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特許7192595構造物検出装置、構造物検出方法および構造物検出処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】構造物検出装置、構造物検出方法および構造物検出処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 17/89 20200101AFI20221213BHJP
   G01S 17/86 20200101ALI20221213BHJP
   G06T 17/30 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
G01S17/89
G01S17/86
G06T17/30
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019049762
(22)【出願日】2019-03-18
(65)【公開番号】P2020153687
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(72)【発明者】
【氏名】井上 雅晶
(72)【発明者】
【氏名】清水 智弥
(72)【発明者】
【氏名】本多 竜二
(72)【発明者】
【氏名】押田 博之
【審査官】安井 英己
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-058911(JP,A)
【文献】特開平04-155211(JP,A)
【文献】特開2009-068951(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0014395(US,A1)
【文献】特開2013-088999(JP,A)
【文献】特開2017-166846(JP,A)
【文献】特開2015-084171(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107392987(CN,A)
【文献】特開2018-156408(JP,A)
【文献】特開2004-272459(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48- 7/51,
G01S 17/00-17/95,
G06T 17/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサを有し、
前記プロセッサは、
3次元空間に存在する物体の表面上の点における3次元位置情報および色情報を含むデータを、前記物体の3次元点群データとして読み込む読み込み処理を行ない、
前記色情報に基づいて、前記3次元空間に存在する物体の3次元点群データから、検出対象とする構造物の3次元点群データを抽出するフィルタリング処理を行ない、
前記フィルタリング処理により抽出された、前記検出対象とする構造物の3次元点群データに基づいて、前記検出対象とする構造物を3次元モデル化した3次元モデルデータを生成する生成処理を行ない、
前記プロセッサは、
前記フィルタリング処理として、
前記色情報をRGB値に分離し、
前記RGB値の各々について、前記3次元空間を、一定サイズを有する複数のブロックに分割し、
前記分割されたブロック毎に、当該ブロックに存在する、RGBの各々に係る点群データの3次元離散コサイン変換処理を行ない
前記3次元離散コサイン変換処理の結果に基づいて、前記分割されたブロックのうち、前記検出対象の構造物のRGB値に応じた一定範囲の3次元離散コサイン変換処理結果に対応するブロックをRGBの各々について抽出し、
前記抽出されたブロックについて前記3次元離散コサイン変換処理の結果を元のRGB値に変換し、
前記変換されたRGB値を有する3次元点群データを、前記検出対象の構造物の3次元点群データとして抽出する、ように構成される、
構造物検出装置。
【請求項2】
プロセッサを有し、
前記プロセッサは、
3次元空間に存在する物体の表面上の点における3次元位置情報および色情報を含むデータを、前記物体の3次元点群データとして読み込む読み込み処理を行ない、
前記色情報に基づいて、前記3次元空間に存在する物体の3次元点群データから、検出対象とする構造物の3次元点群データを抽出するフィルタリング処理を行ない、
前記フィルタリング処理により抽出された、前記検出対象とする構造物の3次元点群データに基づいて、前記検出対象とする構造物を3次元モデル化した3次元モデルデータを生成する生成処理を行ない、
前記プロセッサは、
前記フィルタリング処理として、
前記色情報をRGB値に分離し、
前記RGB値の各々について、前記3次元空間を、一定サイズを有する複数のブロックに分割し、
前記分割されたブロック毎に、当該ブロックに存在する、RGBの各々に係る点群データの3次元離散コサイン変換処理を行ない
前記3次元離散コサイン変換処理の結果に基づいて、前記分割されたブロックのうち、前記検出対象の構造物のRGB値に応じた一定範囲の3次元離散コサイン変換処理結果に対応するブロックをRGBの各々について抽出し、
前記抽出されたブロックについて前記3次元離散コサイン変換処理の結果を元のRGB値に変換し、
前記変換されたRGB値のうち、前記検出対象の構造物に応じた一定範囲のRGB値を有する3次元点群データを、前記検出対象の構造物の3次元点群データとして抽出する、ように構成される、
構造物検出装置。
【請求項3】
プロセッサを有し、
前記プロセッサは、
3次元空間に存在する物体の表面上の点における3次元位置情報および色情報を含むデータを、前記物体の3次元点群データとして読み込む読み込み処理を行ない、
前記色情報に基づいて、前記3次元空間に存在する物体の3次元点群データから、検出対象とする構造物の3次元点群データを抽出するフィルタリング処理を行ない、
前記フィルタリング処理により抽出された、前記検出対象とする構造物の3次元点群データに基づいて、前記検出対象とする構造物を3次元モデル化した3次元モデルデータを生成する生成処理を行ない、
前記プロセッサは、
前記フィルタリング処理として、
前記色情報をRGB値に分離し、
前記RGB値のうち、前記検出対象の構造物に応じた一定範囲のRGB値の各々について、前記3次元空間を、一定サイズを有する複数のブロックに分割し、
前記分割されたブロック毎に、当該ブロックに存在する、RGBの各々に係る点群データの3次元離散コサイン変換処理を行ない
