(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】不飽和カルボニル化合物からの飽和ホモエーテルの高効率な製造法
(51)【国際特許分類】
C07C 41/01 20060101AFI20221213BHJP
C07C 43/04 20060101ALI20221213BHJP
B01J 23/44 20060101ALI20221213BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20221213BHJP
【FI】
C07C41/01
C07C43/04 A
C07C43/04 B
B01J23/44 Z
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2018236298
(22)【出願日】2018-12-18
【審査請求日】2021-07-02
(73)【特許権者】
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596032100
【氏名又は名称】JNC石油化学株式会社
(72)【発明者】
【氏名】乾 貫一郎
(72)【発明者】
【氏名】島田 太一
【審査官】高森 ひとみ
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-095461(JP,A)
【文献】特開平09-020710(JP,A)
【文献】特公昭49-006290(JP,B1)
【文献】特開2013-023460(JP,A)
【文献】特開2018-030980(JP,A)
【文献】特開2014-141460(JP,A)
【文献】特開2004-250387(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不飽和カルボニル化合物と水素とを原料とし、金属が酸性の触媒担体に担持された触媒を用い、飽和ホモエーテルを製造する際に、
反応圧がゲージ圧で0.01MPa以上であり、反応圧からの差圧が0.01MPa以上である落圧操作を、少なくとも1回行う不飽和カルボニル化合物からの飽和ホモエーテルの製造方法であ
り、不飽和カルボニル化合物が式(1)で表されるアルデヒドであり、式(2)で表される化合物が製造される飽和ホモエーテルの製造方法。
式(1)および式(2)において、R
1、R
2、およびR
3は独立して、水素、炭素数1から20のアルキル
、5員環から20員環のシクロアルキル、
または5員環から20員環のアリール
であ
る。
【請求項2】
式(1)および式(2)において、R
1、R
2、R
3が独立して、水素、炭素数1から20の直鎖アルキル、炭素数3から20の分岐状アルキル
である、請求項
1に記載の飽和ホモエーテルの製造方法。
【請求項3】
不飽和カルボニル化合物が、2-エチル
-2-ヘキセナールであり、ビス-(2-エチルヘキシル)エーテルが製造される、請求項1
に記載の飽和ホモエーテルの製造方法。
【請求項4】
不飽和カルボニル化合物が、2-ブテナールであり、ジブチルエーテルが製造される、請求項1
に記載の飽和ホモエーテルの製造方法。
【請求項5】
不飽和カルボニル化合物が、2-エチル-2-ブテナールであり、ビス-(2-エチルブチル)エーテルが製造される、請求項
1に記載の飽和ホモエーテルの製造方法。
【請求項6】
触媒の金属がパラジウムである、請求項1から
5のいずれか1項に記載の飽和ホモエーテルの製造方法。
【請求項7】
触媒の担体が、アルミナ、シリカ、およびシリカ-アルミナから選ばれる1種以上である、請求項1から
6のいずれか1項に記載の飽和ホモエーテルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属触媒機能と酸触媒機能とを併せ持つ二元機能触媒の下で不飽和カルボニル化合物と水素を反応させる際に、副生する水分を除去しながら反応することを特徴とする、不飽和カルボニル化合物から飽和ホモエーテル製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
