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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】ガラス
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20221213BHJP
   B32B 17/10 20060101ALI20221213BHJP
   H05B 3/86 20060101ALI20221213BHJP
   H05B 3/12 20060101ALI20221213BHJP
   B60J 1/00 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
C03C27/12 M
C03C27/12 K
B32B17/10
H05B3/86
H05B3/12 A
B60J1/00 H
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020522219
(86)(22)【出願日】2019-05-28
(86)【国際出願番号】 JP2019021132
(87)【国際公開番号】W WO2019230733
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-02-14
(31)【優先権主張番号】P 2018103407
(32)【優先日】2018-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】儀間 裕平
(72)【発明者】
【氏名】定金 駿介
【審査官】田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-099405(JP,A)
【文献】特開2017-212148(JP,A)
【文献】特開2018-020771(JP,A)
【文献】特開2017-114484(JP,A)
【文献】特表2011-510893(JP,A)
【文献】特開平11-208421(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0147360(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/12
B32B 17/10
B60J 1/00
B60S 1/02
H05B 3/12
H05B 3/84
H05B 3/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用のガラスであって、
ガラス板と、
前記ガラスに画定された、車両内に搭載されるデバイスが情報を送信及び/又は受信する情報送受信領域と、
前記ガラス板の車内側の、平面視において、前記情報送受信領域と重複する領域に貼り付けられた、前記情報送受信領域を加熱可能なフィルムと、を有し、
前記フィルムは、基材と、前記基材上に形成された加熱要素と、前記加熱要素に接続されるバスバーと、を備え、
前記フィルムは、前記情報送受信領域において前記加熱要素が2つ以上の加熱領域に分割された加熱ゾーンを有し、
前記2つ以上の加熱領域が、少なくとも1つのバスバーを共有し、直列に接続され
前記加熱ゾーンは、1組の前記バスバー間に通電することにより加熱される区域であり、
1組の前記バスバー間の距離が最も遠い場所の直線距離の2乗と、1組の前記バスバー間の距離が最も近い場所の直線距離の2乗との比が1.2以上であるガラス。
【請求項2】
前記ガラスに画定された、JIS規格R3212で規定される試験領域Aを有し、
前記フィルムは、前記ガラス板の車内側の、平面視において、前記試験領域Aの外側であって前記情報送受信領域と重複する領域に貼り付けられている請求項1に記載のガラス。
【請求項3】
前記加熱ゾーンは、直列に接続された加熱領域を含む第1加熱ゾーンと、前記直列に接続された加熱領域とは異なる加熱領域を含む第2加熱ゾーンと、を有し、
前記第1加熱ゾーンと前記第2加熱ゾーンとが並列に接続された請求項1又は2に記載のガラス。
【請求項4】
前記加熱ゾーンは、前記加熱ゾーンに設けられた少なくとも1本のスリットにより前記2つ以上の加熱領域に分割されている請求項1乃至の何れか一項に記載のガラス。
【請求項5】
前記スリットの少なくとも一部が曲線状である請求項に記載のガラス。
【請求項6】
前記スリットの幅が0.3mm以下である請求項又はに記載のガラス。
【請求項7】
前記スリットを2本以上有し、隣接する前記スリットの間隔が10mm以上である請求項乃至の何れか一項に記載のガラス。
【請求項8】
前記フィルムを含めた前記情報送受信領域の可視光透過率Tvは、70%以上である請求項1乃至の何れか一項に記載のガラス。
【請求項9】
前記フィルムを含めた前記情報送受信領域のヘイズは、1%以下である請求項1乃至の何れか一項に記載のガラス。
【請求項10】
前記加熱要素は、金、銀、銅、又はスズドープ酸化インジウムから形成されている請求項1乃至の何れか一項に記載のガラス。
【請求項11】
前記バスバーは、銀、銅、錫、金、アルミニウム、鉄、タングステン、クロムからなる群から選択される少なくとも1つの金属、前記群から選択される2つ以上の金属を含む合金、又は導電性有機ポリマーから形成されている請求項1乃至10の何れか一項に記載のガラス。
【請求項12】
前記基材は、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、アラミド、プリブチレンテレフタレート、ポリビニルブチラール、ポリエチル酢酸ビニルからなる群から選択される少なくとも1つ以上の材料から形成されている請求項1乃至11の何れか一項に記載のガラス。
【請求項13】
前記基材の厚さは5μm以上500μm以下である請求項1乃至12の何れか一項に記載のガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の安全性向上を目的に、自動的に前方を走行する車両や歩行者との衝突を回避する機能を有する車両が開発されている。このような車両は、例えば、カメラ等のデバイスを車内に搭載し、車両のガラス(例えば、フロントガラス等)を介して、道路状況等の情報の送受信を行う(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところが、寒冷地においては、ガラスに付着した水分の凍結や、車内外の温度差によるガラスの曇が、これらのデバイスの機能を喪失させてしまう場合がある。そこで、この問題を回避するために、ガラスの車内側のデバイスが設けられる領域に加熱可能なフィルムを貼り付ける技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2011-510893号公報
【文献】特表2012-530646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、フィルムを均一に発熱させるためには、フィルムの平面形状が矩形であることが好ましい。しかし、ガラスの車内側のデバイスが設けられる領域にフィルムを貼り付ける場合、他部品との干渉でフィルムの形状に制約が出てしまい、フィルムを所望の形状にすることが困難である。フィルムの形状が矩形でない異形状である場合、フィルムを均一に加熱できず、ガラスの凍結や曇等によりデバイスのセンシング性能が阻害されてしまう。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、凍結や曇等によりデバイスのセンシング性能が阻害されにくい車両用のガラスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本ガラスは、車両用のガラスであって、ガラス板と、前記ガラスに画定された、車両内に搭載されるデバイスが情報を送信及び/又は受信する情報送受信領域と、前記ガラス板の車内側の、平面視において、前記情報送受信領域と重複する領域に貼り付けられた、前記情報送受信領域を加熱可能なフィルムと、を有し、前記フィルムは、基材と、前記基材上に形成された加熱要素と、前記加熱要素に接続されるバスバーと、を備え、前記フィルムは、前記情報送受信領域において前記加熱要素が2つ以上の加熱領域に分割された加熱ゾーンを有し、前記2つ以上の加熱領域が、少なくとも1つのバスバーを共有し、直列に接続され、前記加熱ゾーンは、1組の前記バスバー間に通電することにより加熱される区域であり、1組の前記バスバー間の距離が最も遠い場所の直線距離の2乗と、1組の前記バスバー間の距離が最も近い場所の直線距離の2乗との比が1.2以上であることを要件とする。
【発明の効果】
【0008】
開示の一実施態様によれば、凍結や曇等によりデバイスのセンシング性能が阻害されにくい車両用のガラスを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施の形態に係る車両用のフロントガラスを例示する図である。
図2】第1の実施の形態に係るフィルムを例示する図である。
図3】バスバーの極間距離について説明する図である。
