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7192894耐シリコーンオイル性に優れた自動車クーラントシール用室温硬化性組成物、及び自動車用クーラントシール材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】耐シリコーンオイル性に優れた自動車クーラントシール用室温硬化性組成物、及び自動車用クーラントシール材
(51)【国際特許分類】
   C08L 71/00 20060101AFI20221213BHJP
   C08K 9/04 20060101ALI20221213BHJP
   C08K 5/5425 20060101ALI20221213BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20221213BHJP
   C08K 5/5419 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
C08L71/00 Y
C08K9/04
C08K5/5425
C09K3/10 G
C08K5/5419
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020571064
(86)(22)【出願日】2020-01-16
(86)【国際出願番号】 JP2020001311
(87)【国際公開番号】W WO2020162132
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-08-05
(31)【優先権主張番号】P 2019021405
(32)【優先日】2019-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】打它 晃
(72)【発明者】
【氏名】片山 大樹
(72)【発明者】
【氏名】坂本 隆文
【審査官】岩田 行剛
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2004/076555(WO,A1)
【文献】特開2018-184520(JP,A)
【文献】特開平06-065509(JP,A)
【文献】特開2019-073670(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 77/46
C08L 71/00-71/14
C08K 5/54- 5/549
C08K 3/00- 3/40
C08K 9/04
C09K 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記構造式(1)又は(2)で示されるポリオキシアルキレン系化合物:100質量部、
【化1】
(式中、R1及びR3はそれぞれ同一又は異なっていてもよく、非置換又は置換の炭素数1~20の1価炭化水素基であり、R2はそれぞれ独立に、非置換又は置換の炭素数1~20の1価炭化水素基又は水素原子である。aはそれぞれ独立に2以上の整数であり、bはそれぞれ独立に0、1又は2であり、cはそれぞれ独立に1以上の整数である。Zは主鎖のポリオキシアルキレン系重合体である。)
(B)表面処理剤により処理された、炭酸カルシウム、煙霧質シリカ、沈降性シリカ、カーボンブラック及び酸化アルミニウムから選択される少なくとも1種である無機質充填剤:1~500質量部、
(C)下記一般式(3)で示される加水分解性オルガノシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物:0.1~30質量部、
4 dSiX4-d (3)
(式中、R4炭素数2~10のアルケニル基であり、Xは加水分解性基である。dはである。)
(D)下記一般式(4)で示されるシランカップリング剤及び/又はその部分加水分解縮合物:0.01~10質量部、
57 eSi(OR63-e (4)
(式中、R5は、窒素原子、硫黄原子及び酸素原子から選ばれるいずれか1つ以上の原子を含む官能性基を少なくとも1個有する炭素数1~20の1価炭化水素基である。R6及びR7は、それぞれ独立に、非置換又は置換の炭素数1~10の1価炭化水素基であり、eは0、1又は2である。)
(E)硬化触媒:0.1~10質量部
を含有することを特徴とする自動車クーラントシール用室温硬化性組成物。
【請求項2】
上記式(3)中のXは、(A)成分が上記式(1)で示される化合物の場合、アルコキシ基又はアルコキシアルコキシ基であり、上記式(2)で示される化合物の場合、ケトオキシム基、アルコキシ基、アルコキシアルコキシ基、アシロキシ基又はアルケニルオキシ基である請求項1記載の自動車クーラントシール用室温硬化性組成物。
【請求項3】
上記式(3)中のR 4 がビニル基である請求項1又は2記載の自動車クーラントシール用室温硬化性組成物。
【請求項4】
上記式(1)又は(2)中のZが下記式(6)で示されるものである請求項1~3のいずれか1項記載の自動車クーラントシール用室温硬化性組成物。
【化2】
(式中、R8は、同一又は異なっていてもよい、2価炭化水素基であり、fは2以上の整数である。破線は結合手を表す。)
【請求項5】
(A)成分のポリオキシアルキレン系化合物の数平均分子量が500~100,000である請求項1~のいずれか1項記載の自動車クーラントシール用室温硬化性組成物。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項記載の自動車クーラントシール用室温硬化性組成物の硬化物からなる自動車用クーラントシール材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用クーラントシールとして好適に用いられる耐シリコーンオイル性に優れた自動車クーラントシール用室温硬化性組成物に関し、特に、接着性に優れると共に、硬化性に優れ、良好な強度や伸びと耐シリコーンオイル性を有する硬化物を与える該室温硬化性組成物、及びこの自動車用クーラントシール材に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のクーラント周辺のシール材については、従来、コルク、有機ゴム、アスベストなどで作られたガスケット、パッキング材が使用されている。しかしこれらの従来のガスケットやパッキング材は在庫管理及び作業工程が煩雑であるという不利があり、更に、それらのシール性能には信頼性がないという欠点がある。そのため、クーラントシールの用途では、液体ガスケットとして、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を利用したFormed In Place Gasket(FIPG)方式が採用されている。
