(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】回転速センサ
(51)【国際特許分類】
G01P 1/02 20060101AFI20221213BHJP
G01P 3/487 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
G01P1/02
G01P3/487 D
(21)【出願番号】P 2019070002
(22)【出願日】2019-04-01
【審査請求日】2021-07-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】冨田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】杉山 雄太
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-227560(JP,A)
【文献】特開2013-41755(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0128704(US,A1)
【文献】特表2014-515162(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P 1/00- 3/80
G01D 5/00- 5/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサ保持部およびケーブル保持部を含むセンサヘッドと、
前記ケーブル保持部から延出するケーブルと、
前記センサ保持部に埋設され、磁界変動に応じた電気信号を出力する第1センサICおよび第2センサICと、を有し、
前記第1センサICは、第1検出面と、前記第1検出面の反対側の第1裏面と、第1端子および第2端子と、を有し、
前記第2センサICは、第2検出面と、前記第2検出面の反対側の第2裏面と、第3端子および第4端子と、を有し、
前記ケーブルは
、
前記第1端子に電気的に接続された第1絶縁電線と、前記第2端子に電気的に接続された第2絶縁電線と、前記第3端子に電気的に接続された第3絶縁電線と、前記第4端子に電気的に接続された第4絶縁電線と、により構成された撚り線
と、
前記第1絶縁電線、前記第2絶縁電線、前記第3絶縁電線および前記第4絶縁電線を一括被覆するシースと、
を有する4芯ケーブルであり、
前記ケーブルの径方向に沿う断面において、前記第1絶縁電線および前記第3絶縁電線は、第1方向に並び、前記第2絶縁電線および前記第4絶縁電線は、前記第1方向に並び、前記第1絶縁電線および前記第4絶縁電線は、前記第1方向に対し交差する第2方向に並び、前記第2絶縁電線および前記第3絶縁電線は、前記第2方向に並
び、前記第1絶縁電線と前記第2絶縁電線との間に亘って前記シースが形成され、前記第3絶縁電線と前記第4絶縁電線との間に亘って前記シースが形成されている、回転速センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の回転速センサにおいて、
前記第1端子は、前記第1センサICの入力端子であり、
前記第2端子は、前記第1センサICの出力端子であり、
前記第3端子は、前記第2センサICの入力端子であり、
前記第4端子は、前記第2センサICの出力端子である、回転速センサ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の回転速センサにおいて、
前記第1センサICの一部と前記第2センサICの一部とは、平面視で互いに重なり、
前記第1裏面と前記第2検出面とが対向している、回転速センサ。
【請求項4】
請求項1または2に記載の回転速センサにおいて、
前記第1センサICの一部と前記第2センサICの一部とは、平面視で互いに並び、
前記第1検出面および前記第2検出面のそれぞれは、第3方向を向いている、回転速センサ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の回転速センサにおいて、
前記第1センサICおよび前記第2センサICは、互いに一体となって1つの第3センサICを構成し、
前記第3センサICは、前記センサ保持部に埋設されている、回転速センサ。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の回転速センサにおいて、
前記第1センサICおよび前記第2センサICのそれぞれは、検出素子としての磁気抵抗効果素子を備えている、回転速センサ。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の回転速センサにおいて、
