IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 旭硝子株式会社の特許一覧

特許7192829映像表示透明部材、映像表示システムおよび映像表示方法
<>
  • 特許-映像表示透明部材、映像表示システムおよび映像表示方法 図1
  • 特許-映像表示透明部材、映像表示システムおよび映像表示方法 図2
  • 特許-映像表示透明部材、映像表示システムおよび映像表示方法 図3
  • 特許-映像表示透明部材、映像表示システムおよび映像表示方法 図4
  • 特許-映像表示透明部材、映像表示システムおよび映像表示方法 図5
  • 特許-映像表示透明部材、映像表示システムおよび映像表示方法 図6
  • 特許-映像表示透明部材、映像表示システムおよび映像表示方法 図7
  • 特許-映像表示透明部材、映像表示システムおよび映像表示方法 図8
  • 特許-映像表示透明部材、映像表示システムおよび映像表示方法 図9
  • 特許-映像表示透明部材、映像表示システムおよび映像表示方法 図10
  • 特許-映像表示透明部材、映像表示システムおよび映像表示方法 図11
  • 特許-映像表示透明部材、映像表示システムおよび映像表示方法 図12
  • 特許-映像表示透明部材、映像表示システムおよび映像表示方法 図13
  • 特許-映像表示透明部材、映像表示システムおよび映像表示方法 図14
  • 特許-映像表示透明部材、映像表示システムおよび映像表示方法 図15
  • 特許-映像表示透明部材、映像表示システムおよび映像表示方法 図16
  • 特許-映像表示透明部材、映像表示システムおよび映像表示方法 図17
  • 特許-映像表示透明部材、映像表示システムおよび映像表示方法 図18
  • 特許-映像表示透明部材、映像表示システムおよび映像表示方法 図19
  • 特許-映像表示透明部材、映像表示システムおよび映像表示方法 図20
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】映像表示透明部材、映像表示システムおよび映像表示方法
(51)【国際特許分類】
   G03B 21/62 20140101AFI20221213BHJP
   G03B 21/00 20060101ALI20221213BHJP
   G03B 21/14 20060101ALI20221213BHJP
   G02B 5/00 20060101ALI20221213BHJP
   G02B 5/02 20060101ALI20221213BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20221213BHJP
   H04N 5/74 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
G03B21/62
G03B21/00 D
G03B21/14 Z
G02B5/00 Z
G02B5/02 B
G02B5/30
H04N5/74 C
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020102385
(22)【出願日】2020-06-12
(62)【分割の表示】P 2019070788の分割
【原出願日】2015-06-22
(65)【公開番号】P2020166290
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2020-06-12
(31)【優先権主張番号】P 2014128552
(32)【優先日】2014-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関川 賢太
(72)【発明者】
【氏名】垰 幸宏
(72)【発明者】
【氏名】海田 由里子
(72)【発明者】
【氏名】江畑 研一
(72)【発明者】
【氏名】辻村 一志
【審査官】中村 直行
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/016556(WO,A1)
【文献】特開2006-227581(JP,A)
【文献】特開2011-017972(JP,A)
【文献】特開平09-133969(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0056021(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 21/00 - 21/62
G02B 5/00
G02B 5/02
G02B 5/30
H04N 5/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面およびこれとは反対側の第2の面を有し、第1の面側の光景を第2の面側の観察者に視認可能に透過し、第2の面側の光景を第1の面側の観察者に視認可能に透過し、かつ第1の面側に設置された投影機から投射された映像光を、第2の面側の観察者に映像として視認可能に表示する透過型の映像表示透明部材であって、
前記第1の面と前記第2の面との間に、
透明層全体に光散乱微粒子が分散された光散乱層を有する映像表示部を備え、
前記映像表示部の前記第1の面側に第1の透明基材が、前記映像表示部の前記第2の面側に第2の透明基材が、それぞれ設けられており、
前記第2の透明基材は反射防止層ではなく、前記第2の透明基材の厚さが0.01mm以上であり、
前記透明基材のうち、少なくとも第2の透明基材が、前記映像表示透明部材を透過する光の一部を減衰させる光減衰層となっており、ガラス又は透明樹脂に光減衰成分が配合されて着色されたものである、映像表示透明部材。
【請求項2】
前記映像表示透明部材の前方ヘーズが、4~40%である、請求項1に記載の映像表示透明部材。
【請求項3】
前記光減衰層に偏光依存性を備えた、請求項1または2に記載の映像表示透明部材。
【請求項4】
前記光減衰層の透過率が70%以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の映像表示透明部材。
【請求項5】
前記光減衰層がグレー(可視光全体に渡って均一(xyY表色系において、0.25≦x≦0.4、0.25≦y≦0.4))である、請求項1~4のいずれか一項に記載の映像表示透明部材。
【請求項6】
前記光減衰層が青味(xyY表色系において、x≦0.33、y≦0.5)を帯びている、請求項1~4のいずれか一項に記載の映像表示透明部材。
【請求項7】
前記光減衰層が緑味(xyY表色系において、y>x、0.33≦y)を帯びている、請求項1~4のいずれか一項に記載の映像表示透明部材。
【請求項8】
光減衰層の面積が、映像表示部の面積と同じか、または映像表示部の面積よりも大きい、請求項1~7のいずれか一項に記載の映像表示透明部材。
【請求項9】
前記光減衰層が、ガラスまたは透明樹脂に光減衰成分が配合されている、請求項1~8のいずれか一項に記載の映像表示透明部材。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の映像表示透明部材と、
映像表示透明部材の第1の面側に設置された投影機と、
を備えた、映像表示システム。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか一項に記載の映像表示透明部材に、
映像表示透明部材の第1の面側に設置された投影機から映像光を投射し、映像を表示させる、映像表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像表示透明部材、映像表示システムおよび映像表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
商品等のショーケース;美術品等の展示ケース;建物、ショールーム、車両等の窓;ガラス扉;室内の透明パーティション等に用いられる透明部材として、下記のものが提案されている。
観察者側から見て透明部材の向こう側に見える光景を視認でき、かつ観察者に対して商品等の説明、各種機器の状態、行き先案内、伝達事項等の情報を伝達する際、観察者に対して各種機器の操作画面等を表示する際、またはプライバシー保護、セキュリティ等のために観察者に対して透明部材の向こう側の光景を視認できなくする際には、投影機から投射された映像光を観察者に映像として視認可能に表示する映像表示透明部材(いわゆる透明スクリーン)。
【0003】
映像表示透明部材には、投影機から投射された映像光を投影機と同じ側にいる観察者に映像として視認可能に表示する反射型の映像表示透明部材と;投影機から投射された映像光を投影機と反対側にいる観察者に映像として視認可能に表示する透過型の映像表示透明部材とがある。しかし、従来の映像表示透明部材は、透明性が低く(ヘーズが高く)、光景の視認性が悪かった。
【0004】
反射型の映像表示透明部材としては、たとえば、図19に示すような、第1の透明基材110と、第2の透明基材120との間に、表面に規則的な凹凸構造(マイクロレンズアレイ)が形成された第1の透明層132と、第1の透明層132の凹凸構造側の面に沿うように形成された、入射した光の一部を透過する反射膜133と、反射膜133の表面を覆うように設けられた第2の透明層134とを有する映像表示透明部材101が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
反射型の映像表示透明部材101においては、図19に示すように、投影機200から投射され、第2の透明基材120側の表面(第1の面A)から入射した映像光Lが、反射膜133において散乱することによって結像し、投影機200と同じ側にいる観察者Xに映像として視認可能に表示される。この映像表示透明部材101は、透明性が高く(ヘーズが低く)、光景の視認性が高く、なおかつ映像のスクリーンゲインも高い。
また、投影機200と同じ側にいる観察者Xからも、投影機200と反対側にいる観察者Yからも、観察者側から見て映像表示透明部材101の向こう側の光景が視認できる。
【0006】