【0003】
近年の自動車の電動化に伴い、自動車に使用される電装部品は増加しており、電装部品のクーラントとして、電気絶縁性、化学的安定性、耐熱性、耐寒性などに優れるポリジメチルシロキサンオイルなどのシリコーンオイルを主成分とするクーラントの適応が注目されている。
【0004】
ポリジメチルシロキサンなどのシリコーンオイルをシールするFIPGに関する技術は過去報告されていないが、本発明者らが検討した結果、従来報告されている室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物では十分なシール性を発現することが困難であることが分かった。
なお、本発明に関連する先行技術として、下記の文献が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-226708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、ポリジメチルシロキサンをクーラントとした際の自動車用クーラントシールとして好適に用いられ、特に、耐シリコーンオイル性に優れると共に、硬化性に優れ、良好な伸びと接着性を有する硬化物を与える自動車クーラントシール用室温硬化性組成物、及びこの組成物を硬化させることにより得られる自動車用クーラントシール材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、1分子中に少なくとも2個の反応性ケイ素基を分子鎖末端(特には分子鎖両末端)に含有し、かつ、主鎖がポリオキシアルキレン系重合体である所定のポリオキシアルキレン系化合物を室温硬化性組成物の主剤(ベースポリマー)に用いることにより、ポリジメチルシロキサン系室温硬化性組成物と比較して大幅に耐シリコーンオイル性が改善されることを見出した。
【0008】
即ち、本発明は、下記の耐シリコーンオイル性に優れた自動車クーラントシール用室温硬化性組成物、及び該組成物を硬化して得られる自動車用クーラントシール材を提供するものである。
〔1〕
(A)下記構造式(1)又は(2)で示されるポリオキシアルキレン系化合物:100質量部、
【化1】
(式中、R1及びR3はそれぞれ同一又は異なっていてもよく、非置換又は置換の炭素数1~20の1価炭化水素基であり、R2はそれぞれ独立に、非置換又は置換の炭素数1~20の1価炭化水素基又は水素原子である。aはそれぞれ独立に2以上の整数であり、bはそれぞれ独立に0、1又は2であり、cはそれぞれ独立に1以上の整数である。Zは主鎖のポリオキシアルキレン系重合体である。)
(B)表面処理剤により処理された、炭酸カルシウム、煙霧質シリカ、沈降性シリカ、カーボンブラック及び酸化アルミニウムから選択される少なくとも1種である無機質充填剤:1~500質量部、
(C)下記一般式(3)で示される加水分解性オルガノシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物:0.1~30質量部、
4 dSiX4-d (3)
(式中、R4炭素数2~10のアルケニル基であり、Xは加水分解性基である。dはである。)
(D)下記一般式(4)で示されるシランカップリング剤及び/又はその部分加水分解縮合物:0.01~10質量部、
57 eSi(OR63-e (4)
(式中、R5は、窒素原子、硫黄原子及び酸素原子から選ばれるいずれか1つ以上の原子を含む官能性基を少なくとも1個有する炭素数1~20の1価炭化水素基である。R6及びR7は、それぞれ独立に、非置換又は置換の炭素数1~10の1価炭化水素基であり、eは0、1又は2である。)
(E)硬化触媒:0.1~10質量部
を含有することを特徴とする自動車クーラントシール用室温硬化性組成物。
〔2〕
上記式(3)中のXは、(A)成分が上記式(1)で示される化合物の場合、アルコキシ基又はアルコキシアルコキシ基であり、上記式(2)で示される化合物の場合、ケトオキシム基、アルコキシ基、アルコキシアルコキシ基、アシロキシ基又はアルケニルオキシ基である〔1〕記載の自動車クーラントシール用室温硬化性組成物。
〔3〕
上記式(3)中のR 4 がビニル基である〔1〕又は〔2〕に記載の自動車クーラントシール用室温硬化性組成物。

上記式(1)又は(2)中のZが下記式(6)で示されるものである〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の自動車クーラントシール用室温硬化性組成物。
【化2】
(式中、R8は、同一又は異なっていてもよい、2価炭化水素基であり、fは2以上の整数である。破線は結合手を表す。)

(A)成分のポリオキシアルキレン系化合物の数平均分子量が500~100,000である〔1〕~〔〕のいずれかに記載の自動車クーラントシール用室温硬化性組成物。
〔6〕
〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の自動車クーラントシール用室温硬化性組成物の硬化物からなる自動車用クーラントシール材。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、耐シリコーンオイル性に優れると共に、硬化性に優れ、良好な伸びと接着性を有する硬化物を与える室温硬化性組成物、及びこの組成物を硬化させることにより得られる自動車用クーラントシール材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明につき更に詳細に説明する。
[(A)成分]
