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  • 特許-光学積層体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】光学積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20221213BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20221213BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20221213BHJP
   G02B 1/14 20150101ALI20221213BHJP
   G02B 1/18 20150101ALI20221213BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20221213BHJP
   G02F 1/1333 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
B32B27/00 101
B32B27/30 D
B32B27/18 Z
G02B1/14
G02B1/18
G02B5/30
G02F1/1333
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020559459
(86)(22)【出願日】2020-01-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-19
(86)【国際出願番号】 KR2020000613
(87)【国際公開番号】W WO2020149597
(87)【国際公開日】2020-07-23
【審査請求日】2020-11-02
(31)【優先権主張番号】10-2019-0004839
(32)【優先日】2019-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、ハ ヌル
(72)【発明者】
【氏名】リー、ウン ソン
(72)【発明者】
【氏名】バク、スンギル
(72)【発明者】
【氏名】キム、セ ジェオン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ウー ハン
(72)【発明者】
【氏名】チョイ、ヨンキュ
【審査官】増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-534168(JP,A)
【文献】特開2017-033031(JP,A)
【文献】特開2018-092146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B05D 1/00-7/26
C08J 7/04
G02B 1/14
G02B 1/18
G02B 5/30
G02F 1/1333
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
30~100μmの厚さを有する支持基材層;
前記支持基材層の両面にそれぞれ位置し60~100μmの厚さを有するハードコーティング層;および
前記ハードコーティング層の少なくともいずれか一面に位置し10nm~5μmの厚さを有する指紋防止層を含み、
前記指紋防止層は、バインダー樹脂と、エポキシ基、(メタ)アクリルオキシ基、メルカプト基およびアミノ基からなる群より選択された少なくとも1種の有機官能基を有する有機シラン化合物との硬化物を含み、
前記ハードコーティング層は、下記化学式1のエポキシポリシロキサンを含む、光学積層体:
[化学式1]
(RSiO3/2(RSiO3/2(OR)
上記化学式1中、
は、下記化学式2で表されるグリシジル基;またはグリシドキシプロピル基であり、
[化学式2]
【化4】
上記化学式2中、
R'はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン基、炭素数1~4のアルキル基、ヒドロキシ基、炭素数1~4のアルコキシ基、アクリル基、メタクリル基、エーテル基、エステル基、アセチル基、ホルミル基、およびカルボキシル基からなる群より選択され、
R"は、炭素数1~4のアルキレン基であり、
は、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数3~20のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数2~20のアルケニル基、置換もしくは非置換の炭素数2~20のアルキニル基、置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリール基、置換もしくは非置換の炭素数7~20のアリールアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数7~20のアルキルアリール基、エポキシ基、および水素原子からなる群より選択され、
Rは、水素原子、または炭素数1~20のアルキル基であり、
0<a<1、0≦b<1かつ0<c<1である。
【請求項2】
前記有機シラン化合物は、前記バインダー樹脂および有機シラン化合物を含む組成物の総重量を基準にして0.1~5.0重量%を含む、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項3】
前記バインダー樹脂は、パーフルオロポリエーテル化合物およびフルオロ変性シリコン化合物からなる群より選択される1種以上である、請求項1または2に記載の光学積層体。
【請求項4】
前記化学式中、0.7≦a/(a+b)≦1であり、0≦b<0.5かつ0<c<0.5である、請求項1から3の何れか一項に記載の光学積層体。
【請求項5】
前記化学式2中、前記R'がそれぞれ独立して水素原子であり、R"がメチレン基である、請求項1から4の何れか一項に記載の光学積層体。
【請求項6】
前記化学式1中、前記Rは、炭素数1~12のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、ヒドロキシ基、炭素数1~12のアルコキシ基、アミノ基、アクリル基、メタクリル基、ハロゲン基、メルカプト基、エーテル基、エステル基、アセチル基、ホルミル基、カルボキシル基、ニトロ基、スルホニル基、ウレタン基、エポキシ基、オキセタン基およびフェニル基からなる群より選択される1種以上の置換基で置換された、請求項1から5の何れか一項に記載の光学積層体。
【請求項7】
前記ハードコーティング層は、炭素数1~20のアルカンジオール、ポリオレフィンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリエーテルポリオールおよびポリカーボネートポリオールからなる群より選択された1種以上を含む弾性重合体をさらに含む、請求項1から6の何れか一項に記載の光学積層体。
【請求項8】
前記弾性重合体は、ポリカプロラクトンポリオールを含む、請求項7に記載の光学積層体。
【請求項9】
前記ハードコーティング層は、前記化学式1のエポキシポリシロキサンと架橋可能な官能基を1以上含む反応性モノマー;をさらに含む、請求項1から8の何れか一項に記載の光学積層体。
【請求項10】
前記反応性モノマーは、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、4-ビニルシクロヘキセンジオキシド、シクロヘキセンビニルモノオキシド、(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート、3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-1,3-ジオキソラン、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、p-ブチルフェノールグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、クレシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、リモネンジオキシド、ビニルシクロヘキセンジオキシド、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、3-メチルオキセタン、2-メチルオキセタン、3-オキセタノール、2-メチレンオキセタン、3-メチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、3,3-オキセタンジメタンチオール、2-エチルヘキシルオキセタン、4-(3-メチルオキセタン-3-イル)ベンゾニトリル、N-(2,2-ジメチルプロピル)-3-メチル-3-オキセタンメタンアミン、N-(1,2-ジメチルブチル)-3-メチル-3-オキセタンメタンアミン、キシレンビスオキセタン、3-エチル-3[{(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ}メチル]オキセタン、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチルメタクリレート、および4-[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]ブタン-1-オルからなる群より選択されるいずれか一つまたは二つ以上の混合物を含む、請求項9に記載の光学積層体。
