(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】研磨液及び研磨方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20221213BHJP
B24B 37/00 20120101ALI20221213BHJP
C09K 3/14 20060101ALI20221213BHJP
C09G 1/02 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
H01L21/304 622D
H01L21/304 622X
B24B37/00 H
C09K3/14 550Z
C09K3/14 550D
C09G1/02
(21)【出願番号】P 2022508515
(86)(22)【出願日】2020-11-11
(86)【国際出願番号】 JP2020042108
(87)【国際公開番号】W WO2022102020
(87)【国際公開日】2022-05-19
【審査請求日】2022-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100160897
【氏名又は名称】古下 智也
(72)【発明者】
【氏名】飯倉 大介
(72)【発明者】
【氏名】青木 雅子
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-236275(JP,A)
【文献】特開2011-171446(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 37/00
C09K 3/14
C09G 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
4価金属元素の水酸化物を含む砥粒と、窒素原子に結合した炭素数6以上の炭化水素基を有する含窒素化合物と、を含有し、
前記含窒素化合物が、第4級アンモニウム塩、第3級アミン、及び、複素環を構成する第4級窒素原子を有する複素環化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、研磨液。
【請求項2】
前記含窒素化合物が第4級アンモニウム塩を含む、請求項1に記載の研磨液。
【請求項3】
前記含窒素化合物が、前記炭化水素基としてアルキル基を有する化合物を含む、請求項1又は2に記載の研磨液。
【請求項4】
前記含窒素化合物が、前記炭化水素基としてアリール基を有する化合物を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の研磨液。
【請求項5】
前記含窒素化合物の前記炭素数が6~18である、請求項1~4のいずれか一項に記載の研磨液。
【請求項6】
前記含窒素化合物が、前記窒素原子に結合したポリオキシアルキレン鎖を更に有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の研磨液。
【請求項7】
カルボキシ基を有さない一価の酸成分を更に含有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の研磨液。
【請求項8】
前記酸成分がスルホン酸化合物を含む、請求項7に記載の研磨液。
【請求項9】
塩基成分を更に含有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の研磨液。
【請求項10】
前記塩基成分がピラゾール化合物を含む、請求項9に記載の研磨液。
【請求項11】
前記砥粒がセリウム水酸化物を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の研磨液。
【請求項12】
酸化珪素及び窒化珪素を含む被研磨面の研磨に用いられる、請求項1~11のいずれか一項に記載の研磨液。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の研磨液を用いて被研磨面を研磨する工程を備える、研磨方法。
【請求項14】
前記被研磨面が酸化珪素及び窒化珪素を含む、請求項13に記載の研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、研磨液、研磨方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体素子の製造工程では、高密度化及び微細化のための加工技術の重要性がますます高まっている。加工技術の一つであるCMP(ケミカル・メカニカル・ポリッシング:化学機械研磨)技術は、半導体素子の製造工程において、シャロートレンチ分離(シャロー・トレンチ・アイソレーション。以下「STI」という。)の形成、プリメタル絶縁材料又は層間絶縁材料の平坦化、プラグ又は埋め込み金属配線の形成等に必須の技術となっている。
【0003】
最も多用されている研磨液としては、例えば、砥粒として、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ等のシリカ(酸化珪素)粒子を含むシリカ系研磨液が挙げられる。シリカ系研磨液は、汎用性が高いことが特徴であり、砥粒含有量、pH、添加剤等を適切に選択することで、絶縁材料及び導電材料を問わず幅広い種類の材料を研磨できる。
【0004】
一方で、主に酸化珪素等の絶縁材料を対象とした研磨液として、セリウム化合物粒子を砥粒として含む研磨液の需要も拡大している。例えば、セリウム酸化物粒子を砥粒として含むセリウム酸化物系研磨液は、シリカ系研磨液よりも低い砥粒含有量でも高速に酸化珪素を研磨できる(例えば、下記特許文献1及び2参照)。
【0005】
近年、半導体素子の製造工程では、更なる配線の微細化を達成することが求められており、研磨時に発生する研磨傷が問題となっている。すなわち、従来のセリウム酸化物系研磨液を用いて研磨を行った際に微小な研磨傷が発生しても、この研磨傷の大きさが従来の配線幅より小さいものであれば問題にならなかったが、更なる配線の微細化を達成しようとする場合には、研磨傷が微小であっても問題となってしまう。
【0006】
この問題に対し、セリウム水酸化物の粒子を用いた研磨液が検討されている(例えば、下記特許文献3~5参照)。また、セリウム水酸化物の粒子の製造方法についても検討されている(例えば、下記特許文献6及び7参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平10-106994号公報
【文献】特開平08-022970号公報
【文献】国際公開第2002/067309号
【文献】国際公開第2012/070541号
【文献】国際公開第2012/070542号
【文献】特開2006-249129号公報
【文献】国際公開第2012/070544号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年の半導体素子では、微細化がますます加速し、配線幅の縮小と共に薄膜化が進んでいる。これに伴い、STIを形成するためのCMP工程等において、凹凸パターンを有する基板の凸部上に配置されたストッパの過研磨を抑制しつつ絶縁部材を研磨する必要がある。このような観点から、研磨液に対しては、ストッパ材料に対する絶縁材料の優れた研磨選択性(研磨速度比:絶縁材料の研磨速度/ストッパ材料の研磨速度)を得ることが求められており、例えば、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性(研磨速度比:酸化珪素の研磨速度/窒化珪素の研磨速度)を得ることが求められている。
【0009】