本発明に用いられる耐シリコーンオイル性に優れる室温硬化性組成物の(A)成分は、下記構造式(1)又は(2)で示される、1分子中に2個の反応性ケイ素基(即ち、1個のヒドロキシ基又は1~3個のオルガノオキシ基を有するシリル基)を分子鎖両末端にそれぞれ1個ずつ有し、かつ、主鎖がポリオキシアルキレン系重合体である、好ましくは直鎖状のポリオキシアルキレン系化合物であり、本発明組成物の主剤(ベースポリマー)として作用するものである。
【化3】
(式中、R1及びR3はそれぞれ同一又は異なっていてもよく、非置換又は置換の炭素数1~20の1価炭化水素基であり、R2はそれぞれ独立に、非置換又は置換の炭素数1~20の1価炭化水素基又は水素原子である。aはそれぞれ独立に2以上の整数であり、bはそれぞれ独立に0、1又は2であり、cはそれぞれ独立に1以上の整数である。Zは主鎖のポリオキシアルキレン系重合体である。)
【0011】
上記式(1)中、R1及びR3は炭素数1~20、好ましくは炭素数1~10、より好ましくは炭素数1~6の非置換又は置換1価炭化水素基である。R1、R3として、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、α-,β-ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、2-フェニルエチル基、3-フェニルプロピル基等のアラルキル基;また、これらの基の水素原子の一部又は全部が、F、Cl、Br等のハロゲン原子やシアノ基等で置換された基、例えば、3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、2-シアノエチル基等;などが挙げられ、メチル基、フェニル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。このR1及びR3は同一の基であっても異種の基であってもよい。
【0012】
上記式(1)中、R2は、炭素数1~20、好ましくは炭素数1~10、より好ましくは炭素数1~6の非置換又は置換1価炭化水素基、又は水素原子である。R2として、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、α-,β-ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、2-フェニルエチル基、3-フェニルプロピル基等のアラルキル基;また、これらの基の水素原子の一部又は全部が、F、Cl、Br等のハロゲン原子やシアノ基等で置換された基、例えば、3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、2-シアノエチル基等;あるいは水素原子などが挙げられ、メチル基、エチル基、水素原子が好ましく、メチル基、水素原子が特に好ましい。このR2は同一の基であっても異種の基であってもよい。
【0013】
また、式(1)及び(2)それぞれにおいてaはそれぞれ独立に2以上の整数を示し、好ましくは2~8の整数であり、より好ましくは2、3又は4であり、特に好ましくは3である。
【0014】
また、式(1)中のbはそれぞれ独立に0、1又は2であり、好ましくは0又は1であり、特に好ましくは1である。
【0015】
また、式(2)中のcはそれぞれ独立に1以上の整数を示し、好ましくは1~20の整数であり、より好ましくは1~10の整数である。
【0016】
上記一般式(1)及び(2)で示されるポリオキシアルキレン系化合物の主鎖骨格であるZは下記一般式(5)で示される2価のオルガノオキシ単位(例えばオキシアルキレン基)の繰り返し構造を含むことが好ましい。
-R8-O- (5)
(式中、R8は2価炭化水素基である。)
【0017】
上記R8としては、2価炭化水素基(特には、脂肪族2価炭化水素基)であれば特に限定されないが、炭素数1~14の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基が好ましい。より好ましくは、炭素数2~4の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基である。
【0018】
上記式(5)で示される繰り返し単位としては特に限定されず、例えば、-CH2O-、-CH2CH2O-、-CH2CH2CH2O-、-CH2CH(CH3)O-、-CH2CH(CH2CH3)O-、-CH2C(CH32O-、-CH2CH2CH2CH2O-などのオキシアルキレン基などを挙げることができる。
【0019】
上記オキシアルキレン系重合体の主鎖骨格は、上記式(5)で表される繰り返し単位のうち、1種類からなってもよいし、2種類以上の繰り返し単位からなってもよい。特に、本用途に使用する場合は、プロピレンオキシド(-CH2CH(CH3)O-)を主成分とする重合体が好ましい。主成分とするとは、繰り返し単位数の半数超、好ましくは70モル%以上(70~100モル%)、より好ましくは90モル%以上(90~100モル%)、特に好ましくは100モル%(即ち、すべての繰り返し単位)が-CH2CH(CH3)O-であることをいう。
【0020】
上記式(1)中、Zは主鎖のポリオキシアルキレン系重合体(即ち、式(1)で表される化合物の主鎖を構成する2価のポリオキシアルキレン残基)であり、上述した式(5)で示される2価のオルガノオキシ単位(例えばオキシアルキレン基)の繰り返し構造を含むものであることが好ましく、下記一般式(6)で示されるものが例示できる。
【化4】
(式中、R8は上記と同じであり、同一又は異なっていてもよく、好ましくは炭素数1~14の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基であり、より好ましくは炭素数2~4の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基である。fは2以上の整数、好ましくは20~500の整数、より好ましくは40~450の整数、更に好ましくは100~400の整数である。破線は結合手を表す。)
【0021】
