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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】植物育成方法、及び植物育成装置
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/04 20060101AFI20221213BHJP
   A01C 1/00 20060101ALI20221213BHJP
   H05H 1/24 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
A01G7/04 A
A01C1/00 C
H05H1/24
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019032507
(22)【出願日】2019-02-26
(65)【公開番号】P2020130146
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-11-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 久浩
(72)【発明者】
【氏名】高橋 史仁
【審査官】川野 汐音
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-187540(JP,A)
【文献】特開2006-254787(JP,A)
【文献】米国特許第05464456(US,A)
【文献】特開2017-127267(JP,A)
【文献】Jia Hanzhong , Cao Yang, Qu Guangzhou, Wang Tiecheng, Guo Xuetao ,Dimethyl phthalate contaminated soil remediation by dielectric barrier discharge: Performance and residual toxicity,Chemical Engineering Journal,Vol.351,2018年,Page.1076-1084
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 7/00-7/06
A01C 1/00-1/08
H05H 1/00-1/54
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リンを含まない培養材料に、0Hz200kHz以下の周波数で、4kV以上15kV以下の電圧を印加する電圧印加工程と、
前記電圧印加工程の後、前記培養材料に植物の種を播種する播種工程と、
前記植物の種の発芽から7日間以内に、前記培養材料にリンを添加するリン添加工程と、を含み、
前記培養材料が、培地及び培養土のいずれかであり、
表面に第1の電極部と、前記第1の電極部の内側に誘電体部と、前記誘電体部の内側に第2の電極部を有する円筒状容器を用い、前記誘電体部の内側に培養材料を循環させて、前記第1の電極部と前記第2の電極部との間に電圧を印加することにより、ストリーマ放電を発生させることを特徴とする植物育成方法。
【請求項2】
前記植物の種を播種するときの培養材料のpHが、5以上8以下である請求項1に記載の植物育成方法。
【請求項3】
前記リン添加工程において、植物の種の発芽から3日間以内に、前記培養材料にリンを添加する請求項1から2のいずれかに記載の植物育成方法。
【請求項4】
8.64kHz以上200kHz以下の周波数で、4kV以上15kV以下の電圧を印加する請求項1から3のいずれかに記載の植物育成方法。
【請求項5】
前記円筒状容器の内部に、側周面に貫通孔を設けた種収容部を有し、前記第2の電極部と隣接する種収容部が互いに接していない請求項1に記載の植物育成方法。
【請求項6】
電圧を印加後の培養材料を収容する植物育成容器の材質が、珪素及びフッ素のいずれかである請求項1から5のいずれかに記載の植物育成方法。
【請求項7】
リンを含まない培養材料に、0Hz超200kHz以下の周波数で、4kV以上15kV以下の電圧を印加する電圧印加手段と、
前記培養材料に植物の種を播種する播種手段と、
前記植物の種の発芽から7日間以内に、前記培養材料にリンを添加するリン添加手段と、を有し、
前記培養材料が、培地及び培養土のいずれかであり、
表面に第1の電極部と、前記第1の電極部の内側に誘電体部と、前記誘電体部の内側に第2の電極部を有する円筒状容器を用い、前記誘電体部の内側に培養材料を循環させて、前記第1の電極部と前記第2の電極部との間に電圧を印加することにより、ストリーマ放電を発生させることを特徴とする植物育成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物育成方法、及び植物育成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
植物の種は、適切な条件が整うと、吸水、呼吸、エネルギー生成、細胞分裂、細胞伸長が始まり発芽が起こる。しかし、植物の中には、種の段階で安眠状態となり発芽をしないか、又は、発芽をしても養分の不足や細菌、固体細胞の活性化の差により、成長が遅い個体が存在するなどの問題がある。
【0003】
そこで、例えば、発芽後の植物の成長に不可欠な窒素を生成する方法として、プラズマを発生させ、空気中の窒素から、植物が利用可能な窒素化合物を生成する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、例えば、植物の種の発芽後に、亜リン酸を含有する溶液を添加する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、植物の種の発芽率の向上を図ることができると共に、発芽後の植物の成長を促進させることができる植物育成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段としての本発明の植物育成方法は、リンを含まない培養材料に、0Hz以上200kHz以下の周波数で、4kV以上15kV以下の電圧を印加する電圧印加工程と、前記電圧印加工程の後、前記培養材料に植物の種を播種する播種工程と、前記植物の種の発芽から7日間以内に、前記培養材料にリンを添加するリン添加工程と、を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、植物の種の発芽率の向上を図ることができると共に、発芽後の植物の成長を促進させることができる植物育成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、負荷印加時の電圧と電流の関係を示した概略図である。
図2図2は、マイナスイオン量とオゾン量の比のコントロールを示す解釈図である。
図3図3は、本発明の第1の実施形態に用いられる植物育成装置の概略図である。
図4図4は、本発明の第1の実施形態を用いた、サラダボウルレッドの成長の経過を示した図である。
図5A図5Aは、電圧印加後に30日間放置した水道水の状態を示す図である。
図5B図5Bは、図5Aの拡大図である。
図6図6は、電圧印加後の水道水の放置日数と菌数の関係を示した図である。
図7A図7Aは、電圧印加後の八重椿の根の状態を示す図である。
図7B図7Bは、図7Aの拡大図である。
図8図8は、本発明の第2の実施形態に用いられる植物育成装置の概略図である。
図9図9は、プラズマイオンの発生による、硝酸態窒素が発生するまでの化学反応を示した図である。
図10図10は、植物の成長過程における、硝酸態窒素の含有量の好ましい範囲を示した概略図である。
図11A図11Aは、プラズマイオンの量と、種の播種から30日後の植物の重量の関係を示した図である。
図11B図11Bは、電圧印加後の、硝酸態窒素の濃度と経過日数の関係を示した図である。
図12図12は、本発明の第4の実施形態に用いられる植物育成装置の概略図である。
図13図13は、誘電体バリア放電方式を示す概略図である。
図14図14は、本発明の第4の実施形態の変形例1に用いられる植物育成装置の概略図である。
図15図15は、本発明の植物育成装置における種収容部を示す概略図である。
図16図16は、本発明の第6の実施形態に用いられる植物育成装置の概略図である。
図17図17は、本発明の第7の実施形態に用いられる植物育成装置の概略図である。
図18A図18Aは、オゾンを発生させた植物育成容器内で育成させたグレートレイクスの根の図である。
図18B図18Bは、オゾンを発生させていない植物育成容器内で育成させたグレートレイクスの根の図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(植物育成方法及び植物育成装置)
本発明の第1の実施形態の植物育成方法は、リンを含まない培養材料に、0Hz以上200kHz以下の周波数で、4kV以上15kV以下の電圧を印加する電圧印加工程と、前記電圧印加工程の後、前記培養材料に植物の種を播種する播種工程と、前記植物の種の発芽から7日間以内に、前記培養材料にリンを添加するリン添加工程と、を含み、更に必要に応じてその他の工程を含む。
本発明の第1の実施形態の植物育成方法に用いられる植物育成装置は、リンを含まない培養材料に、0Hz以上200kHz以下の周波数で、4kV以上15kV以下の電圧を印加する電圧印加手段と、前記培養材料に植物の種を播種する播種手段と、前記植物の種の発芽から7日間以内に、前記培養材料にリンを添加するリン添加手段と、を有し、更に必要に応じてその他の手段を有する。
