IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本ゼオン株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】ポジ型感放射線性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/023 20060101AFI20221213BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20221213BHJP
   G03F 7/028 20060101ALI20221213BHJP
   H05B 33/22 20060101ALI20221213BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20221213BHJP
   G02F 1/1333 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
G03F7/023
G03F7/004 503Z
G03F7/004 501
G03F7/028
H05B33/22 Z
H05B33/14 A
G02F1/1333 505
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019544560
(86)(22)【出願日】2018-09-13
(86)【国際出願番号】 JP2018033932
(87)【国際公開番号】W WO2019065262
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2021-08-05
(31)【優先権主張番号】P 2017190288
(32)【優先日】2017-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 隆覚
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-309885(JP,A)
【文献】特開2017-031378(JP,A)
【文献】特開2013-167781(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/023
G03F 7/004
G03F 7/028
H05B 33/22
H01L 51/50
G02F 1/1333
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ可溶性樹脂と、
放射線が照射されるとカルボン酸を生成する第一酸発生剤と、
放射線が照射されるとスルホン酸を生成する第二酸発生剤と、
フッ素含有フェノール性化合物と、
を含有し、
前記アルカリ可溶性樹脂が、主鎖に、環状オレフィン単量体に由来する環状構造とプロトン性極性基とを有する、環状オレフィン単量体の単独重合体または共重合体である、ポジ型感放射線性樹脂組成物。
【請求項2】
多官能エポキシ化合物を更に含有する、請求項に記載のポジ型感放射線性樹脂組成物。
【請求項3】
増感剤を更に含有する、請求項1または2に記載のポジ型感放射線性樹脂組成物。
【請求項4】
前記増感剤が、アントラセン構造を有する化合物である、請求項に記載のポジ型感放射線性樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポジ型感放射線性樹脂組成物に関し、特には、電子部品に用いられる平坦化膜、保護膜および絶縁膜などの形成に好適に使用し得るポジ型感放射線性樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置、有機EL表示装置、集積回路素子、固体撮像素子などの電子部品には、平坦化膜、保護膜、絶縁膜等として種々の樹脂膜が設けられている。
【0003】
具体的には、例えば、有機EL表示装置や液晶表示装置などでは、パターン形成された層間絶縁膜(パッシベーション膜)を用いて再配線層を形成している。そして、パターン形成された層間絶縁膜は、例えば、基板上に塗布した感放射線性樹脂組成物をプリベークし、得られた塗膜を露光および現像してパターンを形成した後、パターン形成された塗膜を露光およびポストベークして硬化させることにより、形成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、パターン形成された層間絶縁膜などの樹脂膜の形成に用いられる樹脂組成物としては、例えば、アルカリ可溶性樹脂と、キノンジアジド化合物と、キノンジアジド化合物の極大吸収波長より短い極大吸収波長を有する光酸発生剤とを含有するポジ型感放射線性樹脂組成物などが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2014/030441号
【文献】特開2016-042127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来のポジ型感放射線性樹脂組成物には、ポジ型感放射線性樹脂組成物を用いて基板上にパターンを形成した際のパターンと基板との密着性(現像密着性)を向上させるという点において改善の余地があった。
【0007】
また、近年では、樹脂膜を形成する基板として耐熱性の低い基板も使用し得るようにする観点から、ポストベークなどの熱処理を低温で行っても樹脂膜(硬化膜)を良好に形成し得るポジ型感放射線性樹脂組成物が求められている。
しかし、上記従来のポジ型感放射線性樹脂組成物では、低温(例えば150℃以下、好ましくは130℃以下)で熱処理すると、得られる樹脂膜の耐薬品性が低下する場合があった。
【0008】
そこで、本発明は、現像密着性に優れるパターンを形成可能であり、且つ、低温で熱処理した場合であっても耐薬品性に優れる樹脂膜を形成可能なポジ型感放射線性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決することを目的として鋭意検討を行った。そして、本発明者は、アルカリ可溶性樹脂と、所定の酸発生剤と、フッ素含有フェノール性化合物とを含有するポジ型感放射線性樹脂組成物によれば、現像密着性に優れるパターンの形成および耐薬品性に優れる樹脂膜の低温条件下での形成が可能になることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明のポジ型感放射線性樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂と、放射線が照射されるとカルボン酸を生成する第一酸発生剤と、放射線が照射されるとスルホン酸を生成する第二酸発生剤と、フッ素含有フェノール性化合物とを含有することを特徴とする。このように、第一酸発生剤およびフッ素含有フェノール性化合物を含有させれば、現像密着性に優れるパターンの形成が可能になる。また、第一酸発生剤および第二酸発生剤を含有させれば、低温で熱処理した場合であっても耐薬品性に優れる樹脂膜を形成することができる。
【0011】
ここで、本発明のポジ型感放射線性樹脂組成物は、前記アルカリ可溶性樹脂が、プロトン性極性基を有する環状オレフィン系樹脂であることが好ましい。アルカリ可溶性樹脂としてプロトン性極性基を有する環状オレフィン系樹脂を使用すれば、パターンの現像密着性および樹脂膜の耐薬品性を更に向上させることができると共に、透明性が高く、且つ、吸水性が低い樹脂膜を形成することができるからである。
【0012】
また、本発明のポジ型感放射線性樹脂組成物は、多官能エポキシ化合物を更に含有することが好ましい。多官能エポキシ化合物を含有させれば、樹脂膜の耐薬品性を更に向上させることができるからである。
【0013】
更に、本発明のポジ型感放射線性樹脂組成物は、増感剤を更に含有することが好ましい。増感剤を含有させれば、樹脂膜の耐薬品性を更に向上させることができるからである。
【0014】
なお、前記増感剤は、アントラセン構造を有する化合物であることが好ましい。増感剤としてアントラセン構造を有する化合物を使用すれば、樹脂膜の耐薬品性をより一層向上させることができるからである。