本開示の一側面は、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得ることが可能な研磨液を提供することを目的とする。また、本開示の他の一側面は、当該研磨液を用いた研磨方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一側面は、4価金属元素の水酸化物を含む砥粒と、窒素原子に結合した炭素数6以上の炭化水素基を有する含窒素化合物と、を含有し、前記含窒素化合物が、第4級アンモニウム塩、第3級アミン、及び、複素環を構成する第4級窒素原子を有する複素環化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、研磨液に関する。
【0011】
本開示の他の一側面は、上述の研磨液を用いて被研磨面を研磨する工程を備える、研磨方法に関する。
【0012】
このような研磨液及び研磨方法によれば、窒化珪素に対して酸化珪素を選択的に除去することが可能であり、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本開示の一側面によれば、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得ることが可能な研磨液を提供することができる。また、本開示の他の一側面によれば、当該研磨液を用いた研磨方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施形態について詳細に説明する。
【0015】
<定義>
本明細書において、「研磨液」とは、研磨時に被研磨面に触れる組成物として定義される。「研磨液」という語句自体は、研磨液に含有される成分を何ら限定しない。後述するように、本実施形態に係る研磨液は砥粒(abrasive grain)を含有することができる。砥粒は、「研磨粒子」(abrasive particle)ともいわれるが、本明細書では「砥粒」という。砥粒は一般的には固体粒子であって、研磨時に、砥粒が有する機械的作用、及び、砥粒(主に砥粒の表面)の化学的作用によって除去対象物が除去(remove)されると考えられるが、研磨のメカニズムは限定されない。「研磨速度(Polishing Rate)」とは、単位時間当たりに材料が除去される速度(除去速度=Removal Rate)を意味する。
【0016】
「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。数値範囲の「A以上」とは、A、及び、Aを超える範囲を意味する。数値範囲の「A以下」とは、A、及び、A未満の範囲を意味する。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができる。本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。本明細書に例示する材料は、特に断らない限り、一種類を単独で用いてもよく、二種類以上を併用してもよい。組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。「A又はB」とは、A及びBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。「膜」との語は、平面図として観察したときに、全面に形成されている形状の構造に加え、一部に形成されている形状の構造も包含される。「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
【0017】
<研磨液>
本実施形態に係る研磨液は、4価金属元素の水酸化物を含む砥粒と、窒素原子に結合した炭素数6以上の炭化水素基を有する含窒素化合物と、を含有し、前記含窒素化合物が、第4級アンモニウム塩、第3級アミン、及び、複素環を構成する第4級窒素原子を有する複素環化合物(以下、場合により、当該複素環化合物を「複素環化合物X」という)からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む(以下、場合により、当該含窒素化合物を「含窒素化合物A」という)。本実施形態に係る研磨液は、CMP研磨液として用いることができる。本実施形態に係る研磨液は、酸化珪素及び窒化珪素を含む被研磨面(露出面)の研磨に用いることが可能であり、酸化珪素及び窒化珪素を含む被研磨面を研磨して、窒化珪素に対して酸化珪素を選択的に除去するために用いることができる。
【0018】
本実施形態に係る研磨液によれば、窒化珪素に対して酸化珪素を選択的に除去することが可能であり、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性(研磨速度比:酸化珪素の研磨速度/窒化珪素の研磨速度)を得ることができる。本実施形態に係る研磨液によれば、窒化珪素に対する酸化珪素の研磨速度比として10以上の研磨速度比を得ることができる。
【0019】
上述の効果が発現される理由は必ずしも明らかではないが、本発明者らは、以下のように推察している。すなわち、4価金属元素の水酸化物を含む砥粒は正のゼータ電位を有する傾向があるのに対し、酸化珪素は負のゼータ電位を有する傾向があることから、砥粒と酸化珪素との静電引力によって酸化珪素の研磨が促進される。一方、窒化珪素は正のゼータ電位を有する傾向があることから、砥粒と窒化珪素との静電反発力によって窒化珪素の研磨が抑制される。そして、含窒素化合物Aが、充分に嵩高い炭化水素基を有する第4級アンモニウム塩、第3級アミン又は複素環化合物Xを含むことにより、当該炭化水素基が疎水性相互作用により窒化珪素を被覆する。これにより窒化珪素の研磨が顕著に抑制される。以上の理由から、本実施形態に係る研磨液によれば、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得ることができる。但し、効果が発現する理由は当該内容に限定されない。
【0020】
窒化珪素に対する酸化珪素の研磨速度比は、30以上が好ましく、50以上がより好ましく、100以上が更に好ましく、200以上が特に好ましく、400以上が極めて好ましく、500以上が非常に好ましく、1000以上がより一層好ましい。窒化珪素に対する酸化珪素の研磨速度比は、5000以下、3000以下、又は、2000以下であってよい。
【0021】
(砥粒)
砥粒は、4価金属元素の水酸化物を含む。「4価金属元素の水酸化物」とは、4価の金属イオン(M4+)と、少なくとも1つの水酸化物イオン(OH-)とを含む化合物である。4価金属元素の水酸化物は、水酸化物イオン以外の陰イオン(例えば、硝酸イオンNO3
-及び硫酸イオンSO4
2-)を含んでいてもよい。例えば、4価金属元素の水酸化物は、4価金属元素に結合した陰イオン(例えば、硝酸イオンNO3
-及び硫酸イオンSO4
2-)を含んでいてもよい。
【0022】
4価金属元素の水酸化物を含む砥粒は、シリカ、セリア等からなる砥粒と比較して、絶縁材料である酸化珪素との反応性が高く、酸化珪素を高い研磨速度で研磨することができる。また、4価金属元素の水酸化物を含む砥粒によれば、被研磨面に傷がつくことを抑制しやすい。4価金属元素の水酸化物を含む砥粒以外の他の砥粒としては、例えば、シリカ、アルミナ、セリア等を含む砥粒が挙げられる。また、4価金属元素の水酸化物を含む砥粒として、4価金属元素の水酸化物とシリカとを含む複合粒子等を用いることもできる。
【0023】
4価金属元素の水酸化物は、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得やすい観点から、希土類金属元素の水酸化物及びジルコニウムの水酸化物からなる群より選択される少なくとも一種を含むことが好ましく、希土類金属元素の水酸化物を含むことがより好ましい。4価をとり得る希土類金属元素としては、セリウム、プラセオジム、テルビウム等のランタノイドなどが挙げられ、中でも、絶縁材料(酸化珪素等)の研磨速度を向上させやすい観点から、ランタノイドが好ましく、セリウムがより好ましい。換言すれば、砥粒は、4価金属元素の水酸化物として、セリウム水酸化物を含むことがより好ましい。希土類金属元素の水酸化物とジルコニウムの水酸化物とを併用してもよく、希土類金属元素の水酸化物から二種以上を選択して使用することもできる。
