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特許7192731ハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランク、その製造方法、及びハーフトーン位相シフト型フォトマスク
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】ハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランク、その製造方法、及びハーフトーン位相シフト型フォトマスク
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/32 20120101AFI20221213BHJP
   C23C 14/58 20060101ALI20221213BHJP
   C23C 14/34 20060101ALI20221213BHJP
   C23C 14/10 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
G03F1/32
C23C14/58 A
C23C14/34 S
C23C14/10
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019176829
(22)【出願日】2019-09-27
(65)【公開番号】P2021056290
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2021-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼坂 卓郎
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 敬佑
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-184353(JP,A)
【文献】国際公開第2006/123630(WO,A1)
【文献】特開2009-104174(JP,A)
【文献】特開2016-035559(JP,A)
【文献】特開2016-194626(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
G03F 1/00~1/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板と、該透明基板上に形成された、ケイ素、窒素及び酸素からなり、酸素含有率が15原子%以上である層の単層、又は全ての層がケイ素、窒素及び酸素からなる層である複数層で構成されたハーフトーン位相シフト膜とを有し、
該ハーフトーン位相シフト膜の波長200nm以下の露光光に対する、位相シフト量が150°以上200°以下、かつ透過率が20%以上であり、
上記ハーフトーン位相シフト膜の基板面の表面粗さRMSが0.8nm以下であり、かつマスクパターン形成エリアの透過率の最大値Tmax及び最小値Tminから下記式
(Tmax-Tmin)/(Tmax+Tmin)×100
により算出される透過率の面内ばらつきが2%以下であることを特徴とするハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランク。
【請求項2】
透明基板と、該透明基板上に形成されたケイ素、窒素及び酸素からなり、酸素含有率が15原子%以上39原子%以下である層を少なくとも1層含むハーフトーン位相シフト膜とを有し、
該ハーフトーン位相シフト膜の波長200nm以下の露光光に対する、位相シフト量が150°以上200°以下、かつ透過率が20%以上であり、
上記ハーフトーン位相シフト膜の基板面の表面粗さRMSが0.8nm以下であり、かつマスクパターン形成エリアの透過率の最大値T max 及び最小値T min から下記式
(T max -T min )/(T max +T min )×100
により算出される透過率の面内ばらつきが2%以下であることを特徴とするハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランク。
【請求項3】
上記ケイ素、窒素及び酸素からなる層の窒素及び酸素の合計の含有率が50原子%以上であることを特徴とする請求項1又は2記載のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランク。
【請求項4】
上記酸素含有率が17原子%以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランク。
【請求項5】
上記ハーフトーン位相シフト膜の上に、クロムを含む材料で形成された単層又は複数層からなる第2の層を有することを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項記載のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランク。
【請求項6】
請求項1乃至のいずれか1項記載のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクを用いて形成されたことを特徴とするハーフトーン位相シフト型フォトマスク。
【請求項7】
請求項1乃至のいずれか1項記載のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクの製造方法であって、
スパッタリングにより上記ハーフトーン位相シフト膜を成膜する工程を含み、
該工程において、上記ケイ素、窒素及び酸素からなる層を、チャンバー内に、1つ以上のケイ素ターゲットを設け、アルゴンガスと窒素ガスと酸素ガスとを導入してスパッタリングすることにより形成することを特徴とするハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクの製造方法。
【請求項8】
上記ケイ素、窒素及び酸素からなる層を形成するスパッタリングを、
チャンバー内に導入する窒素ガス流量を、増加させた後減少させることにより掃引したとき、上記窒素ガス流量と、該窒素ガス流量の掃引により、いずれかのケイ素ターゲットで測定されるスパッタ電圧値又はスパッタ電流値とにより形成されるヒステリシス曲線において、
ヒステリシスを示す反応性ガス流量の下限を超えて上限未満の範囲におけるスパッタ状態でスパッタする遷移モードで実施することを特徴とする請求項記載の製造方法。
【請求項9】
上記ケイ素、窒素及び酸素からなる層を形成するスパッタリングを、
スパッタターゲットとしてケイ素ターゲット、スパッタガスとして、不活性ガスと反応性ガスとを用い、該反応性ガスを酸素ガス及び窒素ガスとし、
ケイ素ターゲットに印加する電力と、チャンバー内に導入する不活性ガス及び酸素ガスの流量とを一定とし、チャンバー内に導入する窒素ガス流量を、増加させた後減少させることにより掃引したとき、上記窒素ガス流量と、該窒素ガス流量の掃引により、いずれかのケイ素ターゲットで測定されるスパッタ電圧値又はスパッタ電流値とにより形成されるヒステリシス曲線において、
ヒステリシスを示す窒素ガス流量の下限を超えて上限未満の範囲におけるスパッタ状態でスパッタする遷移モードで実施することを特徴とする請求項7記載の製造方法。
【請求項10】
上記ケイ素、窒素及び酸素からなる層を形成するスパッタリングにおけるチャンバー内圧力が0.05Pa以上0.15Pa未満であることを特徴とする請求項8又は9記載の製造方法。
【請求項11】
上記ハーフトーン位相シフト膜を成膜した後、200℃以上500℃以下の温度で、5分間以上熱処理することを特徴とする請求項10記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路などの製造などに用いられるハーフトーン位相シフト型フォトマスクの素材として好適なハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランク、その製造方法、及びハーフトーン位相シフト型フォトマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体技術の分野では、パターンの更なる微細化のための研究開発が進められている。特に、近年では、大規模集積回路の高集積化に伴い、回路パターンの微細化や配線パターンの細線化、セルを構成する層間配線のためのコンタクトホールパターンの微細化などが進行し、微細加工技術への要求は、ますます高くなってきている。これに伴い、微細加工の際のフォトリソグラフィ工程で用いられるフォトマスクの製造技術の分野においても、より微細で、かつ正確な回路パターン(マスクパターン)を形成する技術の開発が求められるようになってきている。