【請求項11】
前記支持基材層は、ポリエステル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミド-イミド樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂およびスルホン系樹脂からなる群より選択された1種以上の樹脂を含む、請求項1から10の何れか一項に記載の光学積層体。
【請求項12】
ディスプレイ装置のカバーウィンドウとして使用される、請求項1から11の何れか一項に記載の光学積層体。
【請求項13】
請求項1から12の何れか一項に記載の光学積層体を含む、偏光板。
【請求項14】
請求項1から13の何れか一項に記載の光学積層体を含むディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
【0002】
本出願は2019年1月14日付韓国特許出願第10-2019-0004839号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願らの文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0003】
本発明は、優れた耐指紋性および高硬度特性と共に、改善された接着力および耐スクラッチ性を示す光学積層体に関するものである。
【背景技術】
【0004】
最近、スマートフォン、タブレットPCのようなモバイル機器の発展と共にディスプレイ用基材の薄膜化およびスリム化が要求されている。このようなモバイル機器のディスプレイ用ウィンドウまたは前面板には機械的特性に優れた素材としてガラスまたは強化ガラスが一般に使用されている。しかし、ガラスおよび強化ガラスは自体の重量が重いためモバイル機器の高重量化を招き、また、外部衝撃によって破損しやすい問題があり、柔軟性が低いためフレキシブルまたはフォルダブルディスプレイ機器に適用するには限界がある。
【0005】
このようなガラスを代替するための素材としてプラスチック樹脂が研究されている。プラスチック樹脂は軽量でありながらも壊れる恐れが少なく、柔軟性を有するためモバイル機器の軽量化および柔軟化に一層適合する。代表的に、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアクリレート(PAR)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)などが使用されているが、これらプラスチック樹脂を用いた基板の場合、硬度および耐スクラッチ性がガラス素材に比べて不足するという問題がある。これにより、プラスチック樹脂基板に樹脂組成物をコーティングしてハードコーティング層を形成することによって高硬度および耐摩耗性を補完しようとする方法が試みられている。
【0006】
一例として、フォルダブル用ディスプレイ基材に対するハードコーティング用として主にUV硬化の可能なアクリレート系樹脂が使用されている。しかし、前記アクリレート系樹脂は、硬化時に収縮率が高く、その結果カール(curl)が激しく発生するため両面コーティングや薄いコーティングで行われなければならない。
【0007】
また、フォルダブル用ディスプレイ基材に対するハードコーティングとして、単面コーティングを行う場合、支持基材との熱変形率差によって、耐熱耐湿条件で曲げ現象が発生した。これにより、基材の両面にハードコーティング層を形成する方法が提案されたが、フレキシブルディスプレイに適用するには柔軟性が十分でないという問題点があった。
【0008】
また、従来にハードコーティングに耐指紋性を付与するためにハードコーティング層に耐指紋性付与のためのフッ素系含有化合物、無機質微粒子、導電性微粒子、レベリング剤などの添加剤をハードコーティング層に添加する方法を提案している。
【0009】
しかし、耐指紋付与のための添加剤の添加によって、ハードコーティング層の表面硬度および硬化密度低下、コーティング品質の不安定などを引き起こすことがあり、これは製品の耐久性と関連する。
【0010】
これにより、優れた柔軟性と曲げ特性を維持しながらも耐指紋性を示すことができるハードコーティング材料と光学積層体の開発が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、従来に比べて同等以上の柔軟性および曲げ特性を示し、優れた耐指紋性および高硬度特性と共に、特に接着力および耐スクラッチ性が向上して、強化ガラスカバーウィンドウを代替することができる光学積層体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本明細書では、
30~100μmの厚さを有する支持基材層;
前記支持基材層の両面にそれぞれ位置し60~100μmの厚さを有するハードコーティング層;および
前記ハードコーティング層の少なくともいずれか一面に位置し10nm~5μmの厚さを有する指紋防止層を含み、
前記指紋防止層は、バインダー樹脂と、エポキシ基、(メタ)アクリルオキシ基、メルカプト基およびアミノ基からなる群より選択された少なくとも1種の有機官能基を有する有機シラン化合物との硬化物を含む、光学積層体を提供する。
【0013】
また、本明細書では、前記光学積層体を含む偏光板を提供する。
また、本明細書では、前記光学積層体を含むディスプレイ装置を提供する。
【0014】
以下、発明の具体的な実施形態による光学積層体およびその製造方法、そしてその適用についてより詳しく説明する。
【0015】
但し、これは発明の一つの例示として提示されるものであって、これによって発明の権利範囲が限定されるのではなく、発明の権利範囲内で実施形態に対する多様な変形が可能であるのは当業者に自明である。
【0016】
本明細書で明示的な言及がない限り、専門用語は単に特定実施例を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。
本明細書で使用される単数形態は、文句がこれと明確に反対の意味を示さない限り複数形態も含む。
【0017】
本明細書で使用される"含む"の意味は特定特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特定特性、領域、整数、段階、動作、要素、成分および/または群の存在や付加を除外させるのではない。
【0018】
また、本明細書で、重量平均分子量は、GPC法によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(単位:g/mol)を意味する。前記GPC法によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を測定する過程では、通常知られた分析装置と示差屈折検出器(Refractive Index Detector)などの検出器および分析用カラムを使用することができ、通常適用される温度条件、溶媒、flow rateを適用することができる。前記測定条件の具体的な例として、30℃の温度、クロロホルム溶媒(Chloroform)および1mL/minのflow rateが挙げられる。
【0019】
また、本発明で光学積層体は、フィルムの基材になる透明支持基材層の少なくともいずれか一面以上にハードコーティング層が形成されたハードコーティングフィルムにおいて、前記ハードコーティング層の少なくともいずれか一面に指紋防止層を1層以上含む構造であってもよい。好ましい一例として、前記ハードコーティング層は支持基材層の両面にそれぞれ配置することができ、1層以上形成できる。
【0020】
発明の一実施形態によれば、30~100μmの厚さを有する支持基材層;前記支持基材層の両面にそれぞれ位置し60~100μmの厚さを有するハードコーティング層;および前記ハードコーティング層の少なくともいずれか一面に位置し10nm~5μmの厚さを有する指紋防止層を含み、前記指紋防止層は、バインダー樹脂と、エポキシ基、(メタ)アクリルオキシ基、メルカプト基およびアミノ基からなる群より選択された少なくとも1種の有機官能基を有する有機シラン化合物との硬化物を含む、光学積層体を提供することができる。
【0021】
具体的に、前記光学積層体は、ハードコーティングフィルムの基材になる層である透明基材層の一面以上にハードコーティング層と、前記ハードコーティング層上の少なくともいずれか一面に形成されハードコーティング層との接着力増加および汚染防止機能性を有する指紋防止層を含むことを特徴とする。
【0022】
好ましく、前記ハードコーティング層は透明支持基材層の両面に形成されるのが好ましく、前記指紋防止層は前記支持基材層の上部面に形成された上部コーティング層上に形成されるのが好ましい。
【0023】
前記光学積層体は、支持基材層を基準にしてその上部および下部コーティング層に特定組成の樹脂層を含むことによって、優れた硬度特性と改善された柔軟性および曲げ特性を付与する。また、本発明は、このような構造で前記上部コーティング層上に、指紋防止層(Anti-Finger layer)をさらに含むことによって、優れた耐指紋性と耐摩耗性(耐スクラッチ性)を付与することができる。
