(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】合成石英ガラスキャビティ、合成石英ガラスキャビティリッド、光学素子パッケージ及びこれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/02 20060101AFI20221213BHJP
H01L 33/48 20100101ALI20221213BHJP
H01L 23/08 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
H01L23/02 F
H01L33/48
H01L23/02 D
H01L23/08 B
(21)【出願番号】P 2019135101
(22)【出願日】2019-07-23
【審査請求日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】P 2018137374
(32)【優先日】2018-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松井 晴信
(72)【発明者】
【氏名】原田 大実
(72)【発明者】
【氏名】岡藤 大雄
(72)【発明者】
【氏名】山崎 裕之
(72)【発明者】
【氏名】竹内 正樹
【審査官】佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-313858(JP,A)
【文献】特開2007-317719(JP,A)
【文献】特開平06-077451(JP,A)
【文献】特開2007-157805(JP,A)
【文献】特開2018-026548(JP,A)
【文献】特開2006-041277(JP,A)
【文献】特開2017-212385(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0263833(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0273336(US,A1)
【文献】特開2017-147432(JP,A)
【文献】特開2016-213412(JP,A)
【文献】特開2009-267049(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/02
H01L 33/48
H01L 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子又は受光素子が設置される基板に対し、前記素子を覆って前記基板に接着させる合成石英ガラスキャビティであって、前記合成石英ガラスキャビティの内側表面のうち、前記素子の発光面又は受光面に対向する面が鏡面であり、それ以外の面は粗面である合成石英ガラスキャビティ。
【請求項2】
上壁部、側壁部及び下方開口部を有する断面逆凹状形状を有し、前記上壁部の内側表面が鏡面であり、前記側壁部の内側表面が粗面である請求項1記載の合成石英ガラスキャビティ。
【請求項3】
上壁部の外側表面が鏡面である請求項2記載の合成石英ガラスキャビティ。
【請求項4】
下方開口幅又は開口径と、上壁部の内側表面の幅又は径との比が、0.8:1.0~1.0:1.2の範囲内である請求項2又は3記載の合成石英ガラスキャビティ。
【請求項5】
粗面の表面粗さ(Ra)が、0.1~0.5μmである請求項1~4のいずれか1項記載の合成石英ガラスキャビティ。
【請求項6】
鏡面の表面粗さ(Ra)が、0.05~0.4nmである請求項1~5のいずれか1項記載の合成石英ガラスキャビティ。
【請求項7】
上壁部と側壁部がそれぞれ互いに異なる合成石英ガラス基板から形成されたものであり、前記上壁部の下面と前記側壁部の上端面とが貼り合わされている請求項2~6のいずれか1項記載の合成石英ガラスキャビティ。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか1項記載の合成石英ガラスキャビティと、この合成石英ガラスキャビティが前記発光素子又は受光素子が設置される基板と接する部分に形成された接着層とを有する合成石英ガラスキャビティリッド。
【請求項9】
前記接着層が、半硬化状態(B-Stage)である請求項
8記載の合成石英ガラスキャビティリッド。
【請求項10】
前記接着層が、エポキシ樹脂若しくはシリコーン樹脂を含む樹脂系接着層又は金属若しくはその混合物を含む金属系接着層である請求項
8又は
9記載の合成石英ガラスキャビティリッド。
【請求項11】
前記金属が、金、銀、銅、パラジウム、インジウム、スズ及びビスマスからなる群より選ばれる請求項
10記載の合成石英ガラスキャビティリッド。
【請求項12】
請求項
8~
11のいずれか1項記載の合成石英ガラスキャビティリッドと、発光素子又は受光素子が設置された基板とを備えた光学素子パッケージ。
【請求項13】
原料合成石英ガラス基板の複数箇所に貫通穴加工を行い、複数の貫通穴を形成する工程と、
