性基を含有しないものが好ましく、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ドデセン、1-エイコセン、4-メチル-1-ペンテン、4,6-ジメチル-1-ヘプテンなどの鎖状オレフィン;ビニルシクロヘキサンなどの環状オレフィンが挙げられる。
なお、ブロック共重合体である共重合体が重合体ブロック[A]を複数有する場合は、複数の重合体ブロック[A]の単量体組成は同一あってもよく、異なっていてもよい。
【0045】
-重合体ブロック[B]-
重合体ブロック[B]中の鎖状共役ジエン単量体単位の含有割合は、重合体ブロック[B]中の全繰り返し単位を100質量%とした場合に、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更により好ましくは90質量%以上、特に好ましくは100質量%である。重合体ブロック[B]中の鎖状共役ジエン単量体単位の含有割合が60質量%以上であれば、共重合体中の重合体ブロック[B]由来のガラス転移温度(Tg)を得ることができ、低温衝撃強度を維持することができる。
【0046】
なお、重合体ブロック[B]は、鎖状共役ジエン単量体単位以外の単量体単位を含んでいてもよく、そのようなその他の単量体単位は、芳香族ビニル単量体単位であってもよいし、その他の単量体単位は「重合体ブロック[A]」の項で上述した鎖状オレフィン、環状オレフィンから形成されてもよい。
また、ブロック共重合体である共重合体が重合体ブロック[B]を複数有する場合は、複数の重合体ブロック[B]の単量体組成は同一あってもよく、異なっていてもよい。
さらに、重合体ブロック[B]中の鎖状共役ジエン単量体単位により構成される鎖状共役ジエン部分において、「1,2-結合(3,4-結合)」と「1,4-結合」との合計に対する「1,4-結合」の比率は、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることが特に好ましい。
【0047】
-ブロック共重合体-
ブロック共重合体は、共重合体水素化物の1種であるブロック共重合体水素化物の前駆体であり、少なくとも2つの重合体ブロック[A]と、少なくとも1つの重合体ブロック[B]とを含有する高分子である。
ここで、ブロック共重合体である共重合体中の重合体ブロック[A]の数は、通常5つ以下、好ましくは4つ以下、より好ましくは3つ以下であり、特に好ましくは2つである。
また、ブロック共重合体である共重合体中の重合体ブロック[B]の数は、通常4つ以下、好ましくは3つ以下、より好ましくは2つ以下、また、特に好ましくは1つである。
【0048】
--wA:wB--
ブロック共重合体中の全芳香族ビニル単量体単位がブロック共重合体全体に占める質量分率をwAとし、ブロック共重合体中の全鎖状共役ジエン単量体単位がブロック共重合体全体に占める質量分率をwBとしたときに、wAとwBとの比(wA:wB)は、好ましくは20:80~60:40、より好ましくは、25:75~60:40、特に好ましくは、40:60~60:40である。
wAが多過ぎる場合は、共重合体から得られる共重合体水素化物の低温下での耐衝撃性が低下するおそれがある。一方、wAが少な過ぎる場合は、共重合体から得られる共重合体水素化物の剛性が低下するおそれがある。
なお、「wAとwBとの比(wA:wB)」については、ブロック共重合体を製造する過程において、ブロック共重合体の重合に用いた芳香族ビニル単量体、鎖状共役ジエン単量体およびその他のビニル系化合物の部数と、ガスクロマトグラフィー(GC)を使用して測定されたブロック共重合体の各ブロックの重合終了段階での用いたモノマーの重合体への重合転化率により、各単量体単位の質量分率を算出することができる。
【0049】
--ブロック構造--
ブロック共重合体である共重合体のブロックの形態は、鎖状型ブロックでもラジアル型ブロックでもよいが、鎖状型ブロックであるものが、機械的強度に優れ好ましい。また、ブロック共重合体である共重合体は、重合体ブロック[B]の両端に重合体ブロック[A]が結合した構造(すなわち、A-B-Aの順に並んだ構造)を少なくとも1箇所有することが好ましい。
そしてブロック共重合体である共重合体の特に好ましい形態としては、重合体ブロック[B]の両端に重合体ブロック[A]が結合してなるトリブロック共重合体(A-B-A)、および、重合体ブロック[A]の両端に重合体ブロック[B]が結合し、更に、該2つの重合体ブロック[B]の他端にそれぞれ重合体ブロック[A]が結合してなるペンタブロック共重合体(A-B-A-B-A)が挙げられ、トリブロック共重合体(A-B-A)が最も好ましい。
ブロック共重合体である共重合体は、ブロック重合後水素化前の段階では、末端変性がなされていないことが好ましい。
【0050】
----St1:St2----
ブロック共重合体が、2つの重合体ブロック[A](第1の重合体ブロック[A1]、第2の重合体ブロック[A2])と、1つの重合体ブロック[B]とにより構成されたトリブロック共重合体(A1-B-A2)である場合において、第1の重合体ブロック[A1]由来の芳香族ビニル単量体単位がブロック共重合体全体に占める質量分率をSt1とし、第2の重合体ブロック[A2]由来の芳香族ビニル単量体単位がブロック共重合体全体に占める質量分率をSt2としたときに、St1とSt2との比(St1:St2)は、好ましくは20:80~50:50である。
【0051】
〔〔共重合体の水素化〕〕
上述した共重合体中の不飽和結合(例えば、主鎖および側鎖の炭素-炭素不飽和結合、並びに、芳香環の炭素-炭素不飽和結合などを含む)を水素化することで、共重合体水素化物を得ることができる。
【0052】
-水素化率-
そして、水素化による得られる共重合体水素化物の水素化率は、90モル%以上であることが好ましく、97モル%以上であることがより好ましく、99モル%以上であることが特に好ましい。水素化率が上記下限以上であれば、耐候性を改良することができる。
【0053】
-分子量-
ここで、共重合体水素化物の重量平均分子量(Mw)は、7000以上であることが好ましく、10000以上であることがより好ましく、12000以上であることが更により好ましく、35000以上であることが特に好ましく、190000以下であることが好ましく、150000以下であることがより好ましく、100000以下であることが更により好ましく、55000以下であることが特に好ましい。
共重合体水素化物の重合平均分子量が上記下限以上および上記上限以下であれば、耐熱性とフィルム成形性が両立した中間膜を得ることができる。
また、共重合体水素化物の分子量分布(Mw/Mn)は、7以下であることが好ましく、6以下であることがより好ましく、5以下であることが特に好ましい。分子量分布が上記上限以下であれば、膜厚ムラを改善することができる。
【0054】
共重合体水素化物の、鎖状共役ジエン化合物に由来する炭素-炭素不飽和結合の水素化率、並びに、芳香族ビニル化合物に由来する炭素-炭素不飽和結合の水素化率は、例えば、共重合体および共重合体水素化物の1H-NMRを測定することにより、求めることができる。
【0055】
共重合体中の不飽和結合の水素化方法や反応形態等は特に限定されず、公知の方法に従って行えばよい。
共重合体の鎖状共役ジエン化合物に由来する主鎖および側鎖の炭素-炭素不飽和結合を選択的に水素化する方法としては、例えば、特開2015-78090号公報等に記載された公知の水素化方法が挙げられる。
また、共重合体の鎖状共役ジエン化合物に由来する主鎖および側鎖の炭素-炭素不飽和結合、並びに、芳香族ビニル化合物に由来する芳香環の炭素-炭素不飽和結合を水素化する方法としては、例えば、国際公開第2011/096389号、国際公開第2012/043708号等に記載された方法が挙げられる。