前記第1センサICおよび前記第2センサICは、同時に動作する、回転速センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物の回転速度を検出するセンサに関するものであり、特に、車輪の回転速度を検出するのに好適なセンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、自動車または自動二輪車などの車両には様々なセンサが搭載されており、それら車両用センサの1つとして回転速センサがある。回転速センサは、例えば、車輪の回転速度を検出する目的で車両に搭載される。かかる目的で車両に搭載される回転速センサは、一般的に車輪速センサと呼ばれる。車輪速センサとしての回転速センサは、車輪のロックを防止するアンチロックブレーキシステム(ABSシステム)、または、車輪のスリップを防止するトラクションコントロールシステムなどの構成要素の1つとして車両に搭載される。
【0003】
上記のような車輪速センサは、信号伝送路を構成するケーブルと、ケーブルの一端側に設けられたセンサヘッドと、ケーブルの他端側に設けられたコネクタとを有する。センサヘッドには、ホール素子または磁気抵抗効果素子などの検出素子を含む磁気センサ用IC(以下、「センサIC」と呼ぶ)が内蔵されている。センサヘッドは、車輪と一緒に回転するマグネットエンコーダまたはロータなどの近傍に配置される。センサヘッドに内蔵されているセンサIC(検出素子)は、マグネットエンコーダまたはロータなどの回転に伴って発生するセンサヘッド周囲の磁界変動を検出し、この磁界変動(車輪回転速度)に応じた電気信号を出力する。センサICから出力された電気信号は、ケーブルによって伝送され、コネクタを介して制御部または制御装置などに入力される。
【0004】
従来、センサヘッドに内蔵されるセンサICは1つであった。一方、自動運転システムまたは運転支援システムなどの開発に伴って、車輪速センサを含む回転速センサに対する信頼性および安定性の向上が求められている。そこで、センサヘッドに内蔵されるセンサICの数を増やして回転速センサの信頼性および安定性の向上を図ることが検討されている。つまり、回転速センサの冗長化が検討されている。
【0005】
特許文献1(特開2017-96828号公報)には、検出素子部を2つ搭載した車輪速センサが記載されている。ここでは、検出素子部に接続された2つの電線を1つのシース電線としてまとめ、2つの検出素子部センサのそれぞれに接続されたシース電線同士を1つのゴムチューブ内にまとめることで、計4つの電線を1つにまとめている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
回転速センサの冗長化により、センサヘッドに2つのセンサICを内蔵する場合、各センサICに接続された2つの電線(センサ電源供給用のVcc配線およびGND配線)、つまり計4つの電線を1つにまとめることが考えられる。同時に動作する2つのセンサICに接続された4つの電線を1つにまとめる場合、一方のペアの電線から生じる磁場により、他方のペアの電線にノイズが流れる問題(クロストーク)が起きる。このため、クロストークの発生を抑え、これにより回転速センサの信頼性を向上させることが課題として存在する。
【0008】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願において開示される実施の形態のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0010】
一実施の形態である回転速センサは、樹脂から成るセンサヘッドと、センサヘッド内に埋設された第1センサICおよび第2センサICと、端部がセンサヘッド内に位置し、内部に第1センサICに接続された第1絶縁電線および第2絶縁電線と、第2センサICに接続された第3絶縁電線および第4絶縁電線とから成る撚り線を有するケーブルを備えたものである。ケーブルの断面において、四角形の4隅に対応する位置に配置された4つの絶縁電線のうち、第1絶縁電線および第2絶縁電線は当該四角形の対角の位置に配置され、第3絶縁電線および第4絶縁電線は当該四角形の他の対角の位置に配置されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、回転速センサの信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施の形態に係る回転速センサの構成を示す概略図である。
【
図4】
図2に示すセンサヘッドのA-A線における断面図である。
【
図5】
図2に示すセンサヘッド内におけるセンサICとケーブルとの接続状態を示す斜視図である。
【
図6】
図2に示すセンサヘッド内におけるセンサICとケーブルとの接続状態を示す平面図である。
【
図7】
図2に示すセンサヘッド内におけるセンサICとケーブルとの接続状態を示す底面図である。
【
図8】
図6に示すケーブルのB-B線における断面図である。
【
図9】