【0003】
一般に、フォトリソグラフィ技術により半導体基板上にパターンを形成する際には、縮小投影が行われる。このため、フォトマスクに形成されるパターンのサイズは、通常、半導体基板上に形成されるパターンのサイズの4倍程度となる。今日のフォトリソグラフィ技術分野においては、描画される回路パターンのサイズは、露光で使用される光の波長をかなり下回るものとなっている。このため、回路パターンのサイズを単純に4倍にしてフォトマスクパターンを形成した場合には、露光の際に生じる光の干渉などの影響によって、半導体基板上のレジスト膜に、本来の形状が転写されない結果となってしまう。
【0004】
そこで、フォトマスクに形成するパターンを、実際の回路パターンよりも複雑な形状とすることにより、上述の光の干渉などの影響を軽減する場合もある。このようなパターン形状としては、例えば、実際の回路パターンに光学近接効果補正(OPC: Optical Proximity Correction)を施した形状がある。また、パターンの微細化と高精度化に応えるべく、変形照明、液浸技術、二重露光(ダブルパターニングリソグラフィ)などの技術も応用されている。
【0005】
解像度向上技術(RET: Resolution Enhancement Technology)のひとつとして、位相シフト法が用いられている。位相シフト法は、フォトマスク上に、位相を概ね180°反転させる膜のパターンを形成し、光の干渉を利用してコントラストを向上させる方法である。これを応用したフォトマスクのひとつとして、ハーフトーン位相シフト型フォトマスクがある。ハーフトーン位相シフト型フォトマスクは、石英などの露光光に対して透明な基板の上に、位相を概ね180°反転させ、パターン形成に寄与しない程度の透過率を有するハーフトーン位相シフト膜のフォトマスクパターンを形成したものである。ハーフトーン位相シフト型フォトマスクとしては、モリブテンシリサイド酸化物(MoSiO)、モリブテンシリサイド酸化窒化物(MoSiON)からなるハーフトーン位相シフト膜を有するものなどが提案されている(特開平7-140635号公報(特許文献1))。
【0006】
また、フォトリソグラフィ技術により、より微細な像を得るために、露光光源に、より短波長のものが使われるようになり、現在の最先端の実用加工工程では、露光光源は、KrFエキシマレーザー光(248nm)からArFエキシマレーザー光(193nm)に移行している。
【0007】
また、パターン転写におけるArFエキシマレーザー光の露光照射量の増加に伴い、累積の照射エネルギー量に応じてマスクのパターン線幅が変化することが報告されている(Thomas Faure et al., “Characterization of binary mask and attenuated phase shift mask blanks for 32nm mask fabrication”, Proc. Of SPIE, vol. 7122, pp712209-1~712209-12(非特許文献1))。これは、ArFエキシマレーザー光を長時間照射すると、累積照射エネルギー量が大きくなり、パターン材質の酸化物と考えられる物質による層が、膜パターンの外側に成長し、パターン幅が変化してしまう問題である。
【0008】
上記Thomas Faureらの報告(非特許文献1)によれば、回路のパターン露光において、焦点深度を伸ばすために有用なマスク技術であるハーフトーン位相シフト型フォトマスクでは、特に、上記ArFエキシマレーザー光の照射によるMoSi系材料膜などの遷移金属ケイ素系材料膜の変質を伴うパターン寸法変動による劣化(以下、パターン寸法変動劣化と呼ぶ)が大きいことが指摘されている。そこで、高価なフォトマスクを長時間使用するためには、ArFエキシマレーザー光の照射によるパターン寸法変動劣化への対処が必要となる。
【0009】
ArFエキシマレーザー光を光源とするリソグラフィーに用いるフォトマスクでは、ハーフトーン位相シフト型フォトマスクにおいては、従来、遷移金属ケイ素系材料が用いられ、通常、モリブデンを含有するケイ素系材料が用いられている。この遷移金属ケイ素系材料の主たる構成元素は、遷移金属とケイ素であり、更に、軽元素として窒素及び/又は酸素を含有するもの(例えば、特開平7-140635号公報(特許文献1))、更に、炭素や水素などの元素が少量加えられたものがある。
【0010】
しかし、このような遷移金属ケイ素系材料を用いたフォトマスクに高エネルギー光を多量に照射した場合、高エネルギー光の照射によるパターン寸法変動劣化が大きく、フォトマスクの使用寿命が、要求されるものより短くなってしまう。また、ArFエキシマレーザー光が、遷移金属ケイ素系材料膜のフォトマスクパターンに照射されることにより、露光に用いるフォトマスクパターンの線幅が変化してしまうことが問題となり、遷移金属を用いないケイ素と窒素からなるハーフトーン位相シフト型フォトマスクも用いられるようになってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開平7-140635号公報
【文献】特開2007-33469号公報
【文献】特開2007-233179号公報
【文献】特開2007-241065号公報
【非特許文献】
【0012】
【文献】Thomas Faure et al., “Characterization of binary mask and attenuated phase shift mask blanks for 32nm mask fabrication”, Proc. Of SPIE, vol. 7122, pp712209-1~712209-12
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ハーフトーン位相シフト膜の透過率は、これまで20%以下、例えば6%程度のものが用いられてきたが、最近では、高透過率のものも検討されている。透過率が高い膜ほど、干渉による光の減衰効果が大きくなり、微細なパターンを形成するときに、有利となる場合がある。また、ハーフトーン位相シフト膜は、主に反応性スパッタリングにより成膜されているが、透過率を20%以上にするには、膜に酸素を含有させることが効果的であり、特に、透過率を25%以上にする場合は、膜に酸素を含有させる必要がある。
【0014】
ケイ素、窒素及び酸素からなる膜をスパッタリングにより形成する場合に、反応性ガスとして窒素ガスと共に酸素ガスを使用する場合、透過率を高くするためには、成膜時に多くの反応性ガスを導入する必要がある。また、ハーフトーン位相シフト膜を成膜した後、熱処理をする場合にも、熱処理温度を高く設定する必要が生じる場合がある。これらの理由から、ケイ素、窒素及び酸素からなる膜をスパッタリングにより形成した場合、透過率の面内ばらつきが大きくなりやすい。
【0015】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、膜質均一性がよい、特に、透過率の面内均一性が高いハーフトーン位相シフト膜を有するハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランク及びハーフトーン位相シフト型フォトマスク、並びにこのようなハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクを製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、まず、ケイ素、窒素及び酸素からなる膜の透過率の面内分布がばらつく要因のひとつが、膜の表面粗さにあることを見出した。即ち、表面粗さが高い膜では、ハーフトーン位相シフト膜の、大気中での取り扱い時、熱処理における酸素含有雰囲気下などの、膜の表面が酸素ガスと接触する状態において、酸素ガスと接触する面積が広いため、酸化が進行しやすく、表面粗さが高い膜は、面内の透過率のばらつきが大きくなる傾向がある。一方、窒素は、酸素ほど反応性が高くないため、ハーフトーン位相シフト膜の、大気中での取り扱い時、熱処理における窒素含有雰囲気下などの、膜の表面が窒素ガスと接触する状態において、膜の表面粗さが高い場合に窒素が面内の透過率の均一性に及ぼす影響は小さいものの、窒素には、膜の面内の透過率のばらつきに対して酸素とは異なる影響があることを見出した。即ち、ケイ素、窒素及び酸素からなる膜をスパッタリングにより成膜する際、窒素ガスの導入量が少ないスパッタ条件では、ケイ素ターゲットの表面での窒化に分布が生じ、これが、膜の面内の透過率のばらつきを大きくする要因となる。
