(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】偏光フィルム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20221213BHJP
B32B 7/022 20190101ALI20221213BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20221213BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20221213BHJP
B32B 27/22 20060101ALI20221213BHJP
G02B 1/14 20150101ALI20221213BHJP
【FI】
G02B5/30
B32B7/022
B32B7/023
B32B27/00 A
B32B27/00 B
B32B27/22
G02B1/14
(21)【出願番号】P 2019551084
(86)(22)【出願日】2018-10-18
(86)【国際出願番号】 JP2018038889
(87)【国際公開番号】W WO2019087806
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-09-27
(31)【優先権主張番号】P 2017210490
(32)【優先日】2017-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】猪股 貴道
【審査官】森内 正明
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-181548(JP,A)
【文献】特開2016-71347(JP,A)
【文献】特開2016-133612(JP,A)
【文献】特開2017-173754(JP,A)
【文献】特開平8-248404(JP,A)
【文献】特開2010-2733(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 7/022 - 7/023
B32B 27/00
B32B 27/22
G02B 1/10 - 1/18
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光子層と、樹脂層と、接着層と、ハードコート層とをこの順で含み、
前記樹脂層は、厚み1mmのフィルムとして測定された貯蔵弾性率が10MPa以上1000MPa以下である樹脂から形成され、
前記ハードコート層に前記接着層が直に接して
おり、
前記樹脂層の厚みが、1μm以上13μm以下である、偏光フィルム。
【請求項2】
前記偏光子層の厚みが、1μm以上25μm以下である、請求項
1に記載の偏光フィルム。
【請求項3】
前記接着層の厚みが、0μmより大きく5μm以下である、請求項1
又は2に記載の偏光フィルム。
【請求項4】
粘着層を更に含み、前記粘着層は、前記偏光子層の前記樹脂層側とは反対側に設けられ、前記粘着層の厚みは2μm以上25μm以下である、請求項1~
3のいずれか1項に記載の偏光フィルム。
【請求項5】
前記樹脂は、厚み100μmのフィルムとして測定された40℃90%RHでの水蒸気透過率が、5g/(m
2・day)未満である、請求項1~
4のいずれか1項に記載の偏光フィルム。
【請求項6】
前記樹脂が、脂環式構造を有する重合体を含む、請求項1~
5のいずれか1項に記載の偏光フィルム。
【請求項7】
前記脂環式構造を有する重合体が、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体の水素化物、ノルボルネン構造を有する単量体とα-オレフィンとの付加共重合体、及びノルボルネン構造を有する単量体とα-オレフィンとの付加共重合体の水素化物からなる群より選択される1種以上である、請求項
6に記載の偏光フィルム。
【請求項8】
前記脂環式構造を有する重合体が、ブロック共重合体水素化物[E]であり、
前記ブロック共重合体水素化物[E]は、ブロック共重合体[D]の水素化物であり、
前記ブロック共重合体[D]は、重合体ブロック[A]と、重合体ブロック[B]又は重合体ブロック[C]と、からなるブロック共重合体であり、
前記重合体ブロック[A]は、芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位[I]を主成分とする重合体ブロックであり、
前記重合体ブロック[B]は、芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位[I]及び鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位[II]を主成分とする重合体ブロックであり、
前記重合体ブロック[C]は、鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位[II]を主成分とする重合体ブロックである、請求項
6に記載の偏光フィルム。
【請求項9】
前記樹脂が、可塑剤及び/又は軟化剤を更に含む、請求項1~
8のいずれか1項に記載の偏光フィルム。
【請求項10】
前記可塑剤及び/又は軟化剤が、エステル構造を有する化合物及び脂肪族炭化水素重合体からなる群より選択される1種以上である、請求項
9に記載の偏光フィルム。
【請求項11】
前記偏光フィルムから切り出された10cm角の切片を、23℃55%RHの環境下で24時間調湿した後水平面上に載せたとき、前記切片の4つの頂点における前記水平面からの高さのうちの最大値が、30mm以下である、請求項1~
10のいずれか1項に記載の偏光フィルム。
【請求項12】
前記偏光子層が、ポリビニルアルコール樹脂を含む、請求項1~
11のいずれか1項に記載の偏光フィルム。
【請求項13】
偏光フィルムの製造方法であって、
前記偏光フィルムは、偏光子層と、樹脂層と、接着層と、ハードコート層とをこの順で含み、前記樹脂層は、厚み1mmのフィルムとして測定された貯蔵弾性率が10MPa以上1000MPa以下である樹脂から形成され、前記ハードコート層に前記接着層が直に接しており、
前記樹脂層の厚みが、1μm以上13μm以下であり、
前記製造方法は、
仮支持体の面上に、前記ハードコート層を形成する工程、
前記偏光子層と前記樹脂層とを含む積層体を準備する工程、
前記積層体の樹脂層側の面と、前記仮支持体の面上に形成された前記ハードコート層とを、前記接着層を介して貼り合せる工程、及び
前記ハードコート層から、前記仮支持体を剥離する工程
を含む、偏光フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光フィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置などに使用される偏光子には、例えばポリビニルアルコール系重合体のフィルムに二色性物質による染色処理などを施して得られる偏光子のように、温度、湿度、紫外線、機械的な力などの使用環境により劣化しやすい性質を有する偏光子がある。そのため、偏光子を保護するために、偏光子にハードコート層などの保護層を設けることがある(特許文献1、2)。
また、保護層を有する転写箔を用いて、偏光板などの成形品の表面に保護層を転写することが行われている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-130298号公報
【文献】特開2010-009027号公報(対応公報:米国特許出願公開第2011/0043733号明細書)
【文献】国際公開第01/092006号(対応公報:米国特許出願公開第2004/0028910号明細書)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、液晶表示装置の薄型化が益々求められているため、偏光子を含む偏光フィルムも薄型化が求められている。一方で、偏光フィルムを薄型としても、偏光子の劣化が十分に抑制されていることが必要である。しかし、保護層としてハードコート層を有する偏光フィルムは、薄型とすると、著しいカールが発生する場合があり、また偏光子が十分に保護されない場合があった。
また、薄型の液晶表示装置と共に、フレキシブルな液晶表示装置や有機発光ダイオード(OLED)表示装置の開発が進められており、偏光フィルムも、屈曲された後の高い復元性が求められている。
【0005】
このように、著しいカールの発生が抑制され、且つ偏光子が十分に保護され、屈曲後の高い復元性を有する偏光フィルムが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、偏光子層と、樹脂層と、接着層と、ハードコート層とをこの順で含み、前記樹脂層が所定の樹脂から形成され、前記ハードコート層に前記接着層が直に接している偏光フィルムにより上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、下記を提供する。
【0007】
[1] 偏光子層と、樹脂層と、接着層と、ハードコート層とをこの順で含み、
前記樹脂層は、厚み1mmのフィルムとして測定された貯蔵弾性率が10MPa以上1000MPa以下である樹脂から形成され、
前記ハードコート層に前記接着層が直に接している、偏光フィルム。
[2] 前記樹脂層の厚みが、1μm以上13μm以下である、[1]に記載の偏光フィルム。
[3] 前記偏光子層の厚みが、1μm以上25μm以下である、[1]又は[2]に記載の偏光フィルム。
[4] 前記接着層の厚みが、0μmより大きく5μm以下である、[1]~[3]のいずれか1項に記載の偏光フィルム。
[5] 粘着層を更に含み、前記粘着層は、前記偏光子層の前記樹脂層側とは反対側に設けられ、前記粘着層の厚みは2μm以上25μm以下である、[1]~[4]のいずれか1項に記載の偏光フィルム。
[6] 前記樹脂は、厚み100μmのフィルムとして測定された40℃90%RHでの水蒸気透過率が、5g/(m2・day)未満である、[1]~[5]のいずれか1項に記載の偏光フィルム。
[7] 前記樹脂が、脂環式構造を有する重合体を含む、[1]~[6]のいずれか1項に記載の偏光フィルム。
