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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】β型ゼオライト及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/48 20060101AFI20221213BHJP
   B01J 29/72 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
C01B39/48
B01J29/72 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018232897
(22)【出願日】2018-12-12
(65)【公開番号】P2019104677
(43)【公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-11-10
(31)【優先権主張番号】P 2017239174
(32)【優先日】2017-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】陳 寧
(72)【発明者】
【氏名】楢木 祐介
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-136409(JP,A)
【文献】国際公開第2011/024847(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第104226361(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第1785520(CN,A)
【文献】特開2014-069164(JP,A)
【文献】特開2010-070450(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 39/00 - 39/54
B01J 21/00 - 38/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CuKα線を線源とする粉末X線回折測定において、(302)面の粉末X線回折ピークの半値幅が0.15以上0.50以下であり、なおかつ、アルミナに対するシリカのモル比が20.0未満であることを特徴とするβ型ゼオライト。
【請求項2】
β型構造含有率が86%以上である請求項1に記載のβ型ゼオライト。
【請求項3】
フッ素含有量が100重量ppm以下である請求項1又は2に記載のβ型ゼオライト。
【請求項4】
CuKα線を線源とする粉末X線回折測定において、少なくとも以下の粉末X線回折ピークを有する請求項1乃至3のいずれか一項に記載のβ型ゼオライト。
【表1】
【請求項5】
鉄又は銅の少なくともいずれかを含有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のβ型ゼオライト。
【請求項6】
アルミナ源、シリカ源、アルカリ源、テトラエチルアンモニウムカチオン源及び水を含む組成物を結晶化させる結晶化工程、を有し、該組成物はカリウムを含有し、なおかつ、シリカに対するカリウムのモル比が0.04を超えること特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のβ型ゼオライトの製造方法。
【請求項7】
アルカリ源がカリウム源である請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記組成物が以下のモル組成を有する請求項6又は7に記載の製造方法。
SiO/Al比 =10.0以上50.0以下
TEA/SiO比 =0.03以上0.30以下
K/SiO比 =0.04を超え0.70未満
Na/SiO比 =0以上0.10未満
O/SiO比 =5.0以上50.0以下
OH/SiO比 =0.10以上1.00以下
種晶 =0重量%以上10重量%以下
【請求項9】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のβ型ゼオライトを含む触媒。
【請求項10】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のβ型ゼオライトと窒素酸化物含有気体とを接触させる工程、を有することを特徴とする窒素酸化物の還元方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は窒素酸化物還元触媒として適したβ型ゼオライト及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窒素酸化物還元触媒は内燃機関の排ガス触媒等、高温の含水雰囲気下へ曝露される雰囲気で使用される触媒である。性能面及びコスト面から、β型ゼオライトに金属、主に鉄、を含有させたものが窒素酸化物還元触媒として検討されている(特許文献1)。しかしながら、β型ゼオライトを使用した窒素酸化物還元触媒は、高温の含水分雰囲気下への曝露によって、その窒素酸化物還元特性、特に低温域における窒素酸化物還元特性が著しく低下する。特性低下の原因のひとつとして、β型ゼオライトの耐熱性が低いこと、すなわち、β型ゼオライトは高温の含水分雰囲気下への曝露によって結晶構造からアルミニウムが脱離し、結晶構造が崩壊することが考えられる。
【0003】
β型ゼオライトの耐熱性を改善するため、これまで種々の検討がされている。例えば、特許文献2では、アルミナに対するシリカのモル比(以下、「SiO/Al比」ともいう。)が80以上のβ型ゼオライトに関し、その一次粒子の平均粒子径を30nm(0.03μm)以上と大きくすることで、β型ゼオライトの耐熱性が高くなることが開示されている。
【0004】
しかしながら、β型ゼオライトのSiO/Al比が高くなるほど、金属を含有させた場合のβ型ゼオライトの窒素酸化物還元特性が低下する傾向がある。SiO/Al比が高すぎるため、SiO/Al比が80以上のβ型ゼオライトは窒素酸化物還元触媒として適していない。
【0005】
一方、SiO/Al比が80未満のβ型ゼオライトの耐熱性は、粒子径や結晶構造による影響と比べて、SiO/Al比による影響を大きく受けることが特許文献2に開示されている。更に、SiO/Al比が80未満であるβ型ゼオライトは耐熱性が低いことが特許文献2に開示されている。このように、SiO/Al比が低いため、SiO/Al比が80未満のβ型ゼオライトは粒子径及び結晶構造を制御しても耐熱性が向上しないことが知られていた。
【0006】
これに対し、SiO/Al比が80未満のβ型ゼオライトであっても、SEM径、X線結晶回折(302)面の半値幅及びNH吸着量を制御することによって、その耐熱性が高くなることが特許文献3に開示されている。特許文献3ではSiO/Al比が20~40のβ型ゼオライトについてSEM径等を制御することで耐熱性が高くなること、更には、この様なβ型ゼオライトに鉄を含有させることによって、高温の含水雰囲気下へ曝露された後であっても、低温域における窒素酸化物還元特性が高い窒素酸化物還元触媒となることが開示されている。
【0007】
ところで、環境規制の強化に伴い、窒素酸化物還元触媒に対する窒素酸化物還元特性のより一層の向上が求められている。特に、窒素酸化物還元触媒の低温域における窒素酸化物還元特性の向上が求められている。低温域における窒素酸化物還元特性の更なる向上のため、耐熱性の低下を伴うことなく、SiO/Al比を一層低減することが考えられる。
【0008】
特許文献3のβ型ゼオライトと比べ、より低いSiO/Al比を有するβ型ゼオライトとして、SiO/Al比が13.6以下のβ型ゼオライト(特許文献4)及びSiO/Al比が11~12のβ型ゼオライト(特許文献5及び6)が開示されている。これらのβ型ゼオライトはいずれも有機構造指向剤を含まない原料を結晶化する製造方法によりして得られたβ型ゼオライトであった。特許文献5において、β型ゼオライトのSiO/Al比は2~200とされている。しかしながら、有機構造指向剤を含まない原料を結晶化する方法によって得られるβ型ゼオライトであって、SiO/Al比が13.6を超えるβ型ゼオライトは実際に報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許4,961,917号
【文献】米国特許公報2001/008624号
【文献】米国特許公報2010/003178号
【文献】米国特許公報2012/0190534号
【文献】国際公開2013/035077号
【文献】米国特許公報2010/0322847号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
β型ゼオライトは、SiO/Al比の低下に伴い、低温域における窒素酸化物還元特性の改善が期待できる一方、耐熱性が低下する傾向がある。特許文献4乃至6で開示されたβ型ゼオライトもその例外ではなく、SiO/Al比の低下に伴い、耐熱性が著しく低下していた。そのため、これらのβ型ゼオライトはSiO/Al比の低下による窒素酸化物還元特性の改善効果に比べ、耐熱性の低下による窒素酸化物還元特性の低下の影響が大きい。
【0011】
このように、SiO/Al比が20以上のβ型ゼオライトと比べて、SiO/Al比が低いβ型ゼオライトはSiO/Al比の低下に伴って耐熱性が著しく低下する。そのため、これまで、SiO/Al比が20未満のβ型ゼオライトであって、窒素酸化物還元触媒として供するに十分な耐熱性を有するものは無かった。
【0012】