【0024】
4価金属元素の水酸化物を含む砥粒において、4価金属元素の水酸化物の含有量は、砥粒全体(研磨液に含まれる砥粒全体)を基準として、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上が更に好ましく、98質量%以上が特に好ましく、99質量%以上が極めて好ましい。研磨液の調製が容易であると共に研磨特性にも更に優れる観点から、砥粒が実質的に4価金属元素の水酸化物からなる(砥粒の実質的に100質量%が4価金属元素の水酸化物の粒子である)ことが最も好ましい。特に、砥粒におけるセリウム水酸化物の含有量が上述の範囲であることが好ましい。
【0025】
研磨液中における砥粒の平均粒径は、下記の範囲であることが好ましい。砥粒の平均粒径は、絶縁材料(酸化珪素等)の研磨速度を向上させやすい観点から、0.1nm以上が好ましく、0.5nm以上がより好ましく、1nm以上が更に好ましく、2nm以上が特に好ましく、3nm以上が極めて好ましく、5nm以上が非常に好ましく、10nm以上がより一層好ましく、12nm以上が更に好ましい。砥粒の平均粒径は、被研磨面に傷がつくことを更に抑制しやすい観点から、100nm以下が好ましく、50nm以下がより好ましく、30nm以下が更に好ましく、20nm以下が特に好ましく、15nm以下が極めて好ましく、12nm以下が非常に好ましい。これらの観点から、砥粒の平均粒径は、0.1~100nmが好ましい。
【0026】
研磨液中における砥粒の「平均粒径」とは、砥粒の平均二次粒径を意味する。砥粒の平均粒径は、光回折散乱式粒度分布計(例えば、ベックマン・コールター株式会社製、商品名:DelsaMax PROを用いて測定することができる。ベックマン・コールター株式会社製、商品名:DelsaMax PROを用いた測定方法は、具体的には例えば、研磨液を12.5mm×12.5mm×45mm(高さ)の測定用セルに約0.5mL(Lは「リットル」を示す。以下同じ)入れた後、装置内にセルを設置する。測定サンプル情報の屈折率を1.333、粘度を0.887mPa・sに設定し、25℃において測定を行い、Unimodal Size Mean(キュムラント径)として表示される値を砥粒の平均粒径として採用できる。
【0027】
研磨液中における砥粒のゼータ電位は、下記の範囲が好ましい。砥粒のゼータ電位は、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得やすい観点から、正である(0mVを超える)ことが好ましい。ゼータ電位(ζ[mV])は、ゼータ電位測定装置(例えば、ベックマン・コールター株式会社製のDelsaNano C(装置名))を用いて測定することができる。研磨液中の砥粒のゼータ電位は、例えば、研磨液を前記ゼータ電位測定装置用の濃厚セルユニット(高濃度サンプル用のセル)に入れて測定することにより得ることができる。
【0028】
砥粒の含有量は、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得やすい観点から、研磨液の全質量を基準として下記の範囲であることが好ましい。砥粒の含有量は、0.001質量%以上が好ましく、0.005質量%以上がより好ましく、0.01質量%以上が更に好ましく、0.03質量%以上が特に好ましく、0.04質量%以上が極めて好ましく、0.05質量%以上が非常に好ましい。砥粒の含有量は、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、1質量%以下が更に好ましく、0.5質量%以下が特に好ましく、0.1質量%以下が極めて好ましく、0.08質量%以下が非常に好ましく、0.05質量%以下がより一層好ましい。これらの観点から、砥粒の含有量は、0.001~10質量%が好ましい。
【0029】
(添加剤)
本実施形態に係る研磨液は、添加剤を含有する。「添加剤」とは、砥粒及び水以外に研磨液が含有する物質を指す。
【0030】
[含窒素化合物A]
本実施形態に係る研磨液は、窒素原子に結合した炭素数6以上の炭化水素基を有する含窒素化合物Aを含有し、含窒素化合物Aは、第4級アンモニウム塩、第3級アミン及び複素環化合物Xからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む。含窒素化合物Aは、窒素原子を1つ又は2つ以上有してよい。含窒素化合物Aが、窒素原子に結合した炭素数6以上の炭化水素基を有することなく、窒素原子に結合した炭素数6未満の炭化水素基を有する場合、充分な疎水性相互作用が得られないため、窒化珪素が充分に被覆されないことから、窒化珪素の研磨を抑制しにくい。
【0031】
含窒素化合物Aは、窒素原子に結合した炭素数6以上の炭化水素基を1つ又は2つ以上有してよい。含窒素化合物Aは、同一の窒素原子に結合した複数の炭化水素基を有してよい。炭化水素基は、鎖状、分岐状又は環状であってよい。窒素原子に結合した炭化水素同士が結合して環を形成してよい。炭化水素基が結合する窒素原子は、環を構成しない窒素原子であってよい。
【0032】
炭化水素基の炭素数は、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得やすい観点から、下記の範囲が好ましい。炭化水素基の炭素数は、7以上が好ましく、8以上がより好ましい。炭化水素基の炭素数は、20以下が好ましく、18以下がより好ましく、16以下が更に好ましく、14以下が特に好ましく、12以下が極めて好ましく、10以下が非常に好ましく、8以下がより一層好ましい。これらの観点から、炭化水素基の炭素数は、6~20が好ましく、6~18がより好ましい。
【0033】
炭化水素基としては、一価又は二価以上の炭化水素基を用いることができる。炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルキレン基、アリーレン基等が挙げられる。アルキル基としては、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、ステアリル基、ヤシアルキル基等が挙げられる。アルケニル基としては、オレイル基等が挙げられる。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基等が挙げられる。含窒素化合物Aは、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得やすい観点から、炭化水素基としてアルキル基を有する化合物を含むことが好ましい。含窒素化合物Aは、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得やすい観点から、炭化水素基としてアリール基を有する化合物を含むことが好ましい。
【0034】
炭化水素基は、置換基を有してよく(炭素原子及び水素原子以外の原子を含む置換基が炭化水素鎖に結合してよい)、置換基を有していなくてよい。置換基としては、ヒドロキシ基、アルコキシ基、カルボキシ基、カルボン酸塩基、スルホ基、スルホン酸塩基等が挙げられる。アリール基は、芳香環に結合した炭化水素基を有してもよい。炭化水素基が置換基を有さない場合、充分な疎水性相互作用が得られやすく、窒化珪素が充分に被覆されやすいため、窒化珪素の研磨を抑制しやすい。
【0035】
含窒素化合物Aは、炭素数6以上の炭化水素基が結合した窒素原子に結合する基として、例えば、炭素数1~5の炭化水素基(例えばメチル基);炭素原子及び水素原子以外の原子を含む基(ポリオキシアルキレン鎖;ヒドロキシエチル基等のヒドロキシアルキル基など)を有してよい。ポリオキシアルキレン鎖としては、ポリオキシエチレン鎖、ポリオキシプロピレン鎖、ポリオキシブチレン鎖等が挙げられる。含窒素化合物Aは、炭素数6以上の炭化水素基が結合した窒素原子に結合する上述の基を1つ、2つ又は3つ有してよい。