【0010】
本発明の第2の実施形態の植物育成方法は、培養材料に植物の種を播種し、発芽させる発芽工程と、発芽後の植物を成長させる成長工程と、を含み、前記発芽工程及び前記成長工程において、前記培養材料を基準電位として、種又は発芽後の植物以外の培養材料及び前記培養材料の周囲の気体の少なくともいずれかに、0Hz以上200kHz以下の周波数で、4kV以上15kV以下の電圧を印加し、更に必要に応じてその他の工程を有する。
本発明の第2の実施形態の植物育成方法に用いられる植物育成装置は、培養材料に植物の種を播種し、発芽させる発芽手段と、発芽後の植物を成長させる成長手段と、を有し、前記発芽手段及び前記成長手段による発芽及び成長において、前記培養材料を基準電位として、種又は発芽後の植物以外の培養材料及び前記培養材料の周囲の気体の少なくともいずれかに、0Hz以上200kHz以下の周波数で、4kV以上15kV以下の負電圧を印加し、更に必要に応じてその他の手段を有する。
【0011】
従来技術では、植物の種の発芽率の向上を図ることができると共に、発芽後の植物の成長を促進させることができることを課題としておらず、培養材料に電圧を印加する工程と、植物の種が発芽した後にリンを添加する工程を有していないので、植物の種の発芽率の向上を図ることができると共に、発芽後の植物の成長を促進させることができないという問題がある。
【0012】
<第1の実施形態の植物育成方法及び植物育成装置>
本発明の第1の実施形態の植物育成方法は、電圧印加工程と、播種工程と、リン添加工程と、を含み、更に必要に応じてその他の工程を含む。
本発明の第1の実施形態の植物育成方法に用いられる植物育成装置は、電圧印加手段と、播種手段と、リン添加手段と、を有し、更に必要に応じてその他の手段を有する。
【0013】
<<電圧印加工程及び電圧印加手段>>
前記電圧印加工程は、リンを含まない培養材料に、0Hz以上200kHz以下の周波数で、4kV以上15kV以下の電圧を印加する工程であり、電圧印加手段により実施される。
【0014】
-培養材料-
前記培養材料としては、植物を育成できるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、培地、培養土などが挙げられる。培地の場合には、スポンジ、カンテン、土壌、鉱物類の合成、水コケなどに含ませて用いることもできる。 前記培養材料としては、リンを含まず、窒素を含まないことが好ましい。
【0015】
前記培養材料の成分としては、リンを除いた、例えば、窒素、カリウム、苦土、マンガン、ホウ素、その他の成分などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
培養材料には、リンは含まれておらず、リンを含まない培養材料を用いることにより、植物の種の発芽が遅れる(植物が安眠状態となる)ことを防ぐことができる。
植物の種を播種するときに、培養材料にリンやカリウム(特にリン)が含まれていると種が安眠状態となり、発芽が遅れる。この点については、種に果肉がついていると発芽しないことと同様である。したがって、種の発芽、即ち、発根が促進されないため、植物の根に共生する共生菌が繁茂しにくくなり、成長に必須な栄養素(窒素、カリウム、苦土、マンガン、ホウ素、その他の成分など)が共生菌により分解されないため、栄養素が植物の細胞内に運ばれなくなり、成長がさらに遅れる。
また、リン以外の主要な栄養素についても、種の播種から発芽までは、含まれていないことが好ましい。これは、種の播種から発芽までは、被子植物であれば、種に必要な栄養素が備わっているからである。また、栄養素が含まれていない培養材料に種を播種することで、種に雑菌が付着する可能性は低下する。
【0016】
前記栄養素としては、例えば、多量要素、微量要素などが挙げられる。前記多量要素とは、植物の要求量が、植物組織の乾燥重量に対して0.2質量%以上である栄養素を意味しており、前記微量要素とは、植物の要求量が、植物組織の乾燥重量に対して0.2質量%以下である栄養素を意味している。
【0017】
前記多量要素としては、例えば、多量一次要素、多量二次要素などが挙げられる。
前記多量一次要素としては、例えば、炭素、水素、酸素、窒素、リン、カリウムなどが挙げられる。炭素、水素、及び酸素は、植物による被吸収形態は大気中の二酸化炭素及び水分子である。したがって、炭素、酸素、及び水素は、植物の生育において無機塩として土壌や培地に存在する必要がない。また、窒素、リン、及びカリウムは、肥料の三要素という。
前記炭素は、有機物に必須な構成元素である。有機物としては、例えば、タンパク質、糖質、脂質、核酸などが挙げられる。有機物は、生物において、細胞や組織の構造と機能に欠かせない。植物の場合は、デンプン、セルロースなどが、重要かつ植物体中に豊富な有機物である。主要な炭素源は、大気中の二酸化炭素であり、取り込まれた二酸化炭素は炭化水素に変換された後、様々な有機物の材料となる。
前記水素は、例えば、水、有機物などを構成する。また、細胞内の水素イオン(プロトン)の濃度勾配は、光合成や呼吸のための電子の運搬に必要となる。
前記酸素は、酸素分子、水、二酸化炭素を構成しており、これらは植物の細胞の呼吸に必要となる。細胞の呼吸は、糖を消費して、生物のエネルギーであるアデノシン三リン酸(ATP)を合成する生化学反応である。光合成により、ATP合成の基質である糖が合成され、副産物として酸素分子が植物体外に排出される。また、糖を分解するときに酸素が必要とされる。
前記窒素は、植物を大きく生長させる作用があり、特に葉や茎を大きくすることから葉肥(はごえ)とも呼ばれる。根から吸収される必須栄養素の中で、最も多量に要求される。また、植物が利用できる窒素の土壌中含量が植物の生産性を決める主要な因子であるとされる。植物の原形質の乾燥重量の40質量%~50質量%は、窒素化合物である。植物の中でも、葉や茎を食用とするものは、特に窒素を多量に必要とする。窒素の土壌中の形態としては、無機態と有機態が挙げられる。前記無機態としては、例えば、アンモニウムイオン、硝酸イオンなどが挙げられる。前記アンモニウムイオンは、亜硝酸菌によって、亜硝酸に変換される。前記有機態としては、例えば、バイオマス、土壌有機物などが挙げられる。植物が直接的に利用可能な有機態は、無機態が腐植と会合した形態である。腐植以外の有機態は、微生物に無機化されて無機態にならなければ、植物が利用することはできない。
前記リンは、核酸、細胞膜などを形成するリン脂質の成分である。また、生物のエネルギーであるアデノシン三リン酸、光合成に関与するリブロース-1,5-ビスリン酸、リン脂質分解酵素により細胞膜中のホスファチジル-4,5-ビスホスホイノシトールから切り出されたセカンドメッセンジャーの1,4,5-トリホスホイノシトールなども構成する。解糖系、TCA回路、ペントースリン酸経路などの中間体(グルコース-1-リン酸やフルクトース-6-リン酸)にも含まれる。
前記カリウムは、植物体内において、植物の体液に溶解した無機塩として機能する。カリウムイオンは、植物の細胞内の主要な陽イオンであり、陽イオンの中で植物内の濃度が最も高い。植物体内のカリウムの役割は、細胞の水ポテンシャルと、代謝反応に適切なイオンの形成である。カリウムイオンがイオンチャネルを通って別の細胞に移動すると、その細胞の水ポテンシャルは低下し、水の移動が起こる。植物は根に対して葉の水ポテンシャルを低くしており、この差に依存して吸水を行っている。
【0018】
前記多量二次要素としては、例えば、カルシウム、硫黄、マグネシウムが挙げられる。
前記カルシウムは、例えば、他の栄養素の運搬の制御、特定の酵素の活性化、光合成になどに関わる。主に、セカンドメッセンジャーとしての細胞内での情報伝達が重要な役割である。また、細胞分裂、細胞伸長、および水素イオンの解毒における役割で根の発達に重要である。そのほかの機能は、有機酸の中和、カリウムにより活性化するいくつかのイオンの阻害、窒素の取り込みへの関与などである。
前記硫黄は、メチオニン、システイン、シスチンなどのアミノ酸の構成要素である。前記アミノ酸は、例えば、グルタチオン、スルホ脂質、補酵素、ビタミン、ファイトケラチン、メタロチオネイン、チオレドキシンなどを構成する。
前記マグネシウムは、タンパク質合成、解糖系、TCA回路、窒素代謝系を含む生化学反応に重要である。また、リン酸化合物と結合し、酵素反応に関与している。マグネシウムが関与する酵素としては、例えば、RNAポリメラーゼ、ATP分解酵素、タンパク質リン酸化酵素、脱リン酸化酵素、グルタチオン合成酵素、カルボキシル基転移酵素などが挙げられる。また、マグネシウムは、細胞膜やリボソーム表層のリン酸基に結合して、その立体構造の維持を担う。
【0019】
前記微量要素としては、例えば、塩素、ホウ素、マンガン、鉄、亜鉛、銅、モリブテン、ニッケルなどが挙げられる。
前記塩素は、塩素は環境中に普遍的に存在する元素である。土壌中には約100mg/kg含まれ、水溶性の塩化物イオンとして存在する。塩素は、土壌粒子には吸着されにくく、水とともに移動する。重要な塩素イオンの役割は、気孔の開閉である。気孔は、カリウムイオンの移動に伴う浸透圧変化によって開閉するが、カリウムイオンの対イオンとして利用されるのが塩化物イオンである。細胞の伸長成長や分裂は、細胞に塩化物イオンが流入することによって起こる。また、塩化物イオンが増加すると、有機酸イオンは植物成長により多く利用されるようになる。