図4】第2の実施の形態に係るフィルムを例示する図である。
図5】第3の実施の形態に係るフィルムを例示する図である。
図6】第4の実施の形態に係るフィルムを例示する図である。
図7】第5の実施の形態に係るフィルムを例示する図である。
図8】第6の実施の形態に係る車両用のフロントガラスを例示する断面図である。
図9】第7の実施の形態に係るフィルムを例示する平面図である。
図10】第8の実施の形態に係るフィルムを例示する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。又、各図面において、本発明の内容を理解しやすいように、大きさや形状を一部誇張している場合がある。
【0011】
なお、ここでは、車両用のフロントガラスを例にして説明するが、これには限定されず、実施の形態に係るガラスは、車両用のフロントガラス以外にも適用可能である。又、車両とは、代表的には自動車であるが、電車、船舶、航空機等を含むガラスを有する移動体を指すものとする。
【0012】
又、平面視とはフロントガラスの所定領域を所定領域の法線方向から視ることを指し、平面形状とはフロントガラスの所定領域を所定領域の法線方向から視た形状を指すものとする。又、本願明細書においては、上下は図面のZ軸方向、左右は図面のY軸方向を指すものとする。
【0013】
〈第1の実施の形態〉
図1は、第1の実施の形態に係る車両用のフロントガラスを例示する図であり、図1(a)はフロントガラスを車室内から車室外に視認した様子を模式的に示した図である(フロントガラス20はZ方向を上方として車両に取り付けられた状態である)。図1(b)は、図1(a)に示すフロントガラス20をXZ方向に切ってY方向から視た断面図である。なお、図1(b)において、便宜上、フロントガラス20と共にデバイス300を図示しているが、デバイス300はフロントガラス20の構成要素ではない。
【0014】
図1に示すように、フロントガラス20は、ガラス板21と、遮蔽層24と、フィルム25とを有する車両用のガラスである。
【0015】
フロントガラス20において、ガラス板21の車内側の面21a(フロントガラス20の内面)と、ガラス板21の車外側の面21b(フロントガラス20の外面)とは、平面であっても湾曲面であっても構わない。
【0016】
ガラス板21としては、例えば、ソーダライムガラス、アルミノシリケート等の無機ガラス、有機ガラス等を用いることができる。ガラス板21が無機ガラスである場合、例えば、フロート法によって製造できる。
【0017】
遮蔽層24は、ガラス板21の車内側の面21aの周縁部に設けられている。遮蔽層24は、不透明な層であり、例えば、所定の色の印刷用インクをガラス面に塗布し、これを焼き付けることにより形成できる。遮蔽層24は、例えば、不透明な(例えば、黒色の)着色セラミック層である。フロントガラス20の周縁部に不透明な遮蔽層24が存在することで、フロントガラス20の周縁部を車体に保持するウレタン等の樹脂や、デバイス300を係止するブラケットをフロントガラス20に貼り付ける接着部材等の紫外線による劣化を抑制できる。
【0018】
フロントガラス20には、JIS規格R3212で規定される試験領域Aが画定されている。又、フロントガラス20には、情報送受信領域26が画定されている。試験領域Aは平面視で遮蔽層24に囲まれた領域の内側に位置し、情報送受信領域26は遮蔽層24に設けられた開口部内に位置している。
【0019】
情報送受信領域26は、車両内のフロントガラス20の上辺周縁部等にデバイス300が配置される場合に、デバイス300が情報を送信及び/又は受信する領域として機能する。情報送受信領域26の平面形状は特に限定されないが、例えば、等脚台である。情報送受信領域26は、フロントガラス20を車両に取り付けたときに、運転手の視界を阻害しないと同時に、情報の送信及び/又は受信に有利なため、試験領域Aよりも上側に位置することが好ましい。
【0020】
なお、デバイス300は、情報を送信及び/又は受信するデバイスであり、例えば、可視光や赤外光等を取得するカメラ、ミリ波レーダ、赤外線レーザ等が挙げられる。車両内に、デバイス300以外に情報送受信領域26を介して情報を送信及び/又は受信する他のデバイスが配置されてもよい。ここで、「信号」とは、ミリ波、可視光、赤外光等を含む電磁波を指す。
【0021】
フィルム25は、ガラス板21の車内側の、平面視において、試験領域Aの外側であって情報送受信領域26と重複する領域に貼り付けられた、情報送受信領域26を加熱可能なフィルムである。フィルム25の平面形状は、例えば、情報送受信領域26の平面形状と相似であって、情報送受信領域26よりも若干大きな形状にできるが、情報送受信領域26よりも若干小さな形状としてもよい。
【0022】
フィルム25を含めた情報送受信領域26の可視光透過率Tvは、70%以上であることが好ましい。又、フィルム25を含めた情報送受信領域26のヘイズは、1%以下であることが好ましい。
【0023】
図2は、第1の実施の形態に係るフィルムを例示する図であり、図2(a)はフィルムを車室内から車室外に視認した様子を模式的に示した平面図、図2(b)は図2(a)のA-A線に沿う断面図である。なお、図2(a)において、ガラス板21、遮蔽層24、及び保護膜254の図示は省略している。
【0024】
フィルム25は、基材251と、加熱要素252と、バスバー253と、保護膜254とを備えている。但し、保護膜254は、フィルム25の必須の構成要素ではなく、必要に応じて設けることができる。
【0025】
フィルム25の基材251の車外側の面は、粘着層29を介して、情報送受信領域26内に位置するガラス板21の車内側の面21a、及び情報送受信領域26の周囲に隣接する遮蔽層24の車内側の面に接着されている。フィルム25の端部は遮蔽層24と重なっていなくともよい。
【0026】
粘着層29は、例えば、アクリル系、アクリレート系、ウレタン系、ウレタンアクリレート系、エポキシ系、エポキシアクリレート系、ポリオレフィン系、変性オレフィン系、ポリプロピレン系、エチレンビニルアルコール系、塩化ビニル系、クロロプレンゴム系、シアノアクリレート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリスチレン系、ポリビニルブチラール系からなる群から選択される少なくとも1つの樹脂から形成できる。粘着層29の厚さは、例えば、5μm以上120μm以下である。
【0027】
基材251としては、例えば、プラスチックフィルムやガラスを用いることができる。基材251の厚さは、5μm以上500μm以下としてよいが、好ましくは10μm以上200μm以下であり、更に好ましくは50μm以上150μm以下である。
【0028】
基材251となるプラスチックフィルムは、例えば、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド、ポリエーテル、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、アラミド、プリブチレンテレフタレート、ポリビニルブチラール、ポリエチル酢酸ビニルからなる群から選択される少なくとも1つのモノマーのホモポリマー又はコポリマーから形成できる。基材251となるガラスの材料としては、例えば、ソーダライムガラス、アルミノシリケート等の無機ガラス、有機ガラス等が挙げられる。
【0029】
加熱要素252は、基材251上に形成されている。加熱要素252は、例えば、金、銀、銅、スズドープ酸化インジウム等の導電性薄膜から形成できる。加熱要素252は、例えば、スパッタ法や真空蒸着法やイオンプレーティング法等の物理蒸着法(PVD:Physical Vapor Deposition)を用いて形成できる。加熱要素252は、化学蒸着法(CVD:Chemical Vapor Deposition)やウェットコーティング法を用いて形成してもよい。
【0030】
加熱要素252として、電熱線又はメッシュ状の金属を用いてもよい。加熱要素252を構成する電熱線又はメッシュ状の金属の材料としては、導電性材料であれば特に制限はないが、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、タングステンからなる群から選択される少なくとも1つの金属、この群から選択される2つ以上の金属を含む合金等が挙げられる。
【0031】
加熱要素252には色味や反射率を調整する層が含まれていてもよい。例えば、高屈折率材料からなる膜と低屈折率材料からなる膜とを積層した積層体であることが好ましく、要求される反射防止の程度や生産性等を考慮して選択できる。高屈折率材料からなる膜を構成する材料としては、例えば、窒化ケイ素、インジウム酸化物、スズ酸化物、ニオブ酸化物、チタン酸化物、ジルコニウム酸化物、セリウム酸化物、タンタル酸化物、アルミニウム酸化物、亜鉛酸化物等の金属酸化物から選択された1種以上を好ましく利用できる。低屈折率材料からなる膜を構成する材料としては、酸化ケイ素(SiO)、SiとSnとの混合酸化物を含む材料、SiとZrとの混合酸化物を含む材料、SiとAlとの混合酸化物を含む材料から選択された1種以上を好ましく利用できる。