【発明の効果】
【0015】
本発明のポジ型感放射線性樹脂組成物によれば、現像密着性に優れるパターンを形成することができると共に、耐薬品性に優れる樹脂膜を低温条件下でも形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0017】
(ポジ型感放射線性樹脂組成物)
ここで、本発明のポジ型感放射線性樹脂組成物は、特に限定されることなく、例えば、液晶表示装置、有機EL表示装置、集積回路素子、固体撮像素子等の電子部品が有する樹脂膜(例えば、平坦化膜、保護膜および絶縁膜など)を形成する際に用いることができる。中でも、本発明のポジ型感放射線性樹脂組成物は、絶縁膜を形成する際に好適に用いることができ、再配線層(Re-Distribution Layer;RDL)を配設する際に使用する再配線用絶縁膜を形成する際に特に好適に用いることができる。
【0018】
そして、本発明のポジ型感放射線性樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂と、放射線が照射されるとカルボン酸を生成する第一酸発生剤と、放射線が照射されるとスルホン酸を生成する第二酸発生剤と、フッ素含有フェノール性化合物とを含有し、任意に、多官能エポキシ化合物、増感剤、添加剤および溶剤からなる群より選択される少なくとも1種を更に含有し得る。
【0019】
なお、本発明のポジ型感放射線性樹脂組成物は、第一酸発生剤およびフッ素含有フェノール性化合物を含有しているので、本発明のポジ型感放射線性樹脂組成物を使用すれば、現像密着性に優れるパターンを形成することができる。また、本発明のポジ型感放射線性樹脂組成物は、第一酸発生剤および第二酸発生剤を含有しているので、低温で熱処理した場合であっても耐薬品性に優れる樹脂膜を形成することができる。
【0020】
<アルカリ可溶性樹脂>
アルカリ可溶性樹脂は、アルカリ現像が可能な樹脂であれば、特に限定されない。アルカリ可溶性樹脂としては、特に限定されることなく、例えば、ノボラック樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ビニルフェノール樹脂、および、環状オレフィン単量体単位を含む樹脂である環状オレフィン系樹脂等が挙げられる。これらは一種単独で、或いは2種以上を混合して用いることができる。
なお、本明細書において、樹脂または重合体が「単量体単位を含む」とは、「その単量体を用いて得た樹脂または重合体中に単量体由来の構造単位が含まれている」ことを意味する。
【0021】
中でも、パターンの現像密着性および樹脂膜の耐薬品性を十分に向上させつつ、透明性が高くて吸水性が低い樹脂膜を形成し得るようにする観点からは、アルカリ可溶性樹脂としては、環状オレフィン系樹脂を用いることが好ましく、プロトン性極性基を有する環状オレフィン系樹脂を用いることがより好ましい。
【0022】
ここで、アルカリ可溶性樹脂として好適なプロトン性極性基を有する環状オレフィン系樹脂は、主鎖に、環状オレフィン単量体に由来する環状構造(脂環または芳香環)とプロトン性極性基とを有する、環状オレフィン単量体の単独重合体または共重合体である。
【0023】
なお、「プロトン性極性基」とは、周期律表の第15族または第16族に属する原子に水素が直接結合している原子団をいう。水素が直接結合する原子は、好ましくは周期律表の第15族または第16族の第1周期若しくは第2周期に属する原子であり、より好ましくは酸素原子、窒素原子または硫黄原子であり、特に好ましくは酸素原子である。
【0024】
プロトン性極性基を有する環状オレフィン系樹脂を構成するための単量体としては、プロトン性極性基を有する環状オレフィン単量体(a)、プロトン性極性基以外の極性基を有する環状オレフィン単量体(b)、極性基を持たない環状オレフィン単量体(c)、および、環状オレフィン単量体以外の単量体(d)(以下、これらの単量体を単に「単量体(a)~(d)」という。)が挙げられる。ここで単量体(b)、(c)、(d)は、特性に影響が無い範囲で使用可能である。
なお、プロトン性極性基を有する環状オレフィン系樹脂の全構造単位中、プロトン性極性基を有する環状オレフィン単量体単位の割合は、通常30質量%以上100質量%以下、好ましくは50質量%以上100質量%以下である。そして、プロトン性極性基を有する環状オレフィン系樹脂は、単量体(a)と、単量体(b)および/または単量体(c)とから構成されることが好ましく、単量体(a)と単量体(b)とから構成されることが更に好ましい。
【0025】
単量体(a)の具体例としては、5-ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-メチル-5-ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-カルボキシメチル-5-ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5,6-ジヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、4-ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-9-エン、9-メチル-9-ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9,10-ジヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン等のカルボキシ基含有環状オレフィン;5-(4-ヒドロキシフェニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-メチル-5-(4-ヒドロキシフェニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、9-(4-ヒドロキシフェニル)テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-メチル-9-(4-ヒドロキシフェニル)テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン等の水酸基含有環状オレフィン等が挙げられ、中でも、単量体(a)としてはカルボキシ基含有環状オレフィンが好ましい。これらのプロトン性極性基を有する環状オレフィン単量体(a)は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0026】
プロトン性極性基以外の極性基を有する環状オレフィン単量体(b)が有する、プロトン性極性基以外の極性基の具体例としては、エステル基(アルコキシカルボニル基およびアリーロキシカルボニル基を総称していう。)、N-置換イミド基、エポキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、カルボニルオキシカルボニル基(ジカルボン酸の酸無水物残基)、アルコキシ基、カルボニル基、第三級アミノ基、スルホン基、アクリロイル基等が挙げられる。中でも、プロトン性極性基以外の極性基としては、エステル基、N-置換イミド基およびシアノ基が好ましく、エステル基およびN-置換イミド基がより好ましく、N-置換イミド基が特に好ましい。
【0027】
そして、単量体(b)の具体例としては、以下のような環状オレフィンが挙げられる。