【0024】
特に、前記指紋防止層は耐指紋特性を有する高分子樹脂を含むコーティング液を用いて形成できるので、従来の指紋防止層を形成する組成に比べて上部コーティング層との付着性を改善し優れた耐スクラッチ性を付与することができる。
【0025】
具体的に、前記指紋防止層は、バインダー樹脂および有機シラン化合物を含む組成物の硬化物を含むことができる。
【0026】
また、前記指紋防止層は、従来の指紋防止層組成とは異なり、ハードコーティング層との付置力を増加させてせん断応力による指紋防止層のせん断破壊および損失を防止することができる。このような指紋防止層は、バインダーと共に特定有機シラン化合物を含むことによって、強化ガラスカバーウィンドウに適用するための光学積層体の接着力と耐スクラッチ性を顕著に向上させることができる。
【0027】
前記成分は、上部コーティング層との接着力が優れ汚染防止機能を示して、高強度を維持することはもちろん、上部コーティング層との付着性を改善し優れた耐スクラッチ性を付与することができる。
【0028】
前記有機シラン化合物は、シランカップリング剤の作用を果たす官能基を有する化合物であって、1分子中に少なくとも1個の有機官能基と、少なくとも1個の加水分解性基を有し、前記加水分解性基がケイ素原子に結合したアルコキシ基などである化合物が挙げられる。
【0029】
好ましく、前記有機シラン化合物は、エポキシ基、(メタ)アクリルオキシ基、メルカプト基およびアミノ基からなる群より選択された少なくとも1種の有機官能基を有するシラン化合物を使用することができる。さらに具体的に、前記有機シラン化合物は、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-エチルトリメトキシシラン、3-グリシルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシルオキシプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、および3-ウレイドプロピルトリアルコキシシランからなる群より選択された1種以上を使用することができる。
【0030】
前記有機シラン化合物は、前記バインダー樹脂および有機シラン化合物を含む組成物の総重量を基準にして0.1~5.0重量%を含むことができる。前記有機シラン化合物の含量が0.1重量%未満であれば密度低下で接着力が低くなって耐スクラッチ性が低下する問題があり、5.0重量%以上であればコーティング性が低下する問題がある。
【0031】
前記バインダー樹脂は、パーフルオロポリエーテル化合物およびフルオロ変性シリコン化合物からなる群より選択される1種以上であってもよい。例えば、前記バインダーは、パーフルオロメタポリアクリレートおよびパーフルオロポリエチレン変性シランからなる群より選択された1種以上を含むことができる。
【0032】
また、前記指紋防止層を形成するために、前述のバインダー樹脂および有機シラン化合物以外に、溶媒をさらに含むことができる。前記溶媒の種類が制限されるのではないが、好ましく、トリフルオロトルエン、塩化不和炭素、ヒドロフルオロカーボンおよび炭素数2~20のアルコキシフルオロアルカンからなる群より選択された1種以上であってもよい。また、溶媒含量は、前記バインダー樹脂および有機シラン化合物を含む組成物の残量で含まれてもよい。
【0033】
前記指紋防止層を形成する方法は、前述の成分を混合後、一般的な熱硬化または光硬化によって形成することができ、硬化方法が大きく制限されない。また、前記指紋防止層は、上部コーティング層上に前記厚さ範囲内で少なくとも1層以上含む構造を含むことができる。
【0034】
より具体的に、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態による光学積層体を簡略に示したものである。
【0035】
発明の好ましい一実施形態によって、前記ハードコーティング層は支持基材層の上部および下部に配置されてもよい(以下、上部コーティング層および下部コーティング層)。また、指紋防止層は、前記上部コーティング層の上に形成できる。
【0036】
したがって、図1に示されているように、前記光学積層体は支持基材層10と、前記支持基材層の上に上部コーティング層20が位置し、前記支持基材層の下部に下部コーティング層22が位置し、前記上部コーティング層20の上に指紋防止層30が配置されてもよい。
【0037】
このような前記光学積層体で、支持基材層10の上部および下部に位置する、前記上部コーティング層20および下部コーティング層22は後述の化学式1のエポキシポリシロキサン;ポリカプロラクトンポリオールを含む弾性重合体;および前記エポキシポリシロキサンと架橋可能な官能基を1以上含む反応性モノマーの硬化物;を含む。この時、前記硬化物は、光硬化物または熱硬化物であってもよい。
【0038】
したがって、発明の一実施形態によれば、30~80μmの厚さを有する支持基材層;前記支持基材層の上に位置し80~100μmの厚さを有する上部コーティング層;および前記支持基材層の下に位置し80~100μmの厚さを有する下部コーティング層;を含み、前記上部コーティング層および下部コーティング層は下記化学式1のエポキシポリシロキサン;ポリカプロラクトンポリオールを含む弾性重合体;および前記エポキシポリシロキサンと架橋可能な官能基を1以上含む反応性モノマーの硬化物;を含み、前記上部コーティング層の上に位置し10nm~5μmの厚さを有する前述の構成の指紋防止層を含む光学積層体を提供することができる:
【0039】
即ち、優れた硬度特性を示すエポキシポリシロキサンを含む上部および下部コーティング層を支持基材層の上および下にそれぞれ含み、光学積層体適用基材と接するようになる上部および下部コーティング層が前記エポキシポリシロキサンの硬化時に収縮を最少化することができるように弾性重合体を最適含量比でさらに含むことによって、優れた表面硬度特性を示しながらも、曲げ特性および屈曲性が大きく改善できる。また、本発明の上部および下部コーティング層は前記エポキシシランと架橋可能な官能基を1以上含む反応性モノマーを含むことによって、加工性とコーティング接着力を向上させることができる。
【0040】
特に、本発明の光学積層体は上部コーティング層との接着力増加および汚染防止機能性を有する前述の有機シランを含むコーティング層を指紋防止層として含ませて、ディスプレイ強化ガラスカバーウィンドウを代替することができる高硬度、耐指紋性、耐摩耗性などの高機能性効果を全て示すことができる。
【0041】
これにより、前記光学積層体は、多様なフレキシブルまたはフォルダブル素子の前面部、表示部の素材として有用に使用することができる。一例を挙げれば、前記光学積層体は、フレキシブルまたはフォルダブルディスプレイ素子で強化ガラスカバーウィンドウとして使用することができる。
【0042】
一方、前記ハードコーティング層は、下記化学式1のエポキシポリシロキサンを含むことができる。
【0043】
[化学式1]
(RSiO3/2(RSiO3/2(OR)
上記化学式1中、
は、下記化学式2で表されるグリシジル基;またはグリシドキシプロピル基であり、
[化学式2]
【化1】
上記化学式2中、
R'はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン基、炭素数1~4のアルキル基、ヒドロキシ基、炭素数1~4のアルコキシ基、アクリル基、メタクリル基、エーテル基、エステル基、アセチル基、ホルミル基、およびカルボキシル基からなる群より選択され、
R"は、炭素数1~4のアルキレン基であり、
は、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数3~20のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数2~20のアルケニル基、置換もしくは非置換の炭素数2~20のアルキニル基、置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリール基、置換もしくは非置換の炭素数7~20のアリールアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数7~20のアルキルアリール基、エポキシ基、および水素原子からなる群より選択され、
Rは、水素原子、または炭素数1~20のアルキル基であり、
0<a<1、0≦b<1かつ0<c<1である。
【0044】
前記化学式1で表されるエポキシポリシロキサンは、T3単位体として(RSiO3/2)のシルセスキオキサン単位を含む。
【0045】
前記(RSiO3/2)のシルセスキオキサン構成単位において、Rは前記化学式2で表される官能基であって、R'がそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン基、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヒドロキシ基、メトキシ基、エトキシ基、アクリル基、メタクリル基、アセチル基、ホルミル基、およびカルボキシル基からなる群より選択され、R"はメチレン基、エチレン基、プロピレン基、またはイソブチレン基のような炭素数1~4の直鎖または分枝状アルキレン基であってもよい。より具体的には、R'がそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン基、メチル基またはエチル基であり、R"は炭素数1~4の直鎖アルキレン基であってもよい。硬化物の表面硬度および硬化性の改善効果を考慮する時、前記R'がそれぞれ水素原子でありR"がメチレン基であるグリシジル基がより好ましい。