これらの課題に鑑み、本開示は、SiO/Al比が20未満でありながら、従来のSiO/Al比が20以上のβ型ゼオライトと同程度以上の耐熱性を有するβ型ゼオライトを提供することを目的とする。更には、本開示は、この様なβ型ゼオライトを含み、高温の含水分雰囲気下へ曝露された後であっても、低温域における窒素酸化物還元特性の低下が抑制されたゼオライトを提供することを別の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示において、窒素酸化物還元触媒及びその基材として適したβ型ゼオライトが検討された。その結果、特許文献3等で開示されたSiO/Al比が20以上のβ型ゼオライトに対する耐熱性の改善手法を、SiO/Al比が20未満のβ型ゼオライトに単に適用するだけでは、その耐熱性が十分に改善できないことを見出した。これに加え、SiO/Al比が20未満のβ型ゼオライトは、特定の結晶構造とすることにより、耐熱性が高くなることを見出した。更には、この様なβ型ゼオライトは少量の不純物を含んでいた場合であっても低温域における窒素酸化物還元特性が高い窒素酸化物還元触媒を与えることを見出した。
【0014】
すなわち、本開示の要旨は以下のとおりである。
[1] CuKα線を線源とする粉末X線回折測定において、(302)面の粉末X線回折ピークの半値幅が0.15以上0.50以下であり、なおかつ、アルミナに対するシリカのモル比が20.0未満であることを特徴とするβ型ゼオライト。
[2] β型構造含有率が86%以上である上記[1]に記載のβ型ゼオライト。
[3] フッ素含有量が100重量ppm以下である上記[1]又は[2]に記載のβ型ゼオライト。
[4] CuKα線を線源とする粉末X線回折測定において、少なくとも以下の粉末X線回折ピークを有する上記[1]乃至[3]のいずれかひとつに記載のβ型ゼオライト。
[5] 鉄又は銅の少なくともいずれかを含有することを特徴とする上記[1]乃至[4]のいずれかひとつに記載のβ型ゼオライト。
【0015】
【表1】
【0016】
[6] アルミナ源、シリカ源、アルカリ源、テトラエチルアンモニウムカチオン源及び水を含む組成物を結晶化させる結晶化工程、を有し、該組成物はカリウムを含有し、なおかつ、シリカに対するカリウムのモル比が0.04を超えること特徴とする上記[1]乃至[5]のいずれかひとつに記載のβ型ゼオライトの製造方法。
[7] アルカリ源がカリウム源である上記[6]に記載の製造方法。
[8] 前記組成物が以下のモル組成を有する上記[6]又は[7]に記載の製造方法。
SiO/Al比 =10.0以上50.0以下
TEA/SiO比 =0.03以上0.30以下
K/SiO比 =0.04を超え0.70未満
Na/SiO比 =0以上0.10未満
O/SiO比 =5.0以上50.0以下
OH/SiO比 =0.10以上1.00以下
種晶 =0重量%以上10重量%以下
【0017】
[9] 上記[1]乃至[5]のいずれかひとつに記載のβ型ゼオライトを含む触媒。
[10] 上記[1]乃至[5]のいずれかひとつに記載のβ型ゼオライトと窒素酸化物含有気体とを接触させる工程、を有する窒素酸化物の還元方法。
【発明の効果】
【0018】
本開示により、SiO/Al比が20未満でありながら、従来のSiO/Al比が20以上のβ型ゼオライトと同程度以上の耐熱性を有するゼオライトを提供することができる。更には、本開示により、この様なゼオライトを含み、高温の含水分雰囲気下へ曝露された後であっても、低温域における窒素酸化物還元特性の低下が抑制されたゼオライトを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示のβ型ゼオライトの好ましい実施態様について説明する。
【0020】
本実施態様はβ型ゼオライトに係る。β型ゼオライトは、国際ゼオライト学会で定義される構造コードでBEA*構造となる結晶構造(以下、単に「β型構造」ともいう。)を有する。β型構造は、粉末X線回折(以下、「XRD」という。)パターンを、米国特許3,308,069のXRDパターンと対比することで同定できる。
【0021】
好ましくは、本開示におけるXRD測定の条件は以下の条件である。
線源 : CuKα線(λ=1.5405Å)
測定モード : ステップスキャン
スキャン条件 : 40°/分
計測時間 : 3秒
【0022】
本実施態様のβ型ゼオライトは、CuKα線を線源とするXRD測定において、(302)面のXRDピークの半値幅が0.15以上0.50以下であり、0.15以上0.40以下であることが好ましく、0.20以上0.50以下であることがより好ましく、0.23以上0.40以下であることが更に好ましく、0.25以上0.35以下であることが特に好ましい。このような半値幅(以下、「FWHM」ともいう。)を有する結晶構造であることで、SiO/Al比が20未満であるにも関わらず、本実施態様のβ型ゼオライトは耐熱性が高くなる。β型ゼオライトはSiO/Al比の低下に伴い耐熱性が低下する傾向がある。それにもかかわらず、本実施態様のβ型ゼオライトは、SiO/Al比が20以上のβ型ゼオライトと同等、更にはそれ以上の耐熱性を示す。
【0023】
(302)面のXRDピーク(以下、「Peak(302)」ともいう。)は、CuKα線を線源とするXRD測定において、2θが22.33°以上22.46°以下にピークトップを有するXRDピークであり、2θが22.34°以上23.44°以下にピークトップを有するXRDピークであることが好ましい。Peak(302)のFWHMはβ型ゼオライトの結晶性の指標とすることができる。
【0024】
β型ゼオライトは高温の含水雰囲気下への曝露によって、結晶構造の崩壊が進行し、Peak(302)のFWHMが大きくなる傾向がある。
【0025】
好ましくは、上述のFWHMは高温の含水雰囲気下への暴露前のFWHMであり、本実施態様のβ型ゼオライトは、高温の含水雰囲気下への暴露後においてもFWHMが小さく、以下の条件における水熱耐久処理後のPeak(302)のFWHM(以下、「FWHMaged」ともいう。)が0.55以下であり、0.45以下であることが好ましく、0.40以下であることがより好ましい。水熱耐久処理によりFWHMは大きくなる傾向があるため、FWHMagedの下限値は0.15を超え、0.20以上であることが好ましく、0.25以上であることがより好ましい。
処理雰囲気 :10体積%HO含有空気
処理温度 :700℃
処理時間 :20時間
流通速度 :300mL/min
【0026】
本実施態様のβ型ゼオライトは、合成ゼオライトであることが好ましく、有機構造指向剤を含む組成物の結晶化により得られるβ型ゼオライトであることがより好ましく、有機構造指向剤を含む組成物から結晶化されたβ型ゼオライトを焼成した状態のものであることが更に好ましい。結晶化後の焼成として、空気中、600℃、2時間による焼成が例示できる。
【0027】
本実施態様のβ型ゼオライトは、以下の式から求められる、結晶化後の焼成によるPeak(302)のFWHMの変化率(以下、「FWHM変化率」ともいう。)が1.15以上2.00以下、更には1.20以上1.60以下であることが挙げられる。
FWHM変化率=焼成後のβ型ゼオライトのPeak(302)のFWHM
/結晶化後のβ型ゼオライトのPeak(302)のFWHM
【0028】
本実施態様のβ型ゼオライトは、CuKα線を線源とするXRD測定において、少なくとも下表に示すXRDピークを有する。
【0029】
【表2】
【0030】
より好ましくは、本実施態様のβ型ゼオライトは、CuKα線を線源とするXRD測定において、少なくとも下表に示すXRDピークを有する。
【0031】
【表3】
【0032】
本実施態様のβ型ゼオライトのXRDパターンは、上述のXRDピークに加え、β型構造に由来する他のXRDピークを含んでいてもよい。
【0033】
好ましくは、本実施態様のβ型ゼオライトは単一相、すなわちβ型ゼオライトのみである。しかしながら、本実施態様のβ型ゼオライトは、その耐熱性が低下しない程度であればβ型構造以外の構造を有するゼオライト(以下、「副生ゼオライト」ともいう。)を含有していてもよい。副生ゼオライトとして、GIS型ゼオライト又はMFI型ゼオライトの少なくとも1種、更にはGIS型ゼオライトを挙げることができ、例えば、本実施態様のβ型ゼオライトが、β型ゼオライトとGIS型ゼオライトを含むゼオライト組成物又はβ型ゼオライトの単一相、であることが挙げられる。
【0034】
β型ゼオライトが副生ゼオライトを含有する場合、本実施態様のβ型ゼオライトは、β型ゼオライト及び副生ゼオライトを含むゼオライト組成物とみなすこともできる。
【0035】
副生ゼオライト含有率は、CuKα線を線源とするXRD測定にて得られたXRDパターンを使用し、以下の式から求めることができる。
副生ゼオライト含有率(%)
=Iby-pro/(I(302)+Iby-pro)×100 ・・・(1)
【0036】
上式において、I(302)はPeak(302)の強度であり、Iby-proは副生ゼオライトのメインピークの強度である。Iby-proは副生ゼオライトの構造を特徴付けるXRDピークの強度であり、当業者に公知のXRDピークが挙げられる。例えば、副生ゼオライトがGIS型ゼオライトである場合、Iby-proは2θ=28.20±0.1°にピークトップを有するXRDピークの強度である。副生ゼオライトがMFI型ゼオライトである場合、Iby-proは2θ=23.22±0.1°にピークトップを有するXRDピークの強度である。
【0037】
また、β型構造含有率は、本実施態様のβ型ゼオライトにおけるβ型構造の割合、すなわちβ型ゼオライトの純度であり、以下の式から求めることができる。
【0038】
β型構造含有率(%)=100-副生ゼオライト含有率(%)
好ましくは、本実施態様のβ型ゼオライトのβ型構造含有率は86%以上(副生ゼオライト含有率が14%以下)であり、90%以上(副生ゼオライト含有率が10%以下)であることが好ましく、95%以上(副生ゼオライト含有率が5%以下)であることが更に好ましい。本実施態様において、β型構造含有率が100%(副生ゼオライト含有率が0%)であること、すなわちβ型ゼオライトの単一相であること、はXRD測定おけるIby-proが検出限界以下であること又は(1)式から判断すればよい。