しかし、反射型の映像表示透明部材101では、観察者から見て映像表示透明部材101の向こう側の光景の視認性が低下する問題がある。具体的には、向こう側の光景を見ようとした観察者側から映像表示透明部材101に入射した太陽や照明の光が反射膜133で散乱した反射散乱光によって、映像表示透明部材101の向こう側から透過してくる光のコントラストが低下し、映像表示透明部材101の向こう側の光景の視認性が低下する。
たとえば、反射型の映像表示透明部材101を窓に用いた場合、日中は太陽光L1が反射膜133で散乱した反射散乱光によって窓の外にいる観察者Yからは窓が白くぼやけて見え、窓の内側の光景の視認性が低下する。また、この場合、夜は照明の光L2が反射膜133で散乱した反射散乱光によって室内にいる観察者Xからは窓が白くぼやけて見え、窓の外側の光景の視認性が低下する。
【0007】
透過型の映像表示透明部材としては、たとえば、図20に示すような、第1の透明基材110と、第2の透明基材120との間に、透明層142と、透明層142の内部に互いに平行に、かつ所定の間隔で配置された、面方向に沿って延びる複数の光散乱部143とを有する映像表示透明部材102が提案されている(特許文献2参照)。
【0008】
透過型の映像表示透明部材102においては、図20に示すように、投影機200から投射され、第1の透明基材110側の表面(第1の面A)から入射した映像光Lが、光散乱部143において散乱することによって結像し、投影機200と反対側にいる観察者Yに映像として視認可能に表示される。
また、投影機200と同じ側にいる観察者Xからも、投影機200と反対側にいる観察者Yからも、観察者側から見て映像表示透明部材102の向こう側の光景が視認できる。
【0009】
しかし、透過型の映像表示透明部材102においては、反射型の映像表示透明部材101の場合と同様に、観察者から見て映像表示透明部材102の向こう側の光景の視認性が低下する問題がある。具体的には、観察者には向こう側の光景を見ようとした際、向こう側の光景から来る直進光は光散乱部143を通過した際に散乱され、観察者は散乱された光を観察してしまうため、光景の解像度が落ちてしまう。例えば文字等の視認性は大きく低下する。また、向こう側の光景を見ようとした観察者側から映像表示透明部材102に入射した太陽や照明の光が光散乱部143で散乱した反射散乱光によって、映像表示透明部材102の向こう側から透過してくる光のコントラストが低下し、映像表示透明部材102の向こう側の光景の視認性が低下する。そのため、たとえば、透過型の映像表示透明部材102を窓に用いた場合、日中は太陽光L1による反射散乱光によって窓の外にいる観察者Yからは窓の内側の光景の視認性が低下し、夜は照明の光L2による反射散乱光によって室内にいる観察者Xからは窓の外側の光景の視認性が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特表2010-539525号公報
【文献】特開2014-013369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、観察者から見て透明部材の向こう側の光景の解像度が上がり、視認性に優れた映像表示透明部材、ならびにこれを用いた映像表示システムおよび映像表示方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、以下の構成を有する。
[1]第1の面およびこれとは反対側の第2の面を有し、第1の面側の光景を第2の面側の観察者に視認可能に透過し、第2の面側の光景を第1の面側の観察者に視認可能に透過し、かつ第1の面側に設置された投影機から投射された映像光を、第2の面側の観察者に映像として視認可能に表示する透過型の映像表示透明部材であって、
前記第1の面と前記第2の面との間に、
透明層全体に光散乱微粒子が分散された光散乱層を有する映像表示部を備え、
前記映像表示部の前記第1の面側に第1の透明基材が、前記映像表示部の前記第2の面側に第2の透明基材が、それぞれ設けられており、
前記透明基材のうち、少なくとも第2の透明基材が、前記映像表示透明部材を透過する光の一部を減衰させる光減衰層となっている、映像表示透明部材。
[2]前記映像表示透明部材の前方ヘーズが、4~40%である、[1]の映像表示透明部材。
[3]前記光減衰層に偏光依存性を備えた、[1]または[2]の映像表示透明部材。
[4]前記光減衰層の透過率が70%以下である、[1]~[3]のいずれかの映像表示透明部材。
[5]前記光減衰層がグレー(可視光全体に渡って均一(xyY表色系において、0.25≦x≦0.4、0.25≦y≦0.4))である、[1]~[4]のいずれかの映像表示透明部材。
[6]前記光減衰層が青味(xyY表色系において、x≦0.33、y≦0.5)を帯びている、[1]~[4]のいずれかの映像表示透明部材。
[7]前記光減衰層が緑味(xyY表色系において、y>x、0.33≦y)を帯びている、[1]~[4]のいずれかの映像表示透明部材。
[8]光減衰層の面積が、映像表示部の面積と同じか、または映像表示部の面積よりも大きい、[1]~[7]のいずれかの映像表示透明部材。
[9]前記光減衰層が、ガラスまたは透明樹脂に光減衰成分が配合されている、[1]~[8]のいずれかの映像表示透明部材。
[10][1]~[9]のいずれかの映像表示透明部材と、
映像表示透明部材の第1の面側に設置された投影機と、
を備えた、映像表示システム。
[11][1]~[9]のいずれかの映像表示透明部材に、
映像表示透明部材の第1の面側に設置された投影機から映像光を投射し、映像を表示させる、映像表示方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の映像表示透明部材、映像表示システムおよび映像表示方法によれば、観察者から見て透明部材の向こう側の光景の解像度が上がり、視認性が優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の映像表示システムの一例を示す概略構成図および本発明の反射型の映像表示透明部材の一例を示す層構成図である。
図2】本発明の反射型の映像表示透明部材の製造工程の一例を示す断面図である。
図3】本発明の反射型の映像表示透明部材の他の例を示す層構成図である。
図4】本発明の反射型の映像表示透明部材の他の例を示す層構成図である。
図5】本発明の反射型の映像表示透明部材の他の例を示す層構成図である。
図6】本発明の反射型の映像表示透明部材の他の例を示す層構成図である。
図7】本発明の反射型の映像表示透明部材の他の例を示す層構成図である。
図8】本発明の反射型の映像表示透明部材の他の例を示す層構成図である。
図9】本発明の反射型の映像表示透明部材の他の例を示す層構成図である。
図10】本発明の映像表示システムの他の例を示す概略構成図および本発明の透過型の映像表示透明部材の一例を示す層構成図である。
図11】本発明の透過型の映像表示透明部材の製造工程の一例を示す断面図である。
図12】本発明の透過型の映像表示透明部材の他の例を示す層構成図である。
図13】本発明の透過型の映像表示透明部材の他の例を示す層構成図である。
図14】本発明の透過型の映像表示透明部材の他の例を示す層構成図である。
図15】本発明の透過型の映像表示透明部材の他の例を示す層構成図である。
図16】本発明の透過型の映像表示透明部材の他の例を示す層構成図である。
図17】本発明の透過型の映像表示透明部材の他の例を示す層構成図である。
図18】本発明の透過型の映像表示透明部材の他の例を示す層構成図である。
図19】従来の反射型の映像表示透明部材の一例を示す層構成図である。
図20】従来の透過型の映像表示透明部材の一例を示す層構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の用語の定義は、本明細書および特許請求の範囲にわたって適用される。
「第1の面」とは、映像表示透明部材の最表面であって、投影機から映像光が投射される側の表面を意味する。
「第2の面」とは、映像表示透明部材の最表面であって、第1の面とは反対側の表面を意味する。
「第1の面側(第2の面側)の光景」とは、映像表示透明部材の第2の面側(第1の面側)にいる観察者から見て、映像表示透明部材の向こう側に見える像(主要対象物(商品、美術品、人物等)およびその背景、ならびに風景等)を意味する。光景には、投影機から投射された映像光が映像表示透明部材において結像して表示される映像は含まれない。
「前方ヘーズ」とは、第1の面側から第2の面側に透過する透過光、または第2の面側から第1の面側に透過する透過光のうち、前方散乱によって、入射光から0.044rad(2.5°)以上それた透過光の百分率を意味する。すなわち、JIS K 7136:2000(ISO 14782:1999)に記載された方法によって測定される、通常のヘーズである。
「後方ヘーズ」とは、第1の面において反射する反射光のうち、散乱によって、正反射光から0.044rad(2.5°)以上それた反射光の百分率を意味する。
「凹凸構造」とは、複数の凸部、複数の凹部、または複数の凸部および凹部からなる凹凸形状を意味する。
「不規則な凹凸構造」とは、凸部または凹部が周期的に出現せず、かつ凸部または凹部の大きさが不揃いである凹凸構造を意味する。
算術平均粗さ(Ra)は、JIS B 0601:2013(ISO 4287:1997,Amd.1:2009)に基づき測定される算術平均粗さである。粗さ曲線用の基準長さlr(カットオフ値λc)は0.8mmとした。
透過率は、入射した光に対し、前方方向へ透過、散乱される光の合計の光量の比を百分率とした値である。
反射率は、入射した光に対し、後方方向へ反射、散乱される光の合計の光量の比を百分率とした値である。
透過率、反射率および屈折率は、ナトリウムランプのd線(波長589nm)を用いて室温で測定したときの値である。
【0016】
<反射型の映像表示透明部材>
本発明の映像表示透明部材の第1の態様は、第1の面およびこれとは反対側の第2の面を有し、第1の面側の光景を第2の面側の観察者に視認可能に透過し、第2の面側の光景を第1の面側の観察者に視認可能に透過し、かつ第1の面側から投射された映像光を第1の面側の観察者に映像として視認可能に表示する映像表示透明部材であって、前記映像表示透明部材は、当該映像表示透明部材を透過する光の一部を減衰させる光減衰層を有する、反射型の映像表示透明部材である。