前記3次元離散コサイン変換処理の結果に基づいて、前記分割されたブロックのうち、前記検出対象の構造物のRGB値に応じた一定範囲の3次元離散コサイン変換処理結果に対応するブロックをRGBの各々について抽出し、
前記抽出されたブロックについて前記3次元離散コサイン変換処理の結果を元のRGB値に変換し、
前記変換されたRGB値を有する3次元点群データを、前記検出対象の構造物の3次元点群データとして抽出する、ように構成される、
構造物検出装置。
【請求項4】
前記検出対象の構造物は、柱状物体であり、
前記プロセッサは、
前記生成された、前記柱状物体の3次元モデルデータに基づいて、前記柱状物体の所定の複数の高さにおける前記柱状物体の水平方向の中心点の座標値の配列である中心軸データを検出する中心軸検出処理を行ない、
前記3次元モデルデータ、および前記中心軸検出処理により検出された中心軸データに基づいて、前記柱状物体の3次元モデルの中心軸の傾き、および前記中心軸のたわみ量を前記中心軸のたわみベクトルとして検出する、たわみベクトル検出処理を行なう、ように構成される、
請求項1乃至のいずれか1項に記載の構造物検出装置。
【請求項5】
プロセッサを具備する構造物検出装置が行なう構造物検出方法であって、
前記プロセッサは、3次元空間に存在する物体の表面上の点における3次元位置情報および色情報を含むデータを、前記物体の3次元点群データとして読み込む読み込み処理を行ない、
前記プロセッサは、前記色情報に基づいて、前記3次元空間に存在する物体の3次元点群データから、検出対象とする構造物の3次元点群データを抽出するフィルタリング処理を行ない、
前記プロセッサは、前記フィルタリング処理により抽出された、前記検出対象とする構造物の3次元点群データに基づいて、前記検出対象とする構造物を3次元モデル化した3次元モデルデータを生成する生成処理を行ない、
前記プロセッサは、
前記フィルタリング処理として、
前記色情報をRGB値に分離し、
前記RGB値の各々について、前記3次元空間を、一定サイズを有する複数のブロックに分割し、
前記分割されたブロック毎に、当該ブロックに存在する、RGBの各々に係る点群データの3次元離散コサイン変換処理を行ない
前記3次元離散コサイン変換処理の結果に基づいて、前記分割されたブロックのうち、前記検出対象の構造物のRGB値に応じた一定範囲の3次元離散コサイン変換処理結果に対応するブロックをRGBの各々について抽出し、
前記抽出されたブロックについて前記3次元離散コサイン変換処理の結果を元のRGB値に変換し、
前記変換されたRGB値を有する3次元点群データを、前記検出対象の構造物の3次元点群データとして抽出する、
構造物検出方法。
【請求項6】
プロセッサを具備する構造物検出装置が行なう構造物検出方法であって、
前記プロセッサは、3次元空間に存在する物体の表面上の点における3次元位置情報および色情報を含むデータを、前記物体の3次元点群データとして読み込む読み込み処理を行ない、
前記プロセッサは、前記色情報に基づいて、前記3次元空間に存在する物体の3次元点群データから、検出対象とする構造物の3次元点群データを抽出するフィルタリング処理を行ない、
前記プロセッサは、前記フィルタリング処理により抽出された、前記検出対象とする構造物の3次元点群データに基づいて、前記検出対象とする構造物を3次元モデル化した3次元モデルデータを生成する生成処理を行ない、
前記プロセッサは、
前記フィルタリング処理として、
前記色情報をRGB値に分離し、
前記RGB値の各々について、前記3次元空間を、一定サイズを有する複数のブロックに分割し、
前記分割されたブロック毎に、当該ブロックに存在する、RGBの各々に係る点群データの3次元離散コサイン変換処理を行ない
前記3次元離散コサイン変換処理の結果に基づいて、前記分割されたブロックのうち、前記検出対象の構造物のRGB値に応じた一定範囲の3次元離散コサイン変換処理結果に対応するブロックをRGBの各々について抽出し、
前記抽出されたブロックについて前記3次元離散コサイン変換処理の結果を元のRGB値に変換し、
前記変換されたRGB値のうち、前記検出対象の構造物に応じた一定範囲のRGB値を有する3次元点群データを、前記検出対象の構造物の3次元点群データとして抽出する、
構造物検出方法。
【請求項7】
プロセッサを具備する構造物検出装置が行なう構造物検出方法であって、
前記プロセッサは、3次元空間に存在する物体の表面上の点における3次元位置情報および色情報を含むデータを、前記物体の3次元点群データとして読み込む読み込み処理を行ない、
前記プロセッサは、前記色情報に基づいて、前記3次元空間に存在する物体の3次元点群データから、検出対象とする構造物の3次元点群データを抽出するフィルタリング処理を行ない、
前記プロセッサは、前記フィルタリング処理により抽出された、前記検出対象とする構造物の3次元点群データに基づいて、前記検出対象とする構造物を3次元モデル化した3次元モデルデータを生成する生成処理を行ない、
前記プロセッサは、
前記フィルタリング処理として、
前記色情報をRGB値に分離し、
前記RGB値のうち、前記検出対象の構造物に応じた一定範囲のRGB値の各々について、前記3次元空間を、一定サイズを有する複数のブロックに分割し、
前記分割されたブロック毎に、当該ブロックに存在する、RGBの各々に係る点群データの3次元離散コサイン変換処理を行ない
前記3次元離散コサイン変換処理の結果に基づいて、前記分割されたブロックのうち、前記検出対象の構造物のRGB値に応じた一定範囲の3次元離散コサイン変換処理結果に対応するブロックをRGBの各々について抽出し、
前記抽出されたブロックについて前記3次元離散コサイン変換処理の結果を元のRGB値に変換し、
前記変換されたRGB値を有する3次元点群データを、前記検出対象の構造物の3次元点群データとして抽出する、
構造物検出方法。
【請求項8】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の構造物検出装置の前記各処理として前記プロセッサを機能させる構造物検出処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、構造物検出装置、構造物検出方法および構造物検出処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電柱、ケーブルなどの通信設備の状態を把握するため、保守作業者が現地へ赴き、目視にて個々に点検を行ない、設備の良否を判断してきた。
近年、当該設備を面的に良否判定して点検に係る稼働を効率化する手段として、検査車両を用いた、たわみベクトル検出(以下、従来の技術という)が知られている(例えば非特許文献1を参照)。