【0036】
含窒素化合物Aは、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得やすい観点から、炭素数6以上の炭化水素基が結合した窒素原子に結合する基として、炭素数1~5の炭化水素基、及び、炭素原子及び水素原子以外の原子を含む基からなる群より選ばれる少なくとも一種を有することが好ましく、メチル基、ポリオキシアルキレン鎖及びヒドロキシアルキル基からなる群より選ばれる少なくとも一種を有することがより好ましく、ポリオキシアルキレン鎖(窒素原子に結合したポリオキシアルキレン鎖)を有することが更に好ましく、ポリオキシエチレン鎖を有することが特に好ましい。
【0037】
含窒素化合物Aは、第4級アンモニウム塩(第4級アンモニウムカチオンと対アニオンとを有する化合物)を含んでよい。第4級アンモニウム塩は、第4級アンモニウムカチオンの第4級窒素原子に結合した炭素数6以上の炭化水素基を有してよく、1つ又は2つ以上の第4級アンモニウムカチオンを有する。第4級アンモニウム塩は、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得やすい観点から、対アニオンとして、ハロゲンイオンを含むことが好ましく、塩化物イオンを含むことがより好ましい。
【0038】
含窒素化合物Aが第4級アンモニウム塩を含む場合、含窒素化合物Aにおける第4級アンモニウム塩の含有量は、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得やすい観点から、含窒素化合物Aの全質量を基準として、50質量%以上が好ましく、50質量%を超えることがより好ましく、80質量%以上が更に好ましく、90質量%以上が特に好ましく、95質量%以上が極めて好ましく、98質量%以上が非常に好ましく、99質量%以上がより一層好ましい。含窒素化合物Aが実質的に第4級アンモニウム塩からなる(含窒素化合物Aの実質的に100質量%が第4級アンモニウム塩である)態様であってよい。
【0039】
含窒素化合物Aは、第3級アミン(第4級アンモニウム塩に該当する化合物を除く)を含んでよい。第3級アミンは、3つの炭素原子に結合した窒素原子を有する化合物であってよい。含窒素化合物Aは、第3級窒素原子に結合した炭素数6以上の炭化水素基を有してよい。第3級アミンは、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得やすい観点から、炭素数6以上の炭化水素基が結合した窒素原子に結合するポリオキシアルキレン鎖を1つ又は2つ以上有することが好ましく、炭素数6以上の炭化水素基が結合した窒素原子に結合するポリオキシエチレン鎖を1つ又は2つ以上有することがより好ましい。
【0040】
含窒素化合物Aが第3級アミンを含む場合、含窒素化合物Aにおける第3級アミンの含有量は、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得やすい観点から、含窒素化合物Aの全質量を基準として、50質量%以上が好ましく、50質量%を超えることがより好ましく、80質量%以上が更に好ましく、90質量%以上が特に好ましく、95質量%以上が極めて好ましく、98質量%以上が非常に好ましく、99質量%以上がより一層好ましい。含窒素化合物Aが実質的に第3級アミンからなる(含窒素化合物Aの実質的に100質量%が第3級アミンである)態様であってよい。
【0041】
含窒素化合物Aは、複素環を構成する第4級窒素原子を有する複素環化合物(複素環化合物X。第4級アンモニウム塩又は第3級アミンに該当する化合物を除く)を含んでよい。複素環化合物Xは、複素環(含窒素複素環)を構成する第4級窒素原子に結合した炭素数6以上の炭化水素基を有してよい。含窒素複素環としては、ピリジン環、イミダゾール環、ピロール環、ピリミジン環、ピロリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、ピラジン環等が挙げられる。含窒素化合物Aは、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得やすい観点から、複素環を構成する第4級窒素原子を有する複素芳香環化合物(複素芳香環を構成する第4級窒素原子を有する化合物)を含むことが好ましく、ピリジン化合物(ピリジン環を有する化合物)を含むことがより好ましい。
【0042】
含窒素化合物Aが複素環化合物Xを含む場合、含窒素化合物Aにおける複素環化合物Xの含有量は、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得やすい観点から、含窒素化合物Aの全質量を基準として、50質量%以上が好ましく、50質量%を超えることがより好ましく、80質量%以上が更に好ましく、90質量%以上が特に好ましく、95質量%以上が極めて好ましく、98質量%以上が非常に好ましく、99質量%以上がより一層好ましい。含窒素化合物Aが実質的に複素環化合物Xからなる(含窒素化合物Aの実質的に100質量%が複素環化合物Xである)態様であってよい。
【0043】
含窒素化合物Aの分子量は、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得やすい観点から、下記の範囲であることが好ましい。含窒素化合物Aの分子量は、100以上が好ましく、200以上がより好ましく、300以上が更に好ましく、500以上が特に好ましく、600以上が極めて好ましく、800以上が非常に好ましい。含窒素化合物Aの分子量は、5000以下が好ましく、4000以下がより好ましく、3000以下が更に好ましく、2000以下が特に好ましく、1000以下が極めて好ましく、900以下が非常に好ましい。これらの観点から、含窒素化合物Aの分子量は、100~5000が好ましい。
【0044】
第4級アンモニウム塩及び複素環化合物Xからなる群より選ばれる少なくとも一種における1分子あたりの第4級窒素原子の数は、1以上であり、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得やすい観点から、下記の範囲であることが好ましい。第4級窒素原子の数は、30以下が好ましく、20以下がより好ましく、10以下が更に好ましく、5以下が特に好ましく、3以下が極めて好ましく、2以下が非常に好ましい。これらの観点から、第4級窒素原子の数は、1~30が好ましい。
【0045】
含窒素化合物Aは、塩化ビス(ヒドロキシアルキル)アルキルメチルアンモニウム、塩化ビス(ポリオキシアルキレン)アルキルメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化アリールトリメチルアンモニウム、塩化アルキルピリジニウム、及び、アルキルアミンのアルキレンオキシド付加物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましく、塩化オレイルビス(2-ヒドロキシエチル)メチルアンモニウム、塩化ジポリオキシエチレンヤシアルキルメチルアンモニウム、塩化ヤシアルキルビス(2-ヒドロキシエチル)メチルアンモニウム、塩化フェニルトリメチルアンモニウム、塩化n-オクチルトリメチルアンモニウム、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、ステアリルアミンEO(エチレンオキシド)付加体、オレイルアミンEO(エチレンオキシド)付加体、及び、塩化1-ヘキサデカンピリジニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことがより好ましい。
【0046】