【0017】
図1は、本発明の反射型の映像表示透明部材の一例を示す層構成図である。
映像表示透明部材1は、第1の透明基材10と、第2の透明基材20との間に、映像表示部30が配置され、第2の透明基材20に光減衰成分が配合されて着色され、映像表示透明部材1を透過する光の一部を減衰させる光減衰層となっているものである。
第1の透明基材10と映像表示部30とは、接着層12によって接着され、第2の透明基材20と映像表示部30とは、接着層22によって接着されている。
【0018】
(第1の透明基材)
第1の透明基材10の材料としては、ガラス、透明樹脂等が挙げられる。
透明基材を構成するガラスとしては、ソーダライムガラス、無アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸塩ガラス等が挙げられる。ガラスからなる第1の透明基材10には、耐久性を向上させるために、化学強化、物理強化、ハードコーティング等を施してもよい。
【0019】
第1の透明基材10を構成する透明樹脂としては、ポリカーボネート、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、トリアセチルセルロース、シクロオレフィンポリマー、ポリメチルメタクリレート等が挙げられ、耐候性および透明性の観点から、ポリカーボネート、ポリエステル、シクロオレフィンポリマーが好ましい。
【0020】
第1の透明基材10としては、複屈折がないものが好ましい。
第1の透明基材10の厚さは、基材としての耐久性が保たれる厚さであればよい。透明基材の厚さは、たとえば、0.01mm以上であってよく、0.05mm以上であってよく、0.1mm以上であってよい。また、透明基材の厚さは、たとえば、10mm以下であってよく、5mm以下であってよく、0.5mm以下であってよく、0.3mm以下であってよく、0.15mm以下であってよい。
【0021】
(第2の透明基材(光減衰層))
第2の透明基材20は、光減衰成分が配合されて着色されており、映像表示透明部材1を透過する光の一部を減衰させる光減衰層にもなっている。
映像表示透明部材1では、第2の透明基材20が光減衰層になっていることで、観察者Yが映像表示透明部材1の向こう側の光景を見る際に、その光景の視認性が優れたものとなる。
【0022】
第2の透明基材20の材料としては、第1の透明基材10の材料として挙げたガラス、透明樹脂等に光減衰成分が配合されたものが挙げられる。
ガラスに含まれる光減衰成分としては、たとえば、Fe、CoO、TiO、V、CuO、Cr、NiO、Er、Nd、CeO、MnO、SeO等の金属酸化物が挙げられ、赤外線のカット等の機能付与の点から、Fe、Cuが含まれていることが好ましい。
透明樹脂に含まれる光減衰成分としては、たとえば、カーボンブラック、チタンブラック等の顔料やアジン系化合物等の染料が挙げられ、耐候性の点から、顔料が好ましい。
【0023】
また、第2の透明基材20は偏光依存性を備えていてもよい。たとえば、投影機からの映像光Lに含まれる光量のうち、多くの光が持つ偏光方向と第2の透明基材20がより多く減衰させる側の偏光方向を揃える。これにより、高い透過率を備えながらも効率よく映像光Lを吸収し、観察者Yの光景の視認性を向上させることができる。
偏光依存性を備える光減衰成分としては、二色性色素、金属のナノロッド等が挙げられる。また、偏光依存性を備える第2の透明基材は、ヨウ素や染料、銀等を含んだ透明樹脂を延伸することでも作成できる。また、第2の透明基材20の表面に、ワイヤーグリッド構造を形成して偏光依存性を付与したものを用いてもよい。偏光依存性としては、透過率の比が2以上であれば、偏光依存性の無い光減衰材料との差が光景の明るさとして感じられるようになることから好ましく、5以上であるとさらに好ましく、10以上であると特に好ましい。
【0024】
光減衰層の第2の透明基材20の透過率は、観察者Yから見て映像表示透明部材1の向こう側の光景の視認性がよい点から、3%以上が好ましく、5%以上がより好ましく、10%以上がさらに好ましい。
光減衰層の第2の透明基材20の透過率は、観察者Yから見て映像表示透明部材1の向こう側の光景のコントラストが高くなる点から、70%以下が好ましく、50%以下がより好ましく、30%以下がさらに好ましく、10%以下が特に好ましい。
光減衰層の第2の透明基材20のヘーズは、光減衰層で結像しにくくする点から、10%以下が好ましく、5%以下がより好ましく、2%以下がさらに好ましく、1%以下が特に好ましい。
【0025】
光減衰層の第2の透明基材20の色は、均一に光を減光するグレーを用いると光景や投影像のコントラスト向上を図ることができ好ましい。好ましい範囲としては、xyY表色系において、0.25≦x≦0.4、0.25≦y≦0.4であるとよく、0.27≦x≦0.38、0.27≦y≦0.38であると好ましい。
【0026】
光減衰層の第2の透明基材20の色は、青味を帯びていると、光景の視認性が向上するため、好ましい。好ましい範囲としては、xyY表色系において、x≦0.33、y≦0.5であると好ましい。
【0027】
光減衰層の第2の透明基材20の色は、緑味を帯びていると、透過光量を小さくするようなプライバシーガラスとした際にも、視感度の高い領域の透過率を確保できる。そのため、効率よく可視光、赤外光、紫外光をカットすることによる効能と視界の確保の両立を得ることができる。好ましい範囲としては、xyY表色系において、y>x、0.33≦yであると好ましい。
【0028】
本発明では、図1のように光減衰層である第2の透明基材20の面積が映像表示部30の面積と同じか、または光減衰層である第2の透明基材20の面積が映像表示部30の面積よりも大きいことが好ましい。これにより、観察者Y側から入射する光(太陽光等)が後述の反射膜で散乱した反射散乱光の一部が安定して光減衰層に吸収される。そのため、観察者Yから見て映像表示透明部材の向こう側の光景のコントラストの低下が安定して抑制され、映像表示透明部材1の向こう側の光景の優れた視認性が安定して実現されやすくなる。
【0029】
第2の透明基材20としては、複屈折がないものが好ましい。
第2の透明基材20の厚さは、基材としての耐久性が保たれる厚さであればよい。透明基材の厚さは、たとえば、0.01mm以上であってよく、0.05mm以上であってよく、0.1mm以上であってよい。また、透明基材の厚さは、たとえば、10mm以下であってよく、5mm以下であってよく、0.5mm以下であってよく、0.3mm以下であってよく、0.15mm以下であってよい。
【0030】
(接着層)
接着層12および接着層22(以下、まとめて接着層とも記す。)の材料としては、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、粘着剤(アクリル系粘着剤等)、光硬化性樹脂組成物、熱可塑性樹脂組成物等が挙げられる。各接着層の材料は、同じものであってもよく、異なるものであってもよい。
【0031】
熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂としては、たとえば、可塑化ポリビニルアセタール、可塑化ポリ塩化ビニル、飽和ポリエステル、可塑化飽和ポリエステル、ポリウレタン、可塑化ポリウレタン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体等が挙げられる。
【0032】
接着層の厚さは、接着層としての機能が保たれる厚さであればよく、たとえば、0.01~1.5mmが好ましく、0.05~1mmがより好ましい。
【0033】
(映像表示部)
映像表示部30は、第1の透明フィルム31と;第1の透明フィルム31の表面に設けられた、表面に不規則な凹凸構造を有する第1の透明層32と;第1の透明層32の凹凸構造側の面に沿うように形成された、入射した光の一部を透過する反射膜33と;反射膜33の表面を覆うように設けられた第2の透明層34と;第2の透明層34の表面に設けられた第2の透明フィルム35とを有する光散乱シートからなる。
【0034】
(透明フィルム)
第1の透明フィルム31および第2の透明フィルム35(以下、まとめて透明フィルムとも記す。)は、透明樹脂フィルムであってもよく、薄いガラスフィルムであってもよい。各透明フィルムの材料は、同じものであってもよく、異なるものであってもよい。
【0035】
透明樹脂フィルムを構成する透明樹脂としては、ポリカーボネート、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、トリアセチルセルロース、シクロオレフィンポリマー、ポリメチルメタクリレート等が挙げられる。
【0036】
透明フィルムの厚さは、ロールツーロールプロセスを適用できる厚さが好ましく、たとえば、0.01~0.5mmが好ましく、0.05~0.3mmがより好ましく、0.2mm以下がさらに好ましい。
【0037】
(透明層)
第1の透明層32および第2の透明層34(以下、まとめて透明層とも記す。)は、透明樹脂層であることが好ましい。各透明層の材料は、同じものであってもよく、異なるものであってもよく、同じものが好ましい。
【0038】
透明樹脂層を構成する透明樹脂としては、光硬化性樹脂(アクリル樹脂、エポキシ樹脂等)の硬化物、熱硬化性樹脂の硬化物、熱可塑性樹脂が好ましい。透明樹脂層を構成する透明樹脂のイエローインデックスは、映像表示透明部材における窓としての機能が損なわれないように透明感を維持する点から、10以下が好ましく、5以下がより好ましい。
【0039】
透明層の厚さ(凹凸構造が形成された部分を除く)は、ロールツーロールプロセスにて形成しやすい厚さであればよく、たとえば、0.5~50μmが好ましい。
透明層の透過率は、50~100%が好ましく、75~100%がより好ましく、90~100%がさらに好ましい。
【0040】
第1の透明層32の表面に形成された不規則な凹凸構造の算術平均粗さRaは、0.01~20μmが好ましく、0.05~10μmがより好ましい。算術平均粗さRaが該範囲内であれば、投射された映像の視野角が広く、正反射光を直接見ずに視認でき、凹凸構造による粒状感が抑えられる。算術平均粗さRaが10μm以下であれば、映像表示透明部材1の向こう側の光景を見るときに凹凸構造が邪魔にならず、より好ましい。