【0003】
従来の技術では、3次元レーザスキャナ(3Dレーザ測量機)、カメラ、GPS(Global Positioning System)受信機、IMU(Inertial Measurement unit:慣性計測装置)およびオドメータ(Odometer:走行距離計)を具備した検査車両が、3次元でレーザスキャンと画像撮影とを行ないながら市中を走行し、当該通信設備を含む構造物や自然物の3次元測量を面的に行ない、XYZ座標および反射光の強度(反射強度と称することもある)を含む点群データを収集する。
当該点群データを基に構造物、自然物の3次元モデルデータが作成され、当該3次元モデルデータにおける中心軸の最下点および任意箇所数点から前述の通信設備のたわみベクトルが算出される。
また、市中では道路幅により車両進入不可エリア、未舗装道路など点群データの座標精度が不十分なエリアがある。当該エリアでは、前述の3次元レーザスキャナを保守作業者が携行し、これを三脚などで固定することで3次元測量を行ない、点群データを取得し、前述の3次元モデルデータの解析結果から通信設備のたわみベクトルを算出する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】大平隼也, 後藤隆, 和気正樹, 松田重裕, 梶原佳幸, “MMSにより取得した3D電柱モデルの歪み補正に関する検討”, 2018年電子情報通信学会ソサイエティ大会, B-13-23, 2018.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術には以下のような問題点がある。即ち、上記説明の中で、たわみベクトルを高精度に検出するためには高密度な点群データが必要となり、当該点群データを処理し、3次元モデル化およびモデル解析を行なえる処理能力を有する演算装置は限定される。
また、データ保管に要する記憶装置も膨大となる。上記の限定を解消するためには、演算装置性能の向上だけでなく演算アルゴリズムの見直しが課題である。
【0006】
この発明は、上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、3次元空間に存在する構造物を処理にかかる負荷を低減して検出することができるようにした構造物検出装置、構造物検出方法および構造物検出処理プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明構造物検出装置の第1の態様は、プロセッサを有し、前記プロセッサは、3次元空間に存在する物体の表面上の点における3次元位置情報および色情報を含むデータを、前記物体の3次元点群データとして読み込む読み込み処理を行ない、前記色情報に基づいて、前記3次元空間に存在する物体の3次元点群データから、検出対象とする構造物の3次元点群データを抽出するフィルタリング処理を行ない、前記フィルタリング処理により抽出された、前記検出対象とする構造物の3次元点群データに基づいて、前記検出対象とする構造物を3次元モデル化した3次元モデルデータを生成する生成処理を行な前記プロセッサは、前記フィルタリング処理として、前記色情報をRGB値に分離し、前記RGB値の各々について、前記3次元空間を、一定サイズを有する複数のブロックに分割し、前記分割されたブロック毎に、当該ブロックに存在する、RGBの各々に係る点群データの3次元離散コサイン変換処理を行ない、前記3次元離散コサイン変換処理の結果に基づいて、前記分割されたブロックのうち、前記検出対象の構造物のRGB値に応じた一定範囲の3次元離散コサイン変換処理結果に対応するブロックをRGBの各々について抽出し、前記抽出されたブロックについての前記3次元離散コサイン変換処理の結果を元のRGB値に変換し、前記変換されたRGB値を有する3次元点群データを、前記検出対象の構造物の3次元点群データとして抽出する、ように構成される、ようにしたものである。
【0010】
上記目的を達成するために、この発明の構造物検出装置の第の態様は、プロセッサを有し、前記プロセッサは、3次元空間に存在する物体の表面上の点における3次元位置情報および色情報を含むデータを、前記物体の3次元点群データとして読み込む読み込み処理を行ない、前記色情報に基づいて、前記3次元空間に存在する物体の3次元点群データから、検出対象とする構造物の3次元点群データを抽出するフィルタリング処理を行ない、前記フィルタリング処理により抽出された、前記検出対象とする構造物の3次元点群データに基づいて、前記検出対象とする構造物を3次元モデル化した3次元モデルデータを生成する生成処理を行ない、前記プロセッサは、前記フィルタリング処理として、前記色情報をRGB値に分離し、前記RGB値の各々について、前記3次元空間を、一定サイズを有する複数のブロックに分割し、前記分割されたブロック毎に、当該ブロックに存在する、RGBの各々に係る点群データの3次元離散コサイン変換処理を行ない、前記3次元離散コサイン変換処理の結果に基づいて、前記分割されたブロックのうち、前記検出対象の構造物のRGB値に応じた一定範囲の3次元離散コサイン変換処理結果に対応するブロックをRGBの各々について抽出し、前記抽出されたブロックについて前記3次元離散コサイン変換処理の結果を元のRGB値に変換し、前記変換されたRGB値のうち、前記検出対象の構造物に応じた一定範囲のRGB値を有する3次元点群データを、前記検出対象の構造物の3次元点群データとして抽出する、ように構成される、ようにしたものである。
【0011】
上記目的を達成するために、この発明の構造物検出装置の第の態様は、プロセッサを有し、前記プロセッサは、3次元空間に存在する物体の表面上の点における3次元位置情報および色情報を含むデータを、前記物体の3次元点群データとして読み込む読み込み処理を行ない、前記色情報に基づいて、前記3次元空間に存在する物体の3次元点群データから、検出対象とする構造物の3次元点群データを抽出するフィルタリング処理を行ない、前記フィルタリング処理により抽出された、前記検出対象とする構造物の3次元点群データに基づいて、前記検出対象とする構造物を3次元モデル化した3次元モデルデータを生成する生成処理を行ない、前記プロセッサは、前記フィルタリング処理として、前記色情報をRGB値に分離し、前記RGB値のうち、前記検出対象の構造物に応じた一定範囲のRGB値の各々について、前記3次元空間を、一定サイズを有する複数のブロックに分割し、前記分割されたブロック毎に、当該ブロックに存在する、RGBの各々に係る点群データの3次元離散コサイン変換処理を行ない、前記3次元離散コサイン変換処理の結果に基づいて、前記分割されたブロックのうち、前記検出対象の構造物のRGB値に応じた一定範囲の3次元離散コサイン変換処理結果に対応するブロックをRGBの各々について抽出し、前記抽出されたブロックについて前記3次元離散コサイン変換処理の結果を元のRGB値に変換し、前記変換されたRGB値を有する3次元点群データを、前記検出対象の構造物の3次元点群データとして抽出する、ように構成される、ようにしたものである。