図2に示すセンサヘッド内におけるセンサICとケーブルとの接続状態を示す概略図である。
【
図10】一実施の形態に係る回転速センサを構成するケーブルの断面図である。
【
図11】一実施の形態の変形例に係る回転速センサのセンサヘッド内におけるセンサICとケーブルとの接続状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の回転速センサの実施の形態の一例について、図面を参照しながら詳細に説明する。本実施の形態に係る回転速センサは、ABSシステムの構成要素の1つとして車両に搭載される車輪速センサである。
【0014】
<本実施の形態の回転速センサの構造>
以下の説明で用いる
図2および
図3は、互いに異なる方向からセンサヘッド2を示す斜視図である。ただし、
図3では、ケーブル3と、センサIC41、42と、それらの間の端子および絶縁電線などを透過して示している。
【0015】
図1に示すように、本実施の形態に係る回転速センサである車輪速センサ1Aは、センサヘッド2、ケーブル3およびコネクタ4を有する。センサヘッド2は、不図示の車輪と一緒に回転するマグネットエンコーダ5の近傍に配置される。具体的には、センサヘッド2は、マグネットエンコーダ5との位置関係が所定の位置関係となるように、車体(ハブ、ナックル、サスペンション等)に固定される。マグネットエンコーダ5の周縁には、当該マグネットエンコーダ5の回転方向に沿ってN極部とS極部とが交互に設けられている。よって、車輪の回転に伴ってマグネットエンコーダ5が回転すると、センサヘッド2の周囲で磁界変動が発生する。センサヘッド2には、磁界変動を検出し、その磁界変動に応じた電気信号を出力する磁気センサ用IC(センサIC)が内蔵されている。また、センサヘッド2とコネクタ4とは、一本のケーブル3を介して接続されている。センサヘッド2に内蔵されているセンサICから出力された電気信号は、ケーブル3を介してコネクタ4に伝送され、コネクタ4の接続先に入力される。コネクタ4は、例えば、ABSシステムの制御部若しくは制御装置、またはABSシステムを含む各種システムを統括的に制御する制御部または制御装置などに接続される。
【0016】
図1、
図2および
図3に示すように、センサヘッド2は、フランジ部10と、フランジ部10の一側に設けられたセンサ保持部20と、フランジ部10の他側に設けられたケーブル保持部30と、を含んでいる。これらフランジ部10、センサ保持部20およびケーブル保持部30は、樹脂によって一体成形されている。言い換えれば、フランジ部10、センサ保持部20およびケーブル保持部30のそれぞれは、射出成形された樹脂成形体の一部である。
【0017】
図1に示すように、フランジ部10は、互いに平行な前面11aおよび背面11bを有し、全体として概ね板状の外観を呈している。
図1、
図2および
図3に示すように、フランジ部10には、センサヘッド2を所定位置に固定するための固定部材(例えば、ボルト)が挿通される貫通孔12が設けられている。貫通孔12は、フランジ部10を当該フランジ部10の厚み方向に貫通しており、貫通孔12の一端はフランジ部10の前面11aにおいて開口し、貫通孔12の他端はフランジ部10の背面11bにおいて開口している。
図2に示すように、貫通孔12の内側には、環状の補強部材13が設けられている。本実施の形態における補強部材13は金属製であるが、補強部材13は金属製に限られず、例えば樹脂製であってもよい。
【0018】
図1、
図2および
図3に示すように、センサ保持部20およびケーブル保持部30は、全体として概ね筒形の外観を呈している。より具体的には、センサ保持部20は、フランジ部10の前面11aから前方に突出しており、根元側は略円筒形の外観を呈し、先端側は略角筒形の外観を呈している。一方、ケーブル保持部30は、フランジ部10の背面11bから当該前方と反対の後方に突出しており、全長に亘って略円筒形の外観を呈している。
【0019】
ここでは、フランジ部10の厚み方向を「前後方向」とし、フランジ部10の高さ方向(長手方向)を「上下方向」とする。また、前後方向および上下方向の双方に対して直交する方向を「左右方向」とする。さらに、前後方向に関しては、フランジ部10に対するセンサ保持部20の突出方向(第1方向)を「前方」、フランジ部10に対するケーブル保持部30の突出方向(第2方向)を「後方」とする。上下方向に関しては、貫通孔12が設けられている側を「下方」、貫通孔12が設けられている側と反対側を「上方」(第3方向)とする。また、略円筒形の外観を呈しているセンサ保持部20の根元側を「基端部20a」と呼び、略角筒形の外観を呈しているセンサ保持部20の先端側を「先端部20b」と呼ぶ場合がある。言い換えれば、略円筒形の外観を呈している部分が基端部20aであり、略角筒形の外観を呈している部分が先端部20bである。
【0020】