【0046】
また、前記エポキシポリシロキサンは、前述の(RSiO3/2)のシルセスキオキサン単位と共にT3単位体として(RSiO3/2)のシルセスキオキサン単位をさらに含むことができる。前記(RSiO3/2)のシルセスキオキサン単位は、エポキシポリシロキサンの硬化密度を高めてハードコーティング層の表面硬度特性を向上させることができる。
【0047】
前記(RSiO3/2)のシルセスキオキサン構成単位において、Rは具体的に、置換もしくは非置換の炭素数1~12のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数3~12のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6~12のアリール基、置換もしくは非置換の炭素数7~12のアリールアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数7~12のアルキルアリール基、エポキシ基、および水素原子からなる群より選択されるものであってもよい。
【0048】
また、前記Rは、炭素数1~12のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、ヒドロキシ基、炭素数1~12のアルコキシ基、アミノ基、アクリル基、メタクリル基、ハロゲン基、メルカプト基、エーテル基、エステル基、アセチル基、ホルミル基、カルボキシル基、ニトロ基、スルホニル基、ウレタン基、エポキシ基、オキセタン基およびフェニル基からなる群より選択される1種以上の置換基で置換されてもよく、より具体的には、アクリル基、メタクリル基、ビニル基、アリル基、エポキシ基およびオキセタン基からなる群より選択される1種以上の置換基で置換されてもよい。
【0049】
この中でも、エポキシポリシロキサンの硬化密度をさらに高めてハードコーティング層の表面硬度特性をさらに向上させることができるという点から、前記Rはより具体的に、アクリル基、メタクリル基、ビニル基、アリル基、エポキシ基およびオキセタン基からなる群より選択される1種以上の置換基で置換されるか非置換された、炭素数1~6のアルキル基または炭素数6のアリール基であるか、またはエポキシ基であってもよい。
【0050】
一方、前記エポキシ基は、オキシラン環を含む官能基として、脂環族エポキシ基、脂肪族エポキシ基、および芳香族エポキシ基を含み、前記化学式2で定義したグリシジル基を除く。
【0051】
また、前記エポキシポリシロキサンは、(OR)の構成単位を含むことができる。前記構成単位を含むことによって優れた硬度特性を維持しながらも柔軟性を向上させることができる。前記Rは具体的に、水素原子であるか、または炭素数1~12のアルキル基であってもよく、より具体的には、水素原子であるか、またはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基などの炭素数1~4の直鎖または分枝型アルキル基であってもよい。
【0052】
前記構成単位を含むエポキシポリシロキサンは、各構成単位のシロキサン単量体、具体的にはエポキシアルキル基を有するアルコキシシラン単独、またはエポキシアルキル基を有するアルコキシシランと異種のアルコキシシラン間の加水分解および縮合反応によって製造でき、この時、前記アルコキシシランの含量比制御によって各構成単位のモル比を制御することができる。具体的に、前記化学式1中、a、b、およびcはそれぞれ、前記エポキシポリシロキサンを構成する(RSiO3/2)単位、(RSiO3/2)単位、および(OR)単位のモル比を示すものであって、0<a<1、0≦b<1、かつ0<c<1であってもよい。
【0053】
また、前記エポキシポリシロキサンは、前記構成単位それぞれの含量範囲を充足する条件下で、(RSiO3/2)の構成単位を、エポキシポリシロキサンを構成するT単位体総量、即ち、100モル%に対して70モル%以上、より具体的には70モル%以上100モル%以下で含むことによって、ハードコーティング膜形成時に硬化密度が増加し、その結果、光学積層体が顕著に改善された表面硬度を示すことができる(モル比で表現時、0.7≦a/(a+b)≦1)。前記エポキシポリシロキサン内(RSiO3/2)構成単位のモル含量が70モル%未満であれば、硬化密度の低下によって上部および下部コーティング層が十分な表面硬度を示しにくい。よりさらに具体的には、(RSiO3/2)の構成単位を、T単位体総量、即ち、100モル%に対して70モル%以上85モル%未満、あるいは85モル%以上100モル%以下で含むことができる。
【0054】
また、前記エポキシポリシロキサンが前記(RSiO3/2)の構成単位をさらに含む場合、bに該当するモル比(0<b<1)で含むことができ、より具体的には0<b<0.5あるいは0.01≦b≦0.5、よりさらに具体的には0.1≦b≦0.3を充足するようにするモル比で(RSiO3/2)の構成単位をさらに含むことができる。前記含量範囲で(RSiO3/2)の構成単位を含む場合、エポキシポリシロキサンの硬化密度を高めてハードコーティング層の表面硬度特性を向上させることができる。
【0055】
また、前記エポキシポリシロキサンは前記(OR)単位を前述のcの範囲(0<c<1)で含むことができ、より具体的には0<c<0.5、よりさらに具体的には0.01≦c≦0.3あるいは0.01≦c≦0.05を充足するようにするモル比で(OR)単位をさらに含むことができる。前記含量範囲で(OR)単位を含む場合、優れた硬度特性を維持しながらも柔軟性を向上させることができる。
【0056】
また、前記含量範囲を充足する条件下で、前記エポキシポリシロキサン内含まれる各構成単位のモル比の総合(a+b+c)は1である。
【0057】
一方、前記エポキシポリシロキサンを構成する各構成単位の含量は、H-NMRまたは29Si-NMRスペクトル測定によって求めることができる。
【0058】
また、前記エポキシポリシロキサンは、エポキシ基当量(Epoxy Equivalent Weight、g/eq)が3.0~6.3g/eqであってもよい。エポキシ基当量が前記範囲内である場合、重合時に緻密な架橋をなしてより優れた硬度特性を示すことができる。より具体的には、前記エポキシポリシロキサンは、エポキシ基当量が4~6g/eqであってもよい。前記エポキシ当量はエポキシポリシロキサンの分子量をエポキシの数で割った値であって、化学的滴定法で分析することができる。
【0059】
また、前記エポキシポリシロキサンは製造時反応温度、触媒の量、溶媒の種類などを用いた反応速度調節によって重量平均分子量、分子量分布などが調節でき、本発明で使用可能なエポキシポリシロキサンは1,000~50,000g/molの重量平均分子量を有するものであってもよい。前記範囲の重量平均分子量を有することによって、より優れた硬度特性を示すことができる。万一重量平均分子量が1,000g/mol未満であれば、硬度が実現されなく、むしろ軟性が発現する恐れがあり、また50,000g/molを超過すれば、高硬度を示すが、フィルム加工性が低下する恐れがある。より具体的には、1,200~15,000g/molであってもよい。
【0060】
また、前記エポキシポリシロキサンは、前記Mwと共に数平均分子量(Mn)が1,000~10,000g/mol、より具体的には、1,000~8,000g/molであるものであってもよい。前記数平均分子量条件を充足する場合、ハードコーティング層形成用樹脂組成物内の他の成分との相溶性が増加し、硬化物の表面硬度が向上して、硬化物の耐熱性および耐摩耗性がさらに向上できる。
【0061】
また、前記エポキシポリシロキサンは、分子量分布(Mw/Mn)が1.0~3.0、より具体的には、1.1~2.5であるものであってもよい。前記範囲内の分子量分布を有する場合、表面硬度改善効果がより優れており、またエポキシポリシロキサンが液状に存在して取り扱いが容易である。
【0062】
前記エポキシポリシロキサンの重量平均分子量および数平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算値である。
【0063】
一方、発明の一実施形態による光学積層体で、前記ハードコーティング層は、ポリカプロラクトンポリオールを含む弾性重合体をさらに含むことができる。このような場合、前述の化学式1のエポキシポリシロキサンと共に弾性重合体を95:5~60:40の重量比でさらに含むことができるが、その比率が大きく制限されるのではない。
【0064】