【0041】
(反射膜)
反射膜33は、反射膜33に入射した光の一部を透過し、他の一部を反射するものであればよい。反射膜33としては、金属膜、半導体膜、誘電体単層膜、誘電体多層膜、これらの組み合わせ等が挙げられる。
【0042】
金属膜、半導体膜を構成する金属としては、Al、Ag、Ni、Cr、W、Si等が考えられ、特にAlやAg、または、それらが主成分である合金が好ましい。
誘電体膜を構成する誘電体としては、金属酸化物、金属窒化物等が挙げられる。
反射膜33としては、金属薄膜、または、酸化物膜、金属薄膜、酸化物膜の順に積層された膜構成のものが好ましい。
【0043】
反射膜33の厚さは、第1の透明層32の表面に形成された不規則な凹凸構造の算術平均粗さRaによる機能を妨げずに活かすことができる点から、1~100nmが好ましく、4~25nmがより好ましい。
反射膜33の不規則な凹凸構造の算術平均粗さRaは第1の透明層32と同じ理由で0.01~20μmが好ましく、0.05~10μmがより好ましい。
反射膜33の反射率は、充分なスクリーンのゲインが得られる範囲としては、5%以上が好ましく、15%以上がより好ましく、30%以上がさらに好ましい。
【0044】
(映像表示部の製造方法)
映像表示部30の製造方法の一例を図2を参照しながら説明する。
【0045】
図2(a)に示すように、第1の透明フィルム31の表面に、光硬化性樹脂36を塗布し、不規則な凹凸構造が表面に形成されたモールド61を、凹凸構造が光硬化性樹脂36に接するように、光硬化性樹脂36の上に重ねる。
【0046】
第1の透明フィルム31の側から光(紫外線等)を照射し、光硬化性樹脂36を硬化させて、モールド61の不規則な凹凸構造が表面に転写された第1の透明層32を形成した後、図2(b)に示すように、モールド61を剥離する。
【0047】
図2(c)に示すように、第1の透明層32の表面に金属を物理蒸着し、金属薄膜からなる反射膜33を形成する。
【0048】
図2(d)に示すように、反射膜33の表面に光硬化性樹脂37を塗布し、光硬化性樹脂37の上に第2の透明フィルム35を重ねる。
第1の透明フィルム31の側または第2の透明フィルム35の側から光(紫外線等)を照射し、光硬化性樹脂37を硬化させて、第2の透明層34を形成することによって、映像表示部30を得る。
【0049】
モールド61としては、不規則な凹凸構造が表面に形成された樹脂フィルム、金属板等が挙げられる。不規則な凹凸構造が表面に形成された樹脂フィルムとしては、微粒子を含む樹脂フィルム、サンドブラスト処理された樹脂フィルム等が挙げられる。
光硬化性樹脂の塗布方法としては、ダイコート法、ブレードコート法、グラビアコート法、スピンコート法、インクジェット法、スプレーコート法等が挙げられる。
物理蒸着方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法等が挙げられる。
【0050】
(反射型の映像表示透明部材の光学特性)
映像表示透明部材1の透過率は、観察者側から見て映像表示透明部材1の向こう側に見える光景の視認性がよい点から、3%以上が好ましく、5%以上がより好ましく、10%以上がさらに好ましい。
映像表示透明部材1の透過率は、投影像のコントラストを適切に保つ点から、60%以下が好ましく、40%以下がより好ましく、30%以下がさらに好ましく、20%以下が特に好ましい。
【0051】
映像表示透明部材1の前方ヘーズは、観察者側から見て映像表示透明部材1の向こう側に見える光景の視認性がよい点から、50%以下が好ましく、20%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましい。
【0052】
映像表示透明部材1の後方ヘーズは、スクリーンゲイン確保の点から、正規反射率を上げる平坦なミラーや平坦なハーフミラーの様な構造を映像表示透明部材1が含まない場合、5%以上が好ましく、10%以上がより好ましく、15%以上がさらに好ましい。
映像表示透明部材1の後方ヘーズは、観察者側から見て映像表示透明部材1の向こう側に見える光景の視認性の点から、90%以下が好ましく、80%以下がより好ましい。
【0053】
前方ヘーズに対する後方ヘーズの比率(後方ヘーズ/前方ヘーズ)は、0.5以上が好ましく、1以上がより好ましい。後方ヘーズ/前方ヘーズが1以上であれば、映像表示透明部材1を見る観察者の視線が届く範囲に100ルクス以上の環境があっても、観察者側から見て映像表示透明部材1の向こう側に見える光景の視認性がよく、投射された映像と映像表示透明部材1の向こう側の光景とを見ることができる。このような映像表示透明部材1は、周囲に外光が存在する環境下で利用されることに適している。
【0054】
映像表示透明部材1における隣り合う各層間の屈折率差は、各層界面における反射率が0.5%以内に抑えられる点から、0.2以内が好ましく、各層界面での反射率が0.1%程度となる点から、0.1以内がより好ましい。
【0055】
(反射型の映像表示透明部材を備えた映像表示システム)
本発明の映像表示システムの第1の態様は、本発明の反射型の映像表示透明部材と、映像表示透明部材の第1の面側に設置された投影機とを備えた映像表示システムである。
【0056】
図1は、本発明の映像表示システムの一例を示す概略構成図である。
映像表示システムは、反射型の映像表示透明部材1と、映像表示透明部材1の第1の面A側に設置された投影機200とを備える。
【0057】
投影機200は、映像表示透明部材1に映像光Lを投射できるものであればよい。投影機200としては、公知のプロジェクタ等が挙げられる。
【0058】
(反射型の映像表示透明部材を用いた映像表示方法)
本発明の映像表示方法の第1の態様は、本発明の反射型の映像表示透明部材に、映像表示透明部材の第1の面側に設置された投影機から映像光を投射し、映像を表示させる映像表示方法である。
【0059】
図1に示すように、投影機200から投射され、映像表示透明部材1の第1の透明基材10側の表面(第1の面A)から入射した映像光Lが、反射膜33において散乱することによって結像し、投影機200と同じ側にいる観察者Xに映像として視認可能に表示できる。
また、映像表示透明部材1における反射膜33が入射した光の一部を透過するため、第1の面A側の光景を第2の面B側の観察者Yに視認可能に透過でき、かつ第2の面B側の光景を第1の面A側の観察者Xに視認可能に透過できる。
【0060】
(作用機序)
以上説明した反射型の映像表示透明部材1、ならびにこれを用いた映像表示システムおよび映像表示方法にあっては、たとえば映像表示透明部材1を第2の面Bが室外となるように窓として用いる場合、第2の面B側から映像表示透明部材1に入射した太陽光L1が反射膜33で散乱し、その反射散乱光の一部が、光減衰層である第2の透明基材20で吸収されて減少する。その結果、観察者Yが映像表示透明部材1の向こう側の光景を見る際、映像表示透明部材1の向こう側から透過してくる光のコントラストが向上する。そのため、観察者Yから見て映像表示透明部材1の向こう側の光景のコントラストが向上し、日中における該光景の視認性に優れる。
また、光減衰層である第2の透明基材20による前記反射散乱光の吸収によって、第2の面B側から見たときに映像表示透明部材1が白くぼやけて見えることが抑制されるため、意匠性に優れる。そのため、映像表示透明部材1は第2の面Bを室外側とする窓等の用途に有用である。
【0061】
また、この例の反射型の映像表示透明部材1では、映像表示透明部材1の第2の面B側から入射する光の一部が光減衰層である第2の透明基材20で吸収されるため、観察者Xから見て投影機200から投射された映像光による映像のコントラストが向上し、その視認性に優れる。
【0062】
(他の実施形態)
なお、本発明の反射型の映像表示透明部材は、第1の面およびこれとは反対側の第2の面を有し、第1の面側の光景を第2の面側の観察者に視認可能に透過し、第2の面側の光景を第1の面側の観察者に視認可能に透過し、かつ第1の面側から投射された映像光を第1の面側の観察者に映像として視認可能に表示する映像表示透明部材であって、前記映像表示透明部材は、当該映像表示透明部材を透過する光の一部を減衰させる光減衰層を有するものであればよく、図1の映像表示透明部材1に限定はされない。以下、図1の映像表示透明部材1と同じ構成のものについては同じ符号を付し、説明を省略する。
【0063】
本発明の反射型の映像表示透明部材は、図3に示すように、第1の透明基材10を省略した映像表示透明部材2であってもよい。映像表示透明部材2の具体例としては、たとえば、第2の透明基材20が既存の窓ガラス等である例、すなわち映像表示部30を、既存の窓ガラス等に貼り付けた例が挙げられる。
また、2枚のガラス板と、ガラス板間に空隙が形成されるようにガラス板の周縁部に介在配置された枠状のスペーサとを有する複層ガラスにおいて、一方のガラス板を着色ガラス板とし、さらに一方のガラス板の内面に映像表示部30を貼り付けたものであってもよい。
【0064】
本発明の反射型の映像表示透明部材は、図4に示すように、第1の透明基材10の代わりに、光減衰成分が配合されて着色され、透明部材を透過する光の一部を減衰させる光減衰層となる第1の透明基材10Aを有し、第2の透明基材20の代わりに、光減衰成分が配合されず着色されていない第2の透明基材20Aを有する映像表示透明部材1Aであってもよい。
光減衰成分が配合されて着色された第1の透明基材10Aとしては、映像表示透明部材1の第2の透明基材20と同じものが挙げられる。光減衰成分が配合されず着色されていない第2の透明基材20Aとしては、映像表示透明部材1の第1の透明基材10と同じものが挙げられる。
【0065】
映像表示透明部材1Aでは、たとえば映像表示透明部材1Aを第2の面Bが室外となるように窓として用いる場合、第1の面A側から映像表示透明部材1Aに入射した照明の光L2が反射膜33で散乱した反射散乱光の一部が、光減衰層である第1の透明基材10Aで吸収されて減少する。その結果、第1の面A側の観察者が映像表示透明部材1Aの向こう側の光景を見る際、映像表示透明部材1Aの向こう側から透過してくる光のコントラストが向上する。そのため、第1の面A側の観察者から見て映像表示透明部材1Aの向こう側の光景のコントラストが向上し、夜における該光景の視認性に優れる。