エステル基を有する環状オレフィンとしては、例えば、5-アセトキシビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-メチル-5-メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、9-アセトキシテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-メトキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-エトキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-n-プロポキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-n-ブトキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-メチル-9-メトキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-メチル-9-エトキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-メチル-9-n-プロポキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-メチル-9-イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-メチル-9-n-ブトキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-(2,2,2-トリフルオロエトキシカルボニル)テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-メチル-9-(2,2,2-トリフルオロエトキシカルボニル)テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン等が挙げられる。
N-置換イミド基を有する環状オレフィンとしては、例えば、N-フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(2-エチルヘキシル)-1-イソプロピル-4-メチルビシクロ[2.2.2]オクト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(2-エチルヘキシル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-[(2-エチルブトキシ)エトキシプロピル]-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(エンド-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジイルジカルボニル)アスパラギン酸ジメチル等が挙げられる。
シアノ基を有する環状オレフィンとしては、例えば、9-シアノテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-メチル-9-シアノテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、5-シアノビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン等が挙げられる。
ハロゲン原子を有する環状オレフィンとしては、例えば、9-クロロテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-メチル-9-クロロテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン等が挙げられる。
これらのプロトン性極性基以外の極性基を有する環状オレフィン単量体(b)は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
極性基を持たない環状オレフィン単量体(c)の具体例としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(「ノルボルネン」ともいう。)、5-エチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-ブチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-エチリデン-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-メチリデン-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-ビニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ-3,8-ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、テトラシクロ[10.2.1.02,1 14,9]ペンタデカ-4,6,8,13-テトラエン、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン(「テトラシクロドデセン」ともいう。)、9-メチル-テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-エチル-テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-メチリデン-テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-エチリデン-テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-ビニル-テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-プロペニル-テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、ペンタシクロ[9.2.1.13,9.02,10]ペンタデカ-5,12-ジエン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、9-フェニル-テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、テトラシクロ[9.2.1.02,10.03,8]テトラデカ-3,5,7,12-テトラエン、ペンタシクロ[9.2.1.13,9.02,10]ペンタデカ-12-エン等が挙げられる。
これらの極性基を持たない環状オレフィン単量体(c)は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
環状オレフィン以外の単量体(d)の具体例としては、鎖状オレフィンが挙げられる。鎖状オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン等の炭素数2~20のα-オレフィン;1,4-ヘキサジエン、4-メチル-1,4-ヘキサジエン、5-メチル-1,4-ヘキサジエン、1,7-オクタジエン等の非共役ジエン等が挙げられる。
これらの環状オレフィン以外の単量体(d)は、それぞれ単独で、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0030】
本発明で使用するプロトン性極性基を有する環状オレフィン系樹脂は、単量体(a)を、所望により単量体(b)~(d)から選ばれる1種以上の単量体と共に重合することにより得られる。重合により得られた重合体を更に水素化してもよい。本発明では、水素添加された重合体も、プロトン性極性基を有する環状オレフィン系樹脂に含まれる。
【0031】
なお、本発明で使用するプロトン性極性基を有する環状オレフィン系樹脂は、プロトン性極性基を有しない環状オレフィン系樹脂に、公知の変性剤を利用してプロトン性極性基を導入し、所望により水素添加を行なう方法によっても得ることができる。ここで、水素添加は、プロトン性極性基導入前の重合体に対して行なってもよい。
また、本発明で使用するプロトン性極性基を有する環状オレフィン系樹脂は、プロトン性極性基を有する環状オレフィン系樹脂に、更にプロトン性極性基を導入する方法によって得てもよい。
【0032】
<第一酸発生剤>
第一酸発生剤は、放射線が照射されると分解してカルボン酸を生成する化合物である。そして、第一酸発生剤を含む本発明のポジ型感放射線性樹脂組成物を用いて形成した塗膜は、放射線を照射されると、放射線照射部のアルカリ溶解性が増加する。
