(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】酸基含有(メタ)アクリレート樹脂、硬化性樹脂組成物、硬化物、絶縁材料、ソルダーレジスト用樹脂材料及びレジスト部材
(51)【国際特許分類】
C08G 59/17 20060101AFI20221213BHJP
C08F 2/50 20060101ALI20221213BHJP
C08F 299/02 20060101ALI20221213BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20221213BHJP
G03F 7/027 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
C08G59/17
C08F2/50
C08F299/02
C08F290/06
G03F7/027 515
(21)【出願番号】P 2019009339
(22)【出願日】2019-01-23
【審査請求日】2021-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】山田 駿介
(72)【発明者】
【氏名】亀山 裕史
(72)【発明者】
【氏名】林 弘司
(72)【発明者】
【氏名】森永 邦裕
【審査官】常見 優
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-246963(JP,A)
【文献】特開2013-014675(JP,A)
【文献】国際公開第2016/148175(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/013081(WO,A1)
【文献】特開2004-085984(JP,A)
【文献】特開2002-293877(JP,A)
【文献】特開2000-109544(JP,A)
【文献】特開2000-044923(JP,A)
【文献】特開2002-069154(JP,A)
【文献】特開2004-037937(JP,A)
【文献】特開2008-231347(JP,A)
【文献】特開平11-217422(JP,A)
【文献】国際公開第2010/131648(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00 - 59/72
C08F 2/00 - 2/60
C08F290/00 -290/14
C08F299/00 -299/08
C08L 1/00 -101/16
C09D 1/00 - 10/00
101/00 -201/10
G03F 7/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基を有する芳香族化合物(A)と、
エピハロヒドリン(B)と、
不飽和一塩基酸(C)と、
多塩基酸無水物(D)と、
を必須の反応原料とする酸基含有(メタ)アクリレート樹脂であって、
前記芳香族化合物(A)が、芳香環上の置換基として少なくとも2つの水酸基を有するものであり、前記芳香族化合物(A)が有する水酸基のうち少なくとも2つが、互いにオルト位に位置
し、1,2-ジヒドロキシベンゼン及び1,2,3-トリヒドロキシベンゼン、からなる群より選ばれる1種以上であり、
前記不飽和一塩基酸(C)が、一分子中にカルボキシル基及び重合性不飽和結合を有する化合物であり、
前記芳香族化合物(A)及び前記エピハロヒドリン(B)の中間反応生成物と、前記不飽和一塩基酸(C)との反応物に更に前記多塩基酸無水物(D)を反応させたものであることを特徴とする酸基含有(メタ)アクリレート樹脂。
【請求項2】
前記中間反応生成物が、前記芳香族化合物(A)に由来する2つの隣接酸素原子を構成原子として含む環状構造を有する環状化合物(a1)を含むものである請求項
1記載の酸基含有(メタ)アクリレート樹脂。
【請求項3】
前記環状化合物(a1)の含有量が、前記中間反応生成物100gに対して、0.040~0.115molの範囲である請求項
2記載の酸基含有(メタ)アクリレート樹脂。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか1項記載の酸基含有(メタ)アクリレート樹脂と、光重合開始剤とを含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
さらに、有機溶剤と、硬化剤とを含有するものである請求項
4記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
さらに、請求項1~
3のいずれか1項記載の酸基含有(メタ)アクリレート樹脂以外の酸基及び重合性不飽和結合を有する樹脂(E)を含有するものである請求項
4記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項
4~6のいずれか1項記載の硬化性樹脂組成物の硬化反応物であることを特徴とする硬化物。
【請求項8】
請求項
4~6のいずれか1項記載の硬化性樹脂組成物からなることを特徴とする絶縁材料。
【請求項9】
請求項
4~6のいずれか1項記載の硬化性樹脂組成物からなることを特徴とするソルダーレジスト用樹脂材料。
【請求項10】
請求項
9記載のソルダーレジスト用樹脂材料からなることを特徴とするレジスト部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れたアルカリ現像性及び高い光感度を有し、硬化物における優れた弾性及び耐熱性を有する酸基含有(メタ)アクリレート樹脂、これを含有する硬化性樹脂組成物、前記硬化性樹脂組成物からなる硬化物、絶縁材料、ソルダーレジスト用樹脂材料、及びレジスト部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プリント配線基板用のソルダーレジスト用樹脂材料には、エポキシ樹脂をアクリル酸でアクリレート化した後、酸無水物を反応させて得られる酸基含有エポキシアクリレート樹脂が広く用いられている。ソルダーレジスト用樹脂材料に対する要求性能は、少ない露光量で硬化すること、アルカリ現像性に優れること、硬化物における耐熱性や強度、柔軟性、伸び、誘電特性、基材密着性等に優れることなど様々なものが挙げられる。
【0003】
従来知られているソルダーレジスト用樹脂材料としては、ノボラック型エポキシ樹脂と不飽和モノカルボン酸との反応物と、飽和または不飽和多塩基酸無水物とを反応させて得られる活性エネルギー線硬化性樹脂が知られているが(例えば、下記特許文献1参照。)、硬化物における耐熱性には優れるものの、弾性においては今後ますます高まる要求特性を満足するものではなく、昨今の市場要求に対し十分なものではなかった。
【0004】
そこで、優れたアルカリ現像性及び高い光感度を有し、硬化物における弾性及び耐熱性により一層優れた材料が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、優れたアルカリ現像性及び高い光感度を有し、硬化物における優れた弾性及び耐熱性を有する酸基含有(メタ)アクリレート樹脂、これを含有する硬化性樹脂組成物、前記硬化性樹脂組成物からなる硬化物、絶縁材料、ソルダーレジスト用樹脂材料、及びレジスト部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、水酸基を有する芳香族化合物と、エピハロヒドリンと、多塩基酸無水物とを必須の反応原料とする酸基含有(メタ)アクリレート樹脂であって、前記芳香族化合物が、芳香環上の置換基として少なくとも2つの水酸基を有するものであり、前記芳香族化合物が有する水酸基のうち少なくとも2つが、互いにオルト位に位置することを特徴とする酸基含有(メタ)アクリレート樹脂を用いることによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、水酸基を有する芳香族化合物(A)と、エピハロヒドリン(B)と、不飽和一塩基酸(C)と、多塩基酸無水物(D)と、を必須の反応原料とする酸基含有(メタ)アクリレート樹脂であって、前記芳香族化合物(A)が、芳香環上の置換基として少なくとも2つの水酸基を有するものであり、前記芳香族化合物(A)が有する水酸基のうち少なくとも2つが、互いにオルト位に位置することを特徴とする酸基含有(メタ)アクリレート樹脂、これを含有する硬化性樹脂組成物、前記硬化性樹脂組成物からなる硬化物、絶縁材料、ソルダーレジスト用樹脂材料、及びレジスト部材に関するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の酸基含有(メタ)アクリレート樹脂は、優れたアルカリ現像性及び高い光感度を有し、硬化物における優れた弾性及び耐熱性を有することから、絶縁材料、ソルダーレジスト用樹脂材料及びレジスト部材に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】合成例1で製造したエポキシ樹脂の
13C-NMRチャートである。
【
図2】合成例2で製造したエポキシ樹脂の
13C-NMRチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の酸基含有(メタ)アクリレート樹脂は、水酸基を有する芳香族化合物(A)と、エピハロヒドリン(B)と、不飽和一塩基酸(C)と、多塩基酸無水物(D)と、を必須の反応原料とすることを特徴とする。
【0012】
なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及び/またはメタクリレートを意味する。また、「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイル及び/またはメタクリロイルを意味する。さらに、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及び/またはメタクリルを意味する。
【0013】
前記水酸基を有する芳香族化合物(A)としては、芳香環上の置換基として少なくとも2つの水酸基を有するものであり、前記芳香族化合物(A)が有する水酸基のうち少なくとも2つが、互いにオルト位に位置するものである。
【0014】
前記芳香族化合物(A)としては、例えば、下記構造式(1-1)~(1-7)で表される化合物等が挙げられる。
【0015】
【0016】
上記構造式(1-1)~(1-7)において、R1は、それぞれ独立して水酸基、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数1~20のアルコキシ基、アリール基、ハロゲン原子の何れかであり、R2は、それぞれ独立して水素原子またはメチル基である。また、qは、0または1以上の整数である。なお、上記構造式における芳香環上の置換基R1の位置については、任意であり、例えば、構造式(1-2)及び(1-3)のナフタレン環においてはいずれの環上に置換していてもよく、構造式(1-4)~(1-7)では、1分子中に存在するベンゼン環のいずれの環上に置換していてもよいことを示し、1分子中におけるベンゼン環上の置換基の個数がq+2であることを示している。
【0017】
上記構造式(1-1)~(1-7)で表される化合物の中でも、優れたアルカリ現像性及び高い光感度を有し、かつ優れた弾性及び耐熱性を有する硬化物を形成可能な酸基含有(メタ)アクリレート樹脂が得られることから、構造式(1-1)において、qが0であるジヒドロキシベンゼン、構造式(1-1)において、qが1であるトリヒドロキシベンゼンが好ましく、さらに具体的には、1位と2位に水酸基を有する1,2-ジヒドロキシベンゼン(以下、「カテコール」と称することがある。)、1位と2位と3位とに水酸基を有する1,2,3-トリヒドロキシベンゼン(以下、「ピロガロール」と称することがある。)、または1位と2位と4位とに水酸基を有する1,2,4-トリヒドロキシベンゼンがより好ましく、ピロガロールまたは1,2,4-トリヒドロキシベンゼンが特に好ましい。