また、本発明における(A)成分の1分子中に2個の反応性ケイ素基(即ち、1個のヒドロキシ基又は1~3個のオルガノオキシ基を有するシリル基)を分子鎖両末端にそれぞれ1個ずつ有し、かつ、主鎖がポリオキシアルキレン系重合体であるポリオキシアルキレン系化合物は、23℃における粘度が1,000~1,000,000mPa・sのものが好ましく、より好ましくは2,000~80,000mPa・s、特に好ましくは5,000~50,000mPa・s程度のものである。(A)成分のポリオキシアルキレン系化合物の23℃における粘度が1,000mPa・s以上であれば、硬化後のゴムに十分な可撓性を付与でき、粘度が1,000,000mPa・s以下であれば、組成物の粘度が高くなりすぎず、作業性が良好となる。ここで、粘度は回転粘度計(例えば、BL型、BH型、BS型、コーンプレート型、レオメーター等、以下同じ)による数値である。
【0022】
なお、本発明における(A)成分の1分子中に2個の反応性ケイ素基(1個のヒドロキシ基又は1~3個のオルガノオキシ基を有するシリル基)を分子鎖両末端にそれぞれ1個ずつ有し、かつ、主鎖がポリオキシアルキレン系重合体である直鎖状のポリオキシアルキレン系化合物は、好ましくは直鎖状であり、また、その数平均分子量が、通常、500~100,000程度であればよく、1,000~50,000程度が好ましく、より好ましくは1,000~40,000程度である。
ここで、分子量又は重合度(オキシアルキレン単位の繰り返し数)は、例えば、テトラヒドロフラン(THF)等を展開溶媒としたゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析におけるポリスチレン換算の数平均分子量(又は数平均重合度)等として求めることができる(以下同じ)。
【0023】
なお、本発明においてポリオキシアルキレン系化合物(ポリオキシアルキレン構造)が「直鎖状」であるとは、該ポリオキシアルキレン構造を構成する繰り返し単位である2価のオキシアルキレン基同士が直鎖状に連結していることを意味するものであって、各オキシアルキレン基自体は直鎖状でも分岐状(例えば、-CH2CH(CH3)O-等のプロピレンオキシ基)であってもよい。
【0024】
上記式(1)で示されるポリオキシアルキレン系化合物(即ち、分子鎖両末端オルガノオキシ基含有シリル変性ポリオキシアルキレン化合物)としては、例えば、下記に示すものが例示できる。
【化5】
(式中、Me、Etはそれぞれメチル基、エチル基を示し、f1はfと同じである。)
【0025】
また、上記式(2)で示されるポリオキシアルキレン系化合物(即ち、分子鎖両末端シラノール基含有シロキサン変性ポリオキシアルキレン化合物)としては、例えば、下記に示すものが例示できる。
【化6】
(式中、c1はcと同じであり、f1はfと同じである。)
【0026】
上記ポリオキシアルキレン系化合物は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0027】
上記式(1)のポリオキシアルキレン系化合物は、公知の材料を用いればよく、あるいは(株)カネカ製「MSポリマー」など市販されているものを使用してもよい。
【0028】
<式(2)で示される構造を有するポリオキシアルキレン系化合物の製造方法>
上記式(2)で示される末端シラノール基含有ポリオキシアルキレン系化合物は、例えば、下記式(7)で示される分子鎖片末端のケイ素原子に結合した水素原子(Si-H基)を有し、かつ、他方の末端のケイ素原子に結合した水酸基(シラノール基)を有するオルガノシラン又はオルガノポリシロキサン化合物(ケイ素化合物)と、下記式(8)で示される分子鎖両末端がアルケニル基で封鎖されたポリオキシアルキレン系重合体とをヒドロシリル化付加反応させることによって容易に製造することができる。
【化7】
(式中、R1、R2、Z、cは上記と同じであり、rは0以上、好ましくは0~6、より好ましくは0、1又は2、特に好ましくは1を表す。)
【0029】
上記式(7)で表されるケイ素化合物の具体例としては、例えば、下記構造式(ここで、Phはフェニル基を示す)で表されるもの等が挙げられるが、これらに限定されることなく、分子鎖の片方の末端にSi-H基、他方の末端にSi-OH基を含むケイ素化合物であれば用いることができる。
【化8】
【0030】
上記式(8)で表される分子鎖両末端がアルケニル基で封鎖されたポリオキシアルキレン系重合体の具体例としては、例えば、下記構造式(ここで、fは上記と同じである)で表されるもの等が挙げられるが、これらに限定されることなく、両末端がアルケニル基で封鎖されたポリオキシアルキレン系重合体であれば用いることができる。
【化9】
【0031】
上記式(8)で示されるポリオキシアルキレン系重合体の分子量(特には、数平均分子量)としては、通常、450~99,000程度、好ましくは950~45,000程度、より好ましくは950~35,000程度であればよい。式(8)で示されるポリオキシアルキレン系重合体の分子量が小さすぎると、硬化後の硬化物の物性が十分でなく、大きすぎると粘度が著しく高くなり作業性が悪くなるだけでなく、硬化物の硬化性が低下する場合がある。
【0032】
上記式(7)で示されるケイ素化合物と上記式(8)で示されるポリオキシアルキレン系重合体との反応割合としては、式(8)で示されるポリオキシアルキレン系重合体中のアルケニル基に対する式(7)で示されるケイ素化合物中のSi-H基のモル比で、0.8~1.5(モル/モル)、特に0.9~1.1(モル/モル)程度とすることが好ましい。このモル比が小さすぎると硬化後の硬化物が完全に硬化せずゴム物性が十分に得られない場合があり、大きすぎると硬化後のゴム強度が低下してゴム弾性が得難くなり、コスト的にも不利となる場合がある。
【0033】
上記ケイ素化合物を付加する際に用いる付加反応触媒としては、白金族金属系触媒、例えば、白金系、パラジウム系、ロジウム系、ルテニウム系のものがあるが、白金系のものが特に好適である。この白金系のものとしては、例えば、白金黒あるいはアルミナ、シリカ等の担体に固体白金を担持させたもの、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、塩化白金酸とオレフィンとの錯体あるいは白金とビニルシロキサンとの錯体等を挙げることができる。
これらの白金族金属系触媒の使用量は、所謂触媒量でよく、例えば上記式(7)で示されるケイ素化合物と上記式(8)で示されるポリオキシアルキレン系重合体との合計質量に対して、白金族金属の質量換算で0.1~1,000ppm、特に0.5~100ppmの質量で使用することが好ましい。
【0034】