[8] 前記脂環式構造を有する重合体が、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体の水素化物、ノルボルネン構造を有する単量体とα-オレフィンとの付加共重合体、及びノルボルネン構造を有する単量体とα-オレフィンとの付加共重合体の水素化物からなる群より選択される1種以上である、[7]に記載の偏光フィルム。
[9] 前記脂環式構造を有する重合体が、ブロック共重合体水素化物[E]であり、
前記ブロック共重合体水素化物[E]は、ブロック共重合体[D]の水素化物であり、
前記ブロック共重合体[D]は、重合体ブロック[A]と、重合体ブロック[B]又は重合体ブロック[C]と、からなるブロック共重合体であり、
前記重合体ブロック[A]は、芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位[I]を主成分とする重合体ブロックであり、
前記重合体ブロック[B]は、芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位[I]及び鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位[II]を主成分とする重合体ブロックであり、
前記重合体ブロック[C]は、鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位[II]を主成分とする重合体ブロックである、[7]に記載の偏光フィルム。
[10] 前記樹脂が、可塑剤及び/又は軟化剤を更に含む、[1]~[9]のいずれか1項に記載の偏光フィルム。
[11] 前記可塑剤及び/又は軟化剤が、エステル構造を有する化合物及び脂肪族炭化水素重合体からなる群より選択される1種以上である、[10]に記載の偏光フィルム。
[12] 前記偏光フィルムから切り出された10cm角の切片を、23℃55%RHの環境下で24時間調湿した後水平面上に載せたとき、前記切片の4つの頂点における前記水平面からの高さのうちの最大値が、30mm以下である、[1]~[11]のいずれか1項に記載の偏光フィルム。
[13] 前記偏光子層が、ポリビニルアルコール樹脂を含む、[1]~[12]のいずれか1項に記載の偏光フィルム。
[14] 偏光フィルムの製造方法であって、
前記偏光フィルムは、偏光子層と、樹脂層と、接着層と、ハードコート層とをこの順で含み、前記樹脂層は、厚み1mmのフィルムとして測定された貯蔵弾性率が10MPa以上1000MPa以下である樹脂から形成され、前記ハードコート層に前記接着層が直に接しており、
前記製造方法は、
仮支持体の面上に、前記ハードコート層を形成する工程、
前記偏光子層と前記樹脂層とを含む積層体を準備する工程、
前記積層体の樹脂層側の面と、前記仮支持体の面上に形成された前記ハードコート層とを、前記接着層を介して貼り合せる工程、及び
前記ハードコート層から、前記仮支持体を剥離する工程
を含む、偏光フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、著しいカールの発生が抑制され、且つ偏光子が十分に保護され、屈曲後の高い復元性を有する偏光フィルムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る偏光フィルムを模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第2実施形態に係る偏光フィルムを備えた画像表示装置を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の第3実施形態に係る偏光フィルムを備えた画像表示装置を模式的に示す断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態に係る偏光フィルムの製造方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施形態及び例示物に限定されるものでは無く、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。また同一の要素には同一の符号を付して、その説明を省略するときがある。
【0011】
以下の説明において、「長尺状」のフィルムとは、フィルムの幅に対して、5倍以上の長さを有するものをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するものをいう。フィルムの幅に対する長さの割合の上限は、特に限定されないが、例えば100,000倍以下としうる。
【0012】
以下の説明において、接着剤とは、別に断らない限り、狭義の接着剤のみならず、23℃における剪断貯蔵弾性率が1MPa未満である粘着剤をも包含する。ここで、狭義の接着剤とは、エネルギー線照射後、あるいは加熱処理後、23℃における剪断貯蔵弾性率が1MPa~500MPaである接着剤をいう。
【0013】
以下の説明において、「板」、「層」及び「フィルム」とは、別に断らない限り、剛直な部材であってもよく、例えば樹脂製のフィルムのように可撓性を有する部材であってもよい。
【0014】
以下の説明において、あるフィルムの面内レターデーションReは、別に断らない限り、Re=(nx-ny)×dで表される値である。ここで、nxは、前記フィルムの厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表す。nyは、前記フィルムの面内方向であってnxの方向に垂直な方向の屈折率を表す。dは、前記フィルムの厚みを表す。測定波長は、別に断らない限り、550nmである。
【0015】
[1.偏光フィルム]
本発明の一実施形態に係る偏光フィルムは、偏光子層と、樹脂層と、接着層と、ハードコート層とをこの順で含み、ハードコート層に接着層が直に接している。
【0016】
[1.1.樹脂層]
[樹脂層を形成する樹脂]
樹脂層を形成する樹脂は、通常重合体を含む。樹脂層の樹脂に含まれる重合体としては、例えば、ポリエステル、アクリル重合体、脂環式構造を有する重合体が挙げられる。
【0017】
樹脂層を形成する樹脂は、脂環式構造を有する重合体を含むことが好ましい。
脂環式構造を有する重合体は、その重合体の構造単位が脂環式構造を有する重合体である。脂環式構造を有する重合体は、通常、水蒸気透過率が低い。そのため、脂環式構造を有する重合体を含む樹脂で樹脂層を形成することにより、偏光子層まで水蒸気が到達することを抑制して、偏光フィルムの耐湿性を向上させることができる。
【0018】
樹脂層を形成する樹脂は、脂環式構造を有する重合体を1種単独で含んでいてもよく、2種以上の組み合わせで含んでいてもよい。
【0019】
脂環式構造を有する重合体は、主鎖に脂環式構造を有していてもよく、側鎖に脂環式構造を有していてもよく、主鎖及び側鎖の双方に脂環式構造を有していてもよい。中でも、機械的強度及び耐熱性の観点から、少なくとも主鎖に脂環式構造を有する重合体が好ましい。
【0020】
脂環式構造としては、例えば、飽和脂環式炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和脂環式炭化水素(シクロアルケン、シクロアルキン)構造などが挙げられる。中でも、機械強度及び耐熱性の観点から、シクロアルカン構造及びシクロアルケン構造が好ましく、中でもシクロアルカン構造が特に好ましい。
【0021】
脂環式構造を構成する炭素原子数は、一つの脂環式構造あたり、好ましくは4個以上、より好ましくは5個以上であり、好ましくは30個以下、より好ましくは20個以下、特に好ましくは15個以下の範囲である。脂環式構造を構成する炭素原子数をこの範囲にすることにより、脂環式構造を有する重合体を含む樹脂の機械強度、耐熱性及び成形性が高度にバランスされる。
【0022】
脂環式構造を有する重合体において、脂環式構造を有する構造単位の割合は、使用目的に応じて適宜選択しうる。脂環式構造を有する重合体における脂環式構造を有する構造単位の割合は、好ましくは55重量%以上、より好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上であり、100重量%以下としうる。脂環式構造を有する重合体における脂環式構造を有する構造単位の割合がこの範囲にあると、脂環式構造を有する重合体を含む樹脂の透明性及び耐熱性が良好となる。
【0023】
脂環式構造を有する重合体としては、例えば、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、及びこれらの水素化物、並びにビニル芳香族炭化水素重合体の水素化物が挙げられる。これらの中でも、透明性及び成形性が良好であるので、ノルボルネン系重合体、及びビニル芳香族炭化水素重合体の水素化物からなる群より選択される1種以上がより好ましい。
【0024】
ノルボルネン系重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体及びその水素化物;ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体及びその水素化物が挙げられる。また、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する1種類の単量体の開環単独重合体、ノルボルネン構造を有する2種類以上の単量体の開環共重合体、並びに、ノルボルネン構造を有する単量体及びこれと共重合しうる任意の単量体との開環共重合体が挙げられる。さらに、ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する1種類の単量体の付加単独重合体、ノルボルネン構造を有する2種類以上の単量体の付加共重合体、並びに、ノルボルネン構造を有する単量体及びこれと共重合しうる任意の単量体との付加共重合体が挙げられる。これらの中で、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体の水素化物、ノルボルネン構造を有する単量体とα-オレフィンとの付加共重合体、及びノルボルネン構造を有する単量体とα-オレフィンとの付加共重合体の水素化物が好ましく、ノルボルネン構造を有する2種以上の単量体の開環共重合体の水素化物、ノルボルネン構造を有する単量体とα-オレフィンとの付加共重合体、及びノルボルネン構造を有する単量体とα-オレフィンとの付加共重合体の水素化物がより好ましい。
【0025】