【0018】
また、前記芳香族化合物(A)としては、前記構造式(1-1)~(1-7)で表される化合物の1種または2種以上を反応原料とするノボラック型フェノール樹脂なども用いることができる。
【0019】
これらの芳香族化合物(A)は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0020】
前記エピハロヒドリン(B)としては、例えば、エピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン等が挙げられる。これらのエピハロヒドリン(B)は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。これらの中でも、反応を制御しやすい観点から、エピクロルヒドリンが好ましい。
【0021】
前記不飽和一塩基酸(C)とは、一分子中に酸基及び重合性不飽和結合を有する化合物をいう。前記酸基としては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、燐酸基等が挙げられる。前記不飽和一塩基酸(C)としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、α-シアノ桂皮酸、β-スチリルアクリル酸、β-フルフリルアクリル酸等が挙げられる。また、前記不飽和一塩基酸のエステル化物、酸ハロゲン化物、酸無水物等も用いることができる。これらの不飽和一塩基酸(C)は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。また、これらの中でも、優れたアルカリ現像性及び高い光感度を有し、かつ優れた弾性及び耐熱性を有する硬化物を形成可能な酸基含有(メタ)アクリレート樹脂が得られることから、アクリル酸、メタクリル酸が好ましい。
【0022】
前記多塩基酸無水物(D)としては、例えば、無水フタル酸、無水コハク酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、オクテニル無水コハク酸、テトラプロぺニル無水コハク酸等が挙げられる。これらの多塩基酸無水物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。また、これらの中でも、優れたアルカリ現像性及び高い光感度を有し、かつ優れた弾性及び耐熱性を有する硬化物を形成可能な酸基含有(メタ)アクリレート樹脂が得られることから、テトラヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸が好ましい。
【0023】
本発明の酸基含有(メタ)アクリレート樹脂の製造方法としては、特に限定されず、どのような方法にて製造してもよい。例えば、反応原料の全てを一括で反応させる方法で製造してもよいし、反応原料を順次反応させる方法で製造してもよい。なかでも、反応の制御が容易であることから、前記芳香族化合物(A)と前記エピハロヒドリン(B)とを反応させ(工程1)、工程1で得られた中間反応生成物(以下、「エポキシ樹脂(I)」と称することがある。)と、前記不飽和一塩基酸(C)とを反応させ(工程2)、工程2の生成物と前記多塩基酸無水物(D)とを反応させる(工程3)方法で製造することが好ましい。
【0024】
前記工程1としては、前記芳香族化合物(A)と前記エピハロヒドリン(B)との反応である。該反応は、目的とする中間反応生成物、即ちエポキシ樹脂(I)の収率の観点より、第4級オニウム塩及び/または塩基性化合物の存在下で反応させる工程1aと、前記工程1aで得られる反応物を、塩基性化合物の存在下で閉環させる工程1bとを有することが好ましい。ここで、前記芳香族化合物(A)と前記エピハロヒドリン(B)とを反応させると、前記芳香族化合物(A)が有する水酸基がそれぞれグリシジルエーテル基となる反応が進行するものであるが、その反応と同時にグリシジルエーテル基と未反応の水酸基との反応によってオリゴマー化が進行する、あるいは、エピハロヒドリンが付加反応する際、更にはそれの閉環工程等の種々の反応条件によって、様々な反応物が得られ、これらが副生成物として含まれることになる。これらの副生成物は反応系、反応生成物から除去することも可能であるが、単一成分(例えば、カテコールの場合のジグリシジルエーテル、ピロガロールの場合のトリグリシジルエーテル)のみを取り出す工程は、工業的には煩雑な工程であり、製品コストにも直結することから、得られる硬化物に悪影響を与えない範囲で副生成物を含んだ状態でエポキシ樹脂として使用されることが多い。
【0025】
また、前記単一成分(例えば、カテコールの場合のジグリシジルエーテル、ピロガロールの場合のトリグリシジルエーテル)は結晶性が高く、本発明の酸基含有(メタ)アクリレート樹脂、あるいは硬化性樹脂組成物としたときの取扱上の問題も生じることがある。これらの観点から、前述のような副生成物を一定量含むエポキシ樹脂とすることが、取扱上の観点、あるいは、得られる硬化物の弾性及び耐熱性の観点から好ましい。
【0026】
このような観点から、前記工程1で得られるエポキシ樹脂(I)としては、前記芳香族化合物(A)に由来する2つの隣接酸素原子を構成原子として含む環状構造を有する環状化合物(a1)を含むことが好ましい。
【0027】
前記第4級オニウム塩としては、例えば、第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩等が挙げられる。これらの第4級オニウム塩は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0028】
前記第4級アンモニウム塩としては、例えば、テトラメチルアンモニウムカチオン、メチルトリエチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、トリブチルメチルアンモニウムカチオン、テトラブチルアンモニウムカチオン、フェニルトリメチルアンモニウムカチオン、ベンジルトリメチルアンモニウムカチオン、フェニルトリエチルアンモニウムカチオン、ベンジルトリエチルアンモニウムカチオン、ベンジルトリブチルアンモニウムカチオンの塩化物塩、テトラメチルアンモニウムカチオン、トリメチルプロピルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、テトラブチルアンモニウムカチオンの臭化物塩等が挙げられる。
【0029】
前記第4級ホスホニウム塩としては、例えば、テトラエチルホスホニウムカチオン、テトラブチルホスホニウムカチオン、メチルトリフェニルホスホニウムカチオン、テトラフェニルホスホニウムカチオン、エチルトリフェニルホスホニウムカチオン、ブチルトリフェニルホスホニウムカチオン、ベンジルトリフェニルホスホニウムカチオンの臭素化物塩等が挙げられる。
【0030】
これらの第4級オニウム塩の中でもテトラメチルアンモニウムカチオン、ベンジルトリメチルアンモニウムカチオン、ベンジルトリエチルアンモニウムカチオンの塩化物塩、テトラブチルアンモニウムカチオンの臭化物塩が好ましい。
【0031】
また、前記第4級オニウム塩の使用量としては、反応が良好に進行し、また生成物中への残留を低減できる観点から、前記芳香族化合物(A)とエピハロヒドリン(B)との合計質量100質量部に対して0.15~5質量部であることが好ましく、0.18~3質量部であることがより好ましい。
【0032】
前記塩基性化合物としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。これらの塩基性化合物は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。また、これらの中でも、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムが好ましい。
【0033】
また、前記塩基性化合物の添加量としては、反応が良好に進行し、また生成物中への残留を低減できる観点から、前記芳香族化合物(A)が有する水酸基1モルに対して0.01~0.3モルであることが好ましく、0.02~0.2モルであることがより好ましい。
【0034】
前記第4級オニウム、前記塩基性化合物は、それぞれ単独で用いることも、2種以上を併用してもよい。
【0035】
前記工程1aの反応は、主に前記芳香族化合物が有する水酸基にエピハロヒドリンが付加する反応である。前記工程1aの反応温度としては、20~80℃であることが好ましく、40~75℃であることがより好ましい。前記工程1aの反応時間としては、0.5時間以上であることが好ましく、1~50時間であることがより好ましい。
【0036】
また、前記工程1aの反応は、必要に応じて有機溶剤中で行っても良い。前記有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン等のケトン溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキソラン等の環状エーテル溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル溶剤;トルエン、キシレン、ソルベントナフサ等の芳香族溶剤;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族溶剤;カルビトール、セロソルブ、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール溶剤;アルキレングリコールモノアルキルエーテル、ジアルキレングリコールモノアルキルエーテル、ジアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート等のグリコールエーテル溶剤;メトキシプロパノール、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジメチルスルホン;ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらの有機溶剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0037】
前記有機溶剤を用いる場合、その使用量は、エピハロヒドリン(B)100質量部に対して、5~150質量部の範囲であることが好ましく、7.5~100質量部の範囲であることがより好ましく、10~50質量部の範囲であることがさらに好ましい。
【0038】
前記工程1bは、前記工程1aで得られる反応物を、塩基性化合物の存在下で閉環させる工程であり、前記工程1aで得られる反応物をそのまま、あるいは、系中に存在する未反応のエピハロヒドリンや反応溶媒の一部または全部を除去してから、工程1bを行ってもよい。
【0039】
前記工程1bで用いる塩基性化合物としては、上述の塩基性化合物と同様のものを用いることができ、前記塩基性化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0040】
前記塩基性化合物の使用量は、特に制限されないが、前記芳香族化合物(A)が有する水酸基1モルに対して、0.8~1.5モルであることが好ましく、0.9~1.3モルであることがより好ましい。前記塩基性化合物の添加量が0.8モル以上であると、工程1bの閉環反応が好適に進行しうることから好ましい。一方、前記塩基性化合物の添加量が1.5モル以下であると、副反応を防止または抑制できることから好ましい。なお、工程1aで塩基性化合物を用いる場合は、工程1aで用いる量も含めて上述の使用量とすることが好ましい。