この反応は、50~120℃、特に60~100℃の温度で、0.5~12時間、特に1~6時間行うことが望ましく、また溶媒を使用せずに行うことができるが、上記付加反応等に悪影響を与えない限りにおいて、必要によりトルエン、キシレン等の適当な溶媒を使用してもよい。
【0035】
この反応は、例えば、アルケニル基封鎖ポリオキシアルキレン系重合体として分子鎖両末端アリル基封鎖ポリオキシプロピレンを使用した場合には、下記式[I]で表される。
【0036】
【化10】
(式中、R1は前記の通りであり、f2は2以上の整数、c2は1以上の整数を表す。)
【0037】
[(B)成分]
次に、(B)成分である無機質充填剤は、本組成物にゴム物性を付与するための補強性充填剤又は非補強性充填剤である。本充填剤としては、表面処理又は無処理の、焼成シリカ、煙霧質シリカ等の乾式シリカ、沈降性シリカ、ゾル-ゲル法シリカ等の湿式シリカなどのシリカ系充填剤、カーボンブラック、タルク、ベントナイト、表面処理又は無処理の炭酸カルシウム(重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム)、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、表面処理又は無処理の酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム等が例示され、その中でも炭酸カルシウム、煙霧質シリカ、沈降性シリカ、カーボンブラック、酸化アルミニウムが好ましく、より好ましくは表面処理剤により無機質充填剤の表面が疎水化処理された、炭酸カルシウム、煙霧質シリカ、沈降性シリカ、カーボンブラック、酸化アルミニウムである。この場合、これら無機質充填剤は、水分量が少ないことが好ましい。
なお、該表面処理剤の種類、量や処理方法等については特に制限はないが、代表的には、クロロシラン、アルコキシシラン、オルガノシラザン等の有機ケイ素化合物や、脂肪酸、パラフィン、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等の処理剤が適用できる。
【0038】
(B)成分の配合量は、(A)成分のポリオキシアルキレン系化合物100質量部に対して1~500質量部の範囲、好ましくは20~300質量部の範囲である。1質量部未満では十分なゴム強度が得られないため、使用用途に適さないという問題が生じ、500質量部を超えるとカートリッジからの吐出性が悪化し、並びに保存安定性が低下するほか、得られるゴム物性の機械特性も低下してしまう。また、(B)成分の無機質充填剤は、1種でもよく、2種以上を併用してもよい。
【0039】
[(C)成分]
本発明の室温硬化性組成物に用いる(C)成分は、架橋剤(硬化剤)として作用するものであり、1分子中にケイ素原子に結合した加水分解可能な基を少なくとも3個有する、(A)成分、及び後述する(D)成分以外の、加水分解性(オルガノ)シラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物である。該加水分解性(オルガノ)シラン化合物は、下記一般式(3)で示される加水分解性(オルガノ)シラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物(即ち、該オルガノシラン化合物を部分的に加水分解縮合して生成する分子中に残存加水分解性基を少なくとも2個、好ましくは3個以上有するオルガノシロキサンオリゴマー)が好ましい。
4 dSiX4-d (3)
(上記一般式(3)中、R4は非置換1価炭化水素基であり、Xは加水分解性基である。dは0又は1であり、好ましくは1である。)
【0040】
一般式(3)中、加水分解性基Xとしては、(A)成分が上記式(1)で示される化合物の場合、例えばアルコキシ基又はアルコキシアルコキシ基が挙げられ、上記式(2)で示される化合物の場合、例えば、ケトオキシム基、アルコキシ基、アルコキシアルコキシ基、アシロキシ基、アルケニルオキシ基等が挙げられる。具体的には、ジメチルケトオキシム基、ジエチルケトオキシム基、メチルエチルケトオキシム基、メチルイソブチルケトオキシム基等の炭素数3~8のケトオキシム基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基等の炭素数1~4、好ましくは1又は2のアルコキシ基、メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基等の炭素数2~4のアルコキシアルコキシ基、アセトキシ基、プロピオノキシ基等の炭素数2~4のアシロキシ基、ビニルオキシ基、アリルオキシ基、プロペノキシ基、イソプロペノキシ基等の炭素数2~4のアルケニルオキシ基などが例示できる。
また、加水分解性基以外のケイ素原子に結合した残余の基R4は、非置換1価炭化水素基であれば特に限定されるものではないが、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、ビニル基等のアルケニル基、フェニル基等のアリール基などの炭素数1~10の非置換1価炭化水素基が例示される。これらの中でも、メチル基、エチル基、ビニル基、フェニル基が好ましい。
【0041】
このような(C)成分の具体例としては、テトラキス(メチルエチルケトオキシム)シラン、メチルトリス(ジメチルケトオキシム)シラン、メチルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン、エチルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン、メチルトリス(メチルイソブチルケトオキシム)シラン、ビニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シランなどのケトオキシムシラン類、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、テトラエトキシシランなどのアルコキシシラン類、メチルトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシランなどのアセトキシシラン類、及びメチルトリイソプロペノキシシラン、ビニルトリイソプロペノキシシラン(別名ビニルトリス(イソプロペノキシ)シラン)、フェニルトリイソプロペノキシシランなどのイソプロペノキシシラン類、並びにこれらシランの部分加水分解縮合物などが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を併用してもよい。