【0056】
水素化反応終了後においては、水素化触媒、或いは、水素化触媒および重合触媒を反応溶液から除去した後、得られた溶液から溶剤を除去して共重合体水素化物を回収することができる。
【0057】
-ブロック共重合体水素化物-
ブロック共重合体水素化物は、共重合体水素化物の1種である。
ブロック共重合体水素化物は、ブロック共重合体の鎖状共役ジエン化合物に由来する主鎖および側鎖の炭素-炭素不飽和結合のみを選択的に水素化した高分子であってもよいし、ブロック共重合体の鎖状共役ジエン化合物に由来する主鎖および側鎖の炭素-炭素不飽和結合並びに芳香族ビニル化合物に由来する芳香環の炭素-炭素不飽和結合を水素化した高分子であってもよいし、これらの混合物であってもよい。
【0058】
ブロック共重合体の鎖状共役ジエン化合物に由来する主鎖および側鎖の炭素-炭素不飽和結合のみを選択的に水素化する場合、主鎖および側鎖の炭素-炭素不飽和結合の水素化率は、通常95%以上、好ましくは97%以上、より好ましくは99%以上であり、芳香族ビニル化合物に由来する芳香環の炭素-炭素不飽和結合の水素化率は、通常10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下である。
なおここで、「主鎖および側鎖の炭素-炭素不飽和結合を水素化すること」は、「ブロック共重合体における鎖状共役ジエン化合物に由来の二重結合を水素化すること」を意味し、「芳香環の炭素-炭素不飽和結合を水素化すること」は、「ブロック共重合体における芳香環に由来の二重結合を水素化すること」を意味する。
【0059】
ブロック共重合体の鎖状共役ジエン化合物に由来する主鎖および側鎖の炭素-炭素不飽和結合、並びに、芳香族ビニル化合物に由来する芳香環の炭素-炭素不飽和結合を水素化する場合、水素化率は、通常全炭素-炭素不飽和結合の90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは99%以上である。
【0060】
〔変性共重合体水素化物〕
変性共重合体水素化物は、例えば、上記得られた共重合体水素化物と、エチレン性不飽和シラン化合物とを、過酸化物の存在下で反応(シラン変性)させて、共重合体水素化物にアルコキシシリル基を導入して得られる。
なお、導入されるアルコキシシリル基は、シラン変性に用いられる後述のエチレン性不飽和シラン化合物に対応するが、(i)ガラス、金属等の異種材料との接着、(ii)溶融シリカ、粉砕シリカ、モンモリロナイト等のいわゆるクレー、ガラスファイバー、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、セルロースナノファイバー、金属粒子、等の分散性の観点から、メトキシシリル基、エトキシシリル基が好ましく、メトキシシリル基がより好ましい。ここで、アルコキシシリル基は、共重合体水素化物に直接結合されてもよく、アルキレン基やアルキレンオキシカルボニルアルキレン基などの2価の有機基を介して結合されてもよい。
【0061】
〔〔エチレン性不飽和シラン化合物〕〕
シラン変性に用いるエチレン性不飽和シラン化合物としては、共重合体水素化物と反応(例えばグラフト重合)して、共重合体水素化物にアルコキシシリル基を導入しうるものであれば特に限定されない。このようなエチレン性不飽和シラン化合物としては、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ジメトキシメチルビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。これらの中でもビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランが好ましく、ビニルトリメトキシシランがより好ましい。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
エチレン性不飽和シラン化合物の使用量は、共重合体水素化物100質量当たり、通常0.1質量部以上10質量部以下、好ましくは0.2質量部以上5質量部以下、より好ましくは0.3質量部以上3質量部以下である。
【0062】
〔〔過酸化物〕〕
シラン変性に用いる過酸化物としては、1分間半減期温度が170~190℃のものが好ましく使用され、例えば、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ヘキシルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジ-(2-t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンなどの有機過酸化物が挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
過酸化物の使用量は、共重合体水素化物100質量部当たり、通常0.05質量部以上2質量部以下、好ましくは0.1質量部以上1質量部以下、より好ましくは0.2質量部以上0.5質量部以下である。
【0063】
〔〔アルコキシシリル基の導入量〕〕
シラン変性を行うことにより共重合体水素化物に導入されるアルコキシシリル基の量は、共重合体水素化物100質量部当たり、0.1質量部以上であることが好ましく、0.5質量部以上であることがより好ましく、1質量部以上であることが特に好ましく、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましく、3質量部以下であることが特に好ましい。
【0064】
〔〔分子量〕〕
上記シラン変性により得られた共重合体水素化物(シラン変性体)の重量平均分子量(Mw)は、通常、導入されるアルコキシシリル基の量が少ないため、原料として用いた共重合体水素化物のそれと大きくは変わらず、7000以上であることが好ましく、10000以上であることがより好ましく、12000以上であることが更により好ましく、35000以上であることが特に好ましく、190000以下であることが好ましく、150000以下であることがより好ましく、100000以下であることが更により好ましく、55000以下であることが特に好ましい。シラン変性体の重合平均分子量が上記下限以上であれば、シラン変性体の機械的強度を高めることができ、上記上限以下であれば、シラン変性体の加工性を確保することができる。
また、シラン変性体の分子量分布は、7.5以下であることが好ましく、6.5以下であることがより好ましく、5.5以下であることが特に好ましい。分子量分布が上記上限以下であれば、共重合体水素化物から得られるシラン変性体の加工性や機械的強度を高めることができる。
なお、シラン変性体の分子量分布(Mw/Mn)は、過酸化物の存在下でシラン変性を行うため、重合体の架橋反応、切断反応が併発することにより、原料として用いた共重合体水素化物のそれよりも大きくなる傾向がある。
【0065】
〔〔ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した溶出曲線〕〕
共重合体水素化物を含有する試料のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した溶出曲線における共重合体水素化物由来ピークの数は、少なくとも2つである限り、特に制限はないが、4つ以下であることが好ましく、3つ以下であることがより好ましく、2つであることが特に好ましい。
ここで、溶出曲線は、共重合体水素化物由来ピークを検出可能なものであればよく、共重合体水素化物のみをGPC測定することにより得られた溶出曲線だけでなく、共重合体水素化物を含む組成物より得られた溶出曲線(例えば、酸化防止剤(老化防止剤)と共重合体水素化物とを含む組成物)であってもよい。