ノルボルネン構造を有する単量体としては、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(慣用名:ノルボルネン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ-3,7-ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、7,8-ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ-3-エン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン)、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、及びこれらの化合物の誘導体(例えば、環に置換基を有するもの)などを挙げることができる。ここで、置換基としては、例えばアルキル基、アルキレン基、極性基などを挙げることができる。これらの置換基は、同一または相異なって、複数個が環に結合していてもよい。ノルボルネン構造を有する単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0026】
極性基の種類としては、例えば、ヘテロ原子、またはヘテロ原子を有する原子団などが挙げられる。ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ハロゲン原子などが挙げられる。極性基の具体例としては、カルボキシル基、カルボニルオキシカルボニル基、エポキシ基、ヒドロキシル基、オキシ基、エステル基、シラノール基、シリル基、アミノ基、ニトリル基、スルホン酸基などが挙げられる。
【0027】
ノルボルネン構造を有する単量体と開環共重合可能な単量体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等のモノ環状オレフィン類及びその誘導体;シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエン等の環状共役ジエン及びその誘導体;などが挙げられる。ノルボルネン構造を有する単量体と開環共重合可能な単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0028】
ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体は、例えば、単量体を開環重合触媒の存在下に重合又は共重合することにより製造しうる。
【0029】
ノルボルネン構造を有する単量体とα-オレフィンとの付加共重合体において、α-オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン等の炭素原子数2~20のα-オレフィン及びこれらの誘導体が挙げられる。これらのなかでも、エチレンが好ましい。α-オレフィンは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0030】
ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体は、例えば、単量体を付加重合触媒の存在下に重合又は共重合することにより製造しうる。
【0031】
上述した開環重合体及び付加重合体の水素化物は、例えば、開環重合体及び付加重合体の溶液において、ニッケル、パラジウム等の遷移金属を含む水素化触媒の存在下で、炭素-炭素不飽和結合を、好ましくは90%以上水素化することによって製造しうる。
【0032】
ビニル芳香族炭化水素重合体の水素化物は、芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位[I]を含む重合体の水素化物を意味する。芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位とは、芳香族ビニル化合物を重合して得られる構造を有する繰り返し単位を意味する。ただし、当該水素化物及びその構成単位は、その製造方法によっては限定されない。
【0033】
繰り返し単位[I]に対応する芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン;α-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,4-ジイソプロピルスチレン、4-t-ブチルスチレン、5-t-ブチル-2-メチルスチレン等の、置換基として炭素数1~6のアルキル基を有するスチレン類;4-クロロスチレン、ジクロロスチレン、4-モノフルオロスチレン等の、置換基としてハロゲン原子を有するスチレン類;4-メトキシスチレン等の、置換基として炭素数1~6のアルコキシ基を有するスチレン類;4-フェニルスチレン等の、置換基としてアリール基を有するスチレン類;1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン等のビニルナフタレン類;等が挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、吸湿性を低くできることから、スチレン、置換基として炭素数1~6のアルキル基を有するスチレン類等の、極性基を含有しない芳香族ビニル化合物が好ましく、工業的入手のし易さから、スチレンが特に好ましい。
【0034】
芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位[I]を含む重合体の水素化物は、特定のブロック共重合体水素化物[E]であることが好ましい。ブロック共重合体水素化物[E]は、ブロック共重合体[D]の水素化物である。ブロック共重合体[D]は、重合体ブロック[A]と、重合体ブロック[B]又は重合体ブロック[C]と、からなる重合体ブロックである。重合体ブロック[A]は、芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位[I]を主成分とする重合体ブロックである。重合体ブロック[B]は、芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位[I]及び鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位[II]を主成分とする重合体ブロックである。重合体ブロック[C]は、鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位[II]を主成分とする重合体ブロックである。ここで、「主成分」とは、重合体ブロック中で、50重量%以上である成分をいう。鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位とは、鎖状共役ジエン化合物を重合して得られる構造を有する繰り返し単位を意味する。
【0035】
繰り返し単位[II]に対応する鎖状共役ジエン化合物としては、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン等が挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。鎖状共役ジエン化合物は、直鎖状であっても、分岐状であってもよい。
【0036】
ビニル芳香族炭化水素重合体の水素化物は、ビニル芳香族炭化水素重合体が有する不飽和結合を水素化して得られる物質である。ここで、水素化されるビニル芳香族炭化水素重合体の不飽和結合には、重合体の主鎖及び側鎖の炭素-炭素不飽和結合、並びに、芳香環の炭素-炭素不飽和結合の、いずれも含まれる。
【0037】
水素化物は、例えば、ビニル芳香族炭化水素重合体の溶液において、ニッケル、パラジウム等の遷移金属を含む水素化触媒の存在下で、重合体の不飽和結合を、好ましくは90%以上水素化することによって製造しうる。
【0038】
樹脂層を形成する樹脂に含まれる重合体の重量平均分子量Mwは、好ましくは10,000以上、より好ましくは15,000以上、特に好ましくは20,000以上であり、好ましくは100,000以下、より好ましくは80,000以下、特に好ましくは50,000以下である。重量平均分子量がこのような範囲にあるときに、樹脂層の機械的強度及び成形性が高度にバランスされる。
【0039】
樹脂層を形成する樹脂に含まれる重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.5以上、特に好ましくは1.8以上であり、好ましくは3.5以下、より好ましくは3.0以下、特に好ましくは2.7以下である。ここで、Mnは、数平均分子量を表す。分子量分布を前記範囲の下限値以上にすることにより、重合体の生産性を高め、製造コストを抑制できる。また、上限値以下にすることにより、低分子成分の量が小さくなる。その結果、樹脂層の高温曝露時の緩和を抑制して、樹脂層の安定性を高めることができる。
【0040】
前記の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定しうる。GPCで用いる溶媒としては、シクロヘキサン、トルエン、テトラヒドロフランが挙げられる。GPCを用いた場合、重量平均分子量は、例えばポリイソプレン換算またはポリスチレン換算の相対分子量として測定される。
【0041】
樹脂層を形成する樹脂は、重合体の他に、可塑剤及び/又は軟化剤(可塑剤若しくは軟化剤、又はその両方)を更に含むことが好ましい。樹脂が可塑剤及び/又は軟化剤を更に含むことにより、樹脂層を形成する樹脂の成形性(例えば、伸展性)を良好にできる。
【0042】
可塑剤及び/又は軟化剤としては、例えば、エステル構造を有する化合物及び脂肪族炭化水素重合体が挙げられる。樹脂層を形成する樹脂は、可塑剤及び/又は軟化剤として、エステル構造を有する化合物及び脂肪族炭化水素重合体からなる群より選択される1種以上を含むことが好ましく、脂肪族炭化水素重合体を含むことがより好ましい。
【0043】
エステル構造を有する化合物としては、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、フェニルジフェニルホスフェートなどの、リン酸エステル化合物;シュウ酸エステル、マロン酸エステル、コハク酸エステル、グルタル酸エステル、アジピン酸エステル、ピメリン酸エステル、スベリン酸エステル、アゼライン酸エステル、セバチン酸エステル、ステアリン酸エステルなどの、脂肪族カルボン酸エステル;安息香酸エステル、フタル酸エステル、イソフタル酸エステル、テレフタル酸エステル、トリメリット酸エステル、ピロメリット酸エステルなどの、芳香族カルボン酸エステル化合物;が挙げられる。