【0012】
この発明の構造物検出装置の第の態様は、第1乃至第の態様のいずれか1つにおいて、前記検出対象の構造物は、柱状物体であり、前記プロセッサは、前記生成された、前記柱状物体の3次元モデルデータに基づいて、前記柱状物体の所定の複数の高さにおける前記柱状物体の水平方向の中心点の座標値の配列である中心軸データを検出する中心軸検出処理を行ない、前記3次元モデルデータ、および前記中心軸検出処理により検出された中心軸データに基づいて、前記柱状物体の3次元モデルの中心軸の傾き、および前記中心軸のたわみ量を前記中心軸のたわみベクトルとして検出する、たわみベクトル検出処理を行なう、ように構成される、ようにしたものである。
【0013】
上記目的を達成するために、この発明構造物検出方法の第1の態様は、プロセッサを具備する構造物検出装置が行なう方法であって、前記プロセッサは、3次元空間に存在する物体の表面上の点における3次元位置情報および色情報を含むデータを、前記物体の3次元点群データとして読み込む読み込み処理を行ない、前記プロセッサは、前記色情報に基づいて、前記3次元空間に存在する物体の3次元点群データから、検出対象とする構造物の3次元点群データを抽出するフィルタリング処理を行ない、前記プロセッサは、前記フィルタリング処理により抽出された、前記検出対象とする構造物の3次元点群データに基づいて、前記検出対象とする構造物を3次元モデル化した3次元モデルデータを生成する生成処理を行な前記プロセッサは、前記フィルタリング処理として、前記色情報をRGB値に分離し、前記RGB値の各々について、前記3次元空間を、一定サイズを有する複数のブロックに分割し、前記分割されたブロック毎に、当該ブロックに存在する、RGBの各々に係る点群データの3次元離散コサイン変換処理を行ない、前記3次元離散コサイン変換処理の結果に基づいて、前記分割されたブロックのうち、前記検出対象の構造物のRGB値に応じた一定範囲の3次元離散コサイン変換処理結果に対応するブロックをRGBの各々について抽出し、前記抽出されたブロックについての前記3次元離散コサイン変換処理の結果を元のRGB値に変換し、前記変換されたRGB値を有する3次元点群データを、前記検出対象の構造物の3次元点群データとして抽出する、ようにしたものである。
上記目的を達成するために、この発明の構造物検出方法の第2の態様は、プロセッサを具備する構造物検出装置が行なう方法であって、前記プロセッサは、3次元空間に存在する物体の表面上の点における3次元位置情報および色情報を含むデータを、前記物体の3次元点群データとして読み込む読み込み処理を行ない、前記プロセッサは、前記色情報に基づいて、前記3次元空間に存在する物体の3次元点群データから、検出対象とする構造物の3次元点群データを抽出するフィルタリング処理を行ない、前記プロセッサは、前記フィルタリング処理により抽出された、前記検出対象とする構造物の3次元点群データに基づいて、前記検出対象とする構造物を3次元モデル化した3次元モデルデータを生成する生成処理を行ない、前記プロセッサは、前記フィルタリング処理として、前記色情報をRGB値に分離し、前記RGB値の各々について、前記3次元空間を、一定サイズを有する複数のブロックに分割し、前記分割されたブロック毎に、当該ブロックに存在する、RGBの各々に係る点群データの3次元離散コサイン変換処理を行ない、前記3次元離散コサイン変換処理の結果に基づいて、前記分割されたブロックのうち、前記検出対象の構造物のRGB値に応じた一定範囲の3次元離散コサイン変換処理結果に対応するブロックをRGBの各々について抽出し、前記抽出されたブロックについての前記3次元離散コサイン変換処理の結果を元のRGB値に変換し、前記変換されたRGB値のうち、前記検出対象の構造物に応じた一定範囲のRGB値を有する3次元点群データを、前記検出対象の構造物の3次元点群データとして抽出する、ようにしたものである。
上記目的を達成するために、この発明の構造物検出方法の第3の態様は、プロセッサを具備する構造物検出装置が行なう方法であって、前記プロセッサは、3次元空間に存在する物体の表面上の点における3次元位置情報および色情報を含むデータを、前記物体の3次元点群データとして読み込む読み込み処理を行ない、前記プロセッサは、前記色情報に基づいて、前記3次元空間に存在する物体の3次元点群データから、検出対象とする構造物の3次元点群データを抽出するフィルタリング処理を行ない、前記プロセッサは、前記フィルタリング処理により抽出された、前記検出対象とする構造物の3次元点群データに基づいて、前記検出対象とする構造物を3次元モデル化した3次元モデルデータを生成する生成処理を行ない、前記プロセッサは、前記フィルタリング処理として、前記色情報をRGB値に分離し、前記RGB値のうち、前記検出対象の構造物に応じた一定範囲のRGB値の各々について、前記3次元空間を、一定サイズを有する複数のブロックに分割し、前記分割されたブロック毎に、当該ブロックに存在する、RGBの各々に係る点群データの3次元離散コサイン変換処理を行ない、前記3次元離散コサイン変換処理の結果に基づいて、前記分割されたブロックのうち、前記検出対象の構造物のRGB値に応じた一定範囲の3次元離散コサイン変換処理結果に対応するブロックをRGBの各々について抽出し、前記抽出されたブロックについての前記3次元離散コサイン変換処理の結果を元のRGB値に変換し、前記変換されたRGB値を有する3次元点群データを、前記検出対象の構造物の3次元点群データとして抽出する、ようにしたものである。
【0014】
この発明構造物検出処理プログラムの一つの態様は、第1乃至第の態様のいずれか1つにおける構造物検出装置の前記各処理として前記プロセッサを機能させるものである。
【発明の効果】
【0015】
この発明構造物検出装置の第1の態様によれば、3次元空間に存在する物体の表面上の点における3次元位置情報および色情報に基づいて、3次元空間に存在する物体の3次元点群データから、検出対象とする構造物の3次元点群データを抽出するフィルタリング処理を行ない、フィルタリング処理により抽出された、検出対象とする構造物の3次元点群データに基づいて、検出対象とする構造物を3次元モデル化した3次元モデルデータを生成する生成処理を行なうので、所望の構造物を3次元モデル化した3次元モデルデータを生成することができる。
