(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】水処理システム
(51)【国際特許分類】
C02F 1/00 20060101AFI20221213BHJP
C02F 9/04 20060101ALI20221213BHJP
C02F 9/08 20060101ALI20221213BHJP
C02F 9/12 20060101ALI20221213BHJP
C02F 1/28 20060101ALI20221213BHJP
C02F 1/44 20060101ALI20221213BHJP
C02F 1/469 20060101ALI20221213BHJP
C02F 1/42 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
C02F1/00 A
C02F1/00 D
C02F9/04
C02F9/08
C02F9/12
C02F1/28 F
C02F1/44 A
C02F1/469
C02F1/42 A
(21)【出願番号】P 2021066612
(22)【出願日】2021-04-09
【審査請求日】2022-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】大部 由佳
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 博之
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-531556(JP,A)
【文献】特表2013-534458(JP,A)
【文献】特表2007-512956(JP,A)
【文献】国際公開第2019/140354(WO,A1)
【文献】中国実用新案第207269233(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F1/00-1/78
C02F3/00-3/34
C02F5/00-5/14
C02F9/00-9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の水処理ユニットと、
各水処理ユニットに設けられた個別制御器と、
各個別制御器と通信する統合制御盤と
を備え、
各個別制御器同士及び個別制御器と統合制御盤とが近距離無線通信により通信可能となって
おり、
前記統合制御盤から発信される発信信号は、信号を与えるべき水処理ユニットを特定するユニット識別情報を含み、
前記統合制御盤から発信された信号を受信した前記個別制御器は、受信信号に含まれる前記ユニット識別情報が当該水処理ユニットを指定しないものである場合、受信した信号を他の個別制御器へ発信する、水処理システム。
【請求項2】
前記水処理ユニットとして、ポンプ、前処理装置、活性炭濾過器、RO装置及び脱イオン装置の少なくとも1つを有する請求項1の水処理システム。
【請求項3】
水処理ユニットが規格品である請求項1又は2の水処理システム。
【請求項4】
前記近距離無線通信がZigBee(登録商標)である請求項1~3のいずれかの水処理システム。
【請求項5】
前記個別制御器及び統合制御盤がマイクロプロセッサとしてArduino(登録商標)又はRaspberry Pi(登録商標)を用いたものである請求項1~4のいずれかの水処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の水処理ユニットと、水処理ユニットを制御する統合制御盤とを有した水処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の水処理ユニットと統合制御盤とを備えた水処理システムにあっては、水処理ユニットと統合制御盤との間でデータ通信が行われる。
【0003】
特許文献1には、逆浸透(RO)モジュール内にセンサ及び該センサに接続されたマイクロ処理ユニットを設置し、該マイクロ処理ユニットと中央処理ユニットとの間でワイヤ(0019段落)によってデータ通信することが記載されている。なお、特許文献1の0019段落には、マイクロ処理ユニットとしてアルデュイーノ(Arduino:登録商標)ボードを用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数の水処理ユニットの各々と統合制御盤とを有線で接続する場合、配線工事が必要であり、システムの原価が高くなり、また工期も長くなる。
【0006】