【0033】
ここで、放射線としては、特に限定されることなく、例えば、可視光線;紫外線;X線;g線、h線、i線等の単一波長の光線;KrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光等のレーザー光線;電子線等の粒子線;などが挙げられる。
【0034】
そして、第一酸発生剤としては、特に限定されることなく、例えば、キノンジアジド化合物等のアジド化合物を用いることができる。
また、キノンジアジド化合物としては、例えば、キノンジアジドスルホン酸ハライドとフェノール性水酸基を有する化合物とのエステル化合物を用いることができる。ここで、キノンジアジドスルホン酸ハライドの具体例としては、1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸クロライド、1,2-ナフトキノンジアジド-4-スルホン酸クロライド、1,2-ベンゾキノンジアジド-5-スルホン酸クロライド等が挙げられる。また、フェノール性水酸基を有する化合物の具体例としては、1,1,3-トリス(2,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-3-フェニルプロパン、4,4’-[1-[4-[1-[4-ヒドロキシフェニル]-1-メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール、2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、トリス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)エタン、1,1,2,2-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、ノボラック樹脂のオリゴマー、フェノール性水酸基を1つ以上有する化合物とジシクロペンタジエンとを共重合して得られるオリゴマー等が挙げられる。
中でも、第一酸発生剤としては、1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸クロライドと4,4’-[1-[4-[1-[4-ヒドロキシフェニル]-1-メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノールとのエステル化合物が好ましい。
なお、第一酸発生剤は、一種単独で、或いは、2種以上を混合して用いることができる。
【0035】
ここで、ポジ型感放射線性樹脂組成物中の第一酸発生剤の量は、アルカリ可溶性樹脂100質量部当たり、10質量部以上であることが好ましく、20質量部以上であることがより好ましく、60質量部以下であることが好ましく、50質量部以下であることがより好ましい。第一酸発生剤の量が上記下限値以上であれば、ポジ型感放射線性樹脂組成物を用いて形成した塗膜を現像した際に、残膜率を十分に確保することができる。また、第一酸発生剤の量が上記上限値以下であれば、ポジ型感放射線性樹脂組成物を用いて形成した塗膜をパターニングした際に、解像度の低下や残渣の発生が起こるのを抑制することができる。
【0036】
<第二酸発生剤>
第二酸発生剤は、放射線が照射されると分解してスルホン酸を生成する化合物である。そして、本発明のポジ型感放射線性樹脂組成物は、上述した第一酸発生剤に加えて第二酸発生剤を含有しているので、ポジ型感放射線性樹脂組成物を用いて形成したパターニングされていてもよい塗膜に対して放射線の照射および熱処理を施して樹脂膜を調製する際に熱処理を低温(例えば150℃以下、好ましくは130℃以下)で行った場合であっても、耐薬品性に優れる樹脂膜を形成することができる。
【0037】
ここで、放射線としては、特に限定されることなく、例えば、可視光線;紫外線;X線;g線、h線、i線等の単一波長の光線;KrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光等のレーザー光線;電子線等の粒子線;などが挙げられる。
【0038】
そして、第二酸発生剤としては、特に限定されることなく、例えば、ジフェニル-4-メチルフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニル-2,4,6-トリメチルフェニルスルホニウム-p-トルエンスルホネート、ジフェニル(4-メトキシフェニル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリス(4-メチルフェニル)スルホニウムノナフルオロブタンスルホネート、ビス(シクロへキシルスルホニル)ジアゾメタン、2-メチル-2-[(4-メチルフェニル)スルホニル]-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-1-プロパノン、ビス(4-メチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシルイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシルイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-5,6-オキシ-2,3-ジカルボキシルイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシルイミド、N-(カンファースルホニルオキシ)スクシンイミド、1,8-ナフタルイミジルトリフレート(みどり化学製、製品名「NAI-105」)、4-メチルフェニルスルフォニルオキシイミノ-α-(4-メトキシフェニル)アセトニトリル(みどり化学製、製品名「PAI-101」)、トリフルオロメチルスルフォニルオキシイミノ-α-(4-メトキシフェニル)アセトニトリル(みどり化学製、製品名「PAI-105」)、9-カンファースルフォニルオキシイミノ-α-4-メトキシフェニルアセトニトリル(みどり化学製、製品名「PAI-106」)、1,8-ナフタルイミジルブタンスルホネート(みどり化学製、製品名「NAI-1004」)、1,8-ナフタルイミジルトシレート(みどり化学製、製品名「NAI-101」)1,8-ナフタルイミジルノナフルオロブタンスルホネート(みどり化学製、製品名「NAI-109」)、1,8-ナフタルイミジル9-カンファースルホネート(みどり化学製、製品名「NAI-106」)、N-スルホニルオキシイミド誘導体(サンアプロ社製、製品名「NT-1TF」)などを用いることができる。
中でも、溶剤への溶解性、保存安定性および耐薬品性等の観点から、第二酸発生剤としては、1,8-ナフタルイミジルトリフレートおよびN-スルホニルオキシイミド誘導体が好ましい。
なお、第二酸発生剤は、一種単独で、或いは、2種以上を混合して用いることができる。
【0039】
ここで、ポジ型感放射線性樹脂組成物中の第二酸発生剤の量は、アルカリ可溶性樹脂100質量部当たり、0.1質量部以上であることが好ましく、0.3質量部以上であることがより好ましく、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましい。第二酸発生剤の量が上記下限値以上であれば、ポジ型感放射線性樹脂組成物を用いて形成した樹脂膜について、耐薬品性を十分に高めることができる。また、第二酸発生剤の量が上記上限値以下であれば、樹脂膜の吸水性が高まるのを抑制し、絶縁信頼性を確保することができる。
また、ポジ型感放射線性樹脂組成物中の第二酸発生剤の量は、通常、第一酸発生剤の量よりも少なく、第一酸発生剤の量の0.01倍以上0.03倍以下であることが好ましい。第二酸発生剤の量が上記下限値以上であれば、ポジ型感放射線性樹脂組成物を用いて形成した樹脂膜について、耐薬品性を十分に高めることができる。また、第二酸発生剤の量が上記上限値以下であれば、樹脂膜の吸水性が高まるのを抑制し、絶縁信頼性を確保することができる。
【0040】
<フッ素含有フェノール性化合物>