また、この態様によれば、フィルタリング処理として、3次元空間が分割されたブロック毎に、当該ブロックに存在する、RGBの各々に係る点群データの3次元離散コサイン変換処理を行ない、この3次元離散コサイン変換処理の結果に基づいて、前記検出対象の構造物のRGB値に応じた一定範囲の3次元離散コサイン変換処理結果に対応するブロックをRGBの各々について抽出し、抽出されたブロックについての3次元離散コサイン変換処理の結果を元のRGB値に変換し、検出対象の構造物の3次元点群データを抽出するので、検出対象の構造物に応じた一定範囲の3次元離散コサイン変換処理結果を用いて、所望の構造物の3次元点群データを抽出することができる。
【0018】
この発明の構造物検出装置の第2および第3の態様によれば、3次元空間に存在する物体の表面上の点における3次元位置情報および色情報に基づいて、3次元空間に存在する物体の3次元点群データから、検出対象とする構造物の3次元点群データを抽出するフィルタリング処理を行ない、フィルタリング処理により抽出された、検出対象とする構造物の3次元点群データに基づいて、検出対象とする構造物を3次元モデル化した3次元モデルデータを生成する生成処理を行なうので、所望の構造物を3次元モデル化した3次元モデルデータを生成することができる。
また、れらの態様によれば、一定範囲の3次元離散コサイン変換処理結果、および一定範囲のRGB値によるフィルタリングの組み合わせにより、検出対象の構造物の3次元点群データを抽出するので、検出の精度を向上させることができる。
【0019】
この発明構造物検出装置の第の態様によれば、柱状物体の所定の複数の高さにおける柱状物体の水平方向の中心点の座標値の配列である中心軸データを検出する中心軸検出処理を行ない、柱状物体の3次元モデルの中心軸の傾き、および中心軸のたわみ量を中心軸のたわみベクトルとして検出するので、所望の構造物である柱状物体のたわみベクトルを検出することができる。
【0020】
すなわち、本発明の各態様によれば、3次元空間に存在する構造物を処理にかかる負荷を低減して検出することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る設備検出装置により検出対象設備の点群データを取得する方法の一例について説明する図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に関わる設備検出装置の構成の一例を示す図である。
図3図3は、たわみ検出にかかる、各種の定義の一例について示す図である。
図4図4は、RGB値から検出対象設備の点群データを抽出する処理の手順と処理内容の一例を示すフローチャートである。
図5図5は、RGB値から検出対象設備の点群データを抽出する処理の手順と処理内容の一例を示すフローチャートである。
図6図6は、3次元空間を分割するブロックの一例を説明する図である。
図7図7は、フィルタリング前後のイメージの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、この発明に係わる一実施形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る設備検出装置により検出対象設備の点群データを取得する方法の一例について説明する図である。ここでは、3次元レーザ測量機を用いて検出対象設備の点群データを取得する方法について説明する。
【0023】
図1では、3次元レーザ測量機としての固定式3Dレーザスキャナ11、検出対象設備12、構造物検出装置である設備検出装置13が示される。
固定式3Dレーザスキャナ11は、地面に固定された三脚などの固定台上に設置される。
固定式3Dレーザスキャナ11は、0°から360°の角度範囲で、地面に対して水平方向に回転すると共に地面に対して垂直方向に回転するレーザ光を発射し、検出対象設備12を含む自然物からのレーザ反射光に基づいて当該検出対象設備12の表面上の点における3次元座標(X座標、Y座標及びZ座標)を取得する。
【0024】
また、固定式3Dレーザスキャナ11は、当該反射光の光強度を計測する。回転するレーザ発射の回転と同様に、固定式3Dレーザスキャナ11は、内蔵カメラによって、全方位の光学画像を取得し、当該光学画像から色情報を抽出し、上記取得した3次元座標にRGB値を付与する。
【0025】
したがって、固定式3Dレーザスキャナ11を用いることで、検出対象設備12を含む自然物の表面上の点における3次元座標、光強度、及びRGB値を含む3次元点群データ(以下、点群データと称することがある)を自然物の外観の画像データとして取得することができる。固定式3Dレーザスキャナ11は、取得した点群データを設備検出装置13に送り、これを解析させる。
【0026】
図2は、本発明の一実施形態に係る設備検出装置の構成の一例を示す図である。
設備検出装置13は、記憶装置21、演算装置22を有する。演算装置22は、中央処理ユニット(Central Processing Unit:CPU)、プログラムメモリ、および演算用メモリなどを備えたコンピュータとして構成することができ、この実施形態を実施するために必要な機能として、点群データ入力部23、フィルタリング機能部24、点群表示機能部25、柱状物体検出機能部26、中心軸検出部27、たわみベクトル検出部28、結果表示部29、結果出力部210を有する。
【0027】
演算装置22内の各部は、プログラムメモリに格納されたプログラムを上記CPUに実行させることにより実現できる。なお、演算装置22はハードウェアで構成することもできるが、後述するフローチャートに示された手順を備えるプログラムを、媒体もしくは通信回線を介して周知のコンピュータにインストールして、このコンピュータと記憶装置21との組み合わせ、又は記憶装置21を有するコンピュータなどによっても実現可能である。
【0028】
なお、記憶装置21は、設備検出装置13以外のクラウドサーバまたはローカルサーバ等に設けてもよい。この場合、設備検出装置13は、通信部により、クラウドサーバまたはローカルサーバの記憶装置21から通信ネットワークを介して、この記憶装置21に格納されるデータを取得する。
【0029】