前記複数の貫通穴が形成された原料合成石英ガラス基板の上に、少なくとも前記貫通穴と対向して貼り合せる面が鏡面化された別の原料合成石英ガラス基板を貼り合わせる工程と、
前記貼り合わせた原料合成石英ガラス基板を、隣接する穴間で切断して、複数の合成石英ガラスキャビティに個片化する工程と
を含む合成石英ガラスキャビティの製造方法。
【請求項14】
前記貫通穴加工が、サンドブラスト加工又はマシニングセンタ加工である請求項
13記載の合成石英ガラスキャビティの製造方法。
【請求項15】
請求項
13又は
14記載の製造方法により合成石英ガラスキャビティを得た後、この合成石英ガラスキャビティの側壁部下端面に樹脂系ペースト又は金属系ペーストを塗布し、樹脂系接着層又は金属系接着層を形成する工程を含む合成石英ガラスキャビティリッドの製造方法。
【請求項16】
接着層が金属系接着層であって、加熱することにより半硬化状態(B-Stage)の金属系接着層を形成する工程を含む請求項
15記載の合成石英ガラスキャビティリッドの製造方法。
【請求項17】
請求項
15又は
16記載の製造方法により合成石英ガラスキャビティリッドを得た後、前記合成石英ガラスキャビティリッドを発光素子又は受光素子を設置した基板に対して前記発光素子又は受光素子を覆うように前記合成石英ガラスキャビティリッドの接着層を介して接着させる工程を含む光学素子パッケージの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成石英ガラスキャビティ、合成石英ガラスキャビティリッド、光学素子パッケージ及びこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水銀ランプの規制に伴い、代替として短い波長、特に紫外線領域の光を出すことができるUV-LEDが注目されている。LEDは任意の波長を取り出すことができ、用途に応じた波長のLEDが開発されている。例えば、UV領域である265nmの波長は、殺菌に有効な波長であることが知られており、265nmの波長の光を出すUV-LEDが殺菌用途として開発されている。しかし、265nmの光学素子が安定的に供給されたとしても、光学素子をパッケージングなしで使用することは難しく、UV-LEDからの光の取り出し効率をできるだけ高めてパッケージングすることが求められている。
【0003】
また、表面実装型小型パッケージを用いた電子デバイス等では、中空キャビティ構造が必要とされる部材が多いが、近年は耐熱性の観点から透明な合成石英ガラスで封止を行いたいとする要求がある。その他、深紫外光を検知する火炎センサー等の受光素子も同様に中空キャビティ構造を有する物が多い。
【0004】
LEDを含め、発光素子、受光素子等の光学素子又はMEMS部材等をパッケージングする際には、窓材もしくはモールド材が必要となる。窓材を接合する際の接着剤の種類としては、エポキシ樹脂系やアクリル樹脂系等の有機系接着剤、ガラスフリット等が挙げられ、モールド材としてはシリコーン樹脂等が例示される。
【0005】
例えば、特開2010-186945号公報(特許文献1)では、振動子やジャイロ、加速度センサーに用いられる中空のキャビティ構造のパッケージを作製するにあたり、キャビティの凹部はフォトリソグラフィによるエッチング形成やプレス加工で形成し、キャビティ構造を持つガラスと接合相手となるガラス材を陽極接合によってガラス材どうしを接合する手法が示されている。
【0006】
また、国際公開第2015-152244号(特許文献2)では、保護膜を使用してエッチングによりキャビティ構造を形成することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2010-186945号公報
【文献】国際公開第2015/152244号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1は、エッチングを用いてキャビティ構造を形成しているため、穴の間口にR形状がつきやすく、寸法精度を精密に制御することが難しい。さらに、ウェットエッチング法では深堀の穴加工ができず、ドライエッチング法を用いて深堀の穴加工を行うと、加工時間及び加工コストが莫大となるデメリットがある。接合法についても、陽極接合法が提案されているが、金属不純物を含まない高純度のSiO2からなる非晶質である合成石英ガラスでは、この手法は採用できない。
【0009】
