(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】トランスデューサ装置
(51)【国際特許分類】
H04R 19/04 20060101AFI20221213BHJP
【FI】
H04R19/04
(21)【出願番号】P 2018211352
(22)【出願日】2018-11-09
【審査請求日】2021-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】桝本 尚己
(72)【発明者】
【氏名】口地 博行
(72)【発明者】
【氏名】高村 文雄
(72)【発明者】
【氏名】富田 努
【審査官】岩田 淳
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-171053(JP,A)
【文献】特開2014-207538(JP,A)
【文献】特開2010-245645(JP,A)
【文献】特開2015-177376(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 11/00-11/06
11/14-15/02
19/00-19/04
21/00-21/02
23/00-23/02
31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の貫通孔と、該第1の貫通孔上に固定電極を含む固定電極膜と可動電極を含む可動電極膜とを対向配置したトランスデューサ素子と、該トランスデューサ素子に接続する第1の電極と、を備えた平板状の第1の基板と、
前記トランスデューサ素子の信号を処理する回路素子と、該回路素子に接続する第2の電極と、を備えた平板状の第2の基板と、
第1の貫通電極と、第2の貫通孔と、を備えた平板状の第3の基板とからなり、
前記
第1の電極と前記第2の電極がそれぞれ前記第1の貫通電極の両端に接続するように前記第1の基板、前記第3の基板および前記第2の基板を積層し、前記第1の基板と前記第2の基板とで囲まれた前記第2の貫通孔により形成される空間に、前記トランスデューサ素子と前記回路素子とを収容し
、前記トランスデューサ素子は前記第1の基板のみに接合し、前記回路素子は前記第2の基板のみに接合していることと、
前記第1の基板あるいは前記第2の基板に第2の貫通電極を備え、該第2の貫通電極は前記第1の電極あるいは前記第2の電極を外部電極に接続していること、を特徴とするトランスデューサ装置。
【請求項2】
請求項1記載のトランスデューサ装置において、
前記第1の基板あるいは前記第2の基板の少なくともいずれか一方に、前記空間の体積を増加させる凹部を備えていることを特徴とするトランスデューサ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスデューサ装置に関し、特に小型化が可能なトランスデューサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なトランスデューサ装置は、
図11に示すように実装基板1上に、トランスデューサ素子2とこのトランスデューサ素子2から出力された信号等を処理する回路素子3とを実装し、全体を金属製の蓋部4で覆う構造を採用している。蓋部4には、トランスデューサ素子2に音圧等が伝搬するため孔部5が形成されている。
【0003】
このような構造のトランスデューサ装置では、孔部5から装置内に伝搬する音圧等の変化は、トランスデューサ素子2で容量変化として検知され、回路素子3によって所望の信号処理を行い、この出力信号が実装基板1に形成された貫通電極(図示せず)等を通り、外部端子6から検知信号として出力されることになる。
【0004】
ところで、近年の電子機器の小型化の要請に伴い、電子機器に実装されるトランスデューサ装置についても小型化が求められている。例えば
図11に示す構造のトランスデューサ装置では、トランスデューサ素子2と回路素子3との間の寸法を広くとる必要があり、トランスデューサ装置の専有面積が大きくなってしまっていた。
【0005】
また従来のトランスデューサ装置では、トランスデューサ素子を実装する基板は、ガラスエポキシ基板やセラミック基板等が用いられ、トランスデューサ素子をシリコンで形成した場合、熱膨張率の差により、トランスデューサ素子の感度が低下してしまうという問題があった。
【0006】