また、この例では、第1の面A側の投影機200(図示省略)から投射した映像光が反射膜33で散乱した反射散乱光の一部が光減衰層である第1の透明基材10Aで吸収されることで、光減衰層が無い場合に比べて映像のゲインが低下するが、これは投影機200からの映像光の量を多くすることで対応可能である。
また、偏光依存性のある光減衰材料を用いた場合は、投影光L(図示省略)と透過する偏光方向を揃えることで、ゲインの低下を抑制しながらも、光景の視認性を上げることができ好ましい。
【0066】
本発明の反射型の映像表示透明部材は、図5に示すように、いずれも光減衰成分が配合されず着色されていない第1の透明基材10および第2の透明基材20Aを有し、第2の透明基材20Aの、映像表示部30とは反対側の表面に、光減衰成分が配合されて着色され、透明部材を透過する光の一部を減衰させる光減衰層50が配置された映像表示透明部材3であってもよい。第2の透明基材20Aと光減衰層50とは、接着層52によって接着されている。
【0067】
光減衰層50としては、たとえば、光減衰成分が配合されて着色された着色透明フィルムが挙げられる。着色透明フィルムは、光減衰成分が配合されて着色された着色透明樹脂フィルムであってもよく、光減衰成分が配合されて着色された薄い着色ガラスフィルムであってもよく、吸光係数が大きい薄膜材料であってもよい。
光減衰層50を構成する着色透明樹脂フィルムの透明樹脂としては、ポリカーボネート、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、シクロオレフィンポリマー、ポリメチルメタクリレート等が挙げられる。
光減衰層50における光減衰成分としては、たとえば、カーボンブラック、チタンブラック等の顔料やアジン系化合物等の染料が挙げられ、耐候性の点から、顔料が好ましい。
光減衰層50における吸光係数が大きい薄膜材料としては、Cr、Mo、W、Fe、Al、Si等の酸化物、グラフェン、DLC等のカーボン系材料等が挙げられる。
光減衰層50に偏光依存性を付与する場合は、二色性色素、金属等のナノロッド等や、ヨウ素、Ag等を延伸したもの、吸収薄膜を斜方蒸着したもの等が挙げられる。
【0068】
光減衰層50の透過率は、観察者Yから見て映像表示透明部材1の向こう側の光景の視認性がよい点から、3%以上が好ましく、5%以上がより好ましく、10%以上がさらに好ましい。
光減衰層50の透過率は、観察者Yから見て映像表示透明部材1の向こう側の光景のコントラストが高くなる点から、70%以下が好ましく、50%以下がより好ましく、30%以下がさらに好ましく、10%以下が特に好ましい。
光減衰層50のヘーズは、光減衰層で結像しにくくする点から、10%以下が好ましく、5%以下がより好ましく、2%以下がさらに好ましく、1%以下が特に好ましい。
接着層52としては、接着層12、接着層22と同じものが挙げられる。
【0069】
映像表示透明部材3では、映像表示透明部材1と同様の理由から、第2の面B側の観察者から見て映像表示透明部材3の向こう側の光景のコントラストが向上し、該光景の視認性に優れる。また、第1の面A側の観察者から見て第1の面A側の投影機200(図示省略)から投射された映像光による映像の視認性に優れる。
【0070】
本発明の反射型の映像表示透明部材は、図6に示すように、第1の透明基材10および第2の透明基材20を省略し、映像表示部30の第2の透明フィルム35の表面に光減衰層50を配置した映像表示透明部材4Aであってもよい。映像表示透明部材4Aでは、映像表示透明部材1と同様の理由から、第2の面B側の観察者から見て映像表示透明部材4Aの向こう側の光景のコントラストが向上し、該光景の視認性に優れる。また、第1の面A側の観察者から見て第1の面A側の投影機200(図示省略)から投射された映像光による映像の視認性に優れる。
また、図7に示すように、第1の透明基材10および第2の透明基材20を省略し、映像表示部30の第1の透明フィルム31の表面に光減衰層50を配置した映像表示透明部材4Bであってもよい。映像表示透明部材4Bでは、映像表示透明部材1Aと同様の理由から、第1の面A側の観察者から見て映像表示透明部材4Bの向こう側の光景のコントラストが向上し、該光景の視認性に優れる。
【0071】
映像表示透明部材4A,4Bは、接着層を用いて既存の窓ガラス等への貼り付けが可能である。また、映像表示透明部材4A,4Bは、変形させることが可能であり、曲面を有する映像表示透明部材を形成するのに向いている。
また、図6図7の映像表示透明部材4A,4Bにおいて、第1の透明フィルム31および第2の透明フィルム35をそれぞれ透明基材に置き換えた映像表示部を有するものであってもよい。
【0072】
本発明の反射型の映像表示透明部材は、図8に示すように、いずれも光減衰成分が配合されて着色された第1の透明基材10Aおよび第2の透明基材20を有する映像表示透明部材1Bであってもよい。
映像表示透明部材1Bでは、映像表示透明部材1と同様の理由から、第2の面B側の観察者から見て映像表示透明部材1Bの向こう側の光景のコントラストが向上し、該光景の視認性に優れる。また、第1の面A側の観察者から見て第1の面A側の投影機200(図示省略)から投射された映像光による映像の視認性に優れる。また、映像表示透明部材1Aと同様の理由から、第1の面A側の観察者から見て映像表示透明部材1Bの向こう側の光景のコントラストが向上し、該光景の視認性に優れる。
【0073】
本発明の反射型の映像表示透明部材は、図9に示すように、いずれも光減衰成分が配合されず着色されていない第1の透明基材10および第2の透明基材20Aを有し、第2の透明フィルム35Aに光減衰成分が配合されて着色され、透明部材を透過する光の一部を減衰させる光減衰層となっている映像表示部30Aを有する映像表示透明部材1Cであってもよい。
映像表示透明部材1Cでは、映像表示透明部材1と同様の理由から、第2の面B側の観察者から見て映像表示透明部材1Cの向こう側の光景のコントラストが向上し、該光景の視認性に優れる。また、第1の面A側の観察者から見て第1の面A側の投影機200(図示省略)から投射された映像光による映像の視認性に優れる。
【0074】
また、映像表示透明部材1Cにおいて、第2の透明フィルム35Aの代わりに、第1の透明フィルム31に光減衰成分が配合されて着色され、透明部材を透過する光の一部を減衰させる光減衰層となっている映像表示透明部材であってもよい。また、第1の透明フィルム31と第2の透明フィルム35の両方に光減衰成分が配合されて着色され、透明部材を透過する光の一部を減衰させる光減衰層となっている映像表示透明部材であってもよい。
また、本発明の反射型の映像表示透明部材は、映像表示透明部材1において、第2の透明基材20の代わりに、光減衰成分が配合されていない第2の透明基材20Aを有し、接着層12および接着層22のいずれか一方もしくは両方に光減衰成分が配合されて着色され、透明部材を透過する光の一部を減衰させる光減衰層となっている映像表示透明部材であってもよい。
映像表示部の透明フィルムや接着層に配合される光減衰成分としては、たとえば、光減衰層50で挙げたものと同じものが挙げられる。
【0075】
光減衰層となっている部材の機能としては、透過率を減少させる機能を持っていればよいため、ハーフミラーを光減衰層として用いてもよい。
ハーフミラーの反射率としては、5%以上であればよく、10%以上であると好ましく、場合によっては、25%以上であってもよい。
ハーフミラーを、映像表示部と投影機との間に配置することにより、上記の効果に加えて、両面への投影を可能とできる。また、映像表示部と投影機との間ではない部分に配置することにより、マジックミラーとしての機能を付与できるため、さらに、後方への映像抜けを観察者へ認識させにくくすることができるようになる。
本発明の反射型の映像表示透明部材における光減衰層の態様としては、上述の通り、図1および図3の第2の透明基材20、図4の第1の透明基材10A、図5図7の着色透明フィルム、図8における第1の透明基材10Aおよび第2の透明基材20に例示したような透明基材や透明フィルム、およびハーフミラーが挙げられる。
【0076】
本発明の反射型の映像表示透明部材においては、投影機からの映像光を第2の透明基材側に投射してもよい。この場合、第2の透明基材の表面に反射防止フィルムを設けるか、第2の透明基材の表面に直接、反射防止構造を形成する。
また、映像表示部30の第2の透明フィルム35が、投影機200側となるように、映像表示部30を配置してもよい。
【0077】
映像表示部の光散乱シートにおいて、透明フィルムがなくても光散乱シートがその形状を保つことができる場合は、必ずしも光散乱シートに透明フィルムを設ける必要はない。
【0078】
本発明の反射型の映像表示透明部材においては、第1の透明層の表面の凹凸構造が規則的な凹凸構造(マイクロレンズアレイ等)であってもよい。ただし、下記の理由から、第1の透明層の表面の凹凸構造は、不規則な凹凸構造であることが好ましい。
規則的な凹凸構造(マイクロレンズアレイ等)の表面に反射膜を形成した場合、光の回折によって観察者側から見て映像表示透明部材の向こう側に見える光景に色むらが生じたり、分光によって観察者側から見て映像表示透明部材の向こう側に見える光景のエッジ部分が虹色に見えたりして、視認性が損なわれる。一方、不規則な凹凸構造の表面に反射膜を形成した場合、光の回折や分光が起こりにくく、これらの問題が生じにくい。そのため、映像表示透明部材を見る方向や場所、入射する光の向きによって色目が変わるような現象が抑えられ、また、映像表示透明部材の向こう側に見える光景の分光が抑えられる。その結果、映像表示透明部材の向こう側に見える光景の視認性に優れ、視線を邪魔しない透明スクリーンとしての性質を備えることができる。
【0079】