なお、本明細書において、「ピーク」とは「ベースラインに対して突出する部分」を意味し、「ピークトップ」とは「示差屈折計(RI)の検出感度(mV)が一番高い頂点」を意味する。
ここで、少なくとも2つの共重合体水素化物由来ピークのうち、最も検出感度(mV)の高いピークトップを示す共重合体水素化物由来ピークを第1ピークとし、第1ピークのピークトップの溶出時間の次に溶出時間の早いピークトップを示す共重合体水素化物由来ピークを第2ピークとする。例えば、
図5では、Aが第1ピークであり、Bが第2ピークであり、溶出時間約16分で検出されるCが共重合体水素化物を製造するときに使われた溶媒(例えば、シクロヘキサン)に由来するピークであり、16.5分以降のマイナス側に検出される2つのピークはGPC測定で用いた溶媒としてのテトラヒドロフラン(THF)に由来するピークである。Dは酸化防止剤(老化防止剤)に由来するピークである。
また、
図5において、EはGPCで測定された標準ポリスチレンの分子量のプロット(キャリブレーションカーブ)であり、
図5に示すように、このキャリブレーションカーブとGPCで測定された共重合体水素化物の溶出時間から、「第1ピークの検出感度(mV)が最も高い溶出時間に基づく標準ポリスチレン換算分子量(第1ピーク分子量)」および「第2ピークの検出感度(mV)が最も高い溶出時間に基づく標準ポリスチレン換算分子量(第2ピーク分子量)」を算出する。
なお、
図5の溶出曲線では、Dの酸化防止剤(老化防止剤)由来のピークは、共重合体水素化物によるものではない。
【0066】
-第1ピーク-
第1ピークの溶出時間に基づく標準ポリスチレン換算分子量(第1ピーク分子量)は、特に制限はないが、15000以上であることが好ましく、20000以上であることがより好ましく、25000以上であることが特に好ましく、200000以下であることが好ましく、170000以下であることがより好ましく、140000以下であることが特に好ましい。第1ピークの溶出時間に基づく標準ポリスチレン換算分子量(第1ピーク分子量)が、上記下限以上であれば、樹脂の衝撃強度を確保することができ、上記上限以下であれば、フィルムを押し出し成型することができる。
【0067】
-第2ピーク-
第2ピークの溶出時間に基づく標準ポリスチレン換算分子量(第2ピーク分子量)は、特に制限はないが、1000以上であることが好ましく、1200以上であることがより好ましく、1500以上であることが更により好ましく、1800以上であることが特に好ましく、153800以下であることが好ましく、100000以下であることがより好ましく、50000以下であることが特に好ましい。第2ピークの溶出時間に基づく標準ポリスチレン換算分子量(第2ピーク分子量)が、上記下限以上であれば、耐熱性が優れた中間膜を得ることができる。
【0068】
第2ピークの溶出時間に基づく標準ポリスチレン換算分子量(第2ピーク分子量)に対する第1ピークの溶出時間に基づく標準ポリスチレン換算分子量(第1ピーク分子量)の比(第1ピーク分子量/第2ピーク分子量)は、特に制限はないが、1.50以上であることが好ましく、2.0以上であることがより好ましく、4.0以上であることが特に好ましく、200以下であることが好ましく、150以下であることがより好ましく、100以下であることが特に好ましい。第2ピーク分子量に対する第1ピーク分子量の比が、上記下限以上であり、かつ、上記上限以下であれば、膜厚ムラをより改良することができる。
【0069】
第2ピークのピークトップが示す示差屈折計(RI)の検出感度(第2ピークトップ感度)(mV)に対する第1ピークのピークトップが示す示差屈折計(RI)の検出感度(第1ピークトップ感度)(mV)の比(第1ピークトップ感度(mV)/第2ピークトップ感度(mV))は、特に制限はないが、1.0以上であることが好ましく、1.5以上であることがより好ましく、2.0以上であることが特に好ましく、99以下であることが好ましく、70以下であることがより好ましく、50以下であることが特に好ましい。第2ピークトップ感度(mV)に対する第1ピークトップ感度(mV)の比が、上記下限以上であれば、耐熱性が優れた中間膜を得ることができ、上記上限以下であれば、膜厚ムラをより改良することができる。
【0070】
なお、水素化反応(水添反応)に供する共重合体の重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)と、水素化温度(水添温度)と、水素化反応時間(水添反応時間)と、水素化反応(水添反応)における水素供給停止時間とを適宜調整することにより、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した溶出曲線において所定の第1ピークと所定の第2ピークとを有する共重合体水素化物が得られる。
【0071】
〔〔共重合体水素化物または変性共重合体水素化物の製造方法〕〕
共重合体水素化物または変性共重合体水素化物の製造方法は、共重合工程と、水素化工程とを含み、必要に応じて、シラン変性工程等のその他の工程を含む。
【0072】
-共重合工程-
共重合工程は、有機リチウム化合物を含む開始剤を用いて、芳香族ビニル単量体と鎖状共役ジエン単量体とを共重合させる工程である。
共重合の方法は、有機リチウム化合物を含む開始剤を用いた共重合である限り、特に限定されず、芳香族ビニル単量体と鎖状共役ジエン単量体を含む単量体組成物を、既知の方法で重合することにより、共重合体を調製することができる。
【0073】
--有機リチウム化合物--
有機リチウム化合物は、通常、アニオン重合に用いられるものであり、特に制限はなく、例えば、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、n-プロピルリチウム、iso-プロピルリチウム、ベンジルリチウム等のモノ有機リチウム化合物;1,4-ジリチオブタン、1,5-ジリチオペンタン、1,6-ジリチオヘキサン、1,10-ジリチオデカン、1,1-ジリチオジフェニレン、ジリチオポリブタジエン、ジリチオポリイソプレン、1,4-ジリチオベンゼン、1,2-ジリチオ-1,2-ジフェニルエタン、1,4-ジリチオ-2-エチルシクロヘキサン、1,3,5-トリリチオベンゼン、1,3,5-トリリチオ-2,4,6-トリエチルベンゼン等の多官能性有機リチウム化合物;などが挙げられる。これらの中でも、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム等のモノ有機リチウム化合物が好ましい。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0074】
-水素化工程-
水素化工程は、共重合工程により得られた共重合体を水素化する工程である。
共重合体中の不飽和結合を水素化する方法(水素化方法)としては、特に限定されず、既知の方法を採用することができるが、水素化率を高くしつつ、重合体鎖切断反応を抑制しうる水素化方法が好ましい。このような水素化方法としては、例えば、国際公開第2011/096389号、国際公開第2012/043708号などに記載された方法を挙げることができる。
【0075】
-シラン変性工程-
シラン変性工程は、水素化工程により得られた共重合体水素化物をシラン変性する工程である。
