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特許7192841物体保持装置、処理装置、フラットパネルディスプレイの製造方法、及びデバイス製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】物体保持装置、処理装置、フラットパネルディスプレイの製造方法、及びデバイス製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20221213BHJP
   H01L 21/68 20060101ALI20221213BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
G03F7/20 501
H01L21/68 K
H01L21/68 P
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020174650
(22)【出願日】2020-10-16
(62)【分割の表示】P 2019510258の分割
【原出願日】2018-03-30
(65)【公開番号】P2021015285
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2020-10-16
(31)【優先権主張番号】P 2017072207
(32)【優先日】2017-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】青木 保夫
(72)【発明者】
【氏名】吉田 亮平
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/108170(WO,A1)
【文献】特開2013-051289(JP,A)
【文献】特開2013-217950(JP,A)
【文献】国際公開第2016/190423(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
H01L 21/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体を保持し、第1方向及び第2方向を含む所定平面に平行なる第1面と、前記所定平面に交差する第3方向に関して、前記第1面と対向する第2面と、を有する移動体と、
前記第3方向に関して前記第1面と前記第2面との間に設けられ、上面が前記第1面に連結される構造体と、
前記構造体を介して前記移動体を、下方から支持する支持部と、
前記支持部を介して前記移動体を、前記第1方向と前記第2方向へ移動させる駆動装置と、
前記第1方向及び前記第2方向に関して前記第1面及び前記第2面と重なり、且つ、前記第3方向に関して前記第1面及び前記第2面に挟まれるように配置され、前記構造体に設けられた一部と、前記駆動装置に設けられた他部とにより付与する推力によって、前記移動体を前記支持部に対して相対移動させる駆動系と、を備え、
前記構造体は、前記第1面に連結された前記上面と前記駆動系の前記一部を挟み、前記第2面に連結される下面を有する物体保持装置。
【請求項2】
前記下面と前記第2面との間に形成された開口を挿通して、前記移動体の下方に設けられた前記駆動装置から前記他部を支持する支柱を備える請求項1に記載の物体保持装置。
【請求項3】
前記移動体の前記第1及び第2方向に関する位置情報に基づく情報を取得する取得部をさらに備え、
前記駆動系と前記駆動装置は、前記取得部で取得された前記情報に基づいて前記移動体を移動させる請求項2に記載の物体保持装置。
【請求項4】
前記取得部の一部は、前記第3方向に関して前記第1面側に設けられる請求項3に記載の物体保持装置。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項に記載の物体保持装置と、
前記物体に対して所定の処理を実行する処理部と、を備える処理装置。
【請求項6】
前記処理部は、エネルギビームにより前記物体を露光する請求項5に記載の処理装置。
【請求項7】
前記物体は、1辺またはその対角長の長さが少なくとも500mm以上である請求項5又は6に記載の処理装置。
【請求項8】
請求項5から7の何れか一項に記載の処理装置を用いて前記物体を露光することと、
露光された前記物体を現像することと、を含むフラットパネルディスプレイの製造方法。
【請求項9】
請求項5から7の何れか一項に記載の処理装置を用いて前記物体を露光することと、
露光された前記物体を現像することと、を含むデバイス製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体保持装置、処理装置、フラットパネルディスプレイの製造方法、及びデバイス製造方法に係り、更に詳しくは、物体を保持する物体保持層装置、前記物体保持装置を備える処理装置、並びに前記処理装置を用いるフラットパネルディスプレイ又はデバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示素子、半導体素子(集積回路等)等の電子デバイス(マイクロデバイス)を製造するリソグラフィ工程では、マスク又はレチクル(以下、「マスク」と総称する)に形成されたパターンを、エネルギビームを用いてガラスプレート又はウエハ(以下、「基板」と総称する)に転写する露光装置が用いられている。
【0003】
この種の露光装置としては、基板を吸着保持する基板ステージ装置を備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ここで、基板ステージ装置は、露光精度を確保するために、基板を高い平面度で保持することが要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4136363号公報
【発明の概要】
【0006】
第1の態様によれば、物体を保持し、第1方向及び第2方向を含む所定平面に平行なる第1面と、前記所定平面に交差する第3方向に関して、前記第1面と対向する第2面と、を有する移動体と、前記第3方向に関して前記第1面と前記第2面との間に設けられ、上面が前記第1面に連結される構造体と、前記構造体を介して前記移動体を、下方から支持する支持部と、前記支持部を介して前記移動体を、前記第1方向と前記第2方向へ移動させる駆動装置と、前記第1方向及び前記第2方向に関して前記第1面及び前記第2面と重なり、且つ、前記第3方向に関して前記第1面及び前記第2面に挟まれるように配置され、前記構造体に設けられた一部と、前記駆動装置に設けられた他部とにより付与する推力によって、記移動体を前記支持部に対して相対移動させる駆動系と、を備え、前記構造体は、前記第1面に連結された前記上面と前記駆動系の前記一部を挟み、前記第2面に連結される下面を有する物体保持装置が、提供される。
【0007】
第2の態様によれば、第1の態様に係る物体保持装置と、前記物体に対して所定の処理を実行する処理部と、を備える処理装置が、提供される。
【0008】
第3の態様によれば、第2の態様に係る処理装置を用いて前記物体を露光することと、露光された前記物体を現像することと、を含むフラットパネルディスプレイの製造方法が、提供される。
【0009】
第4の態様によれば、第2の態様に係る処理装置を用いて前記物体を露光することと、露光された前記物体を現像することと、を含むデバイス製造方法が、提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態に係る液晶露光装置の構成を概略的に示す図である。
図2図1の1A-1A矢視断面図である。
図3図1の1B-1B矢視断面図である。
図4図1の液晶露光装置が備える微動ステージの分解図である。
図5】微動ステージの内部構造を説明するための図である。
図6図4の微動ステージが備えるチャッキングタイルの上面を示す平面図である。
図7図6のチャッキングタイルの下面を示す平面図である。
図8図6のチャッキングタイルの断面図である。
図9】微動ステージにおけるチャッキングタイルの保持構造を説明するための図である。
図10】液晶露光装置の制御系を中心的に構成する主制御装置の入出力関係を示すブロック図である。
図11】第2の実施形態に係る基板ステージ装置を示す図である。
図12図11の2A-2A矢視断面図である。
図13図11の2B-2B矢視断面図である。
図14】第3の実施形態に係る基板ステージ装置を示す図である。
図15図14の基板ステージ装置の分解図である。
図16図14の3A-3A矢視断面図である。
図17図15の3B-3B矢視断面図である。
図18図18(A)は、図14の基板ステージ装置が備えるVCMユニットを上方から見た図、図18(B)は、VCMユニットの下方から見た図、図18(C)は、VCMユニットの断面図である。
図19】第4の実施形態に係る微動ステージの斜視図である。
図20図19の微動ステージの分解斜視図である。
図21図19の微動ステージの平面図である。
図22図21の4A-4A矢視断面図である。
図23図21の4B-4B矢視断面図である。
図24図19の微動ステージから一部の部材を取り除いた平面図である。
図25図19の微動ステージの組み立て手順を説明するための図である。
図26図19の微動ステージが備えるチャッキングタイルの平面図である。
図27図19の微動ステージの断面図である。
図28図26のチャッキングタイルを裏面側から見た平面図である。
図29図19の微動ステージの内部構造を説明するための図である。
図30】第5の実施形態に係る微動ステージを示す斜視図である。
図31図30の微動ステージの分解斜視図である。
図32図30の微動ステージが備えるベース部の平面図である。
図33図30の微動ステージを下方から見た分解斜視図である。
図34図34(A)は、図30のベース部が備えるスレートの端部近傍を示す斜視図、図34(B)は、隣接する一対のスレートの接合部近傍を示す斜視図、図34(C)は、スレートの側面図である。
図35図30の微動ステージの内部構造を説明するための図である。
図36】第6の実施形態に係る微動ステージの分解斜視図である。
図37図37(A)は、第7の実施形態に係るチャッキングタイルの平面図、図37(B)は、図37(A)の7A-7A矢視断面図である。
図38図38(A)は、第7の実施形態に係るチャッキングタイルの斜視図、図38(B)は、複数のチャッキングタイルを敷き詰めた状態での斜視図である。
図39】第8の実施形態に係るチャッキングタイルの平面図である。
図40】第9の実施形態に係る基板ステージ装置を示す図である。
図41図40の9A部の拡大図である。
図42図40の基板ステージ装置が備える微動ステージの平面図である。
図43】第9の実施形態に係るエンコーダシステムの概念図である。
図44】第10の実施形態に係る基板ステージ装置を示す図である。
図45図44の10A部の拡大図である。
図46】第10の実施形態に係る基板ステージ装置の平面図である。
図47】第10の実施形態に係るエンコーダシステムの概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
《第1の実施形態》
以下、第1の実施形態について、図1図10を用いて説明する。
【0012】
図1には、第1の実施形態に係る露光装置(ここでは液晶露光装置10)の構成が概略的に示されている。液晶露光装置10は、物体(ここではガラス基板P)を露光対象物とするステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置、いわゆるスキャナである。ガラス基板P(以下、単に「基板P」と称する)は、平面視矩形(角型)に形成され、液晶表示装置(フラットパネルディスプレイ)などに用いられる。
【0013】
液晶露光装置10は、照明系12、回路パターンなどが形成されたマスクMを保持するマスクステージ装置14、投影光学系16、表面(図1で+Z側を向いた面)にレジスト(感応剤)が塗布された基板Pを投影光学系16に対し相対的に移動させる移動体装置(ここでは基板ステージ装置20)、及びこれらの制御系等を有している。以下、露光時にマスクMと基板Pとが投影光学系16に対してそれぞれ相対走査される方向をX軸方向とし、水平面内でX軸に直交する方向をY軸方向、X軸及びY軸に直交する方向をZ軸方向とし、X軸、Y軸、及びZ軸回りの回転方向をそれぞれθx、θy、及びθz方向として説明を行う。また、X軸、Y軸、及びZ軸方向に関する位置をそれぞれX位置、Y位置、及びZ位置として説明を行う。
【0014】
照明系12は、米国特許第5,729,331号明細書などに開示される照明系と同様に構成されており、図示しない光源(水銀ランプ、あるいはレーザダイオードなど)から射出された光を、それぞれ図示しない反射鏡、ダイクロイックミラー、シャッター、波長選択フィルタ、各種レンズなどを介して、複数の露光用照明光(照明光)ILとしてマスクMに照射する。照明光ILとしては、i線(波長365nm)、g線(波長436nm)、h線(波長405nm)などの光(あるいは、上記i線、g線、h線の合成光)が用いられる。
【0015】
マスクステージ装置14が保持するマスクMとしては、下面(図1では-Z側を向いた面)に所定の回路パターンが形成された、透過型のフォトマスクが用いられる。主制御装置90(図10参照)は、リニアモータなどを含むマスク駆動系92(図10参照)を介してマスクMを、照明系12(照明光IL)に対してX軸方向(スキャン方向)に所定の長ストロークで駆動するとともに、Y軸方向、及びθz方向に適宜微少駆動する。マスクMの水平面内の位置情報は、光干渉計システム、あるいはエンコーダシステムなどを含むマスク計測系94(図10参照)により求められる。
【0016】
投影光学系16は、マスクステージ装置14の下方に配置されている。投影光学系16は、米国特許第6,552,775号明細書などに開示される投影光学系と同様な構成の、いわゆるマルチレンズ投影光学系であり、両側テレセントリックな等倍系で正立正像を形成する複数のレンズモジュールを備えている。
【0017】
液晶露光装置10では、照明系12からの複数の照明光ILによってマスクM上の照明領域が照明されると、マスクMを通過(透過)した照明光ILにより、投影光学系16を介してその照明領域内のマスクMの回路パターンの投影像(部分正立像)が、基板P上の照明領域に共役な照明光の照射領域(露光領域)に形成される。そして、照明領域(照明光IL)に対してマスクMが走査方向に相対移動するとともに、露光領域(照明光IL)に対して基板Pが走査方向に相対移動することで、基板P上の1つのショット領域の走査露光が行われ、そのショット領域にマスクMに形成されたパターンが転写される。
【0018】
基板ステージ装置20は、基板Pを投影光学系16(照明光IL)に対して高精度で位置制御するための装置であり、具体的には、基板Pを照明光ILに対して水平面(X軸方向、及びY軸方向)に沿って所定の長ストロークで駆動するとともに、6自由度方向(X軸、Y軸、Z軸、θx、θy、及びθzの各方向)に微少駆動する。基板ステージ装置20は、後述する微動ステージ22を除き、米国特許出願公開第2012/0057140号明細書などに開示されるものと同様に構成された、いわゆる粗微動構成のステージ装置であって、基板Pを保持する微動ステージ22、ガントリタイプの粗動ステージ26、自重支持装置28、及び基板ステージ装置20を構成する各要素を駆動するための基板駆動系60(図1では不図示、図10参照)、上記各要素の位置情報を求めるための基板計測系96(図1では不図示、図10参照)などを備えている。
【0019】
微動ステージ22は、全体的に平面視矩形(図3参照)の板状(あるいは箱形)に形成され、その上面(基板載置面)に基板Pが載置される。微動ステージ22の上面のX軸及びY軸方向の寸法は、基板Pと同程度に(実際には幾分短く)設定されている。基板Pは、微動ステージ22の上面に載置された状態で微動ステージ22に真空吸着保持されることによって、ほぼ全体(全面)が微動ステージ22の上面に沿って平面矯正される。従って、本実施形態の微動ステージ22は、従来の基板ステージ装置が備える基板ホルダと同機能の部材であると言うこともできる。微動ステージ22の詳細な構成については、後述する。
【0020】