前述の、固定式3Dレーザスキャナ11から送られた点群データは、例えばSSD(Solid State Drive)、HDD(Hard Disk Drive)などの記憶装置21に保存される。当該点群データはptx形式などのファイルであり、1乃至複数の検出対象設備12に係る点群データが含まれる。当該点群データは、演算装置22内にて点群データ入力部23により取り込みされる。
【0030】
点群データ入力部23は、固定式3Dレーザスキャナ11と検出対象設備12との間の距離を予め指定することで、当該距離を半径として球内に存在する点群データのみを読み込む。
【0031】
また、点群データ入力部23は、点群データの読込みに係る間引きの比率を指定することで、読込み対象の点群量を変更することが可能である。例えば、点群データの点数が10,000点であった場合、点群データ入力部23は、10%の間引きを指定すると、一定間隔で点を間引いて読み込み、9,000点の点群データを読み込む。当該点群データ入力部23にて読み込まれた点群データはフィルタリング機能部24へ渡される。
【0032】
フィルタリング機能部24は、点群データが保有するRGB値もしくは、3次元上のRGB値から算出した周波数情報、もしくはその両方により前述の検出対象設備の点群を抽出する。また、フィルタリング機能部24は、点群データから、樹木などの任意の自然物を示す点群を除去する。フィルタリングされた点群データは点群表示機能部25へ渡される。
【0033】
点群表示機能部25は、フィルタリングされた点群データが保有する3次元座標を基に画面上に点群データを図示しない表示装置に3次元表示する。表示された点群の色は3次元座標に紐付くRGB値を基に色付けされる。また、反射強度の高低に応じたグラデーション表示もできる。
【0034】
点群表示機能部25は、画面上に表示された点群データの回転・ズームイン/ズームアウト・任意の選択領域の表示/非表示を行なうことが可能である。表示が確認された当該点群データは柱状物体検出機能部26へ渡される。なお、点群データの表示による確認作業が不要であれば、点群表示機能部25は省略することができる。
【0035】
柱状物体検出機能部26は、フィルタリングによって得られた、検出対象設備の点群データに基づいて、検出対象モデルを3次元モデル化した3次元モデルデータを作成する。ここでは柱状物体の例を電信柱として説明する。
【0036】
柱状物体検出機能部26は、当該点群データの3次元座標から円情報を抽出し、円モデルを縦方向に連結することにより電信柱を3次元モデル化した3次元モデルデータ(単に電信柱モデルと称することもある)を作成する。この3次元モデルデータは、電信柱の3次元形状を表す3次元オブジェクトと当該3次元オブジェクトの3次元座標情報とを含む。
【0037】
柱状物体検出機能部26は、電信柱以外の柱状物体の誤検出を避けるために、柱長及び口径を予め指定する。柱状物体検出機能部26は、当該指定された柱長及び口径の範囲に当てはまる3次元モデルを検出対象の電信柱とする。当該電信柱の3次元モデルデータは中心軸検出部27へ渡される。
【0038】
中心軸検出部27は、電信柱の3次元モデルデータを構成する円モデルの中心座標を縦方向に3次近似曲線にて連結することにより、電信柱の3次元モデルの一定の高さごとの中心点の座標値の配列として中心軸を定義した中心軸データを検出する。電信柱が円柱状の物体であるとき、中心軸検出部27は、3次元モデルデータから、当該円柱状の物体の一定の高さごとの半径の配列を取得してもよい。
【0039】
たわみベクトル検出部28は、3次元モデルデータと、中心軸データに基づいて、電信柱の3次元モデルの中心軸のたわみベクトルを検出する。たわみベクトルは、中心軸の傾きと、中心軸のたわみ量の大きさを含む。
【0040】
ここで、たわみベクトルの検出の一例について説明する。この例では、たわみベクトル検出部28は、中心軸の最下点(Z座標=高さ0メートルの地点)と高さ2メートルの地点(Z座標=高さ2メートルの地点)の点間を直線で結び、基準軸とする。
【0041】
図3は、たわみ検出にかかる、各種の定義の一例について示す図である。
図3に示すように、柱状物体の垂直軸(図3中のa)、傾斜軸(図3中のb)、基準軸(図3中のc)、中心軸(図3中のd)、たわみ(図3中eの)、傾き(図3中のf)を下記のようにそれぞれ定義する。
【0042】
垂直軸: 垂直な線(鉛直線)
傾斜軸: 柱状物体における一番高い位置にある断面円の中心軸座標と地面(最下面)の中心軸座標とを結んだ直線
基準軸:地面(柱状物体の最下面)から2メートルの高さまでの、柱状物体の水平方向の中心点近傍を通る直線を延長したもの
中心軸: 各円の中心を結んだ軸(高さ4センチメートル毎)
たわみ:地面から5メートルの高さでの基準軸と中心軸との距離
傾き: 垂直軸と基準軸の角度
【0043】
たわみベクトル検出部28は、3次元モデルデータに対し、垂直軸と、柱状物体の所定の第1の高さまでの高さの中心点近傍を通る直線である基準軸とをそれぞれ設定し、垂直軸と基準軸との間の角度を柱状物体の中心軸の傾きとして算出する。そして、たわみベクトル検出部28は、中心軸データが示す、柱状物体の所定の第2の高さに対応する中心点の座標と、基準軸における第2の高さの箇所との間の距離を柱状物体の3次元モデルデータの中心軸のたわみ量として検出する。
【0044】
図3に示すように、基準軸の高さ5メートルの地点と中心軸の高さ5メートルの地点とでなる2点間の距離の大きさと向きがたわみベクトルとして検出される。当該検出された、たわみベクトルは、電信柱の3次元モデルデータ、および中心軸データと共に、結果表示部29を介して表示装置の画面上に表示される。
また、検出された、たわみベクトルは、電信柱の3次元モデルデータ、および中心軸データと共に、結果出力部210にてファイル出力される。
【0045】
点群データからの3次元モデルデータの作成、ならびに、中心軸データの検出には、例えば特開2017-156179号公報などに開示された既知の手法を用いることができる。また、たわみベクトルの検出には、例えば特願2018-038969明細書(特許第6761828号公報)などに開示された手法を用いることができる。
【0046】
以上のように、設備検出装置13は、取得した点群データが保有するRGB値の色情報、およびこの周波数情報から検出対象設備を抽出し、柱状設備の3次元モデルデータを作成し、当該柱状設備のたわみベクトルを検出すること可能となる。
【0047】
次に、フィルタリング機能部24について詳細を述べる。
図4は、RGB値から検出対象設備の点群データを抽出する処理の手順と処理内容の一例を示すフローチャートである。