一方本願出願人は、シリコン基板からなるパッケージ構造を提案した(特許文献1)。
図12は本願出願人が先に提案したトランスデューサ装置の一例である。シリコン基板からなる平板状の実装基板1と、シリコン基板からなり凹部を備えた蓋部4とを組み合わせてパッケージ構造を構成し、凹部内にトランスデューサ素子2と回路素子3を収容する構成としている。実装基板1上に形成された電極と蓋部4上に形成された外部電極7は、蓋部4に形成した貫通電極7によって接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
先に本願出願人が提案したトランスデューサ装置は、平板状の実装基板1と凹部を備えた蓋部4とを組み合わせてパッケージ構造を構成し、凹部内にトランスデューサ素子2と回路素子3とを収容する構成であった。実装基板1とトランスデューサ素子2の支持基板8をともにシリコンで構成することで、熱膨張率の差によるトランスデューサ素子2の感度劣化を防止することができる。しかしながら、トランスデューサ素子2と回路素子3とを実装基板1上に並べて配置する構成のため小型化に限界があった。本発明はこのような問題点を解消し、狭い凹部内にトランスデューサ素子等を収容するトランスデューサ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため本願請求項1に係る発明は、第1の貫通孔と、該第1の貫通孔上に固定電極を含む固定電極膜と可動電極を含む可動電極膜とを対向配置したトランスデューサ素子と、該トランスデューサ素子に接続する第1の電極と、を備えた平板状の第1の基板と、前記トランスデューサ素子の信号を処理する回路素子と、該回路素子に接続する第2の電極と、を備えた平板状の第2の基板と、第1の貫通電極と、第2の貫通孔と、を備えた平板状の第3の基板とからなり、前記第1の電極と前記第2の電極がそれぞれ前記第1の貫通電極の両端に接続するように前記第1の基板、前記第3の基板および前記第2の基板を積層し、前記第1の基板と前記第2の基板とで囲まれた前記第2の貫通孔により形成される空間に、前記トランスデューサ素子と前記回路素子とを収容し、前記トランスデューサ素子は前記第1の基板のみに接合し、前記回路素子は前記第2の基板のみに接合していることと、前記第1の基板あるいは前記第2の基板に第2の貫通電極を備え、該第2の貫通電極は前記第1の電極あるいは前記第2の電極を外部電極に接続していること、を特徴とする。
【0010】
本願請求項2に係る発明は、請求項1記載のトランスデューサ装置において、前記第1の基板あるいは前記第2の基板の少なくともいずれか一方に、前記空間の体積を増加させる凹部を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のトランスデューサ装置は、トランスデューサ素子と回路素子がそれぞれ平板状の基板に別々に実装され、これらの基板を第3の基板に設けられた貫通孔内に対向するように配置することで、貫通孔の大きさをトランスデューサ素子あるいは回路素子の大きさよりわずかに大きく設定すればよい。その結果、小型化ができ、専有面積の小さいトランスデューサ装置を提供することが可能となる。
【0013】
また、トランスデューサ素子を別個の素子として基板上に実装する代わりに、平板状の基板自体に形成することができ、同様に回路素子も基板上に実装する代わりに、平板状の基板自体に形成することができ、低背化されたトランスデューサ装置を提供することも可能である。
【0014】
さらにまた、トランスデューサ素子と回路素子を収容する空間の容積を増やすため、第1の基板あるいは第2の基板に凹部を形成すれば、トランスデューサ素子のバックキャビティの容積を大きくすることができ、高感度化を図ることも可能となる。
【0015】
本発明では、トランスデューサ素子の支持基板とこれを実装する基板とを同じ材料、特にシリコンで構成することができ、通常の半導体装置の製造工程のみで簡便に形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1の実施例のトランスデューサ装置の製造方法を説明する図である。
【
図2】本発明の第1の実施例のトランスデューサ装置の製造方法を説明する図である。
【
図3】本発明の第1の実施例のトランスデューサ装置の製造方法を説明する図である。
【
図4】本発明の第1の実施例のトランスデューサ装置の製造方法を説明する図である。
【