粗動ステージ26は、Y粗動ステージ32とX粗動ステージ34とを備えている。Y粗動ステージ32は、微動ステージ22の下方(-Z側)であって、クリーンルームの床上に設置された不図示のベースフレーム部材上に載置されている。Y粗動ステージ32は、Y軸方向に所定間隔で平行に配置された一対のXビーム36を有している。一対のXビーム36は、上記ベースフレーム部材上にY軸方向に移動自在な状態で載置されている。
【0021】
X粗動ステージ34は、Y粗動ステージ32の上方(+Z側)であって、微動ステージ22の下方に(微動ステージ22とY粗動ステージ32との間に)配置されている。X粗動ステージ34は、YZ断面逆U字状の部材であって、Y粗動ステージ32は、X粗動ステージ34の一対の対向面間に挿入されている。X粗動ステージ34は、Y粗動ステージ32が有する一対のXビーム36上に複数の機械的なリニアガイド装置38を介して載置されており、Y粗動ステージ32に対してX軸方向に関して自在に相対移動可能であるのに対し、Y軸方向に関しては、Y粗動ステージ32と一体的に移動する。
【0022】
自重支持装置28は、微動ステージ22の自重を下方から支持する重量キャンセル装置42と、該重量キャンセル装置42を下方から支持するYステップガイド44とを備えている。重量キャンセル装置42(心柱などとも称される)は、X粗動ステージ34に形成された開口部(不図示)に挿入されており、X粗動ステージ34に対してフレクシャ装置とも称される複数の連結部材40を介して機械的に接続されている。重量キャンセル装置42は、X粗動ステージ34に牽引されることによって、該X粗動ステージ34と一体的にX軸、及び/又はY軸方向に移動する。
【0023】
重量キャンセル装置42は、レベリング装置46と称される支持装置を介して微動ステージ22の自重を下方から支持している。レベリング装置46は、微動ステージ22をXY平面に対して揺動(チルト動作)自在に支持している。レベリング装置46は、不図示のエアベアリングを介して重量キャンセル装置42に下方から非接触状態で支持されている。これにより、微動ステージ22の重量キャンセル装置42(及びX粗動ステージ34)に対するX軸、Y軸、及びθz方向への相対移動、及び水平面に対する揺動(θx、θy方向への相対移動)が許容される。重量キャンセル装置42、レベリング装置46、連結部材40などの構成の詳細に関しては、米国特許出願公開第2010/0018950号明細書などに開示されているので、説明を省略する。
【0024】
Yステップガイド44は、X軸に平行に延びる部材から成り、Y粗動ステージ32が有する一対のXビーム36間に配置されている。Yステップガイド44は、エアベアリング48を介して重量キャンセル装置42を非接触状態で下方から支持しており、重量キャンセル装置42がX軸方向へ移動する際の定盤として機能する。Yステップガイド44は、Y粗動ステージ34とは振動的に分離して配置された架台18上に機械的なリニアガイド装置50を介して載置されており、架台18に対してY軸方向に移動自在となっている。Yステップガイド44は、一対のXビーム36に対して、複数の連結部材52(フレクシャ装置)を介して機械的に接続されており、Y粗動ステージ32に牽引されることによって、Y粗動ステージ32と一体的にY軸方向に移動する。
【0025】
基板駆動系60(図1では不図示。図10参照)は、微動ステージ22を投影光学系16(照明光IL)に対して6自由度方向に駆動するための第1駆動系62(図10参照)、Y粗動ステージ32をY軸方向に長ストロークで駆動するための第2駆動系64(図10参照)、及びX粗動ステージ34をY粗動ステージ32上でX軸方向に長ストロークで駆動するための第3駆動系66(図10参照)を備えている。第2駆動系64、及び第3駆動系66を構成するアクチュエータの種類は、特に限定されないが、一例として、リニアモータ、あるいはボールねじ駆動装置などを使用することが可能である(図1ではリニアモータが図示されている)。第2、及び第3駆動系64、66の構成の詳細に関しては、米国特許出願公開第2012/0057140号明細書などに開示されているので、説明を省略する。
【0026】
図2には、微動ステージ22の断面図(図1の1A-1A矢視断面図)が示されている。図2に示されるように、第1駆動系62(図2では不図示。図10参照)は、微動ステージ22にX軸方向の推力を付与するための一対のXリニアモータ(ここではXボイスコイルモータ70X)と、微動ステージ22にY軸方向の推力を付与するための一対のYリニアモータ(ここではYボイスコイルモータ70Y)とを有している。一対のXボイスコイルモータ70Xは、微動ステージ22の内部における+X側の端部近傍において、Y軸方向に離間して配置されている。また、一対のYボイスコイルモータ70Yは、微動ステージ22の内部における+Y側の端部近傍において、X軸方向に離間して配置されている。図1に戻り、一対のXボイスコイルモータ70Xは、微動ステージ22の重心位置Gに対して対称(図1では左右対称)に配置されている。図1では不図示であるが、同様に、一対のYボイスコイルモータ70Yも、重心位置Gに対して対称(図2参照。図2では上下対称)に配置されている。
【0027】
図2に示されるように、一対のXボイスコイルモータ70X、及び一対のYボイスコイルモータ70Yとしては、それぞれムービングマグネット型のものが用いられている。Xボイスコイルモータ70Xは、微動ステージ22の+X側の側面近傍に形成された空間部である収納部76内に収納されている。収納部76は、微動ステージ22の内部にY軸方向に離間して一対形成され、一対のXボイスコイルモータ70Xのそれぞれを個別に収納している。同様に、微動ステージ22の+Y側の側面近傍には、一対のYボイスコイルモータ70Yそれぞれを個別に収納するための一対の収納部76が、X軸方向に離間して形成されている。このように、本実施形態の微動ステージ22の側面には、合計で4つのボイスコイルモータ70X、70Yに対応して、合計で4つの収納部76が形成されている。各収納部76は、微動ステージ22の側面(+X側、又は+Y側の側面)に開口しており、各ボイスコイルモータ70X、70Yは、微動ステージ22の側面に露出している(図1参照)。
【0028】
Xボイスコイルモータ70Xの可動子72Xは、図1に示されるように、微動ステージ22に固定されている。可動子72Xは、YZ断面U字状に形成されており、一対の対向面それぞれに複数の永久磁石を含む磁石ユニットが固定されている。可動子72Xは、一対の対向面がXY平面と平行となるように(横向きに)配置されている。
【0029】
これに対し、Xボイスコイルモータ70Xの固定子74Xは、X粗動ステージ34の上面から突出した支柱54の先端部に固定されている。固定子74Xは、YZ断面T字状に形成されており、先端部が上記可動子72Xの一対の対向面間に所定の隙間を介して挿入可能なように、上記可動子と同様に横向きに配置されている。固定子74Xの先端部(可動子72Xの一対の対向面間に挿入される部分)には、不図示のコイルユニットが収納されている。
【0030】
なお、図1では不図示であるが、図2に示されるように、一対のYボイスコイルモータ70Yは、一対のXボイスコイルモータ70XをZ周りに90°回転させたように配置されている。Yボイスコイルモータ70Y(可動子72Y、固定子74Yを含む)の構成は、推力の発生方向が異なる点を除き、Xボイスコイルモータ70Xと同じであるので、詳細な説明は省略する。
【0031】
主制御装置90(図10参照)は、走査露光動作時など微動ステージ22をX軸方向に駆動する場合には、第3駆動系66(図10参照)を介してX粗動ステージ34をX軸方向(走査方向)に長ストロークで移動させるとともに、第1駆動系62が備える2つのXボイスコイルモータ70Xを用いてX粗動ステージ34から微動ステージ22にX軸方向(+X方向又は-X方向)の推力を付与する。また、主制御装置90は、走査露光動作時には、アライメント計測結果等に基づいて、2つのXボイスコイルモータ70X(あるいは2つのYボイスコイルモータ70Y)を適宜用いて、微動ステージ22を投影光学系16(図1参照)に対して水平面内3自由度方向(X軸方向、Y軸方向、及びθz方向)のうちの少なくとも一方向に微少駆動する。また、主制御装置90は、Y軸方向に関する基板Pのショット領域間移動動作(Yステップ動作)時には、第2駆動系64(図10参照)を介してY粗動ステージ32、及びX粗動ステージ34をY軸方向に駆動するとともに、第1駆動系62が備える2つのYボイスコイルモータ70Yを用いてX粗動ステージ34から微動ステージ22にY軸方向(+Y方向又は-Y方向)の推力を付与する。
【0032】
ここで、図1に示されるように、Xボイスコイルモータ70Xの固定子74XのZ軸方向の位置(高さ位置)は、微動ステージ22のZ軸方向に関する重心位置Gと概ね一致している。図1では不図示であるが、Yボイスコイルモータ70Yの固定子74Y(図2参照)のZ軸方向の位置も、同様に微動ステージ22のZ軸方向に関する重心位置Gと概ね一致している。従って、4つのボイスコイルモータ70X、70Yを用いて微動ステージ22に水平面内3自由度方向の推力を付与する際、微動ステージ22にピッチングモーメントが作用することが抑制される。
【0033】
図3には、微動ステージ22を下方から見た図(図1の1B-1B矢視断面図)が示されている。図3に示されるように、微動ステージ22の下面には、上記支柱54を挿通させるために、切り欠き(開口部)78が、上記4つのボイスコイルモータ70X、70YYに対応して4箇所に形成されている。切り欠き78を形成する開口端部と支柱54との間には、微動ステージ22がX粗動ステージ34(図1参照)に対して微少ストロークで移動する際に、上記開口端部と支柱54とが接触しないように(ボイスコイルモータ70X、70Yの最大送り量を考慮して設定された最低限の)隙間が形成されている。
【0034】
また、第1駆動系62(図10参照)は、微動ステージ22をZ軸、θx、及びθy方向(以下、「Zチルト方向」と称する)の少なくとも一方向に駆動するためのZボイスコイルモータ70Zを有している。本実施形態において、Zボイスコイルモータ70Zは、XY平面内の同一直線上にない3箇所に配置されている。Zボイスコイルモータ70Zは、上述したXボイスコイルモータ70Xと同様のムービングマグネット型であり、その構成も、推力の発生方向が異なる点を除き、Xボイスコイルモータ70Xと同様である。各Zボイスコイルモータ70は、図1に示されるように、磁石ユニットを含む可動子72Zが支柱56を介して微動ステージ22の下面に固定され、コイルユニットを含む固定子74Zが支柱58を介してX粗動ステージ34の上面に固定されている。主制御装置90(図10参照)は、3つのZボイスコイルモータ70Zを適宜用いて、X粗動ステージ34から微動ステージ22をZチルト方向に微少ストロークで駆動する。なお、Zボイスコイルモータ70Zの数は、3つに限定されず、4つ以上であっても良いが、少なくとも同一直線上にない3箇所に配置することが好ましい。
【0035】
次に、微動ステージ22の計測系について説明する。微動ステージ22の6自由度方向の位置情報を求めるための基板計測系96(図10参照)は、光干渉計システム96A(図10参照)を含む。光干渉計システム96Aは、微動ステージ22の水平面内3自由度方向(X軸、Y軸、及びθz方向)の位置情報を求めるために用いられる計測システムであり、不図示の照射部(光干渉計)を備えている。微動ステージ22には、図2に示されるように、照射部から照射される複数の測長ビームMB(図2では不図示。図1参照)を反射するためのXバーミラー80XとYバーミラー80Yとがそれぞれミラーベース82X、82Yを介して固定されている。微動ステージ22のX軸方向(及びθz方向)の位置情報を求めるためのXバーミラー80Xは、微動ステージ22の-X側の側面に固定されており、微動ステージ22のY軸方向(及びθz方向)の位置情報を求めるためのYバーミラー80Yは、微動ステージ22の-Y側の側面に固定されている(図1参照)。光干渉計システムを含むステージ装置の計測システムの詳細については、米国特許第8059260号明細書などに開示されているので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0036】
ここで、図2及び図3から分かるように、Xバーミラー80X(ミラーベース82Xを含む)は、微動ステージ22の-X側の側面に固定されているのに対し、一対のXボイスコイルモータ70Xは、これとは反対側である微動ステージ22の+X側の端部近傍に配置されている。また、図2及び図3では不図示であるが、微動ステージ22の+X側の側面には、照度センサなどの各種計測装置が固定されている。微動ステージ22では、上記Xバーミラー80X、Xボイスコイルモータ70Xの可動子72X、及び上記不図示の各種計測装置によって、X軸方向の動的バランスが調整されている。また、Y軸方向に関しても、一対のYボイスコイルモータ70YがYバーミラー80Yとは反対側に配置されるとともに、3つのZボイスコイルモータ70Zの可動子72Z(図3参照)のうち、2つが微動ステージ22の+Y側(Yバーミラー80Yとは反対側)の領域の下面に固定されており、微動ステージ22のY軸方向に関する動的バランスが調整されている。これらのバランス調整により、重量キャンセル装置42(図3参照)は、微動ステージ22のXY平面内の重心位置近傍を下方からを支持できるようになっている。
【0037】
図1に戻り、微動ステージ22のZチルト方向の位置情報は、複数のZセンサ84を含むZチルト計測系96Bを介して主制御装置90(それぞれ図10参照)により求められる。Zセンサ84は、微動ステージ22の下面に固定されたプローブ86(図3では不図示)と重量キャンセル装置42の筐体に固定されたターゲット88とを含む。ターゲット88が重量キャンセル装置42に固定されていることから、Zセンサ84は、Yステップガイド44の上面(水平面)を基準とする微動ステージ22のZ軸方向の変位を計測できる。Zセンサ84は、XY平面内における同一直線上にない3箇所に配置されており、主制御装置90は、3つのZセンサ84の出力から微動ステージ22のZチルト方向の位置(変位量)情報を求める。
【0038】
次に、微動ステージ22の構成の詳細について、図4及び図5を用いて説明する。図4には、微動ステージ22を分解した斜視図が示されている。図4に示されるように、微動ステージ22は、定盤部100、及び複数のチャッキングタイル120(以下、単に「タイル120」と称する)を備えている。定盤部100は、平面視矩形の箱状に形成されている。微動ステージ22は、定盤部100上に複数のタイル120が敷き詰められる(積層される)ことにより、全体的に2層構造となっている。なお、図4では、図面の錯綜を避ける観点から、上述したXボイスコイルモータ70X、及びYボイスコイルモータ70Y、各ボイスコイルモータ70X、70Yを収納するための収納部76、支柱54を挿通させるための切り欠き78、及びバーミラー80X、80Y、並びに後述する複数のリブ108(それぞれ図2参照)などの図示が省略されている。
【0039】
下層である定盤部100は、図4に示されるように、下面部102、上面部104、外壁部106、及び補剛部材としての複数のリブ108(図4では不図示。図2参照)を備えている。下面部102、及び上面部104は、それぞれCFRP(carbon-fiber-reinforced plastic)により形成された平面視矩形の板状部材であり、Z軸方向に関して対向して(平行に)配置されている。外壁部106は、平面視矩形の枠状部材であって、CFRPによって形成されている。下面部102、及び上面部104は、それぞれ外壁部106の上端部、及び下端部に接着剤により一体的に接着されている。なお、本実施形態の上面部104は、図4に示されるように、2枚の板状部材が繋ぎ合わされることによって形成されているが、これに限られず、1枚の板状部材によって形成されていても良いし、3枚以上の板状部材によって形成されても良い。下面部102、外壁部106に関しても同様に、複数の板状部材が繋ぎ合わされることにより形成されていても良い。また、本実施形態では、下面部102、及び上面部104のX軸、及びY軸方向の寸法が同じに設定されているが、これに限られず、異なっていても良い。