なお、(C)成分は、分子中に、窒素、酸素、硫黄等のヘテロ原子を含有する官能性基を有する1価炭化水素基を有さないものである点で後述する(D)成分とは明確に差別化されるものである。
【0042】
(C)成分の配合量は、(A)成分のポリオキシアルキレン系化合物100質量部に対して0.1~30質量部、好ましくは1~25質量部、より好ましくは5~20質量部の範囲で使用される。0.1質量部未満では十分な架橋が得られず、目的とするゴム弾性を有する組成物が得難く、30質量部を超えると得られる硬化物は機械特性が低下し易い。
【0043】
[(D)成分]
次に、(D)成分は、下記一般式(4)で示されるシランカップリング剤(即ち、官能性基含有1価炭化水素基を有する加水分解性オルガノシラン化合物)及び/又はその部分加水分解縮合物であり、本発明の室温硬化性組成物に良好な接着性を発現させるための必須成分である。
57 eSi(OR63-e (4)
(式中、R5は、窒素原子、硫黄原子及び酸素原子から選ばれるいずれか1つ以上の原子を含む官能性基を少なくとも1個有する炭素数1~20の1価炭化水素基である。R6、R7は、それぞれ独立に、炭素数1~10の非置換又は置換1価炭化水素基であり、eは0、1又は2である。)
【0044】
上記式(4)中、R5は窒素原子、硫黄原子及び酸素原子から選ばれる原子を含む官能性基(例えば、非置換又は置換アミノ基、非置換又は置換イミノ基、アミド基、ウレイド基、メルカプト基、エポキシ基、(メタ)アクリロキシ基、イソシアネート基等、但し、グアニジル基を除く)を少なくとも1個有する炭素数1~20の1価炭化水素基であり、具体的には、β-(2,3-エポキシシクロヘキシル)エチル基、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基、γ-グリシドキシプロピル基、γ-(メタ)アクリロキシプロピル基、γ-アクリロキシプロピル基、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピル基、γ-アミノプロピル基、N-フェニル-γ-アミノプロピル基、γ-ウレイドプロピル基、γ-メルカプトプロピル基、γ-イソシアネートプロピル基、γ-イソシアネートプロピル基等の窒素原子、硫黄原子及び酸素原子から選ばれる原子の少なくとも1つを含む炭素数3~20、特に炭素数8~14の1価炭化水素基が挙げられる。
【0045】
また、R6、R7は、それぞれ独立に、炭素数1~10、特に炭素数1~6の非置換又は置換1価炭化水素基であり、特にメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基が好ましい。
【0046】
(D)成分のシランカップリング剤及び/又はその部分加水分解縮合物は、1種でもよく、2種以上を併用してもよい。
上記(D)成分の配合量は、(A)成分のポリオキシアルキレン系化合物100質量部に対して0.01~10質量部であり、好ましくは0.1~7質量部である。0.01質量部未満では、硬化物が十分な接着性能を示さないものとなり、10質量部を超えて配合すると、硬化後のゴム強度が低下したり、硬化性が低下したりする。
【0047】
[(E)成分]
本発明の室温硬化組成物に用いる(E)成分は硬化触媒である。硬化触媒としては、湿気(縮合)硬化型組成物の硬化促進剤として従来から一般的に使用されている縮合触媒を使用できる。例えばジブチルスズメトキサイド、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクテート、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズジバーサテート、ジオクチルスズジオクテート、ジメチルスズジメトキサイド、ジメチルスズジアセテート等の有機スズ化合物;テトラプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラ-2-エチルヘキシルチタネート、ジメトキシチタンジアセチルアセトナート等の有機チタン化合物;ヘキシルアミン、テトラメチルグアニジルプロピルトリメトキシシラン等の(D)成分のシランカップリング剤を除くアミン化合物やこれらの塩などが挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0048】
(E)成分の配合量は、(A)成分のポリオキシアルキレン系化合物100質量部に対して0.1~10質量部であり、好ましくは0.2~8質量部であり、更に好ましくは0.3~5質量部である。(E)成分の配合量が上記下限値の0.1質量部未満であると、触媒効果が得られない。また、(E)成分の配合量が上記上限値の10質量部を超えると、室温硬化性組成物の接着性が低下したり、保存性が悪化する場合がある。
【0049】
また、本発明の組成物には、上記成分以外に一般に知られている添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で使用しても差し支えない。添加剤としては、例えば、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ-n-ブチル、フタル酸ヘプチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジトリデシル、フタル酸エステル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジ-n-アルキル、ジブチルジグリコールアジペート、アゼライン酸ビス(2-エチルヘキシル)、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジオクチル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジ-2-エチルヘキシル、フマル酸ジブチル、リン酸トリクレシル、トリエチルフォスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、トリフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、クエン酸アセチルトリエチル、アセチルクエン酸トリブチル、トリメリット酸系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、塩素化パラフィン、ステアリン酸系可塑剤などの各種可塑剤、トルエン、キシレン、溶剤揮発油、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、低沸点イソパラフィン等の溶剤も添加できる。これらは単独又は2種以上組み合わせて用いられる。