また、特許文献2では、マスクを用いてエッチングすることによりキャビティ構造を形成しているが、特許文献1と同様、寸法精度及び凹形状の深さに制限があり、汎用性を持たせづらい。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、短波長、特に300nm以下の波長領域の光学素子が、中空構造を必要とするデバイスに対してその機能を長期的に安定して発揮させることができる合成石英ガラスキャビティ、合成石英ガラスキャビティリッド、及び光学素子パッケージ、並びに合成石英ガラスキャビティ及びキャビティリッドを寸法精度よく製造でき、異種材料接着時の応力の問題の解決が可能な合成石英ガラスキャビティ、合成石英ガラスキャビティリッド及び光学素子パッケージの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、下記合成石英ガラスキャビティが上記課題を解決できることを見出すと共に、任意の開口幅又は開口径や穴の深さを形成することができ、耐熱性、耐紫外線性に優れた合成石英ガラスキャビティを得ることができ、この合成石英ガラスキャビティを用いることにより、合成石英ガラスキャビティリッド及び光学素子パッケージを作製できることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
従って、本発明は、下記の合成石英ガラスキャビティ、合成石英ガラスキャビティリッド、光学素子パッケージ及びこれらの製造方法を提供する。
[1]
発光素子又は受光素子が設置される基板に対し、前記素子を覆って前記基板に接着させる合成石英ガラスキャビティであって、前記合成石英ガラスキャビティの内側表面のうち、前記素子の発光面又は受光面に対向する面が鏡面であり、それ以外の面は粗面である合成石英ガラスキャビティ。
[2]
上壁部、側壁部及び下方開口部を有する断面逆凹状形状を有し、前記上壁部の内側表面が鏡面であり、前記側壁部の内側表面が粗面である[1]記載の合成石英ガラスキャビティ。
[3]
上壁部の外側表面が鏡面である[2]記載の合成石英ガラスキャビティ。
[4]
下方開口幅又は開口径と、上壁部の内側表面の幅又は径との比が、0.8:1.0~1.2:1.0の範囲内である請求項2又は3記載の合成石英ガラスキャビティ。
[5]
粗面の表面粗さ(Ra)が、0.1~0.5μmである[1]~[4]のいずれかに記載の合成石英ガラスキャビティ。
[6]
[1]~[5]のいずれかに記載の合成石英ガラスキャビティと、この合成石英ガラスキャビティが前記発光素子又は受光素子が設置される基板と接する部分に形成された接着層とを有する合成石英ガラスキャビティリッド。
[7]
前記接着層が、半硬化状態(B-Stage)である[6]記載の合成石英ガラスキャビティリッド。
[8]
前記接着層が、エポキシ樹脂若しくはシリコーン樹脂を含む樹脂系接着層又は金属若しくはその混合物を含む金属系接着層である[6]又は[7]記載の合成石英ガラスキャビティリッド。
[9]
前記金属が、金、銀、銅、パラジウム、インジウム、スズ及びビスマスからなる群より選ばれる[8]記載の合成石英ガラスキャビティリッド。
[10]
[6]~[9]のいずれかに記載の合成石英ガラスキャビティリッドと、発光素子又は受光素子が設置された基板とを備えた光学素子パッケージ。
[11]
原料合成石英ガラス基板の複数箇所に貫通穴加工を行い、複数の貫通穴を形成する工程と、
前記複数の貫通穴が形成された原料合成石英ガラス基板の上に、少なくとも前記貫通穴と対向して貼り合せる面が鏡面化された別の原料合成石英ガラス基板を貼り合わせる工程と、
前記貼り合わせた原料合成石英ガラス基板を、隣接する穴間で切断して、複数の合成石英ガラスキャビティに個片化する工程と
を含む合成石英ガラスキャビティの製造方法。
[12]
前記貫通穴加工が、サンドブラスト加工又はマシニングセンタ加工である[11]記載の合成石英ガラスキャビティの製造方法。
[13]
[11]又は[12]記載の製造方法により合成石英ガラスキャビティを得た後、この合成石英ガラスキャビティの側壁部下端面に樹脂系ペースト又は金属系ペーストを塗布し、樹脂系接着層又は金属系接着層を形成する工程を含む合成石英ガラスキャビティリッドの製造方法。
[14]
接着層が金属系接着層であって、加熱することにより半硬化状態(B-Stage)の金属系接着層を形成する工程を含む[13]記載の合成石英ガラスキャビティリッドの製造方法。
[15]
[13]又は[14]記載の製造方法により合成石英ガラスキャビティリッドを得た後、前記合成石英ガラスキャビティリッドを発光素子又は受光素子を設置した基板に対して前記発光素子又は受光素子を覆うように前記合成石英ガラスキャビティリッドの接着層を介して接着させる工程を含む光学素子パッケージの製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、従来キャビティとして使用されてきた樹脂又は金属不純物を含むガラス種にみられる短波長の光による劣化や割れ、発光素子の発熱によるキャビティ構造の歪みや崩壊、それに伴う長期的信頼性の問題を解決することが可能となる。また、本発明の合成石英ガラスキャビティリッドは、耐熱性、耐紫外線性を求められる光学素子のパッケージング材として有用なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明における合成石英ガラスキャビティの一例を示す平面図である。