【0039】
好ましくは、Peak(302)、(302)、by-pro、FWHM及びXRDピーク等、CuKα線を線源とするXRD測定から求まる値は、有機構造指向剤を含まない状態のβ型ゼオライトの値である。これらの値は、一般的な粉末X線回折装置(例えば、装置名:UltimaIV、リガク社製等)で測定されたXRDパターンを、装置の付属ソフトによって解析して得られる値、であればよい。
【0040】
好ましくは、IRスペクトルにおける3720cm-1以上3750cm-1以下の範囲における吸収ピーク(以下、「P1」ともいう。)の最大強度に対する、3580cm-1以上3610cm-1以下の範囲における吸収ピーク(以下、「P2」ともいう。)の最大強度の比(以下、「P2/P1比」ともいう。)が0.08以上であり、0.08以上1.00以下であることが好ましく、0.10以上0.50以下であることがより好ましい。
【0041】
好ましくは、P1又はP2は、それぞれ、以下に示すいずれかの範囲の吸収ピークである。
P1 : 3720cm-1以上3750cm-1以下、
好ましくは3730cm-1以上3740cm-1以下
P2 : 3580cm-1以上3610cm-1以下、
好ましくは3590cm-1以上3600cm-1以下
【0042】
本実施態様におけるIRスペクトルの測定条件は任意であるが、加熱透過法により測定することが好ましく、以下の条件であることが好ましい。
測定方法 :加熱透過法
前処理 :真空排気下で500℃、2時間保持し、室温まで降温後に測定
測定温度 :500℃
測定波長範囲:800~4000cm-1
分解能 :2cm-1
積算回数 :128回
【0043】
好ましくは、本実施態様のゼオライトは結晶性アルミノシリケートである。結晶性アルミノシリケートはアルミニウム(Al)とケイ素(Si)を骨格金属(以下、「T原子」ともいう。)とし、T原子が酸素(O)を介して結合した三次元のネットワーク構造からなる骨格構造を有する結晶からなる。好ましくは、本実施態様においてゼオライトは、T原子としてケイ素(Si)、アルミニウム(Al)及びリン(P)を含むシリコアルミノリン酸塩(SAPO)や、T原子としてアルミニウム(Al)及びリン(P)を含むアルミノリン酸塩(AlPO)など、T原子としてAl及びSi以外を含む多孔性無機物質、いわゆるゼオライト類縁物質、を含まない。
【0044】
本実施態様のβ型ゼオライトは、アルミナに対するシリカのモル比(SiO/Al比)が20.0未満である。本実施態様のβ型ゼオライトは、上記のPeak(302)のFWHMを有することにより、SiO/Al比が20未満であっても耐熱性が高く、SiO/Al比が20以上のβ型ゼオライトと同等な耐熱性、好ましくはSiO/Al比が20以上のβ型ゼオライトを超える耐熱性を示す。
【0045】
好ましくは、SiO/Al比は10.0以上20.0未満であり、13.6を超え19.5以下であることが好ましく、14.0以上19.0以下であることがより好ましく、14.5以上19.0以下であることが更に好ましい。
【0046】
好ましくは、本実施態様のβ型ゼオライトはフッ素(F)を実質的に含有せず、フッ素含有量が100重量ppm以下であることが好ましく、0重量ppmであることがより好ましい。通常の組成分析法により得られるフッ素の測定値の測定限界があるため、好ましくは、本実施態様のβ型ゼオライトのフッ素含有量は測定限界以下であり、0重量ppm以上100重量ppm以下であることが好ましく、0重量ppm以上50重量ppm以下であることがより好ましい。
【0047】
好ましくは、本実施態様のβ型ゼオライトのカチオンタイプはプロトン型(H型)又はアンモニア型(NH型)のいずれかであり、プロトン型であることが好ましい。
【0048】
本実施態様において、電界放出型の電子顕微鏡の観察において、β型ゼオライトの結晶粒子を構成する結晶(一次結晶)を観察することができる。結晶性が高い結晶は稜や平面を有する形状として確認される。一方、結晶性が低い結晶は、稜や平面を有さず、主として曲面からなる形状として確認される場合や、結晶(一次結晶)が小さいために、電界放出型の電子顕微鏡では観察されない場合がある。結晶性の高いβ型ゼオライトの結晶は、双四角錘台状(図1(a))や略八面体形状(図1(b))等、結晶化に由来した種々の形状として確認される。例えば、双四角錘台状の結晶はa軸方向及びb軸方向に配向して形成した結晶であり、双四角錘台の底面を有する形状であるのに対し、略八面体形状の結晶はa軸方向及びc軸方向に配向して形成した結晶であり、双四角錘台の底面が稜又は頂点となった形状である。
【0049】
本実施態様のβ型ゼオライトの結晶粒子を構成する結晶(一次結晶)は、双四角錘台状の結晶を含むことが好ましく、双四角錘台状の結晶から構成されることがより好ましい。双四角錘台状の結晶はc軸長に対してa軸長が長いことが好ましく、結晶のc軸長に対するa軸長の比(以下、「アスペクト比」ともいう。)が0.1以上1.3以下であることが好ましく、アスペクト比が0.3以上1.0未満であることが更に好ましい。
【0050】
好ましくは、本実施態様のβ型ゼオライトは、個々の一次粒子が独立して成長した結晶粒子(以下、「一次結晶粒子」ともいう。)を含む。一次結晶粒子は、電子顕微鏡観察において、独立した略球状、双四角錘台状又は略八面体状の結晶粒子として観察される。
【0051】
本実施態様のβ型ゼオライトは一次結晶粒子からなることが好ましいが、複数の一次粒子が化学結合しながら成長して形成された凝集粒子(アグリゲート:aggregate)からなる結晶粒子(以下、「凝集結晶粒子」ともいう。)を含んでいてもよい。凝集結晶粒子は、電子顕微鏡観察において一次結晶粒子の一部を含む結晶粒子として確認される場合もある。凝集結晶粒子は、複数の結晶が不規則に化学結合しているため、一次結晶粒子とは異なる形状を有する。電子顕微鏡観察において、凝集結晶粒子は双晶形状、多面体形状又は不定形状といった複晶形状、特に双四角錘台状とは異なる形状、を有する結晶粒子として観察される。凝集結晶粒子に粉砕などの物理的な力を加えた場合、凝集結晶粒子の結晶が破壊される。一度形成した凝集結晶粒子から一次結晶粒子を取り出すことはできない。
【0052】
結晶粒子(すなわち、一次結晶粒子及び凝集結晶粒子)は、ファン・デル・ワールス力等の物理的な力により凝集した凝集粒子(アグロメレート:agglomerate)、いわゆる二次粒子、を形成する場合もある。化学的な結合と異なり、アグロメレートの凝集は解砕や粉砕により、これを形成する個々の結晶粒子を分離できる場合がある。本実施態様のβ型ゼオライトの粒子は、アグロメレートを含んでいてもよい。
【0053】
好ましくは、本実施態様のβ型ゼオライトは一次結晶粒子の平均粒子径(以下、「平均結晶粒子径」ともいう。)が0.2μm以上0.7μm以下であり、0.3μm以上0.6μm以下であることがより好ましい。
【0054】
平均結晶粒子径は、電子顕微鏡観察において150個以上の一次結晶粒子の水平フェレ径を計測し、これを平均して求めることができる。好ましくは、電子顕微鏡の観察倍率は3,000~15,000倍である。
【0055】
好ましくは、本実施態様のβ型ゼオライトは金属を含有し、遷移金属を含有することがより好ましく、鉄又は銅から選ばれる少なくともいずれかを含有することが更に好ましく、鉄を含有することが特に好ましい。本実施態様のβ型ゼオライトが金属を含有することで、窒素酸化物還元触媒として適した窒素酸化物還元特性を示し、低温域における窒素酸化物還元特性に優れた窒素酸化物還元触媒として機能する。
【0056】
好ましくは、金属はT原子以外として含有され、細孔、表面又はイオン交換サイトからなる群から選ばれる少なくともいずれかに含有されることが挙げられる。
【0057】
好ましくは、金属を含有するβ型ゼオライト及び酸化物換算した金属の合計重量に対する金属の重量割合(以下、「金属含有量」ともいう。)は1.0重量%以上5.0重量%以下であり、1.5重量%以上4.5重量%以下であることが好ましい。金属が鉄である場合の金属含有量(以下、「鉄含有量」ともいう。)は1.0重量%以上10.0重量%以下であることが好ましく、2.5重量%以上7.0重量%以下であることがより好ましく、2.5重量%以上5.0重量%以下であることが更に好ましい。
【0058】
本実施態様のβ型ゼオライトは触媒又は吸着材の少なくともいずれか等、ゼオライトの公知の用途に使用することができる。好ましくは、本実施態様のβ型ゼオライトの用途は、触媒、吸着剤、触媒担体又は吸着材担体からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、触媒又は触媒担体から選ばれる少なくともいずれかであることが好ましい。β型ゼオライトは、窒素酸化物の還元方法に使用することが好ましく、β型ゼオライトと窒素酸化物含有気体とを接触させる工程、を有する窒素酸化物の還元方法、に使用することがより好ましい。
【0059】
好ましくは、本実施態様のβ型ゼオライトを含む触媒(以下、「本触媒」ともいう。)は、粉末又は成形体から選ばれるいずれかの形状である。本触媒が粉末状である場合、これをハニカム等の基材に塗布又はウォシュコートした触媒部材としてもよい。本触媒が成形体である場合、球状、略球状、楕円状、円板状、円柱状、多面体状、不定形状又は花弁状からなる群から選ばれる少なくとも1種の形状、その他用途に適した形状であればよい。
【0060】
好ましくは、本実施態様の金属を含むβ型ゼオライト(以下、「本金属含有β型ゼオライト」ともいう。)の用途は窒素酸化物還元触媒であり、窒素酸化物の選択還元触媒であることが好ましく、尿素を還元剤とする窒素酸化物の選択還元触媒であることがより好ましい。本金属含有β型ゼオライトは、窒素酸化物還元特性が高く、高温高湿下への暴露後であっても窒素酸化物還元特性の低下が小さい。好ましくは、金属含有β型ゼオライトは、低温域における窒素酸化物還元特性が高く、高温高湿下への暴露後における低温域における窒素酸化物還元特性が高い。