【0044】
脂肪族炭化水素重合体としては、例えば、ポリイソブテン、水素化ポリイソブテン、水素化ポリイソプレン、水素化1,3-ペンタジエン系石油樹脂、水素化シクロペンタジエン系石油樹脂、及び水素化スチレン・インデン系石油樹脂が挙げられる。
【0045】
樹脂層を形成する樹脂に含まれる重合体100重量部に対して可塑剤及び軟化剤の合計は、好ましくは5重量部以上、より好ましくは10重量部以上、更に好ましくは20重量部以上であり、好ましくは100重量部以下、より好ましくは70重量部以下、更に好ましくは50重量部以下である。樹脂における可塑剤及び軟化剤の合計の割合を、上記範囲内とすることにより、樹脂の成形性をより良好にすることができる。
【0046】
樹脂層を形成する樹脂は、重合体、可塑剤及び/又は軟化剤以外に、各種添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、及び光安定剤が挙げられる。
【0047】
[樹脂の物性など]
樹脂層を形成する樹脂は、厚み1mmのフィルムとして測定された貯蔵弾性率が通常10MPa以上、好ましくは50MPa以上、より好ましくは150MPa以上、更に好ましくは200MPa以上であり、通常1000MPa以下であり、好ましくは900MPa以下、より好ましくは850MPa以下である。
【0048】
樹脂層が、貯蔵弾性率が上記範囲にある樹脂から形成されていることで、著しいカールの発生が抑制され、且つ偏光子が十分に保護され、屈曲された後の高い復元性を有する偏光フィルムが得られうる。
【0049】
貯蔵弾性率は、市販の動的粘弾性測定装置を用いて測定可能であり、具体的には、実施例中の評価項目の欄に記載したように測定しうる。
【0050】
樹脂層を形成する樹脂は、厚み100μmのフィルムとして測定された40℃90%RHでの水蒸気透過率が、好ましくは5g/(m2・day)未満、より好ましくは4g/(m2・day)以下であり、下限値は、理想的には0g/(m2・day)であり、0.1g/(m2・day)としてもよい。水蒸気透過率が上限値以下であることにより、樹脂層の低透湿性を十分に優れたものとすることができ、偏光子層にまで水蒸気が到達することを抑制して、偏光フィルムの信頼性を優れたものとすることができる。水蒸気透過率は、市販の水蒸気透過度測定装置を用いて測定可能であり、具体的には実施例中の評価項目の欄に記載したように測定しうる。
【0051】
樹脂層の厚みは、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上、更に好ましくは3μm以上であり、好ましくは13μm以下、より好ましくは10μm以下、更に好ましくは7μm以下である。樹脂層の厚みを上記下限値以上とすることにより、偏光フィルムの高温高湿環境下での信頼性をより向上させることができ、偏光フィルムが含む偏光子層をより良好に保護することができる。樹脂層の厚みを上記上限値以下とすることにより、偏光フィルムの厚みを薄くすることができる。
【0052】
樹脂層は、例えば、Tダイを備える押出機から、樹脂層を形成する樹脂を押し出してフィルム上に成形し、必要に応じてフィルムを延伸することにより製造することができる。樹脂層は、延伸されていても、延伸されていなくてもよい。しかし、樹脂層を、延伸を含む工程により製造することにより、容易に薄い偏光フィルムを製造できる。
【0053】
樹脂層は、好ましくは、光学的に、実質的に等方性である。ここで、「光学的に、実質的に等方性を有する」とは、面内レターデーションReが、好ましくは0nm以上5nm以下、より好ましくは0nm以上2nm以下であることを意味する。
【0054】
樹脂層は、その表面にコロナ処理などの処理がされていてもよい。これにより、樹脂層に、例えば接着層との接着性向上などの性能を発揮させることができる。
【0055】
[1.2.偏光子層]
偏光子層としては、直角に交わる二つの直線偏光の一方を透過し、他方を吸収又は反射しうるフィルムを用いうる。偏光子層の具体例を挙げると、ポリビニルアルコール、部分ホルマール化ポリビニルアルコール等のビニルアルコール系重合体を含む、ポリビニルアルコール樹脂のフィルムに、ヨウ素、二色性染料等の二色性物質による染色処理、延伸処理、架橋処理等の適切な処理を適切な順序及び方式で施したものが挙げられる。偏光子層は、ポリビニルアルコール樹脂を含むことが好ましい。
【0056】
[偏光子層の厚み]
偏光子層の厚みは、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上、更に好ましくは4μm以上であり、好ましくは25μm以下、より好ましくは23μm以下である。
【0057】
[1.3.ハードコート層]
ハードコート層は、通常、樹脂層よりも硬度が大きく、樹脂層の表面に傷が生じることを抑制する機能を有する。ハードコート層は、JIS K5600-5-4に規定される鉛筆硬度試験で、「HB」以上の硬度を示すことが好ましい。
【0058】
また、ハードコート層は、スチールウール#0000を荷重0.025MPaをかけてハードコート層に押し当て、ハードコート層の表面を10往復させ観察した際、目視で傷が確認されない程度の耐擦傷性を有することが好ましい。
【0059】
ハードコート層は、防眩機能及び/又は反射低減機能を有していてもよい。
【0060】
ハードコート層を形成するための組成物としては、例えば、活性エネルギー線により硬化しうる、活性エネルギー線硬化型樹脂と微粒子とを含む組成物が挙げられる。活性エネルギー線としては、紫外線、電子線などが挙げられる。
【0061】
活性エネルギー線硬化型樹脂として、硬化後にJIS K5600-5-4に規定される鉛筆硬度試験で、「HB」以上の硬度を示す樹脂が好ましい。
【0062】
活性エネルギー線硬化型樹脂としては、例えば、有機シリコーン系、メラミン系、エポキシ系、アクリル系、ウレタンアクリレート系、多官能アクリレート系の、活性エネルギー線硬化型樹脂が挙げられる。なかでも、接着力が良好であり、強靭性及び生産性に優れる観点から、ウレタンアクリレート系紫外線硬化型樹脂及び/又は多官能アクリレート系紫外線硬化型樹脂が好ましい。
【0063】
微粒子は、ハードコート層の導電率、屈折率などの各種物性を調節しうる。微粒子は、好ましくは屈折率が1.4以上である。
【0064】
微粒子は、有機物から構成される有機微粒子であっても、無機物から構成される無機微粒子であってもよい。微粒子は、好ましくは無機微粒子であり、より好ましくは無機酸化物の微粒子である。微粒子を構成しうる無機酸化物としては、例えば、シリカ、チタニア(酸化チタン)、ジルコニア(酸化ジルコニウム)、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化セリウム、五酸化アンチモン、二酸化チタン、スズをドープした酸化インジウム(ITO)、アンチモンをドープした酸化スズ(ATO)、リンをドープした酸化錫(PTO)、亜鉛をドープした酸化インジウム(IZO)、アルミニウムをドープした酸化亜鉛(AZO)、及びフッ素をドープした酸化スズ(FTO)が挙げられる。
【0065】
微粒子としては、ハードコート層を形成するバインダーとしての樹脂との密着性と、透明性とのバランスに優れ、ハードコート層の屈折率を容易に調整できるので、シリカ微粒子が好ましい。
【0066】
ハードコート層を形成するための組成物は、微粒子を1種単独で含んでいても、2種以上の組み合わせで含んでいてもよい。
【0067】
微粒子の数平均粒子径は、好ましくは1nm以上1000nm以下であり、より好ましくは、1nm以上500nm以下であり、更に好ましくは、1nm以上250nm以下である。微粒子の数平均粒子径が小さいほど、ハードコート層のヘイズを低くすることができ、微粒子と、ハードコート層を形成するバインダーとしての樹脂との密着性を高くすることができる。
【0068】
ヘイズ(%)は、例えば、市販されているヘイズメーター(例えば、日本電色社製「NDH 2000」)等を用いて、JIS K-7136に準拠して測定することができる。
【0069】
ハードコート層を形成するための組成物において、微粒子の含有量は、活性エネルギー線硬化型樹脂100重量部に対して、好ましくは10~80重量部であり、より好ましくは10~50重量部であり、更に好ましくは20~40重量部である。微粒子の含有量が上記範囲であると、ヘイズ値、全光線透過率等の光学特性に優れる。
【0070】
全光線透過率(%)は、例えば、市販されているヘイズメーター(日本電色社製「NDH 2000」)等を用いて、JIS K-7361に準拠して測定することができる。
【0071】
ハードコート層を形成するための組成物は、活性エネルギー線硬化型樹脂を溶解又は分散させるための溶剤を含んでいてもよい。該溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール等のアルコール類;エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジアセトングリコール等のグリコール類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;n-ヘキサン、n-ヘプタン等の脂肪族炭化水素;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;メチルエチルケトオキシム等のオキシム類;及びこれらの2種以上からなる組み合わせ;等が挙げられる。
【0072】
活性エネルギー線硬化型樹脂を紫外線により硬化させる場合、ハードコート層を形成するための組成物は、更に光重合開始剤を含んでいてもよい。光重合開始剤としては、例えば、従前公知の光重合開始剤が挙げられ、具体的には、例えば、ベンゾフェノン、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「ダロキュアー1173」、「イルガキュアー651」、「イルガキュアー184」、「イルガキュアー907」、「イルガキュアー754」などが挙げられる。
【0073】