図3および
図4に示すように、センサヘッド2には、磁界変動を検出する検出素子を備える複数のセンサIC40が内蔵されている。言い換えれば、センサヘッド2には、磁界変動に応じた電気信号を出力する複数のセンサIC40が内蔵されている。本実施の形態では、計2つのセンサIC(第1センサIC)41およびセンサIC(第2センサIC)42がセンサ保持部20の先端に埋設されている。より具体的には、2つのセンサIC41、42は、センサ保持部20の先端部20bの端面近傍に埋設されている。
【0021】
それぞれのセンサIC41、42は、検出素子としての磁気抵抗効果素子41c、42cを備えている。本実施の形態における磁気抵抗効果素子41c、42cは、巨大磁気抵抗効果素子(GMR(Giant Magneto Resistive effect)素子)である。センサIC41、42は、双方の検出面が上向きとなる状態で上下に重ねられている。以下の説明では、センサIC41を「上側センサIC41」と呼び、センサIC42を「下側センサIC42」と呼んで区別する場合がある。もっとも、かかる区別は説明の便宜上の区別に過ぎない。一方、センサIC41、42を「センサIC40」と総称する場合もある。
【0022】
図4に示すように、ケーブル3の先端はセンサヘッド2に接続されている。具体的には、ケーブル3の端部はケーブル保持部30に覆われている。つまり、ケーブル3の端部はケーブル保持部30にモールドされている。この結果、ケーブル3は、ケーブル保持部30の端面30aから後方に向かって延出している。
図4は
図2に示すセンサヘッドのA-A断面図であるが、ケーブル3内を通る4つの絶縁電線については断面ではなく左方向から見た側面を示している。
【0023】
図4~
図7に示すように、ケーブル3は、4つの芯線50を含む多芯ケーブルである。より具体的には、ケーブル3は、上側センサIC41に接続される一対の芯線50と、下側センサIC42に接続される他の一対の芯線50と、を含む多芯ケーブルである。
図6は、
図5に示す構造を上方向から見た平面図であり、
図7は、
図5に示す構造を下方向から見た平面図であり底面図である。
【0024】
図5に示すように、それぞれの芯線50は、絶縁体(絶縁膜)55によって被覆されている。さらに、絶縁体55によって被覆されているそれぞれの芯線50は、互いに撚り合わされた状態でシース(外皮、絶縁体)56によって一括被覆されている(
図4参照)。具体的には、芯線51aおよび芯線51aを被覆する絶縁体55は、絶縁電線(第1絶縁電線)61aを構成し、芯線51bおよび芯線51bを被覆する絶縁体55は、絶縁電線(第2絶縁電線)61bを構成している(
図5および
図6参照)。また、芯線52aおよび芯線52aを被覆する絶縁体55は、絶縁電線(第3絶縁電線)62aを構成し、芯線52bおよび芯線52bを被覆する絶縁体55は、絶縁電線(第4絶縁電線)62bを構成している(
図5および
図7参照)。
【0025】
つまり、ケーブル3は、撚り合わされた4つの絶縁電線61a、61b、62aおよび62bと、それら4つの絶縁電線61a、61b、62aおよび62bを一括被覆して一本に纏めるシース56と、を有する4芯ケーブルである。なお、本実施の形態における芯線50は、錫を含有する複数本の銅合金線から成る撚り線である。また、絶縁体55は難燃性架橋ポリエチレンによって形成されており、シース56は熱可塑性ウレタンによって形成されている。もっとも、芯線50、絶縁体55およびシース56の材料が上記材料に限定されないことは勿論である。
【0026】
図6および
図7に示すように、ケーブル3に含まれている4つの芯線50は所定のセンサIC40と電気的に接続されている。具体的には、
図6に示すように、2つの芯線51a、51bが上側センサIC41に接続され、
図7に示すように、他の2つの芯線52a、52bが下側センサIC42に接続されている。より具体的には、芯線51aは、上側センサIC41の入力端子(第1端子)41aに接続され、芯線51bは、上側センサIC41の出力端子(第2端子)41bに接続されている。同様に、芯線52aは、下側センサIC42の入力端子(第3端子)42aに接続され、芯線52bは、下側センサIC42の出力端子(第4端子)42bに接続されている。
【0027】
入力端子41a、42a、出力端子41bおよび42bのそれぞれは短冊形状を有している。そして、芯線51aが入力端子41aに抵抗溶接され、芯線51bが出力端子41bに抵抗溶接されている。また、芯線52aが入力端子42aに抵抗溶接され、芯線52bが出力端子42bに抵抗溶接されている。以下の説明では、入力端子41a、出力端子41bを「端子57」と総称し、入力端子42a、出力端子42bを「端子58」と総称する場合がある。
【0028】
図4、
図6および