【0050】
本発明の室温硬化性組成物の硬化条件としては、例えば、組成物(室温硬化性組成物)を2mmの型枠に流し込み、23℃、50%RHで7日間養生(静置)することによって厚さ2mmの硬化物(ゴムシート)を得ることができる。
【0051】
また、本発明の室温硬化性組成物は、シリコーンオイルを冷却用クーラントとして用いた場合のクーラントシール材として好適に用いられ、特に、硬化性に優れると共に、良好な接着性や伸び、及び耐シリコーンオイル性を有する硬化物を与えるものである。特に自動車用冷却液のシール材として好適に使用できる。
【0052】
また、本発明の室温硬化性組成物では、(A)成分として上記式(2)で表される末端シラノール基含有ポリオキシアルキレン系化合物を使用した場合には、アルコキシ基だけではなく、種々の硬化剤(オキシム、アミド、アミノキシ、酢酸(アセトキシ基)、アルコール(アルコキシ基)等の加水分解性基を含有する有機ケイ素化合物など)を架橋成分として用いることが理論上可能となり、これにより種々の硬化反応(縮合反応)タイプの室温硬化性組成物を与えることができ、硬化性(初期シール性)を大幅に改善することができる。
【実施例
【0053】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、実施例及び比較例はすべて適切な混合機として、プラネタリミキサー((株)井上製作所製)を用いた。また、下記例中、特に記載のない粘度(回転粘度計による測定値)などの物性値は、23℃での値を示す。
【0054】
[合成例1]
<両末端シラノール基含有シロキサン変性ポリオキシアルキレン化合物の合成>
撹拌機、還流冷却管、温度計及び滴下ロートを備えた1Lの四つ口セパラブルフラスコに、分子量23,000相当の両末端アリル基含有ポリプロプレングリコール600g(末端アリル基の官能基換算0.058モル)、白金触媒(カールステッド触媒のトルエン溶液;白金濃度1質量%)を2.4g入れ、加熱攪拌しながら、温度を90℃まで上げた。
次いで、攪拌下で、1-ヒドロキシ-オクタメチルテトラシロキサン(即ち、1-ヒドロキシ-7-ハイドロジェン-1,1,3,3,5,5,7,7-オクタメチルテトラシロキサン)19.6g(末端Si-Hの官能基量0.066モル)を滴下し、反応温度を90~95℃として6時間、この反応系を保持した。反応終了後、室温まで冷却し、分子鎖両末端シラノール基含有シロキサン変性ポリプロピレングリコール(前記一般式(2)において、R1=メチル基、R2=水素原子、a=3、c=4であり、Zがポリオキシプロプレンである分子鎖両末端シラノール基含有シロキサン変性ポリオキシアルキレン化合物)570g(収率92%、粘度24000mPa・s、数平均分子量;24,000)を得た。
【0055】
[実施例1]
(A)合成例1で合成した分子鎖両末端シラノール基含有シロキサン変性ポリプロピレングリコール100質量部に、(B)表面が脂肪酸にて処理された重質炭酸カルシウム(商品名;MCコートP-20、丸尾カルシウム(株)製)100質量部を加えて混合した後、(C)ビニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン7質量部を加え、減圧下で混合した。次に(D)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(商品名;KBM-903、信越化学工業(株)製)3質量部、(E)ジオクチル錫ジバーサテート3質量部を加え、減圧下で完全に混合し、組成物1を得た。
【0056】
[実施例2]
(A)合成例1で合成した分子鎖両末端シラノール基含有シロキサン変性ポリプロピレングリコール100質量部に、(B)表面が脂肪酸にて処理された重質炭酸カルシウム(商品名;MCコートP-20、丸尾カルシウム(株)製)100質量部を加えて混合した後、(C)ビニルトリス(イソプロペノキシ)シラン6質量部を加え、減圧下で混合した。次に(D)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(商品名;KBM-903、信越化学工業(株)製)1質量部、(E)テトラメチルグアニジルプロピルトリメトキシシラン3質量部を加え、減圧下で完全に混合し、組成物2を得た。
【0057】
[実施例3]
(A)合成例1で合成した分子鎖両末端シラノール基含有シロキサン変性ポリプロピレングリコール100質量部に、(B)表面が脂肪酸にて処理された重質炭酸カルシウム(商品名;MCコートP-20、丸尾カルシウム(株)製)100質量部を加えて混合した後、(C)ビニルトリメトキシシラン6質量部を加え、減圧下で混合した。次に(D)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(商品名;KBM-903、信越化学工業(株)製)1質量部、(E)ジオクチル錫ジバーサテート1質量部を加え、減圧下で完全に混合し、組成物3を得た。
【0058】
[実施例4]
(A)カネカMSポリマーS303H(分子鎖両末端ジメトキシ(メチル)シリルプロピル基封鎖ポリプロピレングリコール(前記一般式(1)において、R1=R3=メチル基、R2=水素原子、a=3、b=1、Z=ポリオキシプロプレン)、(株)カネカ製、数平均分子量;17,500)100質量部に、(B)表面が脂肪酸にて処理された重質炭酸カルシウム(商品名;MCコートP-20、丸尾カルシウム(株)製)100質量部を加えて混合した後、(C)ビニルトリメトキシシラン6質量部を加え、減圧下で混合した。次に(D)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(商品名;KBM-903、信越化学工業(株)製)1質量部、(E)ジオクチル錫ジバーサテート3質量部を加え、減圧下で完全に混合し、組成物4を得た。