【0041】
前記工程1bの反応温度としては、30~120℃であることが好ましく、25~80℃であることがより好ましい。反応時間としては、0.5~4時間であることが好ましく、1~3時間であることがより好ましい。
【0042】
前記工程1bを行った後、必要に応じて得られる反応生成物の精製等を行うことができる。
【0043】
前記環状化合物(a1)としては、特に限定されるものではないが、例えば、下記構造式で表される化合物等が挙げられる。
【0044】
【0045】
式中、Rはそれぞれ独立して水素原子またはメチル基であり、R1はそれぞれ独立して水酸基、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数1~20のアルコキシ基、アリール基、ハロゲン原子の何れかであり、mは0または1~4の整数、nは0または1~3の整数である。
【0046】
【0047】
式中、Rはそれぞれ独立して水素原子またはメチル基であり、R1はそれぞれ独立して水酸基、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数1~20のアルコキシ基、アリール基、ハロゲン原子の何れかであり、mは0または1~6の整数である。
【0048】
【0049】
式中、Rはそれぞれ独立して水素原子またはメチル基であり、R1はそれぞれ独立して水酸基、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数1~20のアルコキシ基、アリール基、ハロゲン原子の何れかであり、mは0または1~8の整数である。
【0050】
【0051】
式中、Rはそれぞれ独立して水素原子またはメチル基であり、R1はそれぞれ独立して水酸基、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数1~20のアルコキシ基、アリール基、ハロゲン原子の何れかであり、R2はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基であり、mは0または1~8の整数である。
【0052】
前記環状化合物(a1)は、単独で含まれていても、2種以上を組み合わせて含まれていてもよい。
【0053】
前記環状化合物(a1)の含有量は、溶剤溶解性に優れ、優れた弾性及び耐熱性を有する硬化物を形成可能な酸基含有(メタ)アクリレート樹脂が得られることから、前記芳香族化合物(A)100gに対して、好ましくは0.040~0.115molであり、特に好ましくは0.050~0.115molであり、0.070~0.115molが最も好ましい。また、環状化合物の含有量がこの範囲で含まれることにより、結晶化を抑制する効果が高くなる。なお、本明細書において、「環状化合物の含有量」は、実施例に記載の方法で測定された値である。また、環状化合物を2種以上含む場合には、「環状化合物の含有量」は、これらの総含有量である。
【0054】
前記環状化合物(a1)の含有量は、前記エピハロヒドリン(B)との反応あるいは閉環工程における原料の仕込み比率、触媒、溶剤種並びに反応条件を適宜調整することにより制御することができる。
【0055】
前記工程2としては、前記工程1で得られたエポキシ樹脂(I)と、前記不飽和一塩基酸(C)との反応である。その反応割合は、前記エポキシ樹脂(I)が有するエポキシ基1モルに対する、前記不飽和一塩基酸(C)が有する酸基のモル数が、0.7~1.2となる範囲が好ましく、0.9~1.1となる範囲がより好ましい。前記工程2の反応は、例えば、適当なエステル化触媒の存在下、80~140℃程度の温度条件下で加熱撹拌して行うことができる。また、前記工程2の反応は、必要に応じて有機溶剤中で行ってもよい。
【0056】
前記エステル化触媒としては、例えば、トリメチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等のリン化合物、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物、2-メチルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-イソブチル-2-メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物等が挙げられる。これらのエステル化触媒は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0057】
前記有機溶剤としては、上述の有機溶剤と同様のものを用いることができ、前記有機溶剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。また、前記有機溶剤の使用量は、反応効率が良好となることから、反応原料の合計質量に対し0.1~5倍量程度の範囲で用いることが好ましい。
【0058】
前記工程3としては、前記工程2の生成物と前記多塩基酸無水物(D)との反応である。該反応は、主に、前記工程2で得られた生成物中の水酸基と、前記多塩基酸無水物(D)とを反応させるものである。前記工程2の生成物中には、例えば、前記工程2の反応において生じた水酸基等が存在する。前記多塩基酸無水物(D)の反応割合は、生成物である酸基含有(メタ)アクリレート樹脂の酸価が60~120mgKOH/g程度になるよう調整されることが好ましい。工程3の反応は、例えば、適当なエステル化触媒の存在下、80~140℃程度の温度条件下で加熱撹拌して行うことができる。工程2と工程3とを連続して行う場合、エステル化触媒は追加しなくてもよいし、適宜追加してもよい。また、反応は必要に応じて有機溶剤中で行ってもよい。なお、前記エステル化触媒及び有機溶剤は、上述のエステル化触媒及び有機溶剤と同様のものを用いることができ、それらは、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。なお、本願発明において酸価はJIS K 0070(1992)の中和滴定法にて測定される値である。
【0059】
本発明の酸基含有(メタ)アクリレート樹脂は、分子構造中に重合性の(メタ)アクリロイル基を有することから、例えば、光重合開始剤を添加することにより硬化性樹脂組成物として利用することができる。
【0060】
前記光重合開始剤は、照射する活性エネルギー線の種類等により適切なものを選択して用いればよい。また、アミン化合物、尿素化合物、含硫黄化合物、含燐化合物、含塩素化合物、ニトリル化合物等の光増感剤と併用してもよい。光重合開始剤の具体例としては、例えば、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン等のアルキルフェノン系光重合開始剤;2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤;ベンゾフェノン化合物等の分子内水素引き抜き型光重合開始剤等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0061】
前記光重合開始剤としては、例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、チオキサントン及びチオキサントン誘導体、2,2′-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ジフェニル(2,4,6-トリメトキシベンゾイル)ホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン等が挙げられる。
【0062】
前記その他の光重合開始剤の市販品としては、例えば、「Omnirad-1173」、「Omnirad-184」、「Omnirad-127」、「Omnirad-2959」、「Omnirad-369」、「Omnirad-379」、「Omnirad-907」、「Omnirad-4265」、「Omnirad-1000」、「Omnirad-651」、「Omnirad-TPO」、「Omnirad-819」、「Omnirad-2022」、「Omnirad-2100」、「Omnirad-754」、「Omnirad-784」、「Omnirad-500」、「Omnirad-81」(IGM社製)、「カヤキュア-DETX」、「カヤキュア-MBP」、「カヤキュア-DMBI」、「カヤキュア-EPA」、「カヤキュア-OA」(日本化薬株式会社製)、「バイキュア-10」、「バイキュア-55」(ストウファ・ケミカル社製)、「トリゴナルP1」(アクゾ社製)、「サンドレイ1000」(サンドズ社製)、「ディープ」(アプジョン社製)、「クオンタキュア-PDO」、「クオンタキュア-ITX」、「クオンタキュア-EPD」(ワードブレンキンソップ社製)、「Runtecure-1104」(Runtec社製)等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0063】
前記光重合開始剤の添加量は、例えば、硬化性樹脂組成物の溶剤以外の成分の合計に対し0.05~15質量%の範囲であることが好ましく、0.1~10質量%の範囲であることがより好ましい。
【0064】
本発明の硬化性樹脂組成物は、前述した酸基含有(メタ)アクリレート樹脂以外のその他の樹脂成分を含有しても良い。前記その他の樹脂成分としては、酸基及び重合性不飽和結合を有する樹脂(E)、各種の(メタ)アクリレートモノマー等が挙げられる。
【0065】
前記酸基及び重合性不飽和結合を有する樹脂(E)としては、樹脂中に酸基と重合性不飽和結合を有するものであれば何れでもよく、例えば、酸基及び重合性不飽和結合を有するエポキシ樹脂、酸基及び重合性不飽和結合を有するウレタン樹脂、酸基及び重合性不飽和結合を有するアクリル樹脂、酸基及び重合性不飽和結合を有するアミドイミド樹脂、酸基及び重合性不飽和結合を有するアクリルアミド樹脂等が挙げられる。
【0066】
前記酸基としては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、燐酸基等が挙げられる。
【0067】
前記酸基及び重合性不飽和結合を有するエポキシ樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和一塩基酸、及び多塩基酸無水物を必須の反応原料とする酸基含有エポキシ(メタ)アクリレート樹脂や、エポキシ樹脂、不飽和一塩基酸、多塩基酸無水物、及びポリイソシアネート化合物を反応原料とする酸基及びウレタン基含有エポキシ(メタ)アクリレート樹脂や、エポキシ樹脂、不飽和一塩基酸、多塩基酸無水物、ポリイソシアネート化合物、及び水酸基含有(メタ)アクリレート化合物を反応原料とする酸基及びウレタン基含有エポキシ(メタ)アクリレート樹脂などが挙げられる。
【0068】
前記エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、フェニレンエーテル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン-フェノール付加反応型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、キサンテン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂、トリヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0069】
前記不飽和一塩基酸とは、上述の不飽和一塩基酸(C)と同様のものを用いることができ、前記不飽和一塩基酸は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0070】