【0017】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、波長200nm以下の露光光に対する、位相シフト量が150°以上200°以下、かつ透過率が20%以上であるハーフトーン位相シフト膜を、ケイ素、窒素及び酸素からなる層を少なくとも1層含むハーフトーン位相シフト膜とし、ハーフトーン位相シフト膜の基板面の表面粗さRMSを0.8nm以下とすることにより、ハーフトーン位相シフト膜の基板面のマスクパターン形成エリアの透過率の面内ばらつきが2%以下である、透過率の面内均一性が高いハーフトーン位相シフト膜を有するハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクとなることを見出した。
【0018】
そして、ハーフトーン位相シフト膜のケイ素、窒素及び酸素からなる層を、チャンバー内に、1つ以上のケイ素ターゲットを設け、アルゴンガスと窒素ガスと酸素ガスとを導入してスパッタリングすることにより形成する際、好ましくは、チャンバー内に導入する窒素ガス流量を、増加させた後減少させることにより掃引したとき、窒素ガス流量と、窒素ガス流量の掃引により上記1つ以上のケイ素ターゲットのいずれかのターゲットで測定されるスパッタ電圧値又はスパッタ電流値とにより形成されるヒステリシス曲線において、ヒステリシスを示す反応性ガス流量の下限を超えて上限未満の範囲に相当する領域におけるスパッタ状態でスパッタする遷移モードで実施すること、特に、その際、チャンバー内圧力を0.05Pa以上0.15Pa未満とすることにより、透過率の面内均一性が高いハーフトーン位相シフト膜を有するハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクを製造することができることを見出し、本発明をなすに至った。
【0019】
従って、本発明は、以下のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランク、ハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクの製造方法、及びハーフトーン位相シフト型フォトマスクを提供する。
1.透明基板と、該透明基板上に形成されたケイ素、窒素及び酸素からなり、酸素含有率が15原子%以上である層の単層、又は全ての層がケイ素、窒素及び酸素からなる層である複数層で構成されたハーフトーン位相シフト膜とを有し、
該ハーフトーン位相シフト膜の波長200nm以下の露光光に対する、位相シフト量が150°以上200°以下、かつ透過率が20%以上であり、
上記ハーフトーン位相シフト膜の基板面の表面粗さRMSが0.8nm以下であり、かつマスクパターン形成エリアの透過率の最大値Tmax及び最小値Tminから下記式
(Tmax-Tmin)/(Tmax+Tmin)×100
により算出される透過率の面内ばらつきが2%以下であることを特徴とするハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランク。
2.透明基板と、該透明基板上に形成されたケイ素、窒素及び酸素からなり、酸素含有率が15原子%以上39原子%以下である層を少なくとも1層含むハーフトーン位相シフト膜とを有し、
該ハーフトーン位相シフト膜の波長200nm以下の露光光に対する、位相シフト量が150°以上200°以下、かつ透過率が20%以上であり、
上記ハーフトーン位相シフト膜の基板面の表面粗さRMSが0.8nm以下であり、かつマスクパターン形成エリアの透過率の最大値T max 及び最小値T min から下記式
(T max -T min )/(T max +T min )×100
により算出される透過率の面内ばらつきが2%以下であることを特徴とするハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランク。
.上記ケイ素、窒素及び酸素からなる層の窒素及び酸素の合計の含有率が50原子%以上であることを特徴とするハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランク。
4.上記酸素含有率が17原子%以上であることを特徴とするハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランク。
.上記ハーフトーン位相シフト膜の上に、クロムを含む材料で形成された単層又は複数層からなる第2の層を有することを特徴とするハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランク。
.上記ハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクを用いて形成されたことを特徴とするハーフトーン位相シフト型フォトマスク。
.上記ハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクの製造方法であって、
スパッタリングにより上記ハーフトーン位相シフト膜を成膜する工程を含み、
該工程において、上記ケイ素、窒素及び酸素からなる層を、チャンバー内に、1つ以上のケイ素ターゲットを設け、アルゴンガスと窒素ガスと酸素ガスとを導入してスパッタリングすることにより形成することを特徴とするハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクの製造方法。
.上記ケイ素、窒素及び酸素からなる層を形成するスパッタリングを、
チャンバー内に導入する窒素ガス流量を、増加させた後減少させることにより掃引したとき、上記窒素ガス流量と、該窒素ガス流量の掃引により、いずれかのケイ素ターゲットで測定されるスパッタ電圧値又はスパッタ電流値とにより形成されるヒステリシス曲線において、
ヒステリシスを示す反応性ガス流量の下限を超えて上限未満の範囲におけるスパッタ状態でスパッタする遷移モードで実施することを特徴とする製造方法。
9.上記ケイ素、窒素及び酸素からなる層を形成するスパッタリングを、
スパッタターゲットとしてケイ素ターゲット、スパッタガスとして、不活性ガスと反応性ガスとを用い、該反応性ガスを酸素ガス及び窒素ガスとし、
ケイ素ターゲットに印加する電力と、チャンバー内に導入する不活性ガス及び酸素ガスの流量とを一定とし、チャンバー内に導入する窒素ガス流量を、増加させた後減少させることにより掃引したとき、上記窒素ガス流量と、該窒素ガス流量の掃引により、いずれかのケイ素ターゲットで測定されるスパッタ電圧値又はスパッタ電流値とにより形成されるヒステリシス曲線において、
ヒステリシスを示す窒素ガス流量の下限を超えて上限未満の範囲におけるスパッタ状態でスパッタする遷移モードで実施することを特徴とする製造方法。
10.上記ケイ素、窒素及び酸素からなる層を形成するスパッタリングにおけるチャンバー内圧力が0.05Pa以上0.15Pa未満であることを特徴とする製造方法。
11.上記ハーフトーン位相シフト膜を成膜した後、200℃以上500℃以下の温度で、5分間以上熱処理することを特徴とする製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ArFエキシマレーザーなどの波長200nm以下の光を露光光とするハーフトーン位相シフト膜として必要な位相差と、透過率とが確保され、かつ膜質均一性がよい、特に、透過率の面内均一性が高いハーフトーン位相シフト膜を備えるハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランク及びハーフトーン位相シフト型フォトマスクを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランク及びハーフトーン位相シフト型フォトマスクの一例を示す断面図である。
図2】本発明のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクの他の例を示す断面図である。
図3】実施例5及び6で得たヒステリシス曲線(窒素ガス流量に対するケイ素ターゲットの電流値)を示す図である。
図4】実施例及び比較例における表面粗さRMSに対する透過率の面内ばらつきをプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明について更に詳しく説明する。
本発明のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクは、石英基板などの透明基板上に形成されたハーフトーン位相シフト膜を有する。また、本発明のハーフトーン位相シフト型フォトマスクは、石英基板などの透明基板上に形成されたハーフトーン位相シフト膜のマスクパターン(フォトマスクパターン)を有する。