前述の点群データ入力部23で読み込まれた点群データがフィルタリング機能部24に渡されると、当該フィルタリング機能部24は、点群データを入力し(S31)、この点群データにおける各点の3次元座標、反射強度およびRGB値(X,Y,Z,I,R,G,B)を読み込む。ここで、X:X座標、Y:Y座標、Z:Z座標、I:反射強度、R:Red値、G:Green値、B:Blue値である。
【0048】
次に、R,G,B各々で上限及び下限の閾値を、検出対象の対象設備12に応じて予め定めて内部メモリに格納しておき、フィルタリング機能部24は、この閾値を取得して(S33)、点群データの全点に対して個々の点を抽出するループを開始する。
【0049】
そして、フィルタリング機能部24は、点群データにおける、R,G,Bの各色に対応する値が、いずれも閾値の範囲内であるか否かを判定し(S35)、閾値の範囲内であれば、当該範囲内にあるRGB値に係る、点群データにおける点データを維持し(S36)、R,G,Bの各色に対応する値のいずれか1つが閾値の範囲外であれば、当該範囲外にあるRGB値に係る点群データにおける点データを削除する(S37)。この時、フィルタリング機能部24は、R,G,B値のどれか1つでも閾値の範囲外であれば、当該範囲外にあるRGB値に係る点群データにおける点データの座標と同じ座標を含む点データを削除可能とする。
【0050】
フィルタリング機能部24は、当該判定処理を点群データにおける全点数に対して実行する。つまり、上記ループが終了するまでS35以降が繰り返される。以上により、フィルタリング機能部24は、指定色の対象設備のみを検出できる。
【0051】
図5は、3次元上のRGB値から算出した周波数情報に基づいて検出対象設備の点群データを抽出する処理の手順と処理内容の一例を示すフローチャートである。
前述と同様に、点群データ入力部23で読み込まれた点群データは、RGB値の各々にデータが分離されてフィルタリング機能部24に入力される(S41)。
【0052】
図6は、3次元空間を分割するブロックの一例を示す図である。
図6に示すように、入力された、RGB値の個々係る点群データが存在する3次元空間は、X,Y,Z座標を有し、X座標軸に沿った辺a、Y座標軸に沿った辺b、およびZ座標軸に沿った辺cで1つのブロックが示されるとすると、当該3次元空間上には複数のブロックが存在することになる。
そこで、フィルタリング機能部24は、点群データが存在する3次元空間において、ブロック数Nを選択し、この選択したブロック数Nに応じたブロックで3次元空間を分割する(S42)。
【0053】
次に、フィルタリング機能部24は、周波数の上限と下限が検出対象設備12に応じて定められた閾値の範囲を取得し内部メモリに格納する(S43)。この範囲は作業者によって定められてもよい。
フィルタリング機能部24は、ブロック抽出に係るループを開始し、上記N分割したブロックに存在する点群データに対して、3次元離散コサイン変換(DCT:Discrete Cosine Transform)処理を行なう。
DCT処理は実データを実周波数データへ変換する処理であり、任意の実周波数データを抽出することでフィルタリングと同等の作用として利用される。
ここでは、1次元DCT処理を、X座標、Y座標およびZ座標のRGB値に対して各々実行することで3次元DCT処理とする(S45)。
【0054】
1ブロックに存在する点群データをPとすると、PとしてRed値(R値)に対応する(Xn, Yn, Zn, Rn)、Green値(G値)に対応する(Xn, Yn, Zn, Gn)、およびBlue値(B値)に対応する(Xn, Yn, Zn, Bn)がある。但し、nはPに存在する点の個数である。反射強度であるI値については省略する。ここで、R値,G値とB値とでは同様の処理のため、ここではR値を例にしてS45の処理を説明する。R値に係る点群データをPRとする。ここで、k番目のブロックに対する、点群データPRのX座標ごとに1次元DCT計算により求められたDCT値をHR,X(k)とすると、このDCT値は以下の式(1)で計算される。
【0055】
【数1】
【0056】
次に、上記計算されたHR,Xに対してY座標ごとに1次元DCT計算により求められたDCT値をVR,Y(k)とすると、このDCT値は以下の式(2)で計算される。
【0057】
【数2】
【0058】
続いて、上記計算されたVR,Xに対してZ座標ごとに1次元DCT計算により求められたDCT値をDR,Z(k)とすると、このDCT値は以下の式(3)で計算される。
【0059】
【数3】
【0060】
したがって、フィルタリング機能部24は、上記計算されたDR,Zを点群データPRの3次元DCT値、つまりは点群データPRの実周波数データとして取得することができる。但し、3次元DCT処理の実現方法についてはこれに限らない。
【0061】
フィルタリング機能部24は、G値とB値に係る点群データPG 、PBにおいても同様の3次元DCT処理を行ない、上記3次元DCT値DR,Zに加えて点群データPGの3次元DCT値DG,Z、および点群データPBの3次元DCT値DB,Zをそれぞれ計算する。
【0062】
フィルタリング機能部24は、これら計算された3次元DCT値DR,Z、DG,Z、DB,Zが、予め指定された周波数の閾値の範囲内に含まれるか否か判定する(S46)、DR,Z、DG,Z、DB,Zがいずれも閾値の範囲内であれば、該当のブロック内のデータを維持し(S47)、DR,Z、DG,Z、DB,Zのどれか1つでも閾値の範囲外であれば、当該範囲外にある値に係るブロック内のデータを削除する(S48)。
このとき、フィルタリング機能部24は、3次元DCT値DR,Z、DG,Z、DB,Zのどれか1つでも閾値の範囲外であれば、当該範囲外にある値に係るブロック内のデータにおける座標と同じ座標を含む点データを削除可能とする。
【0063】
フィルタリング機能部24は、当該判定処理を全ブロックに対して実行した後、つまり上記ブロック抽出に係るループが終了するまでS45以降を繰り返した後、3次元DCT値に対する3次元IDCT(Inverse DCT)処理を行なうことで、実周波数データを元の実データへ変換後、RGB値の信号を再合成する(S49)。
【0064】
ここで、R,G値とB値とでは同様の信号再合成処理であるため、ここではR値を例にしてS49の処理を説明する。ここで、k番目のブロックに対する、3次元DCT値DR,ZのX座標ごとに1次元逆DCT計算により求められたIDCT値をH’R,X(k)とすると、このIDCT値は以下の式(4)で計算される。
【0065】
【数4】
【0066】