前記弾性重合体は光学積層体が適用される基材と対面する上部コーティング層および下部コーティング層に含まれることによって、下部コーティング層に高いタフネス(toughness)を通じたストレス抵抗特性を付与して硬化時に収縮を最少化することができ、その結果、曲げ特性を改善し、同時に屈曲性などの柔軟性を改善させることができる。しかし、万一弾性重合体が過量で投入される場合、具体的にエポキシポリシロキサンと弾性重合体の総合計量に対して40重量%を超過する場合、曲げ特性が大きく低下する恐れがある。また、万一弾性重合体が過度に少量で投入される場合、具体的にエポキシポリシロキサンと弾性重合体の総合計量に対して5重量%未満である場合、弾性重合体を含むことによる改善効果を十分に得られず、曲げ特性および屈曲性が低下する恐れがある。より具体的には、前記弾性重合体の含量比制御による曲げ特性および屈曲性改善効果の顕著さを考慮する時、前記弾性重合体は、前記化学式1のエポキシポリシロキサンと弾性重合体が92:8~65:35の重量比、よりさらに具体的には90:10~65:35の重量比を充足するようにする量で含まれてもよい。
【0065】
前記弾性重合体としては、炭素数1~20のアルカンジオール、ポリオレフィンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリエーテルポリオールまたはポリカーボネートポリオールなどが挙げられ、これらのうちのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用できる。これら弾性重合体はゴムなど通常の弾性重合体と比較して紫外線照射によって架橋重合され、また他の物性の低下なく高硬度と柔軟性を実現することができる。この中でも前記弾性重合体は下記化学式3で表されるポリカプロラクトンジオールであってもよい。
[化学式3]
【0066】
【化2】
【0067】
上記化学式3中、nは1以上の整数であり、より具体的には1~20である。また、前記nは、ポリカプロラクトンジオールの重量平均分子量から計算できる。
【0068】
前記ポリカプロラクトンジオールは繰り返し単位内にエステル基とエーテル基が同時に含まれて繰り返されることによって、前記化学式1のエポキシポリシロキサンとの組み合わせ使用時、柔軟性と硬度、耐衝撃性面でより優れた効果を示すことができる。
【0069】
また、発明の一実施形態による光学積層体で、前記ハードコーティング層は反応性モノマーをさらに含むことができる。
【0070】
前記反応性モノマーは、前述のエポキシポリシロキサンと架橋可能な官能基を1以上含むことによって、前記エポキシポリシロキサンの粘度を低めて加工性を容易なようにし、コーティング接着力を向上させる役割を果たす。
【0071】
具体的に、前記反応性モノマーとしてはエポキシポリシロキサンと架橋可能な官能基として脂環族エポキシ基、グリシジル基またはオキセタン基を含む化合物が挙げられ、これらのうちのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用できる。
【0072】
前記脂環族エポキシ基を含む化合物としては、4-ビニルシクロヘキセンジオキシド、シクロヘキセンビニルモノオキシド、(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート、3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-1,3-ジオキソラン、リモネンジオキシド、ビニルシクロヘキセンジオキシド、またはビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペートなどが挙げられ、これらのうちのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用できる。また、前記グリシジル基を含む化合物としては、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、p-ブチルフェノールグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、クレシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルなどが挙げられ、これらのうちのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用できる。また、前記オキセタン基を含む化合物としては、3-メチルオキセタン、2-メチルオキセタン、3-オキセタノール、2-メチレンオキセタン、3-メチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、3,3-オキセタンジメタンチオール、2-エチルヘキシルオキセタン、4-(3-メチルオキセタン-3-イル)ベンゾニトリル、N-(2,2-ジメチルプロピル)-3-メチル-3-オキセタンメタンアミン、N-(1,2-ジメチルブチル)-3-メチル-3-オキセタンメタンアミン、キシレンビスオキセタン、3-エチル-3[{(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ}メチル]オキセタン、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチルメタクリレート、または4-[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]ブタン-1-オルなどが挙げられ、これらのうちのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用できる。
【0073】
前記反応性モノマーがさらに含まれる場合、前記エポキシポリシロキサン100重量部に対して5~30重量部で含まれてもよい。反応性モノマーの含量が5重量部未満であれば反応性モノマーを含むことによる改善効果が微少であり、30重量部を超過する場合、過量の反応性モノマーによって前記エポキシポリシロキサンの粘度が過度に低まって加工性がむしろ低下することがある。より具体的には、前記反応性モノマーは前記エポキシポリシロキサン100重量部に対して7~15重量部、よりさらに具体的には9~12重量部で含まれてもよい。
【0074】
また、発明の一実施形態による光学積層体で、前記支持基材層の上部および下部に形成されるハードコーティング層のうちの少なくとも一つは、表面硬度改善のためにアクリレート系化合物をさらに含むことができる。
【0075】
前記アクリレート系化合物としては、2-エチルヘキシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、イソデシルアクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、ベへニルアクリレート、トリデシルメタクリレート、ノニルフェノールエトキシレートモノアクリレート、β-カルボキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、4-ブチルシクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、エトキシエトキシエチルアクリレート、エトキシレーテッドモノアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、トリフェニルグリコールジアクリレート、ブタンジオールジアクリレート、1,3-ブチレングリコールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコール、ジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、エトキシレーテッドネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、ペンタエリトリトールトリメタクリレート、ペンタエリトリトールテトラメタクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、エトキシレーテッドトリアクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、ジペンタエリトリトールペンタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、アルコキシレーテッドテトラアクリレートなどが挙げられ、好ましくは、ペンタエリトリトールトリアクリレート、ペンタエリトリトールトリメタクリレート、ペンタエリトリトールテトラメタクリレート、またはペンタエリトリトールテトラアクリレートなどのような多官能性アクリレート系化合物が挙げられ、これらのうちのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用できる。
【0076】
その他にも、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ウレタンアクリレート、またはエポキシアクリレートなどのようなアクリレート系オリゴマーが挙げられ、これらのうちのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用できる。
【0077】
前記アクリレート系化合物の中でも、前述のエポキシポリシロキサンとの組み合わせ使用時の表面硬度改善効果の顕著さを考慮する時、ウレタンアクリレートオリゴマーがより好ましく使用できる。
【0078】