前記ホウ素は、細胞壁の構成要素であり、植物にとって最も重要な微量要素である。細胞分裂において、糖の輸送や特定の酵素の合成、カルシウムの取り込み、カルシウムの利用(膜機能、花粉発芽、細胞伸長、細胞分化、炭水化物代謝)に必要とされる。ホウ素は、土壌中では、ホウ酸として存在する。
前記マンガンは、健全な葉において、数10~数100mg/kg含まれており、マンガンの含有量が10~20mg/kg以下になると欠乏症が生じる。Mn不足の原因となる土壌は、pHが高いか、堆肥を大量に添加されたものである。有機物が多い土壌において、pHが6.5になると、Mn酸化細菌が活発になりMnイオンを不溶性の二酸化マンガン(MnO)へと変換する。このような土壌では、Mn濃度が高くとも欠乏症を引き起こすことがある。
前記鉄は、生体での酸化還元反応に関わり、酸化還元反応では、鉄イオンが、窒素、酸素、硫黄などと配位結合し、電子を結合先の元素に渡す、又は受け取る。鉄は、多くの酵素にとって活性に必須の補因子であり、例えば、光合成、酸素呼吸、活性酸素種の解毒、窒素固定、硝酸還元などに必要とされる。
前記亜鉛は、80以上の植物酵素の補因子であり、ジンクフィンガーを形成する。多くの必須遷移金属元素と異なり、電子の受け渡しよりも、基質との結合や立体構造の維持に機能している。亜鉛を含有する酵素の働きとしては、例えば、植物成長ホルモンのオーキシンの代謝、光合成、DNA複製などが挙げられる。亜鉛依存性の炭酸脱水酵素は、葉緑体ストロマにおいて植物体内の炭酸から、光合成の基質である二酸化炭素を供給する。
前記銅は、例えば、生体での酸化還元反応、光合成などに重要とされる。また、多くの酵素反応、細胞壁成分であるリグニンの合成、穀物の生産に必要とされている。
前記モリブテンは、植物の細胞中の補因子の構成要素として機能している。補因子としては、例えば、硝酸レダクターゼ、アルデヒドオキシダーゼ、亜硫酸オキシダーゼ、キサンチンオキシダーゼ、キサンチンデヒドロゲナーゼなどが挙げられる。モリブテンは、前記補因子の中で、モリブテンコファクターと結合し、電子伝達を担っている。
前記ニッケルは、窒素の代謝において、尿素を分解するウレアーゼの賦活剤として要求される。植物中のニッケルが不足すると、植物にとって有毒である尿素が蓄積し、ネクロシスを引き起こす。また、一部の酵素の補因子として亜鉛や鉄の代替となる。
【0020】
前記栄養素の不足又は過剰によって、植物の生体に障害は現れることがある。また、特定の栄養素が低水準であるとき、他の必須栄養素の存在量は相対的に大きくなり、その過剰障害が現れることがある。
栄養素は、根毛細胞のプロトンポンプを介して、表皮細胞へと取り込まれている。根毛細胞のプロトンポンプは、水素イオンを負に荷電した土壌粒子へ供給し、その際に生じるエネルギーにより、無機塩のカチオンである栄養素を植物体へと取り込む。特に、カリウムの吸収には根毛が大きく寄与する。しかし、すべての栄養素の取り込みに関わるわけではなく、カルシウムの吸収にはほとんど寄与しない。根毛以外の根の部位も栄養素を吸収し、例えば、リン酸においては、根毛の先端が取り込む。
【0021】
植物が、栄養素を表皮細胞へと取り込む方法としては、例えば、単純拡散、受動輸送、能動輸送などが挙げられる。
前記単純拡散は、酸素、二酸化炭素、アンモニアなどの非極性分子の濃度勾配に従って起こり、輸送タンパク質を介さず細胞膜上の脂質二重膜を貫通する拡散運動である。
前記受動輸送は、輸送タンパク質による、高い濃度側から低い濃度側への溶質または溶質中のイオンの移動である。植物内部の水ポテンシャルによって調節されており、これが土壌中の水ポテンシャルより負であるのとき、栄養素である無機塩の濃度が植物内部よりも土壌で高いことになり、植物への流入につながる。
前記能動輸送は、エネルギーを消費して輸送タンパク質によって行われる、低い濃度側から高い濃度側へのイオンや分子の移動である。植物の細胞膜は、細胞内外でイオン濃度が平衡であるとき-100mVから-150mVの負の電位差を持つ。ここで負の電位は、細胞の内側、正の電位は、細胞の外側である。この膜電位は、主にプロトンポンプとカリウムチャネルによるイオン輸送が釣り合うことで生じている。
前記能動輸送としては、例えば、一次能動輸送、二次能動輸送などが挙げられる。
前記一次能動輸送は、エネルギーの供給源にアデノシン三リン酸を利用する能動輸送である。
前記二次能動輸送は、プロトンやカリウムイオンなどの荷電イオンの細胞内外の濃度差(電気化学ポテンシャル差)によって生じるエネルギーを利用する能動輸送である。
【0022】
前記窒素の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、培養材料に対して0.5質量%以上5.0質量%以下が好ましい。
【0023】
前記カリウムの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、培養材料に対して1.0質量%以上5.0質量%以下が好ましい。
【0024】
前記マンガンの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、培養材料に対して0.001質量%以上0.01質量%以下が好ましい。
【0025】
前記ホウ素の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、培養材料に対して0.001質量%以上0.01質量%以下が好ましい。
【0026】
前記その他の成分としては、例えば、水、ビタミン、硫黄、鉄、マンガン、モリブデン、亜鉛、銅、塩素などが挙げられる。
【0027】
-電圧-
前記電圧は、4kV以上15kV以下であり、雑菌の繁殖の抑制、及びオゾンの過剰発生の抑制の点から、6kV以上15kV以下が好ましい。前記電圧が6kV以上であると、パッシェン則に基づき、放電する距離と、分子が加速される電圧の関係から、電極に特別な処理(材料、細さ、ガス注入など)をしておらず、大気圧である場合、ラジカル種を発生させることができる。前記電圧が、4kV以下だと、イオンを発生させることはできるが、ラジカル種を発生させることができない。培養材料に電圧を印加することで、イオンやラジカル基が生成され、例えば、水分子が分解されることでH及びOHが生成される。
【0028】
前記培養材料には、殺菌剤などが含有されていないため、種の発芽及び植物の成長を妨げる雑菌の繁殖を抑制することができないが、培養材料中に電圧を印加し、前記イオンやラジカル基を発生させることにより、殺菌剤が含まれていない前記培養材料、及び種に付着する成長に不要な雑菌が殺菌され、種の発芽及び植物の成長が促進される。また、イオンやラジカル基により、種の表面が親水化され、種の発芽及び植物の成長が促進される。
前記電圧としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、交流電圧、直流電圧などが挙げられる。これらの中でも、前記培養材料の内部まで親水化させることができる点から、交流電圧が好ましい。誘電体は、交流電圧のみが内部まで電流を通すことができるためである。前記誘電体には、植物の種も含まれる。
【0029】
前記交流電圧を印加するときの周波数は、0Hz超200kHz以下であり、8.64kHz(地磁気の周波数)以上140kHz以下が好ましい。電圧を印加するときの周波数を、地磁気の周波数と同期させることによって、発振回路、スイッチング回路、平滑整流回路が不要となり、使用電力を削減することができる。
【0030】
前記直流電圧を前記培養材料に印加するときは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、正電圧、負電圧などが挙げられる。
【0031】
前記電圧は、前記電圧印加後の培養材料のpHが5以上8以下となるまで印加することが好ましい。これは、植物の育成に適したpHの範囲より高めである。これにより、発芽後に、リンを添加する際にリン酸を培養材料に添加することでpHが約1低下し、最終的な培養材料のpHが植物の育成に適したpHとなる(JA全農肥料農学部土壌診断ガイドP.5参照)。
前記電圧を印加する前の培養材料のpHが中性であれば、電圧を印加することで、溶け込んでいる微量な軽金属などの影響により塩基性となる。その後も電圧を印加し続けると水分子が分解され、OHのみが2次ラジカルの生成に使われることから、Hのみが残り酸性となる。
【0032】
前記電圧を培養材料に印加する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、培養材料中に、第1の電極と第2の電極を配置し、第1の電極と第2の電極との間で電圧を印加する方法が挙げられる。さらに、第1の電極と第2の電極との間に誘電体を配置した誘電体バリア放電方式が好ましい。誘電体バリア放電方式による、電圧の印加によって、ストリーマ放電を発生させることができる。
【0033】
<<播種工程及び播種手段>>
前記播種工程は、培養材料に植物の種を播種する工程であり、播種手段により実施される。
【0034】
-植物-
前記植物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、サラダボウルレッド、サラダ菜、シュンギク、ピノグリーン、グレートレイクス、モヤシ、レタス、ホウレンソウ、ハーブ、トマト、キュウリ、ピーマン、イチゴなどが挙げられる。
【0035】
植物の種の播種する方法としては、例えば、散播、点播、条播などが挙げられる。
【0036】