【0040】
外壁部106の内部には、図5に示されるように、複数のリブ108が下面部102と上面部104とに架設された状態で収納されている。リブ108は、CFRPによって形成されている。リブ108は、XY平面に直交する板状に形成されており、定盤部100の内部は、リブ108が架設されている部分、及びレベリング装置46が収納された部分を除き、中空となっている。なお、図5は、微動ステージ22の内部構造を説明するための図(外壁部106のうち+X側の面部と、一部のリブ108を不図示とした図)であって、微動ステージ22の特定の断面を示すものではない。
【0041】
図2及び図5に示されるように、複数のリブ108は、下面部102、上面部104、及び外壁部106それぞれに接着剤により一体的に接着されている。これにより、定盤部100は、軽量、且つ高剛性(特に厚さ方向に高剛性)であり、作成も容易である。なお、図2では、複数のリブ108として、X軸方向に延びる部材、Y軸方向に延びる部材、及び微動ステージ22の中心近傍から放射状(X字状)に延びる部材が配置さているが、定盤部100として所望の剛性を確保できれば、リブ108の配置、数、及び構成は、特に限定されず、適宜変更が可能である。また、定盤部100を構成する各要素を形成する材料は、上記説明したもの(CFRP)に限られず、アルミニウム合金などの金属材料、あるいは合成樹脂材料などであっても良い。また、下面部102、上面部104、及び外壁部106、並びにリブ108の締結構造も、接着に限られず、ボルトなどの機械的な締結構造を用いても良い。定盤部100mの厚さ方向(Z軸方向)の寸法は、複数のタイル100によって形成される層に比べて厚く設定されている。また、定盤部100の重さは、全てのタイル100の合計に比べて重く、たとえば2.5倍程度の重さを有している。
【0042】
ここで、図5に示されるように、上述したXボイスコイルモータ70X(図2参照)の可動子72Xは、定盤部100の内部において、下面部102と上面部104との間に挟まれるように配置され、下面部102、上面部104、及びリブ108の少なくとも1つに固定されている。図1に示されるように、Xボイスコイルモータ70Xの固定子74Xも同様に、下面部102と上面部104との間に挟まれた空間内に配置される(ただし切り欠き78が形成された部分を除く)。また、図1では不図示であるが、一対のYボイスコイルモータ70Yの可動子72Y、及び固定子74Y(それぞれ図2参照)も同様である。このように、本実施形態の一対のXボイスコイルモータ70X、及び一対のYボイスコイルモータ70Yは、XY平面内の位置が、定盤部100の下面部102及び上面部104と重なる領域内となるように設定され(図2及び図3参照)、且つZ軸方向の位置が、下面部102と上面部104との間の(上面部104、及び下面部102とZ位置が重ならない)領域内となるように設定されている。上述したように、微動ステージ22の下面部102に形成された支柱54を挿通させるための切り欠き78(図5参照)は、必要最低限の大きさで形成されており、定盤部100(すなわち微動ステージ22)の剛性の低下が抑制されている。また、各ボイスコイルモータ70X、70YのZ軸方向に関する位置は、定盤部100に外力が作用して上面部104が変形する際の変形中心と重なる位置に設定されている。
【0043】
図4に戻り、下面部102の中央部には、開口102aが形成されている。図5に示されるように、定盤部100の内部の開口102aに対応する部分には、凹部(窪み)が形成されており、該凹部には、上述したレベリング装置46が嵌め込まれている。ここで、レベリング装置46は、微動ステージ22を水平面に対して(θx及びθy方向に)揺動自在に支持する機能を有していれば、その構成は、特に限定されない。従って、図1では、球面軸受け装置が図示されているが、レベリング装置46としては、これに限られず、弾性ヒンジ装置、米国特許出願公開第2010/0018950号明細書などに開示されるような疑似球面軸受け装置などであっても良い。
【0044】
図4に示されるように、定盤部100の内部には、複数のパイプ110が収納されている。パイプ110は、Y軸方向に延びる部材であって、XZ断面がU字状(+Z側に開口するように)に形成されている。パイプ110は、X軸方向に後述する所定の間隔で配置されているが、図4では、図面の錯綜を避ける観点から、パイプ110の大部分の図示が省略されている。また、図2、及び図5などでは、図面の錯綜を避ける観点から、全てのパイプ110の図示が省略されている。
【0045】
図9には、微動ステージ22(及び定盤部100)の内部構造が示されている。図9に示されるように、複数のパイプ110(図9ではパイプ110Vc、110P、110Vp)は、上端部(開口端部)が上面部104の下面に隙間なく接触するように接着されている。パイプ110と上面部104の下面とは、後述する加圧気体供給用、又は真空吸引力供給用の流路を形成する。本実施形態では、1枚のタイル120に対して4本のパイプ110が配置されるように、複数のパイプ110のX軸方向の間隔が設定されている。なお、図4及び図9では不図示であるが、定盤部100内のリブ108(図2参照)には、パイプ110との接触を避けるための切り欠きが形成されている。また、同様に不図示であるが、定盤部100の外壁部106にも、パイプ110の端部を定盤部100の外部に露出させるための切り欠きが形成されている。外壁部106から露出したパイプ110の一端には、不図示の継手が接続され、該継手を介して微動ステージ22の外部から圧縮空気、又は真空吸引力が供給される。パイプ110の他端は、不図示のプラグ(栓)により閉塞されている。
【0046】
1枚のタイル120に対応する4本のパイプ110(図9ではパイプ110Vc、110P、110Vp)のうちの1本(図9では、パイプ110P)には加圧気体(図9の上向き矢印PG参照)が供給される。また、上面部104には、パイプ110Pを介して微動ステージ22の外部から供給された上記加圧気体を、上面部104の上面側に吐出するための孔部112Pが形成されている。また、1枚のタイル120に対応する4本のパイプ110のうちの3本(図9では、1本のパイプ110Vp、及び2本のパイプ110Vc)には、真空吸引力(図9の下向き矢印VF参照)が供給される。また、上面部104には、パイプ110Vp、100Vcを介して微動ステージ22の外部から供給された上記真空吸引力を上面部104の上面側に作用させための孔部112Vが形成されている。孔部112P、112Vは、それぞれは1枚のタイル120に対応して、Y軸方向(紙面奥行方向)に離間して、2つ形成されている。
【0047】
図4に戻り、定盤部100の上面(上面部104上)には、複数のタイル120が敷き詰められている(図4では一部図示省略)。複数のタイル120は、個別に着脱(交換・分離)可能に定盤部100に吸着保持される。定盤部100にタイル120を吸着保持させるための構造(タイル120の吸着保持構造)に関しては、後に説明する。タイル120は、平面視矩形の薄板状部材であって、セラミックスなどの硬質材料によって形成されている。タイル120をセラミックスにより形成することで、基板Pからの静電気の発生を抑制することができる。なお、タイル120の素材は、特に限定されないが、軽量且つ高精度加工が容易な材料が好ましく、これにより、定盤部100の変形を抑制することができる。
【0048】
微動ステージ22では、複数のタイル120が敷き詰められることによって形成された平面上に基板P(図1参照)が載置される。複数のタイル120は、定盤部100と協働して基板Pを吸着保持する。複数のタイル120に基板Pを吸着保持させるための構造(基板Pの吸着保持構造)に関しては、後に説明する。
【0049】
ここで、微動ステージ22では、複数のタイル120によって基板載置面が形成されるため、複数のタイル120が定盤部100上に敷き詰められた状態で、これらの複数のタイル120によって形成される面には、高い平面度が要求される。そこで、本実施形態では、予め定盤部100の上面の平面度が所望の平面度(例えば、20μm)以下となるように加工され、該定盤部100上に複数のタイル120が敷き詰められた後、ハンドラップ加工により、複数枚のタイル120によって形成される面の平面度が、更に高く(例えば、10μm以下と)なるように仕上げられる。なお、定盤部100の上面の平面加工は、ボイスコイルモータ70X、70Yの可動子72X、72Y(それぞれ図2参照)を定盤部100に固定した後に行うことが好ましいが、これに限られず、可動子72X、72Yが固定される前に行っても良い。
【0050】
次にタイル120の構成について説明する。微動ステージ22は、いわゆるピンチャック型の基板ホルダであって、各タイル120の上面には、図6に示されるように、複数のピン122、及び、周壁部124が突出して形成されている。図6及び図8では図面の錯綜を避ける観点から大部分が不図示であるが、複数のピン122は、タイル120の上面全体にほぼ均等な間隔で配置されている。ピンチャック型ホルダにおけるピン122の径は非常に小さく(例えば直径1mm程度)、また周壁部124の幅も細いので、基板Pの裏面にゴミや異物を挟み込んで支持する可能性を低減でき、その異物の挟み込みによる基板Pの変形の可能性も低減できる。なお、ピン122の本数及び配置は、特に限定されず、適宜変更が可能である。周壁部124は、タイル120の上面の外周を囲むように形成されている。複数のピン122と周壁部124とは、先端の高さ位置(Z位置)が同じに設定されている。また、タイル120の上面には、照明光IL(図1参照)の反射を抑制するために、表面が黒色となるように皮膜処理、セラミック溶射などの各種表面加工が施されている。
【0051】
微動ステージ22(図1参照)では、基板P(図1参照)が複数のピン122、及び周壁部124上に載置された状態で、周壁部124に囲まれた空間に真空吸引力が供給される(空間内の空気が真空吸引される)ことによって、基板Pがタイル120に吸着保持される。基板Pは、複数のピン122、及び周壁部124の先端部に倣って平面矯正される。タイル120に基板Pを吸着保持させるための構造(基板Pの吸着保持構造)に関しては、後に説明する。
【0052】
また、微動ステージ22(図1参照)は、基板P(図1参照)が複数のピン122、及び周壁部124上に載置された状態で、周壁部124に囲まれた空間に加圧気体(圧縮空気など)を供給することによって、基板載置面上の基板Pの吸着を解除するとともに、基板載置面上に基板Pを浮上させることができる。基板載置面上の基板Pの吸着解除、及び浮上支持のための構造(基板Pの浮上支持構造)に関しては、後に説明する。
【0053】
また、タイル120の下面にも、図7に示されるように、複数のピン126、及び周壁部128が突出して形成されている。図7及び図8では図面の錯綜を避ける観点から大部分が不図示であるが、複数のピン126も、タイル120の下面全体にほぼ均等な間隔で配置されている。すなわちタイル120の下面もピンチャック構造となっている。また、タイル120の下面には、上記ピン126とは別に、複数(本実施形態では8本)の凸部130が突出して形成されている。凸部130のほぼ中央には、それぞれ貫通孔132、134が形成されている。タイル120は、定盤部100(図9参照)上に載置された状態で、複数のピン126、周壁部128、及び複数の凸部130の先端部がそれぞれ定盤部100の上面に接触するように、先端の高さ位置(Z位置)が同じに設定されている。凸部130は、ピン126よりも径方向寸法が大きく(太く)設定されており、定盤部100に対する接触面積が、ピン126よりも広い。また、タイル120では、裏面側のピン126が、表面側のピン122(図6参照)よりも太く形成されている。
【0054】
上述した凸部130に形成された貫通孔132,134は、図9に示されるように、それぞれタイル120を貫通するように構成されており、タイル120が定盤部100上に載置された状態で、上面部104に形成された吸引用の孔部112V、あるいは排気用の孔部112Pに連通している。貫通孔132は、空気を吸引するための孔であり、タイル120の上面に形成された複数のピン122と基板P(図1参照)とによって形成された空間(空気)を貫通孔132を介して真空吸引して基板Pを吸着保持する。貫通孔134は、空気を排気する(吹き出す)ための圧空排気孔であり、貫通孔132よりも径(開口径)が小さく構成されており、タイル120の上面に吸着された基板Pの吸着を解除する際に、貫通孔134を介して基板Pに対して基板Pを浮上させるだけの勢いを持つエアーを吹きつける。凸部130と定盤部100との接触面には、空気も漏れが生じないように、ゴム製のリング部材136(いわゆO-リング)が介在している。
【0055】
なお、ピン126、及び凸部130の本数及び配置は、特に限定されず、適宜変更が可能である。また、複数のピン122と複数のピン126とのXY平面内の位置は、同じでも良いし、異なっていても良い。微動ステージ22では、タイル120が定盤部100上に載置された状態で、周壁部128に囲まれた空間に真空吸引力が供給されることによってタイル120が定盤部100に吸着保持される。すなわちタイル120の下面(裏面)側において、定盤部100と、タイル120の周壁部128、ピン126、および凸部130とによって囲まれた空間(真空吸引される空間)を介して、タイル120は定盤部100に固着される。その一方で、上述したように、タイル120の下面の貫通孔132、134は、定盤部100の貫通孔112P、112Vに連通しているように配置されているため、定盤部100に固着されることは無い。
【0056】
ここで本実施形態におけるタイル120の定盤部100に対する固着とは、上述の真空吸着のように、定盤部100の下面の一部(上記空間)に対して吸着力が作用している間は、定盤部100から剥がれず(Z方向の位置ずれを生じず)、且つ定盤部100に対する相対的な位置ずれ(X,Y方向の位置ずれ)を生じない状態を維持することである。更に、この真空吸着を解除してタイル120に対する上述の吸着力の作用がなくなれば、定盤部100からタイル120を離脱(取り外し)できるようになることでもある。なお、定盤部100の上面に倣ってタイル120を載置すると説明したが、平面でなくても良い。定盤部100の上面とタイル120の下面との形状が実質的に同じであれば、定盤部100の上面が平面でなく曲面であっても良い。
【0057】
ここで、微動ステージ22は、複数のタイル120の定盤部100からの浮き上がりを防止するための各種機構を有している。図8に示されるように、タイル120の+X側及び-X側の端部それぞれには、凹部138が形成されている。図9に示されるように、微動ステージ22の外周に沿って配置されたタイル120は、凹部138に一部が挿入される締結部材140によって定盤部100に機械的に締結されている。また、隣接する一対のタイル120は、対向する一対の凹部138内にバンド142が挿入されている。バンド142は、定盤部100に締結されており、これによって、タイル120の定盤部100からの浮き上がりが防止される。
【0058】
次に、上述した微動ステージ22における、タイル120の吸着保持構造、基板Pの吸着保持構造、及び基板Pの浮上支持構造について、それぞれ図9を用いて説明する。上述したように微動ステージ22の定盤部100は、図4に示されるように、複数のパイプ110を有している。複数のパイプ110には、図9に示されるように、タイル120を吸着する真空吸引力を供給するための吸引用パイプ110Vc、基板Pを吸着する真空吸引力を供給するための吸引用パイプ110Vp、及び基板Pを浮上させる加圧気体を供給するための排気用のパイプ110Pが含まれる。なお、図9では、4本1組のパイプ110(チャック部吸引用のパイプ110Vcが2本、基板吸引用のパイプ110Vpが1本、排気用のパイプ110Pが1本)が1枚のタイル120に対応して配置される例が示されているが、各パイプの本数、組み合わせ、配置などは、これに限られず、適宜変更が可能である。また、吸引、及び排気を兼用するパイプを設けるようにしても良い。
【0059】