前記ウレタンアクリレートオリゴマーは、官能基数が6~9個であってもよい。官能基が6個未満であれば硬度改善効果が微少なことがあり、9個超過であれば硬度は優れるが、粘度が上昇することがある。また、前記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは当該分野で使用されるものを制限なく使用することができるが、好ましくは、分子内1つ以上のイソシアネート基を有する化合物と分子内ヒドロキシ基を1つ以上有する(メタ)アクリレート化合物を反応させて製造されたものが使用できる。
【0079】
前記アクリレート系化合物がさらに含まれる場合、前記エポキシポリシロキサン100重量部に対して0.1~20重量部で含まれてもよい。反応性モノマーの含量が0.1重量部未満であればアクリレート系化合物を含むことによる改善効果が微少であり、20重量部を超過する場合、過量のアクリレート系化合物によって表面硬度改善効果がむしろ阻害されることがある。より具体的には、前記アクリレート系化合物は前記エポキシポリシロキサン100重量部に対して1~15重量部、よりさらに具体的には5~15重量部で含まれてもよい。
【0080】
前記成分と共にハードコーティング層は独立して、酸化防止剤、界面活性剤、黄変防止剤、無機充填剤、滑剤、コーティング助剤、防汚剤など本発明が属する技術分野における通常使用される添加剤を1種以上追加的に含むことができる。前記添加剤に対しては以下の製造方法でより詳しく説明する。
【0081】
一方、一般にハードコーティング層の厚さが厚いほど強度が増加するが、厚さが過度に厚い場合、フォルディング時に壊れやすい。また、厚さが過度に薄い場合、フォルディング性が確保されても強度が不良なことがある。これにより、発明の一実施形態によって、前記支持基材層の両面に形成されるハードコーティング層は60μm~100μmの厚さを有するのが好ましい。また、前記厚さ範囲内で上部コーティング層と下部コーティング層の厚さ比が1:1~1:1.5、より具体的には1:1~1:1.3であるのがより好ましい。それぞれのコーティング層の厚さが60μm未満であれば、強度特性が低下する恐れがあり、また100μmを超過すれば柔軟性が低下する恐れがある。また、上部コーティング層の厚さに比べて下部コーティング層の厚さが過度に厚い場合、curl balanceと厚さに対して高い硬度の効果が低下する恐れがあり、また下部コーティング層に比べて上部コーティング層の厚さが過度に厚い場合、curl balanceおよび柔軟性が低下する恐れがある。
【0082】
一方、発明の一実施形態による光学積層体は、前記上部コーティング層20の上に指紋防止層30を含む場合、一実施形態によって前記指紋防止層は前記上部コーティング層の上に位置し10nm~5μmあるいは10nm~5μmあるいは10nm~1μmの厚さを有するように形成することができる。
【0083】
この時、前記指紋防止層の厚さが10nm以下であれば表面改質度が低下して水接触角低下および耐久性が弱くなる問題があり、5μm以上であれば指紋防止層の熱収縮および膜厚によるストレス上昇でフォルディング特性が低下される問題がある。
【0084】
一方、発明の一実施形態による光学積層体での支持基材層は、前記上部コーティング層と下部コーティング層の間に位置する。
【0085】
前記支持基材層は、透明性プラスチック樹脂を含むことができる。前記プラスチック樹脂の具体的な例としては、ポリエステル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂またはスルホン系樹脂などが挙げられ、これらのうちのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用できる。
【0086】
より具体的には、前記支持基材層は、ポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephtalate、PET)、サイクリックオレフィン共重合体(cyclic olefin copolymer、COC)、ポリアクリレート(polyacrylate、PAC)、ポリカーボネート(polycarbonate、PC)、ポリエチレン(polyethylene、PE)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate、PMMA)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketon、PEEK)、ポリエチレンナフタレート(polyethylenenaphthalate、PEN)、ポリエーテルイミド(polyetherimide、PEI)、ポリイミド(polyimide、PI)、およびトリアセチルセルロース(triacetylcellulose、TAC)のうちの少なくとも一つを含むことができる。
【0087】
また、前記支持基材層は単層であってもよく、または互いに同一であるかまたは異なる物質からなる2層以上の多層構造であってもよい。一例として、前記支持基材層は、ポリエチレンテレフタレート(PET)の多層構造体、ポリメチルメタクリレート(PMMA)/ポリカーボネート(PC)の共押出で形成した多層構造体、またはポリメチルメタクリレート(PMMA)とポリカーボネート(PC)の共重合体(copolymer)を含む単一層構造体であってもよい。
【0088】
また、前記支持基材層は必要によってプラズマ表面処理されたものであってもよく、その方法は特に提案されず通常の方法によって行われてもよい。
【0089】
また、前記支持基材層はその厚さが過度に厚いか薄ければ表面硬度、耐衝撃性低下またはフォルディング特性の問題があるため、その範囲を適切に設定するのが好ましい。一例を挙げれば、前記支持基材層は、30~100μm、より具体的には50~80μmの厚さを有することができる。
【0090】
前記構造および構成を有する発明の一実施形態による光学積層体は、上部コーティング層形成用第1樹脂組成物を支持基材層の一面に塗布した後に硬化して上部コーティング層を形成し、前記上部コーティング層が形成されていない基材層の一面に下部コーティング層形成用第2樹脂組成物を塗布した後に硬化して下部コーティング層を形成し、指紋防止層形成用第3樹脂組成物を前記コーティング層上に塗布した後に硬化して指紋防止層を形成する方法で、製造できる。この時、上部コーティング層と下部コーティング層の形成順序は変更されてもよい。また、他の方法で支持基材層の両面に前記第1および第2樹脂組成物をそれぞれ塗布した後に硬化させることによって製造できる。この時、上部および下部コーティング層の形成順序は特に限定されず、工程容易性などを考慮して適切に変更できる。
【0091】
前記上部コーティング層形成用第1樹脂組成物は、前記エポキシポリシロキサンと共に弾性重合体を95:5~60:40の重量比で含む。また、前記下部コーティング層形成用第2樹脂組成物も、前記エポキシポリシロキサンと共に弾性重合体を95:5~60:40の重量比で含む。この時、前記エポキシポリシロキサンおよび弾性重合体は先に説明したものと同一である。
【0092】
また、前記第1および第2樹脂組成物は、前述の反応性モノマーおよびアクリレート系化合物のうちの少なくとも一つをさらに含むことができる。
【0093】
また、前記第1および第2樹脂組成物はそれぞれ独立して、前述のエポキシポリシロキサン100重量部に対して開始剤を0.1~10重量部で含むことができる。前記開始剤含量が0.1重量部未満であれば、表面硬化のみ起こるかエポキシ硬化が十分に起こらなくて低い硬度が出ることがある。また、開始剤含量が10重量部を超過すれば、速い硬化速度によってハードコーティング層のクラックと剥離を誘発することがある。より具体的には、0.5~5重量部あるいは1~4重量部で含むことができる。
【0094】
前記開始剤はこの分野によく知られた光重合または熱重合開始剤であってもよく、その種類が大きく制限されない。例えば、光重合開始剤は、アリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート塩、アリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェート塩、ジフェニルジヨードニウムヘキサフルオロホスフェート塩、ジフェニルジヨードニウムヘキサアンチモニウム塩、ジトリルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート塩および9-(4-ヒドロキシエトキシフェニル)チアントレニウムヘキサフルオロホスフェート塩からなる群より選択された1種以上であってもよいが、これに制限されない。前記熱重合開始剤は、3-メチル-2-ブテニルテトラメチレンスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート塩、イッテルビウムトリフルオロメテンスルホネート塩、サマリウムトリフルオロメテンスルホネート塩、エルビウムトリフルオロメテンスルホネート塩、ジスプロシウムトリフルオロメテンスルホネート塩、ランタントリフルオロメテンスルホネート塩、テトラブチルホスホニウムメテンスルホネート塩、エチルトリフェニルホスホニウムブロミド塩、ベンジルジメチルアミン、ジメチルアミノメチルフェノール、トリエタノールアミン、N-n-ブチルイミダゾールおよび2-エチル-4-メチルイミダゾールからなる群より選択された1種以上を含むことができるが、これに制限されない。