【0032】
加熱要素252のシート抵抗は、150Ω/□以下とすることが好ましい。
【0033】
バスバー253は、基材251の端部に沿って延び、後述する加熱領域252a1、252a2、及び252bと電気的に接続されている。バスバー253は、後述するバスバー253d1、253d2、253ds、253e1、253e2等の総称である。
【0034】
バスバー253としては、銀ペーストが好適に用いられる。銀ペーストは、例えば、スクリーン印刷等の印刷方式により塗布できる。バスバー253は、銀、銅、錫、金、アルミニウム、鉄、タングステン、クロムからなる群から選択される少なくとも1つの金属、この群から選択される2つ以上の金属を含む合金、又は導電性有機ポリマーから、スパッタ法等により形成してもよい。又、バスバー253として、銅リボンや平編み銅線を用いてもよい。
【0035】
保護膜254は、加熱要素252及びバスバー253を保護する膜である。保護膜254の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0036】
加熱要素252は、少なくとも1本のスリットにより2つ以上の加熱領域に分割されており、2つ以上の加熱領域が、少なくとも1つのバスバーを共有し、直列に接続されている。
【0037】
第1の実施の形態に係るフィルム25では、一例として、加熱要素252には、Y方向(フロントガラス20を車両に取り付けた状態の水平方向)に延びる2本のスリットS1及びS2が設けられている。そして、加熱要素252は、スリットS1及びS2により、3つの加熱領域252a1、252a2、及び252bに分割されている。
【0038】
スリットS1及びS2は、例えば、加熱要素252を酸等を用いて部分的に除去するエッチング方式により形成できる。スリットS1及びS2は、加熱要素252をレーザ等を用いて部分的に除去するデコート方式により形成してもよい。
【0039】
スリットS1の幅W及びスリットS2の幅Wは、各々0.3mm以下であることが好ましく、0.2mm以下であることがより好ましく、0.1mm以下であることが更に好ましい。スリットS1の幅W及びスリットS2の幅Wが各々0.3mmより広いとデバイス300の検知性能に悪影響を及ぼす。スリットS1の幅W及びスリットS2の幅Wを各々0.3mm以下とすることで、デバイス300の検知性能に及ぼす影響を低減できる。スリットS1の幅W及びスリットS2の幅Wを各々0.2mm以下、更には0.1mm以下と狭くすることで、デバイス300の検知性能に及ぼす影響を更に低減できる。
【0040】
又、スリットS1とスリットS2との間隔Pは、10mm以上であることが好ましい。スリットS1とスリットS2との間隔Pが10mm未満であるとデバイス300の検知性能に悪影響を及ぼすが、間隔Pを10mm以上とすることで、デバイス300の検知性能に及ぼす影響を低減できる。
【0041】
加熱要素252において、加熱領域252a1の一方の端部に沿ってバスバー253d1が接続され、他方の端部に沿ってバスバー253dsが接続されている。又、加熱領域252a2の一方の端部に沿ってバスバー253d2が接続され、他方の端部に沿ってバスバー253dsが接続されている。バスバー253dsは、加熱領域252a1及び252a2に共有されており、加熱領域252a1及び252a2はバスバー253dsを介して直列に接続されている。加熱領域252a1及び252a2により第1加熱ゾーンA1が構成されている。ここで、加熱ゾーンとは、1組のバスバー間に通電することにより加熱される区域である。
【0042】
又、加熱領域252bの一方の端部に沿ってバスバー253e1が接続され、他方の端部に沿ってバスバー253e2が接続されている。加熱領域252bにより第2加熱ゾーンB1が構成されている。
【0043】
第1加熱ゾーンA1と第2加熱ゾーンB1とは並列に接続されている。すなわち、バスバー253d1とバスバー253d2との間に印加される電圧と、バスバー253e1とバスバー253e2との間に印加される電圧とは同一である。
【0044】
バスバー253d1とバスバー253d2の一方は正極であり、リード線等を介して、車両に搭載されたバッテリー等の電源の正側と接続される。又、バスバー253d1とバスバー253d2の他方は負極であり、リード線等を介して、車両に搭載されたバッテリー等の電源の負側と接続される。これにより、バスバー253d1とバスバー253d2との間に通電される。
【0045】
バッテリー等の電源からバスバー253d1とバスバー253d2を介して加熱要素252の第1加熱ゾーンA1に電流が供給されると、加熱要素252の第1加熱ゾーンA1が発熱する。第1加熱ゾーンA1と第2加熱ゾーンB1とは並列に接続されているため、第1加熱ゾーンA1と共に第2加熱ゾーンB1が発熱する。
【0046】
第1加熱ゾーンA1及び第2加熱ゾーンB1で発生した熱は、フロントガラス20の情報送受信領域26を温め、情報送受信領域26を構成するガラス板21の表面の凍結や曇を取り除く。これにより、デバイス300による良好なセンシングを確保できる。
【0047】
なお、加熱要素252への給電に、非接触給電を用いてもよい。非接触給電とは、コネクタや配線等による物理的な接触を介さずに、無線で電力供給を行う方法である。非接触給電には、例えば、互いに非接触な給電部と受電部の各々に設けられたコイル同士を近接させた状態で電磁誘導により電力供給を行う電磁誘導方式を用いることができる。
【0048】
スリットS1及びS2の位置は、加熱領域252a1の平均極間距離と加熱領域252a2の平均極間距離との和が、加熱領域252bの平均極間距離と等しくなるように規定できる。これにより、第1加熱ゾーンA1と第2加熱ゾーンB1の発熱量を同等にできる。
【0049】
ここで、極間距離とは、スリットの有無に関わらず、1組のバスバー間の直線距離を指すものとする。例えば、図3(a)~図3(c)に示すように、最小極間距離lは1組のバスバー間の距離が最も近い場所の直線距離、最大極間距離lは1組のバスバー間の距離が最も遠い場所の直線距離を表す。又、平均極間距離とは、最小極間距離と最大極間距離の平均値である。
【0050】
なお、図3(a)に示すフィルム25X、図3(b)に示すフィルム25Y、及び図3(c)に示すフィルム25Zは何れもスリットがない場合の例であるが、スリットがある場合も極間距離はスリットがない場合と同様に規定される。
【0051】
ガラス板21の車内側にフィルム25を貼り付ける場合、デバイス300のブラケット等の他部品が邪魔となり、フィルム25の形状を単純な矩形にできない場合が多い。フィルム25の形状が矩形でなく、かつ、図3(a)~図3(c)に示すようにスリットを設けない場合、加熱要素252内の領域によりバスバー253の極間距離が大きく異なる。そのため、加熱要素252内に発熱分布が生じ、十分な発熱性能が得られない領域が生じる。
【0052】
この対策として、第1の実施の形態では、図2に示すように、加熱要素252をスリットS1及びS2により3つの加熱領域252a1、252a2、及び252bに分割している。そして、分割した加熱領域252a1及び252a2が、バスバー253dsを共有し、直列に接続されている。
【0053】
このように、加熱要素252にスリットを設けて複数個の加熱領域に分割することで、各々の加熱領域内におけるバスバーの極間距離の変化を小さくできるため、加熱領域内における発熱分布の発生を抑制できる。その結果、凍結や曇等によりデバイス300のセンシング性能が阻害されにくいフロントガラス20を実現できる。
【0054】
なお、フィルム25の平面形状を等脚台形としたのは一例であり、フィルム25の平面形状が矩形でない場合に、加熱要素252にスリットを設けて複数個の加熱領域に分割する効果を得ることができる。特に、バスバーの最大極間距離の2乗と最小極間距離の2乗との比が1.2以上である場合に、加熱要素252にスリットを設けて複数個の加熱領域に分割する効果が顕著となる。以降の各実施の形態についても同様である。
【0055】
又、ガラス板21に遮蔽層24を設けることで透視歪が悪化するため、遮蔽層24の端部を情報送受信領域26から離し、フィルム25の周縁部に遮蔽層24と同系色の着色層を設けてもよい。又、フィルム25の車内側面に防曇コートやAR(Anti Reflection)コートを付与してもよい。
【0056】
〈第2の実施の形態〉
第2の実施の形態では、第1の実施の形態とは加熱領域の分割の仕方が異なる例を示す。なお、第2の実施の形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0057】
図4は、第2の実施の形態に係るフィルムを例示する図であり、フィルムを車室内から車室外に視認した様子を模式的に示した平面図である。フィルムの断面図は図2(b)と同様であるため、図示を省略する。
【0058】