また、反射膜付の凹凸構造、凹凸を埋め込んだ後のものの他の例としては、ハーフミラーに散乱材料を積層したもの;体積ホログラムによって、反射、偏向、拡散されるもの;キノフォーム型ホログラム、その他凹凸表面やその表面に反射膜を形成した構成によって、偏向、反射、拡散されるもの;コレステリック液晶、高分子コレステリック液晶を利用したもの(凹凸構造の表面に配向、形成したコレステリック液晶、高分子コレステリック液晶の表面にエッチング等で凹凸をつけたもの、水平配向と垂直配向の基材にてコレステリック液晶の液晶層を形成したもの、コレステリック液晶に界面活性剤を添加したものを基材上に塗布して、塗布表面を垂直配光させたもの、または、塗布表面の配向性を落としたもの)等が挙げられる。
また、反射膜がなくても、第1の透明基材10が凹凸構造のみで充分に光を反射、散乱できる場合は、必ずしも反射膜を設ける必要はない。
【0080】
<透過型の映像表示透明部材>
本発明の映像表示透明部材の第2の態様は、第1の面およびこれとは反対側の第2の面を有し、第1の面側の光景を第2の面側の観察者に視認可能に透過し、第2の面側の光景を第1の面側の観察者に視認可能に透過し、かつ第1の面側から投射された映像光を第2の面側の観察者に映像として視認可能に表示する映像表示透明部材であって、前記映像表示透明部材は、当該映像表示透明部材を透過する光の一部を減衰させる光減衰層を有する、透過型の映像表示透明部材である。
【0081】
図10は、本発明の透過型の映像表示透明部材の一例を示す層構成図である。以下、図1の映像表示透明部材1と同じ構成のものについては同じ符号を付し、説明を省略する。
映像表示透明部材5は、第1の透明基材10と、第2の透明基材20との間に、映像表示部40が配置され、第2の透明基材20に光減衰成分が配合されて着色され、映像表示透明部材1を透過する光の一部を減衰させる光減衰層となっているものである。
第1の透明基材10と映像表示部40とは、接着層12によって接着され、第2の透明基材20と映像表示部40とは、接着層22によって接着されている。
映像表示透明部材5では、第2の透明基材20が光減衰層になっていることで、観察者Yが映像表示透明部材5の向こう側の光景を見る際に、その光景の視認性が優れたものとなる。
【0082】
(映像表示部)
映像表示部40は、第1の透明フィルム41と;第1の透明フィルム41の表面に設けられた透明層42と;透明層42の内部に互いに平行に、かつ所定の間隔で配置された、面方向に沿って延びる、長手方向に直交する方向の断面が直角三角形の複数の光散乱部43と;透明層42の表面に設けられた第2の透明フィルム45とを有する光散乱シートからなる。以下、このようにストライプ状に一次元方向に延びる複数の光散乱部43が形成されている構造をルーバー構造と記載する場合がある。
【0083】
(透明フィルム)
第1の透明フィルム41および第2の透明フィルム45(以下、まとめて透明フィルムとも記す。)は、透明樹脂フィルムであってもよく、薄いガラスフィルムであってもよい。各透明フィルムの材料は、同じものであってもよく、異なるものであってもよい。
透明フィルムとしては、上述した映像表示部30の透明フィルムと同様のものを用いればよい。
【0084】
(透明層)
透明層42は、透明樹脂層であることが好ましい。
透明樹脂層を構成する透明樹脂としては、上述した映像表示部30の透明樹脂層を構成する透明樹脂と同様のものを用いればよい。
【0085】
透明層42の厚さは、10~200μmが好ましい。透明層42の厚さが10μm以上であれば、光散乱部43の間隔も10μm以上となり、ルーバーの構造の効果が充分に発揮される。透明層42の厚さが200μm以下であれば、ロールツーロールプロセスにて透明層42を形成しやすい。
【0086】
(光散乱部)
光散乱部43は、たとえば、透明樹脂、光散乱材料、および必要に応じて光減衰材料を含む。
【0087】
光散乱部43に含まれる透明樹脂としては、光硬化性樹脂(アクリル樹脂、エポキシ樹脂等)の硬化物、熱硬化性樹脂の硬化物、熱可塑性樹脂が挙げられる。光散乱部43に含まれる透明樹脂は、透明層42を構成する透明樹脂と同一であってもよく、異なってもよい。
【0088】
光散乱材料としては、酸化チタン(屈折率:2.5~2.7)、酸化ジルコニウム(屈折率:2.4)、酸化アルミニウム(屈折率:1.76)等の高屈折率材料の微粒子;ポーラスシリカ(屈折率:1.3以下)、中空シリカ(屈折率:1.3以下)等の低屈折率材料の微粒子;前記透明樹脂との相溶性の低い屈折率が異なる樹脂材料;結晶化した1μm以下の樹脂材料等が挙げられる。
【0089】
光散乱材料の濃度は、0.01~5体積%が好ましく、0.05~1体積%がより好ましい。
光散乱材料が微粒子である場合、微粒子の平均粒子径は、0.05~1μmが好ましく、0.15~0.8μmがより好ましい。微粒子の平均粒子径が、散乱する光の波長と同程度かやや小さいと、前方に散乱される確率が大きくなり、入射した光を屈折させずに散乱させる機能が強くなる。その結果、観察者側から見て映像表示透明部材5の向こう側に見える光景の歪みを抑制し、急激に光量を変化させることがないため、光景の視認性が向上する。
【0090】
光散乱部43が光減衰材料を含む場合、映像表示透明部材5内を不要な迷光として伝搬する光の一部を減衰させることができ、散乱される光が減少する。そのため、映像表示透明部材5において白濁して見える現象を抑え、映像のコントラストが向上し、映像の視認性が向上する。また、観察者側から見て映像表示透明部材5の向こう側に見える光景のコントラストも向上し、光景の視認性も向上する。特に、外光によって100ルクス以上の環境が、観察者の視線の中に存在する場合には、前記効果を得やすい。
光減衰材料としては、カーボンブラック、チタンブラック等が挙げられる。
光減衰材料の濃度は、0.01~10体積%が好ましく、0.1~3体積%がより好ましい。
【0091】
光散乱部43の間隔(隣り合う光散乱部43の中心間距離)は、10~250μmが好ましく、10~100μmがより好ましい。光散乱部43の間隔が10μm以上であれば、光散乱部43を形成しやすい。光散乱部43の間隔が250μm以下であれば、光散乱部43を視認しにくい。
【0092】
光散乱部43の幅(映像表示部40の面方向かつ光散乱部43の長手方向に直交する方向)は、光散乱部43の間隔の10~70%が好ましく、25~50%がより好ましい。光散乱部43の幅が光散乱部43の間隔の10%以上であれば、光散乱部43を形成しやすい。光散乱部43の幅が光散乱部43の間隔の70%以下であれば、光散乱部43の透過率、および観察者側から見て映像表示透明部材5の向こう側に見える光景の視認性が向上する。
【0093】
光散乱部43の幅に対する光散乱部43の高さ(映像表示部40の面方向に直交する方向)の比、すなわちアスペクト比は、光景の直進光の透過率を維持しながら斜入射する投影機からの映像光を高ゲインにて散乱させることから、1以上が好ましく、1.5以上がより好ましく、2以上がさらに好ましい。
【0094】
(映像表示部の製造方法)
映像表示部40の製造方法の一例を図11を参照しながら説明する。
【0095】
図11(a)に示すように、第1の透明フィルム41の表面に、光硬化性樹脂46を塗布し、光散乱部43に対応した断面直角三角形の複数の凸条が表面に形成されたモールド62を、凸条が光硬化性樹脂46に接するように、光硬化性樹脂46の上に重ねる。
【0096】
第1の透明フィルム41の側から光(紫外線等)を照射し、光硬化性樹脂46を硬化させて、モールド62の凸条に対応する溝44が表面に形成された透明層下層42aを形成した後、図11(b)に示すように、モールド62を剥離する。
【0097】
図11(c)に示すように、透明層下層42aの表面に、光硬化性樹脂、光散乱材料、および必要に応じて光減衰材料を含むペーストを供給し、余剰分をドクターブレードでかき取ることによって、透明層下層42aの溝44にペースト48を埋め込む。光(紫外線等)を照射し、ペースト48を硬化させて、光散乱部43を形成する。
【0098】
図11(d)に示すように、透明層下層42aの表面および光散乱部43の表面に光硬化性樹脂47を塗布し、光硬化性樹脂47の上に第2の透明フィルム45を重ねる。
第1の透明フィルム41の側または第2の透明フィルム45の側から光(紫外線等)を照射し、光硬化性樹脂47を硬化させて、透明層上層を形成することによって、映像表示部40を得る。
【0099】
モールド62としては、複数の凸部が表面に形成された樹脂フィルム、金属板等が挙げられる。
光硬化性樹脂の塗布方法としては、ダイコート法、ブレードコート法、グラビアコート法、スピンコート法、インクジェット法、スプレーコート法等が挙げられる。
【0100】
(透過型の映像表示透明部材の光学特性)
映像表示透明部材5の透過率は、観察者側から見て映像表示透明部材5の向こう側に見える光景の視認性がよい点から、1%以上が好ましく、5%以上がより好ましい。
【0101】
映像表示透明部材5の前方ヘーズは、スクリーンゲインの確保および視野角の確保の点から、4%以上が好ましく、5%以上がより好ましく、8%以上がさらに好ましい。
映像表示透明部材5の前方ヘーズは、観察者側から見て映像表示透明部材5の向こう側に見える光景の視認性の点から、40%以下が好ましく、30%以下がより好ましく、20%以下がさらに好ましい。
【0102】
映像表示透明部材5における透明層42の屈折率と光散乱部43の屈折率との差は、0.01以下が好ましく、0.005以下がより好ましく、0.001以下がさらに好ましい。透明層42の屈折率と光散乱部43の屈折率との差が大きいと、観察者側から見て映像表示透明部材5の向こう側に見える光景が多重に見える。虹ムラや光景の分光を抑える点から、透明層42と光散乱部43は同じ屈折率であることが好ましい。
【0103】
映像表示透明部材5における透明フィルムの屈折率と透明層42の屈折率との差も、できるだけ小さいことが好ましい。透明フィルムの屈折率と透明層42の屈折率との差は、0.1以下が好ましく、0.05以下がより好ましく、0.01以下がさらに好ましく、0.001以下が特に好ましい。
【0104】
(透過型の映像表示透明部材を備えた映像表示システム)
本発明の映像表示システムの第2の態様は、本発明の透過型の映像表示透明部材と、映像表示透明部材の第1の面側に設置された投影機とを備えた映像表示システムである。
【0105】
図10は、本発明の映像表示システムの他の例を示す概略構成図である。
映像表示システムは、透過型の映像表示透明部材5と、映像表示透明部材5の第1の面A側に設置された投影機200とを備える。