【0059】
[比較例1]
(A)粘度が20,000mPa・sの分子鎖両末端シラノール基含有ジメチルポリシロキサン100質量部に、(B)表面が脂肪酸にて処理された重質炭酸カルシウム(商品名;MCコートP-20、丸尾カルシウム(株)製)100質量部を加えて混合した後、(C)ビニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン7質量部を加え、減圧下で混合した。次に(D)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(商品名;KBM-903、信越化学工業(株)製)1質量部、(E)ジオクチル錫ジバーサテート0.1質量部を加え、減圧下で完全に混合し、組成物5を得た。
【0060】
[比較例2]
(A)粘度が20,000mPa・sの分子鎖両末端シラノール基含有ジメチルポリシロキサン100質量部に、(B)表面が脂肪酸にて処理された重質炭酸カルシウム(商品名;MCコートP-20、丸尾カルシウム(株)製)100質量部を加えて混合した後、(C)ビニルトリス(イソプロペノキシ)シラン6質量部を加え、減圧下で混合した。次に(D)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(商品名;KBM-903、信越化学工業(株)製)0.1質量部、(E)テトラメチルグアニジルプロピルトリメトキシシラン1質量部を加え、減圧下で完全に混合し、組成物6を得た。
【0061】
[比較例3]
(A)粘度が20,000mPa・sの分子鎖両末端シラノール基含有ジメチルポリシロキサン100質量部に、(B)表面が脂肪酸にて処理された重質炭酸カルシウム(商品名;MCコートP-20、丸尾カルシウム(株)製)100質量部を加えて混合した後、(C)ビニルトリメトキシシラン6質量部を加え、減圧下で混合した。次に(D)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(商品名;KBM-903、信越化学工業(株)製)1質量部、(E)ジオクチル錫ジバーサテート0.1質量部を加え、減圧下で完全に混合し、組成物7を得た。
【0062】
[試験方法]
上記実施例、比較例で調製された組成物1~7をそれぞれ深さ2mmの型枠に流し込み、23℃、50%RHで7日間養生して2mm厚のゴムシートを得た。その際、JIS A 5758に規定する方法に準じてタックフリータイム(指触乾燥時間)を測定し、JIS K 6249に準じて2mm厚シートよりゴム物性(タイプAデュロメータ硬さ、切断時伸び、引張り強度)を測定した。
【0063】
初期シール性(耐圧性)の試験方法は、試験装置としてJIS K 6820に規定されている耐圧試験用フランジ圧力容器に類似する圧力容器を用い、耐圧試験を行った。該圧力容器は、内径58mm、外径80mm、厚さ10mmの上側フランジを有する上側容器と、上側フランジと同寸法の下側フランジを有する下側容器からなり、下側フランジのシール面のインナー側縁部には、幅3mm、深さ3mmの環状の切り欠きが円周に沿って設けられている。この下側のフランジのシール面をトルエンにより洗浄した。その後、上記組成物をシール面が十分に満たされるだけの塗布量で下側のシール面中央部にビード状に塗布した。塗布後直ちに、上側容器を、上側フランジと下側フランジのシール面とが当接するように、下側容器に載せ、上下フランジのシール面間の距離を規定するための(上記フランジの厚さ方向の)高さ20.50mmの鉄製スペーサーを設置して4本の締め付けボルトを組み付けた。当該スペーサーによりシール面間に0.5mmの間隔が生じているが、これはシール材に対する耐圧試験をより過酷にする、いわゆる促進試験とするためである。その後、23℃、50%RHで30分間硬化させた後、上側の加圧口から気体を挿入し、上記組成物の硬化物であるシール材が耐えうる気体圧を測定した。
【0064】
また、幅25mm、長さ100mmのアルミニウム板2枚の間で上記組成物1~7をそれぞれ23℃、50%RHで7日間養生して硬化させ、上下それぞれのアルミニウム板との接着面積2.5cm2、接着厚さ1mmのシリコーンゴム硬化物層を形成して、せん断接着試験体を作製した。この各試験体を用いてアルミニウムに対するせん断接着力と凝集破壊率をJIS K 6249に規定する方法に準じて測定し、凝集破壊率を比較した。
【0065】
また、耐薬品性(耐シリコーンオイル性)能を確認するため、得られた硬化後の各シリコーンゴムシート及び各せん断接着試験体を動粘度2mm2/sのジメチルシリコーンオイル[商品名:KF-96-2cs;信越化学工業製]に120℃にて10日間浸漬して劣化させて、その後製造初期と同様の試験(ゴム物性(タイプAデュロメータ硬さ、切断時伸び、引張り強度)、せん断接着力及び凝集破壊率測定)を行うことで、シリコーンオイル浸漬後(耐薬品性)の確認試験を行った。
これらの結果を以下の表1に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
所定のポリオキシアルキレン系化合物をベースポリマーとして用いた、実施例1~4ではいずれも良好なゴム物性、接着性、耐シリコーンオイル性を示し、実施例1~3については更に、初期シール性にも優れる結果を得た。一方、ベースポリマーに反応性シリコーンオイル(分子鎖両末端シラノール基含有ジメチルポリシロキサン)を使用した比較例1~3は初期シール性、初期物性(ゴム物性、接着性)は良好なものの、シリコーンオイル浸漬(耐薬品性試験)後に軟化劣化し、硬さが測定不能となるなど、シール材自体が大きく劣化してしまうことから、シリコーンオイルを用いた冷却液のシール材としては不適切である。
以上の結果より、本発明による耐シリコーンオイル性に優れた室温硬化性組成物がシリコーンオイルを冷却用クーラントとして用いた場合のクーラントシール材に有効であることがわかった。