図7に示すシース56の端部、芯線50、端子57、端子58およびセンサIC40の本体は、ホルダ60によって保持されている。言い換えれば、シース56の端部、芯線50、端子57および端子58を含むセンサIC40は、ホルダ60に保持された状態で、
図2に示すセンサヘッド2に内蔵されている。
図6および
図7では、ホルダ60を構成する板状のセパレータ66、67および側壁部64、65のそれぞれの具体的な形状の図示を省略し、一点鎖線で示している。
【0029】
ホルダ60は、対向する一対の側壁部64、65と、これら側壁部64、65に跨る支持板63と、を有する。芯線51a、51bおよび端子57を含む上側センサIC41(
図5および
図6参照)は、支持板63の上面側に配置されている。一方、芯線52a、52bおよび端子58を含む下側センサIC42(
図5および
図7参照)は、支持板63の下面側に配置されている。
【0030】
芯線51a、51bの間に介在する板状のセパレータ66が突設されている。言い換えれば、セパレータ66は、同一のセンサIC(上側センサIC41)に接続される一対の芯線51a、51bの間に介在する隔壁である。支持板63の下面にもセパレータ66と同様のセパレータ67が突設されている。セパレータ67も、同一のセンサIC(下側センサIC42)に接続される一対の芯線52a、52bの間に介在する隔壁である。
【0031】
図6に示すように、セパレータ66は、芯線51a、51bの端部を越えて前方に延在し、入力端子41aと出力端子41bとの間に介在している。
図7に示すように、セパレータ67は、芯線52a、52bの端部を越えて前方に延在し、入力端子42aと出力端子42bとの間に介在している。この結果、芯線51aおよび入力端子41aは、セパレータ66と側壁部64の上部との間に配置され、芯線51bおよび出力端子41bは、セパレータ66と側壁部65の上部との間に配置されている(
図6参照)。また、芯線52aおよび入力端子42aは、セパレータ67と側壁部64の下部との間に配置され、芯線52bおよび出力端子42bは、セパレータ67と側壁部65の下部との間に配置されている(
図7参照)。
【0032】
図6に示すセパレータ66は、芯線51a、51b、入力端子41aおよび出力端子41bをホルダ60上の所定位置に位置決めする役割を果たすとともに、芯線51aと芯線51bとの短絡、および、入力端子41aと出力端子41bとの短絡を防止する役割を果たす。
図7に示すセパレータ67は、芯線52a、52b、入力端子42aおよび出力端子42bをホルダ60上の所定位置に位置決めする役割を果たすとともに、芯線52aと芯線52bとの短絡、および、入力端子42aと出力端子42bとの短絡を防止する役割を果たす。
【0033】
図8に示すように、ケーブル3を構成するシース56内には、4つの絶縁電線61a、61b、62aおよび62bが通っている。すなわち、ケーブル3は、4つの絶縁電線61a、61b、62aおよび62bを束ねたものである。
【0034】
図8に示すケーブル3の断面は、ケーブル3の短手方向(径方向)に沿う断面であり、ケーブル3の延在方向に対して直交する断面である。当該断面において、4つの絶縁電線61a、61b、62aおよび62bは、例えば、当該断面に沿う仮想の正四角形の4隅に当たる箇所にそれぞれ位置している。つまり、絶縁電線61a、61b、62aおよび62bは行列状に並んでいる。ここでは、当該断面において、絶縁電線62a、61bは第1方向において互いに並び、絶縁電線61a、62bは第1方向において互いに並んでいる。また、当該断面において、絶縁電線61a、62aは第2方向において互いに並び、絶縁電線62b、61bは第2方向において互いに並んでいる。第1方向および第2方向は、当該断面に沿う方向であり、互いに交差する方向である。第1方向および第2方向は、例えば互いに直交する関係にある。
【0035】
すなわち、当該断面において、4つの絶縁電線61a、61b、62aおよび62bは、例えば仮想四角形の4隅に当たる箇所にそれぞれ位置しており、センサIC41に接続された絶縁電線61a、61bは、当該四角形の対角の位置に配置され、センサIC42に接続された絶縁電線62a、62bは、当該四角形の他の対角の位置に配置されている。
【0036】
また、当該四角形の対角の位置に配置された1つのペアの絶縁電線に対する他のペアの絶縁電線の位置を入れ替えてもよい。つまり、例えば
図8の絶縁電線62aと絶縁電線62bとをそれぞれ入れ替えてもよい。その場合、当該断面において、絶縁電線61a、62bは第1方向において互いに並び、絶縁電線62a、61bは第1方向において互いに並び、絶縁電線61a、62aは第2方向において互いに並び、絶縁電線62b、61bは第2方向において互いに並ぶ。
【0037】
図9には、センサヘッド2(
図2参照)内のセンサIC41、42を上下方向に重ねず、横に並べた状態(展開した状態)の概略図を示している。なお、