【
図3】本発明における合成石英ガラスキャビティリッドの一例を示す端面図である。
【
図4】本発明における合成石英ガラスキャビティリッドを用いた光学素子パッケージの一例を示す端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0016】
[合成石英ガラスキャビティ]
合成石英ガラスキャビティは、発光素子又は受光素子が配置される基板に対し、前記素子を覆って前記基板に接着させるものであり、このキャビティの内側表面のうち、前記素子の発光面又は受光面に対向する面が鏡面であり、それ以外の面は粗面である。
【0017】
合成石英ガラスキャビティの一例を
図1、2に示す。
図1は本発明の合成石英ガラスキャビティ1の平面図であり、
図2は、
図1のII-II線に沿った端面図である。
図2に示すように、合成石英ガラスキャビティは、例えば、上壁部2、側壁部3及び下方開口部4を有する断面逆凹形状(四角箱状)に形成され、上壁部2及び側壁部3は合成石英ガラスからなる。
【0018】
図2に示されるように、合成石英ガラスキャビティの内側表面のうち、発光素子の発光面又は受光素子の受光面に対向する面(すなわち、合成石英ガラスキャビティの上壁部2の内側表面2a)は鏡面であり、それ以外の面(すなわち、側壁部3の内側表面3a)は粗面である。発光素子の発光面又は受光素子の受光面に対向する面は光が通過する面であるために、光の取り出し効率を高めるため鏡面にする。かかる点から、上壁部の外側表面2bも鏡面であることが好ましい。一方、上壁部の内側表面以外(すなわち、側壁部3の内側表面3a)は、光が発光素子の発光面又は受光素子の受光面に対向する面以外から逃げないようにし、内部で反射させる疑似的なリフレクタの役割を持たせるようにするために、粗面である。側壁部3の外側表面3bは特に制限されず、粗面でも鏡面でもよい。
【0019】
合成石英ガラスキャビティの粗面の表面粗さ(Ra)は、発光面又は受光面に対向する面からの光の取り出し効率を上げる観点から、好ましくは0.1~0.5μm、より好ましくは0.1~0.4μmである。
また、合成石英ガラスキャビティの鏡面の表面粗さ(Ra)は、好ましくは0.05~0.4nm、より好ましくは0.05~0.2nmである。
なお、本発明において、表面粗さは、表面粗さ測定機(例えば、サーフコム480A(東京精密(株)製))により測定することができる。
【0020】
発光素子又は受光素子を覆う部分の入り口となる合成石英ガラスキャビティの開口部4の幅又は径w1と、光が通過する合成石英ガラスキャビティの上壁部の内側表面2aの幅又は径w2の比は、光の通過と光の取り出し効率の観点から、好ましくはw1:w2=0.8:1.0~1.2:1.0であり、より好ましくは0.9:1~1.2:1.0である。
【0021】
なお、合成石英ガラスキャビティの形状は、上記の比を満たす範囲であれば、下方開口部を有する断面逆凹形状(四角箱状)以外に、上端が閉塞された円筒状等のものであってもよいが、キャビティ開口部の幅又は径と上壁部の内側表面の幅又は径の比が小さい形状が好ましい。
【0022】
[合成石英ガラスキャビティリッド]
次に、合成石英ガラスキャビティリッドの一例を
図3に示す。合成石英ガラスキャビティリッドは、上述した合成石英ガラスキャビティと、この合成石英ガラスキャビティの側壁部の下端面3cに接着層5とを有する。このような合成石英ガラスキャビティリッド10を用いれば、例えば、
図4に示されるように、合成石英ガラスキャビティリッドと、発光素子又は受光素子7が設置された基板6との間で、接着層5を介してこれらが接着された光学素子パッケージ20を構成し、接着層5を介したメタルシールによる気密封止を実現した光学素子パッケージとすることができる。
【0023】
接着層としては、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等を含む樹脂系接着層、種々の金属、これらの混合物等を含む金属系接着層等が挙げられる。
【0024】
樹脂系の接着層は、上記樹脂を含む樹脂系ペーストによって形成され、構造内にネットワークを持ち、三次元的な構造を形成できるため、合成石英ガラス基板に接着することが可能であり、更にセラミックスや金属板等の多くの材質に対して接着することができる。
【0025】
一方、金属系接着層を形成する金属系ペースト中の金属は、少なくとも金、銀、銅、パラジウム、インジウム、スズ及びビスマスのいずれか1種又は2種以上の組み合わせが好ましく、特に、銀、スズ、銅及びビスマスから選ばれる1種又は2種以上が好ましい。金属系ペースト中の金属は、焼結することにより合金化する。
【0026】