共重合体水素化物をシラン変性する方法は、特に限定されないが、例えば、共重合体水素化物と、エチレン性不飽和シラン化合物と、過酸化物とを二軸押出機にて混練することにより、共重合体水素化物にアルコキシシリル基を導入することができる。混練温度は、通常180℃以上220℃以下、好ましくは185℃以上210℃以下、より好ましくは190℃以上200℃以下である。混練時間は、通常0.1分間以上10分間以下、好ましくは0.2分間以上5分間以下、より好ましくは0.3分間以上2分間以下程度である。このような混練温度、混練時間となるように適宜設定して、連続的に混練、押出しをすればよい。
【0076】
共重合体水素化物含有組成物は、上述した共重合体水素化物と、リン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、および加工助剤の少なくとも何れかと、を含み、必要に応じて、その他の成分を含むことが好ましい。
また、変性共重合体水素化物含有組成物は、上述した変性共重合体水素化物と、リン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、および加工助剤の少なくとも何れかと、を含み、必要に応じて、その他の成分を含むことが好ましい。
【0077】
リン系酸化防止剤は、特に制限はなく、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシリホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェノル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、10-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-9、10-ジヒドロ-9-オキサ-10ホスファフェナントレン-10-オキサイド等のモノホスファイト系化合物、4,4’-ブチリデン-ビス(3-メチル-6-tブチルフェニル-ジ-トリデシルホスファイト)4,4’-イソプロピリデン-ビス(フェニル-ジ-アルキル(C12~C15)ホスファイト)等のジホスファイト系化合物;6-〔3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ〕-2,4,8,10-テトラキス-t-ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1.3.2〕ジオキサフォスフェピン、6-〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロポキシ〕-2,4,8,10-テトラキス-t-ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1.3.2〕ジオキサフォスフェピン等が挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0078】
フェノール系酸化防止剤は、特に制限はなく、例えば、ペンタエリスリトール・テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2-チオ-ジエチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,9-ビス{2-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロオニルオキシ]-1,1-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン等が挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0079】
共重合体水素化物含有組成物における、共重合体水素化物100質量部に対するリン系酸化防止剤およびフェノール系酸化防止剤の合計含有量は、特に制限はないが、0.001質量部以上であることが好ましく、0.003質量部以上であることがより好ましく、0.005質量部以上であることが特に好ましく、1.0質量部以下であることが好ましく、0.8質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以下であることが特に好ましい。共重合体水素化物100質量部に対するリン系酸化防止剤およびフェノール系酸化防止剤の合計含有量が、上記下限以上であれば、酸化を防止することができ、上記上限以下であれば、樹脂表面へのブリードを抑制することができる。
また、変性共重合体水素化物含有組成物における、変性共重合体水素化物100質量部に対するリン系酸化防止剤およびフェノール系酸化防止剤の合計含有量は、特に制限はないが、0.001質量部以上であることが好ましく、0.003質量部以上であることがより好ましく、0.005質量部以上であることが特に好ましく、1.0質量部以下であることが好ましく、0.8質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以下であることが特に好ましい。変性共重合体水素化物100質量部に対するリン系酸化防止剤およびフェノール系酸化防止剤の合計含有量が、上記下限以上であれば、酸化を防止することができ、上記上限以下であれば、樹脂表面へのブリードを抑制することができる。
【0080】
加工助剤としては、共重合体水素化物または変性共重合体水素化物に均一に溶解ないし分散できるものが好ましく、数平均分子量が300以上5,000以下の炭化水素系重合体がより好ましい。
【0081】
炭化水素系重合体の具体例としては、ポリイソブチレン、ポリブテン、ポリ-4-メチルペンテン、ポリ-1-オクテン、ポリイソプレン、エチレン・α-オレフィン共重合体、ポリイソプレン-ブタジエン共重合体等の低分子量体及びその水素化物;などが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、透明性、耐光性を維持し、軟化効果に優れている点で、低分子量(数平均分子量が、好ましくは500以上3,000以下、より好ましくは500以上2,500以下)のポリイソブチレン水素化物、低分子量(数平均分子量が、好ましくは500以上3,000以下、より好ましくは500以上2,500以下)のポリイソブチレン水素化物が好ましい。
【0082】
低分子量の炭化水素系重合体の配合量は、共重合体水素化物または変性共重合体水素化物100質量部に対して、通常、40質量部以下、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下である。低分子量の炭化水素系重合体の配合量を多くすると、合わせガラス用の中間膜とした場合に、耐熱性が低下したり、溶出物が増加し易くなる傾向がある。
【0083】
その他の成分は、特に制限はなく、用途により例えば、紫外線吸収剤、光安定剤、ブロック共重合体水素化物以外の重合体、ペレットのブロッキング防止剤、赤外線遮蔽/吸収剤、金属石鹸、着色剤、酸無水物、無機酸化物(粉砕シリカ、焼成シリカ等)などが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0084】
<その他の層>
その他の層は、上記樹脂層以外の層であればよいが、例えば、アルミ箔等の金属層であってもよい。
【0085】
(合わせガラス)
本発明の合わせガラスは、上述した本発明の合わせガラス用中間膜を備える。
本発明の合わせガラスは、本発明の合わせガラス用中間膜を用いて、従来の公知の方法により作製することができる。本発明の合わせガラスは、例えば、本発明の合わせガラス用中間膜を厚さが1.2mm以下である平板ガラス2枚の間に介装した積層体を、真空バッグ内で、5000Pa以下の真空度で真空引きすることにより作製することができる。
【0086】
<平板ガラス>