前記多塩基酸無水物としては、上述の多塩基酸無水物(D)と同様のものを用いることができ、前記多塩基酸無水物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0071】
前記ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ブタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物;ノルボルナンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート化合物;トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、4,4’-ジイソシアナト-3,3’-ジメチルビフェニル、o-トリジンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物;下記構造式(2)で表される繰り返し構造を有するポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート;これらのイソシアヌレート変性体、ビウレット変性体、アロファネート変性体等が挙げられる。また、これらのポリイソシアネート化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0072】
【化6】
[式中、R
1はそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~6の炭化水素基の何れかである。R
2はそれぞれ独立に炭素原子数1~4のアルキル基、または構造式(2)で表される構造部位と*印が付されたメチレン基を介して連結する結合点の何れかである。lは0または1~3の整数であり、mは1~15の整数である。]
【0073】
前記水酸基含有(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、前記各種の水酸基含有(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)オキシエチレン鎖、(ポリ)オキシプロピレン鎖、(ポリ)オキシテトラメチレン鎖等の(ポリ)オキシアルキレン鎖を導入した(ポリ)オキシアルキレン変性体や、前記各種の水酸基含有(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)ラクトン構造を導入したラクトン変性体等も用いることができる。これらの水酸基含有(メタ)アクリレート化合物は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0074】
前記酸基及び重合性不飽和結合を有するエポキシ樹脂の製造方法としては、特に限定されず、どのような方法で製造してもよい。前記酸基及び重合性不飽和結合を有するエポキシ樹脂の製造においては、必要に応じて有機溶剤中で行ってもよく、また、必要に応じて塩基性触媒を用いてもよい。
【0075】
前記有機溶剤としては、上述の有機溶剤と同様のものを用いることができ、前記有機溶剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0076】
前記塩基性触媒としては、例えば、N-メチルモルフォリン、ピリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5(DBN)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、トリ-n-ブチルアミンもしくはジメチルベンジルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、1,4-ジエチルイミダゾール、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(N-フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等のアミン化合物類;トリオクチルメチルアンモニウムクロライド、トリオクチルメチルアンモニウムアセテート等の四級アンモニウム塩類;トリメチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類;テトラメチルホスホニウムクロライド、テトラエチルホスホニウムクロライド、テトラプロピルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムブロマイド、トリメチル(2-ヒドロキシルプロピル)ホスホニウムクロライド、トリフェニルホスホニウムクロライド、ベンジルホスホニウムクロライド等のホスホニウム塩類;ジブチル錫ジラウレート、オクチル錫トリラウレート、オクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジネオデカノエート、ジブチル錫ジアセテート、オクチル酸錫、1,1,3,3-テトラブチル-1,3-ドデカノイルジスタノキサン等の有機錫化合物;オクチル酸亜鉛、オクチル酸ビスマス等の有機金属化合物;オクタン酸錫等の無機錫化合物;無機金属化合物などが挙げられる。これらの塩基性触媒は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0077】
前記酸基及び重合性不飽和結合を有するウレタン樹脂としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物、カルボキシル基含有ポリオール化合物、及び必要に応じて多塩基酸無水物、前記カルボキシル基含有ポリオール化合物以外のポリオール化合物とを反応させて得られたものや、ポリイソシアネート化合物、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物、多塩基酸無水物、及びカルボキシル基含有ポリオール化合物以外のポリオール化合物とを反応させて得られたもの等が挙げられる。
【0078】
前記ポリイソシアネート化合物としては、上述のポリイソシアネート化合物と同様のものを用いることができ、前記ポリイソシアネート化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0079】
前記水酸基含有(メタ)アクリレート化合物としては、上述の水酸基含有(メタ)アクリレート化合物と同様のものを用いることができ、前記水酸基含有(メタ)アクリレート化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0080】
前記カルボキシル基含有ポリオール化合物としては、例えば、2,2-ジメチロールプロピオン酸、2,2-ジメチロールブタン酸、2,2-ジメチロール吉草酸等が挙げられる。前記カルボキシル基含有ポリオール化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0081】
前記多塩基酸無水物としては、上述の多塩基酸無水物(D)と同様のものを用いることができ、前記多塩基酸無水物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0082】
前記カルボキシル基含有ポリオール化合物以外のポリオール化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の脂肪族ポリオール化合物;ビフェノール、ビスフェノール等の芳香族ポリオール化合物;前記各種のポリオール化合物の分子構造中に(ポリ)オキシエチレン鎖、(ポリ)オキシプロピレン鎖、(ポリ)オキシテトラメチレン鎖等の(ポリ)オキシアルキレン鎖を導入した(ポリ)オキシアルキレン変性体;前記各種のポリオール化合物の分子構造中に(ポリ)ラクトン構造を導入したラクトン変性体等が挙げられる。前記カルボキシル基含有ポリオール化合物以外のポリオール化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0083】
前記酸基及び重合性不飽和結合を有するウレタン樹脂の製造方法としては、特に限定されず、どのような方法で製造してもよい。前記酸基及び重合性不飽和結合を有するウレタン樹脂の製造においては、必要に応じて有機溶剤中で行ってもよく、また、必要に応じて塩基性触媒を用いてもよい。
【0084】
前記有機溶剤としては、上述の有機溶剤と同様のものを用いることができ、前記有機溶剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0085】
前記塩基性触媒としては、上述の塩基性触媒と同様のものを用いることができ、前記塩基性触媒は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0086】
前記酸基及び重合性不飽和結合を有するアクリル樹脂としては、例えば、水酸基やカルボキシル基、イソシアネート基、グリシジル基等の反応性官能基を有する(メタ)アクリレート化合物(α)を必須の成分として重合させて得られるアクリル樹脂中間体に、これらの官能基と反応し得る反応性官能基を有する(メタ)アクリレート化合物(β)をさらに反応させることにより(メタ)アクリロイル基を導入して得られる反応生成物や、前記反応生成物中の水酸基に多塩基酸無水物を反応させて得られるもの等が挙げられる。
【0087】
前記アクリル樹脂中間体は、前記(メタ)アクリレート化合物(α)の他、必要に応じてその他の重合性不飽和基含有化合物を共重合させたものであってもよい。前記その他の重合性不飽和基含有化合物は、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等の脂環式構造含有(メタ)アクリレート;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチルアクリレート等の芳香環含有(メタ)アクリレート;3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシリル基含有(メタ)アクリレート;スチレン、α-メチルスチレン、クロロスチレン等のスチレン誘導体等が挙げられる。これらは単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0088】
前記(メタ)アクリレート化合物(β)は、前記(メタ)アクリレート化合物(α)が有する反応性官能基と反応し得るものであれば特に限定されないが、反応性の観点から以下の組み合わせであることが好ましい。即ち、前記(メタ)アクリレート化合物(α)として水酸基含有(メタ)アクリレートを用いた場合には、(メタ)アクリレート化合物(β)としてイソシアネート基含有(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。前記(メタ)アクリレート化合物(α)としてカルボキシル基含有(メタ)アクリレートを用いた場合には、(メタ)アクリレート化合物(β)としてグリシジル基含有(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。前記(メタ)アクリレート化合物(α)としてイソシアネート基含有(メタ)アクリレートを用いた場合には、(メタ)アクリレート化合物(β)として水酸基含有(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。前記(メタ)アクリレート化合物(α)としてグリシジル基含有(メタ)アクリレートを用いた場合には、(メタ)アクリレート化合物(β)としてカルボキシル基含有(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。前記(メタ)アクリレート化合物(β)は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0089】