第2の実施の形態に係るフィルム25Aでは、一例として、加熱要素252には、Y方向(フロントガラス20を車両に取り付けた状態の水平方向)に延びる4本のスリットS1、S2、S3、及びS4が設けられている。そして、加熱要素252は、スリットS1、S2、S3、及びS4により、5つの加熱領域252a1、252a2、252a3、252a4、及び252a5に分割されている。
【0059】
加熱要素252において、加熱領域252a1の一方の端部に沿ってバスバー253d1が接続され、他方の端部に沿ってバスバー253ds1が接続されている。又、加熱領域252a2の一方の端部に沿ってバスバー253ds2が接続され、他方の端部に沿ってバスバー253ds1が接続されている。
【0060】
又、加熱領域252a3の一方の端部に沿ってバスバー253ds2が接続され、他方の端部に沿ってバスバー253ds3が接続されている。又、加熱領域252a4の一方の端部に沿ってバスバー253ds4が接続され、他方の端部に沿ってバスバー253ds3が接続されている。又、加熱領域252a5の一方の端部に沿ってバスバー253ds4が接続され、他方の端部に沿ってバスバー253d2が接続されている。
【0061】
バスバー253ds1は、加熱領域252a1及び252a2に共有されている。又、バスバー253ds2は、加熱領域252a2及び252a3に共有されている。又、バスバー253ds3は、加熱領域252a3及び252a4に共有されている。又、バスバー253ds4は、加熱領域252a4及び252a5に共有されている。すなわち、加熱領域252a1、252a2、252a3、252a4、及び252a5は、バスバー253ds1、253ds2、253ds3、及び253ds4を介して直列に接続されている。加熱領域252a1、252a2、252a3、252a4、及び252a5により第1加熱ゾーンA2が構成されている。
【0062】
バッテリー等の電源からバスバー253d1とバスバー253d2を介して加熱要素252の第1加熱ゾーンA2に電流が供給されると、加熱要素252の第1加熱ゾーンA2が発熱する。
【0063】
第1加熱ゾーンA2で発生した熱は、フロントガラス20の情報送受信領域26を温め、情報送受信領域26を構成するガラス板21の表面の凍結や曇を取り除く。これにより、デバイス300による良好なセンシングを確保できる。
【0064】
スリットS1、S2、S3、及びS4の位置は、加熱領域252a1、252a2、252a3、252a4、及び252a5の幅(Z方向の長さ)が同一となるように規定できる。これにより、加熱領域252a1、252a2、252a3、252a4、及び252a5における発熱量のばらつきを低減できる。
【0065】
このように、第2の実施の形態では、加熱要素252をスリットS1、S2、S3、及びS4により5つの加熱領域252a1、252a2、252a3、252a4、及び252a5に分割している。そして、分割した加熱領域252a1、252a2、252a3、252a4、及び252a5が、バスバー253ds1、253ds2、253ds3、及び253ds4を介して直列に接続されている。これにより、第1の実施の形態と同様の効果を奏する。
【0066】
〈第3の実施の形態〉
第3の実施の形態では、加熱領域を分割するスリットが曲線である例を示す。なお、第3の実施の形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0067】
図5は、第3の実施の形態に係るフィルムを例示する図であり、フィルムを車室内から車室外に視認した様子を模式的に示した平面図である。フィルムの断面図は図2(b)と同様であるため、図示を省略する。
【0068】
第3の実施の形態に係るフィルム25Bは、直線状のスリットS1及びS2が曲線状(円弧状)のスリットC1及びC2に置換された点が、第1の実施の形態に係るフィルム25と相違する。加熱領域252a1の上端及び加熱領域252bの下端は、スリットC1及びC2と同方向に曲がる曲線状に形成されている。
【0069】
このように、曲線状(円弧状)のスリットC1及びC2を設けた場合も第1の実施の形態と同様の効果を奏する。
【0070】
又、スリットを直線状とするとデバイス300がカメラである場合にスリットを水平線と誤認識する場合があるが、スリットを曲線状とすることでデバイス300がカメラである場合にスリットを水平線と誤認識するおそれを低減できる。
【0071】
なお、直線状のスリットと曲線状のスリットとが混在してもよい。すなわち、スリットの少なくとも一部が曲線状であってもよい。又、1つのスリットにおいて直線状の部分と曲線状の部分とが混在してもよい。これらの場合にも、デバイス300がカメラである場合にスリットを水平線と誤認識するおそれを低減できる。
【0072】
〈第4の実施の形態〉
第4の実施の形態では、平面視においてスリットを垂直方向に設ける例を示す。なお、第4の実施の形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0073】
図6は、第4の実施の形態に係るフィルムを例示する図であり、フィルムを車室内から車室外に視認した様子を模式的に示した平面図である。フィルムの断面図は図2(b)と同様であるため、図示を省略する。
【0074】
第4の実施の形態に係るフィルム25Cでは、一例として、加熱要素252には、平面視においてZ方向(フロントガラス20を車両に取り付けた状態の垂直方向)に延びる7本のスリットS1、S2、S3、S4、S5、S6、及びS7が設けられている。そして、加熱要素252は、スリットS1、S2、S3、S4、S5、S6、及びS7により、8つの加熱領域252a1、252a2、252a3、252b1、252b2、252c1、252c2、及び252c3に分割されている。
【0075】
加熱要素252において、加熱領域252a1の一方の端部に沿ってバスバー253d1が接続され、他方の端部に沿ってバスバー253ds1が接続されている。又、加熱領域252a2の一方の端部に沿ってバスバー253ds2が接続され、他方の端部に沿ってバスバー253ds1が接続されている。又、加熱領域252a3の一方の端部に沿ってバスバー253ds2が接続され、他方の端部に沿ってバスバー253d2が接続されている。
【0076】
バスバー253ds1は、加熱領域252a1及び252a2に共有されている。又、バスバー253ds2は、加熱領域252a2及び252a3に共有されている。すなわち、加熱領域252a1、252a2、及び252a3は、バスバー253ds1及び253ds2を介して直列に接続されている。加熱領域252a1、252a2、及び252a3により第1加熱ゾーンA3が構成されている。
【0077】
又、加熱領域252b1の一方の端部に沿ってバスバー253e1が接続され、他方の端部に沿ってバスバー253esが接続されている。又、加熱領域252b2の一方の端部に沿ってバスバー253e2が接続され、他方の端部に沿ってバスバー253esが接続されている。
【0078】
バスバー253esは、加熱領域252b1及び252b2に共有されている。すなわち、加熱領域252b1及び252b2は、バスバー253esを介して直列に接続されている。加熱領域252b1及び252b2により第2加熱ゾーンB3が構成されている。
【0079】
又、加熱領域252c1の一方の端部に沿ってバスバー253f1が接続され、他方の端部に沿ってバスバー253fs1が接続されている。又、加熱領域252c2の一方の端部に沿ってバスバー253fs2が接続され、他方の端部に沿ってバスバー253fs1が接続されている。又、加熱領域252c3の一方の端部に沿ってバスバー253fs2が接続され、他方の端部に沿ってバスバー253f2が接続されている。
【0080】
バスバー253fs1は、加熱領域252c1及び252c2に共有されている。又、バスバー253fs2は、加熱領域252c2及び252c3に共有されている。すなわち、加熱領域252c1、252c2、及び252c3は、バスバー253fs1及び253fs2を介して直列に接続されている。加熱領域252c1、252c2、及び252c3により第3加熱ゾーンC3が構成されている。
【0081】
第1加熱ゾーンA3と第2加熱ゾーンB3と第3加熱ゾーンC3とは並列に接続されている。すなわち、バスバー253d1とバスバー253d2との間に印加される電圧と、バスバー253e1とバスバー253e2との間に印加される電圧と、バスバー253f1とバスバー253f2との間に印加される電圧とは同一である。
【0082】
バッテリー等の電源からバスバー253d1とバスバー253d2を介して加熱要素252の第1加熱ゾーンA3に電流が供給されると、加熱要素252の第1加熱ゾーンA3が発熱する。第1加熱ゾーンA3と第2加熱ゾーンB3と第3加熱ゾーンC3は並列に接続されているため、第1加熱ゾーンA3と共に第2加熱ゾーンB3及び第3加熱ゾーンC3が発熱する。
【0083】
第1加熱ゾーンA3、第2加熱ゾーンB3、及び第3加熱ゾーンC3で発生した熱は、フロントガラス20の情報送受信領域26を温め、情報送受信領域26を構成するガラス板21の表面の凍結や曇を取り除く。これにより、デバイス300による良好なセンシングを確保できる。