前記培養材料に電圧を印加後、前記植物の種を播種するまでの時間は、30分間以下であり、作業上の点から5分間から15分間が好ましく、0分がより好ましい。電圧を印加することで、オゾン、それ以外のラジカル基などが培養材料中に発生する。オゾンやそれ以外のラジカル基が発生することによって、発芽及び発根の促進、発芽後の成長促進、丈夫な植物の育成が可能となる。発芽及び発根段階では、オゾンにより発芽に不要な菌が殺菌される。成長段階では、オゾン以外のラジカル基の一つとして、硝酸態窒素(窒素化合物の類として測定)が生成される。硝酸態窒素は、1次ラジカル種ではなく、2次ラジカルにて生成されるこれは、成長に寄与する(活性種のレーザー計測による大気圧ストリーマ放電の反応機構解明小野亮:東京大学大学院新領域創成科学研究)。
図18A及び18Bに示すように、50mg/hのオゾンを、エアーストーンを用いて、2時間培養材料中に印加し、グレートレイクスの育成を行った結果、発芽、発根及び成長の促進が確認され、短い育成期間で丈夫な植物を育成することができた。また、グレートレイクスの収穫時期には、オゾンは消失しており、グレートレイクスに対する害は確認されていない。これらのことから、グレートレイクスの種を播種する前に、培養材料にオゾンを印加することで、グレートレイクスの発芽、発根及び成長が促進されることが明らかである。
【0037】
前記オゾンは、培養材料への電圧の印加によって発生させる方法以外に、気体に電圧を印加させることにより気体中にオゾンを発生させ、エアーストーン、ナノバブル、イオン交換膜(電解式)などを用いて、オゾンが発生した気体を培養材料中に溶かす方法が挙げられる。
【0038】
培養材料に電圧を印加した後の、培養材料中に発生するオゾン以外のラジカル基の持続時間は、数ミリ秒以下と短く、オゾンを水に溶解した状態でも数10分も維持できないためである(活性種のレーザー計測による大気圧ストリーマ放電の反応機構解明小野亮:東京大学大学院新領域創成科学研究)。
【0039】
<<リン添加工程及びリン添加手段>>
前記リン添加工程は、植物の種の発芽後、培養材料にリンを添加する工程であり、リン添加手段により実施される。
【0040】
前記発芽とは、植物の種が発根することと同義である。
植物の種を4℃の環境下で2週間放置(恒温曹)してから、14℃の環境下で放置したところ発芽しなかった。また、冬から春、又は夏から秋にかけては、植物が本来持っている特長、日照量の変化、温度の変化、その時間にて決められた成長作用によって、発芽や成長期間、開花、結実するタイミングが決められていることは、周知である。したがって、年に決められた数/時期しか育成及び収穫はできなくなる。
【0041】
前記リンの添加量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50ppm以上450以下が好ましく、200ppm以上300ppm以下が好ましい。
前記添加は、植物の種の発芽後から7日間以内が好ましく、植物の成長の点から、3日間以内がより好ましい。リンを添加する回数としては、1回であってもよいし、複数回であってもよい。リンを培地に投与することにより、植物が、発芽後の植物の成長に不可欠であるリンを摂取することが可能となる。
前記リンの添加としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、培養材料のpHの調整の点から、リン酸として添加することが好ましい。
【0042】
<第2の実施形態の植物育成方法及び植物育成装置>
本発明の第2の実施形態の植物育成方法は、発芽工程と、成長工程と、を含み、前記発芽工程及び前記成長工程において、前記培養材料を基準電位として、種又は発芽後の植物以外の培養材料及び前記培養材料の周囲の気体の少なくともいずれかに、0Hz以上200kHz以下の周波数で、4kV以上15kV以下の電圧を印加し、更に必要に応じてその他の工程を有する。
本発明の第2の実施形態の植物育成方法に用いられる植物育成装置は、発芽手段と、成長手段と、を有し、前記発芽手段及び前記成長手段による発芽及び成長において、前記培養材料を基準電位として、種又は発芽後の植物以外の培養材料及び前記培養材料の周囲の気体の少なくともいずれかに、0Hz以上200kHz以下の周波数で、4kV以上15kV以下の負電圧を印加し、更に必要に応じてその他の手段を有する。
【0043】
<<発芽工程及び発芽手段>>
前記発芽工程は、培養材料に植物の種を播種し、培養材料を基準電位として、種以外の培養材料及び前記培養材料の周囲の気体の少なくともいずれかに、電圧を印加し、発芽させる工程であり、発芽手段により実施される。
【0044】
-培養材料-
前記培養材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、本発明の第1の実施形態で用いることができる培養材料にリンを添加したものが挙げられる。
【0045】
-植物-
前記植物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、本発明の第1の実施形態と同様のものが挙げられる。
【0046】
-気体-
前記気体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、大気などが挙げられる。
【0047】
-電圧-
前記電圧は、4kV以上15kV以下であり、雑菌の繁殖の抑制、オゾンの過剰発生の抑制の点から、6kV以上10kV以下が好ましい。
前記電圧としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、交流電圧、直流電圧などが挙げられる。これらの中でも、電圧を印加する対象物が有機質かつ誘電体であることから、細胞に直接印加可能な交流電圧が好ましい。
【0048】
前記交流電圧を印加するときの周波数は、0Hz超200kHz以下であり、8.64kHz(地磁気の周波数)以上140kHz以下が好ましい。電圧を印加する周波数を、地磁気の周波数と同期させることによって、発振回路、スイッチング回路、平滑整流回路が不要となり、使用電力を削減することができる。交流電圧により、気体に繰り返し正電圧と負電圧を印加することで、気体がマイナスに帯電しマイナスイオン、及びラジカル種が発生する。
【0049】
正電圧及び負電圧は、交番される時に、電子の向きが逆になる時間があり、いずれも使用することができる。
SDF(ストリーマ放電による定着技術)は、正電圧部分が高く、交番された高電圧の交流電圧である。
電圧印加方式は、誘電体の負荷とトランスの出力インダクタンスとの並列共振で共振エネルギーを負荷に印加するようになっている。負電圧部分は、入力電圧に電力帰還されるため、直線的に平滑される。SDFにおいては、印加する電圧が、正電圧と負電圧の両方であるため、マイナスイオンとプラスイオン(例えば、オゾンなど)が同時に発生する。
したがって、マイナスイオンの作用とオゾンの作用が、ひとつで作用効果が出ている。
空気又は水に電圧を印加したときの電流の向きから、S、及びS図1の斜線部分)は、マイナスイオンの充放電になっており、硝酸態窒素生成に寄与している。
、及びSは、プラスイオンの充放電になっており、オゾン生成に寄与している。
なお、マイナスイオン、オゾン用の高圧電源については、直流電圧が生成されており、負荷インピーダンス放電材料の特徴を生かした放電(出力電圧のリップル電圧差で放電、かつ静電気を発生させている)になっている。
【0050】
マイナスイオン量とオゾン量の比をコントロールする手段としては、複数考えられるが、図2について説明する。
なお、図2における、記号は、以下の意味を示している。
OUT:負荷(空気あるいは、水)に印加する電圧
OUT:負荷(空気あるいは、水)に流れる電流
:T期間(マイナス電圧≦VOUT=0まで)のIOUT面積
:T期間(VOUT>0 かつ IOUT=0まで)のIOUT面積
:T期間(VOUT>0 かつ VOUT=0まで)のIOUT面積
:T期間(0=VOUT>マイナス電圧)のIOUT面積
【0051】
図2のVOUTが、0Vと交差する縦線をM1、及びM2(M1<M2)とおく。VOUTの0Vと交差する横線を下(電圧が低い方)に移動すると、M1がM11にとなり、M2がM12となる。同時に、SがS11、SがS41となり、面積が広がる。同時に、SがS21、SがS31となり、面積が縮小する。このように、マイナスイオン量とオゾン量の量比をコントロールすることができため、農業以外の他の産業用途に使用することができる。
図1において、電圧と電流の役割は、空気又は水に印加した場合にマイナスイオン、及びプラスイオンを発生させることである。
【0052】
印加電力量のコントロールについて説明する。
電力関数P(T)は、水、又は空気に印加するVOUT・IOUTの積であることから理想状態においての並列共振の出力電圧V(T)は、下記式(1)で表される。
V(T)=VOUTSin(ωT)・・・式(1)
(ただし、VOUTは最大値(V)、ωは角周波数を表し、ωは、LC共振状態のときの共振周波数Fに対して、ω=2ΠFの関係がある)
よって、共振状態にある共振角周波数ωは、下記式(2)で表される。
ω =1/LC・・・式(2)
また、出力電流I(T)は、下記式(3)で表される。
I(T)=IOUTCos(ωT)・・・式(3)
これは、(1)に対して、位相が、1/2π rad進んでいることになる。
したがって、出力負荷Cには、式(1)、(2)の積
(電力P(T))が印加される。
三角関数の加法定理より、電力P(T)は、下記式(4)で表される。
P(T)=VOUTSin(ωT)・IOUTCos(ωT)