次に、IDCT値H’R,Xに対してY座標ごとに1次元逆DCT計算により求められたIDCT値をV’R,Yとすると、このIDCT値は以下の式(5)で計算される。
【0067】
【数5】
【0068】
続いて、IDCT値V’R,Xに対してZ座標ごとに1次元逆DCT計算により求められたIDCT値をP’Rとすると、このIDCT値は、以下の式(6)で計算される。このIDCT値P’Rは周波数情報でフィルタリングされたIDCT値である。
【0069】
【数6】
【0070】
フィルタリング機能部24は、3次元IDCT処理において、3次元DCT値DG,Z、DB,Zに対しても上記の3次元IDCT処理を行なう。但し、3次元IDCT処理の実現方法についてはこれに限らない。
【0071】
つまり、フィルタリング機能部24は、3次元IDCT処理結果に任意の係数を乗じることで3次元DCT値DR,Z、DG,Z、DB,Zを、周波数情報でフィルタリングされたIDCT値P’R、P’G、P’Bへそれぞれ変換する。フィルタリング機能部24は、当該IDCT値P’R、P’G、P’Bを合成し、上記の3次元座標、反射強度およびRGB値(X,Y,Z,I,R,G,B)へ戻すことで、指定の周波数情報を保有する対象設備を検出する。
【0072】
つまり、フィルタリング機能部24は、3次元DCT処理を行なうことで、ブロック内のRGB値を実周波数データへ変換し、検出対象設備のRGB値に対応する周波数と、検出対象設備以外の物体のRGB値に対応する周波数を、検出対象設備12に応じて予め定められた、周波数の閾値を基にフィルタリングし、フィルタリング後の実周波数データを3次元IDCT処理により元のRGB値へ戻すことで、検出対象設備のみのRGB値を抽出することが可能である。
【0073】
フィルタリング機能部24によるフィルタリングは、上述の点群データが保有するRGB値もしくは、3次元上のRGB値から変換された実周波数データのどちらか一方によるフィルタリングだけでなく、その両方の組み合わせによるフィルタリングでもよい。
例えば、図4に示した、実周波数データによるフィルタリングにより得られた元のRGB値に対し、図3に示した、検出対象に応じた一定範囲のRGB値によるフィルタリングを行なうことで、上記両方の組み合わせによるフィルタリング結果を得てもよい。
また、逆の順序として、図3に示した、検出対象に応じた一定範囲のRGB値を入力し、図4に示した、実周波数データによるフィルタリングを行なうことで、上記両方の組み合わせによるフィルタリング結果を得てもよい。
上記の閾値の設定次第では、RGB値によるフィルタリング結果と実周波数データによるフィルタリング結果とが必ずしも一致しない一方で、上記のように、RGB値によるフィルタリングと実周波数データによるフィルタリングの一方を行なった上で、他方のフィルタリングを行なうことで、双方のフィルタリングが反映されるため、検出精度を高めることができる。
また、同じ点群データに対し、図3に示した、RGB値によるフィルタリングにより検出された点群データと、図4に示した、実周波数データによるフィルタリングにより検出された点群データとをそれぞれ得て、これらに共通する点群データを上記双方のフィルタリングの組み合わせにより得られた点群データとしてもよい。
【0074】
図7は、フィルタリング前後のイメージの一例を示す図である。
イメージとして、図7に示すように、色点群が存在する3次元空間(図7中のa)において周波数情報及び色情報の閾値設定にて、検出対象設備、ここでは図7中の点線(図7中のb)で囲まれた電信柱のみを検出結果(図7中のc)として出力できればよい。なお、検出対象は電信柱等の設備に限られるものではなく、任意の物体を検出対象とすることができる。
【0075】
次に、本発明の一実施形態による効果について説明する。
本発明の一実施形態に係る設備検出装置、設備検出方法および設備検出処理プログラムは、従来技術に対して以下の優位性を持つ。
第1に、従来技術では、状態を把握したい電信柱のたわみベクトルを検出するために高密度な点群データが必要であり、膨大な点群データの3次元モデル化には高い処理能力を有する演算装置が求められた。これに対し、本発明の一実施形態では、膨大な3次元点群データから検出対象設備のみの3次元点群データを抽出し、3次元モデル化対象の点群データ量を低減することができるため、演算装置に要求される処理能力を下げることができる。
【0076】
第2に、本発明の一実施形態によれば、雑多な3次元点群データから目的に沿った3次元点群データを選別することができ、記憶装置にて保存すべきデータ量を圧縮することができる。
【0077】
なお、本願発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は可能な限り適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適当な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。
【0078】
また、各実施形態に記載した手法は、計算機(コンピュータ)に実行させることができるプログラム(ソフトウエア手段)として、例えば磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク等)、光ディスク(CD-ROM、DVD、MO等)、半導体メモリ(ROM、RAM、フラッシュメモリ等)等の記録媒体に格納し、また通信媒体により伝送して頒布することもできる。なお、媒体側に格納されるプログラムには、計算機に実行させるソフトウエア手段(実行プログラムのみならずテーブル、データ構造も含む)を計算機内に構成させる設定プログラムをも含む。本装置を実現する計算機は、記録媒体に記録されたプログラムを読み込み、また場合により設定プログラムによりソフトウエア手段を構築し、このソフトウエア手段によって動作が制御されることにより上述した処理を実行する。なお、本明細書でいう記録媒体は、頒布用に限らず、計算機内部あるいはネットワークを介して接続される機器に設けられた磁気ディスク、半導体メモリ等の記憶媒体を含むものである。
【符号の説明】
【0079】
11…固定式3Dレーザスキャナ、12…検出対象設備、13…設備検出装置、21…記憶装置、22…演算装置、23…点群データ入力部、24…フィルタリング機能部、25…点群表示機能部、26…柱状物体検出機能部、27…中心軸検出部、28…ベクトル検出部、29…結果表示部、210…結果出力部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7