【0084】
スリットS1、S2、S3、S4、及びS5の位置は、加熱領域252a1、252a2、及び252a3の各々の平均極間距離の和が、加熱領域252b1の平均極間距離と加熱領域252b2の平均極間距離との和と等しくなるように規定できる。又、スリットS3、S4、S5、S6、及びS7の位置は、加熱領域252b1の平均極間距離と加熱領域252b2の平均極間距離との和が、加熱領域252c1、252c2、及び252c3の各々の平均極間距離の和と等しくなるように規定できる。これにより、第1加熱ゾーンA3と第2加熱ゾーンB3と第3加熱ゾーンC3の発熱量を同等にできる。
【0085】
このように、第4の実施の形態では、加熱要素252をスリットS1~S7により8つの加熱領域252a1、252a2、252a3、252b1、252b2、252c1、252c2、及び252c3に分割している。そして、分割した加熱領域252a1、252a2、及び252a3が、バスバー253ds1及びds2を共有し、直列に接続されている。又、分割した加熱領域252b1及び252b2が、バスバー253esを共有し、直列に接続されている。又、分割した加熱領域252c1、252c2、及び252c3が、バスバー253fs1及びfs2を共有し、直列に接続されている。これにより、第1の実施の形態と同様の効果を奏する。
【0086】
又、第4の実施の形態では、加熱要素252をZ軸に平行なスリットを設けて分割している。これにより、車両に複数のデバイスが搭載される等の理由で情報送受信領域26が横長になった場合でも、各々の加熱領域において極間距離が極端に長くなることを防止できる。
【0087】
なお、バスバーによる給電方向は、図4図5に示すような左右方向(水平方向)でもよく、図6に示すような上下方向(垂直方向)でもよい。
【0088】
〈第5の実施の形態〉
第5の実施の形態では、平面視においてスリットを斜め方向に設ける例を示す。なお、第5の実施の形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0089】
図7は、第5の実施の形態に係るフィルムを例示する図であり、フィルムを車室内から車室外に視認した様子を模式的に示した平面図である。フィルムの断面図は図2(b)と同様であるため、図示を省略する。
【0090】
第5の実施の形態に係るフィルム25Dでは、一例として、加熱要素252には、平面視において斜め方向(フロントガラス20を車両に取り付けた状態の水平方向及び垂直方向と交差する方向)に延びる3本のスリットS1、S2、及びS3が設けられている。そして、加熱要素252は、スリットS1、S2、及びS3により4つの加熱領域252a1、252a2、252b、及び252cに分割されている。
【0091】
加熱要素252において、加熱領域252a1の一方の端部に沿って直線状のバスバー253d1が接続され、他方の端部に沿って曲線状のバスバー253dsが接続されている。又、加熱領域252a2の一方の端部に沿って直線状のバスバー253d2が接続され、他方の端部に沿って曲線状のバスバー253dsが接続されている。バスバー253dsは、加熱領域252a1及び252a2に共有されている。すなわち、加熱領域252a1及び252a2は、バスバー253dsを介して直列に接続されている。加熱領域252a1及び252a2により第1加熱ゾーンA4が構成されている。
【0092】
又、加熱領域252bの一方の端部に沿って直線状のバスバー253e1が接続され、他方の端部に沿って曲線状のバスバー253e2が接続されている。加熱領域252bにより第2加熱ゾーンB4が構成されている。
【0093】
又、加熱領域252cの一方の端部に沿って直線状のバスバー253f1が接続され、他方の端部に沿って曲線状のバスバー253f2が接続されている。加熱領域252cにより第3加熱ゾーンC4が構成されている。
【0094】
第1加熱ゾーンA4と第2加熱ゾーンB4と第3加熱ゾーンC4とは並列に接続されている。すなわち、バスバー253d1とバスバー253d2との間に印加される電圧と、バスバー253e1とバスバー253e2との間に印加される電圧と、バスバー253f1とバスバー253f2との間に印加される電圧とは同一である。
【0095】
バッテリー等の電源からバスバー253d1とバスバー253d2を介して加熱要素252の第1加熱ゾーンA4に電流が供給されると、加熱要素252の第1加熱ゾーンA4が発熱する。第1加熱ゾーンA4と第2加熱ゾーンB4と第3加熱ゾーンC4は並列に接続されているため、第1加熱ゾーンA4と共に第2加熱ゾーンB4及び第3加熱ゾーンC4が発熱する。
【0096】
第1加熱ゾーンA4、第2加熱ゾーンB4、及び第3加熱ゾーンC4で発生した熱は、フロントガラス20の情報送受信領域26を温め、情報送受信領域26を構成するガラス板21の表面の凍結や曇を取り除く。これにより、デバイス300による良好なセンシングを確保できる。
【0097】
スリットS1、S2、及びS3の位置は、加熱領域252a1の平均極間距離と加熱領域252a2の平均極間距離との和と、加熱領域252bの平均極間距離と、加熱領域252cの平均極間距離とが等しくなるように規定できる。これにより、第1加熱ゾーンA4と第2加熱ゾーンB4と第3加熱ゾーンC4の発熱量を同等にできる。
【0098】
このように、第5の実施の形態では、加熱要素252をスリットS1、S2、及びS3により4つの加熱領域252a1、252a2、252b、及び252cに分割している。そして、分割した加熱領域252a1及び252a2が、バスバー253dsを共有し、直列に接続されている。これにより、第1の実施の形態と同様の効果を奏する。
【0099】
なお、バスバーによる給電方向は、図4図5に示すような左右方向(水平方向)でもよく、図6に示すような上下方向(垂直方向)でもよく、情報送受信領域26の平面形状によっては図7に示すような斜め方向や非対称形状にバスバーが配置されてもよい。又、バスバーは直線状であっても曲線状であってもよく、直線と曲線が混在してもよい。
【0100】
〈第6の実施の形態〉
第6の実施の形態では、合わせガラスにフィルムを設ける例を示す。なお、第6の実施の形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0101】
図8は、第6の実施の形態に係る車両用のフロントガラスを例示する断面図である。フロントガラスの平面図は図1(a)と同様であるため、図示を省略する。なお、図8において、便宜上、フロントガラス20Aと共にデバイス300を図示しているが、デバイス300はフロントガラス20Aの構成要素ではない。
【0102】
図8に示すように、フロントガラス20Aは、車内側ガラス板であるガラス板21と、車外側ガラス板であるガラス板22と、中間膜23と、遮蔽層24と、フィルム25とを有する車両用の合わせガラスである。
【0103】
フロントガラス20Aにおいて、ガラス板21とガラス板22とは、中間膜23を挟持した状態で固着されている。中間膜23は、複数層の中間膜から形成されてもよい。
【0104】
遮蔽層24は、ガラス板21の車内側の面21aの周縁部に設けられている。なお、遮蔽層24は、ガラス板22の車内側の面22aの周縁部に設けられていてもよいし、ガラス板21の車内側の面21aの周縁部とガラス板22の車内側の面22aの周縁部の両方に設けられていてもよい。又、フィルム25は、フロントガラス20の場合と同様に、ガラス板21の車内側の、平面視において、試験領域A(図1(a)参照)の外側であって情報送受信領域26と重複する領域に貼り付けられている。
【0105】
フロントガラス20Aにおいて、ガラス板21の車内側の面21a(フロントガラス20Aの内面)と、ガラス板22の車外側の面22a(フロントガラス20Aの外面)とは、平面であっても湾曲面であっても構わない。
【0106】
ガラス板21及び22としては、例えば、ソーダライムガラス、アルミノシリケート等の無機ガラス、有機ガラス等を用いることができる。ガラス板21及び22が無機ガラスである場合、例えば、フロート法によって製造できる。
【0107】
フロントガラス20Aの外側に位置するガラス板22の板厚は、最薄部が1.8mm以上3mm以下であることが好ましい。ガラス板22の板厚が1.8mm以上であると、耐飛び石性能等の強度が十分であり、3mm以下であると、合わせガラスの質量が大きくなり過ぎず、車両の燃費の点で好ましい。ガラス板22の板厚は、最薄部が1.8mm以上2.8mm以下がより好ましく、1.8mm以上2.6mm以下が更に好ましい。
【0108】
フロントガラス20Aの内側に位置するガラス板21の板厚は、0.3mm以上2.3mm以下であることが好ましい。ガラス板21の板厚が0.3mm以上であることによりハンドリング性がよく、2.3mm以下であることによりフロントガラス20Aの質量が大きくなり過ぎない。
【0109】