上述したように、定盤部100の上面部104には、パイプ110Vpの内部と連通する孔部112Vが形成されている。また、タイル120には、定盤部100に載置された状態で、孔部112VとXY平面内の位置がほぼ同じとなる位置に貫通孔132が形成されている。孔部112V及び貫通孔132は、連通しており、パイプ110V内に真空吸引力が供給されると、上記孔部112V及び貫通孔132を介してタイル120上面のうち、周壁部124に囲まれた空間に真空吸引力VFが供給される。これにより、微動ステージ22は、タイル120上に載置された基板P(図1参照)を吸着保持する。
【0060】
なお、貫通孔132に供給される真空吸引力の強さを、微動ステージ22内の位置により変更しても良い。例えば、微動ステージ22の中央部に配置された貫通孔132に供給される真空吸引力の強さを強くすることで、基板Pの中央部に生じる空気溜まりを無くすことができる。また、空気溜まりがなくなった際に、真空吸引力の強さを弱めるようにしても良い。また、微動ステージ22の中央部に配置された貫通孔132に供給される真空吸引力を微動ステージ22の周辺部に配置された貫通孔132よりも早く、つまり時間差をつけて、供給するようにしても良い。ここで、貫通孔132は、凸部130(太いピン)を貫通するように形成されており、且つリング部材136が介在していることから、パイプ110Vpからの真空吸引力がタイル120の下面側に供給されることがない。
【0061】
なお、貫通孔132(対応する孔部112V、112Pも同様)の数、及び配置は、これに限られず、適宜変更が可能である。また、孔部112V及び貫通孔132の直径はそれぞれ異なっていても良い。より下方に位置する孔の直径を大きくしたり、つまり孔部112Vの直径を貫通孔132の直径よりも大きくしたり、これとは逆に、より上方に位置する孔の直径を大きくしたり、つまり貫通孔132の直径を孔部112Vの直径よりも大きくするようにしても良い。これにより、定盤部100上にタイル120を積層(載置)する際の位置合わせが容易となる。また、孔部112V及び貫通孔132の直径は、微動ステージ22の中央付近に位置する孔部112V及び貫通孔132ほど大きくするようにしても良い。また、孔部112V及び貫通孔132の直径は、Y軸方向に関して、閉塞端に近いほど大きくするようにしても良い。
【0062】
タイル120の吸着保持構造は、上記基板Pの吸着保持構造と概ね同じに構成されている。すなわち、チャック部吸引用のパイプ110Vcの内部には、微動ステージ22の外部から真空吸引力VFが供給される。定盤部100の上面部104には、パイプ110Vcの内部と連通するように孔部112Vが形成され、該孔部112Vを介して、タイル120下面のうち、周壁部128(図7参照)に囲まれた空間に真空吸引力が供給される。孔部112Vは、タイル120が定盤部100上に載置された状態で、ピン126及び凸部130(それぞれ図7参照)と重ならない位置に形成されており、ピン126及び凸部130に真空吸引力が作用しないようになっている。
【0063】
基板Pの浮上支持は、基板浮上用のパイプ110Pに加圧気体PGを供給することにより行う。パイプ110P内に加圧気体PGが供給されると、定盤部100の上面部104に形成された孔部112P、及びタイル120の貫通孔134を介して、タイル120上面側の周壁部124内に加圧気体が供給される。これにより、微動ステージ22は、タイル120上に載置された基板P(図1参照)を下方から浮上させることができる。以上のように、微動ステージ22は、定盤部100、及びタイル120によって、基板Pが吸着保持され、基板載置面に沿って平面矯正される。つまり、定盤部100、及び複数のタイル120の2層構造によって、基板ホルダの機能を有しているとも言える。
【0064】
図10には、液晶露光装置10(図1参照)の制御系を中心的に構成し、構成各部を統括制御する主制御装置90の入出力関係を示すブロック図が示されている。主制御装置90は、ワークステーション(又はマイクロコンピュータ)等を含み、液晶露光装置10の構成各部を統括制御する。
【0065】
以上のようにして構成された液晶露光装置10(図1参照)では、主制御装置90(図10参照)の管理の下、不図示のプレートローダによって、微動ステージ22上への基板Pのロードが行われるとともに、不図示のアライメント検出系を用いてアライメント計測が実行され、そのアライメント計測の終了後、基板P上に設定された複数のショット領域に逐次ステップ・アンド・スキャン方式の露光動作が行なわれる。この露光動作は従来から行われているステップ・アンド・スキャン方式の露光動作と同様であるので、その詳細な説明は省略するものとする。
【0066】
上記アライメント計測時、及び走査露光時において、微動ステージ22は、2つのXボイスコイルモータ70X、及び2つのYボイスコイルモータ70Yから付与される推力によって、X軸、及びY軸方向に所定の長ストロークで移動するとともに、上記推力によって、投影光学系16(図1参照)に対し、XY平面内の3自由度方向にサブミクロンオーダーの微少ストロークで移動する。
【0067】
以上説明した本実施形態によれば、ボイスコイルモータ70X、70Y(可動子72X、72Y、及び固定子74X、74Y)が、微動ステージ22の内部であって、定盤部100の互いに対向する上面部104と下面部102との間に配置されているので、仮に定盤部100の外側にボイスコイルモータ70X、70Yを配置する場合(この場合、各可動子72X、72Yが定盤部100の側面に固定される)に比べ、定盤部100の剛性低下を抑制することができる(定盤部100が撓みにくい)。従って、微動ステージ22の基板載置面の平面度を高精度で確保することができ、基板Pに対する露光精度が向上する。
【0068】
また、微動ステージ22において、ボイスコイルモータ70X、70Yを収納するための収納部76(空間)は、定盤部100の側面に開口しており、ボイスコイルモータ70X、70Yのメンテナンス(修理、又は交換など)を容易に行うことができる。また、ボイスコイルモータ70X、70Yは、通電によって発熱するが、上記収納部76が開口しているため、容易に微動ステージ22の外部に放熱することができる。
【0069】
《第2の実施形態》
次に第2の実施形態に係る基板ステージ装置について、図11図13を用いて説明する。第2の実施形態に係る基板ステージ装置は、微動ステージ220の構成が異なる点を除き、上記第1の実施形態と同じであるので、以下、相違点についてのみ説明し、上記第1の実施形態と同じ構成又は機能を有する要素については、上記第1の実施形態と同じ符号を付してその説明、及び図示を省略する。
【0070】
図12には、微動ステージ220の断面図(図11の2A-2A線矢視図)が示されている。上記第1の実施形態において、合計で4つのボイスコイルモータ70X、70Yそれぞれは、図2に示されるように、微動ステージ22の側面に開口する(微動ステージ22の端部近傍に形成された)収納部76内に収納されたのに対し、本第2の実施形態では、図12に示されるように、4つのボイスコイルモータ70X、70Yは、微動ステージ22の中央部寄りの位置に形成された収納部276内にそれぞれ収納される点が異なる。
【0071】
図11に示されるように、微動ステージ220は、上記第1の実施形態と同様に、下面部102、上面部104、外壁部106、及び複数のリブ108を備えており、全体的に軽量且つ高剛性な中空の箱型に形成されている。また、微動ステージ220の内部における中央部近傍には、直方体状(あるいは立方体状)のセンタブロック114が配置されている。センタブロック114は、上面部104及び複数のリブ108(図12参照)に一体的に接続されている。センタブロック114の下方には、レベリング装置46の一部が挿入される凹部が形成されており、微動ステージ220は、センタブロック114が下方からレベリング装置46を介して重量キャンセル装置42に支持される。微動ステージ220の重心位置Gは、センタブロック114内に位置している。
【0072】
図12に戻り、本第2の実施形態の微動ステージ220も上記第1の実施形態と同様に、一対のXボイスコイルモータ70X、及び一対のYボイスコイルモータ70Yによって、水平面内3自由方向の推力が付与されるが、各ボイスコイルモータ70X、70Yの配置が上記第1の実施形態と異なる。一対のXボイスコイルモータ70Xは、センタブロック114(微動ステージ22の重心位置)を挟んで、センタブロック114の+Y側、及び-Y側それぞれに対称的に配置されている。また、一対のYボイスコイルモータ70Yは、センタブロック114を挟んで、センタブロック114の+X側、及び-X側それぞれに対称的に配置されている。
【0073】
図11に戻り、Xボイスコイルモータ70の可動子72Xは、上記第1の実施形態(図1参照)と同様に横置き配置されている。一対の可動子72Xは、互いに反対向き(背中合わせに)配置され、それぞれセンタブロック114に固定されている。固定子74Yが支柱54を介してX粗動ステージ34の上面に固定されている点は、上記第1の実施形態と同様である。支柱54の先端部が微動ステージ22の下面部102に形成された切り欠き(開口部)278を介して微動ステージ220の内部に挿入されている点も上記第1の実施形態と同様である。一対のYボイスコイルモータ70Yが、一対のXボイスコイルモータ70XをZ周りに90°回転させたように配置されている点も、上記第1の実施形態と同様である。従って、Yボイスコイルモータ70Yの可動子も、センタブロック114に固定されている。
【0074】
ここで、上記第1の実施形態において、切り欠き78は、ボイスコイルモータ70X、70Yの最大送り量を考慮して最低限の大きさで形成された(図3参照)のに対し、本第2の実施形態では、図13に示されるように、各ボイスコイルモータ70X、70Yの取付時の作業性、及びメンテナンス性を考慮して、上記第1の実施形態に比べて切り欠き278は、大きく形成されている。ただし、図11から分かるように、一対のXボイスコイルモータ70Xは、上記第1の実施形態と同様に、微動ステージ22の下面部102と上面部104との間に挟まれた空間内に収納されている。一対のYボイスコイルモータ70Yも同様である。
【0075】
複数のZボイスコイルモータ70Zの構成又は機能、及び微動ステージ220の計測系などに関しては、上記第1の実施形態と同じであるので、説明は省略する。また、複数のタイル120(図11参照)による基板Pの吸着保持構造、及び基板Pの浮上支持構造、並びに定盤部100によるタイル120の吸着保持構造に関しても、上記第1の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0076】
以上説明した第2の実施形態によれば、上記第1の実施形態で得られる効果に加え、各ボイスコイルモータ70X、70Yが重量キャンセル装置42による支持点の近傍に配置されているので、推力発生時における定盤部100の撓みを抑制することができ、且つ慣性モーメントが小さいことから、微動ステージ220の制御性を向上することができる。
【0077】
なお、本第2の実施形態に係る微動ステージ220において、切り欠き278の一部を閉塞するように(支柱54の周囲に最低限の隙間が形成された状態となるように)、蓋体を下面部102に着脱可能に取り付けても良い。これにより、定盤部100の剛性を向上することができる。また、各ボイスコイルモータ70X、70Yの発熱により温度上昇した収納部276内を冷却する冷却機構を配置しても良い。冷却機構としては、支柱54の先端部(定盤部100に挿入される部分)から温調(冷却)された気体を収納部76内に供給すると良い。
【0078】
《第3の実施形態》
次に第3の実施形態に係る基板ステージ装置について、図14図18(C)を用いて説明する。第3の実施形態に係る基板ステージ装置は、微動ステージ320の構成が異なる点を除き、上記第2の実施形態と同じであるので、以下、相違点についてのみ説明し、上記第2の実施形態と同じ構成又は機能を有する要素については、上記第2の実施形態と同じ符号を付してその説明、及び図示を省略する。
【0079】
図14に示されるように、本第3の実施形態に係る微動ステージ320も、上記第2の実施形態と同様に、一対のXボイスコイルモータ70Xが、微動ステージ320の中央部近傍に配置されて、可動子72Xがセンタブロック114に固定されている。図14では不図示であるが、Yボイスコイルモータ70Y(図16参照)も、上記第2の実施形態と同様に配置されている。ここで、本第3の実施形態では、図15に示されるように、複数のボイスコイルモータ70X、70Y(Yボイスコイルモータ70Yは図16参照)が、センタブロック114、及びレベリング装置46と共にユニット化され、このボイスコイルモータユニット340(以下、「VCMユニット340」と称する)が、微動ステージ320の定盤部100に対して着脱可能となっている点が、上記第2の実施形態と異なる。
【0080】
VCMユニット340は、図18(A)及び図18(B)から分かるように、平面視で+字型の板状部材342を備えている。図18(B)及び図18(C)から分かるように、板状部材342の中央部は、+Z側に張り出すようにカップ状に凹部344が形成されており、該凹部344内には、レベリング装置46が挿入されている。また、凹部344の上方には、図18(C)から分かるように、センタブロック114が一体的に接続されている。上記板状部材342は、センタブロック114から見て、±X方向、及び±Y方向に延びるフランジ状に形成されることから、以下、板状部材342をフランジ部342と称して説明する。VCMユニット340は、図16に示されるように、フランジ部342が定盤部100の下面部102に複数のボルト346を介して着脱可能に締結される。このように、フランジ部342は、定盤部100の下面部104の一部であり、図14及び図16から分かるように、各ボイスコイルモータ70X、70Y(ボイスコイルモータ70Yは、図16参照)は、定盤部100の上面部104と下面部104(実際にはフランジ部342)との間の空間に配置される。
【0081】
図17に示されるように、定盤部100の下面部102には、VCMユニット340(図16参照)を挿入するための平面視+字状の開口部(切り欠き)372が形成されている。定盤部100の内部において、上記VCMユニット340と抵触しない位置に複数のリブ108が配置されている点は、上記第2の実施形態と同様である。また、図15及び図17から分かるように、上面部104の下面(定盤部100の内側面)における中央部には、スペーサ374が固定されており、図14に示されるように、VCMユニット340が定盤部100に装着された状態で、センタブロック114の先端がスペーサ374に接触する。
【0082】
本第3の実施形態では、図14に示されるように、Xボイスコイルモータ70Xの固定子74Xは、支柱54の上端部に下方から支持される。図16から分かるように、VCMユニット340が定盤部100に装着された状態で、開口部372を形成する開口端部と、フランジ部342との間には、支柱54(図16では不図示。図14参照)を挿通させるための必要最低限の開口部のみが形成されており、微動ステージ320の剛性の低下が抑制されている。
【0083】
複数のZボイスコイルモータ70Zの構成及び機能、微動ステージ320の計測系などに関しては、上記第1の実施形態と同じであるので、説明は省略する。また、複数のタイル120(図14参照)による基板Pの吸着保持構造、及び基板Pの浮上支持構造、並びに定盤部100によるタイル120の吸着保持構造に関しても、上記第1の実施形態と同様であるので、説明を省略する。ここで、定盤部100の上面部104の平面仕上げ加工は、VCMユニット340を定盤部100に組み付けた後に行うことが好ましく、これにより複数のタイル120を定盤部100の上面に敷き詰めることによって形成される基板載置面の平面度を確保することができる。
【0084】
以上説明した第3の実施形態によれば、上記第2の実施形態で得られる効果に加え、複数のボイスコイルモータ70X、70Yがユニット化されているので、微動ステージ320の組み立て時の作業性が向上する。また、VCMユニット340は、フランジ部342が定盤部100に一体的に締結されるので、上記第2の実施形態の微動ステージ220(図11参照)と同等の剛性が確保されている。
【0085】
《第4の実施形態》