【0023】
本発明において、透明基板は、例えば、SEMI規格において規定されている、6インチ角、厚さ0.25インチの6025基板と呼ばれる透明基板が好適であり、SI単位系を用いた場合、通常、152mm角、厚さ6.35mmの透明基板と表記される。
【0024】
図1(A)は、本発明のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクの一例を示す断面図であり、このハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランク100は、透明基板10と、透明基板10上に形成されたハーフトーン位相シフト膜1とを備える。また、図1(B)は、本発明のハーフトーン位相シフト型フォトマスクの一例を示す断面図であり、このハーフトーン位相シフト型フォトマスク101は、透明基板10と、透明基板10上に形成されたハーフトーン位相シフト膜パターン11とを備える。ハーフトーン位相シフト型フォトマスクは、ハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクを用い、そのハーフトーン位相シフト膜のパターンを形成することにより得ることができる。
【0025】
本発明のハーフトーン位相シフト膜は、所定の膜厚において、ArFエキシマレーザー(波長193nm)などの波長200nm以下の露光光に対し、所定の位相差(位相シフト量)と、所定の透過率とを与える膜である。本発明において、ハーフトーン位相シフト膜は、ケイ素、窒素及び酸素からなる層を少なくとも1層含むように構成される。ケイ素、窒素及び酸素からなる層は、不可避不純物を除き、実質的にこれら3種の元素で構成されていることが好ましい。
【0026】
ハーフトーン位相シフト膜は、ハーフトーン位相シフト膜として必要な位相差及び透過率を満たすようにすればよく、単層で構成しても複数層で構成してもよい。ハーフトーン位相シフト膜が複数層で構成される場合は、全ての層が、ケイ素、窒素及び酸素からなる層であることがより好ましい。単層及び複数層のいずれの場合においても、単層又は複数層を構成する各々の層は、単一組成層(組成が厚さ方向に変化しない層)であっても、組成傾斜層(組成が厚さ方向に変化する層)であってもよい。
【0027】
本発明のハーフトーン位相シフト膜の露光光に対する位相差は、ハーフトーン位相シフト膜が存在する部分(位相シフト部)と、ハーフトーン位相シフト膜が存在しない部分との境界部において、それぞれを通過する露光光の位相差によって露光光が干渉して、コントラストを増大させることができる位相差であればよく、位相差は、150°以上、特に170°以上で、200°以下、特に190°以下であればよい。一方、本発明のハーフトーン位相シフト膜の露光光に対する透過率は、20%以上、好ましくは25%以上であり、90%以下、特に70%以下とすることができる。位相差及び透過率は、ハーフトーン位相シフト膜の基板面のマスクパターンを形成するエリア(マスクパターン形成エリア)の全体で、上記範囲を満たしていればよい。本発明において、マスクパターン形成エリアは、6025基板の場合は、中央部135mm角、特に132mm角の範囲内とすることができる。
【0028】
ハーフトーン位相シフト膜の表面粗さは、透明基板の表面粗さにも依存するが、本発明のハーフトーン位相シフト膜の基板面、特にマスクパターン形成エリアの表面粗さRMSは0.8nm以下であり、0.5nm以下、特に0.3nm以下であることが好ましい。本発明において、表面粗さRMSの測定は、ハーフトーン位相シフト膜の基板面の表面粗さの傾向をあらかじめ測定しておき、表面粗さRMSが最も大きい部分の値で表してもよい。例えば、ハーフトーン位相シフト膜をスパッタリングにより形成した場合、基板面中心部の表面粗さが最も高くなる場合は、基板面中心部の表面粗さRMSが上記範囲内とすれば、ハーフトーン位相シフト膜の基板面全体の表面粗さRMSを上記範囲内とすることができる。この基板面中心部は、基板の主表面(膜形成面)に形成されたハーフトーン位相シフト膜の中心から20mmの範囲内とすることができる。この表面粗さRMSの下限は、特に限定されるものではないが0.05nm以上であることが好ましい。0.05nm未満であると、ハーフトーン位相シフト膜と透明基板との密着性が低下するおそれがある。
【0029】
本発明のハーフトーン位相シフト膜の基板面のマスクパターン形成エリアの透過率の面内ばらつきは2%以下であり、1%以下であることが好ましい。この透過率の面内ばらつきは、基板面のマスクパターン形成エリアの透過率の最大値Tmax及び最小値Tminから下記式
(Tmax-Tmin)/(Tmax+Tmin)×100
により算出される値である。本発明においては、基板面の表面粗さRMSを上記範囲とすることにより、透過率の面内均一性が高いハーフトーン位相シフト型フォトマスクとなる。なお、透過率の面内ばらつきの下限は、理想的には0%であるが、現実的な下限は、特に限定されるものではないが、0.3%以上である。
【0030】
本発明のハーフトーン位相シフト膜を構成するケイ素、窒素及び酸素からなる層において、窒素及び酸素の合計の含有率は50原子%以上、特に53原子%以上、とりわけ55原子%以上であることが好ましく、60原子%以下、特に58原子%以下であることが好ましい。また、本発明のハーフトーン位相シフト膜を構成するケイ素、窒素及び酸素からなる層において、酸素含有率は10原子%超、特に15原子%以上、とりわけ20原子%以上であることが好ましく、40原子%以下、特に30原子%以下であることが好ましい。酸素含有率が10%以下では、20%以上の透過率が得られないおそれがある。
【0031】
本発明のハーフトーン位相シフト膜の全体の厚さは、薄いほど微細なパターンを形成しやすく、120nm以下、特に100nm以下とすることができる。一方、ハーフトーン位相シフト膜の膜厚の下限は、露光光に対し、必要な光学特性が得られる範囲で設定され、特に制限はないが、一般的には50nm以上となる。
【0032】
ハーフトーン位相シフト膜を複数層とした場合、ハーフトーン位相シフト膜の膜質変化を抑えるために、その表面側(透明基板と離間する側)の最表面部の層として、表面酸化層を設けることができる。この表面酸化層の酸素含有率は20原子%以上であってよく、更には50原子%以上であってもよい。表面酸化層を形成する方法として、具体的には、大気酸化(自然酸化)による酸化の他、強制的に酸化処理する方法としては、スパッタにより形成した膜をオゾンガスやオゾン水により処理する方法や、酸素ガス雰囲気などの酸素存在雰囲気中で、オーブン加熱、ランプアニール、レーザー加熱などにより、300℃以上に加熱する方法などを挙げることができる。この表面酸化層の厚さは10nm以下、特に5nm以下、とりわけ3nm以下であることが好ましく、通常、1nm以上で酸化層としての効果が得られる。表面酸化層は、スパッタ工程で酸素量を増やして形成することもできるが、欠陥がより少ない層とするためには、前述した大気酸化や、酸化処理により形成することが好ましい。
【0033】
本発明のハーフトーン位相シフト膜は、公知の成膜手法を適用して成膜することができるが、均質性に優れた膜が容易に得られるスパッタ法により成膜することが好ましく、DCスパッタ、RFスパッタのいずれの方法をも用いることができるが、マグネトロンスパッタがより好ましい。ターゲットとスパッタガスは、層構成や組成に応じて適宜選択される。ターゲットとしては、ケイ素ターゲット、窒化ケイ素ターゲット、ケイ素と窒化ケイ素の双方を含むターゲットなどのケイ素を含むターゲットを使用すればよい。窒素及び酸素の含有率は、スパッタガスに、反応性ガスとして、窒素ガス(N2ガス)、酸素ガス(O2ガス)、酸化窒素ガス(N2Oガス、NOガス、NO2ガス)などを用い、導入量を適宜調整して反応性スパッタすることで、調整することができる。更に、スパッタガスには、希ガスとして、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガスなどを用いることもできる。
【0034】
本発明のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクは、スパッタリングによりハーフトーン位相シフト膜を成膜する工程において、ケイ素、窒素及び酸素からなる層を、チャンバー内に、1つ以上のケイ素ターゲットを設け、アルゴンガスと窒素ガスと酸素ガスとを導入してスパッタリングすることにより形成して製造することができる。この際、基板を自転させながら、特に基板面(膜を成膜する面)の中心を通る軸を回転軸として、基板を自転させながら成膜することが好ましい。
【0035】