【0095】
前記第1および第2樹脂組成物は、工程上問題がない場合、無溶剤(solvent-free)で使用可能であるが、選択的にコーティング時、組成物の粘度および流動性を調節し支持基材に対する組成物の塗布性を高めるために、選択的に有機溶媒をさらに含むことができる。
【0096】
前記第1および第2樹脂組成物中に有機溶媒がさらに含まれる場合、前記有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールのようなアルコール系溶媒;2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノールのようなアルコキシアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルプロピルケトン、シクロヘキサノンのようなケトン系溶媒;プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチルグリコールモノエチルエーテル、ジエチルグリコールモノプロピルエーテル、ジエチルグリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコール-2-エチルヘキシルエーテルのようなエーテル系溶媒;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのアセテート系溶媒;またはベンゼン、トルエン、キシレンのような芳香族溶媒などを単独でまたは混合して使用することができる。
【0097】
また、前記第1および第2樹脂組成物は前述の成分以外に、先に説明したような表面硬度改善のためのアクリレート系化合物をさらに含むことができ、また酸化防止剤、界面活性剤、黄変防止剤、無機充填剤、滑剤、コーティング助剤、防汚剤など本発明の属する技術分野における通常使用される添加剤を1種以上さらに含むことができる。また、その含量は本発明のハードコーティングフィルムの物性を低下させない範囲内で多様に調節することができるので、特に制限しないが、例えば、前記エポキシポリシロキサン100重量部に対して0.1~10重量部で含むことができる。
【0098】
一例として、前記酸化防止剤は重合開始剤に起因する酸化反応を抑制するためのものであって、フェノリック系、ホスフェート系、アミニック系、チオエステル系などからなる群より選択される1種以上の混合物を含むことができるが、これに制限されない。前記界面活性剤は、1~2官能性のフッ素系アクリレート、フッ素系界面活性剤またはシリコン系界面活性剤であってもよい。この時、前記界面活性剤は、前記架橋共重合体内に分散または架橋されている形態で含まれてもよい。また、前記黄変防止剤としては、ベンゾフェノン系化合物またはベンゾトリアゾール系化合物などが挙げられる。
【0099】
前記のような上部および下部コーティング層形成用樹脂組成物の支持基材層に対する塗布工程は、ダイコーター、エアーナイフ、リバースロール、スプレー、ブレード、キャスティング、グラビア、スピンコーティング、またはバーコーティングなどの公知された方法によって行うことができる。また、指紋防止層形成のための塗布工程も大きく制限されず、前記方法から適切に選択して行うことができる。
【0100】
また、前記塗布工程は、硬化後にそれぞれのコーティング層の厚さが前述の厚さ範囲および条件を充足するように前記第1および第2樹脂組成物の塗布が1回または1回以上行われてもよい。
【0101】
また、それぞれの樹脂組成物塗布後には硬化のための工程が行われてもよく、前記硬化は通常の方法による熱硬化または光硬化で行うことができる。
【0102】
前記熱硬化および光硬化のための熱処理または光照射条件は開始剤の種類によって波長領域および光量、または熱処理温度などの調節を通じて適切に制御できる。
【0103】
前記のような方法によって製造された、発明の一実施形態による光学積層体は、支持基材層の上部および下部に、硬度特性に優れたエポキシポリシロキサンと、硬化時収縮を最少化して曲げ特性を改善し同時に屈曲性および柔軟性を向上させることができる弾性重合体と、接着性を改善できる前述の反応性モノマーを含むハードコーティング層をそれぞれ形成することによって、優れた表面硬度および強度特性を維持しながらも柔軟性が顕著に改善されて曲げ変形が非常に少ない効果を提供することができる。これと共に、本発明の光学積層体は、前記上部のハードコーティング層の上に、指紋防止層を含むことによって、優れた耐指紋性と改善された耐摩耗性を示すことができ、透明性を有する。
【0104】
一方、発明の他の実施形態によれば、前記光学積層体を含む偏光板を提供することができる。
前記偏光板は、前記光学積層体を偏光子保護フィルムやカバーウィンドウとして含むことができる。
【0105】
前記実施形態の偏光板は偏光子を含む。前記偏光子は、当該技術分野によく知られた偏光子、例えば、ヨードまたは二色性染料を含むポリビニルアルコール(PVA)からなるフィルムを使用することができる。この時、前記偏光子はポリビニルアルコールフィルムにヨードまたは二色性染料を染着させ延伸して製造できるが、その製造方法は特に限定されない。
【0106】
一方、前記偏光子がポリビニルアルコールフィルムである場合、ポリビニルアルコールフィルムはポリビニルアルコール樹脂またはその誘導体を含むものであれば特別な制限なく使用が可能である。この時、前記ポリビニルアルコール樹脂の誘導体としては、これに限定されるのではないが、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂などが挙げられる。または、前記ポリビニルアルコールフィルムは、当該技術分野において偏光子製造に一般に使用される市販されるポリビニルアルコールフィルム、例えば、クラレ社のP30、PE30、PE60、日本合成社のM3000、M6000などを使用することができる。
【0107】
一方、前記ポリビニルアルコールフィルムは、これによって限定されるのではないが、重合度が1000~10000または1500~5000であってもよい。重合度が前記範囲を満足する時、分子の動きが自由であり、ヨードまたは二色性染料などと柔軟に混合できる。また、前記偏光子の厚さは40μm以下、30μm以下、20μm以下、1~20μm、または1μm~10μmであってもよい。この場合、前記偏光子を含む偏光板や画像表示装置などのデバイスの薄形軽量化が可能である。
【0108】
前記偏光板は、前記偏光子と前記光学積層体の高分子基材の間に位置し0.1μm~5μmの厚さを有する接着層;をさらに含むことができる。
【0109】
前記接着層には前記接着剤としては、当該技術分野で使用される多様な偏光板用接着剤、例えば、ポリビニルアルコール系接着剤、ポリウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、陽イオン系またはラジカル系接着剤などが制限なく使用できる。
【0110】
発明のまた他の実施形態によれば、前述の光学積層体または偏光板を含むディスプレイ装置を提供することができる。
【0111】
前記ディスプレイ装置の具体的な例が限定されるのではなく、例えば、液晶表示装置(Liquid Crystal Display)、プラズマディスプレイ装置、有機発光ダイオード装置(Organic Light Emitting Diodes)などの装置であってもよく、またフレキシブルディスプレイであってもよい。
【0112】
一つの一例として、前記ディスプレイ装置は、互いに対向する一対の偏光板;前記一対の偏光板の間に順次に積層された薄膜トランジスタ、カラーフィルタおよび液晶セル;およびバックライトユニットを含む液晶ディスプレイ装置であってもよい。
【0113】
前記ディスプレイ装置で、前記光学積層体または偏光板はディスプレイパネルの観測者側またはバックライト側の最外殻表面に備えられてもよい。
【0114】
また、他の一例として、前記ディスプレイ装置は、表示パネル;および前記表示パネルの少なくとも一面に位置する前記偏光板を含むことができる。
【0115】
前記ディスプレイ装置は液晶パネルおよび前記液晶パネルの両面にそれぞれ備えられた光学積層体を含む液晶表示装置であってもよく、この時、前記偏光板のうちの少なくとも一つが前述の本明細書の一実施形態による偏光子を含む偏光板であってもよい。
【0116】
この時、前記液晶表示装置に含まれる液晶パネルの種類は特に限定されないが、例えば、TN(twisted nematic)型、STN(super twisted nematic)型、F(ferroelectic)型またはPD(polymer dispersed)型のような手動行列方式のパネル;2端子型(two terminal)または3端子型(three terminal)のような能動行列方式のパネル;横電界型(IPS;In Plane Switching)パネルおよび垂直配向型(VA;Vertical Alignment)パネルなどの公知のパネルが全て適用できる。
【発明の効果】
【0117】