【0106】
投影機200は、映像表示透明部材5に映像光Lを投射できるものであればよい。投影機200としては、公知のプロジェクタ等が挙げられる。
【0107】
(透過型の映像表示透明部材を用いた映像表示方法)
本発明の映像表示方法の第2の態様は、本発明の透過型の映像表示透明部材に、映像表示透明部材の第1の面側に設置された投影機から映像光を投射し、映像を表示させる映像表示方法である。
【0108】
図10に示すように、投影機200から投射され、映像表示透明部材5の第1の透明基材10側の表面(第1の面A)から入射した映像光Lが、光散乱部43において散乱することによって結像し、投影機200と反対側にいる観察者Yに映像として視認可能に表示される。
また、映像表示透明部材5における光散乱部43間の間隙が光を透過するため、第1の面A側の光景を第2の面B側の観察者Yに視認可能に透過でき、かつ第2の面B側の光景を第1の面A側の観察者Xに視認可能に透過できる。
【0109】
(作用機序)
以上説明した透過型の映像表示透明部材5、ならびにこれを用いた映像表示システムおよび映像表示方法にあっては、たとえば映像表示透明部材5を第2の面Bが室外となるように窓として用いる場合、第1の面A側から映像表示透明部材5に入射した光景(室内)からの直進光が光散乱部43で散乱した散乱光の一部が、光減衰層である第2の透明基材20で吸収されて減少する。その結果、観察者Yが映像表示透明部材5の向こう側の光景を見る際、映像表示透明部材5の向こう側から透過してくる光の解像度が向上する。そのため、該光景の視認性に優れる。また、第2の面B側から映像表示透明部材5に入射した太陽光L1が光散乱部43で散乱し、その反射散乱光の一部が、光減衰層である第2の透明基材20で吸収されて減少する。その結果、第1面のA側の観察者が映像表示透明部材5の向こう側の光景(室外)を見る際、映像表示透明部材5の向こう側から透過してくる光のコントラストが向上する。そのため、観察者Yから見て映像表示透明部材5の向こう側の光景のコントラストが向上し、日中における該光景の視認性に優れる。
また、この例では、投影機200から投射した映像光が光散乱部43で散乱した透過散乱光の一部が光減衰層である第2の透明基材20で減衰されることで、光減衰層が無い場合に比べて映像のゲインが低下するが、これは投影機200からの映像光の量を多くすることで対応可能である。
第2の透明基材20に偏光依存性のある材料を用いる場合は、投影光Lの主たる偏光方向と同じ方向に偏光依存性のある材料の透過率の高い方向を揃えることで、映像光のゲインの低下を抑制しつつ、向こう側の光景の透過率を高くして観察者Yの視認性を高めることができる。
【0110】
(他の実施形態)
なお、本発明の透過型の映像表示透明部材は、第1の面およびこれとは反対側の第2の面を有し、第1の面側の光景を第2の面側の観察者に視認可能に透過し、第2の面側の光景を第1の面側の観察者に視認可能に透過し、かつ第1の面側から投射された映像光を第2の面側の観察者に映像として視認可能に表示する映像表示透明部材であって、前記映像表示透明部材は、当該映像表示透明部材を透過する光の一部を減衰させる光減衰層を有するものであればよく、図10の映像表示透明部材5に限定はされない。以下、図10の映像表示透明部材5と同じ構成のものについては同じ符号を付し、説明を省略する。
【0111】
本発明の透過型の映像表示透明部材は、図12に示すように、第1の透明基材10を省略した映像表示透明部材6であってもよい。映像表示透明部材6の具体例としては、たとえば、第2の透明基材20が既存の窓ガラス等である例、すなわち映像表示部40を、既存の窓ガラス等に貼り付けた例が挙げられる。
また、2枚のガラス板と、ガラス板間に空隙が形成されるようにガラス板の周縁部に介在配置された枠状のスペーサとを有する複層ガラスにおいて、一方のガラス板を着色ガラス板とし、さらに一方のガラス板の内面に映像表示部40を貼り付けたものであってもよい。
【0112】
本発明の透過型の映像表示透明部材は、図13に示すように、第1の透明基材10の代わりに、光減衰成分が配合されて着色され、透明部材を透過する光の一部を減衰させる光減衰層となる第1の透明基材10Aを有し、第2の透明基材20の代わりに、光減衰成分が配合されず着色されていない第2の透明基材20Aを有する映像表示透明部材5Aであってもよい。
映像表示透明部材5Aでは、たとえば映像表示透明部材5Aを第2の面Bが室外となるように窓として用いる場合、第2の面B側から映像表示透明部材5Aに入射した光景(室外)からの直進光が光散乱部43で散乱した散乱光の一部が、光減衰層である第2の透明基材20で吸収されて減少する。その結果、観察者Yが映像表示透明部材5Aの向こう側の光景を見る際、映像表示透明部材5の向こう側から透過してくる光の解像度が向上する。そのため、該光景の視認性に優れる。また、第1の面A側から映像表示透明部材5Aに入射した照明の光L2が光散乱部43で散乱した反射散乱光の一部が、光減衰層である第1の透明基材10Aで減衰されて減少する。その結果、第1の面A側の観察者が映像表示透明部材5Aの向こう側の光景(室外)を見る際、映像表示透明部材5Aの向こう側から透過してくる光のコントラストが向上する。そのため、第1の面A側の観察者から見て映像表示透明部材5Aの向こう側の光景のコントラストが向上し、夜における該光景の視認性に優れる。
第1の透明基材10Aに偏光依存性のある材料を用いる場合は、投影光Lの主たる偏光方向と同じ方向に偏光依存性のある材料の透過率の高い方向を揃えることで、映像光のゲインの低下を抑制しつつ、向こう側の光景の透過率を高くして観察者Xの視認性を高めることができる。
【0113】
本発明の透過型の映像表示透明部材は、図14に示すように、いずれも光減衰成分が配合されず着色されていない第1の透明基材10および第2の透明基材20Aを有し、第2の透明基材20Aの、映像表示部40とは反対側の表面に、光減衰成分が配合されて着色され、透明部材を透過する光の一部を減衰させる光減衰層50が配置された映像表示透明部材7であってもよい。第2の透明基材20Aと光減衰層50とは、接着層52によって接着されている。
映像表示透明部材7の光減衰層50および接着層52は、映像表示透明部材3の光減衰層50および接着層52と同じである。
映像表示透明部材7では、映像表示透明部材5と同様に、第2の面B側の観察者から見て映像表示透明部材7の向こう側の光景のコントラストが向上し、該光景の視認性に優れる。
【0114】
本発明の透過型の映像表示透明部材は、図15に示すように、第1の透明基材10および第2の透明基材20を省略し、映像表示部40の第2の透明フィルム45の表面に光減衰層50を配置した映像表示透明部材8Aであってもよい。映像表示透明部材8Aでは、映像表示透明部材5と同様に、第2の面B側の観察者から見て映像表示透明部材8Aの向こう側の光景のコントラストが向上し、該光景の視認性に優れる。
また、図16に示すように、第1の透明基材10および第2の透明基材20を省略し、映像表示部40の第1の透明フィルム41の表面に光減衰層50を配置した映像表示透明部材8Bであってもよい。映像表示透明部材8Bでは、映像表示透明部材5Aと同様に、第1の面A側の観察者から見て映像表示透明部材8Bの向こう側の光景のコントラストが向上し、該光景の視認性に優れる。
【0115】
映像表示透明部材8A,8Bは、接着層を用いて既存の窓ガラス等への貼り付けが可能である。また、映像表示透明部材8A,8Bは、変形させることが可能であり、曲面を有する映像表示透明部材を形成するのに向いている。
また、図15図16の映像表示透明部材8A,8Bにおいて、第1の透明フィルム41および第2の透明フィルム45をそれぞれ透明基材に置き換えた映像表示部を有するものであってもよい。
【0116】
本発明の透過型の映像表示透明部材は、図17に示すように、いずれも光減衰成分が配合されて着色された第1の透明基材10Aおよび第2の透明基材20を有する映像表示透明部材5Bであってもよい。
映像表示透明部材5Bでは、映像表示透明部材5と同様の理由から、第2の面B側の観察者から見て映像表示透明部材5Bの向こう側の光景のコントラストが向上し、該光景の視認性に優れる。
【0117】
本発明の反射型の映像表示透明部材は、図18に示すように、いずれも光減衰成分が配合されず着色されていない第1の透明基材10および第2の透明基材20Aを有し、第2の透明フィルム45Aに光減衰成分が配合されて着色され、透明部材を透過する光の一部を減衰させる光減衰層となっている映像表示部40Aを有する映像表示透明部材5Cであってもよい。
映像表示透明部材5Cでは、映像表示透明部材5と同様の理由から、第2の面B側の観察者から見て映像表示透明部材5Cの向こう側の光景のコントラストが向上し、該光景の視認性に優れる。
【0118】
また、映像表示透明部材5Cにおいて、第2の透明フィルム45Aの代わりに、第1の透明フィルム41に光減衰成分が配合されて着色され、透明部材を透過する光の一部を減衰させる光減衰層となっている映像表示透明部材であってもよい。また、第1の透明フィルム41と第2の透明フィルム45の両方に光減衰成分が配合されて着色され、透明部材を透過する光の一部を減衰させる光減衰層となっている映像表示透明部材であってもよい。
また、本発明の透過型の映像表示透明部材は、映像表示透明部材5において、第2の透明基材20の代わりに、光減衰成分が配合されていない第2の透明基材20Aを有し、接着層12および接着層22のいずれか一方もしくは両方に光減衰成分が配合されて着色され、透明部材を透過する光の一部を減衰させる光減衰層となっている映像表示透明部材であってもよい。
映像表示部の透明フィルムや接着層に配合される光減衰成分としては、たとえば、光減衰層50で挙げたものと同じものが挙げられる。
【0119】
光減衰層となっている部材の機能としては、透過率を減少させる機能を持っていればよいため、ハーフミラーを光減衰層として用いてもよい。
ハーフミラーの反射率としては、5%以上であればよく、10%以上であると好ましく、場合によっては、25%以上であってもよい。