高級飽和ホモエーテルは、高級エステルと並び低粘度、高引火点、低流動点というアルカン類には無い特殊な物性を有しており、且つパッキンに用いられるシールゴムへの浸潤が小さいという特徴を活かし、油圧作動油の基油として用いられる(非特許文献1)。飽和ホモエーテルの製造方法は、酸触媒によるアルコールの脱水二量化あるいは、アルデヒドから(ヘミ)アセタールを経由する2段反応の2種類の方法が一般的である。酸触媒によるアルコールの脱水二量化はプロトン酸である硫酸や塩酸等の無機酸、或いはシリカ-アルミナ、Nafion等による固体酸触媒による反応が一般的であり(非特許文献2)、反応が簡便ではあるものの、分子内脱水によりオレフィンが副生成物として多量に生成し目的物の選択率向上を妨げるという問題があった。一方、アセタールを経由する方法はアルデヒドとアルコールという二種類の原料を用いるため、両端が異なるエーテルを製造する場合には(ヘミ)アセタールを経由する方法が好ましい方法であるが、両端が同一の基であるホモエーテルの製造であっても(ヘミ)アセタールを形成しビニルエーテルとした後、ビニル基を水素及び水添触媒の存在下、加圧下で反応しなければならず工程が煩雑であることに加えて、アルデヒドとアルコールという二種類の原料を用意しなければならず、設備投資が増大するという問題があった。例えば、特許文献1では、特定のカルボニル化合物と特定のヒドロキシ化合物とを、カーボン粉末に担持されたパラジウム触媒を用いて水素雰囲気下反応させること特徴とするエーテル化合物の製造方法が開示されている。当該文献内の実施例には、5%Pd-ゼオライト(実施例5)、5%Pd-シリカアルミナ(実施例6)、5%Pd-アルミナ(実施例7)、を触媒として用いる事が開示されているが何れも、ホモエーテルに関しての記載は無く、単離収率に関しても満足のいくものとは言えない。また、特許文献2には、ヒドロキシ化合物及び/又はカルボニル化合物を水素雰囲気中で触媒を用いて反応させ、エーテル化合物を含有する反応物を得る工程を含む、エーテル化合物の製造法が開示されており、実施例においてはホモエーテルの製造に関して開示されている。
【0003】
一方で、大量生産によって生産されている化学製品は、製造工程や原料種の多寡がそのままコストに反映されるため、出来うる限り反応工程を短縮することが求められている。即ち、ある製品が多段階の工程を経て製造される場合、より前段での化合物を原料として用い、より少ない原料種で、より短い工程で生産することが生産コストを削減する為には極めて有効であることが明らかである。例えば飽和ホモエーテルであるジ(2-エチルヘキシル)エーテルを製造する場合、工業的に大量に生産されている飽和アルコールである2-エチルヘキサノールと飽和アルデヒドである2-エチルヘキサナールとを原料として、以下の反応を経由して製造されるのが一般的な製造方法となる。
【0004】
(1) 2-エチルヘキサノール + 2-エチルヘキサナール → ヘミアセタール
(2) ヘミアセタール → ビニルエーテル + 水
(3) ビニルエーテル + 水素 → ジ(2-エチルヘキシル)エーテル(飽和ホモエーテル)
ここで2-エチルヘキサノールはその前段の原料である、ブタナールのアルドール縮合によって製造される2-エチルヘキセナールを水添して製造される。
(4) ブタナール → ブチルアルドール
(5) ブチルアルドール → 2-エチル-2-ヘキセナール + 水
(6) 2-エチル-2-ヘキセナール + 水素 → 2-エチルヘキサノール
【0005】
ここで、2-エチルヘキサノールより前段の化合物である2-エチルヘキセナールのみを原料としてジ(2-エチルヘキシル)エーテルを製造する事が出来れば、飽和エーテルの製造工程が短縮し極めて効率的な飽和ホモエーテルの製造方法が可能となるが、当該文献においてもその様な効率的な製造方法は開示されていない。
【0006】
その他にも、ヒドロキシ化合物とカルボニル化合物を、ルイス(Lewis)酸存在下、触媒を用いて水素雰囲気中で反応させることを特徴とするエーテル化合物の製造法(特許文献3)や、環状アセタールと水素とをメソポーラスアルミノシリケートに担持されたパラジウム触媒の存在下に反応させるエーテルの製法(特許文献4)、ヒドロキシ化合物とカルボニル化合物を触媒の存在下に水素雰囲気中で反応させてエーテルを製造するに際し、触媒としてメソポーラスなアルミノシリケートに担持されたパラジウム触媒を用いるエーテルの製造法(特許文献5)などが開示されているが、何れの製造法においても両端が同一の基であるホモエーテルを製造する際でさえ、アルデヒドとアルコールの双方が原料となっており、原料調達の煩雑さからは免れられない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平09-087223号
【文献】特開2000-38364号
【文献】特開平09-040593号
【文献】特開2001-190954号