本発明による光学積層体は、基材およびハードコーティング層以外に有機官能性シラン化合物を含む指紋防止層を所定の厚さで追加的に含むことによって、優れた耐指紋性および硬度特性を示し、接着力上昇を通じて耐スクラッチ性を向上させることができる。また、本発明の光学積層体は、指紋防止層とハードコーティング層の接着によって、せん断応力が増加することによって、改善された耐摩耗性を示し、同時に優れた柔軟性および曲げ特性を示すことができる。したがって、本発明の光学積層体は、既存の強化ガラスカバーウィンドウを代替することができるので、フレキシブルまたはフォルダブルディスプレイ機器に特に有用に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0118】
図1】本発明の一実施形態による光学積層体を簡略に示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0119】
発明を下記の実施例でより詳細に説明する。但し、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容が下記の実施例によって限定されるのではない。
【実施例
【0120】
以下、製造例で使用したそれぞれの化合物は下記の通りである:
【0121】
(a)エポキシポリシロキサン:
下記方法によって製造したエポキシポリシロキサン1を使用した。
1000mL三つ口フラスコにシランモノマーとして3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM-403、Shinetsu社)、水およびトルエンを入れて攪拌した(KBM-403:水=1mol:0.2mol)。結果の混合溶液に塩基性触媒(TMAH)を前記シランモノマー100重量部に対して1重量部で添加し100℃で反応させてグリシドキシプロピル変性シリコン(glycidoxypropyl modified silicone、以下、GP)100モル%を含む下記組成のエポキシポリシロキサン1を製造した(Mw:2,700g/mol、Mn:2,100g/mol、エポキシ当量:5.9g/eq)
(RSiO3/2(RSiO3/2(OR)
【0122】
(b)反応性モノマー:ビスフェノールAジグリシジルエーテル(Alfa社製)を使用した。
【0123】
(c)弾性重合体:下記構造のポリカプロラクトンジオールを使用した。
(Mw=2,000g/mol、Sigma Aldrich社製)
[化学式3]
【0124】
【化3】
(上記化学式3中、nは前記Mw値から決定される)
【0125】
<製造例1>
【0126】
配合でそれぞれの成分を混合してハードコーティング層形成用樹脂組成物(コーティング液)を製造した。この時、エポキシポリシロキサン100重量部に対して開始剤としてヨードニウム系化合物(Omnicat 250TM、BASF社製)3重量部、溶剤としてToluene10重量部、そして添加剤としてフッ素系化合物(RS-55TM、MEGAFACE社製)0.2重量部を使用した(以下、H/C-1)。
【0127】
<製造例2>
製造例1と同様に混合後、パーフルオロ変性シラン1重量部、アミノエチル(アミノプロピル)トリメトキシシラン0.05重量部、トリフルオロトルエン5重量部を追加混合してコーティング液(H/C-2)を得た。
【0128】
<製造例3>
パーフルオロポリエチレン変性シラン(Mw:4,400)15重量%、アミノエチル(アミノプロピル)トリメトキシシラン0.7重量%、トリフルオロトルエン84.3重量%を使用して指紋防止層形成用組成物を製造した(以下、AF-1)。
【0129】
<製造例4>
パーフルオロポリエチレンポリメタクリレート(Mw:5,300)15重量%、アミノエチル(アミノプロピル)トリメトキシシラン0.7重量%およびトリフルオロトルエン84.3重量%を使用して、指紋防止層形成用組成物を製造した(以下、AF-2)。
【0130】
<製造例5>
アミノエチル(アミノプロピル)トリメトキシシランを除いて、製造例3と同様な方法で指紋防止層形成用組成物を製造した。即ち、パーフルオロポリエチレン変性シラン(1)15重量%およびトリフルオロトルエン85重量%を使用した(以下、AF-3)。
【0131】
<実施例1~4>
下記表1に記載された組成の樹脂組成物を使用して支持基材の上下面にハードコーティング層を形成後、前記上部面に製造例4および5の組成物を指紋防止層形成用組成物をコーティングして指紋防止層(AF層)が形成された光学積層体を製造した。
【0132】
詳しくは、15cm×20cm、厚さ50μmのPET基材の一面に、下記表1に記載された下部コーティング層形成用第2樹脂組成物を塗布した後、UVランプを用いて紫外線を照射(照射量:400mJ/cm)して光硬化することによって下部コーティング層(以下、H/C2層)を形成し、また前記下部コーティング層が形成されたPET基材の反対側面に下記表2に記載された上部コーティング層形成用第1樹脂組成物を塗布し、UVランプを用いて紫外線を照射(照射量:400mJ/cm)して光硬化して上部コーティング層(以下、H/C1層)を形成した。その後、製造例4または5の指紋防止層形成用樹脂組成物を上部コーティング層を塗布し、UVランプを用いて紫外線を照射(照射量:400mJ/cm)して光硬化して指紋防止層(以下、AF層)を形成した。前記過程によって、全体厚さ250.01~251μmの光学積層体を製造した。
【0133】
<比較例1>
下記表1に記載された通り、製造例1および2で製造した樹脂組成物を、15cm×20cm、厚さ50μmのPET基材両面にそれぞれ塗布した後、UVランプを用いて紫外線を10秒間照射(照射量:200mJ/cm)して光硬化することによって、基材の両面に上部および下部のハードコーティング層を形成した。また、前記上部コーティング層に製造例5の組成物(AF-3)をコーティングしてAF層を形成した。
【0134】
<比較例2および3>
下記表1に記載された通り、上部および下部コーティング層形成用樹脂組成物のみを使用することを除いては、前記実施例1と同様な方法で行ってハードコーティングフィルムを製造した。
【0135】
【表1】
【0136】
<実験例>
実施例1~4で製造した光学積層体とおよび比較例1~3で製造した一般的なハードコーティングフィルムに対して、次の方法で物性を測定し、その結果を下記表2および3に示した。
【0137】
1)鉛筆硬度
鉛筆硬度測定器を用いて測定標準JIS K5400によって1.0kgの荷重で5回往復した後、キズがない硬度を確認した。
【0138】
2)付着性
クロス-ハッチ方法で指紋防止層と上部コーティング層(AF-H/C1層)の間の付着性(接着力)を評価した。
【0139】
クロスカット試験基準であるASTM D3002/D3359の規格に準拠して、クロスカットテストを行った。具体的に、試片を1mmの間隔で横および縦方向にそれぞれ11行ずつ刃で引いて横と縦がそれぞれ1mmである100個の正四角形格子を形成した。その後、Nichiban社のCT-24接着テープを前記裁断面に付着した後、剥ぎ取る時に、共に剥離する面の状態を測定して下記基準にして評価した。
【0140】
<クロス-ハッチ接着力評価基準>
5B:剥離した面がない場合
4B:剥離した面が総面積に対して5%以内である場合
3B:剥離した面が総面積に対して5~15%である場合
2B:剥離した面が総面積に対して15~35%である場合
1B:剥離した面が総面積に対して35~65%である場合
0B:ほとんど大部分が剥離した場合
【0141】
3)水接触角
コーティング後、接触角測定装備を用いてコーティングした面の接触角を測定した。接触角測定時、水滴一つの大きさは3μlとし、コーティングの均一性を確認するためにコーティングした試料一つ当り5ポイントの接触角を測定した後、平均を出した。
【0142】
4)指紋拭き取り性
前記で製作した光学積層体の表面に指紋を付着させ、無塵布で表面を拭いて以下のような基準で評価した。
【0143】
◎:3回以内に完全に拭き取られる場合
○:10回以内に完全に拭き取られる場合
×:拭き取られない場合
5)耐スクラッチ性
【0144】
500g荷重でsteel wool(#0000)で1,000回往復した後、肉眼でコーティング膜摩耗有無(スクラッチ、Haze)確認後、変形のない時に"O.K."とし、摩耗変形発生時、"N.G."と判断した。
【0145】
【表2】
【0146】
【表3】
【0147】
実験結果、実施例1~4の光学積層体は、基材の両面に特定組成のハードコーティング層(即ち、上部コーティング層および下部コーティング層)を含むと同時に、特に前記上部コーティング層の上に特定組成の指紋防止層を含むことによって、指紋拭き取り性および耐スクラッチ性が全て向上した特性を示した。具体的に、前記実施例1~4は指紋防止層にバインダー樹脂と共に付置力を誘導することができる有機シランの組成を含むので、接着力と耐スクラッチ性を向上させることができる。また、前記実施例1~4は既存に比べて同等以上の高硬度および水接触角を示した。
【0148】
反面、比較例1は指紋防止層が含まれるが、本願の構成を含まないので、指紋防止層および上部コーティング層の接着性が落ち、耐スクラッチ性が不良であった。また、比較例2~3は指紋防止層が含まれなくて、水接触角、指紋拭き取り性および耐スクラッチ性が全般的に実施例1~4に比べて不良であった。また、比較例3は、有機シラン化合物を用いてハードコーティング層を形成したが、本願のように上部および下部のハードコーティング層と別途に形成される指紋防止層の構成で形成されないので、接着力がおよび耐スクラッチ性が不良であった。
図1