【0061】
好ましくは、本実施態様における「低温における窒素酸化物還元特性」は、150℃以上250℃以下における窒素酸化物還元率であり、150℃以上200℃以下における窒素酸化物還元率であることが好ましい。
【0062】
好ましくは、本金属含有β型ゼオライトは、金属含有β型ゼオライトと窒素酸化物含有気体とを接触させる工程(以下、「接触工程」ともいう。)、を有する窒素酸化物の還元方法、に使用される。
【0063】
好ましくは、接触工程における接触条件は以下の条件である。
空間速度 :500~50万時間-1、好ましくは2000~30万時間-1
接触温度 :120℃以上600℃以下、好ましくは150℃以上550℃以下
【0064】
好ましくは、窒素酸化物含有気体は窒素酸化物を含む気体であり、一酸化窒素、二酸化窒素、三酸化二窒素、四酸化二窒素又は一酸化二窒素からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む気体であることが好ましく、更には一酸化窒素、二酸化窒素又は一酸化二窒素からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む気体であることがより好ましい。さらに、窒素酸化物含有気体は窒素酸化物以外の成分を含んでいてもよく、窒素酸化物含有気体は炭化水素、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、窒素、酸素、硫黄酸化物又は水からなる群から選ばれる少なくとも1種と窒素酸化物とを含む気体であることが好ましい。
【0065】
好ましくは、窒素酸化物含有気体は内燃機関の排ガスであり、ディーゼル自動車、ガソリン自動車、ボイラー、ガスタービン等の排ガスであることが好ましい。
【0066】
好ましくは、本実施態様における、接触工程における本金属含有β型ゼオライトと窒素酸化物含有気体を接触は、還元剤の存在下で行うものであり、アンモニア、尿素、有機アミン、炭化水素、アルコール、ケトン、一酸化炭素又は水素からなる群から選ばれる少なくとも1種の存在下で行うことが好ましく、アンモニア、尿素又は有機アミンからなる群の少なくとも1種の存在下で行うことがより好ましい。
【0067】
次に、本実施態様のβ型ゼオライトの製造方法について説明する。
【0068】
本実施態様のβ型ゼオライトは、アルミナ源、シリカ源、アルカリ源、テトラエチルアンモニウムカチオン源及び水を含む組成物を結晶化させる結晶化工程、を含む工程により製造することができる。テトラエチルアンモニウムカチオン源を含む組成物を結晶化して得られるβ型ゼオライトと、これを含まない組成物を結晶化して得られるβ型ゼオライトとは、結晶の配向性及び形状が異なる傾向がある。
【0069】
好ましくは、本実施態様のβ型ゼオライトの製造方法は、アルミナ源、シリカ源、カリウム源、テトラエチルアンモニウムカチオン源及び水を含む組成物(以下、「原料組成物」ともいう。)を結晶化させる結晶化工程、を有し、該組成物のシリカに対するカリウムのモル比が0.04を超えること特徴とするβ型ゼオライトの製造方法、である。
【0070】
好ましくは、アルミナ源は、アルミナ(Al)又はその前駆体となるアルミニウム化合物であり、例えば、アルミナ、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、非晶質アルミノシリケート、金属アルミニウム又はアルミニウムアルコキシドからなる群から選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。
【0071】
好ましくは、シリカ源は、シリカ(SiO)又はその前駆体となるケイ素化合物であり、例えば、コロイダルシリカ、無定型シリカ、珪酸ナトリウム、テトラエトキシシラン、テトラエチルオルトシリケート、沈殿法シリカ、ヒュームドシリカ又は非晶質アルミノシリケートからなる群から選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。
【0072】
非晶質アルミノシリケートは、アルミナ源及びシリカ源として機能する化合物(以下、「シリカアルミナ源」ともいう。)である。原料組成物はシリカアルミナ源として非晶質アルミノシリケートを含むことが好ましい。
【0073】
好ましくは、アルカリ源はカリウム源である。カリウム源は、カリウムを含む化合物であり、カリウムを含む水酸化物、塩化物、臭化物又はヨウ化物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、カリウムの水酸化物、塩化物又は臭化物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましく、カリウムの水酸化物であることが更に好ましい。
【0074】
原料組成物はカリウム源以外のアルカリ源を含んでいてもよい。本実施態様におけるアルカリ源は、特に、カリウム以外のアルカリ金属を含む化合物であり、リチウム、ナトリウム、ルビジウム又はセシウムからなる群から選ばれる少なくともいずれかを含む水酸化物、塩化物、臭化物又はヨウ化物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。より好ましくは、アルカリ源はナトリウムを含む化合物(以下、「ナトリウム源」ともいう。)である。ナトリウム源は、ナトリウムの水酸化物、塩化物又は臭化物から選ばれる少なくともいずれかであることが好ましく、ナトリウムの水酸化物であることがより好ましい。
【0075】
好ましくは、テトラエチルアンモニウムカチオン源(以下、「TEA源」ともいう。)は、テトラエチルアンモニウムカチオン(以下、「TEA」ともいう。)を含む化合物であり、TEAとそのカウンターアニオンとを含む化合物である。TEAは以下の一般式で示される四級アンモニウムカチオンであり、β型構造を指向する有機構造指向剤(以下、「SDA」ともいう。)として機能する。
【0076】
【化1】
【0077】
好ましくは、TEA源はテトラエチルアンモニウム(以下、「TEA」ともいう。)の塩であり、TEAの水酸化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、炭酸モノエステル塩、硫酸モノエステル塩、硝酸塩及び硫酸塩の群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、TEAの水酸化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩及び硫酸塩の群から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましく、TEAの水酸化物、塩化物、臭化物及びヨウ化物の群から選ばれる少なくとも1種であることが更に好ましく、TEAの水酸化物、塩化物及び臭化物の群から選ばれる少なくとも1種であることが更により好ましく、TEAの水酸化物であることが特に好ましい。原料組成物は四級アンモニウムカチオンとしてTEAを含んでいればよく、TEA以外の四級アンモニウムカチオン含まなくてもよい。
【0078】
好ましくは、原料組成物に含まれる水は、脱イオン水や純水を挙げることができる。
【0079】
アルミナ源、シリカ源、TEA源、カリウム源及びアルカリ源は、それぞれ、他の原料の機能を有していてもよい。また、これらの各原料が含水物、水和物又は水溶液である場合、これらの原料に含まれる水も、原料組成物に含まれる水とみなす。
【0080】
好ましくは、原料組成物はフッ素(F)含有化合物を含まず、フッ素を含有しないことが好ましい。好ましくは、原料組成物のフッ素含有量は100重量ppm以下であり、1重量ppm以下であることが好ましく、組成分析における検出限界以下であることがより好ましい。
【0081】
フッ素含有化合物としてフッ化物が挙げられ、フッ化水素(HF)、四級アンモニウムのフッ化物又はアルカリ金属フッ化物などが例示できる。四級アンモニウムのフッ化物塩としてフッ化テトラエチルアンモニウム(以下、「TEAF」ともいう。)が例示できる。アルカリ金属フッ化物としてフッ化ナトリウム又はフッ化カリウムのいずれかが例示できる。
【0082】
原料組成物のシリカに対するカリウムのモル比(以下、「K/SiO比」ともいう。)は0.04を超える。K/SiO比がこの範囲である原料組成物を結晶化することで、SiO/Al比が20未満であるにも関わらず、SiO/Al比が20以上のβ型ゼオライトと同等以上の耐熱性を有するβ型ゼオライトが得られる。
【0083】
好ましくは、K/SiO比は0.04を超え0.70未満であり、0.05以上0.30以下であることが好ましく、0.10以上0.20以下であることがより好ましく、0.12以上0.16以下であることが更に好ましい。K/SiO比が0.15以下であれば副生ゼオライトが生成しにくくなる傾向があり、K/SiO比は0.12以上0.15以下であることが好ましい。
【0084】
好ましくは、原料組成物のシリカに対するナトリウムのモル比(以下、「Na/SiO比」ともいう。)は0以上0.10未満であり、0以上0.06以下であることが、更には0以上0.04以下であること、また更には0以上0.01以下であることが例示できる。原料組成物のNa/SiO2比は0、すなわち、実質的に、原料組成物がナトリウムを含まなくてもよい。
【0085】
好ましくは、原料組成物のシリカに対するTEAのモル比(以下、「TEA/SiO比」ともいう。)は0.03以上0.30以下であり、0.03以上0.20以下であることが好ましく、0.05以上0.15以下であることがより好ましく、0.10以上0.15以下であることが更に好ましい。
【0086】