【文献】特開2000-281610号
【非特許文献】
【0008】
【文献】石油学会誌 31巻 448頁 (1988)
【文献】Catalysis Letters 46(1997) 1-4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上記従来の技術課題を解決することであり、不飽和カルボニル化合物から飽和ホモエーテルを効率よく製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは本反応を鋭意検討した結果、上記不飽和カルボニル化合物と水素から飽和ホモエーテルを製造する際には水が副生し、この水の存在が反応の進行を阻害していることを突き止め、更に反応途中に落圧操作を行うことで、反応器内ガスと共に水を系外に排出させることで、反応器内の水分を除去することができることを見出し、極めて効率的に不飽和カルボニル化合物と水素から飽和ホモエーテルを製造することに成功した。
【0011】
本発明の飽和ホモエーテル製造方法は、以下の項[1]~[9]で定義される。
[1] 不飽和カルボニル化合物と水素とを原料とし、金属が酸性の触媒担体に担持された触媒を用い、飽和ホモエーテルを製造する際に、反応圧からの差圧が0.01MPa以上である落圧操作を、少なくとも1回行う不飽和カルボニル化合物からの飽和ホモエーテルの製造方法。
【0012】
[2] 反応圧がゲージ圧で0.01MPa以上である項[1]に記載の飽和ホモエーテルの製造法。
【0013】
[3] 不飽和カルボニル化合物が式(1)で表されるアルデヒドであり、式(2)で表される化合物が製造される、項[1]または[2]に記載の飽和ホモエーテルの製造方法。
式(1)および式(2)において、R1、R2、およびR3は独立して、水素、炭素数1から20のアルキル、炭素数2から20のアルケニル、炭素数2から20のアルキニル、5員環から20員環のシクロアルキル、5員環から20員環のアリール、または5員環から20員環の複素環であり、これらの基において、少なくとも1つの炭素は、酸素またはイオウに置き換えられてもよく、少なくとも1つの-CH<は-N<に置き換えられてもよく、少なくとも1つの>CH2は、>C=Oに置き換えられてもよく、さらに、少なくとも1つの水素は、フッ素、塩素、ヨウ素、または水酸基に置き換えられてもよい。
【0014】
[4] 式(1)および式(2)において、R1、R2、R3が独立して、水素、炭素数1から20の直鎖アルキル、炭素数3から20の分岐状アルキル、炭素数2から20の直鎖アルケニル、または炭素数4から20の分岐状アルケニルであり、これらの基において、少なくとも1つの炭素は、酸素またはイオウに置き換えられてもよく、少なくとも1つの-CH<は-N<に置き換えられてもよく、少なくとも1つの>CH2は、>C=Oに置き換えられてもよく、さらに、少なくとも1つの水素は、フッ素、塩素、ヨウ素、または水酸基に置き換えられてもよい、項[3]に記載の飽和ホモエーテルの製造方法。
【0015】
[5] 式(1)および式(2)において、R1、R2、R3が独立して、水素、炭素数1から20の直鎖アルキル、炭素数3から20の分岐状アルキル、炭素数2から20の直鎖アルケニル、または炭素数4から20の分岐状アルケニルである、項[3]に記載の飽和ホモエーテルの製造方法。
【0016】
[6] 不飽和カルボニル化合物が、2-エチルヘキセナールであり、ビス-(2-エチルヘキシル)エーテルが製造される、項[1]または[2]に記載の飽和ホモエーテルの製造方法。
【0017】
[7] 不飽和カルボニル化合物が、2-ブテナールであり、ジブチルエーテルが製造される、項[1]または[2]に記載の飽和ホモエーテルの製造方法。
【0018】
[8] 不飽和カルボニル化合物が、2-エチル-2-ブテナールであり、ビス-(2-エチルブチル)エーテルが製造される、項[1]または[2]に記載の飽和ホモエーテルの製造方法。
【0019】
[9] 触媒の金属がパラジウムである、項[1]から[8]のいずれか1項に記載の飽和ホモエーテルの製造方法。
【0020】
[10] 触媒の担体が、アルミナ、シリカ、およびシリカ-アルミナから選ばれる1種以上である、項[1]から[9]のいずれか1項に記載の飽和ホモエーテルの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、不飽和カルボニル化合物と水素の存在下、不飽和カルボニル化合物から飽和ホモエーテルを得る方法である。
【0022】
(触媒担体)