樹脂又は金属系ペーストは分散媒を含んでもよく、分散媒としては有機溶媒が好ましい。有機溶媒としては、樹脂を溶解する観点から又は金属系ペースト中で、金属粒子同士が結合しないようにすることにより、加熱時に均一な層を形成することができるようにする観点から、立体的構造が大きく、極性の少ない、ナフテン系炭化水素、炭素数8~12の長鎖アルキルのアルコール等が好ましい。なお、樹脂系ペースト中の分散媒の含有率は、好ましくは10質量%以上であり、好ましくは40質量%以下である。一方、金属系接着層を形成する金属系ペースト中の分散媒の含有率は、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上で、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下である。
【0027】
合成石英ガラスは、SiO2からなる非晶質であるため、結晶構造が規則正しい単独の金属粒子からなる接着層を介して接着すると、発光素子又は受光素子が設置された基板と合成石英ガラスの表面との界面において密着性が悪くなる。これは、封止材として使用したときに、耐水性や外からの衝撃に対する安定性が低いことを意味しており、デバイスのパッケージの崩壊につながる。本発明の金属系接着層を形成する金属系ペーストは、金属を主成分としながらも結晶構造をもたないことにより、金属粒子の持つナノレベルの無秩序原子配列が合成石英ガラスの表面に柔軟性を持って密着すると考えられる。これにより、合成石英ガラスと接着層との間で強固な結合を作り出すことができ、耐水性や外からの衝撃に対して強くすることができる。従って、金属系接着層を形成する金属系ペースト中の金属粒子は、ナノ粒子の状態で存在していることが好ましい。具体的には、動的光散乱法による一次粒子径が、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上であり、好ましくは80nm以下、より好ましくは60nm以下、更に好ましくは40nm以下である。金属粒子の一次粒子径は、金属膜又は金属化合物膜を形成するための金属系ペースト中の金属粒子と同様の方法で測定することができ、例えば、光散乱光度計(ELSZ-2000ZS、DLS-8000シリーズ、大塚電子(株)製)により測定できる。
【0028】
接着層の厚さは、光学素子パッケージの態様によって適宜設定され、特に限定されるものではないが、通常、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上であり、好ましくは70μm以下、より好ましくは60μm以下、更に好ましくは50μm以下である。接着層の厚さは、マイクロスコープ(例えば、VHX-6000(キーエンス(株)製))等により測定することができる。
【0029】
接着層の幅は、合成石英ガラスキャビティリッドが、基板との貼り合わせの位置決めのために、接着時に加圧することが多いことを考慮すると、合成石英ガラスキャビティの側壁部の下端面の幅より狭いことが好ましく、好ましくは合成石英ガラスキャビティの側壁部の下端面の幅の80~95%、より好ましくは85~95%、更に好ましくは90~95%である。
【0030】
接着層を形成する樹脂系ペースト又は金属系ペーストは、合成石英ガラスキャビティと、発光素子又は受光素子が設置された基板とを接着する直前に、合成石英ガラスキャビティの側壁部下端面に塗布してもよいが、接着層を予め形成して合成石英ガラスキャビティリッドとする場合は、合成石英ガラスキャビティの側壁部下端面に塗布された樹脂系ペースト又は金属系ペーストを、ペーストが流れ出さない程度に加熱して半硬化状態(B-Stage)にしておいてもよい。
【0031】
[合成石英ガラスキャビティの製造方法]
次に、合成石英ガラスキャビティの製造方法について説明する。
合成石英ガラスキャビティの製造方法は、原料合成石英ガラス基板の複数箇所に貫通穴加工を行って複数の貫通穴を形成した後、これら複数の貫通穴が形成された原料合成石英ガラス基板の上に、少なくとも前記貫通穴と対向して貼り合せる面が鏡面化された別の原料合成石英ガラス基板を貼り合わせ、この貼り合わせた原料合成石英ガラス基板を、隣接する穴間で切断することにより、複数の合成石英ガラスキャビティに個片化するものである。
【0032】
<原料基板>
合成石英ガラスキャビティの形成に用いられる原料合成石英ガラス基板の形状は特に制限されないが、例えば直径4~8インチの大きさの円形状の合成石英ガラス基板又は一辺4~6インチの大きさの四角状の合成石英ガラス基板を用いることができる。
原料合成石英ガラス基板表面の面粗さ(Ra)は、後述するように2枚の原料基板を貼り合わせて使用する際のずれや強度の観点から、好ましくは0.05~1.0nm、より好ましくは0.05~0.5nmである。
また、原料合成石英ガラス基板の厚みは、目的の合成石英ガラスキャビティの深さと同じであることが好ましい。
【0033】
<貫通穴加工>
原料合成石英ガラス基板に複数の貫通穴を加工する工程において、貫通穴加工方法としては、サンドブラスト加工、マシニングセンタ加工等が挙げられる。
【0034】