本発明のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクの製造方法においては、ケイ素、窒素及び酸素からなる層を形成するスパッタリングにおいて、チャンバー内に導入する窒素ガス流量を、増加させた後減少させることにより掃引したとき、窒素ガス流量と、該窒素ガス流量の掃引により1つ以上のケイ素ターゲットのいずれかのターゲットで測定されるスパッタ電圧値又はスパッタ電流値とにより形成されるヒステリシス曲線により、成膜条件(スパッタ条件)を設定することが好ましい。
【0036】
真空又は減圧下で、チャンバー内で、ターゲットと不活性ガスと反応性ガスとを用いて反応性スパッタを実施すると、ターゲットに印加する電力と不活性ガスの流量を一定として、反応性ガス未供給の状態から反応性ガスの流量を徐々に増加させると、反応性ガスが増加するに従って、スパッタ電圧(ターゲット電圧)が徐々に減少する。この電圧の減少は、始めは徐々に(小さい傾斜で)減少し、その後、急激に(大きい傾斜で)減少する領域を経て、再び徐々に(小さい傾斜で)減少する挙動を示す。一方、反応性ガスの流量を増加させて、上述した電圧が再び徐々に減少する領域を経たのち、反転させて反応性ガスの流量を減少させると、反応性ガスが減少するに従って、スパッタ電圧が徐々に増加する。この電圧の増加は、始めは徐々に(小さい傾斜で)増加し、その後、急激に(大きい傾斜で)増加する領域を経て、再び徐々に(小さい傾斜で)増加する挙動を示す。しかしながら、反応性ガスの流量を増加させたときのスパッタ電圧と、反応性ガスの流量を減少させたときのスパッタ電圧とは、上述した急激に(大きい傾斜で)減少及び増加する領域において一致せず、反応性ガスの流量を減少させたときのスパッタ電圧の方が低く測定される。
【0037】
また、真空又は減圧下で、チャンバー内で、ターゲットと反応性ガスとを用いて反応性スパッタを実施すると、ターゲットに印加する電力と不活性ガスの流量を一定として、反応性ガス未供給の状態から反応性ガスの流量を徐々に増加させると、反応性ガスが増加するに従って、スパッタ電流(ターゲット電流)が徐々に増加する。この電流の増加は、始めは徐々に(小さい傾斜で)増加し、その後、急激に(大きい傾斜で)増加する領域を経て、再び徐々に(小さい傾斜で)増加する挙動を示す。一方、反応性ガスの流量を増加させて、上述した電流が再び徐々に増加する領域を経たのち、反転させて反応性ガスの流量を減少させると、反応性ガスが減少するに従って、スパッタ電流が徐々に減少する。この電流の減少は、始めは徐々に(小さい傾斜で)減少し、その後、急激に(大きい傾斜で)減少する領域を経て、再び徐々に(小さい傾斜で)減少する挙動を示す。しかしながら、反応性ガスの流量を増加させたときのスパッタ電流と、反応性ガスの流量を減少させたときのスパッタ電流とは、上述した急激に(大きい傾斜で)増加及び減少する領域において一致せず、反応性ガスの流量を減少させたときのスパッタ電流の方が高く測定される。
【0038】
このように、反応性スパッタにおいては、ターゲットに印加する電力と不活性ガスの流量を一定として、チャンバー内に導入する反応性ガス流量を、増加させた後減少させることにより掃引したとき、反応性ガス流量と、反応性ガス流量の掃引により測定されるスパッタ電圧値又はスパッタ電流値が、反応性ガスを増加させたときと減少させたときとで一致せず、磁気ヒステリシス曲線(B-H曲線)として知られているヒステリシス曲線に類似した、いわゆるヒステリシスを示し、例えば、図3に示されるようなヒステリシス曲線が形成される。
【0039】
本発明においては、ヒステリシス曲線において、反応性ガス流量がヒステリシス領域の下限以下の範囲におけるスパッタ状態をメタルモード、反応性ガス流量がヒステリシス領域の上限以上の範囲におけるスパッタ状態を反応モード、メタルモードと反応モードの間の範囲である、反応性ガス流量の下限を超えて上限未満の範囲におけるスパッタ状態を遷移モードとし、ケイ素、窒素及び酸素からなる層を、遷移モードで実施することが好ましい。この際、特に、チャンバー内圧力を0.05Pa以上、特に0.08Pa以上で、0.15Pa未満、特に0.13Pa以下とすることが好適である。チャンバー内圧力が0.05Pa未満では、スパッタ時に放電不良を引き起こすおそれがある。ハーフトーン位相シフト膜の表面粗さRMSは、成膜時のチャンバー内圧力の影響を受け、通常、チャンバー内圧力に比例する傾向がある。チャンバー内圧力は低くすることが好ましく、チャンバー内圧力が上記範囲を外れて高い場合、表面粗さRMSが十分に低減できないおそれがある。一方、チャンバー内圧力が上記範囲を外れて低い場合、成膜レートの低下が起こることがあり、また、後述する熱処理により、膜応力がかえって大きくなる場合がある。
【0040】
ハーフトーン位相シフト膜を成膜した後、200℃以上500℃以下の温度で、5分間以上熱処理(アニール処理)することが好ましい。熱処理時間は、通常、24時間以下である。熱処理は、スパッタチャンバー内で実施してもよく、また、スパッタチャンバーとは異なる熱処理炉に移して実施してもよい。熱処理の雰囲気は、ヘリウムガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気、真空下であっても、酸素ガス雰囲気などの酸素存在雰囲気であってもよい。熱処理をすることで、膜応力を低減し、また、ハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクからハーフトーン位相シフト型フォトマスクを製造する工程における熱処理による膜質変化を低減することができる。特に、ケイ素、窒素及び酸素からなる層を遷移モードによるスパッタリングにより形成して、ハーフトーン位相シフト膜の表面粗さRMSを低減することにより、ケイ素、窒素及び酸素からなる層を含むハーフトーン位相シフト膜面内の酸窒化度分布が安定するので、本発明のハーフトーン位相シフト膜では、このような熱処理を行っても面内の膜質分布が劣化し難く、熱処理を実施することのメリットは大きい。
【0041】
本発明のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクのハーフトーン位相シフト膜の上には、単層又は複数層からなる第2の層を設けることができる。第2の層は、通常、ハーフトーン位相シフト膜に隣接して設けられる。この第2の層として具体的には、遮光膜、遮光膜と反射防止膜との組み合わせ、ハーフトーン位相シフト膜のパターン形成においてハードマスクとして機能する加工補助膜などが挙げられる。また、後述する第3の層を設ける場合、この第2の層を、第3の層のパターン形成においてエッチングストッパーとして機能する加工補助膜(エッチングストッパー膜)として利用することもできる。第2の層の材料としては、クロムを含む材料が好適である。
【0042】
このようなハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクとして具体的には、図2(A)に示されるものが挙げられる。図2(A)は、本発明のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクの一例を示す断面図であり、このハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランク100は、透明基板10と、透明基板10上に形成されたハーフトーン位相シフト膜1と、ハーフトーン位相シフト膜1上に形成された第2の層2とを備える。
【0043】
本発明のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクには、ハーフトーン位相シフト膜の上に、第2の層として、遮光膜又はハーフトーン位相シフト膜にパターンを形成するためのハードマスクとして機能するエッチングマスク膜を設けることができる。また、第2の層として、遮光膜と反射防止膜とを組み合わせて設けることもできる。遮光膜を含む第2の層を設けることにより、ハーフトーン位相シフト型フォトマスクに、露光光を完全に遮光する領域を設けることができる。この遮光膜及び反射防止膜は、エッチングにおける加工補助膜としても利用可能である。遮光膜及び反射防止膜の膜構成及び材料については多数の報告(例えば、特開2007-33469号公報(特許文献2)、特開2007-233179号公報(特許文献3)など)があるが、好ましい遮光膜と反射防止膜との組み合わせの膜構成としては、例えば、クロムを含む材料の遮光膜を設け、更に、遮光膜からの反射を低減させるクロムを含む材料の反射防止膜を設けたものなどが挙げられる。遮光膜及び反射防止膜は、いずれも単層で構成しても、複数層で構成してもよい。遮光膜や反射防止膜のクロムを含む材料としては、クロム単体、クロム酸化物(CrO)、クロム窒化物(CrN)、クロム炭化物(CrC)、クロム酸化窒化物(CrON)、クロム酸化炭化物(CrOC)、クロム窒化炭化物(CrNC)、クロム酸化窒化炭化物(CrONC)等のクロム化合物などが挙げられる。なお、ここで、クロムを含む材料を表す化学式は、構成元素を示すものであり、構成元素の組成比を意味するものではない(以下のクロムを含む材料において同じ。)。