フッ素含有フェノール性化合物は、1分子中に、1つ以上のフッ素原子と、ベンゼン環にヒドロキシル基が直接結合した構造とを有する化合物である。なお、フッ素原子は、ベンゼン環に直接結合していてもよいし、間接的に結合していてもよい。そして、本発明のポジ型感放射線性樹脂組成物は、上述した第一酸発生剤に加えてフッ素含有フェノール性化合物を含有しているので、現像密着性に優れるパターンを形成することができる。
【0041】
ここで、フッ素含有フェノール性化合物としては、特に限定されることなく、例えば、2-フルオロフェノール、3-フルオロフェノール、4-フルオロフェノール、3,4,5-トリフルオロフェノール等のフッ素原子がベンゼン環に直接結合しているフッ素含有フェノール性化合物;並びに、2-トリフルオロメチルフェノール、3-トリフルオロメチルフェノール、2-トリフルオロメトキシフェノール、3-トリフルオロメトキシフェノール、5,5’-[2,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチリデン]ビス[2-ヒドロキシ-1,3-ベンゼンジメタノール](本州化学工業製、製品名「TML-BPAF-MF」)等のフッ素原子がベンゼン環に間接的に結合しているフッ素含有フェノール性化合物;などを用いることができる。
中でも、現像密着性を更に向上させる観点から、フッ素含有フェノール性化合物としては、1分子中にフッ素原子を2つ以上有するフッ素含有フェノール性化合物が好ましく、2つ以上のフッ素原子がベンゼン環に間接的に結合しているフッ素含有フェノール性化合物がより好ましく、5,5’-[2,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチリデン]ビス[2-ヒドロキシ-1,3-ベンゼンジメタノール]が更に好ましい。
なお、フッ素含有フェノール性化合物は、一種単独で、或いは、2種以上を混合して用いることができる。
【0042】
そして、ポジ型感放射線性樹脂組成物中のフッ素含有フェノール性化合物の量は、アルカリ可溶性樹脂100質量部当たり、1質量部以上10質量部以下であることが好ましい。フッ素含有フェノール性化合物の量が上記下限値以上であれば、ポジ型感放射線性樹脂組成物を用いて形成したパターンについて、現像密着性を十分に高めることができる。また、フッ素含有フェノール性化合物の量が上記上限値以下であれば、ポジ型感放射線性樹脂組成物を用いて形成した塗膜を現像した際に、残膜率を十分に確保することができる。
【0043】
<多官能エポキシ化合物>
本発明のポジ型感放射線性樹脂組成物が任意に含有し得る多官能エポキシ化合物は、1分子中にエポキシ基を2個以上有する化合物であれば特に限定されない。そして、本発明のポジ型感放射線性樹脂組成物に多官能エポキシ化合物を含有させれば、塗膜の可とう性を向上させることができると共に、多官能エポキシ化合物を介した架橋反応により樹脂膜の耐薬品性を更に向上させることができる。
【0044】
ここで、多官能エポキシ化合物として使用し得る、エポキシ基を2個以上有する化合物としては、例えば、トリス(2,3-エポキシプロピル)イソシアヌレート、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,2-エポキシ-4-(エポキシエチル)シクロヘキサン、グリセロールトリグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、2,6-ジグリシジルフェニルグリシジルエーテル、1,1,3-トリス[p-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]プロパン、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジルエステル、4,4’-メチレンビス(N,N-ジグリシジルアニリン)、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、および、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。また、多官能エポキシ化合物の市販品としては、例えば、エポリードGT401、エポリードGT403、エポリードGT301、エポリードGT302、エポリードPB3600、エポリードPB4700、セロキサイド2021、セロキサイド3000(以上、ダイセル社製);jER1001、jER1002、jER1003、jER1004、jER1007、jER1009、jER1010、jER828、jER871、jER872、jER180S75、jER807、jER152、jER154(以上、三菱化学社製);EPPN201、EPPN202、EOCN-102、EOCN-103S、EOCN-104S、EOCN-1020、EOCN-1025、EOCN-1027(以上、日本化薬社製);エピクロン200、エピクロン400(以上、DIC社製);デナコールEX-611、デナコールEX-612、デナコールEX-614、デナコールEX-622、デナコールEX-411、デナコールEX-512、デナコールEX-522、デナコールEX-421、デナコールEX-313、デナコールEX-314、デナコールEX-321(以上、ナガセケムテックス社製);などが挙げられる。
中でも、樹脂膜の耐薬品性を良好に向上させる観点から、多官能エポキシ化合物は、エポリードGT401(物質名:エポキシ化ブタンテトラカルボン酸テトラキス(3-シクロヘキセニルメチル)修飾ε-カプロラクトン)などの脂環式構造を有する多官能エポキシ化合物、および、エポリードPB4700などの末端Hのエポキシ化ポリブタジエンからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、エポリードGT401などの脂環式構造を有する多官能エポキシ化合物、および、エポリードPB4700などの主鎖中にグリシジルエーテル構造を有する末端Hのエポキシ化ポリブタジエンからなる群より選択される少なくとも1種を含むことがより好ましく、少なくともエポキシ化ブタンテトラカルボン酸テトラキス(3-シクロヘキセニルメチル)修飾ε-カプロラクトンを含むことが更に好ましい。
なお、多官能エポキシ化合物は、一種単独で、或いは、2種以上を混合して用いることができる。
【0045】
そして、ポジ型感放射線性樹脂組成物中の多官能エポキシ化合物の量は、アルカリ可溶性樹脂100質量部当たり、50質量部以上90質量部以下であることが好ましく、70質量部以上90質量部以下であることがより好ましい。多官能エポキシ化合物の量が上記下限値以上であれば、ポジ型感放射線性樹脂組成物を用いて形成した樹脂膜の耐薬品性を十分に高めることができる。また、多官能エポキシ化合物の量が上記上限値以下であれば、ポジ型感放射線性樹脂組成物を用いて形成した塗膜を現像した際に、残膜率を十分に確保することができる。
【0046】
<増感剤>
本発明のポジ型感放射線性樹脂組成物が任意に含有し得る増感剤としては、照射された放射線のエネルギーを他の物質に渡すことができる物質であれば特に限定されることなく、p-トルキノン、チオキサントン、1-フェニル-1,2-プロパンジオン、アントラセン構造を有する化合物などの任意の増感剤を使用し得る。
なお、増感剤は、一種単独で、或いは、2種以上を混合して用いることができる。
【0047】
中でも、放射線分解率および増感作用が高いという観点から、増感剤としては、アントラセン構造を有する化合物が好ましく、下記一般式(I)で表される化合物がより好ましい。
【化1】
〔式(I)中、Rは置換基を有していてもよい炭素数10以下のアルキル基を示す。〕
【0048】
ここで、上記式(I)のRは、置換基を有していてもよい炭素数2以上8以下のアルキル基であることが好ましく、置換基を有していてもよい炭素数3以上8以下のアルキル基であることがより好ましい。そして、Rのアルキル基は、直鎖アルキル基であることが好ましい。
また、Rのアルキル基が有し得る置換基としては、特に限定されることなく、例えば、カルボニル基、アルコキシ基が挙げられ、中でもカルボニル基が好ましい。
【0049】