=VOUT・IOUT・(Sin(ωT+ωT)+SIN(ωT-ωT))/2
=((VOUT・IOUT・SIN(2ωT))/2)・・・(4)
よって、出力電力の最大値PMAXは、下記式(5)で表される。
MAX=VOUT・IOUT/2・・・(5)
最大値PMAXは、VOUT・IOUT/2以上にはならない。
【0053】
最大電力値及び最小電力値は、図2の(T+T)/2及び(T+T)/2に該当する。
したがって、負荷は、インピーダンスであるため、実質的な損失を導き出すためには、マイナスイオンを発生させる電力に該当する皮相電力を、W及びW、オゾンを発生させる電力に該当する皮相電力を、W及びWとすれば、マイナスイオンに寄与する放出(光や、熱、マイナスイオン生成)の実質電力損失(RM)は、下記式(6)で表される。
RM=||W|-|W||・・・(6)
同様に、オゾンに寄与する放出(光や、熱、オゾン生成)の実質電力損失(RN)は、下記式(7)で表される。
RN=||W|-|W||・・・・・・・・・・・・・(7)
【0054】
前記直流電圧を前記培養材料に印加するときは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、正電圧、負電圧などが挙げられる。
前記直流電圧を前記気体に印加するときは、負電圧である。気体に負電圧を印加することで、気体がマイナスに帯電しマイナスイオンが発生する。
【0055】
直流の正電圧は、正電圧の電極に負電圧の電荷が集まり、プラスイオン及びマイナスイオンが空気中に拡散しない。
直流の負電圧は、空気で絶縁された正電圧との距離があり、電荷は、負から正にいくことから、電極近傍に集まらない。したがって、負電荷が、空中に拡散し、45cmのプラスチックの水槽に、常時LED照明と空気の循環を行い、水溶液による植物の根腐れを防止するために空気を根の近くで印加(55分間経過ごとに5分間印加する)させる手法で、マイナスイオンが全体に拡散される。
【0056】
前記電圧を印加する方法としては、例えば、誘電体バリア放電方式、電磁誘導などが挙げられる。
【0057】
前記電磁誘導は、発振子が発振することにより、コイルから電圧が誘起されることで、電圧を印加する方法である。
前記コイルとしては、電磁誘導により電圧を発生させることができる誘導コイルであれば特に制限はなく、例えば、空芯コイル、高周波コイルなどが挙げられる。これらの中でも、空芯コイルが好ましい。
前記コイルの構造としては、例えば、数百mから数kmの導体が複数巻かれ、導体の終端が開放された構造が挙げられる。
前記コイルとしては、電波を受信できるものが好ましい。これにより、植物育成容器内の気体への電圧の誘起を調節することができる。
【0058】
前記発振子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、水晶発振子、セラミック発振子などが挙げられる。
前記発振子の周波数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、8.64kHz(地磁気)などが挙げられる。発振子が地磁気の周波数で発振することにより、磁束が変動し、コイルから電圧が誘起される。
【0059】
前記コイルは、植物育成容器内における植物育成エリアの外周に配置されており、電磁誘導でコイルから電圧が誘起されると、植物育成容器内を満たしている気体に電圧が印加される。電圧が印加された気体中に生じるマイナスイオンによって、植物育成エリア内の植物の種の発芽が促進される。
前記植物育成容器内におけるコイルの数は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、複数あることが好ましい。植物育成エリアの外周以外にも、植物育成エリアの上部にコイルを配置することで、植物育成容器内によりマイナスイオンを発生させることができる。
【0060】
前記マイナスイオンの量としては、イオンカウンターにて、500,000個/cc以上1,000,000個/cc以下が好ましい。マイナスイオンの量が、500,000個/cc以上1,000,000個/cc以下であることで、種の播種から30日後の植物の重量が増加する。
【0061】
<<成長工程及び成長手段>>
前記成長工程は、培養材料を基準電位として、発芽後の植物以外の培養材料及び前記培養材料の周囲の気体の少なくともいずれかに、電圧を印加し、発芽後の植物を成長させる工程であり、成長手段により実施される。
【0062】
-電圧-
前記電圧は、4kV以上15kV以下であり、雑菌の繁殖の抑制、オゾンの過剰発生の抑制の点から、6kV以上10kV以下が好ましい。前記電圧が4kV以上だと、確実にラジカル種を生成することができ、15kV以下だと、2次ラジカル種が過剰に発生しない。前記電圧が15kV以上であると、オゾンしか発生しなくなる。
前記電圧としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、交流電圧、直流電圧などが挙げられる。これらの中でも交流電圧が好ましい。
【0063】
前記交流電圧を印加するときの周波数は、0Hz超200kHz以下であり、8.64kHz(地磁気の周波数)以上140kHz以下が好ましい。電圧を印加する周波数を、地磁気の周波数と同期させることによって、発振回路、スイッチング回路、平滑整流回路が不要となり、使用電力を削減することができる。交流電圧により、気体に繰り返し正電圧と負電圧を印加することで、気体がマイナスに帯電しマイナスイオンが発生する。
【0064】
前記直流電圧を前記培養材料に印加するときは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、正電圧、負電圧などが挙げられる。
前記直流電圧を前記気体に印加するときは、負電圧である。気体に負電圧を印加することで、気体がマイナスに帯電しマイナスイオンが発生する。
【0065】
前記電圧を印加する方法としては、例えば、電磁誘導などが挙げられる。
【0066】
前記電磁誘導は、発振子が発振することにより、コイルから電圧が誘起されることで、電圧を印加する方法である。
前記コイルとしては、電磁誘導により電圧を発生させることができる誘導コイルであれば特に制限はなく、例えば、空芯コイル、高周波コイルなどが挙げられる。これらの中でも、空芯コイルが好ましい。
前記コイルの構造としては、例えば、数百mから数kmの導体が複数巻かれ、導体の終端が開放された構造が挙げられる。
前記コイルとしては、電波を受信できるものが好ましい。したがって大きな面積であることが好ましい。これにより、磁束が鎖交し、植物育成容器内の気体への電圧の誘起を調節することができる。
【0067】
前記発振子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、水晶発振子、セラミック発振子などが挙げられる。
前記発振子の周波数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、8.64kHz(地磁気)などが挙げられる。発振子が地磁気の周波数で発振することにより、磁束が変動し、コイルから電圧が誘起される。
【0068】
前記コイルは、植物育成容器内における植物育成エリアの外周に配置されており、電磁誘導でコイルから電圧が誘起されると、植物育成容器内を満たしている気体に電圧が印加される。電圧が印加された気体中に生じるマイナスイオンによって、植物育成エリア内の植物の成長が促進される。
前記植物育成容器内におけるコイルの数は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、複数あることが好ましい。植物育成エリアの外周以外にも、植物育成エリアの上部にコイルを配置することで、植物育成容器内によりマイナスイオンを発生させることができる。
【0069】
前記マイナスイオンの量としては、500,000個/cc以上1,000,000個/cc以下が好ましい。マイナスイオンの量が、500,000個/cc以上1,000,000個/cc以下であることで、種の播種から30日後の植物の重量が増加する。
【0070】
ここで、本発明の植物育成方法及び植物育成装置の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
本発明の植物育成方法には、本発明の植物育成装置が用いられるため、以下の本発明の植物育成装置の説明を通じて、本発明の植物育成方法の実施形態について説明する。
なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。また、下記構成部材の数、位置、形状等は本実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好ましい数、位置、形状等にすることができる。
【0071】
(第1の実施形態)
図3は、第1の実施形態の植物育成方法に用いられる植物育成装置の一例を示す概略図である。
この図3の植物育成装置100は、植物育成容器110、培養材料120、気体130、第1の電極140a、第2の電極140bを有している。
【0072】
リンを含まない培地からなる培養材料120に、図3に示すように電極140aと140bを配置し、電極140aと電極140bの間に4kV以上(好ましくは、6kV以上)15kV以下で0Hz以上200kHz以下の繰り返し正負電圧を印加する。このとき、培地のpHが、育てる植物150に適した範囲(pH5以上7以下)に到達するまで印加する。その後、培養材料120に種を播種し、発芽後7日間以内に、培養材料120にリンを添加する。