【0044】
第2の層が遮光膜、又は遮光膜と反射防止膜との組み合わせである場合、遮光膜のクロム化合物中のクロムの含有率は40原子%以上、特に60原子%以上で、100原子%未満、特に99原子%以下、とりわけ90原子%以下であることが好ましい。酸素の含有率は60原子%以下、特に40原子%以下であることが好ましく、1原子%以上であることがより好ましい。窒素の含有率は、50原子%以下、特に40原子%以下であることが好ましく、1原子%以上であることがより好ましい。炭素の含有率は20原子%以下、特に10原子%以下であることが好ましく、エッチング速度を調整する必要がある場合は1原子%以上であることがより好ましい。この場合、クロム、酸素、窒素及び炭素の合計の含有率は95原子%以上、特に99原子%以上、とりわけ100原子%であることが好ましい。
【0045】
また、第2の層が遮光膜と反射防止膜との組み合わせである場合、反射防止膜はクロム化合物であることが好ましく、クロム化合物中のクロムの含有率は30原子%以上、特に35原子%以上で、70原子%以下、特に50原子%以下であることが好ましい。酸素の含有率は60原子%以下であることが好ましく、1原子%以上、特に20原子%以上であることがより好ましい。窒素の含有率は50原子%以下、特に30原子%以下であることが好ましく、1原子%以上、特に3原子%以上であることがより好ましい。炭素の含有率は20原子%以下、特に5原子%以下であることが好ましく、エッチング速度を調整する必要がある場合は1原子%以上であることがより好ましい。この場合、クロム、酸素、窒素及び炭素の合計の含有率は95原子%以上、特に99原子%以上、とりわけ100原子%であることが好ましい。
【0046】
第2の層が遮光膜、又は遮光膜と反射防止膜との組み合わせである場合、第2の層の膜厚は、通常20~100nm、好ましくは40~70nmである。また、波長200nm以下の露光光に対するハーフトーン位相シフト膜と第2の層との合計の光学濃度が2.0以上、特に2.5以上、とりわけ3.0以上となるようにすることが好ましい。
【0047】
本発明のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクの第2の層の上には、単層又は複数層からなる第3の層を設けることができる。第3の層は、通常、第2の層に隣接して設けられる。この第3の層として具体的には、第2の層のパターン形成においてハードマスクとして機能する加工補助膜、遮光膜、遮光膜と反射防止膜との組み合わせなどが挙げられる。第3の層の材料としては、ケイ素を含む材料が好適であり、特に、クロムを含まないものが好ましい。
【0048】
このようなハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクとして具体的には、図2(B)に示されるものが挙げられる。図2(B)は、本発明のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクの一例を示す断面図であり、このハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランク100は、透明基板10と、透明基板10上に形成されたハーフトーン位相シフト膜1と、ハーフトーン位相シフト膜1上に形成された第2の層2と、第2の層2上に形成された第3の層3とを備える。
【0049】
第2の層が遮光膜、又は遮光膜と反射防止膜との組み合わせである場合、第3の層として、第2の層のパターン形成においてハードマスクとして機能する加工補助膜(エッチングマスク膜)を設けることができる。また、後述する第4の層を設ける場合、この第3の層を、第4の層のパターン形成においてエッチングストッパーとして機能する加工補助膜(エッチングストッパー膜)として利用することもできる。この加工補助膜は、第2の層とエッチング特性が異なる材料、例えば、クロムを含む材料のエッチングに適用される塩素系ドライエッチングに耐性を有する材料、具体的には、SF6やCF4などのフッ素系ガスでエッチングできるケイ素を含む材料とすることが好ましい。ケイ素を含む材料として具体的には、ケイ素単体、ケイ素と、窒素及び酸素の一方又は双方とを含む材料、ケイ素と遷移金属とを含む材料、ケイ素と、窒素及び酸素の一方又は双方と、遷移金属とを含む材料等のケイ素化合物などが挙げられ、遷移金属としては、モリブデン、タンタル、ジルコニウムなどが挙げられる。
【0050】
第3の層が加工補助膜である場合、加工補助膜はケイ素化合物であることが好ましく、ケイ素化合物中のケイ素の含有率は20原子%以上、特に33原子%以上で、95原子%以下、特に80原子%以下であることが好ましい。窒素の含有率は50原子%以下、特に30原子%以下であることが好ましく、1原子%以上であることがより好ましい。酸素の含有率は70原子%以下、特に66原子%以下であることが好ましく、エッチング速度を調整する必要がある場合は1原子%以上であることがより好ましく、20原子%以上であることが更に好ましい。遷移金属は含有していても、含有していなくてもよいが、遷移金属を含有する場合、その含有率は35原子%以下、特に20原子%以下であることが好ましい。この場合、ケイ素、酸素、窒素及び遷移金属の合計の含有率は95原子%以上、特に99原子%以上、とりわけ100原子%であることが好ましい。
【0051】
第2の層が遮光膜、又は遮光膜と反射防止膜との組み合わせ、第3の層が加工補助膜である場合、第2の層の膜厚は、通常20~100nm、好ましくは40~70nmであり、第3の層の膜厚は、通常1~30nm、好ましくは2~15nmである。また、波長200nm以下の露光光に対するハーフトーン位相シフト膜と第2の層との合計の光学濃度が2.0以上、特に2.5以上、とりわけ3.0以上となるようにすることが好ましい。
【0052】
また、第2の層が加工補助膜である場合、第3の層として、遮光膜を設けることができる。また、第3の層として、遮光膜と反射防止膜とを組み合わせて設けることもできる。この場合、第2の層は、ハーフトーン位相シフト膜のパターン形成においてハードマスクとして機能する加工補助膜(エッチングマスク膜)であり、第3の層のパターン形成においてエッチングストッパーとして機能する加工補助膜(エッチングストッパー膜)として利用することもできる。加工補助膜の例としては、特開2007-241065号公報(特許文献4)で示されているようなクロムを含む材料で構成された膜が挙げられる。加工補助膜は、単層で構成しても、複数層で構成してもよい。加工補助膜のクロムを含む材料としては、クロム単体、クロム酸化物(CrO)、クロム窒化物(CrN)、クロム炭化物(CrC)、クロム酸化窒化物(CrON)、クロム酸化炭化物(CrOC)、クロム窒化炭化物(CrNC)、クロム酸化窒化炭化物(CrONC)等のクロム化合物などが挙げられる。
【0053】
第2の層が加工補助膜である場合、第2の層のクロム化合物中のクロムの含有率は40原子%以上、特に50原子%以上で、100原子%以下、特に99原子%以下、とりわけ90原子%以下であることが好ましい。酸素の含有率は60原子%以下、特に55原子%以下であることが好ましく、エッチング速度を調整する必要がある場合は1原子%以上であることがより好ましい。窒素の含有率は50原子%以下、特に40原子%以下であることが好ましく、1原子%以上であることがより好ましい。炭素の含有率は20原子%以下、特に10原子%以下であることが好ましく、エッチング速度を調整する必要がある場合は1原子%以上であることがより好ましい。この場合、クロム、酸素、窒素及び炭素の合計の含有率は95原子%以上、特に99原子%以上、とりわけ100原子%であることが好ましい。
【0054】
一方、第3の層の遮光膜及び反射防止膜は、第2の層とエッチング特性が異なる材料、例えば、クロムを含む材料のエッチングに適用される塩素系ドライエッチングに耐性を有する材料、具体的には、SF6やCF4などのフッ素系ガスでエッチングできるケイ素を含む材料とすることが好ましい。ケイ素を含む材料として具体的には、ケイ素単体、ケイ素と、窒素及び酸素の一方又は双方とを含む材料、ケイ素と遷移金属とを含む材料、ケイ素と、窒素及び酸素の一方又は双方と、遷移金属とを含む材料等のケイ素化合物などが挙げられ、遷移金属としては、モリブデン、タンタル、ジルコニウムなどが挙げられる。