平板ガラスとしては、特に制限はなく、例えば、フロート板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入り板ガラス、熱線吸収板ガラス等の公知の無機ガラス板;などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの平板ガラスは、透明性を有し、無色および有色のいずれであってもよい。
また、平板ガラスに用いられるガラスの材質としては、特に制限はなく、例えば、アルミノシリケート酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、ウランガラス、カリガラス、ケイ酸ガラス、結晶化ガラス、ゲルマニウムガラス、石英ガラス、ソーダライムガラス(ソーダガラス)、鉛ガラス、バリウム瑚珪酸ガラス、瑚珪酸ガラス、などが挙げられる。
【実施例】
【0087】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」および「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
また、複数種類の単量体を共重合して製造される重合体において、ある単量体を重合して形成される構造単位の前記重合体における割合は、別に断らない限り、通常は、その重合体の重合に用いる全単量体に占める当該ある単量体の比率(仕込み比)と一致する。
【0088】
実施例および比較例において、(1)共重合体水素化物または共重合体水素化物シラン変性体の重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)並びにGPC溶出曲線分析(第1ピークの溶出時間に基づく標準ポリスチレン換算分子量(第1ピーク分子量)、第2ピークの溶出時間に基づく標準ポリスチレン換算分子量(第2ピーク分子量)、第1ピークのピークトップが示す示差屈折計(RI)の検出感度(第1ピークトップ感度)(mV)、第2ピークのピークトップが示す示差屈折計(RI)の検出感度(第2ピークトップ感度)(mV))、(2)共重合体水素化物の水素化率、(3)樹脂層の配向性の評価、(4)樹脂層のスライス面の相分離構造評価、および(5)合わせガラス[L]の製造と面精度の評価を下記の方法で測定乃至評価した。
【0089】
<(1)共重合体水素化物または共重合体水素化物シラン変性体の重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)並びにGPC溶出曲線分析>
テトラヒドロフランを溶離液とするゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)による標準ポリスチレン換算値として、40℃において、0.6cc/分の速度で測定した。測定装置としては、東ソー社製HLC8320GPCを用い、カラムはTSKgel SuperH G5000HLX、G4000HLX,G2000HLX3本を直列につなぎ、ポリマー量4mg/1ccの濃度に調整し測定した。
【0090】
<(2)共重合体水素化物の水素化率>
共重合体水素化物の水素化率(モル%)は、1H-NMR測定(測定溶媒:CDCl3)を実施し、共重合体中に存在した全不飽和結合のうち消失した不飽和結合の割合を算出することで導出した。
【0091】
<(3)樹脂層の配向性の評価>
合わせガラス用中間膜から樹脂層を取り出して、縦50mm×横50mmの大きさに切り出し、小角X線散乱測定用の試料を作製した。切り出した面の法線とX線照射方向とが一致するように、上記試料を、放射光施設(SPring-8 BL08B2)に設置して、検出器(リガク社製:R-AXIS IV++ IP)を用い、カメラ長1064mmに設定して、波長0.15nm、ビーム径が縦0.1nm、横0.19nmのX線を照射を行い、露光時間300秒間の条件下で、試料による周期性(干渉性)散乱を観測した。
周期性(干渉性)散乱から、上記と同様の測定条件によって得られたバックグラウンド散乱を減算し、散乱強度が最大となる方位角を含む任意の180°の範囲における最大強度値(max)と最小強度値(min)を取得した。
上記の最大強度値および最小強度値から、配向度Aおよび配向度Bを下記の式に基づいて算出した。配向度Aおよび配向度Bの算出結果を表1に示す。
配向度A=(最大強度値-最小強度値)/(最大強度値+最小強度値)
配向度B=最大強度値/最小強度値
【0092】
<(4)樹脂層のスライス面の相分離構造評価>
合わせガラス用中間膜から樹脂層を取り出して、縦5mm×横5mmの大きさに切り出した。切り出した樹脂層を凍結状態に保持しつつ、ミクロトームにて、厚さ方向中央領域を切り出した樹脂層の表面と略平行な平面に沿ってスライスして得られたスライス面の中心部の相分離構造について、以下の条件にて原子間力顕微鏡(AFM)を用いて評価した。
装置としてBruker AXS社製走査型プローブ顕微鏡(SPM)NanoScope V Dimension Iconを用い、探針としてシリコンコンカンチレバーを装着し、操作モードはタッピングモード、位相像(位相イメージング)で、操作速度1.0Hzの条件にて、縦200nm×横200nmの正方形領域での測定を実施した。
得られた位相像について、画像解析ソフトWinROOF2015(三谷商事株式会社製)を使用して解析を行い、60nm以上の絶対最大長を有するハードセグメント部(明部)の有無を確認し、60nm以上の絶対最大長を有するハードセグメント部(明部)の周囲長と、包絡周囲長を算出し、包絡周囲長に対する周囲長の比(周囲長/包絡周囲長)を求めた。
上記解析を、任意の箇所で、計5回繰り返した。
【0093】
表1では、5回のうち少なくとも1回において、60nm以上の絶対最大長を有するハードセグメント部(明部)の存在を確認できた場合、「ハードセグメント部(明部)の有無」の欄に「有」と記載し、5回のうち1回も、60nm以上の絶対最大長を有するハードセグメント部(明部)の存在を確認できなかった場合、「ハードセグメント部(明部)の有無」の欄に「無」と記載した。また、60nm以上の絶対最大長を有するハードセグメント部(明部)の包絡周囲長に対する周囲長の比(周囲長/包絡周囲長)の最大値が1.2以上である場合、「比(周囲長/包絡周囲長)の最大値の評価」の欄に「OK」と記載し、60nm以上の絶対最大長を有するハードセグメント部(明部)の包絡周囲長に対する周囲長の比(周囲長/包絡周囲長)の最大値が1.2未満である場合、「比(周囲長/包絡周囲長)の最大値の評価」の欄に「NG」と記載した。
【0094】
さらに、位相像(位相イメージング)で取得した正方形領域全体(像全体)に対する、ハードセグメント部(明部)の面積比率(%)を算出するために、画像解析を実施した。
上述したハードセグメント部(明部)の面積比率(%)は、計5回それぞれ算出し、平均値を面積率比率(%)とした。
【0095】
<(5)合わせガラス[L]の製造と面精度の評価>
<<合わせガラス[L]の製造>>
厚さ1.1mm、(公差±5μm)、縦100mm、横60mmの長方形の2枚の白板(BK270)ガラスの間に、MD方向100mm、TD方向60mmの長方形に切り出したシート[S]を1枚重ねて挟み、積層物[M]を得た。
この積層物[M]を、ゴムバッグ(真空バッグ)に入れて、110℃のオーブンに入れた後、真空ポンプにより吸引し、真空度10Pa以下の状態にて15分間真空圧着を実施した。
その後、常圧に戻した後、ゴムバッグ(真空バッグ)をオーブンから取出した後、室温まで冷却した後、ゴムバッグ(真空バッグ)より、合わせガラス状[L]を取り出した。
<<合わせガラス[L]の面精度>>
得られた合わせガラス[L]について、
図6に示すように、20mmの間隔にて縦を5分割、横を3分割した碁盤目状の線を引き、各碁盤の中央部についてそれぞれ厚みを測定し、合わせガラス[L]作製時に使用した、ガラス板2枚の厚みとの差分を求めることで中間層の厚みを計15箇所算出した。