ハードコート層を形成するための組成物は、上記微粒子及び活性エネルギー線硬化型樹脂以外に、各種添加剤(例、重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、光安定剤、溶剤、消泡剤、レベリング剤)を含んでいてもよい。
【0074】
ハードコート層の厚みは、好ましくは0.5μm以上20μm以下であり、より好ましくは、0.5μm以上10μm以下であり、更に好ましくは、0.5μm以上8μm以下である。
【0075】
[1.4.接着層]
ハードコート層と直に接する接着層を構成するための接着剤としては、ハードコート層と樹脂層とを良好に接着する接着剤を用いることができる。接着剤としては、特に限定されず、例えば、アクリル系接着剤;エポキシ系接着剤;ウレタン系接着剤;ポリエステル系接着剤;ポリビニルアルコール系接着剤;ポリオレフィン系接着剤;変性ポリオレフィン系接着剤;ポリビニルアルキルエーテル系接着剤;ゴム系接着剤、塩化ビニル-酢酸ビニル系接着剤;SEBS(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体)系接着剤、エチレン-スチレン共重合体などのエチレン系接着剤;エチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エチル共重合体などのアクリル酸エステル系接着剤;などが挙げられる。
【0076】
接着層の厚みは、通常0μmより大きく、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上であり、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下である。接着層の厚みが上記範囲にあることで、ハードコート層と樹脂層とを接着層がより強く接着でき、偏光フィルムの屈曲復元性を向上しうると共に、偏光フィルムの厚みを薄くすることができる。
【0077】
[1.5.その他の任意の層]
偏光フィルムは、偏光子層、樹脂層、ハードコート層に直に接している接着層、及びハードコート層以外に、任意の層を含みうる。任意の層としては、例えば、ハードコート層を形成する際に用いる仮支持体、偏光子層の樹脂層側とは反対側に設けられる粘着層、及び光学異方性層が挙げられる。
【0078】
偏光子層の樹脂層側とは反対側に設けられうる粘着層の厚みは、好ましくは2μm以上であり、より好ましくは5μm以上であり、好ましくは25μm以下であり、より好ましくは20μm以下である。
【0079】
光学異方性層は、いずれの位置に設けられていてもよく、例えば、樹脂層と接着層との間に設けられていてもよく、偏光子層の樹脂層側とは反対側に設けられていてもよい。光学異方性層が、偏光子層の樹脂層側とは反対側に設けられ、偏光フィルムが偏光子層の樹脂層側とは反対側に設けられる粘着層を含む場合は、光学異方性層は、好ましくは粘着層と偏光子層との間に設けられる。光学異方性層とは、光学的に異方性を有する層を意味し、例えば、nx、ny、及びnzが互いに同一の値ではない層が挙げられる。ここで、nzは、層の厚み方向の屈折率を表す。光学異方性層としては、具体的には、例えば、1/4λフィルム、一軸性視野角補償フィルム、二軸性視野角補償フィルム、傾斜配向フィルムが挙げられ、用途によりいずれかを1枚で、もしくは複数枚を組み合わせて使用してもよい。
【0080】
仮支持体については、後述する。
【0081】
[1.6.偏光フィルムの物性など]
偏光フィルムは、偏光フィルムから切り出された10cm角の切片を、23℃55%RHの環境下に24時間放置して調湿した後水平面上に載せたとき、前記切片の4つの頂点における前記水平面からの高さのうちの最大値が、30mm以下であることが好ましい。これにより、偏光フィルムを画像表示素子などの光学素子に実装することがより容易となる。
【0082】
偏光フィルムは、好ましくは紫外線吸収能を有する。具体的には、偏光フィルムの380nmの光の透過率が、10%以下であることが好ましい。偏光フィルムに紫外線吸収能を付与するためには、偏光フィルムが備える層(例、ハードコート層、接着層、樹脂層、粘着層)の少なくとも一つの層に、紫外線吸収能を付与することが好ましく、具体的には、偏光フィルムが備える層の少なくとも一つの層に、紫外線吸収剤を含有させることがより好ましい。
【0083】
[1.7.偏光フィルムの層構成]
実施形態に係る偏光フィルムの層構成について、以下に図を用いて説明する。
【0084】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る偏光フィルムを模式的に示す断面図である。偏光フィルム100は、偏光子層101と、樹脂層102と、接着層103と、ハードコート層104とをこの順で含み、ハードコート層104に接着層103が直に接している。樹脂層102には、ハードコート層104が接着層103を介して積層されている。偏光子層101と樹脂層102とは直に接しており、樹脂層102の面102U及びハードコート層の面104Dは、接着層103と直に接している。
【0085】
本実施形態では、樹脂層102と接着層103とは直に接しているが、偏光フィルムは、樹脂層と接着層との間に、光学異方性層を含んでいてもよい。また、本実施形態では、偏光子層101が偏光フィルム100の最も外側に位置しているが、光学異方性層が、偏光子層の樹脂層側とは反対側に設けられていてもよい。
【0086】
本実施形態では、偏光子層101と樹脂層102とが直に接しているが、偏光子層と樹脂層とは、例えば接着層などの他の層を介して積層されていてもよい。
【0087】
[第2実施形態]
図2は、本発明の第2実施形態に係る偏光フィルムを備えた画像表示装置を模式的に示す断面図である。画像表示装置250は、画像表示素子251及び偏光フィルム200を備える。偏光フィルム200は、偏光子層201と、樹脂層202と、接着層203と、ハードコート層204とをこの順で含み、ハードコート層204に接着層203が直に接している。樹脂層202には、ハードコート層204が接着層203を介して積層されている。偏光子層201と樹脂層202とは直に接しており、樹脂層202の面202U及びハードコート層204の面204Dは、接着層203と直に接している。偏光フィルム200は、更に粘着層205を含む。粘着層205は、偏光子層201の、樹脂層202側とは反対側に設けられている。より具体的には、粘着層205は、偏光子層201の、樹脂層202と接している面とは反対側の面201Dに直に接するように設けられている。本実施形態では、偏光子層201と樹脂層202とが直に接しているが、偏光子層と樹脂層とは、例えば接着層などの他の層を介して積層されていてもよい。
【0088】
粘着層205と画像表示素子251とが接するように、偏光フィルム200と画像表示素子251とが貼り合わされている。本実施形態では、偏光フィルム200と画像表示素子251とが貼り合わされているが、偏光フィルムは、画像表示素子と貼り合わされていなくてもよい。
【0089】
画像表示素子251としては、任意の画像表示素子を用いうる。画像表示素子としては、例えば、液晶表示素子(例、TN(Twisted Nematic)型液晶表示素子、STN(Super Twisted Nematic)型液晶表示素子、HAN(Hybrid Alignment Nematic)型液晶表示素子、IPS(In Plane Switching)型液晶表示素子、VA(Vertical Alignment)型液晶表示素子、MVA(Multiple Vertical Alignment型液晶表示素子、OCB(Optical Compensated Bend)型液晶表示素子)、OLED表示装置が挙げられる。
【0090】
[第3実施形態]
図3は、本発明の第3実施形態に係る偏光フィルムを備えた画像表示装置を模式的に示す断面図である。画像表示装置350は、画像表示素子351及び偏光フィルム300を備える。偏光フィルム300は、粘着層305と、光学異方性層306と、偏光子層301と、樹脂層302と、接着層303と、ハードコート層304とをこの順で含み、ハードコート層304に接着層303が直に接している。樹脂層302には、ハードコート層304が接着層303を介して積層されている。樹脂層302の面302U及びハードコート層の面304Dは、接着層303と直に接している。
【0091】
偏光子層301は、接着層303と接する樹脂層302の面302Uとは反対側の樹脂層302の面302Dと直に接している。本実施形態では、このように偏光子層301と樹脂層302とは直に接しているが、偏光子層と樹脂層とは、例えば接着層などの他の層を介して積層されていてもよい。
【0092】
光学異方性層306は、偏光子層301の、樹脂層302と接する側の面とは反対側の面301Dと直に接している。本実施形態では、このように偏光子層301と光学異方性層306とが直に接しているが、偏光子層と光学異方性層とは、例えば接着層などの他の層を介して積層されていてもよい。
【0093】
粘着層305は、偏光子層301の、樹脂層302側とは反対側に設けられている。より具体的には、粘着層305は、光学異方性層306の面301Dとは反対側の面306Dに直に接するように設けられている。本実施形態では、偏光フィルム300は粘着層305を備えるが、偏光フィルムは粘着層を備えていなくともよい。
【0094】
粘着層305と画像表示素子351とが接するように、偏光フィルム300と画像表示素子351とが貼り合わされている。本実施形態では、偏光フィルム300と画像表示素子351とが貼り合わされているが、偏光フィルムは、画像表示素子と貼り合わされていなくてもよい。
【0095】
画像表示素子351としては、任意の画像表示素子を用いうる。画像表示素子としては、例えば、画像表示素子251の説明において例示した液晶表示素子が挙げられる。
偏光フィルム300は、光学異方性層306を備えるので、特に光学異方性層306を1/4λ板とした場合には、OLED表示素子と共に用いるのに好適である。
【0096】
[2.偏光フィルムの製造方法]
本発明の偏光フィルムの製造方法は、任意の方法で製造しうる。以下、偏光フィルムの製造方法の一実施形態について、図を用いて説明する。
【0097】
図4は、本発明の一実施形態に係る偏光フィルムの製造方法の説明図である。