サンドブラスト加工では、例えば、原料の合成石英ガラス基板表面をノズルが水平方向(X、Y方向)に移動する装置により、エアー気流と共に砥粒を被研磨面に噴射して、原料合成石英ガラス基板の複数箇所に貫通穴を加工することができる。
砥粒としては、特に制限はないが、酸化アルミニウム、炭化珪素等の砥粒が好ましい。サンドブラスト加工に用いる砥粒の粒度は、好ましくは#600~#3000(平均粒径30~6μm)である。
【0035】
貫通穴の具体的な加工方法は、加工中に段階的に砥粒の粒子径と噴射圧力を変化する制御を与えながら、原料の合成石英ガラス基板の表面又は裏面のいずれか一方の面を加工する方法、両面からサンドブラスト加工を行う方法等が挙げられる。貫通穴加工のテーパーに伴う原料基板表面と裏面の開口幅又は開口径の差をできるだけなくすために、両面からサンドブラスト加工を行う方法が好ましい。
【0036】
サンドブラスト加工を行う場合、好ましくは目標とする貫通穴の開口幅又は開口径の90~95%の大きさの貫通穴が設計されたパターンを有するフィルムマスクを接着剤により原料合成石英ガラス基板の加工面に貼り付ける。フィルムマスクとしては、サンドブラスト加工後に残渣が基板上に残らない材質のものであれば特に制限されないが、セラミックス、ガラス等の脆性素材が好ましい。また、接着剤としては、シリカ系接着剤、セラミックス接着剤、セメント等の脆性破壊しやすい、換言すれば、弾性が低い接着剤が挙げられる。
【0037】
そして、フィルムマスクを貼り付けた原料合成石英ガラス基板をフィルムマスクと共にサンドブラスト加工を行うことにより、フィルムマスクが貼り付けられていない部分の原料の合成石英ガラス基板は直ちに研磨が開始され、貫通穴が形成される。
【0038】
貫通穴形成後、原料合成石英ガラス基板の表面側及び裏面側の貫通穴の開口部の幅又は径の比(キャビティのw1とw2の比に対応する比)が所定の範囲を満たしていない場合は、適宜エッチングで修正を行うことにより、テーパーに伴う原料合成石英ガラス基板の表面と裏面の開口幅又は開口径の差を抑えることができる。
【0039】
このようにして、サンドブラスト加工により形成される貫通穴の加工面、即ち、貫通穴内部の表面粗さ(Ra)は、好ましくは0.1~0.5μm、より好ましくは0.1~0.3μmの粗面状である。この場合、得られる粗研磨面が所定の表面粗さとなるように、サンドブラストノズルの移動方向、速度及びエアー圧力等をコンピュータ制御により調節することができる。具体的には、エアー圧力は、使用砥粒やノズル-基板間の距離と関係しており、一義的に決められず、除去速度と加工の深さをみて調整することができるが、例えば、砥粒として、グリーンカーボナイト(GC)、ホワイトアランダム(WA)等が用いられる。また、エアー圧力は、0.15~0.30MPaであることが好ましい。
【0040】
一方、貫通穴加工方法としてマシニングセンタ加工を用いる場合も、貫通穴加工のテーパーに伴う原料合成石英ガラス基板の表面と裏面の開口幅又は開口径の差をできるだけなくすために、両面から加工することが好ましい。
【0041】
マシニングセンタ加工では、マシニングセンタやその他の数値制御工作機械を用いて、ダイヤモンド砥粒付砥石等を使用して、原料合成石英ガラス基板の加工面に、割れ、ヒビ、激しいチッピング等の発生しない研削条件により砥石を回転及び移動させ、所定のサイズ又は深さの貫通穴加工を行う。
具体的には、ダイヤモンド砥粒、CBN砥粒等を電着又はメタルボンドで固定した砥石を用いて、主軸回転数が好ましくは100~60,000rpm、更に好ましくは1,000~40,000rpm、研削速度が好ましくは1~10,000mm/分、更に好ましくは10~1,000mm/分で研削する。
【0042】
<原料合成石英ガラス基板の貼り合わせ>
次に、貫通穴加工を行い、複数の貫通穴が形成され、かつ少なくとも貼り合わせる側の面が鏡面化されている原料合成石英ガラス基板の上に、これとは別の原料合成石英ガラス基板を貼り合わせる工程について説明する。
【0043】
貼り合わせる別の原料合成石英ガラス基板は、複数の貫通穴が形成された原料合成石英ガラス基板と同じ大きさが好ましく、その厚みは、原料合成石英ガラス基板の撓み等の観点から、好ましくは0.2mm以上、更に好ましくは0.3mm以上である。なお、貼り合わせる合成石英ガラス基板の厚みの上限は特に制限がないが、光の取り出し効率の観点から、0.6mm以下が好ましい。
【0044】
また、貼り合わせる別の原料合成石英ガラス基板の表面は、少なくとも貫通穴と対向して貼り合わせる面が鏡面であることが好ましく、その表面粗さ(Ra)は、基板の密着性の観点から、好ましくは0.3nm以下、より好ましくは0.2nm以下であり、好ましくは0.05nm以上である。特に、両面が鏡面化されていることが好ましい。
【0045】
複数の貫通穴が形成された原料合成石英ガラス基板と、これとは別の原料合成石英ガラス基板との貼り合わせ方法は、例えば両原料合成石英ガラス基板が同じ大きさの場合、両原料合成石英ガラス基板が重なり合うようにして貼り合わせることができ、原料合成石英ガラス基板に荷重は特にかけなくても良いが、貼り合わせの位置ズレを防ぐために、50gf程度以下の軽荷重をかけても良い。