前記多塩基酸無水物は、上述の多塩基酸無水物(D)と同様のものを用いることができ、前記多塩基酸無水物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0090】
前記酸基及び重合性不飽和結合を有するアクリル樹脂の製造方法としては、特に限定されず、どのような方法で製造してもよい。前記酸基及び重合性不飽和結合を有するアクリル樹脂の製造においては、必要に応じて有機溶剤中で行ってもよく、また、必要に応じて塩基性触媒を用いてもよい。
【0091】
前記有機溶剤としては、上述の有機溶剤と同様のものを用いることができ、前記有機溶剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0092】
前記塩基性触媒としては、上述の塩基性触媒と同様のものを用いることができ、前記塩基性触媒は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0093】
前記酸基及び重合性不飽和結合を有するアミドイミド樹脂としては、例えば、酸基及び/または酸無水物基を有するアミドイミド樹脂と、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物及び/またはエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物と、必要に応じて、水酸基、カルボキシル基、イソシアネート基、グリシジル基、及び酸無水物基からなる群より選ばれる1種以上の反応性官能基を有する化合物を反応させて得られるものが挙げられる。なお、前記反応性官能基を有する化合物は、(メタ)アクリロイル基を有していてもよいし、有していなくてもよい。
【0094】
前記アミドイミド樹脂としては、酸基または酸無水物基のどちらか一方のみを有するものであってもよいし、両方を有するものであってもよい。水酸基含有(メタ)アクリレート化合物や(メタ)アクリロイル基含有エポキシ化合物との反応性や反応制御の観点から、酸無水物基を有するものであることが好ましく、酸基と酸無水物基との両方を有するものであることがより好ましい。前記アミドイミド樹脂の固形分酸価は、中性条件下、即ち、酸無水物基を開環させない条件での測定値が60~350mgKOH/gの範囲であることが好ましい。他方、水の存在下等、酸無水物基を開環させた条件での測定値が61~360mgKOH/gの範囲であることが好ましい。
【0095】
前記アミドイミド樹脂としては、例えば、ポリイソシアネート化合物と、多塩基酸無水物とを反応原料として得られるものが挙げられる。
【0096】
前記ポリイソシアネート化合物としては、上述のポリイソシアネート化合物と同様のものを用いることができ、前記ポリイソシアネート化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0097】
前記多塩基酸無水物としては、上述の多塩基酸無水物(D)と同様のものを用いることができ、前記多塩基酸無水物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0098】
また、前記アミドイミド樹脂は、必要に応じて、前記ポリイソシアネート化合物及び多塩基酸無水物以外に、多塩基酸を反応原料として併用することもできる。
【0099】
前記多塩基酸としては、一分子中にカルボキシル基を2つ以上有する化合物であれば何れのものも用いることができる。例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸、シクロヘキサントリカルボン酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸、メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、ビフェニルトリカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸等が挙げられる。また、前記多塩基酸としては、例えば、共役ジエン系ビニルモノマーとアクリロニトリルとの共重合体であって、その分子中にカルボキシル基を有する重合体も用いることができる。これらの多塩基酸は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0100】
前記水酸基含有(メタ)アクリレート化合物としては、上述の水酸基含有(メタ)アクリレート化合物と同様のものを用いることができ、前記水酸基含有(メタ)アクリレート化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0101】
前記エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物としては、分子構造中に(メタ)アクリロイル基とエポキシ基とを有するものであれば他の具体構造は特に限定されず、多種多様な化合物を用いることができる。例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、エポキシシクロへキシルメチル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有(メタ)アクリレートモノマー;ジヒドロキシベンゼンジグリシジルエーテル、ジヒドロキシナフタレンジグリシジルエーテル、ビフェノールジグリシジルエーテル、ビスフェノールジグリシジルエーテル等のジグリシジルエーテル化合物のモノ(メタ)アクリレート化物等が挙げられる。これらのエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。これらの中でも、反応の制御が容易となることから、エポキシ基を1つ有する(メタ)アクリレート化合物が好ましく、優れたアルカリ現像性及び高い光感度を有し、かつ優れた弾性及び耐熱性を有する硬化物を形成可能な酸基含有(メタ)アクリレート樹脂が得られることから、グリシジル基含有(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。また、前記グリシジル基含有(メタ)アクリレートモノマーの分子量は500以下であることが好ましい。さらに、前記エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物の総質量に対する前記グリシジル基含有(メタ)アクリレートモノマーの割合が70質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。
【0102】
前記酸基及び重合性不飽和結合を有するアミドイミド樹脂の製造方法としては、特に限定されず、どのような方法で製造してもよい。前記酸基及び重合性不飽和結合を有するアミドイミド樹脂の製造においては、必要に応じて有機溶剤中で行ってもよく、また、必要に応じて塩基性触媒を用いてもよい。
【0103】
前記有機溶剤としては、上述の有機溶剤と同様のものを用いることができ、前記有機溶剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0104】
前記塩基性触媒としては、上述の塩基性触媒と同様のものを用いることができ、前記塩基性触媒は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0105】
前記酸基及び重合性不飽和結合を有するアクリルアミド樹脂としては、例えば、フェノール性水酸基含有化合物と、アルキレンオキサイド及び/またはアルキレンカーボネートと、N-アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド化合物と、多塩基酸無水物と、必要に応じて不飽和一塩基酸とを反応させて得られたものが挙げられる。
【0106】
前記フェノール性水酸基含有化合物としては、分子内にフェノール性水酸基を少なくとも2つ有する化合物をいう。前記分子内にフェノール性水酸基を少なくとも2つ有する化合物としては、例えば、下記構造式(3-1)~(3-4)で表される化合物が挙げられる。
【0107】
【0108】
上記構造式(3-1)~(3-4)において、R1は、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数1~20のアルコキシ基、アリール基、ハロゲン原子の何れかであり、R2は、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基である。また、pは、0または1以上の整数であり、好ましくは0または1~3の整数であり、より好ましくは0または1であり、さらに好ましくは0である。qは、2以上の整数であり、好ましくは、2または3である。なお、上記構造式における芳香環上の置換基の位置については、任意であり、例えば、構造式(3-2)のナフタレン環においてはいずれの環上に置換していてもよく、構造式(3-3)では、1分子中に存在するベンゼン環のいずれの環上に置換していてもよく、構造式(3-4)では、1分子中に存在するベンゼン環のいずれかの環状に置換していてもよいことを示し、1分子中における置換基の個数がp及びqであることを示している。
【0109】
また、前記フェノール性水酸基含有化合物としては、例えば、分子内にフェノール性水酸基を1つ有する化合物と下記構造式(x-1)~(x-5)の何れかで表される化合物とを必須の反応原料とする反応生成物や、分子内にフェノール性水酸基を少なくとも2つ有する化合物と下記構造式(x-1)~(x-5)の何れかで表される化合物とを必須の反応原料とする反応生成物なども用いることができる。また、分子内にフェノール性水酸基を1つ有する化合物の1種または2種以上を反応原料とするノボラック型フェノール樹脂、分子内にフェノール性水酸基を少なくとも2つ有する化合物の1種または2種以上を反応原料とするノボラック型フェノール樹脂なども用いることができる。
【0110】
【化8】
[式(x-1)中、hは0または1である。式(x-2)~(x-5)中、R
3は、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数1~20のアルコキシ基、アリール基、ハロゲン原子の何れかであり、iは、0または1~4の整数である。式(x-2)、(x-3)及び(x-5)中、Zは、ビニル基、ハロメチル基、ヒドロキシメチル基、アルキルオキシメチル基の何れかである。式(x-5)中、Yは、炭素原子数1~4のアルキレン基、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基の何れかであり、jは1~4の整数である。]
【0111】
前記分子内にフェノール性水酸基を1つ有する化合物としては、例えば、下記構造式(4-1)~(4-4)で表される化合物等が挙げられる。
【0112】
【0113】
上記構造式(4-1)~(4-4)において、R4は、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数1~20のアルコキシ基、アリール基、ハロゲン原子の何れかであり、R5は、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基である。また、pは、0または1以上の整数であり、好ましくは0または1~3の整数であり、より好ましくは0または1であり、さらに好ましくは0である。なお、上記構造式における芳香環上の置換基の位置については、任意であり、例えば、構造式(4-2)のナフタレン環においてはいずれの環上に置換していてもよく、構造式(4-3)では、1分子中に存在するベンゼン環のいずれの環上に置換していてもよく、構造式(4-4)では、1分子中に存在するベンゼン環のいずれかの環状に置換していてもよいことを示している。