次に第4の実施形態に係る基板ステージ装置について、図19図29を用いて説明する。第4の実施形態に係る基板ステージ装置は、微動ステージ422の構成が異なる点を除き、上記第1の実施形態と同じであるので、以下、相違点についてのみ説明し、上記第1の実施形態と同じ構成又は機能を有する要素については、上記第1の実施形態と同じ符号を付してその説明、及び図示を省略する。
【0086】
上記第1の実施形態(図4参照)において、微動ステージ22は、定盤部100上に複数のタイル120が敷き詰められる2層構造であったのに対し、図19に示されるように、本第4の実施形態に係る微動ステージ422は、定盤部450、定盤部450上に積層された管路部460、管路部460上に積層されたベース部470、及びベース部470上に積層されたチャック部480を備える4層構造となっている点が異なる。
【0087】
なお、図19などでは不図示であるが、本第4の実施形態でも、微動ステージ422に対し、第1駆動系62が備える複数のボイスコイルモータ70X、70Y(それぞれ図10参照)を介して水平面内3自由度方向の推力を付与する点は、上記第1~第3の実施形態と同様である。また、不図示である各ボイスコイルモータ70X、70Yの配置も、特に限定されず、上記第1~第3の実施形態に係るボイスコイルモータ70X、70Yの配置のいずれをも選択的に用いることができる。
【0088】
以下、本第4の実施形態に係る微動ステージ422の構成について説明する。図19に示されるように、微動ステージ422は、定盤部450、管路部460、ベース部470、及びチャック部480を備えている。定盤部450は、平面視矩形の箱状に形成され、管路部460、ベース部470、及びチャック部480は、それぞれ平面視矩形の板状に形成されている。微動ステージ422は、定盤部450上に管路部460が配置(積層)され、管路部460上にベース部470が配置(積層)され、さらにベース部470上にチャック部480が配置(積層)されることにより、全体的に4層構造となっている。
【0089】
定盤部450、管路部460、ベース部470、及びチャック部480それぞれの長さ及び幅方向(X軸及びY軸方向)の寸法は、ほぼ同じに設定されているのに対し、定盤部450の厚さ方向(Z軸方向)の寸法は、管路部460、ベース部470、及びチャック部480に比べて大きく(厚く)設定されている。定盤部450、管路部460、及びベース部470をあわせた厚さ方向(Z軸方向)の寸法は、チャック部480に比べて大きく(厚く)設定されている。また、定盤部450、管路部460、及びベース部470をあわせた重さは、チャック部480に比べて重く、たとえば2.5倍程度の重さを有している。
【0090】
最下層である定盤部450は、微動ステージ422のベースとなる部分である。定盤部450は、図20に示されるように、下面部452、上面部454、外壁部456、及びハニカム構造体458を備えている。下面部452、及び上面部454は、それぞれCFRP(carbon-fiber-reinforced plastic)により形成された平面視矩形の板状部材である。外壁部456は、平面視矩形の枠状部材であって、アルミニウム合金、あるいはCFRPによって形成されている。外壁部456の内部には、ハニカム構造体458が充填されている。ハニカム構造体458は、アルミニウム合金によって形成されている。なお、図20では、図面の錯綜を避ける観点から、ハニカム構造体は、一部のみが図示されているが、実際には、ハニカム構造体458は、外壁部456の内部にほぼ隙間なく配置されている(図22及び図23参照)。
【0091】
ハニカム構造体458が内部に充填された外壁部456は、上面に上面部454が接着されるとともに、下面に下面部452が接着されている。これにより、定盤部450は、いわゆるサンドウィッチ構造とされており、軽量、且つ高剛性(特に厚さ方向に高剛性)であり、作成も容易である。なお、定盤部450を構成する各要素を形成する材料は、上記説明したものに限られず、適宜変更が可能である。また、下面部452、上面部454、及び外壁部456の締結構造も、接着に限られない。
【0092】
下面部452の中央部には、開口452aが形成されている。ハニカム構造体458において、開口452aに対応する部分には、凹部(窪み)が形成されており(図22及び図23参照)、該凹部には、上述したレベリング装置46が嵌め込まれている(図25参照)。ここで、レベリング装置46は、微動ステージ422を水平面に対して(θx及びθy方向に)揺動自在に支持する機能を有していれば、その構成は、特に限定されない。従って、図1では、球面軸受け装置が図示されているが、レベリング装置46としては、これに限られず、図22及び図23に示されるような弾性ヒンジ装置であっても良い。
【0093】
図20に示されるように、管路部460は、Y軸方向に延びる複数のパイプ462を備えている。複数のパイプ462は、X軸方向に所定の間隔で並んで配置されている。パイプ462の長手方向(Y軸方向)の寸法は、定盤部450のY軸方向の寸法と概ね同じに設定されている。なお、パイプ462の本数は、特に限定されず、微動ステージ422に要求される所望の性能に応じて適宜変更が可能である。図23などでは、微動ステージ422の構成又は機能の理解を容易にするため、パイプ462の本数が実際よりも少なく図示されている。また、パイプ462のXZ断面の断面形状も特に限定されない。図23などでは、パイプ462としてXZ断面が矩形の、いわゆる角パイプが用いられているが、これに限られず、図29に示されるような、いわゆる丸パイプを用いても良い。丸パイプを用いる場合、該丸パイプの外周面の上面と下面とが互いに平行となるように(長手方向に直交する断面が樽型となるように)加工すると良い。本実施形態において、パイプ462は、CFRPによって形成されているが、パイプ462の素材も特に限定されず、適宜変更が可能である。パイプ462の素材としてCFRPを使わない場合、CFRPとは膨張係数が近似の部材を用いることが好ましい。また、複数のパイプ462はY軸方向に延びX軸方向に並んで配置されていると説明したが、これに限定されず、X軸方向に延びY軸方向に並んで配置されるようにしても良い。
【0094】
ベース部470は、図20に示されるように、複数枚のスレート472と称される部材により形成されている。スレート472は、平面視矩形の薄板状部材であって、石材、あるいはセラミックスなどによって形成されている。なお、スレート472の素材は、特に限定されないが、硬度に優れ且つ高精度加工が容易な材料が好ましい。微動ステージ422では、複数枚のスレート472が、管路部460を構成する複数のパイプ462上に載置されている。各スレート472は、互いに密着(隙間が無視できる程度に接触)した状態で、管路部460にタイル状に敷き詰められており、複数のパイプ462に対して接着剤により固定されている。
【0095】
各スレート472それぞれは、表面(パイプ462に対する接着面とは反対側の面)の平面度が非常に高くなるように加工(ラップ加工など)されている。また、複数のスレート472は、管路部460上に敷き詰められた状態で、各スレート472間の段差が実質的に無視できる程度となるように、それぞれの表面高さ位置が調整されている。なお、管路部460の上方に、基板P(図1参照)と同等の面積を有する平面を形成することができれば、各スレート472の大きさ(面積)は、図20に示されるように、共通の大きさを有していても良いし、図24に示されるように、サイズの異なるスレート472が混在していても良い。また、スレート472の総枚数も、特に限定されず、1枚のスレート472により構成されていても良い。なお、スレート472は、平面度が非常に高くなるように加工されていると説明したがこれに限られない。1つもしくは一部のスレート472が他のスレート472よりも低い場合や、スレート472の一部欠けていたり、くぼみがあったりしても良い。後述するが、チャック部480がスレート472上に載置されたときにチャック部480表面の平面度が高ければ良く、従ってチャック部480の大きさよりも小さな欠けやくぼみがスレート472にあっても良い。
【0096】
上述した各スレート472間の表面高さ位置調整は、ラップ加工などによって行うと良い。この場合、ラップ加工は、微動ステージ422に各種付属物(バーミラー80X、80Y(図2参照)など)が取り付いた状態で所望の精度になるように撓みを考慮して行うことが望ましい。また、図27に示されるように、スレート472の上面における端部近傍は、面取り加工が施されており、複数のスレート472を敷き詰めた状態で、隣接するスレート472間には、V字溝が形成される。該V字溝には、目地材472aが充填されており、隣接するスレート472間に、ラップ加工時の水分などが侵入することを防止することができる。
【0097】
図20に戻り、チャック部480は、基板P(図1参照)が載置される部分である。チャック部480は、管路部460とスレート472と協働して基板Pを吸着保持する。チャック部480は、複数枚のタイル482により形成されている。タイル482は、平面視矩形の薄板状部材であって、セラミックスなどによって形成されている。タイル482をセラミックスにより形成することで、基板Pからの静電気の発生を抑制することができる。なお、タイル482の素材は、特に限定されないが、軽量且つ高精度加工が容易な材料が好ましい。タイル482の素材として、軽量な素材を用いることで、ベース部470および/または管路部460の変形を防止することができる。タイル482の厚み(たとえば8mm)は、スレート472の厚み(たとえば12mm)に対して薄く設定されている。微動ステージ422では、複数のスレート472が敷き詰められることによって形成された平面上に、複数枚のタイル482が敷き詰められている(図19及び図20では一部図示省略)。タイル482は、対応する(該タイル482の下方の)スレート472に吸着保持される。スレート472にタイル482を吸着保持させるための構造(タイル482の吸着保持構造)に関しては、後に説明する。
【0098】
1つ(1枚)のタイル482は、1つ(1枚)のスレート472よりも面積が小さく設定されている。図20に示される例では、1枚のスレート472上に、2枚のタイル482が載置される場合が示されているが、1枚のスレート472上に載置されるタイル482の枚数は特に限定されない。また1枚のタイル482の面積も上記のものに限られず、1枚のスレート472と同じ面積を持っていても良いし、1枚のスレート472よりも大きい面積を持っていても良い。そして同じ面積の場合は、1枚のスレート472に1枚のタイル482を載置するように構成しても良いし、タイル482の方の面積が大きい場合には1枚のタイル482を複数枚のスレート472で支持するようにしても良い。なお、ベース部470とチャック部480とを合わせてホルダ部と称しても良い。この場合は、ホルダ部は、複数枚のスレート472(下層)と複数枚のタイル482(上層)との2層構造となる。上述したように、微動ステージ422は、定盤部450、管路部460、ベース部470、チャック部480の4層構造となっているが、定盤部450、管路部460、及びホルダ部から成る3層構造であると言うこともできる。
【0099】
微動ステージ422では、複数枚のスレート472上に載置された(敷き詰められた)複数枚のタイル482によって基板載置面が形成される。各タイル482は、厚みが実質的に同じとなるように高精度加工されている。従って、複数枚のタイル482によって形成される微動ステージ422の基板載置面は、複数のスレート472によって形成される平面に倣って、平面度が高く形成される。タイル482は、スレート472上に交換・分離可能に載置されている。またタイル482は、定盤部450および/または管路部460に対して交換・分離可能に載置されている。
【0100】
次にタイル482の構成について説明する。微動ステージ422は、いわゆるピンチャック型のホルダであって、各タイル482の上面には、図26に示されるように、複数のピン482a、及び、周壁部482bが形成されている。複数のピン482aは、ほぼ均等な間隔で配置されている。ピンチャック型ホルダにおけるピン482aの径は非常に小さく(例えば直径1mm程度)、また周壁部482bの幅も細いので、基板Pの裏面にゴミや異物を挟み込んで支持する可能性を低減でき、その異物の挟み込みによる基板Pの変形の可能性も低減できる。なお、ピン482aの本数及び配置は、特に限定されず、適宜変更が可能である。周壁部482bは、タイル482の上面の外周を囲むように形成されている。複数のピン482aと周壁部482bとは、先端の高さ位置(Z位置)が同じに設定されている。また、タイル482の上面には、照明光IL(図1参照)の反射を抑制するために、表面が黒色となるように皮膜処理、セラミック溶射などの各種表面加工が施されている。
【0101】
微動ステージ422(図19参照)では、基板P(図1参照)が複数のピン482a、及び周壁部482b上に載置された状態で、周壁部482bに囲まれた空間に真空吸引力が供給される(空間内の空気が真空吸引される)ことによって、基板Pがタイル482に吸着保持される。基板Pは、複数のピン482a、及び周壁部482bの先端部に倣って平面矯正される。タイル482に基板Pを吸着保持させるための構造(基板Pの吸着保持構造)に関しては、後に説明する。
【0102】
また、微動ステージ422は、基板P(図1参照)が複数のピン482a、及び周壁部482b上に載置された状態で、周壁部482bに囲まれた空間に加圧気体(圧縮空気など)を供給することによって、基板載置面上の該基板Pの吸着を解除することができる。基板載置面上の基板Pの吸着を解除させるため、換言すると基板載置面上の基板Pを浮上させるための構造(基板Pの浮上支持構造)に関しては、後に説明する。
【0103】
また、タイル482の下面にも、図28に示されるように、複数のピン482c、482d、及び周壁部482eが形成されている。すなわちタイル482の下面もピンチャック構造となっている。タイル482は、スレート472(図19参照)上に載置された状態で、複数のピン482c、482d、及び周壁部482eの先端部が、スレート472の上面に接触する。複数のピン482c、482dは、ほぼ均等な間隔で配置されている。ピン482dは、ピン482cよりも径方向寸法が大きく(太く)設定されており、スレート472(図27参照)に対する接触面積が、ピン482cよりも広い。ピン482dのほぼ中央には、それぞれ貫通孔482f、482gが設けられている。これら貫通孔482f、482gはそれぞれタイル482を貫通するように構成されており、且つスレート472に設けられている吸引用パイプ462b(図27参照)に連通する貫通孔472b(図27参照)、排気用パイプ462c(図24参照)の貫通孔に連通するスレート472の貫通孔に連通している。貫通孔482fは空気を吸引するための孔であり、タイル482の上面に形成されたピンチャックと基板Pとによって形成された空間(空気)を、貫通孔482fを介して真空吸引して基板Pを吸着保持する。貫通孔482gは空気を排気する(吹き出す)ための圧空排気孔であり、貫通孔482fよりも径(開口径)が小さく構成されており、タイル482の上面に吸着された基板Pの吸着を解除する際に、貫通孔482gを介して基板Pに対して基板Pを浮上させるだけの勢いを持つエアーを吹きつける。
【0104】
なお、ピン482c、482dの本数及び配置は、特に限定されず、適宜変更が可能である。複数のピン482aと複数のピン482c、482dのXY方向の位置は同じでも良いし、異なる位置に配置されても良い。周壁部482eは、タイル482の下面の外周を囲むように形成されている。複数のピン482c、482dと周壁部482eとは、先端の高さ位置(Z位置)が同じに設定されている。微動ステージ422では、タイル482がスレート472上に載置された状態で、周壁部482eに囲まれた空間に真空吸引力が供給されることによってタイル482がスレート472に吸着保持される。すなわちスレート472タイル482の下面(裏面)側において、スレート472と、タイル482の周壁部482e、ピン482c、およびピン482dとによって囲まれた空間(真空吸引される空間)を介して、タイル482はスレート472に固着される。その一方で、上述したように、タイル482の下面の貫通孔482f、482gは、スレート472の貫通孔に連通しているように配置されているためスレート472に固着されることは無い。