【0073】
植物の種の発芽から3日以内に、リンを培地に添加し、植物を育成したところ、成長後の植物の体長及び重量が増加した。
【0074】
第1の実施形態の植物育成方法を用いて、実際に、サラダ菜、グレートレイクス、サラダボウルレッド(レタス系)の育成を行った。リンを含有しない培地に、電力35W、22kHzで8kVの電圧を印加し、電圧を印加後、サラダ菜、グレートレイクス、サラダボウルレッドの種を播種した。種が発芽してから3日後に、培地に0.6質量%のリン酸を添加し、植物の育成を行った。
その結果、種の播種から発芽までの期間は1日、発芽率はほぼ100%であった。本発明の植物育成方法の第1の実施形態を用いていない方法(通常の育成方法)によると、種の播種から発芽までの期間が3日から7日、発芽率も50%~90%とばらつきが確認された。また、本発明の第1の実施形態では、サラダボウルレッドの収穫量は、通常の育成方法の1.6倍、育成期間27日間(通常の育成方法は、41日間)であり、収穫量が増加し、育成期間が短縮された(図4参照)。
【0075】
図5A及び図5Bは、水道水4Lに、電力15W、周波数22kHzで7kVの電圧を印加し、30日間放置した後の水道水の写真である。室内温度22℃、湿度50%から90%、15畳の実験室において、約10日間は、菌が増加していないことがわかった。水中に電圧を印加しプラズマを発生させたものが、最も細菌の繁殖を抑制できた(図6参照)
【0076】
図7A及び図7Bは、培地に電圧(6.5kVac、15W、6h)を印加した後、10本の八重椿(体長15cm)を電圧が印加された培地に挿し木をし、一日中日光があたらない場所に5本、4時間日光が当たる場所に5本配置した。前者は5本のうち2本、後者は5本のうち0本の定着であったが、少なくとも1ケ月後には、発根していた。このように電圧を印加することで挿し木が、難しい類でも根が活性化され、発根が促進されることが分かった。
【0077】
プラズマのいかなる種類(イオン、ラジカル基)が、下記に述べる機能上の作用(細胞を活性化)をしているのかは、現在までのところ明らかではない。本発明の第1の実施形態の植物育成方法は、種の親水化、活性化、発芽率の向上、発芽までの日数の短縮、根の発根作用、根の伸張促進、病原菌に対しての予防、発芽後の成長のばらつきが小さい(比較的均一)、植物の成長が早いなどの効果が確認され、無農薬で品質のばらつきが少なく、安全な高付加価値のある、丈夫な植物、葉物野菜を提供することができ発明の効果は、絶大である。これらの効果については、実験例1~5の結果から明らかである。
【0078】
(第2の実施形態)
図8は、第2の実施形態の植物育成方法に用いられる植物育成装置の一例を示す概略図である。
この図8の植物育成装置100は、植物育成容器110、培養材料120、気体130、第1の電極140a、第2の電極140b、植物150を有している。
図8は、培地、培養土などの培養材料120を用いて、種を早期に発芽させるために、電極140a及び電極140bによって、種又は発芽後の植物150以外の培養材料120及び前記培養材料120の周囲の気体130の少なくともいずれかに、培養材料120を基準電位として、0Hz以上200kHz以下の周波数で、4kV以上15kV以下の繰り返し負電圧を印加する。
【0079】
図8は、電圧を印加し、植物育成容器110内の気体130をマイナス帯電させることで、電圧の印加によって改質された空気130がマイナスイオン化され、マイナスイオン化された空気が、植物150内に入るまでに、化学反応により硝酸態窒素が生成されると報告されている(図9参照)。
【0080】
図10は、植物の成長過程における、硝酸態窒素の含有量の好ましい範囲を示した概略図である。
必須栄養素の窒素は、葉、茎などの細胞に必須であるが、発芽したてや苗などの十分育っていない状態では、十分成長した状態の植物と同じ量の窒素を摂取すると根くされが生じ、成長が遅くなる。これに対して、植物が収穫できるまで成長した状態では、窒素は不要となる。人間が野菜などから過剰な硝酸態窒素を摂取すると健康被害がでるということが一般的に知られている。
したがって、植物の成長段階に応じて、硝酸態窒素(窒素の供給源として)の量を適量まで増加又は減少させることが好ましい。
硝酸態窒素の量を増加させる方法としては、負電圧の領域を大きくする方法が挙げられる。具体的にいえば、電圧をさらに下げる(例えば、-4KVから-6KVに電圧を下げる)、高周波化する、イオン交換膜(電解式)を使って、電圧を印加するなどによって発生するラジカル種を数十秒から30分間維持できるようにする方法が挙げられる。
硝酸態窒素の量を減少させる方法としては、植物育成容器内の気体への電圧の印加を停止する方法などが挙げられる。
【0081】
培養材料120、空気130などに高電圧を印加すると分子が電離し、OH(水酸基)又は硝酸態窒素が発生する。これと同時に、1eVから10eVの電子エネルギーを得るために、吸熱反応が起こる。この作用は、培養材料120、空気130などに負電圧を印加する場合に限って発生するもので、正電圧を印加する場合は、電極にマイナスイオンの極性が集中し、広範囲の空間に広がらない。
【0082】
また、負電圧を印加する場合は、マイナスイオン(OH)、及びプラスイオン(H)の両方が発生するが、マイナスイオン(OH)は、空気中のCO、O、Nなどと中和反応をするため、多く使用される。このことから、プラスイオン(H)がマイナスイオン(OH)に比べて多くなり、酸性となる。
正電圧を印加場合は、陽電極の周りに、マイナスイオンが集まり、広がらないため、すぐに酸性となる。したがって、このラジカル種を増やすためには、運動エネルギーの印加が必要になる。
【0083】
水耕栽培(45cm未満の水槽くらいの容積)にて、電力0.4W、電圧4kVdc以上6kVdc以下で沿面放電を行い、マイナスイオンを発生させたところ、硝酸態窒素(窒素養分)量の増加が確認されたが、硝酸態窒素量と収穫量は比例しておらず、収穫量が増加したのは、マイナスイオン量が500,000個/cc以上1,000,000個/ccのときであり、最も収穫量が増加したのは、マイナスイオン量が500,000個/ccのときだった(図11A参照)。
図11Bは、サラダ菜を育成し、500,000個/ccのマイナスイオンを発生させた植物育成装置内の硝酸態窒素濃度を、25日間(5日間ごとに測定)測定した図である。
図11Bより、時間経過とともに硝酸態窒素濃度が上昇していることが確認された。これは、植物育成容器内の気体に、常に電圧が印加されていることにより、硝酸態窒素が補充されているためと考えられる。植物育成装置内の気体に電圧を印加してから20日後には、硝酸態窒素の濃度が130ppm増加(23%の増加)していたが、20日以降から硝酸態窒素濃度が著しく減少している。これは、サラダ菜が本格的に成長するために硝酸態窒素が、使われたためである。硝酸態窒素は、成長度合いに応じて消費する量が変化するため、必要な量も変化する。
電圧印加後の硝酸態窒素の含有量としては、120ppm以上900ppm以下が好ましく、440ppm以上650ppm以下がより好ましい。
【0084】
なにも処理をしていない通常の育成方法において、マイナスイオンの量が変化している原因は、通常の育成方法を用いた装置の設置場所が、第2の実施形態を用いた装置から50cm以内であるためと考えられる。本来は、よりマイナスイオン量、及び収穫量の差が確認されると考えられる。
【0085】
植物の種の発芽向上、及び植物の成長効果が確認された電圧は、4kV以上(好ましくは、6kV以上)15kV以下、かつ周波数0Hz以上140kHz以下の繰り返し負電圧であった。電圧が15kVを超えると、マイナスイオン量が増えるが、同時にオゾン量が増え、オゾンが残留しやすいため、常に植物育成装置内に電圧を印加し続ける第2の実施形態では、植物の生育が止まり、不適である。
【0086】
(第3の実施形態)
第3の実施形態は、培地のみに、8.64kHz以上200kHz以下の周波数で、4kV以上15kV以下の繰り返し正負電圧を印加し、電圧の印加による放電がストリーマ放電である。
【0087】
培養材料に印加する電圧は、4kV以上(好ましくは、6kV以上)15kV以下、かつ8.64kHz以上(地磁気)200kHz以下の繰り返し正負電圧又は負電圧でも作用効果は、十分に確認された。
【0088】
第3の実施形態では、効率的に使用電力量を下げ、簡易な電源供給にて、種の発芽率の向上、発芽までの日数の短縮化、種の親水化、根の発根作用、根の伸張促進、病原菌に対しての予防、収穫量の増大、育成期間の短縮が得られる作用を低下させずに達成可能な手段が得られる方法を検討した。
【0089】
地磁気の周波数に同期させた電圧を印加させることによって、地上には、効率的(電力の低減:発振回路、商用からの回路やスイッチング回路、平滑整流回路が不要)であっても繰り返しの電圧が発生可能となる。数百mWであるが、印可可能となった。ストリーマ放電であれば、面で均一な処理が可能になるため、回路素子の大型化にならず、効率的である。
【0090】
(第4の実施形態)
図12は、第4の実施形態の植物育成方法に用いられる植物育成装置の一例を示す概略図である。
この図12は、表面に第1の電極部410aと、前記第1の電極部410aの内側に誘電体部420と、前記誘電体部420の内側に第2の電極部410bを有する円筒状容器400を用い、前記誘電体部420の内側を培養材料が循環し、前記第1の電極部410aと前記第2の電極部410bとの間に、電圧を印加することにより、ストリーマ放電を発生させる。