【0114】
前記分子内にフェノール性水酸基を少なくとも2つ有する化合物としては、上述の構造式(3-1)~(3-4)で表される化合物を用いることができる。
【0115】
これらのフェノール性水酸基含有化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0116】
前記アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、ペンチレンオキサイド等が挙げられる。これらの中でも、優れたアルカリ現像性及び高い光感度を有し、かつ優れた弾性及び耐熱性を有する硬化物を形成可能な硬化性樹脂組成物が得られることから、エチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドが好ましい。前記アルキレンオキサイドは、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0117】
前記アルキレンカーボネートとしては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ペンチレンカーボネート等が挙げられる。これらの中でも、優れたアルカリ現像性及び高い光感度を有し、かつ優れた弾性及び耐熱性を有する硬化物を形成可能な硬化性樹脂組成物が得られることから、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートが好ましい。前記アルキレンカーボネートは、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0118】
前記N-アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド化合物としては、例えば、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-エトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシエチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。前記N-アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0119】
前記多塩基酸無水物としては、上述の多塩基酸無水物(D)と同様のものを用いることができ、前記多塩基酸無水物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0120】
前記不飽和一塩基酸としては、上述の不飽和一塩基酸(C)と同様のものを用いることができ、前記不飽和一塩基酸は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0121】
前記酸基及び重合性不飽和結合を有するアクリルアミド樹脂の製造方法としては、特に限定されず、どのような方法で製造してもよい。前記酸基及び重合性不飽和結合を有するアクリルアミド樹脂の製造においては、必要に応じて有機溶剤中で行ってもよく、また、必要に応じて塩基性触媒及び酸性触媒を用いてもよい。
【0122】
前記有機溶剤としては、上述の有機溶剤と同様のものを用いることができ、前記有機溶剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0123】
前記塩基性触媒としては、上述の塩基性触媒と同様のものを用いることができ、前記塩基性触媒は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0124】
前記酸性触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、シュウ酸等の有機酸、三フッ化ホウ素、無水塩化アルミニウム、塩化亜鉛等のルイス酸などが挙げられる。これらの酸性触媒は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0125】
前記酸基及び重合性不飽和結合を有する樹脂(E)の使用量は、本発明の酸基含有(メタ)アクリレート樹脂100質量部に対して、10~900質量部の範囲が好ましい。
【0126】
前記各種の(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート等の脂肪族モノ(メタ)アクリレート化合物;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチルモノ(メタ)アクリレート等の脂環型モノ(メタ)アクリレート化合物;グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート等の複素環型モノ(メタ)アクリレート化合物;ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェニルベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、ベンジルベンジル(メタ)アクリレート、フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香族モノ(メタ)アクリレート化合物等のモノ(メタ)アクリレート化合物:前記各種のモノ(メタ)アクリレートモノマーの分子構造中に(ポリ)オキシエチレン鎖、(ポリ)オキシプロピレン鎖、(ポリ)オキシテトラメチレン鎖等のポリオキシアルキレン鎖を導入した(ポリ)オキシアルキレン変性モノ(メタ)アクリレート化合物;前記各種のモノ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)ラクトン構造を導入したラクトン変性モノ(メタ)アクリレート化合物;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等の脂肪族ジ(メタ)アクリレート化合物;1,4-シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ノルボルナンジ(メタ)アクリレート、ノルボルナンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート等の脂環型ジ(メタ)アクリレート化合物;ビフェノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールジ(メタ)アクリレート等の芳香族ジ(メタ)アクリレート化合物;前記各種のジ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)オキシエチレン鎖、(ポリ)オキシプロピレン鎖、(ポリ)オキシテトラメチレン鎖等の(ポリ)オキシアルキレン鎖を導入したポリオキシアルキレン変性ジ(メタ)アクリレート化合物;前記各種のジ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)ラクトン構造を導入したラクトン変性ジ(メタ)アクリレート化合物;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等の脂肪族トリ(メタ)アクリレート化合物;前記脂肪族トリ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)オキシエチレン鎖、(ポリ)オキシプロピレン鎖、(ポリ)オキシテトラメチレン鎖等の(ポリ)オキシアルキレン鎖を導入した(ポリ)オキシアルキレン変性トリ(メタ)アクリレート化合物;前記脂肪族トリ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)ラクトン構造を導入したラクトン変性トリ(メタ)アクリレート化合物;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の4官能以上の脂肪族ポリ(メタ)アクリレート化合物;前記脂肪族ポリ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)オキシエチレン鎖、(ポリ)オキシプロピレン鎖、(ポリ)オキシテトラメチレン鎖等の(ポリ)オキシアルキレン鎖を導入した4官能以上の(ポリ)オキシアルキレン変性ポリ(メタ)アクリレート化合物;前記脂肪族ポリ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)ラクトン構造を導入した4官能以上のラクトン変性ポリ(メタ)アクリレート化合物などが挙げられる。前記各種の(メタ)アクリレートモノマーは、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0127】
また、本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、硬化剤、硬化促進剤、有機溶剤、無機微粒子やポリマー微粒子、顔料、消泡剤、粘度調整剤、レベリング剤、難燃剤、保存安定化剤等の各種添加剤を含有することもできる。
【0128】
前記硬化剤としては、前記酸基含有(メタ)アクリレート樹脂中のカルボキシル基と反応し得る官能基を有するものであれば特に制限されず、例えば、エポキシ樹脂が挙げられる。前記エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、フェニレンエーテル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン-フェノール付加反応型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、キサンテン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂、トリヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。また、これらの中でも、優れたアルカリ現像性及び高い光感度を有し、かつ優れた弾性及び耐熱性を有する硬化物を形成可能な硬化性樹脂組成物が得られることから、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂が好ましく、軟化点が20~120℃の範囲であるものが特に好ましい。
【0129】
前記硬化促進剤としては、前記硬化剤の硬化反応を促進するものであり、前記硬化剤としてエポキシ樹脂を用いる場合には、リン系化合物、アミン系化合物、イミダゾール、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。これらの硬化促進剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。また、前記硬化促進剤の添加量は、例えば、前記硬化剤100質量部に対し1~10質量部の範囲で用いることが好ましい。
【0130】
前記有機溶剤としては、上述の有機溶剤と同様のものを用いることができ、これらの有機溶剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0131】
本発明の硬化物は、前記硬化性樹脂組成物に、活性エネルギー線を照射することで得ることができる。前記活性エネルギー線としては、例えば、紫外線、電子線、α線、β線、γ線等の電離放射線が挙げられる。また、前記活性エネルギー線として、紫外線を用いる場合、紫外線による硬化反応を効率よく行う上で、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で照射してもよく、空気雰囲気下で照射してもよい。