【0105】
ここで本実施形態におけるタイル482のスレート472に対する固着とは、上述の真空吸着のように、タイル482の下面の一部(上記空間)に対して吸着力が作用している間は、スレート472から剥がれず(Z方向の位置ずれを生じず)、且つスレート472に対する相対的な位置ずれ(X,Y方向の位置ずれ)を生じない状態を維持することである。更に、この真空吸着を解除してタイル482に対する上述の吸着力の作用がなくなれば、スレート472からタイル482を離脱(取り外し)できるようになることでもある。なお、複数のスレート472によって形成される平面に倣ってタイル482を載置すると説明したが、平面でなくても良い。複数のスレート472によって形成される面とタイル482の下面との形状が実質的に同じであれば、複数のスレート472が平面でなく曲面であっても良い。
【0106】
ここで、微動ステージ422は、複数のタイル482のスレート472からの浮き上がりを防止するための各種機構を有している。図21図23に示される例では、タイル482の+Y側の端部に平板状の凸部476が形成されるともに、-Y側の端部に凸部476に対応する凹部(凸部476と重なっているため不図示)が形成されている。隣接するタイル482は、凸部476と対応する凹部とを嵌合させることによって機械的に締結される。また、微動ステージ422の外周に沿って配置されたタイル482は、締結部材478によってスレート472に機械的に締結されている。なお、各タイル482は、定盤部450、あるいは管路部460に締結されても良い(図29参照)。締結部材478は、スレート472、定盤部450、あるいは管路部460のたとえば+X側かつ+Y側の角に設けるようにし、別の部材を使って、-X側と-Y側からタイル482を締結部材478に対して押圧して、締結させるようにしても良い。
【0107】
また、図29に示される締結構造の例では、タイル482の+Y側及び-Y側の端部それぞれに凹部492が形成され、対向する一対の凹部492内に帯状の部材494(バンド494)が挿入されている。バンド494は、定盤部450(スレート472、あるいは管路部460でも良い)に締結されており、これによって、タイル482のスレート472からの浮き上がりが防止される。なお、タイル482の締結構造、及び浮き上がり防止構造は、適宜変更が可能である。凸部476と該凸部476に対応する凹部が、タイル482のY側端部に設けられていたが、X側端部に設けられるようにしても良いし、Y側とX側との両端部に設けられるようにしても良い
【0108】
次に、上述した微動ステージ422における、タイル482の吸着保持構造、基板Pの吸着保持構造、及び基板Pの浮上支持構造について、それぞれ図24などを用いて説明する。上述したように微動ステージ422の管路部460は、複数のパイプ462によって構成されている。図24に示されるように、複数のパイプ462には、タイル482を吸着する真空吸引力を供給するための吸引用パイプ462a、基板Pを吸着する真空吸引力を供給するための吸引用パイプ462b、基板Pを浮上させる加圧気体を供給するための排気用パイプ462c、及び上記パイプ462a~462c間の隙間に配置されたパイプ462dが含まれる。パイプ462dには、真空吸引力、又は加圧気体が供給されず、専ら各パイプ462a~462cとともに複数のスレート472を支持するための部材として機能する。なお、図24では、5本1組のパイプ462(パイプ462aが2本、パイプ462bが1本、パイプ462cが2本)上にスレート472を介してタイル482が載置される例(1枚のタイル482に対応して5本1組のパイプ462が配置される例)が示されているが、各パイプ462a~462cの本数、組み合わせ、配置などは、これに限られず、適宜変更が可能である。また、吸引用パイプ462bと排気用パイプ462cとをそれぞれ設けるのではなく、それぞれの機能を兼用する兼用パイプを設けるようにしても良い。
【0109】
図27に示されるように、基板吸引用のパイプ462bの長手方向の一端(本実施形態では-Y側の端部)には、プラグ464が嵌め込まれている。また、パイプ462bの長手方向の他端には、継手付きのプラグ466(以下、単に「継手466」と称する)が嵌め込まれている。継手466には、不図示の管路部材(チューブなど)を介して微動ステージ422の外部から真空吸引力(図27の黒矢印参照)が供給(パイプ462b内部が真空状態と)される。兼用パイプが設けられる場合、真空吸引力と加圧気体とを切り替え可能供給される。
【0110】
パイプ462bの上面には、複数の貫通孔468が形成されている。また、ベース部470のスレート472には、パイプ462b上に載置された状態で貫通孔468とXY平面内の位置がほぼ同じとなる位置に貫通孔472bが形成されている。さらに、チャック部480のタイル482には、スレート472上に載置された状態で、貫通孔468、472bとXY平面内の位置がほぼ同じとなる位置に貫通孔482fが形成されている。貫通孔468、472b、482fは、連通しており、パイプ462b内に真空吸引力が供給されると、上記貫通孔468、472b、482fを介してタイル482上面のうち、周壁部482b(図26参照)に囲まれた空間に真空吸引力が供給される。これにより、微動ステージ422は、タイル482上に載置された基板P(図1参照)を吸着保持する。
【0111】
なお、貫通孔468、472b、482fに供給される真空吸引力の強さを、微動ステージ内の位置に応じて変更しても良い。微動ステージ422の中央部に配置された貫通孔468、472b、482fに供給される真空吸引力の強さを強くすることで、基板Pの中央部に生じる空気溜まりを無くすことができる。また、空気溜まりがなくなった際に、真空吸引力の強さを弱めるようにしても良い。また、微動ステージ422の中央部に配置された貫通孔468、472b、482fに供給される真空吸引力を微動ステージ422の周辺部に配置された貫通孔468、472b、482fよりも早く、つまり時間差をつけて、供給するようにしても良い。ここで、図28に示されるように、貫通孔482fは、ピン482d(太いピン)を貫通するように形成されており、パイプ462bからの真空吸引力がタイル482の下面側に供給されることがない。
【0112】
なお、図26では、タイル482に貫通孔482fが2つ形成された例が示されているが、貫通孔482f(対応する貫通孔468、472bも同様)の数、及び配置は、これに限られず、適宜変更が可能である。なお、貫通孔468、472b、482fの直径はそれぞれ異なっていても良い。より下方に位置する貫通孔の直径を大きくしたり、つまり貫通孔468の直径を貫通孔482fの直径よりも大きくしたり、これとは逆に、より上方に位置する貫通孔の直径を大きくしたり、つまり貫通孔482fの直径を貫通孔468の直径よりも大きくするようにしても良い。これにより、タイル482、スレート472、及びパイプ462bを積層(載置)する際の位置合わせが容易となる。また、貫通孔468、472b、482fの直径は、微動ステージの中央付近に位置する貫通孔468、72b、482fほど大きくするようにしても良い。また、貫通孔468、472b、482fの直径は、Y軸方向に関して、プラグ464に近いほど大きくするようにしても良い。
【0113】
タイル482の吸着保持構造は、上記基板Pの吸着保持構造と概ね同じに構成されている。すなわち、チャック部吸引用のパイプ462aの両端部には、プラグ464と継手466とがそれぞれ嵌め込まれ、継手466を介して微動ステージ422の外部からパイプ462a内に真空吸引力が供給される。パイプ462aの上面には、貫通孔が形成され(図24参照)、該貫通孔とスレート472に形成された貫通孔(図24参照)を介して、タイル482下面のうち、周壁部482e(図28参照)に囲まれた空間に真空吸引力が供給される。図28における符号Qは、スレート472に形成された貫通孔に対応する領域を示しており、真空吸引力がピン482c、482dと重ならない位置に供給されることが分かる。
【0114】
なお、上記説明では、タイル482のスレート472に対して固着する方法(構成)として、真空吸着する方法(構成)について説明したが、タイル482を固着する方法としては吸着に限られるものでは無い。たとえば、タイル482の裏面の一部をスレート472に接着材で接着することで、タイル482をスレート472に固着するようにしても良い。この場合、タイル482とスレート472とを接着する接着剤に求められる性能は、両者が剥がしやすく、ずれにくいことである。接着剤が硬化した際に非常に硬くなって膨張し、接着剤がタイル482をスレート472から持ち上げてしまわないこと、つまり段差を生じさせないことが求められる。タイル482裏面とスレート472とが密着することによってタイル482上面の平面度が決まるため、接着剤は、硬化前はペースト状でタイル482裏面の溝部に入り込むが、硬化後は弾力性のあるゴム状のものであることが好ましく、たとえば、湿気硬化型の剥離可能な変形シリコーン系シーリング材などが用いられることが好ましい。
【0115】
またタイル482をスレート472に固着する方法として、上述の真空吸着による方法と接着による方法とを兼用しても良い。
【0116】
なおタイル482に接着材を塗布した場所からは、空気の出し入れが出来なくなるので、タイル482の裏面における接着剤の塗布する場合には、基板Pを吸着保持するための空気の流路および吸引孔を塞がないような位置に塗布する。
【0117】
また、タイル482の内部にマグネットを内蔵するとともに、スレート472を磁性材料によって形成しておき、このマグネットの磁気力によってタイル482をスレート472に固着するようにしても良い。
【0118】
またマグネットと磁性材料の関係を逆転させて、タイル482を磁性材料で形成し、スレート472にマグネットを設けるように構成することも考えられるが、この場合には、磁性材料が例えば金属である場合には、タイル482の表面で静電気が生じ易くなるため、静電気対策(除電装置の利用)が必要になる。また露光光による照射熱やステージから伝わる熱などの熱対策、温度管理(冷却用気体の利用)も行う必要がある。
【0119】
なお、装置の運搬時や組み立て時など、タイル482をスレート472に吸着保持(真空吸着)できない場合には、上記接着剤やマグネット等を用いて、タイル482がスレート472からずれない(外れない)ようにしても良い。
【0120】
基板Pの浮上支持構造も、上記基板Pの吸着保持構造と概ね同じに構成されている。すなわち、基板浮上用のパイプ462cに加圧気体が供給されると、該バイブ462cに形成がされた貫通孔、該貫通孔にそれぞれ連通するスレート472の貫通孔、及びタイル482の貫通孔482g(図26参照)を介して、周壁部482b内に加圧気体が供給される。これにより、微動ステージ422は、タイル482上に載置された基板P(図1参照)を下方から浮上させることができる。以上のように、管路部460、スレート472、タイル482によって、基板Pが吸着保持され基板載置面に沿って平面矯正される。つまり、管路部460、ベース部470(スレート472)、及びチャック部480(タイル482)の3層構造によって、基板ホルダの機能を有しているとも言える。
【0121】
なお、微動ステージ422は、基板Pをタイル482からメカ部材を使って浮上させる浮上ピンを有していても良い。浮上ピンは基板Pに当接する面を有しており、該面を支持する棒上の部材によって構成される。浮上ピンの面とタイル482の上面とで、基板載置面を形成する。また、浮上ピンは、各タイル482との間に配置されることでタイル482の浮き上がり防止構造としても機能する。なお、浮上ピンの数や配置は特に限定されない。
【0122】
なお、管路部460は、複数のパイプ462を備える構成として説明をしたが、一枚もしくは複数の板状の部材に溝を設け、定盤部450および/またはスレート472により該溝を覆うことで、加圧気体(圧縮空気など)が流れる流路を形成したり、真空吸引力が供給される(空間内の空気が真空吸引される)流路を形成したりするようにしても良い。
【0123】
また、本第4の実施形態では、定盤部450では、内部に補剛部材としてハニカム構造体458が充填される構造であったが、上記第1~第3の実施形態のように、複数のリブ108(図2など参照)を補剛部材として、定盤部450の内部に配置しても良い。同様に、上記第1~第3の実施形態において、定盤部100の内部にリブ108に替えて、本第4の実施形態と同様に、ハニカム構造体458を充填しても良い。また、本第4の実施形態で補剛部材としてハニカム構造体458とリブ108とを併用しても良い。この場合、ボイスコイルモータ70X、70Yの可動子をリブ108に固定しても良い。
【0124】
《第5の実施形態》
次に第5の実施形態に係る基板ステージ装置について、図30図35を用いて説明する。第5の実施形態に係る基板ステージ装置は、微動ステージ522の構成が異なる点を除き、上記第4の実施形態と同じであるので、以下、相違点についてのみ説明し、上記第4の実施形態と同じ構成又は機能を有する要素については、上記第4の実施形態と同じ符号を付してその説明、及び図示を省略する。
【0125】
図20に示されるように、上記第4の実施形態の微動ステージ422が定盤部450上に管路部460、ベース部470、及びチャック部480がそれぞれ積層された4層構造であったのに対し、図31に示されるように、本第5の実施形態に係る微動ステージ522は、定盤部450上にベース部560が積層され、そのベース部560上にチャック部480が積層される3層構造である点が異なる。
【0126】
なお、図30などでは不図示であるが、本第5の実施形態でも、微動ステージ522に対し、第1駆動系62が備える複数のボイスコイルモータ70X、70Y(それぞれ図10参照)を介して水平面内3自由度方向の推力を付与する点は、上記第1~第3の実施形態と同様である。また、不図示である各ボイスコイルモータ70X、70Yの配置も、特に限定されず、上記第1~第3の実施形態に係るボイスコイルモータ70X、70Yの配置のいずれをも選択的に用いることができる。
【0127】
以下、本第5の実施形態に係る微動ステージ522の構成について説明する。図30に示されるように、微動ステージ522は、定盤部450、ベース部560、及びチャック部480を備えている。このように、本第5の実施形態に係る微動ステージ522は、上記第4の実施形態における管路部460(図20など参照)に相当する要素を備えていない。これに対し、本第5の実施形態では、ベース部560が管路部の機能を兼用する。なお、定盤部450、及びチャック部480の構成に関しては、上記第4の実施形態と同じであるので、説明を省略する。また、ここでは、チャック部480を構成する複数のタイルとして、上記第1の実施形態と同様のタイル120が用いられる場合について説明するが、タイルとしては、上記第4の実施形態と同様のタイル482(図26など参照)を用いても良い。
【0128】
図31に示されるように、ベース部560は、上記第4の実施形態に係る微動ステージ422のベース部470(それぞれ図20参照)と同様に、複数枚のスレート562と称される部材により形成されている。スレート562は、上記第4の実施形態のスレート472と(図20参照)同様の石材、あるいはセラミックスなどによって形成された平面視矩形の薄板状部材である。複数枚のスレート562は、図32に示されるように、定盤部450(図32では不図示。図31参照)上にタイル状に敷き詰められ、定盤部450に対して接着剤により固定されている。
【0129】
各スレート562の上面には、図35に示されるように、孔部564P、及び564Vが開口している。孔部564P、564Vの配置は、第1の実施形態(図4参照)に係る微動ステージ22における定盤部100の上面部104に形成された複数の孔部112P、112V(図9参照)と同様である。
【0130】