【0091】
誘電体部420と第2の電極部410bの間には、隙間があり、その隙間に空気、水、水蒸気、又は培養材料が循環する。
【0092】
図12は、第1の電極部410aと第2の電極部410bとの間に誘電体部420を有する、誘電体バリア放電方式(図13参照)であり、第1の電極部410aを基準電位として、第1の電極部410aと第2の電極部410bとの間で電圧を印加する。これによって発生したプラズマが、空気、水、水蒸気、又は培養材料を改質する。
プラズマは、専用のインバータとDC電源(例えば、特開2010-186984、特開2011-57442、特開2012-133206、特開2012-191828)を用いて、13kVの高圧パルスをかけることにより発生させる。
【0093】
隙間(エアギャップ)は、0.5mm以上2mm以下であり、2mmを超えると、アーク放電による誘電体部420の絶縁破壊にいたるため、過大電流により誘電体部420と印加する電源の故障につながる。誘電体部420の厚みは、0.5mm以上2mm以下である。実験では、誘電体部420としてガラス内部に気胞が少ない点から、石英ガラスを使用した。この隙間に放電電流が流れ、そこに改質したい水、水蒸気、空気が入る。その周りにも改質作用は生じる。
【0094】
円筒状であり、放熱作用がある、基準電位の第1の電極部410aと第2の電極部410bの間に放電経路が生じる。円柱状の第2の電極部410bと、円筒状の第1の電極部410aとが同心円状となるように配置すると、第1の電極部410aと第2の電極部410b間で電圧を印加しても放電が開始しなかった。
図12のように、円筒状容器の構造としては、放電しやすい経路を設けるような形状(正多角形、印加したい電力量に応じて電極部Bの本数を変えることができる)が考えられるが、形状が目的ではなく、誘導体420の内側を、水、水蒸気、空気が循環されることを目的としている。なお、水を改質する場合は、循環させる水に放熱性の作用がある。
【0095】
電圧の印加極性は、電極部410aと電極部410bが逆でもよい。負に帯電したい場合は、逆接続とすることで印可させる電源を変更する必要はないためである。外部に出る不要輻射ノイズなどを鑑みて、外側の電極部を基準電位とし、放熱性を加味することが好ましい。
【0096】
(第4の実施形態の変形例1)
図14は、第4の実施形態の変形例の植物育成方法に用いられる植物育成装置の一例を示す概略図である。
第4の実施形態の変形例1は、第4の実施形態において、第2の電極部410bが正多角形の形状をしており、第2の電極部410bの角と誘電体部420の間には、放電を開始するために、面積が小さい均一な距離がある構造となっている。この構造によって、電圧を印加後、均一なストリーマ放電を起こすことができる。
第2の電極部410bは、内部が密閉でも一部空洞でもよく、第2の電極部410bの角の形状は、円筒状容器400が円柱状の場合、丸い形状であることが好ましい。
【0097】
(第5の実施形態)
第5の実施形態は、第4の実施形態において、円筒状容器400の内部に、側周面に貫通孔440を設けた種収容部430を有し、第2の電極部410bと隣接する種収容部430が互いに接していない。
【0098】
第2の電極部410bと隣接する種収容容器430との間の距離は、1.5cm以上2.0cm以下が好ましい。前記距離が2.0cm以下であることで、電圧を印加した培養材料中のラジカル基が消失しないうちに種に作用することができる。また、前記距離が1.5cm以上であることで、電圧印加後の培養材料が種に作用するまでに、培養材料中でのラジカル種の生成を間に合わせることができる(パッシェンの法則より、電子が加速されるまでの距離が1.5cm未満であると距離不十分になり電子エネルギーが運動エネルギーにならないため、2次ラジカル種に十分変移しない)。
【0099】
種収容部430内には、前記距離の範囲内に育成したい種を収容することができる。
種収容部430は、側周面に貫通孔440を複数有し、貫通孔440は、植物の種が収容部430から飛び出さないように、植物の種の大きさによって直径を設定することができる(図15参照)。電圧を印加した空気、水溶液、水蒸気などは、貫通孔440を介して種収容部430内を出入りする。これによって、電圧を印加した後の培養材料中のラジカル基が消失しないうちに種の活性化、種の表面(種の殻部分にあたる表面)の親水化を促進させることができる。
【0100】
種収容部430の形状の構造は、円筒状容器400から、取り出すことができる形状であれば特に制限はなく、例えば、ビス止めができる構造などが挙げられる。
【0101】
種収容部430は、非導電性である。これにより、ラジカル基が再度分子結合することを防ぐことができる。
【0102】
種収容部430は、電極部410aと電極部410bの放電経路上には配置されない。しない。これにより、種に直接電圧が印可され、種が死滅することを防ぐことができる。
【0103】
電圧の印加時間は、種の種類に応じて実験検証で決めることができるが、数分以内である。
【0104】
(第6の実施形態)
図16は、第6の実施形態の植物育成方法に用いられる植物育成装置の一例を示す図である。
図16は、第4の実施形態において、電圧を印加後の培養材料を収容する植物育成容器の材質が、珪素及びフッ素のいずれかである。
電圧印加後の培養材料は、植物の育成に用いるために、植物を育成する植物育成容器内に移される。
【0105】
植物育成容器は、非結晶質の珪素又はフッ素を主成分とした容器であり、容器内に収容した培養材料に種を播種することができる(図16参照)。
【0106】
電圧印加後の空気、水溶液又は水蒸気は、発生したラジカル基などが元の状態に戻りやすいため、植物育成容器内で保持する必要がある。植物育成容器の材質としては、非結晶質の珪素、フッ素などが好ましい。本発明者は、容器の材料としていくつか検証した結果、ポリプロピレン樹脂より、非結晶質の珪素又はフッ素を主成分とした容器のほうが、育成の結果10%成長が早いという結果が得られた。植物育成容器が、金属容器である場合は、金属表面に直接触れる空気、水溶液又は水蒸気中のイオンやラジカル基が分子に戻ってしまうため、使用することができない。
【0107】
電圧印加後の空気、水溶液又は水蒸気を植物育成容器に戻す方法としては、空気又は水蒸気は、エアーストーンを用いて植物育成容器内の溶媒に溶かす方法が挙げられ、培養材料は、循環システムを用いて植物育成容器に移される方法が挙げられる。
【0108】
(第7の実施形態)
図17は、第7の実施形態の植物育成方法に用いられる植物育成装置の一例を示す図である。
図17の植物育成装置は、第2の実施形態において、電圧を印加するときに高電圧誘導コイルを用いる。
植物育成容器110内に培養材料120が配置され、培養材料120上に植物育成エリアを有し、植物育成エリア内は気体が充満されている。植物育成エリアには、導線が複数巻かれ、終端が開放された、導体からなる空芯コイル160が配置されている。
【0109】
空芯コイル160は、数百m~数kmの導体を複数巻いた構造をしている。
発振子が、地磁気周波数を用いて磁束誘導させ、電圧を誘起させることで、植物150の周りに電圧を常時発生させることができる。その電圧により、気体130、及び培養材料120を改質させることができる。
【0110】
(第8の実施形態)
第8の実施形態は、第7の実施形態において、空芯コイル160が、電波受信で作用する植物育成方法である。
【0111】
空芯コイル160としては、電波受信で作用する高電圧誘導コイルを用いることもできる。
空芯コイル160は、単独で用いることもできるが、磁気結合可能な電圧が印加された別の空芯コイル160が、培養材料120又は気体130中に配置されていてもよく、これによって昇圧された空芯コイル160により電圧を発生させることができる。その電圧で、気体130又は培養材料120を改質させることができる。
【0112】
以下、第1の実施形態を具体的に実験例で説明するが、本発明はこれらの実験例に限定されるものではない。
【0113】
(実験例1)
植物育成容器(大きさ:45cm)内に、水4Lと下記組成の培地30mLとの混合溶液を配置し、混合溶液に浸るようにスポンジを配置した。前記混合溶液に、電力35W、周波数22kHzで、8kVの電圧を3時間印加した。
[培地の組成]
・窒素 1.3質量%
・カリウム 1.9質量%
・苦土 0.32質量%
・マンガン 0.008質量%
・ホウ素 0.008質量%
混合溶液に電圧を印加後、スポンジの上にサラダボウルレッドの種を14粒播種した。種を播種後、植物育成容器内の気体に、電力35W、周波数22kHzで、8kVの電圧を常時印加した。育成期間中は、常時、LED照明からの光を照射し、植物育成容器内の空気の循環を行った。また、サラダボウルレッドの根付近に、エアーストーンを設置し、常時、混合溶液中に空気を印加した。サラダボウルレッドの種の発芽から3日後に、リン酸0.6質量%を添加し、温度25℃~27℃でサラダボウルレッドの育成を行った。
【0114】
(実験例2)
実験例1において、種を播種後、植物育成容器内の気体に、電圧を印加しなかった以外は、実験例1と同様にして、サラダボウルレッドを育成した。
【0115】
(比較実験例1)
実験例2において、混合溶液に電圧を印加しなかった以外は、実験例2と同様にして、サラダボウルレッドを育成した。
【0116】
(比較実験例2)