上記にて求められた中間層の膜厚(計15箇所)を用いて、下記式(1)から、変動率(%)を算出した。なお、下記式(1)における分子(15箇所の中間層の厚みのばらつき)の値は、15箇所の中間層の厚みから算出した標準偏差を意味する。
【数1】
表1では、変動率(%)が、5.0%未満であれば「許容」と記載し、2.0%未満であれば「良好」と記載し、5.0%以上であれば「不良」と記載した。
【0096】
(製造例1)
十分に窒素置換された攪拌装置を備えた反応器に脱水シクロヘキサン550部、脱水スチレン25部、n-ブチルエーテル0.475部を入れ、60℃で撹拌しながら、n-ブチルリチウム(15%n-ヘキサン溶液)を0.90部を加えて重合を開始した。65℃で60分間重合反応させた。ガスクロマトグラフィーにより測定したこの時点での重合添加率は99.9%であった。次に、脱水イソプレン50.0部を加え、そのまま40分間撹拌を続けた。この時点での重合添加率は99.6%であった。その後、更に脱水スチレンを25.0部加え、60分間反応させた。この時点での重合添加率はほぼ100%であった。ここでメタノール2.0部添加し反応を停止した。
得られたブロック共重合体[C1]の溶液は、重量平均分子量(Mw)が42900であり、第1ピークの溶出時間に基づく標準ポリスチレン換算分子量(第1ピーク分子量)が44300であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.03であり、S-I-S(スチレンブロック-イソプレンブロック-スチレンブロック)のトリブロック共重合体であった。
上記ブロック共重合体[C1]の溶液を攪拌装置を備えた耐圧反応容器に移送し、水素化触媒としてのシリカーアルミナ担持型ニッケル触媒(製品名:T-8400RL、クラリアント触媒(株)社製、ニッケル含有量33%)4部、および、脱水シクロヘキサン100部を添加して混合した。常温状態にて反応内部を水素ガスにて置換しゲージ圧力で2MPa加圧した状態で180℃まで昇温した。耐圧反応容器の内部温度が180℃となったところで、60分間水素の供給をせず、180℃の温度を一定に保った。60分後、水素圧を4.5MPaまで加圧し6時間水素化反応を行った(水素化率:99.9%)。水素化反応後の共重合体水素化物のGPC溶出曲線において、第1ピークの溶出時間に基づく標準ポリスチレン換算分子量(第1ピーク分子量)が45000であり、第2ピークの溶出時間に基づく標準ポリスチレン換算分子量(第2ピーク分子量)が9200であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.45であり、重量平均分子量(Mw)は43900であった。第1ピーク分子量/第2ピーク分子量が4.89であり、第1ピークのピークトップが示す示差屈折計(RI)の検出感度(第1ピークトップ感度)(mV)/第2ピークのピークトップが示す示差屈折計(RI)の検出感度(第2ピークトップ感度)(mV)が10.18であった。水素化反応終了後、反応溶液を濾過して水素化触媒を除去した後、得られた溶液に、フェノール系酸化防止剤であるペンタエリトリトール・テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](製品名「AO60」、ADEKA社製)0.1部を溶解したキシレン溶液2.0部を添加して溶解させた。
次いで、上記溶液を、円筒型濃縮乾燥器(製品名「コントロ」、日立製作所社製)を用いて、温度260℃、圧力0.001MPa以下で、溶液からシクロヘキサン、キシレンおよびその他の揮発成分を除去した。溶融ポリマーをダイからストランド状に押出し、冷却後、ペレタイザーによりカッティングしてブロック共重合体水素化物[D1]からなるペレット94部を得た。
【0097】
得られたブロック共重合体水素化物[D1]のペレット100部に対して、ビニルトリメトキシシラン2.0部、および、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン(製品名「パーヘキサ(登録商標)25B」、日油社製)0.2部を添加した。この混合物を、二軸押出機(製品名「TEM37B」、東芝機械社製)を用いて、樹脂温度200℃、滞留時間60~70秒で混練した。得られた混練物を、ストランド状に押出し、空冷した後、ペレタイザーによりカッティングし、アルコキシシリル基を有する変性ブロック共重合体水素化物[E1]のペレット97部を得た。
上記変性ブロック共重合体水素化物[E1]を直径37mmのスクリューを備えた二軸混練機(東芝機械社製、TEM37B)を有するTダイ式フィルム溶融押出し成形機(Tダイ幅400mm)、キャストロール、ニップロール共にエンボスパターンが付与されたロール、およびシート引き取り装置を備えた押出しシート成形機を使用して、溶融樹脂温度200℃、Tダイ温度200℃、キャストロール温度60℃の条件にて押出し成形し、変性ブロック共重合体水素化物[E1]を主成分とするシート[S1](厚さ760μm)を得た。
【0098】
(製造例2)
製造例1で得られたブロック共重合体水素化物[D1]のペレット100部に対して、ビニルトリメトキシシラン2.0部、および、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン(製品名「パーヘキサ(登録商標)25B」、日油社製)0.2部を添加した。この混合物を、二軸押出機(製品名「TEM37B」、東芝機械社製)を用いて、樹脂温度200℃、滞留時間60~70秒で混練した。得られた混練物を、ストランド状に押出しつつ、サイドフィーダーから粘着付与剤としてイソブテン重合体水素化物(製品名「日油ポリブテン(登録商標)SH10」、日油社製)を、変性ブロック共重合体水素化物[E1]100部に対して10部の割合となるように連続的に添加して、ストランド状に押出し、空冷した後、ペレタイザーによりカッティングして変性ブロック共重合体水素化物[E1]を主成分とする樹脂組成物[F1]のペレット104部を得た。
上記樹脂組成物[F1]を直径37mmのスクリューを備えた二軸混練機(東芝機械社製、TEM37B)を有するTダイ式フィルム溶融押出し成形機(Tダイ幅400mm)、キャストロール、ニップロール共にエンボスパターンが付与されたロール、およびシート引き取り装置を備えた押出しシート成形機を使用して、溶融樹脂温度170℃、Tダイ温度170℃、キャストロール温度50℃の条件にて押出し成形し、樹脂組成物[F1]を主成分とするシート[S2](厚さ760μm)を得た。
【0099】
(製造例3)
スチレンブロック含量が15質量%である、スチレン-ブタジエン-スチレブロック共重合体の水素化物である、クレイトンG1657(クレイトン社製)を直径37mmのスクリューを備えた二軸混練機(東芝機械社製、TEM37B)を有するTダイ式フィルム溶融押出し成形機(Tダイ幅400mm)、キャストロール、ニップロール共にエンボスパターンが付与されたロール、およびシート引き取り装置を備えた押出しシート成形機を使用して、溶融樹脂温度220℃、Tダイ温度220℃、キャストロール温度70℃の条件にて押出し成形し、シート[S3](厚さ760μm)を得た。
【0100】
(製造例4)
国際公開第2016/076337号に記載の比較例1と同様に、下記に示すように、シート[S4](厚さ760μm)を得た。
【0101】
<<A層用組成物の作製>>
窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン50kg、アニオン重合開始剤としてsec-ブチルリチウム130gを仕込み、ルイス塩基としてテトラヒドロフラン290gを仕込んだ(sec-ブチルリチウムは、10.5質量%のシクロヘキサン溶液を含むため、sec-ブチルリチウムの実質的な添加量は13.9gである)。耐圧容器内を50℃に昇温した後、スチレン1.8kgを加えて1時間重合させ、引き続いてイソプレン13.2kgを加えて2時間重合させ、さらにスチレン1.8kgを加えて1時間重合させることにより、ポリスチレン-ポリイソプレン-ポリスチレントリブロック共重合体を含む反応液を得た。
該反応液に、オクチル酸ニッケルおよびトリメチルアルミニウムから形成されるチーグラー系水素添加触媒を水素雰囲気下で添加し、水素圧力1MPa、80℃の条件で5時間反応させた。該反応液を放冷および放圧させた後、水洗により上記触媒を除去し、真空乾燥させることにより、ポリスチレン-ポリイソプレン-ポリスチレントリブロック共重合体の水素添加物(以下、樹脂X)を得た。
得られた樹脂Xに、遮熱材料としてのセシウムタングステンオキサイド(住友金属鉱山株式会社製、以下CWOとする)と、紫外線吸収剤としてのTinuvin326と、酸化防止剤としてのCyanox2777と、光安定剤としてのTinuvin622SFとを混合して、A層を構成する組成物を作製した。遮熱材料はA層における面密度が0.25g/m2となるように、紫外線吸収剤はA層における面密度が1.0g/m2となるように、酸化防止剤はA層における面密度が0.20g/m2となるように、光安定剤はA層における面密度が1.6g/m2となるように、配合量を調節した。
なお、紫外線吸収剤として用いたTinuvin326は、2-(5-クロロ-2-ベンゾトリアゾリル)-6-tert-ブチル-p-クレゾール(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)である。酸化防止剤として用いたCyanox2777は、1,3,5-トリス(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオンとトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスフェイトとの混合物(CYTEC社製)である。光安定剤として用いたTinuvin622SFは、コハク酸ジメチルと4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノールとの重合物(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)である。
さらに、100質量部の樹脂Xに対してB層との接着力調整剤として、5質量部の無水マレイン酸変性ポリプロピレン(三洋化成工業株式会社製、ユーメックス1010)を添加して、樹脂Xを主成分とするA層用組成物を作製した。ここで、主成分とは、組成物中で最も質量の多い成分を意味し、可塑剤を含有する場合は、可塑剤も含めて主成分と称する。
【0102】
<<B層用組成物の作製>>
B層の主成分には、粘度平均重合度約1100、アセタール化度68.7モル%、ビニルアセテート単位の含有量が0.8モル%、ビニルアルコール単位の含有量が30.5モル%のポリビニルブチラール(PVB-1)を用いた。
上記PVB-1に、紫外線吸収剤としてのTinuvin326を混合して、B層を構成する組成物を作製した。紫外線吸収剤はB層における面密度が5.1g/m2となるように配合量を調節して、B層用組成物を作製した。
【0103】
<<シート[S4]の作製>>
A層用組成物を、50mmφベント式単軸押出機を用いて、温度210℃、吐出量4kg/hの条件で、205℃のTダイ(マルチマニホールドタイプ:幅500mm)に導入し、B層用組成物を、65mmφベント式単軸押出機を用いて、温度205℃、吐出量24kg/hの条件で、該Tダイに導入した。該Tダイから共押出された成形物を、一方を50℃、他方を60℃とした2つの金属鏡面ロールによってニップし、引き取り速度1.2m/minで、B層/A層/B層(330μm/100μm/330μm)という3層構成となるシート[S4](760μm)を成形した。
【0104】
(製造例5)
国際公開第2016/076337号に記載の実施例11と同様に、下記に示すように、シート[S5](厚さ760μm)を得た。
【0105】
<<A層用組成物の作製>>
[樹脂Yの作製]
窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン50.0kg、アニオン重合開始剤としてsec-ブチルリチウム76gを仕込み、ルイス塩基としてテトラヒドロフラン313gを仕込んだ(sec-ブチルリチウムは、10.5質量%のシクロヘキサン溶液を含むため、sec-ブチルリチウムの実質的な添加量は8.0gである)。耐圧容器内を50℃に昇温した後、スチレン0.5kgを加えて1時間重合させ、引き続いてイソプレン8.2kgおよびブタジエン6.5kgからなる混合液を加えて2時間重合させ、さらにスチレン1.5kgを加えて1時間重合させることにより、ポリスチレン-ポリ(イソプレン/ブタジエン)-ポリスチレントリブロック共重合体を含む反応液を得た。
該反応液に、オクチル酸ニッケルおよびトリメチルアルミニウムから形成されるチーグラー系水素添加触媒を水素雰囲気下に添加し、水素圧力1MPa、80℃の条件で5時間反応を行った。放冷、放圧後、水洗により金属触媒を除去し、真空乾燥することにより、ポリスチレン-ポリ(イソプレン/ブタジエン)-ポリスチレントリブロック共重合体の水素添加物(以下、樹脂Yとする)を得た。
【0106】
[A層用組成物の作製]
樹脂Yと樹脂Xとを質量比1:3で200℃にて溶融混錬して、樹脂Zを得た。
樹脂Zに、遮熱材料としてのセシウムタングステンオキサイド(住友金属鉱山株式会社製、以下CWOとする)と、紫外線吸収剤としてのTinuvin326と、酸化防止剤としてのCyanox2777と、光安定剤としてのTinuvin622SFとを混合して、A層用組成物を作製した。遮熱材料はA層における面密度が0.25g/m2となるように、紫外線吸収剤はA層における面密度が1.0g/m2となるように、酸化防止剤はA層における面密度が0.20g/m2となるように、光安定剤はA層における面密度が1.6g/m2となるように、配合量を調節した。
なお、紫外線吸収剤として用いたTinuvin326は、2-(5-クロロ-2-ベンゾトリアゾリル)-6-tert-ブチル-p-クレゾール(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)である。酸化防止剤として用いたCyanox2777は、1,3,5-トリス(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオンとトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスフェイトとの混合物(CYTEC社製)である。光安定剤として用いたTinuvin622SFは、コハク酸ジメチルと4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノールとの重合物(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)である。
【0107】
<<B層用組成物の作製>>
B層の主成分には、アイオノマー(デュポン社製、SentryGlas(R) Interlayer)を用いた。
上記アイオノマーに、紫外線吸収剤としてのTinuvin326を混合して、B層を構成する組成物を作製した。紫外線吸収剤はB層における面密度が5.1g/m2となるように配合量を調節して組成物を作製した。
【0108】
<<シート[S5]の作製>>