本実施形態の製造方法は、仮支持体401の面401D上に、ハードコート層104を形成して転写用積層体402を得る工程、偏光子層101と樹脂層102とを含む積層体403を準備する工程、前記積層体403の樹脂層102側の面102Uと、仮支持体401の面401D上に形成されたハードコート層104とを、接着層103aを介して貼り合せる工程、及びハードコート層104から、仮支持体401を剥離する工程を含む。
【0098】
本実施形態の製造方法によれば、ハードコート層104を予め仮支持体401に形成してから、ハードコート層104と積層体403とを接着層103aを介して貼り合せるので、製造される偏光フィルムの著しいカールの発生が抑制されうる。一方、ハードコート層を形成するための組成物を、直接積層体に塗布し、硬化させてハードコート層を形成すると、ハードコート層を形成するための組成物が硬化する際に収縮し、その結果、ハードコート層を含む偏光フィルムのカールの程度が大きくなる。
【0099】
仮支持体401としては、任意のフィルムを用いうる。仮支持体401としては、通常、重合体を含む樹脂フィルムが用いられる。仮支持体401に含まれうる重合体としては、例えば、鎖状オレフィン重合体、シクロオレフィン重合体、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、酢酸セルロース系重合体、ポリ塩化ビニル、及びポリメタクリレートが挙げられる。仮支持体401に含まれうる重合体としては、なかでも、仮支持体401の剥離を容易にする観点から、樹脂層102との密着性が低い重合体(例、シクロオレフィン重合体)が好ましい。
【0100】
仮支持体401上にハードコート層104を形成する方法としては、具体的には、例えば、ハードコート層を形成するための組成物を、仮支持体401の面401D上に塗布して塗膜を乾燥させた後、必要に応じて塗膜の硬化処理を行う方法が挙げられる。塗布方法としては、例えば、ワイヤーバーコート法、ディップ法、スプレー法、スピンコート法、ロールコート法、グラビアコート法、及びダイ塗布が挙げられる。塗膜を乾燥させる条件としては、例えば、温度70℃~120℃、乾燥時間1~5分が挙げられる。ハードコート層を形成するための組成物が、活性エネルギー線硬化型樹脂を含む場合は、塗膜を乾燥させた後、紫外線などの活性エネルギー線を塗膜に照射することで塗膜を硬化させて、ハードコート層を形成することができる。活性エネルギー線の照射強度及び照射時間は、活性エネルギー線硬化型樹脂の種類などに応じて適宜設定することができる。
【0101】
ハードコート層を形成するための組成物の例及び好ましい例としては、上記項目[1.3.ハードコート層]で説明した例及び好ましい例と同様である。
【0102】
積層体403を準備する工程は、例えば、偏光子層101と樹脂層102とを、接着層を介して貼り合せる工程を含んでいてもよい。積層体403を準備する工程は、未延伸の偏光子層と未延伸の樹脂層とを含む積層体を、延伸する工程を含んでいてもよい。
【0103】
偏光子層101及び樹脂層102の例及び好ましい例としては、上記項目[1.2.偏光子層]及び[1.1.樹脂層]で説明した例及び好ましい例と同様である。
【0104】
積層体403の樹脂層102側の面102Uと、ハードコート層104とを、接着層103aを介して貼り合せる工程は、例えば、積層体403の樹脂層102側の面102Uの表面にコロナ処理などの表面処理を行う工程を含んでいてもよく、積層体403の樹脂層102側の面102U及び/又はハードコート層104の面104Dに接着層103aの材料を塗布して塗膜を得る工程を含んでいてもよく、得られた塗膜から溶媒を除去する工程を含んでいてもよく、積層体403の樹脂層102側の面102Uとハードコート層104の面104Dとを得られた塗膜を介して向い合わせる工程を含んでいてもよく、塗膜を硬化させる工程を含んでいてもよい。通常、積層体403の樹脂層102側の面102Uとハードコート層104とを得られた塗膜を介して向い合わせる工程の後、塗膜を硬化させる工程を行うことにより、積層体403の樹脂層102側の面102Uとハードコート層104とが接着層103aを介して貼り合わされる。
【0105】
本実施形態では、樹脂層102は、積層体403の最外にあり、積層体の樹脂層102側の面102Uは、樹脂層102の露出している側の面である。また、本実施形態では、積層体403の樹脂層102側の面102U上に形成された接着層103aの、面103aUが、ハードコート層の面104Dと接するように貼り合わされている。
【0106】
積層体403の樹脂層102側の面102U及び/又はハードコート層104の面104Dに接着層103aの材料を塗布する方法としては、例えば、上記ハードコート層を形成する方法において説明した塗布方法と同様の方法が挙げられる。
【0107】
接着層103aの材料の例としては、上記項目[1.4.接着層]で説明した接着剤の例と同様の例が挙げられる。
【実施例】
【0108】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温及び常圧の条件において行った。
【0109】
[評価方法]
[重量平均分子量及び数平均分子量の測定方法]
重合体の重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)システム(東ソー社製「HLC8020GPC」)を用いて、ポリスチレン換算値又はポリイソプレン換算値として測定した。溶媒としては標準物質としてポリスチレンを用いる場合はテトラヒドロフラン、標準物質としてポリイソプレンを用いる場合はシクロヘキサンを用いた。また、測定時の温度は、38℃であった。
【0110】
[重合体の水素化率の測定方法〕
重合体の水素化率は、1H-NMR測定により測定した。
【0111】
[厚みの測定方法]
フィルムの厚みは、スナップゲージにより測定した。
【0112】
[貯蔵弾性率の測定方法]
貯蔵弾性率は、動的粘弾性測定装置(ティー・エー・インスルメント・ジャパン社製「ARES」)により、条件:-100℃から+250℃の温度範囲で昇温速度5℃/分にて測定した。
【0113】
[水蒸気透過率の測定方法]
水蒸気透過率は、水蒸気透過度測定装置(MOCON社製「PERMATRAN-W」)を用い、JIS K 7129 B法に従って、温度40℃、湿度90%RHの条件にて測定した。
【0114】
[カールの大きさの評価方法]
フィルムから、10cm角の切片を切り出し、切り出した切片を23℃55%RHの環境下に24時間放置して調湿した。その後、切片を、ハードコート層が上となるようにして定盤上に載せた。切片の4つの頂点の、定盤の水平面からの高さをそれぞれ測定し、4つの頂点の高さの最大値h1を求めた。高さ最大値h1から、フィルムのカールの大きさを下記基準により評価した。
【0115】
AA:h1≦10mm カールが非常に小さく、パネルへの実装性が非常に良好である。
A:10mm<h1≦25mm カールが小さく、パネルへの実装性が良好である。
B:25mm<h1≦40mm カールが大きく、パネルへの実装性が不良でありパネルの歩留まりが低下する。
C:40mm<h1 カールが非常に大きく、パネルへの実装が困難である。
【0116】
[偏光フィルムの信頼性]
粘着層が形成されている偏光フィルムから、10cm角の切片を切り出し、切り出した切片をガラス板(コーニング社製「イーグルXG」(登録商標))に粘着層を介して貼り合せ、信頼性評価用サンプルを得た。信頼性評価用サンプルを、85℃85%RHの恒温槽内に120時間放置した後、信頼性評価用サンプルを、視認側の偏光フィルムを一部除去したIPS液晶モニター(LG製 LG23MP47HQ-P)上に乗せ、表示画像の劣化を目視にて比較評価した。表示画像の劣化が少ないほど、より偏光フィルムの信頼性が高いことを示す。
【0117】
AA:表示画像の劣化が確認できない。
A:劣化が画像表示に支障のない程度である。
B:劣化が画像表示に僅かな支障がある程度である。
C:劣化が画像表示に顕著な支障がある程度である。
【0118】
[フィルムの屈曲復元性]
JIS K5600-5-1(耐屈曲性(円筒形マンドレル法))に準拠し、直径2mmのマンドレルを備えた試験器を用いてサンプルの折り曲げを行い、サンプルの屈曲状態を24時間保持した。24時間後、試験器からサンプルを取り外し、サンプルの屈曲部分について反射光の歪みを目視観察して、下記基準によりフィルムの屈曲復元性を評価した。
【0119】
A:歪みがなく、完全に復元している。
B:やや歪みがあり、やや復元している。
C:歪みが著しく、復元していない。
【0120】
[実施例1]
[1-1.樹脂x1の製造]
100重量部のノルボルネン系重合体(ノルボルネン系樹脂(ZEONOR1420:ガラス転移点Tg=137℃、重量平均分子量30000:日本ゼオン(株)製)と、50重量部の可塑剤としてのポリイソブテン(JX日鉱日石エネルギー社製「日石ポリブテン HV-300」、数平均分子量1,400)とを混合することにより樹脂x1を得た。
【0121】
[1-2.樹脂層の製造]
樹脂x1を、Tダイを備える熱溶融押出フィルム成形機に供給し、Tダイから樹脂x1を押し出し、4m/分の引き取り速度でロールに巻き取ることにより、フィルム状で長尺状をなす樹脂層A1を得た(厚み12μm)。
【0122】
また、樹脂x1から以下の方法により厚み1mmのフィルムを製造し、貯蔵弾性率を測定した。厚み1mmのフィルムとして測定された樹脂x1の貯蔵弾性率は、900MPaであった。
(厚み1mmのフィルムの作成方法)
樹脂x1(樹脂層A1)を熱溶融プレス機を用いクリアランス1mm、250℃、30MPaの条件で、熱溶融して成形することにより厚み1mmの測定用フィルムを得た。
【0123】
また、樹脂x1から以下の方法により厚み100μmのフィルムを製造し、40℃90%RHでの水蒸気透過率を測定した。厚み100μmのフィルムとして測定された樹脂x1の水蒸気透過率は、4.5g/(m2・day)であった。
(厚み100μmのフィルムの作成方法)
厚み1mmのフィルムの作成方法と同様の手法で、クリアランスを100μmに変更することにより厚み100μmのフィルムを得た。
【0124】
[1-3.偏光子の製造]