好ましくは、原料組成物のアルミナに対するシリカのモル比(SiO/Al比)は10.0以上50.0以下であり、10.0以上40.0以下であることが好ましく、12.0以上25.0以下、更に好ましくは14.5以上20.0以下である。結晶化物がβ型構造以外の結晶相を含みにくくなる傾向があるため、原料組成物のSiO/Al比は、好ましくは15.0以上20.0以下、より好ましくは17.0以上19.5以下である。
【0087】
好ましくは、原料組成物のシリカに対する水(HO)のモル比(以下、「HO/SiO比」ともいう。)は5.0以上50.0以下であり、5.0以上30.0以下であることが好ましく、10.0以上20.0以下であることがより好ましく、10.0以上14.0以下であることが更に好ましい。
【0088】
好ましくは、原料組成物のシリカに対する水酸基アニオン(OH)のモル比(以下、「OH/SiO比」ともいう。)は0.10以上1.00以下であり、0.15以上0.50以下であることがより好ましく、0.15以上0.40以下であることが更に好ましい。
【0089】
好ましくは、原料組成物は種晶を含み、種晶はβ型ゼオライトであることが好ましい。
【0090】
好ましくは、種晶の含有量0重量%以上10重量%以下であり、0重量%以上5重量%以下であることが好ましく、0.1重量%以上1.9重量%以下であることがより好ましい。
【0091】
本発明における種晶含有量は以下の式から求められる値である。
【0092】
種晶含有量(重量%)={(w3+w4)/(w1+w2)}×100
上記式において、w1は原料組成物(種晶を含まない)中のAlをAlに換算した重量、w2は原料組成物(種晶を含まない)中のSiをSiOに換算した重量、w3は種晶中のAlをAlに換算した重量、及び、w4は種晶中のSiをSiOに換算した重量である。
【0093】
好ましくは、原料組成物は以下のモル組成を有し、以下に示す値から選ばれるいずれかの組合せのモル組成を有することが好ましい。
SiO/Al比 =10.0以上50.0以下、
好ましくは12.0以上22.0以下、
より好ましくは13.0以上20.0以下
TEA/SiO比 =0.03以上0.30以下
好ましくは0.05以上0.22以下、
より好ましくは0.06以上0.20以下
K/SiO比 =0.04を超え0.70未満、
好ましくは0.05以上0.25以下、
より好ましくは0.05以上0.17以下
Na/SiO比 =0以上0.10未満、
好ましくは0以上0.05以下、
より好ましくは0以上0.01以下
O/SiO比 =5.0以上50.0以下
好ましくは8.0以上15.0以下
より好ましくは11.0以上14.0以下
OH/SiO比 =0.10以上1.00以下
好ましくは0.15以上0.40以下
種晶 =0重量%以上10重量%以下、
好ましくは0.1重量%以上3重量%以下
【0094】
好ましくは、原料組成物は水熱合成によって結晶化される。水熱合成は、原料組成物を密閉容器に充填し、これを密封した上で加熱すればよい。結晶化は、静置又は撹拌のいずれの状態で行ってもよく、撹拌した状態で結晶化することが好ましい。
【0095】
好ましくは、結晶化温度は100℃以上180℃以下であり、120℃以上170℃以下であることが好ましく、140℃以上160℃以下であることがより好ましい。
【0096】
結晶化時間は、原料組成物からβ型ゼオライトが結晶化するのに要する時間であり、結晶化温度に依存する。結晶化温度の高温化に伴い、結晶化時間は短くなる傾向がある。好ましくは、結晶化工程における結晶化時間は5時間以上72時間(3日)未満であり、5時間以上50時間以下であることが好ましい。
【0097】
結晶化工程により、TEAを含んだ状態のβ型ゼオライトが得られる。TEAは主としてβ型ゼオライトの細孔に含まれると考えられる。好ましくは、結晶化工程で得られるβ型ゼオライトは、CuKα線を線源とするXRD測定において、少なくとも以下のXRDピークを有する。
【0098】
【表4】
【0099】
好ましくは、上表におけるXRDピークはTEAを含む状態のβ型ゼオライトのものである。
【0100】
好ましくは、結晶化工程で結晶化するβ型ゼオライトのSiO/Al比、フッ素含有量及び粒子形状など、XRD測定以外の測定で得られる特性は、本実施態様のβ型ゼオライトと同様である。
【0101】
好ましくは、本実施態様のβ型ゼオライトの製造方法は、結晶化工程の後、洗浄工程、イオン交換工程、乾燥工程及び有機構造指向剤除去工程から選択される少なくともいずれかを含む。
【0102】
洗浄工程は、結晶化後のβ型ゼオライトと液相とを固液分離する。洗浄工程は、公知の方法で固液分離をし、固相として得られるCHA型ゼオライトを純水で洗浄すればよい。
【0103】
結晶化後のβ型ゼオライトは、そのイオン交換サイト上にアルカリ金属イオン等の金属イオンを有する場合がある。イオン交換工程では、これをアンモニウムイオン(NH )や、プロトン(H)等の非金属カチオンにイオン交換する。アンモニウムイオンへのイオン交換は、β型ゼオライトを塩化アンモニウム水溶液に混合、攪拌することが挙げられる。また、プロトンへのイオン交換は、β型ゼオライトをアンモニウムイオンでイオン交換した後、これを焼成することが挙げられる。
【0104】
乾燥工程は、結晶化工程後又は洗浄工程後のβ型ゼオライトから水分を除去する。乾燥工程の条件は任意であるが、結晶化工程後又は洗浄工程後のβ型ゼオライトを、大気中、50℃以上150℃以下で2時間以上、静置することが例示できる。
【0105】
有機構造指向剤除去工程は、主としてβ型ゼオライトに含まれるTEAを除去する。TEAの除去方法は任意であるが、大気中、450℃以上650℃以下で処理することが挙げられる。
【0106】
本実施態様の製造方法は、β型ゼオライトの製造方法として使用することができ、特に工業的なβ型ゼオライトの製造方法など、大規模なβ型ゼオライトの製造方法に適用することができる。
【0107】
好ましくは、本実施態様のβ型ゼオライトの製造方法は、β型ゼオライトと金属とを接触させ、金属含有β型ゼオライトを得る工程(以下、「金属含有工程」とする)、を含む。金属を含有することで、β型ゼオライトが窒素酸化物還元触媒として高い窒素酸化物還元特性を示し、高温高湿下にさらされた後の低温域における窒素酸化物還元率が低下しにくくなる。
【0108】
金属含有工程における混合方法は任意であり、β型ゼオライトのイオン交換サイト又は細孔の少なくともいずれかに金属が含有される方法であればよい。
【0109】
具体的な混合方法として、イオン交換法、蒸発乾固法又は含浸担持法からなる群から選ばれる少なくとも1種を挙げることができ、含浸担持法、更には金属源を含む水溶液とβ型ゼオライトとを混合する方法であることが好ましい。
【0110】
金属源は、金属又は金属化合物の少なくともいずれかであり、遷移金属又は遷移金属化合物であることが好ましい。好ましくは、金属源は、遷移金属の酸化物、水酸化物、オキシ水酸化物、硫酸塩、硝酸塩、塩化物又は酢酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくは硫酸塩、硝酸塩、塩化物又は酢酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくは硝酸塩である。
【0111】
好ましくは、金属源が含む金属は鉄又は銅の少なくともいずれかであり、鉄であることが好ましい。
【0112】
本実施態様のβ型ゼオライトの製造方法は、金属含有工程の後、洗浄工程、乾燥工程又は活性化工程から選ばれるいずれか1以上の工程を含んでいてもよい。
【0113】
洗浄工程は、不純物等が除去されれば、任意の洗浄方法を用いることができる。例えば、金属含有工程後に、得られた金属含有β型ゼオライトを十分量の純水で洗浄することが挙げられる。
【0114】
乾燥工程は、金属含有β型ゼオライトに吸着した水分を除去できる方法であればよく、大気中で、100℃以上200℃以下で処理することが例示できる。
【0115】
活性化工程は、金属含有β型ゼオライトに残存する無機物又は有機物を除去する。活性化方法として金属含有β型ゼオライトを、大気中、200℃を超え600℃以下で処理することが例示できる。
【図面の簡単な説明】
【0116】
図1】β型ゼオライトの結晶粒子の形状を示す模式図 (a)双四角錘台形状、(b)略八面体形状
図2】実施例1の結晶化物のXRDパターン
図3】実施例1のβ型ゼオライトのXRDパターン
図4】実施例3のβ型ゼオライトのXRDパターン
図5】実施例3のβ型ゼオライトのSEM観察図(図中スケールは1μm)
図6】実施例10のβ型ゼオライトのSEM観察図(図中スケールは1μm)
図7】実施例10のβ型ゼオライトの結晶の観察図(図中スケールは100nm)
図8】比較例2のβ型ゼオライトのXRDパターン
図9】比較例3のβ型ゼオライトの結晶の観察図(図中スケールは100nm)
図10】比較例4のβ型ゼオライトのXRDパターン
図11】比較例4のβ型ゼオライトのSEM観察図(図中スケールは1μm)
図12】鉄含有β型ゼオライトの窒素酸化物還元率を示すグラフ(□:フレッシュ試料、■:20h耐久試料)
【実施例
【0117】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明をさらに具体的に説明する。しかしながら、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。以下、評価方法及び評価条件を示す。
(結晶の同定)
粉末X線回折装置(装置名:UltimaIV、リガク社製)を使用し、試料のXRD測定をした。測定条件は以下のとおりである。
線源 : CuKα線(λ=1.5405Å)
測定モード : ステップスキャン
スキャン条件 : 40°/分
計測時間 : 3秒
測定範囲 : 2θ=5°から43°
得られたXRDパターンを米国特許3,308,069のXRDパターンと対比することで構造を同定した後、Peak(302)の2θ及びFWHM、並びにI(302)及びIby-proを求めた。
【0118】
(組成分析)