ここで、上記第1の実施形態では、真空吸引力を供給するための管路(パイプ110Vc、110Vp)、及び加圧気体を供給するための管路(パイプ110P)が定盤部100(それぞれ図9参照)の内部に形成されていたのに対し、本第5の実施形態では、これに替わるものとして、図34(A)に示されるように、スレート562の下面に複数の溝566が形成されている。溝566は、Y軸方向に延び、スレート562±Y側の端部に開口している。上記複数の孔部564P、及び564Vは、溝566の底部に形成されており、複数の孔部564P、及び564Vは、対応する溝566と連通している。
【0131】
ベース部560(図33参照)において、-Y側の端部近傍に配置されるスレート562には、上記溝566の開口端部に継手568が接続される。溝566内には、継手568を介して微動ステージ522(図33参照)の外部から加圧気体、又は真空吸引力が供給される。また、Y軸方向に隣接する一対のスレート562間には、図34(B)に示されるように、流路接続部材570が挿入される。これにより、Y軸方向に隣接する複数のスレート562に形成された溝566が、1本の溝として機能する。+Y側の端部近傍に配置されるスレート562に形成された溝566の開口端部には、プラグ572(図32参照)が装着される。
【0132】
スレート562の下面には、上記複数の溝566とは別に、図34(C)に示されるように、スレート562と定盤部450(図33参照)とを接着する接着剤用の溝574が形成されている。溝574は、スレート562が定盤部450に接着されることにより、定盤部450の上面部454(図33参照)と協働して、気体の流路を形成する。
【0133】
溝566に供給される加圧気体、又は真空吸引力を用いてタイル120を吸着保持する構造、及びタイル120上に載置された基板P(図1参照)を吸着保持する構造、並びにタイル120上に載置された基板Pを浮上させる構造に関しては上記第1の実施形態と概ね同じである。図35に示されるように、タイル120がスレート562上に載置された状態で、真空吸引力(矢印VF参照)が供給される溝(図35では溝574Vc)は、孔部564Vを介してタイル120を真空吸着保持する。また、真空吸引力が供給される別の溝(図35では、溝574Vp)は、孔部564V、及び貫通孔132を介してタイル120上に載置された基板P(図1参照)を真空吸着保持する。また、加圧気体(矢印PG参照)が供給される溝(図35では溝574P)は、孔部564P、及び貫通孔134を介してタイル120上に載置された基板Pの下面に加圧気体を噴出する。
【0134】
以上説明した第5の実施形態では、微動ステージ522が3層構造であるので、上記第4の実施形態に比べて構成が簡単である。
【0135】
なお、本第5の実施形態でも、定盤部450の内部に補剛部材として複数のリブ108(図2など参照)を配置しても良い。また、補剛部材としてハニカム構造体458(図20参照)とリブ108とを併用しても良い。この場合、ボイスコイルモータ70X、70Yの可動子をリブ108に固定しても良い。
【0136】
《第6の実施形態》
次に第6の実施形態に係る基板ステージ装置について、図36を用いて説明する。第6の実施形態に係る基板ステージ装置は、微動ステージ622の構成が異なる点を除き、上記第1の実施形態と同じであるので、以下、相違点についてのみ説明し、上記第1の実施形態と同じ構成又は機能を有する要素については、上記第1の実施形態と同じ符号を付してその説明、及び図示を省略する。
【0137】
上記第1の実施形態では、図2に示されるように、微動ステージ22の内部には、補剛部材として複数のリブ108が配置された。これらのリブ108は、X軸方向、Y軸方向、又は中心部から放射状(X字状)に延びるように配置されていた。従って、放射状に延びるリブ108の枚数は、合計で4枚であった。これに対し、本第6の実施形態では、図36に示されるように、外壁部106内に収納される複数のリブ608の全てが、定盤部650の中央部から放射状に延びるように配置されている。なお、リブ608の枚数は、図36に示されるものに限定されず、適宜変更が可能である。定盤部650の内部に複数のパイプ110が収容され、上面部104の下面と協働して加圧気体、及び真空吸引力供給用の流路を形成する点は、上記第1の実施形態と同様である。また、図36では、不図示であるが、複数のタイル120(図4参照)が定盤部650の上面部104上に敷き詰められ、基板載置面を形成する点についても、上記第1の実施形態と同様である。
【0138】
なお、図36では不図示であるが、本第6の実施形態でも、微動ステージ622に対し、第1駆動系62が備える複数のボイスコイルモータ70X、70Y(それぞれ図10参照)を介して水平面内3自由度方向の推力を付与する点は、上記第1~第3の実施形態と同様である。また、不図示である各ボイスコイルモータ70X、70Yの配置も、特に限定されず、上記第1~第3の実施形態に係るボイスコイルモータ70X、70Yの配置のいずれをも選択的に用いることができる。
【0139】
なお、補剛部材として上記第4の実施形態に係る補剛部材であるハニカム構造体とリブ608とを併用しても良い。また、ボイスコイルモータ70X、70Yの可動子を固定するためのリブを、上記放射状に延びるリブ608とは別に配置しても良い。
【0140】
《第7の実施形態》
次に第7の実施形態に係る基板ステージ装置について、図37(A)~図38(B)を用いて説明する。第7の実施形態に係る基板ステージ装置は、基板載置面を形成する複数のタイル720の構成が異なる点を除き、上記第1の実施形態と同じであるので、以下、相違点についてのみ説明し、上記第1の実施形態と同じ構成又は機能を有する要素については、上記第1の実施形態と同じ符号を付してその説明、及び図示を省略する。
【0141】
上記第1の実施形態のタイル120の周壁部124(それぞれ図6参照)が、タイル120の外周縁部に沿って形成されたのに対し、本第7の実施形態に係るタイル720は、図37(A)に示されるように、外周縁部よりも幾分内側の領域に周壁部724が形成されている点が異なる。図37(B)に示されるように、タイル720において、周壁部724の先端の高さ位置は、ピン722の高さ位置と同じに設定されているのに対し、周壁部724よりも外側の領域の高さ位置は、上面におけるピン122が形成されていない部分と同じとなっている。以下、タイル720において、周壁部724よりも外側の領域を、段差部726と称して説明する。また、図38(A)及び図38(B)から分かるように、本第7の実施形態のタイル720は、四隅部が面取り加工されている。なお、タイル720の裏面の構造は、上記第1の実施形態のタイル120と同じであるので、説明を省略する。
【0142】
本第7の実施形態に係るタイル720を複数枚並べて配置すると、図37(A)に示されるように、隣接する一対のタイル720間で、互いの周壁部724が離間するとともに、互いの段差部726が隣接することにより、一対のタイル720の接合部分に溝が形成される。
【0143】
本第7の実施形態によれば、図37(B)に示されるように、隣接する周壁部724同士が離間しているので、仮に隣接するタイル720に厚みの差がある場合であっても、隣接するタイル720間に急峻な段差が形成されることが回避できる。
【0144】
なお、本第7の実施形態に係るタイル720は、上記第2~第6の実施形態に係る微動ステージ220(図11参照)、微動ステージ320(図14参照)、微動ステージ422(図19参照)、微動ステージ522(図30参照)などにも適用することができる。
【0145】
《第8の実施形態》
次に第8の実施形態に係る基板ステージ装置について、図39を用いて説明する。第8の実施形態に係る基板ステージ装置は、基板載置面を形成する複数のタイル820の構成が異なる点を除き、上記第7の実施形態と同じであるので、以下、相違点についてのみ説明し、上記第7の実施形態と同じ構成又は機能を有する要素については、上記第7の実施形態と同じ符号を付してその説明、及び図示を省略する。
【0146】
図39に示されるように、タイル820の外周縁部には、上記第7の実施形態と同様に、各ピン722と同じ高さの周壁部724が形成されている。また、周壁部724よりも外側の領域に段差部726が形成されている点も上記第7の実施形態と同じである。
【0147】
本第8の実施形態に係るタイル820では、周壁部724の外側面から段差部726上に複数の凸部822が所定の間隔で、櫛歯状に突き出して形成されている。凸部822の高さ位置は、周壁部724、及びピン722と同じに設定されている。複数の凸部822のそれぞれは、複数のタイル820を並べて配置した場合に、隣接する一対のタイル820の凸部822の先端部同士が接触しない(ずれる)ように(一方のタイル820の凸部822が他方のタイル820の段差部726に対向するように)設定されている。
【0148】
本第8の実施形態によれば、上記第7の実施形態の効果に加え、対向する一対の周壁部724間に形成される溝内に複数の凸部822が配置されるので、基板P(図1参照)を吸着保持する際の基板Pの平面度が向上する。また、また、互いの凸部822がずれて配置されるので、隣接するタイル820間に急峻な段差が形成されることを回避できる。なお、本第8の実施形態に係るタイル820は、上記第2~第6の実施形態に係る微動ステージ220(図11参照)、微動ステージ320(図14参照)、微動ステージ422(図19参照)、微動ステージ522(図30参照)などにも適用することができる。
【0149】
《第9の実施形態》
次に第9の実施形態に係る基板ステージ装置について、図40~43を用いて説明する。第9の実施形態に係る基板ステージ装置920は、微動ステージ922の水平面内の位置を計測するための計測系の構成が異なる点を除き、上記第2の実施形態と同じであるので、以下、相違点についてのみ説明し、上記第2の実施形態と同じ構成又は機能を有する要素については、上記第2の実施形態と同じ符号を付してその説明、及び図示を省略する。
【0150】
上記第2の実施形態に係る微動ステージ220(図11参照)の水平面内の位置を計測するための計測系としては、上記第1の実施形態と同様の構成の光干渉計システム96A(図10参照)が用いられたのに対し、本第9の実施形態に係る基板ステージ装置920では、エンコーダシステム930を用いて微動ステージ922の水平面内の位置が計測される。なお、基板ステージ装置920の構成は、微動ステージ922に、バーミラー80X、80Y(それぞれ図12参照)に替わり、以下に説明するエンコーダシステムの構成要素が配置される点を除き、上記第2の実施形態と同様である。なお、複数のボイスコイルモータ70X、70Y(図13参照)を含み、基板ステージ装置920の各要素を駆動するための駆動系(基板駆動系60。図10参照)の構成は、上記第2の実施形態と同じであるので、ここでは説明を省略する。
【0151】
図41は、図40において符号9Aで示される部分の拡大図である。図40及び図41から分かるように、微動ステージ922の定盤部100の+Y側の側面、及び-Y側の側面それぞれには、スケールベース932が取り付けられている。スケールベース932は、図42に示されるように、X軸方向に延びる部材から成り、そのX軸方向の長さは、基板PのX軸方向の寸法よりも幾分長く設定されている。スケールベース932は、セラミックスなどの熱変形が生じにくい素材で形成することが好ましい。
【0152】
一対のスケールベース932それぞれの上面には、上向きスケール934が固定されている。上向きスケール932は、X軸方向に延びる板状(帯状)の部材であって、その上面(+Z側(上側)を向いた面)には、互いに直交する2軸方向(本実施形態ではX軸及びY軸方向)を周期方向とする反射型の2次元回折格子(いわゆるグレーティング)が形成されている。
【0153】
図40に戻り、エンコーダシステム930は、一対の計測テーブル940を有している。一方の計測テーブル940は、投影光学系16の+Y側に配置され、他方の計測テーブル940は、投影光学系16の-Y側に配置されている。計測テーブル940は、投影光学系16を支持する支持部材19(以下、「光学定盤19」と称する)の下面に吊り下げ状態で固定されたYリニアアクチュエータ942によってY軸方向に所定の(微動ステージ922のY軸方向への移動可能距離と同等の)ストロークで駆動される。Yリニアアクチュエータ942の種類は特に限定されず、リニアモータ、あるいはボールねじ装置などを用いることができる。
【0154】
また、光学定盤19の下面には、各計測テーブル940に対応して、Y軸方向に延びる一対の下向きスケール960が固定されている(図40参照)。下向きスケール960の下面(-Z側(下側)を向いた面)には、互いに直交する2軸方向(本実施形態ではX軸及びY軸方向)を周期方向とする反射型の2次元回折格子(いわゆるグレーティング)が形成されている。
【0155】
計測テーブル940の下面には、2つの下向きXヘッド950xと、2つの下向きYヘッド950yとが、上向きスケール932に対向するように取り付けられている(それぞれ紙面奥行方向に重なっており一方は不図示)。また、計測テーブル940の上面には、2つの上向きXヘッド952xと、2つの下向きYヘッド952y(2つのXヘッド952xに対して紙面奥行方向に重なっており不図示。図43参照)とが、下向きスケール960に対向するように取り付けられている。各ヘッド950x、950y、952x、952yの位置関係は、既知である。また、各ヘッド950x、950y、952x、952yの位置関係が容易に変化しないように、計測テーブル940は、セラミックスなどの熱変形が生じにくい素材で形成することが好ましい。
【0156】
図43には、エンコーダシステム930の概念図が示されている。エンコーダシステム930では、上向きXヘッド952x及び上向きYヘッド952yと、これらに対応する下向きスケール960とによって、光学定盤19を基準とした計測テーブル940(下向きXヘッド950x及び下向きYヘッド950y)のXY平面内の位置計測を行うための第1エンコーダシステムが構成されている。またエンコーダシステム930では、下向きXヘッド950x及び下向きYヘッド950yと、これに対応する上向きスケール934とによって、計測テーブル940を基準とした微動ステージ922のXY平面内の位置計測を行うための第2エンコーダシステムが構成されている。このように、本第9の実施形態に係るエンコーダシステム930では、上記第1及び第2エンコーダシステムの2段階のエンコーダシステムを介して、光学定盤19を基準とした微動ステージ922の位置計測が行われる。
【0157】
主制御装置90(図10参照)は、微動ステージ922をX軸方向にのみ長ストロークで移動させる際には、計測テーブル940(下向きXヘッド950x及び下向きYヘッド950y)と対応する上向きスケール934との対向状態が維持されるように、計測テーブル940のY軸方向の位置決めを行いつつ、微動ステージ922を静止状態の計測テーブル940に対してX軸方向に相対移動させる。これにより、第1及び第2のエンコーダシステムの合算値に基づく、光学定盤19を基準とした微動ステージ922の位置計測を行うことができる。
【0158】
これに対し、微動ステージ922をY軸方向に長ストロークで移動させる際には、主制御装置90(図10参照)は、計測テーブル940を微動ステージ922とともに、Y軸方向に長ストロークで移動させる。この際、計測テーブル940の位置計測が上記第1エンコーダシステムにより常時行われることから、微動ステージ922と計測テーブル940とを厳密に同期移動させる必要がない。主制御装置90は、第1エンコーダシステムの出力(光学定盤19を基準とした計測テーブル940の位置情報)と、第2エンコーダシステムの出力(計測テーブル940を基準とした微動ステージ922の位置情報)との合算値に基いて、光学定盤19を基準とした微動ステージ922の位置計測を行う。
【0159】
本第9の実施形態によれば、光干渉計システムに比べて空気ゆらぎなどの影響が小さいエンコーダシステム930によって微動ステージ922のXY平面内の位置情報を高精度で求めることができる。
【0160】
なお、以上説明した本第9の実施形態に係るエンコーダシステム930は、上記第1、及び第3~第8の実施形態に係る微動ステージ22(図1参照)、微動ステージ320(図14参照)、微動ステージ422(図19参照)、微動ステージ522(図30参照)などの計測にも適用することができる。
【0161】