そして、上記一般式(I)で表される化合物としては、例えば、9,10-ジブトキシアントラセン(川崎化成社製、製品名「UVS-1331」)、9,10-ジエトキシアントラセン(川崎化成社製、製品名「UVS-1101」)、9,10-ビス(オクタノイルオキシ)アントラセン(川崎化成社製、製品名「UVS-581」)等が挙げられる。
【0050】
なお、ポジ型感放射線性樹脂組成物中の増感剤の量は、アルカリ可溶性樹脂100質量部当たり、0.5質量部以上3質量部以下であることが好ましい。増感剤の量が上記下限値以上であれば、ポジ型感放射線性樹脂組成物を用いて形成した樹脂膜の耐薬品性を十分に高めることができる。また、多官能エポキシ化合物の量が上記上限値以下であれば、樹脂膜の透明性の低下および吸水性の増加を抑制することができる。
【0051】
<添加剤>
本発明のポジ型感放射線性樹脂組成物が任意に含有し得る添加剤としては、シランカップリング剤、酸化防止剤、界面活性剤等が挙げられる。
ここで、シランカップリング剤は、本発明のポジ型感放射線性樹脂組成物を用いて得られる塗膜または樹脂膜と、塗膜または樹脂膜が形成された基材との間の密着性を高めるように機能する。そして、シランカップリング剤としては、特に限定されることなく、公知のものを用いることができる(例えば、特開2015-94910号参照)。
また、酸化防止剤は、本発明のポジ型感放射線性樹脂組成物を用いて得られる塗膜または樹脂膜の耐光性、耐熱性を向上させることができる。酸化防止剤としては、特に限定されることなく、公知のフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、および、ラクトン系酸化防止剤等を用いることができる(例えば、国際公開第2015/033901号参照)。
更に、界面活性剤は、本発明のポジ型感放射線性樹脂組成物の塗工性を向上させることができる。界面活性剤としては、特に限定されることなく、公知のシリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、ポリオキシアルキレン系界面活性剤、メタクリル酸共重合体系界面活性剤、および、アクリル酸共重合体系界面活性剤などを用いることができる(例えば、国際公開第2015/033901号参照)。
なお、これらの添加剤は、一種単独で、或いは、2種以上を混合して用いることができる。また、ポジ型感放射線性樹脂組成物に配合する添加剤の量は、任意に調整し得る。
【0052】
<溶剤>
本発明のポジ型感放射線性樹脂組成物が任意に含有し得る溶剤としては、特に限定されることなく、樹脂組成物の溶剤として公知の溶剤を用いることができる。そのような溶剤としては、例えば、直鎖のケトン類、アルコール類、アルコールエーテル類、エステル類、セロソルブエステル類、プロピレングリコール類、ジエチレングリコールエチルメチルエーテルなどのジエチレングリコール類、飽和γ-ラクトン類、ハロゲン化炭化水素類、芳香族炭化水素類、並びに、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドおよびN-メチルアセトアミドなどの極性溶媒などが挙げられる(例えば、国際公開第2015/033901号参照)。
なお、これらの溶剤は、一種単独で、或いは、2種以上を混合して用いることができる。
そして、ポジ型感放射線性樹脂組成物中の溶剤の量は、特に限定されることなく、アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは50質量部以上であり、好ましくは10000質量部以下、より好ましくは5000質量部以下、さらに好ましくは1000質量部以下である。
【0053】
<ポジ型感放射線性樹脂組成物の製造方法>
本発明のポジ型感放射線性樹脂組成物は、上述した成分を既知の方法により混合し、任意にろ過することで、調製することができる。ここで、混合には、スターラー、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、顔料分散機、らい潰機、超音波分散機、ホモジナイザー、プラネタリーミキサー、フィルミックスなどの既知の混合機を用いることができる。また、混合物のろ過には、フィルター等のろ材を用いた一般的なろ過方法を採用することができる。
【0054】
<塗膜および樹脂膜の形成>
本発明のポジ型感放射線性樹脂組成物を用いた樹脂膜は、特に限定されることなく、例えば、樹脂膜を形成する基板上に本発明のポジ型感放射線性樹脂組成物を使用して塗膜を設けた後、塗膜に放射線を照射し、更に放射線照射後の塗膜を加熱することにより、形成することができる。なお、基板上に設ける塗膜は、パターニングされていてもよい。
また、樹脂膜を形成する基板上への塗膜の配設は、特に限定されることなく、塗布法やフィルム積層法等の方法を用いて基板上に塗膜を形成した後、任意に塗膜をパターニングすることにより行うことができる。
【0055】
[塗膜の形成]
ここで、塗布法による塗膜の形成は、ポジ型感放射線性樹脂組成物を基板上に塗布した後、加熱乾燥(プリベーク)することにより行うことができる。なお、ポジ型感放射線性樹脂組成物を塗布する方法としては、例えば、スプレーコート法、スピンコート法、ロールコート法、ダイコート法、ドクターブレード法、回転塗布法、バー塗布法、スクリーン印刷法、インクジェット法等の各種の方法を採用することができる。加熱乾燥条件は、ポジ型感放射線性樹脂組成物に含まれている成分の種類や配合割合に応じて異なるが、加熱温度は、通常、30~150℃、好ましくは60~120℃であり、加熱時間は、通常、0.5~90分間、好ましくは1~60分間、より好ましくは1~30分間である。
【0056】
また、フィルム積層法による塗膜の形成は、ポジ型感放射線性樹脂組成物を樹脂フィルムや金属フィルム等のBステージフィルム形成用基材上に塗布し、加熱乾燥(プリベーク)することによりBステージフィルムを得た後、次いで、このBステージフィルムを基板上に積層することにより行うことができる。なお、Bステージフィルム形成用基材上へのポジ型感放射線性樹脂組成物の塗布およびポジ型感放射線性樹脂組成物の加熱乾燥は、上述した塗布法におけるポジ型感放射線性樹脂組成物の塗布および加熱乾燥と同様にして行うことができる。また、積層は、加圧ラミネータ、プレス、真空ラミネータ、真空プレス、ロールラミネータ等の圧着機を用いて行なうことができる。
【0057】
基板上に設けた塗膜のパターニングは、例えば、パターニング前の塗膜に放射線を照射して潜像パターンを形成した後、潜像パターンを有する塗膜に現像液を接触させてパターンを顕在化させる方法などの公知のパターニング方法を用いて行うことができる。
【0058】
ここで、放射線としては、第一酸発生剤を分解させてカルボン酸を生成させることにより放射線照射部の現像液に対する溶解性を向上させることができるものであれば特に限定されることなく、任意の放射線を用いることができる。具体的には、例えば、可視光線;紫外線;X線;g線、h線、i線等の単一波長の光線;KrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光等のレーザー光線;電子線等の粒子線;などを用いることができる。なお、これらの放射線は、一種単独で、或いは、2種以上を混合して用いることができる。
また、放射線をパターン状に照射して潜像パターンを形成する方法としては、縮小投影露光装置を使用し、所望のマスクパターンを介して放射線を照射する方法などの公知の方法を用いることができる。
そして、放射線の照射条件は、使用する放射線に応じて適宜選択されるが、例えば、放射線の波長は365nm以上436nm以下の範囲内とすることができ、また、照射量は500mJ/cm以下とすることができる。
【0059】
また、現像液としては、国際公開第2015/141719号に記載のアルカリ性化合物の水性溶液等の既知のアルカリ現像液を用いることができる。
そして、塗膜に現像液を接触させる方法および条件としては、特に限定されることなく、例えば、国際公開第2015/141719号に記載の方法および条件を採用することができる。
【0060】