図9はセンサIC41、42を展開した状態を示すものであって、実際のセンサヘッド2内に埋設されるセンサIC41、42は、少なくとも一部が互いに重なっている。つまり、
図9に示す構成は本実施の形態のセンサIC41、42の配置を示すものではない。
【0038】
上側センサIC41は、平面視において、例えば矩形に近いレイアウトを有している。なお、ここでいう平面視とは、センサICの検出面(主面、第1面)に対して直交する方向(上方)から上側センサIC41を見ることをいう。入力端子41aおよび出力端子41bは、平面視において略矩形の上側センサIC41の1辺から延びており、互いに当該1辺に沿って並んでいる。下側センサIC42は、上側センサIC41と同じ機能および同じ構造を有する同一の素子である。したがって、入力端子42aおよび出力端子42bは、平面視において略矩形の下側センサIC42の1辺から延びており、互いに当該1辺に沿って並んでいる。
【0039】
図9では、上側センサIC41の検出面を上向きにし、下側センサIC42の検出面を下向きにしている。すなわち、
図9では、上側センサIC41の検出面(主面、第1検出面)の反対側の裏面(第1裏面)を下向きにし、下側センサIC42の検出面(主面、第2検出面)の反対側の裏面(第2裏面)を上向きにしている。センサIC41、42のそれぞれに芯線50を接続する工程では、このように2つの上側センサIC41の主面(上面)と下側センサIC42の裏面(下面)とが上向きとなるようにセンサIC41、42を置き、その状態で端子57、58に芯線50を溶接することが考えられる。その後、センサIC41、42のそれぞれの向きを相互に逆方向に90度変えることで、それぞれの検出面を同一方向に向けてセンサIC41、42を重ねることができる。ただし、この接続工程においてセンサIC41、42のそれぞれの検出面は、上および下のどちらを向いていてもよい。
【0040】
なお、本願の各図では、センサIC41、42のそれぞれの検出面および裏面の向きが分かり易いように、略矩形の平面形状を有するセンサIC41、42のそれぞれの1つの角部に、斜めに掛けた部分を示している。これに対し、センサIC41の平面形状は、入力端子41a、出力端子41bが並ぶ方向において左右対称であってもよい。センサIC42についても同様である。
【0041】
また、センサIC41、42のそれぞれの検出面は、完全に同一方向を向いている必要はない。言い換えれば、センサIC41、42のそれぞれの検出面が完全に平行である必要はない。
【0042】
入力端子41aは、上側センサIC41に電源電圧(Vcc)を供給するための電源電圧端子であり、入力端子41aに接続された芯線51aを含む絶縁電線61aは、電源配線(プラス配線、入力配線)である。また、出力端子41bは、上側センサIC41を接地電位(GND)に接続するための接地端子であり、出力端子41bに接続された芯線51bを含む絶縁電線61bは、接地配線(マイナス配線、出力配線)である。
【0043】
同様に、入力端子42aは、下側センサIC42に電源電圧(Vcc)を供給するための電源電圧端子であり、入力端子42aに接続された芯線52aを含む絶縁電線62aは、電源配線(プラス配線、入力配線)である。また、出力端子42bは、下側センサIC42を接地電位(GND)に接続するための接地端子であり、出力端子42bに接続された芯線52bを含む絶縁電線62bは、接地配線(マイナス配線、出力配線)である。
【0044】
このように互いに接続されたセンサIC41、42とケーブルは、
図5に示すように、双方の検出面が上向きとなる状態で上下に重ねられる。これは、センサIC41、42のそれぞれに同じ機能を持たせるためである。センサIC41、42のうちの一方は、例えば、他方が故障などにより動作しなくなった際、回転速センサがその機能を失い、正常に動作しなくなることを避けるために設けられた予備の素子である。したがって、センサIC41、42のそれぞれの検出面は、同じ方向に向いている必要がある。言い換えれば、上側センサIC41の裏面と、下側センサIC42の検出面とは、対向している。
【0045】
仮に、センサIC41、42のそれぞれの検出面が互いに異なる方向を向いている場合、センサIC41で検出される車輪の回転方向とセンサIC41で検出される車輪の回転方向とは、互いに別方向となるため、一方のセンサICを予備として用いることができない。ここではセンサICの検出面と裏面とを分けて表現しているが、裏面も車輪の回転速度を検出可能な検出面であるといえる。ただし、裏面が車輪側を向いている場合には、検出面が車輪側を向いている場合と異なり逆回転を検出する。
【0046】
正常時において、センサIC41、42は同時に動作する。このため、芯線51a、52aには同時に同じ大きさの電流信号が流れ、芯線51b、52bには同時に同じ大きさの電流信号が流れる。
【0047】