図5】本発明の第1の実施例のトランスデューサ装置の製造方法を説明する図である。
【
図6】本発明の第1の実施例のトランスデューサ装置の製造方法を説明する図である。
【
図7】本発明の第1の実施例のトランスデューサ装置の製造方法を説明する図である。
【
図8】本発明の第2の実施例のトランスデューサ装置の製造方法を説明する図である。
【
図9】本発明の第3の実施例のトランスデューサ装置の製造方法を説明する図である。
【
図10】本発明の第4の実施例のトランスデューサ装置の製造方法を説明する図である。
【
図11】従来のトランストランスデューサ装置の説明図である。
【
図12】従来の別のトランスデューサ装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のトランスデューサ装置は、トランスデューサ素子と回路素子が第1の基板乃至第3の基板で構成したパッケージに収容された構成となっている。以下、製造工程に従い、本発明のトランスデューサ装置について詳細に説明する。
【実施例1】
【0018】
本発明の第1の実施例について説明する。まず、シリコン基板からなる平板状の第1の基板10を用意する(
図1)。この第1の基板10は、複数のトランスデューサ装置を一括で形成し、後述するように個片化することで個々のトランスデューサ装置を形成することができる。以下1個のトランスデューサ装置を図示して詳細に説明する。
【0019】
第1の基板10には、マトリックス状にトランスデューサ装置形成予定領域が配置されている。各トランスデューサ装置形成予定領域のそれぞれには、第1の貫通孔11、第1の電極12および必要に応じて外部電極13aが形成されている(
図1)。第1の電極12は、後述するようにトランスデューサ素子に直接接続される電極の他、回路素子と接続される電極としても形成されている。
【0020】
第1の基板10の第1の貫通孔11上にトランスデューサ素子14の固定電極を含む固定電極膜15と可動電極を含む可動電極膜16がスペーサーを介して対向配置される。トランスデューサ素子14の電極と第1の基板1上に形成された第1の電極12は、例えば金属ワイヤ17で接続する(
図2)。
【0021】
次に第2の基板18を用意する。この第2の基板18も、マトリックス状にトランスデューサ装置形成予定領域が配置されている。各トランスデューサ装置形成予定領域のそれぞれには、第2の電極20が形成されている。第2の基板18の所定の位置に回路素子19を配置し、回路素子19の電極と第2の基板18上に形成された第2の電極20を、例えば金属ワイヤ17で接続する(
図3)。第2の電極20は、トランスデューサ素子と接続する電極としても形成されている。
【0022】
次に第3の基板21を用意する。この第3の基板21も、マトリックス状にトランスデューサ装置形成予定領域が配置されている。各トランスデューサ装置形成予定領域のそれぞれには、第2の貫通孔22と、第1の貫通電極23が所定の位置に形成されている(
図4)。
【0023】
次に先に用意した第1の基板10上に、第3の基板21を積層する。その際、第3の基板21に形成された第2の貫通孔22の内側にトランスデューサ素子14が配置するように積層する。また第3の基板21に形成された第1の貫通電極23が第1の基板10に形成された第1の電極12と接続するようにする(
図5)。
【0024】
その後、先に用意した第2の基板18をさらに積層する。その際、第3の基板21に形成された第2の貫通孔22の内側に回路素子19が配置するように積層する。また第3の基板21に形成された第1の貫通電極23が第2の基板18に形成された第2の電極20と接続するようにする(
図6)。第1の基板10と第3の基板21、あるいは第2の基板18と第3の基板21との接続は、所望の接着部材を用いることで、第2の貫通孔22を気密性良く封止することができる。この積層は、積層の際に生じる位置ずれ程度を考慮すればよく、第2の貫通孔22の大きさは、内部に収容するトランスデューサ素子14、回路素子19のそれぞれの大きさに接続のために必要な大きさを加えた程度の大きさで良い。
【0025】
このように第1の基板10、第3の基板21および第2の基板18を積層することで、トランスデューサ素子14と回路素子19が対向配置した状態となる。この状態では、複数のトランスデューサ装置が連結した状態となっているが、個々のトランスデューサ装置をみてみると、第1の貫通電極23によってトランスデューサ素子14の第1の電極12と回路素子19の第2の電極20が接続されている。