【0046】
前記複数の貫通穴が形成された原料合成石英ガラス基板の上に、これとは別の貫通穴が形成されていない原料合成石英ガラス基板を貼り合わせた後に、炉内に投入して、好ましくは1,000~1,200℃にて、2~4時間熱をかけることにより、2枚の原料基板を強固に接着させることができる。
【0047】
なお、必要に応じて貼り合わせた後に、最終的に得られる合成石英ガラスキャビティの上壁部の厚みを所望の厚さにすべく、貫通穴加工されていない原料合成石英ガラス基板に対して適宜片面研磨を行うことができる。
【0048】
<切断>
次に、貼り合わせた原料合成石英ガラス基板を切断して、複数の個々の合成石英ガラスキャビティに個片化する工程について説明する。
貼り合わせた原料合成石英ガラス基板は、例えばダイシングソーにより、隣接する穴間で切断して、個々のキャビティに個片化する。この場合、好ましくは1~5mm角の所定の大きさに切断されて、複数の個々の合成石英ガラスキャビティに切り分けることができる。
なお、後述する接着層を形成する工程を考慮すると、貼り合わせた原料合成石英ガラス基板のうち、合成石英ガラスキャビティの上壁部の外側表面側にダイシングテープを貼って固定した状態で次の工程に進めることが好ましい。
【0049】
[合成石英ガラスキャビティリッドの製造方法]
次に、合成石英ガラスキャビティリッドの製造方法について説明する。
合成石英ガラスキャビティリッドは、上述した合成石英ガラスキャビティの側壁部の下端面に接着層を形成することにより得られる。
【0050】
接着層は、上述したように、例えば、樹脂系接着層の場合には樹脂と分散媒、金属系接着層の場合は金、銀、銅、パラジウム、インジウム、スズ及びビスマスからなる群より選ばれる1種以上の元素と分散媒とを含むペーストを、合成石英ガラスキャビティの側壁部の下端面上に、例えば、ディスペンス、スクリーン印刷、スタンピング、インクジェット等の方法によって形成することができる。一度に精度よく接着層を形成する場合には、接着ペーストを一括塗布できるスクリーン印刷が好ましい。
【0051】
接着層を形成するための樹脂系ペースト又は金属系ペーストとしては、上述したものを用いることができ、接着層の厚さ及び幅も上述した通りである。
【0052】
金属系ペーストは、本硬化温度より低い温度で加熱することにより、半硬化状態(B-Stage)にすることもできる。
接着層を形成する金属系ペーストは、封止される素子の耐熱性の観点から、好ましくは100~350℃、より好ましくは100~300℃、更に好ましくは150~300℃にて硬化する。
【0053】
このようにして得られた合成石英ガラスキャビティリッドは、様々な光学素子を封止する際に用いることができる。特に280nm以下の波長を安定的に透過できるキャビティとして合成石英ガラスを用いることにより、UV-C(波長240~300nm)やDUV領域(波長170~240nm)の光を発光又は受光する光学素子に対する効果が大きい。
【0054】
[光学素子パッケージ及びその製造方法]
光学素子パッケージは、
図4に示されるように、合成石英ガラスキャビティリッドと、発光素子又は受光素子7が設置された基板6とを有するものであり、前記合成石英ガラスキャビティリッドを前記素子の上方からこれに覆い被せるように設置し、接着層5を介して基板に接着させたものである。
【0055】
発光素子としては、UV-LED、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー等が挙げられ、受光素子としては、火炎センサー等が挙げられる。
【0056】
発光素子又は受光素子が設置された基板としては、アルミナ系セラミックス、窒化アルミニウム系セラミックス、銅板等が挙げられ、更にこれらの基板表面に金、銀、白金、クロム等の金属膜、窒化クロム、酸化チタン等の金属化合物膜を有するものも用いることができる。
更に、合成石英ガラスキャビティの側壁部の内側表面に反射材を塗布しておくことにより、ミラー材としても使用することが可能となる。
【0057】
光学素子パッケージの製造方法としては、合成石英ガラスキャビティリッドを光学素子又は受光素子が設置された基板に対してその上方から覆い被せ、接着位置を決めた後、接着層と基板とを接触させて合成石英ガラスキャビティリッドと基板とを接着させてパッケージを得ることができる。
なお、必要により、合成石英ガラスキャビティリッドと前記素子が設置された基板とを加熱することが好ましい。この加熱処理の温度(本硬化温度)は、光学素子の耐熱性の観点から、好ましくは150~330℃であり、加熱処理の時間は、好ましくは1~60分間、より好ましくは1~30分間である。この際、加圧も同時に行うことが好ましく、この処理における雰囲気は、大気雰囲気、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気等が挙げられる。また、金属系接着層を形成する金属系ペーストが半硬化状態(B-Stage)の合成石英ガラスキャビティリッドの場合、金属系接着層が加熱によって接着層部分が押しつぶされ、金属系接着層に含まれている金属粒子が密に結合することにより、気密性の高いシールを構築することが可能となる。