図6に示すシース56のセンサヘッド2(
図3参照)側の端部(以下、シース端部と呼ぶ)からセンサIC41、42側を見ると、入力端子41aおよび出力端子41bは互いに横方向(左右方向)に並び、入力端子42aおよび出力端子42bは互いに横方向(左右方向)に並び、入力端子42aおよび出力端子42bは入力端子41aおよび出力端子41bのそれぞれの下方に位置する。これに対し、シース端部では、行列状に並ぶ絶縁電線61a、61b、62aおよび62bのうち、四角形の対角の位置に絶縁電線61a、61bが配置され、四角形の他の対角の位置に絶縁電線62aおよび62bが配置されている。このため、センサヘッド2内でシース56から露出する絶縁電線61a、61b、62aおよび62bのうち、少なくとも2つの絶縁電線は互いに交差し、捻れる。
【0048】
<本実施の形態の効果>
4つの電線(芯線、絶縁電線)を撚り合わせて束ねる場合、電線同士の間で起きるクロストークが問題となる。クロストークとは、1または複数の電線に流れる電流により磁場が生じた際に、当該磁場内を通る他の電線に誘導起電力により流れる電流(誘導ノイズ)、または、当該電流(誘導ノイズ)が流れることを指す。つまり、クロストークは、複数の信号線が隣り合っている場合に、一方の信号線を流れる信号が他方の信号線に影響を与えることをいう。
【0049】
センサヘッド内に2つのセンサICが埋設され、それらのセンサICのうち、一方のセンサICに接続された入力配線および出力配線と、他方のセンサICに接続された入力配線および出力配線を含めた4つの電線から成る撚り線を含むケーブルにおいては、ケーブル内の4つの電線の配置によりクロストークが問題となる。
【0050】
すなわち、当該ケーブルの径方向に沿う断面において4つの電線が行列状に並ぶ場合、2つのセンサICのうち、一方のセンサICに接続された入力配線および出力配線が行方向(または列方向)に並び、他方のセンサICに接続された入力配線および出力配線が行方向(または列方向)に並ぶことが考えられる。このようなケーブルを用いた比較例の回転速センサでは、2つのセンサICのうち、一方のセンサICに接続された入力配線または出力配線に電流信号が流れると、その配線の周囲に磁場が生じ、他方に接続された入力配線または出力配線が当該磁場内を通るため、当該磁場内を通る入力配線または出力配線に、誘導起電力により電流(誘導ノイズ)が流れる。
【0051】
上記のような相互干渉によるクロストーク(誘導ノイズ)の発生は、回転速センサの誤作動を引き起こす虞がある。例えば、回転速センサに対し耐久試験を行う際には、一方のセンサICに接続されたペアの絶縁電線に高い電圧を印加する。このため、上記比較例の回転速センサでは、当該耐久試験時に他方のセンサICに接続されたペアの絶縁電線に大きい誘導ノイズが生じ得る。よって、当該他方のセンサICがクロストークにより誤作動を引き起こす虞がある。
【0052】
同様に、何らかの故障により、回転速センサに電圧を供給する電源に異常が生じ、いずれかのセンサICに接続された入力配線および出力配線に大きい電流(例えば突発電流)が流れることが考えられる。その際、予備として設けられた他方のセンサICが、誘起された電流により誤作動を引き起こす虞がある。このことは、回転速センサの信頼性を低下させる要因となりうる。
【0053】
これに対し、本実施の形態では、
図8を用いて説明したように、ケーブル3の断面において行列状に並ぶ絶縁電線61a、61b、62aおよび62bのうち、絶縁電線61a、61bを当該断面に沿う四角形の対角の位置に配置し、絶縁電線62a、62bを当該四角形の他の対角の位置に配置している。これにより、
図10に示すように、2つのセンサICのうち、一方のセンサICに接続されたペア(第1組)の電線(例えば絶縁電線61a、61b)のそれぞれから生じる磁場内を、他方のセンサICに接続されたペア(第2組)の電線(ここでは絶縁電線62a、62b)が通らない。これは、第1組の電線のそれぞれに流れる電流信号により生じる磁場の中間の位置に第2組の電線が並んでいるためである。よって、第2組の電線において、クロストークの発生を抑えることができる。このことは、第1組と第2組との立場を入れ替えても同じである。すなわち、第2組の電線を流れる電流信号により生じる磁場内を第1組の電線が通っていないため、第1組の電線におけるクロストークの発生を抑えることができる。したがって、4つの絶縁電線61a、61b、62aおよび62bの全てにおいて、クロストークにより生じる誘導ノイズを低減することができる。
【0054】
なお、