フッ酸と硝酸の混合水溶液に試料を溶解して試料溶液を調製した。ICP装置(装置名:OPTIMA5300DV、PerkinElmer社製)を使用して、当該試料溶液を誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-AES)で測定した。
(平均結晶粒子径)
電子顕微鏡(装置名:JSM-6390LV)を使用して、試料を倍率15000倍で観察し、その一次結晶粒子150個の水平フェレ径を計測した。得られた水平フェレ径を平均し平均結晶粒子径とした。
(IRスペクトル)
IRスペクトルは加熱拡散反射装置(装置名:ST900℃加熱拡散反射装置、エス・ティ・ジャパン社製)付きFT-IR装置(装置名:660-IR、Varian社製)を使用し、以下の条件で測定した。
測定方法 :加熱透過法
前処理 :真空排気下で500℃、2時間保持し、室温まで降温後に測定
測定温度 :500℃
測定波長範囲:800~4000cm-1
分解能 :2cm-1
積算回数 :128回
【0119】
実施例1
35重量%TEAOH水溶液、48重量%水酸化カリウム水溶液、純水及び非晶質アルミノシリケート(SiO/Al比=18.2)を混合した後、そこに種晶としてβ型ゼオライト(製品名:HSZ930NHA、東ソー社製)1.5重量%を添加し、以下のモル組成を有する原料組成物を得た。
【0120】
SiO/Al比 =18.2
TEA/SiO比 =0.12
K/SiO比 =0.12
O/SiO比 =12.0
OH/SiO比 =0.24
種晶 =1.5重量%
原料組成物を密閉容器内に充填し、当該容器を55rpmで回転しながら150℃で48時間、原料組成物を反応させて結晶化物を得た。得られた結晶化物を固液分離し、純水で洗浄した後、大気中、110℃で乾燥して回収した。当該結晶化物はβ型ゼオライトの単一相からなるゼオライトであり、Peak(302)のFWHMは0.20であった。
【0121】
得られた結晶化物の主なXRDピークを下表に示し、XRDパターンを図2に示した。
【0122】
【表5】
【0123】
得られた結晶化物を、大気中、600℃、2時間で焼成し、本実施例のβ型ゼオライトとした。本実施例のβ型ゼオライトは、β型ゼオライトの単一相からなるゼオライトであり、Peak(302)のFWHMが0.27あり、FWHM変化率は1.35であった。また、SiO/Al比は17.6及び平均結晶粒子径が0.37μmであり、SiO/Al比及び平均結晶粒子径のいずれもが焼成前の結晶化物と同様な値であった。得られたβ型ゼオライトの主なXRDピークを下表に示し、XRDパターンを図3に示した。
【0124】
【表6】
【0125】
実施例2
原料組成物を以下の組成としたこと以外は実施例1と同様な方法で結晶化、固液分離、洗浄及び乾燥し、結晶化物を得た。
【0126】
SiO/Al比 =18.2
TEAOH/SiO比 =0.09
K/SiO比 =0.15
O/SiO比 =12.0
OH/SiO比 =0.24
種晶 =1.5重量%
得られた結晶化物はβ型ゼオライトの単一相からなるゼオライトであり、Peak(302)のFWHMは0.18であった。当該結晶化物の主なXRDピークを下表に示す。
【0127】
【表7】
【0128】
当該結晶化物を実施例1と同様な方法で焼成し、本実施例のβ型ゼオライトとした。本実施例のβ型ゼオライトはβ型ゼオライトの単一相からなるゼオライトであり、Peak(302)FWHMが0.28であり、FWHM変化率は1.56であった。また、SiO/Al比は17.4及び平均結晶粒子径は0.38μmであり、いずれも焼成前の結晶化物と同様な値であった。
【0129】
本実施例のβ型ゼオライトの主なXRDピークを下表に示す。
【0130】
【表8】
【0131】
実施例3
原料組成物を以下の組成としたこと以外は実施例1と同様な方法で結晶化、固液分離、洗浄及び乾燥し、結晶化物を得た。
【0132】
SiO/Al =18.2
TEAOH/SiO =0.12
K/SiO =0.20
O/SiO =12.0
OH/SiO =0.32
種晶 =1.5重量%
得られた結晶化物のβ型構造含有率は93%であり、7%のGIS型ゼオライトを含んでいた。当該ゼオライトに含まれるβ型ゼオライトのPeak(302)のFWHMは0.18であった。
【0133】
下表に当該結晶化物の主なXRDピークを示す。
【0134】
【表9】
【0135】
得られた結晶化物を実施例1と同様な方法で焼成し、本実施例のβ型ゼオライトとした。本実施例のβ型ゼオライトは、β型ゼオライトの単一相からなるゼオライトであり、Peak(302)のFWHMは0.28であり、FWHM変化率は1.56であった。また、SiO/Al比が15.6及び平均結晶粒子径が0.52μmであり、いずれも焼成前のβ型ゼオライトと同様な値であった。
【0136】
本実施例のβ型ゼオライトのXRD測定結果より、結晶化後のβ型ゼオライトに含まれていた微量のGIS型ゼオライトは焼成でなくなることが確認できた。
【0137】
本実施例のβ型ゼオライトの主なXRDピークを下表に示し、XRDパターンを図4に示し、SEM観察図を図5に示した。
【0138】
【表10】
【0139】
実施例4
原料組成物を以下の組成としたこと以外は実施例1と同様な方法で結晶化、固液分離、洗浄及び乾燥し、結晶化物を得た。
【0140】
SiO/Al比 =18.2
TEAOH/SiO比 =0.10
K/SiO比 =0.16
O/SiO比 =12.0
OH/SiO比 =0.26
種晶 =1.5重量%
得られた結晶化物のβ型構造含有率は95%であり、5%のGIS型ゼオライトを含んでいた。当該β型ゼオライトに含まれるβ型ゼオライトのPeak(302)のFWHMは0.19であった。
【0141】
当該結晶化物の主なXRDピークを下表に示す。
【0142】
【表11】
【0143】
当該結晶化物を実施例1と同様な方法で焼成し、本実施例のβ型ゼオライトとした。本実施例のβ型ゼオライトはβ型ゼオライトの単一相からなるゼオライトであり、Peak(302)のFWHMが0.28であり、FWHM変化率は1.47であった。また、SiO/Al比が16.8及び平均結晶粒子径が0.44μmであり、いずれも焼成前のゼオライトと同様な値であった。
【0144】
本実施例のβ型ゼオライトの主なXRDピークを下表に示す。
【0145】
【表12】
【0146】
実施例5
実施例4と同様な組成を有する原料組成物を使用したこと、及び、結晶化温度を140℃としたこと以外は実施例1と同様な方法で結晶化、固液分離、洗浄及び乾燥し、結晶化物を得た。
【0147】
得られた結晶化物はβ型ゼオライトの単一相からなるゼオライトであった。
【0148】
当該結晶化物を実施例1と同様な方法で焼成し、本実施例のβ型ゼオライトとした。本実施例のβ型ゼオライトはβ型ゼオライトの単一相からなるゼオライトであり、Peak(302)のFWHMが0.38であった。また、SiO/Al比が17.5及び平均結晶粒子径が0.40μmであり、いずれも焼成前の結晶化物と同様な値であった。
【0149】
本実施例のβ型ゼオライトの主なXRDピークを下表に示す。
【0150】
【表13】
【0151】
実施例6
原料組成物を以下の組成としたこと、及び、結晶化温度を170℃としたこと以外は実施例1と同様な方法で結晶化、固液分離、洗浄及び乾燥し、結晶化物を得た。
【0152】
SiO/Al比 =18.2
TEAOH/SiO比 =0.09
K/SiO比 =0.12
O/SiO比 =12.0
OH/SiO比 =0.21
種晶 =1.5重量%
得られた結晶化物はβ型ゼオライトの単一相からなるゼオライトであった。
【0153】
当該結晶化物を実施例1と同様な方法で焼成し、本実施例のβ型ゼオライトとした。本実施例のβ型ゼオライトはβ型ゼオライトの単一相からなるゼオライトであり、Peak(302)のFWHMは0.40であった。また、SiO/Al比が18.0及び平均結晶粒子径が0.38μmであり、いずれも焼成前の結晶化物と同様な値であった。
【0154】
本実施例のβ型ゼオライトの主なXRDピークを下表に示す。
【0155】
【表14】
【0156】
実施例7
SiO/Al比が14.8である非晶質アルミノシリケートを使用したこと、及び、原料組成物を以下の組成としたこと以外は実施例1と同様な方法で結晶化、固液分離、洗浄及び乾燥し、結晶化物を得た。
【0157】
SiO/Al比 =14.8
TEAOH/SiO比 =0.12
K/SiO比 =0.14
O/SiO比 =12.0
OH/SiO比 =0.26
種晶 =1.5重量%
得られた結晶化物のβ型ゼオライト含有量は86%であり、14%のGIS型ゼオライトを含んでいた。また、当該結晶化物中のβ型ゼオライトのPeak(302)のFWHMは0.19であった。
【0158】
当該結晶化物の主なXRDピークを下表に示す。
【0159】
【表15】
【0160】
当該結晶化物を実施例1と同様な方法で焼成し、本実施例のβ型ゼオライトとした。本実施例のβ型ゼオライトはβ型構造含有率が89%であり、11%のGIS型ゼオライトを含有していた。また、当該結晶化物中のβ型ゼオライトのPeak(302)のFWHMが0.26であり、FWHM変化率は1.37であった。また、SiO/Al比が14.2及び平均結晶粒子径が0.39μmであり、それぞれ焼成前の結晶化物と同様な値であった。
【0161】
本実施例から、14%以上の副生ゼオライトは、焼成により低減すること、及び、焼成後も残存することが確認できた。
【0162】
本実施例のβ型ゼオライトの主なXRDピークを下表に示す。
【0163】
【表16】
【0164】
実施例8
SiO/Al比が14.8である非晶質アルミノシリケートを使用したこと、及び、原料組成物を以下の組成としたこと以外は実施例1と同様な方法で結晶化、固液分離、洗浄及び乾燥し、結晶化物を得た。
【0165】
SiO/Al比 =14.8
TEAOH/SiO比 =0.09
K/SiO比 =0.16
O/SiO比 =12.0