比較実験例1において、混合溶液中の培地を、下記組成の培地に変更した以外は、比較実験例1と同様にして、サラダボウルレッドを育成した。
[培地の組成]
・窒素 1.3質量%
・リン酸 0.6質量%
・カリウム 1.9質量%
・苦土 0.32質量%
・マンガン 0.008質量%
・ホウ素 0.008質量%
【0117】
実験例1~2及び比較実験例1~2において、発芽率、種を播種してから収穫までの日数、種を播種してから30日後の植物の体長、及び3株の重量を測定した。測定結果を表1に示す。
【0118】
[発芽率]
実験例1~2及び比較実験例1~2における、発芽率は、以下の式によって求められる。
発芽率(%)=発芽した種の数(個)/播種した種の数(個)×100・・・式(1)
【0119】
[種を播種してから収穫までの日数]
収穫日としては、発芽した植物の体長の平均が、16cmに達した日とする。
【0120】
【表1】
【0121】
以下、第2の実施形態を具体的に実験例で説明するが、本発明はこれらの実験例に限定されるものではない。
【0122】
(実験例3)
植物育成容器(大きさ:45cm)内に、水4Lと下記組成の培地30mLとの混合溶液を配置し、混合溶液に浸るようにスポンジを配置した。前記スポンジ上にサラダ菜の種を播種した。
[培地の組成]
・窒素 1.3質量%
・リン酸 0.6質量%
・カリウム 1.9質量%
・苦土 0.32質量%
・マンガン 0.008質量%
・ホウ素 0.008質量%
【0123】
植物育成容器内の気体に電力0.3Wで4.3kVの負電圧を印加した。イオンカウンター、溶存オゾン計を用いて、電圧印加開始時(初期)の植物育成容器内のイオン量及びオゾン量を測定したところ、イオン量は500,000個/cc以上、オゾン量は39ppmであった。また、気体中の硝酸態窒素の濃度は、440mmppmであった。
育成期間中は、常時、LED照明からの光を照射し、植物育成容器内の空気の循環を行った。また、サラダボウルレッドの根付近に、エアーストーンを設置し、常時、混合溶液中に空気を印加した。サラダ菜の種の播種から30日間、温度25~27℃、一日の日照時間16時間の環境下において、サラダ菜の育成を行った。
【0124】
(実験例4)
実験例3において、電力0.3Wで4.3kVの負電圧を、電力0.55Wで5.5kVの負電圧に変更した以外は、実験例3と同様にして、植物の育成を行った。電圧印加開始時のイオン量は、1,800,000個/cc以上、オゾン量は500mmppmであった。また、気体中の硝酸態窒素の濃度は、550mmppmであった。
【0125】
(実験例5)
実験例3において、サラダ菜をシュンギクに変更した以外は、実験例3と同様にして、植物の育成を行った。電圧印加開始時のイオン量は、500,000個/cc以上、オゾン量は39ppmであった。また、気体中の硝酸態窒素の濃度は、470mmppmであった。
実験例5の目的は、プラズマ印加したときに、発芽率が低いシュンギクにおいて、発芽率、成長度合い、品質のばらつきを確認することである。
【0126】
(実験例6)
実験例3において、サラダ菜をピノグリーンに変更した以外は、実験例3と同様にして、植物の育成を行った。電圧印加開始時のイオン量は、500,000個/cc以上、オゾン量は39ppmであった。また、気体中の硝酸態窒素の濃度は、470mmppmであった。
【0127】
実験例3~6において、種を播種してから30日後の植物の体長及び3株の重量を測定した。測定結果を表2に示す。なお、表2の電圧(kV)の項目におけるマイナスの符号は、負電圧を印加したことを意味している。
【0128】
【表2】
【0129】
以下、オゾンが種の発芽及び植物の成長に与える影響についての実験例を説明する。
【0130】
(実験例7)
植物育成容器(大きさ:45cm)内に、水4Lと下記組成の培地30mLとの混合溶液を配置し、混合溶液に浸るようにスポンジを配置した。前記スポンジ上にグレートレイクスの種を播種した。
[培地の組成]
・窒素 1.3質量%
・リン酸 0.6質量%
・カリウム 1.9質量%
・苦土 0.32質量%
・マンガン 0.008質量%
・ホウ素 0.008質量%
【0131】
植物育成容器内の気体に電力0.3Wで6.5kVの正電圧を印加し、植物育成容器内の気体にオゾンを発生させた。電圧印加開始時の植物育成容器内のオゾン量を測定したところ、オゾン量は2.5mg/Hであった。また、気体中の硝酸態窒素の濃度は、690mmppmであった。
育成期間中は、常時、LED照明からの光を照射し、植物育成容器内の空気の循環を行った。また、サラダボウルレッドの根付近に、エアーストーンを設置し、常時、混合溶液中に空気を印加した。グレートレイクスの種の播種から30日間、温度25~27℃、一日の日照時間16時間の環境下において、グレートレイクスの育成を行った。
【0132】
(比較実験例3)
実験例7において、植物育成容器内の気体に電圧を印加しなかった以外は、実験例7と同様にして、グレートレイクスを育成した。
【0133】
実験例7及び比較実験例3において、種を播種してから30日後の植物の体長及び3株の重量を測定した。測定結果を表3に示す。また、実験例7及び比較実験例3において、根の成長の度合いを目視で確認した。実験例7の結果を図18Aに示し、比較実験例3の結果を18Bに示す。
【0134】
【表3】
【0135】
本発明の態様としては、例えば、以下のとおりである。
<1> リンを含まない培養材料に、0Hz以上200kHz以下の周波数で、4kV以上15kV以下の電圧を印加する電圧印加工程と、
前記電圧印加工程の後、前記培養材料に植物の種を播種する播種工程と、
前記植物の種の発芽から7日間以内に、前記培養材料にリンを添加するリン添加工程と、を含むことを特徴とする植物育成方法である。
<2> 前記植物の種を播種するときの培養材料のpHが、5以上8以下である前記<1>に記載の植物育成方法である。
<3> 前記リン添加工程において、植物の種の発芽から3日間以内に、前記培養材料を添加する前記<1>から<2>のいずれかに記載の植物育成方法である。
<4> 前記リン添加工程において、前記培養材料にリン酸を添加する前記<1>から<3>のいずれかに記載の植物育成方法である。
<5> 培養材料に植物の種を播種し、発芽させる発芽工程と、
発芽後の植物を成長させる成長工程と、を含み、
前記発芽工程及び前記成長工程において、前記培養材料を基準電位として、種又は発芽後の植物以外の培養材料及び前記培養材料の周囲の気体の少なくともいずれかに、0Hz以上200kHz以下の周波数で、4kV以上15kV以下の電圧を印加することを特徴とする植物育成方法である。
<6> 前記培養材料が培地及び培養土のいずれかである前記<1>から<5>のいずれかに記載の植物育成方法である。
<7> 前記電圧を印加するときに、8.64kHz以上200kHz以下の周波数で、4kV以上15kV以下の電圧を印加する前記<1>から<6>のいずれかに記載の植物育成方法である。
<8> 表面に第1の電極部と、前記第1の電極部の内側に誘電体部と、前記誘電体部の内側に第2の電極部を有する円筒状容器を用い、前記誘電体部の内側を培養材料が循環し、前記第1の電極部と前記第2の電極部との間に、電圧を印加することにより、ストリーマ放電を発生させる前記<5>から<7>のいずれかに記載の植物育成方法である。
<9> 前記円筒状容器の内部に、側周面に貫通孔を設けた種収容部を有し、前記第2の電極部と隣接する種収容部が互いに接していない前記<8>に記載の植物育成方法である。
<10> 電圧を印加後の培養材料を収容する植物育成容器の材質が、珪素及びフッ素のいずれかである前記<5>から<9>のいずれかに記載の植物育成方法である。
<11> 前記成長工程において、電圧を印加するときに高電圧誘導コイルを用いる前記<5>から<10>のいずれかに記載の植物育成方法である。
<12> リンを含まない培養材料に、0Hz以上200kHz以下の周波数で、4kV以上15kV以下の電圧を印加する電圧印加手段と、
前記培養材料に植物の種を播種する播種手段と、
前記植物の種の発芽から7日間以内に、前記培養材料にリンを添加するリン添加手段と、を有することを特徴とする植物育成装置である。
<13> 培養材料に植物の種を播種し、発芽させる発芽手段と、
発芽後の植物を成長させる成長手段と、を有し、
前記発芽手段及び前記成長手段による発芽及び成長において、前記培養材料を基準電位として、種又は発芽後の植物以外の培養材料及び前記培養材料の周囲の気体の少なくともいずれかに、0Hz以上200kHz以下の周波数で、4kV以上15kV以下の負電圧を印加することを特徴とする植物育成装置である。
【0136】
前記<1>から<11>のいずれかに記載の植物育成方法、及び前記<12>から<13>に記載の植物育成装置によると、従来における前記諸問題を解決し、前記本発明の目的を達成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0137】
【文献】特開2017-228423号公報
【文献】特開2004-187540号公報
【符号の説明】
【0138】
100 植物育成装置
110 植物育成容器
120 培養材料
130 気体
140a 電極
140b 電極
150 植物
160 空芯コイル
400 円筒状容器
410a 電極部
410b 電極部
420 誘電体部
430 種収容部
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18A
図18B