なお、上述したようにしてパターン形成された塗膜は、必要に応じて、現像残渣を除去するために、リンス液でリンスすることができる。リンス処理の後、残存しているリンス液を圧縮空気や圧縮窒素により更に除去してもよい。
【0061】
[樹脂膜の形成]
樹脂膜は、塗膜に放射線を照射した後、塗膜を加熱(ポストベーク)して硬化させることにより形成することができる。
【0062】
ここで、樹脂膜を形成する際の塗膜への放射線の照射は、通常、塗膜の全面に対して行う。
そして、放射線としては、第二酸発生剤を分解させてスルホン酸を生成させることにより、塗膜を低温で加熱した場合であっても樹脂膜の耐薬品性を向上させることができるものであれば特に限定されることなく、任意の放射線を用いることができる。具体的には、例えば、可視光線;紫外線;X線;g線、h線、i線等の単一波長の光線;KrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光等のレーザー光線;電子線等の粒子線;などを用いることができる。なお、これらの放射線は、一種単独で、或いは、2種以上を混合して用いることができる。
そして、放射線の照射条件は、使用する放射線に応じて適宜選択されるが、例えば、放射線の波長は365nm以上436nm以下の範囲内とすることができ、また、照射量は750mJ/cm以上とすることができる。
【0063】
塗膜の加熱は、特に限定されることなく、例えば、ホットプレート、オーブン等を用いて行なうことができる。なお、加熱は、必要に応じて不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。不活性ガスとしては、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、キセノン、クリプトン等が挙げられる。これらの中でも窒素とアルゴンが好ましく、特に窒素が好ましい。
【0064】
ここで、塗膜を加熱する際の温度は、例えば、150℃以下とすることができ、100℃以上130℃以下とすることが好ましい。本発明のポジ型感放射線性樹脂組成物を使用すれば、塗膜を加熱する際の温度が上記上限値以下であっても、耐薬品性に優れる樹脂膜を得ることができる。また、塗膜を加熱する際の温度を上記下限値以上にすれば、樹脂膜の耐薬品性を十分に向上させることができる。
なお、塗膜を加熱する時間は、塗膜の面積や厚さ、使用機器等により適宜選択することができ、例えば10~60分間とすることができる。
【実施例
【0065】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
実施例および比較例において、塗膜の現像密着性および樹脂膜の耐薬品性は、それぞれ以下の方法を使用して評価した。
【0066】
<現像密着性>
調製したポジ型感放射線性樹脂組成物をシリコンウエハ基板上にスピンコート法により塗布し、ホットプレートを用いて110℃で2分間加熱乾燥(プリベーク)して、膜厚2.7μmの塗膜を形成した。次いで、塗膜をパターニングするために、10μmラインアンドスペースパターンを形成可能なマスクを用いて、照射量180mJ/cmで放射線(g,h,i線、波長:365~436nm)を塗膜に照射し、潜像パターンを形成した。
次いで、潜像パターンを形成した塗膜に対し、濃度2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を現像液として用いて、25℃で30秒現像処理を行い、超純水で20秒間リンスをすることにより、10μmラインアンドスペースを有する塗膜(パターン形成された塗膜)とシリコンウエハとからなる積層体を得た。
そして、得られた積層体のラインおよびスペースの形成部分を、光学顕微鏡を用いて観察し、パターンが剥がれていない場合を「○(良好)」、剥がれている場合を「×(不良)」として現像密着性を評価した。
<耐薬品性>
調製したポジ型感放射線性樹脂組成物をシリコンウエハ基板上にスピンコート法により塗布し、ホットプレートを用いて110℃で2分間加熱乾燥(プリベーク)して、膜厚2.7μmの塗膜を形成した。
次いで、形成した塗膜に対し、濃度2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を現像液として用いて、25℃で30秒現像処理を行い、超純水で20秒間リンスを行った。
その後、リンス後の塗膜に対し、照射量1000mJ/cmで放射線(g,h,i線、波長:365~436nm)を照射し、次いでオーブンを用いて、大気雰囲気下、130℃で20分間加熱(ポストベーク)することで、樹脂膜とシリコンウエハ基板とからなる積層体を得た。
次に、樹脂膜の耐薬品性を評価するために、得られた積層体を、恒温槽にて25℃または60℃に保持したレジスト剥離液(製品名「ST106」;モノエタノールアミン(MEA)/ジメチルスルホキシド(DMSO)=7/3(質量比)の混合液)200mLに5分間浸漬した。そして、浸漬前後での樹脂膜の膜厚を光干渉式膜厚測定装置(ラムダエース)にて測定し、樹脂膜の膜厚変化率(=(浸漬後の樹脂膜の膜厚/浸漬前の樹脂膜の膜厚)×100%)を算出した。各浸漬温度(25℃,60℃)について、樹脂膜の膜厚変化率が絶対値で5%以下の場合を「○(良好)」、5%超10%以下の場合を「△(許容可)」、10%超の場合を「×(不良)」とした。
【0067】
(合成例1)
<アルカリ可溶性樹脂の調製>
N-置換イミド基を有する環状オレフィンとしてのN-フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド(NBPI)40モル%と、プロトン性極性基を有する環状オレフィンとしての4-ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-9-エン(TCDC)60モル%とからなる単量体混合物100部、1,5-ヘキサジエン2.8部、(1,3-ジメシチルイミダゾリン-2-イリデン)(トリシクロへキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド(Org.Lett.,第1巻,953頁,1999年に記載された方法で合成)0.02部、および、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル200部を窒素置換したガラス製耐圧反応器に充填し、撹拌しながら80℃にて4時間反応させて重合反応液を得た。
得られた重合反応液をオートクレーブに入れ、150℃、水素圧4MPaの条件にて5時間撹拌して水素化反応を実施し、プロトン性極性基を有する環状オレフィン系樹脂としての水添重合体を含む重合体溶液を得た。得られた水添重合体の重合転化率は99.9%、ポリスチレン換算重量平均分子量は5550、数平均分子量は3630、分子量分布は1.53、水素転化率は99.9%であった。また、得られた重合体溶液の固形分濃度は32.4%であった。
【0068】
(実施例1)