OH/SiO比 =0.25
種晶 =1.5重量%
得られた結晶化物のβ型構造含有率は84%であり、16%のGIS型ゼオライトを含有していた。当該結晶化物中のβ型ゼオライトのPeak(302)のFWHMは0.18であった。
【0166】
当該結晶化物の主なXRDピークを下表に示す。
【0167】
【表17】
【0168】
当該結晶化物を実施例1と同様な方法で焼成し、本実施例のβ型ゼオライトとした。本実施例のβ型ゼオライトβ型構造含有率は92%であり、8%のGIS型ゼオライトを含有していた。本実施例のβ型ゼオライトのPeak(302)のFWHMは0.27であり、FWHM変化率は1.50であった。また、SiO/Al比が14.2及び平均結晶粒子径が0.45μmであり、それぞれ焼成前のゼオライトと同様な値であった。
【0169】
本実施例から、16%以上の副生ゼオライトは、焼成により低減したが、焼成後も残存することが確認できた。
【0170】
本実施例のβ型ゼオライトの主なXRDピークを下表に示す。
【0171】
【表18】
【0172】
実施例9
35重量%TEAOH水溶液、48重量%水酸化カリウム水溶液、48重量%水酸化ナトリウム水溶液、純水及び非晶質アルミノシリケート(SiO/Al比=18.2)を混合した後、そこに種晶としてβ型ゼオライト(製品名:HSZ930NHA、東ソー社製)1.5重量%を添加し、以下のモル組成を有する原料組成物を得た。
【0173】
SiO/Al =18.2
TEA/SiO =0.12
K/SiO =0.12
Na/SiO =0.04
O/SiO =12.0
OH/SiO =0.28
種晶 =1.5重量%
当該原料組成物を実施例1と同様な方法で処理して結晶化物を得た。当該結晶化物はβ型ゼオライトの単一相からなるゼオライトであり、Peak(302)のFWHMは0.22であった。得られた結晶化物の主なXRDピークを下表に示す。
【0174】
【表19】
【0175】
得られた結晶化物を、実施例1と同様な方法で焼成し、本実施例のβ型ゼオライトとした。本実施例のβ型ゼオライトは、β型ゼオライトの単一相からなるゼオライトであり、Peak(302)のFWHMが0.29あり、FWHM変化率は1.32であった。また、SiO/Al比は17.2及び平均結晶粒子径が0.35μmであり、いずれも焼成前の結晶化物と同様な値であった。得られたβ型ゼオライトの主なXRDピークを下表に示す。
【0176】
【表20】
【0177】
該β型ゼオライトは、そのIRスペクトルにおいてP1及びP2がそれぞれ3733cm-1及び3591cm-1であった。また、P2/P1が0.28であった。
【0178】
実施例10
35重量%TEAOH水溶液、48重量%水酸化カリウム水溶液、純水及び非晶質アルミノシリケート(SiO/Al比=17.4)を混合した後、そこに種晶としてβ型ゼオライト(製品名:HSZ930NHA、東ソー社製)1.5重量%を添加し、以下のモル組成を有する原料組成物を得た。
【0179】
SiO/Al比 =17.4
TEA/SiO比 =0.09
K/SiO比 =0.16
O/SiO比 =11.0
OH/SiO比 =0.25
種晶 =1.5重量%
原料組成物を4Lのオートクレーブ内に充填し、245rpmで撹拌しながら150℃で44時間、原料組成物を反応させて結晶化物を得た。得られた結晶化物を固液分離し、純水で洗浄した後、大気中、110℃で乾燥して回収した。当該結晶化物はβ型構造含有量は95%であり、5%のGIS型ゼオライトを含んでいた。結晶化物中のβ型ゼオライトのPeak(302)のFWHMは0.19であった。
【0180】
得られた結晶化物の主なXRDピークを下表に示す。
【0181】
【表21】
【0182】
得られた結晶化物を、大気中、600℃、2時間で焼成し、本実施例のβ型ゼオライトとした。本実施例のβ型ゼオライトは、β型ゼオライトの単一相からなるゼオライトであり、Peak(302)のFWHMが0.29あり、FWHM変化率は1.53であった。また、SiO/Al比は16.4、平均結晶粒子径が0.51μmであり、いずれも焼成前の結晶化物と同様な値であった。SEM観察図を図6に示す。結晶粒子は、主として一次結晶粒子からなり、少量の凝集結晶粒子を含んでいた。
【0183】
電界放出型電子顕微鏡(装置名:S-4500、日立製作所社製)を使用し、凝集結晶粒子を構成する結晶を観察した。結果を図7に示す。凝集結晶粒子はa軸方向及びb軸方向に配向した双四角錘台状の結晶から構成されており、結晶のアスペクト比は0.7であった。
【0184】
得られたβ型ゼオライトの主なXRDピークを下表に示す。
【0185】
【表22】
【0186】
該β型ゼオライトは、そのIRスペクトルにおいてP1及びP2はそれぞれ3731cm-1及び3592cm-1であった。また、P2/P1は0.33であった。
【0187】
これらの実施例から、有機構造指向剤としてTEAを含み、K/SiO比が0.04を超える原料組成物を結晶化することで、Peak(302)が0.15以上0.50以下であり、なおかつ、SiO/Al比が20未満のβ型ゼオライトが得られることが確認できた。さらに、得られたβ型ゼオライトは平均結晶粒子径が0.30μmを超えること更には、主として一次結晶粒子からなり、かつ、物理的な凝集が少ないことが確認できた。本実施例のβ型ゼオライトのフッ素含有量は検出限界以下であった。本実施例の製造方法における原料組成物は、いずれもフッ素化合物を含有していないため、得られたβ型ゼオライトはフッ素含有量が100重量ppm以下であること、更にはフッ素を含有しないことは明らかである。
【0188】
比較例1
35重量%TEAOH水溶液、48重量%水酸化ナトリウム水溶液、純水、非晶質アルミノシリケート(SiO/Al比=18.2)を混合した後、さらにスラリーのシリカ含有量に対して、1.5重量%の市販のβ型ゼオライト(製品名:HSZ930NHA、東ソー社製)を添加し、以下のモル組成を有する原料組成物を得た。
【0189】
SiO/Al比 =18.2
TEAOH/SiO比 =0.10
Na/SiO比 =0.14
O/SiO比 =12.0
OH/SiO比 =0.24
種晶 =1.5重量%
原料組成物を実施例1と同様な方法で結晶化し、結晶化物を得た。得られた結晶化物はβ型ゼオライトの単一相からなるゼオライトであり、そのFWHMは0.53であった。
【0190】
当該ゼオライトを、大気中、600℃、2時間で焼成し、本比較例のゼオライトとした。本比較例のゼオライトは、β型ゼオライトの単一相からなるゼオライトであり、Peak(302)に相当するXRDピークのFWHMが0.59であった。また、SiO/Al比が17.7及び平均結晶粒子径が0.15μm未満であり、いずれも焼成前の値と同程度であった。
【0191】
本比較例のゼオライトの主なXRDピークを下表に示した。
【0192】
【表23】
【0193】
該β型ゼオライトは、そのIRスペクトルにおいてP1及びP2はそれぞれ3735cm-1及び3595cm-1であり、P2/P1は0.07であった。
【0194】
これらの結果より、本比較例のβ型ゼオライトは、実施例のβ型ゼオライトよりもFWHMが大きく結晶性が低いこと、及び、実施例のβ型ゼオライトとXRDパターンが異なることが確認できた。
【0195】
本比較例から、カリウムを含む原料組成物から得られるゼオライトは、結晶粒子が大きなβ型ゼオライトであるのに対し、カリウムを含まない原料組成物を結晶化して得られるゼオライトは、結晶粒子が小さいβ型ゼオライトであることが確認できた。
【0196】
比較例2
特許文献3の実施例4の方法に準じた方法により、β型ゼオライトを合成した。
【0197】
すなわち、反応組成物の組成を、
SiO:0.034Al
:0.05KOH:0.14TEAOH:9.9H
とし、結晶化時間88時間とした以外は実施例1と同様の方法で結晶化、固液分離、洗浄及び乾燥し、結晶化物を得た。
【0198】
得られた結晶化物はβ型ゼオライトの単一相からなるゼオライトであった。
【0199】
当該オライトを比較例1と同様な方法で焼成し、本比較例のゼオライトとした。本比較例のゼオライトは、β型ゼオライトの単一相からなるゼオライトであり、Peak(302)に相当するXRDピークのFWHMが0.24であった。また、SiO/Al比が29.1及び平均結晶粒子径が0.43μmであり、いずれも焼成前のゼオライトと同様な値であった。
【0200】
本比較例のゼオライトのXRDパターンを図8に、主なXRDピークを下表に、それぞれ示した。
【0201】
【表24】
【0202】
これらの結果より、本比較例のβ型ゼオライトは、SiO/Al比が20以上であることで本実施態様のβ型ゼオライトと同程度の結晶性を有するが、本実施態様のβ型ゼオライトとは、XRDパターンが異なることが確認できた。
【0203】
比較例3
特許文献6の実施例8の方法に準じた方法により、SDAを含まない原料組成物からβ型ゼオライトを合成した。
【0204】
すなわち、NaAlO及びNaOHを水に溶解した後、フュームドシリカを加えた。次いで、その混合物を15分間撹拌することにより、以下の組成を有するアルミノシリケートゲル(原料組成物)を得た。
【0205】
40.28SiO:1.00Al
:13.06NaO:1133.32H
当該アルミノシリケートゲルにβ型ゼオライト(商品名:HSZ920HOA、東ソー社製)10.0重量%を添加し、混合した。
【0206】
得られた原料組成物をオートクレーブに移し、140℃で19時間反応させ結晶化物を得た。結晶化物は、固液分離し、純水で洗浄した後、大気中、110℃で乾燥し回収した。
【0207】
当該結晶化物はβ型ゼオライトの単一相からなるゼオライトであった。
【0208】