【0055】
第3の層が遮光膜、又は遮光膜と反射防止膜との組み合わせである場合、遮光膜及び反射防止膜はケイ素化合物であることが好ましく、ケイ素化合物中のケイ素の含有率は10原子%以上、特に30原子%以上で、100原子%未満、特に95原子%以下であることが好ましい。窒素の含有率は50原子%以下、特に40原子%以下、とりわけ20原子%以下であることが好ましく、エッチング速度を調整する必要がある場合は1原子%以上であることがより好ましい。酸素の含有率は60原子%以下、特に30原子%以下であることが好ましく、エッチング速度を調整する必要がある場合は1原子%以上であることが好ましい。遷移金属の含有率は35原子%以下、特に20原子%以下であることが好ましく、1原子%以上であることがより好ましい。この場合、ケイ素、酸素、窒素及び遷移金属の合計の含有率は95原子%以上、特に99原子%以上、とりわけ100原子%であることが好ましい。
【0056】
第2の層が加工補助膜、第3の層が遮光膜、又は遮光膜と反射防止膜との組み合わせである場合、第2の層の膜厚は、通常1~20nm、好ましくは2~10nmであり、第3の層の膜厚は、通常20~100nm、好ましくは30~70nmである。また、波長200nm以下の露光光に対するハーフトーン位相シフト膜と第2の層と第3の層との合計の光学濃度が2.0以上、特に2.5以上、とりわけ3.0以上となるようにすることが好ましい。
【0057】
本発明のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクの第3の層の上には、単層又は複数層からなる第4の層を設けることができる。第4の層は、通常、第3の層に隣接して設けられる。この第4の層として具体的には、第3の層のパターン形成においてハードマスクとして機能する加工補助膜などが挙げられる。第4の層の材料としては、クロムを含む材料が好適である。
【0058】
このようなハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクとして具体的には、図2(C)に示されるものが挙げられる。図2(C)は、本発明のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクの一例を示す断面図であり、このハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランク100は、透明基板10と、透明基板10上に形成されたハーフトーン位相シフト膜1と、ハーフトーン位相シフト膜1上に形成された第2の層2と、第2の層2上に形成された第3の層3と、第3の層3上に形成された第4の層4とを備える。
【0059】
第3の層が遮光膜、又は遮光膜と反射防止膜との組み合わせである場合、第4の層として、第3の層のパターン形成においてハードマスクとして機能する加工補助膜(エッチングマスク膜)を設けることができる。この加工補助膜は、第3の層とエッチング特性が異なる材料、例えば、ケイ素を含む材料のエッチングに適用されるフッ素系ドライエッチングに耐性を有する材料、具体的には、酸素を含有する塩素系ガスでエッチングできるクロムを含む材料とすることが好ましい。クロムを含む材料として具体的には、クロム単体、クロム酸化物(CrO)、クロム窒化物(CrN)、クロム炭化物(CrC)、クロム酸化窒化物(CrON)、クロム酸化炭化物(CrOC)、クロム窒化炭化物(CrNC)、クロム酸化窒化炭化物(CrONC)等のクロム化合物などが挙げられる。
【0060】
第4の層が加工補助膜である場合、第4の層中のクロムの含有率は40原子%以上、特に50原子%以上で、100原子%以下、特に99原子%以下、とりわけ90原子%以下であることが好ましい。酸素の含有率は60原子%以下、特に40原子%以下であることが好ましく、エッチング速度を調整する必要がある場合は1原子%以上であることがより好ましい。窒素の含有率は50原子%以下、特に40原子%以下であることが好ましく、エッチング速度を調整する必要がある場合は1原子%以上であることがより好ましい。炭素の含有率は20原子%以下、特に10原子%以下であることが好ましく、エッチング速度を調整する必要がある場合は1原子%以上であることがより好ましい。この場合、クロム、酸素、窒素及び炭素の合計の含有率は95原子%以上、特に99原子%以上、とりわけ100原子%であることが好ましい。
【0061】
第2の層が加工補助膜、第3の層が遮光膜、又は遮光膜と反射防止膜との組み合わせ、第4の層が加工補助膜である場合、第2の層の膜厚は、通常1~20nm、好ましくは2~10nmであり、第3の層の膜厚は、通常20~100nm、好ましくは30~70nmであり、第4の層の膜厚は、通常1~50nm、好ましくは2~30nmである。また、波長200nm以下の露光光に対するハーフトーン位相シフト膜と第2の層と第3の層との合計の光学濃度が2.0以上、特に2.5以上、とりわけ3.0以上となるようにすることが好ましい。
【0062】
第2の層及び第4の層のクロムを含む材料で構成された膜は、クロムターゲット、クロムに酸素、窒素及び炭素から選ばれるいずれか1種又は2種以上を添加したターゲットなどを用い、Ar、He、Neなどの希ガスに、成膜する膜の組成に応じて、酸素含有ガス、窒素含有ガス、炭素含有ガスなどから選ばれる反応性ガスを適宜添加したスパッタガスを用いた反応性スパッタにより成膜することができる。
【0063】
一方、第3の層のケイ素を含む材料で構成された膜は、ケイ素ターゲット、窒化ケイ素ターゲット、ケイ素と窒化ケイ素の双方を含むターゲット、遷移金属ターゲット、ケイ素と遷移金属との複合ターゲットなどを用い、Ar、He、Neなどの希ガスに、成膜する膜の組成に応じて、酸素含有ガス、窒素含有ガス、炭素含有ガスなどから選ばれる反応性ガスを適宜添加したスパッタガスを用いた反応性スパッタにより成膜することができる。
【0064】
本発明のハーフトーン位相シフト型フォトマスクは、ハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクから、常法により製造することができる。例えば、ハーフトーン位相シフト膜の上に、第2の層として、クロムを含む材料の膜が形成されているハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクでは、例えば、下記の工程でハーフトーン位相シフト型フォトマスクを製造することができる。
【0065】
まず、ハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクの第2の層上に、電子線レジスト膜を成膜し、電子線によるパターン描画を行った後、所定の現像操作によってレジストパターンを得る。次に、得られたレジストパターンをエッチングマスクとして、酸素を含有する塩素系ドライエッチングにより、第2の層にレジストパターンを転写して、第2の層のパターンを得る。次に、得られた第2の層のパターンをエッチングマスクとして、フッ素系ドライエッチングにより、ハーフトーン位相シフト膜に第2の層のパターンを転写して、ハーフトーン位相シフト膜パターンを得る。ここで、第2の層の一部を残す必要がある場合は、その部分を保護するレジストパターンを、第2の層の上に形成した後、酸素を含有する塩素系ドライエッチングにより、レジストパターンで保護されていない部分の第2の層を除去する。そして、レジストパターンを常法により除去して、ハーフトーン位相シフト型フォトマスクを得ることができる。
【0066】
また、ハーフトーン位相シフト膜の上に、第2の層として、クロムを含む材料の遮光膜、又は遮光膜と反射防止膜との組み合わせが形成され、第2の層の上に、第3の層として、ケイ素を含む材料の加工補助膜が形成されているハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクでは、例えば、下記の工程でハーフトーン位相シフト型フォトマスクを製造することができる。
【0067】
まず、ハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクの第3の層の上に、電子線レジスト膜を成膜し、電子線によるパターン描画を行った後、所定の現像操作によってレジストパターンを得る。次に、得られたレジストパターンをエッチングマスクとして、フッ素系ドライエッチングにより、第3の層にレジストパターンを転写して、第3の層のパターンを得る。次に、得られた第3の層のパターンをエッチングマスクとして、酸素を含有する塩素系ドライエッチングにより、第2の層に第3の層のパターンを転写して、第2の層のパターンを得る。次に、レジストパターンを除去した後、得られた第2の層のパターンをエッチングマスクとして、フッ素系ドライエッチングにより、ハーフトーン位相シフト膜に第2の層のパターンを転写して、ハーフトーン位相シフト膜パターンを得ると同時に、第3の層のパターンを除去する。次に、第2の層を残す部分を保護するレジストパターンを、第2の層の上に形成した後、酸素を含有する塩素系ドライエッチングにより、レジストパターンで保護されていない部分の第2の層を除去する。そして、レジストパターンを常法により除去して、ハーフトーン位相シフト型フォトマスクを得ることができる。