含窒素化合物Aの含有量は、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得やすい観点から、研磨液の全質量を基準として下記の範囲であることが好ましい。含窒素化合物Aの含有量は、0.001質量%以上が好ましく、0.005質量%以上がより好ましく、0.008質量%以上が更に好ましく、0.01質量%以上が特に好ましく、0.03質量%以上が極めて好ましい。含窒素化合物Aの含有量は、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、1質量%以下が更に好ましく、0.5質量%以下が特に好ましく、0.1質量%以下が極めて好ましく、0.08質量%以下が非常に好ましく、0.05質量%以下がより一層好ましく、0.04質量%以下が更に好ましく、0.03質量%以下が特に好ましい。これらの観点から、含窒素化合物Aの含有量は、0.001~10質量%が好ましい。同様の観点から、第4級アンモニウム塩の含有量、第3級アミンの含有量、及び/又は、複素環化合物Xの含有量は、研磨液の全質量を基準として、これらの数値範囲を満たすことが好ましい。
【0047】
砥粒の含有量に対する含窒素化合物Aの含有量の質量比率(含窒素化合物Aの含有量/砥粒の含有量)は、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得やすい観点から、下記の範囲であることが好ましい。質量比率は、20以下が好ましく、10以下がより好ましく、5以下が更に好ましく、3以下が特に好ましく、1以下が極めて好ましく、0.8以下が非常に好ましく、0.6以下がより一層好ましい。質量比率は、0.01以上が好ましく、0.05以上がより好ましく、0.1以上が更に好ましく、0.3以上が特に好ましく、0.4以上が極めて好ましく、0.5以上が非常に好ましく、0.6以上がより一層好ましい。これらの観点から、質量比率は、0.01~20が好ましい。同様の観点から、第4級アンモニウム塩の含有量の質量比率、第3級アミンの含有量の質量比率、及び/又は、複素環化合物Xの含有量の質量比率は、砥粒の含有量に対して、これらの質量比率を満たすことが好ましい。
【0048】
[酸成分]
本実施形態に係る研磨液は、酸成分(上述の含窒素化合物Aに該当する化合物を除く)を含有してよい。酸成分としては、カルボキシ基(-COOH)を有さない一価の酸成分(以下、場合により「酸成分A」という)、カルボキシ基を有する酸成分、二価以上の酸成分等が挙げられる。「カルボキシ基を有さない一価の酸成分」とは、分子内にカルボキシ基(水素原子が解離して得られるカルボキシレート基(-COO-)も包含する)を有さず、且つ、酸の価数が一価である酸成分を意味する。酸成分Aは、カルボキシ基及びカルボン酸塩基(カルボキシ基の水素原子が金属原子(ナトリウム原子、カリウム原子等)に置換された官能基)を有さない一価の酸成分であってよい。
【0049】
本実施形態に係る研磨液は、酸成分Aを含有することが好ましい。酸成分Aを用いることで、砥粒の凝集等を防ぎつつ、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得やすい。酸成分Aは、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得やすい観点から、有機酸成分(有機酸及び有機酸誘導体)を含むことが好ましく、スルホン酸化合物(スルホン酸及びスルホン酸塩)及びスルフィン酸化合物(スルフィン酸及びスルフィン酸塩)からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことがより好ましく、スルホン酸化合物を含むことが更に好ましい。スルホン酸塩及びスルフィン酸塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。
【0050】
酸成分Aは、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得やすい観点から、アミノスルホン酸及びアミノスルホン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも一種のアミノスルホン酸化合物を含むことが好ましい。アミノスルホン酸化合物は、カチオン部としてアミノ基を有し、アニオン部としてスルホン酸基又はスルホン酸塩基を有する。アミノスルホン酸化合物としては、芳香族アミノスルホン酸、脂肪族アミノスルホン酸、スルファミン酸、これらの塩等が挙げられる。
【0051】
芳香族アミノスルホン酸は、アミノ基と、スルホン酸基又はスルホン酸塩基と、を有する芳香族化合物(好ましくは芳香族炭化水素)として定義される。芳香族アミノスルホン酸としては、アミノベンゼンスルホン酸(スルファニル酸(別名:4-アミノベンゼンスルホン酸)、メタニル酸(別名:3-アミノベンゼンスルホン酸)、オルタニル酸(別名:2-アミノベンゼンスルホン酸)等)、ジアミノベンゼンスルホン酸(2,4-ジアミノベンゼンスルホン酸、3,4-ジアミノベンゼンスルホン酸等)、アミノナフタレンスルホン酸などが挙げられる。
【0052】
脂肪族アミノスルホン酸としては、アミノメタンスルホン酸、アミノエタンスルホン酸(例えば、1-アミノエタンスルホン酸、及び、2-アミノエタンスルホン酸(別名タウリン))、アミノプロパンスルホン酸(例えば、1-アミノプロパン-2-スルホン酸、及び、2-アミノプロパン-1-スルホン酸)等が挙げられる。
【0053】
酸成分Aは、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得やすい観点から、スルファニル酸、メタニル酸、スルファミン酸及びこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましく、スルファニル酸及びスルファニル酸塩を含むことがより好ましい。
【0054】
酸成分の含有量は、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得やすい観点から、研磨液の全質量を基準として下記の範囲であることが好ましい。酸成分の含有量は、0.001質量%以上が好ましく、0.005質量%以上がより好ましく、0.01質量%以上が更に好ましく、0.02質量%以上が特に好ましく、0.04質量%以上が極めて好ましく、0.06質量%以上が非常に好ましく、0.08質量%以上がより一層好ましい。酸成分の含有量は、1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.3質量%以下が更に好ましく、0.2質量%以下が特に好ましく、0.15質量%以下が極めて好ましく、0.12質量%以下が非常に好ましく、0.1質量%以下がより一層好ましく、0.09質量%以下が更に好ましく、0.08質量%以下が特に好ましい。これらの観点から、酸成分の含有量は、0.001~1質量%が好ましい。酸成分の含有量は、0.09質量%以上、0.1質量%以上、又は、0.12質量%以上であってよい。酸成分の含有量は、0.06質量%以下、又は、0.04質量%以下であってよい。同様の観点から、酸成分Aの含有量、及び/又は、スルホン酸化合物の含有量は、研磨液の全質量を基準として、これらの数値範囲を満たすことが好ましい。
【0055】