本発明の飽和ホモエーテルの製造方法における酸性の触媒担体は、いわゆる固体酸を用いる事が可能で、固体酸としてはアルミナ、シリカ、チタニア等の金属酸化物、シリカ-アルミナ、シリカ-チタニア、ゼオライト等の複合金属酸化物、リン酸アルミニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム等の無機塩類、タングストリン酸、モリブドリン酸等のヘテロポリ酸類、高温焼成した活性炭、陽イオン交換樹脂などが挙げられる。固体酸は市販品、市販品を焼成したもの、金属の水酸化物、有機金属化合物を熱分解したもの、共沈法によって製造されたもの等、いずれの形態でも酸性の触媒担体として使用することが可能である。
【0023】
(触媒)
本発明における触媒は、金属が酸性の触媒担体に担持された触媒が用いられるが、金属はパラジウム、白金、ルテニウム等が好適に用いられ、パラジウムがより好適に用いられる。これらの金属を公知の方法、例えば含浸法、共沈法等により酸性の触媒担体に担持することにより本発明に用いる触媒を調製できる。尚、反応に用いた触媒はそのまま再利用が可能である。
【0024】
(製造方法、反応形態)
本発明の不飽和カルボニル化合物からの飽和ホモエーテルの製造方法は、金属が酸性の触媒担体に担持された触媒を用い、水素共存下で原料である不飽和カルボニル化合物を反応させる際、反応途中で副生する水分を、反応圧からの差圧が0.01MPa以上である落圧操作を、少なくとも1回行うことで、反応器内に存在する水分を除去することにより反応を行うことが特徴である。
【0025】
(反応装置)
本発明の飽和ホモエーテルの製造で使用される反応装置は特に限定されない。たとえば、回分式反応器に原料である不飽和カルボニル化合物および触媒を入れ、水素加圧下で反応させる事により飽和ホモエーテルを製造することが可能である。また、固定床反応器に触媒層を設定し、反応温度を設定した後、原料である不飽和カルボニル化合物および水素を流通させる事により飽和ホモエーテルを製造することが可能である。
【0026】
(水分の除去)
本発明において、反応圧からの差圧が0.01MPa以上である落圧操作を、少なくとも1回行うことで、反応器内に存在する水分を除去することが可能である。
【0027】
(対象とする原料)
原料となる不飽和カルボニル化合物は特に限定されないが、式(1)で表されるアルデヒドが好ましい。
式(1)おいて、R
1、R
2、およびR
3は独立して、水素、炭素数1から20のアルキル、炭素数2から20のアルケニル、炭素数2から20のアルキニル、5員環から20員環のシクロアルキル、5員環から20員環のアリール、または5員環から20員環の複素環であり、これらの基において、少なくとも1つの炭素は、酸素またはイオウに置き換えられてもよく、少なくとも1つの-CH<は-N<に置き換えられてもよく、少なくとも1つの>CH
2は、>C=Oに置き換えられてもよく、さらに、少なくとも1つの水素は、フッ素、塩素、ヨウ素、または水酸基に置き換えられてもよい。
【0028】
R1、R2、およびR3は、炭素数1から20の直鎖飽和アルキル、炭素数3から20の分岐状飽和アルキル、炭素数2から20の不飽和アルキル、炭素数3から20の飽和脂環式炭化水素基、炭素数2から20の不飽和脂環式炭化水素基などが挙げられる。また、これらの基において、少なくとも1つの炭素は、酸素またはイオウに置き換えられてもよく、少なくとも1つの-CH<は-N<に置き換えられてもよく、少なくとも1つの>CH2は、>C=Oに置き換えられてもよい。さらに、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素、塩素、ヨウ素、または水酸基に置き換えられてもよい。
【0029】
炭素数1から20の直鎖飽和アルキルとしては、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、n-ドデシル、n-トリデシル、n-テトラデシル、n-ペンタデシル、n-ヘキサデシル、n-ヘプタデシル、n-オクタデシル、n-ノナデシル、およびn-エイコシルなどが挙げられる。
【0030】
炭素数3から20の分岐状飽和アルキルとしては、i-プロピル、i-ブチル、t-ブチル、sec-ブチル、ネオペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、3-ペンチルなどが挙げられる。
炭素数2から20の不飽和アルキル基としては、ビニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、およびオクチニルなどが挙げられる。