原反フィルムとして、厚み60μmの未延伸ポリビニルアルコールフィルム(ビニロンフィルム、平均重合度約2400、ケン化度99.9モル%)を用いた。ガイドロールを介してフィルムを長手方向に連続搬送しながら、フィルムに対して膨潤処理、次いで染色処理をおこなって、フィルムにヨウ素を吸着させた。膨潤処理では、フィルムを30℃で1分間純水に浸漬した。染色処理では、フィルムを32℃で2分間、染色溶液(ヨウ素及びヨウ化カリウムをモル比1:23で含む染色剤溶液、染色剤濃度1.2mmol/L)に浸漬した。その後、フィルムを35℃で30秒間、ホウ酸3%水溶液で洗浄した後、57℃で、ホウ酸3%及びヨウ化カリウム5%を含む水溶液中で2倍に延伸を行った。その後、フィルムに対して、35℃で、ヨウ化カリウム5%及びホウ酸1.0%を含む水溶液中で補色処理を行った後、フィルムを60℃で2分間乾燥させ厚み23μmの偏光子P1を得た。得られた偏光子の総延伸倍率は6.0倍、偏光子P1の水分率をクラボウ社製インライン水分率測定装置で測定したところ7.5%であった。
【0125】
[1-4.ハードコート層形成用組成物H1の調製]
6官能基以上のアクリロイル基を含有するウレタンアクリレートオリゴマー(日本合成化学工業社製、商品名「UV-1700B」)の100部に、シリカ粒子(CIKナノテック株式会社製、数平均粒径30nm)20部と光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、商品名「IRGACURE184」)6部とを加え、攪拌機を用いて2000rpmで5分間攪拌することにより、ハードコート層形成用組成物H1を得た。
【0126】
[1-5.ハードコート層の形成]
仮支持体としての、厚みが23μmの熱可塑性樹脂フィルム(日本ゼオン社製、商品名「ゼオノアフィルムZF14」)の面上に、グラビアコーターを用いて前記ハードコート層形成用組成物H1を塗布し、乾燥(90℃×2分)、紫外線照射(積算光量200mW/cm2)を行うことにより、膜厚が7μmのハードコート層を形成して、転写用フィルムを得た。
【0127】
[1-6.積層体の準備]
得られた樹脂層A1の片方の面にインラインコロナ処理を施した後、コロナ処理を施した面に紫外線(UV)硬化型接着剤(ADEKA社製「アークルズKRX-7007」)をクラビアコートして接着剤塗布層を形成し、樹脂層と偏光子P1とを接着剤塗布層を介してピンチロールにより貼り合わせ、その直後にUV照射装置により750mJ/cm2のUV照射を行って、「偏光子層/接着層(厚み2μm)/樹脂層」の層構成を有する積層体を得た。
【0128】
[1-7.樹脂層とハードコート層との貼り合わせ]
その後、得られた積層体において露出している樹脂層の外面(他方の面)に、インラインコロナ処理を施した後、当該樹脂層面にUV硬化型接着剤(ADEKA社製「アークルズKRX-7007」)をクラビアコートして接着剤塗布層を形成し、積層体の樹脂層と転写用フィルムのハードコート層とを接着剤塗布層を介してピンチロールにて貼り合わせ、その直後UV照射装置により500mJ/cm2のUVを照射して、「仮支持体/ハードコート層/接着層/樹脂層/接着層/偏光子層」の層構成を有する偏光フィルムF1aを得た。
【0129】
[1-8.仮支持体の剥離]
「仮支持体/ハードコート層/接着層/樹脂層/接着層/偏光子層」の層構成を有する偏光フィルムF1a(積層体)から、仮支持体であるゼオノアフィルムZF14を取り去り、偏光フィルムF1bを得た。得られた偏光フィルムF1bの総厚みは47μmであった。得られた偏光フィルムF1bについて、カールの大きさ及び屈曲復元性を評価した。結果を表1に示す。
【0130】
[1-9.粘着層の形成]
粘着剤組成物P1の調整
n-ブチルアクリレート(n-BA)69重量部、フェノキシジエチレングリコールアクリレート30重量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)1重量部、酢酸エチル120重量部及びアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.1重量部を反応容器に入れ、この反応容器内の空気を窒素ガスで置換した後、攪拌下に窒素雰囲気中でこの反応溶液を66℃に昇温させ、10時間反応させた。反応終了後、酢酸エチルで希釈し、固形分20重量%のアクリル系共重合体溶液(粘着剤組成物P1)を得た。なお、得られたアクリル系共重合体のGPCによる重量平均分子量(Mw)は110万であった。
【0131】
粘着剤組成物P1 500重量部(固形分100重量部)に対し、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン社製「コロネートL」)0.1重量部及びシランカップリング剤(信越ポリマー社製「KBM-402」)0.1重量部を添加し、充分に混合して粘着剤組成物を得た。得られた粘着剤組成物をシリコーンで剥離処理されたPETフィルム(三菱化学製「MRV38」)にダイコーターを用い塗布し、90℃で3分間乾燥して溶剤分を揮発させて20μmの粘着層を形成した。次いで、粘着層が形成されたPETフィルムを偏光フィルムF1bの偏光子層の、樹脂層側とは反対側の面に貼り合わせて粘着層を形成し、「ハードコート層/接着層/樹脂層/接着層/偏光子層/粘着層/PETフィルム」の層構成を有する偏光フィルムF1cを得た。得られた偏光フィルムF1cを温度23℃、湿度55%の条件下で5日間保存することにより熟成させた後、PETフィルムを除去し、ガラスに貼り合わせ85℃85%RHでの信頼性を評価した。結果を表1に示す。
【0132】
[実施例2]
実施例1[1-1.樹脂x1の製造]と同様にして製造された樹脂x1を、Tダイを備える熱溶融押出フィルム成形機に供給した。Tダイから樹脂x1を押し出し、4.1m/分の引き取り速度でロールに巻き取ることにより、フィルム状で長尺状をなす未延伸樹脂層を得た(厚み10μm)。
【0133】
得られた未延伸樹脂層を、140℃で3倍に自由端一軸延伸して、厚み6μmの樹脂層A2を得た。
【0134】
樹脂層A1の代わりに樹脂層A2を用いた以外は、実施例1の[1-6.積層体の準備]~[1-7.樹脂層とハードコート層との貼り合わせ]と同様にして、仮支持体を有する偏光フィルムF2aを得て、偏光フィルムF1aの代わりに偏光フィルムF2aを用いた以外は、実施例1の[1-8.仮支持体の剥離]と同様にして偏光フィルムF2bを得て、偏光フィルムF1bの代わりに偏光フィルムF2bを用いた以外は、実施例1の[1-9.粘着層の形成]と同様にして、粘着層を有する偏光フィルムF2cを得た。
【0135】
偏光フィルムF2bの総厚みは40μmであった。偏光フィルムF2cの総厚みを表1に示す。また偏光フィルムの評価結果を表1に示す。
【0136】
[実施例3]
[3-1.重合体Yの製造]ブロック共重合体水素化物[E]の製造
特開2002-105151号公報に記載の製造例を参照して、第1段階でスチレンモノマー25部を重合させた後、第2段階でスチレンモノマー30部及びイソプレンモノマー25部を重合させ、その後に第3段階でスチレンモノマー20部を重合させてブロック共重合体[D1]を得た後、該ブロック共重合体を水素化してブロック共重合体水素化物[E1]を合成した。ブロック共重合体水素化物[E1]のMwは84,500、Mw/Mnは1.20、主鎖及び芳香環の水素化率はほぼ100%であった。
【0137】
ブロック共重合体水素化物[E1]100部に、酸化防止剤としてペンタエリスリチル・テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](松原産業社製、製品名「Songnox1010」)0.1部を溶融混練して配合した後、ペレット状にして、成形用の樹脂y1を得た。
【0138】
また、樹脂y1から、厚み1mmのフィルムを製造し、貯蔵弾性率を測定した。厚み1mmのフィルムとして測定された樹脂y1の貯蔵弾性率は、810MPaであった。樹脂y1から厚み1mmのフィルムを製造する方法は、樹脂x1から厚み1mmのフィルムを製造する方法として上述した方法と同様である。
【0139】
樹脂y1から厚み100μmのフィルムを製造し、40℃90%RHでの水蒸気透過率を測定した。厚み100μmのフィルムとして測定された樹脂y1の水蒸気透過率は、4.0g/(m2・day)であった。樹脂y1から厚み100μmのフィルムを製造する方法は、樹脂x1から厚み100μmのフィルムを製造する方法として上述した方法と同様である。
【0140】
[3-2.樹脂層の製造]
樹脂y1を、Tダイを備える熱溶融押出フィルム成形機に供給した。Tダイから樹脂y1を押し出し、4.1m/分の引き取り速度でロールに巻き取ることにより、樹脂y1をフィルム状に成形した。これにより、樹脂y1からなる長尺の未延伸樹脂層(厚み10μm)を得た。
【0141】
得られた樹脂y1からなる未延伸樹脂層を、140℃で6倍に自由端一軸延伸して、厚み4μmの樹脂層B1を得た。
【0142】
[3-3.偏光フィルムの製造]
樹脂層A1の代わりに樹脂層B1を用いた以外は、実施例1の[1-6.積層体の準備]~[1-7.樹脂層とハードコート層との貼り合わせ]と同様にして、仮支持体を有する偏光フィルムF3aを得て、偏光フィルムF1aの代わりに偏光フィルムF3aを用いた以外は、実施例1の[1-8.仮支持体の剥離]と同様にして偏光フィルムF3bを得て、偏光フィルムF1bの代わりに偏光フィルムF3bを用いた以外は、実施例1の[1-9.粘着層の形成]と同様にして、粘着層を有する偏光フィルムF3cを得た。
【0143】
偏光フィルムF3bの総厚みは、38μmであった。偏光フィルムF3cの総厚みを表1に示す。また偏光フィルムの評価結果を表1に示す。
【0144】
[実施例4]
[4-1.偏光子の製造]
原反フィルムとして、厚み60μmの未延伸ポリビニルアルコールフィルムの代わりに、厚み20μmの未延伸ポリビニルアルコールフィルム(平均重合度約2400、ケン化度99.9モル%)を用いた以外は実施例1の[1-3.偏光子の製造]と同様にして、厚み7μmの偏光子P2を製造した。
【0145】
[4-2.偏光フィルムの製造]
樹脂層A1の代わりに、実施例3[3-2.樹脂層の製造]と同様にして得られた樹脂層B1を用い、偏光子P1の代わりに偏光子P2を用いた以外は、実施例1の[1-6.積層体の準備]~[1-7.樹脂層とハードコート層との貼り合わせ]と同様にして、仮支持体を有する偏光フィルムF4aを得て、偏光フィルムF1aの代わりに偏光フィルムF4aを用いた以外は、実施例1の[1-8.仮支持体の剥離]と同様にして偏光フィルムF4bを得て、偏光フィルムF1bの代わりに偏光フィルムF4bを用いた以外は、実施例1の[1-9.粘着層の形成]と同様にして、粘着層を有する偏光フィルムF4cを得た。