【0132】
紫外線発生源としては、実用性、経済性の面から紫外線ランプが一般的に用いられている。具体的には、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、ガリウムランプ、メタルハライドランプ、太陽光、LED等が挙げられる。
【0133】
前記活性エネルギー線の積算光量は、特に制限されないが、10~5,000mJ/cm2であることが好ましく、50~1,000mJ/cm2であることがより好ましい。積算光量が上記範囲であると、未硬化部分の発生の防止または抑制ができることから好ましい。
【0134】
なお、前記活性エネルギー線の照射は、一段階で行ってもよいし、二段階以上に分けて行ってもよい。
【0135】
また、本発明の硬化物は、優れた弾性及び耐熱性を有することから、例えば、半導体デバイス用途における、ソルダーレジスト、層間絶縁材料、パッケージ材、アンダーフィル材、回路素子等のパッケージ接着層や、集積回路素子と回路基板の接着層として好適に用いることができる。また、LCD、OELDに代表される薄型ディスプレイ用途における、薄膜トランジスタ保護膜、液晶カラーフィルタ保護膜、カラーフィルタ用顔料レジスト、ブラックマトリックス用レジスト、スペーサー等に好適に用いることができる。これらの中でも、特にソルダーレジスト用途に好適に用いることができる。
【0136】
本発明のソルダーレジスト用樹脂材料は、前記硬化性樹脂組成物からなるものである。
【0137】
本発明のレジスト部材は、例えば、前記ソルダーレジスト用樹脂材料を基材上に塗布し、60~100℃程度の温度範囲で有機溶媒を揮発乾燥させた後、所望のパターンが形成されたフォトマスクを通して活性エネルギー線にて露光させ、アルカリ水溶液にて未露光部を現像し、更に140~200℃程度の温度範囲で加熱硬化させて得ることができる。
【0138】
前記基材としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等の金属箔などが挙げられる。
【実施例】
【0139】
以下に、実施例および比較例をもって本発明をより詳しく説明する。
【0140】
本実施例において、重量平均分子量(Mw)は、下記条件のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定した。
【0141】
<GPC測定条件>
測定装置 :東ソー株式会社製「HLC-8220 GPC」、
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL-L」
+東ソー株式会社製「TSK-GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK-GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK-GEL G3000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK-GEL G4000HXL」
検出器: RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「GPC-8020モデルIIバージョン4.10」
測定条件: カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準 : 前記「GPC-8020モデルIIバージョン4.10」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
【0142】
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A-500」
東ソー株式会社製「A-1000」
東ソー株式会社製「A-2500」
東ソー株式会社製「A-5000」
東ソー株式会社製「F-1」
東ソー株式会社製「F-2」
東ソー株式会社製「F-4」
東ソー株式会社製「F-10」
東ソー株式会社製「F-20」
東ソー株式会社製「F-40」
東ソー株式会社製「F-80」
東ソー株式会社製「F-128」
試料 : 樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)。
【0143】
本実施例において、13C-NMRは以下の条件にて測定した。
【0144】
<13C-NMRの測定条件>
装置:日本電子株式会社製 JNM-ECA500
測定モード:逆ゲート付きデカップリング
溶媒:重水素化ジメチルスルホキシド
パルス角度:30°パルス
試料濃度 :30wt%
積算回数 :4000回
ケミカルシフトの基準:ジメチルスルホキシドのピーク:39.5ppm
【0145】
本願実施例において、エポキシ樹脂中の環状化合物の含有量X(mol)は、下記の式により算出した。
【0146】
【0147】
上記式において、Xはエポキシ樹脂100gあたりの環状化合物含有量(mol)であり、(A)は芳香環1molあたりの環状化合物(mol)であり、(B)は芳香環1molあたりのエポキシ基(mol)であり、(C)はエポキシ当量(g/当量)である。
【0148】
(合成例1:エポキシ樹脂(1)の合成)
工程1a
温度計、滴下ロート、冷却管、窒素導入管、撹拌機を取り付けたフラスコに、カテコール165g(1.50mol)、エピクロルヒドリン1388g(15mol)を添加し、50℃まで昇温した。次いで、塩化ベンジルトリメチルアンモニウム11.2g(0.06mol)を添加し、50℃で15時間撹拌した。
【0149】
工程1b
前記工程1aで得られた反応液に蒸留水1000mLを注いで撹拌し、静置後に上層を除去した。48%水酸化ナトリウム水溶液318gを2.5時間かけて滴下し、1時間撹拌を行った。
【0150】
得られた溶液に蒸留水400mLを注いで静置した。下層の食塩水を除去し、120℃でエピクロロヒドリンの蒸留回収を行った。次いで、メチルイソブチルケトン(以下、「MIBK」と略記する。)566g、水167gを順次添加し、80℃で水洗を行った。下層の水洗水を除去した後、脱水、ろ過を行い、150℃でMIBKを脱溶媒することで、エポキシ樹脂(1)を製造した。なお、得られたエポキシ樹脂を目視で観察したところ、液状であった。
【0151】
このエポキシ樹脂(1)のエポキシ当量は、138g/当量であり、25℃における粘度は、190mPa・sであった。なお、本発明においてエポキシ当量は、JIS K 7236:2009に準拠し測定した値であり、粘度は、東機産業株式会社製「TV-22」にて測定した値である。
【0152】
また、このエポキシ樹脂(1)100gあたりの環状化合物含有量(mol)は、上記式において、(A)は
13C-NMR測定において、130~150ppm付近のカテコールのipso(イプソ)位にあたる芳香環に由来するピークと、60ppm付近の環状化合物に由来するピークの積分比により算出し、また、(B)は130~150ppm付近のカテコールのipso(イプソ)位にあたる芳香環に由来するピークと、50ppm付近のエポキシ基に由来するピークの積分比により算出した。その結果、環状化合物の含有量は、0.071mol/100gであった。なお、
13C-NMR測定の結果〔チャート〕を
図1とした。
【0153】
(合成例2:エポキシ樹脂(2)の合成)
合成例1の工程(1)におけるカテコール165g(1.50mol)をピロガロール126g(1.00mol)に、MIBK566gを500gに、水167gを147gに変更した以外は合成例1と同様の方法でエポキシ樹脂(2)を製造した。なお、得られたエポキシ樹脂を目視で観察したところ、液状であった。このエポキシ樹脂(2)のエポキシ当量は、128g/当量であり、25℃における粘度は、3100mPa.sであった。また、このエポキシ樹脂(2)100gあたりの環状化合物含有量は、0.086mol/100gであった。なお、
13C-NMR測定の結果〔チャート〕を
図2とした。
【0154】
(合成例3:エポキシ樹脂(3)の合成)
非特許文献(Tetrahedron,2013,69,1345-1353)記載のExperimental sectionに準拠しエポキシ樹脂の製造を行った。温度計、滴下ロート、冷却管、窒素導入管、撹拌機を取り付けたフラスコに、1,2,3-トリヒドロキシベンゼン126g(1.00mol)、エピクロロヒドリン1111g(12mol)を入れ、100℃まで昇温した。そこに、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド11.4g(0.05mol)を加え100℃で1時間加熱攪拌した。その後、30℃まで降温し、そこに20%NaOH水溶液780gを2.5時間かけて滴下し、さらに1時間攪拌を続けた後静置した。その後は合成例1と同様の操作を行うことでエポキシ樹脂(3)を製造した。なお、得られたエポキシ樹脂を目視で観察したところ、液状であった。
【0155】
このエポキシ樹脂(3)のエポキシ当量は、184g/当量であり、25℃における粘度は、53300mPa・sであった。また、このエポキシ樹脂(3)100gあたりの環状化合物含有量は、0.120mol/100gであった。
【0156】
(合成例4:エポキシ樹脂(4)の合成)
合成例3で製造したエポキシ樹脂を良溶媒にMIBK、貧溶媒にヘキサンを用いて再結晶により精製することで、エポキシ樹脂(4)を製造した。このエポキシ樹脂(4)のエポキシ当量は、107g/当量であった。また、このエポキシ樹脂(4)100gあたりの環状化合物含有量は、0.039mol/100gであった。なお、粘度は、得られたエポキシ樹脂(4)が固体のため測定不能であった。
【0157】
(実施例1:酸基含有アクリレート樹脂(1)の調製)
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を備えたフラスコに、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート53質量部、エポキシ樹脂(1)138質量部、ジブチルヒドロキシトルエン0.2質量部、メトキノン0.1質量部、アクリル酸73質量部およびトリフェニルホスフィン1.1質量部を添加し、空気を吹き込みながら100℃で20時間反応させた。次いで、テトラヒドロ無水フタル酸56質量部を加えて110℃で3時間反応させ、目的の酸基含有アクリレート樹脂(1)を得た。この酸基含有アクリレート樹脂(1)の固形分酸価は80mgKOH/gであり、重量平均分子量は、650であった。
【0158】
(実施例2:酸基含有アクリレート樹脂(2)の調製)
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を備えたフラスコに、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート50質量部、エポキシ樹脂(2)128質量部、ジブチルヒドロキシトルエン0.2質量部、メトキノン0.1質量部、アクリル酸73質量部、トリフェニルホスフィン1.0質量部を添加し、空気を吹き込みながら100℃で20時間反応させた。次いで、テトラヒドロ無水フタル酸53質量部、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート35質量部を添加し、110℃で3時間反応させ、目的の酸基含有アクリレート樹脂(2)を得た。この酸基含有アクリレート樹脂(2)の固形分酸価は80mgKOH/gであり、重量平均分子量は、930であった。
【0159】
(実施例3:酸基含有アクリレート樹脂(3)の調製)