【0031】
炭素数3から20の飽和脂環式炭化水素基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、アダマンチル、ノルボルニルなどが挙げられる。
【0032】
炭素数3から20の不飽和脂環式炭化水素基としては、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロへプチニル、シクロオクテニル、フェニル、ナフチルなどが挙げられる。
【0033】
原料となる不飽和カルボニル化合物として、2-ブテナール、2-エチル-2-ヘキセナール、2-エチル-2-ブテナール、2-ヘキセナールなどが例示できる。
【0034】
(対象とする生成物)
また、これらの原料から得られる飽和ホモエーテルは、式(2)で表されるエーテルである。
式(2)において、R
1、R
2、およびR
3は、原料となる式(1)におけるR
1、R
2、およびR
3の各々に対応する。
飽和ホモエーテルは、ジブチルエーテル、ビス(2-エチルヘキシル)エーテル、ビス(2-エチルブチル)エーテル、ジヘキシルエーテルなどである。
【0035】
(反応温度)
本発明の飽和ホモエーテル製造方法の反応温度は、100℃から250℃の温度範囲が好適である。反応を十分に進行させるためには100℃以上が好ましく、生成物選択率を良好に保つためには250℃以下が好ましい。更に好ましい温度範囲としては120℃から200℃の範囲である。
【0036】
(反応圧)
本反応の反応圧は、ゲージ圧で0.01MPa以上の圧力が好ましい。さらに好ましくは、0.1~10MPaであり、より好ましくは、1~5MPaである。
【0037】
(落圧)
本発明の落圧操作は、反応圧に対し、少なくとも0.01MPaの差圧があればよい。好ましい差圧は、0.1~10MPaであり、より好ましくは、1~5MPaである。
本発明の落圧は、少なくとも1回の操作でよい。反応終了まで、繰り返しての複数回の操作が好ましい。このとき、約1時間毎に行うことが効果的であり好ましい。
【実施例】
【0038】
以下、実施例により本発明の効果を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(反応装置)
反応器は日東高圧製オートクレーブ(start‐200)を用いた。反応器には水素を導入する管が設置されており、水素ガスはここから反応器へ導入される。
【0039】
(触媒)
触媒は、市販の5%パラジウム担持アルミナ(N.E.ケムキャット製、パラジウム-アルミナ)、10%パラジウムカーボン(和光純薬製、パラジウム-活性炭素Pd10%)、展開済みスポンジニッケル(東京化成製 スポンジニッケル)を用いた。
【0040】
(原料)
原料である2-エチルヘキセナールは特級試薬(和光純薬製 試薬特級)を精製せずそのまま使用した。
【0041】
[実施例1]
内容積200mlのステンレス製オートクレーブに、触媒として5%パラジウム担持アルミナ(N.E.ケムキャット製 パラジウムアルミナ)5g、2-エチルヘキセナール(和光純薬製 特級試薬)60gの各々を秤量する。オートクレーブ内を水素にて4MPaまで昇圧した後、150℃まで昇温して反応開始。反応温度に到達した時点の時間を0時間として6時間反応させた。その間、反応開始から1時間毎に反応圧を大気圧まで落とし、すぐさま4MPaまで水素により昇圧するという操作を行いながら反応を行った(以下、本操作をパージ操作という)。所定の反応時間が経過したら、オートクレーブを室温まで冷却後、大気圧まで落圧し反応液を回収し分析した。
反応生成物の同定はガスクロマトグラフ質量分析計(島津製作所製 GC/MS-TQ8040)および核磁気共鳴装置(Agilent Technologies製 VARIAN NMR System500MHz)にて行い、反応生成物の定量は、キャピラリーカラム(Agilent Technologies製 DB-1 60m)を設置したガスクロマトグラフ(島津製作所製 GC2014 FID検出器)を用いて行った。ガスクロマトグラフでの分析は、検量線補正後、2-エチルヘキセナール(以下2EHと略記)の転化率、および、ビス(2-エチルヘキシル)エーテル(以下DOEと略記)、2-エチルヘキサノール(以下OAと略記)、3-(ビス(2-エチルヘキシルオキシ)メチル)ヘプタン(以下アセタールと略記)、2-エチル-2-ヘキセニル 2-エチルヘキシルエーテル(以下、ビニルエーテルと略記)などの選択率を求めた。