また、従来の水処理システムにあっては、統合制御盤を水処理ユニットの種類、数や組み合わせに応じて個別に設計するようにしていたため、設計コストが高くなり、納期も長くなっていた。
【0007】
本発明は、水処理ユニットと統合制御盤との間の配線工事が不要である水処理システムを提供することを課題とする。
【0008】
また、本発明は、その一態様において、新規設置の水処理システムとは別の、既設の他の水処理システムの運転データも収集し、新設と既設を統合して運転管理を可能にすることを課題とする。
【0009】
また、本発明は、その一態様において、水処理ユニットを規格化することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の水処理システムは、複数の水処理ユニットと、各水処理ユニットに設けられた個別制御器と、各個別制御器と通信する統合制御盤とを備え、各個別制御器同士及び個別制御器と統合制御盤とが近距離無線通信により通信可能となっている。
【0011】
本発明の一態様では、前記水処理ユニットとして、ポンプ、前処理装置、活性炭濾過器、RO装置及び脱イオン装置の少なくとも1つを有する。
【0012】
本発明の一態様では、水処理ユニットが規格品である。
【0013】
本発明の一態様では、前記近距離無線通信がZigBee(登録商標)である。
【0014】
本発明の一態様では、前記個別制御器及び統合制御盤がマイクロプロセッサとしてArduino(登録商標)又はRaspberry Pi(登録商標)を用いたものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の水処理システムは、水処理ユニットと統合制御盤との間で無線通信を行うので、水処理ユニットと統合制御盤との間の配線工事が不要である。水処理ユニットを規格化することにより、水処理システムの設計の労力及びコストが低減される。
【0016】
また、本発明の一態様によると、既設の他社製の水処理システム内の水位計、流量計などの測定器に、新設システムと同じ通信機能を追加することで、容易に既設システムの運転データ(例えば、水位、流量、pH、水質など)を収集することができ、新設システムと同様に運転管理を行うことができる。
【0017】
即ち、新設システムの統合制御盤が、各ユニット装置や既設ユニットと通信してデータ送信や監視することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施の形態に係る水処理システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、
図1を参照して実施の形態に係る水処理システムの構成について説明する。この水処理システムは純水装置であり、工水、井水、回収水等の原水が原水タンク1に導入される。原水タンク1内の原水は、原水ポンプ2によって前処理装置(この実施の形態ではMF装置)3に送水され、MF膜濾過による前処理が行われる。前処理された水は、活性炭濾過器4に送水され、活性炭濾過処理される。
【0020】
活性炭濾過水は、高圧ポンプ5によってRO(逆浸透膜)装置6に送水される。RO装置6の濃縮水の一部は、原水タンク1に返送され、残部は系外に排出される。RO装置6の透過水は、脱イオン装置(この実施の形態では電気脱イオン装置。ただし、イオン交換樹脂装置などであってもよい。)7に送水され、脱イオン処理されて処理水(純水)となり、純水タンク8に導入される。純水タンク8内の純水は、純水需要箇所(ボイラ、二次純水装置(サブシステム)など)に供給される。
【0021】
原水ポンプ2、前処理装置3、活性炭濾過器4、高圧ポンプ5、RO装置6、脱イオン装置7などの各水処理ユニットには個別制御器12~17がそれぞれ設置されている。なお、原水ポンプ2、前処理装置3、活性炭濾過器4、高圧ポンプ5、RO装置6、脱イオン装置7を以下、水処理ユニット2~7ということがある。
【0022】
図示は省略するが、ポンプ2,5には圧力センサ、流量センサなどのセンサが設けられている。前処理装置3、活性炭濾過器4及びRO装置6には圧力センサ及び流量センサなどのセンサが設けられている。脱イオン装置7には電気伝導度計及び流量センサなどのセンサが設けられている。
【0023】
ポンプ2,5の個別制御器12,15には、ポンプ回転数を制御するインバータ制御器が設けられている。
【0024】
また、前処理装置3、活性炭濾過器4及びRO装置6には、逆洗機構が設けられており、個別制御器13,14,16からの制御信号により逆洗が行われるよう構成されている。逆洗機構は、処理水を溜めておくタンクと、逆洗用ポンプと、逆洗用配管及び弁等を備えている。