ガラス板21の板厚を0.3mm以上2.3mm以下とすることで、ガラス品質(例えば、残留応力)を維持できる。ガラス板21の板厚を0.3mm以上2.3mm以下とすることは、曲がりの深いガラスにおけるガラス品質(例えば、残留応力)の維持に特に有効である。ガラス板21の板厚は、0.5mm以上2.1mm以下がより好ましく、0.7mm以上1.9mm以下が更に好ましい。
【0110】
但し、ガラス板21及び22の板厚は常に一定ではなく、必要に応じて場所毎に変わってもよい。例えば、ガラス板21及び22の一方又は両方が、フロントガラス20Aを車両に取り付けたときの垂直方向の上端側の厚さが下端側よりも厚い断面視楔状の領域を備えていてもよい。
【0111】
フロントガラス20Aが湾曲形状である場合、ガラス板21及び22は、フロート法等による成形の後、中間膜23による接着前に、曲げ成形される。曲げ成形は、ガラスを加熱により軟化させて行われる。曲げ成形時のガラスの加熱温度は、大凡550℃~700℃である。
【0112】
ガラス板21とガラス板22とを接着する中間膜23としては熱可塑性樹脂が多く用いられ、例えば、可塑化ポリビニルアセタール系樹脂、可塑化ポリ塩化ビニル系樹脂、飽和ポリエステル系樹脂、可塑化飽和ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、可塑化ポリウレタン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体系樹脂、エチレン-エチルアクリレート共重合体系樹脂等の従来からこの種の用途に用いられている熱可塑性樹脂が挙げられる。又、特許第6065221号に記載されている変性ブロック共重合体水素化物を含有する樹脂組成物も好適に使用できる。
【0113】
これらの中でも、透明性、耐候性、強度、接着力、耐貫通性、衝撃エネルギー吸収性、耐湿性、遮熱性、及び遮音性等の諸性能のバランスに優れることから、可塑化ポリビニルアセタール系樹脂が好適に用いられる。これらの熱可塑性樹脂は、単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。上記可塑化ポリビニルアセタール系樹脂における「可塑化」とは、可塑剤の添加により可塑化されていることを意味する。その他の可塑化樹脂についても同様である。
【0114】
上記ポリビニルアセタール系樹脂としては、ポリビニルアルコール(以下、必要に応じて「PVA」と言うこともある)とホルムアルデヒドとを反応させて得られるポリビニルホルマール樹脂、PVAとアセトアルデヒドとを反応させて得られる狭義のポリビニルアセタール系樹脂、PVAとn-ブチルアルデヒドとを反応させて得られるポリビニルブチラール樹脂(以下、必要に応じて「PVB」と言うこともある)等が挙げられ、特に、透明性、耐候性、強度、接着力、耐貫通性、衝撃エネルギー吸収性、耐湿性、遮熱性、及び遮音性等の諸性能のバランスに優れることから、PVBが好適なものとして挙げられる。なお、これらのポリビニルアセタール系樹脂は、単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。但し、中間膜23を形成する材料は、熱可塑性樹脂には限定されない。 中間膜23の膜厚は、最薄部で0.5mm以上であることが好ましい。中間膜23の膜厚が0.5mm以上であるとフロントガラスとして必要な耐貫通性が十分となる。又、中間膜23の膜厚は、最厚部で3mm以下であることが好ましい。中間膜23の膜厚の最大値が3mm以下であると、合わせガラスの質量が大きくなり過ぎない。中間膜23の最大値は2.8mm以下がより好ましく、2.6mm以下が更に好ましい。
【0115】
なお、中間膜23は、3層以上の層を有していてもよい。例えば、中間膜を3層から構成し、真ん中の層の硬度を可塑剤の調整等により両側の層の硬度よりも低くすることにより、合わせガラスの遮音性を向上できる。この場合、両側の層の硬度は同じでもよいし、異なってもよい。
【0116】
中間膜23を作製するには、例えば、中間膜となる上記の樹脂材料を適宜選択し、押出機を用い、加熱溶融状態で押し出し成形する。押出機の押出速度等の押出条件は均一となるように設定する。その後、押し出し成形された樹脂膜を、フロントガラス20Aのデザインに合わせて、上辺及び下辺に曲率を持たせるために、例えば必要に応じ伸展することで、中間膜23が完成する。
【0117】
合わせガラスを作製するには、ガラス板21とガラス板22との間に中間膜23を挟んで積層体とし、例えば、この積層体をゴム袋の中に入れ、-65~-100kPaの真空中で温度約70~110℃で接着する。
【0118】
更に、例えば100~150℃、圧力0.6~1.3MPaの条件で加熱加圧する圧着処理を行うことで、ガラス板21と中間膜23とガラス板22との積層体の耐久性をより向上できる。但し、場合によっては工程の簡略化、並びに合わせガラス中に封入する材料の特性を考慮して、この加熱加圧工程を使用しない場合もある。
【0119】
ガラス板21と中間膜23とガラス板22との積層体が完成後、例えば、印刷用インクをガラス板21の車内側の面21aに塗布し、これを焼き付けることにより遮蔽層24を形成する。そして、ガラス板21の車内側の、平面視において、試験領域Aの外側であって情報送受信領域26と重複する領域に粘着層29を介してフィルム25を貼り付けることで、フロントガラス20Aが完成する。
【0120】
ガラス板21とガラス板22との間に、本願の効果を損なわない範囲で、中間膜23の他に、赤外線反射、発光、調光、可視光反射、散乱、加飾、吸収等の機能を持つフィルムやデバイスを有していてもよい。
【0121】
ガラス板22の車内側の面に遮蔽層24を設ける場合には、フィルム25のエッジの隠蔽と透視歪を低減する観点から、遮蔽層24のエッジ近傍とフィルム25のエッジ近傍とを平面視で1mm以上重複させることが好ましい。又、フィルム25のエッジを隠蔽する層をフィルム25自体に設けてもよい(例えば、フィルム25の周縁部を着色する)。
【0122】
このように、フィルム25が貼り付けられるフロントガラスは、フロントガラス20Aのような合わせガラスであってもよい。
【0123】
〈第7の実施の形態〉
第7の実施の形態では、第1の実施の形態とは異なる加熱要素を設ける例を示す。なお、第7の実施の形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0124】
図9は、第7の実施の形態に係るフィルムを例示する平面図であり、フィルムを車室内から車室外に視認した様子を模式的に示している。
【0125】
第7の実施の形態に係るフィルム25Gは、加熱要素252が加熱要素258a1及び258a2に置換された点が、フィルム25(図2等参照)と相違する。フィルム25Gにおいて、基材251等の加熱要素以外の構成は、第1の実施の形態と同様である。
【0126】
加熱要素258a1及び258a2は、電熱線である。なお、加熱要素258a1及び258a2は、1本の線として図示しているが、実際には、複数の電熱線が所定間隔で並置されたレイアウトとなる。
【0127】
加熱要素258a1及び258a2を構成する電熱線の金属の材料としては、前述のように、導電性材料であれば特に制限はないが、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、タングステンからなる群から選択される少なくとも1つの金属、この群から選択される2つ以上の金属を含む合金等が挙げられる。
【0128】
フィルム25Gは、基材251上に加熱要素258a1が設けられた第1加熱ゾーンA5と、基材251上に加熱要素258a2が設けられた第2加熱ゾーンB5とを有している。第1加熱ゾーンA5と第2加熱ゾーンB5とは並列に接続されている。
【0129】
第1加熱ゾーンA5は、電熱線である加熱要素258a1の仕様の違いにより、加熱領域252a1、252a2、252a3、及び252a4に分割されている。ここで、仕様の違いとは、電熱線の幅やピッチ、厚さ、線種、材料等の違いである。
【0130】
第1加熱ゾーンA5において、加熱領域252a1の一方の端部に沿ってバスバー253d1が接続され、他方の端部に沿ってバスバー253ds1が接続されている。又、加熱領域252a2の一方の端部に沿ってバスバー253ds2が接続され、他方の端部に沿ってバスバー253ds1が接続されている。
【0131】
又、加熱領域252a3の一方の端部に沿ってバスバー253ds2が接続され、他方の端部に沿ってバスバー253ds3が接続されている。又、加熱領域252a4の一方の端部に沿ってバスバー253d2が接続され、他方の端部に沿ってバスバー253ds3が接続されている。
【0132】
バスバー253ds1は、加熱領域252a1及び252a2に共有されている。又、バスバー253ds2は、加熱領域252a2及び252a3に共有されている。又、バスバー253ds3は、加熱領域252a3及び252a4に共有されている。すなわち、加熱領域252a1、252a2、252a3、及び252a4にレイアウトされた加熱要素258a1は、バスバー253ds1、253ds2、及び253ds3を介して、バスバー253d1とバスバー253d2との間に直列に接続されている。