研磨液に含まれる酸成分における酸成分Aの含有量(基準:酸成分の全質量)、研磨液に含まれる酸成分におけるスルホン酸化合物の含有量(基準:酸成分の全質量)、及び/又は、酸成分Aにおけるスルホン酸化合物の含有量(基準:酸成分Aの全質量)は、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得やすい観点から、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上が更に好ましく、98質量%以上が特に好ましく、99質量%以上が極めて好ましい。研磨液に含まれる酸成分が実質的に酸成分Aからなる(研磨液に含まれる酸成分の実質的に100質量%が酸成分Aである)態様であってよい。研磨液に含まれる酸成分が実質的にスルホン酸化合物からなる(研磨液に含まれる酸成分の実質的に100質量%がスルホン酸化合物である)態様であってよい。酸成分Aが実質的にスルホン酸化合物からなる(酸成分Aの実質的に100質量%がスルホン酸化合物である)態様であってよい。本実施形態に係る研磨液は、カルボキシ基を有する酸成分を含有していなくてよい(研磨液の全質量を基準として、カルボキシ基を有する酸成分の含有量が実質的に0質量%であってよい)。本実施形態に係る研磨液は、二価以上の酸成分を含有していなくてよい(研磨液の全質量を基準として、二価以上の酸成分の含有量が実質的に0質量%であってよい)。
【0056】
砥粒の含有量に対する酸成分の含有量の質量比率(酸成分の含有量/砥粒の含有量)は、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得やすい観点から、下記の範囲であることが好ましい。質量比率は、5以下が好ましく、3以下がより好ましく、2以下が更に好ましく、1.8以下が特に好ましく、1.6以下が極めて好ましい。質量比率は、0.01以上が好ましく、0.05以上がより好ましく、0.1以上が更に好ましく、0.3以上が特に好ましく、0.4以上が極めて好ましく、0.5以上が非常に好ましく、0.8以上がより一層好ましく、1以上が更に好ましく、1.2以上が特に好ましく、1.5以上が極めて好ましく、1.6以上が非常に好ましい。これらの観点から、質量比率は、0.01~5が好ましい。質量比率は、1.5以下、1.2以下、1以下、0.8以下、0.5以下、又は、0.4以下であってよい。質量比率は、1.8以上、又は、2以上であってよい。同様の観点から、酸成分Aの含有量の質量比率、及び/又は、スルホン酸化合物の含有量の質量比率は、砥粒の含有量に対して、これらの質量比率を満たすことが好ましい。
【0057】
含窒素化合物Aの含有量に対する酸成分の含有量の質量比率(酸成分の含有量/含窒素化合物Aの含有量)は、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得やすい観点から、下記の範囲であることが好ましい。質量比率は、10以下が好ましく、8以下がより好ましく、5以下が更に好ましく、4以下が特に好ましく、3.5以下が極めて好ましく、3以下が非常に好ましい。質量比率は、0.01以上が好ましく、0.05以上がより好ましく、0.1以上が更に好ましく、0.5以上が特に好ましく、0.6以上が極めて好ましく、1以上が非常に好ましく、1.3以上がより一層好ましく、1.5以上が更に好ましく、2以上が特に好ましく、2.5以上が極めて好ましい。これらの観点から、質量比率は、0.01~10が好ましい。質量比率は、2.5以下、2以下、1.5以下、1.3以下、又は、1以下であってよい。質量比率は、3以上、3.5以上、又は、4以上であってよい。同様の観点から、酸成分Aの含有量の質量比率、及び/又は、スルホン酸化合物の含有量の質量比率は、含窒素化合物Aの含有量に対して、これらの質量比率を満たすことが好ましい。
【0058】
[塩基成分]
本実施形態に係る研磨液は、塩基成分(上述の含窒素化合物Aに該当する化合物を除く)を含有してよい。研磨液が酸成分(例えば酸成分A)及び塩基成分を含有する場合、pH緩衝効果が得られる傾向があるため、研磨液のpHが安定化しやすいことから、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得やすい。塩基成分としては、アミノ基を有する化合物(複素環式アミン、アルキルアミン等)、アンモニア、水酸化ナトリウムなどが挙げられる。両性化合物に関しては、当該化合物の等電点(pI)が4.5を超える場合、当該化合物を塩基成分として扱うものとする。等電点が4.5を超える化合物としては、グリシン等が挙げられる。塩基成分は、研磨液のpHが更に安定化しやすい観点から、アミノ基を有する化合物を含むことが好ましく、複素環式アミンを含むことがより好ましい。
【0059】
複素環式アミンは、少なくとも1つの複素環を有するアミンである。複素環式アミンとしては、ピロリジン環、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアジン環、テトラジン環等を有する化合物などが挙げられる。塩基成分は、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得やすい観点から、ピラゾール化合物(ピラゾール環を有する化合物)を含むことが好ましく、ジメチルピラゾールを含むことがより好ましく、3,5-ジアルキルピラゾールを含むことが更に好ましい。
【0060】
塩基成分の含有量は、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得やすい観点から、研磨液の全質量を基準として下記の範囲であることが好ましい。塩基成分の含有量は、0.001質量%以上が好ましく、0.003質量%以上がより好ましく、0.005質量%以上が更に好ましく、0.008質量%以上が特に好ましく、0.01質量%以上が極めて好ましく、0.03質量%以上が非常に好ましく、0.05質量%以上がより一層好ましい。塩基成分の含有量は、1質量%以下が好ましく、0.8質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下が更に好ましく、0.3質量%以下が特に好ましく、0.2質量%以下が極めて好ましく、0.1質量%以下が非常に好ましく、0.08質量%以下がより一層好ましく、0.05質量%以下が更に好ましい。これらの観点から、塩基成分の含有量は、0.001~1質量%が好ましい。本実施形態に係る研磨液は、塩基成分を含有していなくてもよい(塩基成分の含有量が実質的に0質量%であってよい)。
【0061】
本実施形態に係る研磨液が酸成分及び塩基成分を含有する場合、酸成分の含有量に対する塩基成分の含有量の質量比率(塩基成分の含有量/酸成分の含有量)は、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得やすい観点から、下記の範囲が好ましい。質量比率は、0.01以上が好ましく、0.05以上がより好ましく、0.1以上が更に好ましく、0.3以上が特に好ましく、0.4以上が極めて好ましく、0.5以上が非常に好ましく、0.8以上がより一層好ましく、1以上が更に好ましく、1.2以上が特に好ましく、1.5以上が極めて好ましく、1.6以上が非常に好ましい。質量比率は、5以下が好ましく、3以下がより好ましく、2以下が更に好ましく、1.8以下が特に好ましく、1.6以下が極めて好ましい。これらの観点から、質量比率は、0.01~5が好ましい。質量比率は、1.8以上、又は、2以上であってよい。質量比率は、1.5以下、1.2以下、1以下、0.8以下、0.5以下、又は、0.4以下であってよい。同様の観点から、酸成分Aの含有量の質量比率、及び/又は、スルホン酸化合物の含有量の質量比率は、塩基成分の含有量に対して、これらの質量比率を満たすことが好ましい。
【0062】
[その他の添加剤]
本実施形態に係る研磨液は、任意の添加剤(上述の含窒素化合物A、酸成分又は塩基成分に該当する化合物を除く)を含有してよい。任意の添加剤としては、ノニオン性ポリマー(非イオン性ポリマー)、酸化剤(過酸化水素等)、アルコール(トリエチロールエタン、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール等)、含窒素化合物A以外の含窒素化合物などが挙げられる。「ノニオン性ポリマー」とは、陽イオン基、及び、陽イオン基にイオン化され得る基、並びに、陰イオン基、及び、陰イオンにイオン化され得る基を主鎖又は側鎖に有さないポリマーである。陽イオン基としては、アミノ基、イミノ基、シアノ基等が挙げられ、陰イオン基としては、カルボキシ基、リン酸基、スルホン酸基等が挙げられる。ノニオン性ポリマーは、同一種の構造単位(繰り返し単位)を複数有する。本実施形態に係る研磨液は、ノニオン性ポリマーを含有していなくてよい(研磨液の全質量を基準として、ノニオン性ポリマーの含有量が実質的に0質量%であってよい)。