【実施例】
【0058】
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0059】
[実施例1]
基板表裏面が鏡面(Ra=0.3nm)である合成石英ガラスウェーハ基板(直径4インチ、厚さ0.4mm)を原料基板とし、0.8mm角の開口幅の穴パターンを配したフィルムマスクを合成石英ガラスウェーハ基板表面に貼りつけて、合成石英ガラス基板全面に対してサンドブラスト加工により貫通穴加工を行った。サンドブラスト加工は、砥粒としてWA #1200(昭和電工(株)製)を用い、エアー圧力は0.22MPaで行った。
サンドブラスト加工後、基板表面の開口幅は0.82mm角、裏面の開口幅は0.81mm角(1.0:1.0)となった。
【0060】
複数の貫通穴が形成された基板の表面に、別の表裏面が鏡面(Ra=0.13nm)の平板状の合成石英ガラス基板(直径4インチ、厚さ0.3mm)を貼り合わせ、1100℃の電気炉の中で2時間保持し、2枚の合成石英ガラス基板の接着を行った。
【0061】
上記貼り合わせた合成石英ガラス基板をダイシングソーにより隣接する穴間で1.2mm角に切断し、複数個の合成石英ガラスキャビティを得た。
【0062】
シリコーン樹脂接着剤(KER-3000-M2、信越化学工業(株)製)をディスペンスにより、合成石英ガラスキャビティの側壁部の下端面に、線幅250μm、厚さ15~20μmになるように塗布し、合成石英ガラスキャビティリッドを作製した。
【0063】
アルミナ系セラミック基板上に設置された火炎センサー素子を覆うようにして、前記合成石英ガラスキャビティリッドを1パッケージあたり150gfの荷重をかけて仮接着し、200℃の乾燥炉で1時間加熱して接着させ、受光型火炎センサーパッケージを作製した。
【0064】
前記受光型火炎センサーパッケージをUV領域の光を発する火炎の近くで受光させたところ、合成石英ガラスキャビティ又はアルミナ系セラミックスの応力による接着層部分の剥がれはなく、また火炎より出てくる光を合成石英ガラスを通して素子が捉えてセンサーが作動することが確認でき、パッケージとして十分な機能を示した。
【0065】
[実施例2]
基板表面が鏡面である(Ra=0.25nm)合成石英ガラスウェーハ基板(直径6インチ、厚さ0.3mm)を原料基板とし、合成石英ガラス基板全面に対して、マシニングセンタ加工により貫通穴加工を行った。マシニングセンタ加工は、ダイヤモンド砥粒付砥石を使用して、主軸回転数20,000rpm、研削速度50mm/分にて、合成石英ガラスウェーハ基板に複数個の貫通穴を加工した。
合成石英ガラス基板の開口径は表裏面共に2.52mmφとなった。
【0066】
複数の貫通穴が形成された基板の表面に、別の表裏面が鏡面(Ra=0.13nm)の平板状の合成石英ガラス基板(直径6インチ、厚さ0.3mm)を貼り合わせ、1050℃の電気炉の中で4時間保持し、2枚の合成石英ガラスの接着を行った。
【0067】
貫通穴加工がされていない上壁部の外側表面について片面研磨加工を行い、合成石英ガラスキャビティの上壁部の厚さを0.2mmとした。
【0068】
上記貼り合わせた合成石英ガラス基板をダイシングソーにより隣接する穴間で3.5mm角に切断し、複数個の合成石英ガラスキャビティを得た。
【0069】
銀30質量%、スズ30質量%、ビスマス25質量%、銅15質量%を含む合金からなる金属ガラス(ガラス転移温度300℃)をスクリーン印刷にて合成石英ガラスキャビティの側壁部の下端面に、線幅240μm、厚さ15~20μmになるように塗布し、次いで100℃で25分間加熱し、金属ガラスを半硬化状態(B-Stage)にして合成石英ガラスキャビティリッドを作製した。
【0070】
金メッキされた窒化アルミニウムの基板上に設置された波長285nmの短波長の光を発光するUV-LEDを覆うようにして、前記合成石英ガラスキャビティリッドを1パッケージあたり1kgfの荷重をかけながら、250℃にて10分間接着させ、光学素子パッケージを作製した。
【0071】
波長285nmの光を5,000時間以上発光させたところ、合成石英ガラスキャビティ又は窒化アルミニウムの応力による接着剤部分の剥がれはなく、また285nmの短波長による接着層へのダメージも見られず、短波長用の光学素子パッケージとして十分な機能を示した。
【符号の説明】
【0072】
1 合成石英ガラスキャビティ
2 合成石英ガラスキャビティの上壁部
3 合成石英ガラスキャビティの側壁部
4 開口部
5 接着層
6 基板
7 光学素子
10 合成石英ガラスキャビティリッド
20 光学素子パッケージ