【0133】
バッテリー等の電源からバスバー253d1とバスバー253d2を介して加熱要素258a1に電流が供給されると、第1加熱ゾーンA5が発熱する。
【0134】
第2加熱ゾーンB5は、電熱線である加熱要素258a2の仕様の違いにより、加熱領域252b1及び252b2に分割されている。
【0135】
第2加熱ゾーンB5において、加熱領域252b1の一方の端部に沿ってバスバー253e1が接続され、他方の端部に沿ってバスバー253esが接続されている。又、加熱領域252b2の一方の端部に沿ってバスバー253e2が接続され、他方の端部に沿ってバスバー253esが接続されている。
【0136】
バスバー253esは、加熱領域252b1及び252b2に共有されている。すなわち、加熱領域252b1及び252b2にレイアウトされた加熱要素258a2は、バスバー253esを介して、バスバー253e1とバスバー253e2との間に直列に接続されている。
【0137】
バッテリー等の電源からバスバー253e1とバスバー253e2を介して加熱要素258a2に電流が供給されると、第2加熱ゾーンB5が発熱する。
【0138】
第1加熱ゾーンA5及び第2加熱ゾーンB5で発生した熱は、フロントガラスの情報送受信領域26を温め、情報送受信領域26を構成するガラス板21の表面の凍結や曇を取り除く。これにより、デバイス300による良好なセンシングを確保できる。
【0139】
このように、各々の加熱ゾーンを、電熱線である加熱要素の仕様の違いにより、複数個の加熱領域に分割することで、各々の加熱領域内におけるバスバーの極間距離の変化を小さくできるため、加熱領域内における発熱分布の発生を抑制できる。その結果、凍結や曇等によりデバイス300のセンシング性能が阻害されにくいフロントガラスを実現できる。
【0140】
なお、第1加熱ゾーンA5の各々の加熱領域において、加熱要素258a1を構成する電熱線の幅が一定である必要はなく、第1加熱ゾーンA5の各々の加熱領域において電熱線の幅が異なるようにしてもよい。同様に、第2加熱ゾーンB5の各々の加熱領域において、加熱要素258a2を構成する電熱線の幅が一定である必要はなく、第2加熱ゾーンB5の各々の加熱領域において電熱線の幅が異なるようにしてもよい。
【0141】
第1加熱ゾーンA5及び第2加熱ゾーンB5の各々の加熱領域において、電熱線のピッチを一定とした場合、電熱線の幅は、フロントガラスが車両に取り付けられたときに、情報送受信領域26の上辺に最も近い側の電熱線の幅を最も細くし、情報送受信領域26の下辺に近い側の電熱線ほど幅を太くすることが好ましい。
【0142】
具体的には、例えば、加熱領域252a1内に4本の電熱線が並置されている場合、フロントガラスが車両に取り付けられたときに、情報送受信領域26の上辺に最も近い側から下辺に近い側に行くに従って電熱線の幅をW1、W2、W3、W4とすると、W1<W2<W3<W4とすることが好ましい。
【0143】
このようにすることで、加熱領域内における発熱分布の発生を一層抑制できる。又、加熱ゾーン間における発熱分布の発生を抑制できる。なお、フィルム25Gにおいて、加熱ゾーンの個数や加熱領域の個数は任意に設定できる。例えば、デバイス300への影響を考慮して定められる電熱線のピッチや線幅の制約を考慮して、加熱ゾーンの個数や加熱領域の個数を調整可能である。
【0144】
〈第8の実施の形態〉
第8の実施の形態では、第1の実施の形態とは異なる加熱要素を設ける例を示す。なお、第8の実施の形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0145】
図10は、第8の実施の形態に係るフィルムを例示する平面図であり、フィルムを車室内から車室外に視認した様子を模式的に示している。
【0146】
第8の実施の形態に係るフィルム25Hは、加熱要素252が加熱要素258a1、258a2、258a3、258a4、及び258a5に置換された点が、フィルム25(図2等参照)と相違する。フィルム25Hにおいて、基材251等の加熱要素以外の構成は、第1の実施の形態と同様である。
【0147】
加熱要素258a1、258a2、258a3、258a4、及び258a5は、電熱線である。なお、加熱要素258a1、258a2、258a3、258a4、及び258a5は、1本の線として図示しているが、実際には、複数の電熱線が所定間隔で並置されたレイアウトとなる。
【0148】
加熱要素258a1、258a2、258a3、258a4、及び258a5を構成する電熱線の金属の材料については、第7の実施の形態と同様である。
【0149】
フィルム25Hは、基材251上に加熱要素258a1が設けられた第1加熱ゾーンA6と、基材251上に加熱要素258a2が設けられた第2加熱ゾーンB6と、基材251上に加熱要素258a3が設けられた第3加熱ゾーンC6と、基材251上に加熱要素258a4が設けられた第4加熱ゾーンD6と、基材251上に加熱要素258a5が設けられた第5加熱ゾーンE6とを有している。第1加熱ゾーンA6と第2加熱ゾーンB6と第3加熱ゾーンC6と第4加熱ゾーンD6と第5加熱ゾーンE6とは並列に接続されている。
【0150】
第1加熱ゾーンA6は、電熱線である加熱要素258a1の仕様の違いにより、加熱領域252a1、252a2、252a3、及び252a4に分割されている。
【0151】
第1加熱ゾーンA6において、加熱領域252a1の一方の端部に沿ってバスバー253d1が接続され、他方の端部に沿ってバスバー253ds1が接続されている。又、加熱領域252a2の一方の端部に沿ってバスバー253ds2が接続され、他方の端部に沿ってバスバー253ds1が接続されている。
【0152】
又、加熱領域252a3の一方の端部に沿ってバスバー253ds2が接続され、他方の端部に沿ってバスバー253ds3が接続されている。又、加熱領域252a4の一方の端部に沿ってバスバー253d2が接続され、他方の端部に沿ってバスバー253ds3が接続されている。
【0153】
バスバー253ds1は、加熱領域252a1及び252a2に共有されている。又、バスバー253ds2は、加熱領域252a2及び252a3に共有されている。又、バスバー253ds3は、加熱領域252a3及び252a4に共有されている。すなわち、加熱領域252a1、252a2、252a3、及び252a4にレイアウトされた加熱要素258a1は、バスバー253ds1、253ds2、及び253ds3を介して、バスバー253d1とバスバー253d2との間に直列に接続されている。
【0154】
バッテリー等の電源からバスバー253d1とバスバー253d2を介して加熱要素258a1に電流が供給されると、第1加熱ゾーンA6が発熱する。
【0155】
第2加熱ゾーンB6は、電熱線である加熱要素258a2の仕様の違いにより、加熱領域252b1及び252b2に分割されている。
【0156】
第2加熱ゾーンB6において、加熱領域252b1の一方の端部に沿ってバスバー253e1が接続され、他方の端部に沿ってバスバー253esが接続されている。又、加熱領域252b2の一方の端部に沿ってバスバー253e2が接続され、他方の端部に沿ってバスバー253esが接続されている。
【0157】
バスバー253esは、加熱領域252b1及び252b2に共有されている。すなわち、加熱領域252b1及び252b2にレイアウトされた加熱要素258a2は、バスバー253esを介して、バスバー253e1とバスバー253e2との間に直列に接続されている。
【0158】
バッテリー等の電源からバスバー253e1とバスバー253e2を介して加熱要素258a2に電流が供給されると、第2加熱ゾーンB6が発熱する。
【0159】
第3加熱ゾーンC6は、電熱線である加熱要素258a3の仕様の違いにより、加熱領域252c1及び252c2に分割されている。
【0160】
第3加熱ゾーンC6において、加熱領域252c1の一方の端部に沿ってバスバー253f1が接続され、他方の端部に沿ってバスバー253fsが接続されている。又、加熱領域252c2の一方の端部に沿ってバスバー253f2が接続され、他方の端部に沿ってバスバー253fsが接続されている。
【0161】
バスバー253fsは、加熱領域252c1及び252c2に共有されている。すなわち、加熱領域252c1及び252c2にレイアウトされた加熱要素258a3は、バスバー253fsを介して、バスバー253f1とバスバー253f2との間に直列に接続されている。
【0162】
バッテリー等の電源からバスバー253f1とバスバー253f2を介して加熱要素258a3に電流が供給されると、第3加熱ゾーンC6が発熱する。
【0163】
第4加熱ゾーンD6は、電熱線である加熱要素258a4の仕様の違いにより、加熱領域252d1及び252d2に分割されている。
【0164】
第4加熱ゾーンD6において、加熱領域252d1の一方の端部に沿ってバスバー253g1が接続され、他方の端部に沿ってバスバー253gsが接続されている。又、加熱領域252d2の一方の端部に沿ってバスバー253g2が接続され、他方の端部に沿ってバスバー253gsが接続されている。