図8では、4つの絶縁電線61a、61b、62aおよび62bは、シース56内において互いに離間しているが、隣接する絶縁電線が互いに接触していてもよい。すなわち、絶縁電線61aおよび61bは、それぞれ絶縁電線62aおよび62bと接触し、絶縁電線62aおよび62bは、それぞれ絶縁電線61aおよび61bと接触していてもよい。また、4つの絶縁電線61a、61b、62aおよび62bのそれぞれは、ケーブル3の径方向に沿う断面において、例えば正四角形ではなく長方形または平行四辺形(例えば菱形)の4隅に当たる箇所に位置していてもよい。ただし、クロストークを低減する観点から、当該四角形の4辺のそれぞれは同じ長さであることが好ましい。つまり、当該四角形は長方形よりも、正方形または菱形であることが望ましい。言い換えれば、絶縁電線61aと絶縁電線62a、62bのそれぞれとの距離と、絶縁電線61bと絶縁電線62a、62bのそれぞれとの距離とは、いずれも等しいことが望ましい。
【0055】
また、ここではセンサIC41、42が互いに離間する別体である場合について説明したが、磁気抵抗効果素子41c、42c(
図4参照)が同一の樹脂内に封入され、1つのセンサICを構成していてもよい。つまり、磁気抵抗効果素子41c、42cおよび当該樹脂が、4つの端子57、58を備えた1つのセンサICを構成し、当該センサICがセンサヘッド2内に封入されていてもよい。言い換えれば、センサIC41、42は、互いに一体となって1つのセンサICを構成していてもよい。これに対し、磁気抵抗効果素子41c、42cが同一の樹脂内に封入され、1つのセンサICを構成し、かつ、磁気抵抗効果素子41c、42cが重ならずに並んでいる場合について、以下に変形例として説明する。
【0056】
<変形例>
回転速センサを冗長化する方法として、2つの磁気抵抗効果素子を同一の樹脂内に封入(モールド)することで形成したセンサICを、センサヘッド内に封入することが考えられる。本実施の形態は、
図11に示すように、磁気抵抗効果素子41c、42cが同一の樹脂内に封入され、互いに固定されている場合にも適用できる。
図11では、磁気抵抗効果素子41c、42cの輪郭を破線で示している。
【0057】
図11に示すように、本変形例の1つのセンサIC43は、内部に2つの磁気抵抗効果素子41c、42cを有している。磁気抵抗効果素子41c、42cは、それらの検出面に沿う方向において、センサIC43を構成する樹脂内に並んで配置されており、平面視で互いに離間している。つまり、磁気抵抗効果素子41c、42cのそれぞれは、少なくとも一部が並んで配置されている。平面形状が矩形であるセンサIC43の1辺から延びる入力端子41a、出力端子41b、入力端子42aおよび出力端子42bは、上記方向において順に並んで配置されている。入力端子41aおよび出力端子41bは磁気抵抗効果素子41cに接続されており、入力端子42aおよび出力端子42bは磁気抵抗効果素子42cに接続されている。磁気抵抗効果素子41c、42cは、いずれも同じ面(検出面を)同じ方向(上方向)に向けて配置されている。磁気抵抗効果素子41c、42cは互いに電気的に接続されておらず、絶縁されている。
【0058】
ケーブル3の構造、つまり、ケーブル3内の絶縁電線61a、61b、62aおよび62bの配置は、
図8に示すものと同じである。このように、磁気抵抗効果素子41c、42cが1つのセンサIC43を構成する場合でも、
図1~
図10を用いて説明した回転速センサと同様に、クロストークを低減する効果を得ることができる。すなわち、磁気抵抗効果素子41c、42cが互いに重なっておらず、検出面に沿う横方向に並んでいる場合でも、
図1~
図10を用いて説明した回転速センサと同じ効果を得ることができる。
【0059】
以上、本発明者らによってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0060】
例えば、センサヘッドに内蔵されるセンサICが備える検出素子は、異方性磁気抵抗効果素子(AMR(Anisotropic magnetoresistance effect)素子)またはトンネル磁気抵抗効果素子(TMR(Tunnel magnetoresistance effect)素子)などであってもよく、ホール素子であってもよい。
【0061】
芯線とセンサICの出力端子との接続方法は溶接に限られず、例えば、半田付けであってもよい。また、芯線とセンサICの出力端子とを接続端子を介して接続してもよい。この場合、例えば、接続端子の一端と芯線とがカシメ接続され、接続端子の他端と出力端子とがカシメ接続される。
【0062】
本発明は、車輪速センサ以外の回転速センサにも適用することができ、適用された場合には上記と同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0063】
2 センサヘッド
3 ケーブル
40 センサIC
41 センサIC(上側センサIC)
41a、42a 入力端子
41b、42b 出力端子
42 センサIC(下側センサIC)
41c、42c 磁気抵抗効果素子
50、51a、51b、52a、52b 芯線
61a、61b、62a、62b 絶縁電線