【0063】
(水)
本実施形態に係る研磨液は、水を含有することができる。水としては、脱イオン水、超純水等が挙げられる。水の含有量は、他の構成成分の含有量を除いた研磨液の残部でよい。
【0064】
(pH)
本実施形態に係る研磨液のpHは、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得やすい観点から、4.5以下が好ましく、4.4以下がより好ましく、4.2以下が更に好ましく、4.1以下が特に好ましく、4.0以下が極めて好ましく、3.8以下が非常に好ましい。研磨液のpHは、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得やすい観点から、1.0以上が好ましく、1.5以上がより好ましく、2.0以上が更に好ましく、2.5以上が特に好ましく、3.0以上が極めて好ましく、3.5以上が非常に好ましく、3.6以上がより一層好ましく、3.7以上が更に好ましく、3.8以上が特に好ましい。これらの観点から、研磨液のpHは、1.0~4.5が好ましい。研磨液のpHは、液温25℃におけるpHと定義する。
【0065】
本実施形態に係る研磨液のpHは、pHメータ(例えば、株式会社堀場製作所(HORIBA,Ltd.)製Model D-51)を用いて測定することができる。例えば、フタル酸塩pH緩衝液(pH:4.01)、中性リン酸塩pH緩衝液(pH:6.86)及びホウ酸塩pH緩衝液(pH:9.18)を標準緩衝液として用いてpHメータを3点校正した後、pHメータの電極を研磨液に入れて、3分間以上経過して安定した後の値を測定する。標準緩衝液及び研磨液の液温は、共に25℃とする。
【0066】
本実施形態に係る研磨液は、4価金属元素の水酸化物を含む砥粒、及び、含窒素化合物Aを少なくとも含む一液式研磨液として保存してもよく、スラリ(第1の液)と添加液(第2の液)とを混合して上述の研磨液となるように上述の研磨液の構成成分をスラリと添加液とに分けた複数液式(例えば二液式)の研磨液セットとして保存してもよい。スラリは、例えば、砥粒及び水を少なくとも含む。添加液は、例えば、含窒素化合物A及び水を少なくとも含む。酸成分、塩基成分、その他の添加剤等は、スラリ及び添加液のうち添加液に含まれることが好ましい。上述の研磨液の構成成分は、三液以上に分けた研磨液セットとして保存してもよい。
【0067】
上述の研磨液セットにおいては、研磨直前又は研磨時に、スラリ及び添加液が混合されて研磨液が作製される。一液式研磨液は、水の含有量を減じた研磨液用貯蔵液として保存されると共に、研磨時に水で希釈して用いられてもよい。複数液式の研磨液セットは、水の含有量を減じたスラリ用貯蔵液及び添加液用貯蔵液として保存されると共に、研磨時に水で希釈して用いられてもよい。
【0068】
<研磨方法>
本実施形態に係る研磨方法は、本実施形態に係る研磨液を用いて被研磨面を研磨する研磨工程を備える。研磨工程では、被研磨面の被研磨材料を研磨して除去する。被研磨面は、酸化珪素及び窒化珪素を含んでよい。すなわち、被研磨面は、酸化珪素からなる被研磨部、及び、窒化珪素からなる被研磨部を有してよい。研磨工程は、本実施形態に係る研磨液を用いて、酸化珪素及び窒化珪素を含む被研磨面を研磨して、窒化珪素に対して酸化珪素を選択的に除去する工程であってよい。研磨工程において用いる研磨液としては、上述の一液式研磨液であってもよく、上述の研磨液セットにおけるスラリと添加液とを混合して得られる研磨液であってもよい。
【0069】
研磨工程では、例えば、基体の被研磨面を研磨定盤の研磨パッド(研磨布)に押圧した状態で、上述の研磨液を被研磨面と研磨パッドとの間に供給し、基体と研磨定盤とを相対的に動かして被研磨面を研磨する。
【0070】
研磨対象である基体としては、被研磨基板等が挙げられる。被研磨基板としては、例えば、半導体製造に係る基板(例えば、STIパターン、ゲートパターン、配線パターン等が形成された半導体基板)上に被研磨材料が形成された基体が挙げられる。被研磨基板の被研磨部は、酸化珪素及び窒化珪素を含んでよい。被研磨部は、膜状(被研磨膜)であってよく、酸化珪素膜、窒化珪素膜等であってよい。
【0071】
本実施形態に係る研磨方法において、研磨装置としては、被研磨面を有する基体を保持可能なホルダーと、研磨パッドを貼り付け可能な研磨定盤とを有する一般的な研磨装置を使用できる。ホルダー及び研磨定盤のそれぞれには、回転数が変更可能なモータ等が取り付けてあってもよい。研磨装置としては、例えば、APPLIED MATERIALS社製の研磨装置:Reflexionを使用できる。
【0072】
研磨パッドとしては、一般的な不織布、発泡体、非発泡体等が使用できる。研磨パッドの材質としては、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリエステル、アクリル-エステル共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ4-メチルペンテン、セルロース、セルロースエステル、ポリアミド(例えば、ナイロン(商標名)及びアラミド)、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリシロキサン共重合体、オキシラン化合物、フェノール樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、エポキシ樹脂等の樹脂が使用できる。
【実施例】
【0073】
以下、実施例により本開示を更に詳しく説明する。但し、本開示の技術思想を逸脱しない限り、本開示はこれらの実施例に制限されるものではない。例えば、研磨液の材料の種類及びその配合比率は、本実施例に記載の種類及び比率以外の種類及び比率でも差し支えなく、研磨対象の組成及び構造も、本実施例に記載の組成及び構造以外の組成及び構造でも差し支えない。
【0074】
<砥粒の準備>
350gのCe(NH4)2(NO3)650質量%水溶液(日本化学産業株式会社製、商品名:CAN50液)を7825gの純水と混合して溶液を得た。次いで、この溶液を撹拌しながら、750gのイミダゾール水溶液(10質量%水溶液、1.47mol/L)を5mL/分の混合速度で滴下して、セリウム水酸化物を含む沈殿物を得た。セリウム水酸化物の合成は、温度25℃、撹拌速度400min-1で行った。撹拌は、羽根部全長5cmの3枚羽根ピッチパドルを用いて行った。
【0075】
得られた沈殿物(セリウム水酸化物を含む沈殿物)を遠心分離(4000min-1、5分間)した後に、デカンテーションで液相を除去することによって固液分離を施した。固液分離により得られた粒子10gと、水990gと、を混合した後、超音波洗浄機を用いて粒子を水に分散させて、セリウム水酸化物を含む砥粒を含有するセリウム水酸化物スラリ(砥粒の含有量:1.0質量%)を調製した。
【0076】
<平均粒径の測定>
ベックマン・コールター株式会社製、商品名:N5を用いてセリウム水酸化物スラリにおける砥粒(セリウム水酸化物を含む砥粒)の平均粒径を測定したところ、3nmであった。測定方法は下記のとおりである。まず、1.0質量%の砥粒を含む測定サンプル(セリウム水酸化物スラリ、水分散液)を1cm角のセルに約1mL入れ、N5内にセルを設置した。N5ソフトの測定サンプル情報の屈折率を1.333、粘度を0.887mPa・sに設定し、25℃において測定を行った。
【0077】