結果を表1に示した。
【0042】
[実施例2]
反応時間を12時間に変更した以外は、実施例1に準じた。結果を表1に示した。
【0043】
[実施例3]
内容積300mlのステンレス製オートクレーブに、触媒として5%パラジウム担持アルミナ(N.E.ケムキャット製 パラジウムアルミナ)7.6g、2-エチルヘキセナール(和光純薬製 特級試薬)90gの各々を秤量する。オートクレーブ内を水素にて4MPaまで昇圧した後、150℃まで昇温して反応開始。反応温度に到達した時点の時間を0時間として6時間反応させた。その間、反応開始から1時間毎に反応圧を大気圧まで落とし、すぐさま4MPaまで水素により昇圧するという操作を行いながら反応を行った。所定の反応時間が経過したら、オートクレーブを室温まで冷却後、大気圧まで落圧し反応液を回収し分析した。その後の生成物の同定、定量は実施例1に則った。結果を表1に示した。
【0044】
[実施例4]
内容積1000mlのステンレス製オートクレーブに、触媒として5%パラジウム担持アルミナ(N.E.ケムキャット製 パラジウムアルミナ)136g、2-エチルヘキセナール(和光純薬製 特級試薬)820gの各々を秤量する。オートクレーブ内を水素にて4MPaまで昇圧した後、150℃まで昇温して反応開始。反応温度に到達した時点の時間を0時間として18時間反応させた。その間、反応開始から1時間毎に反応圧を大気圧まで落とし、すぐさま4MPaまで水素により昇圧するという操作を行いながら反応を行った。所定の反応時間が経過したら、オートクレーブを室温まで冷却後、大気圧まで落圧し反応液を回収し分析した。その後の生成物の同定、定量は実施例1に則った。結果を表1に示した。
【0045】
[比較例1]
反応中にパージ操作を行わなかった事以外は実施例1に準じた。結果を表1に示した。
【0046】
[比較例2]
反応中にパージ操作を行わなかった事以外は実施例2に準じた。結果を表1に示した。
【0047】
[比較例3]
触媒に10%パラジウムカーボン(和光純薬製、パラジウム-活性炭素Pd10%)を用い、反応中にパージ操作を行わなかった事以外は実施例1に準じた。結果を表1に示した。
【0048】
[比較例4]
触媒にスポンジニッケル(東京化成製 スポンジニッケル)を用い、反応温度100℃、反応圧力1MPaで行い、反応中にパージ操作を行わなかった以外は実施例1に準じた。結果を表1に示した。
【0049】
[実施例5]
内容積200mlのステンレス製オートクレーブに、触媒として5%パラジウム担持アルミナ(N.E.ケムキャット製 パラジウムアルミナ)15g、2-エチル-2-ブテナール(和光純薬製 特級試薬)60gの各々を秤量する。オートクレーブ内を水素にて4MPaまで昇圧した後、150℃まで昇温して反応開始。反応温度に到達した時点の時間を0時間として6時間反応させた。その間、反応開始から1時間毎に反応圧を大気圧まで落とし、すぐさま4MPaまで水素により昇圧するという操作を行いながら反応を行った(以下、本操作をパージ操作という)。所定の反応時間が経過したら、オートクレーブを室温まで冷却後、大気圧まで落圧し反応液を回収し分析した。
ガスクロマトグラフでの分析は、検量線補正後、2-エチル-2-ブテナール(以下2ECAと略記)の転化率、および、ビス(2-エチルブチル)エーテル(以下DEBEと略記)、2-エチルブタナール(以下2EBAと略記)、2-エチル-1-ブタノール(以下2EBOと略記)、1,1-ビス(2-エチルブトキシ)-2-エチルブタン(以下アセタールBと略記)、2-エチル-2-ブテニルー2-エチル-ブチルエーテル(以下、ビニルエーテルBと略記)などの選択率を求めた。結果を表2に示した。
【0050】
[実施例6]
反応時間を14時間まで延長して反応を行った事以外は実施例5に準じた。結果を表2に示した。
【0051】
[比較例5]
反応中にパージ操作を行わなかった事以外は実施例5に準じた。結果を表2に示した。
【0052】
【0053】
各々の実施例において、全ての実施例および比較例において基質の不飽和アルデヒドの転化率は、ほぼ100%であった一方、実施例における、飽和エーテル選択率は、比較例のそれよりも高い事が判る。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明における飽和エーテルの製造法は、不飽和アルデヒドのみを原料とし、反応の際反応ガスを落圧することにより、各々該当するエーテルを製造する工程において工程の短縮に寄与し、工業的に大変有効な方法である。