【0068】
一方、ハーフトーン位相シフト膜の上に、第2の層として、クロムを含む材料の加工補助膜が形成され、第2の層の上に、第3の層として、ケイ素を含む材料の遮光膜、又は遮光膜と反射防止膜との組み合わせが形成されているハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクでは、例えば、下記の工程でハーフトーン位相シフト型フォトマスクを製造することができる。
【0069】
まず、ハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクの第3の層の上に、電子線レジスト膜を成膜し、電子線によるパターン描画を行った後、所定の現像操作によってレジストパターンを得る。次に、得られたレジストパターンをエッチングマスクとして、フッ素系ドライエッチングにより、第3の層にレジストパターンを転写して、第3の層のパターンを得る。次に、得られた第3の層のパターンをエッチングマスクとして、酸素を含有する塩素系ドライエッチングにより、第2の層に第3の層のパターンを転写して、ハーフトーン位相シフト膜を除去する部分の第2の層が除去された第2の層のパターンを得る。次に、レジストパターンを除去し、第3の層を残す部分を保護するレジストパターンを、第3の層の上に形成した後、得られた第2の層のパターンをエッチングマスクとして、フッ素系ドライエッチングにより、ハーフトーン位相シフト膜に第2の層のパターンを転写して、ハーフトーン位相シフト膜パターンを得ると同時に、レジストパターンで保護されていない部分の第3の層を除去する。次に、レジストパターンを常法により除去する。そして、酸素を含有する塩素系ドライエッチングにより、第3の層が除去された部分の第2の層を除去して、ハーフトーン位相シフト型フォトマスクを得ることができる。
【0070】
更に、ハーフトーン位相シフト膜の上に、第2の層として、クロムを含む材料の加工補助膜が形成され、第2の層の上に、第3の層として、ケイ素を含む材料の遮光膜、又は遮光膜と反射防止膜との組み合わせが形成され、更に、第3の層の上に、第4の層として、クロムを含む材料の加工補助膜が形成されているハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクでは、例えば、下記の工程でハーフトーン位相シフト型フォトマスクを製造することができる。
【0071】
まず、ハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクの第4の層の上に、電子線レジスト膜を成膜し、電子線によるパターン描画を行った後、所定の現像操作によってレジストパターンを得る。次に、得られたレジストパターンをエッチングマスクとして、酸素を含有する塩素系ドライエッチングにより、第4の層にレジストパターンを転写して、第4の層のパターンを得る。次に、得られた第4の層のパターンをエッチングマスクとして、フッ素系ドライエッチングにより、第3の層に第4の層のパターンを転写して、第3の層のパターンを得る。次に、レジストパターンを除去し、第3の層を残す部分を保護するレジストパターンを、第4の層の上に形成した後、得られた第3の層のパターンをエッチングマスクとして、酸素を含有する塩素系ドライエッチングにより、第2の層に第3の層のパターンを転写して第2の層のパターンを得ると同時に、レジストパターンで保護されていない部分の第4の層を除去する。次に、第2の層のパターンをエッチングマスクとして、フッ素系ドライエッチングにより、ハーフトーン位相シフト膜に第2の層のパターンを転写して、ハーフトーン位相シフト膜パターンを得ると同時に、レジストパターンで保護されていない部分の第3の層を除去する。次に、レジストパターンを常法により除去する。そして、酸素を含有する塩素系ドライエッチングにより、第3の層が除去された部分の第2の層と、レジストパターンが除去された部分の第4の層を除去して、ハーフトーン位相シフト型フォトマスクを得ることができる。
【実施例
【0072】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に制限されるものではない。
【0073】
[実施例1~9、比較例1~7]
スパッタ装置のチャンバー内に、6025石英基板(152mm角、厚さ6.35mmの石英基板)を設置し、スパッタターゲットとしてケイ素ターゲット、スパッタガスとしてアルゴンガス、窒素ガス及び酸素ガスを用い、ケイ素ターゲットに印加する電力並びにアルゴンガス及び酸素ガスの流量を一定にし、窒素ガスの流量を変化させたときにケイ素ターゲットに流れる電流を測定することにより、ヒステリシス曲線を得た。具体的には、ケイ素ターゲットに表1に示される電力を印加し、アルゴンガス及び酸素ガスを表1に示される流量に設定して、窒素ガスを10SCCMチャンバー内に流した状態でスパッタを開始し、窒素ガス流量を、最終的に50SCCMまで増加させ、その後、窒素流量を逆に50SCCMから10SCCMまで減少させた。実施例5及び6で得られたヒステリシス曲線を図3に示す。
【0074】
次に、6025石英基板上に、スパッタターゲットとしてケイ素ターゲット、スパッタガスとして窒素ガスと酸素ガスとアルゴンガスを用い、上記で得られたヒステリシス曲線に基づき、ケイ素ターゲットに表1に示される電力を印加し、アルゴンガス、窒素ガス及び酸素ガスを表1に示される流量に設定し、チャンバー内圧力(成膜時圧力)を表1に示される圧力に設定して、表2に示される膜厚のケイ素、窒素及び酸素からなる単層で構成されたハーフトーン位相シフト膜を成膜した。適用したスパッタリングの成膜モードを表1に示す。次に、得られたハーフトーン位相シフト膜に対し、窒素ガス及び酸素ガスを大気分圧と同程度とした雰囲気下、表1に示される温度及び時間で熱処理して、ハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクを得た。
【0075】
【表1】
【0076】
得られたハーフトーン位相シフト膜の表面粗さRMSは、Pacific Nanotechnology社製の原子間力顕微鏡(AFM)NANO-IM-8で測定した。表面粗さRMSは、基板面内で最も大きかった基板面中心部の値を示した。得られたハーフトーン位相シフト膜のマスクパターン形成エリアの位相差(位相シフト量)及び透過率は、レーザーテック株式会社製の位相差/透過率測定装置MPM193で測定した。位相差及び透過率の面内での平均値、並びに透過率の最大値Tmax及び最小値Tminから下記式
(Tmax-Tmin)/(Tmax+Tmin)×100
により透過率の面内ばらつきを算出した。得られたハーフトーン位相シフト膜の組成は、XPSにより測定した。得られたハーフトーン位相シフト膜の熱処理後のΔTIRは、CORNING製のフラットネステスタTropelR Ultra FlatTM 200Maskで測定した。これらの結果を表2に示す。
【0077】
【表2】
【0078】
成膜条件により表面粗さRMSは変化するが、反応モードでのスパッタリングでは表面粗さRMSが高く、結果として透過率の面内ばらつきが、2%を超えて大きくなっている。また、500℃で熱処理した実施例及び比較例、計13例について、表面粗さRMSに対する透過率の面内ばらつきをプロットしたグラフを図4に示す。グラフから、表面粗さRMSと、透過率の面内ばらつきとの間に相関があり、表面粗さRMSを抑えることで、透過率の面内ばらつきを抑えることができ、高透過率のハーフトーン位相シフト膜において、面内均一性の高いハーフトーン位相シフト膜となることがわかる。そして、表面粗さRMS及び透過率の面内ばらつきが低減された高透過率のハーフトーン位相シフト膜は、スパッタリングによる成膜条件を遷移モードに設定することで、好適に得ることができることがわかる。
【符号の説明】
【0079】
1 ハーフトーン位相シフト膜
2 第2の層
3 第3の層
4 第4の層
10 透明基板
11 ハーフトーン位相シフト膜パターン
100 ハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランク
101 ハーフトーン位相シフト型フォトマスク
図1
図2
図3
図4