【0165】
バスバー253gsは、加熱領域252d1及び252d2に共有されている。すなわち、加熱領域252d1及び252d2にレイアウトされた加熱要素258a4は、バスバー253gsを介して、バスバー253g1とバスバー253g2との間に直列に接続されている。
【0166】
バッテリー等の電源からバスバー253g1とバスバー253g2を介して加熱要素258a4に電流が供給されると、第4加熱ゾーンD6が発熱する。
【0167】
第5加熱ゾーンE6は、電熱線である加熱要素258a5の仕様の違いにより、加熱領域252e1及び252e2に分割されている。
【0168】
第5加熱ゾーンE6において、加熱領域252e1の一方の端部に沿ってバスバー253h1が接続され、他方の端部に沿ってバスバー253hsが接続されている。又、加熱領域252e2の一方の端部に沿ってバスバー253h2が接続され、他方の端部に沿ってバスバー253hsが接続されている。
【0169】
バスバー253hsは、加熱領域252e1及び252e2に共有されている。すなわち、加熱領域252e1及び252e2にレイアウトされた加熱要素258a5は、バスバー253hsを介して、バスバー253h1とバスバー253h2との間に直列に接続されている。
【0170】
バッテリー等の電源からバスバー253h1とバスバー253h2を介して加熱要素258a5に電流が供給されると、第5加熱ゾーンE6が発熱する。
【0171】
第1加熱ゾーンA6、第2加熱ゾーンB6、第3加熱ゾーンC6、第4加熱ゾーンD6、及び第5加熱ゾーンE6で発生した熱は、フロントガラスの情報送受信領域26を温め、情報送受信領域26を構成するガラス板21の表面の凍結や曇を取り除く。これにより、デバイス300による良好なセンシングを確保できる。
【0172】
このように、各々の加熱ゾーンを、電熱線である加熱要素の仕様の違いにより、複数個の加熱領域に分割することで、各々の加熱領域内におけるバスバーの極間距離の変化を小さくできるため、加熱領域内における発熱分布の発生を抑制できる。又、加熱ゾーン間における発熱分布の発生を抑制できる。その結果、凍結や曇等によりデバイス300のセンシング性能が阻害されにくいフロントガラスを実現できる。
【0173】
なお、第1加熱ゾーンA6、第2加熱ゾーンB6、第3加熱ゾーンC6、第4加熱ゾーンD6、及び第5加熱ゾーンE6において、加熱要素を構成する電熱線のピッチが一定である必要はなく、加熱ゾーン毎に電熱線のピッチが異なるようにしてもよい。
【0174】
各電熱線の線径が一定であり、かつ各加熱ゾーンの各加熱領域の幅が一定である場合、加熱ゾーン毎の電熱線のピッチは、各加熱ゾーンのバスバーの極間距離が長くなるほど電熱線のピッチを狭くすることが好ましい。
【0175】
具体的には、フロントガラスが車両に取り付けられたときに、情報送受信領域26の上辺に最も近い側となる第1加熱ゾーンA6におけるバスバーの極間距離をHz1、電熱線のピッチをPz1、第2加熱ゾーンB6におけるバスバーの極間距離をHz2、電熱線のピッチをPz2、第3加熱ゾーンC6におけるバスバーの極間距離をHz3、電熱線のピッチをPz3、第4加熱ゾーンD6におけるバスバーの極間距離をHz4、電熱線のピッチをPz4、及び第5加熱ゾーンE6におけるバスバーの極間距離をHz5、電熱線のピッチをPz5としたときに、Hz1<Hz2<Hz3<Hz4<Hz5である場合、Pz1>Pz2>Pz3>Pz4>Pz5とすることが好ましい。
【0176】
このようにすることで、加熱ゾーン間における発熱分布の発生を一層抑制できる。なお、フィルム25Hにおいて、加熱ゾーンの個数や加熱領域の個数は任意に設定できる。例えば、デバイス300への影響を考慮して定められる電熱線のピッチや線幅の制約を考慮して、加熱ゾーンの個数や加熱領域の個数を調整可能である。
【0177】
〈実施例及び比較例〉
[実施例1]
実施例1では、図2に示すフィルム25を備えたフロントガラス20を作製した。フィルム25の平面形状は、上底20mm、下底90mm、高さ80mmの等脚台形とした。
【0178】
フィルム25において、加熱領域252a1の平均極間距離と加熱領域252a2の平均極間距離との和が、加熱領域252bの平均極間距離と等しくなるようにスリットS1及びS2の位置を規定した。具体的には、加熱領域252a1の最小極間距離lは20mm、最大極間距離lは35.1mmとした。又、加熱領域252a2の最小極間距離lは35.1mm、最大極間距離lは50.2mmとした。又、加熱領域252bの最小極間距離lは50.2mm、最大極間距離lは90mmとした。
【0179】
このとき、加熱領域252a1及び加熱領域252a2の幅(等脚台形の高さ)は各々17.2mm、加熱領域252bの幅(等脚台形の高さ)は45.6mmとなる。
【0180】
[実施例2]
実施例2では、図4に示すフィルム25Aを備えたフロントガラス20を作製した。フィルム25Aの平面形状は、実施例1と同様に、上底20mm、下底90mm、高さ80mmの等脚台形とした。
【0181】
フィルム25Aにおいて、加熱領域252a1、252a2、252a3、252a4、及び252a5の幅(等脚台形の高さ)が同一となるようにスリットS1、S2、S3、及びS4の位置を規定した。具体的には、加熱領域252a1、252a2、252a3、252a4、及び252a5の幅(等脚台形の高さ)は各々16mmとした。
【0182】
このとき、加熱領域252a1の最小極間距離lは20mm、最大極間距離lは34mmとなる。又、加熱領域252a2の最小極間距離lは34mm、最大極間距離lは48mmとなる。又、加熱領域252a3の最小極間距離lは48mm、最大極間距離lは62mmとなる。又、加熱領域252a4の最小極間距離lは62mm、最大極間距離lは76mmとなる。又、加熱領域252a5の最小極間距離lは76mm、最大極間距離lは90mmとなる。
【0183】
[比較例1]
比較例1として、図3(a)に示すフィルム25Xを備えたフロントガラス20を作製した。フィルム25Xの平面形状は、実施例1及び2と同様に、上底20mm、下底90mm、高さ80mmの等脚台形とした。但し、フィルム25Xにはスリットを設けていないため、加熱領域は1つである。従って、加熱領域の最小極間距離lは20mm、最大極間距離lは90mmである。
【0184】
[評価]
最小極間距離l、最大極間距離lとしたとき、各々の加熱領域における発熱量最大地点と発熱量最小地点との発熱量の比P:Pは、l (最大極間距離の2乗):l (最小極間距離の2乗)と等しくなる。そこで、比較例1、実施例1、及び実施例2において、発熱分布を評価するための指標として各々の加熱領域におけるl /l を求め、結果を表1にまとめた。
【0185】
【表1】
表1に示すように、比較例1では、l /l =20.3である。すなわち、加熱領域が1つである比較例1の場合、発熱量最大地点と発熱量最小地点の比は20.3倍にまで達することになる。
【0186】
これに対して、スリットを設けて加熱領域を3つとした実施例1では、l /l は、最も大きい加熱領域252bで3.2である。すなわち、実施例1の場合、発熱量最大地点と発熱量最小地点の比は最大でも3.2倍であり、スリットを設けていない比較例1(20.3倍)に対して発熱量最大地点と発熱量最小地点の比を大幅に小さくできた。
【0187】
又、スリットを設けて加熱領域を5つとした実施例2では、l /l は、最も大きい加熱領域252a1で2.9である。すなわち、実施例2の場合、発熱量最大地点と発熱量最小地点の比は最大でも2.9倍であり、実施例1の場合と同様に、スリットを設けていない比較例1(20.3倍)に対して発熱量最大地点と発熱量最小地点の比を大幅に小さくできた。
【0188】
このように、スリットを設けていない比較例1ではバスバーの極間距離が加熱領域内で大きく変化するため、極間距離に応じて大きな発熱分布が生じる。これに対して、実施例1や実施例2のように、スリットを設けて加熱領域を複数個とすることで、各々の加熱領域内におけるバスバーの極間距離の変化を小さくできるため、加熱領域内における発熱分布の発生を抑制できることが確認された。
【0189】
本国際出願は2018年5月30日に出願した日本国特許出願2018-103407号に基づく優先権を主張するものであり、日本国特許出願2018-103407号の全内容を本国際出願に援用する。
【0190】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0191】
20、20A フロントガラス
21、22 ガラス板
23 中間膜
24 遮蔽層
25、25A、25B、25C、25D、25G、25H フィルム
26 情報送受信領域
29 粘着層
251 基材
252、258a1、258a2、258a3、258a4、258a5 加熱要素
253 バスバー
254 保護膜
300 デバイス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10