合成例1で得られたプロトン性極性基を有する環状オレフィン系樹脂100部、第一酸発生剤としての4,4’-[1-[4-[1-[4-ヒドロキシフェニル]-1-メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノールと6-ジアゾ-5,6-ジヒドロ-5-オキソ-1-ナフタレンスルホン酸クロライド(1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸クロライド)とのエステル体(美源商事社製、製品名「TPA-525」、2.5モル体)36.3部、第二酸発生剤としての1,8-ナフタルイミジルトリフレート(みどり化学製、製品名「NAI-105」)0.5部、増感剤としての9,10-ビス(オクタノイルオキシ)アントラセン(川崎化成社製、製品名「UVS-581」)1部、多官能エポキシ化合物としてのエポキシ化ブタンテトラカルボン酸テトラキス(3-シクロヘキセニルメチル)修飾ε-カプロラクトン(ダイセル社製、製品名「エポリードGT401」)60部および末端Hのエポキシ化ポリブタジエン(ダイセル社製、製品名「エポリードPB4700」)20部、フッ素含有フェノール性化合物としての5,5’-[2,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチリデン]ビス[2-ヒドロキシ-1,3-ベンゼンジメタノール](本州化学工業製、製品名「TML-BPAF-MF」)3部、シランカップリング剤としてのグリシドキシプロピルトリメトキシシラン(XIAMETER社製、製品名「OFS6040」)2部および3-(フェニルアミノ)プロピルトリメトキシシラン(信越化学社製、製品名「KBM-573」)3部、酸化防止剤としてのペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート(BASF社製、製品名「Irganox1010」)2部、界面活性剤としてのオルガノシロキサンポリマー(信越化学社製、製品名「KP341」)300ppm、並びに、溶剤としてのジエチレングリコールエチルメチルエーテル(東邦化学社製、製品名「EDM」)100部を混合し、溶解させた後、孔径0.45μmのポリテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過して、ポジ型感放射線性樹脂組成物を調製した。
そして、得られたポジ型感放射線性樹脂組成物を用いて塗膜の現像密着性および樹脂膜の耐薬品性を評価した。結果を表1に示す。
【0069】
(実施例2)
増感剤としてUVS-581に替えて9,10-ジブトキシアントラセン(川崎化成社製、製品名「UVS-1331」)1部を使用し、多官能エポキシ化合物としてのエポリードGT401の量を50部に変更した以外は実施例1と同様にして、ポジ型感放射線性樹脂組成物を調製した。
そして、得られたポジ型感放射線性樹脂組成物を用いて塗膜の現像密着性および樹脂膜の耐薬品性を評価した。結果を表1に示す。
【0070】
(実施例3)
多官能エポキシ化合物としてエポリードGT401およびエポリードPB4700に替えてエポリードGT401を80部のみ使用した以外は実施例1と同様にして、ポジ型感放射線性樹脂組成物を調製した。
そして、得られたポジ型感放射線性樹脂組成物を用いて塗膜の現像密着性および樹脂膜の耐薬品性を評価した。結果を表1に示す。
【0071】
(実施例4)
第一酸発生剤としてTPA-525に替えて4,4’-[1-[4-[1-[4-ヒドロキシフェニル]-1-メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノールと6-ジアゾ-5,6-ジヒドロ-5-オキソ-1-ナフタレンスルホン酸クロライド(1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸クロライド)とのエステル体(2.0モル体)(美源商事社製、製品名「TPA-520」)36.3部を使用した以外は実施例1と同様にして、ポジ型感放射線性樹脂組成物を調製した。
そして、得られたポジ型感放射線性樹脂組成物を用いて塗膜の現像密着性および樹脂膜の耐薬品性を評価した。結果を表1に示す。
【0072】
(実施例5)
第二酸発生剤としてのNAI-105の量を2部に変更した以外は実施例1と同様にして、ポジ型感放射線性樹脂組成物を調製した。
そして、得られたポジ型感放射線性樹脂組成物を用いて塗膜の現像密着性および樹脂膜の耐薬品性を評価した。結果を表1に示す。
【0073】
(実施例6)
増感剤を配合せず、多官能エポキシ化合物としてエポリードGT401およびエポリードPB4700に替えてエポリードGT401を50部のみ使用し、シランカップリング剤としてOFS6040およびKBM-573に替えてOFS6040を1.5部のみ使用し、第二酸発生剤としてのNAI-105の量を1部に変更し、酸化防止剤としてのIrganox1010の量を1.5部に変更した以外は実施例1と同様にして、ポジ型感放射線性樹脂組成物を調製した。
そして、得られたポジ型感放射線性樹脂組成物を用いて塗膜の現像密着性および樹脂膜の耐薬品性を評価した。結果を表1に示す。
【0074】
(実施例7~9)
増感剤としてUVS-581に替えてp-トルキノン1部(実施例7)、チオキサントン1部(実施例8)および1-フェニル-1,2-プロパンジオン1部(実施例9)をそれぞれ使用した以外は実施例1と同様にして、ポジ型感放射線性樹脂組成物を調製した。
そして、得られたポジ型感放射線性樹脂組成物を用いて塗膜の現像密着性および樹脂膜の耐薬品性を評価した。結果を表1に示す。
【0075】
(実施例10)
第二酸発生剤としてNAI-105に替えてN-スルホニルオキシイミド誘導体(サンアプロ社製、製品名「NT-1TF」)0.5部を使用した以外は実施例9と同様にして、ポジ型感放射線性樹脂組成物を調製した。
そして、得られたポジ型感放射線性樹脂組成物を用いて塗膜の現像密着性および樹脂膜の耐薬品性を評価した。結果を表1に示す。
【0076】
(比較例1)
第二酸発生剤を配合しなかった以外は実施例6と同様にして、ポジ型感放射線性樹脂組成物を調製した。
そして、得られたポジ型感放射線性樹脂組成物を用いて塗膜の現像密着性および樹脂膜の耐薬品性を評価した。結果を表1に示す。
【0077】
(比較例2)
第一酸発生剤を配合せず、第二酸発生剤としてのNAI-105の量を0.5部に変更した以外は実施例6と同様にして、ポジ型感放射線性樹脂組成物を調製した。
そして、得られたポジ型感放射線性樹脂組成物を用いて塗膜の現像密着性および樹脂膜の耐薬品性を評価した。結果を表1に示す。
【0078】
(比較例3)
フッ素含有フェノール性化合物を配合しなかった以外は実施例1と同様にして、ポジ型感放射線性樹脂組成物を調製した。
そして、得られたポジ型感放射線性樹脂組成物を用いて塗膜の現像密着性および樹脂膜の耐薬品性を評価した。結果を表1に示す。
【0079】
(比較例4)
フッ素含有フェノール性化合物としてのTML-BPAF-MFに替えてフッ素非含有フェノール性化合物である3,3’,5,5’-テトラキス(メトキシメチル)-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジオール(本州化学工業製、製品名「TMOM-BP-MF」)3部を使用した以外は実施例1と同様にして、ポジ型感放射線性樹脂組成物を調製した。
そして、得られたポジ型感放射線性樹脂組成物を用いて塗膜の現像密着性および樹脂膜の耐薬品性を評価した。結果を表1に示す。
【0080】
(比較例5)
フッ素含有フェノール性化合物としてのTML-BPAF-MFに替えてフッ素含有非環式化合物である2,2’-(2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7-ドデカフルオロオクタン-1,8-ジイル)ビス(オキシラン)3部を使用した以外は実施例1と同様にして、ポジ型感放射線性樹脂組成物を調製した。
そして、得られたポジ型感放射線性樹脂組成物を用いて塗膜の現像密着性および樹脂膜の耐薬品性を評価した。結果を表1に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
表1より、アルカリ可溶性樹脂と、第一酸発生剤と、第二酸発生剤と、フッ素含有フェノール性化合物とを含有するポジ型感放射線性樹脂組成物によれば、現像密着性に優れるパターンを形成することができると共に、耐薬品性に優れる樹脂膜を低温条件下でも形成することができることが分かる。
また、表1より、第二酸発生剤を含有しない比較例1のポジ型感放射線性樹脂組成物では低温条件下で形成した樹脂膜の耐薬品性が低下し、第一酸発生剤を含有しない比較例2のポジ型感放射線性樹脂組成物ではパターンの現像密着性が低下すると共に低温条件下で形成した樹脂膜の耐薬品性が低下し、フッ素含有フェノール性化合物を含有しない比較例3~5のポジ型感放射線性樹脂組成物ではパターンの現像密着性が低下することが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明のポジ型感放射線性樹脂組成物によれば、現像密着性に優れるパターンを形成することができると共に、耐薬品性に優れる樹脂膜を低温条件下でも形成することができる。