【0025】
脱イオン装置7は電流制御用電源装置を備えている。この電流制御用電源装置は個別制御器17からの制御信号により制御される。
【0026】
各個別制御器12~17同士及び統合制御盤20と各個別制御器12~17とは、近距離無線通信(この実施の形態では通信規格はZigBee(登録商標)。ただしこれに限定されない。)により通信可能とされている。
【0027】
個別制御器12~17及び統合制御盤20は、マイクロプロセッサとしてArduino(登録商標)又はRaspberry Pi(登録商標)を備えている。
【0028】
個別制御器12~17は、
図2の通り、プログラム及び運転情報データを格納する記憶部30を有するコンピュータを備えており、このコンピュータのCPU(中央演算部)がプログラムを実行することにより、演算制御部31及び信号分別部32が構成される。演算制御部31には、各水処理ユニット2~7のセンサ検出信号がA/D変換器33を介して入力される。
【0029】
統合制御盤20は、制御プログラム及び運転情報を格納する記憶部を備えたコンピュータを有する。このコンピュータのマイクロプロセッサは、前述の通りArduino(登録商標)又はRaspberry Pi(登録商標)である。統合制御盤は、水処理ユニット12~17の運転データ(各水処理ユニットのセンサによる検出データを含む。)信号の受信部と、受信部からのデータと格納データとに基づいて各水処理ユニットに送信する制御データを演算する演算制御部と、によって制御信号を発信する発信部等を備えている。
【0030】
統合制御盤20から発信された信号は受信部34で受信され、信号分別部32に入力される。統合制御盤20からの発信信号には、信号を与えるべき水処理ユニットを特定するためのID(ユニット識別情報)と、各水処理ユニットに与える制御情報とが含まれている。
【0031】
信号分別部32は、受信信号のうち、当該水処理ユニットを指定するIDを含む信号を分別し、当該信号に含まれる制御情報を演算制御部31に伝送する。また、信号分別部32は、当該水処理ユニットを指定しないIDを含む信号については発信部35に伝送する。発信部35はこの伝送された信号を他の水処理ユニットに向けて近距離無線通信により発信する。
【0032】
また、演算制御部31は、A/D変換器33を介して受け付けたセンサ検出データを発信部35に伝送し、発信部35はこのデータを統合制御盤20及び他の水処理ユニットに向けて近距離無線通信により発信する。
【0033】
さらに、演算制御部31は、制御プログラムに従って、センサ検出データ及び信号分別部32を介して受け付けた統合制御盤20からの制御情報に基づいて制御内容を演算し、この演算結果を制御信号出力部36に伝送する。制御信号出力部36から当該水処理ユニットに制御信号が送信され、各水処理ユニット2~7の制御が行われる。例えば、ポンプ2,5のオン、オフ及び回転数制御が行われ、脱イオン装置17の電流制御が行われる。また、前処理装置3、活性炭濾過器4及びRO装置の濾過運転及び逆洗運転の切替制御が行われる。なお、制御内容はこれに限定されるものではなく、これ以外の各種の制御を行うことができる。
【0034】
この実施の形態では、統合制御盤20と各水処理ユニット2~7の個別制御器12~17とが近距離無線通信方式にて通信を行うので、各統合制御盤20と水処理ユニット2~7とをデータ送信用ケーブルで接続することが不要であり、設置コストの低減及び水処理システム構築工事期間の短縮を図ることができる。また、統合制御盤20と各個別制御器12~17だけでなく、各個別制御器12~17同士でも近距離無線通信で通信するネットワーク方式としており、統合制御盤20から離隔した水処理ユニットと統合制御盤20との間でも、他の水処理ユニットの個別制御器を中継して通信が行われる。
【0035】
この実施の形態では、各水処理ユニット2~7は規格品である。即ち、容量、性能が予め設定された仕様となっている製品であり、個別の現場に合わせて設計された特別仕様品ではない。そのため、統合制御盤20に設定される各水処理ユニットの制御プログラムも規格品となっている。従って、水処理ユニット2~7及び統合制御盤20を現場に合わせて設計ないし製作することが不要であり、設計及び製作の労力及びコストが低いものとなる。
【符号の説明】
【0036】
1 原水タンク
3 前処理装置
4 活性炭濾過器
6 RO装置
7 脱イオン装置
8 純水タンク
20 統合制御盤