また、上記説明では、上向きスケール934として、X軸方向の寸法が基板Pよりも幾分長いスケールを用いる場合を説明したが、より短いスケールをX軸方向に所定間隔で並べて配置しても良い。この場合、隣接するスケールの少なくとも一方に常にヘッドが対向するように、隣接するスケール(及びヘッド)の間隔を設定し、各ヘッドの出力の繋ぎ処理を行うと良い。また、スケール934、960に2次元グレーティングが形成された場合を説明したが、これに限られず、X軸方向を周期方向とするXスケールと、Y軸方向を周期方向とするYスケールとが個別に形成されていても良い。
【0162】
《第10の実施形態》
次に第10の実施形態に係る基板ステージ装置について、図44~47を用いて説明する。第10の実施形態に係る基板ステージ装置1020は、微動ステージ1022の水平面内の位置を計測するためのエンコーダシステムの構成が異なる点を除き、上記第9の実施形態と同じであるので、以下、相違点についてのみ説明し、上記第9の実施形態と同じ構成又は機能を有する要素については、上記第9の実施形態と同じ符号を付してその説明、及び図示を省略する。
【0163】
上記第9の実施形態(図40参照)のエンコーダシステム930は、微動ステージ922の上方に配置された計測テーブル940を介して、光学定盤19を基準に微動ステージ922の水平面内の位置を計測したのに対し、本第10の実施形態のエンコーダシステム1030では、微動ステージ922をY軸方向に長ストロークで移動させるためのY粗動ステージ32を介して光学定盤19を基準に微動ステージ1022の水平面内の位置を計測する点が異なる。なお、複数のボイスコイルモータ70X、70Y(図13参照)を含み、基板ステージ装置1020の各要素を駆動するための駆動系(基板駆動系60。図10参照)の構成は、上記第2の実施形態と同じであるので、ここでは説明を省略する。
【0164】
図45は、図44において符号10Aで示される部分の拡大図である。図44及び図45から分かるように、微動ステージ922の定盤部100の+Y側の側面、及び-Y側の側面それぞれには、ヘッドベース1032が取り付けられている。ヘッドベース1032の下面には、上記第9の実施形態における計測テーブル940(図41参照)の下面と同様の配置で2つの下向きXヘッド950xと、2つの下向きYヘッド950yとが取り付けられている(図47参照)。
【0165】
Y粗動ステージ32には、一対のスケールベース1034がそれぞれL字状のアーム部材1036を介して取り付けられている。なお、一対のスケールベース1034は、Y軸方向に関してY粗動ステージ32と一体的に動作するYステップガイド44に取り付けられても良い。スケールベース1034は、上記第9の実施形態に係るスケールベース932(図42参照)と実質的に同じ部材である。スケールベース1034は、図46に示されるように、X軸方向に延びる部材から成り、その上面には、上記第9の実施形態と同様の上向きスケール934が固定されている。上記ヘッドベース1032に取り付けてられた各ヘッド950x、950yは、上向きスケール934に対向するように配置されている(図47参照)。
【0166】
図45に戻り、エンコーダシステム1030では、スケールベース1034(すなわちY粗動ステージ32)にL字状のアーム部材1038を介してヘッドベース1040が取り付けられている。ヘッドベース1040の上面には、上記第9の実施形態における計測テーブル940(図41参照)の上面と同様の配置で2つの上向きXヘッド952xと、2つの下向きYヘッド952yとが固定されている(図47参照)。
【0167】
一対のヘッドベース1040に対応して、光学定盤19の下面にY軸方向に延びる一対の下向きスケール960が固定されている(図44参照)点は、上記第9の実施形態と同様である。上記ヘッドベース1040に取り付けてられた各ヘッド952x、952yは、下向きスケール960に対向するように配置されている。
【0168】
図46には、エンコーダシステム1030の概念図が示されている。エンコーダシステム1030では、上向きXヘッド952x及び上向きYヘッド952yと、これらに対応する下向きスケール960とによって、光学定盤19を基準としたY粗動ステージ32のXY平面内の位置計測を行うための第1エンコーダシステムが構成されている。またエンコーダシステム1030では、下向きXヘッド950x及び下向きYヘッド950yと、これに対応する上向きスケール934とによって、Y粗動ステージ32を基準とした微動ステージ1022のXY平面内の位置計測を行うための第2エンコーダシステムが構成されている。このように、本第10の実施形態に係るエンコーダシステム1030では、上記第1及び第2エンコーダシステムの2段階のエンコーダシステムを介して、光学定盤19を基準とした微動ステージ1022の位置計測が行われる。
【0169】
主制御装置90(図10参照)は、微動ステージ1022をX軸方向にのみ長ストロークで移動させる際には、下向きXヘッド950x及び下向きYヘッド950yと、上向きスケール934との対向状態が常に維持された状態で(Y粗動ステージ32が静止状態)で、微動ステージ922を静止状態のY粗動ステージ32に対してX軸方向に相対移動させる。これにより、第1及び第2のエンコーダシステムの合算値に基づく、光学定盤19を基準とした微動ステージ1022の位置計測を行うことができる。
【0170】
これに対し、微動ステージ1022をY軸方向に長ストロークで移動させる際には、Y粗動ステージ32の位置計測を上記第1エンコーダシステムによって行う。Y粗動ステージ32が微動ステージ1022とともにY軸方向に長ストロークで移動することから、Y軸方向に長ストロークで移動する微動ステージ1022の位置情報は、第1エンコーダシステムの出力(光学定盤19を基準としたY粗動ステージ32の位置情報)と、第2エンコーダシステムの出力(Y粗動ステージ32を基準とした微動ステージ1022の位置情報)との合算値に基いて求めることができる。
【0171】
本第10の実施形態によれば、上記第9の実施形態の効果に加え、微動ステージ1022には、スケールに替えてエンコーダヘッドが取り付けられるので、上記第9の実施形態よりも軽量であり、基板Pの位置制御性が向上する。
【0172】
なお、以上説明した本第10の実施形態に係るエンコーダシステム1030は、上記第1、及び第3~第8の実施形態に係る微動ステージ22(図1参照)、微動ステージ320(図14参照)、微動ステージ422(図19参照)、微動ステージ522(図30参照)などの計測にも適用することができる。
【0173】
なお、以上説明した第1~第10の実施形態の各要素の構成は、上記説明したものに限定されず、適宜変更が可能である。一例として、上記各実施形態の第1駆動系62は、合計で4つのボイスコイルモータ(一対のXボイスコイルモータ70X、及び一対のYボイスコイルモータ70Y)を備えていたが、ボイスコイルモータの数は、これに限られず、X軸用、及びY軸用のボイスコイルモータがそれぞれ1つであっても良いし、それぞれ3つ以上であっても良い。また、Xボイスコイルモータ70XとYボイスコイルモータ70Yとで、互いの数が異なっていても良い。また、ボイスコイルモータ70X、70Yは、ムービングコイル型であっても良い。また、リニアモータとして、ボイスコイルモータを用いる場合を説明したが、これに限られず、他の種類のアクチュエータを用いても良く、その場合、複数種類のアクチュエータが混在していても良い。また、1軸方向のリニアモータがアクチュエータとして用いられる場合を説明したが、X軸及びY軸方向に推力を発生可能な2軸アクチュエータ、あるいは、X軸、Y軸、及びθz方向の3自由度方向に推力を発生可能なアクチュエータを用いても良い。
【0174】
また、上記各実施形態では、1つの収納部76(微動ステージに形成された空間)内に、1つのボイスコイルモータが収納される構成であったが、これに限られず、1つの収納部(空間)内に複数のボイスコイルモータ(アクチュエータ)が収納されても良い。この場合、複数のボイスコイルモータは、推力の発生方向が異なるものが混在していても良い。
【0175】
また、微動ステージ(微動ステージ22など)は、水平面内(X軸、又はY軸)の推力を発生するアクチュエータ(上記各実施形態では、ボイスコイルモータ70X、70Y)のみを、その内部に収納する構成であったが、水平面に交差する方向(Z軸方向など)に推力を発生するアクチュエータ(上記各実施形態のZボイスコイルモータ70Zなど)の少なくとも一部を内部に収容しても良い。
【0176】
また、上記各実施形態において、微動ステージの最下層であって、複数のボイスコイルモータを収納する定盤部(定盤部100など)は、中空の箱体内に補剛部材が収納される構造であったが、これに限られず、中実の部材により形成されても良い。また、各実施形態の微動ステージ(微動ステージ22など)は、定盤部(定盤部100など)を最下層とする複数層(2~4層)によって構成されたが、これに限られず、定盤部100などの上面に直接基板が載置される1層構造でも良いし、5層以上(この場合、定盤部100などが最下層でなくても良い)の構造であっても良い。
【0177】
また、上記各実施形態において、微動ステージ(微動ステージ22のなど)は、基板載置面を形成する最上層が、硬質の部材である複数の板状部材(タイル120など)によって形成されたが、最上層(基板載置面)を形成する部材は、これに限られず、柔軟性を有する部材であっても良い。柔軟性を有する部材としては、合成樹脂系、あるいはゴム系の材料によって形成されたシート状(あるいはフィルム状)の部材を用いることができる。この場合、このシート状部材が最上層となることから、このシート状部材の直下の第2層(上から2番目の層)の表面に沿って(倣って)上記シート状部材が平面矯正され、さらにシート状部材上に載置される基板Pも、第2層の上面に倣って平面矯正される。従って、この第2層の表面(上面)の平面度を高く形成することが好ましい。この場合、シート状部材には、上記タイル(タイル120など)と同様に、基板Pの下面を支持する複数のピン状の突起が形成されていることが好ましい。シート状部材の大きさは、特に限定されず、複数枚のシート状部材を並べることにより最上層を形成しても良いし、第2層の全面を覆うような1枚のシート状部材で最上層を形成しても良い。なお、シート状部材は、第2層に対して、タイルと同様に真空吸着保持されても良いが、これに限られず、接着などによって固着されても良い。
【0178】
また、上記各実施形態の基板ステージ装置(基板ステージ装置20など)の構成も、上記実施形態で説明したものに限られず、適宜変更が可能であり、それらの変形例にも、上記実施形態と同様の基板駆動系60を適用することが可能である。すなわち、基板ステージ装置としては、米国特許出願公開第2010/0018950号明細書に開示されるような、X粗動ステージ上にY粗動ステージが配置されるタイプの粗動ステージであっても良い(この場合、微動ステージ22などは、Y粗動ステージから各ボイスコイルモータによって推力が付与される)。また、基板ステージ装置としては、必ずしも自重支持装置28を有していなくても良い。また、基板ステージ装置は、基板Pを走査方向にのみ長ストローク駆動するものであっても良い。
【0179】
また、照明光は、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)、KrFエキシマレーザ光(波長248nm)などの紫外光や、Fレーザ光(波長157nm)などの真空紫外光であっても良い。また、照明光としては、DFB半導体レーザ又はファイバーレーザから発振される赤外域、又は可視域の単一波長レーザ光を、エルビウム(又はエルビウムとイッテルビウムの両方)がドープされたファイバーアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を用いても良い。また、固体レーザ(波長:355nm、266nm)などを使用しても良い。
【0180】
また、投影光学系16が複数本の光学系を備えたマルチレンズ方式の投影光学系である場合について説明したが、投影光学系の本数はこれに限らず、1本以上あれば良い。また、マルチレンズ方式の投影光学系に限らず、オフナー型の大型ミラーを用いた投影光学系などであっても良い。また、投影光学系16としては、拡大系、又は縮小系であっても良い。
【0181】
また、露光装置の用途としては角型のガラスプレートに液晶表示素子パターンを転写する液晶用の露光装置に限定されることなく、有機EL(Electro-Luminescence)パネル製造用の露光装置、半導体製造用の露光装置、薄膜磁気ヘッド、マイクロマシン及びDNAチップなどを製造するための露光装置にも広く適用できる。また、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるマスク又はレチクルを製造するために、ガラス基板又はシリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置にも適用できる。また、上記各実施形態に係る基板ステージ装置(基板ステージ装置20など)は、露光装置以外の装置、例えば基板検査装置、あるいは基板に所定の処理を施すための処理装置などに用いても良い。
【0182】
また、露光対象となる物体はガラスプレートに限られず、ウエハ、セラミック基板、フィルム部材、あるいはマスクブランクスなど、他の物体でも良い。また、露光対象物がフラットパネルディスプレイ用の基板である場合、その基板の厚さは特に限定されず、フィルム状(可撓性を有するシート状の部材)のものも含まれる。なお、本実施形態の露光装置は、一辺の長さ、又は対角長が500mm以上の基板が露光対象物である場合に特に有効である。
【0183】
液晶表示素子(あるいは半導体素子)などの電子デバイスは、デバイスの機能・性能設計を行うステップ、この設計ステップに基づいたマスク(あるいはレチクル)を製作するステップ、ガラス基板(あるいはウエハ)を製作するステップ、上述した各実施形態の露光装置、及びその露光方法によりマスク(レチクル)のパターンをガラス基板に転写するリソグラフィステップ、露光されたガラス基板を現像する現像ステップ、レジストが残存している部分以外の部分の露出部材をエッチングにより取り去るエッチングステップ、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除くレジスト除去ステップ、デバイス組み立てステップ、検査ステップ等を経て製造される。この場合、リソグラフィステップで、上記実施形態の露光装置を用いて前述の露光方法が実行され、ガラス基板上にデバイスパターンが形成されるので、高集積度のデバイスを生産性良く製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0184】
以上説明したように、本発明の物体保持装置は、物体を保持するのに適している。また、本発明の処理装置は、物体に対して所定の処理を実行するのに適している。また、本発明のフラットパネルディスプレイの製造方法は、フラットパネルディスプレイの生産に適している。また、本発明のデバイス製造方法は、マイクロデバイスの生産に適している。
【0185】
なお、上記実施形態で引用した露光装置などに関する全ての公開、米国特許出願公開明細書及び米国特許明細書などの開示を援用して本明細書の記載の一部とする。
【符号の説明】
【0186】
10…液晶露光装置、20…基板ステージ装置、22…微動ステージ、70X…Xボイスコイルモータ、70Y…Yボイスコイルモータ、76…収納部、100…定盤部、102…下面部、104…上面部、120…タイル、P…基板。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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図12
図13
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図15
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図20
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