A層用組成物を、50mmφベント式単軸押出機を用いて、温度210℃、吐出量4kg/hの条件で、205℃のTダイ(マルチマニホールドタイプ:幅500mm)に導入し、B層用組成物を、65mmφベント式単軸押出機を用いて、温度205℃、吐出量24kg/hの条件で、該Tダイに導入した。該Tダイから共押出された成形物を、一方を50℃、他方を60℃とした2つの金属鏡面ロールによってニップし、引き取り速度1.2m/minで、B層/A層/B層(270μm/220μm/270μm)という3層構成となるシート[S5](760μm)を成形した。
【0109】
(実施例1)
製造例1で製造した、シート[S1]のミクロドメイン構造を評価したところ、ハードセグメント部(明部)の絶対最大長(全長)の最大値は101nmであり(ハードセグメント部(明部)の有無は「有」であり)、比(周囲長/包絡周囲長)の最大値は1.31であり(比(周囲長/包絡周囲長)の最大値の評価は「OK」であり)、網目構造であった。また、ハードセグメント部(明部)の面積比率は39%であった。さらに、シートの配向度Aおよび配向度Bについて評価したところ、それぞれ、0.53、3.20であった。
厚さ1.1mm、(公差±5μm)、縦100mm、横60mmの長方形の2枚の白板(BK270)ガラスの間に、MD方向100mm、TD方向60mmの長方形に切り出したシート[S1]を1枚重ねて挟み、積層物[M]を得た。
この積層物[M]を、ゴムバッグ(真空バッグ)に入れて、130℃のオーブンにいれた後、真空ポンプにより吸引し、真空度10Pa以下の状態にて15分間真空圧着を実施した。
その後、常圧に戻した後、ゴムバッグ(真空バッグ)をオーブンより取出し後、室温まで冷却した後、ゴムバッグ(真空バッグ)より、合わせガラス[L1]を取り出した。
変動率を求めたところ、4.4%であり、評価は「許容」であった。
【0110】
(実施例2)
製造例2で製造した、シート[S2]のミクロドメイン構造を評価したところ、ハードセグメント部(明部)の絶対最大長(全長)の最大値は121nmであり(ハードセグメント部(明部)の有無は「有」であり)、比(周囲長/包絡周囲長)の最大値は1.90であり(比(周囲長/包絡周囲長)の最大値の評価は「OK」であり)、網目構造であった。また、ハードセグメント部(明部)の面積比率は29%であった。さらに、シートの配向度Aおよび配向度Bについて評価したところ、それぞれ、0.11、1.23であった。
合わせガラスを積層する際に、製造例2で作製したシート[S2]を用いて、120℃のオーブンに入れる以外は、実施例1と同様に、合わせガラス[L2]を作製し、面精度を評価した。
変動率を求めたところ、3.9%であり、評価は「許容」であった。
【0111】
(実施例3)
合わせガラスを製造する際に、積層物[M]をさらに、厚さ2mm、縦63mm、横60mmの平滑部を有するSUS板で挟んだ状態にて、ゴムバッグ(真空バッグ)に入れて、合わせガラスを作製する以外は実施例2と同様の方法にて、合わせガラス[L3]を作製し、面精度を評価した。
変動率を求めたところ、1.0%であり、評価は「良好」であった。
【0112】
(実施例4)
合わせガラスを製造する際に、積層物[M]をさらに、厚さ2mm、縦42mm、横60mmの平滑部を有するSUS板で挟んだ状態にて、ゴムバッグ(真空バッグ)に入れて、合わせガラスを作製する以外は実施例2と同様の方法にて、合わせガラス[L4]を作製し、面精度を評価した。
変動率を求めたところ、1.5%であり、評価は「良好」であった。
【0113】
(比較例1)
製造例3で製造した、シート[S3]のミクロドメイン構造を評価したところ、ハードセグメント部(明部)の絶対最大長(全長)の最大値は72nmであり(ハードセグメント部(明部)の有無は「有」であり)、比(周囲長/包絡周囲長)の最大値は1.07であり(比(周囲長/包絡周囲長)の最大値の評価は「NG」であり)、海島構造であった。また、ハードセグメント部(明部)の面積比率は11%であった。さらに、シートの配向度Aおよび配向度Bについて評価したところ、それぞれ、0.03、1.07であった。
合わせガラスを積層する際に、製造例3で作製したシート[S3]を用いる以外は、実施例1と同様に、合わせガラス[L5]を作製し、面精度を評価した。
変動率を求めたところ、9.0%であり、評価は「不良」であった。
【0114】
(比較例2)
製造例4で製造した、シート[S4]のミクロドメイン構造を評価したところ、ハードセグメント部(明部)の絶対最大長(全長)の最大値は115nmであり(ハードセグメント部(明部)の有無は「有」であり)、比(周囲長/包絡周囲長)の最大値は1.06であり(比(周囲長/包絡周囲長)の最大値の評価は「NG」であり)、海島構造であった。また、シートの配向度Aおよび配向度Bについて評価したところ、それぞれ、0.93、29.30であった。
合わせガラスを積層する際に、製造例4で作製したシート[S4]を用いる以外は、実施例1と同様に、合わせガラス[L6]を作製し、面精度を評価した。
変動率を求めたところ、8.4%であり、評価は「不良」であった。
【0115】
(比較例3)
製造例5で製造した、シート[S5]のミクロドメイン構造を評価したところ、ハードセグメント部(明部)の絶対最大長(全長)の最大値は63nmであり(ハードセグメント部(明部)の有無は「有」であり)、比(周囲長/包絡周囲長)の最大値は1.05であり(比(周囲長/包絡周囲長)の最大値の評価は「NG」であり)、海島構造であった。また、シートの配向度Aおよび配向度Bについて評価したところ、それぞれ、0.68、5.33であった。
合わせガラスを積層する際に、製造例5で作製したシート[S5]を用いる以外は、実施例1と同様に、合わせガラス[L7]を作製し、面精度を評価した。
変動率を求めたところ、8.2%であり、評価は「不良」であった。
【0116】
【0117】
実施例及び比較例より以下のことが分かる。
AFM測定で観察される位相像が網目構造のミクロ相分離構造である(任意の5箇所のうちの少なくとも1箇所において、絶対最大長が60nm以上であるハードセグメント部が存在し、且つ、絶対最大長が60nm以上であるハードセグメント部についての包絡周囲長に対する周囲長の比(周囲長/包絡周囲長)の最大値が1.2以上である)中間膜を使用して作製した合わせガラスの面精度は、いずれも許容または良好であった(実施例1~4)。
一方、本発明の範囲外の海島構造のミクロ相分離構造である中間膜を使用して作製した合わせガラスの面精度は変動率が5.0%を超え不良であった(比較例1~3)。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明によれば、面精度が優れた合わせガラスを製造可能な合わせガラス用中間膜を提供することができる。
また、本発明によれば、面精度が優れた合わせガラスを提供することができる。
【0119】
本発明の合わせガラス用中間膜を使用すれば、経済的な手法(真空バッグ法)で製造しても、薄い板ガラスを貼り合わせた際にも、面精度が優れた軽量の合わせガラスを製造することができる。
【符号の説明】
【0120】
10 星型形状ハードセグメント部
10A 星型形状ハードセグメント部の凸閉包
10a 包絡点
10b 包絡点
10c 包絡点
10d 包絡点
10e 包絡点
10f 包絡点
30A 明部(ハードセグメント部)
30B 暗部(ソフトセグメント部)
30C 暗部(ソフトセグメント部)
100 合わせガラス用中間膜
200 樹脂層
200A 樹脂層表面
A 第1ピーク
B 第2ピーク
C 溶媒に由来するピーク
D 酸化防止剤(老化防止剤)に由来するピーク
E キャリブレーションカーブ
P 絶対最大長が60nm以上であるハードセグメント部
X 厚さ方向中央領域
Y 平面