【0146】
偏光フィルムF4bの総厚みは22μmであった。偏光フィルムF4cの総厚みを表1に示す。また偏光フィルムの評価結果を表1に示す。
【0147】
[実施例5]
[5-1.樹脂層B2の製造]
樹脂y1の代わりに、実施例3[3-1.重合体の製造]と同様にして製造された100重量部の樹脂y1と30重量部の可塑剤としてのポリイソブテン(JX日鉱日石エネルギー社製「日石ポリブテン HV-300」、数平均分子量1,400)との混合物である、樹脂y2を用いた以外は、実施例3[3-2.樹脂層の製造]と同様にして、樹脂層B2(厚み10μm)を得た。
【0148】
また、樹脂y2から、厚み1mmのフィルムを製造し、貯蔵弾性率を測定した。厚み1mmのフィルムとして測定された樹脂y2の貯蔵弾性率は、720MPaであった。樹脂y2から厚み1mmのフィルムを製造する方法は、樹脂x1から厚み1mmのフィルムを製造する方法として上述した方法と同様である。
【0149】
樹脂y2から厚み100μmのフィルムを製造し、40℃90%RHでの水蒸気透過率を測定した。厚み100μmのフィルムとして測定された樹脂y2の水蒸気透過率は、4.8g/(m2・day)であった。樹脂y2から厚み100μmのフィルムを製造する方法は、樹脂x1から厚み100μmのフィルムを製造する方法として上述した方法と同様である。
【0150】
[5-2.偏光フィルムの製造]
樹脂層A1の代わりに、樹脂層B2を用い、偏光子P1の代わりに実施例4の[4-1.偏光子の製造]と同様にして得られた偏光子P2を用いた以外は、実施例1の[1-6.積層体の準備]~[1-7.樹脂層とハードコート層との貼り合わせ]と同様にして、仮支持体を有する偏光フィルムF5aを得て、偏光フィルムF1aの代わりに偏光フィルムF5aを用いた以外は、実施例1の[1-8.仮支持体の剥離]と同様にして偏光フィルムF5bを得て、偏光フィルムF1bの代わりに偏光フィルムF5bを用いた以外は、実施例1の[1-9.粘着層の形成]と同様にして、粘着層を有する偏光フィルムF5cを得た。
【0151】
偏光フィルムF5bの総厚みは22μmであった。偏光フィルムF5cの総厚みを表1に示す。また偏光フィルムの評価結果を表1に示す。
【0152】
[実施例6]
[6-1.偏光子の製造]
原反フィルムとして、厚み60μmの未延伸ポリビニルアルコールフィルムの代わりに、厚み15μmの未延伸ポリビニルアルコールフィルム(平均重合度約2400、ケン化度99.9モル%)を用いた以外は実施例1の[1-3.偏光子の製造]と同様にして、厚み5μmの偏光子P3を製造した。
【0153】
[6-2.偏光フィルムの製造]
樹脂層A1の代わりに、実施例3[3-2.樹脂層の製造]と同様にして得られた樹脂層B1を用い、偏光子P1の代わりに偏光子P3を用いた以外は、実施例1の[1-6.積層体の準備]~[1-7.樹脂層とハードコート層との貼り合わせ]と同様にして、仮支持体を有する偏光フィルムF6aを得て、偏光フィルムF1aの代わりに偏光フィルムF6aを用いた以外は、実施例1の[1-8.仮支持体の剥離]と同様にして偏光フィルムF6bを得て、偏光フィルムF1bの代わりに偏光フィルムF6bを用いた以外は、実施例1の[1-9.粘着層の形成]と同様にして、粘着層を有する偏光フィルムF6cを得た。
【0154】
偏光フィルムF6bの総厚みは20μmであった。偏光フィルムF6cの総厚みを表1に示す。また偏光フィルムの評価結果を表1に示す。
【0155】
[実施例7]
[7-1.樹脂層B3の製造]
実施例3[3-1.重合体Yの製造]と同様にして得られた樹脂y1を、Tダイを備える熱溶融押出フィルム成形機に供給した。Tダイから樹脂y1を押し出し、4.3m/分の引き取り速度でロールに巻き取ることにより、樹脂y1をフィルム状に成形した。これにより、樹脂y1からなる長尺の未延伸樹脂層(厚み6μm)を得た。
【0156】
得られた樹脂y1からなる未延伸樹脂層を、140℃で6倍に自由端一軸延伸して、厚み2μmの樹脂層B3を得た。
【0157】
[7-2.偏光フィルムの製造]
樹脂層A1の代わりに、樹脂層B3を用い、偏光子P1の代わりに実施例6[6-1.偏光子の製造]と同様にして得られた偏光子P3を用いた以外は、実施例1の[1-6.積層体の準備]~[1-7.樹脂層とハードコート層との貼り合わせ]と同様にして、仮支持体を有する偏光フィルムF7aを得て、偏光フィルムF1aの代わりに偏光フィルムF7aを用いた以外は、実施例1の[1-8.仮支持体の剥離]と同様にして偏光フィルムF7bを得て、偏光フィルムF1bの代わりに偏光フィルムF7bを用いた以外は、実施例1の[1-9.粘着層の形成]と同様にして、粘着層を有する偏光フィルムF6cを得た。
【0158】
偏光フィルムF7bの総厚みは18μmであった。偏光フィルムF7cの総厚みを表1に示す。また偏光フィルムの評価結果を表1に示す。
【0159】
[比較例1]
[C1-1.樹脂層Cの製造]
アクリル樹脂(住友化学社製「スミペックスHT55X」)を、Tダイを備える熱溶融押出フィルム成形機に供給した。Tダイからアクリル樹脂を押し出し、4m/分の引き取り速度でロールに巻き取ることにより、アクリル樹脂をフィルム状に成形した。これにより、アクリル樹脂からなる長尺の樹脂層C(厚み40μm)を得た。
【0160】
また、アクリル樹脂(住友化学社製「スミペックスHT55X」)から、厚み1mmのフィルムを製造し、貯蔵弾性率を測定した。厚み1mmのフィルムとして測定されたアクリル樹脂の貯蔵弾性率は、2800MPaであった。アクリル樹脂から厚み1mmのフィルムを製造する方法は、樹脂x1から厚み1mmのフィルムを製造する方法として上述した方法と同様である。
【0161】
[C1-2.ハードコート層の形成]
樹脂層Cの面上に、実施例1[1-4.ハードコート層形成用組成物H1の調製]と同様にして得られたハードコート層形成用組成物H1を、グラビアコーターを用いて塗布し、乾燥(90℃×2分)、紫外線照射(積算光量200mW/cm2)を行うことにより、膜厚が7μmのハードコート層を形成して、ハードコート層を有する積層体を得た。
【0162】
[C1-3.偏光フィルムの製造]
得られたハードコート層を有する積層体の、樹脂層Cの面にインラインコロナ処理を施し、コロナ処理を施した面に紫外線(UV)硬化型接着剤(ADEKA社製「アークルズKRX-7007」)をクラビアコートして接着剤塗布層を形成し、樹脂層Cと実施例6[6-1.偏光子の製造]と同様にして得られた偏光子P3とを接着剤塗布層を介してピンチロールにより貼り合わせ、その直後にUV照射装置により750mJ/cm2のUV照射を行って、「偏光子層/接着層/樹脂層/ハードコート層」の層構成を有する偏光フィルムFC1bを得た。偏光フィルムF1bの代わりに偏光フィルムFC1bを用いた以外は、実施例1の[1-9.粘着層の形成]と同様にして、粘着層を有する偏光フィルムFC1cを得た。
【0163】
偏光フィルムFC1cの総厚みを表2に示す。また偏光フィルムの評価結果を表2に示す。
【0164】
[比較例2]
樹脂層として、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(富士フイルム製「フジタックT25」、厚み25μm)を用意した。
厚み1mmのフィルムとして測定されたトリアセチルセルロースの貯蔵弾性率は、3400MPaであった。トリアセチルセルロースフィルムから厚み1mmのフィルムを製造する方法は、樹脂x1から厚み1mmのフィルムを製造する方法として上述した方法と同様である。
【0165】
樹脂層Cの代わりに、TACフィルムを用い、偏光子P3の代わりに実施例1[1-3.偏光子の製造]と同様にして得られた偏光子P1を用いた以外は、比較例[C1-2.ハードコート層の形成]及び[C1-3.偏光フィルムの製造]と同様にして、偏光子層/接着層/樹脂層/ハードコート層の層構成を有する偏光フィルムFC2b及び粘着層を有する偏光フィルムFC2cを得た。
【0166】
偏光フィルムFC2cの総厚みを表2に示す。また偏光フィルムの評価結果を表2に示す。
【0167】
[比較例3]
実施例1[1-3.偏光子の製造]と同様にして得られた偏光子P1の面上に、実施例1[1-4.ハードコート層形成用組成物H1の調製]と同様にして得られたハードコート層形成用組成物H1を、グラビアコーターを用いて塗布し、乾燥(90℃×2分)、紫外線照射(積算光量200mW/cm2)を行うことにより、膜厚が7μmのハードコート層を形成して、ハードコート層を有する偏光フィルムFC3bを得た。偏光フィルムF1bの代わりに偏光フィルムFC3bを用いた以外は、実施例1の[1-9.粘着層の形成]と同様にして、粘着層を有する偏光フィルムFC3cを得た。
【0168】
偏光フィルムFC3cの総厚みを表2に示す。また偏光フィルムの評価結果を表2に示す。
【0169】
【0170】
【0171】
表2中、*は、カールの程度が著しく、h1を測定できなかったことを示す。
表2中、**は、フィルムの品質が著しく悪いため、評価できなかったことを示す。
表2中、PMMAは、アクリル樹脂(住友化学社製「スミペックスHT55X」)を意味する。
【0172】
以上の結果から、偏光子層と、貯蔵弾性率が10MPa以上1000MPa以下である樹脂から形成された樹脂層と、接着層と、ハードコート層とをこの順で含む実施例の偏光フィルムは、著しいカールの発生が抑制されており、また偏光フィルムの信頼性が高く、偏光子が良好に保護されていることがわかる。また、屈曲復元性にも優れていることがわかる。
一方、貯蔵弾性率が1000MPaよりも大きい樹脂から形成された樹脂層を備え、樹脂層とハードコート層との間に接着層のない比較例1及び2の偏光フィルム、及び、樹脂層を備えていない比較例3の偏光フィルムは、カールの大きさ、信頼性評価、及び屈曲復元性の、いずれの評価結果も実施例と比較して劣る。
これらの結果は、本発明により、著しいカールの発生が抑制され、且つ偏光子が十分に保護され、屈曲後の高い復元性を有する偏光フィルムが提供されることを示すものである。
【符号の説明】
【0173】
100、200、300 偏光フィルム
101、201、301 偏光子層
102、202、302 樹脂層
103、203、303 接着層
104、204、304 ハードコート層
250、350 画像表示装置
251、351 画像表示素子
306 光学異方性層