ハーフミラーを、光散乱部43と投影機との間に配置することにより、上記の効果に加えて、マジックミラーとしての機能を付与できるため、前方への映像抜けを観察者へ認識させにくくすることができるようになる。また、光散乱部43と投影機との間ではない部分に配置することにより、両面への投影を可能とする。
本発明の透過型の映像表示透明部材における光減衰層の態様としては、上述の通り、図10および図12の第2の透明基材20、図13の第1の透明基材10A、図14図16の着色透明フィルム、図17における第1の透明基材10Aおよび第2の透明基材20に例示したような透明基材や透明フィルム、およびハーフミラーが挙げられる。
【0120】
本発明の透過型の映像表示透明部材においては、光散乱部43の長手方向に直交する断面の形状は、図示例のような直角三角形に限定されず、他の三角形、台形、釣鐘形状等であってもよい。
映像表示部の光散乱シートの他の例としては、体積ホログラムによって、透過、偏向、拡散されるもの;キノフォーム型ホログラム、その他凹凸表面を形成した構成によって、偏向、散乱、拡散されるもの等が挙げられる。
【0121】
また、映像表示部の光散乱シートとしては、透明層内に図示例のような複数の光散乱部を設けることなく、透明層全体に光散乱微粒子を分散させて透明層自体を光散乱層としたものであってもよい。
光散乱微粒子としては、上述した酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム等の高屈折率材料の微粒子;ポーラスシリカ、中空シリカ等の低屈折率材料の微粒子等が挙げられる。光散乱微粒子の濃度は、0.01~5体積%が好ましく、0.05~1体積%がより好ましい。光散乱微粒子の平均粒子径は、上述した理由から、50~1000nmが好ましく、100~800nmがより好ましい。
光散乱層は、上述した理由から、光減衰材料を含んでいてもよい。光減衰材料の濃度は、0.01~5体積%が好ましく、0.1~3体積%がより好ましい。
【実施例
【0122】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
例2、4は実施例であり、例1、3は比較例である。
【0123】
(例1)
透明なポリエチレンテレフタレート(以下、PETと記す。)フィルム(東洋紡社製、コスモシャイン(登録商標)A4300、厚さ:0.1mm)の表面に、紫外線硬化性樹脂(大阪ガスケミカル社製、オグソール(登録商標)EA-F5003)100質量部に対し、光開始剤(BASF社製、イルガキュア(登録商標)907)を3質量部混合した溶液をダイコート法によって10μmの厚みに塗布した。
不規則な凹凸構造が表面に形成された白色PETフィルム(東レ社製E20、算術平均粗さRa:0.23μm)を、凹凸構造が紫外線硬化性樹脂に接するように、紫外線硬化性樹脂の上に重ねた。
【0124】
透明PETフィルムの側から1000mJの紫外線を照射し、紫外線硬化性樹脂を硬化させて、白色PETフィルムの不規則な凹凸構造が表面に転写された第1の透明層を形成した後、白色PETフィルムを剥離した。
第1の透明層の表面に、アルミニウムを真空蒸着法によって物理蒸着し、アルミニウム薄膜(厚さ:8nm)からなる反射膜を形成した。
【0125】
反射膜の表面に、紫外線硬化性樹脂(大阪ガスケミカル社製、オグソール(登録商標)EA-F5003)100質量部に対し、光開始剤(BASF社製、イルガキュア(登録商標)907)を3質量部混合した溶液をダイコート法によって10μmの厚みに塗布し、紫外線硬化性樹脂の上に透明PETフィルム(厚さ:0.1mm)を重ねた。
1000mJの紫外線を照射し、紫外線硬化性樹脂を硬化させて、第2の透明層を形成することによって、光散乱シートからなる例1の映像表示部を得た。
【0126】
ソーダライムガラス板(松浪硝子社製、厚さ:3mm)、ポリビニルブチラール(以下、PVBと記す。)フィルム(Solutia社製 Saflex RK11l、厚さ:375μm)、例1の映像表示部、PVBフィルム(厚さ:375μm)、ソーダライムガラス板(厚さ:3mm)の順に積層し、真空加熱圧着を行い、例1の反射型の映像表示透明部材を得た。例1の映像表示透明部材の評価結果を表1に示す。
【0127】
(例2)
例1の映像表示透明部材において、第2の透明基材として色つきガラス(旭硝子社製、<商品名>マイベール、厚さ:3mm、xyY表色系において、x=0.3069、y=0.3126、Y=28.54)を用いて、例2の反射型の映像表示透明部材を得た。例2の映像表示透明部材の評価結果を表1に示す。
【0128】
(例3)
透明PETフィルム(東洋紡社製コスモシャイン(登録商標)A4300、厚さ:50μm)の表面に、紫外線硬化性樹脂(日立化成社製、ヒタロイド(登録商標)7981、比重1.1)をブレードコートによって厚さ80μm塗布した。
光散乱部に対応した断面直角三角形の複数の凸条が表面に形成されたモールドを、凸条が紫外線硬化性樹脂に接するように、温度:25℃、ゲージ圧:0.5MPaの条件で紫外線硬化性樹脂の上に押し付けた。
【0129】
透明PETフィルムの側から紫外線を照射し、紫外線硬化性樹脂を硬化させて、モールドの凸条に対応する溝が表面に形成された透明層下層(厚さ:10μm)を形成した後、モールドを剥離した。これにより、100mm×100mmの領域の透明層下層の表面に、間隔:80μm、幅:40μm、深さ:80μm、長さ:100mm、断面形状:直角三角形の複数の溝が形成された。
【0130】
紫外線硬化性樹脂(日立化成社製、ヒタロイド(登録商標)7981、比重1.1)に、酸化チタン微粒子(平均粒子径:0.2μm、比重4.2)を0.1体積%となるように混合したペーストを用意した。
透明層下層の表面にペーストを供給し、余剰分をドクターブレードでかき取ることによって、透明層下層の溝にペーストを埋め込んだ。紫外線を照射し、ペーストを硬化させることによって、光散乱部を形成した。
【0131】
透明層下層の表面および光散乱部の表面に紫外線硬化性樹脂(日立化成社製、ヒタロイド(登録商標)7981、比重1.1)をダイコート法により5μm塗布し、紫外線硬化性樹脂の上に透明PETフィルムを重ねた。
紫外線を照射し、紫外線硬化性樹脂を硬化させて、透明層上層を形成することによって、光散乱シートからなる例3の映像表示部を得た。
【0132】
ソーダライムガラス板(松浪硝子社製、厚さ:3mm)、PVBフィルム(Solutia社製 Saflex(登録商標)RK11l、厚さ:375μm)、例3の映像表示部、PVBフィルム(厚さ:375μm)、ソーダライムガラス板(厚さ:3mm)の順に積層し、真空加熱圧着を行い、例3の透過型の映像表示透明部材を得た。例3の映像表示透明部材の評価結果を表1に示す。
【0133】
(例4)
例3の映像表示透明部材において、第2の透明基材として色つきガラス(旭硝子社製、<商品名>マイベール、例2と同様のもの)を用いて、例4の透過型の映像表示透明部材を得た。例4の映像表示透明部材の評価結果を表1に示す。
【0134】
【表1】
【0135】
表中の評価基準は、下記のとおりである。
(光景視認性)
日中に屋外で映像表示透明部材を第2の面が太陽に面するように設置し、第2の面側の観察者から見て映像表示透明部材の向こう側に見える光景の視認性を、下記の基準にて評価した。
0:良好である。
1:手前が暗い場合、または外光が小さい場合は良好である。
2:大まかな認識が可能なレベルである。
3:光景を視認できない。
【0136】
(映像視認性)
例1、2において、観察者Xから見て映像表示透明部材に表示される映像の視認性を、下記の基準にて評価した。
0:良好である。
1:周囲が暗い場合は良好である。
2:大まかな認識が可能なレベルである。
3:映像を視認できない。
【0137】
本願の実施例である例2、および例4は、散乱光が制御され解像度が向上したため、光景の視認性が良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0138】
本発明の映像表示透明部材は、商品等のショーケース;美術品、動物等の展示ケース;建物、ショールーム、車両等の窓;ガラス扉;室内の透明パーティション;建物の外壁;時計、テレビ等に用いられる透明部材として有用である。具体的には、観察者側から見て透明部材の向こう側に見える光景を視認でき、かつ観察者に対して商品等の説明、各種機器の状態、行き先案内、伝達事項等の情報を伝達する際、観察者に対して各種機器の操作画面等を表示する際、またはプライバシー保護、セキュリティ等のために観察者に対して透明部材の向こう側の光景を視認できなくする際には、投影機から投射された映像光を観察者に映像として視認可能に表示する、いわゆる透明スクリーンとして有用である。
また、車両や航空機等の移動手段用の窓ガラスに用いると、透明スクリーンとしてもヘッドアップディスプレイとしても使えるため有用である。
なお、2014年6月23日に出願された日本特許出願2014-128552号の明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。
【符号の説明】
【0139】
1~3、5~7、1A~1C、4A、4B、5A~5C、8A、8B:映像表示透明部材、10:第1の透明基材、10A:第1の透明基材(光減衰層)、12:接着層、20:第2の透明基材(光減衰層)、20A:第2の透明基材、22:接着層、30、30A:映像表示部、31:第1の透明フィルム、32:第1の透明層、33:反射膜、34:第2の透明層、35:第2の透明フィルム、35A:第2の透明フィルム(光減衰層)、36:光硬化性樹脂、37:光硬化性樹脂、40、40A:映像表示部、41:第1の透明フィルム、42:透明層、42a:透明層下層、43:光散乱部、44:溝、45:第2の透明フィルム、45A:第2の透明フィルム(光減衰層)、46:光硬化性樹脂、47:光硬化性樹脂、48:ペースト、50:光減衰層、52:接着層、61:モールド、62:モールド、101:映像表示透明部材、102:映像表示透明部材、110:第1の透明基材、120:第2の透明基材、132:第1の透明層、133:反射膜、134:第2の透明層、142:透明層、143:光散乱部、200:投影機、A:第1の面、B:第2の面、L:映像光、X:観察者、Y:観察者
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20