得られたゼオライトを比較例1と同様な方法で焼成し、本比較例のゼオライトとした。本比較例のゼオライトは、β型ゼオライトの単一相からなるゼオライトであり、Peak(302)に相当するXRDピークのFWHMが0.28であった。また、SiO/Al比が10.0、平均結晶粒子径が0.34μmであり、それぞれ焼成前のゼオライトと同様な値であった。本比較例のβ型ゼオライトの結晶粒子は、略八面体状の結晶から構成された一次結晶粒子を含むことが確認できた。
【0209】
本比較例のβ型ゼオライトの結晶粒子を構成する結晶を観察した。結果を図9に示す。結晶粒子は、a軸方向及びc軸方向が配向し、双四角錘台状の底面が稜又は頂点となった、略八面体形状の結晶から構成されていた。また、結晶のアスペクト比は1.5であった。これより、SDAを含まない原料組成物を結晶化して得られるゼオライトは、本実施態様のβ型ゼオライトと結晶の形状、及び、結晶の配向性も異なることが確認できた。
【0210】
さらに、本比較例のβ型ゼオライトは、2θ=21.26°、22.32°及び26.98°にXRDピークを有する一方、2θ=21.28~21.40°、22.33°~33.46°及び27.00°~27.12°にXRDピークを有していなかった。これより、本比較例のβ型ゼオライトは、本実施態様のβ型ゼオライトとは異なるXRDパターンを有することが確認できた。
【0211】
該β型ゼオライトは、そのIRスペクトルにおいてP1及びP2はそれぞれ3735cm-1及び3595cm-1であった。また、P2/P1は1.00であった。
【0212】
比較例4
特許文献1の実施例1の方法に準じた方法により、SiO/Al比が20未満のβ型ゼオライトを製造した。
【0213】
すなわち、アルミン酸ナトリウム溶液(18.89重量%Al、19.61重量%NaO、61.50重量%HO)、水酸化ナトリウム、TEAOH、純水及びフュームドシリカ(AEROSIL 200)をオートクレーブ反応器中で充分に撹拌し、以下の組成を有する原料組成物を得た。
【0214】
23.1SiO:1.00Al:1.94Na
:1.62(TEA)O:767H
得られた原料組成物のシリカ含有量に対して、β型ゼオライト7.55重量%を添加し、混合した。
【0215】
得られた原料組成物を150℃で6日間反応させ結晶化物を得た。結晶化物は、固液分離し、脱イオン水で洗浄した後、大気中、110℃で乾燥し回収した。
【0216】
当該結晶化物はβ型ゼオライトの単一相からなるゼオライトであった。β型ゼオライトのPeak(302)に相当するXRDピークのFWHMは0.57であった。当該β型ゼオライトの主なXRDピークを下表に示す。
【0217】
【表25】
【0218】
当該ゼオライトを比較例1と同様な方法で焼成し、本比較例のゼオライトとした。本比較例のゼオライトはβ型ゼオライトの単一相からなるゼオライトであり、Peak(302)に相当するXRDピークのFWHMが0.59、SiO/Al比が18.2であった。
【0219】
本比較例のβ型ゼオライトの主なXRDピークを下表に、XRDパターンを図10に示し、SEM観察図を図11に示した。
【0220】
【表26】
【0221】
本比較例のβ型ゼオライトは、K/SiO比が0.04以下の原料組成物、更にはカリウム源を含まない原料組成物から結晶化されたものであり、Peak(302)に相当するピークのFWHMが本実施態様のβ型ゼオライトより大きかった。これより、カリウム源を含まない原料組成物を使用した製造方法及びこれにより得られるβ型ゼオライトは、本実施態様とは異なることが確認できた。これに加え、本比較例のβ型ゼオライトは本実施例のβ型ゼオライトよりもPeak(302)の2θが大きかった。
【0222】
これに加え、図11より、SEMの15,000倍率下において明瞭な形を有する一次結晶粒子が観察できず、0.15μmを超える一次結晶粒子がないことが確認できた。実施例の製造方法では、SiO/Al比が20未満でありながら、平均結晶粒子径が大きいβ型ゼオライトが得られること確認できたのに対し、K/SiO比が0.04以下、更にはカリウム源を含まない原料組成物からは平均結晶粒子径の小さいβ型ゼオライトしか得られないことが確認できた。
【0223】
測定例1
(耐熱性の評価)
実施例1、実施例2及び比較例1で得られたゼオライト試料を、それぞれ、成形及び粉砕し、凝集径12~20メッシュの凝集粒子とした。得られた凝集粒子3mLを常圧固定床流通式反応管に充填した後、以下の条件で水分を10体積%含有する空気を流通させることで水熱耐久処理とした。
空気の流通速度 : 300mL/min
処理温度 : 700℃
処理時間 : 20時間
【0224】
水熱耐久処理前後のゼオライト試料について結晶相の同定と同様な方法でXRD測定し、得られたXRDパターンのP(302)のFWHMを求めた。結果を下表に示す。
【0225】
【表27】
【0226】
実施例1、2及び比較例1のβ型ゼオライトはいずれもSiO/Al比が20未満で同程度のβ型ゼオライトであるが、水熱耐久処理前のPeak(302)のFWHMは実施例1及び2のβ型ゼオライトが0.30以下と、比較例1のβ型ゼオライトより小さかった。この結果より、本実施例のβ型ゼオライトは従来のSiO/Al比が20未満のβ型ゼオライトと比べ、高い結晶性を有していることが確認できた。
【0227】
また、上表より水熱耐久処理によりいずれのβ型ゼオライトもFWHMが大きくなることが確認できる。これに加え、FWHMagedは比較例1が0.60であるのに対し、実施例はいずれも0.35以下であった。これより、本実施例のβ型ゼオライトは、高温高湿下への暴露後も高い結晶性を維持することができ、従来のSiO/Al比が20未満のβ型ゼオライトより高い耐熱性を有していることが確認できた。
【0228】
測定例2
(鉄の含有)
実施例1、比較例1及び2で得られたゼオライトを使用して鉄含有β型ゼオライトを得た。すなわち、硝酸鉄九水和物2.24gを純水3.1gに溶解することで硝酸鉄水溶液を調製した。焼成後のゼオライト10.0gに当該硝酸鉄水溶液を滴下した後、乳鉢で10分間混合した。混合後、β型ゼオライトを110℃で一晩乾燥させた後、空気中、500℃で1時間焼成することで鉄含有β型ゼオライトとした。
(水熱耐久処理)
鉄含有β型ゼオライトを成形及び粉砕し、凝集径12~20メッシュの凝集粒子とした。鉄含有β型ゼオライトの凝集粒子3mLを常圧固定床流通式反応管に充填した後、水分を10体積%含有する空気を流通させ、以下の条件で水熱耐久処理した。
空気の流通速度 : 300mL/min
処理温度 : 700℃
処理時間 : 20時間
【0229】
(窒素酸化物還元率(%)の測定方法)
水熱耐久処理前後の試料を成形及び破砕して、凝集径12~20メッシュの凝集粒子とした。凝集粒子状の試料1.5mLを常圧固定床流通式反応管に充填し、以下の測定温度で保持して窒素酸化物含有ガスを流通させ、常圧固定床流通式反応管の入口及び出口の窒素酸化物濃度を測定した。窒素酸化物含有ガスの流通条件は以下のとおりである。
【0230】
窒素酸化物含有ガスの組成 : NO 200ppm
NH 200ppm
10容量%
O 3容量%
残部
窒素酸化物含有ガスの流量 : 1.5L/min
空間速度 : 60,000hr-1
測定温度 : 200℃
得られた窒素酸化物濃度から以下の式により窒素酸化物還元率を求めた。
【0231】
窒素酸化物還元率(%)
={([NOx]in-[NOx]out)/[NOx]in}×100
[NOx]inは常圧固定床流通式反応管の入口の窒素酸化物含有ガスの窒素酸化物濃度であり、[NOx]outは常圧固定床流通式反応管の出口の窒素酸化物含有ガスの窒素酸化物濃度である。
【0232】
水熱耐久処理前の鉄含有β型ゼオライト(以下、「フレッシュ試料」ともいう。)の窒素酸化物還元率、及び、水熱耐久処理後の鉄含有β型ゼオライト(以下、「20h耐久試料」ともいう。)の窒素酸化物還元率を下表及び図12に示す。
【0233】
【表28】
【0234】
比較例2の鉄含有β型ゼオライトは窒素酸化物還元率の低下が比較的少なく、SiO/Al比が25以上である鉄含有β型ゼオライトである。この鉄含有β型ゼオライトに対し、本実施例の鉄含有β型ゼオライトのフレッシュ試料は同程度の窒素酸化物還元率を示した。これに加え、長時間の高温含水雰囲気への暴露後においても窒素酸化物還元率の低下が、比較例2のβ型ゼオライトよりも小さいという効果を有することが確認できた。これより、本実施例のβ型ゼオライトはSiO/Al比が20以上のβ型ゼオライトと比べても、耐熱性が高く、なおかつ、低温域における窒素酸化物還元率の低下が小さいことが確認できた。
【0235】
次に、フレッシュ試料の窒素酸化物還元率に対する、20h耐久試料の窒素酸化物還元率の割合を下表に示す。
【0236】
【表29】
【0237】
比較例1及び実施例1とはSiO/Al比が20未満の鉄含有β型ゼオライトである。20時間の水熱耐久処理によって、比較例1の鉄含有β型ゼオライトの窒素酸化物還元率が25%以上低下したのに対し、実施例1の鉄含有β型ゼオライトの窒素酸化物還元率は測定精度の範囲で低下が認められなかった。これより、本実施態様のβ型ゼオライトは従来のSiO/Al比が20未満のβ型ゼオライトと比べ、耐熱性が高く、なおかつ、高温高湿雰囲気化への暴露後であっても、低温域における窒素酸化物還元率の低下が小さいことが確認できる。
【0238】
これより、本実施例の鉄含有β型ゼオライトは優れた窒素酸化物還元特性を有するという効果に加え、窒素酸化物還元触媒として使用した場合に寿命が長い触媒として使用できることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0239】
本開示に係るβ型ゼオライトは、触媒として使用することができ、特に窒素酸化物還元触媒、更には尿素SCRにおける窒素酸化物の還元触媒として供することができる。更に、本開示に係るβ型ゼオライトは触媒担体や吸着剤担体として使用することができ、その製造方法は、工業的なβ型ゼオライトの製造方法として適用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12