図6に示す例では、第1の基板10に外部電極13が形成されているので、第1の基板10に形成される図示しない貫通電極(第2の貫通電極に相当)により、外部電極13aと内部の電極との所望の結合が形成されることになる。
【0026】
その後、積層体を構成する第2の基板18、第3の基板21および第1の基板10の切断予定領域を切断除去することで個々のトランスデューサ装置を形成することができる。
図7に示すように本発明のトランスデューサ装置は、装置の外形が内部に搭載するトランスデューサ素子14等よりわずかに大きい程度の大きさとすることができ、外部電極13aを実装基板に接続する際、専有面積の小さいボトムポート型のトランスデューサ装置を提供することが可能となった。
【実施例2】
【0027】
次に第2の実施例について説明する。上記第1の実施例では、ボトムポート型のトランスデューサ装置の例について説明したが、
図8に示すようにトップポート型のトランスデューサ装置とすることも可能である。この場合、第2の基板18に図示しない第2の貫通電極により外部電極13bと内部の電極との接続を形成すればよい。
図8に示す本実施例のトランスデューサ装置でも、装置の外形が内部に搭載するトランスデューサ素子14等よりわずかに大きい程度の大きさとすることができ、外部電極13bを実装基板に接続する際、専有面積の小さいトップポート型のトランスデューサ装置を提供することが可能となった。
【0028】
図8に示すトップポート型のトランスデューサ装置は、
図7に示すボトムポート型のトランスデューサ装置と比較し、トランスデューサ素子のバックキャビティ(トランスデューサ素子の固定電極より内側の空間)の大きさが同じとなり、実装姿勢により特性が変化しないという利点もある。
【実施例3】
【0029】
次に第3の実施例について説明する。一般的なトランスデューサ装置では、バックキャビティが大きいほど感度が高い。そこで、例えば上記第2の実施例で説明したトランスデューサ装置において、バックキャビティに接する第2の基板18の表面の一部を切り欠き凹部24を形成すればバックキャビティの容積を大きくすることができる。この凹部24は、トランスデューサ装置を構成するのに必要な電極等が形成されていない領域に配置すればよい。従って、第2の基板18に限らず、第1の基板10に形成することも可能で、第1の基板10および第2の基板18の両方に形成することも可能である。上記第1の実施例で説明したトランスデューサ装置についても、同様に凹部24を備える構成とすることができる。
【実施例4】
【0030】
次に第4の実施例について説明する。上記第1乃至第3の実施例では、トランスデューサ素子14と回路素子19は、第1の基板10と第2の基板18とは別体の素子としてそれぞれ実装する構造として説明を行った。しかし、第1の基板10および第2の基板18をシリコン基板で形成した場合、第1の基板10上にトランスデューサ素子14を形成し、第2の基板18に回路素子19を形成することも可能である。
【0031】
例えば
図10に示すように構成することができる。この場合、第3の基板21の厚さを薄くすることができ、トランスデューサ装置の低背化を実現することができる。なお、
図10に示す例では、上記第1の実施例の変更例について説明したものであるが、当然上記第2の実施例および第3の実施例についてもトランスデューサ素子14と回路素子19を
図10に示すように変更して適用することが可能である。
【0032】
以上本発明の実施例について説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものでなく、種々変更可能である。例えば第1の基板乃至第3の基板およびトランスデューサ素子の支持基板はシリコンに限定されることはなく、好ましくは同じ材料で構成すれば、熱膨張率の差による影響を下げることができ、シリコンを選択すれば、安価に簡便に形成することができる。また第3の基板は、必要に応じてさらに第4の基板を積層する構造としても良い。
【0033】
10:第1の基板、11:第1の貫通孔、12:第1の電極、13a、13b:外部電極、14:トランスデューサ素子、15:固定電極膜、16:可動電極膜、17金属ワイヤ、18:第2の基板、19:回路素子、20:第2の電極、21:第3の基板、22:第2の貫通孔、23:第1の貫通電極、24:凹部