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を備えたフラスコに、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート50質量部、エポキシ樹脂(2)128質量部、ジブチルヒドロキシトルエン0.2質量部、メトキノン0.1質量部、アクリル酸73質量部、トリフェニルホスフィン1.0質量部を添加し、空気を吹き込みながら100℃で20時間反応させた。次いで、無水コハク酸32質量部、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート28質量部を添加し、110℃で3時間反応させ、目的の酸基含有アクリレート樹脂(3)を得た。この酸基含有アクリレート樹脂(3)の固形分酸価は80mgKOH/gであり、重量平均分子量は、860であった。
【0160】
(実施例4:酸基含有アクリレート樹脂(4)の調製)
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を備えたフラスコに、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート64質量部、エポキシ樹脂(3)184質量部、ジブチルヒドロキシトルエン0.3質量部、メトキノン0.1質量部、アクリル酸73質量部、トリフェニルホスフィン1.3質量部を添加し、空気を吹き込みながら100℃で20時間反応させた。次いで、テトラヒドロ無水フタル酸68質量部、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート62質量部を添加し、110℃で3時間反応させ、目的の酸基含有アクリレート樹脂(4)を得た。この酸基含有アクリレート樹脂(4)の固形分酸価は80mgKOH/gであり、重量平均分子量は、1010であった。
【0161】
(実施例5:酸基含有アクリレート樹脂(5)の調製)
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を備えたフラスコに、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート45質量部、エポキシ樹脂(4)107質量部、ジブチルヒドロキシトルエン0.2質量部、メトキノン0.1質量部、アクリル酸73質量部、トリフェニルホスフィン0.9質量部を添加し、空気を吹き込みながら100℃で20時間反応させた。次いで、テトラヒドロ無水フタル酸48質量部、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート44質量部を添加し、110℃で3時間反応させ、目的の酸基含有アクリレート樹脂(5)を得た。この酸基含有アクリレート樹脂(5)の固形分酸価は80mgKOH/gであり、重量平均分子量は、910であった。
【0162】
(比較例1:酸基含有アクリレート樹脂(C1)の調製)
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を備えたフラスコに、レゾルシン型エポキシ樹脂(CVC Thermoset Specialties社製「ERISYS RDGE-H」、エポキシ当量129g/当量)129質量部、ジブチルヒドロキシトルエン0.2質量部、メトキノン0.1質量部、アクリル酸73質量部およびトリフェニルホスフィン1.0質量部を添加し、空気を吹き込みながら100℃で20時間反応させた。次いで、テトラヒドロ無水フタル酸53質量部、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート85質量部を加えて110℃で3時間反応させ、目的の酸基含有アクリレート樹脂(C1)を得た。この酸基含有アクリレート樹脂(C1)の固形分酸価は80mgKOH/gであり、重量平均分子量は、1140であった。
【0163】
(比較例2:酸基含有アクリレート樹脂(C2)の調製)
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を備えたフラスコに、フェニルグリシジルエーテル(ナガセケムッテックス株式会社製「デナコール EX-141」、エポキシ当量151g/当量)151質量部、ジブチルヒドロキシトルエン0.2質量部、メトキノン0.1質量部、アクリル酸73質量部およびトリフェニルホスフィン1.1質量部を添加し、空気を吹き込みながら120℃で8時間反応させた。次いで、テトラヒドロ無水フタル酸59質量部を加えて110℃で3時間反応させ、目的の酸基含有アクリレート樹脂(C2)を得た。この酸基含有アクリレート樹脂(C2)の固形分酸価は80mgKOH/gであり、重量平均分子量は、580であった。
【0164】
(実施例6:硬化性樹脂組成物(1)の調製)
実施例1で得た酸基含有アクリレート樹脂(1)、硬化剤としてオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「EPICLON N-680」)と、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートと、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートと、光重合開始剤(IGM社製「Omnirad 907」)と、2-エチル-4-メチルイミダゾールと、フタロシアニングリーンとを表1に示す質量部で配合し、ロールミルにより混錬して硬化性樹脂組成物(1)を得た。
【0165】
(実施例7~10:硬化性樹脂組成物(2)~(5)の調製)
実施例6で用いた酸基含有アクリレート樹脂(1)の代わりに、実施例2~5で得た酸基含有アクリレート樹脂(2)~(5)をそれぞれ用いた以外は、実施例6と同様にして硬化性樹脂組成物(2)~(5)を得た。
【0166】
(比較例3及び4:硬化性樹脂組成物(C3)及び(C4)の調製)
実施例6で用いた酸基含有アクリレート樹脂(1)の代わりに、比較例1及び比較例2で得た酸基含有アクリレート樹脂(C1)、(C2)を用いた以外は、実施例6と同様にして硬化性樹脂組成物(C3)及び(C4)を得た。
【0167】
上記の実施例及び比較例で得られた硬化性樹脂組成物(1)~(5)、(C3)及び(C4)を用いて、下記の評価を行った。
【0168】
[光感度の評価方法]
各実施例及び比較例で得られた硬化性樹脂組成物を、アプリケーターを用いてガラス基材上に膜厚50μmとなるように塗布した後、80℃でそれぞれ30分間乾燥させた。次いで、コダック社製のステップタブレットNo.2を介し、メタルハライドランプを用いて1000mJ/cm2の紫外線を照射した。これを1質量%の炭酸ナトリウム水溶液で180秒現像し、残存した段数で評価した。なお、残存段数が多いほど光感度が高い。
【0169】
[アルカリ現像性の評価方法]
各実施例及び比較例で得られた硬化性樹脂組成物を、アプリケーターを用いてガラス基材上に膜厚50μmとなるように塗布した後、80℃でそれぞれ60分間から10分間隔で130分まで乾燥させ、乾燥時間が異なるサンプルを作成した。これらを1%炭酸ナトリウム水溶液で30℃180秒間現像し、基板上に残渣が残らなかったサンプルの80℃での乾燥時間を乾燥管理幅として評価した。なお、乾燥管理幅が長いほどアルカリ現像性が優れていることを示す。
【0170】
実施例6~10で作製した硬化性樹脂組成物(1)~(5)、比較例3及び比較例4で作製した硬化性樹脂組成物(C3)及び(C4)の組成及び評価結果を表1示す。
【0171】
【0172】
(実施例11:硬化性樹脂組成物(6)の調製)
実施例1で得た酸基含有アクリレート樹脂(1)、硬化剤としてオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「EPICLON N-680」)、光重合開始剤として2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン(IGM社製「Omnirad-907」)、有機溶剤としてジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートを表2に示す質量部で配合して、硬化性樹脂組成物(6)を得た。
【0173】
(実施例12~15:硬化性樹脂組成物(7)~(10)の調製)
実施例11で用いた酸基含有アクリレート樹脂(1)の代わりに、実施例2~5で得た酸基含有アクリレート樹脂(2)~(5)をそれぞれ用いた以外は、実施例11と同様にして硬化性樹脂組成物(12)~(15)を得た。
【0174】
(比較例5及び6:硬化性樹脂組成物(C5)及び(C6)の調製)
実施例11で用いた酸基含有アクリレート樹脂(1)の代わりに、比較例1及び比較例2で得た酸基含有アクリレート樹脂(C1)、(C2)を用いた以外は、実施例11と同様にして硬化性樹脂組成物(C5)、(C6)を得た。
【0175】
上記の実施例及び比較例で得られた硬化性樹脂組成物(6)~(10)、(C5)及び(C6)を用いて、下記の評価を行った。
【0176】
[耐熱性の評価方法]
<試験片の作成>
銅箔(古河産業株式会社製、電解銅箔「F2-WS」18μm)上に実施例及び比較例で得られた硬化性樹脂組成物を50μmのアプリケーターで塗布し、80℃で30分間乾燥させた。メタルハライドランプを用いて1000mJ/cm2の紫外線を照射した後、160℃で1時間加熱した。銅箔から硬化物を剥離し、試験片(硬化物)を得た。
【0177】
前記試験片を6mm×40mmの大きさに切り出し、粘弾性測定装置(DMA:レオメトリック社製固体粘弾性測定装置「RSAII」、引張り法:周波数1Hz、昇温速度3℃/分)を用いて、弾性率変化が最大となる(tanδ変化率が最も大きい)温度をガラス転移温度(Tg)として評価した。
【0178】
[弾性の測定方法]
弾性の測定は、引張試験に基づいて行った。
<試験片2の作製>
ガラス上に実施例及び比較例で得られた硬化性樹脂組成物を50μmのアプリケーターで塗布し、80℃で30分間乾燥させた。メタルハライドランプを用いて1000mJ/cm2の紫外線を照射した後、160℃で1時間加熱した。ガラスから硬化物を剥離し、試験片2(硬化物)を得た。
【0179】
<引張試験>
前記試験片2を10mm×80mmの大きさに切り出し、株式会社島津製作所製精密万能試験機オートグラフ「AG-IS」を用いて、下記の測定条件で試験片の引張試験を行った。試験片が破断するまでの弾性率(MPa)を測定し、以下の基準に従い評価した。
【0180】
測定条件:温度23℃、湿度50%、標線間距離20mm、支点間距離20mm、引張速度10mm/分
【0181】
実施例11~15で作製した硬化性樹脂組成物(6)~(10)、比較例5及び比較例6で作製した硬化性樹脂組成物(C5)及び(C6)の組成及び評価結果を表2に示す。
【0182】
【0183】
なお、表1、2中の「硬化剤」は、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「EPICLON N-680」、エポキシ当量:214)を示す。
【0184】
表1、2中の「有機溶剤」は、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートを示す。
【0185】
表1、2中の「光重合開始剤」は、IGM社製「Omnirad-907」を示す。
【0186】
表1及び2に示した実施例6~15は、本発明の酸基含有アクリレート樹脂を用いた硬化性樹脂組成物の例である。この硬化性樹脂組成物は、優れた光感度及びアルカリ現像性を有しており、また硬化物において優れた弾性及び耐熱性を有することが確認できた。
【0187】
一方、比較例3~6は、本発明の酸基含有アクリレート樹脂を用いない硬化性樹脂組成物の例である。この硬化性樹脂組成物は、光感度が不十分であり、また、硬化物における弾性に関しても著しく不十分であることが確認できた。