<砥粒の構造分析>
セリウム水酸化物スラリを適量採取し、真空乾燥して砥粒を単離した後に、純水で充分に洗浄して試料を得た。得られた試料について、FT-IR ATR法による測定を行ったところ、水酸化物イオン(OH-)に基づくピークの他に、硝酸イオン(NO3
-)に基づくピークが観測された。また、同試料について、窒素に対するXPS(N-XPS)測定を行ったところ、NH4
+に基づくピークは観測されず、硝酸イオンに基づくピークが観測された。これらの結果より、セリウム水酸化物スラリに含まれる砥粒は、セリウム元素に結合した硝酸イオンを有する粒子を少なくとも一部含有することが確認された。また、セリウム元素に結合した水酸化物イオンを有する粒子が砥粒の少なくとも一部に含有されることから、砥粒がセリウム水酸化物を含むことが確認された。これらの結果より、セリウムの水酸化物が、セリウム元素に結合した水酸化物イオンを含むことが確認された。
【0078】
<CMP研磨液の調製>
(実施例1)
塩化オレイルビス(2-ヒドロキシエチル)メチルアンモニウム[含窒素化合物、ライオン株式会社製、商品名:リポソカードO/12]0.3質量%、スルファニル酸0.8質量%、3,5-ジメチルピラゾール0.5質量%及び水(残部)を含有する添加液100gと、水850gと、上述のセリウム水酸化物スラリ50gとを混合することにより、セリウム水酸化物を含む砥粒を0.05質量%、塩化オレイルビス(2-ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムを0.03質量%、スルファニル酸を0.08質量%、3,5-ジメチルピラゾールを0.05質量%含有するCMP研磨液を調製した。
【0079】
(実施例2~10及び比較例1~3)
含窒素化合物の種類及び酸成分の含有量を変更したこと以外は実施例1と同様にして、表1に示す組成を有するCMP研磨液を調製した。比較例1では、第4級アンモニウム塩、第3級アミン、及び、複素環を構成する第4級窒素原子を有する複素環化合物のいずれも用いなかった。
【0080】
表中の含窒素化合物N1~N10及びX1~X2は以下のとおりである。表中の含窒素化合物及び他の成分の混合物である商品を用いた場合には、含窒素化合物が表1の含有量を満たすように調整した。
【0081】
N1:塩化オレイルビス(2-ヒドロキシエチル)メチルアンモニウム[炭化水素基の炭素数:18、ライオン株式会社製、商品名:リポソカードO/12]
N2:塩化ジポリオキシエチレンヤシアルキルメチルアンモニウム[炭化水素基の炭素数:8~18、ライオン株式会社製、商品名:リポソカードC/25]
N3:塩化ヤシアルキルビス(2-ヒドロキシエチル)メチルアンモニウム[炭化水素基の炭素数:8~18、ライオン株式会社製、商品名:リポソカードC/12]
N4:塩化フェニルトリメチルアンモニウム[炭化水素基の炭素数:6、東京化成工業株式会社製]
N5:塩化n-オクチルトリメチルアンモニウム[炭化水素基の炭素数:8、東京化成工業株式会社製]
N6:塩化ドデシルトリメチルアンモニウム[炭化水素基の炭素数:12、東京化成工業株式会社製]
N7:塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム[炭化水素基の炭素数:16、東京化成工業株式会社製]
N8:ポリオキシエチレンステアリルアミン[炭化水素基の炭素数:18、日油株式会社製、商品名:ナイミーンS-220]
N9:ポリオキシエチレンオレイルアミン[炭化水素基の炭素数:18、日油株式会社製、商品名:ナイミーンO-205]
N10:塩化1-ヘキサデカンピリジニウム[炭化水素基の炭素数:16、東京化成工業株式会社製]
X1:塩化コリン[炭化水素基の炭素数:2、東京化成工業株式会社製]
X2:塩化テトラメチルアンモニウム[炭化水素基の炭素数:1、東京化成工業株式会社製]
【0082】
<評価>
(CMP研磨液のpH)
実施例1~10及び比較例1~3のCMP研磨液のpHを以下の条件により測定したところ、3.8であった。
測定温度:25℃
測定装置:株式会社堀場製作所(HORIBA,Ltd.)製Model D-51
測定方法:標準緩衝液(フタル酸塩pH緩衝液、pH:4.01(25℃);中性リン酸塩pH緩衝液、pH:6.86(25℃);ホウ酸塩pH緩衝液、pH:9.18(25℃))を用いて3点校正した後、電極をCMP研磨液に入れて、3分間以上経過して安定した後のpHを上述の測定装置により測定した。
【0083】
(CMP研磨液中における砥粒のゼータ電位)
ベックマン・コールター株式会社製のDelsaNano C(装置名)を用いて実施例のCMP研磨液中における砥粒のゼータ電位を確認したところ、正のゼータ電位であることが確認された。
【0084】
(砥粒の粒径)
実施例1~10及び比較例1~3のCMP研磨液中の砥粒(セリウム水酸化物を含む砥粒)の平均粒径を下記の条件で測定したところ、12nmであった。
測定温度:25℃
測定装置:ベックマン・コールター株式会社製、商品名:DelsaMax PRO
測定方法:CMP研磨液を12.5mm×12.5mm×45mm(高さ)の測定用セル(ディスポーサブルマイクロキュベット)に約0.5mL入れた後、DelsaMax PROにセルを設置した。測定サンプル情報の屈折率を1.333、粘度を0.887mPa・sに設定し、25℃において測定を行い、Unimodal Size Mean(キュムラント径)として表示される値を読み取った。
【0085】
(研磨速度)
上述のCMP研磨液を用いて下記ブランケットウエハを下記CMP研磨条件で研磨した。
【0086】
[ブランケットウエハ]
厚さ1000nmの酸化珪素膜をシリコン基板(直径:300mm)上に有するブランケットウエハ
厚さ250nmの窒化珪素膜をシリコン基板(直径:300mm)上に有するブランケットウエハ
【0087】
[CMP研磨条件]
研磨装置:Reflexion(APPLIED MATERIALS社製)
CMP研磨液流量:200mL/分
被研磨基板:上述のブランケットウエハ
研磨パッド:独立気泡を有する発泡ポリウレタン樹脂(ROHM AND HAAS ELECTRONIC MATERIALS CMP INC.製、型番IC1010)
研磨圧力:13.8kPa(2.0psi)
被研磨基板と研磨定盤との相対速度:100.5m/分
研磨時間:60秒間
ウエハの洗浄:CMP処理後、超音波を印加しながら水で洗浄を行った後、スピンドライヤで乾燥させた。
【0088】
[研磨速度及び研磨速度比の算出]
フィルメトリクス株式会社製の光干渉式膜厚測定装置(装置名:F80)を用いて、研磨前後の被研磨膜(酸化珪素膜及び窒化珪素膜)の膜厚を65点測定した。膜厚の65点の測定は、ウエハの中心を含む直線上において、ウエハの中心を基準として、149mm、148mm、147mm及び145mmの位置と、145mmから-145mmまでの間の5mm毎の位置(140mm、135mm、…、-135mm、-140mm)と、-145mm、-147mm、-148mm及び-149mmの位置とで行った(ウエハの中心を基準として、プラスの距離とは反対側の距離をマイナスで表記)。65点の膜厚の平均値を用いて膜厚の変化量を算出した。膜厚の変化量と研磨時間とに基づき、下記式により被研磨材料の研磨速度(酸化珪素の研磨速度RO及び窒化珪素の研磨速度RN)を算出した。また、窒化珪素の研磨速度RNに対する酸化珪素の研磨速度ROの研磨速度比(RO/RN)を算出した。結果を表1に示す。
研磨速度[nm/min]=(研磨前の膜厚[nm]-研磨後の膜厚[nm])/研磨時間[min]
【0089】
【0090】
実施例では、窒化珪素の研磨速度RNに対する酸化珪素の研磨速度ROの研磨速度比(RO/RN)が10以上であり、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性が得られることが確認された。